説明

内燃機関のクランクケース構造

【課題】オイル面の変動を抑制するとともに、クランク軸または変速機のフリクションの増大を抑制しながらオイルポンプのエア噛みの発生を防止することができる内燃機関のクランクケース構造を供する。
【解決手段】クランクケースの下方にオイルパン2pを備えた内燃機関のクランクケース構造において、オイルパン2pに適正量貯留されるオイルの機関停止時のオイル面Sの下方を上下に仕切る下側隔壁61R,62Rが、ケース外周壁2Rsからケース内空間に向けて延出して形成され、前記下側隔壁と所定の間隔を空けた上方であって前記クランク軸または前記変速機の少なくとも一方の下方を上下に仕切る上側隔壁65R,66Rが、ケース外周壁2Rsからケース内空間に向けて延出して形成される内燃機関のクランクケース構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランクケース下方にオイルパンを備えた内燃機関のクランクケース構造に関する。
【背景技術】
【0002】
クランクケース下方にオイルパンを備えた内燃機関は、オイルパンに貯留されたオイルを汲み上げて潤滑を必要とする所要潤滑部位に供給する潤滑系を備えており、この潤滑系のオイルポンプによるオイル汲上げ機構は、そのオイル吸入口をオイルパンの底面に近接して設け、オイルパンに貯留されたオイルの量に影響されずに常にオイル吸入口がオイルに完全に浸るようにして空気を吸い込まないようにしている。
空気を吸い込んでしまうと、エア噛みによりオイルポンプの吐出油圧が変動して安定した油圧でオイルを潤滑部位に供給することができなくなる。
【0003】
そこで、オイル吸入口をオイルパンの底面に近接させているとともに、特に自動二輪車に搭載された内燃機関で車体とともに内燃機関が傾いても、オイル吸入口がオイル面から露出しない程度に十分オイルはオイルパン内に貯留されているが、車体とともに内燃機関が急激に揺動したり、加速・減速が作用する場合は、オイルパン内のオイルのオイル面が変動し、変動が大きいと、瞬間的でもオイル吸入口が露出するおそれがあるので、これを防止しようとすると、オイルを大量に貯留させることになる。
【0004】
そのため、重量が嵩むとともに、クランク室までオイルが溢れると、クランク軸のクランクウエブがオイルに浸ることで、クランク軸の回転に伴うフリクションが増大するなどの問題が生じる。
そこで、オイルパン内に略水平に隔壁を形成することで、オイルパンに貯留されたオイルのオイル面の変動を抑えるようにした例が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−223880号公報
【0006】
該特許文献1に開示された内燃機関は、クランク軸を収容するクランクケース内にクランク軸より後方に変速機を配設した1気筒の4ストローク内燃機関であり、クランクケースの下方にオイルパンを備えている。
【0007】
そして、前後のケース外周壁からオイルパンの内側に向けて上下を仕切る下側隔壁がそれぞれ延出して形成されている。
また、その前側の下側隔壁の上方であってクランクウエブの回転軌跡に沿って下方に湾曲した上側隔壁が形成されている。
前後の下側隔壁および上側隔壁によりオイルパンに貯留されたオイルのオイル面の変動を抑制することができる。
【0008】
前後の下側隔壁は、オイルパンの底面から略同じ高さで、互いに近づく方向に延出しており、両者の延出先端間に大きな開口部が上下の空間を連通して形成されている。
この開口部にオイル吸入ダクトが挿入されて、その下端にオイル吸入口がオイルパンの底面に近接して設けられている。
【0009】
クランク軸の下方の上側隔壁は、クランク軸を軸支する一対の鉛直軸受壁間に架設されるように形成され、前側のケース外周壁との間に空隙部を有するとともに、途中の下方に湾曲した最低部より若干後方に吐出口部が形成されている。
したがって、上側隔壁の上に溜まるオイルは、専ら吐出口部から丁度前後の下側隔壁間の開口部に向かって流出して、回転するクランクウエブがオイルに浸ることによるクランク軸のフリクションを低減するようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上側隔壁の吐出口部は比較的高い位置にあるとともに、クランクウエブの回転に伴って上側隔壁上のオイルは吐出口部から掻き出されるように流出するので、前後の下側隔壁間の開口部で泡が発生し易く、その開口部の下方に位置するオイル吸入口に泡が吸入される可能性が高く、エア噛みによりオイルポンプの吐出油圧が不安定になり易い。
また、上側隔壁はケース外周壁の前側壁との間に空隙部を有するので、特に内燃機関が前後に揺動したような場合に、前側の下側隔壁の上に溜まったオイルがケース外周壁の前側壁の内面に沿って遡って空隙部を上方に流動し上側隔壁上に大量に供給されることがあり、クランク軸のフリクションの増大を招くことがある。
【0011】
本発明は、かかる点に鑑みなされたもので、その目的とする処は、オイル面の変動を抑制するとともに、クランク軸または変速機のフリクションの増大を抑制しながらオイルポンプのエア噛みの発生を防止することができる内燃機関のクランクケース構造を供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、相対向する一対の鉛直軸受壁に両側部を軸支されてクランク軸が架設され、前記一対の鉛直軸受壁とケース外周壁とで囲まれたケース内空間にカウンタウエイトを備えるクランクウエブとともに歯車列を備えた変速機が配設されるクランクケースの下方にオイルパンを備えた内燃機関のクランクケース構造において、前記オイルパンに適正量貯留されるオイルの機関停止時のオイル面の下方を上下に仕切る下側隔壁が、前記ケース外周壁から前記ケース内空間に向けて延出して形成され、前記下側隔壁と所定の間隔を空けた上方であって前記クランク軸または前記変速機の少なくとも一方の下方を上下に仕切る上側隔壁が、前記ケース外周壁から前記ケース内空間に向けて延出して形成される内燃機関のクランクケース構造とした。
【0013】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の内燃機関のクランクケース構造において、前記ケース内空間の前記変速機が配設される側の前記変速機の上方にブリーザ室が形成され、前記ブリーザ室の下部に該ブリーザ室と前記ケース内空間とを連通する連通口が形成されることを特徴とする。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2記載の内燃機関のクランクケース構造において、前記ケース外周壁から前記ケース内空間に向けて延出した前記上側隔壁の延長方向に同上側隔壁の延出先端に隣接してシフトドラムが配置されることを特徴とする。
【0015】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の内燃機関のクランクケース構造において、前記上側隔壁の延出先端と前記下側隔壁の延出先端とを結ぶ線分上に前記シフトドラムが配置されることを特徴とする。
【0016】
請求項5記載の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれか記載の内燃機関のクランクケース構造において、前記クランク軸と平行な前記変速機のメイン軸とカウンタ軸が、この順に前記クランク軸から水平方向に離れて配設され、前記カウンタ軸は前記クランク軸より上方に配置され、前記変速機の下方に形成される変速機側上側隔壁は前記カウンタ軸側の前記ケース外周壁から斜め下向きに延出して形成されることを特徴とする。
【0017】
請求項6記載の発明は、請求項1ないし請求項5のいずれか記載の内燃機関のクランクケース構造において、前記オイルパン内に貯留されたオイルを汲み上げるオイル汲上げ機構のオイル吸入口が、前記一対の鉛直軸受壁から略等距離の中央に前記オイルパンの底面に沿って形成され、前記クランクケースの前記一対の鉛直軸受壁の外側にそれぞれケースカバーが被せられ、前記クランク軸の下方に形成されるクランク軸側上側隔壁およびその下方のクランク軸側下側隔壁は、ともに前記一対の鉛直軸受壁に連結され、前記クランク軸側上側隔壁は、前記クランクウエブの回転軌跡の外周縁に沿って下方に湾曲して形成され、前記鉛直軸受壁の前記クランク軸側上側隔壁の上面に沿った部分に前記クランク軸側上側隔壁の上方の前記ケース内と前記ケースカバーのカバー内空間とを連通する上部連通口が形成され、前記鉛直軸受壁の前記クランク軸側下側隔壁の上面に沿った部分に前記クランク軸側下側隔壁の上方の前記ケース内と前記ケースカバーのカバー内空間とを連通する下部連通口が形成され、前記鉛直軸受壁の前記クランク軸側下側隔壁より下側に前記ケースカバーのカバー内空間に流入したオイルを前記オイルパンに戻すオイル戻し口が形成されたことを特徴とする。
【0018】
請求項7記載の発明は、請求項1ないし請求項6のいずれか記載の内燃機関のクランクケース構造において、前記ケース外周壁より延出する前記クランク軸側下側隔壁は、少なくとも車体搭載時に、延出先端より延出基端の方が低い位置にあることを特徴とする。
【0019】
請求項8記載の発明は、請求項5記載の内燃機関のクランクケース構造において、前記クランク軸の下方に形成されるクランク軸側上側隔壁およびその下方のクランク軸側下側隔壁は、ともに前記一対の鉛直軸受壁に連結され、前記クランク軸側上側隔壁は、前記クランクウエブの回転軌跡の外周縁に沿って下方に湾曲して形成され、前記クランク軸側上側隔壁は、前記クランク軸側下側隔壁と上下方向で重なる部分に欠損部が形成されていることを特徴とする。
【0020】
請求項9記載の発明は、請求項8記載の内燃機関のクランクケース構造において、前記オイルパン内に貯留されたオイルを汲み上げるオイル汲上げ機構のオイル吸入口が、前記一対の鉛直軸受壁から略等距離の中央に前記オイルパンの底面に沿って形成され、前記クランクケースの前記一対の鉛直軸受壁の外側にそれぞれケースカバーが被せられ、前記鉛直軸受壁の前記クランク軸側下側隔壁の上面に沿った部分に前記クランク軸側下側隔壁の上方の前記ケース内空間と前記ケースカバーのカバー内空間とを連通する下部連通口が形成され、前記鉛直軸受壁の前記クランク軸側下側隔壁より下側に前記ケースカバーのカバー内空間に流入したオイルを前記オイルパンに戻すオイル戻し口が形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
請求項1記載の内燃機関のクランクケース構造によれば、オイルパンに適正量貯留されるオイルの機関停止時のオイル面の下方を上下に仕切る下側隔壁が、ケース外周壁からケース内空間に向けて延出して形成され、下側隔壁と所定の間隔を空けた上方であってクランク軸または変速機の少なくとも一方の下方を上下に仕切る上側隔壁が、ケース外周壁からケース内空間に向けて延出して形成されているので、クランクケース下方のオイルパンに貯留されたオイルが揺れて流動するような場合、下側隔壁と上側隔壁の2重の隔壁によりオイルの流動が効果的に抑制されるとともに、特に加減速時に前後に揺れる場合、下側隔壁の上に溜まったオイルがケース外周壁の内面に沿って遡ってクランク軸または変速機が配設される上側隔壁の上に流動するのをケース外周壁から延出する上側隔壁の延出基端部が防止することができるので、上側隔壁上にオイルが供給されることによるクランク軸または変速機のフリクションの増大を可及的に抑制することができる。
オイルパン内のオイルのオイル面が大きく変動することが確実に抑えられているので、オイルパン内のオイル吸入口が露出することがなく、オイルポンプのエア噛みによる吐出油圧の変動を防止することができる。
【0022】
請求項2記載の内燃機関のクランクケース構造によれば、クランクケースの前記変速機の上方にブリーザ室が形成され、ブリーザ室の下部に該ブリーザ室とケース内空間とを連通する連通口が形成されるので、ブローバイガスを抜き易く気液分離されたオイルをオイルパンに戻し易くしているとともに、ケース外周壁から延出する上側隔壁によりオイルがケース外周壁の内面を遡るのを阻止することで、変速機の上方の連通口からブリーザ室へオイルが侵入するのを防止することができる。
【0023】
請求項3記載の内燃機関のクランクケース構造によれば、ケース外周壁からケース内空間に向けて延出した上側隔壁の延長方向に同上側隔壁の延出先端に隣接してシフトドラムが配置されるので、上側隔壁とシフトドラムが協働して上側隔壁より下方のオイルが飛散または流動してクランク軸または変速機が配設される上側隔壁の上のケース内空間に移動するのを可及的に防止することができる。
【0024】
請求項4記載の内燃機関のクランクケース構造によれば、上側隔壁の延出先端と下側隔壁の延出先端とを結ぶ線分上に前記シフトドラムが配置されるので、下側隔壁と上側隔壁との間の空間のクランク室内側の開口の上部が上側隔壁の延出先端に隣接したシフトドラムで塞がれることになり、同空間に溜まったオイルが上方に飛散または流出するのが妨げられ、上側隔壁の上に移動するのを益々抑制することができる。
【0025】
請求項5記載の内燃機関のクランクケース構造によれば、変速機の下方に形成される変速機側上側隔壁はクランク軸より上方に配置されるカウンタ軸側のケース外周壁から斜め下向きに延出して形成されるので、変速機側上側隔壁をカウンタ歯車列との干渉を避けながら高い位置に形成して下方の下側隔壁との間の空間を大きく確保することができ、同空間にオイルを溜めて変速機側上側隔壁の上にオイルが移動する量を減らすことができるとともに、ケース外周壁から斜め下向きに延出した変速機側上側隔壁の上のオイルは傾斜面を流れて延出先端から下方に流下してオイルパンに容易に戻る。
【0026】
請求項6記載の内燃機関のクランクケース構造によれば、鉛直軸受壁のクランク軸側上側隔壁の上面に沿った部分に形成された上部連通口によりクランクウエブの回転軌跡の外周縁に沿って下方に湾曲して形成されたクランク軸側上側隔壁の上に溜まったオイルがケースカバーのカバー内空間に流出され、鉛直軸受壁の前記クランク軸側下側隔壁の上面に沿った部分に形成された下部連通口によりクランク軸側下側隔壁の上に溜まったオイルがケースカバーのカバー内空間に流出され、鉛直軸受壁のクランク軸側下側隔壁より下側に形成されたオイル戻し口によりケースカバーのカバー内空間に流入したオイルがオイルパンに戻されるので、一対の鉛直軸受壁から略等距離の中央にオイルパンの底面に沿って形成されたオイル吸入口から離れたオイル戻し口の低い位置からオイルの戻りの流れがあって、この低い位置からのオイルの戻りの流れにより泡は発生し難く、発生したとしても鉛直軸受壁側で生じた泡は離れた中央のオイル吸入口から吸入されることはなく、オイルポンプのエア噛みを防止して油圧変動を抑えることができる。
【0027】
また、上部連通口から側方のカバー内空間にオイルが流出することで、クランク軸側上側隔壁の比較的高い位置となる延出先端からのオイルの流下が抑えられているので、この点からも泡の発生は可及的に抑制されている。
なお、下部連通口からも側方のカバー内空間にオイルが流出し、クランク軸側下側隔壁の延出先端からのオイルの流下も抑制されている。
【0028】
請求項7記載の内燃機関のクランクケース構造によれば、ケース外周壁より延出するクランク軸側下側隔壁は、少なくとも車体搭載時に、延出先端より延出基端の方が低い位置にあるので、クランク軸側下側隔壁の上のオイルは延出基端側に溜り、殆どが鉛直軸受壁の下部連通口からカバー内空間に流出するため、クランク軸側下側隔壁の延出先端からオイルパン中央のオイル吸入口の上へ流下するオイルの量をより一層減らすことができ、泡の発生を抑えオイル吸入口から泡が吸入されることを極力防止することができる。
【0029】
請求項8記載の内燃機関のクランクケース構造によれば、クランク軸の下方に形成されるクランク軸側上側隔壁は、クランクウエブの回転軌跡の外周縁に沿って下方に湾曲して形成され、その下方のクランク軸側下側隔壁と上下方向で重なる部分に欠損部が形成されているので、クランク軸側上側隔壁の上のオイルは欠損部から下方のクランク軸側下側隔壁の上に流下してクランク軸の回転に伴うフリクションの増大を抑制するとともに、クランク軸側下側隔壁によりオイルパン内のオイルがクランク軸のある上方に移動することを防止し、オイルパン内のオイル量を確保することができる。
【0030】
請求項9記載の内燃機関のクランクケース構造によれば、クランク軸側上側隔壁の欠損部などから流下してクランク軸側下側隔壁の上に溜まったオイルは、鉛直軸受壁のクランク軸側下側隔壁の上面に沿った部分に形成された下部連通口によりケースカバーのカバー内空間に流出され、鉛直軸受壁のクランク軸側下側隔壁より下側に形成されたオイル戻し口によりケースカバーのカバー内空間に流入したオイルがオイルパンに戻されるので、一対の鉛直軸受壁から略等距離の中央にオイルパンの底面に沿って形成されたオイル吸入口から離れたオイル戻し口の低い位置からオイルの戻りの流れがあって、この低い位置からのオイルの戻りの流れにより泡は発生し難く、発生したとしても鉛直軸受壁側で生じた泡は離れた中央のオイル吸入口から吸入されることはなく、オイルポンプのエア噛みを防止して油圧変動を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態に係る自動二輪車用内燃機関の右側面図である。
【図2】図1に示された内燃機関のII−II線断面図である。
【図3】図1に示された内燃機関のIII−III線断面図である。
【図4】同内燃機関の右クランクケースカバーを取外した状態の右側面図である。
【図5】左クランクケースを省略して右クランクケースを内側から視た一部断面とした同内燃機関の左側面図である。
【図6】右クランクケースを省略して左クランクケースを内側から視た一部断面とした同内燃機関の右側面図である。
【図7】左クランクケースを外側から視た左側面図である。
【図8】図4ないしび図7に示された内燃機関のVIII−VIII線断面図である。
【図9】図4ないしび図7に示された内燃機関のIX−IX線断面図である。
【図10】別実施形態に係る自動二輪車用内燃機関の左クランクケースを省略して右クランクケースを内側から視た一部断面とした左側面図である。
【図11】右クランクケースを省略して左クランクケースを内側から視た一部断面とした同内燃機関の右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係る一実施の形態について図1ないし図9に基づいて説明する。
本実施の形態に係る内燃機関1は、単気筒の4ストローク内燃機関であり、自動二輪車にクランク軸10を車体幅方向に指向させて横置きに搭載される。
なお、本明細書中では、自動二輪車の車体を基準に前後左右を決めておく。
【0033】
図1は、内燃機関1の右側面図であり、同図1を参照して、左右方向に指向したクランク軸10を回転自在に軸支するクランクケース2の斜め上方にはシリンダブロック3およびシリンダヘッド4が順次重ねられて一体に締結され、シリンダヘッド4の上にはシリンダヘッドカバー5が被せられ、シリンダブロック3,シリンダヘッド4,シリンダヘッドカバー5はクランクケース2から僅かに前方に前傾して突設している。
【0034】
クランクケース2から斜め上方に突出したシリンダブロック3にはピストン18が摺動可能に嵌装され、コンロッド19を介してクランク軸10のクランクウエブ10w,10w間に架設されるクランクピン10pに接続され、ピストン18の動きに応じてクランク軸10を回転駆動する(図2,図5,図6参照)。
【0035】
シリンダヘッド4の下部、ピストン18の上部には、燃焼室20が形成されている。
この燃焼室20には、吸気ポート21、排気ポート22が連なり、これらの内端を開閉する吸気弁23および排気弁24が設けられている。
吸気ポート22には、スロットルボディ25および燃料噴射弁26が接続されている。
クランクケース2の後部上面にスタータモータ27とスピードセンサ28が設置されている。
【0036】
図1に示された内燃機関のII−II線断面図である図2を参照して、クランクケース2は、左右半割りに構成され、左クランクケース2Lと右クランクケース2Rの間にケース内空間が形成されている。
ケース内空間は、後記する互いに対面する左右鉛直軸受壁2Lv,2Rv間にケース外周壁2Ls,2Rsに囲まれて形成される空間であり、クランク軸10のカウンタウエイトを構成するクランクウエブ10wが収容されるクランク室2Cと常時噛合い式歯車変速機Mが収容されるミッション室2Mとが互いに前後に位置して連通して1つの空間を構成している。
【0037】
この左クランクケース2Lと右クランクケース2Rのさらに左右外側方を左クランクケースカバー6と右クランクケースカバー7が覆い、左クランクケースカバー6内のジェネレータ室6GにACジェネレータGが収容され、右クランクケースカバー7内のクラッチ室7Cに多板摩擦クラッチCが収容される。
【0038】
クランク軸10のクランクウエブ10wの外側部付け根が、左クランクケース2Lと右クランクケース2Rの互いに対面する左右鉛直軸受壁2Lv,2Rvにメタルベアリング11,11を介して軸支される。
この左側のメタルベアリング11より左方に突出したクランク軸10の左側部にACジェネレータGが設けられ、同ACジェネレータGは左クランクケースカバー6により覆われる。
【0039】
左右のメタルベアリング11,11は、左右鉛直軸受壁2Lv,2Rvの軸受円孔部に嵌着されたメタル保持部材11b,11bに一体に保持され、同メタル保持部材11b,11bはメタルベアリング11,11を保持するとともに、圧油をクランク軸10のジャーナル部とメタルベアリング11との隙間(オイルクリアランス)に供給し、メタルベアリング11,11は回転するクランク軸10をオイルクリアランスを介して軸支する(図3参照)。
【0040】
図2を参照して、左右クランクケース2L,2Rの左右鉛直軸受壁2Lv,2Rvの後方に延長した左右側壁間に常時噛合い式歯車変速機Mのメイン軸12とカウンタ軸13がベアリング12b,12b、13b,13bを介して軸支され、メイン軸12に支持された駆動歯車列12gとカウンタ軸13に支持された被動歯車列13gとが各対応する歯車を常時噛み合わせてミッション室2Mに収容されている。
【0041】
メイン軸12の右鉛直軸受壁2Rvを右方に貫通しクラッチ室7Cに突出した右側部に多板摩擦クラッチCが設けられる。
カウンタ軸13は、左鉛直軸受壁2Lvを左方に貫通して外部に突出した左端部に出力スプロケット16が嵌着されている。
出力スプロケット16には後輪駆動用チェーン17が巻き掛けられている。
【0042】
図1および図5を参照して、クランク軸10に対してメイン軸12とカウンタ軸13は平行であり、クランク軸10の後方斜め上にメイン軸12が位置し、メイン軸12のさらに後方で若干斜め下にカウンタ軸13が位置し、カウンタ軸13はクランク軸13より上方に位置している。
メイン軸12の略真下でカウンタ軸13より低い位置にシフトドラム14が配置される(図5参照)。
【0043】
図3は、図1に示された内燃機関のIII−III線断面図であり、同図3を図1とともに参照して、クランク軸10の前方には、バランサウエイト15wを備えたバランサ軸15が左右鉛直軸受壁2Lv,2Rvにボールベアリング15b,15bを介して回転自在に架設されている。
クランク軸10の右鉛直軸受壁2Rvのメタルベアリング11に軸支されて右方に突出した右側部には、左から右へ順にバランサ駆動ギヤ35a,カムチェーン駆動スプロケット30,プライマリ駆動ギヤ36aがともにクランク軸10と一体に回転するように嵌合されている。
【0044】
バランサ駆動ギヤ35aは前記バランサ軸15に嵌着されたバランサ被動ギヤ35bと噛合して動力伝達される。
プライマリ駆動ギヤ36aは前記メイン軸12の右側部に設けられた多板摩擦クラッチCのクラッチアウタCoに支持されたプライマリ被動ギヤ36bに噛合して動力伝達される(図2参照)。
【0045】
図3を参照して、クランク軸10の右側部の下方には、右鉛直軸受壁2Rvの右壁面にオイルポンプ40が設けられている。
オイルポンプ40は、ポンプハウジング41内でインナロータ42iとアウタロータ42oが噛み合うトロコイドポンプであり、インナロータ42iが嵌着されるオイルポンプ軸43がポンプハウジング41から右方に突出する右端部にポンプ被動ギヤ44が嵌着され、同ポンプ被動ギヤ44が前記プライマリ駆動ギヤ36aに噛合して動力が伝達されてオイルポンプ40が駆動される。
なお、オイルポンプ40の斜め下方にリリーフ弁45が右鉛直軸受壁2Rvとポンプハウジング41に挟まれて設けられている。
【0046】
右クランクケースカバー7には、バランサ軸15と同軸に水ポンプ軸46aを備えて水ポンプ46が配設される。
水ポンプ軸46aはバランサ軸15と連結されてバランサ軸15とともに回転する。
また、右クランクケースカバー7には、オイルポンプ40に近接して対応する部分にオイルフィルタ47が配設される。
【0047】
図4は、上記内燃機関1の右クランクケースカバー7を取外した状態の右側面図であり、右クランクケース2Rには、右鉛直軸受壁2Rvとともに右側面に突出形成された環状枠壁2Rtの端面である右クランクケースカバー7との環状の合わせ面2Rg(格子ハッチで示す部分)が示されている。
この右クランクケース2Rの右側を覆う右クランクケースカバー7は、外周壁の端面が合わせ面で、右クランクケース2Rの環状枠壁2Rtの合わせ面2Rgと突き合わせて、内部にクラッチ室7Cを形成する。
【0048】
クランク軸10の右鉛直軸受壁2Rvに軸支されて右方に突出した右側部に嵌着された前記カムチェーン駆動スプロケット30とシリンダヘッド4の上部に軸支された動弁機構のカムシャフト31,32に嵌着されたカムチェーン被動スプロケット31s,32sとにカムチェーン33が架渡されて動弁機構に動力が伝達される。
【0049】
カウンタ軸13の下方に変速操作のためのシフトスピンドル37が左外方から貫通して回動自在に支持されており、シフトスピンドル37の回動がメイン軸12の設けられるギヤチェンジ機構38を作動して前記シフトドラム14を回動し、シフトドラム14の回動はシフトフォーク39a,39b(図5参照)を移動して、前記常時噛合い式歯車変速機Mの駆動歯車列12gと被動歯車列13gの各噛合う歯車対のうち有効に動力伝達する歯車対を選択して変速を行う。
クランク軸10の右側部の下方には、前記オイルポンプ40が設けられている。
【0050】
図5は、左クランクケース2Lを省略して右クランクケース2Rを内側から視た一部断面とした内燃機関1の左側面図であり、右クランクケース2Rの左クランクケース2Lとの合わせ面2Rf(格子ハッチで示す部分)が環状(一部シリンダ部分が切り欠かれている)に示されている。
図6は、右クランクケース2Rを省略して左クランクケース2Lを内側から視た一部断面とした内燃機関1の右側面図であり、左クランクケース2Lの右クランクケース2Rとの合わせ面2Lf(格子ハッチで示す部分)が環状(一部シリンダ部分が切り欠かれている)に示されている。
右クランクケース2Rの外側から視た右側面図は図4に示され、左クランクケース2Lの外側から視た左側面図は図7に示されている。
【0051】
以上の図4ないし図7を参照して、左右クランクケース2L,2Rのクランク室2Cとミッション室2Mを左右鉛直軸受壁2Lv,2Rvとともに形成するケース外周壁2Ls,2Rsが、バランサ軸15の前方からクランク軸10の下方および常時噛合い式歯車変速機Mの下方に回り込んで後方に向かい、常時噛合い式歯車変速機Mの後方を上方に回り込んで、さらに常時噛合い式歯車変速機Mの上方に至るようにして外周を覆う。
ケース外周壁2Ls,2Rsの互いの内側端面が合わせ面2Lf,2Rfである。
【0052】
この左右クランクケース2L,2Rは、左右鉛直軸受壁2Lv,2Rvおよびケース外周壁2Ls,2Rsが下方に延出するようにしてクランク室2Cおよびミッション室2Mの下方に凹出してオイルを貯留するオイルパン2pを形成している。
【0053】
オイルパン2pには、常に適正量のオイルが貯留されいる必要があり、適正量の貯留オイルの機関停止時の平均的なオイル面Sを図4ないし図7に1点鎖線で示す。
内燃機関1が停止しているときに、このオイル面Sの上下近傍幅内にオイル面があればオイルは適正量である。
内燃機関1が稼動すると、オイルポンプ40の駆動でオイルパン2p内のオイルが汲み上げられて各潤滑部位に供給されるので、オイル面Sは図4ないし図7に示す高さよりずっと低い位置となる。
【0054】
図5を参照して、右クランクケース2Rの内面には、オイルパン2pの底面の前半部の上方にケース外周壁2Rsの前側壁から後方に鉛直軸受壁2Rvに一体に連結されながら延出してオイル吸入通路上壁51Rが底面に沿って形成され、左クランクケース2Lに対称的に形成されたオイル吸入通路上壁51L(図6参照)とオイル吸入通路上壁51Rが当接されてオイルパン2pの底面との間にオイル吸入通路54が形成される。
その際、オイル吸入通路上壁51L,51Rの後端がオイルパン2pの底面との間で形成する扁平矩形開口はオイル吸入通路後壁52L,52Rで左右が塞がれ、中央にオイル吸入口53が形成される(図9参照)。
【0055】
図8を参照して、右クランクケース2Rの右鉛直軸受壁2Rvにオイル吸入通路54に開口するオイル通路55が上方に向かって穿孔されており、そのオイル通路55は途中で環状枠壁2Rt内を扁平矩形に穿孔した矩形孔56に連通しており、同矩形孔56にオイルストレーナ57が介装されてオイル通路55を上流側(下側)と下流側(上側)とを仕切っている。
なお、矩形孔56の右端開口は右クランクケースカバー7の合わせ面で閉塞される。
オイル通路55の下流端(上端)は、右方に屈曲してクラッチ室7C内に設けられる前記オイルポンプ40の吸入ポートに連通する。
【0056】
したがって、内燃機関1が稼動してオイルポンプ40が駆動されると、オイルパン2pに貯留されたオイルは、オイルパン2pの底面中央に形成されたオイル吸入口53からオイル吸入通路54に吸入されてオイル吸入通路54から右鉛直軸受壁2Rvのオイル通路55を上昇し、その途中でオイルストレーナ57によりろ過されてオイルポンプ40の吸入ポートに汲み上げられる。
そして、オイルポンプ40の吐出ポートから吐出した圧油がオイル通路を通って前記クランク軸10を軸支するメタルベアリング11等の各潤滑部位に供給される。
【0057】
右クランクケース2Rの内面には、図5に示すように、機関停止時の前記オイル面Sの下方を上下に仕切る高さで、ケース外周壁2Rsの前側壁から後方に向けて前下側隔壁(クランク軸側下側隔壁)61Rが延出するとともに、後側壁から前方に同前下側隔壁61Rに向けて後下側隔壁(変速機側下側隔壁)62Rが延出している。
前下側隔壁61Rと後下側隔壁62Rは、オイル面Sに対して前方に僅かに下向きに傾斜した同一平面上にあって、右端は右鉛直軸受壁2Rvに一体に連結し、左端面は合わせ面2Rfと同一の合わせ面をなしており、前下側隔壁61Rの後端と後下側隔壁62Rの前端とは、所定間隔離れている。
【0058】
左クランクケース2Lの内面には、右クランクケース2Rの内面の前下側隔壁61Rと後下側隔壁62Rに対称的に前下側隔壁61Lと後下側隔壁62Lが形成されており(図6参照)、左クランクケース2Lと右クランクケース2Rが合体すると、前下側隔壁61Lと前下側隔壁61Rが互いの合わせ面を当接して同一平面をなす前下側隔壁61L,61Rを構成し、後下側隔壁62Lと後下側隔壁62Rが互いの合わせ面を当接して同一平面をなす後下側隔壁62L,62Rを構成する。
【0059】
すなわち、前下側隔壁(クランク軸側下側隔壁)61L,61Rと後下側隔壁(変速機側下側隔壁)62L,62Rは、オイルパン2p内の前後で機関停止時のオイル面Sの下方を上下に仕切ってオイルパン2pの下層空間63を画成し、前下側隔壁61L,61Rの後端と後下側隔壁62L,62Rの前端との間に下層空間63に連通する矩形開口64を形成する。
この矩形開口64は、前記オイル吸入口53の上方に位置する。
【0060】
さらに、図5に示すように、右クランクケース2Rの内面には、前記前下側隔壁61Rと所定の間隔を空けた上方であってクランク軸10のカウンタウエイトを備えたクランクウエブ10wの下方を上下に仕切る高さで、ケース外周壁2Rsの前側壁から後方に向けてバランサ軸15の下方を経てクランクウエブ10wの回転軌跡の外周縁に沿って下方に湾曲しながら前上側隔壁(クランク軸側上側隔壁)65Rが延出するとともに、後側壁から前方に向けて変速機Mの被動歯車列13gに沿って下方を後上側隔壁(変速機側上側隔壁)66Rが延出している。
【0061】
前上側隔壁65Rは、下部がオイル面Sに若干浸る程度であり、後上側隔壁66Rは、オイル面Sの上方にあってオイル面Sに対して前方下向きに傾斜しており、前上側隔壁65Rと後上側隔壁66Rは、右端は右鉛直軸受壁2Rvに一体に連結し、左端面は合わせ面2Rfと同一の合わせ面をなしており、前上側隔壁65Rの後端と後上側隔壁66Rの前端とは、所定間隔離れていて、この間にシフトドラム14が配置される。
【0062】
左クランクケース2Lの内面には、右クランクケース2Rの内面の前上側隔壁65Rと後上側隔壁66Rに対称的に前上側隔壁65Lと後上側隔壁66Lが形成されており(図6参照)、左クランクケース2Lと右クランクケース2Rが合体すると、前上側隔壁65Lと前上側隔壁65Rが互いの合わせ面を当接して同一湾曲面をなす前上側隔壁65L,65Rを構成し、後上側隔壁66Lと後上側隔壁66Rが互いの合わせ面を当接して同一平面をなす後上側隔壁66L,66Rを構成する。
【0063】
すなわち、前上側隔壁(クランク軸側上側隔壁)65L,65Rと後上側隔壁(変速機側上側隔壁)66L,66Rは、クランクウエブ10wの回転軌跡と被動歯車列13gに沿った下方を上下に仕切って、下方の前下側隔壁61L,61Rおよび後下側隔壁62L,62Rとの間にオイルパン2pの上層空間67を画成し、前上側隔壁65L,65Rの後端と後上側隔壁66L,66Rの前端との間に上層空間67に連通する矩形開口68を形成する。
【0064】
矩形開口68にはシフトドラム14が矩形開口68を塞ぐような状態で配置される(図5参照)。
また、図5に示すように、シフトドラム14は、後上側隔壁66L,66Rの前端(延出先端)と後下側隔壁62L,62Rの前端(延出先端)とを結ぶ線分T上に配置され、後上側隔壁66L,66Rと後下側隔壁62L,62Rとの間の後方上層空間67の前方に向いた開口が部分的に塞がれることになる。
【0065】
さらに、前記シフトスピンドル37が後上側隔壁66L,66Rの前端の下方で後下側隔壁62L,62Rの上方に左右方向に貫通支持されて、シフトスピンドル37は上層空間67のケース外周壁2Ls,2Rsの後側壁に沿った後奥空間を前方空間から仕切るような位置にある。
【0066】
以上のように、本クランクケース2の内部は、前上側隔壁65L,65Rと後上側隔壁66L,66Rによりその上方にクランク室2Cとミッション室2Mが画成され、その下方のオイルパン2pの内部は前下側隔壁61L,61Rと後下側隔壁62L,62Rにより上層空間67と下層空間63に仕切られており、前上側隔壁65L,65Rと後上側隔壁66L,66Rの間に矩形開口68が形成され、前下側隔壁61L,61Rと後下側隔壁62L,62Rに矩形開口64が形成されており、機関停止時のオイル面Sは前下側隔壁61L,61Rおよび後下側隔壁62L,62Rより上方で、前上側隔壁65L,65Rの最下部に浸る程度の高さ位置にある。
【0067】
図5を参照して、右クランクケース2Rの右鉛直軸受壁2Rvにおいて下方に湾曲した前上側隔壁65Rの上面に沿った最も低い部分に前後に4つ上部連通口71r(散点を施した部分)が穿設されており、同上部連通口71rは、クランク室2Cと右クランクケースカバー7内のクラッチ室7Cとを連通する(図8参照)。
また、右鉛直軸受壁2Rvにおいて前上側隔壁65Rと前下側隔壁61Rとの間の前側部分に下部連通口72r(散点を施した部分)が1つ穿設されており、同下部連通口72rは上層空間67とクラッチ室7Cとを連通する。
【0068】
さらに、右鉛直軸受壁2Rvにおいて前下側隔壁61Rと後下側隔壁62Rとの間の矩形開口64の若干下方部分にオイル戻し口73(散点を施した部分)が穿設されている。
オイル戻し口73は、下部連通口72rよりも低い位置にあるが、右クランクケース2Rを外側(右側)から視た図4に示されるように、環状枠壁2Rtの下側部分の上面に沿って形成されているので、クラッチ室7Cに開口してクラッチ室7Cとオイルパン2pの下層空間63とを連通する(図9参照)。
【0069】
図6を参照して、左クランクケース2Lの左鉛直軸受壁2Lvにおいて下方に湾曲した前上側隔壁65Lの上面に沿った最も低い部分に前後に4つ上部連通口71l(散点を施した部分)が穿設されており、同上部連通口71lは、クランク室2Cと左クランクケースカバー6内のジェネレータ室6Gとを連通する。
また、左鉛直軸受壁2Lvにおいて前上側隔壁65Lと前下側隔壁61Lとの間で前下側隔壁61Lの上面に沿った部分に下部連通口72l(散点を施した部分)が1つ穿設されている。
【0070】
左クランクケース2Lを外側(左側)から視た図6には、左鉛直軸受壁2Lvとともに左側面に突出形成された環状枠壁2Ltの端面である左クランクケースカバー6との環状の合わせ面2Lg(格子ハッチで示す部分)が示されている。
図6に示すように、上記下部連通口72lは、環状枠壁2Ltの最も下側の部分の上面に沿って形成されているので、ジェネレータ室6Gに開口してジェネレータ室6Gの最下部とオイルパン2pの上層空間67とを連通する(図8参照)。
【0071】
以上のような構造により、クランク室2Cにおいてクランクウエブ10wの回転軌跡の外周に沿って下方に湾曲した前上側隔壁65L,65Rの上に溜まったオイルは、図8で破線矢印で示すように、左右の鉛直軸受壁2Lv,2Rvに前上側隔壁65L,65Rの上面に沿って穿設された左右の上部連通口71l,71rから左クランクケースカバー6で覆われたジェネレータ室6Gと右クランクケースカバー7で覆われたクラッチ室7Cに左右に分かれて流出される。
【0072】
クランク室2Cからジェネレータ室6Gに流入するなどしてジェネレータ室6Gに溜まったオイルは、左鉛直軸受壁2Lvの下部連通口72lから前下側隔壁61L,61Rの上の前側上層空間67に流出する(図8参照)。
さらに、前下側隔壁61L,61Rの上に溜まったオイルは、右鉛直軸受壁2Rvの下部連通口72r(図8において一部別断面図で示している)からクラッチ室7Cに流出される。
【0073】
したがって、右クランクケースカバー7で覆われた右側のクラッチ室7Cには、クランク室2Cの前上側隔壁65L,65Rの上に溜まったオイルが右側上部連通口71lから直接流入するとともに、左側のジェネレータ室6Gに溜まったオイルもオイルパン2pの前側上層空間67を通って右側下部連通口72rから流出し、右側のクラッチ室7Cにオイルが集められる。
【0074】
そして、右側のクラッチ室7Cに集められたオイルは、図9に示すように、右鉛直軸受壁2Rvに環状枠壁2Rtの下側部分の上面に沿って穿設された右側寄りのオイル戻し口73からオイルパン2pの下層空間63に流出してオイルパン2pに貯留される。
【0075】
また、クランクケース2は、左右クランクケース2L,2Rのケース外周壁2Ls,2Rsにおけるミッション室2Mの上壁部が左右のクランクケース2L,2Rに亘って上方に膨出してブリーザ膨出壁80が形成され、同ブリーザ膨出壁80の内部にブリーザ室底壁81によりミッション室2Mと仕切ってブリーザ室82が形成されている。
【0076】
ブリーザ室82内は複数の内壁によりラビリンス構造が形成されていて、被動歯車列13gの上方を被動歯車列13gに沿って形成されたブリーザ室底壁81の前部にブリーザ室入口83が形成され、ブリーザ室82の最下部となるブリーザ室底壁81の後部でケース外周壁2Ls,2Rsの後側壁の上部にオイル戻し孔84が前方に開口を向けて形成されている。
左クランクケース2Lのブリーザ膨出壁80の天井壁にブリーザ室出口となるガス排出管85が突出して設けられており、ガス排出管85にはエアクリーナから延出されるガス管(図示せず)が接続される。
【0077】
したがって、クランク室2Cおよびミッション室2Mの内部のフローバイガスは、ミッション室2M上方のブリーザ室82にブリーザ室入口83から流入し、ブリーザ室82内のラビリンス構造により気液分離され、分離されたガスはガス排出管85から排出されてエアクリーナに送られ、分離されたオイルはオイル戻し孔84からミッション室2Mに流出され、結局オイルパン2pに回収される。
【0078】
本実施の形態に係るクランクケース構造は、以上のように構成されているので、以下のような効果を奏する。
図5および図6において、内燃機関1の停止時における平均的なオイル面Sが示されているが、内燃機関1が稼動中は、各潤滑部位にオイルが供給されて、オイル面Sは相当程度低くなり、例えば、前下側隔壁61L,61Rおよび後下側隔壁62L,62Rより低い下層空間63にオイル面Sが位置することになり、このようにオイルパン2pの下層空間63に貯留されたオイルが車体とともに内燃機関1の揺れで流動しても、下側隔壁61L,61R,62L,62Rと上側隔壁65L,65R,66L,66Rの上下の2重の隔壁によりオイル面Sが抑えられて、オイルの流動が効果的に抑制される。
【0079】
特に加減速時にオイルパン2p内のオイルが前後に大きく揺れる場合、前下側隔壁61L,61Rの上に溜まったオイルがケース外周壁2Ls,2Rsの前側壁内面に沿って遡ってクランク軸10が配設される前上側隔壁65L,65Rの上に移動するのを、ケース外周壁2Ls,2Rsの前側壁から延出する前上側隔壁65L,65Rの延出基端部が阻止することができ、また後下側隔壁62L,62Rの上に溜まったオイルがケース外周壁2Ls,2Rsの後側壁内面に沿って遡って変速機Mが配設される後上側隔壁66L,66Rの上に移動するのを、ケース外周壁2Ls,2Rsの後側壁から延出する後上側隔壁66L,66Rの延出基端部が阻止することができるので、上側隔壁65L,65R,66L,66Rの上にオイルが供給されることによるクランク軸10および変速機Mのフリクションの増大を可及的に抑制することができる。
【0080】
さらに、下側隔壁61L,61R,62L,62Rと上側隔壁65L,65R,66L,66Rの上下の2重の隔壁によりオイル面Sが抑えられることで、オイルパン2pの底面に沿ったオイル吸入口53が瞬間的でも露出するようなことはなく、オイルポンプ40がオイル吸入口53から空気を吸ってエア噛を生じるのを防止することができる。
【0081】
図5および図6に示すように、本クランクケース2は、ブローバイガスを抜き易くするために変速機Mの上方にブリーザ室82が形成され、このブリーザ室82から気液分離されたオイルをオイルパンに戻すオイル戻し孔84がブリーザ室底壁81の後部でケース外周壁2Ls,2Rsの後側壁の上部に穿孔されているが、後上側隔壁66L,66Rの延出基端部により後下側隔壁62L,62Rの上に溜まったオイルがケース外周壁2Ls,2Rsの後側壁内面に沿って遡ることが阻止されているので、オイル戻し孔84までオイルが遡ることはなく、オイル戻し孔84からブリーザ室82へオイルが侵入することは防止されている。
【0082】
図5も示すように、ケース外周壁2Ls,2Rsの前側壁から後方へ延出する前上側隔壁65L,65Rの延出先端と、ケース外周壁2Ls,2Rsの後側壁から前方へ延出する後上側隔壁66L,66Rの延出先端との間の矩形開口68を、シフトドラム14が塞ぐように配置されるので、前後の上側隔壁65L,65R、66L,66Rとシフトドラム14が協働して上側隔壁65L,65R、66L,66Rより下方のオイルが飛散または流動してクランク軸10または変速機Mが配設される上側隔壁65L,65R、66L,66Rの上に移動するのを極力防止することができ、クランク軸10および変速機Mのフリクションの増大を抑制することができる。
【0083】
特に、ケース外周壁2Ls,2Rsの後側壁から前方へ延出する後上側隔壁66L,66Rの延出先端と後下側隔壁62L,62Rの延出先端とを結ぶ線分T上に、シフトドラム14が配置されるので、後下側隔壁62L,62Rと後上側隔壁66L,66Rとの間の後上層空間67の前側開口の上部がシフトドラム14で塞がれることになり(図5参照)、同後上層空間67に溜まったオイルが上方に飛散または流出するのが効果的に妨げられ、上側隔壁65L,65R、66L,66Rの上に移動するのを益々抑制することができる。
また、同後上層空間67内をシフトスピンドル37が貫通していることも、後上層空間67内のオイルの流動を抑制し、上側隔壁65L,65R、66L,66Rの上にオイルが移動することを極力抑制している。
【0084】
以上のように、上側隔壁65L,65R、66L,66Rの上にオイルパン2p内のオイルが移動することは抑制されているが、上側隔壁65L,65R、66L,66Rの上にクランク軸10は変速機Mを潤滑したオイルが集まってきて溜まる。
図5および図6に示すように、ミッション室2Mにおける変速機Mの下方の後上側隔壁66L,66Rは、クランク軸10より上方に配置されるカウンタ軸13側のケース外周壁2Ls,2Rsの後側壁から前方斜め下向きに延出して形成されるので、後上側隔壁66L,66Rをカウンタ歯車列13gとの干渉を避けながら高い位置に形成して、その下方の後側上層空間67を大きく確保することができ、同後側上層空間67にオイルを溜めて後上側隔壁66L,66Rの上にオイルが移動する量を減らすことができるとともに、ケース外周壁2Ls,2Rsの後側壁から前方斜め下向きに延出した後上側隔壁66L,66Rの上のオイルは傾斜面を流れて延出先端から下方に流下してオイルパン2pに容易に戻る。
【0085】
なお、図5および図6に示すように、後上側隔壁66L,66Rより後下側隔壁62L,62Rの方が、前方に大きく延出しているので、後上側隔壁66L,66Rの延出先端から流下したオイルはまず後下側隔壁62L,62Rにより受け止められ、直接オイルパン2pの下層空間63の貯留オイルのオイル面Sに落下しないので、泡の発生は抑制され、後下側隔壁62L,62Rに仕切られた下層空間63のオイルパン2pの底面に沿って設けられているオイル吸入口53から泡が吸入される可能性は極めて低い。
【0086】
クランク室2Cにおいてクランクウエブ10wの回転軌跡の外周に沿って下方に湾曲した前上側隔壁65L,65Rの上に溜まったオイルは、前記したように、左右の上部連通口71l,71rから左側のジェネレータ室6Gと右側のクラッチ室7Cに左右に分かれて流出されるので、クランクウエブ10wの回転に伴うオイルによるフリクションの増大を可及的に抑制することができる。
【0087】
また、前上側隔壁65L,65Rの上のオイルは、左右の上部連通口71l,71rから流出されるので、前上側隔壁65L,65Rの後端に開口した矩形開口68から下方に流下するオイルは抑えられる。
比較的に高い位置にある矩形開口68から流下するオイルは、その下方の矩形開口64に向かって流下するので、オイル面で泡を発生する可能性があり、泡が発生すると、この泡をオイル吸入口53から吸い込みオイルポンプ40がエア噛みを発生するおそれがあるが、矩形開口68から流下するオイルが抑制されることで、泡の発生が抑制されエア噛みを極力防止することができる。
【0088】
また、図5および図6に示すように、前下側隔壁61L,61Rはケース外周壁2Ls,2Rsの前側壁から後方の斜め上向きに延出していて、延出先端より延出基端の方が低い位置にあるので、前下側隔壁61L,61Rの上のオイルは延出基端側に溜り、殆どが右鉛直軸受壁2Rvの下部連通口72rから右側のクラッチ室7Cに流出する。
そのため、前下側隔壁61L,61Rの延出先端の矩形開口64からオイルパン2pの中央のオイル吸入口53の上へ流下するオイルの量をより一層減らすことができ、泡の発生を抑えオイル吸入口53から泡が吸入されることを極力防止することができる。
【0089】
図9に示すように、オイルパン2pの下層空間63には、右側のクラッチ室7Cに集められたオイルが右鉛直軸受壁2Rvのオイル戻し口73から流入される。
オイル戻し口73はオイルパン2pの底面に比較的に近く低い位置にあり、オイルの流下で泡が発生する可能性は低いとともに、オイル戻し口73は、右寄りにあり、左右方向中央にあるオイル吸入口53から離れているので、仮にオイル戻し口73からのオイルの流入により泡が発生したとしても、オイル吸入口53に泡が吸入される可能性は極めて低い。
【0090】
以上のように、オイル吸入口53から空気が吸入されるのをできる限り防止し、オイルポンプ40がエア噛みを発生するのを回避し、オイルポンプ40の吐出油圧の変動を抑え安定させているので、クランク軸10等の軸受に安定した供給油圧が要求されるメタルベアリング11を採用することを可能としている。
【0091】
次に、別の実施の形態に係る内燃機関のクランクケース構造について図10および図11に基づいて説明する。
なお、本実施の形態の内燃機関90は、前記実施の形態の内燃機関1と左右クランクケース2L,2Rのクランク軸10側の前上側隔壁65L,65Rが異なる以外は全て同じであるので、前上側隔壁65L,65R以外は同じ符号を用いる。
【0092】
本内燃機関90の左右クランクケース2L,2Rにおけるクランク軸10側の前上側隔壁91L,91Rは、クランクウエブ10wの回転軌跡の外周縁に沿って下方に湾曲して形成され、その下方のクランク軸10側の前下側隔壁61L,61Rと上下方向で重なる部分に欠損部92が形成されている。
【0093】
クランクウエブ10wの回転軌跡の外周縁に沿って下方に湾曲して形成された前上側隔壁91L,91Rの上のオイルは欠損部92から下方の前下側隔壁61L,61Rの上に流下して前上側隔壁91L,91R上に溜まり難いので、クランク軸10の回転に伴うフリクションの増大を抑制するとともに、前下側隔壁61L,61Rによりオイルパン2p内のオイルがクランク軸10のある上方に移動することを防止し、オイルパン2p内のオイル量を容易に確保することができる。
【0094】
クランク軸10側の前上側隔壁91L,91Rの欠損部92などから流下してクランク軸10側の前下側隔壁61L,61Rの上に溜まったオイルは、鉛直軸受壁2Lv,2Rvの前下側隔壁61Rの上面に沿った部分に形成された下部連通口72rによりケースカバー7のカバー内空間であるクラッチ室7Cに流出され、図9を参照して、ケースカバー7のクラッチ室7Cに流入したオイルが右鉛直軸受壁2Rvの前下側隔壁61Rより下側に形成されたオイル戻し口73によりオイルパン2pに戻されるので、一対の左右鉛直軸受壁2Lv,2Rvから略等距離の中央にオイルパン2pの底面に沿って形成されたオイル吸入口53から離れたオイル戻し口73の低い位置からオイルの戻りの流れがあって、この低い位置からのオイルの戻りの流れにより泡は発生し難く、発生したとしても右鉛直軸受壁2Rv側で生じた泡は離れた中央のオイル吸入口53から吸入されることはなく、オイルポンプ40のエア噛みを防止して油圧変動を抑えることができる。
【符号の説明】
【0095】
1…内燃機関、2,2L,2R…クランクケース、2Lv,2Rv…鉛直軸受壁、2Ls,2Rs…ケース外周壁、2C…クランク室、2M…ミッション室、3…シリンダブロック、4…シリンダヘッド、5…シリンダヘッドカバー、6…左クランクケースカバー、6G…ジェネレータ室、7…右クランクケースカバー、7C…クラッチ室、
M…常時噛合い式歯車変速機、G…ACジェネレータ、C…多板摩擦クラッチ、
10…クランク軸、11…メタルベアリング、12…メイン軸、13…カウンタ軸、14…シフトドラム、37…シフトスピンドル、
40…オイルポンプ、51L,51R…オイル吸入通路上壁、53…オイル吸入口、
61L,61R…前下側隔壁、62L,62R…後下側隔壁、63…下層空間、64…矩形開口、65L,65R…前上側隔壁、66L,66R…後上側隔壁、67…上層空間、68…矩形開口、
71l,71r…上部連通口、72l,72r…下部連通口、73…オイル戻し口、
80…ブリーザ膨出壁、81…ブリーザ室底壁、82…ブリーザ室、83…ブリーザ室入口、84…オイル戻し孔、85…ガス排出管、
90…内燃機関、91L,91R…前上側隔壁、92…欠損部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対向する一対の鉛直軸受壁に両側部を軸支されてクランク軸が架設され、前記一対の鉛直軸受壁とケース外周壁とで囲まれたケース内空間にカウンタウエイトを備えるクランクウエブとともに歯車列を備えた変速機が配設されるクランクケースの下方にオイルパンを備えた内燃機関のクランクケース構造において、
前記オイルパンに適正量貯留されるオイルの機関停止時のオイル面の下方を上下に仕切る下側隔壁が、前記ケース外周壁から前記ケース内空間に向けて延出して形成され、
前記下側隔壁と所定の間隔を空けた上方であって前記クランク軸または前記変速機の少なくとも一方の下方を上下に仕切る上側隔壁が、前記ケース外周壁から前記ケース内空間に向けて延出して形成されることを特徴とする内燃機関のクランクケース構造。
【請求項2】
前記ケース内空間の前記変速機が配設される側の前記変速機の上方にブリーザ室が形成され、
前記ブリーザ室の下部に該ブリーザ室と前記ケース内空間とを連通する連通口が形成されることを特徴とする請求項1記載の内燃機関のクランクケース構造。
【請求項3】
前記ケース外周壁から前記ケース内空間に向けて延出した前記上側隔壁の延長方向に同上側隔壁の延出先端に隣接してシフトドラムが配置されることを特徴とする請求項1または請求項2記載の内燃機関のクランクケース構造。
【請求項4】
前記上側隔壁の延出先端と前記下側隔壁の延出先端とを結ぶ線分上に前記シフトドラムが配置されることを特徴とする請求項3記載の内燃機関のクランクケース構造。
【請求項5】
前記クランク軸と平行な前記変速機のメイン軸とカウンタ軸が、この順に前記クランク軸から水平方向に離れて配設され、
前記カウンタ軸は前記クランク軸より上方に配置され、
前記変速機の下方に形成される変速機側上側隔壁は前記カウンタ軸側の前記ケース外周壁から斜め下向きに延出して形成されることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか記載の内燃機関のクランクケース構造。
【請求項6】
前記オイルパン内に貯留されたオイルを汲み上げるオイル汲上げ機構のオイル吸入口が、前記一対の鉛直軸受壁から略等距離の中央に前記オイルパンの底面に沿って形成され、
前記クランクケースの前記一対の鉛直軸受壁の外側にそれぞれケースカバーが被せられ、
前記クランク軸の下方に形成されるクランク軸側上側隔壁およびその下方のクランク軸側下側隔壁は、ともに前記一対の鉛直軸受壁に連結され、
前記クランク軸側上側隔壁は、前記クランクウエブの回転軌跡の外周縁に沿って下方に湾曲して形成され、
前記鉛直軸受壁の前記クランク軸側上側隔壁の上面に沿った部分に前記クランク軸側上側隔壁の上方の前記ケース内空間と前記ケースカバーのカバー内空間とを連通する上部連通口が形成され、
前記鉛直軸受壁の前記クランク軸側下側隔壁の上面に沿った部分に前記クランク軸側下側隔壁の上方の前記ケース内空間と前記ケースカバーのカバー内空間とを連通する下部連通口が形成され、
前記鉛直軸受壁の前記クランク軸側下側隔壁より下側に前記ケースカバーのカバー内空間に流入したオイルを前記オイルパンに戻すオイル戻し口が形成されたことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか記載の内燃機関のクランクケース構造。
【請求項7】
前記ケース外周壁より延出する前記クランク軸側下側隔壁は、少なくとも車体搭載時に、延出先端より延出基端の方が低い位置にあることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか記載の内燃機関のクランクケース構造。
【請求項8】
前記クランク軸の下方に形成されるクランク軸側上側隔壁およびその下方のクランク軸側下側隔壁は、ともに前記一対の鉛直軸受壁に連結され、
前記クランク軸側上側隔壁は、前記クランクウエブの回転軌跡の外周縁に沿って下方に湾曲して形成され、
前記クランク軸側上側隔壁は、前記クランク軸側下側隔壁と上下方向で重なる部分に欠損部が形成されていることを特徴とする請求項5記載の内燃機関のクランクケース構造。
【請求項9】
前記オイルパン内に貯留されたオイルを汲み上げるオイル汲上げ機構のオイル吸入口が、前記一対の鉛直軸受壁から略等距離の中央に前記オイルパンの底面に沿って形成され、
前記クランクケースの前記一対の鉛直軸受壁の外側にそれぞれケースカバーが被せられ、
前記鉛直軸受壁の前記クランク軸側下側隔壁の上面に沿った部分に前記クランク軸側下側隔壁の上方の前記ケース内空間と前記ケースカバーのカバー内空間とを連通する下部連通口が形成され、
前記鉛直軸受壁の前記クランク軸側下側隔壁より下側に前記ケースカバーのカバー内空間に流入したオイルを前記オイルパンに戻すオイル戻し口が形成されたことを特徴とする請求項8記載の内燃機関のクランクケース構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−163249(P2011−163249A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−28384(P2010−28384)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】