説明

化合物半導体装置及びその製造方法

【課題】ゲート−ソース間の容量低減及びソース抵抗を低減させ、且つ耐圧向上、高出力化及び高周波化を、容易且つ確実に可能とする量産化に優れた信頼性の高い化合物半導体装置を実現する。
【解決手段】ゲート電極19を形成する際に、4層の電子線レジスト11〜14を用いてゲート開口17を形成し、ゲート開口17内に、キャップ層5の表面との接触面を含む幹状の下方部分19aと下方部分19aから傘状に拡がる上方部分19bとが一体形成されてなり、下方部分19aの接触面がドレイン電極7に比べてソース電極6に偏倚した位置に設けられており、上方部分19bの傘状の下端面のうちソース電極6側の部位がドレイン電極7側の部位よりもキャップ層5の表面からの高さが高いゲート電極19を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物半導体層を備えた化合物半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化物半導体デバイスは、高い飽和電子速度及びワイドバンドギャップ等の特徴を利用し、高耐圧及び高出力の半導体デバイスとしての開発が活発に行われている。窒化物半導体デバイスとしては、電界効果トランジスタ、特に高電子移動度トランジスタ(High Electron Mobility Transistor:HEMT)についての報告が数多くなされている。特に、GaNを電子走行層とし、AlGaNを電子供給層として用いたAlGaN/GaN・HEMTが注目されている。AlGaN/GaN・HEMTでは、GaNとAlGaNとの格子定数差に起因した歪みがAlGaNに生じる。これにより発生したピエゾ分極及びAlGaNの自発分極により、高濃度の2次元電子ガス(2DEG)が得られる。そのため、高耐圧及び高出力が実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−246285号公報
【特許文献2】特開昭61−228674号公報
【特許文献3】特開平4−255235号公報
【特許文献4】特開平6−132314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
HEMTでは、より高周波特性を向上させるためにゲート容量及びゲート抵抗を低減することができるゲート電極の研究開発が進められている。いわゆるオーバーハング形状のT字型のゲート電極を有するHEMTでは、耐圧向上及び高出力化を考慮すればゲートとドレインとをある程度離間させる必要があり、高周波化を考慮すればゲートとソースとの間の容量及びソース抵抗を低減するような構造が必要である。ゲートとソースとの間の容量を低減するためには、ゲートとソースとの間の距離を大きくすることが望ましい。一方、ソース抵抗を低減するためには、ゲートとソースとの間の距離を小さくすることが望ましい。ゲート電極の構造を工夫した技術はいくつか案出されているが、上記の相反する構造上の要請を満たすゲート電極は未だ案出されていない。この要請を満たすゲート電極は比較的複雑な形状を要するものと考えられるため、これを実現するには、その作製上の困難も大きい。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、ゲート−ソース間の容量低減及びソース抵抗を低減させ、且つ耐圧向上、高出力化及び高周波化を、容易且つ確実に実現する量産化に優れた信頼性の高い化合物半導体装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
化合物半導体装置の一態様は、基板と、前記基板の上方に形成された化合物半導体層と、前記化合物半導体層の上方に形成されたソース電極及びドレイン電極と、前記化合物半導体層の上方で、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に形成されたゲート電極とを含み、前記ゲート電極は、前記化合物半導体層の上方との接触面を含む幹状の下方部分と、前記下方部分から傘状に拡がる上方部分とが一体形成されてなり、前記下方部分は、その前記接触面が前記ドレイン電極に比べて前記ソース電極に偏倚した位置に設けられており、前記上方部分は、その傘状の下端面のうち、前記ソース電極側の部位が前記ドレイン電極側の部位よりも前記基板の表面からの高さが高い。
【0007】
化合物半導体装置の製造方法の一態様は、基板の上方に化合物半導体層を形成する工程と、前記化合物半導体層の上方にソース電極及びドレイン電極を形成する工程と、前記化合物半導体層の上方で、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間にゲート電極を形成する工程とを含み、前記ゲート電極を形成する工程は、前記化合物半導体層の上方に第1のレジスト及び第2のレジストを順次形成し、前記第2の電子線レジストの前記ドレイン電極側の一部を除去し、前記第1のレジスト及び前記第2のレジストを覆うように第3のレジスト及び第4のレジストを順次形成し、前記第1のレジストの表面の一部及び前記第2のレジストの先端部分が露出するように、前記第4のレジスト及び前記第3のレジストに第1の開口を形成し、前記第1の開口から露出する前記第1のレジストに、前記ドレイン電極に比べて前記ソース電極に偏倚した部位に第2の開口を形成し、連通する前記第1の開口及び前記第2の開口内に導電材料を埋め込み、前記ゲート電極を形成する。
【発明の効果】
【0008】
上記の諸態様によれば、ゲート−ソース間の容量低減及びソース抵抗を低減させ、且つ耐圧向上、高出力化及び高周波化を、容易且つ確実に可能とする量産化に優れた信頼性の高い化合物半導体装置が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態によるショットキー型のAlGaN/GaN・HEMTの製造方法を工程順に示す概略断面図である。
【図2】図1に引き続き、第1の実施形態によるショットキー型のAlGaN/GaN・HEMTの製造方法を工程順に示す概略断面図である。
【図3】図2に引き続き、第1の実施形態によるショットキー型のAlGaN/GaN・HEMTの製造方法を工程順に示す概略断面図である。
【図4】図3に引き続き、第1の実施形態によるショットキー型のAlGaN/GaN・HEMTの製造方法を工程順に示す概略断面図である。
【図5】図4に引き続き、第1の実施形態によるショットキー型のAlGaN/GaN・HEMTの製造方法を工程順に示す概略断面図である。
【図6】図5に引き続き、第1の実施形態によるショットキー型のAlGaN/GaN・HEMTの製造方法を工程順に示す概略断面図である。
【図7】第2の実施形態によるMIS型のAlGaN/GaN・HEMTの製造方法を工程順に示す概略断面図である。
【図8】図6に引き続き、第2の実施形態によるMIS型のAlGaN/GaN・HEMTの製造方法を工程順に示す概略断面図である。
【図9】第3の実施形態による電源装置の概略構成を示す結線図である。
【図10】第4の実施形態による高周波増幅器の概略構成を示す結線図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、諸実施形態について図面を参照して詳細に説明する。以下の諸実施形態では、化合物半導体装置としてAlGaN/GaN・HEMTを開示し、その構成について製造方法と共に説明する。なお、以下の図面において、図示の便宜上、相対的に正確な大きさ及び厚みに示していない構成部材がある。諸実施形態において、素子分離は、所定の素子分離法、例えばSTI(Shallow Trench Isolation)法、又は素子分離領域へのイオン注入等により行う。
【0011】
(第1の実施形態)
本実施形態では、ショットキー型のAlGaN/GaN・HEMTを開示する。
図1〜図6は、第1の実施形態によるショットキー型のAlGaN/GaN・HEMTの製造方法を工程順に示す概略断面図である。図2〜図6では、キャップ層5から上方の構成部材のみを図示する。
【0012】
先ず、図1(a)に示すように、成長用基板として例えば半絶縁性のSiC基板1上に、電子走行層2、中間層3、電子供給層4、及びキャップ層5を順次形成する。AlGaN/GaN・HEMTでは、電子走行層2の電子供給層4(直接的には中間層3)との界面近傍に2次元電子ガス(2DEG)が生成される。
【0013】
詳細には、SiC基板1上に、例えば分子線エピタキシー(MBE:Molecular Beam Epitaxy)法により、以下の各化合物半導体層を成長する。MBE法の代わりに、有機金属気相成長法であるMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法等を用いても良い。
SiC基板1上に、i−GaN、i−AlGaN、n−AlGaN、及びn+−GaNを順次堆積し、電子走行層2、中間層3、電子供給層4、及びキャップ層5を積層形成する。上記のi−GaN、i−AlGaN、n−GaN、及びn−AlGaNの成長条件としては、原料ガスとしてトリメチルアルミニウムガス、トリメチルガリウムガス、及びアンモニアガスの混合ガスを用いる。成長する化合物半導体層に応じて、Al源であるトリメチルアルミニウムガス、Ga源であるトリメチルガリウムガスの供給の有無及び流量を適宜設定する。共通原料であるアンモニアガスの流量は、100ccm〜10LM程度とする。また、成長圧力は50Torr〜300Torr程度、成長温度は1000℃〜1200℃程度とする。n−GaN及びn−AlGaNを成長する際には、n型不純物として例えばSiを含む例えばSiH4ガスを所定の流量で原料ガスに添加し、GaN及びAlGaNにSiをドーピングする。Siのドーピング濃度は、1×1018/cm3程度〜1×1020/cm3程度、例えば5×1018/cm3程度とする。
【0014】
ここで、電子走行層2は膜厚2μm程度、中間層3は膜厚5nm程度で例えばAl比率0.2、電子供給層4は膜厚30nm程度で例えばAl比率0.2、キャップ層5は膜厚10nm程度に形成する。なお、電子供給層4をインテンショナリーアンドープAlGaN(i−AlGaN)層としても良い。
【0015】
続いて、図1(b)に示すように、ソース電極及びドレイン電極を形成するためのレジストマスク10を形成する。
詳細には、キャップ層5上にレジストを塗付し、リソグラフィーによりレジストを加工する。これにより、開口10a,10bを有するレジストマスク10が形成される。開口10aは、キャップ層5の表面におけるソース電極の形成部位を露出するように形成される。開口10bは、キャップ層5の表面におけるドレイン電極の形成部位を露出するように形成される。
【0016】
続いて、図1(c)に示すように、ソース電極6及びドレイン電極7を形成する。
詳細には、電極材料として例えばTi/Alを用い、蒸着法等により、開口10a,10bを埋め込むようにレジストマスク10上にTi/Alを堆積する。リフトオフ法により、レジストマスク10及びその上に堆積したTi/Alを除去する。その後、SiC基板1を、例えば窒素雰囲気中において600℃程度で熱処理し、オーミックコンタクトを確立する。以上により、キャップ層5上には、ソース電極6及びドレイン電極7が形成される。
【0017】
続いて、図2(a)に示すように、パッシベーション膜8を形成する。
詳細には、例えばPECVD法により、ソース電極6上及びドレイン電極7上を含むSiC基板1上の全面を覆うように、絶縁膜、ここではSiN膜を例えば膜厚35nm〜45nm程度に堆積する。これにより、ソース電極6上及びドレイン電極7上を含むSiC基板1の表面の保護膜として機能するパッシベーション膜8が形成される。
【0018】
続いて、図2(b)に示すように、第1の電子線レジスト11及び第2の電子線レジスト12を塗布する。
詳細には、パッシベーション膜8上にレジスト、ここでは第1の電子線レジスト11及び第2の電子線レジスト12を、例えば厚み300nm程度及び厚み300nm〜500nm程度に順次塗布形成する。第1の電子線レジスト11は、第2の電子線レジスト12よりも電子線感度が低いものである。具体的に、第1の電子線レジスト11としては例えばポリメチルメタクリレート(PMMA)レジスト等を、第2の電子線レジスト12としては例えば日本ゼオン株式会社製の商品名ZEP520A-7等をそれぞれ用いる。
【0019】
続いて、図2(c)に示すように、第2の電子線レジスト12を電子線露光する。
詳細には、第2の電子線レジスト12のうち、ドレイン電極7側の部分を、比較的低いドーズ量、例えば140μC〜200μC程度の電子線で露光する。図示の例では、第2の電子線レジスト12の電子線露光された部分を露光部分12aとする。このとき、第1の電子線レジスト11は、第2の電子線レジスト12よりも電子線感度が低いレジストであるため、露光されても現像により開口しない。
【0020】
続いて、図3(a)に示すように、露光部分12aを除去する。
詳細には、第2の電子線レジスト12の露光部分12aを現像して除去する。これにより、第2の電子線レジスト12は、第1の電子線レジスト11上の、ソース電極6の上方に相当する部分を含む領域に階段状に残存する。
【0021】
続いて、図3(b)に示すように、第3の電子線レジスト13及び第4の電子線レジスト14を塗布する。
詳細には、第2の電子線レジスト12を覆うように第1の電子線レジスト11上に、第3の電子線レジスト13及び第4の電子線レジスト14を、例えば厚み500nm〜550nm程度及び厚み250nm〜300nm程度に順次塗布形成する。第3の電子線レジスト13は、第1の電子線レジスト11及び第2の電子線レジスト12よりも電子線感度が高いレジストである。具体的に、第3の電子線レジスト13としては例えばポリジメチルグルタルイミド(PMGI)等を、第4の電子線レジスト14としては例えば日本ゼオン株式会社製の商品名ZEP520A-7等をそれぞれ用いる。
【0022】
続いて、図3(c)に示すように、第4の電子線レジスト14及び第3の電子線レジスト13を電子線露光する。
詳細には、第3の電子線レジスト13下の第2の電子線レジスト12の先端部分12bに架かるように、ドレイン電極6よりもソース電極8側に偏倚した第4の電子線レジスト14及び第3の電子線レジスト13の部分を、例えば120μC程度のドーズ量の電子線で露光する。図示の例では、第3の電子線レジスト13及び第4の電子線レジスト14の電子線露光された部分を露光部分15とする。このとき、第1の電子線レジスト11及び第2の電子線レジスト12は、第3の電子線レジスト13よりも電子線感度が低いレジストであるため、露光されても現像により開口しない。
【0023】
続いて、図4(a)に示すように、第3の電子線レジスト13及び第4の電子線レジスト14に第1の開口16を形成する。
詳細には、第3の電子線レジスト13及び第4の電子線レジスト14の露光部分15を現像して除去する。これにより、第3の電子線レジスト13及び第4の電子線レジスト14には、第1の電子線レジスト11の表面の一部及び第2の電子線レジスト12の先端部分12bを露出させる第1の開口16が形成される。
【0024】
続いて、図4(b)に示すように、第1の開口16の側面に露出する第3の電子線レジスト13を後退させる。
詳細には、図4(a)に引き続き第3の電子線レジスト13を現像する。第3の電子線レジスト13は、第1の電子線レジスト11、第2の電子線レジスト12、及び第4の電子線レジスト14よりも電子線感度が高く、所定の現像液を用いることで現像のレートも高くなる。そのため、第3の電子線レジスト13は、その第1の開口16の側面に露出する部分が現像時間等に対応した所定量だけ横方向に後退する。これにより、第3の電子線レジスト13の、第2の電子線レジスト12と第4の電子線レジスト14との間に空隙17aが、及び第1の電子線レジスト11と第4の電子線レジスト14との間に空隙17bがそれぞれ形成される。空隙17aの形成により、第2の電子線レジスト12の先端部分12bが拡大する。
【0025】
続いて、図4(c)に示すように、第1の開口16から露出する第1の電子線レジストを電子線露光する。
詳細には、第1の開口16から露出する第1の電子線レジストのドレイン電極7に比べてソース電極6に偏倚した部位に比較的高いドーズ量、例えば500μC〜600μC程度の電子線で露光する。図示の例では、第1の電子線レジスト11の電子線露光された部分を露光部分11aとする。
【0026】
続いて、図5(a)に示すように、第1の電子線レジスト11に第2の開口11bを形成する。
詳細には、第1の電子線レジスト11の露光部分11aを現像して除去する。これにより、第1の電子線レジスト11には、第1の電子線レジストのドレイン電極7に比べてソース電極6に偏倚した部位にファインゲートの第2の開口11bが形成される。第1の開口16と第2の開口11bとは連通する。図示の例では、この連通した開口をゲート開口17とする。
【0027】
続いて、図5(b)に示すように、パッシベーション膜8に第3の開口8aを形成する。
詳細には、第1の電子線レジスト11をマスクとして用い、パッシベーション膜8をキャップ層5の表面が露出するまでドライエッチングする。これにより、パッシベーション膜8には、第1の電子線レジスト11の第2の開口11bに倣った第3の開口8aが形成される。
【0028】
続いて、図5(c)に示すように、第1の電子線レジスト11の第2の開口11bをテーパ状に拡大させる。
SiC基板1を例えば120℃で1分間程度、熱処理する。これにより、第1の電子線レジスト11の第2の開口11bがテーパ状に拡大する。
【0029】
続いて、図6(a)に示すように、ゲート電極の電極材料18を形成する。
詳細には、電極材料18として例えばNi/Auを用い、蒸着法等により、ゲート開口17内で第2の開口11b及び第3の開口8aを埋め込むようにNi/Auを堆積する。電極材料18は、第4の電子線レジスト15上にも堆積する。電極材料18として、Ni/Auの代わりにTi/Pt/Auを堆積するようにしても良い。
【0030】
続いて、図6(b)に示すように、ゲート電極19を形成する。
詳細には、リフトオフ法により、第1の電子線レジスト11、第2の電子線レジスト12、第3の電子線レジスト13、及び第4の電子線レジスト15と、第4の電子線レジスト15上に堆積するNi/Auを除去する。以上により、第3の開口8aをNi/Auで埋め込んでパッシベーション膜8の表面から上方に突出するように、キャップ層5上にオーバーハング状のゲート電極19が形成される。なお、電極材料18にTi/Pt/Auを用いた場合には、第3の開口8aをTi/Pt/Auで埋め込んでパッシベーション膜8の表面から上方に突出するように、キャップ層5上にオーバーハング状のゲート電極19が形成される。
【0031】
しかる後、ゲート電極19を覆う層間絶縁膜の形成、ソース電極6、ドレイン電極7、及びゲート電極19と導通する配線の形成等の諸工程を経て、ショットキー型のAlGaN/GaN・HEMTが形成される。
【0032】
本実施形態では、ゲート電極19の形成工程において、レジストとして電子線レジスト(第1〜第4の電子線レジスト11〜14)のみを用いるため、電子線露光には第1〜第4の電子線レジスト11〜14の感度に応じて照射ドーズ量を設定すれば良い。これにより、ゲート電極の形成にリソグラフィー及びドライエッチングを行う場合のようなエッチングの制御性困難の問題がなく、より簡便にゲート電極19を精緻に形成することができる。電子線露光によりゲート開口17を形成するため、微細なゲート構造が実現でき、AlGaN/GaN・HEMTの更なる高周波化及び高出力化が可能となる。
【0033】
ゲート電極19は、図6(b)のように、キャップ層5との接触面を含む幹状の下方部分19aと、下方部分19aから傘状に拡がる上方部分19bとが一体形成されており、上方部分19bがソース電極6側とドレイン電極7側とで非対称な形状とされる。下方部分19aは、キャップ層5との接触面がドレイン電極7に比べてソース電極6に偏倚した位置に設けられている。ゲート電極19の形成時において、第2の電子線レジスト12がその先端部分12bが突出して露出するように第1の開口16が形成される。そのため、上方部分19bは、その傘状の下端面のうち、ソース電極6側の部位19b1がドレイン電極7側の部位19b2よりも、キャップ層5の表面(又はSiC基板1の表面)からの高さが高く形成される。このように、ゲート電極19では、ソース電極6側の部位19b1がドレイン電極7側の部位19b2よりも高く形成されるため、上方部分19bがソース電極6から可及的に離間され、ソース電極6とゲート電極19との間の容量が低減される。また、当該非対称形状を採用することにより、ゲート電極19(のキャップ層5との接触面)をソース電極6に近づけることができ、ソース電極6とゲート電極19との間の電気抵抗が低減される。このとき、ゲート電極19はドレイン電極7と十分に離間するため、AlGaN/GaN・HEMTの耐圧向上と高出力化が得られる。更に本実施形態では、傘状の上方部分19bがソース電極6に近ければ発生してしまうゲート電極19の製造バラツキが低減される。そのため、AlGaN/GaN・HEMTの効率良い量産化が可能となる。
【0034】
以上説明したように、本実施形態によれば、ゲート電極19とソース電極6と間の容量低減及びソース抵抗を低減させ、且つ耐圧向上、高出力化及び高周波化を、容易且つ確実に可能とする量産化に優れた信頼性の高いAlGaN/GaN・HEMTが実現する。
【0035】
(第2の実施形態)
本実施形態では、MIS型のAlGaN/GaN・HEMTを開示する。
図7及び図8は、第2の実施形態によるMIS型のAlGaN/GaN・HEMTの製造方法を工程順に示す概略断面図である。図6及び図7では、キャップ層5から上方の構成部材のみを図示する。
【0036】
先ず、第1の実施形態と同様に、図1(a)〜図1(c)と同様の諸工程を実行する。
続いて、図7(a)に示すように、ゲート絶縁膜21を形成する。
詳細には、例えばPECVD法により、ソース電極6上及びドレイン電極7上を含むSiC基板1上の全面を覆うように、絶縁膜として高誘電体膜、ここではSiN膜を例えば膜厚35nm〜45nm程度に堆積する。これにより、ゲート絶縁膜21が形成される。ゲート絶縁膜21は、ソース電極6上及びドレイン電極7上を含むSiC基板1の表面の保護膜としても機能する。ゲート絶縁膜21としては、SiNを形成する代わりに、SiO2,HfSiO,HfAlON,HfO2等を形成しても良い。
【0037】
続いて、第1の実施形態と同様に、図2(b)〜図5(a)と同様の諸工程を実行する。
続いて、図7(b)に示すように、第1の電子線レジスト11の第2の開口11bをテーパ状に拡大させる。
SiC基板1を例えば120℃で1分間程度、熱処理する。これにより、第1の電子線レジスト11の第2の開口11bがテーパ状に拡大する。
【0038】
続いて、図8(a)に示すように、ゲート電極の電極材料18を形成する。
詳細には、電極材料18として例えばNi/Auを用い、蒸着法等により、ゲート開口17内で第2の開口11bを埋め込むようにNi/Auを堆積する。
【0039】
続いて、図8(b)に示すように、ゲート電極19を形成する。
詳細には、リフトオフ法により、第1の電子線レジスト11、第2の電子線レジスト12、第3の電子線レジスト13、及び第4の電子線レジスト15と、第4の電子線レジスト15上に堆積するNi/Auを除去する。以上により、ゲート絶縁膜21の表面から上方に突出するように、キャップ層5上にゲート絶縁膜21を介してオーバーハング状のゲート電極19が形成される。
【0040】
しかる後、ゲート電極19を覆う層間絶縁膜の形成、ソース電極6、ドレイン電極7、及びゲート電極19と導通する配線の形成等の諸工程を経て、MIS型のAlGaN/GaN・HEMTが形成される。
【0041】
以上説明したように、本実施形態によれば、ゲート電極19とソース電極6との間の容量低減及びソース抵抗を低減させ、且つ耐圧向上、高出力化及び高周波化を、容易且つ確実に可能とする量産化に優れた信頼性の高いAlGaN/GaN・HEMTが実現する。
【0042】
上記した第1及び第2の実施形態では、化合物半導体装置としてAlGaN/GaN・HEMTを例示したが、これに限定されるものではなく、その他のHEMTにも適用できる。例えば、以下の態様(1)〜(5)等が考えられる。
【0043】
態様(1)
化合物半導体装置として、AlN/InAlN・HEMTを開示する。
InAlNとAlNは、後者の方が前者よりも格子定数が小さい化合物半導体である。この場合、例えば図1(a)において、電子走行層2がi−InAlN、中間層3がi−AlN、電子供給層4がn−AlN、キャップ層5がn+−InAlNで形成される。
【0044】
態様(2)
化合物半導体装置として、AlN/InAlGaN・HEMTを開示する。
InAlGaNとAlNは、後者の方が前者よりも格子定数が小さい化合物半導体である。この場合、例えば図1(a)において、電子走行層2がi−InAlGaN、中間層3がi−AlN、電子供給層4がn−AlN、キャップ層5がn+−InAlGaNで形成される。
【0045】
態様(3)
化合物半導体装置として、InAlGaN/InAlN・HEMTを開示する。
InAlNとInAlGaNとでは、そのIn,Al,Gaの組成比率を調節することで、格子定数の大小関係が変わる。組成比率の調節により、InAlNの格子定数をInAlGaNの格子定数よりも小さくしたり、逆にInAlGaNの格子定数をInAlNの格子定数よりも小さくすることができる。ここでは、InAlGaNの格子定数をInAlNの格子定数よりも小さくする場合を例示する。
この場合、例えば図1(a)において、電子走行層2がi−InAlN、中間層3がi−InAlGaN、電子供給層4がn−InAlGaN、キャップ層5がn+−InAlNで形成される。
【0046】
態様(4)
化合物半導体装置として、Al0.5Ga0.5N/Al0.3Ga0.7N・HEMTを開示する。
同種の化合物半導体でも、その組成比率が異なれば格子定数も異なるものとなる。1種の化合物半導体で格子定数の異なるものとしては、例えば、AlGaNについて、Al0.3Ga0.7NとAl0.5Ga0.5Nとすることが考えられる。AlGaNでは、Alの組成比率が大きいほど格子定数が小さくなる。従って、Al0.5Ga0.5NはAl0.3Ga0.7Nよりも格子定数が小さい。
この場合、例えば図1(a)において、電子走行層2がi−Al0.3Ga0.7N、中間層3がi−Al0.5Ga0.5N、電子供給層4がn−Al0.5Ga0.5N、キャップ層5がn+−Al0.3Ga0.7Nで形成される。
【0047】
態様(5)
化合物半導体装置として、ZnMgO/ZnO・HEMTを開示する。
この場合、例えば図1(a)において、電子走行層2がi−ZnO、中間層3がi−ZnMgO、電子供給層4がn−ZnMgO、キャップ層5がn+−ZnOで形成される。
【0048】
(第3の実施形態)
本実施形態では、第1及び第2の実施形態のいずれかによるHEMTを備えた電源装置を開示する。
図9は、第3の実施形態による電源装置の概略構成を示す結線図である。
【0049】
本実施形態による電源装置は、高圧の一次側回路31及び低圧の二次側回路32と、一次側回路31と二次側回路32との間に配設されるトランス33とを備えて構成される。
一次側回路31は、交流電源34と、いわゆるブリッジ整流回路35と、複数(ここでは4つ)のスイッチング素子36a,36b,36c,36dとを備えて構成される。また、ブリッジ整流回路35は、スイッチング素子36eを有している。
二次側回路32は、複数(ここでは3つ)のスイッチング素子37a,37b,37cを備えて構成される。
【0050】
本実施形態では、一次側回路31のスイッチング素子36a,36b,36c,36d,36eが、第1及び第2の実施形態のいずれかによるHEMTとされている。一方、二次側回路32のスイッチング素子37a,37b,37cは、シリコンを用いた一般的なMIS・FETとされている。
【0051】
本実施形態では、ゲート電極19とソース電極6と間の容量低減及びソース抵抗を低減させ、且つ耐圧向上、高出力化及び高周波化を、容易且つ確実に可能とする量産化に優れた信頼性の高いHEMTを高圧回路に適用する。これにより、信頼性の高い大電力の電源回路が実現する。
【0052】
(第4の実施形態)
本実施形態では、第1及び第2の実施形態のいずれかによるHEMTを備えた高周波増幅器を開示する。
図10は、第4の実施形態による高周波増幅器の概略構成を示す結線図である。
【0053】
本実施形態による高周波増幅器は、例えば携帯電話の基地局用パワーアンプに適用されるものである。この高周波増幅器は、ディジタル・プレディストーション回路41と、ミキサー42a,42bと、パワーアンプ43とを備えて構成される。
ディジタル・プレディストーション回路41は、入力信号の非線形歪みを補償するものである。ミキサー42aは、非線形歪みが補償された入力信号と交流信号をミキシングするものである。パワーアンプ43は、交流信号とミキシングされた入力信号を増幅するものであり、第1及び第2の実施形態のいずれかによるHEMTを有している。なお図10では、例えばスイッチの切り替えにより、出力側の信号をミキサー42bで交流信号とミキシングしてディジタル・プレディストーション回路41に送出できる構成とされている。
【0054】
本実施形態では、ゲート電極19とソース電極6と間の容量低減及びソース抵抗を低減させ、且つ耐圧向上、高出力化及び高周波化を、容易且つ確実に可能とする量産化に優れた信頼性の高いHEMTを高周波増幅器に適用する。これにより、信頼性の高い高耐圧の高周波増幅器が実現する。
【0055】
以下、化合物半導体装置及びその製造方法の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0056】
(付記1)基板と、
前記基板の上方に形成された化合物半導体層と、
前記化合物半導体層の上方に形成されたソース電極及びドレイン電極と、
前記化合物半導体層の上方で、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に形成されたゲート電極と
を含み、
前記ゲート電極は、前記化合物半導体層の上方との接触面を含む幹状の下方部分と、前記下方部分から傘状に拡がる上方部分とが一体形成されてなり、
前記下方部分は、その前記接触面が前記ドレイン電極に比べて前記ソース電極に偏倚した位置に設けられており、
前記上方部分は、その傘状の下端面のうち、前記ソース電極側の部位が前記ドレイン電極側の部位よりも前記基板の表面からの高さが高いことを特徴とする化合物半導体装置。
【0057】
(付記2)前記ゲート電極は、前記化合物半導体層上に形成されていることを特徴とする付記1に記載の化合物半導体装置。
【0058】
(付記3)前記化合物半導体層を覆い、前記化合物半導体層の表面の一部を露出させる開口を有する絶縁膜が形成されており、
前記ゲート電極は、前記開口を前記下方部分が埋め込むように形成されていることを特徴とする付記2に記載の化合物半導体装置。
【0059】
(付記4)前記化合物半導体層を覆う絶縁膜が形成されており、
前記ゲート電極は、前記絶縁膜上に形成されていることを特徴とする付記1に記載の化合物半導体装置。
【0060】
(付記5)基板の上方に化合物半導体層を形成する工程と、
前記化合物半導体層の上方にソース電極及びドレイン電極を形成する工程と、
前記化合物半導体層の上方で、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間にゲート電極を形成する工程と
を含み、
前記ゲート電極を形成する工程は、
前記化合物半導体層の上方に第1のレジスト及び第2のレジストを順次形成し、
前記第2の電子線レジストの前記ドレイン電極側の一部を除去し、
前記第1のレジスト及び前記第2のレジストを覆うように第3のレジスト及び第4のレジストを順次形成し、
前記第1のレジストの表面の一部及び前記第2のレジストの先端部分が露出するように、前記第4のレジスト及び前記第3のレジストに第1の開口を形成し、
前記第1の開口から露出する前記第1のレジストに、前記ドレイン電極に比べて前記ソース電極に偏倚した部位に第2の開口を形成し、
連通する前記第1の開口及び前記第2の開口内に導電材料を埋め込み、前記ゲート電極を形成することを特徴とする化合物半導体装置の製造方法。
【0061】
(付記6)前記第1のレジスト、前記第2のレジスト、前記第3のレジスト、及び前記第4のレジストが、電子線レジストであることを特徴とする付記5に記載の化合物半導体装置の製造方法。
【0062】
(付記7)前記第1のレジストは、前記第2のレジストよりも電子線感度が低いことを特徴とする付記6に記載の化合物半導体装置の製造方法。
【0063】
(付記8)前記第1のレジスト及び前記第2のレジストは、前記第3のレジストよりも電子線感度が低いことを特徴とする付記7に記載の化合物半導体装置の製造方法。
【0064】
(付記9)前記第1の開口を形成した後、前記第1の開口の側面に露出する前記第3のレジストを後退させることを特徴とする付記5〜8のいずれか1項に記載の化合物半導体装置の製造方法。
【0065】
(付記10)前記第1のレジストを形成する前に、前記化合物半導体層を覆う絶縁膜を形成する工程を更に含み、
前記絶縁膜に、前記化合物半導体層の表面の一部を露出させるように、前記第2の開口に倣った第3の開口を形成することを特徴とする付記5〜9のいずれか1項に記載の化合物半導体装置の製造方法。
【0066】
(付記11)前記第1のレジストを形成する前に、前記化合物半導体層を覆う絶縁膜を形成する工程を更に含み、
前記第1のレジストに、前記絶縁膜の表面の一部を露出させるように前記第2の開口を形成することを特徴とする付記5〜9のいずれか1項に記載の化合物半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0067】
1 SiC基板
2 電子走行層
3 中間層
4 電子供給層
5 キャップ層
6 ソース電極
7 ドレイン電極
8 パッシベーション膜
8a 第3の開口
10 レジストマスク
11 第1の電子線レジスト
11a,12a,15 露光部分
11b 第2の開口
12 第2の電子線レジスト
12b 先端部分
13 第3の電子線レジスト
14 第4の電子線レジスト
15 露光部分
16 第1の開口
17 空隙
18 電極材料
19 ゲート電極
19a 下方部分
19b 上方部分
19b1 ソース電極6側の部位
19b2 ドレイン電極7側の部位
21 ゲート絶縁膜
31 一次側回路
32 二次側回路
33 トランス
34 交流電源
35 ブリッジ整流回路
36a,36b,36c,36d,36e,37a,37b,37c スイッチング素子
41 ディジタル・プレディストーション回路
42a,42b ミキサー
43 パワーアンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の上方に形成された化合物半導体層と、
前記化合物半導体層の上方に形成されたソース電極及びドレイン電極と、
前記化合物半導体層の上方で、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に形成されたゲート電極と
を含み、
前記ゲート電極は、前記化合物半導体層の上方との接触面を含む幹状の下方部分と、前記下方部分から傘状に拡がる上方部分とが一体形成されてなり、
前記下方部分は、その前記接触面が前記ドレイン電極に比べて前記ソース電極に偏倚した位置に設けられており、
前記上方部分は、その傘状の下端面のうち、前記ソース電極側の部位が前記ドレイン電極側の部位よりも前記基板の表面からの高さが高いことを特徴とする化合物半導体装置。
【請求項2】
前記化合物半導体層を覆い、前記化合物半導体層の表面の一部を露出させる開口を有する絶縁膜が形成されており、
前記ゲート電極は、前記開口を前記下方部分が埋め込むように、前記化合物半導体層上に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の化合物半導体装置。
【請求項3】
前記化合物半導体層を覆う絶縁膜が形成されており、
前記ゲート電極は、前記絶縁膜上に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の化合物半導体装置。
【請求項4】
基板の上方に化合物半導体層を形成する工程と、
前記化合物半導体層の上方にソース電極及びドレイン電極を形成する工程と、
前記化合物半導体層の上方で、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間にゲート電極を形成する工程と
を含み、
前記ゲート電極を形成する工程は、
前記化合物半導体層の上方に第1のレジスト及び第2のレジストを順次形成し、
前記第2の電子線レジストの前記ドレイン電極側の一部を除去し、
前記第1のレジスト及び前記第2のレジストを覆うように第3のレジスト及び第4のレジストを順次形成し、
前記第1のレジストの表面の一部及び前記第2のレジストの先端部分が露出するように、前記第4のレジスト及び前記第3のレジストに第1の開口を形成し、
前記第1の開口から露出する前記第1のレジストに、前記ドレイン電極に比べて前記ソース電極に偏倚した部位に第2の開口を形成し、
連通する前記第1の開口及び前記第2の開口内に導電材料を埋め込み、前記ゲート電極を形成することを特徴とする化合物半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第1のレジスト、前記第2のレジスト、前記第3のレジスト、及び前記第4のレジストが、電子線レジストであることを特徴とする請求項4に記載の化合物半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記第1のレジストは、前記第2のレジストよりも電子線感度が低いことを特徴とする請求項5に記載の化合物半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−23214(P2012−23214A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160130(P2010−160130)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】