説明

半導体装置の製造方法、半導体装置、電子機器、半導体製造装置及び記憶媒体

【課題】基板上の凹部が形成された層間絶縁膜の露出面にバリア膜を成膜し、凹部内に下層側の金属配線と電気的に接続される銅配線を形成するにあたり、段差被覆性の良好なバリア膜を形成することができ、しかも配線抵抗の上昇を抑えた半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】層間絶縁膜に形成された凹部21の底面に露出した下層側の銅配線13の表面の酸化膜を還元あるいはエッチングして、当該銅配線13の表面の酸素を除去した後、マンガンを含み、酸素を含まない有機金属化合物を供給することによって、凹部21の側壁及び層間絶縁膜の表面などの酸素を含む部位に自己形成バリア膜である酸化マンガン25を選択的に生成させる一方、銅配線13の表面にはこの酸化マンガン25を生成させないようにして、その後この凹部に銅を埋め込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、層間絶縁膜に形成された凹部に銅を埋め込んで銅配線を形成する半導体装置の製造方法、この方法により製造された半導体装置、この半導体装置を備えた電子機器、半導体製造装置及び上記方法が記憶された記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の多層配線構造は、層間絶縁膜中に金属配線を埋め込むことにより形成されるが、この金属配線の材料としてはエレクトロマイグレーションが小さくまた低抵抗であることなどから、銅(Cu)が使用され、その形成プロセスとしてはダマシン工程が一般的になっている。また、層間絶縁膜としては、低誘電率材料として例えばシリコン(Si)及び酸素(O)又は炭素(C)を含むシリコン化合物からなる膜例えばSiO、SiOF、SiC、SiOC、SiCOH、SiCN、ポーラスシリカ、ポーラスメチルシルセスキオキサン、ポリアリレン、SiLK(登録商標)、あるいはフロロカーボンなどが用いられている。
【0003】
このダマシン工程では、先ず、例えばCF系のガスと酸素ガスとからなる処理ガスをプラズマ化して層間絶縁膜をエッチングし、層内に引き回される配線を埋め込むためのトレンチと、上下の配線を接続する接続配線を埋め込むためのビアホールと、からなる凹部を形成する。その後、例えば酸素ガスのプラズマを用いたアッシング処理を行うことにより、エッチング処理においてマスクとして用いた例えば有機物からなるフォトレジストマスクを除去する。そして、基板の側面や裏面には、これらのプラズマ処理により生成した副生成物である残渣が付着しているので、この残渣を除去するために、例えば弗酸(HF)水溶液(弗化水素酸)に基板を浸漬してウェット洗浄を行う。その後、凹部にCVD法や電解めっき法などによりCuが埋め込まれることとなる。
【0004】
ところで、CVD法を利用する場合には銅の埋め込みを良好に行うために、前記層間絶縁膜表面及びその凹部内面に沿って極薄の銅シード層を形成することが好ましく、また電解めっき法を利用する場合には、電極となる銅シード層を前記層間絶縁膜表面及び凹部に形成する必要がある。また、銅が層間絶縁膜中に拡散しやすいことから、凹部内に銅の拡散を抑えるためのバリア膜を形成する必要がある。
【0005】
そこで、従来では例えばTa/TaNなどのバリア膜と銅のシード層とを例えばスパッタ法により形成するようにしていた。しかし、配線密度が高くなり、凹部の開口径が小さくなるに従って、このようなスパッタ法では凹部のステップカバレージ特性が悪く、凹部の側壁に付着しにくくなってしまう。また、このスパッタを2回(TaとTaNとを指す)行うので厚膜となり、配線密度の微細化には対応しにくい。特許文献1には、凹部内にマンガン(Mn)をスパッタ法により成膜し、次いで銅を成膜した後この基板に対してアニール処理を行うことにより、酸化マンガン(MnOx(x:任意の正数))からなる自己形成バリア膜と銅の配線層とを形成する技術が記載されている。金属配線内に残った余剰のマンガンは、このアニール処理により当該金属配線の上層に拡散していき、その後のCMP(Chemical Mechanical Polishing)工程により除去されることとなる。このような方法では、上記のアニール処理によりマンガンと層間絶縁膜に含まれる例えば酸素とが反応して酸化マンガンが生成し、この酸化マンガンがバリア膜として層間絶縁膜と金属配線との間の界面に形成されるので、極めて薄いバリア膜を得ることができる。
【0006】
しかし、既述のように、このようなスパッタ法では凹部の側壁に比べて底面に多くマンガンが成膜されてしまう。そのため、凹部の側壁においてはマンガンが十分に付着せず、必要なバリア性能が得られないおそれがある。また、凹部の底面においては、多くのマンガンが残ってしまうと、上記のアニール処理を行ってもこのマンガンを取り除くことが困難になる。このマンガンは、銅よりも電気抵抗が大きいので、金属配線内にこのマンガンが残ってしまうと、配線抵抗の上昇の原因となってしまう。
【0007】
また、既述のプラズマ処理には処理ガスとして酸素ガスを用いているので、この酸素ガスのプラズマにより凹部の底面に露出した金属配線の表面が酸化されてしまう。また、その後のウェット洗浄が大気中で行われるため、当該金属配線の表面に更に自然酸化膜が形成されてしまう。この基板に対して上記の自己形成バリア膜を形成すると、この酸化膜中の酸素とマンガンとが反応して、酸化マンガンとなってしまう。この酸化マンガンは、絶縁体であり、配線抵抗の上昇の大きな原因となってしまうし、また不動態なので反応性に乏しくその除去には、パンチスルーなどの工程を追加する必要がある。
【0008】
特許文献1〜3には、層間絶縁膜に形成された凹部内に銅とマンガンとの化合物などからなる膜を形成する技術が記載されているが、金属配線の表面に形成された酸化膜については検討されていない。
なお酸化マンガンは、Mnの価数によってMnO、Mn、Mn、MnO等の種類が存在するが、ここではそれらを総称してMnOx(x:任意の正数)と記述する。
【0009】
【特許文献1】特開2005−277390(段落0018〜0020)
【特許文献2】特開2007−67107(図3−1、段落0028〜0029、段落0037)
【特許文献3】特開平11−200048(段落0026、段落0036〜0038)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、基板上の凹部が形成された層間絶縁膜の露出面にバリア膜を成膜し、凹部内に下層側の金属配線と電気的に接続される金属配線を形成するにあたり、段差被覆性(ステップカバレッジ性)の良好なバリア膜を形成することができ、しかも配線抵抗の上昇を抑えることのできる半導体装置の製造方法、半導体製造装置及び記憶媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の半導体装置の製造方法は、
凹部が形成された層間絶縁膜と、第1の金属を主成分とし凹部の底面に露出した下層金属配線と、を有する基板に対し、
第2の金属を含む有機金属化合物の蒸気を供給して、前記第2の金属を含む有機金属化合物と、前記層間絶縁膜の成分の一部と、が反応することにより、前記第2の金属の化合物であり第1の金属の拡散を防ぐバリア膜を前記層間絶縁膜の露出面に形成する工程(a)と、
その後、前記凹部内に第1の金属を主成分とする金属配線を埋め込む工程(b)と、を含むことを特徴とする。
【0012】
前記バリア膜形成工程(a)において、前記下層金属配線が、前記第2の金属を含む有機金属化合物と反応して第2の金属の化合物を形成する成分を含まないことにより、前記凹部の底面に露出した下層金属配線の上にはバリア膜を形成させないことが好ましい。
前記バリア膜を形成する工程(a)に先立ち、前記基板上の前記層間絶縁膜に形成された凹部の底面に露出した下層側の第1の金属を主成分とする金属配線の表面の金属酸化物を還元あるいはエッチングして、当該金属配線の表面の酸素を除去又は低減する工程(c)がおこなわれることが好ましい。
【0013】
前記バリア膜を形成する工程(a)と前記第1の金属を主成分とする金属配線を埋め込む工程(b)との間に、前記層間絶縁膜の表面及び前記凹部内に前記第1の金属からなるシード層を成膜する工程を行うことが好ましい。
前記層間絶縁膜は、酸素又は炭素を含むことが好ましい。
前記層間絶縁膜の表面近傍又は前記層間絶縁膜中の成分の一部は、酸素、又は水などの酸素原子を含んだ化合物、又は炭素であることが好ましい。
前記第1の金属は、Al,Cu,Agよりなる群から選択される1以上の金属であることが好ましい。
前記第2の金属は、Mg,Al,Ti,V,Cr,Mn,Ni,Ge,Y,Zr,Nb,Tc,Rh,Pd,Sn,Re,Ptよりなる群から選択される1以上の金属であることが好ましい。
【0014】
前記バリア膜を形成する工程(a)において、前記基板を加熱することが好ましい。
前記第2の金属を含む有機金属化合物は、酸素を含まないことが好ましい。
前記第2の金属を含む有機金属化合物は、酸素の存在により分解反応を起こすことが好ましい。
前記層間絶縁膜は、SiO膜とSiOF膜とSiC膜とSiOC膜とSiCOH膜とSiCN膜とポーラスシリカ膜とポーラスメチルシルセスキオキサン膜とポリアリレン膜とSiLK(登録商標)膜とフロロカーボン膜とよりなる群から選択される1つ以上の膜よりなることが好ましい。
【0015】
前記第2の金属を含む有機金属化合物は、CpMetal[=Metal(C],(MeCp)Metal[=Metal(CH],(MeCp)Metal[=Metal((CH],(EtCp)Metal[=Metal(C],(i−PrCp)Metal[=Metal(C],(t−BuCp)Metal[=Metal(C],Metal(DMPD)(EtCp)[=Metal(C11)](ここで、Metalは前記第2の金属元素をあらわす)よりなる群から選択される1つ以上の有機金属化合物よりなることが好ましい。
前記第1の金属は、Cuであり、前記第2の金属は、Mnであることが好ましい。
【0016】
前記バリア膜を形成する工程(a)の後に、前記基板を加熱すると共に、前記第2の金属を含む有機金属化合物の蒸気を前記基板に供給しながら前記基板への前記第1の金属を含む有機金属化合物の蒸気の供給を開始して、当該第1の金属を含む有機金属化合物の蒸気の供給量を増やしていくことによって、前記第2の金属に対する前記第1の金属の割合が表層に向かって徐々に増えていく密着層を前記バリア膜の上層に形成する工程を行うようにしても良い。
【0017】
前記下層側の金属配線の表面の金属酸化物は、前記基板を大気搬送した時に生成したものであるか、あるいは前記酸素を除去又は低減する工程(c)の前に行われ、前記層間絶縁膜に対して酸素を含む処理ガスのプラズマを供給して凹部を形成するエッチング処理により生成したものであっても良い。
前記酸素を除去又は低減する工程(c)は、前記凹部に対して有機酸を供給する工程であるか、あるいは前記凹部に対して水素を供給する熱処理工程、又はアルゴンスパッタエッチング工程であることが好ましい。前記有機酸は、蟻酸であることが好ましい。
【0018】
金属配線を埋め込む工程(b)の後に、熱処理(アニール)工程(d)を行うようにしても良い。
前記バリア膜を形成する工程(a)は、前記基板を100℃以上500℃未満に加熱する工程を含んでいても良い。
前記バリア膜は、アモルファス状であることが好ましく、また膜厚が5nm以下であることが好ましい。
【0019】
本発明の半導体装置は、上記の半導体装置の製造方法により製造されたことを特徴とする。
本発明の電子機器は、
上記の半導体装置を備えたことを特徴とする。
【0020】
本発明の半導体製造装置は、
上記の製造方法を実施するための半導体製造装置において、
基板が搬入される真空雰囲気の搬送室と、この搬送室内に設けられた基板搬送手段と、を備えた真空搬送室モジュールと、
前記真空搬送室モジュールに気密に接続され、基板を載置する載置台が内部に設けられた処理容器と、第2の金属を含む、有機金属化合物の蒸気を前記基板に供給する手段と、を備え、前記基板上の層間絶縁膜の成分の一部と、前記第2の金属を含む有機金属化合物と、が反応することにより、前記第2の金属の化合物であり第1の金属の拡散を防ぐバリア膜を当該層間絶縁膜の露出面に形成するバリア膜形成モジュールと、
前記真空搬送室モジュールに気密に接続され、基板を載置する載置台が内部に設けられた処理容器と、前記基板を加熱する手段と、第1の金属を主成分とする原料の蒸気を前記基板に供給し、前記凹部内に前記第1の金属を主成分とする原料を埋め込む第1の金属配線形成手段と、を備えた第1の金属配線形成モジュールと、
前記真空搬送室モジュールに搬入された基板を前記バリア膜形成モジュールに搬送し、次いで前記真空搬送室モジュールを介して前記第1の金属配線形成モジュールに前記基板を搬送するように、前記基板搬送手段を制御する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0021】
前記真空搬送室モジュールには、前記基板上の前記層間絶縁膜に形成された凹部の底面に露出した下層側の第1の金属を主成分とする金属配線の表面の金属酸化物を還元あるいはエッチングする還元手段または除去手段を内部に備えた前処理モジュールが気密に接続され、
前記制御部は、前記基板を前記バリア膜形成モジュールに搬送する前に、前記真空搬送室モジュールを介して前記前処理モジュールに前記基板を搬送するように、前記基板搬送手段を制御することが好ましい。
【0022】
前記真空搬送室モジュールには、前記層間絶縁膜の表面及び前記凹部内に前記第1の金属を主成分とするシード層を成膜するためのシード層形成手段を内部に備えたシード層形成モジュールが気密に接続され、
前記制御部は、前記基板を前記バリア膜形成モジュールに搬送した後、前記第1の金属配線形成モジュールに搬送する前に、前記真空搬送室モジュールを介して前記シード層形成モジュールに前記基板を搬送するように、前記基板搬送手段を制御することが好ましい。
前記バリア膜形成モジュールの処理容器は、前記第1の金属配線形成モジュールの処理容器を兼用していても良い。
前記層間絶縁膜は、酸素又は炭素を含むことが好ましい。
【0023】
前記層間絶縁膜の表面近傍又は前記層間絶縁膜中の成分の一部は、酸素、又は水などの酸素原子を含んだ化合物、又は炭素であることが好ましい。
前記第1の金属は、Al,Cu,Agよりなる群から選択される1以上の金属であることが好ましい。
前記第2の金属は、Mg,Al,Ti,V,Cr,Mn,Ni,Ge,Y,Zr,Nb,Tc,Rh,Pd,Sn,Re,Ptよりなる群から選択される1以上の金属であることが好ましい。
前記バリア膜形成モジュールは、基板を加熱する手段を備えていても良い。
前記第2の金属を含む有機金属化合物は、酸素を含まないことが好ましく、また酸素の存在により分解反応を起こすことが好ましい。
【0024】
前記層間絶縁膜は、SiO膜とSiOF膜とSiC膜とSiOC膜とSiCOH膜とSiCN膜とポーラスシリカ膜とポーラスメチルシルセスキオキサン膜とポリアリレン膜とSiLK(登録商標)膜とフロロカーボン膜とよりなる群から選択される1つ以上の膜よりなることが好ましい。
前記第2の金属を含む有機金属化合物は、CpMetal[=Metal(C],(MeCp)Metal[=Metal(CH],(MeCp)Metal[=Metal((CH],(EtCp)Metal[=Metal(C],(i−PrCp)Metal[=Metal(C],(t−BuCp)Metal[=Metal(C],Metal(DMPD)(EtCp)[=Metal(C11)](ここで、Metalは前記第2の金属元素をあらわす)よりなる群から選択される1つ以上の有機金属化合物よりなることが好ましい。
前記第1の金属は、Cuであり、前記第2の金属は、Mnであることが好ましい。
【0025】
前記還元手段または除去手段は、前記凹部に対して有機酸を供給する手段であるか、あるいは前記凹部に対して水素を供給する手段、又はアルゴンスパッタエッチングする手段であることが好ましい。前記有機酸は、蟻酸であることが好ましい。
前記真空搬送室モジュールには、基板を加熱する加熱手段を内部に備えたアニールユニットが気密に接続され、
前記制御部は、前記基板を前記第1の金属配線形成モジュールに搬送した後、前記真空搬送室モジュールを介して前記アニールユニットに前記基板を搬送するように、前記基板搬送手段を制御することが好ましい。
前記バリア膜形成モジュールは、前記基板を100℃以上500℃未満に加熱する加熱手段を備えていても良い。
前記バリア膜は、アモルファス状であることが好ましく、また膜厚が5nm以下であることが好ましい。
【0026】
本発明の記憶媒体は、
基板に対して処理を行う半導体製造装置に用いられ、コンピュータ上で動作するコンピュータプログラムを格納した記憶媒体であって、
前記コンピュータプログラムは、上記の半導体装置の製造方法を実施するようにステップ群が組まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、基板上の凹部が形成された層間絶縁膜の露出面にバリア膜を形成し、凹部内に下層側の金属配線と電気的に接続される金属配線を形成するにあたり、第2の金属を含む、有機金属化合物の蒸気を前記基板に供給し、前記層間絶縁膜の露出面に第2の金属の化合物を成長させて、前記凹部の側壁および前記層間絶縁膜の上面に第1の金属を主成分とする金属配線の拡散を抑えるためのバリア膜を形成している。そのため、バリア膜の膜厚を薄く抑えることができ、またバリア膜をCVD法により形成しているので、段差被覆性を高めることができる。従って、凹部の開口幅が狭くても薄くて均一なバリア膜を形成することができる。また、基板上に例えば凹部の開口幅にばらつきのあるパターンが混在していても、このようなバリア膜を形成することができる。このことから、銅多層配線において、ローカル配線からグローバル配線までこのバリア膜を適用できる。また、銅多層配線の微細化が可能となるので、デバイスの動作速度を向上させることができると共に、チップサイズを小さくできるので、1枚のウェハから得られる半導体デバイスチップの個数が多くなり、その分デバイスのコストを下げることができる。更に、デバイスの動作速度が向上するので、このデバイスを備えた電子計算機の計算速度又は情報処理速度を高めることができる。更にまた、上記のバリア膜により、第1の金属の拡散を抑えることができるので、層間絶縁膜のリーク電流を抑えることができ、配線の信頼性が向上するため、このデバイスを備えた電子機器の寿命を延ばすことができる。また、必要な計算をより小さい回路でおこなうことができるので、携帯電話などの小型化が要求される情報端末に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
(ウェハの構成)
本発明の半導体装置の製造方法の実施の形態について、VFTL(Via First Trench Last)のDD(Dual Damascene)工程に対応した、図1及び図2を参照して説明する。先ず、本発明の製造方法に用いられる基板である半導体ウェハ(以下「ウェハ」という)Wについて説明する。図1(a)に示すように、このウェハWに設けられた下層側の配線層10には、例えばシリコンと酸素とを含むシリコン酸化膜11が層間絶縁膜として形成されており、このシリコン酸化膜11内には、バリア膜12を介して例えば第1の金属である銅を主成分とする銅配線13が埋め込まれている。尚、図中17は、エッチングストップ膜である。
【0029】
この配線層10の上層側には、SiOまたはSiCなどからなる絶縁膜であるCu拡散バリア兼エッチングストップ膜14を介して、例えばTEOS(Tetra Ethoxy Silane別名Tetraethyl Orthosilicate)などを原料としてプラズマCVD法又は塗布法を用いて成膜された酸素とシリコンとを含むシリコン酸化膜15が層間絶縁膜として形成されている。このシリコン酸化膜15内の膜厚方向の例えば中間位置には、例えばハードマスクであるエッチングストップ膜24が形成されており、このエッチングストップ膜24は、後述のエッチング処理により溝21aを形成する時に、この溝21aの深さ位置を当該エッチングストップ膜24の上端位置に設定するためのものである。シリコン酸化膜15の上側には、このシリコン酸化膜15に対して後述の凹部21を形成するために、例えば有機物であるフォトレジストマスクや無機物のハードマスクなどからなる犠牲膜16が積層されている。このウェハWに対して、以下のようにして上層側の配線層20を形成する。
【0030】
なお、ここでは層間絶縁膜としてシリコン酸化膜11およびシリコン酸化膜15を用いたが、これに限らず、例えばシリコン(Si)及び酸素(O)又は炭素(C)を含むシリコン化合物からなる膜例えばSiO膜(SiO膜など)、SiOF膜(シリコン、酸素及びフッ素を含む膜)、SiC膜(シリコン及び炭素を含む膜)、SiOC膜(シリコン、酸素及び炭素を含む膜)、SiCOH膜(シリコン、炭素、酸素及び水素を含む膜)、SiCN膜(シリコン、炭素及び窒素を含む膜)、ポーラスシリカ膜、ポーラスメチルシルセスキオキサン膜、ポリアリレン膜及びSiLK(登録商標)膜あるいはフロロカーボン膜よりなる群から選択される1つ以上の膜よりなることとしてもよく、SiOC膜のような無機膜と、ポリアリレンのような有機膜と、を積層したハイブリッド構造としてもよい。また材料の構造としてはデンス膜であってもよいし、細孔を有するポーラス膜であってもよい。配線性能の向上のため、比誘電率kの値を低くしたこのような材料からなる膜をLow−k膜と呼び、さらに比誘電率kの値を低くした材料からなる膜をUltra Low−k:ULK膜と呼ぶ。
【0031】
(ウェハの処理)
先ず、図1(b)に示すように、犠牲膜16を利用した例えばデュアルダマシン法によって、トレンチの溝21aとビアホール21bとからなる凹部21をエッチングにより形成する。このエッチングは、例えば公知の平行平板型のプラズマ処理装置において、処理ガス例えばCFガス及びOガスなどをプラズマ化して行われる。次いで、例えば上記のプラズマ処理装置において、例えばOガスなどのプラズマをウェハWに供給してアッシング処理などを行うことによって犠牲膜16を除去する。ここで、ビア底に残っているCu拡散バリア兼エッチングストップ膜14をエッチング処理によって除去し、下層側の配線層10の銅配線13の表面を露出させる。
【0032】
その後、上記のエッチング処理やアッシング処理により凹部21内に付着した残渣を除去するために、例えばAr(アルゴン)ガスのプラズマを用いたドライクリーニングを行う。また、このウェハWの側面や裏面には、同様に残渣が付着しているので、例えばこのウェハWをこれらのドライプロセスの半導体製造装置から搬出して大気中を搬送し、別途用意されたウェットプロセスの半導体製造装置に搬入して例えば弗酸(HF)溶液(=弗化水素酸)に浸析してウェット洗浄を行う。上述の工程を経ることで、銅配線13の露出面は、エッチング工程におけるダメージ、洗浄工程におけるダメージ、そして大気搬送されることによる大気中酸素との接触、にさらされることとなり、当該露出面が酸化されて銅酸化物13aが生成する。
【0033】
ここで、層間絶縁膜としては上述したようにLow−k膜やULK膜が用いられるが、この層間絶縁膜にも着目すると、エッチングやアッシング、洗浄工程においてプラズマや薬液にさらされることにより、ダメージ(分解や変質)を受ける。例えば、SiOC膜は酸素プラズマにさらされることにより、膜中のSi−CH基が分解してSi−OH基を生成する。このSi−OH基は吸湿性が高く、k値を上げる原因となったり、バリアメタルの被覆性を悪化させたりしてCu拡散バリア機能を低下させる。
図2(a)は、この時の銅酸化物13a及び凹部21の様子を模式的に示した図であり、実際の凹部21のアスペクト比は例えば2〜5程度となっている。尚、同図において、既述のエッチングストップ膜14、24については省略しており、また以下に説明する図2(b)〜(d)についても同様にエッチングストップ膜14、24については省略している。
【0034】
そして、ウェハWを再度ドライプロセスの半導体製造装置内に搬入し、このウェハWに対して還元剤例えば有機酸であるカルボン酸例えば蟻酸(HCOOH)の蒸気を供給して、銅酸化物13aの還元処理を行う。この処理により、図1(c)及び図2(b)に示すように、銅酸化物13aが以下に示す反応式に従って還元されることにより、あるいは蟻酸の化学的なエッチング作用により、凹部21の底面には金属銅が露出する。
(反応式)
CuO+HCOOH→2Cu+HO+CO
尚、このドライプロセスの半導体製造装置内における一連の処理においては、ウェハWは真空雰囲気において搬送される。
【0035】
次に、このウェハWを例えば200℃に加熱すると共に、自己形成バリア用の金属である第2の金属例えばマンガン(Mn)を含み、酸素を含まない前駆体(プリカーサ)である有機金属化合物例えば(EtCp)Mn(ビスエチルシクロペンタジエニルマンガン)の蒸気を例えばHガスなどのキャリアガスと共にウェハWに供給する。この有機金属化合物は、加熱中に酸素に触れると分解し、またマンガンは酸素と強く結合しやすく炭素とも結合しやすい性質を持っているので、図2(c)に示すように、有機金属化合物あるいはマンガンがシリコン酸化膜15及びエッチングストップ膜14、24に含まれる成分の一部である酸素又は炭素と反応して、もしくはシリコン酸化膜15及びエッチングストップ膜14、24の表面近傍の吸着水分等と反応して例えば酸化マンガン(MnOx(x:任意の正数))又は炭化マンガン(MnCx(x:任意の正数))又は酸化炭化マンガン(MnCxOy(x、y:任意の正数))25となり、当該シリコン酸化膜15及びエッチングストップ膜14、24に付着していく。一方、銅配線13の露出面においては、既述の還元処理により酸素が除去されているので、この銅配線13の表面には有機金属化合物が付着しにくくなり、又は付着したとしても分解しにくくなる。従って、短時間のうちには銅配線13の表面には金属状のマンガン及び酸化マンガン(又は炭化マンガン又は酸化炭化マンガン)25のいずれについても付着しにくい傾向となり、酸素又は炭素を含むシリコン酸化膜15及びエッチングストップ膜14、24にだけ選択的に酸化マンガン(又は炭化マンガン又は酸化炭化マンガン)25が付着する傾向となる。
【0036】
上記のように気体状の原料を用いているので、この原料がウェハWの近傍において均一に拡散し、従ってこの処理を所定の時間例えば5分程度続けることにより、シリコン酸化膜15及びエッチングストップ膜14、24の露出面が酸化マンガン(又は炭化マンガン又は酸化炭化マンガン)25によって一様に覆われていき、図1(d)、図2(d)に示すように、自己形成バリア膜であるバリア膜26が形成される。このバリア膜26は、凹部21に埋め込まれる後述の金属銅27からシリコン酸化膜15への例えば銅などの金属の拡散を抑えるための膜である。
【0037】
ここで、この酸化マンガン(又は炭化マンガン又は酸化炭化マンガン)25は不動態であり、化合物として安定であることから非常に反応性が低いという特徴(パッシベーション性)を有する。このパッシベーション性により、酸化マンガン堆積反応にセルフリミットがかかるため、酸化マンガン25の膜厚は一定以上に増加しない。より詳しく述べると、一度堆積した酸化マンガン(又は炭化マンガン又は酸化炭化マンガン)25の表面に上記の有機金属化合物例えば(EtCp)Mnが拡散してきても、当該酸化マンガン(又は炭化マンガン又は酸化炭化マンガン)25は化合物の結合が強くて切れず、マンガン、炭素、酸素の拡散速度が遅くて原子の供給が途絶えるため、反応が進みにくく、また一定膜厚になると電界がかかりにくくなって物質がイオン化しにくくなることも反応を進みにくくしており、これらの状況から有機金属化合物はほとんど分解しない。またこの酸化マンガン(又は炭化マンガン又は酸化炭化マンガン)25はアモルファス構造となっており、結晶構造のような粒界を持たないことから原子の拡散経路をほとんど有しないという特徴を持つことも反応が進みにくく膜厚が増加しない要因と考えられる。そのため、例えば1層のバリア膜26が成膜されると、それ以上には膜厚がほとんど増えないので、このバリア膜26は、膜厚が例えば2〜5nm程度の極めて薄い層となる。
【0038】
また、上述したようにエッチングやアッシング、洗浄工程においてプラズマや薬液にさらされることにより、層間絶縁膜(特にLow−k膜やULK膜になるほど)はダメージ(分解や変質)を受けていることが多い。このダメージの修復にも本プロセスは有効である。例えば、酸素プラズマにさらされたSiOC膜は、膜中のSi−CH基が分解してSi−OH基を生成するが、MnはCよりもOと結びつき易い傾向を持つため、ダメージによって生成したSi−OH基と優先的に反応する。よって、Si−OH基が少なくなるので、SiOC膜の吸湿性が高くなったり、k値が上がったり、バリアメタルの被覆性を悪化させたりしてCu拡散バリア機能を低下させることを回避させることが期待できる。
【0039】
さらに、CVD反応としては供給律速よりもむしろ反応律速に近い条件でのプロセスと言えるので、シリコン酸化膜15及びエッチングストップ膜14、24に対するバリア膜26の段差被覆性(ステップカバレージ)が極めて高くなる。CVD反応として供給律速に近い条件においても、酸化マンガン25の堆積反応にセルフリミットがかかるため形成バリア膜26の膜厚均一性が高くなり、また良好な段差被膜性を得ることが可能である。
【0040】
次に、マンガンの有機金属化合物を排出した後、加熱されたウェハWに対して銅の原料例えばベータジケトン銅錯体であるCu(hfac)TMVSの蒸気をキャリアガス例えばHガスと共に供給する。この銅錯体は、ウェハWの表面において分解して金属銅27となり、図1(e)に示すように、凹部21内を含むウェハWの表面に堆積する。その後、CMP(Chemical Mechanical Polishing)により余剰の銅金属及び上面側のバリア膜26が除去されて、上層側の配線層20が形成される。
【0041】
なお、金属銅27を堆積した後、必要に応じて熱処理(アニール)工程を施すようにしてもよい。熱処理(アニール)工程を施す場合であっても、従来に比べて低温、短時間のアニール工程で済ませることができると期待できる。その理由は、CVD工程において既に熱を加えていることと、バリア膜の形成に必要最低限のマンガン(Mn)のみを堆積していることから、アニールによって余剰のマンガン(Mn)を拡散させる必要性が無いためである。
【0042】
熱処理(アニール)を行う場合には、上記金属銅27を堆積したウェハWを例えば所定の濃度の酸素含有ガスの雰囲気の処理容器内で所定のプロセス温度、例えば100〜450℃程度に加熱し、これによりシリコン酸化膜15と金属銅27との境界部分に、自己整合的に酸化マンガン25からなるバリア膜26を確実に形成する。なお、熱処理(アニール)時には上述したように処理容器内に酸素等(酸素供給手段等は図示せず)を供給する際に、酸素分圧を例えば10ppb程度又はそれ以下にコントロール可能な構成としてもよい。
【0043】
(装置構成)
次に、上記の半導体装置の製造方法に用いられる半導体製造装置について、図3〜図5を参照して説明する。
図3は、例えばマルチチャンバシステムなどと呼ばれる半導体製造装置であり、同図中手前側から順に、大気雰囲気である第1の搬送室72、真空雰囲気と大気雰囲気とを切り替えてウェハWを待機させるための例えば左右に並ぶロードロック室73a、73b及び真空搬送室モジュールである第2の搬送室74がゲートGを介して気密に接続されている。第1の搬送室72の正面側には、複数枚例えば25枚のウェハWが収納された密閉型のキャリア1が載置されるロードポート71が横方向に例えば3カ所に設けられている。また、第1の搬送室72の正面壁には、ロードポート71に載置されたキャリア1が接続されて、このキャリア1の蓋と共に開閉されるゲートドアGTが設けられている。この第1の搬送室72の側面には、ウェハWの向きや偏心の調整を行うためのアライメント室77が接続されている。
【0044】
第2の搬送室74には、後述の蟻酸処理モジュール3、Cu−MnOxCVDモジュール5及びプラズマ処理装置6がゲートGを介して夫々2基ずつ気密に接続されており、この第2の搬送室74内は、既述の銅配線13が酸化しないように、例えば真空雰囲気となるように設定されている。
第1の搬送室72及び第2の搬送室74には、それぞれ基板搬送手段である第1の搬送手段75及び第2の搬送手段76が設けられている。第1の搬送手段75は、ロードポート71、ロードロック室73及びアライメント室77の間においてウェハWの受け渡しを行うための搬送アームであり、鉛直軸回りに回転自在、進退自在及びロードポート71の並びに沿って移動自在に構成されている。第2の搬送手段76は、ロードロック室73と蟻酸処理モジュール3、Cu−MnOxCVDモジュール5及びプラズマ処理装置6との間でウェハWの受け渡しを行うための搬送アームであり、鉛直軸回りに回転自在、進退自在及び第2の搬送室74内をロードポート71側から見て手前側と奥側との間において移動自在に構成されている。
【0045】
続いて、既述の前処理モジュールである蟻酸処理モジュール3について図4を参照して説明する。図4中31は、例えばAl(アルミニウム)からなる真空チャンバをなす処理容器であり、31aはウェハWの搬出入を行うための搬送口である。この処理容器31の底部には、ウエハWを載置する載置台32が設けられている。この載置台32の表面部には、ウェハWを静電吸着するために、誘電体層33内にチャック電極34を埋設してなる静電チャック35が設けられており、このチャック電極34に図示しない電源部からチャック電圧が印加されるようになっている。尚、同図中Gはゲートである。
【0046】
また、載置台32の内部には加熱手段であるヒータ36が設けられており、静電チャック35に載置されたウエハWを所定の温度例えば200℃に加熱できるようになっている。この載置台32には、第2の搬送手段76との間でウェハWの受け渡しを行うための昇降ピン37が載置面から出没自在に設けられている。前記昇降ピン37は、処理容器31の下方側の支持部材38を介して駆動部39に連結されており、この駆動部39により昇降するように構成されている。
処理容器31の上部には、載置台32に対向するようにガスシャワーヘッド41が設けられており、このガスシャワーヘッド41における下面には、多数のガス供給孔42が形成されている。また、ガスシャワーヘッド41の上面側には、既述の銅酸化物13aを還元するための還元剤例えば有機酸であるカルボン酸例えば蟻酸の蒸気を供給するための第1のガス供給路43の一端側が接続されている。
【0047】
第1のガス供給路43の他端側は、バルブV1、気体流量調整部であるマスフローコントローラM1及びバルブV2を介して還元手段または除去手段をなす還元剤供給源45に接続されている。バルブV2とマスフローコントローラM1との間には、バルブV6が介設された配管43aにより排気手段43bが接続されている。この排気手段43bにより、還元剤供給源45の交換時に配管(第1のガス供給路43)に混入するガス(主に大気)を除去するように構成されている。この還元剤供給源45は、例えば外側にヒーター48が設けられたステンレス製の貯留容器46を備えており、この貯留容器46内には、例えば液体状の還元剤が貯留されている。この貯留容器46には、一端側が当該貯留容器46内の還元剤の液面よりも下方側にて開口するキャリアガス供給路49が接続されており、このキャリアガス供給路49の他端側は、バルブV7、マスフローコントローラM3及びバルブV5を介して希釈ガス例えばAr(アルゴン)ガスを供給するための希釈ガス供給源47に接続されている。従って、このヒーター48により液体状の還元剤が気化されて、希釈ガスをキャリアガスとして気体状の還元剤がガスシャワーヘッド41に供給されるように構成されている。
【0048】
マスフローコントローラーM3とバルブV7との間には、バルブV8が介設された配管43cにより排気手段43dが接続されている。この排気手段43dにより、還元剤供給源45の交換時に配管(キャリアガス供給路49)に混入するガス(主に大気)を除去するように構成されている。上述の蟻酸の供給方式はバブリング方式と呼ばれるものであるが、蟻酸は比較的高い蒸気圧を持つことから、貯留容器46をヒーター48で加熱して得られた気体状の還元剤をマスフローコントローラーM1で直接流量制御してガスシャワーヘッド41に供給するようにしてもよい。
【0049】
また、ガスシャワーヘッド41には、第2のガス供給路44の一端側が接続されており、この第2のガス供給路44の他端側は、バルブV3、マスフローコントローラM2及びバルブV4を介して既述の希釈ガス供給源47に接続されている。このガスシャワーヘッド41内において、既述の気体状の還元剤と希釈ガスとが混合されて、この混合ガスがガス供給孔42から処理容器31内に供給される。尚、蟻酸の接触する部位である処理容器31、ガスシャワーヘッド41、第1のガス供給路43、バルブV1、マスフローコントローラM1、バルブV2には、ヒーター40が設けられており、この蟻酸処理モジュール3においてウェハWの処理を行う時には、蟻酸が凝縮しないように加熱される。
【0050】
処理容器31の底面には、排気管31Aの一端側が接続されており、この排気管31Aの他端側には、真空排気手段である真空ポンプ31Bが接続されている。処理容器31内の圧力は、この排気管31Aに設けられた図示しない圧力調整機構により所定の圧力に維持できるようになっている。
【0051】
次に、図5を参照しながら第1の金属配線形成モジュールを兼用するバリア膜形成モジュールであるCu−MnOxCVDモジュール5について説明する。このCu−MnOxCVDモジュール5は、処理容器50を備えており、処理容器50内には、ウエハWを水平に載置するためのステージ51が設けられている。このステージ51内には、ウエハWの加熱手段をなすヒータ51aが設けられている。また、ステージ51には、昇降機構51bにより昇降自在な3本の昇降ピン51c(便宜上2本のみ図示)が突没するための図示しない孔部が設けられており、昇降ピン51cを介して第2の搬送手段76とステージ51との間でウエハWの受け渡しが行われる。
【0052】
処理容器50の底部には排気管52aの一端側が接続され、この排気管52aの他端側には、バルブ58a、TMP(Turbo Molecular Pump)53a及びバルブ58bを介して真空ポンプ(DP(Dry Pump))53bが接続されている。真空ポンプ53bの下流側には、図示しない除害装置が接続されており、排気されてきたガスを無害化して系外に排出するように構成されている。バルブ58aの上流側における排気管52aには、バイパスライン52bの一端側が接続されており、このバイパスライン52bの他端側は、バルブ58cとAPC(Auto Pressure Controller)58dとを介して、バルブ58bと真空ポンプ53bとの間における排気管52aに接続されている。
【0053】
また、バイパスライン52bと真空ポンプ53bとの間における排気管52aには、排気管52a、バイパスライン52b内を通流する処理ガス例えば水素などの爆発を防止するために、希釈用のガス例えば窒素を供給するための不活性ガスパージライン52cが接続されている。成膜プロセスを行っている時には、バルブ58aを閉じてバルブ58cを開けて、APC58dにより処理容器50内の圧力を制御しながらバイパスライン52bを経由して処理ガスが希釈ガスと共に排気され、成膜プロセスを行っていない時にはバルブ58a、バルブ58bを開けてバルブ58cを閉じて、TMP53aを介して処理容器50内が排気される。このTMP53aを用いて処理容器50内を排気することで、処理容器50内の残留ガスを低減させ、質の良い真空度を保つことができる。また、処理容器50の側壁には、ゲートバルブGにより開閉される搬送口54が形成されている。
【0054】
処理容器50の天井部には、ステージ51に対向するようにガスシャワーヘッド55が設けられている。ガスシャワーヘッド55は、互いに区画されたガス室56A,56Bを備え、これらガス室56A,56Bに供給されたガスは夫々ガス供給孔57A,57Bから処理容器50内に供給される。
ガスシャワーヘッド55の上面には、銅(Cu)の原料ガスをガス室56Aに導入するための銅原料供給路61Aの一端側と、マンガン(Mn)の原料ガスをガス室56Bに導入するためのマンガン原料供給路61Bの一端側と、が接続されている。これらの銅原料供給路61A及びマンガン原料供給路61Bには、内部を通流する原料の蒸気が凝縮しないように、ヒーター59が設けられている。
【0055】
銅原料供給路61Aの他端側には、液体状の銅原料を気化させるための例えばヒータを備えたベーパライザ65と、液体マスフローコントローラやバルブを含む流量調整部64Aと、バルブV10と、を介して第1の金属配線形成手段である銅原料貯留部62Aが接続されている。バルブV10と流量調整部64Aとの間には、バルブV11が介設された配管60aにより排気手段70aが接続されている。この排気手段70aにより、銅原料貯留部62Aの交換時に配管(銅原料供給管61A)に混入するガス(主に大気)を除去するように構成されている。銅原料貯留部62Aには、銅原料である銅の有機金属化合物例えばベータジケトン銅錯体であるCu(hfac)TMVSが液体の状態で貯留されている。
【0056】
銅原料貯留部62Aには、バルブV12を備えた気体供給管61Cを介して加圧部63Aが接続されており、この加圧部63Aから供給されたHeやArガス等の不活性ガスによって銅原料貯留部62A内を加圧することにより、液体状の銅原料をベーパライザ65に向けて押し出すことができるようになっている。また、この加圧部63AとバルブV12との間には、バルブV13が介設された配管60bにより排気手段70bが接続されている。この排気手段70bにより、銅原料貯留部62Aの交換時に配管(気体供給管61C)に混入するガス(主に大気)を除去するように構成されている。
【0057】
ベーパライザ65には、流量調整部67Aが介設されたキャリアガス導入管68Aにより、例えばHガスなどのキャリアガスが貯留されたキャリアガス供給源66Aが接続されている。このベーパライザ65では、例えばキャリアガスを加熱して、このキャリアガスと既述の液体状の銅原料とを接触混合させて当該銅原料を気化させ、銅原料の蒸気をガス室56Aに供給するように構成されている。
【0058】
マンガン原料供給路61Bの他端側(上流側)には、例えば希釈部69と流量調整部64BとバルブV14とを介して、マンガンを含み、酸素を含まない有機金属化合物の蒸気をウェハWに供給する手段であるマンガン原料貯留部62Bが接続されており、このマンガン原料貯留部62B内には、マンガンの有機金属化合物例えば(EtCp)Mn(ビスエチルシクロペンタジエニルマンガン)が液体の状態で貯留されている。バルブV14と流量調整部64Bとの間には、バルブV15が介設された配管60cにより排気手段70cが接続されている。この排気手段70cにより、マンガン原料貯留部62Bの交換時に配管(マンガン原料供給路61B)に混入するガス(主に大気)を除去するように構成されている。このマンガン原料貯留部62Bの周囲には、ヒーター83が設けられており、マンガン原料貯留部62B内の原料を例えば80℃に加熱できるように構成されている。
【0059】
マンガン原料貯留部62Bには、内部の液体材料の液面よりも下方側にて開口するように、例えば図示しないヒーターが設けられたキャリアガス供給路80の一端側が接続されている。このキャリアガス供給路80の他端側には、バルブV16及び流量調整部81を介して例えばHガスなどのキャリアガスが貯留されたキャリアガス供給源66Bが接続されており、ヒーター83で加熱されて気化されたマンガン材料がこのキャリアガスと共に希釈部69に供給されるように構成されている。バルブV16と流量調整部81との間には、バルブV17が介設された配管60dにより排気手段70dが接続されている。この排気手段70dにより、マンガン原料貯留部62Bの交換時に配管(キャリアガス供給路80)に混入するガス(主に大気)を除去するように構成されている。
【0060】
希釈部69には、図示しないヒーターが設けられた希釈ガス路84の一端側が接続されており、この希釈ガス路84の他端側には、流量調整部85を介して既述のキャリアガス供給源66Bが接続されている。この希釈部69において、原料ガスが所定の濃度に希釈されてガス室56Bに供給されるように構成されている。
【0061】
プラズマ処理装置6は、既述のように平行平板型の処理装置であり、図6に概略的に示すと、処理容器101内の下部電極を兼用する載置台102上にウェハWを載置して、載置台102に対向するように設けられ、上部電極を兼用するガスシャワーヘッド103から処理ガス供給路104を介して処理容器101内に処理ガスを供給し、上部電源105からプラズマ発生用の高周波を供給すると共に、下部電源106からイオンをウェハWに引き込むためのバイアス用高周波を供給することによって、処理ガスをプラズマ化したプラズマによりウェハWに対してプラズマ処理を行うものである。尚、同図中107は排気管、108は真空ポンプ、109は搬送口、Gはゲートである。
【0062】
既述の図3に示すように、この半導体製造装置には、例えばコンピュータからなる制御部2Aが設けられている。この制御部2Aはプログラム、メモリ、CPUからなるデータ処理部などを備えており、前記プログラムには制御部2Aから半導体製造装置の各部に制御信号を送り、既述の各ステップを進行させるように命令(各ステップ)が組み込まれている。また、例えばメモリには処理圧力、処理温度、処理時間、ガス流量または電力値などの処理パラメータの値が書き込まれる領域を備えており、CPUがプログラムの各命令を実行する際これらの処理パラメータが読み出され、そのパラメータ値に応じた制御信号がこの半導体製造装置の各部位に送られることになる。このプログラム(処理パラメータの入力操作や表示に関するプログラムも含む)は、コンピュータ記憶媒体例えばフレキシブルディスク、コンパクトディスク、ハードディスク、MO(光磁気ディスク)などの記憶部2Bに格納されて制御部2Aにインストールされる。
【0063】
(ウェハの流れ)
先ず、例えば既述のプラズマ処理装置6などにおいて予めウェハWにプラズマ処理を行ってエッチングやアッシングにより凹部21を形成した後、例えばウェット洗浄を行う。次いで、図示しない搬送手段によりこのウェハWが格納されたキャリア1を半導体製造装置に搬送して、ロードポート71に載置する。その後、キャリア1内のウエハWを第1の搬送室72を介してアライメント室77に搬送し、向きや偏心の調整を行った後、ロードロック室73に搬送する。このロードロック室73内の圧力を調整して、ウエハWを第2の搬送室74を介して蟻酸処理モジュール3に搬入する。
【0064】
次いで、ウエハWを載置台32上に載置して、処理容器31内を所定の真空度例えば100〜500Pa(0.75〜3.75Torr)程度に真空引きすると共に、ウエハWを所定の温度例えば150〜300℃程度に加熱する。そして、気体状の還元剤例えば蟻酸(及びキャリアガス)を夫々所定の流量例えば夫々10〜100sccm、0〜100sccmでガスシャワーヘッド41内に供給する。また、希釈ガスを所定の流量例えば0〜200sccmでガスシャワーヘッド41内に供給すると、ここで気体状の蟻酸と希釈ガスとが混合されて、この混合ガスがウエハWに供給される。そして、既述のように、この蟻酸により銅酸化物13aが還元あるいはエッチングされていく。この還元処理を所定の時間例えば1〜10分程度行った後、還元剤、キャリアガス及び希釈ガスの供給を停止し、処理容器31内を真空排気して、ウェハWを第2の搬送室74に搬出する。
【0065】
続いて、ウェハWをCu−MnOxCVDモジュール5に搬送し、処理容器50内のステージ51上に載置すると共に、ウェハWを所定の温度例えば100〜500℃程度、より具体的には200℃に加熱する。そして、マンガンの有機金属化合物が所定の流量例えば2〜10sccm程度、より具体的には7sccm程度となるようにキャリアガス(及び希釈ガス)を所定の流量例えば夫々10〜100sccm程度、より具体的には25sccm、(0〜100sccm程度)に調整し、これらのガスを希釈部69において混合し、この混合ガスをウェハWに所定の時間例えば5分以上供給することによって、既述のバリア膜26が成膜される。尚、バリア膜26が成膜されるように成膜条件例えば成膜時間を調整することによって、ウェハWを加熱しないようにしても良い。その後、上記の混合ガスの供給を停止して処理容器50内を真空排気した後、気体状の銅の原料を所定の流量でウェハWに供給し、凹部21を含むウェハWの表面に金属銅27を成膜する。その後、ガスの供給を停止して処理容器50内を真空排気して、第2の搬送室74、ロードロック室73及び第1の搬送室72を介してウェハWをキャリア1に搬出する。
【0066】
上述の実施の形態によれば、例えばエッチング処理により凹部21を形成した後、このエッチング処理や洗浄などによって酸化した銅配線13の表面の銅酸化物13aを蟻酸を用いて還元あるいはエッチングし、当該銅配線13の表面の酸素を除去している。そして、ウェハWの表面に対して酸素を含まず、また酸素と反応性の高いマンガンの有機金属化合物をウェハWに供給することにより、酸素を含むシリコン酸化膜15及びエッチングストップ膜14、24においては酸化マンガン25を生成させ、一方酸素を含まない銅配線13の表面においては酸化マンガン25を生成させないようにしている。そのために、銅配線13の表面に銅を露出させたまま、シリコン酸化膜15及びエッチングストップ膜14、24に対して、選択的にバリア膜26を形成することができる。
【0067】
また、バリア膜26を形成した後、このウェハWに対して銅の原料を供給して凹部21を含むウェハWの表面に金属銅27を成膜しており、またこのような一連の処理を真空雰囲気において行うようにしているので、銅配線13と金属銅27との間には、酸化マンガン25や銅の自然酸化膜などの絶縁物が介在していない。従って、配線抵抗の上昇を抑えることができる。
更に、バリア膜26の表面つまり金属銅27の内部には余分な金属マンガンが含まれていないか、あるいは極めて少なくなっているので、配線抵抗の上昇を抑えることができ、またマンガンを排出するためのアニール処理を省略することができるので、スループットを高めることができる。
【0068】
なお、金属銅27を堆積した後、必要に応じて熱処理(アニール)工程を施すようにしてもよい。熱処理(アニール)工程を施す場合であっても、従来に比べて低温、短時間のアニール工程で済ませることができると期待できる。その理由は、CVD工程において既に熱を加えていることと、バリア膜の形成に必要最低限のマンガン(Mn)のみを堆積していることと、からアニールによって余剰のマンガン(Mn)を拡散させる必要性が無いためである。
【0069】
熱処理(アニール)を行う場合には、ウェハWを載置する載置台を内部に備えた処理容器、ウェハWを加熱するための加熱手段及び処理容器内を酸素含有ガス雰囲気に保つ手段例えばガス供給路など(いずれも図示せず)が設けられたアニールユニット100を既述の第2の搬送室74に気密に接続するようにしても良い(図7)。この場合には、上記金属銅27を堆積したウェハWを例えば所定の濃度の酸素含有ガスの雰囲気中で所定のプロセス温度、例えば100〜450℃程度に加熱し、これによりシリコン酸化膜15と金属銅27との境界部分に、自己整合的に酸化マンガン25からなるバリア膜26を確実に形成する。なお、熱処理(アニール)時には上述したように処理容器内に酸素等(酸素供給手段についても図示せず)を供給する際に、酸素分圧を例えば10ppb程度又はそれ以下にコントロール可能な構成としてもよい。
【0070】
このようにバリア膜26を形成することにより、後述の実施例にも示すように薄い膜厚であっても、銅に対して極めて高いバリア性能を得ることができるので、この後のデバイス形成工程において、例えば400℃程度の熱処理工程にさらされた場合でも、シリコン酸化膜15への銅の拡散が抑えられるため、リーク電流の増大を抑えることができる。また、上記のように低温例えば500℃未満でバリア膜26を形成することにより、当該バリア膜26がアモルファス状になるので、酸化マンガン25の粒界がなくなり、従って銅の拡散経路が閉ざされることから、上記のように薄膜であっても極めて高いバリア性能を得ることができると考えられる。
【0071】
また、このバリア膜26の成膜を酸化物(酸素を含む膜)上におけるインキュベーション時間(インキュベーション時間とは、原料ガスをウェハWに供給し始めてから、ウェハW上に反応物が堆積し始めるまでの時間のことを言う)以上、例えば成膜温度が200℃の場合においては1分以上といった所定の時間以上行うことにより、シリコン酸化膜15及びエッチングストップ膜14、24の表面上においては、付着したマンガンの有機金属化合物が分解して酸化マンガン25として付着する反応が起こり易くなり、一方銅配線13(酸素を含まない膜)の表面においては、付着したマンガンの有機金属化合物が分解して酸化マンガン25として付着する反応に至らないため、既述のように選択的にバリア膜26を形成できる。ただし、バリア膜26の成膜時間を金属上におけるインキュベーション時間以上、例えば成膜温度が200℃の場合においては60分以上といった所定の時間以上行ってしまうと、酸化物上と金属上のいずれにおいても付着したマンガンの有機金属化合物が分解して酸化マンガン25として付着する反応が起こるため、選択的なバリア膜26の成膜とはならない。
【0072】
このようなバリア膜26の膜厚としては、1〜7nmが好ましく、より好ましくは1.5nm〜4nm、更に2nm〜3nmであることが好ましい。なお、既述の特許文献2に記載された内容によると、堆積したマンガン(Mn)の膜厚は2nmと記載されている。しかし、金属マンガン膜が酸化して酸化マンガン膜に変化するとその膜厚が約2.7倍に増加するため、2nmのマンガン膜が酸化して酸化マンガンとなった場合は、膜厚としては5.5nmのバリア膜に相当する。
【0073】
上記のように、気体状の原料を用いたCVD法によりバリア膜26を成膜することによって、凹部21の開口寸法が狭い場合であっても段差被覆性が高くなり、バリア膜26を均質に形成することができる。また、ウェハW上に例えば凹部21の開口幅にばらつきのあるパターンが混在していても、このようなバリア膜26を形成することができる。このことから、銅多層配線において、ローカル配線からグローバル配線までこのバリア膜26を適用できる。また、銅多層配線の微細化が可能となるので、デバイスの動作速度を向上させることができると共に、チップサイズを小さくできるので、1枚のウェハWから得られる半導体デバイスチップ(例えばロジック、メモリー等)の個数が多くなり、その分デバイスのコストを下げることができる。
【0074】
更に、デバイスの動作速度が向上するので、このデバイスを備えた電子計算機(例えば電子計算機、通信機器、情報端末、携帯電話等)の計算速度又は情報処理速度を高めることができる。更にまた、上記のバリア膜26により、金属配線の銅の拡散を抑えることができるので、層間絶縁膜のリーク電流を抑えることができ、配線の信頼性が向上するため、このデバイスを備えた電子機器の寿命を延ばすことができる。また、必要な計算をより小さい回路でおこなうことができるので、携帯電話などの小型化が要求される情報端末に利用することができる。
【0075】
更にまた、一度金属マンガンを成膜してその後酸化させる方法ではなく、直接酸化マンガンであるバリア膜26を形成しているので、既述のように酸素の有無に応じてバリア膜26を選択成長させることができ、またバリア膜26の形成後直ちに銅に対するバリア機能が発揮されるので、薄い膜厚であっても、極めて高いバリア性能を得ることができる。尚、このバリア膜26には、後述の実施例に示すように、酸素の他に、C(炭素)が含まれていても良い。
【0076】
上記のバリア膜26の成膜に用いられる原料としては、酸素を含まない有機金属化合物が好ましく、環状の炭化水素を含んでいることが好ましい。また、上記のように酸素の存在により分解する化合物であることが好ましい。そのような原料としては、例えばCpMn(ビスシクロペンタジエニルマンガン)、(MeCp)Mn(ビスメチルシクロペンタジエニルマンガン)、(i−PrCp)Mn(ビスイソプロピルシクロペンタジエニルマンガン)などを用いても良いし、このような原料の複数を組み合わせて用いても良い。また、酸素を含んでいても、分解後に酸素が単独でマンガンと反応しない化合物例えばCOなどであれば、例えば(MeCp)Mn(CO)(トリカルボニルメチルシクロペンタジエニルマンガン)などを用いても良い。キャリアガスとしては、H以外にも還元性ガスあるいは不活性ガス例えばArガスなどを用いても良い。
【0077】
また、還元処理に用いる還元剤としては、蟻酸の他にも、有機酸例えば酢酸あるいは水素などを用いても良い。更に、アルゴンガスを用いたスパッタ法により、銅酸化物13aを物理的に除去するようにしても良い。
【0078】
更に、上記の例では、バリア膜26を形成した後、別途金属銅27を成膜するようにしているので、これらの処理を夫々別の処理容器50において行うようにしても良い。また、バリア膜26と金属銅27との密着性を強くするためには、例えばバリア膜26の形成開始と共に、銅の原料の供給を開始して少しずつこの銅の原料の供給量を増やすことによって、マンガンの量に対して銅の割合が表層に向かうにつれて徐々に増加する密着層を形成するようにしても良い。この場合には、バリア膜26と金属銅27との界面が入り組んであいまいになるので、バリア膜26と金属銅27との密着性が向上する。尚、この場合において金属銅27内に含まれる余剰のマンガンの量を少なくするためには、銅の原料の供給を増やす一方でマンガンの供給量を徐々に減らして行くことが好ましい。なお、上述の密着層の状態としては、CuMn合金、又はCu+MnOx(x:任意の正数)混合物、又はCu+MnCx(x:任意の正数)混合物、又はCu+MnCxOy(x、y:任意の正数)混合物、又はCuMnxOy(x、y:任意の正数)化合物、又はCuMnxCy(x、y:任意の正数)化合物、又はCuMnxCyOz(x、y、z:任意の正数)化合物のいずれか、もしくはこれらの混合物になっていると考えられる。
【0079】
また、バリア膜26を形成した後、例えばスパッタ法により銅のシード層を成膜し、上記の金属銅27を凹部21に埋め込むようにしても良い。この場合には、例えば第2の搬送室74にスパッタを行うための処理容器であるシード層形成モジュールを気密に接続し、この処理容器内に設けられたシード層形成手段によりシード層が形成される。シード層形成手段とは、処理容器内に設けられたスパッタ用の金属源(スパッタリングターゲット)に例えばDCマグネトロン法などによって作り出されたアルゴンイオンなどを衝突させてスパッタされた(=弾き出された)金属原子を基板上に堆積させることが可能なように構成されたものである。スパッタ法に拠れば、スパッタされた金属原子がバリア膜26に射ち込まれるアンカー効果によって密着性が期待できる。スパッタ方式としては、DC(直流)2極スパッタ法やRF(高周波)スパッタ法、プラズマスパッタ法、マグネトロンスパッタ法、イオンビームスパッタ法などが使用可能であり、ステップカバレージの改善のためにコリメーションスパッタ法、遠距離スパッタ法、イオン化スパッタ法を用いることができる。この場合において、スパッタにより成膜しながらウェハWを加熱又は例えば0℃以下に冷却するようにしても良い。この時、銅配線13の表面及びシード層が酸化されないように、ウェハWは真空搬送される。
【0080】
尚、上記の例ではCVD法により金属銅27を成膜したが、スパッタ法などのPVD法などでも良いし、電解めっき法あるいは無電解めっき法により金属銅27を成膜するようにしても良い。この場合にも、バリア膜26の形成後、CVD法やスパッタ法によりシード層となる金属膜例えば銅を凹部21に堆積させるようにしても良い。また、上記のバリア膜26や金属銅27の成膜方法としては、例えば熱CVD法以外にも、プラズマCVD法、光CVD法であっても良いし、またバリア膜26については例えばALD(Atomic Layer Deposition)法などであっても良い。更に、上記の例では、バリア膜26と金属銅27とを同じ処理容器50内にて成膜したが、夫々の成膜処理を異なる処理容器50内で行うようにしても良い。
【0081】
また、上記の金属銅27としては、純銅だけでなく、例えば銅を主成分とする金属やAlやAgであっても良いし、これらの金属が複数含まれていても良い。更に、既述の銅酸化物13aとしては、エッチング処理などにより生成したものとして説明したが、例えば大気搬送中に生成した場合であっても、本発明の半導体装置の製造方法を適用できる。また、銅酸化物13aが生成していない場合には、既述の還元処理を行わなくても良い。更に、銅酸化物13aが生成している場合であっても、酸化マンガン25が凹部21の側壁に選択的に生成するのであれば、銅酸化物13aを完全に除去せずに、低減させるようにしても良い。なお、ここでは酸素を含むシリコン酸化膜15等の上にマンガンの有機金属化合物を供給して成膜したバリア膜26は、MnOx(x:任意の正数)からなる酸化マンガン25として説明したが、シリコン酸化膜15のシリコンを取り込んで反応し、MnSixOy(x、y:任意の正数)になっていると言う説も有り、学会などでも議論が分かれている。よって、ここではMnOx(x:任意の正数)とMnSixOy(x、y:任意の正数)を含めたものとして酸化マンガン25という表現をしている。
【0082】
また、ここでは下地膜である層間絶縁膜としてシリコン酸化膜15を用いた場合を例にとって説明したが、これに限定されず、有機膜やポーラス膜など上述のLow−k膜やULK膜を用いてもよい。
また、ここでは第2の金属としてマンガン(Mn)を用いた場合を例にとって説明したが、これに限定されず、他の金属、例えばMg,Al,Ti,V,Cr,Ni,Ge,Y,Zr,Nb,Tc,Rh,Pd,Sn,Re,Ptよりなる群から選択される1以上の金属を用いてもよい。従って、既述の有機化合物としては、CpMetal[=Metal(C],(MeCp)Metal[=Metal(CH],(MeCp)Metal[=Metal((CH],(EtCp)Metal[=Metal(C],(i−PrCp)Metal[=Metal(C],(t−BuCp)Metal[=Metal(C],Metal(DMPD)(EtCp)[=Metal(C11)](ここで、Metalは上記の第2の金属元素をあらわす)よりなる群から選択される1つ以上の化合物を用いるようにしても良い。
【0083】
また、ここで説明した成膜装置は単に一例を示したに過ぎず、例えば基板の加熱手段として抵抗加熱ヒータに代えてハロゲンランプ等の加熱ランプを用いるようにしてもよいし、熱処理装置は枚葉式のみならずバッチ式のものであってもよい。
更に、ここでは被処理体として半導体ウェハを例にとって説明したが、これに限定されず、ガラス基板、LCD基板、セラミック基板、プラスチック等の有機基板等にも本発明を適用することができる。
【実施例】
【0084】
以下に、本発明について行った実験について説明する。実験には、図8(a)に示すダミー用のウェハWを用いた。このウェハWは、以下のようにして作製した。先ず、シリコン基板90上にTEOS(Tetra Ethoxy Silane、別名Tetraethyl Orthosilicate)を用いたプラズマCVD法により350℃にて成膜して、膜厚100nmのシリコン酸化膜91を得た。次に、このシリコン酸化膜91の上に既述のCu−MnOxCVDモジュール5において以下の成膜条件において酸化マンガン層92を成膜した。また、このウェハWの表面に、スパッタ法により銅膜93を膜厚が100nmとなるように成膜した。その後、このウェハWに対して、銅の拡散の有無を確かめるために以下のアニール条件において熱処理を行った。そして、このウェハWに対して以下に説明する実験を行った。尚、この実験では良好なステップカバレージを必要とする実験ではなかったため、パターンの無い基板を使用した。そのため、上記のように、CVD法ではなくスパッタ法により銅膜93を形成したが、この方法によっても膜質やステップカバレージ以外の物性などは特に問題ないレベルである。
【0085】
ここで、以下に示すように酸化マンガン層92の成膜時間を30分と長くとったのは、上述したように、下地によるインキュベーション時間の差を利用して、酸化マンガン層92のCVD成膜における下地選択性をよりはっきりと示すためである。つまり、マンガンの有機金属化合物を酸素を含む膜に対して供給すると、例えば成膜温度が200℃の場合においては、1分以上になると付着したマンガンの有機金属化合物が分解して酸化マンガンとして付着し始めることが予め行った実験により分かったので、このように成膜時間を設定した。尚、このように長時間マンガンの有機金属化合物を銅に供給しても、銅表面には酸化マンガンの連続膜が形成されないことは確認済みである。
【0086】
なお、今回実施したアニール条件による熱処理は、Cu拡散バリア性能を検証するための加熱加速度試験のためにおこなったものであり、酸素雰囲気ではおこなっていない。すなわち、従来例のような、バリア膜を自己形成させると共に余剰のマンガンを拡散・排出させる目的で酸素雰囲気においておこなう熱処理とは異なっている。
【0087】
(成膜条件)
プリカーサ(原料):(EtCp)Mn
ヒーター83の設定温度:70℃
キャリアガス:H、25sccm
成膜温度:300、400、500℃
処理圧力:133Pa(1Torr)
成膜時間:30分
(アニール条件)
供給ガス:Ar、50sccm
ウェハWの加熱温度:400℃
アニール時の圧力:667Pa(5Torr)
アニール時間:20分(昇温時間)+40分(温度保持時間)
【0088】
(実験1:断面観察)
上記の3種類のウェハWの切断面をTEM(Transmission Electron Microscopy)を用いて観察した。その結果、300℃及び400℃において成膜したウェハWにおいては、図9及び図11に示すように、シリコン酸化膜91と銅膜93との間には、極めて薄い5nm程度の酸化マンガン層92が確認された。この膜は、界面が凹凸の無い滑らかな連続膜となっており、かつアモルファス状となっていて結晶粒界のような亀裂が全く見られない。また、シリコン酸化膜91と銅膜93との間には、余剰のマンガンが残留したり偏析したりしたような部分は見られていない。図示はしていないが、100℃及び200℃において成膜したウェハWにおいても上述のような実験結果を確認した。このときに得られた酸化マンガン層92の膜厚はさらに薄く、2〜3nm程度であった。
【0089】
従って、このような方法により既述のバリア膜26を形成することにより、余剰のマンガンを排出するためのアニール処理、すなわち酸素雰囲気でのアニール処理が不要になることが分かる。尚、既述の図9及び図11は、各領域の境界を判別しやすいように、実際に撮影したTEM画像を写し取って示した図である。また、図10及び図12は、夫々図9及び図11に模式的に示した図について実際に撮影されたTEM画像を示す図である。
【0090】
ところが、500℃で成膜したウェハWにおいては、アイランド状の粒成長がいくつか確認された。また、シリコン酸化膜91と銅膜93との間には、比較的結晶性の高い層、炭素の多いと考えられる層及びアモルファス層が上側からこの順番で積層されていた。このアモルファス層は、300℃及び400℃において成膜したウェハWにおいてみられた、シリコン酸化膜91と銅膜93との間に形成された、極めて薄い酸化マンガン層92に相当すると考えられる。しかし、このように成膜温度が高くなることにより、アイランド状の粒成長、すなわち異常粒成長がおこってしまうことから、酸化マンガン層92の成膜温度としては、500℃未満が好ましいことが分かる。尚、既述のように、別途行った実験により、100℃や200℃においてもこの酸化マンガン層92が成膜されることは確認済みである。
【0091】
(実験2:断面の組成マッピング)
次に、上記の各ウェハWに対して、EDX(Energy Dispersive X−ray Analysis)を用いて断面の組成分析を行った。尚、いずれのウェハWにおいても、分析のために、銅膜93の表面に接着剤を塗布してある。
300℃及び400℃で成膜したウェハWでは、図13及び図14に示すように、マンガンからの信号はシリコン酸化膜91と銅膜93との間に形成された極めて薄い層92においてのみ確認されている。このことから、この極めて薄い層92には確実にマンガンが含まれており、後述のSIMSの結果を考慮すると、酸化マンガンになっていると考えられる。また、シリコン酸化膜91の部分からはCuの信号は検出されておらず、Cuがシリコン酸化膜91に染み出している様子はみられなかった。
【0092】
このことから、酸化マンガン層92は極めて良好なCu拡散バリア性を有しており、Cuが染み出すようなピンホール(例えば結晶粒界のようなCu拡散経路)も存在していないことが確認できた。なお、図示はしていないが、100℃及び200℃において成膜したウェハWにおいても上述と同様の実験結果を確認した。また、図13及び図14についても、既述の図9及び図11と同様に、実際に得られた画像を写し取って示した図である。
一方、500℃で成膜したウェハWについては、既述のアイランド状の粒成長部分にはマンガンが多く含まれており、異常成長していることが分かった。従って、実験1において観察された現象がマンガンの異常粒成長によるものだということが再確認された。
【0093】
(実験3:膜厚方向の元素分析)
上記の各ウェハWに対して、SIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)を用いて膜厚方向にエッチングを行いながら深さ方向の元素分析を行った。また測定に際しては、表面側(図15及び図16におけるCu膜側)から膜をエッチングすると、酸化マンガン層92及びシリコン酸化膜91の成分分析中に上層のCu原子が混入することから、シリコン基板の裏面側からエッチングをおこなった。図15及び図16に示すように、300℃及び400℃で成膜したウェハWでは、上側から下側に向かうにつれて、酸化マンガン層92において銅のピークが急激に減少し、シリコン酸化膜91の上端(酸化マンガン層92の下端)ではほとんどピークが見られなかった(ここでみられているピーク値は検出限界程度の信号でノイズレベルであることから、シリコン酸化膜91内におけるCuの存在は略ゼロとみなすことができる)。
【0094】
このことから、酸化マンガン層92がこのような薄膜であっても、極めて高いバリア性能を持っていることが分かる。なお、図示はしていないが、100℃及び200℃及び500℃において成膜したウェハWにおいても上述と同様の実験結果を確認した。
また、実験2の結果に対応するように、マンガンのピークは極めてシャープとなっている。またこのマンガンのピークに重なるように、炭素のピークが確認されていることから、マンガンの有機金属化合物中に含まれていた炭素をマンガン原子が取り込んでいることが確認できた。このことから、マンガン原子による不純物スカベンジング効果が期待できるので、同様の有機金属化合物、例えばCuプリカーサ(原料)を用いてCVD成膜させたときに、Cuの有機金属化合物中に含まれている炭素や弗素などの不純物とマンガンが反応して酸化マンガン層92に取り込むことにより銅膜93中の不純物を低減させることができると期待できる。あるいは、電解めっき法や無電解めっき法によってCuを成膜させたときに、Cu膜に含まれている、めっき液由来の塩素などの不純物とマンガンが反応して酸化マンガン層92に取り込むことにより銅膜93中の不純物を低減させることができると期待できる。
【0095】
(実験4:微細孔におけるステップカバレージ観察)
上記の3種類のウェハWとは別に、図8(b)に示す、堆積膜のステップカバレージ確認のためのウェハWを用いてステップカバレージの検証をおこなった。このウェハWはシリコン基板上に膜厚510nmのプラズマTEOSからなるシリコン酸化膜91を堆積し、このプラズマTEOS膜に対して微細孔がパターニングされている。このシリコン酸化膜91の上に記述のCu−MnOxCVDモジュール5において既述の成膜条件(ただし、成膜温度は200℃及び400℃である)において酸化マンガン92を成膜した。このようにして作成したウェハWの切断面をTEM(Transmission Electron Microscopy)を用いて観察した。
【0096】
その結果、200℃及び400℃において成膜したウェハWいずれにおいても、図8(b)に示したような、直径が180nm程度、アスペクトレシオ(孔の広さと深さとから導かれる比率)が2.8程度の微小な孔パターン又は直径が125nm程度、アスペクトレシオが4.0程度の微小な孔パターンとなっているシリコン酸化膜91の表面に沿って、極めて薄い5nm程度の酸化マンガン層92が確認された。この膜は、その表面が凹凸の無い滑らかな連続膜となっていた。従って、このような方法により既述のバリア膜26を形成することにより、微小な孔パターンに対しても良好なステップカバレージで成膜が可能であることが分かる。
【0097】
(参考実験:酸化マンガンの膜厚の下地依存性確認)
本発明において用いたマンガンの有機金属化合物は、既述のように酸素が含まれている膜に対しては比較的短い時間で反応して酸化マンガン25を生成し、一方酸素が含まれていない膜に対しては比較的短い時間では反応しないという特徴がある。そこで、その特徴を確認するために、以下の参考実験を行った。
実験には、ウェハWとして以下の3種類のサンプルを用いた。また、既述のCu−MnOxCVDモジュール5において、以下の成膜条件で酸化マンガンの成膜処理を行った。その後、各サンプルに対してマンガンの付着膜厚を算出した。
【0098】
(サンプル)
1.既述のTEOSを用いたプラズマCVD法により成膜したシリコン酸化膜
2.ベアシリコンを酸化性雰囲気において熱処理を行ったシリコン酸化膜
3.未処理のベアシリコン
(成膜条件)
プリカーサ(原料):(EtCp)Mn
キャリアガス:H、25sccm
成膜温度:500℃
処理圧力:133Pa(1Torr)
成膜時間:30分
【0099】
(実験結果)
図17に示すように、酸素を含むサンプル1.2.についてはマンガンの付着量が多くなっていたが、酸素を含まないサンプル3.についてはマンガンの付着量が少なくなっていた。これにより既述のマンガンの有機金属化合物の特徴が確認された。尚、酸素を含まないサンプル3.についてもマンガンが付着していた理由としては、異常粒成長するほどに成膜温度が高いことがその一因として挙げられる。
また、同じシリコン酸化膜であっても、成膜方法の違い(サンプル1.と2.)によって、マンガンの付着量に差が生じていた。これは、成膜方法の違いによって、シリコン酸化膜中の酸素の量に差があるからではないかと考えられる。
【0100】
この実験により、既述の銅配線13において、酸素の量が極めて少なくなるように還元処理あるいはエッチング処理を行い、またこの銅配線13に自然酸化膜が形成されないようにして、更にバリア膜26の成膜処理を500℃未満の低温にて行うことによって、銅配線13の表面に酸化マンガン25が生成することを抑え、酸素を含む膜に対してバリア膜26の選択成長を行うことができると考えられる。
【0101】
(実験5:デュアルダマシン構造のサンプルへの埋め込み実験)
A.実験手順、実験条件
(1)デュアルダマシン試料
SEMATECHから図18に示すデュアルダマシン構造のサンプルを購入した。120はシリコン酸化物からなる層間絶縁膜、121はCu配線部、122はSiN膜である。
(2)CVD−Mn堆積
デュアルダマシン構造サンプルの上に、下記の条件でMnを堆積した。
成膜条件は以下の通りである。
下地:SEMATECHパターン800AZ
プリカーサ:(EtCp)Mn
プリカーサボトル内部の温度:80℃(測定方法は熱電対)
供給方式:バブリング方式
バブリングガス:H、25SCCM
基板温度:200℃
プロセス圧力:133Pa(1torr)
成膜時間:10min
(3)PVD−Cu堆積(Cap Cu堆積)
CVD−Mnを堆積したサンプルを大気暴露せず、CVD−Mnの上に、保護膜としてCuをスパッタ法で堆積した。
成膜条件は以下の通りである。
基板温度:室温
膜厚:500nm
(4)アニール
PVD−Cuを堆積した後アニールを行った。
アニール条件は以下の通りである。
ガス流量:Ar 50SCCM
基板温度:400℃
圧力:667Pa(5Torr)
時間:20分(昇温時間)+40分(温度保持時間)
(5)測定
断面観察用測定器:透過型電子顕微鏡(TEM)
元素分析用測定器:エネルギー分散型X線分光器(EDX)
【0102】
B.実験結果
図19は上述のように処理を行ったサンプルのTEM写真であり、図19(a)はビアホール及びトレンチ部分、図19(b)はビアホールの底部付近、図19(c)はビアホールの側壁からトレンチの底部に亘る領域を拡大して示している。また図20は、下層のCu配線を含む、ビアホール及びトレンチ全体を示している。
銅と層間絶縁膜(シリコン酸化膜)との界面には、膜厚3〜4nmのMn化合物膜が存在していることがわかった。このMn化合物膜の連続薄膜は層間絶縁膜の最上面、ビアホール内壁のいずれでも3〜4nmの膜厚であり、良好なステップカバレージを有する。
下層銅配線(M1−Cu)とPVD−Cu(M2−Cu)の界面に存在するMn層は連続薄膜ではなく、上下の界面がぼやけた厚さ5〜10nmの不連続な層であることが判った。
すべてのビアホール底ではないが、下層銅配線(M1−Cu)からPVD−Cu(M2−Cu)にかけて、連続したCuの結晶粒が存在する界面が存在する。即ち、下層銅配線(M1−Cu)から前記Mn層を突き抜けてビアホール内の銅に達する電気的なパスが形成されていると言える。
【0103】
以上のデータから、ダマシン構造の層間絶縁膜(シリコン酸化膜)上へのMn化合物の選択成長が可能であると示されたと言える。ここでEDXを用いてサンプルの縦断面を元素分析した結果を示しておく。図21は、測定ポイントを示すための模式図であり、測定ポイント※1、※4ではMnが検出されなかったが、測定ポイント※2、※3及び※5ではMnが検出された。従ってMnはCuの配線層の中心部にはEDXレベルでは存在しておらず、その周縁部に拡散していることが分かる。またMnの一部がビアホールの底に残留していることも伺える。更に、測定ポイント※5ではO(酸素)が検出されたことから、層間絶縁膜の表層部にMnとOとを含むバリア膜が形成されていることが分かる。
【0104】
(実験6:Cuベタ膜上へのマンガン化合物の成膜実験)
A.実験手順、実験条件
(1)基板
Bare−Si基板の上に、p(プラズマCVD)−TEOS膜が全面に形成された基板を準備した。
(2)PVD−Cu堆積(下層)
下記の条件で下層のPVD−Cuを堆積した。
膜厚:100nm
基板温度:室温
後処理:アニールなし
(3)CVD−Mn堆積
下記の条件でCVD−Mnを堆積した。成膜条件は、下地の条件を除いて実験5の(2)に記載した条件と同じである。
(4)PVD−Cu堆積(上層)
下記の条件で上層のPVD−Cuを堆積した。
膜厚:100nm
基板温度:室温
後処理:アニールなし
(5)測定
断面観察用測定器:透過型電子顕微鏡(TEM)
元素分析用測定器:エネルギー分散型X線分光器(EDX)
【0105】
B.実験結果
図22(a)は上層のPVD−Cuと下層のPVD−Cuとの積層部分について界面が中央に位置するように撮像したTEM写真、図22(b)はMn−K線シグナルを可視化したイメージ図、図22(c)は図22(a)に示す部位において界面よりも50nm程度下方側の下層のPVD−Cuの部位についてEDXにより分析した結果である。この結果から、CVD-Mn層は、両界面が不明瞭な、厚さ5〜10nmの膜として、下層のPVD−Cuと上層のPVD−Cuの界面に沿って存在していることがわかった。下層のPVD−Cuから上層のPVD−Cuにかけて、連続したCuの結晶粒が存在している。このことは、CVD−Mn膜が連続膜ではなく、不連続であり、下層銅配線からCVD−Mn膜を突き抜けて上層銅配線に達する電気的な通路が形成されていることを示している。EDXのデータから、下層Cu/上層Cuの界面の不明瞭な層と、PVD−Cu/p−TEOS界面にはMnが含まれていることがわかった。このことから、Mnの成膜中に下層のPVD−Cuに付着した(堆積した)Mnは、Cuに固溶して拡散し、Cu/p−TEOS界面に析出(偏析)したと考えられる。
【0106】
また、EDXのデータから、Cuのバルク部分(界面以外の部分)からのMn−K線シグナルはノイズレベルであり、Cuのバルク中へのマンガンの残留は少ないと考えられる。
以上の結果から、下層Cu/上層Cuの界面にCVD−Mn膜が存在していたとしても、電気的抵抗としての作用が極めて小さくなっているか、あるいはほとんど抵抗とはならないと考えられる。
この実験では銅膜の上にマンガン化合物膜が形成されないことが示された。前述の実験1,2,3ではシリコン酸化膜上にマンガン化合物膜が形成されることが示された。両者を比較すると、ダマシン構造の絶縁膜上へのマンガン化合物の選択成長が可能であることが示された。
【0107】
(実験7:成膜時間と膜厚の関係の検証実験)
A.実験手順、実験条件
(1)サンプル準備
サンプルとして、絶縁膜(p−TEOS膜)が全面に成膜された基板を準備した。
(2)CVD−Mn堆積
下記の条件でMnを堆積した。
基板温度:200℃
圧力:133Pa(1torr)
キャリアガス流量:H 25SCCM
成膜時間:0.3分(20秒)〜30分
(3)膜厚測定
測定方法:蛍光X線分析(XRF)
B.実験結果
p−TEOS膜上では、成膜時間に依存せず、成膜時間は20秒程度で十分であり、マンガン化合物の膜厚はほぼ一定である。膜厚の増加にセルフリミットがかかっている。
【0108】
(実験8:成膜時間と銅の比抵抗の関係の検証実験)
A.実験手順、実験条件
(1)サンプル準備
サンプルとして、Cu膜が全面に成膜された基板を準備した。
(2)CVD−Mn堆積
下記の条件でMnを堆積した。
基板温度:200℃
圧力:133Pa(1torr)
キャリアガス流量:H 25SCCM
成膜時間:0.3分(20秒)〜30分
(3)比抵抗測定
4端子法により、銅膜の比抵抗を測定した。
B.実験結果
図23に示すように、成膜時間が増えても比抵抗はほぼ一定である。このことは、Cu層中にMnが固溶・拡散した結果、Cu中からMnが排除されたものと推定される。既述の図22(c)の結果から、排除されたMnはCu/p−TEOS界面に偏析しているものと推定される。そのため、Cuの比抵抗が純Cu並みに低く抑えられていると考えられる。尚、Cu中にMnのような不純物があると、比抵抗が高くなる。
以上の結果は、CVD−Mn工程はCu配線の電気抵抗上昇を引き起こさないことを示しており、半導体デバイスへの適用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の半導体装置の製造方法の一例を示す工程図である。
【図2】上記製造方法を示す模式図である。
【図3】上記製造方法を実施するための半導体製造装置の一例を示す平面図である。
【図4】上記半導体製造装置に含まれる蟻酸処理モジュールの一例を示す縦断側面図である。
【図5】上記半導体製造装置に含まれるCu−MnOxCVDモジュールの一例を示す縦断側面図である。
【図6】上記半導体製造装置に含まれるプラズマ処理装置の一例を示す縦断面側面図である。
【図7】上記の半導体製造装置にアニールユニットを適用した例を示す平面図である。
【図8】本発明の実施例に用いたウェハの構造を模式的に示す断面図である。
【図9】上記の実施例において得られた結果を模式的に示す特性図である。
【図10】上記の模式的に示した特性図について実際に撮影されたTEM画像を示す特性図である。
【図11】上記の実施例において得られた結果を模式的に示す特性図である。
【図12】上記の模式的に示した特性図について実際に撮影されたTEM画像を示す特性図である。
【図13】上記の実施例において得られた結果を示す特性図である。
【図14】上記の実施例において得られた結果を示す特性図である。
【図15】上記の実施例において得られた結果を示す特性図である。
【図16】上記の実施例において得られた結果を示す特性図である。
【図17】上記の実施例において得られた結果を示す特性図である。
【図18】上記の実施例に用いたウェハを概略的に示す縦断面図である。
【図19】上記のウェハの縦断面を撮影したTEM写真図である。
【図20】上記のウェハの縦断面を撮影したTEM写真図である。
【図21】上記のウェハの縦断面の模式図である。
【図22】この実施例にて得られた結果を示す特性図である。
【図23】上記の実施例で得られた銅膜の比抵抗を示す特性図である。
【符号の説明】
【0110】
3 蟻酸処理モジュール
5 Cu−MnOxCVDモジュール
13 銅配線
13a 銅酸化物
15 シリコン酸化膜
21 凹部
25 酸化マンガン
26 バリア膜
27 金属銅
45 還元剤供給源
62A 銅原料貯留部
62B マンガン原料貯留部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部が形成された層間絶縁膜と、第1の金属を主成分とし凹部の底面に露出した下層金属配線と、を有する基板に対し、
第2の金属を含む有機金属化合物の蒸気を供給して、前記第2の金属を含む有機金属化合物と、前記層間絶縁膜の成分の一部と、が反応することにより、前記第2の金属の化合物であり第1の金属の拡散を防ぐバリア膜を前記層間絶縁膜の露出面に形成する工程(a)と、
その後、前記凹部内に第1の金属を主成分とする金属配線を埋め込む工程(b)と、を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記バリア膜形成工程(a)において、前記下層金属配線が、前記第2の金属を含む有機金属化合物と反応して第2の金属の化合物を形成する成分を含まないことにより、前記凹部の底面に露出した下層金属配線の上にはバリア膜を形成させないことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記バリア膜を形成する工程(a)に先立ち、前記基板上の前記層間絶縁膜に形成された凹部の底面に露出した下層側の第1の金属を主成分とする金属配線の表面の金属酸化物を還元あるいはエッチングして、当該金属配線の表面の酸素を除去又は低減する工程(c)がおこなわれることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記バリア膜を形成する工程(a)と前記第1の金属を主成分とする金属配線を埋め込む工程(b)との間に、前記層間絶縁膜の表面及び前記凹部内に前記第1の金属からなるシード層を成膜する工程を行うことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記層間絶縁膜は、酸素又は炭素を含むことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記層間絶縁膜の表面近傍又は前記層間絶縁膜中の成分の一部は、酸素、又は水などの酸素原子を含んだ化合物、又は炭素であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記第1の金属は、Al,Cu,Agよりなる群から選択される1以上の金属であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記第2の金属は、Mg,Al,Ti,V,Cr,Mn,Ni,Ge,Y,Zr,Nb,Tc,Rh,Pd,Sn,Re,Ptよりなる群から選択される1以上の金属であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記バリア膜を形成する工程(a)において、前記基板を加熱することを特徴とする請求項1ないし8のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記第2の金属を含む有機金属化合物は、酸素を含まないことを特徴とする請求項1ないし9のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記第2の金属を含む有機金属化合物は、酸素の存在により分解反応を起こすことを特徴とする請求項1ないし10のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記層間絶縁膜は、SiO膜とSiOF膜とSiC膜とSiOC膜とSiCOH膜とSiCN膜とポーラスシリカ膜とポーラスメチルシルセスキオキサン膜とポリアリレン膜とSiLK(登録商標)膜とフロロカーボン膜とよりなる群から選択される1つ以上の膜よりなることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記第2の金属を含む有機金属化合物は、CpMetal[=Metal(C],(MeCp)Metal[=Metal(CH],(MeCp)Metal[=Metal((CH],(EtCp)Metal[=Metal(C],(i−PrCp)Metal[=Metal(C],(t−BuCp)Metal[=Metal(C],Metal(DMPD)(EtCp)[=Metal(C11)](ここで、Metalは前記第2の金属元素をあらわす)よりなる群から選択される1つ以上の有機金属化合物よりなることを特徴とする請求項1ないし12のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記第1の金属は、Cuであり、前記第2の金属は、Mnであることを特徴とする請求項1ないし13のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記バリア膜を形成する工程(a)の後に、前記基板を加熱すると共に、前記第2の金属を含む有機金属化合物の蒸気を前記基板に供給しながら前記基板への前記第1の金属を含む有機金属化合物の蒸気の供給を開始して、当該第1の金属を含む有機金属化合物の蒸気の供給量を増やしていくことによって、前記第2の金属に対する前記第1の金属の割合が表層に向かって徐々に増えていく密着層を前記バリア膜の上層に形成する工程を行うことを特徴とする請求項1ないし14のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項16】
前記下層側の金属配線の表面の金属酸化物は、前記基板を大気搬送した時に生成したものであることを特徴とする請求項3ないし15のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項17】
前記下層側の金属配線の表面の金属酸化物は、前記酸素を除去又は低減する工程(c)の前に行われ、前記層間絶縁膜に対して酸素を含む処理ガスのプラズマを供給して凹部を形成するエッチング処理により生成したものであることを特徴とする請求項3ないし15のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項18】
前記酸素を除去又は低減する工程(c)は、前記凹部に対して有機酸を供給する工程であることを特徴とする請求項3ないし17のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項19】
前記酸素を除去又は低減する工程(c)は、前記凹部に対して水素を供給する熱処理工程、又はアルゴンスパッタエッチング工程であることを特徴とする請求項3ないし17のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項20】
前記有機酸は、蟻酸であることを特徴とする請求項18に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項21】
金属配線を埋め込む工程(b)の後に、熱処理(アニール)工程(d)を行うことを特徴とする請求項1ないし20のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項22】
前記バリア膜を形成する工程(a)は、前記基板を100℃以上500℃未満に加熱する工程を含むことを特徴とする請求項1ないし21のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項23】
前記バリア膜は、アモルファス状であることを特徴とする請求項1ないし22のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項24】
前記バリア膜は、膜厚が5nm以下であることを特徴とする請求項1ないし23のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項25】
請求項1ないし24に記載の半導体装置の製造方法により製造されたことを特徴とする半導体装置。
【請求項26】
請求項25に記載の半導体装置を備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項27】
請求項1の製造方法を実施するための半導体製造装置において、
基板が搬入される真空雰囲気の搬送室と、この搬送室内に設けられた基板搬送手段と、を備えた真空搬送室モジュールと、
前記真空搬送室モジュールに気密に接続され、基板を載置する載置台が内部に設けられた処理容器と、第2の金属を含む有機金属化合物の蒸気を前記基板に供給する手段と、を備え、前記基板上の層間絶縁膜の成分の一部と、前記第2の金属を含む有機金属化合物と、が反応することにより、前記第2の金属の化合物であり第1の金属の拡散を防ぐバリア膜を当該層間絶縁膜の露出面に形成するバリア膜形成モジュールと、
前記真空搬送室モジュールに気密に接続され、基板を載置する載置台が内部に設けられた処理容器と、前記基板を加熱する手段と、第1の金属を主成分とする原料の蒸気を前記基板に供給し、前記凹部内に前記第1の金属を主成分とする原料を埋め込む第1の金属配線形成手段と、を備えた第1の金属配線形成モジュールと、
前記真空搬送室モジュールに搬入された基板を前記バリア膜形成モジュールに搬送し、次いで前記真空搬送室モジュールを介して前記第1の金属配線形成モジュールに前記基板を搬送するように、前記基板搬送手段を制御する制御部と、を備えたことを特徴とする半導体製造装置。
【請求項28】
前記真空搬送室モジュールには、前記基板上の前記層間絶縁膜に形成された凹部の底面に露出した下層側の第1の金属を主成分とする金属配線の表面の金属酸化物を還元あるいはエッチングする還元手段または除去手段を内部に備えた前処理モジュールが気密に接続され、
前記制御部は、前記基板を前記バリア膜形成モジュールに搬送する前に、前記真空搬送室モジュールを介して前記前処理モジュールに前記基板を搬送するように、前記基板搬送手段を制御することを特徴とする請求項27に記載の半導体製造装置。
【請求項29】
前記真空搬送室モジュールには、前記層間絶縁膜の表面及び前記凹部内に前記第1の金属を主成分とするシード層を成膜するためのシード層形成手段を内部に備えたシード層形成モジュールが気密に接続され、
前記制御部は、前記基板を前記バリア膜形成モジュールに搬送した後、前記第1の金属配線形成モジュールに搬送する前に、前記真空搬送室モジュールを介して前記シード層形成モジュールに前記基板を搬送するように、前記基板搬送手段を制御することを特徴とする請求項27または28に記載の半導体製造装置。
【請求項30】
前記バリア膜形成モジュールの処理容器は、前記第1の金属配線形成モジュールの処理容器を兼用していることを特徴とする請求項27ないし29のいずれか一つに記載の半導体製造装置。
【請求項31】
前記層間絶縁膜は、酸素又は炭素を含むことを特徴とする請求項27ないし30のいずれか一つに記載の半導体製造装置。
【請求項32】
前記層間絶縁膜の表面近傍又は前記層間絶縁膜中の成分の一部は、酸素、又は水などの酸素原子を含んだ化合物、又は炭素であることを特徴とする請求項27ないし31のいずれか一つに記載の半導体製造装置。
【請求項33】
前記第1の金属は、Al,Cu,Agよりなる群から選択される1以上の金属であることを特徴とする請求項27ないし32のいずれか一つに記載の半導体製造装置。
【請求項34】
前記第2の金属は、Mg,Al,Ti,V,Cr,Mn,Ni,Ge,Y,Zr,Nb,Tc,Rh,Pd,Sn,Re,Ptよりなる群から選択される1以上の金属であることを特徴とする請求項27ないし33のいずれか一つに記載の半導体製造装置。
【請求項35】
前記バリア膜形成モジュールは、基板を加熱する手段を備えたことを特徴とする請求項27ないし34のいずれか一つに記載の半導体製造装置。
【請求項36】
前記第2の金属を含む有機金属化合物は、酸素を含まないことを特徴とする請求項27ないし35のいずれか一つに記載の半導体製造装置。
【請求項37】
前記第2の金属を含む有機金属化合物は、酸素の存在により分解反応を起こすことを特徴とする請求項27ないし36のいずれか一つに記載の半導体製造装置。
【請求項38】
前記層間絶縁膜は、SiO膜とSiOF膜とSiC膜とSiOC膜とSiCOH膜とSiCN膜とポーラスシリカ膜とポーラスメチルシルセスキオキサン膜とポリアリレン膜とSiLK(登録商標)膜とフロロカーボン膜とよりなる群から選択される1つ以上の膜よりなることを特徴とする請求項27ないし37のいずれか一つに記載の半導体製造装置。
【請求項39】
前記第2の金属を含む有機金属化合物は、CpMetal[=Metal(C],(MeCp)Metal[=Metal(CH],(MeCp)Metal[=Metal((CH],(EtCp)Metal[=Metal(C],(i−PrCp)Metal[=Metal(C],(t−BuCp)Metal[=Metal(C],Metal(DMPD)(EtCp)[=Metal(C11)](ここで、Metalは前記第2の金属元素をあらわす)よりなる群から選択される1つ以上の有機金属化合物よりなることを特徴とする請求項27ないし38のいずれか一つに記載の半導体製造装置。
【請求項40】
前記第1の金属は、Cuであり、前記第2の金属は、Mnであることを特徴とする請求項27ないし39のいずれか一つに記載の半導体製造装置。
【請求項41】
前記還元手段または除去手段は、前記凹部に対して有機酸を供給する手段であることを特徴とする請求項27ないし40のいずれか一つに記載の半導体製造装置。
【請求項42】
前記還元手段または除去手段は、前記凹部に対して水素を供給する手段、又はアルゴンスパッタエッチングする手段であることを特徴とする請求項27ないし40のいずれか一つに記載の半導体製造装置。
【請求項43】
前記有機酸は、蟻酸であることを特徴とする請求項41に記載の半導体製造装置。
【請求項44】
前記真空搬送室モジュールには、基板を加熱する加熱手段を内部に備えたアニールユニットが気密に接続され、
前記制御部は、前記基板を前記第1の金属配線形成モジュールに搬送した後、前記真空搬送室モジュールを介して前記アニールユニットに前記基板を搬送するように、前記基板搬送手段を制御することを特徴とする請求項27ないし43のいずれか一つに記載の半導体製造装置。
【請求項45】
前記バリア膜形成モジュールは、前記基板を100℃以上500℃未満に加熱する加熱手段を備えたことを特徴とする請求項27ないし44のいずれか一つに記載の半導体製造装置。
【請求項46】
前記バリア膜は、アモルファス状であることを特徴とする請求項27ないし45のいずれか一つに記載の半導体製造装置。
【請求項47】
前記バリア膜は、膜厚が5nm以下であることを特徴とする請求項27ないし46のいずれか一つに記載の半導体製造装置。
【請求項48】
基板に対して処理を行う半導体製造装置に用いられ、コンピュータ上で動作するコンピュータプログラムを格納した記憶媒体であって、
前記コンピュータプログラムは、請求項1ないし24のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法を実施するようにステップ群が組まれていることを特徴とする記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2009−206472(P2009−206472A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−217257(P2008−217257)
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】