内燃機関の制御装置
【課題】 筒成層燃焼運転から均質燃焼運転への運転移行時におけるエンジンでの燃焼悪化の発生を防止する。
【解決手段】 筒内噴射用インジェクタ110および吸気通路噴射用インジェクタ120を含むエンジンにおいて、均質燃焼運転時における全燃料噴射量に対する両インジェクタ110,120間での燃料噴射量分担比率は、通常はエンジンの運転状態(回転数,負荷率)に応じて設定される。成層燃焼運転中に生じた燃焼室内への付着燃料によって、運転移行直後に筒内噴射用インジェクタ110より新たに噴射された燃料は燃焼室内へ付着し易くなっている点を考慮して、成層燃焼運転から均質燃焼運転への移行時には、所定の制御期間中、燃料噴射量分担比率を通常時から修正する。具体的には、通常時よりも吸気通路噴射用インジェクタ120からの燃料噴射量が増大するように、燃料噴射量分担比率を設定する。
【解決手段】 筒内噴射用インジェクタ110および吸気通路噴射用インジェクタ120を含むエンジンにおいて、均質燃焼運転時における全燃料噴射量に対する両インジェクタ110,120間での燃料噴射量分担比率は、通常はエンジンの運転状態(回転数,負荷率)に応じて設定される。成層燃焼運転中に生じた燃焼室内への付着燃料によって、運転移行直後に筒内噴射用インジェクタ110より新たに噴射された燃料は燃焼室内へ付着し易くなっている点を考慮して、成層燃焼運転から均質燃焼運転への移行時には、所定の制御期間中、燃料噴射量分担比率を通常時から修正する。具体的には、通常時よりも吸気通路噴射用インジェクタ120からの燃料噴射量が増大するように、燃料噴射量分担比率を設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内燃機関の制御装置に関し、より特定的には、筒内に燃料噴射するための第1の燃料噴射手段(筒内噴射用インジェクタ)および吸気通路内に燃料噴射するための第2の燃料燃焼手段(吸気通路噴射用インジェクタ)とを含んで構成される内燃機関における、成層燃焼運転から均質燃焼運転への移行時の燃料噴射制御に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの燃焼室に直接燃料噴射する主燃料噴射弁(筒内噴射用インジェクタ)と、吸気ポート用に燃料噴射する副燃料噴射弁(吸気通路噴射用インジェクタ)とを備えるエンジンにおいて、運転状態に応じて成層燃焼領域での運転(以下、「成層燃焼運転」とも称する)と均質燃焼領域での運転(以下、「均質燃焼運転」とも称する)とを切換える燃料噴射制御が開示されている。
【0003】
特に、特許文献1に係るエンジンの燃料噴射制御装置では、成層燃焼運転時には副燃料噴射弁(吸気通路噴射用インジェクタ)の分担率を0として主燃料噴射弁(筒内噴射用インジェクタ)のみで燃料噴射を行なうことにより、主燃料噴射弁の容量を小さくできることで低負荷域での噴射速度向上により成層燃焼性能を高める一方で、均質燃焼運転時には主燃料噴射弁と副燃料噴射弁とを適度な分担率で燃料噴射させることにより、運転状態に応じた均質燃焼性能を得ることができる点が開示されている。
【特許文献1】特開2001−20837号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
成層燃焼運転時には、主として筒内噴射用インジェクタによる燃料噴射が行なわれ、均質燃焼運転では、必要な全燃料噴射量が筒内噴射用インジェクタおよび吸気通路噴射インジェクタにより分担されて噴射される。また、成層燃焼運転から均質燃焼運転への運転移行時には、設定空燃比が希薄領域から理論混合比領域に変化される。
【0005】
しかしながら、成層燃焼運転時には圧縮行程中に筒内噴射を行なうため、機関ピストンの頂面(ピストン頂面)や気筒内周面(シリンダ内周面(ボア))に直接燃料が噴きかけかれて燃料付着が発生し易くなる。特に、気筒内における燃料の霧化が促進され難い機関冷間時には、この傾向が顕著となる。内燃機関内への付着燃料は、その後の燃焼時における黒煙の発生や未燃成分の増大による排気性状悪化ならびに、潤滑油の燃料希釈による内燃機関の潤滑性能低下を招くおそれがある。
【0006】
さらに、一旦燃料付着が発生すると、燃料付着が無い場合と比較して、次に筒内噴射される燃料がピストン頂面や気筒内周面に付着し易くなってしまう。したがって、成層燃焼運転から均質燃焼運転への運転移行時(特に、機関冷間時)に筒内噴射の分担比率が大きい場合には、新たに噴射した燃料がピストン頂面や気筒内周面に付着することにより、内燃機関内の燃料付着が多くなるおそれがある。この結果、燃焼室内で実際に燃焼される燃料量が不足することにより、筒内(燃焼室内)の空燃比を希薄領域から理論混合比領域へ速やかに移行させることができなくなり、正常な均質燃焼運転が行なえなくなって燃焼悪化が生じる可能性がある。このような燃焼悪化が生じると、排気性状の悪化、エンジン回転数の低下等の悪影響が懸念される。
【0007】
反対に、成層燃焼運転から均質燃焼運転への運転移行時(特に、機関冷間時)に筒内噴射の分担比率が極小(ほぼ零)である場合には、新たな燃料付着が発生しない一方で成層燃焼運転時の付着燃料が燃焼することにより、燃焼室内で実際に燃焼される燃料量が過剰となって、排気性状が悪化する可能性がある。
【0008】
この発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、この発明の目的は、筒内へ燃料を噴射するための第1の燃料噴射手段および吸気通路内に燃料を噴射するための第2の燃料噴射手段とを含んで構成される内燃機関において、成層燃焼運転から均質燃焼運転への移行時に、筒内で実際に燃焼される燃料量の不足および過剰を防止するように、第1の燃料噴射手段および第2燃料噴射手段の間での燃料噴射分担比率を適正に設定して、エンジンの燃焼状態を正常に維持することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による内燃機関の制御装置は、筒内に燃料を噴射するための第1の燃料噴射手段および吸気通路内に燃料を噴射するための第2の燃料噴射手段を含んで構成される内燃機関の制御装置であって、燃料噴射制御手段を備える。燃料噴射制御手段は、運転状態に応じて均質燃焼運転および成層燃焼運転を切換えるとともに、要求される全燃料噴射量に対する第1の燃料噴射手段および第2の燃料噴射手段の間での燃料噴射量の分担比率を制御する。さらに、燃料噴射制御制御手段は、第1の分担比率設定手段と、第2の分担比率設定手段とを含む。第1の分担比率設定手段は、均質燃焼運転時に、内燃機関の運転状態に対応させた情報に基いて分担比率を設定する。第2の分担比率設定手段は、成層燃焼運転から均質燃焼運転への切換え時点からの所定期間に、第1の分担比率設定手段に代えて分担比率を設定し、かつ、同一の情報に対して第2の燃料噴射手段の燃料噴射量の分担比率を、第1の分担比率設定手段による設定よりも増大させる。
【0010】
上記内燃機関の制御装置においては、全燃料噴射量に対する第1の燃料噴射手段(筒内噴射用)および第2の燃料噴射手段(吸気通路噴射用)の間の燃料噴射分担比率を、成層燃焼運転から均質燃焼運転への運転移行時には、エンジンの運転状態に応じて設定される通常の分担比率(第1の分担比率設定手段による)と比較して、第2の燃料噴射手段からの燃料噴射量が増大するように設定する。したがって、成層燃焼運転中に発生した内燃機関内(ピストン頂面や気筒内周面)の付着燃料の存在によって運転移行直後では新たな燃料付着が発生し易い傾向にある筒内噴射の割合を減らすことにより、実際に燃焼室内で燃焼される燃料量の不足を回避できる。この結果、均質燃焼運転への運転移行時に、空燃比を希薄領域から理論混合比領域へ円滑に変化させて正常な均質燃焼運転を行なえるので、エンジン出力特性および排気性状を安定化することができる。
【0011】
好ましくは、本発明による内燃機関の制御装置では、第2の分担比率設定手段による、第2の燃料噴射手段の燃料噴射量の分担比率の増大分は、均質燃焼運転への切換えまでの成層燃焼運転の期間(時間あるいは点火回数等)に応じて設定される。
【0012】
上記内燃機関の制御装置においては、成層燃焼運転期間、すなわち、成層燃焼運転時での筒内燃料噴射による内燃機関内への燃料付着量に対応させて、第2の燃料噴射手段からの燃料噴射量の増大分を設定できる。したがって、均質燃焼運転への運転移行時における新たな燃料付着の発生、あるいは、吸気通路噴射への過剰な振替えによる不具合の発生をより確実に解消して、燃焼性の悪化をより確実に防止できる。
【0013】
また好ましくは、本発明による内燃機関の制御装置では、所定期間の長さは、均質燃焼運転への切換えまでの成層燃焼運転の期間(時間あるいは点火回数等)に応じて設定される。
【0014】
上記内燃機関の制御装置においては、成層燃焼運転期間、すなわち、成層燃焼運転時での筒内燃料噴射による内燃機関内への燃料付着量に対応させて、分担比率を修正する制御期間を設定できる。したがって、燃焼悪化防止のための分担比率修正制御が不要となった後は、エンジンの運転状態に応じて設定される好ましい分担比率(第1の分担比率設定手段による)による運転を速やかに開始できる。
【0015】
あるいは好ましくは、本発明による内燃機関の制御装置では、第2の分担比率設定手段による、第2の燃料噴射手段の燃料噴射量の分担比率の増大分は、内燃機関の回転数および負荷率に応じて設定される。
【0016】
上記内燃機関の制御装置においては、均質燃焼運転への運転移行時における内燃機関の運転状態(回転数および負荷率)に対応させて、第2の燃料噴射手段からの燃料噴射量の増大分を設定できる。したがって、均質燃焼運転への運転移行時における新たな燃料付着の発生、あるいは、吸気通路噴射への過剰な振替えによる不具合の発生をより確実に解消して、燃焼性の悪化をより確実に防止できる。
【0017】
本発明の他の構成による内燃機関の制御装置は、筒内に燃料を噴射するための第1の燃料噴射手段および吸気通路内に燃料を噴射するための第2の燃料噴射手段を含んで構成される内燃機関の制御装置であって、燃料噴射制御手段を備える。燃料噴射制御手段は、運転状態に応じて均質燃焼運転および成層燃焼運転を切換えるとともに、要求される全燃料噴射量に対する第1の燃料噴射手段および第2の燃料噴射手段の間での燃料噴射量の分担比率を制御する。さらに、燃料噴射制御制御手段は、均質燃焼運転時に、内燃機関の運転状態に対応させた情報に基いて分担比率を設定する分担比率設定手段と、成層燃焼運転から均質燃焼運転への切換え時点において、内燃機関の運転領域が分担比率設定手段によって第2の燃料噴射手段の分担比率が100%近傍に設定される領域である場合に、切換え時点からの所定期間において全燃料噴射量を所定量減少させる手段とを含む。
【0018】
上記内燃機関の制御装置においては、成層燃焼運転から均質燃焼運転への移行時に、ほぼ全燃料噴射量が第2の燃料噴射手段(吸気通路噴射用)から噴射されるように均質燃焼運転時の分担比率が設定されるようなエンジン軽負荷領域では、成層燃焼運転時での筒内付着燃料が均質燃焼運転への運転移行後に燃焼される点を考慮して、第2の燃料噴射手段(吸気通路噴射用)による燃料噴射量(すなわち、全燃料噴射量)を減少する。これにより、均質燃焼運転への運転移行時に燃焼室内で実際に燃焼される燃料量が過剰となることによる燃焼異常を防止して、エンジン出力特性および排気性状を安定化することができる。
【0019】
本発明の他の構成による内燃機関の制御装置においては、燃料噴射制御制御手段は、成層燃焼運転から均質燃焼運転への切換え時点において、内燃機関の運転領域が第1の分担比率設定手段によって第1の燃料噴射手段の分担比率が所定の第2判定値以上に設定される領域である場合に、切換え時点からの所定期間において第1の分担比率設定手段に代えて用いられる第2の分担比率設定手段をさらに含む。第2の分担比率設定手段は、同一の情報に対して、第2の燃料噴射手段の燃料噴射量の分担比率を、第1の分担比率設定手段による設定よりも増大させる。
【0020】
上記内燃機関の制御装置においては、さらに、第1の燃料噴射手段(筒内噴射用)からの燃料噴射の分担比率が比較的高いエンジン運転領域では、エンジンの運転状態に応じて設定される通常の分担比率(第1の分担比率設定手段による)に対して、第2の燃料噴射手段からの燃料噴射量が増大するように設定する。これにより、成層燃焼運転中に発生した内燃機関内(ピストン頂面や気筒内周面)への付着燃料の存在によって運転移行直後では新たな燃料付着の発生し易い傾向にある筒内噴射の割合を減らすことにより、燃焼室内での燃焼燃料不足を回避できる。したがって、均質燃焼運転への運転移行時点における、第2の燃料噴射手段(吸気通路噴射用)からの燃料噴射の分担比率が高い領域で懸念される燃焼燃料過剰による燃焼悪化、および第1の燃料噴射手段(筒内噴射用)からの燃料噴射の分担比率が高い領域で懸念される燃焼燃料不足による燃焼悪化の両者を防止して、エンジンでの燃焼状態を正常に維持することができる。
【0021】
また好ましくは、本発明による内燃機関の制御装置では、成層燃焼運転は、内燃機関からの排気を受ける触媒コンバータの暖機運転時に実行される。
【0022】
上記内燃機関の制御装置においては、筒内噴射燃料が内燃機関内に特に付着し易い成層燃焼運転が機関冷間時に行なわれるので、均質燃焼運転への運転移行時における燃焼悪化が発生し易くなる。このため、上記の燃料噴射量分担比率の設定制御または全燃料噴射量の減少制御による燃焼悪化防止の効果が顕著となる。
【0023】
また、成層燃焼運転では圧縮行程での筒内燃料噴射が含まれるため、点火時期の遅角化により排気温度を高くできる。この結果、排気から触媒への単位体積当たり伝熱量が大きくなり、短時間で触媒の暖機を実行できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る内燃機関の制御装置では、筒内へ燃料を噴射するための第1の燃料噴射手段および吸気通路内に燃料を噴射するための第2の燃料噴射手段とを含んで構成される内燃機関において、成層燃焼運転から均質燃焼運転への移行時に、筒内での燃焼燃料の不足および過剰を防止するように、第1の燃料噴射手段および第2燃料噴射手段の間での燃料噴射分担比率を適正に設定して、筒内での燃料不足および燃料過剰を防止して、エンジンでの燃焼状態を正常に維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下において、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では図中の同一または相当部分には同一符号を付してその詳細な説明は原則として繰返さないものとする。
【0026】
図1に、本発明の実施の形態に係る内燃機関の制御装置であるエンジンECU(Electronic Control Unit)で制御されるエンジンシステムの概略構成図を示す。なお、図1には、エンジンとして直列4気筒ガソリンエンジンを示すが、本発明はこのようなエンジンに限定されるものではない。
【0027】
図1に示すように、エンジン(内燃機関)10は、4つの気筒112を備え、各気筒112はそれぞれ対応するインテークマニホールド20を介して共通のサージタンク30に接続されている。サージタンク30は、吸気ダクト40を介してエアクリーナ50に接続され、吸気ダクト40内にはエアフローメータ42が配置されるとともに、電動モータ60によって駆動されるスロットルバルブ70が配置されている。このスロットルバルブ70は、アクセルペダル100とは独立してエンジンECU300の出力信号に基づいてその開度が制御される。一方、各気筒112は共通のエキゾーストマニホールド80に連結され、このエキゾーストマニホールド80は三元触媒コンバータ90(以下、単に触媒コンバータとも称する)に連結されている。
【0028】
各気筒112に対しては、筒内に向けて燃料を噴射するための筒内噴射用インジェクタ110と、吸気ポートまたは/および吸気通路内に向けて燃料を噴射するための吸気通路噴射用インジェクタ120とがそれぞれ設けられている。これらインジェクタ110、120はエンジンECU300の出力信号に基づいてそれぞれ制御される。
【0029】
なお、本実施の形態においては、2つのインジェクタが別個に設けられた内燃機関について説明するが、本発明はこのような内燃機関に限定されない。たとえば、筒内噴射機能と吸気通路噴射機能とを併せ持つような1個のインジェクタを有する内燃機関であってもよい。
【0030】
図1に示すように、各筒内噴射用インジェクタ110は共通の燃料分配管130に接続されている。この燃料分配管130は、燃料分配管130に向けて流通可能な逆止弁140を介して、機関駆動式の高圧燃料ポンプ150に接続されている。高圧燃料ポンプ150の吐出側は電磁スピル弁152を介して高圧燃料ポンプ150の吸入側に連結されており、この電磁スピル弁152の開度が小さいときほど、高圧燃料ポンプ150から燃料分配管130内に供給される燃料量が増大され、電磁スピル弁152が全開にされると、高圧燃料ポンプ150から燃料分配管130への燃料供給が停止されるように構成されている。なお、電磁スピル弁152はエンジンECU300の出力信号に基づいて制御される。
【0031】
一方、各吸気通路噴射用インジェクタ120は、共通する低圧側の燃料分配管160に接続されており、燃料分配管160および高圧燃料ポンプ150は共通の燃料圧レギュレータ170を介して、電動モータ駆動式の低圧燃料ポンプ180に接続されている。さらに、低圧燃料ポンプ180は燃料フィルタ190を介して燃料タンク200に接続されている。燃料圧レギュレータ170は低圧燃料ポンプ180から吐出された燃料の燃料圧が予め定められた設定燃料圧よりも高くなると、低圧燃料ポンプ180から吐出された燃料の一部を燃料タンク200に戻すように構成されている。したがって吸気通路噴射用インジェクタ120に供給されている燃料圧および高圧燃料ポンプ150に供給されている燃料圧が上記設定燃料圧よりも高くなるのを阻止している。
【0032】
エンジンECU300は、デジタルコンピュータから構成され、双方向性バス310を介して相互に接続されたROM(Read Only Memory)320、RAM(Random Access Memory)330、CPU(Central Processing Unit)340、入力ポート350および出力ポート360を備えている。
【0033】
エアフローメータ42は吸入空気量に比例した出力電圧を発生し、このエアフローメータ42の出力電圧はA/D変換器370を介して入力ポート350に入力される。エンジン10には機関冷却水温に比例した出力電圧を発生する水温センサ380が取付けられ、この水温センサ380の出力電圧は、A/D変換器390を介して入力ポート350に入力される。
【0034】
燃料分配管130には燃料分配管130内の燃料圧に比例した出力電圧を発生する燃料圧センサ400が取付けられ、この燃料圧センサ400の出力電圧は、A/D変換器410を介して入力ポート350に入力される。三元触媒コンバータ90上流のエキゾーストマニホールド80には、排気ガス中の酸素濃度に比例した出力電圧を発生する空燃比センサ420が取付けられ、この空燃比センサ420の出力電圧は、A/D変換器430を介して入力ポート350に入力される。
【0035】
本実施の形態に係るエンジンシステムにおける空燃比センサ420は、エンジン10で燃焼された混合気の空燃比に比例した出力電圧を発生する全域空燃比センサ(リニア空燃比センサ)である。なお、空燃比センサ420としては、エンジン10で燃焼された混合気の空燃比が理論空燃比に対してリッチであるかリーンであるかをオン−オフ的に検出するO2センサを用いてもよい。
【0036】
アクセルペダル100は、アクセルペダル100の踏込み量に比例した出力電圧を発生するアクセル開度センサ440に接続され、アクセル開度センサ440の出力電圧は、A/D変換器450を介して入力ポート350に入力される。また、入力ポート350には、機関回転数を表わす出力パルスを発生する回転数センサ460が接続されている。エンジンECU300のROM320には、上述のアクセル開度センサ440および回転数センサ460により得られる機関負荷率および機関回転数に基づき、運転状態に対応させて設定されている燃料噴射量の値や機関冷却水温に基づく補正値などが予めマップ化されて記憶されている。
【0037】
エンジンECU300は、所定プログラムの実行により各センサからの信号に基づいて、エンジンシステムの全体動作を制御するための各種制御信号を生成する。これらの制御信号は、出力ポート360および駆動回路470を介して、エンジンシステムを構成する機器・回路群へ送出される。
【0038】
図1に示したエンジンシステムでは、このような特性の異なる2種類のインジェクタをエンジン10の回転率と負荷率で使い分けることにより、エンジン10が通常運転状態である場合には、主に均質燃焼が行なわれるようにしている。
【0039】
一方、エンジン10がアイドル時の触媒暖機時の場合、非通常運転状態であるときには、成層燃焼が行なわれる。ここでいう成層燃焼には、成層燃焼と以下に示す弱成層燃焼の双方を含むものである。弱成層燃焼とは、吸気通路噴射用インジェクタ120を吸気行程で燃料噴射して燃焼室全体にリーンで均質な混合気を生成して、さらに筒内噴射用インジェクタ110を圧縮行程で燃料噴射して点火プラグ周りにリッチな混合気を生成して、燃焼状態の向上を図るものである。このような弱成層燃焼は触媒暖機時に好ましい。これは、以下の理由による。すなわち、触媒暖気時には高温の燃焼ガスを触媒に到達させるために点火時期を大幅に遅角させ、かつ良好な燃焼状態(アイドル状態)を維持する必要がある。また、ある程度の燃料量を供給する必要がある。これを成層燃焼で行なおうとしても燃料量が少ないという問題があり、これを均質燃焼で行なおうとしても良好な燃焼を維持するために遅角量が成層燃焼に比べて小さいという問題がある。このような観点から、上述した弱成層燃焼を触媒暖機時に用いることが好ましいが、成層燃焼および弱成層燃焼のいずれであっても構わない。
【0040】
均質燃焼運転時には、上記のように算出された全燃料噴射量に対する、筒内噴射用インジェクタ110および吸気通路噴射用インジェクタ120の間での燃料噴射量分担比率は、基本的には以下に説明するように制御される。
【0041】
図2および図3は、図1に示したエンジンシステムにおける、均質燃焼運転時における筒内噴射用インジェクタ110と、吸気通路噴射用インジェクタ120との燃料噴射量分担比率(噴分け比率)の設定マップの第1の例を説明する図である。
【0042】
図2および図3を参照して、エンジン10の運転状態に対応させた情報である、筒内噴射用インジェクタ110と吸気通路噴射用インジェクタ120との噴き分け比率(以下、DI比率rとも記載する。)を表わすマップについて説明する。これらのマップは、エンジンECU300のROM320に記憶される。図2は、エンジン10の温間用マップであって、図3は、エンジン10の冷間用マップである。
【0043】
図2および図3に示すように、これらのマップは、エンジン(内燃機関)10の回転数を横軸にして、負荷率を縦軸にして、筒内噴射用インジェクタ110の分担比率がDI比率rとして百分率で示されている。
【0044】
図2および図3に示すように、エンジン10の回転数と負荷率とに定まる運転領域ごとに、DI比率rが設定されている。「DI比率r=100%」とは、筒内噴射用インジェクタ110からのみ燃料噴射が行なわれる領域であることを意味し、「DI比率r=0%」とは、吸気通路噴射用インジェクタ120からのみ燃料噴射が行なわれる領域であることを意味する。「DI比率r≠0%」、「DI比率r≠100%」および「0%<DI比率r<100%」とは、筒内噴射用インジェクタ110と吸気通路噴射用インジェクタ120とで燃料噴射が分担して行なわれる領域であることを意味する。
【0045】
なお、概略的には、筒内噴射用インジェクタ110は、出力性能の上昇に寄与し、吸気通路噴射用インジェクタ120は、混合気の均一性に寄与する。このような特性の異なる2種類のインジェクタを、エンジン10の回転数と負荷率とで使い分けることにより、エンジン10が通常運転状態である場合には、主に均質燃焼が行なわれるようにしている。
【0046】
さらに、これらの図2および図3に示すように、温間時のマップと冷間時のマップとに分けて、筒内噴射用インジェクタ110と吸気通路噴射用インジェクタ120のDI分担率rを規定した。エンジン10の温度が異なると、筒内噴射用インジェクタ110および吸気通路噴射用インジェクタ120の制御領域が異なるように設定されたマップを用いて、エンジン10の温度を検知して、エンジン10の温度が予め定められた温度しきい値以上であると図2の温間時のマップを選択して、そうではないと図3に示す冷間時のマップを選択する。それぞれ選択されたマップに基づいて、エンジン10の回転数と負荷率とに基づいて、筒内噴射用インジェクタ110および/または吸気通路噴射用インジェクタ120を制御する。
【0047】
図2および図3に設定されるエンジン10の回転数と負荷率について説明する。図2のNE(1)は2500〜2700rpmに設定され、KL(1)は30〜50%、KL(2)は60〜90%に設定されている。また、図3のNE(3)は2900〜3100rpmに設定されている。すなわち、NE(1)<NE(3)である。その他、図2のNE(2)や、図3のKL(3)、KL(4)も適宜設定されている。
【0048】
図2および図3を比較すると、図2に示す温間用マップのNE(1)よりも図3に示す冷間用マップのNE(3)の方が高い。これは、エンジン10の温度が低いほど、吸気通路噴射用インジェクタ120の制御領域が高いエンジン回転数の領域まで拡大されるということを示す。すなわち、エンジン10が冷えている状態であるので、(たとえ、筒内噴射用インジェクタ110から燃料を噴射しなくても)筒内噴射用インジェクタ110の噴口にデポジットが堆積しにくい。このため、吸気通路噴射用インジェクタ120を使って燃料を噴射する領域を拡大するように設定され、均質性を向上させることができる。
【0049】
図2および図3を比較すると、エンジン10の回転数が、温間用マップにおいてはNE(1)以上の領域において、冷間用マップにおいてはNE(3)以上の領域において、「
DI比率r=100%」である。また、負荷率が、温間用マップにおいてはKL(2)以上の領域において、冷間用マップにおいてはKL(4)以上の領域において、「DI比率r=100%」である。これは、予め定められた高エンジン回転数領域では筒内噴射用インジェクタ110のみが使用されること、予め定められた高エンジン負荷領域では筒内噴射用インジェクタ110のみが使用されるということを示す。すなわち、高回転領域や高負荷領域においては、筒内噴射用インジェクタ110のみで燃料を噴射しても、エンジン10の回転数や負荷が高く吸気量が多いので筒内噴射用インジェクタ110のみでも混合気を均質化しやすいためである。このようにすると、筒内噴射用インジェクタ110から噴射された燃料は燃焼室内で気化潜熱を伴い(燃焼室から熱を奪い)気化される。これにより、圧縮端での混合気の温度が下がる。これにより対ノッキング性能が向上する。また、燃焼室の温度が下がるので、吸入効率が向上し高出力が見込める。
【0050】
図2に示す温間マップでは、負荷率KL(1)以下では、筒内噴射用インジェクタ110のみが用いられる。これは、エンジン10の温度が高いときであって、予め定められた低負荷領域では筒内噴射用インジェクタ110のみが使用されるということを示す。温間時においてはエンジン10が暖まった状態であるので、筒内噴射用インジェクタ110の噴口にデポジットが堆積しやすい。しかしながら、筒内噴射用インジェクタ110を使って燃料を噴射することにより噴口温度を低下させることができるので、デポジットの堆積を回避することも考えられ、また、筒内噴射用インジェクタの最小燃料噴射量を確保して、筒内噴射用インジェクタ110を閉塞させないことも考えられる。このため、この領域では、筒内噴射用インジェクタ110を用いた燃料噴射を行なっている。
【0051】
図2および図3を比較すると、図3の冷間用マップにのみ「DI比率r=0%」の領域が存在する。これは、エンジン10の温度が低いときであって、予め定められた低負荷領域(KL(3)以下)では吸気通路噴射用インジェクタ120のみが使用されるということを示す。これはエンジン10が冷えていてエンジン10の負荷が低く吸気量も低いため燃料が霧化しにくい。このような領域においては筒内噴射用インジェクタ110による燃料噴射では良好な燃焼が困難であるため、また、特に低負荷および低回転数の領域では筒内噴射用インジェクタ110を用いた高出力を必要としないため、筒内噴射用インジェクタ110を用いないで、吸気通路噴射用インジェクタ120のみを用いる。
【0052】
また、通常運転時以外の場合、エンジン10がアイドル時の触媒暖機時の場合(非通常運転状態であるとき)、成層燃焼を行なうように筒内噴射用インジェクタ110が制御される。このような触媒暖機運転中に成層燃焼させることで、触媒暖機を促進させ、排気エミッションの向上を図る。
【0053】
図4および図5には、図1に示したエンジンシステムにおけるDI比率rの設定マップの第2の例が示される。
【0054】
図4(温間時)および図5(冷間時)に示された設定マップは、図2および図3に示された設定マップと比較して、低回転数領域の高負荷領域におけるDI比率設定が異なる。
【0055】
エンジン10では、低回転数領域の高負荷領域においては、筒内噴射用インジェクタ110から噴射された燃料により形成される混合気のミキシングが良好ではなく、燃焼室内の混合気が不均質で燃焼が不安定になる傾向を有する。このため、このような問題が発生しない高回転数領域へ移行するに伴い筒内噴射用インジェクタの噴射比率を増大させるようにしている。また、このような問題が発生する高負荷領域へ移行するに伴い筒内噴射用インジェクタ110の噴射比率を減少させるようにしている。これらのDI比率rの変化を図4および図5に十字の矢印で示す。
【0056】
このようにすると、燃焼が不安定であることに起因するエンジンの出力トルクの変動を抑制することができる。なお、これらのことは、予め定められた低回転数領域へ移行するに伴い筒内噴射用インジェクタ110の噴射比率を減少させることや、予め定められた低負荷領域へ移行するに伴い筒内噴射用インジェクタ110の噴射比率を増大させることと、略等価であることを確認的に記載する。また、このような領域(図4および図5で十字の矢印が記載された領域)以外の領域であって筒内噴射用インジェクタ110のみで燃料を噴射している領域(高回転側、低負荷側)においては、筒内噴射用インジェクタ110のみでも混合気を均質化しやすい。このようにすると、筒内噴射用インジェクタ110から噴射された燃料は燃焼室内で気化潜熱を伴い(燃焼室から熱を奪い)気化される。これにより、圧縮端での混合気の温度が下がる。これにより対ノッキング性能が向上する。また、燃焼室の温度が下がるので、吸入効率が向上し高出力が見込める。
【0057】
なお、図4および図5に示した設定マップにおける、その他の領域のDI比率設定については、図2(温間時)および図3(冷間時)と同様であるので、詳細な説明は繰り返さない。
【0058】
なお、図2〜図5を用いて説明したこのエンジン10においては、均質燃焼は筒内噴射用インジェクタ110の燃料噴射タイミングを吸気行程とすることにより、成層燃焼は筒内噴射用インジェクタ110の燃料噴射タイミングを圧縮行程とすることにより実現できる。すなわち、筒内噴射用インジェクタ110の燃料噴射タイミングを圧縮行程とすることで、点火プラグ周りにリッチ混合気が偏在させることにより燃焼室全体としてはリーンな混合気に着火する成層燃焼を実現することができる。また、筒内噴射用インジェクタ110の燃料噴射タイミングを吸気行程としても点火プラグ周りにリッチ混合気を偏在させることができれば、吸気行程噴射であっても成層燃焼を実現できる。
【0059】
また、筒内噴射用インジェクタ110による燃料噴射のタイミングは、以下のような理由により、圧縮行程で行なうことが好ましい。ただし、上述したエンジン10は、基本的な大部分の領域には(触媒暖気時にのみに行なわれる、吸気通路噴射用インジェクタ120を吸気行程噴射させ、筒内噴射用インジェクタ110を圧縮行程噴射させる弱成層燃焼領域以外を基本的な領域という)、筒内噴射用インジェクタ110による燃料噴射のタイミングは、吸気行程である。しかしながら、以下に示す理由があるので、燃焼安定化を目的として一時的に筒内噴射用インジェクタ110の燃料噴射タイミングを圧縮行程噴射とするようにしてもよい。
【0060】
筒内噴射用インジェクタ110からの燃料噴射時期を圧縮工程中とすることで、筒内温度がより高い時期において、燃料噴射により混合気が冷却される。冷却効果が高まるので、対ノック性を改善することができる。さらに、筒内噴射用インジェクタ110からの燃料噴射時期を圧縮工程中とすると、燃料噴射から点火時期までの時間が短いことから噴霧による気流の強化を実現でき、燃焼速度を上昇させることができる。これらの対ノック性の向上と燃焼速度の上昇とから、燃焼変動を回避して、燃焼安定性を向上させることができる。
【0061】
次に、本発明の実施の形態に従う内燃機関の制御装置による成層燃焼運転(触媒暖機運転)から通常走行のための均質燃焼運転への移行について説明する。
【0062】
図6は、本発明の実施の形態に従う内燃機関の制御装置による触媒暖機制御を説明するフローチャートである。
【0063】
図6を参照して、エンジンが始動されると(ステップS100)、触媒暖機のための成層燃焼運転が実行されて、希薄領域に設定された空燃比および所定の燃料噴射量分担比率に従って、吸気通路噴射用インジェクタ120および筒内噴射用インジェクタ110の少なくとも一方からの燃料噴射が実行される(ステップS110)。上述したように、本実施の形態における成層燃焼運転には、一般的な成層燃焼と上述の弱成層燃焼が含まれる。
【0064】
成層燃焼運転開始時には、触媒暖機運転が終了するまでの暖機期間、すなわち成層燃焼運転期間を測定するために、タイマ値Twが0に初期化される(ステップS120)。
【0065】
触媒暖機運転は、図示しないシフトレバーによって選択されたシフトポジションが、P(パーキングポジション)またはN(ニュートラルポジション)のようなエンジンの回転軸と車輪駆動軸とが非連結となるポジションが選択されている場合に実行される。
【0066】
したがって、成層燃焼運転中には、シフトポジションが“P”および“N”であるかどうが、逐時確認される(ステップS130)。
【0067】
シフトポジションが“P”および “N”以外となって、エンジンの回転軸と車輪駆動軸とが連結されるようなシフトポジション(たとえば、Dポジション、Rポジション等)が選択された場合には、暖機運転は終了される(ステップS130におけるNO判定)。
【0068】
シフトポジションがPまたはNである間は成層燃焼運転が継続されて(ステップS130におけるYES判定)、触媒温度が上昇するまでの間、成層燃焼運転が継続される(ステップS140)。触媒温度が上昇した場合(ステップS140におけるYES判定)には、暖機運転は終了される。
【0069】
ステップ140における触媒温度上昇判定は、たとえば、触媒暖機のための熱源となるエンジン10からの排気ガス量を積算することで簡易に実行できる。この際に、成層燃焼運転時のエンジン運転条件がほぼ所定条件に固定されるため、排気ガス温度は予測可能である。したがって、エアフローメータ42(図1)による吸入空気量に基づいて、上記排気ガス量を算出することで、触媒コンバータ90の温度を実際に測定することなく、触媒温度の上昇を判定できる。
【0070】
なお、暖機運転時においてステップS130のシフトポジションに係る判定は必須ではなく、シフトポジションにかかわらず、触媒温度が上昇するまでの間成層燃焼運転が継続されるようにしてもよい。
【0071】
触媒暖機運転の終了時には、ステップS120における計時開始時点から暖機運転終了までの期間である暖機期間、すなわち成層燃焼運転期間Twが求められ、記憶される(ステップS150)。成層燃焼運転期間Twとしては、暖機運転の実行時間や暖機運転中の点火回数等が用いられる。
【0072】
暖機運転が終了されると、通常運転のためにエンジン10は均質燃焼運転へ移行する(ステップS160)。
【0073】
均質燃焼運転への移行に伴い、空燃比設定が希薄領域から理論混合比領域に切換えられ、エンジン10における燃料噴射制御や吸入空気量制御すなわちスロットルバルブ70(図1)の開度制御が行なわれる。
【0074】
この際の燃焼悪化の問題点について、各気筒112での断面図に相当する図7を用いて説明する。
【0075】
図7を参照して、各気筒は、シリンダブロック101と、シリンダブロック101の上部に連結されるシリンダヘッド102とを備えるシリンダ111と、シリンダ111内を往復動するピストン103とを有して構成される。このピストン103は、エンジン10の出力軸であるクランクシャフト104に、クランクアーム105およびコンロッド106を介して連結される。コンロッド106は、ピストン103の往復運動をクランクシャフト104の回転に変換する。シリンダ111内においては、シリンダブロック101およびシリンダヘッド102の内壁とピストンの頂面とによって混合気を燃焼するための燃焼室107が区画形成されている。
【0076】
シリンダヘッド102には、この燃焼室107に突出する態様で混合気に点火を行なう点火プラグ114と、燃焼室107に燃料を噴射供給する筒内噴射用インジェクタ110とが配設されている。さらに、吸気通路噴射用インジェクタ120は、インテークマニホールド、すなわち吸気通路20と燃焼室107との連通部分である吸気ポート22または/および吸気通路20に燃料を噴射供給するように配設されている。
【0077】
吸気通路20および/または吸気ポート22に噴射された燃料を含む混合気は、吸気弁24の開弁期間に燃焼室107内へ導かれる。点火プラグ114による点火により燃料が燃焼された後の排気は、排気弁84の開弁期間に排気通路80を介して触媒コンバータ90へ送られる。
【0078】
成層燃焼運転時には、圧縮行程中に筒内噴射用インジェクタ110からピストン103の頂面(ピストン頂面)やシリンダ111内の内周面(シリンダ内周面)へ直接燃料が噴きかけられるため、これらの部位に燃料付着が発生し易くなる。特に、本実施の形態では、触媒暖機時、すなわち機関冷間時に成層燃焼運転を行なうため、このような燃料付着が発生し易くなる。
【0079】
一旦燃焼室内(ピストン頂面やシリンダ内周面)に燃料が付着すると、全く燃料付着が無い状態と比較して、その後の筒内噴射用インジェクタ110からの噴射燃料が、燃焼室内に付着し易くなる。このため、成層燃焼運転から均質燃焼運転への運転移行時において、筒内噴射用インジェクタ110からピストン頂面やシリンダ内周面へ直接噴射される燃料は、付着し易くなる。
【0080】
上記のように、均質燃焼運転に必要な燃料量は、DI比率に従って、筒内噴射用インジェクタ110および吸気通路噴射用インジェクタ120によって分担して噴射される。このため、筒内噴射用インジェクタ110からの噴射燃料量が燃焼室に付着して当該サイクル内で燃焼されなくなることにより、燃焼室107内で実際に燃焼される燃料量が不足して空燃比を希薄領域から理論混合比領域へ速やかに移行させることができなくなる。この結果、正常な均質燃焼運転が行なえなくなって燃焼悪化が発生し、排気性状の悪化、エンジン回転数の低下等を招く可能性がある。
【0081】
これに対して、吸気通路噴射用インジェクタ120からの噴射燃料は、燃焼室内(筒内)への流入前に空気と十分に混合されるため、燃焼室内への付着は発生し難い。したがって、均質燃焼運転への運転移行時には、筒内噴射用インジェクタ110および吸気通路噴射用インジェクタ120による全燃料噴射量が同一の下では、吸気通路噴射用インジェクタ120からの燃料噴射量を積極的に行なう方が、運転移行に伴うエンジンでの燃焼悪化防止の点からは好ましい。
【0082】
図2〜図5に説明したように、均質燃焼運転時におけるDI比率は、基本的にはエンジンの運転領域(特に、エンジン回転数および負荷率)に応じて決定されるが、本発明の実施の形態に係る内燃機関の制御装置では、均質燃焼運転への移行直後の期間において、吸気通路噴射用インジェクタ120による燃料噴射量の分担比率を通常よりも上昇、すなわちDI比率を通常よりも低下させる。
【0083】
再び図6を参照して、均質燃焼運転への移行時には、燃焼室107内への新たな燃焼付着を防止する観点から、運転移行時のDI比率制御が、図2〜図5に示した通常のDI比率設定制御に変えて実行される。また、このようなDI比率制御を行なう制御期間ΔTが設定される(ステップS170)。
【0084】
すなわち、エンジンECU300による図2〜図5に示したマップに従う通常運転時のDI比率設定が、本発明における「第1の分担比率設定手段」に対応し、ステップS170によるDI比率設定が、本発明における「第2の分担比率設定手段」に対応する。
【0085】
図8に示すように、成層燃焼運転から均質燃焼運転への移行時点である時刻t1を始点とする制御期間ΔT(時刻t1〜t2間、あるいは所定点火回数カウントまでの期間)の間、DI比率は補正量|Δr|だけ下げられる。すなわち、DI比率は、図2〜図5に示したマップの参照によりエンジン10の運転条件に応じて設定される基本的なDI比率rと比較して、r+Δr(Δr<0)に設定される。
【0086】
なお、成層燃焼運転期間が長いほど、成層運転終了時における燃焼室内の燃料付着が多いと予測される。したがって、暖機期間(成層燃焼運転期間)Twが長いほど、均質燃焼運転移行後での筒内噴射用インジェクタ110からの噴射燃料が燃焼室内に付着する危険性が高いため、制御期間ΔTを長く、かつ、DI比率補正量Δrの絶対値を大きくする必要がある。
【0087】
図9に示すように、制御期間ΔTは、ステップ150で求められた暖機期間(成層燃焼運転期間)Twに応じて設定される。なお、制御期間ΔTは、経過時間や点火回数等で示される。
【0088】
暖機期間Twが判定基準値Taよりも短く、燃焼室内の燃料付着がそれほど多くないと予測される場合には、燃焼運転移行後での筒内噴射用インジェクタ110からの噴射燃料が燃焼室内に付着する危険性も低いので、DI比率を下げなくても正常な均質燃焼運転が行なえる可能性が高い。このため、制御期間ΔT=0に設定されて、均質燃焼運転への移行時点から、図2〜図5に示されたマップに従う、通常のDI比率設定が行なわれる。
【0089】
一方、暖機期間Twが判定基準値Ta以上である場合には、暖機期間Twに応じて、所定の制御期間ΔTが設定される。あるいは、暖機期間Twが長いほど制御期間ΔTも長く設定されるように、図9に点線で示されるような暖機期間Twに応じた複数段階(図9におけるT1,T2)からの選択、や暖機期間Twに応じた制御期間ΔTの連続的な設定としてもよい。
【0090】
同様に、DI比率補正量Δrについても、図10に示すように暖機期間Twに応じて設定することができる。
【0091】
図10を参照して、上記のように暖機期間Twがしきい値Taよりも短いときには|Δr|=0に設定する一方で、暖機期間Twがしきい値Taよりも長いときには、暖機期間Twに応じてDI比率補正量Δrが設定される。
【0092】
すなわち、暖機期間Twが長いほどDI比率補正量Δrの絶対値が大きくなるように、図9に点線で示されるような暖機期間Twに応じて|Δr|を複数段階(図9におけるr1,r2)から選択したり、暖機期間Twに応じて|Δr|を連続的に設定してもよい。
【0093】
また、図11に示すように、DI比率補正量Δrについては、エンジンの運転条件(エンジン回転数−負荷率)に応じて決定してもよい。具体的には、エンジンの高回転−高負荷率領域でDI比率補正量Δrの絶対値が大きくなり、低回転−低負荷率領域でDI比率補正量Δrの絶対値が小さくなるように、DI比率補正量Δrが設定される。
【0094】
高回転−高負荷率領域では全燃料噴射量が大きいため、DI比率補正量|Δr|を大きくしてDI比率をより低下させ、筒内噴射用インジェクタ110からの燃料噴射量を抑制する必要がある。
【0095】
再び図6を参照して、ステップS170で設定された制御期間ΔTの経過が監視され(ステップS180)、制御期間ΔTの間、通常のDI比率rに対してDI比率が|Δr|低下される。
【0096】
制御期間ΔTが経過すると(ステップS180におけるYES判定)、触媒暖機制御は終了されて、図2〜図5に従う通常のDI比率設定制御が行なわれる。
【0097】
なお、図6では図示を省略しているが、エンジン始動(ステップS100)に伴って、エンジン冷却水温等に基づいて、触媒暖機運転が必要かどうかがまず判定される。すなわち、エンジン始動時に、エンジン冷却水温が所定の基準温度以上である場合には、その段階で触媒暖機運転制御が終了されて、図2〜図5に示したDI比率マップに従った、均質燃焼運転が実行される。
【0098】
以上説明したように本発明の実施の形態に係る内燃機関の制御装置においては、成層燃焼運転から均質燃焼運転への移行時に、エンジンの運転条件に応じて設定される通常のDI比率(図2〜図5)に対してDI比率を低下させる。これにより、成層燃焼運転中に生じた付着燃料の存在によって運転移行直後では新たな燃料付着が発生し易い傾向にある筒内噴射用インジェクタ110からの燃料噴射の割合を減らすことにより、燃焼室内での燃焼燃料不足を回避できる。この結果、均質燃焼運転への運転移行時に、空燃比を希薄領域から理論混合比領域へ円滑に変化させて正常な均質燃焼運転を行なえるので、エンジン出力特性および排気性状を安定化することができる。
【0099】
また、暖機期間(成層燃焼運転期間)Twに応じてDI比率補正量Δrおよび制御期間ΔTを設定することにより、成層燃焼運転中における燃焼室内の燃料付着量に対応させて、吸気通路噴射用インジェクタ120からの燃料噴射分担比率を増大できる。この結果、均質燃焼運転への運転移行時における燃焼性の悪化をより確実に防止できる。さらに、上記燃焼悪化を防止した後は、速やかに通常運転時の好ましいDI比率設定(図2〜図5によるDI比率r)による運転を開始できる。
【0100】
(触媒暖機運転制御の他の例)
図6に示したフローチャートに従う触媒暖機制御によって、成層燃焼運転から均質燃焼運転への運転移行時における燃焼室内で実際に燃焼される燃料量の不足に起因する燃焼悪化を防止できる。上記の説明から理解されるように、このような燃料不足はDI比率が比較的高い領域で懸念される。
【0101】
一方、図3および図5にも示されるように、均質燃焼運転への移行直後にDI比率が0%に設定される領域が存在する。上記のように吸気通路噴射用インジェクタ120からの噴射燃料は、燃焼室内(筒内)への流入前に空気と十分に混合されるため、このような領域では、均質燃焼運転への移行後において、燃焼室内での新たな燃料付着が発生し難いが、その一方で、成層燃焼運転時の付着燃料が燃焼することによって燃焼室内で実際に燃焼される燃料量が過剰となることにより排気性状が悪化する可能性がある。以下では、運転移行時にDI比率≒0%領域での燃焼悪化をも防止する制御方式について説明する。
【0102】
図12は、本発明の実施の形態に従う内燃機関の制御装置による触媒暖機制御の他の例を説明するフローチャートである。
【0103】
図12を参照して、ステップS100〜S160までは、図6に示したフローチャートと同様であるので詳細な説明は繰返さない。
【0104】
図12に示した触媒暖機制御では、均質燃焼運転への移行時に、まず、このときのエンジンの運転条件が、図2〜図5の基本的なDI比率マップに照らして、通常のDI比率rがほぼ0%(吸気通路噴射用インジェクタ120からほぼ全燃料を噴射)に対応する領域であるかどうかが判定される(ステップS165)。具体的には、均質燃焼運転移行時点におけるエンジン運転条件が、図2〜図5に従って設定される通常のDI比率が第1判定値rf1以下となる領域であるかどうかが判定される。すなわち、第1判定値rf1は0%近傍の所定値である。
【0105】
運転移行時点でのエンジン運転条件がDI比率≒0%領域に対応する場合(ステップS165におけるYES判定)には、図13に示すように、制御期間ΔT♯の間、全燃料噴射量が本来の全燃料噴射量より減少される。すなわち、当該制御期間ΔT♯においては、全燃料噴射量は、本来の全燃料噴射量fに対してf+Δfp(Δfp<0)に設定される。
【0106】
ステップS175による燃料噴射量減少制御は制御期間ΔT♯(時刻t1〜t3間、あるいは、所定点火回数カウントまでの期間)の間実行され(ステップS185)、当該制御期間ΔT♯が経過すると触媒暖機制御は終了されて、図2〜図5に従う通常のDI比率設定制御が行なわれる。
【0107】
なお、制御期間ΔT♯は、DI比率制御の制御期間ΔTと共通としてもよいし、別個の値を設定してもよい。さらに、燃料噴射減少量Δfpについても、DI比率補正量Δrと同様に、暖機期間(成層燃焼運転期間)Twに応じて、あるいはエンジンの運転条件(回転数−負荷率)に応じて設定してもよい。
【0108】
これにより、成層燃焼運転から均質燃焼運転への移行時に均質燃焼運転のDI比率≒0%に設定されるようなエンジン軽負荷領域では、成層燃焼運転中での筒内付着燃料を考慮して全燃料噴射量を減少することにより、実際に燃焼される燃料が過剰となることに起因する燃焼悪化を防止することが可能となる。
【0109】
一方、運転移行時点でのエンジン運転条件がDI比率≒0%領域以外である場合(ステップS165におけるNO判定)には、さらに、このときのエンジンの運転条件が、図2〜図5の基本的なDI比率マップに照らして、通常のDI比率rが第2判定値rf2以上となる領域であるかどうかが判定される(ステップS167)。第2判定値rf2は、吸気通路噴射用インジェクタ120による燃料噴射量分担比率が低い(DI比率が高い)ことにより燃焼悪化の発生が懸念される領域に対応して、第1判定値rf1と共通、あるいはそれ以上の所定値に設定される。
【0110】
上記のように第1判定値rf1および第2判定値rf2は、エンジン10の設計に応じて、成層燃焼運転中の付着燃料に起因する燃焼悪化が問題となる境界領域を実験的に求めることで設定すればよい。
【0111】
通常のDI比率rが第2判定値rf2以上となる領域では(ステップS167におけるYES判定)では、図6と同様のステップS170およびS180が実行され、制御期間ΔTの間、DI比率を|Δr|だけ低下することにより燃焼悪化が防止される。
【0112】
また、通常のDI比率rが第2判定値rf2より小さい領域では(ステップS167におけるNO判定)では、DI比率の補正は行なわれずに触媒暖機制御が終了されて、運転移行直後より、通常の全燃料噴射量および図2〜図5に従う通常のDI比率制御に従って車両運転が実行される。
【0113】
このように図12に示したフローチャートに従う触媒暖機制御では、成層燃焼運転から均質燃焼運転への運転移行時において、運転移行時点におけるDI比率が低すぎる領域で懸念される、成層燃焼運転中の付着燃料の燃焼による燃焼燃料量過剰に起因する燃焼悪化、およびDI比率が高い領域で懸念される、新たな燃料付着の発生による燃焼燃料量不足に起因する燃焼悪化の両者を防止して、エンジンでの燃焼状態を正常に維持することができる。
【0114】
なお、本実施の形態に係る暖機運転制御において、運転移行時のDI比率制御については、図6および図12のステップS170でDI比率補正演算(r+Δr)を実行する構成の他に、補正量Δrを予め加算した運転移行時用マップを別途作成しておいた上で、ステップS170では、図2〜図5の基本的なDI比率設定マップ(基本マップ)の代わりに、上記運転移行時用マップを参照してDI比率を決定する方が、エンジンECU300の演算負荷軽減の面から好ましい。
【0115】
この場合には、ステップS170において、暖機期間Twが図9および図10に示したしきい値Taよりも短いかどうかがさらに判定され、暖機期間Twがしきい値Taを超えている場合に、上記運転移行時用マップが参照される。特に図10に示すようにDI比率補正量|Δr|を暖機期間Twに応じて複数段階に設定する場合には、運転移行時用マップについても複数個用意する必要が生じる。また、図11に示すようにエンジン回転数および負荷率に応じてDI比率補正量|Δr|を変化する場合にも、エンジン回転数−負荷率を反映した運転移行時用マップを作成する必要がある。
【0116】
同様に、図12のステップS175においても、全燃料噴射量に関して補正演算(f+Δfp)を実行する構成の他に、予めΔfpを加算した全燃料噴射量に関する運転移行時用マップを別途作成しておいた上で、ステップS175において通常の全燃料噴射量設定マップに代えて上記運転移行時用マップを参照する構成とする方がエンジンECU300の演算負荷軽減の面から好ましい。
【0117】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明の実施の形態に係る内燃機関の制御装置により制御されるエンジンシステムの概略構成図である。
【図2】図1に示したエンジンシステムにおける、均質燃焼運転時のDI比率設定マップ(機関温間時)の第1の例を説明する図である。
【図3】図1に示したエンジンシステムにおける、均質燃焼運転時のDI比率設定マップ(機関冷間時)の第1の例を説明する図である。
【図4】図1に示したエンジンシステムにおける、均質燃焼運転時のDI比率設定マップ(機関温間時)の第2の例を説明する図である。
【図5】図1に示したエンジンシステムにおける、均質燃焼運転時のDI比率設定マップ(機関冷間時)の第2の例を説明する図である。
【図6】本発明の実施の形態に従う内燃機関の制御装置による触媒暖機制御の例を説明するフローチャートである。
【図7】図1に示したエンジンの構成を説明する図である。
【図8】均質燃焼運転への移行時におけるDI比率制御を説明する概念図である。
【図9】均質燃焼運転への移行時におけるDI比率制御期間の設定を説明する概念図である。
【図10】均質燃焼運転への移行時におけるDI比率補正量の設定を説明する第1の概念図である。
【図11】均質燃焼運転への移行時におけるDI比率補正量の設定を説明する第2の概念図である。
【図12】本発明の実施の形態に従う内燃機関の制御装置による触媒暖機制御の他の例を説明するフローチャートである。
【図13】図12に示した触媒暖機制御における燃料噴射量制御を説明する概念図である。
【符号の説明】
【0119】
10 エンジン、20 インテークマニホールド(吸気通路)、22 吸気ポート、24 吸気弁、30 サージタンク、40 吸気ダクト、42 エアフローメータ、50 エアクリーナ、60 電動モータ、70 スロットルバルブ、80 エキゾーストマニホールド(排気通路)、84 排気弁、90 三元触媒コンバータ、100 アクセルペダル、101 シリンダブロック、102 シリンダヘッド、103 ピストン、104 クランクシャフト、105 クランクアーム、106 コンロッド、107 燃焼室、110 筒内噴射用インジェクタ、111 シリンダ、112 気筒、114 点火プラグ、120 吸気通路噴射用インジェクタ、130,160 燃料分配管、150 高圧燃料ポンプ、170 燃料圧レギュレータ、180 低圧燃料ポンプ、190 燃料フィルタ、200 燃料タンク、300 エンジンECU、380 水温センサ、400 燃料圧センサ、420 空燃比センサ、460 回転数センサ、r DI比率(通常運転時)、Tw 暖機期間(成層燃焼運転期間)、Δfp 燃料噴射減少量、Δr DI比率補正量、ΔT 制御期間(DI比率制御)、ΔT♯ 制御期間(燃料噴射量減少制御)。
【技術分野】
【0001】
この発明は、内燃機関の制御装置に関し、より特定的には、筒内に燃料噴射するための第1の燃料噴射手段(筒内噴射用インジェクタ)および吸気通路内に燃料噴射するための第2の燃料燃焼手段(吸気通路噴射用インジェクタ)とを含んで構成される内燃機関における、成層燃焼運転から均質燃焼運転への移行時の燃料噴射制御に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの燃焼室に直接燃料噴射する主燃料噴射弁(筒内噴射用インジェクタ)と、吸気ポート用に燃料噴射する副燃料噴射弁(吸気通路噴射用インジェクタ)とを備えるエンジンにおいて、運転状態に応じて成層燃焼領域での運転(以下、「成層燃焼運転」とも称する)と均質燃焼領域での運転(以下、「均質燃焼運転」とも称する)とを切換える燃料噴射制御が開示されている。
【0003】
特に、特許文献1に係るエンジンの燃料噴射制御装置では、成層燃焼運転時には副燃料噴射弁(吸気通路噴射用インジェクタ)の分担率を0として主燃料噴射弁(筒内噴射用インジェクタ)のみで燃料噴射を行なうことにより、主燃料噴射弁の容量を小さくできることで低負荷域での噴射速度向上により成層燃焼性能を高める一方で、均質燃焼運転時には主燃料噴射弁と副燃料噴射弁とを適度な分担率で燃料噴射させることにより、運転状態に応じた均質燃焼性能を得ることができる点が開示されている。
【特許文献1】特開2001−20837号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
成層燃焼運転時には、主として筒内噴射用インジェクタによる燃料噴射が行なわれ、均質燃焼運転では、必要な全燃料噴射量が筒内噴射用インジェクタおよび吸気通路噴射インジェクタにより分担されて噴射される。また、成層燃焼運転から均質燃焼運転への運転移行時には、設定空燃比が希薄領域から理論混合比領域に変化される。
【0005】
しかしながら、成層燃焼運転時には圧縮行程中に筒内噴射を行なうため、機関ピストンの頂面(ピストン頂面)や気筒内周面(シリンダ内周面(ボア))に直接燃料が噴きかけかれて燃料付着が発生し易くなる。特に、気筒内における燃料の霧化が促進され難い機関冷間時には、この傾向が顕著となる。内燃機関内への付着燃料は、その後の燃焼時における黒煙の発生や未燃成分の増大による排気性状悪化ならびに、潤滑油の燃料希釈による内燃機関の潤滑性能低下を招くおそれがある。
【0006】
さらに、一旦燃料付着が発生すると、燃料付着が無い場合と比較して、次に筒内噴射される燃料がピストン頂面や気筒内周面に付着し易くなってしまう。したがって、成層燃焼運転から均質燃焼運転への運転移行時(特に、機関冷間時)に筒内噴射の分担比率が大きい場合には、新たに噴射した燃料がピストン頂面や気筒内周面に付着することにより、内燃機関内の燃料付着が多くなるおそれがある。この結果、燃焼室内で実際に燃焼される燃料量が不足することにより、筒内(燃焼室内)の空燃比を希薄領域から理論混合比領域へ速やかに移行させることができなくなり、正常な均質燃焼運転が行なえなくなって燃焼悪化が生じる可能性がある。このような燃焼悪化が生じると、排気性状の悪化、エンジン回転数の低下等の悪影響が懸念される。
【0007】
反対に、成層燃焼運転から均質燃焼運転への運転移行時(特に、機関冷間時)に筒内噴射の分担比率が極小(ほぼ零)である場合には、新たな燃料付着が発生しない一方で成層燃焼運転時の付着燃料が燃焼することにより、燃焼室内で実際に燃焼される燃料量が過剰となって、排気性状が悪化する可能性がある。
【0008】
この発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、この発明の目的は、筒内へ燃料を噴射するための第1の燃料噴射手段および吸気通路内に燃料を噴射するための第2の燃料噴射手段とを含んで構成される内燃機関において、成層燃焼運転から均質燃焼運転への移行時に、筒内で実際に燃焼される燃料量の不足および過剰を防止するように、第1の燃料噴射手段および第2燃料噴射手段の間での燃料噴射分担比率を適正に設定して、エンジンの燃焼状態を正常に維持することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による内燃機関の制御装置は、筒内に燃料を噴射するための第1の燃料噴射手段および吸気通路内に燃料を噴射するための第2の燃料噴射手段を含んで構成される内燃機関の制御装置であって、燃料噴射制御手段を備える。燃料噴射制御手段は、運転状態に応じて均質燃焼運転および成層燃焼運転を切換えるとともに、要求される全燃料噴射量に対する第1の燃料噴射手段および第2の燃料噴射手段の間での燃料噴射量の分担比率を制御する。さらに、燃料噴射制御制御手段は、第1の分担比率設定手段と、第2の分担比率設定手段とを含む。第1の分担比率設定手段は、均質燃焼運転時に、内燃機関の運転状態に対応させた情報に基いて分担比率を設定する。第2の分担比率設定手段は、成層燃焼運転から均質燃焼運転への切換え時点からの所定期間に、第1の分担比率設定手段に代えて分担比率を設定し、かつ、同一の情報に対して第2の燃料噴射手段の燃料噴射量の分担比率を、第1の分担比率設定手段による設定よりも増大させる。
【0010】
上記内燃機関の制御装置においては、全燃料噴射量に対する第1の燃料噴射手段(筒内噴射用)および第2の燃料噴射手段(吸気通路噴射用)の間の燃料噴射分担比率を、成層燃焼運転から均質燃焼運転への運転移行時には、エンジンの運転状態に応じて設定される通常の分担比率(第1の分担比率設定手段による)と比較して、第2の燃料噴射手段からの燃料噴射量が増大するように設定する。したがって、成層燃焼運転中に発生した内燃機関内(ピストン頂面や気筒内周面)の付着燃料の存在によって運転移行直後では新たな燃料付着が発生し易い傾向にある筒内噴射の割合を減らすことにより、実際に燃焼室内で燃焼される燃料量の不足を回避できる。この結果、均質燃焼運転への運転移行時に、空燃比を希薄領域から理論混合比領域へ円滑に変化させて正常な均質燃焼運転を行なえるので、エンジン出力特性および排気性状を安定化することができる。
【0011】
好ましくは、本発明による内燃機関の制御装置では、第2の分担比率設定手段による、第2の燃料噴射手段の燃料噴射量の分担比率の増大分は、均質燃焼運転への切換えまでの成層燃焼運転の期間(時間あるいは点火回数等)に応じて設定される。
【0012】
上記内燃機関の制御装置においては、成層燃焼運転期間、すなわち、成層燃焼運転時での筒内燃料噴射による内燃機関内への燃料付着量に対応させて、第2の燃料噴射手段からの燃料噴射量の増大分を設定できる。したがって、均質燃焼運転への運転移行時における新たな燃料付着の発生、あるいは、吸気通路噴射への過剰な振替えによる不具合の発生をより確実に解消して、燃焼性の悪化をより確実に防止できる。
【0013】
また好ましくは、本発明による内燃機関の制御装置では、所定期間の長さは、均質燃焼運転への切換えまでの成層燃焼運転の期間(時間あるいは点火回数等)に応じて設定される。
【0014】
上記内燃機関の制御装置においては、成層燃焼運転期間、すなわち、成層燃焼運転時での筒内燃料噴射による内燃機関内への燃料付着量に対応させて、分担比率を修正する制御期間を設定できる。したがって、燃焼悪化防止のための分担比率修正制御が不要となった後は、エンジンの運転状態に応じて設定される好ましい分担比率(第1の分担比率設定手段による)による運転を速やかに開始できる。
【0015】
あるいは好ましくは、本発明による内燃機関の制御装置では、第2の分担比率設定手段による、第2の燃料噴射手段の燃料噴射量の分担比率の増大分は、内燃機関の回転数および負荷率に応じて設定される。
【0016】
上記内燃機関の制御装置においては、均質燃焼運転への運転移行時における内燃機関の運転状態(回転数および負荷率)に対応させて、第2の燃料噴射手段からの燃料噴射量の増大分を設定できる。したがって、均質燃焼運転への運転移行時における新たな燃料付着の発生、あるいは、吸気通路噴射への過剰な振替えによる不具合の発生をより確実に解消して、燃焼性の悪化をより確実に防止できる。
【0017】
本発明の他の構成による内燃機関の制御装置は、筒内に燃料を噴射するための第1の燃料噴射手段および吸気通路内に燃料を噴射するための第2の燃料噴射手段を含んで構成される内燃機関の制御装置であって、燃料噴射制御手段を備える。燃料噴射制御手段は、運転状態に応じて均質燃焼運転および成層燃焼運転を切換えるとともに、要求される全燃料噴射量に対する第1の燃料噴射手段および第2の燃料噴射手段の間での燃料噴射量の分担比率を制御する。さらに、燃料噴射制御制御手段は、均質燃焼運転時に、内燃機関の運転状態に対応させた情報に基いて分担比率を設定する分担比率設定手段と、成層燃焼運転から均質燃焼運転への切換え時点において、内燃機関の運転領域が分担比率設定手段によって第2の燃料噴射手段の分担比率が100%近傍に設定される領域である場合に、切換え時点からの所定期間において全燃料噴射量を所定量減少させる手段とを含む。
【0018】
上記内燃機関の制御装置においては、成層燃焼運転から均質燃焼運転への移行時に、ほぼ全燃料噴射量が第2の燃料噴射手段(吸気通路噴射用)から噴射されるように均質燃焼運転時の分担比率が設定されるようなエンジン軽負荷領域では、成層燃焼運転時での筒内付着燃料が均質燃焼運転への運転移行後に燃焼される点を考慮して、第2の燃料噴射手段(吸気通路噴射用)による燃料噴射量(すなわち、全燃料噴射量)を減少する。これにより、均質燃焼運転への運転移行時に燃焼室内で実際に燃焼される燃料量が過剰となることによる燃焼異常を防止して、エンジン出力特性および排気性状を安定化することができる。
【0019】
本発明の他の構成による内燃機関の制御装置においては、燃料噴射制御制御手段は、成層燃焼運転から均質燃焼運転への切換え時点において、内燃機関の運転領域が第1の分担比率設定手段によって第1の燃料噴射手段の分担比率が所定の第2判定値以上に設定される領域である場合に、切換え時点からの所定期間において第1の分担比率設定手段に代えて用いられる第2の分担比率設定手段をさらに含む。第2の分担比率設定手段は、同一の情報に対して、第2の燃料噴射手段の燃料噴射量の分担比率を、第1の分担比率設定手段による設定よりも増大させる。
【0020】
上記内燃機関の制御装置においては、さらに、第1の燃料噴射手段(筒内噴射用)からの燃料噴射の分担比率が比較的高いエンジン運転領域では、エンジンの運転状態に応じて設定される通常の分担比率(第1の分担比率設定手段による)に対して、第2の燃料噴射手段からの燃料噴射量が増大するように設定する。これにより、成層燃焼運転中に発生した内燃機関内(ピストン頂面や気筒内周面)への付着燃料の存在によって運転移行直後では新たな燃料付着の発生し易い傾向にある筒内噴射の割合を減らすことにより、燃焼室内での燃焼燃料不足を回避できる。したがって、均質燃焼運転への運転移行時点における、第2の燃料噴射手段(吸気通路噴射用)からの燃料噴射の分担比率が高い領域で懸念される燃焼燃料過剰による燃焼悪化、および第1の燃料噴射手段(筒内噴射用)からの燃料噴射の分担比率が高い領域で懸念される燃焼燃料不足による燃焼悪化の両者を防止して、エンジンでの燃焼状態を正常に維持することができる。
【0021】
また好ましくは、本発明による内燃機関の制御装置では、成層燃焼運転は、内燃機関からの排気を受ける触媒コンバータの暖機運転時に実行される。
【0022】
上記内燃機関の制御装置においては、筒内噴射燃料が内燃機関内に特に付着し易い成層燃焼運転が機関冷間時に行なわれるので、均質燃焼運転への運転移行時における燃焼悪化が発生し易くなる。このため、上記の燃料噴射量分担比率の設定制御または全燃料噴射量の減少制御による燃焼悪化防止の効果が顕著となる。
【0023】
また、成層燃焼運転では圧縮行程での筒内燃料噴射が含まれるため、点火時期の遅角化により排気温度を高くできる。この結果、排気から触媒への単位体積当たり伝熱量が大きくなり、短時間で触媒の暖機を実行できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る内燃機関の制御装置では、筒内へ燃料を噴射するための第1の燃料噴射手段および吸気通路内に燃料を噴射するための第2の燃料噴射手段とを含んで構成される内燃機関において、成層燃焼運転から均質燃焼運転への移行時に、筒内での燃焼燃料の不足および過剰を防止するように、第1の燃料噴射手段および第2燃料噴射手段の間での燃料噴射分担比率を適正に設定して、筒内での燃料不足および燃料過剰を防止して、エンジンでの燃焼状態を正常に維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下において、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では図中の同一または相当部分には同一符号を付してその詳細な説明は原則として繰返さないものとする。
【0026】
図1に、本発明の実施の形態に係る内燃機関の制御装置であるエンジンECU(Electronic Control Unit)で制御されるエンジンシステムの概略構成図を示す。なお、図1には、エンジンとして直列4気筒ガソリンエンジンを示すが、本発明はこのようなエンジンに限定されるものではない。
【0027】
図1に示すように、エンジン(内燃機関)10は、4つの気筒112を備え、各気筒112はそれぞれ対応するインテークマニホールド20を介して共通のサージタンク30に接続されている。サージタンク30は、吸気ダクト40を介してエアクリーナ50に接続され、吸気ダクト40内にはエアフローメータ42が配置されるとともに、電動モータ60によって駆動されるスロットルバルブ70が配置されている。このスロットルバルブ70は、アクセルペダル100とは独立してエンジンECU300の出力信号に基づいてその開度が制御される。一方、各気筒112は共通のエキゾーストマニホールド80に連結され、このエキゾーストマニホールド80は三元触媒コンバータ90(以下、単に触媒コンバータとも称する)に連結されている。
【0028】
各気筒112に対しては、筒内に向けて燃料を噴射するための筒内噴射用インジェクタ110と、吸気ポートまたは/および吸気通路内に向けて燃料を噴射するための吸気通路噴射用インジェクタ120とがそれぞれ設けられている。これらインジェクタ110、120はエンジンECU300の出力信号に基づいてそれぞれ制御される。
【0029】
なお、本実施の形態においては、2つのインジェクタが別個に設けられた内燃機関について説明するが、本発明はこのような内燃機関に限定されない。たとえば、筒内噴射機能と吸気通路噴射機能とを併せ持つような1個のインジェクタを有する内燃機関であってもよい。
【0030】
図1に示すように、各筒内噴射用インジェクタ110は共通の燃料分配管130に接続されている。この燃料分配管130は、燃料分配管130に向けて流通可能な逆止弁140を介して、機関駆動式の高圧燃料ポンプ150に接続されている。高圧燃料ポンプ150の吐出側は電磁スピル弁152を介して高圧燃料ポンプ150の吸入側に連結されており、この電磁スピル弁152の開度が小さいときほど、高圧燃料ポンプ150から燃料分配管130内に供給される燃料量が増大され、電磁スピル弁152が全開にされると、高圧燃料ポンプ150から燃料分配管130への燃料供給が停止されるように構成されている。なお、電磁スピル弁152はエンジンECU300の出力信号に基づいて制御される。
【0031】
一方、各吸気通路噴射用インジェクタ120は、共通する低圧側の燃料分配管160に接続されており、燃料分配管160および高圧燃料ポンプ150は共通の燃料圧レギュレータ170を介して、電動モータ駆動式の低圧燃料ポンプ180に接続されている。さらに、低圧燃料ポンプ180は燃料フィルタ190を介して燃料タンク200に接続されている。燃料圧レギュレータ170は低圧燃料ポンプ180から吐出された燃料の燃料圧が予め定められた設定燃料圧よりも高くなると、低圧燃料ポンプ180から吐出された燃料の一部を燃料タンク200に戻すように構成されている。したがって吸気通路噴射用インジェクタ120に供給されている燃料圧および高圧燃料ポンプ150に供給されている燃料圧が上記設定燃料圧よりも高くなるのを阻止している。
【0032】
エンジンECU300は、デジタルコンピュータから構成され、双方向性バス310を介して相互に接続されたROM(Read Only Memory)320、RAM(Random Access Memory)330、CPU(Central Processing Unit)340、入力ポート350および出力ポート360を備えている。
【0033】
エアフローメータ42は吸入空気量に比例した出力電圧を発生し、このエアフローメータ42の出力電圧はA/D変換器370を介して入力ポート350に入力される。エンジン10には機関冷却水温に比例した出力電圧を発生する水温センサ380が取付けられ、この水温センサ380の出力電圧は、A/D変換器390を介して入力ポート350に入力される。
【0034】
燃料分配管130には燃料分配管130内の燃料圧に比例した出力電圧を発生する燃料圧センサ400が取付けられ、この燃料圧センサ400の出力電圧は、A/D変換器410を介して入力ポート350に入力される。三元触媒コンバータ90上流のエキゾーストマニホールド80には、排気ガス中の酸素濃度に比例した出力電圧を発生する空燃比センサ420が取付けられ、この空燃比センサ420の出力電圧は、A/D変換器430を介して入力ポート350に入力される。
【0035】
本実施の形態に係るエンジンシステムにおける空燃比センサ420は、エンジン10で燃焼された混合気の空燃比に比例した出力電圧を発生する全域空燃比センサ(リニア空燃比センサ)である。なお、空燃比センサ420としては、エンジン10で燃焼された混合気の空燃比が理論空燃比に対してリッチであるかリーンであるかをオン−オフ的に検出するO2センサを用いてもよい。
【0036】
アクセルペダル100は、アクセルペダル100の踏込み量に比例した出力電圧を発生するアクセル開度センサ440に接続され、アクセル開度センサ440の出力電圧は、A/D変換器450を介して入力ポート350に入力される。また、入力ポート350には、機関回転数を表わす出力パルスを発生する回転数センサ460が接続されている。エンジンECU300のROM320には、上述のアクセル開度センサ440および回転数センサ460により得られる機関負荷率および機関回転数に基づき、運転状態に対応させて設定されている燃料噴射量の値や機関冷却水温に基づく補正値などが予めマップ化されて記憶されている。
【0037】
エンジンECU300は、所定プログラムの実行により各センサからの信号に基づいて、エンジンシステムの全体動作を制御するための各種制御信号を生成する。これらの制御信号は、出力ポート360および駆動回路470を介して、エンジンシステムを構成する機器・回路群へ送出される。
【0038】
図1に示したエンジンシステムでは、このような特性の異なる2種類のインジェクタをエンジン10の回転率と負荷率で使い分けることにより、エンジン10が通常運転状態である場合には、主に均質燃焼が行なわれるようにしている。
【0039】
一方、エンジン10がアイドル時の触媒暖機時の場合、非通常運転状態であるときには、成層燃焼が行なわれる。ここでいう成層燃焼には、成層燃焼と以下に示す弱成層燃焼の双方を含むものである。弱成層燃焼とは、吸気通路噴射用インジェクタ120を吸気行程で燃料噴射して燃焼室全体にリーンで均質な混合気を生成して、さらに筒内噴射用インジェクタ110を圧縮行程で燃料噴射して点火プラグ周りにリッチな混合気を生成して、燃焼状態の向上を図るものである。このような弱成層燃焼は触媒暖機時に好ましい。これは、以下の理由による。すなわち、触媒暖気時には高温の燃焼ガスを触媒に到達させるために点火時期を大幅に遅角させ、かつ良好な燃焼状態(アイドル状態)を維持する必要がある。また、ある程度の燃料量を供給する必要がある。これを成層燃焼で行なおうとしても燃料量が少ないという問題があり、これを均質燃焼で行なおうとしても良好な燃焼を維持するために遅角量が成層燃焼に比べて小さいという問題がある。このような観点から、上述した弱成層燃焼を触媒暖機時に用いることが好ましいが、成層燃焼および弱成層燃焼のいずれであっても構わない。
【0040】
均質燃焼運転時には、上記のように算出された全燃料噴射量に対する、筒内噴射用インジェクタ110および吸気通路噴射用インジェクタ120の間での燃料噴射量分担比率は、基本的には以下に説明するように制御される。
【0041】
図2および図3は、図1に示したエンジンシステムにおける、均質燃焼運転時における筒内噴射用インジェクタ110と、吸気通路噴射用インジェクタ120との燃料噴射量分担比率(噴分け比率)の設定マップの第1の例を説明する図である。
【0042】
図2および図3を参照して、エンジン10の運転状態に対応させた情報である、筒内噴射用インジェクタ110と吸気通路噴射用インジェクタ120との噴き分け比率(以下、DI比率rとも記載する。)を表わすマップについて説明する。これらのマップは、エンジンECU300のROM320に記憶される。図2は、エンジン10の温間用マップであって、図3は、エンジン10の冷間用マップである。
【0043】
図2および図3に示すように、これらのマップは、エンジン(内燃機関)10の回転数を横軸にして、負荷率を縦軸にして、筒内噴射用インジェクタ110の分担比率がDI比率rとして百分率で示されている。
【0044】
図2および図3に示すように、エンジン10の回転数と負荷率とに定まる運転領域ごとに、DI比率rが設定されている。「DI比率r=100%」とは、筒内噴射用インジェクタ110からのみ燃料噴射が行なわれる領域であることを意味し、「DI比率r=0%」とは、吸気通路噴射用インジェクタ120からのみ燃料噴射が行なわれる領域であることを意味する。「DI比率r≠0%」、「DI比率r≠100%」および「0%<DI比率r<100%」とは、筒内噴射用インジェクタ110と吸気通路噴射用インジェクタ120とで燃料噴射が分担して行なわれる領域であることを意味する。
【0045】
なお、概略的には、筒内噴射用インジェクタ110は、出力性能の上昇に寄与し、吸気通路噴射用インジェクタ120は、混合気の均一性に寄与する。このような特性の異なる2種類のインジェクタを、エンジン10の回転数と負荷率とで使い分けることにより、エンジン10が通常運転状態である場合には、主に均質燃焼が行なわれるようにしている。
【0046】
さらに、これらの図2および図3に示すように、温間時のマップと冷間時のマップとに分けて、筒内噴射用インジェクタ110と吸気通路噴射用インジェクタ120のDI分担率rを規定した。エンジン10の温度が異なると、筒内噴射用インジェクタ110および吸気通路噴射用インジェクタ120の制御領域が異なるように設定されたマップを用いて、エンジン10の温度を検知して、エンジン10の温度が予め定められた温度しきい値以上であると図2の温間時のマップを選択して、そうではないと図3に示す冷間時のマップを選択する。それぞれ選択されたマップに基づいて、エンジン10の回転数と負荷率とに基づいて、筒内噴射用インジェクタ110および/または吸気通路噴射用インジェクタ120を制御する。
【0047】
図2および図3に設定されるエンジン10の回転数と負荷率について説明する。図2のNE(1)は2500〜2700rpmに設定され、KL(1)は30〜50%、KL(2)は60〜90%に設定されている。また、図3のNE(3)は2900〜3100rpmに設定されている。すなわち、NE(1)<NE(3)である。その他、図2のNE(2)や、図3のKL(3)、KL(4)も適宜設定されている。
【0048】
図2および図3を比較すると、図2に示す温間用マップのNE(1)よりも図3に示す冷間用マップのNE(3)の方が高い。これは、エンジン10の温度が低いほど、吸気通路噴射用インジェクタ120の制御領域が高いエンジン回転数の領域まで拡大されるということを示す。すなわち、エンジン10が冷えている状態であるので、(たとえ、筒内噴射用インジェクタ110から燃料を噴射しなくても)筒内噴射用インジェクタ110の噴口にデポジットが堆積しにくい。このため、吸気通路噴射用インジェクタ120を使って燃料を噴射する領域を拡大するように設定され、均質性を向上させることができる。
【0049】
図2および図3を比較すると、エンジン10の回転数が、温間用マップにおいてはNE(1)以上の領域において、冷間用マップにおいてはNE(3)以上の領域において、「
DI比率r=100%」である。また、負荷率が、温間用マップにおいてはKL(2)以上の領域において、冷間用マップにおいてはKL(4)以上の領域において、「DI比率r=100%」である。これは、予め定められた高エンジン回転数領域では筒内噴射用インジェクタ110のみが使用されること、予め定められた高エンジン負荷領域では筒内噴射用インジェクタ110のみが使用されるということを示す。すなわち、高回転領域や高負荷領域においては、筒内噴射用インジェクタ110のみで燃料を噴射しても、エンジン10の回転数や負荷が高く吸気量が多いので筒内噴射用インジェクタ110のみでも混合気を均質化しやすいためである。このようにすると、筒内噴射用インジェクタ110から噴射された燃料は燃焼室内で気化潜熱を伴い(燃焼室から熱を奪い)気化される。これにより、圧縮端での混合気の温度が下がる。これにより対ノッキング性能が向上する。また、燃焼室の温度が下がるので、吸入効率が向上し高出力が見込める。
【0050】
図2に示す温間マップでは、負荷率KL(1)以下では、筒内噴射用インジェクタ110のみが用いられる。これは、エンジン10の温度が高いときであって、予め定められた低負荷領域では筒内噴射用インジェクタ110のみが使用されるということを示す。温間時においてはエンジン10が暖まった状態であるので、筒内噴射用インジェクタ110の噴口にデポジットが堆積しやすい。しかしながら、筒内噴射用インジェクタ110を使って燃料を噴射することにより噴口温度を低下させることができるので、デポジットの堆積を回避することも考えられ、また、筒内噴射用インジェクタの最小燃料噴射量を確保して、筒内噴射用インジェクタ110を閉塞させないことも考えられる。このため、この領域では、筒内噴射用インジェクタ110を用いた燃料噴射を行なっている。
【0051】
図2および図3を比較すると、図3の冷間用マップにのみ「DI比率r=0%」の領域が存在する。これは、エンジン10の温度が低いときであって、予め定められた低負荷領域(KL(3)以下)では吸気通路噴射用インジェクタ120のみが使用されるということを示す。これはエンジン10が冷えていてエンジン10の負荷が低く吸気量も低いため燃料が霧化しにくい。このような領域においては筒内噴射用インジェクタ110による燃料噴射では良好な燃焼が困難であるため、また、特に低負荷および低回転数の領域では筒内噴射用インジェクタ110を用いた高出力を必要としないため、筒内噴射用インジェクタ110を用いないで、吸気通路噴射用インジェクタ120のみを用いる。
【0052】
また、通常運転時以外の場合、エンジン10がアイドル時の触媒暖機時の場合(非通常運転状態であるとき)、成層燃焼を行なうように筒内噴射用インジェクタ110が制御される。このような触媒暖機運転中に成層燃焼させることで、触媒暖機を促進させ、排気エミッションの向上を図る。
【0053】
図4および図5には、図1に示したエンジンシステムにおけるDI比率rの設定マップの第2の例が示される。
【0054】
図4(温間時)および図5(冷間時)に示された設定マップは、図2および図3に示された設定マップと比較して、低回転数領域の高負荷領域におけるDI比率設定が異なる。
【0055】
エンジン10では、低回転数領域の高負荷領域においては、筒内噴射用インジェクタ110から噴射された燃料により形成される混合気のミキシングが良好ではなく、燃焼室内の混合気が不均質で燃焼が不安定になる傾向を有する。このため、このような問題が発生しない高回転数領域へ移行するに伴い筒内噴射用インジェクタの噴射比率を増大させるようにしている。また、このような問題が発生する高負荷領域へ移行するに伴い筒内噴射用インジェクタ110の噴射比率を減少させるようにしている。これらのDI比率rの変化を図4および図5に十字の矢印で示す。
【0056】
このようにすると、燃焼が不安定であることに起因するエンジンの出力トルクの変動を抑制することができる。なお、これらのことは、予め定められた低回転数領域へ移行するに伴い筒内噴射用インジェクタ110の噴射比率を減少させることや、予め定められた低負荷領域へ移行するに伴い筒内噴射用インジェクタ110の噴射比率を増大させることと、略等価であることを確認的に記載する。また、このような領域(図4および図5で十字の矢印が記載された領域)以外の領域であって筒内噴射用インジェクタ110のみで燃料を噴射している領域(高回転側、低負荷側)においては、筒内噴射用インジェクタ110のみでも混合気を均質化しやすい。このようにすると、筒内噴射用インジェクタ110から噴射された燃料は燃焼室内で気化潜熱を伴い(燃焼室から熱を奪い)気化される。これにより、圧縮端での混合気の温度が下がる。これにより対ノッキング性能が向上する。また、燃焼室の温度が下がるので、吸入効率が向上し高出力が見込める。
【0057】
なお、図4および図5に示した設定マップにおける、その他の領域のDI比率設定については、図2(温間時)および図3(冷間時)と同様であるので、詳細な説明は繰り返さない。
【0058】
なお、図2〜図5を用いて説明したこのエンジン10においては、均質燃焼は筒内噴射用インジェクタ110の燃料噴射タイミングを吸気行程とすることにより、成層燃焼は筒内噴射用インジェクタ110の燃料噴射タイミングを圧縮行程とすることにより実現できる。すなわち、筒内噴射用インジェクタ110の燃料噴射タイミングを圧縮行程とすることで、点火プラグ周りにリッチ混合気が偏在させることにより燃焼室全体としてはリーンな混合気に着火する成層燃焼を実現することができる。また、筒内噴射用インジェクタ110の燃料噴射タイミングを吸気行程としても点火プラグ周りにリッチ混合気を偏在させることができれば、吸気行程噴射であっても成層燃焼を実現できる。
【0059】
また、筒内噴射用インジェクタ110による燃料噴射のタイミングは、以下のような理由により、圧縮行程で行なうことが好ましい。ただし、上述したエンジン10は、基本的な大部分の領域には(触媒暖気時にのみに行なわれる、吸気通路噴射用インジェクタ120を吸気行程噴射させ、筒内噴射用インジェクタ110を圧縮行程噴射させる弱成層燃焼領域以外を基本的な領域という)、筒内噴射用インジェクタ110による燃料噴射のタイミングは、吸気行程である。しかしながら、以下に示す理由があるので、燃焼安定化を目的として一時的に筒内噴射用インジェクタ110の燃料噴射タイミングを圧縮行程噴射とするようにしてもよい。
【0060】
筒内噴射用インジェクタ110からの燃料噴射時期を圧縮工程中とすることで、筒内温度がより高い時期において、燃料噴射により混合気が冷却される。冷却効果が高まるので、対ノック性を改善することができる。さらに、筒内噴射用インジェクタ110からの燃料噴射時期を圧縮工程中とすると、燃料噴射から点火時期までの時間が短いことから噴霧による気流の強化を実現でき、燃焼速度を上昇させることができる。これらの対ノック性の向上と燃焼速度の上昇とから、燃焼変動を回避して、燃焼安定性を向上させることができる。
【0061】
次に、本発明の実施の形態に従う内燃機関の制御装置による成層燃焼運転(触媒暖機運転)から通常走行のための均質燃焼運転への移行について説明する。
【0062】
図6は、本発明の実施の形態に従う内燃機関の制御装置による触媒暖機制御を説明するフローチャートである。
【0063】
図6を参照して、エンジンが始動されると(ステップS100)、触媒暖機のための成層燃焼運転が実行されて、希薄領域に設定された空燃比および所定の燃料噴射量分担比率に従って、吸気通路噴射用インジェクタ120および筒内噴射用インジェクタ110の少なくとも一方からの燃料噴射が実行される(ステップS110)。上述したように、本実施の形態における成層燃焼運転には、一般的な成層燃焼と上述の弱成層燃焼が含まれる。
【0064】
成層燃焼運転開始時には、触媒暖機運転が終了するまでの暖機期間、すなわち成層燃焼運転期間を測定するために、タイマ値Twが0に初期化される(ステップS120)。
【0065】
触媒暖機運転は、図示しないシフトレバーによって選択されたシフトポジションが、P(パーキングポジション)またはN(ニュートラルポジション)のようなエンジンの回転軸と車輪駆動軸とが非連結となるポジションが選択されている場合に実行される。
【0066】
したがって、成層燃焼運転中には、シフトポジションが“P”および“N”であるかどうが、逐時確認される(ステップS130)。
【0067】
シフトポジションが“P”および “N”以外となって、エンジンの回転軸と車輪駆動軸とが連結されるようなシフトポジション(たとえば、Dポジション、Rポジション等)が選択された場合には、暖機運転は終了される(ステップS130におけるNO判定)。
【0068】
シフトポジションがPまたはNである間は成層燃焼運転が継続されて(ステップS130におけるYES判定)、触媒温度が上昇するまでの間、成層燃焼運転が継続される(ステップS140)。触媒温度が上昇した場合(ステップS140におけるYES判定)には、暖機運転は終了される。
【0069】
ステップ140における触媒温度上昇判定は、たとえば、触媒暖機のための熱源となるエンジン10からの排気ガス量を積算することで簡易に実行できる。この際に、成層燃焼運転時のエンジン運転条件がほぼ所定条件に固定されるため、排気ガス温度は予測可能である。したがって、エアフローメータ42(図1)による吸入空気量に基づいて、上記排気ガス量を算出することで、触媒コンバータ90の温度を実際に測定することなく、触媒温度の上昇を判定できる。
【0070】
なお、暖機運転時においてステップS130のシフトポジションに係る判定は必須ではなく、シフトポジションにかかわらず、触媒温度が上昇するまでの間成層燃焼運転が継続されるようにしてもよい。
【0071】
触媒暖機運転の終了時には、ステップS120における計時開始時点から暖機運転終了までの期間である暖機期間、すなわち成層燃焼運転期間Twが求められ、記憶される(ステップS150)。成層燃焼運転期間Twとしては、暖機運転の実行時間や暖機運転中の点火回数等が用いられる。
【0072】
暖機運転が終了されると、通常運転のためにエンジン10は均質燃焼運転へ移行する(ステップS160)。
【0073】
均質燃焼運転への移行に伴い、空燃比設定が希薄領域から理論混合比領域に切換えられ、エンジン10における燃料噴射制御や吸入空気量制御すなわちスロットルバルブ70(図1)の開度制御が行なわれる。
【0074】
この際の燃焼悪化の問題点について、各気筒112での断面図に相当する図7を用いて説明する。
【0075】
図7を参照して、各気筒は、シリンダブロック101と、シリンダブロック101の上部に連結されるシリンダヘッド102とを備えるシリンダ111と、シリンダ111内を往復動するピストン103とを有して構成される。このピストン103は、エンジン10の出力軸であるクランクシャフト104に、クランクアーム105およびコンロッド106を介して連結される。コンロッド106は、ピストン103の往復運動をクランクシャフト104の回転に変換する。シリンダ111内においては、シリンダブロック101およびシリンダヘッド102の内壁とピストンの頂面とによって混合気を燃焼するための燃焼室107が区画形成されている。
【0076】
シリンダヘッド102には、この燃焼室107に突出する態様で混合気に点火を行なう点火プラグ114と、燃焼室107に燃料を噴射供給する筒内噴射用インジェクタ110とが配設されている。さらに、吸気通路噴射用インジェクタ120は、インテークマニホールド、すなわち吸気通路20と燃焼室107との連通部分である吸気ポート22または/および吸気通路20に燃料を噴射供給するように配設されている。
【0077】
吸気通路20および/または吸気ポート22に噴射された燃料を含む混合気は、吸気弁24の開弁期間に燃焼室107内へ導かれる。点火プラグ114による点火により燃料が燃焼された後の排気は、排気弁84の開弁期間に排気通路80を介して触媒コンバータ90へ送られる。
【0078】
成層燃焼運転時には、圧縮行程中に筒内噴射用インジェクタ110からピストン103の頂面(ピストン頂面)やシリンダ111内の内周面(シリンダ内周面)へ直接燃料が噴きかけられるため、これらの部位に燃料付着が発生し易くなる。特に、本実施の形態では、触媒暖機時、すなわち機関冷間時に成層燃焼運転を行なうため、このような燃料付着が発生し易くなる。
【0079】
一旦燃焼室内(ピストン頂面やシリンダ内周面)に燃料が付着すると、全く燃料付着が無い状態と比較して、その後の筒内噴射用インジェクタ110からの噴射燃料が、燃焼室内に付着し易くなる。このため、成層燃焼運転から均質燃焼運転への運転移行時において、筒内噴射用インジェクタ110からピストン頂面やシリンダ内周面へ直接噴射される燃料は、付着し易くなる。
【0080】
上記のように、均質燃焼運転に必要な燃料量は、DI比率に従って、筒内噴射用インジェクタ110および吸気通路噴射用インジェクタ120によって分担して噴射される。このため、筒内噴射用インジェクタ110からの噴射燃料量が燃焼室に付着して当該サイクル内で燃焼されなくなることにより、燃焼室107内で実際に燃焼される燃料量が不足して空燃比を希薄領域から理論混合比領域へ速やかに移行させることができなくなる。この結果、正常な均質燃焼運転が行なえなくなって燃焼悪化が発生し、排気性状の悪化、エンジン回転数の低下等を招く可能性がある。
【0081】
これに対して、吸気通路噴射用インジェクタ120からの噴射燃料は、燃焼室内(筒内)への流入前に空気と十分に混合されるため、燃焼室内への付着は発生し難い。したがって、均質燃焼運転への運転移行時には、筒内噴射用インジェクタ110および吸気通路噴射用インジェクタ120による全燃料噴射量が同一の下では、吸気通路噴射用インジェクタ120からの燃料噴射量を積極的に行なう方が、運転移行に伴うエンジンでの燃焼悪化防止の点からは好ましい。
【0082】
図2〜図5に説明したように、均質燃焼運転時におけるDI比率は、基本的にはエンジンの運転領域(特に、エンジン回転数および負荷率)に応じて決定されるが、本発明の実施の形態に係る内燃機関の制御装置では、均質燃焼運転への移行直後の期間において、吸気通路噴射用インジェクタ120による燃料噴射量の分担比率を通常よりも上昇、すなわちDI比率を通常よりも低下させる。
【0083】
再び図6を参照して、均質燃焼運転への移行時には、燃焼室107内への新たな燃焼付着を防止する観点から、運転移行時のDI比率制御が、図2〜図5に示した通常のDI比率設定制御に変えて実行される。また、このようなDI比率制御を行なう制御期間ΔTが設定される(ステップS170)。
【0084】
すなわち、エンジンECU300による図2〜図5に示したマップに従う通常運転時のDI比率設定が、本発明における「第1の分担比率設定手段」に対応し、ステップS170によるDI比率設定が、本発明における「第2の分担比率設定手段」に対応する。
【0085】
図8に示すように、成層燃焼運転から均質燃焼運転への移行時点である時刻t1を始点とする制御期間ΔT(時刻t1〜t2間、あるいは所定点火回数カウントまでの期間)の間、DI比率は補正量|Δr|だけ下げられる。すなわち、DI比率は、図2〜図5に示したマップの参照によりエンジン10の運転条件に応じて設定される基本的なDI比率rと比較して、r+Δr(Δr<0)に設定される。
【0086】
なお、成層燃焼運転期間が長いほど、成層運転終了時における燃焼室内の燃料付着が多いと予測される。したがって、暖機期間(成層燃焼運転期間)Twが長いほど、均質燃焼運転移行後での筒内噴射用インジェクタ110からの噴射燃料が燃焼室内に付着する危険性が高いため、制御期間ΔTを長く、かつ、DI比率補正量Δrの絶対値を大きくする必要がある。
【0087】
図9に示すように、制御期間ΔTは、ステップ150で求められた暖機期間(成層燃焼運転期間)Twに応じて設定される。なお、制御期間ΔTは、経過時間や点火回数等で示される。
【0088】
暖機期間Twが判定基準値Taよりも短く、燃焼室内の燃料付着がそれほど多くないと予測される場合には、燃焼運転移行後での筒内噴射用インジェクタ110からの噴射燃料が燃焼室内に付着する危険性も低いので、DI比率を下げなくても正常な均質燃焼運転が行なえる可能性が高い。このため、制御期間ΔT=0に設定されて、均質燃焼運転への移行時点から、図2〜図5に示されたマップに従う、通常のDI比率設定が行なわれる。
【0089】
一方、暖機期間Twが判定基準値Ta以上である場合には、暖機期間Twに応じて、所定の制御期間ΔTが設定される。あるいは、暖機期間Twが長いほど制御期間ΔTも長く設定されるように、図9に点線で示されるような暖機期間Twに応じた複数段階(図9におけるT1,T2)からの選択、や暖機期間Twに応じた制御期間ΔTの連続的な設定としてもよい。
【0090】
同様に、DI比率補正量Δrについても、図10に示すように暖機期間Twに応じて設定することができる。
【0091】
図10を参照して、上記のように暖機期間Twがしきい値Taよりも短いときには|Δr|=0に設定する一方で、暖機期間Twがしきい値Taよりも長いときには、暖機期間Twに応じてDI比率補正量Δrが設定される。
【0092】
すなわち、暖機期間Twが長いほどDI比率補正量Δrの絶対値が大きくなるように、図9に点線で示されるような暖機期間Twに応じて|Δr|を複数段階(図9におけるr1,r2)から選択したり、暖機期間Twに応じて|Δr|を連続的に設定してもよい。
【0093】
また、図11に示すように、DI比率補正量Δrについては、エンジンの運転条件(エンジン回転数−負荷率)に応じて決定してもよい。具体的には、エンジンの高回転−高負荷率領域でDI比率補正量Δrの絶対値が大きくなり、低回転−低負荷率領域でDI比率補正量Δrの絶対値が小さくなるように、DI比率補正量Δrが設定される。
【0094】
高回転−高負荷率領域では全燃料噴射量が大きいため、DI比率補正量|Δr|を大きくしてDI比率をより低下させ、筒内噴射用インジェクタ110からの燃料噴射量を抑制する必要がある。
【0095】
再び図6を参照して、ステップS170で設定された制御期間ΔTの経過が監視され(ステップS180)、制御期間ΔTの間、通常のDI比率rに対してDI比率が|Δr|低下される。
【0096】
制御期間ΔTが経過すると(ステップS180におけるYES判定)、触媒暖機制御は終了されて、図2〜図5に従う通常のDI比率設定制御が行なわれる。
【0097】
なお、図6では図示を省略しているが、エンジン始動(ステップS100)に伴って、エンジン冷却水温等に基づいて、触媒暖機運転が必要かどうかがまず判定される。すなわち、エンジン始動時に、エンジン冷却水温が所定の基準温度以上である場合には、その段階で触媒暖機運転制御が終了されて、図2〜図5に示したDI比率マップに従った、均質燃焼運転が実行される。
【0098】
以上説明したように本発明の実施の形態に係る内燃機関の制御装置においては、成層燃焼運転から均質燃焼運転への移行時に、エンジンの運転条件に応じて設定される通常のDI比率(図2〜図5)に対してDI比率を低下させる。これにより、成層燃焼運転中に生じた付着燃料の存在によって運転移行直後では新たな燃料付着が発生し易い傾向にある筒内噴射用インジェクタ110からの燃料噴射の割合を減らすことにより、燃焼室内での燃焼燃料不足を回避できる。この結果、均質燃焼運転への運転移行時に、空燃比を希薄領域から理論混合比領域へ円滑に変化させて正常な均質燃焼運転を行なえるので、エンジン出力特性および排気性状を安定化することができる。
【0099】
また、暖機期間(成層燃焼運転期間)Twに応じてDI比率補正量Δrおよび制御期間ΔTを設定することにより、成層燃焼運転中における燃焼室内の燃料付着量に対応させて、吸気通路噴射用インジェクタ120からの燃料噴射分担比率を増大できる。この結果、均質燃焼運転への運転移行時における燃焼性の悪化をより確実に防止できる。さらに、上記燃焼悪化を防止した後は、速やかに通常運転時の好ましいDI比率設定(図2〜図5によるDI比率r)による運転を開始できる。
【0100】
(触媒暖機運転制御の他の例)
図6に示したフローチャートに従う触媒暖機制御によって、成層燃焼運転から均質燃焼運転への運転移行時における燃焼室内で実際に燃焼される燃料量の不足に起因する燃焼悪化を防止できる。上記の説明から理解されるように、このような燃料不足はDI比率が比較的高い領域で懸念される。
【0101】
一方、図3および図5にも示されるように、均質燃焼運転への移行直後にDI比率が0%に設定される領域が存在する。上記のように吸気通路噴射用インジェクタ120からの噴射燃料は、燃焼室内(筒内)への流入前に空気と十分に混合されるため、このような領域では、均質燃焼運転への移行後において、燃焼室内での新たな燃料付着が発生し難いが、その一方で、成層燃焼運転時の付着燃料が燃焼することによって燃焼室内で実際に燃焼される燃料量が過剰となることにより排気性状が悪化する可能性がある。以下では、運転移行時にDI比率≒0%領域での燃焼悪化をも防止する制御方式について説明する。
【0102】
図12は、本発明の実施の形態に従う内燃機関の制御装置による触媒暖機制御の他の例を説明するフローチャートである。
【0103】
図12を参照して、ステップS100〜S160までは、図6に示したフローチャートと同様であるので詳細な説明は繰返さない。
【0104】
図12に示した触媒暖機制御では、均質燃焼運転への移行時に、まず、このときのエンジンの運転条件が、図2〜図5の基本的なDI比率マップに照らして、通常のDI比率rがほぼ0%(吸気通路噴射用インジェクタ120からほぼ全燃料を噴射)に対応する領域であるかどうかが判定される(ステップS165)。具体的には、均質燃焼運転移行時点におけるエンジン運転条件が、図2〜図5に従って設定される通常のDI比率が第1判定値rf1以下となる領域であるかどうかが判定される。すなわち、第1判定値rf1は0%近傍の所定値である。
【0105】
運転移行時点でのエンジン運転条件がDI比率≒0%領域に対応する場合(ステップS165におけるYES判定)には、図13に示すように、制御期間ΔT♯の間、全燃料噴射量が本来の全燃料噴射量より減少される。すなわち、当該制御期間ΔT♯においては、全燃料噴射量は、本来の全燃料噴射量fに対してf+Δfp(Δfp<0)に設定される。
【0106】
ステップS175による燃料噴射量減少制御は制御期間ΔT♯(時刻t1〜t3間、あるいは、所定点火回数カウントまでの期間)の間実行され(ステップS185)、当該制御期間ΔT♯が経過すると触媒暖機制御は終了されて、図2〜図5に従う通常のDI比率設定制御が行なわれる。
【0107】
なお、制御期間ΔT♯は、DI比率制御の制御期間ΔTと共通としてもよいし、別個の値を設定してもよい。さらに、燃料噴射減少量Δfpについても、DI比率補正量Δrと同様に、暖機期間(成層燃焼運転期間)Twに応じて、あるいはエンジンの運転条件(回転数−負荷率)に応じて設定してもよい。
【0108】
これにより、成層燃焼運転から均質燃焼運転への移行時に均質燃焼運転のDI比率≒0%に設定されるようなエンジン軽負荷領域では、成層燃焼運転中での筒内付着燃料を考慮して全燃料噴射量を減少することにより、実際に燃焼される燃料が過剰となることに起因する燃焼悪化を防止することが可能となる。
【0109】
一方、運転移行時点でのエンジン運転条件がDI比率≒0%領域以外である場合(ステップS165におけるNO判定)には、さらに、このときのエンジンの運転条件が、図2〜図5の基本的なDI比率マップに照らして、通常のDI比率rが第2判定値rf2以上となる領域であるかどうかが判定される(ステップS167)。第2判定値rf2は、吸気通路噴射用インジェクタ120による燃料噴射量分担比率が低い(DI比率が高い)ことにより燃焼悪化の発生が懸念される領域に対応して、第1判定値rf1と共通、あるいはそれ以上の所定値に設定される。
【0110】
上記のように第1判定値rf1および第2判定値rf2は、エンジン10の設計に応じて、成層燃焼運転中の付着燃料に起因する燃焼悪化が問題となる境界領域を実験的に求めることで設定すればよい。
【0111】
通常のDI比率rが第2判定値rf2以上となる領域では(ステップS167におけるYES判定)では、図6と同様のステップS170およびS180が実行され、制御期間ΔTの間、DI比率を|Δr|だけ低下することにより燃焼悪化が防止される。
【0112】
また、通常のDI比率rが第2判定値rf2より小さい領域では(ステップS167におけるNO判定)では、DI比率の補正は行なわれずに触媒暖機制御が終了されて、運転移行直後より、通常の全燃料噴射量および図2〜図5に従う通常のDI比率制御に従って車両運転が実行される。
【0113】
このように図12に示したフローチャートに従う触媒暖機制御では、成層燃焼運転から均質燃焼運転への運転移行時において、運転移行時点におけるDI比率が低すぎる領域で懸念される、成層燃焼運転中の付着燃料の燃焼による燃焼燃料量過剰に起因する燃焼悪化、およびDI比率が高い領域で懸念される、新たな燃料付着の発生による燃焼燃料量不足に起因する燃焼悪化の両者を防止して、エンジンでの燃焼状態を正常に維持することができる。
【0114】
なお、本実施の形態に係る暖機運転制御において、運転移行時のDI比率制御については、図6および図12のステップS170でDI比率補正演算(r+Δr)を実行する構成の他に、補正量Δrを予め加算した運転移行時用マップを別途作成しておいた上で、ステップS170では、図2〜図5の基本的なDI比率設定マップ(基本マップ)の代わりに、上記運転移行時用マップを参照してDI比率を決定する方が、エンジンECU300の演算負荷軽減の面から好ましい。
【0115】
この場合には、ステップS170において、暖機期間Twが図9および図10に示したしきい値Taよりも短いかどうかがさらに判定され、暖機期間Twがしきい値Taを超えている場合に、上記運転移行時用マップが参照される。特に図10に示すようにDI比率補正量|Δr|を暖機期間Twに応じて複数段階に設定する場合には、運転移行時用マップについても複数個用意する必要が生じる。また、図11に示すようにエンジン回転数および負荷率に応じてDI比率補正量|Δr|を変化する場合にも、エンジン回転数−負荷率を反映した運転移行時用マップを作成する必要がある。
【0116】
同様に、図12のステップS175においても、全燃料噴射量に関して補正演算(f+Δfp)を実行する構成の他に、予めΔfpを加算した全燃料噴射量に関する運転移行時用マップを別途作成しておいた上で、ステップS175において通常の全燃料噴射量設定マップに代えて上記運転移行時用マップを参照する構成とする方がエンジンECU300の演算負荷軽減の面から好ましい。
【0117】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明の実施の形態に係る内燃機関の制御装置により制御されるエンジンシステムの概略構成図である。
【図2】図1に示したエンジンシステムにおける、均質燃焼運転時のDI比率設定マップ(機関温間時)の第1の例を説明する図である。
【図3】図1に示したエンジンシステムにおける、均質燃焼運転時のDI比率設定マップ(機関冷間時)の第1の例を説明する図である。
【図4】図1に示したエンジンシステムにおける、均質燃焼運転時のDI比率設定マップ(機関温間時)の第2の例を説明する図である。
【図5】図1に示したエンジンシステムにおける、均質燃焼運転時のDI比率設定マップ(機関冷間時)の第2の例を説明する図である。
【図6】本発明の実施の形態に従う内燃機関の制御装置による触媒暖機制御の例を説明するフローチャートである。
【図7】図1に示したエンジンの構成を説明する図である。
【図8】均質燃焼運転への移行時におけるDI比率制御を説明する概念図である。
【図9】均質燃焼運転への移行時におけるDI比率制御期間の設定を説明する概念図である。
【図10】均質燃焼運転への移行時におけるDI比率補正量の設定を説明する第1の概念図である。
【図11】均質燃焼運転への移行時におけるDI比率補正量の設定を説明する第2の概念図である。
【図12】本発明の実施の形態に従う内燃機関の制御装置による触媒暖機制御の他の例を説明するフローチャートである。
【図13】図12に示した触媒暖機制御における燃料噴射量制御を説明する概念図である。
【符号の説明】
【0119】
10 エンジン、20 インテークマニホールド(吸気通路)、22 吸気ポート、24 吸気弁、30 サージタンク、40 吸気ダクト、42 エアフローメータ、50 エアクリーナ、60 電動モータ、70 スロットルバルブ、80 エキゾーストマニホールド(排気通路)、84 排気弁、90 三元触媒コンバータ、100 アクセルペダル、101 シリンダブロック、102 シリンダヘッド、103 ピストン、104 クランクシャフト、105 クランクアーム、106 コンロッド、107 燃焼室、110 筒内噴射用インジェクタ、111 シリンダ、112 気筒、114 点火プラグ、120 吸気通路噴射用インジェクタ、130,160 燃料分配管、150 高圧燃料ポンプ、170 燃料圧レギュレータ、180 低圧燃料ポンプ、190 燃料フィルタ、200 燃料タンク、300 エンジンECU、380 水温センサ、400 燃料圧センサ、420 空燃比センサ、460 回転数センサ、r DI比率(通常運転時)、Tw 暖機期間(成層燃焼運転期間)、Δfp 燃料噴射減少量、Δr DI比率補正量、ΔT 制御期間(DI比率制御)、ΔT♯ 制御期間(燃料噴射量減少制御)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒内に燃料を噴射するための第1の燃料噴射手段および吸気通路内に燃料を噴射するための第2の燃料噴射手段を含んで構成される内燃機関の制御装置であって、
運転状態に応じて均質燃焼運転および成層燃焼運転を切換えるとともに、要求される全燃料噴射量に対する前記第1の燃料噴射手段および第2の燃料噴射手段の間での燃料噴射量の分担比率を制御する燃料噴射制御手段を備え、
前記燃料噴射制御制御手段は、
前記均質燃焼運転時に、前記内燃機関の運転状態に対応させた情報に基いて前記分担比率を設定する第1の分担比率設定手段と、
前記成層燃焼運転から前記均質燃焼運転への切換え時点からの所定期間に、前記第1の分担比率設定手段に代えて前記分担比率を設定する第2の分担比率設定手段とを含み、
前記第2の分担比率設定手段は、同一の前記情報に対して、前記第2の燃料噴射手段の燃料噴射量の分担比率を、前記第1の分担比率設定手段による設定よりも増大させる、内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記第2の分担比率設定手段による、前記第2の燃料噴射手段の燃料噴射量の分担比率の増大分は、前記均質燃焼運転への切換えまでの前記成層燃焼運転の期間に応じて設定される、請求項1記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記所定期間の長さは、前記均質燃焼運転への切換えまでの前記成層燃焼運転の期間に応じて設定される、請求項1記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記第2の分担比率設定手段による、前記第2の燃料噴射手段の燃料噴射量の分担比率の増大分は、前記内燃機関の回転数および負荷率に応じて設定される、請求項1記載の内燃機関の制御装置。
【請求項5】
筒内に燃料を噴射するための第1の燃料噴射手段および吸気通路内に燃料を噴射するための第2の燃料噴射手段を含んで構成される内燃機関の制御装置であって、
運転状態に応じて均質燃焼運転および成層燃焼運転を切換えるとともに、要求される全燃料噴射量に対する前記第1の燃料噴射手段および第2の燃料噴射手段の間での燃料噴射量の分担比率を制御する燃料噴射制御手段を備え、
前記燃料噴射制御制御手段は、
前記均質燃焼運転時に、前記内燃機関の運転状態に対応させた情報に基いて前記分担比率を設定する第1の分担比率設定手段と、
前記成層燃焼運転から前記均質燃焼運転への切換え時点において、前記内燃機関の運転領域が前記第1の分担比率設定手段によって前記第1の燃料噴射手段の分担比率が所定の第1判定値以下に設定される領域である場合に、前記切換え時点からの所定期間において前記全燃料噴射量を所定量減少させる手段とを含む、内燃機関の制御装置。
【請求項6】
前記燃料噴射制御制御手段は、
前記成層燃焼運転から前記均質燃焼運転への切換え時点において、前記内燃機関の運転領域が前記第1の分担比率設定手段によって前記第1の燃料噴射手段の分担比率が所定の第2判定値以上に設定される領域である場合に、前記切換え時点からの所定期間において前記第1の分担比率設定手段に代えて用いられる第2の分担比率設定手段をさらに含み、
前記第2の分担比率設定手段は、同一の前記情報に対して、前記第2の燃料噴射手段の燃料噴射量の分担比率を、前記第1の分担比率設定手段による設定よりも増大させる、請求項5記載の内燃機関の制御装置。
【請求項7】
前記成層燃焼運転は、前記内燃機関からの排気を受ける触媒コンバータの暖機運転時に実行される、請求項1から6のいずれか1項に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項1】
筒内に燃料を噴射するための第1の燃料噴射手段および吸気通路内に燃料を噴射するための第2の燃料噴射手段を含んで構成される内燃機関の制御装置であって、
運転状態に応じて均質燃焼運転および成層燃焼運転を切換えるとともに、要求される全燃料噴射量に対する前記第1の燃料噴射手段および第2の燃料噴射手段の間での燃料噴射量の分担比率を制御する燃料噴射制御手段を備え、
前記燃料噴射制御制御手段は、
前記均質燃焼運転時に、前記内燃機関の運転状態に対応させた情報に基いて前記分担比率を設定する第1の分担比率設定手段と、
前記成層燃焼運転から前記均質燃焼運転への切換え時点からの所定期間に、前記第1の分担比率設定手段に代えて前記分担比率を設定する第2の分担比率設定手段とを含み、
前記第2の分担比率設定手段は、同一の前記情報に対して、前記第2の燃料噴射手段の燃料噴射量の分担比率を、前記第1の分担比率設定手段による設定よりも増大させる、内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記第2の分担比率設定手段による、前記第2の燃料噴射手段の燃料噴射量の分担比率の増大分は、前記均質燃焼運転への切換えまでの前記成層燃焼運転の期間に応じて設定される、請求項1記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記所定期間の長さは、前記均質燃焼運転への切換えまでの前記成層燃焼運転の期間に応じて設定される、請求項1記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記第2の分担比率設定手段による、前記第2の燃料噴射手段の燃料噴射量の分担比率の増大分は、前記内燃機関の回転数および負荷率に応じて設定される、請求項1記載の内燃機関の制御装置。
【請求項5】
筒内に燃料を噴射するための第1の燃料噴射手段および吸気通路内に燃料を噴射するための第2の燃料噴射手段を含んで構成される内燃機関の制御装置であって、
運転状態に応じて均質燃焼運転および成層燃焼運転を切換えるとともに、要求される全燃料噴射量に対する前記第1の燃料噴射手段および第2の燃料噴射手段の間での燃料噴射量の分担比率を制御する燃料噴射制御手段を備え、
前記燃料噴射制御制御手段は、
前記均質燃焼運転時に、前記内燃機関の運転状態に対応させた情報に基いて前記分担比率を設定する第1の分担比率設定手段と、
前記成層燃焼運転から前記均質燃焼運転への切換え時点において、前記内燃機関の運転領域が前記第1の分担比率設定手段によって前記第1の燃料噴射手段の分担比率が所定の第1判定値以下に設定される領域である場合に、前記切換え時点からの所定期間において前記全燃料噴射量を所定量減少させる手段とを含む、内燃機関の制御装置。
【請求項6】
前記燃料噴射制御制御手段は、
前記成層燃焼運転から前記均質燃焼運転への切換え時点において、前記内燃機関の運転領域が前記第1の分担比率設定手段によって前記第1の燃料噴射手段の分担比率が所定の第2判定値以上に設定される領域である場合に、前記切換え時点からの所定期間において前記第1の分担比率設定手段に代えて用いられる第2の分担比率設定手段をさらに含み、
前記第2の分担比率設定手段は、同一の前記情報に対して、前記第2の燃料噴射手段の燃料噴射量の分担比率を、前記第1の分担比率設定手段による設定よりも増大させる、請求項5記載の内燃機関の制御装置。
【請求項7】
前記成層燃焼運転は、前記内燃機関からの排気を受ける触媒コンバータの暖機運転時に実行される、請求項1から6のいずれか1項に記載の内燃機関の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−152817(P2006−152817A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−340520(P2004−340520)
【出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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