説明

乗用型対地作業車両

【課題】乗用型対地作業車両において、車両が傾斜面上を走行する場合でも、運転者が意図する方向への走行を可能とし、さらに、ヨーレートの検出値と目標値との偏差に基づく制御作用時の車両の挙動特性を自由に設定しやすくすることである。
【解決手段】乗用型対地作業車両である芝刈車両10は、コントローラ48と、車両のヨーレートを検出するヨーレートセンサ60とを備える。コントローラ48は、運転者により入力される加速指示及び旋回指示に基づいて左右車輪用電動モータ22,24それぞれの2の目標回転速度指令値を算出し、目標ヨーレートとヨーレート検出値との偏差に基づいて、車輪用電動モータ22,24にそれぞれ関係する2の補正係数を取得し、2の目標回転速度指令値のそれぞれを2の補正係数により補正して、車輪用電動モータ22,24の駆動を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2個の走行用モータによりそれぞれ独立に走行駆動される主駆動輪である左右車輪と、左右車輪に対し前後方向に離れて設けられた操向輪と、対地作業を行うために駆動される作業機と、を備える乗用型対地作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
芝刈り作業や、耕うん等の対地作業を行うために駆動される作業機を備える対地作業車両が、従来から知られている。また、このような対地作業車両において、それぞれ電動モータや油圧モータ等のモータにより独立に走行駆動される主駆動輪である左右車輪と、キャスタ輪等の操向輪とを備える電動対地作業車両も考えられている。
【0003】
例えば、作業車両として、作業機である芝刈り機を搭載し、作業者が乗り込んで走行と芝刈の操縦を車上で行う自力走行が可能な芝刈り車両があり、これは乗用型芝刈車両と呼ばれる。芝刈り機としては、例えば、芝刈回転工具等がある。
【0004】
乗用型芝刈車両は、もっぱら庭等のいわゆるオフロードで用いられ、芝刈作業のために地表を移動するものである。
【0005】
例えば、特許文献1には、内燃機関のエンジンシャフトにロータを連結したエンジン・発電機一体型を搭載するハイブリッド動力装置が開示されている。動力装置として例示されている芝刈機は、複数の駆動輪にそれぞれ独立の電気モータが連結され、それぞれの駆動輪を独立的に可変速度で制御でき、これによって芝刈機のスムースな始動、停止、速度変更、方向転換を行うことができると述べられている。駆動輪の独立速度変更による旋回の例としては、いずれも左右後輪にそれぞれ電気モータが連結されているものが述べられている。
【0006】
特許文献2には、ハイブリッド芝刈機として、前方に配置されているエンジンに接続されたオルタネータによる電力で、芝刈刃駆動用のデッキモータ、独立制御される左右後輪駆動用の左右車輪モータ、左右前輪を車軸回りに約180度の範囲でステアリングさせるステアリングモータを駆動する構成が開示されている。ここで、芝刈機を旋回させるには、ステアリング制御部の入力から左右後輪の速度差を計算して車輪モータを制御すると共に、ステアリングモータにステアリング信号を与えて左右前輪の位置の制御を行う。これによって、左右後輪をステアリングさせることなく、芝刈機を旋回させることができると述べられている。
なお、本発明に関連する先行技術文献として、特許文献1、2の他に特許文献3、4がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2006−507789号公報
【特許文献2】米国特許第7017327明細書
【特許文献3】特開2005−184911号公報
【特許文献4】特許第3853907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1,2に記載された乗用型芝刈車両の場合、左右後輪をモータにより独立駆動するようにしているが、傾斜面を横切って等高線上に走行する等、傾斜面上を走行する場合に、各車輪に、重力の作用に基づいて、走行方向と異なる方向の力が作用することが考えられる。この場合、操向輪が運転者の意図する方向に向かなくなったり、車輪が横滑りする可能性があり、車両が運転者の意図する方向である、直進方向や旋回方向に走行することが困難になる可能性がある。特に、操向輪が、鉛直軸周りに自由回転するキャスタ輪である場合には、車両を意図する方向に走行させることがより困難になる可能性がある。
【0009】
これに対して、特許文献3には、車輪を個々の電動モータで独立に駆動する車輪独立駆動電気自動車が記載されている。この電気自動車では、アクセルペダル踏込量および車速に基づいて各電動モータの出力目標値を算出し、操舵角及び車速から目標ヨーレートを求め、電気自動車の重心を通る鉛直軸周りの旋回角速度であるヨーレート検出値である検出ヨーレートと目標ヨーレートとの偏差が解消されるよう、各電動モータの出力目標値を補正して出力している。
【0010】
また、特許文献4には、電気自動車の左右駆動輪を駆動するための複数の電動モータそれぞれに対し、出力に関する指令を与える駆動制御装置が記載されている。この駆動制御装置では、加速または減速要求に基づき出力指令を仮確定する手段と、車体のヨーレートの検出値を含む複数の状態量から、電動モータに与える前の指令を補正する手段とを備え、この手段は、車両のヨー運動方向を示す指標の正負に応じて、横加速度とヨーレート検出値等から正または負のモーメントが生じるように、トルク指令を補正している。また、フィードバックされる複数の状態量と、舵角の検出値を用いて求められる目標状態量との差分に基づいて車両のモーメントを決定し、決定された車両のモーメントに応じて左右駆動輪にトルクを分配している。
【0011】
このような特許文献3,4に記載された構成の場合、乗用型芝刈車両ではない電気自動車であるが、車両が傾斜面上を走行する場合に運転者が意図する方向の直進方向や旋回方向への走行を行える可能性はある。ただし、これらの構成では、左右の駆動輪で独立した補正値を設定するのが困難であり、ヨーレートの検出値と目標値との偏差に基づいて、電動モータの回転速度指令を補正するという制御作用時の車両の挙動特性、すなわち車速等を自由に設定することが困難である。例えば、特許文献3の構成では、左右車輪駆動用の各電動モータで同じ出力目標を算出し、ヨーレートに関する偏差に基づいて出力目標を補正しているが、具体的な補正方法は記載されていない。また、特許文献4の構成では、同様に各電動モータで同じ出力指令を仮確定し、ヨーレート検出値等からトルク指令を補正しているが、ヨーレート目標値を求めるものではなく、ヨーレートの検出値と目標値との偏差に基づく制御作用時の車両の挙動特性を自由に設定することは困難である。
また、このような不都合は、上記のような芝刈り機を有する乗用型芝刈車両の他、他の作業機を有する乗用型対地作業車両の場合にも同様に生じる可能性がある。
【0012】
本発明の目的は、乗用型対地作業車両において、左右車輪をモータにより独立に走行駆動する構成において、車両が傾斜面上を走行する場合でも、運転者が意図する方向への走行を可能とし、さらに、ヨーレートの検出値と目標値との偏差に基づく制御作用時の車両の挙動特性を自由に設定しやすくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る乗用型対地作業車両は、2個の走行用モータによりそれぞれ独立に走行駆動される主駆動輪である左右車輪と、左右車輪に対し前後方向に離れて設けられた操向輪と、対地作業を行うために駆動される作業機と、を備える乗用型対地作業車両であって、運転者により入力される加速指示及び旋回指示に基づいて2個の走行用モータそれぞれの2の目標回転速度指令値を算出する指令値算出手段と、車両のヨーレートを検出するヨーレート検出手段と、加速指示及び旋回指示に基づいて目標ヨーレートを算出する目標ヨーレート算出手段と、目標ヨーレートとヨーレート検出値との偏差に基づいて、2個の走行用モータにそれぞれ関係する2の補正係数を取得する補正係数取得手段と、2の目標回転速度指令値のそれぞれを2の補正係数により補正し、補正後の2の目標回転速度指令値に基づいて、2個の走行用モータの駆動を制御する制御手段とを備えることを特徴とする乗用型対地作業車両である。なお、本発明に係る上記構成において、走行用モータは、電動モータの他、油圧モータ等であってもよい。
【0014】
本発明に係る乗用型対地作業車両によれば、左右車輪をモータにより独立に走行駆動できる構成において、車両が傾斜面上を走行する場合でも、運転者が意図する方向への走行を可能とし、さらに、ヨーレートの検出値と目標値との偏差に基づく制御作用時の車両の挙動特性を自由に設定しやすくできる。
【0015】
また、本発明に係る乗用型対地作業車両において、好ましくは、2個の走行用モータは、電動モータであり、さらに、2個の走行用モータの回転速度を検出する2の回転速度検出手段を備え、制御手段は、補正係数により補正した後の2の目標回転速度指令値と、2個のモータの回転速度検出値との偏差に基づいてそれぞれの走行用モータのトルク指令値を算出し、それぞれのトルク指令値により2個の走行用モータの駆動を制御する。
【0016】
上記構成によれば、より精度よく2個の走行用モータの駆動を制御できる。
【0017】
また、本発明に係る乗用型対地作業車両において、好ましくは、2個の走行用モータは、油圧モータであり、さらに、2個の走行用モータに対し少なくとも2の吐出口からそれぞれ独立して圧油を吐出可能で、2の吐出口から吐出される圧油の吐出量を変更可能な1または2のアクチュエータと、2個の走行用モータの回転速度を検出する2の回転速度検出手段とを備え、制御手段は、補正係数により補正した後の2の目標回転速度指令値と、2個の走行用モータの回転速度検出値との偏差に基づいて、2の吐出口から吐出されるアクチュエータの吐出量を変化させることにより2個の走行用モータの駆動を制御する。
【0018】
また、本発明に係る乗用型対地作業車両において、好ましくは、アクチュエータを駆動するアクチュエータ動力源を備え、1または2のアクチュエータは、2の制御軸と、2の制御軸に作動的に連結され、2の制御軸の回転角度を変化させる2個の制御軸モータとを含み、2の制御軸の回転角度が変化することにより、2の制御軸のそれぞれに対応する2の吐出口から吐出される圧油の吐出量が変化するアクチュエータであり、制御手段は、補正係数により補正した後の2の目標回転速度指令値と、2個の走行用モータの回転速度検出値との偏差に基づいて2の制御軸の回転角度指令値を算出し、それぞれの回転角度指令値により2個の制御軸モータの駆動を制御することにより、2個の走行用モータの駆動を制御する。
【0019】
上記構成によれば、より精度よく2個の走行用モータの駆動を制御できる。
【0020】
また、本発明に係る乗用型対地作業車両において、好ましくは、補正係数取得手段は、目標ヨーレートとヨーレート検出値との偏差に基づいてPI演算を含む演算を行う演算部と、演算部の出力から2の目標回転速度指令値に対応する2の補正係数を取得する主補正係数取得部とを含み、主補正係数取得部は、演算部の出力が増加する場合に2の補正係数のうち、一方の補正係数を一定値とするとともに、他方の補正係数を減少または増加させ、演算部の出力が減少する場合に2の補正係数のうち、他方の補正係数を一定値とするとともに、一方の補正係数を減少または増加させる。
【0021】
上記構成によれば、ヨーレート検出値に基づく制御作用時の車両の挙動特性の設定を行いやすくなる。
【0022】
また、本発明に係る乗用型対地作業車両において、好ましくは、補正係数取得手段は、目標ヨーレートとヨーレート検出値との偏差に基づいてPI演算を含む演算を行う演算部と、演算部の出力から2の目標回転速度指令値に対応する2の補正係数を取得する主補正係数取得部とを含み、主補正係数取得部は、演算部の出力が増加する場合に2の補正係数のうち、一方の補正係数を正の値の一定値とするとともに、他方の補正係数を減少させ、演算部の出力が減少する場合に2の補正係数のうち、他方の補正係数を正の値の一定値とするとともに、一方の補正係数を減少させ、さらに、演算部の出力の絶対値が所定値以上となる場合に2個の走行用モータのうち、1の走行用モータにおいて進行方向に対応する正回転に対して逆転方向の駆動トルクを発生させるように、1の走行用モータに対応する補正係数を正から負に変化させる。
【0023】
上記構成によれば、演算部の出力の絶対値が所定値以上となる場合に2個の走行用モータの片側の走行用モータに進行方向に対応する正回転に対して逆回転させる方向のトルクが付加されるので、目標ヨーレートとヨーレート検出値との偏差が大きい場合でも、より迅速に偏差を解消して、安定した走行を実現しやすくなる。
【0024】
また、本発明に係る乗用型対地作業車両において、好ましくは、加速指示を入力可能とする加速操作子であるペダルと、旋回指示を入力可能とする旋回操作子であるステアリングホイールとを備える。
【0025】
また、本発明に係る乗用型対地作業車両において、好ましくは、加速指示及び旋回指示として左右車輪に対応する2個の走行用モータの回転速度を入力可能とする2レバー式の操作子を備え、2レバー式の操作子は、互いに協働して、加速指示と旋回指示とを入力可能とする。
【0026】
また、本発明に係る乗用型対地作業車両において、好ましくは、操向輪は、キャスタ輪、または操作子に作動的に連結され、操作子の操作に連動して操舵可能な機械的操舵式操向輪である。
【0027】
また、本発明に係る乗用型対地作業車両において、好ましくは、旋回指示を入力可能とする操作子に設けた軸部を回転可能に支持する、車体に固定される固定部と、軸部に固定され、軸部の回転に伴って揺動する揺動アームと、軸部の揺動アームと固定部との間に遊嵌した遊嵌アームと、揺動アームと遊嵌アームとの間に設けて、揺動アームの中立位置からの揺動量が予め設定した所定量以上である場合にのみ揺動アームを遊嵌アームに突き当て、遊嵌アームを揺動アームと同方向に一体に揺動させる突き当て機構と、揺動アームと遊嵌アームとの間に設けて、揺動アームの遊嵌アームに対する揺動量の増大にしたがって大きくなる付勢力を、揺動アームに付勢する第1バネと、遊嵌アームと固定部との間に設けて、遊嵌アームの固定部に対する揺動量の増大にしたがって大きくなる第2付勢力を、遊嵌アームに付勢する第2バネとを備える。
【0028】
上記構成によれば、複雑な制御を用いることなく、旋回を指示する操作子を操作するのに必要な操作力を、中立位置からの操作量の増大にしたがって大きくするとともに、ある操作量を境に、操作量の増大に対する操作力の増大の度合を増大させることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る乗用型対地作業車両によれば、左右車輪をモータにより独立に走行駆動できる構成において、車両が傾斜面上を走行する場合でも、運転者が意図する方向への走行を可能とし、さらに、ヨーレートの検出値と目標値との偏差に基づく制御作用時の車両の挙動特性を自由に設定しやすくできる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る第1の実施の形態の乗用型対地作業車両である、芝刈車両の構成を上方から見た略図である。
【図2】第1及び第2の実施の形態の芝刈車両の構成を示す図である。
【図3】第1の実施形態の芝刈車両の制御システムを構成するコントローラの機能構成を示すブロック図である。
【図4】第1の実施の形態の芝刈車両において、直進走行の場合の様子を示す略図である。
【図5】第1の実施の形態の芝刈車両において、旋回走行の場合の様子を示す略図である。
【図6】図3に示すステアリング特性取得部において使用する、操舵角とステアリング係数との関係を表すマップを示す図である。
【図7】図3に示す主補正係数取得部において使用する、PID出力とヨー制御係数との関係を表すマップを示す図である。
【図8】図6において、PID出力が変化する場合のヨー制御係数の変化を説明するための図である。
【図9】図7に示すマップの別例の第1例を示す図である。
【図10】図7に示すマップの別例の第2例を示す図である。
【図11】本発明に係る第2の実施の形態の乗用型対地作業車両である、芝刈車両の構成を上方から見た略図である。
【図12】第2の実施の形態の芝刈車両におけるコントローラの機能構成を示すブロック図である。
【図13】本発明に係る第3の実施の形態の乗用型対地作業車両である、芝刈車両の構成を上方から見た略図である。
【図14】第3及び第4の実施の形態の芝刈車両の構成を示す図である。
【図15】第3の実施の形態の芝刈車両のコントローラの機能構成を示すブロック図である。
【図16】本発明に係る第4の実施の形態の乗用型対地作業車両である、芝刈車両の構成を上方から見た略図である。
【図17】図16の車両を水平方向に見た略図である。
【図18】第4の実施の形態の芝刈車両におけるコントローラの機能構成を示すブロック図である。
【図19】本発明に係る第5の実施の形態の乗用型対地作業車両である、芝刈車両を示す斜視図である。
【図20】第5の実施の形態の芝刈車両に設けられたステアリング操作子の回転支持構造を示す斜視図である。
【図21】図20のA−A部を切断し、上バネと下バネとを取り外した様子を示す拡大図である。
【図22】ステアリング操作子を中立位置から片側に回転させる様子を、時系列的に示す、図21の一部を切断して上方から下方に見た図である。
【図23】第5の実施の形態において、ステアリング操作子を回転させる場合にステアリング操作力の増大度合が所定の操舵角閾値を境に変化することを示す、ステアリング操作力と操舵角との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
[第1の発明の実施の形態]
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。なお、以下では、乗用型対地作業車両を、作業機として芝刈り機を備える芝刈車両の場合を説明するが、本発明に係る乗用型対地作業車両は、これに限定するものではなく、例えば地面に対する作業、すなわち対地作業を行う車両として、耕うん機を有する車両、苗植え作業機を有する車両、地ならし作業機を有する車両、穴掘り作業機を有する車両等であってもよい。
【0032】
図1から図10は、本発明の第1の実施の形態を示している。なお、図2では、かっこ書きで、後述する第2の実施の形態の構成要素であるレバーセンサ98,100も示している。図1に示すように、乗用型対地作業車両である芝刈車両10は、芝刈に適した自走型のオフロード用車両であり、車体であるメインフレーム12の前後方向(図1の左右方向)に離れた位置に、2個の左右キャスタ輪14,16と、2個の左右車輪18,20とを支持して設けている。左右のキャスタ輪14,16は、前側車輪であり、操向輪である。2個の左右車輪18,20は、後側車輪であり、主駆動輪である。左右車輪18,20のそれぞれは、左右車輪18,20のそれぞれに図示しない減速機構を含む動力伝達部を介して接続するように設けた2個の左右の走行用モータである左右車輪用電動モータ22,24により、独立に走行駆動される。左右車輪用電動モータ22,24により、左右車輪18,20の回転速度を一致させることで、車両の直進走行を可能とし、左右車輪18,20の回転速度差を発生させることで、車両の旋回走行を可能とする。このように、本実施の形態では、芝刈車両10の駆動源として車輪用電動モータ22,24を用いる。また、動力伝達部に設ける減速機構は、例えば1段または複数段の減速歯車装置を用いる。図1では、左右車輪18,20にそれぞれ設けた動力発生ユニット26,28を構成するハウジング30内に、車輪用電動モータ22,24と、図示しない減速機構とをそれぞれ設けている。各ハウジング30は、メインフレーム12に支持している。なお、左右車輪18,20に、減速機構を介さず車輪用電動モータ22,24の動力を減速することなく伝達する構成を採用してもよい。また、キャスタ輪14,16は、鉛直方向(図1の表裏方向)の軸を中心とする360度以上の自由操向を可能としている。
【0033】
また、芝刈車両10は、メインフレーム12の前後方向中間部で下側に作業機である、芝刈り機(モア)32を支持している。後述する実施の形態で用いる図17を参照して示すように、芝刈り機32は、モアデッキ34の内側に芝刈り回転工具である芝刈り用ブレード36を設けている。芝刈り用ブレード36は、鉛直方向(図17の上下方向)に向いた回転軸を有し、回転軸の周りに複数のブレードが配置され、ブレードを回転することで芝等を破断して刈り取り可能とする。
【0034】
また、図17を参照して示すように、芝刈車両10は、エンジン38及び発電機40及びバッテリ42(図2)を備える、いわゆるハイブリッド式としている。そして、エンジン38の動力を用いて発電機40を発電させ、発電させた電力を電源ユニットであり、二次電池であるバッテリ42に供給可能としている。このため、エンジン38及び発電機40は、バッテリ42への電力供給元として用いる。ただし、芝刈車両10は、エンジン38及び発電機40を備えず、バッテリ42は、外部から充電電力の供給を受けるようにすることもできる。なお、電源ユニットとして、外部から充電電力の供給を受けるバッテリとともに、燃料電池、太陽電池等のように自己発電機能を有するものを使用することもできる。また、バッテリ42の代わりにキャパシタ等の他の蓄電部を用いることもできる。
【0035】
図17を参照して示すように、エンジン38の出力軸の動力は、プーリベルト機構、自在継手機構を含む動力伝達機構44を介して、芝刈り用ブレード36の回転軸に伝達可能としている。また、この動力伝達機構44に図示しない電磁クラッチ機構を設け、座席46近くに設けられる図示しないモアスイッチのオンまたはオフにより、電磁クラッチの断接を変えることもできる。この場合、モアスイッチのオンオフを表す信号を、芝刈車両10が備えるコントローラ48(図1)へ伝送し、コントローラ48は、この信号に基づいて電磁クラッチの断接を制御する。また、動力伝達機構44に、電磁クラッチ機構の代わりに、手動で係脱可能なクラッチ機構を設けることもできる。
【0036】
また、芝刈車両10で、エンジン38及び発電機40を備えず、バッテリ42は、外部から充電電力の供給を受けるように構成する等の場合には、芝刈り用ブレード36(図17参照)の回転軸に図示しないモア用電動モータを、動力の伝達可能に作動的に連結することもできる。この場合、座席46(図17参照)近くに設けられるモアスイッチのオンまたはオフを表す信号がコントローラ48(図1)へ入力されると、コントローラ48は、この信号に基づいてモア用電動モータの作動状態を制御する。また、モア用電動モータの代わりにモア用油圧モータを使用することもできる。このように、芝刈り機32は、対地作業を行うために駆動される。
【0037】
また、芝刈車両10に図示しない集草タンクを搭載するとともに、集草タンクとモアデッキ34(図17参照)の端部とをダクトにより接続し、ダクトの内部に集草用ファンを設けることもできる。この構成によれば、芝刈り用ブレード36で刈り取った草を集草用ファンの駆動により、ダクトを通じて集草タンクに集めることができる。
【0038】
図1に戻って、車輪用電動モータ22,24は、電力が供給された場合に、車輪18,20に対し回転駆動力を出力する機能を有するが、車輪に対し制動がかけられるときに回生エネルギを回収する発電機としての機能を持たせてもよい。車輪用電動モータ22,24は、例えば三相の同期電動モータまたは誘導電動モータ等とする。
【0039】
なお、芝刈り機である芝刈用回転工具として、芝刈り用ブレード型以外に、地表に平行に回転軸を有するシリンダに例えばらせん状の刃を配置し、芝等を挟み取って刈り取る芝刈用リール型を用いることもできる。
【0040】
なお、キャスタ輪14,16は、2個以外、例えば、1個のみを芝刈車両10に設けることもでき、3個以上の複数個を設けることもできる。また、本実施の形態では、主駆動輪である左右車輪18,20を後輪として、キャスタ輪14,16を前輪としているが、主駆動輪である左右車輪18,20を前輪として、キャスタ輪14,16を後輪とすることもできる。
【0041】
左右キャスタ輪14,16は、メインフレーム12の前端部(図1の左端部)の底面側の前後方向(図1の左右方向)同位置に作動可能に取り付けている。また、メインフレーム12の前後方向中間部で、左右方向(図1の上下方向)中間部の上面側に座席46(図17参照)を設けている。なお、本明細書で、前側は、図1の左側となる車両の前側を言い、後側は、図1の右側となる車両の後側を言う。また、メインフレーム12の前後方向に関して同位置である、座席46と後端部との間の位置の底面側に左右車輪18,20を回転可能に支持している。また、芝刈り機32は、メインフレーム12の底面側で、左右キャスタ輪14,16と左右車輪18,20との間に配置している。メインフレーム12は、鋼材等の金属材料を使用し、梁構造等に成形されたものを用いることができる。
【0042】
また、コントローラ48は、車輪用電動モータ22,24の動作を総合的に制御する。コントローラ48は電気回路であるので、複数個所に分散配置することもできる。図1では、コントローラ48を1個として示している。例えばメインフレーム12の上面側で座席46(図17参照)下側の位置にコントローラ48を集中配置することもできる。コントローラ48を分散配置する場合、コントローラ48は、信号ケーブル等で相互に接続される。コントローラ48は、電動モータ22,24を駆動するインバータ回路等のドライバー回路と、CPU、メモリである記憶部等の制御回路部とを含む。
【0043】
メインフレーム12の上面側には、座席46の他に、ステアリング操作子50と、前進側アクセルペダル52と、後進側アクセルペダル54と、図示しないブレーキペダルとを設けている。ステアリング操作子50は、ステアリング角度である操舵角度を旋回指示入力として受けるもので、操舵角センサ56により操舵角度を検出し、検出した信号をコントローラ48に出力する。なお、旋回操作子として、モノレバー式の構造を使用することもできる。前進側アクセルペダル52は、前進方向の加速の指示を行うための加速操作子であり、後進側アクセルペダル54は、後進方向の加速の指示を行うための加速操作子である。このように、各アクセルペダル52,54は、加速指示を入力可能とする。
【0044】
また、ステアリング操作子50は、旋回の指示を行うための旋回操作子であり、例えば、円形、欠円形等のステアリングホイールであり、回転または揺動によって左右車輪18,20の旋回方向を調整する機能を有する。図示の例のように、ステアリング操作子50がステアリングホイールである場合、その回転軸を中心として時計方向(右回転方向)あるいは反時計方向(左回転方向)に任意の角度で回転できる。また、ステアリング操作子50の操作量、すなわち操舵角は、運転者により入力される旋回指示として、操舵角センサ56により検出され、操舵角センサ56からの信号が、図1,2に示すコントローラ48に伝送され、車輪用電動モータ22,24の作動が制御される。このようにステアリング操作子50は、旋回指示を入力可能とする。操舵角センサ56には、ポテンショメータや、エンコーダ等の電気的センサ、光学的センサ等を用いることができる。なお、以下の説明において、「操舵角」は、その値の正負により、操舵方向を表している。
【0045】
なお、アクセルペダル52,54は、前進側と後退側とで別々に設けているが、1つのアクセルペダルで前進側と後退側とを兼ねることもできる。例えば、アクセルペダルを固定の水平軸に揺動支持して、前側及び後側を踏み込み可能な揺動式とし、前部を踏み込むことで前進を指示し、後部を踏み込むことで後進を指示する構成とすることもできる。各アクセルペダル52,54は、任意の踏込量で踏み込むことができる。各アクセルペダル52,54の踏込量は、運転者により入力される加速指示として、アクセル踏み込みセンサ58により検出され、アクセル踏み込みセンサ58からの信号が、図1、2に示すコントローラ48に伝送され、左右車輪18,20に接続される車輪用電動モータ22,24の作動が制御される。各アクセル踏み込みセンサ58には、ポテンショメータや、エンコーダ等の電気的センサを用いることができる。なお、前進用と後進用との機能を有するアクセルペダルを1つのアクセルペダルで構成するとともに、前進及び後進のいずれかを選択するためのスイッチまたはボタンを設け、このスイッチまたはボタンの操作状態に応じて、1つのアクセルペダルを前進用として機能させるか、または後進用として機能させるかを切り換え可能とすることもできる。
【0046】
このような芝刈車両10は、アクセルペダル52,54を踏み込むことで、前進側または後進側に車両を加速させることができる。また、アクセルペダル52,54の操作時または非操作時に、ステアリング操作子50を操舵することで車両をステアリング操作子50の操舵方向に応じて旋回させることができる。たとえば、ステアリング操作子50を直進状態を指示する中立位置として前進側アクセルペダル52を踏み込むと、車輪18,20を前進側に回転させ、踏み込み量が大きいほど車輪18,20の回転数が高くなり、前進速度が高くなる。これに代えて後進側アクセルペダル54を踏み込むと、車輪18,20を後進側に回転させ、踏み込み量が大きいほど車輪18,20の回転数が高くなり、後進速度が高くなる。これによって、芝刈車両10を任意の速度で前進または後進させることができる。
【0047】
また、前進側アクセルペダル52を適当な踏込量の状態にしたまま、ステアリング操作子50を時計方向、すなわち右側に回転すると、左車輪18の回転速度が右車輪20の回転速度よりも高くなり、芝刈車両10を走行させながら右旋回させることができる。ステアリング操作子50の中立位置からの回転角度を大きくすると左車輪18の回転速度と右車輪20の回転速度との差が大きくなり、逆にステアリング操作子50の中立位置からの回転角度を少なくすることで左右の車輪18,20の回転速度の差を小さくできる。これにより旋回半径を調整できる。ステアリング操作子50を反時計方向、すなわち左側に回転すると、右車輪20の回転速度が左車輪18の回転速度よりも高くなり、芝刈車両10を走行させながら左旋回させることができる。
【0048】
また、前進側アクセルペダル52の踏込量を変化させることで、走行速度を変更しながら旋回させることもできる。後進側アクセルペダル54を踏み込んでステアリング操作子50を操作することで、後進時における旋回を行うことができる。
【0049】
また、本実施の形態の場合、芝刈車両10の傾斜面上での走行にかかわらず、車両を運転者の意図する方向に走行させることを可能とする。このため、芝刈車両10に、車両の重心を通る鉛直軸周りの旋回角速度であるヨーレートを検出するヨーレート検出手段である、ヨーレートセンサ60を設けている。ヨーレートセンサ60の検出信号は、コントローラ48へ伝送される。また、車輪用電動モータ22,24からは、コントローラ48に、回転速度、回転方向、回転角、電流値等を表す信号を各種のセンサを用いてフィードバックする。例えば、各電動モータ22,24に回転速度検出手段である回転速度センサ62を設けており、回転速度センサ62の検出信号を、コントローラ48を構成する後述するモータ制御手段64(図2)に入力している。なお、各電動モータ22,24に回転速度センサ62の代わりに回転角度センサを設け、回転角度センサの検出信号をコントローラ48を構成する回転速度算出手段に入力し、回転角度検出値から各電動モータ22,24の回転速度を算出することもできる。この場合、回転角度センサと回転速度算出手段とにより、回転速度検出手段を構成する。
【0050】
また、コントローラ48は、このような各種のセンサの検出信号を用いて、左右車輪用電動モータ22,24の出力トルクを、独立して制御する。このために、左右車輪18,20を駆動する左右車輪用電動モータ22,24のトルク指令値をそれぞれ算出し、それぞれのトルク指令値に対応する出力を発生させ、この出力に基づいてインバータ回路等のドライバー回路に対する駆動信号を発生させる。これにより、電源ユニットの電圧を用いて、これらのトルク指令値に対応する電圧を、対応する車輪用電動モータ22,24に供給し、車輪用電動モータ22,24の出力トルクを制御できる。次に、図2、図3を用いて、コントローラ48の構成及び機能を詳しく説明する。なお、図2に示すように、コントローラ48は、記憶部66を有し、記憶部66に芝刈車両制御プログラムが記憶されている。
【0051】
まず、図2、図3の説明に先立って、芝刈車両10の直進走行と旋回走行とについて、図4、図5を用いて説明する。以下では、図1の符号を用いて説明する。これらの図においては、芝刈車両10におけるキャスタ輪14,16、車輪18,20の平面図における状態が模式的に示されている。ここで、左右車輪18,20は、独立に走行駆動される。
【0052】
図4は直線走行の場合で、ステアリング操作子50を中立状態に維持して前進側アクセルペダル52を踏み込んだ場合で、キャスタ輪14,16、車輪18,20の全てが、同一方向に対地速度で同一速度で走行している。図5は、旋回走行の場合で、(a)は、旋回中心位置O1が、車輪18,20の車軸方向の延長上で車輪18,20の間の外側にある場合を、(b)は、旋回中心位置O2が、車輪18,20の一方の車輪18の接地位置にある、信地旋回と呼ばれる場合を、それぞれ示している。(c)は、旋回中心位置O3が車輪18,20の車軸上で、ちょうど両車輪18,20の間の中央位置にあり、さらに、車輪18,20の速度の絶対値が同じであるが、一方側車輪18の速度方向と他方側車輪20の速度方向とが互いに逆方向である、超信地旋回あるいはスピン旋回あるいはゼロターンと呼ばれる場合を示している。この場合は、旋回中心位置O3を中心として、芝刈車両10が旋回する。
【0053】
なお、図5の(a)から(c)は旋回走行の1例をそれぞれ示したもので、これらの各例の場合の間の旋回が行われる場合もある。例えば、旋回中心位置が、左右車輪18,20の内側にあるが、左右車輪18,20の間の中央位置でなくいずれかの車輪側に偏っている場合等がある。これらの旋回走行は、左右車輪18,20のそれぞれに対応する車輪用電動モータ22,24の回転方向及び回転速度を調節することにより実現される。
【0054】
次に、図2、図3を用いてコントローラ48の構成とそれらの機能とを説明する。なお、図3の説明において、図1と同一の要素には同一の符号を付して説明する。図2に示すように、コントローラ48は、指令値算出手段68と、目標ヨーレート算出手段70と、補正係数取得手段72と、制御手段74とを含む。指令値算出手段68は、アクセル踏み込みセンサ58及び操舵角センサ56を用いて、運転者により入力される加速指示及び旋回指示、すなわち、アクセル踏み込み量及び操舵角に基づいて2個の車輪用電動モータ22,24それぞれの2の目標回転速度指令値を算出する。図3に示すように、指令値算出手段68は、アクセル踏み込み量に対応して、2個の車輪用電動モータ22,24で共通の、仮目標回転速度指令値Vr*を求める。このために、例えば、アクセル踏み込み量と仮目標回転速度指令値Vr*との関係を表すマップのデータを記憶部66(図2)に記憶させておき、検出したアクセル踏み込み量からマップのデータを参照することにより仮目標回転速度指令値Vr*を取得する。また、この場合に、単にアクセル踏み込み量と仮目標回転速度指令値Vr*との関係を表す関係式と、検出したアクセル踏み込み量とを用いて仮目標回転速度指令値Vr*を算出することもできる。
【0055】
指令値算出手段68は、ステアリング特性取得部76を有し、ステアリング特性取得部76は、ステアリング操作子50の操舵角に対応して、左右の車輪用電動モータ22,24それぞれに対応するステアリング係数Vkl,Vkrを求める。ステアリング係数Vkl,Vkrは、各電動モータ22,24における最大回転数V1に対する、操舵角に対応する目標回転数V2の割合(=V2/V1)であり、これは最大回転速度に対する目標回転速度の割合と言い換えることができる。例えば、記憶部66(図2)にステアリング特性として、操舵角とステアリング係数との関係を表すマップのデータを記憶させておく。図6に、このマップの1例を示している。
【0056】
図6では、横軸により操舵角を表しており、右に向かうほどステアリング操作子50を右側、すなわち時計方向に大きく回転させることを表しており、左に向かうほどステアリング操作子50を左側、すなわち反時計方向に大きく回転させることを表している。図6で示す操舵角は、右側に向かう場合を正とし、左側に向かう場合を負としている。図6の縦軸は、ステアリング係数Vkl,Vkrを表している。図6で実線Vklは、左車輪用電動モータ22の仮目標回転速度指令値Vr*に乗じる左車輪用ステアリング係数と操舵角との関係を表している。図6で破線Vkrは、右車輪用電動モータ24の仮目標回転速度指令値Vr*に乗じる右車輪用ステアリング係数と操舵角との関係を表している。
【0057】
図6の例では、ステアリング操作子50を中立位置から右に回転させると、左車輪用ステアリング係数Vklは一定に維持されるが、右車輪用ステアリング係数Vkrは直線的に徐々に低下する。また、操舵角がある閾値(図6では80度)よりも大きくなると、右車輪用ステアリング係数Vkrは負の値となりさらに小さくなる。一方、ステアリング操作子50を中立位置から左に回転させると、右車輪用ステアリング係数Vkrは一定に維持されるが、左車輪用ステアリング係数Vklは直線的に徐々に低下する。また、操舵角がある閾値(図6では−80度)よりも小さくなると、左車輪用ステアリング係数Vklは負の値となりさらに小さくなる。なお、図6の例では、各ステアリング係数Vkr、Vklが低下する場合の、操舵角に対する傾きが、各ステアリング係数Vkr、Vklが正の場合と負の場合とで異なっているが、正の場合と負の場合とで同じ傾きとすることもできる。この場合には、各ステアリング係数Vkr、Vklにおいて、操舵角の絶対値が大きくなることに伴ってステアリング特性Vkr、Vklが低下することを表す直線が単一の直線状となる。
【0058】
図2、図3に戻って指令値算出手段68は、このようにして取得されたステアリング特性Vkr、Vklを、左車輪用電動モータ22及び右車輪用電動モータ24の仮目標回転速度指令値Vr*にそれぞれ乗じて、左車輪18用の目標回転速度指令値Vrl*と右車輪20用の目標回転速度指令値Vrr*とを、それぞれ算出する。例えば、ステアリング操作子50が中立位置にある、図6の操舵角0の場合には、各ステアリング係数Vkr、Vklとして1が設定されるため、左車輪18用の目標回転速度指令値Vrl*と右車輪20用の目標回転速度指令値Vrr*とは、互いに同じ仮目標回転速度指令値Vr*のままとなる。これは、図4の直進走行に対応する。
【0059】
これに対して、図6で操舵角が小さくなる、すなわちステアリング操作子50を左に回転させると、左車輪用ステアリング係数Vklのみが1より小さくなるため、左車輪用電動モータ22の目標回転速度指令値Vrl*だけが、仮目標回転速度指令値Vr*よりも小さくなり、これは図5(a)の車両を左に旋回させることに対応する。ステアリング操作子50の左への回転角を大きくする、すなわち操舵角の絶対値を大きくするほど、左車輪用ステアリング係数Vklは大きく低下するため、車両が左に旋回する場合の旋回半径が小さくなる傾向となる。また、左車輪用ステアリング係数Vklがさらに低下し、0となると、左車輪用電動モータ22で発生する駆動トルクは0となる。この場合に、もし実際に左車輪用電動モータ22の回転数が0になると、図5(b)の信地旋回の場合に対応する。また、前進時に、左車輪用ステアリング係数Vklがさらに低下し、負の値となると、左車輪用電動モータ22の目標回転速度指令値Vrl*も負の値となり、これは左車輪用電動モータ22において逆転方向のトルクを発生させることに対応する。この場合に、左車輪用ステアリング係数Vklが−1となる場合には、もし実際に右車輪用電動モータ24の回転速度と左車輪用電動モータ22の回転速度とが、方向が逆で大きさが同じになると、図5(c)の超信地旋回の場合に対応する。なお、上記では、左に旋回させる場合を説明したが、右に旋回させる場合も左右が逆になるだけで同様である。
【0060】
一方、目標ヨーレート算出手段70は、算出された目標回転速度指令値Vrl*、Vrr*から、目標ヨーレートγ*を算出する。すなわち、目標ヨーレート算出手段70は、アクセル踏み込みセンサ58及び操舵角センサ56により取得されたアクセル踏み込み量及び操舵角に基づいて目標ヨーレートγ*を算出する。すなわち、左右車輪18,20用の目標回転速度指令値Vrl*、Vrr*と、減速機構による減速比と、左右車輪18,20の半径とから左右車輪18,20の対地平均速度である車両の平均速度と、左右車輪18,20の対地速度差とが求められる。また、車両の平均速度と左右車輪18,20の対地速度差と、左右車輪18,20の車軸と左右キャスタ輪14,16の接地位置との間の前後方向長さ等の車両緒元とから目標ヨーレートγ*が算出される。なお、本実施の形態では、ヨーレートは、車両を上方から見た場合に車両の重心を通る鉛直軸周りに、反時計方向に回転する方向のヨーレートを正として、逆方向のヨーレートを負とする。
【0061】
また、補正係数取得手段72は、目標ヨーレートγ*と、ヨーレートセンサ60により検出されたヨーレート検出値γとの偏差に基づいて、2個の車輪用電動モータ22,24にそれぞれ関係する2の補正係数を取得する。このために、補正係数取得手段72は、PI演算を含むPID演算を行うPID演算部78と、主補正係数取得部80とを含む。PID演算部78は、目標ヨーレートγ*と、ヨーレートセンサ60で検出されたヨーレート検出値γとの偏差を入力され、PID演算を行い、演算で得られたPID出力を主補正係数取得部80に入力する。主補正係数取得部80は、PID出力から左右車輪18,20用の2の目標回転速度指令値Vrl*、Vrr*に対応する、2の左右車輪18,20用の補正係数であるヨー制御係数Kl,Krを取得し、出力する。ヨー制御係数Kl,Krは、各電動モータ22,24における最大回転数V1´に対する、PID出力に対応する目標回転数V2´の割合(=V2´/V1´)であり、これは最大回転速度に対する目標回転速度の割合と言い換えることができる。このために、例えば、記憶部66(図2)にヨー制御特性として、PID出力とヨー制御係数Kl,Krとの関係を表すマップのデータを記憶させておく。図7に、このマップの1例を示している。
【0062】
図7では、横軸によりPID出力を表しており、右に向かうほどPID出力が大きくなることを表しており、左に向かうほどPID出力が小さくなることを表している。図7の縦軸は、ヨー制御係数Kl,Krを表している。図6で実線Klは、左車輪用電動モータ22の目標回転速度指令値Vrl*に乗じる左車輪用ヨー制御係数とPID出力との関係を表している。図7で破線Krは、右車輪用電動モータ24の目標回転速度指令値Vrr*に乗じる右車輪用ヨー制御係数とPID出力との関係を表している。
【0063】
図7の例では、PID出力が0よりも大きくなると、右車輪用ヨー制御係数Krは正の値で一定値に維持されるが、左車輪用ヨー制御係数Klは直線的に徐々に低下する。また、PID出力がある閾値(図6では0.5)よりも大きくなると、左車輪用ヨー制御係数Klは負の値となりさらに小さくなる。一方、PID出力が0よりも小さくなると、左車輪用ヨー制御係数Klは正の値で一定値に維持されるが、右車輪用ヨー制御係数Krは直線的に徐々に低下する。また、PID出力がある閾値(図6では−0.5度)よりも小さくなると、右車輪用ヨー制御係数Krは負の値となりさらに小さくなる。すなわち、主補正係数取得部80は、PID演算部78のPID出力が増加する場合に2のヨー制御係数Kl,Krのうち、一方のヨー制御係数を正の一定値とするとともに、他方のヨー制御係数を減少させ、PID出力が減少する場合に2のヨー制御係数Kl,Krのうち、他方のヨー制御係数を正の一定値とするとともに、一方のヨー制御係数を減少させる。
【0064】
なお、図7の例では、ヨー制御係数が低下する場合のPID出力に対する傾きが、ヨー制御係数Kl、Krの正負にかかわらず一定となっているが、各ヨー制御係数Kl、Krが低下する場合の、PID出力に対する傾きを、ヨー制御係数Kl,Krが正の場合と負の場合とで異ならせることもできる。
【0065】
図2、図3に戻って主補正係数取得部80は、PID出力に応じて取得された2のヨー制御係数Kl,Krを、制御手段74が含む補正手段82に出力する。制御手段74は、補正手段82と、トルク指令算出手段84と、モータ制御手段64とを含む。補正手段82は、2の目標回転速度指令値である、左車輪用電動モータ22及び右車輪用電動モータ24の目標回転速度指令値Vrl*、Vrr*のそれぞれを、対応する2のヨー制御係数Kl,Krにより補正して、補正後目標回転速度指令値Vrkl*、Vrkr*を得る。すなわち、目標回転速度指令値Vrl*、Vrr*に、対応するヨー制御係数Kl,Krをそれぞれ乗じて、左右車輪18,20用の補正後目標回転速度指令値Vrkl*、Vrkr*を得る。トルク指令算出手段84は、補正後目標回転速度指令値Vrkl*、Vrkr*と、左右車輪用電動モータ22,24に設けられた2の回転速度センサ62により検出される各電動モータ22,24の回転速度検出値Vrl,Vrrとの偏差に基づいて、各電動モータ22,24に対応するトルク指令τrl,τrrを算出する。このために、トルク指令算出手段84は、PID演算を行う、左右車輪18,20用のトルク指令用PID演算部88,90を有する。
【0066】
左車輪用のトルク指令用PID演算部88は、左車輪18用の補正後目標回転速度指令値Vrklと左車輪用電動モータ22の回転速度検出値Vrlとの偏差が入力され、PID演算を行うことにより左車輪用電動モータ22のトルク指令τrlを算出し、モータ制御手段64(図2)に入力する。モータ制御手段64は、対応するインバータを含むドライバー回路を有し、対応するドライバ回路は、トルク指令に応じた駆動電圧により左車輪用電動モータ22の駆動を制御する。
【0067】
同様に、右車輪20用のトルク指令用PID演算部90は、右車輪20用の補正後目標回転速度指令値Vrkr*と右車輪用電動モータ24の回転速度検出値Vrrとの偏差が入力され、PID演算を行うことにより右車輪用電動モータ24のトルク指令τrrを算出し、モータ制御手段64(図2)に入力する。モータ制御手段64が有する対応するドライバ回路は、トルク指令に応じた駆動電圧により右車輪用電動モータ24の駆動を制御する。このように、制御手段74は、2の目標回転速度指令値のそれぞれを2の補正係数により補正し、補正後の2の目標回転速度指令値に基づいて、2個の車輪用電動モータ22,24の駆動を制御する。また、コントローラ48は、アクセル踏み込み量と操舵角とヨーレートとを含む各種センサの検出信号に基づいて、左右車輪用電動モータ22,24の駆動を制御する。また、コントローラ48は、PID演算部78の出力の絶対値が所定値以上となる場合に、2個の車輪用電動モータ22,24のうち、1の車輪用電動モータに対応するヨー制御係数を負の値として、1の車輪用電動モータにおいて進行方向に対応する正回転に対して逆転方向の駆動トルクを発生させるように各電動モータ22,24の駆動を制御する。
【0068】
このようなコントローラ48の各機能は、ドライバー回路部分を除いてコンピュータで構成することができる。そして、上記各機能は、ソフトウェアで実現でき、具体的には、芝刈り車両制御プログラムを実行することで実現できる。勿論、上記各機能の一部をハードウェアで実現することも可能である。
【0069】
このような芝刈車両10によれば、運転者により入力される加速指示及び旋回指示に基づいて2個の車輪用電動モータ22,24それぞれの2の目標回転速度指令値Vrl*、Vrr*が算出され、加速指示及び旋回指示に基づいて目標ヨーレートγ*が算出され、目標ヨーレートγ*とヨーレートセンサ60のヨーレート検出値γとの偏差に基づいて、2個の車輪用電動モータ22,24にそれぞれ関係する2の補正係数Kl,Krが取得される。また、2の目標回転速度指令値Vrl*、Vrr*のそれぞれが2の補正係数Kl,Krにより補正され、補正後の2の目標回転速度指令値Vrkl*,Vrkr*に基づいて、2個の車輪用電動モータ22,24の駆動が制御される。このため、左右車輪18,20を2個のそれぞれの車輪用電動モータ22,24により独立に走行駆動できる構成において、車両10が傾斜面上を走行する場合でも、直進方向や旋回方向の、運転者が意図する方向への走行を可能とし、さらに、ヨーレートの検出値と目標値との偏差に基づく制御作用時の車両10の挙動特性を自由に設定しやすくできる。
【0070】
例えば、図3において、車両の左側への旋回時に目標ヨーレートγ*が検出ヨーレートγよりも大きい、すなわち車両の旋回半径が増大する傾向となる場合には、PID演算部78がPID出力として、ある正の値Q(図8参照)を出力し、主補正係数取得部80が、図8に示すマップを用いて、右車輪用ヨー制御係数Krとして1を出力し、左車輪用ヨー制御係数Klとして1よりも小さい値を出力する。このため、左車輪18用の補正後目標回転速度指令値VrKl*が小さくなり、この結果、目標ヨーレートγ*に対し検出ヨーレートγが近づきやすくなる。この場合、図8のマップで、左車輪用ヨー制御係数Klは、実線矢印で示す方向に変化して1に近づきやすくなる。目標ヨーレートγ*と検出ヨーレートγとが完全に一致すると、左車輪用ヨー制御係数Klも1となるため、左右車輪18,20用の補正後目標回転速度指令値VrKl*,VrKr*が、目標回転速度指令値Vrl*,Vrr*とそれぞれ同じになる。
【0071】
一方、PID演算部78が積分演算を含む演算を行う等のため、主補正係数取得部80の出力により目標回転速度指令値Vrl*,Vrr*を補正しても、補正の効果が小さいとPID出力が大きくなる可能性もある。この場合は、図8に破線矢印で示す方向に、左車輪用ヨー制御係数Klが破線矢印で示す方向に変化してさらに小さくなる。例えば、左車輪用ヨー制御係数Klが負の値となると、補正後の左車輪用目標回転速度指令値VrKl*は、正から負となり、これは、左車輪用電動モータ22に逆転方向の駆動トルクを発生させることに対応する。上記では、車両が左側へ旋回する場合を説明したが、車両が右側へ旋回する場合には右車輪用ヨー制御係数Krが変化する。このように構成するため、車両が例えば斜面上を等高線走行や旋回走行する場合でも、目標回転速度指令値を、ヨーレート検出値と目標ヨーレートとの偏差を解消するように補正でき、車両の横滑りや意図しない方向への旋回を防止でき、運転者の意図する方向へ走行させることができる。
【0072】
さらに、2の目標回転速度指令値Vrl*,Vrr*のそれぞれを2の補正係数Kl,Krにより補正するため、2の補正係数Kl,Krの設定の変更を容易に行うことができ、ヨーレートの検出値と目標値との偏差に基づく制御作用時の車両の挙動特性を自由に設定しやすくできる。例えば、予め2の補正係数Kl,Krを規定するマップの設定を変更することにより、PID出力と補正係数Kl,Krとの関係を容易に変更できる。例えば、図7に示すマップは1例であり、ヨー制御係数Kl,KrのPID出力に対する傾きを変更したり、図9に示すように、PID出力の絶対値が大きくなるのにしたがって、2のヨー制御係数Kl,Krの両方を徐々に小さくすることもできる。また、図10に示すように、PID出力の絶対値が大きくなるのにしたがって、2のヨー制御係数Kl,Krのいずれか一方のみを徐々に大きくすることもできる。
【0073】
また、コントローラ48は、PID演算部78の出力の絶対値が所定値以上となる場合に、2個の車輪用電動モータ22,24のうち、1の車輪用電動モータ22(または24)において進行方向に対応する正回転に対して逆転方向の駆動トルクを発生させるように各電動モータ22,24の駆動を制御する。すなわち、車両の前進時に、1の車輪用電動モータ22(または24)に、前進方向に対応する正回転に対して逆転方向の駆動トルクを発生させる。また、車両の後進時に、1の車輪用電動モータ22(または24)に、後進方向に対応する正回転に対して逆転方向の駆動トルクを発生させる。このため、目標ヨーレートγ*とヨーレート検出値γとの偏差が大きい場合でも、より迅速に偏差を解消して、安定した走行を実現しやすくなる。
【0074】
なお、本実施の形態では、操向輪をキャスタ輪14,16としているが、キャスタ輪14,16の代わりに、ステアリング操作子50に操舵機構を介して作動的に連結された機械的操舵式操向輪を使用することもできる。操舵機構は、例えば、ステアリング操作子50に連結されたステアリング軸の回転力を直線方向の力に変換するラックピニオン機構を含み、ステアリング軸の回転と連動するラック軸の押し引きにより、左右の操向輪を操舵可能な構成とする。
【0075】
また、本実施の形態では、補正係数取得手段72が有する演算部として、PID演算部78を使用しているが、PID演算部78の代わりにPI演算を行うPI演算部を使用することもできる。
【0076】
[第2の発明の実施の形態]
図11は、本発明の第2の実施の形態の乗用型対地作業車両である、芝刈車両10を示している。図12は、第2の実施の形態の芝刈車両10におけるコントローラ48の機能構成を示すブロック図である。図11に示すように、本実施の形態の芝刈車両10の場合、上記の第1の実施の形態の場合において、ステアリング操作子50と前進側、後進側各アクセルペダル52,54とを省略する代わりに、加速操作子及び旋回操作子として、2レバー式の操作子である、左右レバー92,94を設けている。左右レバー92,94は、座席46(図17参照)の左右両側に分かれた位置に設けており、それぞれ左右方向に伸びる水平方向の揺動中心軸96を中心として前後に揺動可能に、メインフレーム12に固定の部分に支持している。
【0077】
左レバー92を前方または後方に揺動させることにより、左車輪用電動モータ22の正転方向または逆転方向への駆動を可能とし、揺動量を大きくすることで左車輪用電動モータ22の回転速度が高くなり、揺動量を小さくすることで回転速度が低くなる。同様に、右レバー94を前方または後方に揺動させることにより、右車輪用電動モータ24の正転方向または逆転方向への駆動を可能とし、揺動量を大きくすることで右車輪用電動モータ24の回転速度が高くなり、揺動量を小さくすることで回転速度が低くなる。すなわち、左右レバー92,94は、加速指示及び旋回指示として、左右車輪用電動モータ22,24の回転速度を入力可能とする。すなわち、2レバー式の操作子は、互いに協働して、加速指示及び旋回指示を入力可能とする。
【0078】
左右レバー92,94の揺動量及び揺動方向である操作値は、左レバーセンサ98と右レバーセンサ100とによりそれぞれ検出し、図2を参照して示すように、検出信号は、コントローラ48へ伝送される。図12に示すように、コントローラ48は、第1の実施の形態と同様、指令値算出手段68と、目標ヨーレート算出手段70と、補正係数取得手段72と、制御手段74とを含む。なお、以下の説明において、図11の要素と同一の要素には同一符号を付して説明する。指令値算出手段68は、左右レバーセンサ98,100を用いて、運転者により入力される加速指示及び旋回指示、すなわち、操作値を取得し、この操作値に基づいて2個の車輪用電動モータ22,24それぞれの2の目標回転速度指令値Vrl*,Vrr*を算出する。この場合、指令値算出手段68は、各レバーセンサ98,100の検出値に対応して、左車輪18用の目標回転速度指令値Vrl*と右車輪20用の目標回転速度指令値Vrr*とを、それぞれ算出する。目標回転速度指令値Vrl*,Vrr*は、電動モータ22,24に前進側に対応する正転方向に駆動トルクを発生させる場合を正の値とし、電動モータ22,24に後進側に対応する逆転方向に駆動トルクを発生させる場合を負の値とする。
【0079】
一方、目標ヨーレート算出手段70は、算出された目標回転速度指令値Vrl*、Vrr*から、目標ヨーレートγ*を算出する。また、補正係数取得手段72は、目標ヨーレートγ*と、ヨーレートセンサ60により検出されたヨーレート検出値γとの偏差に基づいて、2個の車輪用電動モータ22,24にそれぞれ関係する2の補正係数Kl,Krを取得する。このような目標ヨーレート算出手段70及び補正係数取得手段72の機能は、上記の第1の実施の形態の場合と同様である。そして制御手段74が、補正係数取得手段72により出力された左右車輪18,20用の各ヨー制御係数Kl,Krにより目標回転速度指令値Vrl*、Vrr*を補正する。その他の構成及び作用は、上記の第1の実施の形態と同様である。
【0080】
[第3の発明の実施の形態]
図13は、本発明の第3の実施の形態の乗用型対地作業車両である、芝刈車両10を示している。図14は、第3の実施の形態の芝刈車両10の構成を示す図である。図15は、図14のコントローラ48の機能構成を示すブロック図である。なお、図14では、かっこ書きで、後述する第4の実施の形態の構成要素であるレバーセンサ98,100も示している。本実施の形態では、上記の図1から図10に示した第1の実施の形態において、左右車輪用電動モータ22,24の代わりに走行用モータである左右車輪用油圧モータ102,104を設けている。また、芝刈車両10にアクチュエータ動力源であるエンジン38(図14)と、エンジン38により駆動するアクチュエータである油圧ポンプユニット106とを設けている。油圧ポンプユニット106は、2の油圧ポンプ本体108,110と、それぞれの油圧ポンプ本体108,110に対応する2の制御軸電動モータ112,114とを含み、2の油圧ポンプ本体108,110の図示しないポンプ軸同士を、歯車機構等の動力伝達機構により作動的に連結している。なお、エンジン38は、出力軸が水平方向に向くホライズンタル型としてもよく、出力軸が鉛直方向に向くバーチカル型としてもよい。
【0081】
また、2の油圧ポンプ本体108,110のポンプ軸のうち、一方のポンプ軸はエンジン38により駆動される。このため、エンジン38の駆動により一方のポンプ軸が駆動され、動力伝達機構を介して他方のポンプ軸も駆動される。各油圧ポンプ本体108,110は、可動斜板式の可変容積ポンプであり、図示しない可動斜板の傾きをポンプケース116に回転可能に支持したそれぞれに対応する2の制御軸118,120の回転角度の変更により調節可能としている。互いに平行で、かつ、それぞれ回転可能に配置した2の制御軸118,120の回転角度は、対応する制御軸電動モータ112,114により変更される。例えば、図13の例では、制御軸118,120は、芝刈車両10の上下方向(図13の表裏方向)に向くように配置されている。各制御軸電動モータ112,114は、対応する制御軸118,120に作動的に連結され、対応する制御軸118,120の回転角度を変化させる。また、可動斜板の傾きが変化することにより、対応する油圧ポンプ本体108,110の吸引または吐出される圧油の量及び流れ方向を変更できるようにしている。各油圧ポンプ本体108,110は、例えばアキシャルピストン型とする。ただし、各油圧ポンプ本体108,110は、ラジアルピストン型等、他の形式を採用することもできる。
【0082】
2の油圧ポンプ本体108,110の吐出口122,124のそれぞれは、左右車輪用油圧モータ102,104に、吐出口122,124に対する圧油の吐出及び吸入を可能に管路を介して接続している。油圧ポンプ本体108,110から吐出される圧油が油圧モータ102,104に供給されることにより、油圧モータ102,104が駆動する。油圧ポンプ本体108,110からの圧油の吐出量が多くなるほど、油圧モータ102,104の回転速度が高くなり、油圧ポンプ本体108,110からの圧油の吐出量が少なくなると、油圧モータ102,104の回転速度が低くなる。
【0083】
また、それぞれの油圧ポンプ本体108,110は、2の吐出口122,124を有し、2の吐出口122,124の一方を圧油吐出用として機能させ、他方を圧油吸入用として機能させ、油圧モータ102,104を回転させる方向の切り換えに応じて、圧油吐出用として機能させる吐出口122,124と、圧油吸入用として機能させる吐出口122,124とを切り換える。このように油圧ポンプ本体108,110のそれぞれは、2の吐出口122,124からそれぞれ独立して圧油を吐出可能であり、油圧ポンプユニット106は、2の制御軸118,120の回転角度が変化することにより、2の制御軸118,120のそれぞれに対応する2の吐出口122,124から吐出される圧油の吐出量が変化するように構成している。また、各油圧モータ102,104に対応する油圧ポンプ本体108,110からの圧油の流れ方向が切り換わると、各油圧モータ102,104の正転と逆転とが切り換わる。
【0084】
各制御軸電動モータ112,114は、コントローラ48を構成するドライバ回路を介して、バッテリ42(図2参照)からの電力が供給されることにより、正転方向または逆転方向に回転する。制御軸電動モータ112,114の出力軸は、図示しないクラッチ機構及びウォーム伝動機構と、セクタ伝動機構126とを介して制御軸118,120に作動的に連結される。ウォーム伝動機構は、制御軸電動モータ112,114の出力軸にクラッチ機構を介して動力の伝達可能に設けられたウォーム軸と、ウォーム軸に噛合するウォームホイールとを有する。セクタ伝動機構126は、ウォームホイールに相対回転不能に結合した出力歯車と、出力歯車に噛合させた略扇形部分を含むセクタ歯車とにより構成している。セクタ歯車に制御軸118,120を相対回転不能に結合している。セクタ歯車の制御軸118,120に関する反対側端部に図示しない係合アームを設け、係合アームの両側にポンプケースに固定のストッパ部を空間を介して対向させる等により、セクタ歯車の回転範囲を所定範囲に規制している。
【0085】
クラッチ機構は、制御軸電動モータ112,114の回転に応じてウォーム軸が回転することを許容しつつ、ポンプ軸側からの力によってウォーム軸が回転することを防止する逆転防止機構を備える。このようなクラッチ機構により、制御軸電動モータ112,114による可動斜板の傾転動作を可能としつつ、可動斜板が設定されている傾転位置から意に反して傾転することが防止される。
【0086】
また、油圧ポンプユニット106に各制御軸118,120の回転位置、すなわち回転角度位置を検出する2の回転角度センサ128(図14)を設けている。それぞれの回転角度センサ128は、制御軸118,120とともに回転する部分に設けた被検出部に、ポンプケース116に固定の検出部を対向させることにより構成している。例えば、図13では、回転角度センサ128の図示を省略するが、2の回転角度センサ128は、それぞれ制御軸118,120と同軸上に、かつ、制御軸118,120の上側を覆うように配置することもできる。各回転角度センサ128の検出信号はコントローラ48を構成するモータ制御手段130に入力している。
【0087】
また、各油圧モータ102,104に各油圧モータ102,104の回転速度を検出する回転速度検出手段である、回転速度センサ132を設けている。各回転速度センサ132の検出信号は、コントローラ48に入力している。なお、各油圧モータ102,104に回転速度センサ132の代わりに回転角度センサを設け、回転角度センサの検出信号をコントローラ48を構成する回転速度算出手段に入力し、回転角度検出値から各油圧モータ102,104の回転速度を算出することもできる。この場合、回転角度センサと回転速度算出手段とにより、回転速度検出手段を構成する。
【0088】
また、コントローラ48は、このような各種のセンサの検出信号と、アクセル踏み込みセンサ58及び操舵角センサ56の検出信号とを用いて、左右車輪用油圧モータ102,104の回転速度を、独立して制御する。このために、左右車輪18,20を駆動する左右車輪用油圧モータ102,104に対応する2の制御軸電動モータ112,114の回転角度指令値をそれぞれ算出し、それぞれの回転角度指令値に対応して、実際の回転角度が得られるように各制御軸電動モータ112,114の駆動をフィードバック制御する。次に、図14、図15を用いて、コントローラ48の構成及び機能を、図1から図10に示した第1の実施の形態の場合と異なる部分を中心に説明する。
【0089】
図14に示すように、コントローラ48は、指令値算出手段68と、目標ヨーレート算出手段70と、補正係数取得手段72と、制御手段134とを含む。指令値算出手段68と、目標ヨーレート算出手段70と、補正係数取得手段72との機能は、第1の実施の形態と同様である。制御手段134は、補正手段82と、回転角度指令算出手段136と、モータ制御手段130とを含む。補正手段82は、2の目標回転速度指令値である、左右車輪用油圧モータ102,104の目標回転速度指令値Vrl*、Vrr*のそれぞれを、対応する2のヨー制御係数Kl,Krにより補正して、補正後目標回転速度指令値VrKl*,VrKr*を得る。回転角度指令算出手段136は、補正後目標回転速度指令値VrKl*,VrKr*と、左右の車輪用油圧モータ102,104に設けられた2の回転速度センサ132により検出される各油圧モータ102,104の回転速度検出値Vrl,Vrrとの偏差に基づいて、制御軸電動モータ112,114の補正前回転角度指令値Posl*,Posr*を算出する。補正前回転角度指令値Posl*,Posr*は、各油圧モータ102,104に対応する油圧ポンプ本体108,110の吐出量及び吐出方向に対応する。さらに回転角度指令算出手段136は、制御軸電動モータ112,114の回転角度検出値を用いて補正することにより回転角度指令Posl,Posrを算出する。このために、回転角度指令算出手段136は、上記偏差に基づいてPID演算を行う、左右車輪18,20用の第1PID演算部138,140と、減算部142,144と、第2PID演算部146,148とを有する。
【0090】
図15に示すように、左車輪18用の第1PID演算部138は、補正後目標回転速度指令値VrKl*と左車輪用油圧モータ102の回転速度検出値Vrlとの偏差が入力され、PID演算を行うことにより左車輪18用の制御軸電動モータ112の補正前回転角度指令値Posl*を算出する。そして、減算部142で補正前回転角度指令値Posl*と制御軸電動モータ112の回転角度検出値Poslとの偏差を、左車輪18用の第2PID演算部146へ出力し、PID演算を行うことにより左車輪18用の制御軸電動モータ112の回転角度指令値Poslを算出し、モータ制御手段130に入力する。モータ制御手段130は、対応するインバータを含むドライバー回路を有し、対応するドライバ回路は、回転角度指令に応じて、左車輪18用の制御軸電動モータ112の駆動を制御する。これにより、左車輪用油圧モータ102の駆動が制御される。
【0091】
同様に、右車輪20用の第1PID演算部140は、補正後目標回転速度指令値VrKr*と右車輪用油圧モータ104の回転速度検出値Vrrとの偏差が入力され、PID演算を行うことにより右車輪20用の制御軸電動モータ114の補正前回転角度指令値Posr*を算出する。そして、減算部144で補正前回転角度指令値Posr*と制御軸電動モータ114の回転角度検出値Posrとの偏差を、右車輪20用の第2PID演算部148へ出力し、PID演算を行うことにより右車輪20用の制御軸電動モータ114の回転角度指令値Posrを算出し、モータ制御手段130に入力する。モータ制御手段130の対応するドライバ回路は、回転角度指令に応じて、右車輪20用の制御軸電動モータ114の駆動を制御する。これにより、右車輪用油圧モータ104の駆動が制御される。
【0092】
このように、制御手段134は、補正係数により補正した後の2の目標回転速度指令値VrKl*,VrKr*と、2個の車輪用油圧モータ102,104の回転速度検出値Vrl,Vrrとの偏差に基づいて2の制御軸118,120の回転角度指令値Posl*,Posr*を算出し、それぞれの回転角度指令値Posl*,Posr*により2個の制御軸電動モータ112,114の駆動を制御する。このため、油圧ポンプユニット106の各油圧モータ102,104に対応する2の吐出口122,124(図13)から吐出される吐出量が変化する。そしてこれにより、2個の左右車輪用油圧モータ102,104の駆動が制御される。その他の構成及び作用は、上記の図1から図10に示した第1の実施の形態と同様であるため、同等部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0093】
なお、本実施の形態では、1の油圧ポンプユニット106が含む2の油圧ポンプ本体108,110から左右車輪18,20用の油圧モータ102,104に圧油を供給するように構成している。ただし、油圧ポンプユニット106として、油圧ポンプと、制御軸用電動モータとに関して、左右車輪18,20用のそれぞれに対応して互いに分離した、2のアクチュエータである2の油圧ポンプユニットの構造を採用することもできる。この場合、2の油圧ポンプユニットのそれぞれに動力伝達機構によりエンジンの動力を伝達することもできる。また、2の油圧ポンプユニットのそれぞれを、左右車輪18,20用の2の油圧モータ102,104及び減速機構を収容するハウジングに対し一体構造とすることもできる。この場合、2の油圧ポンプユニットのそれぞれ2個ずつの吐出口と油圧モータ102,104とを、吐出口に対する圧油の吐出及び吸入の可能に管路を介して接続する。
【0094】
[第4の発明の実施の形態]
図16は、本発明の第4の実施の形態の乗用型対地作業車両である、芝刈車両10を示している。図17は、図16の車両10を水平方向に見た略図である。図18は、第4の実施の形態の芝刈車両10におけるコントローラ48の機能構成を示すブロック図である。本実施の形態は、上記の図11から図12に示した第2の実施の形態において、図13から図15に示した第3の実施の形態の構成を組み合わせている。すなわち、芝刈車両10は、上記の第3の実施の形態の場合において、ステアリング操作子50と前進側、後進側各アクセルペダル52,54とを省略する代わりに、加速操作子及び旋回操作子として、第2の実施の形態の場合と同様の2レバー式の操作子である左右レバー92,94を設けている。左右レバー92,94は、座席46の左右両側に分かれた位置に設けている。すなわち、2レバー式の操作子は、互いに協働して、加速指示及び旋回指示を入力可能とする。
【0095】
左右レバー92,94の揺動量及び揺動方向である操作値は、左右レバーセンサ98,100により検出し、検出信号は、コントローラ48へ伝送される。コントローラ48は、図14に示した第3の実施の形態と同様、指令値算出手段68と、目標ヨーレート算出手段70と、補正係数取得手段72と、制御手段134とを含む。指令値算出手段68は、左右レバーセンサ98,100を用いて、運転者により入力される加速指示及び旋回指示、すなわち、操作値に基づいて2個の車輪用油圧モータ102,104それぞれの2の目標回転速度指令値Vrl*,Vrr*を算出する。その他の構成及び作用は、上記の図13から図15に示した第3の実施の形態、または図11,12に示した第2の実施の形態と同様である。なお、図16に示す構成の場合も、図13に示した第3の実施の形態と同様に、例えば、制御軸118,120は、芝刈車両10の上下方向(図13の表裏方向)に向くように配置され、制御軸118,120の回転角度位置を検出する、2の回転角度センサ128は、それぞれ制御軸118,120と同軸上に、かつ、制御軸118,120の上側を覆うように配置することもできる。
【0096】
[第5の発明の実施の形態]
図19は、本発明に係る第5の実施の形態の乗用型対地作業車両である、芝刈車両10を示す斜視図である。図20は、第5の実施の形態の芝刈車両10に設けられたステアリング操作子の回転支持構造を示す斜視図である。図21は、図20のA−A部を切断し、上バネと下バネとを取り外した様子を示す拡大図である。図22は、ステアリング操作子を中立位置から片側に回転させる様子を、時系列的に示す、図21の一部を切断して上方から下方に見た図である。図23は、第5の実施の形態において、ステアリング操作子を回転させる場合にステアリング操作力の増大度合が所定の操舵角閾値を境に変化することを示す、ステアリング操作力と操舵角との関係を示す図である。
【0097】
図19に示すように、本実施の形態では、上記の図1から図10に示した第1の実施の形態と同様に、芝刈車両10は、車体であるメインフレーム12の上側に前進側アクセルペダル52及び後進側アクセルペダル54と、ブレーキペダル149とを設けている。なお、前進側、後進側各アクセルペダル52,54のリンクの揺動支持部は、図19に示すように、車両を後方から見た場合に前側のパネル150の表側に配置されているが、前側のパネル150の裏側に配置するようにしてもよい。
【0098】
メインフレーム12の上側で運転席46の左右両側及び後側(図19の右側)を含む略U字形の範囲に、図示しないコントローラやバッテリを収容する収容室152を設け、収容室152の上側をカバー154で覆っている。なお、カバー154は、略U字形部分を複数に分割して別々に着脱可能とすることもできる。
【0099】
メインフレーム12の前部(図19の左部)に鋼板等の金属板等から構成した支持部156を立設しており、支持部156の左右方向中央部の上側にステアリングボックス158を固定している。このステアリングボックス158にステアリング操作子50を回転可能に支持し、その操舵角を操舵角センサ56(図20)により検出可能としている。次に、図20等により、ステアリング操作子50の回転支持構造を詳しく説明する。
【0100】
図20は、ステアリングボックス158を取り外して示す図であり、ステアリング操作子50は、円形のリム部と、リム部に結合した放射状のスポーク部と、スポークの中心部に結合したステアリング軸部160とを含む。支持部156(図19)の上側にサポートフレーム162を固定しており、サポートフレーム162の上端部片側(図20の左側)に上下に離隔するようにそれぞれ軸受ステイと呼ばれ、メインフレーム12に固定された固定部分である上側軸受支持部164及び下側軸受支持部166を設けている。
【0101】
なお、サポートフレーム162は、支持部156(図19)を介さずメインフレーム12(図19)に固定してもよい。また、上側、下側各軸受支持部164,166は、内部に軸受をそれぞれ設けており、ステアリング軸部160の2個所を、それぞれの軸受により回転可能に支持している。例えば、図21に示すように、ステアリング軸部160の周囲に玉軸受等の軸受168を設け、上側軸受支持部164(図20)に、この軸受168によりステアリング軸部160を回転可能に支持している。
【0102】
また、ステアリング軸部160の下端部に操舵角センサ56を設けている。本例の場合、操舵角センサ56は、ポテンショメータとして、下側軸受支持部166の下側にそのケーシングを固定している。また、ステアリング軸部160の下端部に、操舵角センサ56の検出子を接続し、操舵角センサ56によりステアリング操作子50(図20)の操舵角を検出可能としている。操舵角センサ56の検出信号は、ケーブル170により取り出して図示しないコントローラへ入力する。なお、操舵角センサ56には、ポテンショメータ以外の、エンコーダ等の電気的センサ、光学的センサ等を用いることもできる。なお、操舵角センサ56は、ステアリング軸部160の下端部以外に、ステアリング軸部160と連動する他の部材上、またはその周辺部に設けることもできる。
【0103】
図20に示すように、ステアリング軸部160の、上側、下側各軸受支持部164,166の間に揺動アーム172を固定している。図21に示すように、揺動アーム172は、略菱形の平板状に形成した本体部174と、本体部174の両端部にそれぞれ下側に突出するように固定した第1上側係止ピン176及び突き当てピン178とを含む。揺動アーム172は、ステアリング軸部160と一体になって、ステアリング軸部160の回転に伴って、ステアリング軸部160の回転方向と同方向に揺動する。
【0104】
また、ステアリング軸部160の揺動アーム172と下側軸受支持部166との間に、遊嵌アーム180を遊嵌している。すなわち、ステアリング軸部160に遊嵌アーム180を、相対回転可能に外嵌支持している。ステアリング軸部160と遊嵌アーム180との間に玉軸受等の軸受を設けることもできる。遊嵌アーム180は、揺動アーム172よりも大型に形成している。遊嵌アーム180は、全体で板状であり、山形部190に半円部192を結合した形状を有する本体部182と、本体部182に固定した第1下側係止ピン184及び第2上側係止ピン186と、本体部182上側に設けたストッパ188とを含む。すなわち、遊嵌アーム180の山形部190の頂部に下側に突出するように第1下側係止ピン184を固定している。揺動アーム172の第1上側係止ピン176と突き当てピン178との下端は遊嵌アーム180の上面に対向させている。また、山形部190の中間部に上方に突出する第2上側係止ピン186を固定している。
【0105】
また、図22に示すように、遊嵌アーム180の半円部192の両側に一対のストッパ188を設けている。各ストッパ188は、半円部192に固定した支持部194が有するネジ孔にボルトを結合し、ボルトの先端部を支持部194端面から突出させることにより構成している。また、ボルトに回り止めナット196を結合し、回り止めナット196を支持部194に押し付けることで、ボルトの先端突出量が意図せずに変化するのを阻止している。これにより、ボルトの先端部の支持部194端面からの突出量を調整し、調整後の状態を維持できる。各ボルトの先端面は、揺動アーム172に固定した突き当てピン178に突き当て可能とする。
【0106】
例えば、ステアリング軸部160の中立位置(図22(a)に示す位置)からの回転角の絶対値が予め設定した所定値(例えば80度)以上で、突き当てピン178がストッパ188に突き当たるように構成している。突き当てピン178とストッパ188とにより突き当て機構198を構成している。このような突き当て機構198は、揺動アーム172と遊嵌アーム180との間に設けて、揺動アーム172の中立位置である図22の(a)の位置からの揺動量が予め設定した所定量以上である場合にのみ、揺動アーム172を遊嵌アーム180に突き当てて、遊嵌アーム180を揺動アーム172と同方向に一体に揺動させる。
【0107】
また、図21に示すように、ステアリング軸部160の下端部を支持する下側軸受支持部166の上側に固定部材200を固定するとともに、固定部材200に設けた固定板202の上面に、遊嵌アーム180の第1下側係止ピン184の先端面を対向させている。また、固定板202に、上方に突出するように第2下側係止ピン204を固定している。固定部材200に設けた孔部にステアリング軸部160を嵌合させている。第1上側、下側各係止ピン176,184と、第2上側、下側各係止ピン186,204と、突き当てピン178とは、いずれもステアリング軸部160と平行な方向に伸びている。
【0108】
また、ステアリング軸部160の揺動アーム172と遊嵌アーム180との間に第1バネである、上バネ206を緩く嵌合させている。上バネ206は、コイルばねの両端部である一対の脚部208を略平行な方向に伸ばしたものであり、上バネ206の本体部をステアリング軸部160に緩く嵌合させるとともに、一対の脚部208の内側に、揺動アーム172の第1上側係止ピン176と遊嵌アーム180の第2上側係止ピン186とを挟むように配置している。これにより、例えば、図22の(a)から(c)で示すように、ステアリング軸部160がいずれかの方向に回転すると、揺動アーム172が遊嵌アーム180に対して揺動するので、第1上側係止ピン176と第2上側係止ピン186との間隔が広がって、これらの係止ピン176,186により押された一対の脚部208同士の間隔が広がる。この場合、一対の脚部208から一対の脚部208同士の間隔を縮める方向の弾力である付勢力が、各上側係止ピン176,186に加わる。このため、ステアリング軸部160を回転させるのに、上バネ206の付勢力に抗する操作力を加えることが必要になる。すなわち、上バネ206は、遊嵌アーム180に対する揺動アーム172の揺動量が増大するのにしたがって大きくなる付勢力を、揺動アーム172に付勢する。なお、図22では、ステアリング操作子50(図20)を右に徐々に回転させていく場合を示しているが、図22の(a)から(c)の状態とは、逆方向にステアリング軸部160を回転させる場合、すなわちステアリング操作子50を左に回転させていく場合も、各上側係止ピン176,186が押圧する脚部208の左右が逆になるだけで同様である。
【0109】
さらに、図21に示すように、ステアリング軸部160の遊嵌アーム180と下側軸受支持部166との間に第2バネである、下バネ210を緩く嵌合させている。下バネ210も、上バネ206と同様、コイルばねの両端部である一対の脚部212を略平行な方向に伸ばしたものであり、下バネ210の本体部をステアリング軸部160に緩く嵌合させている。これとともに、一対の脚部212の内側に、遊嵌アーム180の第1下側係止ピン184と固定板202に設けた第2下側係止ピン204とを挟むように配置している。下バネ210の脚部212の長さは、上バネ206の脚部208の長さよりも大きくするとともに、下バネ210の付勢力を上バネ206の付勢力よりも大きくしている。
【0110】
これにより、例えば、図22の(a)から(b)で示すように、ステアリング軸部160の中立位置からの回転角の絶対値が所定角度(例えば80度)未満では、ステアリング軸部160を固定板202(図21等)に対して揺動させることに対する抵抗力として、上バネ206の付勢力、すなわち弾力に基づく抵抗力と、下バネ210の弾力に基づく抵抗力とが作用するが、下バネ210の弾力は、上バネ206の弾力よりも大きく、結果として、固定板202に設けた第2下側係止ピン204と遊嵌アーム180との位置関係は変化しない。このため、ステアリング軸部160には、揺動アーム172の遊嵌アーム180に対する揺動変位に応じて増大する上バネ206の弾力が、ステアリング軸部160の操作力に対する増大する抵抗力として作用する。ただし、図22の(c)で示すように、ステアリング軸部160の回転角の絶対値が所定角度(例えば80度)になると、揺動アーム172の突き当てピン178がストッパ188に突き当たり、図22の(d)で示すように、ステアリング軸部160をさらに回転させると、揺動アーム172と遊嵌アーム180とが一体になって回転する。この場合、遊嵌アーム180が固定板202に固定の第2下側係止ピン204に対して揺動し、第1下側係止ピン184と第2下側係止ピン204との間隔が広がって、これらの係止ピン184,204により押された一対の脚部212同士の間隔が広がる。したがって、固定板202に固定の第2下側係止ピン204に対し揺動アーム172を揺動させるのに、上バネ206を介在させない下バネ210の弾力が直接に増大する抵抗力として作用する。下バネ210の弾力である、第2付勢力は、一対の脚部212に、一対の脚部212同士の間隔を縮める方向に作用する力である。このため、ステアリング軸部160を回転させるのに、下バネ210の弾力である第2付勢力に抗する操作力を加えることが必要になる。すなわち、ステアリング軸部160には、第2下側係止ピン204に対する遊嵌アーム180の揺動変位に応じて増大する下バネ210の弾力、すなわち、上バネ206の弾力よりも大きい下バネ210の弾力が、ステアリング軸部160の操作力に対する増大する抵抗力として作用する。すなわち、下バネ210は、遊嵌アーム180の中立位置からの揺動量の増大、すなわち第2下側係止ピン204に対する揺動量の増大にしたがって大きくなる第2付勢力を、遊嵌アーム180に付勢する。
【0111】
このような本実施の形態によれば、ステアリング操作子50を操作する、すなわち回転させるのに必要なステアリング操作力を、中立位置からの操舵角の絶対値の増大にしたがって大きくするとともに、ある操舵角閾値を境に、操舵角の絶対値の増大に対する操作力の増大の度合を増大させることができる。また、この効果を得るために複雑な制御を用いる必要がなく、また、操舵角閾値の設定を容易に調整できる。
【0112】
図23は、ステアリング操作子の左右方向の操舵角とステアリング操作力との関係の1例を示す図である。なお、以下では、図19から図21に示した要素と同一の要素には同一の符号を付して説明する。また、図23の下側に、車両の走行状態と、車輪用電動モータの減速状態とを示している。なお、図23の下側部分に示す(a)から(d)は、上記の図22の(a)から(d)に対応する。なお、図23の横軸では、操舵角を示しているが、操舵角センサ56の+側出力から右側へ回転させる場合の操舵角を求めて、操舵角センサ56の−側出力から左側へ回転させる場合の操舵角を求めることができる。したがって、図23の横軸は、操舵角センサ56の+側出力、−側出力として表すこともできる。
【0113】
図23の例では、例えば、車両の直進状態からステアリング操作子50を右に回転させていくと、右車輪用電動モータ24(図1等参照)の減速量が徐々に大きくなる。この場合、ステアリング操作子50に、上バネ206と下バネ210とのうち、上バネ206の付勢力のみが加わる。そして、右車輪用電動モータ24が回転停止すると、右車輪20(図1等参照)の接地位置を中心として車両が旋回する信地旋回が行われる。この状態では、図22の(c)で示したように、片側のストッパ188に突き当てピン178が突き当たる。この状態からさらにステアリング操作子50を右に回転させると、図23に示すように、上バネ206の付勢力に下バネ210の第2付勢力が加わって、ステアリング操作子50の回転角度の増大に対するステアリング操作力の増大の度合が大きくなり、ステアリング操作子50の操作力が急激に大きくなる(重くなる)。そして、右車輪用電動モータ24に左車輪用電動モータ22(図1等参照)と逆方向の回転トルクが発生し、両電動モータ24,22の回転速度が同じで回転方向が逆になった状態で、右回りのゼロターンと呼ばれる超信地旋回が行われる。
【0114】
また、車両の直進状態からステアリング操作子50を左に回転させていくと、左車輪用電動モータ22(図1等参照)の減速量が徐々に大きくなり、この場合、左右が逆になるだけで上記の説明と同様である。その他の構成及び作用は、上記の図1から図10に示した第1の実施の形態と同様である。なお、本実施の形態では、ステアリング操作子50の操舵角の絶対値の増大に対する操作力の増大の度合を2段階に切り替えているが、バネ及びアームを増やすことで、3段階以上の複数段階に切り換え可能とすることもできる。
【符号の説明】
【0115】
10 芝刈車両、12 メインフレーム、14 左キャスタ輪、16 右キャスタ輪、18 左車輪、20 右車輪、22 左車輪用電動モータ、24 右車輪用電動モータ、26,28 動力発生ユニット、30 ハウジング、32 芝刈り機(モア)、34 モアデッキ、36 芝刈り用ブレード、38 エンジン、40 発電機、42 バッテリ、44 動力伝達機構、46 座席、48 コントローラ、50 ステアリング操作子、52 前進側アクセルペダル、54 後進側アクセルペダル、56 操舵角センサ、58 アクセル踏み込みセンサ、60 ヨーレートセンサ、62 回転速度センサ、64 モータ制御手段、66 記憶部、68 指令値算出手段、70 目標ヨーレート算出手段、72 補正係数取得手段、74 制御手段、76 ステアリング特性取得部、78 PID演算部、80 主補正係数取得部、82 補正手段、84 トルク指令算出手段、88、90 トルク指令用PID演算部、92 左レバー、94 右レバー、96 揺動中心軸、98 左レバーセンサ、100 右レバーセンサ、102 左車輪用油圧モータ、104 右車輪用油圧モータ、106 油圧ポンプユニット、108,110 油圧ポンプ本体、112,114 制御軸電動モータ、116 ポンプケース、118,120 制御軸、122,124 吐出口、126 セクタ伝動機構、128 回転角度センサ、130 モータ制御手段、132 回転速度センサ、134 制御手段、136 回転角度指令算出手段、138,140 第1PID演算部、142,144 減算部、146,148 第2PID演算部、150 パネル、152 収容室、154 カバー、156 支持部、158 ステアリングボックス、160 ステアリング軸部、162 サポートフレーム、164 上側軸受支持部、166 下側軸受支持部、168 軸受、170 ケーブル、172 揺動アーム、174 本体部、176 第1上側係止ピン、178 突き当てピン、180 遊嵌アーム、182 本体部、184 第1下側係止ピン、186 第2上側係止ピン、188 ストッパ、190 山形部、192 半円部、194 支持部、196 回り止めナット、198 突き当て機構、200 固定部材、202 固定板、204 第2下側係止ピン、206 上バネ、208 脚部、210 下バネ、212 脚部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2個の走行用モータによりそれぞれ独立に走行駆動される主駆動輪である左右車輪と、
左右車輪に対し前後方向に離れて設けられた操向輪と、
対地作業を行うために駆動される作業機と、
を備える乗用型対地作業車両であって、
運転者により入力される加速指示及び旋回指示に基づいて2個の走行用モータそれぞれの2の目標回転速度指令値を算出する指令値算出手段と、
車両のヨーレートを検出するヨーレート検出手段と、
加速指示及び旋回指示に基づいて目標ヨーレートを算出する目標ヨーレート算出手段と、
目標ヨーレートとヨーレート検出値との偏差に基づいて、2個の走行用モータにそれぞれ関係する2の補正係数を取得する補正係数取得手段と、
2の目標回転速度指令値のそれぞれを2の補正係数により補正し、補正後の2の目標回転速度指令値に基づいて、2個の走行用モータの駆動を制御する制御手段とを備えることを特徴とする乗用型対地作業車両。
【請求項2】
請求項1に記載の乗用型対地作業車両において、
2個の走行用モータは、電動モータであり、
さらに、2個の走行用モータの回転速度を検出する2の回転速度検出手段を備え、
制御手段は、補正係数により補正した後の2の目標回転速度指令値と、2個のモータの回転速度検出値との偏差に基づいてそれぞれの走行用モータのトルク指令値を算出し、それぞれのトルク指令値により2個の走行用モータの駆動を制御することを特徴とする乗用型対地作業車両。
【請求項3】
請求項1に記載の乗用型対地作業車両において、
2個の走行用モータは、油圧モータであり、
さらに、2個の走行用モータに対し少なくとも2の吐出口からそれぞれ独立して圧油を吐出可能で、2の吐出口から吐出される圧油の吐出量を変更可能な1または2のアクチュエータと、
2個の走行用モータの回転速度を検出する2の回転速度検出手段とを備え、
制御手段は、補正係数により補正した後の2の目標回転速度指令値と、2個の走行用モータの回転速度検出値との偏差に基づいて、2の吐出口から吐出されるアクチュエータの吐出量を変化させることにより2個の走行用モータの駆動を制御することを特徴とする乗用型対地作業車両。
【請求項4】
請求項3に記載の乗用型対地作業車両において、
アクチュエータを駆動するアクチュエータ動力源を備え、
1または2のアクチュエータは、2の制御軸と、2の制御軸に作動的に連結され、2の制御軸の回転角度を変化させる2個の制御軸モータとを含み、2の制御軸の回転角度が変化することにより、2の制御軸のそれぞれに対応する2の吐出口から吐出される圧油の吐出量が変化するアクチュエータであり、
制御手段は、補正係数により補正した後の2の目標回転速度指令値と、2個の走行用モータの回転速度検出値との偏差に基づいて2の制御軸の回転角度指令値を算出し、それぞれの回転角度指令値により2個の制御軸モータの駆動を制御することにより、2個の走行用モータの駆動を制御することを特徴とする乗用型対地作業車両。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1に記載の乗用型対地作業車両において、
補正係数取得手段は、
目標ヨーレートとヨーレート検出値との偏差に基づいてPI演算を含む演算を行う演算部と、
演算部の出力から2の目標回転速度指令値に対応する2の補正係数を取得する主補正係数取得部とを含み、
主補正係数取得部は、演算部の出力が増加する場合に2の補正係数のうち、一方の補正係数を一定値とするとともに、他方の補正係数を減少または増加させ、演算部の出力が減少する場合に2の補正係数のうち、他方の補正係数を一定値とするとともに、一方の補正係数を減少または増加させることを特徴とする乗用型対地作業車両。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれか1に記載の乗用型対地作業車両において、
補正係数取得手段は、
目標ヨーレートとヨーレート検出値との偏差に基づいてPI演算を含む演算を行う演算部と、
演算部の出力から2の目標回転速度指令値に対応する2の補正係数を取得する主補正係数取得部とを含み、
主補正係数取得部は、演算部の出力が増加する場合に2の補正係数のうち、一方の補正係数を正の値の一定値とするとともに、他方の補正係数を減少させ、演算部の出力が減少する場合に2の補正係数のうち、他方の補正係数を正の値の一定値とするとともに、一方の補正係数を減少させ、さらに、演算部の出力の絶対値が所定値以上となる場合に2個の走行用モータのうち、1の走行用モータにおいて進行方向に対応する正回転に対して逆転方向の駆動トルクを発生させるように、1の走行用モータに対応する補正係数を正から負に変化させることを特徴とする乗用型対地作業車両。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1に記載の乗用型対地作業車両において、
加速指示を入力可能とする加速操作子であるペダルと、
旋回指示を入力可能とする旋回操作子であるステアリングホイールとを備えることを特徴とする乗用型対地作業車両。
【請求項8】
請求項1から請求項6のいずれか1に記載の乗用型対地作業車両において、
加速指示及び旋回指示として左右車輪に対応する2個の走行用モータの回転速度を入力可能とする2レバー式の操作子を備え、
2レバー式の操作子は、互いに協働して、加速指示と旋回指示とを入力可能とすることを特徴とする乗用型対地作業車両。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1に記載の乗用型対地作業車両において、
操向輪は、キャスタ輪、または操作子に作動的に連結され、操作子の操作に連動して操舵可能な機械的操舵式操向輪であることを特徴とする乗用型対地作業車両。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1に記載の乗用型対地作業車両において、
旋回指示を入力可能とする操作子に設けた軸部を回転可能に支持する、車体に固定される固定部と、
軸部に固定され、軸部の回転に伴って揺動する揺動アームと、
軸部の揺動アームと固定部との間に遊嵌した遊嵌アームと、
揺動アームと遊嵌アームとの間に設けて、揺動アームの中立位置からの揺動量が予め設定した所定量以上である場合にのみ揺動アームを遊嵌アームに突き当て、遊嵌アームを揺動アームと同方向に一体に揺動させる突き当て機構と、
揺動アームと遊嵌アームとの間に設けて、揺動アームの遊嵌アームに対する揺動量の増大にしたがって大きくなる付勢力を、揺動アームに付勢する第1バネと、
遊嵌アームと固定部との間に設けて、遊嵌アームの固定部に対する揺動量の増大にしたがって大きくなる第2付勢力を、遊嵌アームに付勢する第2バネとを備えることを特徴とする乗用型対地作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2011−115006(P2011−115006A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−271545(P2009−271545)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000125853)株式会社 神崎高級工機製作所 (210)
【Fターム(参考)】