説明

加算器

【課題】新たなロジックインメモリ構造を提供する。また、より消費電力の低い信号処理回路を提供する。また、より消費電力の低い電子機器を提供する。
【解決手段】オフ電流の低いトランジスタを用いて記憶素子を構成することで、記憶機能と演算機能を組み合わせた回路を提供する。オフ電流の低いトランジスタを用いることで、オフ電流の低いトランジスタのソースまたはドレインの一方と、他のトランジスタのゲートとの間などに電荷を保持することができる。そのため、オフ電流の低いトランジスタのソース又はドレインの一方と、他のトランジスタのゲートと、の間のノード等を記憶素子として用いることができる。また、加算器の動作に伴うリーク電流を著しく低減することができる。これにより、消費電力の低い信号処理回路を構築することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加算器に関する。さらに、不揮発性記憶機能を有する信号処理回路、および信号処理回路を用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
高集積化、高性能化が進むシリコン半導体集積回路では、集積回路の消費電力、とりわけ待機状態で消費する静的消費電力の著しい増大が問題となっている。シリコン集積チップにおいて静的消費電力を低減するために、DRAMやSRAMなどの揮発性メモリ以外に、フラッシュメモリのような不揮発性メモリを併用する方法がある。この方法では、集積回路が待機状態のとき、データを不揮発性メモリに待避させて電源を切り、不要な電力の消費を抑えることができる。しかしフラッシュメモリではデータの待避および復帰に、高い電圧と長い書き込み・読み込み時間が必要である。
【0003】
これに対して、例えば非特許文献1には、記憶素子としてTMR(Tunneling Magnetoresistive、トンネル磁気抵抗)素子を用いることにより、記憶機能と演算機能を組み合わせたロジックインメモリ構造が記載されている。記憶素子としてTMR素子を用いたロジックインメモリ構造とすることにより、データの待避および復帰に伴う電力消費を低減することができる。非特許文献1には、TMR素子を用いた全加算器として、24個のトランジスタと2個の容量素子、4個のTMR素子で構成された全加算器が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Ikeda et al,「Magnetic Tunnel Junctions for Spintronic Memories and Beyond」IEEE TRANSACTIONS ON ELECTRON DEVICES,2007,VOL.54,NO.5,pp.991−1002
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
携帯型情報機器の発展および省エネルギー化の要求に伴い、低消費電力な信号処理回路が要求されている。しかしながら、TMR素子を有するロジックインメモリ構造では、TMR素子で消費される電力が大きく、信号処理回路全体における消費電力の低減に限界がある。
【0006】
そこで、本発明の一態様は、新たなロジックインメモリ構造を提供することを目的の一とする。また、新たなロジックインメモリ構造を有し消費電力の低い信号処理回路を提供することを目的の一とする。また、該信号処理回路を有する消費電力の低い電子機器を提供することを目的の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様では、極めてオフ電流の低いトランジスタ(代表的には、極めてオフ電流の低い酸化物半導体を用いたトランジスタ)を用いて記憶素子を構成することで、記憶機能と演算機能を組み合わせた回路を提案する。
【0008】
極めてオフ電流の低いトランジスタを用いると、極めてオフ電流の低いトランジスタのソースまたはドレインの一方と、他のトランジスタのゲートとの間のノードなどに電荷を保持できる。そのため極めてオフ電流の低いトランジスタのソースまたはドレインの一方と、他のトランジスタのゲートとの間のノードなどを記憶素子として用いることができる。また、加算器の動作に伴うリーク電流を著しく低減することができる。これにより、消費電力の低い信号処理回路を構築することが可能である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様により、新たなロジックインメモリ構造を提供することができる。また、新たなロジックインメモリ構造を有し消費電力の低い信号処理回路を提供することができる。また、該信号処理回路を有し消費電力の低い電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】加算器のブロック図。
【図2】加算器のブロック図。
【図3】全加算器のブロック図および回路図。
【図4】全加算器のブロック図および回路図。
【図5】全加算器の回路図。
【図6】全加算器のブロック図。
【図7】全加算器の動作を示すタイミングチャート。
【図8】全加算器の回路図。
【図9】全加算器の回路図。
【図10】トランジスタの構造を示す図。
【図11】トランジスタの構造を示す図。
【図12】トランジスタの構造を示す図。
【図13】トランジスタの作製工程を示す図。
【図14】トランジスタの作製工程を示す図。
【図15】トランジスタの作製工程を示す図。
【図16】トランジスタの作製工程を示す図。
【図17】トランジスタの作製工程を示す図。
【図18】酸化物半導体の結晶構造を示す図。
【図19】酸化物半導体の結晶構造を示す図。
【図20】酸化物半導体の結晶構造を示す図。
【図21】酸化物半導体の結晶構造を示す図。
【図22】計算によって得られた電界効果移動度のゲート電圧依存性を説明する図。
【図23】計算によって得られたドレイン電流と電界効果移動度のゲート電圧依存性を説明する図。
【図24】計算によって得られたドレイン電流と電界効果移動度のゲート電圧依存性を説明する図。
【図25】計算によって得られたドレイン電流と電界効果移動度のゲート電圧依存性を説明する図。
【図26】計算に用いたトランジスタの断面構造を説明する図。
【図27】酸化物半導体膜を用いたトランジスタ特性のグラフ。
【図28】試料Aおよび試料BのXRDスペクトルを示す図。
【図29】トランジスタのオフ電流と測定時基板温度との関係を示す図。
【図30】加算器を用いたCPUのブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では、実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は、以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0012】
なお、「ソース」や「ドレイン」の機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れかわることがある。このため、本明細書においては、「ソース」や「ドレイン」の用語は、入れかえて用いることができるものとする。
【0013】
また、「電気的に接続」には、「何らかの電気的作用を有するもの」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限はない。
【0014】
また、回路図上は独立している構成要素どうしが電気的に接続しているように図示されている場合であっても、実際には、例えば配線の一部が電極としても機能する場合など、一の導電膜が、複数の構成要素の機能を併せ持っている場合もある。本明細書において電気的に接続とは、このような、一の導電膜が、複数の構成要素の機能を併せ持っている場合も、その範疇に含める。
【0015】
また、「上」や「下」の用語は、構成要素の位置関係が「直上」または「直下」であることを限定するものではない。例えば、「ゲート絶縁層上のゲート電極」の表現であれば、ゲート絶縁層とゲート電極との間に他の構成要素を含むものを除外しない。
【0016】
また、図面等において示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、理解の簡単のため、実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明は、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。
【0017】
また、「第1」、「第2」、「第3」などの序数詞は、構成要素の混同を避けるために付すものである。
【0018】
極めてオフ電流の低いトランジスタとしては、室温においてオフ電流が1fA/μm以下のトランジスタを用いることができる。より好ましくは、1aA/μm以下、さらに好ましくは1zA/μm以下のトランジスタを用いることができる。このような極めてオフ電流の低いトランジスタは、チャネルが酸化物半導体層に形成されるトランジスタを適用することで実現することができる。以下、チャネルが酸化物半導体層に形成されるトランジスタを、酸化物半導体を用いたトランジスタという。
【0019】
極めてオフ電流の低いトランジスタを示すために回路図で「OS」の符号を付すことがある。極めてオフ電流の低いトランジスタを用いる場合はこれを付記し、特に言及がないものについてはそれ以外のトランジスタを用いることとして説明する。極めてオフ電流の低いトランジスタ以外のトランジスタとしては、高速動作が可能なトランジスタを用いることができる。高速動作が可能なトランジスタとしては、例えばシリコン層にチャネルが形成されるシリコントランジスタが挙げられる。
【0020】
また、信号処理回路に入出力される各信号の低電位をデータ0、高電位をデータ1とする。またpチャネル型トランジスタであるものはこれを付記し、特に言及がないものについてはnチャネル型トランジスタとして説明する。ただし、トランジスタのチャネルの型および演算に関わる各信号を反転させるか否か等は適宜設計することができる。例えば、一部のトランジスタのチャネル型を入れ替え、入れ替えたトランジスタのゲートに反転した信号を入力するよう設計してもよい。また、反転した信号を生成するために、適宜インバーター等を設けてもよい。
【0021】
(実施の形態1)
本実施の形態では、図1乃至図9を用いて、本発明の一態様である加算器の一例について説明する。加算器は1桁の2進数を足し合わせた結果である和(Sum)と、桁上がり(Carry)が生じたかどうかを求める信号処理回路である。なお加算器には半加算器と全加算器があり、半加算器は下位の桁からのCarryを考慮しない信号処理回路であり、全加算器は下位の桁からのCarryを考慮する信号処理回路である。
【0022】
<加算器のブロック図>
図1に、加算器の構成の一部である、SumまたはCarry回路10をブロック図で示す。加算器は、複数の二進法の入力信号を加算し、演算結果を出力する。SumまたはCarry回路10は加算器のうち、Sumの演算またはCarryの演算のいずれかに関わる部分である。加算器の真理値表を表1に示す。
【0023】
【表1】

【0024】
図1のSumまたはCarry回路10では、表1の入力信号X、AおよびBのうちいずれか1つを入力信号IN1とする。また入力信号X、AおよびBのうち入力信号IN1と異なるいずれか1つを入力信号IN2とする。また出力信号CarryおよびSumのうちいずれか1つを出力信号OUT1とする。
【0025】
図1に示すようにSumまたはCarry回路10は、電位V1を供給する配線11、電位V2を供給する配線12、および演算部13を有する。また演算部13は、接続制御部18および出力信号OUT1を出力する配線17を有する。接続制御部18は、トランジスタ14およびトランジスタ15を有する。トランジスタ15は、極めてオフ電流の低いトランジスタであり、ソースまたはドレインの一方がトランジスタ14のゲートに電気的に接続され、ソースまたはドレインの他方が入力信号IN1の入力端子に電気的に接続される。
【0026】
電位V1および電位V2は異なる任意の電位である。たとえば、電位V1として電源電位を用い、電位V2として接地電位を用いることができる。
【0027】
トランジスタ14は、配線12と配線17との電気的な接続を制御することで、出力信号OUT1として電位V1または電位V2のいずれを出力するかを制御する。
【0028】
トランジスタ15は、入力信号IN1のデータをトランジスタ14のゲートに保持する。トランジスタ15は極めてオフ電流の低いトランジスタであるため、トランジスタ15をオフにすると、トランジスタ14のゲートに電荷を保持することが可能である。
【0029】
図1のSumまたはCarry回路10は、トランジスタ15をオフにすることにより、入力信号IN1のデータをトランジスタ14のゲートに保持することができる。このため、入力信号IN1のデータを保持するためのレジスタ等が不要であり、記憶機能と演算機能を組み合わせたロジックインメモリ構造をもつ加算器を構築することができる。ロジックインメモリ構造とすることにより、データの待避および復帰に伴う電力の消費を低減できる。
【0030】
また、トランジスタ15に極めてオフ電流の低いトランジスタとして酸化物半導体を用いたトランジスタを用いた場合、他のトランジスタに積層して形成することができる。これにより、1つあたりの面積の小さい加算器とすることができる。
【0031】
なお、配線17に電荷をより多く蓄積するために、容量素子を設けてもよい。たとえば、容量素子の一方の電極を配線17に電気的に接続し、容量素子の他方の電極の電位を接地電位としてもよい。
【0032】
図2に、加算器の構成の別の一例をブロック図で示す。図2に示すSumまたはCarry回路20の構成と、図1のSumまたはCarry回路10の構成の相違点は、SumまたはCarry回路20が電位供給制御部21および電位供給制御部22を有する点である。
【0033】
電位供給制御部21は、第1の期間において、配線11と演算部13を電気的に接続することにより、電位V1を演算部13に供給する。また第1の期間の後の第2の期間において、配線11と演算部13を電気的に接続しない。
【0034】
また、電位供給制御部22は、第1の期間において、配線12と演算部13を電気的に接続しない。また、第1の期間の後の第2の期間において、配線12と演算部13を電気的に接続することにより、電位V2を演算部13に供給する。
【0035】
演算部13は、第1の期間において、電位供給制御部21から電位V1を供給される。また、演算部13は、第2の期間において、電位V1または電位V2である配線17の電位を出力信号OUT1として出力する。
【0036】
第1の期間と第2の期間の長さは任意に設定できる。たとえばクロック信号が低電位のときを第1の期間、クロック信号が高電位のときを第2の期間とすることができる。
【0037】
図2のSumまたはCarry回路20は、2つの電位供給制御部21、22が演算部13への電位供給を制御する。これにより演算部13が配線11に電気的に接続されているときは配線12には電気的に接続されず、演算部13が配線12に電気的に接続されているときは、配線11には電気的に接続されない。そのため、SumまたはCarry回路20では加算器の動作に伴う消費電力を大幅に低減することができる。これにより、より消費電力の低い加算器を構築することができる。
【0038】
図3(A)に、全加算器の構成の一例をブロック図で示す。全加算器30は入力信号X、AおよびBの3つの二進法の入力信号を加算し、2つの出力信号SumおよびCarryを演算結果として出力する。入力信号Xには下の桁からの桁上がり(Carry)を入力することができる。全加算器30の真理値表は表1の通りである。図3(B)および図3(C)のX、A、B、CarryおよびSumは、表1のX、A、B、CarryおよびSumに対応する。
【0039】
また、図3に示す全加算器30の構成と、図2に示すSumまたはCarry回路20の構成の相違点は、SumまたはCarry回路20が1つの演算部(演算部13)を有するのに対し、全加算器30は2つの演算部(演算部31と演算部32)を有する点である。
【0040】
図3(A)における電位供給制御部21は、第1の期間において、配線11と演算部31および演算部32を電気的に接続することにより、電位V1を演算部31および演算部32に供給する。また第1の期間の後の第2の期間において、配線11ならびに演算部31および演算部32を電気的に接続しない。
【0041】
また、電位供給制御部22は、第1の期間において、配線12と演算部31および演算部32を電気的に接続しない。また、第1の期間の後の第2の期間において、配線12と演算部31および演算部32を電気的に接続することにより、電位V2を演算部31および演算部32に供給する。
【0042】
図3(B)および図3(C)に、演算部31および演算部32の一例を示す。図3(B)に示す演算部31は、出力信号Sumを出力する配線19aおよび接続制御部41を有する。
【0043】
接続制御部41は、トランジスタ43と、トランジスタ44を有する。トランジスタ44は、極めてオフ電流の低いトランジスタであり、ソースまたはドレインの一方がトランジスタ43のゲートに電気的に接続され、ソースまたはドレインの他方に入力信号Xが入力される端子に電気的に接続される。
【0044】
トランジスタ43は、配線12と配線19aとの電気的な接続を制御することで、出力信号Sumとして電位V1または電位V2のいずれを出力するかを制御する。トランジスタ44は、入力信号Xのデータをトランジスタ43のゲートに保持する。
【0045】
接続制御部41は、入力信号X、AおよびBのいずれか1つまたは3つが低電位となったときのみ配線19aと配線12を電気的に接続する。演算部31は、第2の期間において、配線19aの電位を出力信号Sumとして出力する。
【0046】
図3(C)に示す演算部32は、出力信号Carryを出力する配線19bおよび接続制御部45を有する。
【0047】
接続制御部45は、トランジスタ47と、トランジスタ48を有する。トランジスタ48は、極めてオフ電流の低いトランジスタであり、ソースまたはドレインの一方がトランジスタ47のゲートに電気的に接続され、ソースまたはドレインの他方に入力信号Xが入力される端子に電気的に接続される。
【0048】
トランジスタ47は、配線12と配線19bとの電気的な接続を制御することで、出力信号Carryとして電位V1または電位V2のいずれを出力するかを制御する。トランジスタ48は、入力信号Xのデータをトランジスタ47のゲートに保持する。
【0049】
接続制御部45は、入力信号X、AおよびBの2つ以上が低電位となったときのみ配線19bと配線12を電気的に接続する。演算部32は、第2の期間において、配線19bの電位を出力信号Carryとして出力する。
【0050】
図3の全加算器30は、入力信号X、AおよびBの入力を加算した結果を出力信号SumおよびCarryとして出力する全加算器である。トランジスタ44およびトランジスタ48は極めてオフ電流の低いトランジスタであるため、入力信号Xのデータをトランジスタ43およびトランジスタ47のゲートに保持する。このため、入力信号Xのデータの保持のためのレジスタ等が不要であり、記憶機能と演算機能を組み合わせたロジックインメモリ構造をもつ全加算器を構築することができる。ロジックインメモリ構造とすることにより、データの待避および復帰に伴う電力の消費を低減できる。
【0051】
また、極めてオフ電流の低いトランジスタであるトランジスタ44およびトランジスタ48は、他のトランジスタに積層して形成することができる。これにより、1つあたりの面積の小さい加算器とすることができる。
【0052】
また、2つの電位供給制御部21および電位供給制御部22が演算部31および演算部32への電位供給を制御する。これにより演算部31および演算部32が配線11に電気的に接続されているときは配線12からは電気的に接続されず、演算部31および演算部32が配線12に電気的に接続されているときは、配線11から電気的に接続されない。そのため、全加算器30の動作に伴う消費電力を低減することができる。これにより、より消費電力の低い全加算器30を構築することができる。
【0053】
なお、配線19aにより多くの電荷を蓄積するために、容量素子を設けてもよい。たとえば、容量素子の一方の電極を配線19aに電気的に接続し、容量素子の他方の電極を接地電位としてもよい。同様に、配線19bに容量素子を設けてもよい。たとえば、容量素子の一方の電極を配線19bに電気的に接続し、容量素子の他方の電極を接地電位としてもよい。
【0054】
図4(A)に全加算器の構成の別の一例をブロック図で示す。図4に示す全加算器35の構成と、図3に示す全加算器30の構成の相違点は、全加算器35が有する演算部36および演算部37は、接続制御部41、45に加えて、接続制御部51、52、53、54を有する点である。
【0055】
図4(B)および図4(C)に、演算部36および演算部37の構成の一例を示す。図4(B)に示す演算部36は接続制御部41、接続制御部51、接続制御部52および出力信号Sumを出力する配線19aを有する。図4(C)に示す演算部37は接続制御部45、接続制御部53、接続制御部54および出力信号Carryを出力する配線19bを有する。図4に示す演算部36および演算部37は、入力信号Xに加えてAおよびBの入力端子がそれぞれ極めてオフ電流の低いトランジスタのソースまたはドレインの一方に電気的に接続されている。
【0056】
図4(B)の接続制御部41は、トランジスタ43およびトランジスタ44を有する。接続制御部51は、トランジスタ61およびトランジスタ62を有する。接続制御部52は、トランジスタ63およびトランジスタ64を有する。トランジスタ44、トランジスタ62およびトランジスタ64は極めてオフ電流の低いトランジスタである。トランジスタ44のソースまたはドレインの一方がトランジスタ43のゲートに電気的に接続され、ソースまたはドレインの他方に入力信号Xが入力される端子に電気的に接続される。トランジスタ62のソースまたはドレインの一方がトランジスタ61のゲートに電気的に接続され、ソースまたはドレインの他方に入力信号Aが入力される端子に電気的に接続される。トランジスタ64のソースまたはドレインの一方がトランジスタ63のゲートに電気的に接続され、ソースまたはドレインの他方に入力信号Bが入力される端子に電気的に接続される。
【0057】
トランジスタ43、トランジスタ61およびトランジスタ63は、配線12と配線19aとの電気的な接続を制御することで、第2の期間において出力信号Sumとして電位V1または電位V2のいずれを出力するかを制御する。トランジスタ44は、入力信号Xのデータをトランジスタ43のゲートに保持する。トランジスタ62は、入力信号Aのデータをトランジスタ61のゲートに保持する。トランジスタ64は、入力信号Bのデータをトランジスタ63のゲートに保持する。
【0058】
演算部36は、入力信号X、AおよびBのいずれか1つまたは3つが低電位となったときのみ配線19aと配線12を電気的に接続する。演算部36は、第2の期間において、配線19aの電位を出力信号Sumとして出力する。
【0059】
図4(C)の接続制御部45は、トランジスタ47およびトランジスタ48を有する。接続制御部53は、トランジスタ65およびトランジスタ66を有する。接続制御部54は、トランジスタ67およびトランジスタ68を有する。トランジスタ48、トランジスタ66およびトランジスタ68は極めてオフ電流の低いトランジスタである。トランジスタ48のソースまたはドレインの一方がトランジスタ47のゲートに電気的に接続され、ソースまたはドレインの他方に入力信号Xが入力される端子に電気的に接続される。トランジスタ66のソースまたはドレインの一方がトランジスタ65のゲートに電気的に接続され、ソースまたはドレインの他方に入力信号Aが入力される端子に電気的に接続される。トランジスタ68のソースまたはドレインの一方がトランジスタ67のゲートに電気的に接続され、ソースまたはドレインの他方に入力信号Bが入力される端子に電気的に接続される。
【0060】
トランジスタ47、トランジスタ65およびトランジスタ67は、配線12と配線19bとの電気的な接続を制御することで、第2の期間において出力信号Carryとして電位V1または電位V2のいずれを出力するかを制御する。トランジスタ48は、入力信号Xのデータをトランジスタ47のゲートに保持する。トランジスタ66は、入力信号Aのデータをトランジスタ65のゲートに保持する。トランジスタ68は、入力信号Bのデータをトランジスタ67のゲートに保持する。
【0061】
演算部37は、入力信号X、AおよびBの2つ以上が低電位となったときのみ配線19bと配線12を電気的に接続する。演算部37は、第2の期間において、配線19bの電位を出力信号Carryとして出力する。
【0062】
図4(A)に示す、演算部36および演算部37を有する全加算器35は、入力信号X、AおよびBのデータを保持することができる。全加算器に入力される3つのデータの全てを保持できるため、複数桁の演算の途中で電源を切っても、次に電源を入れたときに演算を続けることができる。
【0063】
<加算器の構成の具体例>
図5に、全加算器の構成の具体例を示す。図5の全加算器100は、入力信号X、AおよびBの3つの二進法の入力信号を加算し、2つの出力信号SumおよびCarryを演算結果として出力する。全加算器100の真理値表は表1の通りである。図5のX、A、B、CarryおよびSumは、表1のX、A、B、CarryおよびSumに対応する。
【0064】
図5の全加算器100は、Sum回路101およびCarry回路102を有する。Sum回路101は、演算部103、電位供給制御部104、電位供給制御部105、電位VDD(電源電位ともいう)を供給する配線151、および電位GND(接地電位ともいう)を供給する配線152を有する。Carry回路102は、演算部106、電位供給制御部107、電位供給制御部108、電位VDD(電源電位ともいう)を供給する配線153、および電位GND(接地電位ともいう)を供給する配線154を有する。
【0065】
まず、Sum回路101について説明する。Sum回路101の演算部103は、出力信号Sumを出力する配線303、接続制御部109a、接続制御部109b、および接続制御部109cを有する。接続制御部109aは、トランジスタ201、トランジスタ202、トランジスタ203およびトランジスタ204を有する。接続制御部109bは、トランジスタ205およびトランジスタ206を有する。接続制御部109cは、トランジスタ207、トランジスタ208、トランジスタ209およびトランジスタ210を有する。
【0066】
電位供給制御部104は、トランジスタ211を有する。電位供給制御部105は、トランジスタ212を有する。
【0067】
配線303は、トランジスタ211のソースまたはドレインの一方、トランジスタ205のソースまたはドレインの一方およびトランジスタ206のソースまたはドレインの一方に電気的に接続されている。
【0068】
トランジスタ201のゲートはトランジスタ202のソースまたはドレインの一方に電気的に接続されている。トランジスタ201のソースまたはドレインの一方はトランジスタ207のソースまたはドレインの一方およびトランジスタ208のソースまたはドレインの一方に電気的に接続されている。トランジスタ201のソースまたはドレインの他方はトランジスタ203のソースまたはドレインの一方およびトランジスタ212のソースまたはドレインの一方に電気的に接続されている。
【0069】
トランジスタ202は極めてオフ電流の低いトランジスタであり、トランジスタ202のゲートはOSG入力端子に電気的に接続され、トランジスタ202のソースまたはドレインの他方は入力信号Xの反転信号の入力端子に電気的に接続されている。ここで、OSG信号は極めてオフ電流の低いトランジスタのゲートに入力される信号をいう。
【0070】
トランジスタ203のゲートはトランジスタ204のソースまたはドレインの一方に電気的に接続され、トランジスタ203のソースまたはドレインの他方はトランジスタ209のソースまたはドレインの一方およびトランジスタ210のソースまたはドレインの一方に電気的に接続されている。
【0071】
トランジスタ204は極めてオフ電流の低いトランジスタであり、トランジスタ204のゲートはOSG入力端子に電気的に接続され、トランジスタ204のソースまたはドレインの他方は入力信号Xの入力端子に電気的に接続されている。
【0072】
トランジスタ205のゲートは入力信号Aの入力端子に電気的に接続され、トランジスタ205のソースまたはドレインの他方はトランジスタ207のソースまたはドレインの他方およびトランジスタ209のソースまたはドレインの他方に電気的に接続されている。
【0073】
トランジスタ206のゲートは入力信号Aの反転信号の入力端子に電気的に接続され、トランジスタ206のソースまたはドレインの他方はトランジスタ208のソースまたはドレインの他方およびトランジスタ210のソースまたはドレインの他方に電気的に接続されている。
【0074】
トランジスタ207のゲートは入力信号Bの入力端子に電気的に接続されている。
【0075】
トランジスタ208およびトランジスタ209のゲートは入力信号Bの反転信号の入力端子に電気的に接続されている。
【0076】
トランジスタ210のゲートは入力信号Bの入力端子に電気的されている。
【0077】
電位供給制御部104のトランジスタ211はpチャネル型トランジスタであり、トランジスタ211のゲートはクロック信号入力端子に電気的に接続され、トランジスタ211のソースまたはドレインの他方は配線151に電気的に接続されている。
【0078】
電位供給制御部105のトランジスタ212のゲートはクロック信号入力端子に電気的に接続され、トランジスタ212のソースまたはドレインの他方は配線152に電気的に接続されている。
【0079】
Sum回路101は、入力信号X、AおよびBのいずれか1つまたは3つが低電位となったときのみ配線152と配線303を電気的に接続する。Sum回路101は、第2の期間において、配線303の電位を出力信号Sumとして出力する。
【0080】
次に、Carry回路102について説明する。Carry回路102の演算部106は、Carryを出力する配線304、接続制御部110a、接続制御部110bおよび接続制御部110cを有する。接続制御部110aは、トランジスタ213およびトランジスタ214を有する。接続制御部110bは、トランジスタ215およびトランジスタ217を有する。接続制御部110cは、トランジスタ216およびトランジスタ218を有する。
【0081】
電位供給制御部107は、トランジスタ219を有する。電位供給制御部108は、トランジスタ220を有する。
【0082】
トランジスタ213のゲートはトランジスタ214のソースまたはドレインの一方に電気的に接続され、トランジスタ213のソースまたはドレインの一方はトランジスタ217のソースまたはドレインの一方およびトランジスタ218のソースまたはドレインの一方に電気的に接続され、トランジスタ213のソースまたはドレインの他方はトランジスタ216のソースまたはドレインの一方およびトランジスタ220のソースまたはドレインの一方に電気的に接続される。
【0083】
トランジスタ214は極めてオフ電流の低いトランジスタであり、トランジスタ214のゲートはOSG入力端子に電気的に接続され、トランジスタ214のソースまたはドレインの他方は入力信号Xの反転信号の入力端子に電気的に接続される。
【0084】
トランジスタ215はpチャネル型トランジスタであり、トランジスタ215のゲートは入力信号Aの入力端子に電気的に接続され、トランジスタ215のソースまたはドレインの一方は配線304、トランジスタ217のソースまたはドレインの他方、トランジスタ218のソースまたはドレインの他方およびトランジスタ219のソースまたはドレインの一方に電気的に接続され、トランジスタ215のソースまたはドレインの他方は、トランジスタ216のソースまたはドレインの他方と接続される。
【0085】
トランジスタ216はpチャネル型トランジスタであり、トランジスタ216のゲートは入力信号Bの入力端子に電気的に接続される。
【0086】
トランジスタ217のゲートは入力信号Aの反転信号の入力端子に電気的に接続される。
【0087】
トランジスタ218のゲートは入力信号Bの反転信号の入力端子に電気的に接続される。
【0088】
電位供給制御部107のトランジスタ219はpチャネル型トランジスタであり、ゲートはクロック信号入力端子に電気的に接続され、トランジスタ219のソースまたはドレインの他方は配線153に電気的に接続される。
【0089】
電位供給制御部108のトランジスタ220のゲートはクロック信号入力端子に電気的に接続され、トランジスタ220のソースまたはドレインの他方は配線154に電気的に接続される。
【0090】
Carry回路102は、入力信号X、AおよびBの2つまたは3つが低電位となったときのみ配線154と配線304を電気的に接続する。Carry回路102は、第2の期間において、配線304の電位を出力信号Carryとして出力する。
【0091】
上述のように、図5に示す全加算器100では、17個のトランジスタと、3個の極めてオフ電流の低いトランジスタにより全加算器が構成される。このように、極めてオフ電流の低いトランジスタを用いることで、少ないトランジスタ数でロジックインメモリ構造の全加算器を構成することが可能となる。
【0092】
なお、配線303に電荷をより多く蓄積するために、容量素子を設けてもよい。たとえば、容量素子の一方の電極を配線303に電気的に接続し、容量素子の他方の電極を接地電位としてもよい。配線304も同様に容量素子を設けてもよい。たとえば、容量素子の一方の電極を配線304に電気的に接続し、容量素子の他方の電極を接地電位としてもよい。
【0093】
図6に、全加算器100を直列全加算器とした場合のブロック図を示す。直列全加算器100には、入力信号Aの入力端子および入力信号Bの入力端子に、2つの複数桁の信号が直列に(最下位の桁から順に)入力される。また、Carry出力端子がX入力端子に電気的に接続される。このような構成により、2つの複数桁の信号を最下位の桁から順に加算することができる。
【0094】
例えば、複数桁の信号の一方を(Y)、複数桁の信号の他方を(Z)としてこれら2つの複数桁の信号の加算を説明する。まず、最下位の桁の信号である信号YおよびZを、入力信号Aおよび入力信号Bとして入力する。最下位の演算では前の桁の桁上がり信号がないため、0を入力信号Xとして入力する。入力信号A、BおよびXについて演算を行い、出力信号SumおよびCarryを得る。出力信号Sumは出力される。続いて、次に下位の桁の信号である信号YおよびZを、入力信号Aおよび入力信号Bとして入力する。前の桁の桁上がり信号である出力信号Carryを入力信号Xとして入力する。入力信号A、BおよびXについて演算を行い、出力信号SumおよびCarryを得る。出力信号Sumは出力される。同様に、次に下位の桁の信号である信号YおよびZを、入力信号AおよびBとして入力し、前の桁の桁上がり信号である出力信号Carryを入力信号Xとして入力する。入力信号A、BおよびXについて演算を行い、出力信号SumおよびCarryを得る。出力信号Sumは出力される。このようにして、(Y)と(Z)の加算の結果を得る。
【0095】
全加算器100は、入力信号Xのデータを極めてオフ電流の低いトランジスタのソースまたはドレインの一方に保持する。このため、入力信号Xのデータの保持のためのレジスタ等が不要であり、記憶機能と演算機能を組み合わせたロジックインメモリ構造をもつ全加算器を構築することができる。ロジックインメモリ構造とすることにより、データの待避および復帰に伴う電力の消費を低減できる。
【0096】
図7に、全加算器100の駆動方法の一例であるタイミングチャートを示す。図7のタイミングチャートのp_0(期間0ともいう)乃至p_7(期間7ともいう)は、表1に示す真理値表のp_0乃至p_7のデータが入出力される期間に対応する。
【0097】
まずp_0の動作について説明する。p_0のとき、入力信号X、A、Bには低電位(データ0)が入力される。
【0098】
p_0において、クロック信号CLKが低電位のとき、電位供給制御部104、107のトランジスタ211およびトランジスタ219がオンとなり、配線303および配線304に電荷が充電される。
【0099】
続いて、OSG信号を低電位から高電位に変化させ、トランジスタ202、204および214をオンとする。OSG信号の低電位から高電位への変化は、CLKが低電位であるときに行うと好ましい。なお、OSG信号に該当する電位をCLKとしてもよい。
【0100】
続いて、クロック信号CLKが低電位から高電位に変化し、トランジスタ211およびトランジスタ219がオフとなる。このとき、Sum回路101では入力信号X、AおよびBから出力信号Sumが演算され、Carry回路102では入力信号X、AおよびBから出力信号Carryが演算され、それぞれが出力される。p_0において、配線303および配線304に充電された電荷は接地により失われ、出力信号SumおよびCarryは低電位(データ0)となる。
【0101】
p_1乃至p_7においても同様に、クロック信号CLKが低電位のときに充電され、クロック信号CLKが高電位のときに、出力信号SumおよびCarryが演算され出力される。充電された電荷が接地により失われた場合は低電位(データ0)が出力され、接地されなかった場合は充電された電荷により高電位(データ1)が出力される。
【0102】
上記のような駆動により、全加算器100は表1の真理値表に示した演算を行うことができる。
【0103】
<加算器の構成の具体例のバリエーション>
図8に、全加算器の構成の別の具体例を示す。図8と図5の相違点は、トランジスタ211、およびトランジスタ219がnチャネル型トランジスタである点と、トランジスタ211およびトランジスタ219のゲートに、クロック信号の反転信号の入力端子が電気的に接続される点である。
【0104】
なおトランジスタ211、トランジスタ212、トランジスタ219、およびトランジスタ220として、極めてオフ電流の低いトランジスタを用いてもよい。極めてオフ電流の低いトランジスタを用いることで、加算器の動作に伴う消費電力をより低減することができる。
【0105】
クロック信号またはクロック信号の反転信号の入力端子と電気的に接続されるトランジスタを、酸化物半導体トランジスタとすることで、加算器の動作に伴うリーク電流をより低減することが可能である。また、酸化物半導体を用いたトランジスタは他のトランジスタに積層して形成することができるため、1つあたりの面積の小さい加算器とすることができる。
【0106】
図9に、全加算器の構成の別の具体例を示す。図9と図8の相違点は、入力信号Xだけでなく、入力信号AおよびBのデータが極めてオフ電流の低いトランジスタのソースまたはドレインの一方に保持される点である。
【0107】
入力信号AおよびBのデータを保持するため、Sum回路101は、トランジスタ221、トランジスタ222、トランジスタ223、トランジスタ224、トランジスタ225を有し、Carry回路102は、トランジスタ226、トランジスタ227、トランジスタ228、トランジスタ229を有する。
【0108】
トランジスタ221乃至トランジスタ229は極めてオフ電流の低いトランジスタであり、ゲートはOSG入力端子に電気的に接続される。
【0109】
トランジスタ221のソースまたはドレインの一方はトランジスタ205のゲートに電気的に接続され、トランジスタ221のソースまたはドレインの他方は入力信号Aの入力端子に電気的に接続される。
【0110】
トランジスタ222のソースまたはドレインの一方はトランジスタ206のゲートに電気的に接続され、トランジスタ222のソースまたはドレインの他方は入力信号Aの反転信号の入力端子に電気的に接続される。
【0111】
トランジスタ223のソースまたはドレインの一方トランジスタ207のゲートに電気的に接続され、トランジスタ223のソースまたはドレインの他方は入力信号Bの入力端子に電気的に接続される。
【0112】
トランジスタ224のソースまたはドレインの一方はトランジスタ208およびトランジスタ209のゲートに電気的に接続され、トランジスタ224のソースまたはドレインの他方は入力信号Bの反転信号の入力端子に電気的に接続される。
【0113】
トランジスタ225のソースまたはドレインの一方はトランジスタ210のゲートに電気的に接続され、トランジスタ225のソースまたはドレインの他方は入力信号Bの入力端子に電気的に接続される。
【0114】
トランジスタ226のソースまたはドレインの一方はトランジスタ215のゲートに電気的に接続され、トランジスタ226のソースまたはドレインの他方は入力信号Aの入力端子に電気的に接続される。
【0115】
トランジスタ227のソースまたはドレインの一方はトランジスタ216のゲートに電気的に接続され、トランジスタ227のソースまたはドレインの他方は入力信号Bの入力端子に電気的に接続される。
【0116】
トランジスタ228のソースまたはドレインの一方はトランジスタ217のゲートに電気的に接続され、トランジスタ228のソースまたはドレインの他方は入力信号Aの反転信号の入力端子に電気的に接続される。
【0117】
トランジスタ229のソースまたはドレインの一方はトランジスタ218のゲートに電気的に接続され、トランジスタ229のソースまたはドレインの他方は入力信号Bの反転信号の入力端子に電気的に接続される。
【0118】
図9に示す全加算器100は、入力信号X、AおよびBのデータを、それぞれ極めてオフ電流の低いトランジスタのソースまたはドレインの一方に保持することができる。全加算器に入力される3つのデータの全てを保持できるため、複数桁の演算の途中で電源を切っても、次に電源を入れたときに演算を続けることができる。
【0119】
このように極めてオフ電流の低いトランジスタ、例えば酸化物半導体を用いたトランジスタを用いることによって、複数桁の演算の途中で電源を切っても、次に電源を入れたときに演算を続けられる信号処理回路を実現することが可能となる。
【0120】
ところで、不揮発性の記憶素子として磁気トンネル接合素子(MTJ素子)が知られている。MTJ素子は、絶縁膜を介して上下に配置している強磁性体膜の磁化の向きが平行であれば低抵抗状態、反平行であれば高抵抗状態となることで情報を記憶する素子である。したがって、本実施の形態で示した記憶素子とは原理が全く異なっている。表2はMTJ素子と、本実施の形態に係る記憶素子として酸化物半導体を用いたトランジスタを用いた場合の対比を示す。
【0121】
【表2】

【0122】
MTJ素子は磁性材料を使用するためキュリー温度以上にすると磁性が失われてしまうという欠点がある。また、MTJ素子は電流駆動であるため、シリコンのバイポーラデバイスと相性が良いが、バイポーラデバイスは高集積化に不向きである。そして、MTJ素子は書き込み電流が微少とはいえメモリの大容量化によって消費電力が増大してしまうといった問題がある。
【0123】
原理的にMTJ素子は磁界耐性に弱く強磁界にさらされると磁化の向きが狂いやすい。また、MTJ素子に用いる磁性体のナノスケール化によって生じる磁化揺らぎを制御する必要がある。
【0124】
さらに、MTJ素子は希土類元素を使用するため、MTJ素子のプロセスを金属汚染を嫌うシリコン半導体のプロセスに組み入れるには相当の注意を要する。MTJ素子はビット当たりの材料コストから見ても高価であると考えられる。
【0125】
一方、本実施の形態に係る記憶素子では、チャネルを形成する材料以外は、素子構造や動作原理がシリコンMOSFETと同様のものを用いている。本実施の形態に係る記憶素子は磁界の影響を受けず、ソフトエラーも生じ得ないといった特質を有する。このことからシリコン集積回路と非常に整合性が良いといえる。
【0126】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1に記載の極めてオフ電流の低いトランジスタとして用いることのできる、酸化物半導体を用いたトランジスタの一例について、図10乃至図12を用いて説明する。
【0127】
図10は、酸化物半導体を用いたトランジスタの一例であるコプラナー型であるトップゲート・トップコンタクト構造のトランジスタの上面図および断面図である。図10(A)にトランジスタの上面図を、図10(A)の一点鎖線A−Bに対応する断面A−Bを図10(B)に示す。
【0128】
図10(B)に示すトランジスタは、基板1100と、基板1100上に設けられた下地絶縁膜1102と、下地絶縁膜1102の周辺に設けられた保護絶縁膜1104と、下地絶縁膜1102および保護絶縁膜1104上に設けられた高抵抗領域1106aおよび低抵抗領域1106bを有する酸化物半導体膜1106と、酸化物半導体膜1106上に設けられたゲート絶縁膜1108と、ゲート絶縁膜1108を介して高抵抗領域1106aと重畳して設けられたゲート電極1110と、ゲート電極1110の側面と接する側壁絶縁膜1112と、少なくとも低抵抗領域1106bおよび側壁絶縁膜1112と接する一対の電極1114と、を有する。該トランジスタは、該トランジスタを覆って設けられた層間絶縁膜1116と、層間絶縁膜1116に設けられた開口部を介して一対の電極1114と接続する配線1118と、を有しても構わない。
【0129】
なお、図示しないが、層間絶縁膜1116および配線1118を覆って設けられた保護膜を有していても構わない。該保護膜を設けることで、層間絶縁膜1116の表面伝導に起因して生じる微小リーク電流を低減することができ、トランジスタのオフ電流を低減することができる。
【0130】
酸化物半導体膜1106に用いる酸化物半導体としては、少なくともインジウム(In)または亜鉛(Zn)を含むことが好ましい。特にInおよびZnを含むことが好ましい。また、それらに加えて、該酸化物半導体を用いたトランジスタの電気的特性のばらつきを減らすためのスタビライザーを有することが好ましい。スタビライザーとしては、ガリウム(Ga)、スズ(Sn)、ハフニウム(Hf)およびアルミニウム(Al)の少なくともいずれかを有すればよい。
【0131】
また、他のスタビライザーとして、ランタノイドである、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)のいずれか一種または複数種を有してもよい。
【0132】
例えば、酸化物半導体として、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、二元系金属の酸化物であるIn−Zn系酸化物、Sn−Zn系酸化物、Al−Zn系酸化物、Zn−Mg系酸化物、Sn−Mg系酸化物、In−Mg系酸化物、In−Ga系酸化物、三元系金属の酸化物であるIn−Ga−Zn系酸化物(IGZOとも表記する)、In−Al−Zn系酸化物、In−Sn−Zn系酸化物、Sn−Ga−Zn系酸化物、Al−Ga−Zn系酸化物、Sn−Al−Zn系酸化物、In−Hf−Zn系酸化物、In−La−Zn系酸化物、In−Ce−Zn系酸化物、In−Pr−Zn系酸化物、In−Nd−Zn系酸化物、In−Sm−Zn系酸化物、In−Eu−Zn系酸化物、In−Gd−Zn系酸化物、In−Tb−Zn系酸化物、In−Dy−Zn系酸化物、In−Ho−Zn系酸化物、In−Er−Zn系酸化物、In−Tm−Zn系酸化物、In−Yb−Zn系酸化物、In−Lu−Zn系酸化物、四元系金属の酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn系酸化物、In−Hf−Ga−Zn系酸化物、In−Al−Ga−Zn系酸化物、In−Sn−Al−Zn系酸化物、In−Sn−Hf−Zn系酸化物、In−Hf−Al−Zn系酸化物を用いることができる。
【0133】
なお、ここで、例えば、In−Ga−Zn系酸化物とは、In、GaおよびZnを主成分として有する酸化物という意味であり、In、GaおよびZnの比率は問わない。また、InとGaとZn以外の金属元素が入っていてもよい。
【0134】
また、酸化物半導体として、InMO(ZnO)(m>0)で表記される材料を用いてもよい。なお、Mは、Ga、Fe、Mn及びCoから選ばれた一の金属元素または複数の金属元素を示す。また、酸化物半導体として、InSnO(ZnO)(n>0)で表記される材料を用いてもよい。
【0135】
例えば、In:Ga:Zn=1:1:1またはIn:Ga:Zn=2:2:1の原子数比のIn−Ga−Zn系酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いることができる。または、In:Sn:Zn=1:1:1、In:Sn:Zn=2:1:3またはIn:Sn:Zn=2:1:5の原子数比のIn−Sn−Zn系酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いるとよい。
【0136】
しかし、これらに限られず、必要とする半導体特性(電界効果移動度、しきい値、ばらつき等)に応じて適切な組成のものを用いればよい。また、必要とする半導体特性を得るために、キャリア濃度や不純物濃度、欠陥密度、金属元素と酸素の原子数比、原子間結合距離、密度等を適切なものとすることが好ましい。
【0137】
例えば、In−Sn−Zn系酸化物では比較的容易に高い電界効果移動度が得られる。しかしながら、In−Ga−Zn系酸化物でも、バルク内欠陥密度を低減することにより電界効果移動度を上げることができる。
【0138】
なお、例えば、In、Ga、Znの原子数比がIn:Ga:Zn=a:b:c(a+b+c=1)である酸化物の組成が、原子数比がIn:Ga:Zn=A:B:C(A+B+C=1)の酸化物の組成だけ近傍であるとは、a、b、cが、
(a―A)+(b―B)+(c―C)≦r
を満たすことをいう。rとしては、例えば、0.05とすればよい。他の酸化物でも同様である。
【0139】
酸化物半導体膜は、単結晶、多結晶(ポリクリスタルともいう。)または非晶質などの状態をとる。
【0140】
好ましくは、酸化物半導体膜は、CAAC−OS(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor)膜とする。
【0141】
CAAC−OS膜は、完全な単結晶ではなく、完全な非晶質でもない。CAAC−OS膜は、非晶質相に結晶部および非晶質部を有する結晶−非晶質混相構造の酸化物半導体膜である。なお、当該結晶部は、一辺が100nm未満の立方体内に収まる大きさであることが多い。また、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)による観察像では、CAAC−OS膜に含まれる非晶質部と結晶部との境界は明確ではない。また、TEMによってCAAC−OS膜には粒界(グレインバウンダリーともいう。)は確認できない。そのため、CAAC−OS膜は、粒界に起因する電子移動度の低下が抑制される。
【0142】
CAAC−OS膜に含まれる結晶部は、c軸がCAAC−OS膜の被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向に揃い、かつab面に垂直な方向から見て三角形状または六角形状の原子配列を有し、c軸に垂直な方向から見て金属原子が層状または金属原子と酸素原子とが層状に配列している。なお、異なる結晶部間で、それぞれa軸およびb軸の向きが異なっていてもよい。本明細書において、単に垂直と記載する場合、85°以上95°以下の範囲も含まれることとする。また、単に平行と記載する場合、−5°以上5°以下の範囲も含まれることとする。
【0143】
なお、CAAC−OS膜において、結晶部の分布が一様でなくてもよい。例えば、CAAC−OS膜の形成過程において、酸化物半導体膜の表面側から結晶成長させる場合、被形成面の近傍に対し表面の近傍では結晶部の占める割合が高くなることがある。また、CAAC−OS膜へ不純物を添加することにより、当該不純物添加領域において結晶部が非晶質化することもある。
【0144】
CAAC−OS膜に含まれる結晶部のc軸は、CAAC−OS膜の被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向に揃うため、CAAC−OS膜の形状(被形成面の断面形状または表面の断面形状)によっては互いに異なる方向を向くことがある。なお、結晶部のc軸の方向は、CAAC−OS膜が形成されたときの被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向となる。結晶部は、成膜することにより、または成膜後に熱処理などの結晶化処理を行うことにより形成される。
【0145】
CAAC−OS膜を用いたトランジスタは、可視光や紫外光の照射による電気特性の変動を低減することが可能である。よって、当該トランジスタは、信頼性が高い。
【0146】
なお、酸化物半導体膜を構成する酸素の一部は窒素で置換されてもよい。
【0147】
また、CAAC−OS膜のように結晶部を有する酸化物半導体膜では、よりバルク内欠陥を低減することができ、表面の平坦性を高めればアモルファス状態の酸化物半導体以上の移動度を得ることができる。表面の平坦性を高めるためには、平坦な表面上に酸化物半導体を形成することが好ましく、具体的には、平均面粗さ(Ra)が1nm以下、好ましくは0.3nm以下、より好ましくは0.1nm以下の表面上に形成するとよい。
【0148】
なお、Raは、JIS B0601で定義されている中心線平均粗さを面に対して適用できるよう三次元に拡張したものであり、「基準面から指定面までの偏差の絶対値を平均した値」と表現でき、以下の数式(1)にて定義される。
【0149】
【数1】

【0150】
なお、上記において、Sは、測定面(座標(x,y)(x,y)(x,y)(x,y)の4点で表される四角形の領域)の面積を指し、Zは測定面の平均高さを指す。Raは原子間力顕微鏡(AFM:Atomic ForceMicroscope)にて評価可能である。
【0151】
また、酸化物半導体膜の厚さは、3nm以上30nm以下とするのが望ましい。酸化物半導体膜を厚くしすぎると(例えば、膜厚を50nm以上)、トランジスタがノーマリオンとなる恐れがあるためである。
【0152】
このようなCAAC−OS膜の例として、膜状に形成され、膜表面または支持する基板面に垂直な方向から観察すると三角形または六角形の原子配列が認められ、かつその膜断面を観察すると金属原子または金属原子および酸素原子(または窒素原子)の層状配列が認められる結晶を挙げることもできる。
【0153】
CAAC−OS膜に含まれる結晶構造の一例ついて図18乃至図21を用いて詳細に説明する。なお、特に断りがない限り、図18乃至図21は上方向をc軸方向とし、c軸方向と直交する面をab面とする。なお、単に上半分、下半分という場合、ab面を境にした場合の上半分、下半分をいう。また、図18において、丸で囲まれたOは4配位のOを示し、二重丸で囲まれたOは3配位のOを示す。
【0154】
図18(A)に、1個の6配位のInと、Inに近接の6個の4配位の酸素原子(以下4配位のO)と、を有する構造を示す。ここでは、金属原子が1個に対して、近接の酸素原子のみ示した構造を小グループと呼ぶ。図18(A)の構造は、八面体構造をとるが、簡単のため平面構造で示している。なお、図18(A)の上半分および下半分にはそれぞれ3個ずつ4配位のOがある。図18(A)に示す小グループは電荷が0である。
【0155】
図18(B)に、1個の5配位のGaと、Gaに近接の3個の3配位の酸素原子(以下3配位のO)と、Gaに近接の2個の4配位のOと、を有する構造を示す。3配位のOは、いずれもab面に存在する。図18(B)の上半分および下半分にはそれぞれ1個ずつ4配位のOがある。また、Inも5配位をとるため、図18(B)に示す構造をとりうる。図18(B)に示す小グループは電荷が0である。
【0156】
図18(C)に、1個の4配位のZnと、Znに近接の4個の4配位のOと、を有する構造を示す。図18(C)の上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位のOがある。図18(C)に示す小グループは電荷が0である。
【0157】
図18(D)に、1個の6配位のSnと、Snに近接の6個の4配位のOと、を有する構造を示す。図18(D)の上半分には3個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位のOがある。図18(D)に示す小グループは電荷が+1となる。
【0158】
図18(E)に、2個のZnを含む小グループを示す。図18(E)の上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には1個の4配位のOがある。図18(E)に示す小グループは電荷が−1となる。
【0159】
ここでは、複数の小グループの集合体を中グループと呼び、複数の中グループの集合体を大グループ(ユニットセルともいう。)と呼ぶ。
【0160】
ここで、これらの小グループ同士が結合する規則について説明する。図18(A)に示す6配位のInの上半分の3個のOは、下方向にそれぞれ3個の近接Inを有し、下半分の3個のOは、上方向にそれぞれ3個の近接Inを有する。図18(B)に示す5配位のGaの上半分の1個のOは、下方向に1個の近接Gaを有し、下半分の1個のOは、上方向に1個の近接Gaを有する。図18(C)に示す4配位のZnの上半分の1個のOは、下方向に1個の近接Znを有し、下半分の3個のOは、上方向にそれぞれ3個の近接Znを有する。この様に、金属原子の上方向の4配位のOの数と、そのOの下方向にある近接金属原子の数は等しく、同様に金属原子の下方向の4配位のOの数と、そのOの上方向にある近接金属原子の数は等しい。Oは4配位なので、下方向にある近接金属原子の数と、上方向にある近接金属原子の数の和は4になる。従って、金属原子の上方向にある4配位のOの数と、別の金属原子の下方向にある4配位のOの数との和が4個のとき、金属原子を有する二種の小グループ同士は結合することができる。例えば、6配位の金属原子(InまたはSn)が下半分の4配位のOを介して結合する場合、4配位のOが3個であるため、5配位の金属原子(GaまたはIn)または4配位の金属原子(Zn)のいずれかと結合することになる。
【0161】
これらの配位数を有する金属原子は、c軸方向において、4配位のOを介して結合する。また、このほかにも、層構造の合計の電荷が0となるように複数の小グループが結合して中グループを構成する。
【0162】
図19(A)に、In−Sn−Zn系の酸化物の層構造を構成する中グループのモデル図を示す。図19(B)に、3つの中グループで構成される大グループを示す。なお、図19(C)は、図19(B)の層構造をc軸方向から観察した場合の原子配列を示す。
【0163】
図19(A)においては、簡単のため、3配位のOは省略し、4配位のOは個数のみ示し、例えば、Snの上半分および下半分にはそれぞれ3個ずつ4配位のOがあることを丸枠の3として示している。同様に、図19(A)において、Inの上半分および下半分にはそれぞれ1個ずつ4配位のOがあり、丸枠の1として示している。また、同様に、図19(A)において、下半分には1個の4配位のOがあり、上半分には3個の4配位のOがあるZnと、上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位のOがあるZnとを示している。
【0164】
図19(A)において、In−Sn−Zn系の酸化物の層構造を構成する中グループは、上から順に4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるSnが、4配位のOが1個ずつ上半分および下半分にあるInと結合し、そのInが、上半分に3個の4配位のOがあるZnと結合し、そのZnの下半分の1個の4配位のOを介して4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるInと結合し、そのInが、上半分に1個の4配位のOがあるZn2個からなる小グループと結合し、この小グループの下半分の1個の4配位のOを介して4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるSnと結合している構成である。この中グループが複数結合して大グループを構成する。
【0165】
ここで、3配位のOおよび4配位のOの場合、結合1本当たりの電荷はそれぞれ−0.667、−0.5と考えることができる。例えば、In(6配位または5配位)、Zn(4配位)、Sn(5配位または6配位)の電荷は、それぞれ+3、+2、+4である。従って、Snを含む小グループは電荷が+1となる。そのため、Snを含む層構造を形成するためには、電荷+1を打ち消す電荷−1が必要となる。電荷−1をとる構造として、図18(E)に示すように、2個のZnを含む小グループが挙げられる。例えば、Snを含む小グループが1個に対し、2個のZnを含む小グループが1個あれば、電荷が打ち消されるため、層構造の合計の電荷を0とすることができる。
【0166】
具体的には、図19(B)に示した大グループが繰り返されることで、In−Sn−Zn系の酸化物の結晶(InSnZn)を得ることができる。なお、得られるIn−Sn−Zn−O系の層構造は、InSnZn(ZnO)(mは0または自然数。)とする組成式で表すことができる。
【0167】
また、このほかにも、四元系金属の酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn系酸化物や、三元系金属の酸化物であるIn−Ga−Zn系酸化物(IGZOとも表記する。)、In−Al−Zn系酸化物、Sn−Ga−Zn系酸化物、Al−Ga−Zn系酸化物、Sn−Al−Zn系酸化物や、二元系金属の酸化物であるIn−Zn系酸化物、Sn−Zn系酸化物、Al−Zn系酸化物、Zn−Mg系酸化物、Sn−Mg系酸化物、In−Mg系酸化物や、In−Ga系酸化物、一元系金属の酸化物であるIn系酸化物、Sn系酸化物、Zn系酸化物などを用いた場合も同様である。
【0168】
例えば、図20(A)に、In−Ga−Zn系の酸化物の層構造を構成する中グループのモデル図を示す。
【0169】
図20(A)において、In−Ga−Zn系の酸化物の層構造を構成する中グループは、上から順に4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるInが、4配位のOが1個上半分にあるZnと結合し、そのZnの下半分の3個の4配位のOを介して、4配位のOが1個ずつ上半分および下半分にあるGaと結合し、そのGaの下半分の1個の4配位のOを介して、4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるInと結合している構成である。この中グループが複数結合して大グループを構成する。
【0170】
図20(B)に3つの中グループで構成される大グループを示す。なお、図20(C)は、図20(B)の層構造をc軸方向から観察した場合の原子配列を示している。
【0171】
ここで、In(6配位または5配位)、Zn(4配位)、Ga(5配位)の電荷は、それぞれ+3、+2、+3であるため、In、ZnおよびGaのいずれかを含む小グループは、電荷が0となる。そのため、これらの小グループの組み合わせであれば中グループの合計の電荷は常に0となる。
【0172】
また、In−Ga−Zn−O系の層構造を構成する中グループは、図20(A)に示した中グループに限定されず、In、Ga、Znの配列が異なる中グループを組み合わせた大グループも取りうる。
【0173】
具体的には、図20(B)に示した大グループが繰り返されることで、In−Ga−Zn系の酸化物の結晶を得ることができる。なお、得られるIn−Ga−Zn−O系の層構造は、InGaO(ZnO)(nは自然数。)とする組成式で表すことができる。
【0174】
n=1(InGaZnO)の場合は、例えば、図21(A)に示す結晶構造を取りうる。なお、図21(A)に示す結晶構造において、図18(B)で説明したように、Ga及びInは5配位をとるため、GaがInに置き換わった構造も取りうる。
【0175】
また、n=2(InGaZn)の場合は、例えば、図21(B)に示す結晶構造を取りうる。なお、図21(B)に示す結晶構造において、図18(B)で説明したように、Ga及びInは5配位をとるため、GaがInに置き換わった構造も取りうる。
【0176】
また、酸化物半導体膜1106の水素濃度は、5×1019atoms/cm以下であることが好ましく、5×1018atoms/cm以下であることがより好ましい。
【0177】
また、図10(B)に示すトランジスタは、ゲート電極1110をマスクに用いて、自己整合的に酸化物半導体膜1106の低抵抗領域1106bを形成することができる。そのため、低抵抗領域1106b(および同時に形成される高抵抗領域1106a)のためのフォトリソグラフィ工程を省略することができる。また、低抵抗領域1106bとゲート電極1110との重なりがほとんどないため、低抵抗領域1106bおよびゲート電極1110が形成する寄生容量が生じず、トランジスタの高速動作が可能となる。なお、高抵抗領域1106aは、ゲートにトランジスタのしきい値電圧以上の電圧が印加されたときにチャネルを形成する。
【0178】
図10(B)に示すトランジスタは、側壁絶縁膜1112を有するため、トランジスタの動作時には、低抵抗領域1106bを介して、一対の電極1114から高抵抗領域1106aに電界が印加されることになる。低抵抗領域1106bを介することで、高抵抗領域1106aに印加される電界が緩和され、チャネル長の小さい微細なトランジスタにおいてもホットキャリア劣化などの劣化を抑制でき、信頼性の高いトランジスタを得ることができる。
【0179】
下地絶縁膜1102は、加熱処理により酸素を放出する絶縁膜を用いると好ましい。酸化物半導体膜1106と接する膜に加熱処理により酸素を放出する絶縁膜を用いることで、酸化物半導体膜1106および酸化物半導体膜1106の界面近傍に生じる欠陥を修復することができ、トランジスタの電気的特性の劣化を抑制できる。
【0180】
下地絶縁膜1102は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化セシウム、酸化タンタルおよび酸化マグネシウムの一種以上を選択して、単層または積層で用いればよい。
【0181】
「加熱処理により酸素を放出する」とは、TDS(Thermal Desorption Spectroscopy:昇温脱離ガス分光法)分析にて、放出される酸素が酸素原子に換算して1.0×1018atoms/cm以上、または3.0×1020atoms/cm以上であることをいう。
【0182】
ここで、TDSを用いた酸素の放出量の測定方法について、以下に説明する。
【0183】
TDS分析したときの気体の全放出量は、放出ガスのイオン強度の積分値に比例する。そしてこの積分値と標準試料の基準値との比較により、気体の全放出量を計算することができる。
【0184】
例えば、標準試料である所定の密度の水素を含むシリコンウェハのTDS分析結果、および絶縁膜のTDS分析結果から、絶縁膜の酸素分子の放出量(NO2)は、数式(2)で求めることができる。ここで、TDS分析で得られる質量数32で検出されるガスの全てが酸素分子由来と仮定する。質量数32のものとしてほかにCHOHがあるが、存在する可能性が低いものとしてここでは考慮しない。また、酸素原子の同位体である質量数17の酸素原子および質量数18の酸素原子を含む酸素分子についても、自然界における存在比率が極微量であるため考慮しない。
【0185】
【数2】

【0186】
H2は、標準試料から脱離した水素分子を密度で換算した値である。SH2は、標準試料をTDS分析したときのイオン強度の積分値である。ここで、標準試料の基準値を、NH2/SH2とする。SO2は、絶縁膜をTDS分析したときのイオン強度の積分値である。αは、TDS分析におけるイオン強度に影響する係数である。数式3の詳細に関しては、特開平6−275697公報を参照する。なお、上記絶縁膜の酸素の放出量は、電子科学株式会社製の昇温脱離分析装置EMD−WA1000S/Wを用い、標準試料として1×1016atoms/cmの水素原子を含むシリコンウェハを用いて測定する。
【0187】
また、TDS分析において、酸素の一部は酸素原子として検出される。酸素分子と酸素原子の比率は、酸素分子のイオン化率から算出することができる。なお、上述のαは酸素分子のイオン化率を含むため、酸素分子の放出量を評価することで、酸素原子の放出量についても見積もることができる。
【0188】
なお、NO2は酸素分子の放出量である。酸素原子に換算したときの放出量は、酸素分子の放出量の2倍となる。
【0189】
上記構成において、加熱処理により酸素を放出する膜は、酸素が過剰な酸化シリコン(SiO(X>2))であってもよい。酸素が過剰な酸化シリコン(SiO(X>2))とは、シリコン原子数の2倍より多い酸素原子を単位体積当たりに含むものである。単位体積当たりのシリコン原子数および酸素原子数は、ラザフォード後方散乱法により測定した値である。
【0190】
下地絶縁膜1102から酸化物半導体膜1106に酸素が供給されることで、酸化物半導体膜1106と下地絶縁膜1102との界面準位を低減できる。この結果、トランジスタの動作などに起因して、酸化物半導体膜1106と下地絶縁膜1102との界面にキャリアが捕獲されることを抑制することができ、電気的特性の劣化の少ないトランジスタを得ることができる。
【0191】
保護絶縁膜1104は、250℃以上450℃以下、好ましくは150℃以上800℃以下の温度範囲において、例えば1時間の加熱処理を行っても酸素を透過しない性質を有すると好ましい。
【0192】
以上のような性質により、保護絶縁膜1104を下地絶縁膜1102の周辺に設ける構造をとることで、下地絶縁膜1102から加熱処理によって放出された酸素が、トランジスタの外方へ拡散していくことを抑制できる。そのため、下地絶縁膜1102に酸素が保持されるため、トランジスタの電気的特性および信頼性を高めることができる。
【0193】
ただし、保護絶縁膜1104を設けない構造を除外するものではない。
【0194】
保護絶縁膜1104は、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化セシウム、酸化タンタルおよび酸化マグネシウムの一種以上を選択して、単層または積層で用いればよい。
【0195】
また、基板1100として、可とう性基板を用いてもよい。その場合は、可とう性基板上に直接的にトランジスタを作製する。なお、可とう性基板上にトランジスタを設ける方法としては、非可とう性の基板上にトランジスタを作製した後、トランジスタを剥離し、可とう性基板である基板1100に転置する方法もある。その場合には、非可とう性基板とトランジスタとの間に剥離層を設けるとよい。
【0196】
ゲート電極1110は、Al、Ti、Cr、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Mo、Ag、TaおよびW、それらの窒化物、酸化物ならびに合金から一種以上選択し、単層でまたは積層で用いればよい。なお、酸化物半導体膜1106の材料で示した酸化物膜を用いても構わない。
【0197】
ゲート絶縁膜1108は、下地絶縁膜1102と同様の方法および同様の材料によって形成すればよい。
【0198】
一対の電極1114は、ゲート電極1110と同様の方法および同様の材料によって形成すればよい。
【0199】
層間絶縁膜1116は、下地絶縁膜1102と同様の方法および同様の材料によって形成すればよい。
【0200】
配線1118は、ゲート電極1110と同様の方法および同様の材料によって形成すればよい。
【0201】
図10(B)に示すトランジスタの作製方法の一例を以下に示す。
【0202】
ここで、全ての膜において、トランジスタの特性に悪影響を与える水素または水などの不純物が含まれないよう成膜すると好ましい。例えば、基板1100などの表面に付着している不純物も膜に取り込まれてしまう。そのため、各層の成膜前に減圧雰囲気または酸化性雰囲気にて加熱処理を行い、基板1100などの表面に付着している不純物を除去しておくことが好ましい。また、成膜室に起因する不純物も問題となるため、あらかじめ除去しておくと好ましい。具体的には、成膜室をベーキングすることで成膜室内部から脱ガスを促し、排気しておくことが好ましい。また、各層の成膜前には、5分程度のダミー成膜をダミー基板100枚程度に対し行っておくと好ましい。なお、ダミー成膜を1枚行うごとに成膜室の排気を行うとより好ましい。ここで、ダミー成膜とは、ダミー基板に対してスパッタリングなどによる成膜を行うことで、ダミー基板及び成膜室内壁に膜を堆積させ、成膜室内の不純物及び成膜室内壁の吸着物を膜中に閉じこめることをいう。ダミー基板は、放出ガスの少ない材料が好ましく、例えば基板1100と同様の材料を用いてもよい。ダミー成膜を行うことで、後に成膜される膜中の不純物濃度を低減することができる。
【0203】
また成膜に用いるガスの純度も膜中の不純物濃度に影響するため、なるべく純度の高いガスを用いることが好ましい。スパッタリング法を用いる場合、例えば、純度が9Nであるアルゴンガス(露点−121℃、水0.1ppb、水素0.5ppb)および純度が8Nの酸素(露点−112℃、水1ppb、水素1ppb)のガスを用いればよい。
【0204】
まず、基板1100上にスパッタリング法、蒸着法、PCVD法、PLD法、ALD法またはMBE法などを用いて下地絶縁膜1152を成膜する(図13(A)参照。)。
【0205】
次に、フォトリソグラフィ工程などによって下地絶縁膜1152を加工し、下地絶縁膜1102を形成する(図13(B)参照。)。
【0206】
次に、スパッタリング法、蒸着法、PCVD(プラズマCVD)法、PLD(パルスレーザ堆積)法、ALD(原子層堆積)法またはMBE(分子線エピタキシー)法などを用いて保護絶縁膜1154を成膜する(図13(C)参照。)。
【0207】
次に、化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)処理によって、下地絶縁膜1102と表面の揃った保護絶縁膜1104を形成する(図13(D)参照。)。なお、下地絶縁膜1102と保護絶縁膜1104とは、概略表面の高さが一致していればよい。
【0208】
次に、酸化物半導体膜を形成し、フォトリソグラフィ工程などによって加工して酸化物半導体膜1156を形成する(図13(E)参照。)。このとき行われる加熱処理によって、下地絶縁膜1102から酸化物半導体膜へ酸素が供給される。
【0209】
まず、平坦性を有する基板1100に酸化物半導体膜をスパッタリング法、蒸着法、PCVD法、PLD法、ALD法またはMBE法などによって成膜する。酸化物半導体膜1156は、好ましくはスパッタリング法により、基板加熱温度を100℃以上600℃以下、好ましくは150℃以上550℃以下、さらに好ましくは200℃以上500℃以下とし、酸素ガス雰囲気で成膜する。酸化物半導体膜1156の厚さは、1nm以上40nm以下、好ましくは3nm以上20nm以下とする。成膜時の基板加熱温度が高いほど、得られる酸化物半導体膜1156の不純物濃度は低くなる。また、酸化物半導体膜1156中の原子配列が整い、高密度化され、多結晶酸化物半導体膜またはCAAC−OS膜が形成されやすくなる。さらに、酸素ガス雰囲気で成膜することでも、希ガスなどの余分な原子が含まれないため、多結晶酸化物半導体膜またはCAAC−OS膜が形成されやすくなる。ただし、酸素ガスと希ガスの混合雰囲気としてもよく、その場合は酸素ガスの割合は30体積%以上、好ましくは50体積%以上、さらに好ましくは80体積%以上とする。なお、酸化物半導体膜1156は薄いほど、トランジスタの短チャネル効果が低減される。ただし、薄くしすぎると界面散乱の影響が強くなり、電界効果移動度の低下が起こることがある。
【0210】
酸化物半導体膜1156としてIn−Ga−Zn−O系材料をスパッタリング法で成膜する場合、好ましくは、原子数比がIn:Ga:Zn=1:1:1、4:2:3、3:1:2、1:1:2、2:1:3、または3:1:4で示されるIn−Ga−Zn−Oターゲットを用いる。前述の原子数比を有するIn−Ga−Zn−Oターゲットを用いて酸化物半導体膜1156を成膜することで、多結晶酸化物半導体膜またはCAAC−OS膜が形成されやすくなる。
【0211】
また、酸化物半導体膜1156としてIn−Sn−Zn−O系材料をスパッタリング法で成膜する場合、好ましくは、原子数比がIn:Sn:Zn=1:1:1、2:1:3、1:2:2、または20:45:35で示されるIn−Sn−Zn−Oターゲットを用いる。前述の原子数比を有するIn−Sn−Zn−Oターゲットを用いて酸化物半導体膜1156を成膜することで、多結晶酸化物半導体膜またはCAAC−OS膜が形成されやすくなる。
【0212】
次に、基板1100に加熱処理を行う。加熱処理は、減圧雰囲気、不活性雰囲気または酸化性雰囲気で行う。加熱処理により、酸化物半導体膜1156中の不純物濃度を低減することができる。
【0213】
加熱処理は、減圧雰囲気または不活性雰囲気で加熱処理を行った後、温度を保持しつつ酸化性雰囲気に切り替えてさらに加熱処理を行うと好ましい。これは、減圧雰囲気または不活性雰囲気にて加熱処理を行うと、酸化物半導体膜1156中の不純物濃度を低減することができるが、同時に酸素欠損も生じてしまうためであり、このとき生じた酸素欠損を、酸化性雰囲気での熱処理により低減することができる。
【0214】
酸化物半導体膜1156は、成膜時の基板加熱に加え、加熱処理を行うことで、膜中の不純物準位を極めて小さくすることが可能となる。その結果、トランジスタの電界効果移動度を後述する理想的な電界効果移動度近くまで高めることが可能となる。
【0215】
加熱処理は、例えば200℃以上基板の歪み点未満で行えばよい。好ましくは、250℃以上450℃以下とする。雰囲気は限定されないが、酸化性雰囲気、不活性雰囲気または減圧雰囲気(10Pa以下)で行う。処理時間は3分〜24時間とする。処理時間を長くするほど非晶質領域に対して結晶領域の割合の多い酸化物半導体膜を形成することができるが、24時間を超える加熱処理は生産性の低下を招くため好ましくない。
【0216】
酸化性雰囲気とは酸化性ガスを含む雰囲気である。酸化性ガスとは、酸素、オゾンまたは亜酸化窒素などであって、水、水素などが含まれないことが好ましい。例えば、加熱処理装置に導入する酸素、オゾン、亜酸化窒素の純度を、8N(99.999999%)以上、好ましくは9N(99.9999999%)以上とする。酸化性雰囲気は、酸化性ガスを不活性ガスと混合して用いてもよい。その場合、酸化性ガスが少なくとも10ppm以上含まれるものとする。
【0217】
ここで、不活性雰囲気とは、窒素、希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン)などの不活性ガスを主成分とする雰囲気である。具体的には、酸化性ガスなどの反応性ガスが10ppm未満とする。
【0218】
加熱処理はRTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。RTAを用いることで、短時間に限り、基板の歪み点以上の温度で加熱処理を行うことができる。そのため、非晶質領域に対して結晶領域の割合の多い酸化物半導体膜を形成するための時間を短縮することができる。
【0219】
なお、非晶質であるIn−Sn−Zn−O系酸化物を活性層に用いたトランジスタの電気的特性が報告されており、電界効果移動度30cm/Vsが得られている(Eri Fukumoto, Toshiaki Arai, Narihiro Morosawa, Kazuhiko Tokunaga, Yasuhiro Terai, Takashige Fujimori and Tatsuya Sasaoka、 「High Mobility Oxide Semiconductor TFT for Circuit Integration of AM−OLED」、 IDW’10 p631−p634)。
【0220】
次に、絶縁膜1158、導電膜1160をこの順番で成膜する(図13(F)参照。)。成膜方法は、いずれもスパッタリング法、蒸着法、PCVD法、PLD法、ALD法またはMBE法などを用いればよい。
【0221】
次に、フォトリソグラフィ工程などによって導電膜1160を加工し、ゲート電極1110を形成する(図14(A)参照。)。
【0222】
次に、ゲート電極1110をマスクに用い、絶縁膜1158を介して酸化物半導体膜1156の抵抗値を低減する機能を有する不純物1120を添加し、高抵抗領域1106aおよび低抵抗領域1106bを有する酸化物半導体膜1106を形成する(図14(B)参照。)。なお、不純物1120は、リン、窒素またはボロンなどを用いればよい。不純物1120の添加後に活性化のための250℃以上650℃以下の温度で加熱処理を行ってもよい。なお、不純物1120は、イオン注入法を用いて添加すると、イオンドーピング法を用いて不純物1120を添加した場合と比べ、酸化物半導体膜1106中への水素の添加が少なくなるため好ましい。ただし、イオンドーピング法を除外するものではない。
【0223】
なお、絶縁膜1158を介して不純物1120を添加することにより、酸化物半導体膜1106に不純物1120の添加する際に生じるダメージを低減することができる。
【0224】
次に、絶縁膜1162をスパッタリング法、蒸着法、PCVD法、PLD法、ALD法またはMBE法などを用いて成膜する(図14(C)参照。)。
【0225】
次に、絶縁膜1162をエッチングすることにより側壁絶縁膜1112を形成する。該エッチングは、異方性の高いエッチングであり、側壁絶縁膜1112は、絶縁膜に異方性の高いエッチング工程を行うことで自己整合的に形成することができる。ここで、異方性の高いエッチングとしては、ドライエッチングが好ましく、例えば、エッチングガスとして、トリフルオロメタン(CHF)、オクタフルオロシクロブタン(C)、テトラフルオロメタン(CF)などのフッ素を含むガスを用いることができ、ヘリウム(He)やアルゴン(Ar)などの希ガスまたは水素(H)を添加しても良い。さらに、ドライエッチングとして、基板に高周波電圧を印加する、反応性イオンエッチング法(RIE法)を用いるのが好ましい。
【0226】
側壁絶縁膜1112を形成するとともに、絶縁膜1158を加工し、ゲート絶縁膜1108を形成することができる(図14(D)参照。)
【0227】
次に、導電膜をスパッタリング法、蒸着法、PCVD法、PLD法、ALD法またはMBE法などを用いて成膜し、フォトリソグラフィ工程などによって該導電膜を加工し、一対の電極1114を形成する(図15(A)参照。)。
【0228】
次に、層間絶縁膜1116をスパッタリング法、蒸着法、PCVD法、PLD法、ALD法またはMBE法などを用いて成膜し、一対の電極1114を露出する開口部を設ける。次に、導電膜をスパッタリング法、蒸着法、PCVD法、PLD法、ALD法またはMBE法などを用いて成膜し、フォトリソグラフィ工程などによって、該導電膜を加工して、一対の電極1114のそれぞれと接する配線1118を形成する(図15(B)参照。)。なお、層間絶縁膜1116として、少なくとも一部に20nm以上、好ましくは50nm以上、さらに好ましくは100nm以上の厚さを有する酸化アルミニウム膜を用いると好ましい。酸化アルミニウム膜を用いることによって、トランジスタの外部から水素または水などのトランジスタの電気的特性に悪影響を及ぼす不純物の侵入を抑制できる。また、下地絶縁膜1102から放出された酸素がトランジスタから外方拡散することを抑制できる。これらの効果は、酸化アルミニウム膜の膜質にもよるが、ある程度の厚さが必要とされる。ただし、あまりに酸化アルミニウム膜を厚くしすぎると生産性が低下してしまうため、適切な厚さを選択するとよい。
【0229】
以上の工程によって、図10に示すトランジスタを作製することができる。
【0230】
図11は、酸化物半導体を用いたトランジスタの別の一例であるコプラナー型であるトップゲート・ボトムコンタクト構造のトランジスタの上面図および断面図である。図11(A)にトランジスタの上面図を、図11(A)の一点鎖線A−Bに対応する断面A−Bを図11(B)に示す。
【0231】
図11(B)に示すトランジスタは、基板1100と、基板1100上に設けられた下地絶縁膜1103と、下地絶縁膜1103の溝部に設けられた一対の電極1115と、下地絶縁膜1102および一対の電極1115上に設けられた高抵抗領域1106aおよび低抵抗領域1106bを有する酸化物半導体膜1106と、酸化物半導体膜1106上に設けられたゲート絶縁膜1109と、ゲート絶縁膜1109を介して高抵抗領域1106aと重畳して設けられたゲート電極1111と、を有する。該トランジスタは、該トランジスタを覆って設けられた層間絶縁膜1117と、層間絶縁膜1117、ゲート絶縁膜1109および酸化物半導体膜1106に設けられた開口部を介して一対の電極1115と接続する配線1119と、を有しても構わない。
【0232】
なお、下地絶縁膜1103、ゲート絶縁膜1109、ゲート電極1111、一対の電極1115、層間絶縁膜1117および配線1119は、それぞれ下地絶縁膜1102、ゲート絶縁膜1108、ゲート電極1110、一対の電極1114、層間絶縁膜1116および配線1118と同様の材料および同様の方法で形成すればよい。
【0233】
図11(B)に示すトランジスタは、一対の電極1115が酸化物半導体膜1106の下部で接している点で図10(B)に示すトランジスタと異なる。このような構造とすることで、一対の電極1115を形成する際に、同時に酸化物半導体膜1106の一部がプラズマや薬液などに曝されることがないため、酸化物半導体膜1106を薄く形成する場合(例えば、5nm以下の厚さで形成する場合)などに好ましい構造である。
【0234】
図11(B)に示すトランジスタの作製方法の一例を以下に示す。
【0235】
まず、基板1100に下地絶縁膜1153を成膜する(図16(A)参照。)。
【0236】
次に、下地絶縁膜1153を加工して下地絶縁膜1103を形成する(図16(B)参照。)。
【0237】
次に、導電膜1165を成膜する(図16(C)参照。)。
【0238】
次に、CMP処理を行い、下地絶縁膜1103と表面の揃った一対の電極1115を形成する(図16(D)参照。)。
【0239】
次に、酸化物半導体膜1156を形成する(図16(E)参照。)。
【0240】
次に、ゲート絶縁膜1109、導電膜1161をこの順番で成膜する(図16(F)参照。)。
【0241】
次に、導電膜1161を加工してゲート電極1111を形成する(図17(A)参照。)。
【0242】
次に、ゲート電極1111をマスクに用い、ゲート絶縁膜1109を介して酸化物半導体膜1156の抵抗値を低減する機能を有する不純物1120を添加し、高抵抗領域1106aおよび低抵抗領域1106bを有する酸化物半導体膜1106を形成する(図17(B)参照。)。
【0243】
次に、層間絶縁膜1117を成膜し、一対の電極1115を露出する開口部を設ける。次に、導電膜を成膜し、該導電膜を加工して、一対の電極1115のそれぞれと接する配線1119を形成する(図17(C)参照。)。
【0244】
以上の工程によって、図11に示すトランジスタを作製することができる。
【0245】
図12は、酸化物半導体を用いたトランジスタの別の一例を示す上面図および断面図である。図12(A)はトランジスタの上面図である。また、図12(B)は図12(A)の一点鎖線A−Bに対応する断面図である。
【0246】
図12(B)に示すトランジスタは、基板1600と、基板1600上に設けられた下地絶縁膜1602と、下地絶縁膜1602上に設けられた酸化物半導体膜1606と、酸化物半導体膜1606と接する一対の電極1614と、酸化物半導体膜1606および一対の電極1614上に設けられたゲート絶縁膜1608と、ゲート絶縁膜1608を介して酸化物半導体膜1606と重畳して設けられたゲート電極1610と、ゲート絶縁膜1608およびゲート電極1610を覆って設けられた層間絶縁膜1616と、層間絶縁膜1616に設けられた開口部を介して一対の電極1614と接続する配線1618と、層間絶縁膜1616および配線1618を覆って設けられた保護膜1620と、を有する。
【0247】
基板1600としてはガラス基板を、下地絶縁膜1602としては酸化シリコン膜を、酸化物半導体膜1606としてはIn−Sn−Zn系の酸化膜を、一対の電極1614としてはタングステン膜を、ゲート絶縁膜1608としては酸化シリコン膜を、ゲート電極1610としては窒化タンタル膜とタングステン膜との積層構造を、層間絶縁膜1616としては酸化窒化シリコン膜とポリイミド膜との積層構造を、配線1618としてはチタン膜、アルミニウム膜、チタン膜がこの順で形成された積層構造を、保護膜1620としてはポリイミド膜を、それぞれ用いることとする。
【0248】
なお、図12(A)に示す構造のトランジスタにおいて、ゲート電極1610と一対の電極1614との重畳する幅をLovと呼ぶ。同様に、酸化物半導体膜1606に対する一対の電極1614のはみ出しをdWと呼ぶ。
【0249】
図10乃至図12に示すトランジスタでは、上述の酸化物半導体膜を用いているため、電界効果移動度が高く、かつ信頼性の高いトランジスタを得ることができる。
【0250】
ここで、本発明の一態様に用いられる、酸化物半導体を用いたトランジスタの電界効果移動度を計算した結果について説明する。
【0251】
酸化物半導体に限らず、実際に測定される絶縁ゲート型トランジスタの電界効果移動度は、さまざまな理由によって本来の電界効果移動度よりも低くなる。電界効果移動度を低下させる要因としては半導体内部の欠陥や半導体と絶縁膜との界面の欠陥があるが、Levinsonモデルを用いると、半導体内部に欠陥がないと仮定した場合の電界効果移動度を理論的に導き出せる。
【0252】
半導体本来の電界効果移動度をμ、測定される電界効果移動度をμとし、半導体中に何らかのポテンシャル障壁(粒界等)が存在すると仮定すると、下記の数式(3)と表現できる。
【0253】
【数3】

【0254】
ここで、Eはポテンシャル障壁の高さであり、kがボルツマン定数、Tは絶対温度である。また、ポテンシャル障壁が欠陥に由来すると仮定すると、Levinsonモデルでは、下記の数式(4)と表される。
【0255】
【数4】

【0256】
ここで、eは電気素量、Nはチャネル内の単位面積当たりの平均欠陥密度、εは半導体の誘電率、nは単位面積当たりのチャネルに含まれるキャリア数、Coxは単位面積当たりの容量、Vはゲート電圧、tはチャネルの厚さである。なお、厚さ30nm以下の半導体層であれば、チャネルの厚さは半導体層の厚さと同一として差し支えない。
線形領域におけるドレイン電流Iは、下記の数式(5)で表される。
【0257】
【数5】

【0258】
ここで、Lはチャネル長、Wはチャネル幅であり、ここでは、L=W=10μmである。また、Vはドレイン電圧である。
上式の両辺をVgで割り、更に両辺の対数を取ると、下記の数式(6)となる。
【0259】
【数6】

【0260】
数式(6)の右辺はVの関数である。この式からわかるように、縦軸をln(Id/Vg)、横軸を1/Vgとする直線の傾きから欠陥密度Nが求められる。すなわち、トランジスタのI−V特性から、欠陥密度を評価できる。酸化物半導体としては、インジウム(In)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)の比率が、In:Sn:Zn=1:1:1のものでは欠陥密度Nは1×1012/cm程度である。
【0261】
このようにして求めた欠陥密度等をもとに数4および数5よりμ=120cm/Vsが導出される。欠陥のあるIn−Sn−Zn系酸化物で測定される電界効果移動度は30cm/Vs程度である。しかし、半導体内部および半導体と絶縁膜との界面の欠陥が無い酸化物半導体の電界効果移動度μは120cm/Vsとなると予想できる。
【0262】
ただし、半導体内部に欠陥がなくても、チャネルとゲート絶縁物との界面での散乱によってトランジスタの輸送特性は影響を受ける。すなわち、ゲート絶縁物界面からxだけ離れた場所における電界効果移動度μは、下記の数式(7)で表される。
【0263】
【数7】

【0264】
ここで、Dはゲート方向の電界、B、lは定数である。Bおよびlは、実際の測定結果より求めることができ、上記の測定結果からは、B=4.75×10cm/s、l=10nm(界面散乱が及ぶ深さ)である。Dが増加する(すなわち、ゲート電圧が高くなる)と数7の第2項が増加するため、電界効果移動度μは低下することがわかる。
【0265】
半導体内部の欠陥が無い理想的な酸化物半導体をチャネルに用いたトランジスタの電界効果移動度μを計算した結果を図22に示す。なお、計算にはシノプシス社製デバイスシミュレーションソフト、Sentaurus Deviceを使用し、酸化物半導体のバンドギャップ、電子親和力、比誘電率、厚さをそれぞれ、2.8電子ボルト、4.7電子ボルト、15、15nmとした。さらに、ゲート、ソース、ドレインの仕事関数をそれぞれ、5.5電子ボルト、4.6電子ボルト、4.6電子ボルトとした。また、ゲート絶縁物の厚さは100nm、比誘電率は4.1とした。チャネル長およびチャネル幅はともに10μm、ドレイン電圧Vは0.1Vである。
【0266】
図22で示されるように、ゲート電圧1V強で電界効果移動度100cm/Vs以上のピークをつけるが、ゲート電圧がさらに高くなると、界面散乱が大きくなり、電界効果移動度が低下する。なお、界面散乱を低減するためには、半導体層表面を原子レベルで平坦にすること(Atomic Layer Flatness)が望ましい。
【0267】
このような電界効果移動度を有する酸化物半導体を用いて微細なトランジスタを作製した場合の特性を計算した結果を図23乃至図25に示す。なお、計算に用いたトランジスタの断面構造を図26に示す。図26に示すトランジスタは酸化物半導体層にnの導電型を呈する半導体領域2103aおよび半導体領域2103cを有する。半導体領域2103aおよび半導体領域2103cの抵抗率は2×10−3Ωcmとする。
【0268】
図26(A)に示すトランジスタは、下地絶縁物2101と、下地絶縁物2101に埋め込まれるように形成された酸化アルミニウムよりなる埋め込み絶縁物2102の上に形成される。トランジスタは半導体領域2103a、半導体領域2103cと、それらに挟まれ、チャネル形成領域となる真性の半導体領域2103bと、ゲート2105を有する。ゲート2105の幅を33nmとする。
【0269】
ゲート2105と半導体領域2103bの間には、ゲート絶縁物2104を有し、また、ゲート2105の両側面には側壁絶縁物2106aおよび側壁絶縁物2106b、ゲート2105の上部には、ゲート2105と他の配線との短絡を防止するための絶縁物2107を有する。側壁絶縁物の幅は5nmとする。また、半導体領域2103aおよび半導体領域2103cに接して、ソース2108aおよびドレイン2108bを有する。なお、このトランジスタにおけるチャネル幅を40nmとする。
【0270】
図26(B)に示すトランジスタは、下地絶縁物2101と、酸化アルミニウムよりなる埋め込み絶縁物2102の上に形成され、半導体領域2103a、半導体領域2103cと、それらに挟まれた真性の半導体領域2103bと、幅33nmのゲート2105とゲート絶縁物2104と側壁絶縁物2106aおよび側壁絶縁物2106bと絶縁物2107とソース2108aおよびドレイン2108bを有する点で図26(A)に示すトランジスタと同じである。
【0271】
図26(A)に示すトランジスタと図26(B)に示すトランジスタの相違点は、側壁絶縁物2106aおよび側壁絶縁物2106bの下の半導体領域の導電型である。図26(A)に示すトランジスタでは、側壁絶縁物2106aおよび側壁絶縁物2106bの下の半導体領域はnの導電型を呈する半導体領域2103aおよび半導体領域2103cであるが、図26(B)に示すトランジスタでは、真性の半導体領域2103bである。すなわち、半導体領域2103aとゲート2105が幅Loffだけ重ならない領域ができている。この領域をオフセット領域といい、その幅Loffをオフセット長という。図から明らかなように、オフセット長は、側壁絶縁物2106a(側壁絶縁物2106b)の幅と同じである。
【0272】
その他の計算に使用するパラメータは上述の通りである。計算にはシノプシス社製デバイスシミュレーションソフト、Sentaurus Deviceを使用した。図23は、図26(A)に示される構造のトランジスタのドレイン電流(Id、実線)および電界効果移動度(μ、点線)のゲート電圧(Vg、ゲートとソースの電位差)依存性を示す。ドレイン電流Idは、ドレイン電圧(ドレインとソースの電位差)を+1Vとし、電界効果移動度μはドレイン電圧を+0.1Vとして計算したものである。
【0273】
図23(A)はゲート絶縁膜の厚さを15nmとしたものであり、図23(B)は10nmとしたものであり、図23(C)は5nmとしたものである。ゲート絶縁膜が薄くなるほど、特にオフ状態でのドレイン電流Id(オフ電流)が顕著に低下する。一方、電界効果移動度μのピーク値やオン状態でのドレイン電流Id(オン電流)には目立った変化が無い。ゲート電圧1V前後で、ドレイン電流はメモリ素子等で必要とされる10μAを超えることが示された。
【0274】
図24は、図26(B)に示される構造のトランジスタで、オフセット長Loffを5nmとしたもののドレイン電流Id(実線)および電界効果移動度μ(点線)のゲート電圧Vg依存性を示す。ドレイン電流Idは、ドレイン電圧を+1Vとし、電界効果移動度μはドレイン電圧を+0.1Vとして計算したものである。図24(A)はゲート絶縁膜の厚さを15nmとしたものであり、図24(B)は10nmとしたものであり、図24(C)は5nmとしたものである。
【0275】
また、図25は、図26(B)に示される構造のトランジスタで、オフセット長Loffを15nmとしたもののドレイン電流Id(実線)および電界効果移動度μ(点線)のゲート電圧依存性を示す。ドレイン電流Idは、ドレイン電圧を+1Vとし、電界効果移動度μはドレイン電圧を+0.1Vとして計算したものである。図25(A)はゲート絶縁膜の厚さを15nmとしたものであり、図25(B)は10nmとしたものであり、図25(C)は5nmとしたものである。
【0276】
いずれもゲート絶縁膜が薄くなるほど、オフ電流が顕著に低下する一方、電界効果移動度μのピーク値やオン電流には目立った変化が無い。
【0277】
なお、電界効果移動度μのピークは、図23では80cm/Vs程度であるが、図24では60cm/Vs程度、図25では40cm/Vsと、オフセット長Loffが増加するほど低下する。また、オフ電流も同様な傾向がある。一方、オン電流にはオフセット長Loffの増加にともなって減少するが、オフ電流の低下に比べるとはるかに緩やかである。また、いずれもゲート電圧1V前後で、ドレイン電流はメモリ素子等で必要とされる10μAを超えることが示された。
【0278】
次に、本発明の一態様に用いられる、酸化物半導体を用いたトランジスタの電界効果移動度を測定した結果について説明する。
【0279】
In、SnおよびZnを含む酸化物半導体をチャネル形成領域とするトランジスタは、該酸化物半導体を形成する際に基板を加熱して成膜すること、または酸化物半導体膜を形成した後に熱処理を行うことで良好な特性を得ることができる。
【0280】
In、SnおよびZnを含む酸化物半導体膜の成膜後に基板を意図的に加熱することで、トランジスタの電界効果移動度を向上させることが可能となる。
【0281】
例えば、図27(A)および図27(B)は、図12のトランジスタにおいて、酸化物半導体膜がIn、SnおよびZnを含み、トランジスタのチャネル長Lが3μm、チャネル幅Wが10μmであり、ゲート絶縁膜の厚さ100nmの用いた場合の特性を示すグラフである。なお、Vは10Vとした。
【0282】
図27(A)は基板を200℃に加熱してIn、SnおよびZnを含む酸化物半導体膜を形成したときのトランジスタ特性を示すが、電界効果移動度は32.2cm/Vsが得られている。
【0283】
電界効果移動度は、In、SnおよびZnを含む酸化物半導体膜を形成した後に熱処理をすることによって、さらに高めることができる。図27(B)は、In、SnおよびZnを含む酸化物半導体膜を200℃でスパッタリング成膜した後、650℃で熱処理をしたときのトランジスタ特性を示す。このとき電界効果移動度は34.5cm/Vsが得られている。
【0284】
基板を意図的に加熱することでスパッタリング成膜中の水分が酸化物半導体膜中に取り込まれるのを低減する効果が期待できる。また、成膜後に熱処理をすることによっても、酸化物半導体膜から水素や水酸基若しくは水分を放出させ除去することができ、上記のように電界効果移動度を向上させることができる。このような電界効果移動度の向上は、脱水化・脱水素化による不純物の除去のみならず、高密度化により原子間距離が短くなるためとも推定される。また、酸化物半導体から不純物を除去して高純度化することで結晶化を図ることができる。このように高純度化された非単結晶酸化物半導体は、理想的には100cm/Vsecを超える電界効果移動度を実現することも可能になると推定される。
【0285】
In、SnおよびZnを含む酸化物半導体に酸素イオンを注入し、熱処理により該酸化物半導体に含まれる水素や水酸基若しくは水分を放出させ、その熱処理と同時に又はその後の熱処理により酸化物半導体を結晶化させても良い。このような結晶化若しくは再結晶化の処理により結晶性の良い非単結晶酸化物半導体を得ることができる。
【0286】
熱処理は酸素雰囲気中で行うことができるが、まず窒素若しくは不活性ガス、または減圧下で熱処理を行ってから酸素を含む雰囲気中で熱処理を行っても良い。最初に脱水化・脱水素化を行ってから酸素を酸化物半導体に加えることで、熱処理の効果をより高めることができる。また、後から酸素を加えるには、酸素イオンを電界で加速して酸化物半導体膜に注入する方法を適用しても良い。
【0287】
酸化物半導体中及び積層される膜との界面には、酸素欠損による欠陥が生成されやすいが、かかる熱処理により酸化物半導体中に酸素を過剰に含ませることにより、定常的に生成される酸素欠損を過剰な酸素によって補償することが可能となる。過剰酸素は主に格子間に存在する酸素であり、その酸素濃度は1×1016atoms/cm以上2×1020atoms/cm以下とすれば、結晶に歪み等を与えることなく酸化物半導体中に含ませることができる。
【0288】
また、熱処理によって酸化物半導体に結晶が少なくとも一部に含まれるようにすることで、より安定な酸化物半導体膜を得ることができる。例えば、組成比In:Sn:Zn=1:1:1のターゲットを用いて、基板を意図的に加熱せずにスパッタリング成膜した酸化物半導体膜は、X線回折(XRD:X−Ray Diffraction)でハローパタンが観測される。この成膜された酸化物半導体膜を熱処理することによって結晶化させることができる。熱処理温度は任意であるが、例えば650℃の熱処理を行うことで、X線回折により明確な回折ピークを観測することができる。
【0289】
実際に、In−Sn−Zn系の酸化膜のXRD分析を行った。XRD分析には、Bruker AXS社製X線回折装置D8 ADVANCEを用い、Out−of−Plane法で測定した。
【0290】
XRD分析を行った試料として、試料Aおよび試料Bを用意した。以下に試料Aおよび試料Bの作製方法を説明する。
【0291】
脱水素化処理済みの石英基板上にIn−Sn−Zn系の酸化膜を100nmの厚さで成膜した。
【0292】
In−Sn−Zn系の酸化膜は、スパッタリング装置を用い、酸素雰囲気で電力を100W(DC)として成膜した。ターゲットは、In:Sn:Zn=1:1:1[原子数比]のIn−Sn−Zn−Oターゲットを用いた。なお、成膜時の基板加熱温度は200℃とした。このようにして作製した試料を試料Aとした。
【0293】
次に、試料Aと同様の方法で作製した試料に対し加熱処理を650℃の温度で行った。加熱処理は、はじめに窒素雰囲気で1時間の加熱処理を行い、温度を下げずに酸素雰囲気でさらに1時間の加熱処理を行った。このようにして作製した試料を試料Bとした。
【0294】
図28に試料Aおよび試料BのXRDスペクトルを示す。試料Aでは、結晶由来のピークが観測されなかったが、試料Bでは、2θが35deg近傍および37deg〜38degに結晶由来のピークが観測された。
【0295】
このように、In、SnおよびZnを含む酸化物半導体は成膜時に意図的に加熱すること及び/又は成膜後に熱処理することによりトランジスタの特性を向上させることができる。
【0296】
この基板加熱や熱処理は、酸化物半導体にとって悪性の不純物である水素や水酸基を膜中に含ませないようにすること、または膜中から除去する作用がある。すなわち、酸化物半導体中でドナー不純物となる水素を除去することで高純度化を図ることができ、さらに酸素を供給することによりオフ電流を1aA/μm以下にすることができる。ここで、上記オフ電流値の単位は、チャネル幅1μmあたりの電流値を示す。
【0297】
具体的には、図29に示すように、基板温度が125℃の場合には0.1aA/μm(1×10−19A/μm)以下、85℃の場合には10zA/μm(1×10−20A/μm)以下であった。電流値の対数が温度の逆数に比例することから、室温(27℃)の場合には0.1zA/μm(1×10−22A/μm)以下であると予想される。従って、オフ電流を125℃において1aA/μm(1×10−18A/μm)以下に、85℃において100zA/μm(1×10−19A/μm)以下に、室温において1zA/μm(1×10−21A/μm)以下にすることができる。
【0298】
もっとも、酸化物半導体膜の成膜時に水素や水分が膜中に混入しないように、成膜室外部からのリークや成膜室内の内壁からの脱ガスを十分抑え、スパッタガスの高純度化を図ることが好ましい。例えば、スパッタガスは水分が膜中に含まれないように露点−70℃以下であるガスを用いることが好ましい。また、ターゲットそのものに水素や水分などの不純物が含まれていていないように、高純度化されたターゲットを用いることが好ましい。In、SnおよびZnを含む酸化物半導体は熱処理によって膜中の水分を除去することができるが、In、GaおよびZnを含む酸化物半導体と比べて水分の放出温度が高いため、好ましくは最初から水分の含まれない膜を形成しておくことが好ましい。
【0299】
上記のようなIn、SnおよびZnを含む酸化物半導体をチャネル形成領域とするトランジスタによれば、オフ電流を1aA/μm以下に保ちつつ、電界効果移動度を30cm/Vsec以上、好ましくは40cm/Vsec以上、より好ましくは60cm/Vsec以上とし、LSIで要求されるオン電流の値を満たすことができる。例えば、L/W=33nm/40nmのFETで、ゲート電圧2.7V、ドレイン電圧1.0Vのとき12μA以上のオン電流を流すことができる。またトランジスタの動作に求められる温度範囲においても、十分な電気的特性を確保することができる。このような特性であれば、Si半導体で作られる集積回路の中に酸化物半導体で形成されるトランジスタを混載しても、動作速度を犠牲にすることなく新たな機能を有する集積回路を実現することができる。
【0300】
本実施の形態は他の実施の形態と適宜組み合わせて用いることができる。
【0301】
(実施の形態3)
本実施の形態では、図30を用いて、本発明の一態様である加算器を用いたCPU(中央演算処理装置)について説明する。
【0302】
図30に、本実施の形態のCPUの構成を示す。図30に示すCPUは、基板3410上に、演算回路(ALU:Arithmetic logic unit)3411、演算回路コントローラ(ALU Controller)3412、命令デコーダー(Instruction Decoder)3413、割り込みコントローラ(Interrupt Controller)3414、タイミングコントローラ(Timing Controller)3415、レジスタ(Register)3416、レジスタコントローラ(Register Controller)3417、バスインターフェース(Bus I/F)3418、書き換え可能なROM3419、ROMインターフェース(ROM I/F)3420を主に有している。ROM3419及びROMインターフェース3420は、別チップに設けても良い。勿論、図30に示すCPUは、その構成を簡略化して示した一例にすぎず、実際のCPUはその用途によって多種多様な構成を有している。
【0303】
バスインターフェース3418を介してCPUに入力された命令は、命令デコーダー3413に入力され、デコードされた後、演算回路コントローラ3412、割り込みコントローラ3414、レジスタコントローラ3417、タイミングコントローラ3415に入力される。
【0304】
演算回路コントローラ3412、割り込みコントローラ3414、レジスタコントローラ3417、タイミングコントローラ3415は、デコードされた命令に基づき、各種制御を行なう。具体的に演算回路コントローラ3412は、演算回路3411の動作を制御するための信号を生成する。また、割り込みコントローラ3414は、CPUのプログラム実行中に、外部の入出力装置や、周辺回路からの割り込み要求を、その優先度やマスク状態から判断し、処理する。レジスタコントローラ3417は、レジスタ3416のアドレスを生成し、CPUの状態に応じてレジスタ3416の読み出しや書き込みを行なう。
【0305】
またタイミングコントローラ3415は、演算回路3411、演算回路コントローラ3412、命令デコーダー3413、割り込みコントローラ3414、レジスタコントローラ3417の動作のタイミングを制御する信号を生成する。例えばタイミングコントローラ3415は、基準クロック信号CLK1を元に、内部クロック信号CLK2を生成する内部クロック生成部を備えており、クロック信号CLK2を上記各種回路に供給する。
【0306】
本実施の形態のCPUでは、演算回路3411に、上記実施の形態で示した構成を有する加算器を設けるとよい。演算回路3411に、上記実施の形態で示した加算器を設けることで、一時的にCPUの動作を停止し、電源電圧の供給を停止した場合においてもデータを保持することが可能であり、消費電力の低減を行うことができる。具体的には、例えば、パーソナルコンピュータのユーザーが、キーボードなどの入力装置への情報の入力を停止している間でも、CPUを停止することができ、それにより消費電力を低減することができる。
【0307】
本実施の形態では、CPUを例に挙げて説明したが、本発明の加算器はCPUに限定されず、DSP、カスタムLSI、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のLSIにも応用可能である。また、本発明の一態様である信号処理回路を用いることで、信頼性が高い電子機器、消費電力の低い電子機器を提供することが可能である。
【0308】
特に電力の供給を常時受けることが困難な携帯用の電子機器の場合、本発明の一態様に係る消費電力の低い信号処理回路をその構成要素に追加することにより、連続使用時間を長くできるといったメリットが得られる。
【0309】
本発明の一態様である信号処理回路は、表示装置、パーソナルコンピュータ、記録媒体を備えた画像再生装置(代表的にはDVD:Digital Versatile Disc等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうるディスプレイを有する装置)に用いることができる。その他に、本発明の一態様に係る信号処理回路を用いることができる電子機器として、携帯電話、携帯型を含むゲーム機、携帯情報端末、電子書籍、ビデオカメラやデジタルスチルカメラ等のカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、デジタルオーディオプレイヤー等)、複写機、ファクシミリ、プリンター、プリンター複合機、現金自動預け入れ払い機(ATM)、自動販売機などが挙げられる。
【符号の説明】
【0310】
10 SumまたはCarry回路
11 配線
12 配線
13 演算部
14 トランジスタ
15 トランジスタ
17 配線
18 接続制御部
19a 配線
19b 配線
20 SumまたはCarry回路
21 電位供給制御部
22 電位供給制御部
30 全加算器
31 演算部
32 演算部
35 全加算器
36 演算部
37 演算部
41 接続制御部
43 トランジスタ
44 トランジスタ
45 接続制御部
47 トランジスタ
48 トランジスタ
51 接続制御部
52 接続制御部
53 接続制御部
54 接続制御部
61 トランジスタ
62 トランジスタ
63 トランジスタ
64 トランジスタ
65 トランジスタ
66 トランジスタ
67 トランジスタ
68 トランジスタ
100 全加算器
101 Sum回路
102 Carry回路
103 演算部
104 電位供給制御部
105 電位供給制御部
106 演算部
107 電位供給制御部
108 電位供給制御部
109a 接続制御部
109b 接続制御部
109c 接続制御部
110a 接続制御部
110b 接続制御部
110c 接続制御部
151 配線
152 配線
153 配線
154 配線
201 トランジスタ
202 トランジスタ
203 トランジスタ
204 トランジスタ
205 トランジスタ
206 トランジスタ
207 トランジスタ
208 トランジスタ
209 トランジスタ
210 トランジスタ
211 トランジスタ
212 トランジスタ
213 トランジスタ
214 トランジスタ
215 トランジスタ
216 トランジスタ
217 トランジスタ
218 トランジスタ
219 トランジスタ
220 トランジスタ
221 トランジスタ
222 トランジスタ
223 トランジスタ
224 トランジスタ
225 トランジスタ
226 トランジスタ
227 トランジスタ
228 トランジスタ
229 トランジスタ
303 配線
304 配線
1100 基板
1102 下地絶縁膜
1103 下地絶縁膜
1104 保護絶縁膜
1106 酸化物半導体膜
1106a 高抵抗領域
1106b 低抵抗領域
1108 ゲート絶縁膜
1109 ゲート絶縁膜
1110 ゲート電極
1111 ゲート電極
1112 側壁絶縁膜
1114 電極
1115 電極
1116 層間絶縁膜
1117 層間絶縁膜
1118 配線
1119 配線
1120 不純物
1152 下地絶縁膜
1153 下地絶縁膜
1154 保護絶縁膜
1156 酸化物半導体膜
1158 絶縁膜
1160 導電膜
1161 導電膜
1162 絶縁膜
1165 導電膜
1600 基板
1602 下地絶縁膜
1606 酸化物半導体膜
1608 ゲート絶縁膜
1610 ゲート電極
1614 電極
1616 層間絶縁膜
1618 配線
1620 保護膜
2101 下地絶縁物
2102 埋め込み絶縁物
2103a 半導体領域
2103b 半導体領域
2103c 半導体領域
2104 ゲート絶縁物
2105 ゲート
2106a 側壁絶縁物
2106b 側壁絶縁物
2107 絶縁物
2108a ソース
2108b ドレイン
3410 基板
3411 演算回路
3412 演算回路コントローラ
3413 命令デコーダー
3414 コントローラ
3415 タイミングコントローラ
3416 レジスタ
3417 レジスタコントローラ
3418 バスインターフェース
3419 ROM
3420 ROMインターフェース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の信号が入力される接続制御部と、
前記接続制御部を有し、第2の信号が入力され、前記第1の信号と前記第2の信号を演算処理し第3の信号を出力する演算部と、を有し、
前記接続制御部は、
第1のトランジスタと、
オフ電流の低いトランジスタであり、ソースまたはドレインの一方が前記第1のトランジスタのゲートに電気的に接続され、ソースまたはドレインの他方が前記第1の信号の入力端子に電気的に接続された第2のトランジスタと、を有し、
前記第1のトランジスタは、前記第3の信号として第1の電位または第2の電位のいずれを出力するかを制御し、
前記第2のトランジスタは、前記第1の信号を前記第1のトランジスタのゲートに保持する加算器。
【請求項2】
第1の信号が入力される接続制御部と、
前記接続制御部を有し、第2の信号が入力され、前記第1の信号と前記第2の信号を演算処理し第3の信号を出力する演算部と、
第1の電位供給制御部と、
第2の電位供給制御部と、を有し、
前記接続制御部は、
第1のトランジスタと、
オフ電流の低いトランジスタであり、ソースまたはドレインの一方が前記第1のトランジスタのゲートに電気的に接続され、ソースまたはドレインの他方が前記第1の信号の入力端子に電気的に接続された第2のトランジスタと、を有し、
前記第1のトランジスタは、前記第3の信号として第1の電位または第2の電位のいずれを出力するかを制御し、
前記第2のトランジスタは、前記第1の信号を前記第1のトランジスタのゲートに保持し、
前記第1の電位供給制御部は、
第1の期間において、前記第1の電位を前記演算部に供給し、
前記第2の電位供給制御部は、
前記第1の期間の後の第2の期間において、前記第2の電位を前記演算部に供給する加算器。
【請求項3】
前記第2のトランジスタは、酸化物半導体をチャネル形成領域に含む、請求項1または請求項2に記載の加算器。
【請求項4】
第1の信号が入力される第1の接続制御部と、
前記第1の接続制御部を有し、第2の信号および第3の信号が入力され、前記第1の信号、前記第2の信号および前記第3の信号を演算処理し第4の信号を出力する第1の演算部と、
前記第1の信号が入力される第2の接続制御部と、
前記第2の接続制御部を有し、前記第2の信号および前記第3の信号が入力され、前記第1の信号、前記第2の信号および前記第3の信号を演算処理し第5の信号を出力する第2の演算部と、
第1の電位供給制御部と、
第2の電位供給制御部と、を有し、
前記第1の接続制御部は、
第1のトランジスタと、
オフ電流の低いトランジスタであり、ソースまたはドレインの一方が前記第1のトランジスタのゲートに電気的に接続され、ソースまたはドレインの他方が前記第1の信号の入力端子に電気的に接続された第2のトランジスタと、を有し、
前記第1のトランジスタは、前記第4の信号として第1の電位または第2の電位のいずれを出力するかを制御し、
前記第2のトランジスタは、前記第1の信号を前記第1のトランジスタのゲートに保持し、
前記第2の接続制御部は、
第3のトランジスタと、
オフ電流の低いトランジスタであり、ソースまたはドレインの一方が前記第3のトランジスタのゲートに電気的に接続され、ソースまたはドレインの他方が前記第1の信号の入力端子に電気的に接続された第4のトランジスタと、を有し、
前記第3のトランジスタは、前記第5の信号として前記第1の電位または前記第2の電位のいずれを出力するかを制御し、
前記第4のトランジスタは、前記第1の信号を前記第1のトランジスタのゲートに保持し、
前記第1の電位供給制御部は、
第1の期間において、前記第1の電位を前記第1の演算部および前記第2の演算部に供給し、
前記第2の電位供給制御部は、
前記第1の期間の後の第2の期間において、前記第2の電位を前記第1の演算部および前記第2の演算部に供給する全加算器。
【請求項5】
前記第2のトランジスタおよび前記第4のトランジスタは、酸化物半導体をチャネル形成領域に含む、請求項4に記載の全加算器。
【請求項6】
第1の信号が入力される第1の接続制御部と、
第2の信号が入力される第2の接続制御部と、
第3の信号が入力される第3の接続制御部と、
前記第1の接続制御部、前記第2の接続制御部および前記第3の接続制御部を有し、前記第1の信号、前記第2の信号および前記第3の信号を演算処理し第4の信号を出力する第1の演算部と、
前記第1の信号が入力される第4の接続制御部と、
前記第2の信号が入力される第5の接続制御部と、
前記第3の信号が入力される第6の接続制御部と、
前記第4の接続制御部、前記第5の接続制御部および前記第6の接続制御部を有し、前記第1の信号、前記第2の信号および前記第3の信号を演算処理し第5の信号を出力する第2の演算部と、
第1の電位供給制御部と、
第2の電位供給制御部と、を有し、
前記第1の接続制御部は、
第1のトランジスタと、
オフ電流の低いトランジスタであり、ソースまたはドレインの一方が前記第1のトランジスタのゲートに電気的に接続され、ソースまたはドレインの他方が前記第1の信号の入力端子に電気的に接続された第2のトランジスタと、を有し、
前記第1のトランジスタは、前記第4の信号として第1の電位または第2の電位のいずれを出力するかを制御し、
前記第2のトランジスタは、前記第1の信号を前記第1のトランジスタのゲートに保持し、
前記第2の接続制御部は、
第3のトランジスタと、
オフ電流の低いトランジスタであり、ソースまたはドレインの一方が前記第3のトランジスタのゲートに電気的に接続され、ソースまたはドレインの他方が前記第2の信号の入力端子に電気的に接続された第4のトランジスタと、を有し、
前記第3のトランジスタは、前記第4の信号として第1の電位または第2の電位のいずれを出力するかを制御し、
前記第4のトランジスタは、前記第2の信号を前記第1のトランジスタのゲートに保持し、
前記第3の接続制御部は、
第5のトランジスタと、
オフ電流の低いトランジスタであり、ソースまたはドレインの一方が前記第5のトランジスタのゲートに電気的に接続され、ソースまたはドレインの他方が前記第3の信号の入力端子に電気的に接続された第6のトランジスタと、を有し、
前記第5のトランジスタは、前記第4の信号として前記第1の電位または前記第2の電位のいずれを出力するかを制御し、
前記第6のトランジスタは、前記第3の信号を前記第1のトランジスタのゲートに保持し、
前記第4の接続制御部は、
第7のトランジスタと、
オフ電流の低いトランジスタであり、ソースまたはドレインの一方が前記第1のトランジスタのゲートに電気的に接続され、ソースまたはドレインの他方が前記第1の信号の入力端子に電気的に接続された第8のトランジスタと、を有し、
前記第7のトランジスタは、前記第5の信号として前記第1の電位または前記第2の電位のいずれを出力するかを制御し、
前記第8のトランジスタは、前記第1の信号を前記第1のトランジスタのゲートに保持し、
前記第5の接続制御部は、
第9のトランジスタと、
オフ電流の低いトランジスタであり、ソースまたはドレインの一方が前記第1のトランジスタのゲートに電気的に接続され、ソースまたはドレインの他方が前記第2の信号の入力端子に電気的に接続された第10のトランジスタと、を有し、
前記第9のトランジスタは、前記第5の信号として前記第1の電位または前記第2の電位のいずれを出力するかを制御し、
前記第10のトランジスタは、前記第2の信号を前記第1のトランジスタのゲートに保持し、
前記第6の接続制御部は、
第11のトランジスタと、
オフ電流の低いトランジスタであり、ソースまたはドレインの一方が前記第1のトランジスタのゲートに電気的に接続され、ソースまたはドレインの他方が前記第3の信号の入力端子に電気的に接続された第12のトランジスタと、を有し、
前記第11のトランジスタは、前記第5の信号として前記第1の電位または前記第2の電位のいずれを出力するかを制御し、
前記第12のトランジスタは、前記第6の信号を前記第1のトランジスタのゲートに保持し、
前記第1の電位供給制御部は、
第1の期間において、前記第1の電位を前記第1の演算部および前記第2の演算部に供給し、
前記第2の電位供給制御部は、
前記第1の期間の後の第2の期間において、前記第2の電位を前記第1の演算部および前記第2の演算部に供給する全加算器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2013−8352(P2013−8352A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−111823(P2012−111823)
【出願日】平成24年5月15日(2012.5.15)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】