説明

共役化された低分子

本明細書では、リンカー化合物およびリンカー化合物を含むコンジュゲート(conjugate)を提供する。1つの態様では、リンカー化合物は、6-アミノヘキサン酸の2または3残基、および任意で、ポリエチレングリコール(PEG)の7〜10残基を含む。リンカー化合物は生物薬剤または生物分析の用途で有益な1つまたは複数の成分とのコンジュゲートを形成する際に有益である。特に、生物薬剤的に有益な化合物はキナーゼ阻害薬である。本明細書に記載されるコンジュゲートは様々な診断、分離および治療の用途で有用である。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2004年1月7日に出願された米国特許仮出願第60/535,173号および2004年3月30日に出願された米国特許出願第60/557,941号の恩典を主張する。両方の全内容は、全ての目的のために参照として全体が本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の背景
生物分析または生物薬剤の用途では、しばしば、化合物および生物分子を他の化合物または分子に共役させてコンジュゲート(conjugate)を形成させることが必要となる。例えば、「免疫コンジュゲート」は一般に抗体または抗体フラグメントおよびいくつかの他の分子、例えば標識化合物(例えば、フルオロフォア)、結合リガンド(例えば、ビオチン誘導体)、または治療薬(例えば、治療蛋白質または毒素)からなるコンジュゲートを示す。これらの特別なコンジュゲートは、それぞれ、抗体の存在の報告、抗体の結合または捕獲、および治療薬の特定部位への送達を標的にすることにおいて有益である。
【0003】
典型的には、コンジュゲートは、コンジュゲート成分の1つを別の成分に共有結合させることにより調製する。例えば、上記免疫コンジュゲートは、標識化合物、結合リガンド、または治療薬を抗体または抗体フラグメントに結合させることにより調製してもよい。しばしば、結合には、コンジュゲート成分を結合させるように機能するリンカー化合物または分子の使用が関係する。典型的には、リンカーは2つの成分間で安定な結合を提供するように、相互作用が起こりうる長さおよび/または形状を制御するように選択される。
【0004】
例えば、ビオチンコンジュゲートは、生物科学において広く使用されている。ビオチンは天然のビタミンであり、アビジンおよびストレプトアビジンに対し非常に高い結合親和性を有する(Kd〜10-15M-1)。アビジンに対するビオチンの親和性のために、ビオチン含有コンジュゲートは、イムノアッセイ、アフィニティクロマトグラフィー、免疫細胞化学、および核酸ハイブリダイゼーションを含む生物分析手順において広く使用されている(Wilchek and Bayer、Meth. Enzymol. 184:5, 1990)。生物分析アッセイ法はしばしば、ビオチンのアッセイ成分の1つへの共有結合を介する、アビジンに対するビオチンの高い結合親和性を利用する。ビオチンは、下記を含む多くの異なる型の分子に共有結合する可能性がある:蛋白質、例えば抗体、抗体フラグメント、酵素およびホルモン;核酸、例えばオリゴヌクレオチドおよび核酸プローブ;ならびに低分子、例えば薬剤または他の同様の化合物。さらに、いくつかの用途では、ビオチンは固相または支持体に結合してもよい。
【0005】
ビオチンの別の分子への共有結合には、適した化学官能基と反応性ビオチン誘導体との間の化学反応による結合形成が関係する。共役化のための反応性ビオチン誘導体は、ビオチンから調製することができ、最も一般的にはカルボン酸誘導体、アミン、またはヒドラジド誘導体である。一般的な反応性ビオチン誘導体としては、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルなどの反応性ビオチンエステル、およびビオチンヒドラジドが挙げられる。また、反応性ビオチン誘導体は、Sigma(St. Louis,MO)、Pierce(Rockford, IL)、Molecular Biosciences(Boulder, CO)、およびMolecular Probes(Eugene, OR)を含む商業的供給業者から得ることができる。ビオチン誘導体を蛋白質に共役化する方法は多くの出版物で記載されている(Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, NY: Cold Spring Harbor Laboratory, 1988, pp. 340-341、and Rose et al., Bioconjug. Chem. 2:154, 1991)。
【0006】
ビオチンの他に、生物分析手順で使用するために、他の化合物を生体分子に一般に共役させる。典型的には、これらの化合物は、検出目的のために生体分子を標識するのに有益である。一般的な標識化合物としては、蛍光染料、および個々の結合パートナーに結合するためのリガンドが挙げられる。この目的のために使用される一般的な蛍光染料の例としてはフルオレセインおよびローダミンが挙げられ、結合パートナーに結合するためのリガンドの例としては、ジゴキシゲニンおよびβ-ラクタム抗生物質などの薬剤化合物が挙げられる。特異的な結合技術において標識として使用するのに適した多くの他の化合物も文献で記載されている。ビオチンのように、これらの化合物は一般に生体分子と容易に反応する官能基を含むように誘導体化される。例えば、フルオレセインイソチオシアネートは、スルフヒドリル基を介して蛋白質に容易に共役化される可能性のある反応性フルオレセイン誘導体である。さらに、テザー含有チオールまたはポリヒスチジン官能基の結合により、対象分子が固体表面、例えば金またはニッケル表面に結合される。
【0007】
ビオチンまたは蛍光染料などの化合物の生体分子への効果的な共役化では一般に、得られた標識コンジュゲートが生体分子の生物活性を保持していることが必要である。コンジュゲートは、結合により、生体分子の機能活性が減少し、または失われると、有用性が限定される場合がある。例えば、抗体コンジュゲートでは、抗原結合活性(免疫反応性)の保持が最も重要である。遊離アミノ基の標識により、おそらくこれらの官能基が抗体の抗原結合部位に存在するため、抗体によっては免疫反応性が失われるので、標識が生体分子に結合される1つまたは複数の部位はかなり重要である。同様に、いくつかの酵素は活性部位に遊離アミノ基を含み、標識部位として使用されると、酵素活性が失われる場合がある。多くの酵素はまた、活性部位にスルフヒドリル基を含み、フルオレセインイソチオシアネートなどのスルフヒドリル反応性化合物で標識することにより不活性化される。
【0008】
生物活性を保持すること以外に、化合物の生体分子への結合に関するコンジュゲートの安定性もまた重要である。例えば、コンジュゲートから標識が無くなると、典型的には、生物分析手順においてコンジュゲートを追跡することができなくなる。安定な結合を提供しようとして、コンジュゲートはしばしばアミドおよびヒドラゾン結合を介して結合される。アミド結合はアミノ基とカルボン酸基との間の反応により形成され、ヒドラゾン結合はカルボニル基(例えばアルデヒド基)とヒドラジン基の反応により得られる。これらの結合は中性pHでかなり高い安定性を示し、これにより共役化技術において広く用いられる。しかしながら、これらの結合は、成分間の距離を制御し、コンジュゲートの疎水性および親水性を制御するほど十分なフレキシビリティは有していない。アミド結合の他に、他の官能基を使用して、対象分子とリンカーを結合させてもよい。例えば、アルコールおよびフェノールはエーテルまたはウレタン基を介して結合させることができ、アミンはアルキル化することができ、または尿素に変換させることができ、ハロゲン化アリールは様々な炭素-炭素カップリング法、例えばHeckまたはStilleカップリングにより結合させることができる。
【0009】
したがって、当技術分野では、生体分子を、例えば標識化合物、結合リガンドもしくは結合剤、または治療薬と共役化させるための改善された結合が必要である。そのような結合は好ましくは増強された安定性を有し、生体分子間の長さを制御する。
【発明の開示】
【0010】
発明の概要
本発明はリンカー化合物および安定に結合されたコンジュゲートを提供する。本発明の安定に結合されたコンジュゲートは免疫診断分野、分離技術、薬物送達、アッセイ法開発、スクリーニングおよび治療法において使用される。
【0011】
1つの局面では、化合物は下記化学式A1の構造を有し:
A-(X1-(CR1R2)p-C(=X2))n-X3-T1-(CR3R4X4CR5R6)m-T2-L-B (化学式A1)
式において、
AおよびBは独立して選択される、共有結合を形成することができる官能基、または生物薬剤もしくは生物分析の用途で有益な成分であり;
X1、X2、X3およびX4は、O、SおよびNHからなる群より独立して選択され;
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、水素、ハロゲンまたは低級アルキルからなる群より独立して選択され;
T1およびT2は、(CH2)r、結合またはトリアゾールからなる群より独立して選択され;
Lは結合または-NH-基を含む部分であり;
pは1、2、4、4、5、または6であり;
nは0、1、2、3、4、5、または6であり;
rは1、2、3、4、5、または6であり;および
mは3であるか、またはそれより大きい。
【0012】
化学式A1の構造を有する化合物の別の態様では、AおよびBは、カルボン酸基、アミン基、アミノキシ基、ヒドラジド基、セミカルバジド基、ヒドロキシル基、チオール基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、マレイミド基、ハロゲン化物、アジド、ボロン酸誘導体およびカルボン酸誘導体からなる群より独立して選択される。
【0013】
化学式A1の構造を有する化合物の別のもしくは他の態様または化学式A1の構造を有する化合物の態様のいずれかにおいて、Aはビオチン、ビオチニル基またはビオチニル基誘導体である。
【0014】
化学式A1の構造を有する化合物の別のもしくは他の態様または化学式A1の構造を有する化合物の態様のいずれかにおいて、X4はOである。化学式A1の構造を有する別のもしくは他の態様または化学式A1の構造を有する化合物の態様のいずれかにおいて、X2はOである。
【0015】
化学式A1の構造を有する化合物の別のもしくは他の態様または化学式A1の構造を有する化合物の態様のいずれかにおいて、R1、R2、R3、R4、R5およびR6は水素である。化学式A1の構造を有する別のもしくは他の態様または化学式A1の構造を有する化合物の態様のいずれかにおいて、pは5であり;nは1、2、または3であり;およびmは6、7、8、9または10である。
【0016】
化学式A1の構造を有する化合物の別のもしくは他の態様または化学式A1の構造を有する化合物の態様のいずれかにおいて、T2はCH2である。化学式A1の構造を有する化合物の別の態様または化学式A1の構造を有する化合物の態様のいずれかにおいて、T1はトリアゾールである。
【0017】
化学式A1の構造を有する化合物の別のもしくは他の態様または化学式A1の構造を有する化合物の態様のいずれかにおいて、Lは直接結合である。化学式A1の構造を有する化合物の他の態様または化学式A1の構造を有する化合物の態様のいずれかにおいて、Lは-NH-基を含む部分である。化学式A1の構造を有する化合物の他の態様または化学式A1の構造を有する化合物の態様のいずれかにおいて、Lは-NH-C(O)-基を含む部分である。化学式A1の構造を有する化合物の他の態様または化学式A1の構造を有する化合物の態様のいずれかにおいて、Lは-NH-、-C(O)NH-、-NHC(O)NH-および-C(O)CH2CH2C(O)NH-からなる群より選択される。
【0018】
化学式A1の構造を有する化合物の別のもしくは他の態様または化学式A1の構造を有する化合物の態様のいずれかにおいて、Aは生物薬剤または生物分析の用途で有益な成分である。化学式A1の構造を有する化合物の別のもしくは他の態様または化学式A1の構造を有する化合物の態様のいずれかにおいて、Bは生物薬剤または生物分析の用途で有益な成分である。化学式A1の構造を有する化合物の別のもしくは他の態様または化学式A1の構造を有する化合物の態様のいずれかにおいて、AまたはBの少なくとも1つは結合剤、標識化合物、または治療薬である。化学式A1の構造を有する化合物の別のもしくは他の態様または化学式A1の構造を有する化合物の態様のいずれかにおいて、AまたはBはビオチン、抗原、抗体、リボフラビン、サイトスタチン、およびval-ホスフェートからなる群より選択される結合剤である。化学式A1の構造を有する化合物の別のもしくは他の態様または化学式A1の構造を有する化合物の態様のいずれかにおいて、AまたはBはスピラマイシン、イプリフラボン、メサラジンおよびクロタミトンからなる群より選択される治療薬である。化学式A1の構造を有する化合物の別のもしくは他の態様または化学式A1の構造を有する化合物の態様のいずれかにおいて、AまたはBは蛍光標識、酵素、酵素基質、および放射性標識からなる群より選択される標識化合物である。化学式A1の構造を有する化合物の別のもしくは他の態様または化学式A1の構造を有する化合物の態様のいずれかにおいて、AまたはBはフルオレセイン、ローダミン、FITC(フルオレセインイソチオシアネート)、HEX(4,5,2',4',5',7'-ヘキサクロロ-6-カルボキシフルオレセイン)、5-IAF、TAMRA(6-カルボキシテトラメチルローダミン)、TET(4,7,2',7'-テトラクロロ-6-カルボキシフルオレセイン)、XRITC(ローダミン-X-イソチオシアネート)、Texas Red、CY2、CY3およびCY5から選択される蛍光標識である。化学式A1の構造を有する化合物の別のもしくは他の態様または化学式A1の構造を有する化合物の態様のいずれかにおいて、AまたはBのうちの1つはアルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼおよびルシフェラーゼから選択される酵素である。化学式A1の構造を有する化合物の別のもしくは他の態様または化学式A1の構造を有する化合物の態様のいずれかにおいて、AまたはBの少なくとも1つはキナーゼ阻害剤である。化学式A1の構造を有する化合物の別のもしくは他の態様または化学式A1の構造を有する化合物の態様のいずれかにおいて、AまたはBの少なくとも1つは結合剤または標識化合物であり、AまたはBの残りは治療薬である。化学式A1の構造を有する化合物の別のもしくは他の態様または化学式A1の構造を有する化合物の態様のいずれかにおいて、AまたはBはキナーゼ阻害薬である治療薬である。化学式A1の構造を有する化合物の別のもしくは他の態様または化学式A1の構造を有する化合物の態様のいずれかにおいて、AまたはBは下記からなる群より選択されるキナーゼ阻害剤である。



【0019】
別の、または関連する局面では、化合物は、化合物27、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73および74からなる群より選択される。
【0020】
別のまたは関連する局面では、化合物は下記構造を有する:

式において、nは0、1、または2であり、LCは(CH2)5C(O)NHであり、かつPEGは(CH2CH2O)である。
【0021】
1つの局面では、本発明は下記構造を有するリンカー化合物を提供する:
X((CR1R2)5-C(=X1)X2)n-(CR3R4CR5R6X3)m-CR7R8CR9R10X4
式において、XおよびX4は独立して選択される共有結合を形成することができる官能基であり;X1、X2およびX3は、O、S、およびNHからなる群より独立して選択され;R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10は水素、ハロゲン、低級アルキル、アリールおよびヘテロアリールからなる群より独立して選択され;nは1、2、または3であり;およびmは6、7、8、9、または10である。XおよびX4はカルボン酸基、アミン基、アミノキシ基、ヒドラジド基、セミカルバジド基、ヒドロキシル基、チオール基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、マレイミド基、カルボン酸誘導体、ハロゲン化物、アジド、またはボロン酸誘導体とすることができる。
【0022】
別の局面では、本発明は下記構造を有するリンカー化合物を提供する:
X((CH2)5-C(=O)NH)n-(CH2CH2O)m-CR7R8CR9R10X4
式において、XおよびX4は独立して選択される共有結合を形成することができる官能基であり;nは1、2、または3であり;およびmは6、7、8、9、または10である。XおよびX4はカルボン酸基、アミン基、アミノキシ基、ヒドラジド基、セミカルバジド基、ヒドロキシル基、チオール基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、マレイミド基およびカルボン酸誘導体とすることができる。
【0023】
別の局面では、本発明は下記構造を有する化合物を提供する:
A-((CR1R2)5-C(=X1)X2)n-(CR3R4CR5R6X3)m-CR7R8CR9R10X4
式において、Aは生物薬剤または生物分析の用途において有益な成分であり;X4は共有結合を形成することができる官能基であり;X1、X2およびX3は、O、S、およびNHからなる群より独立して選択され;R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10は水素、ハロゲン、低級アルキル、アリールおよびヘテロアリールからなる群より独立して選択され;nは1、2、または3であり;およびmは6、7、8、9、または10である。X4はカルボン酸基、アミン基、アミノキシ基、ヒドラジド基、セミカルバジド基、ヒドロキシル基、チオール基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、マレイミド基、およびカルボン酸誘導体とすることができる。Aは結合剤、例えば、ビオチン、抗原、抗体、リボフラビン、サイトスタチン、およびval-ホスフェート;標識化合物、例えば蛍光標識は、フルオレセイン、ローダミン、FITC(フルオレセインイソチオシアネート)、HEX(4,5,2',4',5',7'-ヘキサクロロ-6-カルボキシフルオレセイン)、5-IAF、TAMRA(6-カルボキシテトラメチルローダミン)、TET(4,7,2',7'-テトラクロロ-6-カルボキシフルオレセイン)、XRITC(ローダミン-X-イソチオシアネート)、Texas Red(登録商標)、Cy2、CY3およびCY5から選択される;金属表面結合剤、例えばチオールまたはイミダゾール基、または治療薬とすることができる。
【0024】
別の局面では、本発明は下記構造を有する化合物を提供する:
A-Y-((CR1R2)5-C(=X1)X2)n-(CR3R4CR5R6X3)m-CR7R8CR9R10-B
式において、AおよびBは独立して選択される、生物薬剤または生物分析の用途において有益な成分であり;Yはアミド結合、アミン結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、尿素結合、チオ尿素結合、カルバメート結合、チオカルバメート結合、Schiff塩基結合、還元Schiff塩基結合、オキシム結合、セミカルバジド結合、ヒドラゾン結合および炭素-炭素結合からなる群より選択され;X1、X2およびX3は、O、S、およびNHからなる群より独立して選択され;R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10は水素、ハロゲン、低級アルキル、アリールおよびヘテロアリールからなる群より独立して選択され;nは1、2、または3であり;およびmは6、7、8、9、または10である。AおよびBは独立して選択することができ、結合剤、例えば、ビオチン、抗原、抗体、リボフラビン、サイトスタチン、およびval-ホスフェート;標識化合物、例えば蛍光標識は、フルオレセイン、ローダミン、FITC(フルオレセインイソチオシアネート)、HEX(4,5,2',4',5',7'-ヘキサクロロ-6-カルボキシフルオレセイン)、5-IAF、TAMRA(6-カルボキシテトラメチルローダミン)、TET(4,7,2',7'-テトラクロロ-6-カルボキシフルオレセイン)、XRITC(ローダミン-X-イソチオシアネート)、Texas Red(登録商標)、Cy2、CY3およびCY5から選択される;または治療薬、例えばスピラマイシン、イプリフラボン、メサラジンおよびクロタミトンとすることができる。
【0025】
別の局面では、本発明は新規化合物27、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73および74を提供する。
【0026】
1つの局面では、本発明は下記構造を有する化合物を提供する:
Z-(CR3R4CR5R6X3)m-CR7R8CR9R10X4-B
式において、ZはHまたはR11であり、ここで、R11は低級アルキル、アリール、ヘテロアリール、X((CR1R2)5-C(=X1)X2)n-、A-((CR1R2)5-C(=X1)X2)n-、およびA-Y-((CR1R2)5-C(=X1)X2)n-からなる群より選択され;XおよびX4は、独立して選択される共有結合を形成することができる官能基であり、または直接結合であり;X1、X2およびX3は、O、S、およびNHからなる群より独立して選択され;R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10は水素、ハロゲン、低級アルキル、アリールおよびヘテロアリールからなる群より独立して選択され;nは1、2、または3であり;およびmは6、7、8、9、または10であり;Tは直接結合またはトリアゾールであり;Aは生物薬剤または生物分析の用途において有益な成分であり;Yはアミド結合、アミン結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、尿素結合、チオ尿素結合、カルバメート結合、ヒドラジド結合、チオカルバメート結合、Schiff塩基結合、還元Schiff塩基結合、オキシム結合、セミカルバジド結合、ヒドラゾン結合および炭素-炭素結合からなる群より選択され;およびBは治療薬である。いくつかの態様では、治療薬Bはキナーゼ阻害薬であり、例えば、本明細書で記載されるように、化合物、I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、XIV、XV、XVI、XVII、XVIII、IX、XX、XXI、XXII、XXIII、XXIV、XXV、XXVI、XXVII、XXVIII、XXIX、XXX、XXXI、XXXII、XXXIII、XXXIV、XXXV、XXXVI、XXXVII、XXXVIII、XXXIXまたはXLのうちの1つまたは複数である。
【0027】
別の局面では、構造Z'-X4-Bを有する化合物を提供し、ここで、Bはキナーゼ阻害剤であり;X4は直接結合または非置換または置換炭素、N、OまたはSから独立して選択される1〜3個の原子を有する結合基であり;Z'はH、低級アルキル、アリール、ヘテロアリール、X((CR1R2)5-C(=X1)X2)n-T-(CR3R4CR5R6X3)m-CR7R8CR9R10-、A-((CR1R2)5-C(=X1)X2)n-T-(CR3R4CR5R6X3)m-CR7R8CR9R10-、A-Y-((CR1R2)5-C(=X1)X2)n-T-(CR3R4CR5R6X3)m-CR7R8CR9R10-、およびX((CR1R2)5-C(=X1)X2)n-T-(CR3R4CR5R6X3)m-CR7R8CR9R10-からなる群より選択され、ここで、Xは共有結合を形成することができる官能基であり、または直接結合であり;X1、X2およびX3はO、S、およびNHからなる群より独立して選択され;R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10は水素、ハロゲン、低級アルキル、アリールおよびヘテロアリールからなる群より独立して選択され;nは1、2、または3であり;mは6、7、8、9、または10であり;Tは直接結合またはトリアゾールであり;Aは生物薬剤または生物分析の用途において有益な成分であり;およびYはアミド結合、アミン結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、尿素結合、チオ尿素結合、カルバメート結合、ヒドラジド結合、チオカルバメート結合、Schiff塩基結合、還元Schiff塩基結合、オキシム結合、セミカルバジド結合、ヒドラゾン結合および炭素-炭素結合からなる群より選択される。
【0028】
特に記載がなければ、明細書および請求の範囲を含む本出願で使用される下記用語は、下記定義を有する。明細書および添付の請求の範囲で使用されるように、「1つの(a、an)」および「その(the)」という単数形態は、文脈で明確に示されていなければ、複数の指示対象を含むことに注意しなければならない。標準の化学用語の定義は、Carey and Sundberg (1992)“ADVANCED ORGANIC CHEMISTRY 3RD ED.”Vols. A and B, Plenum Press, New Yorkを含む参考資料で見いだされる場合がある。特に他に記載がなければ、当分野の技術の範囲内にある、質量分析、NMR、HPLC、蛋白質化学、生物化学、組換えDNA技術および薬理学の従来の方法を使用する。
【0029】
「作用薬(agonist)」という用語は、別の分子の活性または受容体部位の活性を増強する化合物、薬物、酵素活性化剤またはホルモンなどの分子を意味する。
【0030】
「アルケニル基」という用語は、その中に1つまたは複数の二重結合を有する一価の非分枝または分枝炭化水素鎖を含む。アルケニル基の二重結合は、別の不飽和基と共役することができ、共役していなくてもよい。適したアルケニル基としては、(C2〜C8)アルケニル基、例えば、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ブタジエニル、ペンタジエニル、ヘキサジエニル、2-エチルヘキセニル、2-プロピル-2-ブテニル、4-(2-メチル-3-ブテン)-ペンテニルが挙げられるが、それらに限定されない。アルケニル基は非置換または置換することができる。
【0031】
本明細書で使用されるように「アルコキシ」という用語は、-O-(アルキル)を含み、ここで、アルキルは上記で規定した通りである。
【0032】
「低級アルキル」という用語は、1〜10の炭素原子を有する直鎖または分枝、飽和もしくは不飽和鎖を意味する。代表的な飽和アルキル基としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、2-メチル-1-プロピル、2-メチル-2-プロピル、2-メチル-1-ブチル、3-メチル-1-ブチル、2-メチル-3-ブチル、2,2-ジメチル-1-プロピル、2-メチル-1-ペンチル、3-メチル-1-ペンチル、4-メチル-1-ペンチル、2-メチル-2-ペンチル、3-メチル-2-ペンチル、4-メチル-2-ペンチル、2,2-ジメチル-1-ブチル、3,3-ジメチル-1-ブチル、2-エチル-1-ブチル、ブチル、イソブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、およびn-ヘキシル、ならびにより長いアルキル基、例えばヘプチルおよびオクチルが挙げられるが、それらに限定されない。アルキル基は非置換または置換することができる。不飽和アルキル基としては、下記で記載する、アルケニル基およびアルキニル基が挙げられる。3つまたはそれ以上の炭素原子を含むアルキル基は直鎖、分枝または環状としてもよい。
【0033】
「アルキニル基」という用語は、1つまたは複数の三重結合をその中に有する一価の非分枝または分枝炭化水素鎖を含む。アルキニル基の三重結合は、別の不飽和結合と非共役または共役とすることができる。適したアルキニル基としては、(C2〜C6)アルキニル基、例えばエチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、メチルプロピニル、4-メチル-1-ブチニル、4-プロピル-2-ペンチニル、および4-ブチル-2-ヘキシニルが挙げられるが、それらに限定されない。アルキニル基は非置換または置換することができる。
【0034】
「アリール」という用語は、5〜30環原子を含む炭素環または複素環芳香族基を含む。炭素環芳香族基の環原子はすべて炭素であり、フェニル、トリル、アントラセニル、フルオレニル、インデニル、アズレニル、およびナフチル、ならびに5,6,7,8-テトラヒドロナフチルなどのベンゾ-縮合炭素環部分が挙げられるが、それらに限定されない。炭素環芳香族基は非置換または置換することができる。好ましくは、炭素環芳香族基はフェニル基である。複素環芳香族基の環原子は、窒素、酸素および硫黄から独立して選択される、少なくとも1つのヘテロ原子、好ましくは1〜3のヘテロ原子を含む。複素環芳香族基の例示的な例としては、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジル、ピラジル、トリアジニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、(1,2,3)-および(1,2,4)-トリアゾリル、ピラジニル、ピリミジニル、テトラゾリル、フリル、チエニル、イソキサゾリル、チアゾリル、フリル、フィエニル、イソキサゾリル、インドリル、オキセタニル、アゼピニル、ピペラジニル、モルホリニル、ジオキサニル、チエタニルおよびオキサゾリルが挙げられるが、それらに限定されない。複素環芳香族基は非置換または置換することができる。好ましくは、複素環芳香族は、単環であり、ここで、環は2〜5個の炭素原子および1〜3個のヘテロ原子を含む。
【0035】
「アリールオキシ」という用語は-O-アリール基を含み、ここで、アリールは上記で規定した通りである。アリールオキシは非置換または置換することができる。
【0036】
「シクロアルキル」という用語は、炭素および水素原子を有するが、炭素-炭素多重結合を有しない単環式または多環式飽和環を含む。シクロアルキル基の例としては、(C3〜C7)シクロアルキル基、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、およびシクロヘプチル、ならびに飽和環状および二環式テルペンが挙げられるが、それらに限定されない。シクロアルキル基は非置換または置換することができる。好ましくは、シクロアルキル基は単環または二環である。
【0037】
「有効量」または「治療的有効量」という用語は、所望の生物学的結果を提供するのに十分な薬剤量を示す。その結果は、徴候、症状、もしくは疾患原因の軽減および/または緩和、または生物系の任意の他の所望の変化とすることができる。例えば、治療的用途に対する「有効量」は、臨床的に有意の疾患の軽減を提供するのに必要とされる、本明細書で開示されている化合物を含む組成物の量である。いずれの場合においても、適当な「有効」量は、当業者により、ルーチン実験を用いて決定される可能性がある。
【0038】
「ハロゲン」という用語はフッ素、塩素、臭素およびヨウ素を含む。
【0039】
「薬学的に許容される」または「薬理学的に許容される」という用語は、生物学的にまたはその他の点で望ましくないことはない材料を意味し、すなわち、材料を個人に投与してもよく、望ましくない生物学的効果を引き起こすことはなく、またはその中に含まれている組成物の成分のいずれとも有害な様式で相互作用することはない。
【0040】
化合物の「薬学的に許容される塩」という用語は、薬学的に許容され、親化合物の所望の薬理活性を有する塩を意味する。例えば、そのような塩としては、下記が挙げられる:(1)下記と共に形成される酸付加塩:無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸など;または有機酸、例えば酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタンジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、4-メチルビシクロ-[2,2,2]オクト-2-エン-1-カルボン酸、グルコヘプトン酸、4,4'-メチレンビス-(3-ヒドロキシ-2-エン-1-カルボン酸)、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、第3ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸、など;(2)親化合物中に存在する酸性プロトンが金属イオン、例えばアルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン、またはアルミニウムイオンにより置換された時、または有機塩基が配位した時に形成される塩。許容される有機塩基としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N-メチルグルカミン、などが挙げられる。許容される無機塩基としては、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、などが挙げられる。薬学的に許容される塩に言及された場合、その溶媒付加形態または結晶形態、特に溶媒和物または多形体が含まれることを理解すべきである。溶媒和物は、化学量論量または非化学量論量の溶媒を含み、結晶化過程中に形成される可能性がある。水和物は溶媒が水である場合に形成され、またはアルコラートは溶媒がアルコールである場合に形成される。多形体は、化合物の同じ元素組成の異なる結晶充填配列を含む。多形体は通常、異なるX線回折パターン、赤外線スペクトル、融点、密度、硬度、結晶形、光学および電気特性、安定性ならびに溶解度を有する。再結晶化溶媒、結晶化速度、および貯蔵温度などの様々な因子により、単一の結晶形態が大半を占める可能性がある。
【0041】
「被験者」という用語は、哺乳類および非哺乳類を含む。哺乳類の例としては、下記哺乳類クラスの任意のメンバーが挙げられるが、それらに限定されない:ヒト、チンパンジーなどの非ヒト霊長類、ならびに他の類人猿およびサル種;家畜(farm animal)、例えば、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ;家畜(domestic animal)、例えば、ウサギ、イヌおよびネコ;齧歯類を含む実験動物、例えばラット、マウスおよびモルモット、など。非哺乳類の例としては、トリ、サカナなどが挙げられるが、それらに限定されない。本発明の1つの態様では、哺乳類はヒトである。
【0042】
「スルホニル」という用語は、硫黄原子の存在を示し、硫黄原子は任意で、脂肪族基、芳香族基、アリール基、脂環式基、または複素環基などの別の部分に結合される。アリールまたはアルキルスルホニル部分は化学式-SO2R'を有し、アルコキシ部分は化学式-O-R'を有し、ここで、R'は上記で規定されるようなアルキルであり、またはアリールであり、ここで、アリールはハロ(フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨード)、低級アルキル(1〜6C)および低級アルコキシ(1〜6C)から独立して選択される1〜3個の置換基で置換されてもよいフェニルである。
【0043】
本明細書で使用されるように「治療」という用語およびその文法的相当語句は、治療的利益および/または予防的利益を達成することを含む。治療的利益は、治療を受ける基礎疾患の根絶、寛解もしくは予防、または基礎疾患と関連する生理学的徴候の1つまたは複数の根絶、寛解もしくは予防を意味し、そのため、患者は依然として基礎疾患に苦しむにもかかわらず、患者において改善が見られる。予防的利益のために、例えば、疾患の診断がなされていない可能性があっても、本明細書で記載した組成物を特別な疾患を発症する危険のある患者またはその疾患の生理学的徴候の1つまたは複数が報告されている患者に投与してもよい。
【0044】
特に記載がなければ、置換基が「任意で置換される」と考えられる場合、置換基は、例えば、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、メルカプト、アルキルチオ、アリールチオ、シアノ、ハロ、カルボニル、チオカルボニル、O-カルバミル、N-カルバミル、O-チオカルバミル、N-チオカルバミル、C-アミド、N-アミド、S-スルホンアミド、N-スルホンアミド、C-カルボキシ、O-カルボキシ、イソシアナト、チオシアナト、イソチオシアナト、ニトロ、ペルハロアルキル、ペルフルオロアルキル、シリル、トリハロメタンスルホニル、および一置換および二置換アミノ基を含むアミノ、ならびにそれらの保護誘導体からそれぞれ独立して選択される1つまたは複数の官能基で置換されてもよい官能基であることを意味する。上記置換基の保護誘導体を形成してもよい保護基は、当業者には公知である。
【0045】
本発明の分子態様は、1つまたは複数の不斉中心を有してもよく、各中心はRまたはS配置で存在してもよい。本発明は全てのジアステレオマー、鏡像異性体およびエピマー形態、ならびにそれらの適当な混合物を含む。所望であれば、当技術分野で公知の方法、例えば、キラルクロマトグラフィーカラムによる立体異性体の分離により、立体異性体を得てもよい。また、本発明の化合物は幾何異性体として存在してもよい。本発明は全ての、cis、trans、syn、anti、エントゲーゲン(entgegen)(E)およびツザーメン(zusammen)(Z)異性体、ならびにそれらの適当な混合物を含む。場合によっては、化合物は互変異性体として存在してもよい。互変異性体は全て本発明により提供される、本明細書で記載した化学式に含まれる。
【0046】
さらに、本発明の化合物は非溶媒和形態、ならびに薬学的に許容される溶媒、例えば、水、エタノールなどとの溶媒和形態で存在することができる。一般に、溶媒和形態は、本発明の目的では非溶媒和形態と等価であると考えられる。
【0047】
本発明のこれらのおよび他の局面は、下記詳細な説明を参照すると明らかになると思われる。さらに、より詳細に一定の手順または組成物を説明する様々な参考文献が本明細書で示されており、これらは参照により全体が本明細書に組み入れられる。
【0048】
発明の詳細な説明
化合物
本発明は一般に、複数の成分のコンジュゲート間の結合を形成するために有益なリンカー化合物に関する。好ましくは、形成される結合は安定な結合である。コンジュゲートが2つの成分を含む場合、リンカー化合物は第1の成分と第2の成分間で結合、好ましくは安定な結合を形成する。いくつかの態様では、本発明は、安定で、第1の成分と第2の成分との間の距離を制御、決定する手段を提供するリンカー化合物を開示する。さらに、本発明のリンカー化合物は、コンジュゲートがより高い、またはより低い疎水性を有するように選択することができる。いくつかの態様では、リンカー化合物は、カルボキシル-、アルデヒド-、アミン-、ヒドロキシ-、チオール-、またはアリールハロゲン化物含有成分と結合を形成することができるポリエチレングリコール(PEG)およびアミノカプロン酸(長鎖では「LC」)から構成される。リンカー化合物を構成するPEGおよびLCの繰り返しユニットの数および順序は、第1成分と第2成分との間の長さ、ならびにリンカーの疎水性および親水性特性が制御できるように選択することができる。
【0049】
したがって、1つの局面では、本発明は、リンカー化合物により促進される結合を介して第2成分に共有結合された第1成分を含む結合コンジュゲート(linked conjugate)を提供する。そのようなコンジュゲートは一般に下記構造Iにより表すことができ:
A-リンカー-B (I)
式において、Aは第1成分であり、Bは第2成分であり、リンカーはAおよびBの両方に共有結合される。好ましくは、結合コンジュゲートは安定した結合を介して結合される。
【0050】
いくつかの態様では、結合コンジュゲートは、例えば下記で示されるように、疎水性ユニットおよび親水性ユニットを含むリンカー化合物により形成された結合を介して第2成分に共有結合された第1成分を含む:
A-疎水性ユニット-親水性ユニット-B
【0051】
好ましい態様では、疎水性ユニットは1つまたは複数のアミノカプロン酸ユニットを含み、親水性ユニットは4つまたはそれ以上のPEGユニットを含む。
【0052】
1つの局面では、本発明は下記構造を有するリンカー化合物を提供する:
X((CR1R2)p-C(=X1)X2)n-(CR3R4CR5R6X3)m-CR7R8CR9R10X4
式において、XおよびX4は、独立して選択される共有結合を形成することができる官能基であり;X1、X2およびX3は、O、S、およびNHからなる群より独立して選択され;R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10は水素、ハロゲン、アルキル、アリールおよびヘテロアリールからなる群より独立して選択され;pは1またはそれ以上であり;nは1またはそれ以上であり;およびmは3またはそれ以上である。XおよびX4はカルボン酸基、アミン基、アミノキシ基、ヒドラジド基、セミカルバジド基、ヒドロキシル基、チオール基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、マレイミド基、ハロゲン化物、アジド、ボロン酸誘導体またはカルボン酸誘導体とすることができる。例えば、いくつかの態様では、pは1〜10の範囲である。別の態様では、pは2〜8の範囲である。さらに別の態様では、pは5に等しい。いくつかの態様では、nは1〜3の範囲である。いくつかの態様では、mは4〜20の範囲である。別の態様では、mは7〜11の範囲である。
【0053】
別の局面では、本発明は下記構造を有するリンカー化合物を提供する:
X((CH2)p-C(=O)NH)n-(CH2CH2O)m-CR7R8CR9R10X4
式において、XおよびX4は、独立して選択される共有結合を形成することができる官能基であり;R7、R8、R9およびR10は水素、ハロゲン、アルキル、アリールおよびヘテロアリールからなる群より独立して選択され;pは1またはそれ以上であり;nは1またはそれ以上であり;およびmは3またはそれ以上である。XおよびX4はカルボン酸基、アミン基、アミノキシ基、ヒドラジド基、セミカルバジド基、ヒドロキシル基、チオール基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、マレイミド基、ハロゲン化物、アジド、ボロン酸誘導体またはカルボン酸誘導体とすることができる。いくつかの態様では、pは1〜10の範囲である。別の態様では、pは2〜8の範囲である。さらに別の態様では、pは5に等しい。いくつかの態様では、nは1〜3の範囲である。いくつかの態様では、mは4〜20の範囲である。別の態様では、mは7〜11の範囲である。
【0054】
別の局面では、本発明は下記構造を有する化合物を提供する:
A-((CR1R2)p-C(=X1)X2)n-(CR3R4CR5R6X3)m-CR7R8CR9R10X4
式において、Aは生物薬剤または生物分析の用途において有益な成分であり;X4は共有結合を形成することができる官能基であり;X1、X2およびX3は、O、S、およびNHからなる群より独立して選択され;R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10は水素、ハロゲン、アルキル、アリールおよびヘテロアリールからなる群より独立して選択され;pは1またはそれ以上であり;nは1またはそれ以上であり;およびmは3またはそれ以上である。X4はカルボン酸基、アミン基、アミノキシ基、ヒドラジド基、セミカルバジド基、ヒドロキシル基、チオール基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、マレイミド基、ハロゲン化物、アジド、ボロン酸誘導体またはカルボン酸誘導体とすることができる。Aは結合剤、標識化合物、または治療薬とすることができる。いくつかの態様では、pは1〜10の範囲である。別の態様では、pは2〜8の範囲である。さらに別の態様では、pは5に等しい。いくつかの態様では、nは1〜3の範囲である。いくつかの態様では、mは4〜20の範囲である。別の態様では、mは7〜11の範囲である。
【0055】
別の局面では、本発明は下記構造を有する化合物を提供する:
A-Y-((CR1R2)p-C(=X1)X2)n-(CR3R4CR5R6X3)m-CR7R8CR9R10-B
式において、AおよびBは独立して選択される、生物薬剤または生物分析の用途において有益な成分であり;Yはアミド結合、アミン結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、尿素結合、チオ尿素結合、ヒドラジド結合、カルバメート結合、チオカルバメート結合、Schiff塩基結合、還元Schiff塩基結合、オキシム結合、セミカルバジド結合、ヒドラゾン結合および炭素-炭素結合からなる群より選択され;X1、X2およびX3は、O、S、およびNHからなる群より独立して選択され;R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10は水素、ハロゲン、アルキル、アリールおよびヘテロアリールからなる群より独立して選択され;pは1またはそれ以上であり;nは1またはそれ以上であり;およびmは3またはそれ以上である。AおよびBは独立して選択することができ、結合剤、標識化合物、または治療薬とすることができる。いくつかの態様では、pは1〜10の範囲である。別の態様では、pは2〜8の範囲である。さらに別の態様では、pは5に等しい。いくつかの態様では、nは1〜3の範囲である。いくつかの態様では、mは4〜20の範囲である。別の態様では、mは7〜11の範囲である。
【0056】
1つの局面では、本発明は下記構造を有する化合物を提供する:
Z-(CR3R4CR5R6X3)m-CR7R8CR9R10X4-B
式において、ZはHまたはR11であり、ここで、R11は低級アルキル、アリール、ヘテロアリール、X((CR1R2)p-C(=X1)X2)n-、A-((CR1R2)p-C(=X1)X2)n-、およびA-Y-((CR1R2)p-C(=X1)X2)n-からなる群より選択され;XおよびX4は、独立して選択される共有結合を形成することができる官能基であり、または直接結合であり;X1、X2およびX3は、O、S、およびNHからなる群より独立して選択され;R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10は水素、ハロゲン、低級アルキル、アリールおよびヘテロアリールからなる群より独立して選択され;pは1またはそれ以上であり;nは1またはそれ以上であり;およびmは3またはそれ以上であり;Aは生物薬剤または生物分析の用途において有益な成分であり;Yはアミド結合、アミン結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、尿素結合、チオ尿素結合、カルバメート結合、ヒドラジド結合、チオカルバメート結合、Schiff塩基結合、還元Schiff塩基結合、オキシム結合、セミカルバジド結合、ヒドラゾン結合および炭素-炭素結合からなる群より選択され;およびBは治療薬である。いくつかの態様では、治療薬Bはキナーゼ阻害薬であり、例えば、本明細書で開示されるように、化合物、I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、XIV、XV、XVI、XVII、XVIII、IX、XX、XXI、XXII、XXIII、XXIV、XXV、XXVI、XXVII、XXVIII、XXIX、XXX、XXXI、XXXII、XXXIII、XXXIV、XXXV、XXXVI、XXXVII、XXXVIII、XXXIXまたはXLのうちの1つまたは複数である。いくつかの態様では、pは1〜10の範囲である。別の態様では、pは2〜8の範囲である。さらに別の態様では、pは5に等しい。いくつかの態様では、nは1〜3の範囲である。いくつかの態様では、mは4〜20の範囲である。別の態様では、mは7〜11の範囲である。本明細書で開示したリンカー化合物と共役化することができる他のキナーゼ阻害剤の例は当技術分野で公知である。
【0057】
別の局面では、構造Z'-X4-Bを有する化合物を提供し、ここで、Bはキナーゼ阻害剤であり;X4は直接結合または非置換または置換炭素、N、OまたはSから独立して選択される1〜3個の原子を有する結合基であり;Z'はH、低級アルキル、アリール、ヘテロアリール、X((CR1R2)p-C(=X1)X2)n-T-(CR3R4CR5R6X3)m-CR7R8CR9R10-、A-((CR1R2)p-C(=X1)X2)n-T-(CR3R4CR5R6X3)m-CR7R8CR9R10-、A-Y-((CR1R2)p-C(=X1)X2)n-T-(CR3R4CR5R6X3)m-CR7R8CR9R10-、およびX((CR1R2)p-C(=X1)X2)n-T-(CR3R4CR5R6X3)m-CR7R8CR9R10-からなる群より選択され、ここで、Xは共有結合を形成することができる官能基であり、または直接結合であり;X1、X2およびX3はO、S、およびNHからなる群より独立して選択され;R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10は水素、ハロゲン、低級アルキル、アリールおよびヘテロアリールからなる群より独立して選択され;pは1またはそれ以上であり;nは1またはそれ以上であり;およびmは3またはそれ以上であり;Tは直接結合またはトリアゾールであり;Aは生物薬剤または生物分析の用途において有益な成分であり;およびYはアミド結合、アミン結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、尿素結合、チオ尿素結合、カルバメート結合、ヒドラジド結合、チオカルバメート結合、Schiff塩基結合、還元Schiff塩基結合、オキシム結合、セミカルバジド結合、ヒドラゾン結合および炭素-炭素結合からなる群より選択される。いくつかの態様では、pは1〜10の範囲である。別の態様では、pは2〜8の範囲である。さらに別の態様では、pは5に等しい。いくつかの態様では、nは1〜3の範囲である。いくつかの態様では、mは4〜20の範囲である。別の態様では、mは7〜11の範囲である。
【0058】
別の局面では、本発明は新規化合物27、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73および74を提供する。
【0059】
本発明の1つの局面では、A成分は特異的な結合パートナーに結合することができる結合剤とすることができる。広範囲にわたる結合剤、例えば選択した抗原を認識する抗体および抗体フラグメントを使用することができる。そのような抗体をさらにスクリーニングすることにより、高い親和性を有するもの、リボフラビン結合蛋白質に結合するリボフラビン、10-14Mの親和性でパパインに結合するサイトスタチン、10-14Mの親和性でカルボキシペプチダーゼAに結合するval-ホスホネート、10-13Mの親和性でRuBisCoに結合する4CABP、10-15Mの親和性を有するアビジンに結合するビオチンを選択することができる。いくつかの態様では、A成分はビオチンであり、これはアビジンまたはストレプトマイシンへの結合により容易に検出することができる。イムノアッセイ法および免疫細胞化学用途では、アビジンまたはストレプトマイシンはそれ自体、直接または間接的に標識されてもよく、または固体支持体(support)に結合されてもよい。ビオチン標識(ビオチニル化)リガンドおよびアビジンまたはストレプトアビジンを使用するイムノアッセイ法の例は下記参考文献に示されている:米国特許第4,863,876号、同第5,028,524号および同第5,371,516号。核酸ハイブリダイゼーションアッセイ法もまた、ビオチニル化プローブを用いて実施することができ、対象の特異配列が可視化される。ビオチニル化プローブおよびアビジンまたはストレプトアビジンを使用するハイブリダイゼーションアッセイ法はYamane et al., Nuc. Acids Symp. Ser. 21:9, 1989およびBaretton et al., Cancer Res. 54:4472, 1994において示されている。ビオチニル化抗体および固定アビジンを使用する免疫親和性クロマトグラフィーがHofman et al., Am, Chem. Soc. 100:3685, 1978、Bayer et al., Meth. Enzymol. 62:308, 1979、ならびに米国特許第5,225,353号、同5,215,927号および同第5,262,334号において記載されている。
【0060】
結合剤の他に、A成分は、標識が結合されたリンカー化合物または結合コンジュゲートの存在を報告する標識化合物としてもよい。適した標識の例としては、蛍光標識、酵素、酵素基質、および放射性標識が挙げられる。標識は分光的に検出することができ、蛍光、リン光、発光、および発色分子が含まれる。蛍光標識としてはフルオレセイン、ローダミン、FITC(フルオレセインイソチオシアネート)、HEX(4,5,2',4',5',7'-ヘキサクロロ-6-カルボキシフルオレセイン)、5-IAF、TAMRA(6-カルボキシテトラメチルローダミン)、TET(4,7,2',7'-テトラクロロ-6-カルボキシフルオレセイン)、XRITC(ローダミン-X-イソチオシアネート)、Texas Red(登録商標)、Cy2、CY3、CY5および他のシアニン誘導体ならびにフィコビリ蛋白質などの蛍光蛋白質が挙げられる。標識化合物として、酵素および酵素基質は酵素作用時に検出可能な信号を生成する。標識として酵素を使用することは周知である。標識目的の一般的な酵素としては、例えば、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼおよびルシフェラーゼが挙げられる。典型的な酵素基質標識としては、酵素作用により発光するジオキセタンなどの化学発光化合物が挙げられる。放射性標識としては、放射性同位体、例えば、水素、炭素、硫黄、リンの放射性同位体、ならびに放射性金属、例えばCu-64、Ga-67、Ga-68、Zr-89、Ru-97、Tc-99m、Rh-105、Pd-109、In-111、I-123、I-125、I-131、Re-186、Au-198、Au-199、Pb-203、At-211、Pb-212およびBi-212を有する化合物が挙げられる。
【0061】
上記のように、A成分はリンカー化合物に共有結合する官能基を有する。例えば、A成分がビオチンである場合、ビオチンはビオチンカルボン酸基を介してリンカー化合物に直接結合してもよい。そのようなカップリングでは、ビオチンとリンカー化合物との間の共有結合は、アミド結合形成により達成されてもよい(上記構造中のXがアミンである場合)。また、A成分は追加の官能基を含んでもよい。例えば、第1成分がビオチンである場合、ビオチンの市販の反応性誘導体は、ビオチン部分とビオチンの反応性末端との間の距離を効果的に増大させる官能基を含む。これらのビオチン誘導体は、ビオチンのカルボン酸基に例えば、ジアミンまたはアミノ酸部分を付加することによりビオチン反応性カップリング部位を延長させる。ビオチンのように、ビオチンアミノ酸誘導体は、リンカー化合物へのカップリングのためのカルボン酸官能基を提供する。対照的に、ビオチンジアミン誘導体は、リンカー化合物へのカップリングのためのアミノ基を提供し、このように、本発明のリンカー中のX部分は、カルボン酸基、アミン基、アミノキシ基、ヒドラジド基、セミカルバジド基、ヒドロキシル基、チオール基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、マレイミド基、またはカルボン酸誘導体としてもよい。
【0062】
本発明の実施に際し、任意の共有結合、好ましくは安定な共有結合を使用して、A成分をリンカー化合物と結合させてもよい。例えば、A成分がフルオレセインなどの標識化合物である場合、標識はイソシアネート(-N=C=S)などの官能基、またはN-ヒドロキシスクシンイミドエステルなどの反応エステルを含んでもよく、A成分とリンカー化合物との間に共有結合が形成される。イソチオシアネートおよびN-ヒドロキシスクシンイミドエステルを含むフルオレセイン誘導体は、様々な供給源から市販されており、リンカー化合物への共有結合はそれぞれ、チオ尿素またはアミド結合形成により達成されてもよい。
【0063】
本発明のリンカー化合物は、第1成分(A成分)と第2成分(B成分)との間で結合を形成させ、結合コンジュゲートを提供するように作用する。好ましくは、形成される結合は安定な結合であり、得られたコンジュゲートは安定に結合されたコンジュゲートである。本発明の実施に際し、B成分はA成分に関し上記で識別した任意の分子または化合物とすることができ、適当に反応性のあるカルボニル部分、例えばアルデヒドまたはケトンを含む(または含むように修飾される)。A成分と同様に、多くの分子および化合物が公知であり、この関連で使用される可能性がある。
【0064】
このように、B成分はA成分と同じとすることができ、結合剤、標識化合物、または治療薬とすることができる。治療薬は、虚血細胞死、例えば心筋梗塞、脳卒中、緑内障および他の神経変性状態と関連する状態を検出、予防および治療するために選択することができる。
【0065】
治療薬は、様々な疾患および望ましくない状態に対し活性を有するように選択することができ、そのような疾患および状態としては、脳卒中(または発作を含む脳血管障害)、炎症(自己免疫疾患による炎症を含む)、多発性硬化症、血管増殖(血管新生)、骨形成/骨増殖、免疫系刺激、急性冠症候群(心筋梗塞、非Q波心筋梗塞および不安定狭心症を含む)、心血管疾患、関節炎(骨関節炎、変形関節炎、脊椎関節症、痛風性関節炎、全身性エリテマトーデス、若年性関節炎および関節リウマチを含む)、風邪、月経困難症、月経けいれん、炎症性大腸炎、クローン病、肺気腫、急性呼吸窮迫症候群、喘息、気管支炎、慢性閉塞性肺疾患、アルツハイマー病、臓器移植毒性、悪液質、アレルギー反応、アレルギー性接触過敏症、癌(例えば、結腸癌、乳癌、肺癌および前立腺癌を含む充実性腫瘍;白血病およびリンパ腫を含む造血器悪性腫瘍;ホジキン病;再生不良性貧血、皮膚癌および家族性腺腫様ポリープ)、組織潰瘍、消化性潰瘍、胃炎、限局性腸炎、潰瘍性大腸炎、憩室炎、再発胃腸病変、消化管出血、凝固、貧血、滑膜炎、痛風、強直性脊椎炎、再狭窄、歯周病、表皮水疱症、骨粗鬆症、アテローム性動脈硬化症(アテロームプラーク破綻を含む)、大動脈瘤(腹部大動脈瘤および脳動脈瘤を含む)、結節性動脈周囲炎、うっ血性心不全、心筋梗塞、脳卒中、脳虚血、頭部外傷、脊髄損傷、神経痛、神経変性疾患(急性および慢性)、自己免疫疾患、ハンチントン病、パーキンソン病、片頭痛、鬱病、末梢神経障害、疼痛(腰痛、頸痛、頭痛、および歯痛を含む)、歯肉炎、脳アミロイド血管症、向知性または認知亢進、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、眼血管新生、角膜外傷、黄斑変性症、結膜炎、異常創傷治癒、筋肉または関節の捻挫または挫傷、腱炎、皮膚疾患(例えば、乾癬、湿疹、強皮症および皮膚炎)、重症筋無力症、多発性筋炎、筋炎、滑液包炎、火傷、糖尿病(I型およびII型糖尿病、糖尿病生網膜症、神経障害および腎症を含む)、腫瘍浸潤、腫瘍増殖、腫瘍転移、角膜瘢痕、強膜炎、免疫不全症(例えば、ヒトにおけるAIDS、およびネコにおけるFLV、FIV)、敗血症、早産、低プロトロンビン血症、血友病、甲状腺炎、サルコイドーシス、ベーチェット症候群、過感受性、腎臓病、リケッチア感染症(例えば、ライム病、エールリヒア病)、原虫感染症(例えば、マラリア、ジアルジア、コクシジウム)、繁殖障害(好ましくは家畜)および敗血性ショック(好ましくは、関節炎、発熱、風邪、疼痛および癌)が挙げられるが、それらに限定されない。
【0066】
このように、例えば、ビオチン-LC-LC-(PEG)8-CH2CH2-NH2を、下記のように、抗菌化合物スピラマイシンIに結合させることができる。

【0067】
別の実施例では、カルシウム調節剤を、下記のように、本発明のリンカーを使用してビオチンに結合させることができる。

【0068】
別の実施例では、消化器疾患のための薬剤を、下記のように、本発明のリンカーを用いてビオチンに結合させ、コンジュゲートを提供することができる。

【0069】
さらに別の実施例では、かゆみ止め剤を、下記のように本発明のリンカーに結合させ、コンジュゲートを提供することができる。

【0070】
さらに別の実施例では、治療薬はキナーゼ阻害薬とすることができる。キナーゼ阻害薬は任意のキナーゼ阻害薬とすることができ、例えば下記化合物の1つまたは複数とすることができる。



【0071】
1つの局面では、キナーゼ阻害剤は、共有結合を形成することができる官能基を含むように修飾することができる。例えば、キナーゼ阻害剤をX4に結合させることができ、ここで、X4はカルボン酸基、アミン基、アミノキシ基、ヒドラジド基、セミカルバジド基、ヒドロキシル基、チオール基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、マレイミド基、ハロゲン化物、アジド、ボロン酸誘導体またはカルボン酸誘導体とすることができる。
【0072】
別の局面では、キナーゼ阻害薬はポリエチレングリコール(PEG)およびアミノカプロン酸(LC)に共有結合させることができる。キナーゼ阻害薬はPEGまたはLCに、直接または上記で詳細に記載した官能基X4を介して結合させることができる。
【0073】
当業者に明かなように、末端アミノ基は下記のように、様々なチオール基と反応させることができ、末端チオール基が得られる。

【0074】
本発明の別の局面では、リンカーのPEGおよびLC部分はトリアゾール環を使用して結合させることができる。1つの局面では、トリアゾール環は、PEGおよびLCユニットを共有結合させるのに使用することができる置換基を有することができる。別の局面では、トリアゾール環は、下記一般合成スキームで示されるように、例えば、アジド基およびアルキン基の金属触媒カップリングにより形成される。

【0075】
このように、1つの局面では、本発明は下記型の化合物を開示し:
X((CR1R2)5-C(=X1)X2)n-(CH2)n-T-(CR3R4CR5R6X3)m-CR7R8CR9R10X4
式において、Tはトリアゾールであり、他の置換基は上記で記載した通りである。PEGおよびLC部分を結合するためにトリアゾール環を使用すると、カップリング前にアジド基をアミン基に変換するのが好ましくない場合に、特に、ハロゲン化アリールが結合分子中に存在する場合、これはPd/H条件下で水素化されるが、好都合である。
【0076】
調製方法
本発明のリンカー、コンジュゲートおよび他の化合物は実施例で詳細に記載するように合成することができる。本発明の化合物および異なる置換基を有する他の関連化合物は、例えば、下記などに記載されている当業者に公知の技術および材料を用いて合成することができる:March,ADVANCED ORGANIC CHEMISTRY 4th Ed., (Wiley 1992); Carey and Sundberg, ADVANCED ORGANIC CHEMISTRY 3rd Ed., Vols. A and B (Plenum 1992), およびGreen and Wuts, PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS 2nd Ed.(Wiley 1991)。本発明の化合物のための開始材料は、標準技術および市販の前駆体材料、例えば、Aldrich Chemical Co., Sigma Chemical Co., Lancaster Synthesis (Windham, N.H.), Apin Chemicals, Ltd.(New Brunswick, N.J.), Ryan Scientific(Columbia, S.C.), Molecular Biosciences(Boulder, CO)およびMaybridgeから入手可能なものを用いて得てもよい。本発明の化合物を調製するために有益な開始材料およびその中間体は市販されており、または周知の合成法により調製することができる(例えば、Harrison et al., “Compendium of Synthetic Organic Methods,” Vols. 1-8 (John Wiley and Sons, 1971-1996);“Beilstein Handbook of Organic Chemistry,”Beilstein Institute of Organic Chemistry, Frankfurt, Germany; Feiser et al., “Reagents for Organic Synthesis,”Volumes 1-21, Wiley Interscience; Trost et al., “Comprehensive Organic Synthesis,”Pergamon Press, 1991;“Theilheimer's Synthetic Methods of Organic Chemistry,”Volumes 1-45, Karger, 1991; March, “Advanced Organic Chemistry,”Wiley Interscience, 1991; Larock “Comprehensive Organic Transformations,”VCH Publishers, 1989; Paquette, “Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis,”3d Edition, John Wiley & Sons, 1995を参照)。
【0077】
本発明の化合物を合成するための本明細書で記載されている手順は、1つまたは複数の保護および脱保護段階(例えば、アセタール基の形成および除去)を含む。保護基の例は下記において見られる:Greene and Wuts, Protective Groups in Organic Chemistry, 3rd. Ed., 1999, John Wiley & Sons, NY and Harrison et al., Compendium of Synthetic Organic Methods, Vols. 1-8, 1971-1996, John Wiley & Sons, N.Y.。代表的なアミノ保護基としては、ホルミル、アセチル、トリフルオロアセチル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニル(「CBZ」)、tert-ブトキシカルボニル(「Boc」)、トリメチルシリル(「TMS」)、2-トリメチルシリル-エタンスルホニル(「SES」)、トリチルおよび置換トリチル基、アリルオキシカルボニル、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(「FMOC」)、ニトロ-ベラトリルオキシカルボニル(「NVOC」)などが挙げられるが、それらに限定されない。代表的なヒドロキシル保護基としては、ヒドロキシル基がアシル化(例えば、メチルおよびエチルエステル、アセテートまたはプロピオネート基またはグリコールエステル)またはアルキル化されたもの、例えばベンジルおよびトリチルエーテル、ならびにアルキルエーテル、テトラヒドロピラニルエーテル、トリアルキルシリルエーテル(例えば、TMSまたはTIPPS基)およびアリルエーテルが挙げられるが、それらに限定されない。
【0078】
さらに、下記で開示される合成手順は様々な精製、例えばカラムクロマトグラフィー、フラッシュクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー(TLC)、再結晶化、蒸留、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などを含むことができる。また、化学反応生成物の同定および定量のための化学分野において周知の様々な技術、例えばプロトンおよび炭素-13核磁気共鳴(1Hおよび13C NMR)、赤外および紫外分光法(IRおよびUV)、X線結晶法、元素分析(EA)、HPLCおよび質量分析(MS)も同様に使用することができる。保護および脱保護、精製および同定の方法および定量法は化学分野では周知である。
【0079】
第1級アルコールを結合するための手順の例を、下記合成スキームにおいて説明する。

【0080】
典型的には、1当量のアルコール、1.2当量のN,N-ジスクシンイミジルカーボネートおよび5当量のDIEAを乾燥DMF(1M溶液)に溶解することができ、混合物を室温で約6時間撹拌することができる。1当量のアミノリンカーをその後、添加し、反応混合物を室温で24時間撹拌することができる。最終生成物をHPLCにより精製することができる。この手順を使用して第2級アルコールの存在下、第1級アルコールを結合させることができる。
【0081】
例えば、下記合成スキームで示されるように、リンカー(PEG)n-LC-LCを使用してコルチコステロンをビオチンに結合させることができる。


【0082】
約25mg(1当量)のコルチコステロン、22mg(1.2当量)のリンカーおよび0.1ml(5当量)のDIEAを2mLの乾燥DMFに溶解することができる。反応混合物を室温で約6時間撹拌することができ、その後1当量のリンカーを添加することができる。室温で24時間撹拌した後、最終生成物をHPLCで精製すると、約68%〜90%の収率で生成物を得ることができる。
【0083】
フェノールを結合するための一般手順を下記合成スキームで説明する。

【0084】
典型的には、1当量のフェノール、1.2当量のTsO-nPEG-N3および1.2当量の炭酸セシウムを乾燥DMF中に懸濁させることができ、反応混合物を80℃で16時間撹拌することができる。有機溶媒を真空で蒸発させることができ、得られた残渣を酢酸エチルに溶解することができる。その後、酢酸エチルを水で洗浄し、硫酸マグネシウムにより乾燥させ、蒸発乾固させることができる。最終生成物を分取HPLCにより精製することができる。
【0085】
下記で説明する1つの手順では、PEG化化合物をその後、メタノール(1M溶液)に溶解することができ、10mol%の20% Pd/Cを添加することができる。反応混合物を水素下、約12時間撹拌することができ、典型的には、その後セライト(Celite)545パッドを通して濾過することができる。得られた溶液を真空で蒸発させ、1級アミンを、DMFに溶解したHATU/DIEAの存在下、1.1当量のNHS-LC-LC-ビオチンと結合させることができる。

【0086】
パラジウム媒介水素化に感応する官能基に対し有益な別の手順では、アジドのアミへの還元は、Staudinger還元を使用して実施することができる。Staudinger還元のための典型的な手順を下記合成スキームで説明する:

【0087】
典型的には、1当量のアジドおよび1.5当量のトリフェニルホスフィンを乾燥トルエンに溶解し、窒素下で24時間還流させることができる。10当量の水を添加し、さらに6時間、還流を続けることができる。得られた1級アミンを分取HPLCにより精製することができ、DMFに溶解したHATU/DIEAの存在下、NHS-LC-LC-ビオチンと結合させることができる。
【0088】
例えば、エストラジオールは、下記手順を使用して、非保護2級アルコールではなく、フェノール官能基で選択的にビオチンに結合させることができる。

【0089】
このように、1モル当量のエストラジオール、1.1モル当量のTsO-nPEG-N3および1.2モル当量のCs2CO3を、2mlの乾燥DMFに懸濁させ、約80℃で約16時間懸濁させることができる。有機溶媒を真空で蒸発させ、残渣を酢酸エチル10mlに懸濁させ、水で洗浄し(3×30ml)、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、蒸発乾固させることができる。最終生成物を分取HPLCにより精製することができる。
【0090】
PEG化エストラジオールをメタノール(1M溶液)に溶解し、10mol%の20% Pd/Cを添加することができる。反応混合物を水素下、12時間撹拌し、その後セライト545パッドを通して濾過することができる。得られた溶液を真空で蒸発させ、1級アミンを、乾燥DMF 3mlに溶解したHATU(2当量)、DIEA 0.1mlの存在下、NHS-LC-LC-ビオチン(1.1当量)と結合させることができ、最終生成物が得られる。
【0091】
同様に、1つの態様では、下記のようにエチニルエストラジオールにおいて、3級アルコールではなくフェノール基を選択的に結合させることができる。

【0092】
1モル当量のエチニルエストラジオール、1.1モル当量のTsO-nPEG-N3および1.2モル当量のCs2CO3を、乾燥DMFに懸濁させ、約80℃で約16時間懸濁させることができる。有機溶媒を真空で蒸発させ、残渣を酢酸エチルに懸濁させ、水で3度洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、蒸発乾固させることができる。最終生成物を分取HPLCにより精製することができる。
【0093】
次の段階で、1モル当量のアジドおよび1.5モル当量のトリフェニルホスフィンを乾燥トルエンに溶解し、窒素下で約24時間還流させることができる。その後、10当量の水を添加し、還流をさらに6時間続けることができる。最終生成物をHPLCにより精製することができる。
【0094】
最後に、1モル当量の1級アミンを1.1モル当量のNHS-LC-LC-ビオチンと、乾燥DMFに溶解した2モル当量のHATU、0.1mL DIEAの存在下で結合させ、結合エチニルエストラジオールを提供することができる。
【0095】
別の態様では、下記一般合成スキームで説明するように、金属触媒反応を使用してアジド基およびアルキン基を結合することができる:

【0096】
第1の段階では、アルキン-官能化(functionalized)LC-LC-ビオチンを、市販の試薬を使用して調製することができる:

【0097】
その後、アジド-PEG官能化化合物を結合させ、ビオチンコンジュゲートを形成することができる:

【0098】
使用法:スクリーニングアッセイ法および診断的適用
本明細書で記載したリンカーおよび結合コンジュゲートを用いて、様々な生物学的要素、例えば、抗原、ハプテン、モノクローナルおよびポリクローナル抗体、遺伝子プローブ、天然および合成オリゴおよびポリヌクレオチド、天然および合成単糖、オリゴ糖および多糖、成長因子、ホルモン、受容体分子、ならびにそれらの混合物を検出することができる。また、本明細書で記載した化合物を用いて、様々な微生物、例えば、細菌、ウイルス、真菌、プリオンなどを検出することができる。
【0099】
本発明の結合コンジュゲートは、例えば、様々な診断技術および分離技術に対し有益である。本明細書で記載するようにコンジュゲートを使用して、試料中の診断的分子(例えば、抗原、蛋白質、ペプチド、および疾患または感染の存在を示す他の生体分子)を検出する、当業者に公知の様々なアッセイフォーマット、例えば、イムノアッセイ法が存在する。1つの態様では、A成分は特異結合パートナーに結合することができる結合剤とすることができ、B成分は対象分子を認識する抗体とすることができる。アッセイ法は、その後、安定結合コンジュゲートを試料と、抗体を抗原に結合させるのに十分な期間インキュベートし、その後、コンジュゲート-抗原複合体を試料の残りから分離することにより実施することができる。そのような分離は、例えば、試料を、コンジュゲート-抗原複合体に結合することができる固定化合物と接触させることにより達成することができる。例えば、A成分がビオチンである場合、固定アビジンまたはストレプトアビジンを含む固体支持体を使用して、試料からコンジュゲート-抗原複合体を除去することができる。その後、結合複合体を第2の結合パートナー(例えば、コンジュゲート-抗原複合体に結合する蛋白質Aまたは抗体)を用いて検出することができる。固体支持体は、抗原が付着することができる当業者に公知の任意の固体材料とすることができる。例えば、固体支持体は、マイクロタイタプレート中の試験ウエル、またはニトロセルロースもしくは他の適した膜とすることができる。また、支持体はビーズまたはディスク、例えば、ガラス、ガラス繊維、ラテックスまたはポリスチレンもしくはポリ塩化ビニルなどのプラスチック材料とすることができる。
【0100】
別の態様では、イムノアッセイ法は2抗体サンドイッチアッセイ法である。このアッセイ法は、最初に、固体支持体、一般的にはマイクロタイタプレートのウエルまたは膜に固定した抗体を試料と接触させ、試料中の抗原を固定抗体に結合させることにより実施することができる。その後、結合していない試料を固定抗原-抗体複合体から除去し、結合コンジュゲートを添加し、この場合、A成分は標識化合物(例えば、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ)、基質、補酵素、阻害薬、染料、放射性核種、発光基、または蛍光基)であり、B成分は抗原の異なる部位に結合することができる第2の抗体である。固体支持体に結合したままの結合コンジュゲートの量を、その後、特異標識化合物に対し適した方法を用いて決定する。
【0101】
抗体を上記のように支持体に固定するとすぐに、支持体上の残りの蛋白質結合部位は、適した遮断薬により遮断する。固定した抗体をその後、試料と共にインキュベートし、試料内の抗原を抗体に結合させる。好ましくは、インキュベーション時間は、結合抗原と非結合抗原との間の平衡で少なくとも95%が達成される結合レベルに到達するのに十分なものである。当業者であれば、平衡に到達するのに必要な時間は、一定期間で起きる結合レベルをアッセイすることにより容易に決定することができることが認識されるであろう。室温では、約30分のインキュベーション時間で一般に十分である。
【0102】
その後、適当な緩衝液で固体支持体を洗浄することにより非結合試料を除去することができ、結合コンジュゲートを固体支持体に添加することができる。その後、結合抗原を検出するのに十分な時間、結合コンジュゲートを固定抗体-抗原複合体とインキュベートする。適当な時間量は、一定期間にわたって起きる結合レベルをアッセイすることにより、一般に決定することができる。その後、結合していない結合コンジュゲートを除去し、結合した結合コンジュゲートを、標識化合物を用いて検出する。標識化合物を検出するために使用する方法は、標識化合物の性質に依存する。放射性基では、シンチレーション計数またはオートラジオグファフィー法が一般に適している。分光法を使用して蛍光基を検出することができる。酵素標識化合物は一般に、基質を添加し(一般に特定期間)、続いて分光法、または反応生成物の他の分析により検出することができる。
【0103】
結合コンジュゲートはまた、特定細胞型を生体試料から分離するために使用することができる。例えば、A成分が結合剤、例えばビオチンであり、B成分が抗体または所望の細胞型の細胞表面抗原に対し特異的な他の分子である結合コンジュゲートを使用することができる。そのような結合コンジュゲートを適当な生体試料とインキュベートし、表面抗原に結合させることができる。細胞-コンジュゲート複合体をその後、試料の残りから、例えば、試料を、細胞-コンジュゲート複合体に結合することができる固定化合物と接触させることにより分離することができる。例えば、A成分がビオチンである場合、固定アビジンまたはストレプトアビジンを含む固体支持体を使用して、試料から細胞-コンジュゲート複合体を除去することができる。その後、適当な洗浄により結合していない試料成分を除去し、細胞を固体支持体から分離することができる。代表的な細胞分離手順は米国特許第5,215,927号、同第5,225,353号、および同第5,262,334号、ならびに公表されたPCT出願第WO92/07423号および第WO92/08988号、ならびに共に所有され、共に係属中の米国特許出願第2003/0186221号で見いだすことができる。
【0104】
上記インビトロ使用の他に、本発明の結合コンジュゲートはまた、インビボ診断的用途および治療的用途に対し有用性を有する。例えば、典型的なインビボ使用は、インビボ画像形成、ならびに治療薬の標的送達を含む。
【0105】
本発明はまた、様々なアッセイ法、診断技術および治療技術を実施するためのキットを提供する。そのようなキットは典型的には、本明細書で記載したリンカーおよび/または結合コンジュゲートを含む。キットは本明細書で記載したアッセイ法および方法を実施するのに有益な追加の構成要素を含んでもよい。追加の構成要素の例としては、ラベル、緩衝剤、試薬などが挙げられるが、それらに限定されない。キットはまた、キットの構成要素の使用法を開示する取扱説明書を含んでもよい。
【0106】
使用法:治療的使用
本発明はまた、本明細書で記載したリンカーまたは結合コンジュゲートを活性成分として、1つまたは複数の薬学的に適した担体と共に含む様々な疾患の治療のための薬学的組成物を提供する。本発明の薬学的組成物はさらに、他の治療的に活性な成分を含んでもよい。本明細書では、被験者に有効量の、上記で開示したリンカーまたは結合コンジュゲートおよび薬学的に適した担体を投与する段階を含む、被験者の様々な疾患を治療する方法もまた提供する。治療用途で使用する結合コンジュゲートは、治療する状態に依存する。例えば、炎症疾患患者を治療する場合、使用する結合コンジュゲートは、治療する炎症疾患に有益な効果を有する少なくとも1つの成分、化学式IのAまたはBを有する。
【0107】
本発明の薬学的組成物は、本明細書で記載した結合コンジュゲートが有効量で、すなわち、治療的(すなわち、治療的有効量)および/または予防的利益を達成するのに有効な量(すなわち予防的有効量)を達成するのに有効な量で存在する組成物を含む。特別な用途に対し有効な実際の量は、患者(例えば、年齢、体重)および治療される状態;ならびに投与経路に依存する。有効量の決定は、特に本明細書の開示内容に照らすと、当業者の能力の範囲内である。
【0108】
ヒトで使用するための有効量は、動物モデルから決定することができる。例えば、ヒトのための1回量は、動物において有効であることがわかっている循環濃度および/または胃腸濃度が達成されるように製剤化することができる。
【0109】
動物における結合コンジュゲートの用量は治療する疾患、投与経路、および治療する動物の身体特性に依存する。いくつかの態様では、治療および/または予防的使用のための結合コンジュゲートの投与レベルは約1μg/日〜約10gm/日とすることができる。
【0110】
好ましくは、治療および/または予防的利益のために使用する結合コンジュゲートは単独で、または薬学的組成物の形態で投与することができる。薬学的組成物は結合コンジュゲート、1つまたは複数の薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤、および任意で追加の治療薬を含む。例えば、本発明の結合コンジュゲートは、治療する状態により、他の活性薬剤と共に投与してもよい。この同時投与は2つの薬剤の同じ剤形での同時投与、別個の剤形での同時投与、別個の投与を含むことができる。別個の投与プロトコルでは、結合コンジュゲートおよび他の薬剤は、数分あけて、または数時間あけて、または数日あけて投与してもよい。
【0111】
結合コンジュゲートは、注入、局所、経口、経皮、または経直腸により投与することができる。好ましくは、結合コンジュゲートまたは結合コンジュゲートを含む薬学的組成物は経口投与される。結合コンジュゲートが投与される経口剤型は、粉末、錠剤、カプセル、溶液、またはエマルジョンを含むことができる。有効量は単回投与で、または適当な時間間隔、例えば数時間あけた一連の投与で投与することができる。
【0112】
本発明により使用するための薬学的組成物は、活性化合物を処理して、薬学的に使用することができる調製物とするのを促進する賦形剤およびアジュバントを含む1つまたは複数の生理学的に許容される担体を使用する従来の様式で製剤化してもよい。適した製剤は選択した投与経路に依存する。本明細書で記載した結合コンジュゲートの薬学的組成物を調製するための適した技術は当技術分野で周知である。
【0113】
実施例
本発明について一般的に説明してきたが、本発明は、下記実施例を参照することにより、より容易に理解されると思われる。実施例は説明目的だけのために提供したものであり、決して本発明の範囲を制限するものではない。使用した数値(例えば、量、温度など)に関しては精度を確保するように努力したが、当然、いくらかの実験誤差および逸脱を認めるべきである。
【0114】
実施例1
ブロモ-Peg-アジドの合成
化合物(2)を、下記スキームに従い合成した:

【0115】
アジドPEG(1)(3gm、7.58mmol、1当量)を最小量のCH2Cl2(DCM)に溶解した。混合物をアルゴンでフラッシングし、氷水浴により0℃まで冷却した。その後、臭化チオニル(1.9gm、9.14mmol、1.2当量)を混合物に滴下した。反応混合物を0℃で15分間撹拌し、室温まで温め、一晩中撹拌した。反応混合物を少量の水中に注ぎ入れ、重炭酸ナトリウムを添加し、混合物を中和しpHを約7とした。その後、混合物を2度、DCMで抽出した。有機層を合わせ、塩類溶液で洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、濾過した。粗混合物をHPLCにより精製すると生成物(2)が得られた。
【0116】
実施例2
ヨード-PEG-アジドの合成
化合物(4)を下記スキームに従い合成した:

【0117】
アジドpeg(1)(3gm、7.58mmol、1当量)を最小量のCH2Cl2に溶解し、トリエチルアミン(1.53gm、15.12mmol、2当量)を添加した。反応物をアルゴンでフラッシングし、氷水浴により0℃まで冷却した。塩化メタンスルホニル(956mg、8.35mmol、1.1当量)を混合物に滴下した。反応物を0℃で15分間撹拌し、その後室温まで温めた。4時間後、水を添加することにより反応を停止させ、水溶液を2度CH2Cl2で抽出した。有機層を合わせ、塩類溶液で洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、濾過し、有機溶媒を減圧下で除去すると、中間PEG生成物(3)が得られた。
【0118】
空気乾燥させた化合物(3)を最小量のアセトンに溶解した。ヨウ化カリウム(3.15gm、18.98mmol、2.5当量)を溶液に添加し、反応物を一晩中40℃で、アルゴン下還流させた。沈澱した塩を濾過により除去し、濾液を減圧下で濃縮した。濃縮した濾液をメタノールで希釈し、HPLCにより精製すると生成物(4)が黄色がかった透明油として得られた。
【0119】
実施例3
アリル-PEG-アジドの合成
化合物(6)を下記スキームに従い合成した:

【0120】
0℃、アルゴン下、乾燥DMFに溶解した水素化ナトリウム(334mg、13.92mmol、1.1当量)の撹拌懸濁液に、乾燥DMFに溶解したアジドpeg(1)(5gm、12.64mmol、1当量)の溶液を滴下した。反応物を室温まで温め、2時間撹拌した。反応溶液を氷水浴により0℃まで冷却し、乾燥DMFに溶解した臭化アリル(5)(1.53gm、12.65mmol、1当量)の溶液を滴下した。反応溶液を室温まで温め、一晩中撹拌し、塩沈殿物を濾過により除去した。濾液をHPLCにより精製すると生成物(6)が淡黄色油として得られた。
【0121】
実施例4
6-(6-tert-ブトキシカルボニルアミノ-ヘキサノイルアミノ)-ヘキサン酸2,5-ジオキソ-ピロリジン-1-イルエステル
化合物(15)を下記スキームに従い合成した:

【0122】
アミノカプロン酸(7)(16.39g、0.1249mol、1当量)をジメチルアセトアミド150mLに懸濁させた。トリエチルアミン(9)を添加し(22mL、0.1578mol、1.26当量)、続いてジ-tert-ブチルジカルボネート(8)を添加した(33.42g、0.1531mol、1.23当量)。固体7が溶解し、溶液が透明になり、均一になるまで(約18時間)、混合物を室温で激しく撹拌した。固体N-ヒドロキシスクシンイミド(11)(16.36g、0.1422mol、1.138当量)を添加し、続いて、さらにトリエチルアミン(9)(23mL、0.165mol、1.32当量)、および固体(3-ジメチルアミノプロピル)-エチルカルボジイミド(12)(36.73g、0.1916mol、1.53当量)、およびジメチルアセトアミド20mLを添加した。不均一混合物を一晩中撹拌した(18時間)。乳白色の、ほとんど透明の溶液が得られた。固体6-アミノカプロン酸(7)(16.35g、0.1246mol、1当量)およびジメチルアセトアミド50mLを添加し、その後、混合物を60℃まで30分間加熱した。さらに(3-ジメチルアミノプロピル)-エチルカルボジイミド(12)(36.89g、0.1924mol、1.54当量)を添加し、続いてジメチルアセトアミド30mLを添加した。反応混合物を50℃で一晩中撹拌した。得られた白色沈澱(トリエチルアミン塩)を濾過して除去し、さらにジメチルアセトアミドで洗浄し、廃棄した。ジメチルアセトアミド層を合わせ、水(1L)で希釈し、pHが約5となるまで、クエン酸一水和物(3g)を添加した。混合物を酢酸エチルで抽出した(3×150mL)。酢酸エチル抽出物を合わせ、水および塩類溶液で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、濃縮すると、ペースト状の淡緑色固体15: 36.38g(82.4mmol、66%)が得られた。
【0123】
実施例5
6-(6-tert-ブトキシカルボニルアミノ-ヘキサノイルアミノ)-ヘキサン酸N-{2-[2-アジドエトキシ-オクタキス(2-エトキシ)]エチル}アミド
化合物(17)を下記スキームに従い合成した:

【0124】
6-(6-tert-ブトキシカルボニルアミノ-ヘキサノイルアミノ)-ヘキサン酸2,5-ジオキソ-ピロリジン-1-イルエステル(15)(13.07g、29.6mmol、1.05当量)、2-[2-アジドエトキシ-オクタキス(2-エトキシ)]エチルアミン(16)(12.4g、28.3mmol、1当量)およびトリエチルアミン(9)(5.0mL、35.77mmol、1.27当量)をクロロホルム120mLに溶解した。混合物を55℃まで3.5時間加熱した。3-(ジメチルアミノプロピル)-エチルカルボジイミド(12)(〜1g)を添加するまで、反応は完了しなかった。混合物を室温まで冷却した。クロロホルム300mLで希釈し、水50mLで洗浄した(エマルジョンが徐々に分離した)。Na2SO4上で乾燥させ、濃縮すると、17が蝋状固体として得られた:20.55g(26.86mmol、95%)。化合物のNMRを図1に示す。
【0125】
実施例6
6-(6-アミノ-ヘキサノイルアミノ)-ヘキサン酸N-{2-[2-アジドエトキシ-オクタキス(2-エトキシ)]エチル}アミド
化合物(19)を下記スキームに従い合成した:

【0126】
6-(6-tert-ブトキシカルボニルアミノ-ヘキサノイルアミノ)-ヘキサン酸N-{2-[2-アジドエトキシ-オクタキス(2-エトキシ)]エチル}アミド(17)(20.55g、26.86mmol、1当量)をジクロロメタン100mLおよびトリフルオロ酢酸35mLに溶解した。4時間後、LCMSによりそれ以上の6は検出できなかった。ガラス状固体まで濃縮し、それ以上の泡立ちが起きなくなるまで水2mLおよび固体K2CO3を添加し、続いてクロロホルムで抽出した。Na2SO4上で乾燥させ、濃縮すると、油が得られた。さらに高真空で濃縮すると、ガラス状固体生成物19が得られた。粗収率:24.67g(定量的)。そのようなものとして次の段階で使用した。
【0127】
実施例7
6-[5-(2-オキソ-ヘキサヒドロ-チエノ[3,4-d]イミダゾール-4-イル)-ペンタノイルアミノ]-ヘキサン酸[5-{2-(2-アミノ-エトキシ)-オクタキス(2-エトキシ)}-エチルカルバモイル]-ペンチル]-アミド
化合物(22)を下記スキームに従い合成した:

【0128】
前の手順から得られた粗生成物19(26.86mmol、1当量)をクロロホルム120mLおよびトリエチルアミン18mL(129mmol、4.77当量)に溶解した。5-(2-オキソ-ヘキサヒドロ-チエノ[3,4-d]イミダゾール-4-イル)-ペンタン酸2,5-ジオキソ-ピロリジン-1-イルエステル(20)(9.22g、27mmol、1当量;調製のため、下記を参照のこと)を添加し、混合物を55℃まで50分間加熱した。混合物を冷却し、さらにクロロホルムで希釈し、水で抽出した。クロロホルム溶液をNa2SO4上で乾燥させ、濃縮し、トリエチルアンモニウムトリフルオロアセテートを含む蝋状固体とした。化合物21の粗収率は31gであった。粗アジド21(26.86mmol、1当量)を加熱しながら、メタノール220mLに溶解した。溶液をアルゴンで脱ガスし、パラジウム黒(10%炭素担持;1.78g、1.67mmol、6.2%)を添加した。混合物を水素ガス(1atm)下、2時間、激しく撹拌した。LCMSはそれ以上のアジド21が存在しないことを示す。濾過および濃縮、その後シリカゲルクロマトグラフィー(ジクロロメタン〜15%メタノールを含むジクロロメタン〜40%メタノールを含むジクロロメタン)により純粋22がガラスとして得られた:10.63g(12.3mmol、46%、3段階)。化合物のNMRを図2に示す。
【0129】
実施例8
5-(2-オキソ-ヘキサヒドロ-チエノ[3,4-d]イミダゾール-4-イル)-ペンタン酸2,5-ジオキソ-ピロリジン-1-イルエステル
化合物(20)を下記スキームに従い合成した:

【0130】
ビオチン(23)(17.37g、71.1mmol、1当量)をジメチルアセトアミド100mLに溶解した。N-ヒドロキシスクシンイミド(9.06g、78.7mmol、1.10当量)およびトリエチルアミン(20mL、143.5mmol、2.02当量)を添加し、続いて(3-ジメチルアミノプロピル)-エチルカルボジイミド(24)(18.25g、95.2mmol、1.34当量)を添加した。乳白色溶液を室温で18時間撹拌した。微細な白色沈澱が形成した。混合物を水50mlで希釈し、微細な沈澱を微細多孔性焼結ガラスフィルターを用いて濾過し、さらに水で洗浄し、乾燥させると、20が、白色の流れるように動く固体として得られた:17.43g、51.1mmol、72%。
【0131】
実施例9
アルキン-官能化LCLC-ビオチンの調製
アルキン-官能化LC-LCビオチン化合物(25)を下記スキームに従い合成した。

【0132】
プロパルギルアミン(400μL、5.8mmol)をクロロホルムに溶解したビオチン-LCLC-O-スクシンイミド(1.0g、1.7mmol)の溶液に添加し、室温で一晩中撹拌した。HPLCにより精製すると、純粋なビオチン-LCLC-プロパルギルアミドが得られた。
【0133】
実施例10
プルバラノールBの結合
プルバラノールB(26)を下記スキームに従い結合させ、生成物27を得た。

【0134】
tert-ブタノール/水(1:1)1mLに溶解したアジド-PEG-プルバラノールB(15mg、16.7μmol)およびビオチン-LC-LC-プロパルギルアミド(8.5mg、16.7μmol)混合物に0.1当量のアスコルビン酸ナトリウム水溶液を添加し、続いて、0.01当量の硫酸銅(II)溶液を添加した。混合物を一晩中室温で撹拌した。HPLCによる精製により、純粋なプルバラノールBのビオチン-コンジュゲート(27)が得られた。
【0135】
同様に、下記アミン-リンカー(28)を、上記で詳細に記載した手順を用いて、アジド-PEGアミンおよびビオチン-LC-LCプロパルギルアミドから調製した:

【0136】
実施例11
SB 202190の結合

1.0gのアジド-PEG-OHをジクロロメタン(DCM)15mLに溶解した塩化トシル0.8gおよびDMAP 0.5gと混合し、室温で一晩中撹拌した。反応を1N HCl 50mLでクエンチし、3×20mLのDCMで抽出した。有機相を合わせ、MgSO4上で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。シリカ上でのクロマトグラフィーにより、TsO-PEG-アジドが無色油として得られた(93%)。
【0137】

0.5g(1当量)のSB 202190(29)を乾燥DMF 5mLに溶解した。この溶液に、上記のように調製したN3-7PEG-OTs 0.912g(1.1当量)および炭酸セシウム0.540g(1.1当量)を添加した。反応混合物を80℃で24時間撹拌し、その後、真空下で蒸発させると、1.06gの粗アジドが得られた。アジド生成物を分取HPLCにより精製すると、80%の収率で精製生成物(30)が得られた。
【0138】

アジド生成物(30)0.8gをメタノール5mlに溶解し、10% Pd/C 0.1gを添加した。反応混合物を水素下、8時間撹拌し、終了時、開始材料はTLCにより検出されなかった。メタノール溶液を、セライトを通して濾過し、蒸発乾固させると、粗1級アミン(31)が88%の収率で得られた。1級アミン(31)は精製せずに、次の段階で使用した。
【0139】

前の段階で調製した1級アミン(31)0.6gおよびNHS-LC-LC-ビオチン0.548g(1.1当量)をジクロロメタン5mLに溶解し、トリエチルアミン0.1mLを添加した。透明な溶液が得られるまで(約24時間)、懸濁液を室温で撹拌し、その後、溶媒を真空で蒸発させると、0.997gの粗生成物(32)が得られた。粗生成物を分取HPLCにより精製すると、最終生成物(32)が71%の収率で得られた。
【0140】
上記手順を用いて、下記化合物33〜74を作製した。









【0141】
特許、特許出願、および出版物を含む本明細書で引用した参考文献は全て、前に特定的に組み入れられたどうかに関係なく、参照としてその全体が本明細書に組み入れられる。
【0142】
以上、本発明について詳細に説明してきたが、当業者であれば、等価なパラメータ、濃度、および条件の広い範囲内で、本発明の精神および範囲から逸脱せずに、必要以上の実験無しで、本発明を実施することができることは認識されると思われる。
【0143】
本発明について特定の態様に関連させて記載してきたが、更なる改変が可能であることは理解されるであろう。本出願は、一般に、本発明の原理に従う本発明の全ての変形例、使用例または適応例をカバーするものであり、本発明の開示内容から逸脱しているが、本発明が関連する当技術分野の範囲内にある公知の実施または慣例の範囲内にあり、かつ前述した本質的な特徴に適用してもよいものも含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0144】
【図1】6-(6-tert-ブトキシカルボニルアミノ-ヘキサノイルアミノ)-ヘキサン酸N-{2-[2-アジドエトキシ-オクタキス(2-エトキシ)]エチル}アミド(化合物17)のNMRスペクトルを示した図である。
【図2】6-[5-(2-オキソ-ヘキサヒドロ-チエノ[3,4-d]イミダゾール-4-イル)-ペンタノイルアミノ]-ヘキサン酸[5-{2-(2-アミノ-エトキシ)-オクタキス(2-エトキシ)}-エチルカルバモイル)-ペンチル]-アミド(化合物22)のNMRスペクトルを示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造を有する化合物:
A-(X1-(CR1R2)p-C(=X2))n-X3-T1-(CR3R4X4CR5R6)m-T2-L-B
(式において、AおよびBは、独立して選択される共有結合を形成することができる官能基であり、または生物薬剤もしくは生物分析の用途で有益な成分であって;
X1、X2、X3およびX4は、O、SおよびNHからなる群より独立して選択され;
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、水素、ハロゲンまたは低級アルキルからなる群より独立して選択され;
T1およびT2は、(CH2)r、結合またはトリアゾールからなる群より独立して選択され;
Lは結合または-NH-基を含む部分であり;
pは1、2、4、4、5、または6であり;
nは0、1、2、3、4、5、または6であり;
rは1、2、3、4、5、または6であり;かつ
mは3であるか、またはそれより大きい)。
【請求項2】
AおよびBが、カルボン酸基、アミン基、アミノキシ基、ヒドラジド基、セミカルバジド基、ヒドロキシル基、チオール基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、マレイミド基、ハロゲン化物、アジド、ボロン酸誘導体およびカルボン酸誘導体からなる群より独立して選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
Aがビオチン、ビオチニル基またはビオチニル基誘導体である、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
X4がOである、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
X2がOである、請求項1記載の化合物。
【請求項6】
R1、R2、R3、R4、R5、およびR6が水素である、請求項1記載の化合物。
【請求項7】
pが5であり、nが1、2または3であり、かつmが6、7、8、9、または10である、請求項1記載の化合物。
【請求項8】
T2がCH2である、請求項1記載の化合物。
【請求項9】
T1がCH2である、請求項1記載の化合物。
【請求項10】
T1がトリアゾールである、請求項1記載の化合物。
【請求項11】
Lが直接結合である、請求項1記載の化合物。
【請求項12】
Lが-NH-基を含む部分である、請求項1記載の化合物。
【請求項13】
Lが-NH-C(O)-基を含む部分である、請求項12記載の化合物。
【請求項14】
Lが、-NH-、-C(O)NH-、-NHC(O)NH-および-C(O)CH2CH2C(O)NH-からなる群より選択される、請求項12記載の化合物。
【請求項15】
Aが生物薬剤もしくは生物分析の用途で有益な成分である、請求項1記載の化合物。
【請求項16】
Bが生物薬剤もしくは生物分析の用途で有益な成分である、請求項15記載の化合物。
【請求項17】
AまたはBの少なくとも1つが、結合剤、標識化合物、または治療薬である、請求項16記載の化合物。
【請求項18】
AまたはBが、ビオチン、抗原、抗体、リボフラビン、サイトスタチン、およびval-ホスフェートからなる群より選択される結合剤である、請求項17記載の化合物。
【請求項19】
AまたはBが、スピラマイシン、イプリフラボン、メサラジンおよびクロタミトンからなる群より選択される治療薬である、請求項17記載の化合物。
【請求項20】
AまたはBが、蛍光標識、酵素、酵素基質、および放射性標識からなる群より選択される標識化合物である、請求項17記載の化合物。
【請求項21】
AまたはBが、フルオレセイン、ローダミン、FITC(フルオレセインイソチオシアネート)、HEX(4,5,2',4',5',7'-ヘキサクロロ-6-カルボキシフルオレセイン)、5-IAF、TAMRA(6-カルボキシテトラメチルローダミン)、TET(4,7,2',7'-テトラクロロ-6-カルボキシフルオレセイン)、XRITC(ローダミン-X-イソチオシアネート)、Texas Red、CY2、CY3およびCY5から選択される蛍光標識である、請求項20記載の化合物。
【請求項22】
AまたはBのうちの1つが、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼおよびルシフェラーゼから選択される酵素である、請求項20記載の化合物。
【請求項23】
AまたはBの少なくとも1つがキナーゼ阻害薬である、請求項16記載の化合物。
【請求項24】
AまたはBの少なくとも1つが結合剤または標識化合物であり、かつ、残りのAまたはBが治療薬である、請求項16記載の化合物。
【請求項25】
治療薬がキナーゼ阻害薬である、請求項24記載の化合物。
【請求項26】
キナーゼ阻害薬が、下記からなる群より選択される、請求項25記載の化合物:



【請求項27】
化合物27、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73および74からなる群より選択される化合物。
【請求項28】
下記構造を有する化合物:

(式において、nは0、1または2であり、LCは(CH2)5C(O)NHであり、かつPEGは(CH2CH2O)である)。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2007−521338(P2007−521338A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−549423(P2006−549423)
【出願日】平成17年1月7日(2005.1.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/000456
【国際公開番号】WO2005/067644
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(506164165)アンビット バイオサイエンシス コーポレーション (3)
【Fターム(参考)】