説明

半導体装置の製造方法

【課題】本発明の課題は、電極や配線の周囲に空間部を形成するに際し、電極材料や配線材料が耐フッ酸性がない材料であっても適用でき、かつ有機汚染の心配のない半導体装置の製造方法を提供することである。
【解決手段】本発明の半導体装置の製造方法は、ゲート電極21aの周囲を昇華性を有する材料としての塩化アルミニウム膜22aからなる犠牲膜で被覆し、その犠牲膜の周囲を外殻層としてのSiN膜23で被覆し、外殻層に設けた開口部24を通して犠牲膜をその昇華温度以上に加熱し除去して、ゲート電極21aの周囲に空間部25を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関し、特に電極や配線の周囲に空間部を備えた半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電極の周囲に空間部を備えた半導体装置の一例として電界効果トランジスタを図4に示す。図4は電極部を模式的に示す断面図である。
【0003】
図4に示すように、GaAs基板1上に、ゲート電極2aと、その両側の所定位置にそれぞれソース電極3a,ドレイン電極3bが形成されている。
【0004】
また、ソース電極3aとドレイン電極3bとは、保護用絶縁膜としてのSiN膜5で被覆されている。
【0005】
ゲート電極2aの周囲には、SiN膜5によって囲まれた空間部6が形成されている。
【0006】
このようにゲート電極2aの周囲に絶縁膜(SiOの比誘電率;3.9,SiNの比誘電率;7.5)を形成せずに、空間部6(空気の比誘電率;1.0)を設けると、ゲート電極2aと基板1表面との間に生じる寄生容量Cの低減が図れ、高周波帯域においても高い利得が得られる。
【0007】
次に、このような電界効果トランジスタのゲート電極周辺に空間部を形成する方法を図5〜7を参照して説明する。
【0008】
図5〜7は各製造工程完了毎のデバイスの断面図である。但し、図7(j)は平面図である。
【0009】
まず、図5(a)に示すように、GaAs基板1上にSiO膜7を形成後、その上に所定パターンのレジストマスク8を形成する。
【0010】
次に、図5(b)に示すように、等方性エッチングにより、SiO膜7にソース電極およびドレイン電極を形成するための開口を設ける。ここで、アンダーカットによりSiO膜7の開口はレジストマスク8の開口よりも大きい。
【0011】
次に、図5(c)に示すように、全面に金属膜3を蒸着する。
【0012】
次に、図5(d)に示すように、リフトオフ法により、レジストマスクを有機溶剤で溶解除去してソース電極3aおよびドレイン電極3bを形成する。
【0013】
次に、図6(e)に示すように、その上に所定パターンのレジストマスク9を形成後、等方性エッチングにより、SiO膜7にゲート電極を形成するための開口を設ける。ここで、アンダーカットによりSiO膜7の開口はレジストマスク9の開口よりも大きい。
【0014】
次に、図6(f)に示すように、全面に金属膜2を蒸着する。
【0015】
次に、図6(g)に示すように、リフトオフ法により、レジストマスクを有機溶剤で溶解除去してゲート電極2aを形成する。
【0016】
次に、図6(h)に示すように、その上に所定パターンのレジストマスク(図中、破線で示す)を形成し、SiO膜11をスパッタ法により選択的に形成する。その後、レジストマスクを除去する。
【0017】
ここで、このSiO膜11はゲート電極2aとその両側のSiO膜7を被覆するように形成され、これらのSiO膜7,11が空間部を形成するための犠牲膜となる。
【0018】
次に、図7(i)に示すように、全面にSiN膜5を形成する。このSiN膜5は保護用の絶縁膜であると共に空間部を形成する外殻となる。
【0019】
次に、図7(j)に示すように、その上に所定パターンのレジストマスク(図示せず)を形成後、ドライエッチングによりSiN膜5を選択的に除去して、ゲート電極2aの端部の位置に開口部12を形成する。
【0020】
そして、図7(k)に示すように、フッ酸を用いたエッチングにより、開口部12を通してゲート電極2aの周囲のSiO膜7,11を除去することで空間部6が形成される。
【0021】
尚、このときSiN膜5はフッ酸に対するエッチングレートが小さいため除去されない。
【0022】
その後、スパッタ法等によりSiN膜(図示せず)を形成し、開口部12をふさぐ。
【0023】
尚、上記では、電極の周辺に空間部を形成する例で説明したが、電極に限らず配線であってもよい。
【0024】
このように、犠牲膜としてSiO膜を用い、その犠牲膜を被覆する外殻層としてSiN膜を用いて、犠牲膜をフッ酸でエッチング除去する方法が開示されている。(例えば、特許文献1参照。)
【0025】
また、それ以外にも、犠牲膜としてポリイミド等の有機材料を用い、外殻層としてSiO膜やSiN膜を用いて、犠牲膜を有機溶剤で溶解除去する方法も開示されている。(例えば、特許文献2参照。)
【特許文献1】特開平11−274175号公報
【特許文献2】特開平10−150054号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
しかしながら、上記のように、犠牲膜としてSiO膜を用いて空間部を形成する場合、犠牲膜をフッ酸で除去するため、電極材料や配線材料が耐フッ酸性のある材料に限定されるという問題があった。
【0027】
すなわち、例えば、電極材料や配線材料がWSi系など耐フッ酸性のある材料の場合には適用できるが、Ti系など耐フッ酸性のない材料の場合には適用できなかった。
【0028】
また、犠牲膜としてポリイミドなどの有機材料を用いて空間部を形成する場合、有機溶剤での溶解除去の際に僅かでも有機物が残ると、有機汚染により特性劣化するおそれがあった。
【0029】
本発明の課題は、電極や配線の周囲に空間部を形成するに際し、電極材料や配線材料が耐フッ酸性がない材料であっても適用でき、かつ有機汚染の心配のない半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明の半導体装置の製造方法は、
電極または配線の周囲を昇華性を有する材料からなる犠牲膜で被覆し、犠牲膜の周囲を外殻層で被覆し、外殻層に設けた開口部を通して犠牲膜をその昇華温度以上に加熱し除去して、電極または配線の周囲に空間部を形成する半導体装置の製造方法である。
【0031】
また、他の本発明の半導体装置の製造方法は、
電極または配線の周囲を加水分解性を有する材料からなる犠牲膜で被覆し、犠牲膜の周囲を外殻層で被覆し、外殻層に設けた開口部を通して犠牲膜を加水分解し除去して、電極または配線の周囲に空間部を形成する半導体装置の製造方法である。
【0032】
また、他の本発明の半導体装置の製造方法は、
半導体基板上に第1の絶縁膜を形成する工程と、
第1の絶縁膜上に、電極または配線を形成するための所定の開口パターンのレジストマスクを形成する工程と、
レジストマスクを用いて等方性エッチングにより、第1の絶縁膜にレジストマスクの開口よりも大きな開口を設ける工程と、
開口内部を含む基板全面に、電極材料または配線材料としての金属膜を成膜する工程と、
さらにその上にアルミニウム膜を積層する工程と、
アルミニウム膜を塩化アルミニウム膜に化学変化させ、第1の絶縁膜の開口内の金属膜の周囲を体積増加した塩化アルミニウム膜で被覆する工程と、
レジストマスクを除去し、リフトオフ法により、周囲を犠牲膜としての塩化アルミニウム膜で被覆された電極または配線を形成する工程と、
その上に、外殻層となる第2の絶縁膜を形成する工程と、
外殻層の所定位置に開口を設ける工程と、
外殻層の開口を通して、塩化アルミニウム膜を除去する工程とを含む半導体装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0033】
本発明の半導体装置の製造方法によれば、電極や配線の周囲に空間部を形成するに際し、電極材料や配線材料が耐フッ酸性がない材料であっても適用でき、かつ有機汚染の心配のない半導体装置の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明の半導体装置の製造方法の一例として、電界効果トランジスタのゲート電極の周囲に空間部を形成する方法を図1〜3を参照して説明する。
【0035】
図1〜3は各製造工程完了毎のデバイスの断面図である。但し、図3(k)は平面図である。また、図4〜7と同一部分には同一符号を付す。
【0036】
まず、図1(a)に示すように、GaAs基板1上にSiO膜7を形成後、その上に所定パターンのレジストマスク8を形成する。
【0037】
次に、図1(b)に示すように、等方性エッチングにより、SiO膜7にソース電極およびドレイン電極を形成するための開口を設ける。ここで、アンダーカットによりSiO膜7の開口はレジストマスク8の開口よりも大きい。
【0038】
次に、図1(c)に示すように、全面に金属膜3を蒸着する。
【0039】
次に、図1(d)に示すように、リフトオフ法により、レジストマスクを有機溶剤で溶解除去してソース電極3aおよびドレイン電極3bを形成する。
【0040】
次に、図2(e)に示すように、その上に所定パターンのレジストマスク9を形成後、等方性エッチングにより、SiO膜7にゲート電極を形成するための開口を設ける。ここで、アンダーカットによりSiO膜7の開口はレジストマスク9の開口よりも大きい。
【0041】
次に、図2(f)に示すように、全面に金属膜21を蒸着する。
【0042】
ここで、金属膜はTi系材料である。尚、Ti系材料は、耐フッ酸性はないが耐塩酸性を有する。
【0043】
次に、図2(g)に示すように、その上にアルミニウム膜22を蒸着する。
【0044】
次に、図2(h)に示すように、アルミニウム膜22を塩酸蒸気に晒して塩化アルミニウム22aに変化させる。
【0045】
この反応は体積増加(約4倍程度)を伴う反応であるため、これによって開口の内部に形成された金属膜21の周囲の隙間が塩化アルミニウム22aで充填され、これが空間部を形成するための犠牲膜となる。
【0046】
次に、図3(i)に示すように、リフトオフ法により、レジストマスクを有機溶剤で溶解除去して、その周囲を塩化アルミニウム22aで被覆されたゲート電極21aを形成する。
【0047】
その後、図3(j)に示すように、全面にSiN膜23を形成する。
【0048】
このSiN膜23は保護用の絶縁膜であると共に空間部を形成する外殻となる。
【0049】
次に、図3(k)に示すように、その上に所定パターンのレジストマスク(図示せず)を形成後、ドライエッチングによりSiN膜23を選択的に除去して、ゲート電極21aの端部の位置に開口部24を形成する。
【0050】
その後、図3(l)に示すように、塩化アルミニウムの昇華温度(160℃)以上の温度(例えば200℃)に加熱し、塩化アルミニウム膜を昇華させて除去し、空間部25を形成する。
【0051】
その後、スパッタ法等によりSiN膜(図示せず)を形成し、開口部をふさぐ。
【0052】
尚、上記では、電極の周辺に空間部を形成する例で説明したが、電極に限らず配線であってもよい。
【0053】
また、上記では、塩化アルミニウム膜22aの除去方法として、昇華温度以上に加熱することで説明したが、塩化アルミニウム膜22aは水と反応して水酸化アルミニウムと塩酸に加水分解するため、水蒸気と反応させて除去してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、電極や配線の周囲に空間部を形成するに際し、電極材料や配線材料が耐フッ酸性がない材料であっても適用でき、かつ有機汚染の心配のない半導体装置の製造方法に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の半導体装置の製造方法の一例を示す断面図
【図2】本発明の半導体装置の製造方法の一例を示す断面図
【図3】本発明の半導体装置の製造方法の一例を示す断面図
【図4】電極の周囲に空間部を備えた半導体装置の一例として電界効果トランジスタの断面図
【図5】従来の半導体装置の製造方法の一例を示す断面図
【図6】従来の半導体装置の製造方法の一例を示す断面図
【図7】従来の半導体装置の製造方法の一例を示す断面図
【符号の説明】
【0056】
1 GaAs基板
2a,21a ゲート電極
2,3,21 金属膜
3a ソース電極
3b ドレイン電極
5,23 SiN膜
6,25 空間部
7,11 SiO
8,9 レジストマスク
12,24 開口部
22 アルミニウム膜
22a 塩化アルミニウム膜
C 寄生容量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極または配線の周囲を昇華性を有する材料からなる犠牲膜で被覆し、前記犠牲膜の周囲を外殻層で被覆し、前記外殻層に設けた開口部を通して前記犠牲膜をその昇華温度以上に加熱し除去して、前記電極または配線の周囲に空間部を形成する半導体装置の製造方法。
【請求項2】
電極または配線の周囲を加水分解性を有する材料からなる犠牲膜で被覆し、前記犠牲膜の周囲を外殻層で被覆し、前記外殻層に設けた開口部を通して前記犠牲膜を加水分解し除去して、前記電極または配線の周囲に空間部を形成する半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記犠牲膜は、塩化アルミニウムからなる請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記外殻層は、酸化膜または窒化膜からなる請求項1から3のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
半導体基板上に第1の絶縁膜を形成する工程と、
前記第1の絶縁膜上に、電極または配線を形成するための所定の開口パターンのレジストマスクを形成する工程と、
前記レジストマスクを用いて等方性エッチングにより、前記第1の絶縁膜に前記レジストマスクの開口よりも大きな開口を設ける工程と、
前記開口内部を含む基板全面に、電極材料または配線材料としての金属膜を成膜する工程と、
さらにその上にアルミニウム膜を積層する工程と、
前記アルミニウム膜を塩化アルミニウム膜に化学変化させ、前記第1の絶縁膜の開口内の金属膜の周囲を体積増加した塩化アルミニウム膜で被覆する工程と、
前記レジストマスクを除去し、リフトオフ法により、周囲を犠牲膜としての塩化アルミニウム膜で被覆された電極または配線を形成する工程と、
その上に、外殻層となる第2の絶縁膜を形成する工程と、
前記外殻層の所定位置に開口を設ける工程と、
前記外殻層の開口を通して、前記塩化アルミニウム膜を除去する工程とを含む半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記第1の絶縁膜は、酸化膜からなる請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記第2の絶縁膜は、窒化膜からなる請求項5または6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記電極材料または配線材料は、耐塩酸性を有する材料からなる請求項1から7のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記電極材料または配線材料は、Tiを含む材料である請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記アルミニウム膜を前記塩化アルミニウム膜に化学変化させる方法は、前記アルミニウム膜を塩酸蒸気に晒して化学変化させる方法である請求項5から9のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記塩化アルミニウム膜を除去する方法は、前記塩化アルミニウム膜をその昇華温度以上に加熱し除去する方法である請求項5から10のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記塩化アルミニウム膜を除去する方法は、前記塩化アルミニウム膜を水蒸気と反応させて加水分解し除去する方法である請求項5から10のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−54664(P2009−54664A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−217819(P2007−217819)
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】