説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】例えば、高圧水蒸気処理によってPチャネル型TFT等のトランジスタ素子の動作特性が低下させない。
【解決手段】TFT130と同層に形成されたTFT30の高圧水蒸気処理が施される際に、重なる部分42aに水分が回り込まないようにTFT130上に保護膜133a及び133bが形成されている。このような保護膜133a及び133bが形成された境界領域Ra及びRbの夫々は、絶縁膜42上の画素領域に形成されたTFT30に高圧水蒸気処理が施された際に、重なる部分42a、より具体的には、絶縁膜42のうちチャネル領域130a´の両端部分に重なる部分に水分が回り込まないように重なる部分42aを保護可能な幅を有する領域である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、Pチャネル型TFTを含むCMOS型の回路素子を有するデータ線駆動回路等の駆動回路部、及びNチャネル型TFT等のトランジスタ素子で構成された画素スイッチング用素子を有する画素部を備えた液晶装置等の半導体装置、及びその製造方法の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の半導体装置では、ガラス基板等の基板上に薄膜トランジスタ(以下、TFTと称す。)を形成する際に、500℃以下で半導体層を形成する必要があり、500℃以上でTFTを形成する高温プロセスに比べて、半導体層を構成するシリコン(Si)、及びゲート絶縁膜を構成するシリコン酸化膜(SiO)中に存在する欠陥を十分に補償できていない。特に、ゲート絶縁膜及び半導体層の界面に存在するSiの不対結合手等の欠陥は、TFTの動作特性及び信頼性を低下させる一因となる。
【0003】
そこで、水蒸気又は窒素雰囲気中におけるアニール処理、或いは高圧で水蒸気を供給する高圧水蒸気処理によって、シリコン膜及びSiO膜中に存在するダングリングボンド等の欠陥を効果的に終端する技術が開示されている。より具体的には、例えば、特許文献1によれば、LDD(Lightly Doped Drain)構造を有するNチャネル型TFTに高圧水蒸気処理を施すことにより、LDD領域のシート抵抗を低減し、TFTのオン電流を向上させる技術が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−72292号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、高圧水蒸気処理がPチャネル型TFTに過剰に施された場合、Pチャネル型TFTの下地膜に発生する固定電荷が増大する。このような固定電荷の増大によれば、Pチャネル型のTFTの閾値電圧がソースの電位に対してゲートの電位が低くなる電圧、即ち、負側にシフトしてしまい、当該TFTの動作特性を低下させてしまう問題が生じる。
【0006】
より具体的には、例えば、液晶装置等の半導体装置において、画素スイッチング用素子としてNチャネル型TFTが画像の表示領域に形成され、データ線駆動回路等の周辺回路部の一部としてPチャネル型TFTが表示領域の周辺に形成されていた場合、Nチャネル型TFTの半導体層及びゲート絶縁膜に、LDD領域におけるシート抵抗の低減及びオン電流増大を目的として高圧水蒸気処理を施す際に、Pチャネル型TFTのゲート電極の上側から供給された高圧の水蒸気は、ゲート電極を回り込むように当該Pチャネル型TFTの半導体層及び当該半導体層の下地膜に到達し、下地膜のうちPチャネル型TFTにおけるチャネル領域の両端部分に重なる部分にプラスの固定電荷が発生してしまう。このような固定電荷は、Pチャネル型TFTのチャネル領域に対して空乏層を広げる作用がある。したがって、下地膜のうちプラスの固定電荷が発生した部分に重なるチャネル領域では、閾値電圧Vthが負側にシフトしてしまい。
【0007】
したがって、高圧水蒸気処理によってNチャネル型TFTのLDD領域のシート抵抗の低減及びオン電流の増大が可能になる反面、同一基板上に形成されたPチャネル型TFTの動作特性が低下してしまう。
【0008】
よって、本発明は上記問題点等に鑑みてなされたものであり、例えば、高圧水蒸気処理によってPチャネル型TFT等のトランジスタ素子の動作特性が低下しない構造を有する半導体装置、及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る半導体装置は上記課題を解決するために、基板上に形成された下地膜と、前記下地膜上の一の領域に形成されており、(i)第1チャネル領域、第1ソース領域及び第1ドレイン領域を含む第1半導体層、(ii)前記第1半導体層上に形成された第1ゲート絶縁膜、及び(iii)前記第1ゲート絶縁膜上において前記第1チャネル領域に重なる第1ゲート電極を有するPチャネル型の第1トランジスタ素子と、前記第1ソース領域及び前記第1ドレイン領域の各々と前記第1チャネル領域との境界領域に重なるように前記第1ゲート電極上に形成されており、前記下地膜上の他の領域に形成されたNチャネル型の第2トランジスタ素子に高圧水蒸気処理が施された際に、前記下地膜のうち前記第1チャネル領域に重なる部分に水分が回り込まないように前記重なる部分を保護する保護膜とを備える。
【0010】
本発明に係る半導体装置によれば、下地膜は、例えば、シリコン酸化物(SiOx)から構成された絶縁膜であり、ガラス基板上に直接、或いは他の絶縁膜を介して形成されている。
【0011】
Pチャネル型の第1トランジスタ素子は、例えば、第1チャネル領域の両側に、高濃度のp領域である第1ソース領域及び第1ドレイン領域が形成されたp型半導体層である第1半導体層、SiO等の絶縁材料で構成された第1ゲート絶縁膜、及び第1チャネル領域に重なるゲート電極を備えたTFTである。
【0012】
保護膜は、第1ソース領域及び第1ドレイン領域の各々と第1チャネル領域との境界領域に重なるように第1ゲート電極上に形成されており、下地膜上の他の領域に形成されたNチャネル型の第2トランジスタ素子に高圧水蒸気処理が施された際に、下地膜のうち第1チャネル領域に重なる部分に水分が回り込まないように当該重なる部分を保護する。
【0013】
ここで、「境界領域」とは、第1ソース領域及び第1ドレイン領域の各々と第1チャネル領域との境界のみを含むだけではなく、当該境界から第1ソース領域及び第1ドレイン領域の夫々の側に向かって若干の幅を有する領域である。また、境界領域は、当該境界から第1チャネル領域に向かって若干の幅を有する領域であってもよい。即ち、「境界領域」は、下地膜上の他の領域に形成されたNチャネル型の第2トランジスタ素子に高圧水蒸気処理が施された際に、下地膜のうち第1チャネル領域に重なる部分、より具体的には、下地膜のうち第1チャネル領域の両端部分に重なる部分に水分が回り込まないように当該重なる部分を保護可能な幅を有する領域である。
【0014】
したがって、保護膜によれば、第1及び第2トランジスタ素子の上側から高圧水蒸気処理を施した場合でも、下地膜上の一の領域において、下地膜のうち第1チャネル領域に重なる部分に水分が回り込むことを低減でき、当該重なる部分にプラスの固定電荷が発生することを低減でき、Nチャネル型の第2トランジスタ素子の素子特性の向上を可能にしつつ、Pチャネル型の第1トランジスタ素子において閾値電圧がマイナス側へシフトすることを抑制できる。
【0015】
よって、本発明に係る半導体装置によれば、基板上に形成されたNチャネル型の第2トランジスタ素子の素子特性が高圧水蒸気処理によって高められていると共に、当該基板上に形成されたPチャネル型の第1トランジスタ素子の動作特性が高圧水蒸気処理によって低下することが抑制されている。言い換えれば、基板上に形成されたPチャネル型の第1トランジスタ素子及びNチャネル型の第2トランジスタ素子に一括で高圧水蒸気処理を施した場合でも、第1トランジスタ素子の動作特性の低下による誤作動の低減が可能になるとともに、第2トランジスタ素子の動作特性の向上のみが可能になる。
【0016】
本発明に係る半導体装置の一の態様では、前記保護膜は、前記第1半導体層が延びる方向に沿って前記第1ゲート電極の全体に重なっていてもよい。
【0017】
この態様によれば、第1チャネル領域の中央寄りの側から、下地膜のうち第1チャネル領域に重なる部分に水分が回り込むことを効果的に低減できる。
【0018】
本発明に係る半導体装置の他の態様では、前記第1ソース領域に電気的に接続された第1端子部と、前記第1ドレイン領域に電気的に接続された第2端子部とを備え、前記保護膜は、前記下地膜上において前記第1端子部及び前記第2端子部の夫々と前記第1ゲート電極とを相互に隔てる領域の全体に重なっていてもよい。
【0019】
この態様によれば、第1端子部及び第2端子部の夫々は、例えば、基板上において第1トランジスタ素子が形成された層と異なる層に形成されており、コンタクトホール等の接続手段を介して第1ソース領域及び第1ドレイン領域の夫々に電気的に接続されている。
【0020】
保護膜は、下地膜上において第1端子部及び第2端子部の夫々と第1ゲート電極とを相互に隔てる領域の全体に重なっていてもよい。下地膜上から第1ゲート電極、第1端子部及び第2端子部を平面的に見た場合に、第1端子部及び第2端子部の夫々と、第1ゲート電極との間の領域、即ち、これら端子部及び第1ゲート電極を相互に隔てる領域の全体に重なるように保護膜が延びていることになる。このような保護膜によれば、第1ゲート電極から見て第1端子部及び第2端子部の夫々の側から、下地膜のうち第1チャネル領域に重なる部分に水分が回り込むことをより確実に低減できる。
【0021】
この他の態様では、前記保護膜は、前記下地膜上において前記第1端子部及び前記第2端子部と同層に形成された導電膜であってもよい。
【0022】
この態様によれば、第1端子部及び第2端子部を形成する際に、これら端子部を形成するのと並行して保護膜を形成可能である。
【0023】
本発明に係る半導体装置の他の態様では、前記保護膜は、前記第1端子部及び前記第2端子部と、前記第1ゲート電極を覆う絶縁膜との間に延びていてもよい。
【0024】
この態様によれば、第1端子部及び第2端子部と、第1ゲート電極とを相互に電気的に絶縁する複数の絶縁膜の一つを保護膜として兼用可能である。
【0025】
この態様では、前記保護膜は、SiN膜であってもよい。
【0026】
この態様によれば、第1端子部及び第2端子部と、第1ゲート電極とを相互に電気的に絶縁しつつ、下地膜への水分の回り込みを低減できる。
【0027】
本発明に係る半導体装置の他の態様では、前記第2トランジスタ素子は、(i)第2チャネル領域、第2ソース領域及び第2ドレイン領域を含む第2半導体層、(ii)前記第2半導体層上に形成された第2ゲート絶縁膜、及び(iii)前記第2ゲート絶縁膜上において前記第2チャネル領域に重なる第2ゲート電極を有しており、前記高圧水蒸気処理は、前記一の領域及び前記他の領域の夫々に前記第1トランジスタ素子及び前記第2トランジスタ素子の夫々が形成された後、前記第2ゲート絶縁膜及び前記第2半導体層に含まれる欠陥を補償するために施されていてもよい。
【0028】
この態様によれば、Nチャネル型の第2トランジスタ素子が有する第2半導体層及び第2ゲート絶縁膜の夫々に含まれる欠陥を補償できるため、例えばオン電流の増大のように素子特性の向上が可能になる。尚、第1トランジスタ素子及び第2トランジスタ素子の夫々が形成された後にこれらトランジスタ素子に高圧水蒸気処理を施した場合でも、下地膜のうち第1チャネル領域に重なる部分には水分が回りこまないため、第1トランジスタ素子の閾値電圧がプラスの固定電荷の発生によってマイナス側へシフトすることが抑制可能になっている。
【0029】
本発明に係る半導体装置の他の態様では、前記第1半導体層及び前記第1ゲート絶縁膜の夫々は、前記保護膜が形成されるに先んじてアニール処理を施されていてもよい。
【0030】
この態様によれば、保護膜が形成されるに先んじて、例えば、水蒸気、又は窒素雰囲気中で前記第1半導体層及び前記第1ゲート絶縁膜の夫々にアニール処理を施しておくことによって、第1半導体層及び第1ゲート絶縁膜の夫々に含まれる欠陥を補償でき、第1トランジスタ素子の素子特性を高めることが可能である。
【0031】
本発明に係る半導体装置の他の態様では、前記他の領域は、前記基板上において複数の画素部が形成された表示領域であり、前記一の領域は、前記基板上において前記表示領域の周辺に延びる周辺領域であり、前記第1トランジスタ素子は、前記画素部を駆動するために前記周辺領域に形成された周辺回路部の一部を構成していてもよい。
【0032】
この態様によれば、半導体装置の一例である液晶装置等の表示装置において、第1トランジスタ素子は、周辺領域に形成されたデータ線駆動回路部或いは走査線駆動回路部等の周辺回路部に含まれるCMOSの一部を構成可能である。したがって、高圧水蒸気処理による第1トランジスタ素子の動作特性の低下、即ち閾値電圧のマイナス側へのシフトを抑制することによって、CMOSを含む周辺回路部の動作特性の低下を抑制でき、液晶装置等の表示装置の表示性能の低下を抑制することができる。
【0033】
この態様では、前記第2トランジスタ素子は、前記表示領域において前記画素部毎に形成された画素スイッチング用素子であってもよい。
【0034】
この態様によれば、画素スイッチング用素子の素子特性を高めることができるため、半導体装置の一例である表示装置における画像の表示性能を高めることが可能である。
【0035】
本発明に係る半導体装置の他の態様では、前記画素部に画像信号を供給するデータ線を備え、前記保護膜は、前記下地膜上において前記データ線と同層に形成されていてもよい。
【0036】
この態様によれば、データ線と共通の工程によって保護膜を形成できるため、データ線を形成する工程とは別に保護膜を形成する工程を加えることなく、半導体装置の製造プロセスを煩雑化させることがない。
【0037】
本発明に係る半導体装置の製造方法は上記課題を解決するために、基板上に形成された下地膜上の一の領域に、(i)第1チャネル領域、第1ソース領域及び第1ドレイン領域を含む第1半導体層、(ii)前記第1半導体層を覆う第1ゲート絶縁膜、及び(iii)前記第1ゲート絶縁膜上において前記第1チャネル領域に重なる第1ゲート電極を有するPチャネル型の第1トランジスタ素子を形成する工程と、前記下地膜上の他の領域に、(iv)第2チャネル領域、第2ソース領域及び第2ドレイン領域を含む第2半導体層、(v)前記第2半導体層上に形成された第2ゲート絶縁膜、及び(vi)前記第2ゲート絶縁膜上において前記第2チャネル領域に重なる第2ゲート電極を有するNチャネル型の第2トランジスタ素子を形成する工程と、前記第1ソース領域及び前記第1ドレイン領域の各々と前記第1チャネル領域との境界領域に重なるように前記第1ゲート電極上に保護膜を形成する工程と、前記保護膜の上層側から前記第1トランジスタ素子及び前記第2トランジスタ素子に一括で高圧の水蒸気を供給することによって、前記下地膜のうち前記第1チャネル領域に重なる部分に水分が回り込まないように前記第2半導体層、及び前記第2ゲート絶縁膜の夫々に高圧水蒸気処理を施す工程とを備える。
【0038】
本発明に係る半導体装置の製造方法によれば、上述の半導体装置と同様に、第1トランジスタ素子の動作特性の低下を抑制しつつ、第2トランジスタ素子の動作特性を向上させることが可能である。
【0039】
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、図面を参照しながら本発明に係る半導体装置及びその製造方法の各実施形態を説明する。尚、本実施形態では、本発明に係る半導体装置の一例としてTFT等のトランジスタ素子を備えた液晶装置を挙げると共に、その製造方法を説明する。
【0041】
<1:液晶装置>
先ず、図1及び図2を参照しながら、本実施形態に係る液晶装置1の全体構成を説明する。図1は、TFTアレイ基板をその上に形成された各構成要素と共に対向基板の側から見た液晶装置1の平面図であり、図2は、図1のII−II´断面図である。本実施形態に係る液晶装置1は、駆動回路内蔵型のTFTアクティブマトリクス駆動方式で駆動され、後述する反射膜で光を反射する反射型表示装置である。
【0042】
図1及び図2において、液晶装置1では、本発明の「基板」の一例であるTFTアレイ基板10と、対向基板20とが対向配置されている。TFTアレイ基板10及び対向基板20間に液晶層50が封入されており、TFTアレイ基板10及び対向基板20は、複数の画素部が設けられる表示領域たる画像表示領域10aの周囲に位置するシール領域に設けられたシール材52により相互に接着されている。
【0043】
シール材52は、両基板を貼り合わせるための、例えば紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂等からなり、製造プロセスにおいてTFTアレイ基板10上に塗布された後、紫外線照射、加熱等により硬化させられたものである。シール材52中には、TFTアレイ基板10と対向基板20との間隔(基板間ギャップ)を所定値とするためのグラスファイバ或いはガラスビーズ等のギャップ材が散布されている。
【0044】
シール材52が配置されたシール領域の内側に並行して、画像表示領域10aの額縁領域を規定する遮光性の額縁遮光膜53が、対向基板20側に設けられている。但し、このような額縁遮光膜53の一部又は全部は、TFTアレイ基板10側に内蔵遮光膜として設けられてもよい。尚、TFTアレイ基板10上の画像表示領域10aの周辺には、周辺領域が存在する。言い換えれば、本実施形態においては特に、TFTアレイ基板10の中心から見て、この額縁遮光膜53より以遠が周辺領域として規定されている。
【0045】
このような周辺領域のうち、シール材52が配置されたシール領域の外側に位置する領域には、走査線駆動回路104と共に本発明の「周辺回路部」の一例を構成するデータ線駆動回路101、及び外部回路接続端子102がTFTアレイ基板10の一辺に沿って設けられている。走査線駆動回路104は、この一辺に隣接する2辺に沿い、且つ、額縁遮光膜53に覆われるようにして設けられている。更に、このように画像表示領域10aの両側に設けられた二つの走査線駆動回路104間をつなぐため、TFTアレイ基板10の残る一辺に沿い、且つ、額縁遮光膜53に覆われるようにして複数の配線105が設けられている。
【0046】
TFTアレイ基板10上の周辺領域には、タッチパネル機能を確保するために画素部に設けられた光センサを含むセンサ部(不図示)を制御するためのセンサ制御回路部201が形成されている。外部回路接続端子102は、外部回路及び液晶装置1を電気的に接続する接続手段の一例であるフレキシブル基板200に設けられた接続端子に接続されている。尚、センサ制御回路部201は、液晶装置1に内蔵されていてもよいし、液晶装置1の外部に形成されていてもよい。
【0047】
対向基板20の4つのコーナー部には、両基板間の上下導通端子として機能する上下導通材106が配置されている。他方、TFTアレイ基板10にはこれらのコーナー部に対向する領域において上下導通端子が設けられている。これらにより、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的な導通をとることができる。
【0048】
図2において、TFTアレイ基板10上には、画素スイッチング用のTFTや走査線、データ線等の配線が形成された後の画素電極9a上に、配向膜が形成されている。他方、対向基板20上には、対向電極21の他、格子状又はストライプ状の遮光膜23、更には最上層部分に配向膜が形成されている。液晶層50は、例えば一種又は数種類のネマティック液晶を混合した液晶からなり、これら一対の配向膜間で、所定の配向状態をとる。液晶装置1によって表示される画像は、対向基板20の両面のうち液晶層50に面しない側の表示面20sに表示される。
【0049】
尚、本実施形態では、説明の便宜上、偏光板及びカラーフィルタの図示を省略しているが、対向基板20上に偏光板及びカラーフィルタが配置されている場合には、図中において、液晶装置1の最上面が表示面になる。また、液晶装置1は、表示面20s側から入射した光を、後述する反射膜によって反射し、当該反射光を液晶層50によって変調することによって所望の画像を表示する反射型表示装置である。
【0050】
図1及び図2に示したTFTアレイ基板10上には、これらのデータ線駆動回路101、走査線駆動回路104等の駆動回路に加えて、画像信号線上の画像信号をサンプリングしてデータ線に供給するサンプリング回路、複数のデータ線に所定電圧レベルのプリチャージ信号を画像信号に先行して各々供給するプリチャージ回路、製造途中や出荷時の当該電気光学装置の品質、欠陥等を検査するための検査回路等を形成してもよい。このようなサンプリング回路、プリチャージ回路、及び検査回路等の回路部も、本発明の「周辺回路部」の一例を構成しうる。
【0051】
次に、図3を参照しながら、液晶装置1の回路構成を説明する。図3は、液晶装置1の画像表示領域10aを構成するマトリクス状に形成された複数の画素における各種素子、配線等の等価回路である。
【0052】
図3において、液晶装置1の画像表示領域10aを構成するマトリクス状に形成された複数の画素部72を備えている。画素部72は、画素電極9a、本発明の「Nチャネル型の第2トランジスタ素子」の一例であるTFT30、及び液晶素子50aを備えている。TFT30は、画素電極9aに電気的に接続されており、液晶装置1の動作時に画素電極9aをスイッチング制御する。画像信号が供給されるデータ線6aは、TFT30のソースに電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画像信号S1、S2、・・・、Snは、この順に線順次に供給しても構わないし、相隣接する複数のデータ線6a同士に対して、グループ毎に供給するようにしてもよい。
【0053】
TFT30のゲートに走査線3aが電気的に接続されており、液晶装置1は、所定のタイミングで、走査線3aにパルス的に走査信号G1、G2、・・・、Gmを、この順に線順次で印加するように構成されている。画素電極9aは、TFT30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT30を一定期間だけそのスイッチを閉じることにより、データ線6aから供給される画像信号S1、S2、・・・、Snが所定のタイミングで書き込まれる。画素電極9aを介して液晶に書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、・・・、Snは、対向基板に形成された対向電極との間で一定期間保持される。
【0054】
液晶層50に含まれる液晶は、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能とする。ノーマリーホワイトモードであれば、各サブ画素部の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が減少し、ノーマリーブラックモードであれば、各サブ画素部の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が増加され、全体として液晶装置1からは画像信号に応じたコントラストをもつ光が出射される。蓄積容量70は、固定電位線300に電気的に接続されており、画像信号がリークすることを防ぐために、画素電極9aと対向電極との間に形成される液晶素子50aと並列に付加されている。
【0055】
次に、図4を参照しながら、液晶装置1の具体的な構成を説明する。図4は、液晶装置1の画素部の構造の一部をデータ線駆動回路等の周辺回路部の一部と共に示した断面図である。
【0056】
図4において、液晶装置1は、TFTアレイ基板10上に形成された絶縁膜41、42、43、43g、44、45、46及び47、本発明の「Pチャネル型の第1トランジスタ素子」の一例であるTFT130、TFT30、保護膜133、本発明の「第1端子部」及び「第2端子部」の夫々の一例である端子部131及び132、反射膜86、並びに、画素電極9aを備えて構成されている。
【0057】
画素電極9aは、TFTアレイ基板10上の表示領域たる画像表示領域10aを構成する複数の画素部72の夫々に形成されている。端子部84は、単一或いは複数の金属層から構成されており、画素部72を駆動する画素回路の一部を構成している。より具体的には、端子部84は、画素スイッチング用素子としてのTFT30にコンタクトホール82を介して電気的に接続されていると共に画素電極9aに電気的に接続されている。そして、液晶装置1の動作時に、画像信号に応じた電位が端子部84を介して画素電極9aに供給される。
【0058】
TFT30が有する半導体層1aは、本発明の「第2ソース領域」の一例であるソース領域1d、本発明の「第2チャネル領域」の一例であるチャネル領域1a´、本発明の「第2ドレイン領域」の一例であるドレイン領域1e、LDD領域1b及び1cから構成されており、コンタクトホール81を介してデータ線から供給された画像信号が、ゲート電極3a1に印加されるゲート電圧に応じてコンタクトホール82を介して画素電極9aに供給される。
【0059】
絶縁膜45及び46を貫通する穴部85は、端子部84に重なっており、例えば、絶縁膜45及び46に光を照射する光パターニング法によって絶縁膜45及び46を部分的に除去することによって形成されている。尚、端子部84は、絶縁膜47及び画素電極9aが形成されていない状態において、穴部85に露出し、端子部84及び画素電極9aを電気的に接続するためのコンタクトホールとして機能する。
【0060】
反射膜86は、TFTアレイ基板10上の画素部72が占める領域のうち絶縁膜46上の穴部85が設けられていない領域に形成されている。反射膜86は、金属等の導電膜から構成されており、液晶装置1の動作時に図中上側から入射した光を反射する。
【0061】
TFT30及び130は、本発明の「下地膜」の一例である絶縁膜42上に形成されている。より具体的には、絶縁膜42は、シリコン酸化物(SiOx)から構成されており、TFTアレイ基板10上に絶縁膜41を介して形成されている。
【0062】
TFT130は、本発明の「第1チャネル領域」の一例であるチャネル領域130a´、本発明の「第1ソース領域」の一例であるソース領域130d及び本発明の「第1ドレイン領域」の一例であるドレイン領域130eを含む半導体層130a、半導体層130a上に形成されたゲート絶縁膜43g、及びゲート絶縁膜43g上においてチャネル領域130a´に重なるゲート電極33a1を有しており、本発明の「一の領域」の一例である周辺領域に形成されており、データ線駆動回路101或いは走査線駆動回路104等の周辺回路部に含まれるCMOSの一部を構成している。
【0063】
尚、ゲート絶縁膜43gは、SiO等の絶縁材料で構成されており、ゲート絶縁膜43gのうち周辺領域に延びる部分が、本発明の「第1ゲート絶縁膜」の一例を構成しており、本発明の「他の領域」の一例である絶縁膜42上の画素部72が設けられた領域に延びる部分が本発明の「第2ゲート絶縁膜」の一例を構成している。このように、Pチャネル型のTFT130及びNチャネル型のTFT30は、TFTアレイ基板10上の同層に形成されたゲート絶縁膜43gを互いに共有しつつ絶縁膜42上の同層に形成されている。
【0064】
次に、図5及び図6を参照しながら、TFT130及び保護膜133の構造を詳細に説明する。図5は、TFT130の平面図であり、図6は、図5のVI−VI´断面図である。
【0065】
図6において、TFT130は、チャネル領域130a´の両側に、高濃度のp領域であるソース領域130d及びドレイン領域130eが形成されたp型半導体層である半導体層130aを有している。
【0066】
図5及び図6において、保護膜133は、絶縁膜44上で互いに離間された保護膜133a及び133bから構成されており、ソース領域130d及びドレイン領域130eの各々とチャネル領域130a´との境界領域Ra及びRbに重なるようにゲート電極33a1上に形成されている。境界領域Ra及びRbの夫々は、ソース領域130d及びドレイン領域130eの各々とチャネル領域130a´との境界La及びLbのみを含むだけではなく、これら境界La及びLbの夫々からソース領域130d及びドレイン領域130eの夫々の側に向かって若干の幅を有する領域である。加えて、境界領域Ra及びRbの夫々は、境界La及びLbの夫々からチャネル領域130a´に向かって若干の幅を有する。
【0067】
保護膜133は、絶縁膜42上に端子部131及び端子部132と同層に形成された導電膜で構成されている。したがって、端子部131及び端子部132を形成する際に、これら端子部を形成するのと並行して保護膜133を形成可能である。また、保護膜133は、図3に示したデータ線6a(図4及び図6において不図示)と同層に形成されていてもよい。このような保護膜133は、データ線6aと共通の工程によって形成可能であるため、データ線6aを形成する工程とは別に保護膜133を形成する工程を加えることなく、液晶装置1の製造プロセスを煩雑化させることがない。
【0068】
TFT130は、液晶装置1の製造時において、保護膜133が形成された後、TFT30と共に高圧水蒸気処理が施されている。より具体的には、400℃の温度条件の下、1乃至4MPaの圧力で保護膜133上から高圧の水蒸気がTFT130及び30に同時に供給される。このような高圧水蒸気処理が施されることによって、半導体層1aと、ゲート絶縁膜43gのうち半導体層1aに重なる部分との夫々に含まれる欠陥が補償され、TFT30におけるオン電流の増大等の動作特性の向上が可能になる。本実施形態では、TFT30は、画素部72毎に形成された画素スイッチング用素子であり、TFT30に高圧水蒸気処理が施されることによって液晶装置1における画像信号の書き込み性能が高められ、画像の表示性能を向上させることが可能である。
【0069】
ここで、保護膜133を形成することなく、或いは保護膜133を形成するに先んじて、TFT30及び130に同時に高圧水蒸気処理を施した場合、TFT30の動作特性を高めることが可能になる一方で、TFT130の動作特性を低下させてしまう恐れがある。そこで、図7及び図8を参照しながら、TFT130に高圧水蒸気処理が施されることによって生じうるTFT130の素子特性の低下の発生理由を詳細に説明する。図7は、保護膜133が形成されていない状態のTFT130及び30の夫々の断面図である。図8は、Pチャネル型のTFT130及びNチャネル型のTFT30の夫々について、ゲート電圧に対するドレイン電流(即ち、オン電流)の変化を示したグラフであり、標準的な水蒸気処理及び過剰な水蒸気処理の夫々を各TFTに施した場合を示している。
【0070】
図7(a)及び(b)に示すように、TFT130及び30は、絶縁膜42上に同層に形成されているため、ゲート電極33a1及び3a1の夫々の上側から同時に高圧水蒸気処理を施した場合、TFT30及び130の夫々において、水分が半導体層1a及び130a、並びにゲート絶縁膜43gに到達すると共に、絶縁膜42のうちチャネル領域130a´に重なる部分42aに回り込む。同様に、絶縁膜42のうちチャネル領域1a´に重なる部分42bに水分が回り込む。このような水分の回り込みによって、重なる部分42a及び42bの夫々にプラスの固定電荷Hが発生する。より具体的には、水分が回り込み易い部分、即ち、重なる部分42a及び42bの夫々の両端に固定電荷Hが発生する。Pチャネル型のTFT130では、固定電荷Hはチャネル領域130a´に対して空乏層を広げる作用があるため、絶縁膜42のうち固定電荷Hが発生した部分によって、チャネル領域130a´の一部で閾値電圧がマイナス側にシフトしてしまう。その結果、チャネル領域130a´は、絶縁膜42のうち固定電荷Hが発生した部分と、発生していない部分との夫々によって各々の閾値電圧がシフトした部分の直列接続によって構成され、TFT130全体の閾値電圧は、マイナス側にシフトする。したがって、Pチャネル型のTFT130では、重なる部分42aにプラスの固定電荷が発生することによって、その動作特性が低下すると考えられる。
【0071】
一方、Nチャネル型のTFT30では、Pチャネル型のTFT130と同様に、重なる部分42bに発生したプラスの固定電荷によって、チャネル領域1a´の各部における閾値電圧はマイナス側にシフトする。しかしながら、これら各部が直列接続されていることによってTFT30全体の閾値電圧は変化しないと予測される。
【0072】
次に、図8を参照しながら、本願発明者が行った実験結果を説明しつつ上述の考察結果を検討する。尚、図8(a)は、Pチャネル型のTFT130及びNチャネル型のTFT30の夫々に標準的な水蒸気処理を施した後、ゲート電圧(Vg)に対するドレイン電流(Id)を測定した測定結果である。図8(b)は、Pチャネル型のTFT130及びNチャネル型のTFT30の夫々に、過剰な水蒸気処理、即ち上述の高圧水蒸気処理と同等の圧力及び温度で水蒸気処理を施した後、ゲート電圧(Vg)に対するドレイン電流(Id)を測定した測定結果である。図8(a)及び(b)では、Pチャネル型のTFT130のドレイン電流の変化を実線Idpで示し、Nチャネル型のTFT30のドレイン電流の変化を点線Idnで示している。
【0073】
図8(a)において、標準水蒸気処理によれば、図中実線Idp及び点線Idnが示すように、TFT130及び30では、各TFT全体の閾値電圧は0Vである。一方、図8(b)に示すように、過剰な水蒸気処理が施された場合には、Nチャネル型のTFT30の閾値電圧は0Vで変化しないが、Pチャネル型のTFT130の閾値電圧Vthは、0Vからマイナス側にΔVだけシフトしている。したがって、図8に示した実験結果によれば、図7を参照しながら説明した本願発明者の考察が裏付けられていると考えることができる。したがって、TFTアレイ基板10上においてTFT30と同層に形成されたTFT130に高圧水蒸気処理が施されてしまった場合には、TFT30の動作特性を高めることが可能になる一方でTFT130の動作特性を低下させてしまい、液晶装置1の表示性能を低下させてしまうことになる。
【0074】
そこで、再び、図5及び図6に示すように、TFT130に高圧水蒸気処理が施されないように、より具体的には、TFT130と同層に形成されたTFT30の高圧水蒸気処理が施される際に、重なる部分42aに水分が回り込まないように、TFT130上に保護膜133a及び133bが形成されている。このような保護膜133a及び133bが形成された境界領域Ra及びRbの夫々は、絶縁膜42上の画素領域に形成されたTFT30に高圧水蒸気処理が施された際に、重なる部分42a、より具体的には、絶縁膜42のうちチャネル領域130a´の両端部分に重なる部分に水分が回り込まないように重なる部分42aを保護可能な幅を有する領域である。
【0075】
よって、本実施形態に係る液晶装置1によれば、TFTアレイ基板10上に形成されたNチャネル型のTFT30の動作特性が高圧水蒸気処理によって高められていると共に、当該基板上に形成されたPチャネル型のTFT130の動作特性が高圧水蒸気処理によって低下することが抑制されている。言い換えれば、液晶装置1は、TFTアレイ基板10上に形成されたTFT30及び130に一括で高圧水蒸気処理を施した場合でも、TFT130の動作特性の低下による当該TFT130の動作時における誤作動の低減ができ、且つTFT30の動作特性の向上が実現可能に構成されている。したがって、TFT130がデータ線駆動回路101或いは走査線駆動回路104等の周辺回路部に含まれるCMOSの一部を構成している場合、CMOSを含む周辺回路部の動作特性の低下を抑制でき、液晶装置1の表示性能の総合的に高めることが可能である。
【0076】
(変形例1)
次に、図9を参照しながら、本実施形態に係る液晶装置1の変形例を説明する。図9は、本例に係る液晶装置の一部の構成を示した平面図である。尚、以下では、上述した液晶装置1と共通する部分に共通の参照符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0077】
図9に示すように、本例に係る液晶装置は、保護膜133a及び133bに代えて、半導体層130aが延びる方向、より具体的には図中左右方向に沿ってゲート電極33a1全体に重なる保護膜133cを備えている。
【0078】
保護膜133cによれば、TFT130に高圧水蒸気処理が施された場合でも、チャネル領域130a´の中央寄りの側から、重なる部分42aに水分が回り込むことを効果的に低減できる。
【0079】
(変形例2)
次に、図10を参照しながら、本実施形態に係る液晶装置1の他の変形例を説明する。図10は、本例に係る液晶装置の一部の構成を示した平面図である。
【0080】
図10に示すように、本例に係る液晶装置は、絶縁膜42上において、ソース領域130dに電気的に接続された端子部131、及びドレイン領域130eに電気的に接続された端子部の夫々と、ゲート電極33a1とを相互に隔てる領域P1及びP2の全体に重なる保護膜133d及び133eを備えている。
【0081】
保護膜133d及び133eによれば、ゲート電極33a1から見て端子部131及び端子部132の夫々の側から、重なる部分42aに水分が回り込むことをより確実に低減できる。
【0082】
(変形例3)
次に、図11及び図12を参照しながら、本実施形態に係る液晶装置の他の例を説明する。図11は、本例に係る液晶装置の一部の構成を示した平面図である。図12は、図11のXII−XII´断面図である。
【0083】
図11及び図12に示すように、本例に係る液晶装置は、端子部131及び端子部132と、ゲート電極33a1を覆う絶縁膜43及び44との間に延びており、絶縁膜42のうち半導体層130aに重なる部分の全体を覆う保護膜133fを備えている。したがって、端子部131及び132端子部と、ゲート電極33a1とを相互に電気的に絶縁する複数の絶縁膜の一つを保護膜133fとして兼用可能である。加えて、高圧水蒸気処理が施された際に、絶縁膜42のうち半導体層130aに重なる部分の全体に対して水分が回り込むことを防止でき、絶縁膜42のうち保護膜133fに覆われた部分にプラスの固定電荷が発生することを防止可能である。このような保護膜133fは、例えば、SiN膜等の絶縁膜である。
【0084】
<2:液晶装置の製造方法>
次に、図13及び図14を参照しながら、上述の液晶装置を製造するための液晶装置の製造方法を説明する。図13及び図14は、液晶装置1を製造するための主要な工程を順に示した工程断面図である。尚、以下では、上述の変形例3に係る液晶装置を製造する場合を例に挙げる。
【0085】
図13(a)に示すように、TFTアレイ基板10上の画素領域及び周辺領域の夫々にTFT130及び30を形成した後、絶縁膜44まで形成する。
【0086】
次に、図13(b)に示すように、水蒸気又は窒素雰囲気中において400℃の温度条件下でTFT30及び130にアニール処理を施す。このようなアニール処理によれば、半導体層130a及び1a、並びにゲート絶縁膜43gに含まれる欠陥を補償でき、TFT30及び130のオン電流の向上を図ることが可能である。
【0087】
次に、図14(c)に示すように、保護膜133を形成し、コンタクトホール135、136、81及び82、並びに、端子部131、132、84及び85を形成する。すでに説明したように、保護膜133fは、境界領域Ra及びRbだけでなく、周辺領域においてTFT130全体を覆うように形成される。
【0088】
次に、図14(d)に示すように、保護膜133fの上層側からTFT30及び130に一括で高圧の水蒸気を供給することによって、絶縁膜42のうちチャネル領域130a´に重なる部分42aに水分が回り込まないように、画素領域において半導体層1a、及びゲート絶縁膜43gの夫々に高圧水蒸気処理を施す。即ち、TFT130及び30の夫々の上側から高圧で水蒸気を供給したとしても、重なる部分42aに水分が回り込まないように保護膜133fが水蒸気を遮る。その後、周辺領域及び画素領域の夫々において、保護膜133f及び絶縁膜44の夫々の上層側に形成すべき画素電極9a等の各部を形成し、液晶装置を製造する。
【0089】
以上、説明した一連の工程を経ることによって、上述した変形例3に係る液晶装置を製造可能である。
【0090】
<3:電子機器>
次に、図15及び図16を参照しながら、上述の液晶装置を具備してなる電子機器の例を説明する。
【0091】
図15は、上述した液晶装置が適用されたモバイル型のパーソナルコンピュータの斜視図である。図15において、コンピュータ1200は、キーボード1202を備えた本体部1204と、上述した液晶装置を含んでなる液晶表示ユニット1206とから構成されている。液晶表示ユニット1206は、液晶パネル1005の背面にバックライトを付加することにより構成されており、高品位の画像表示が可能である。
【0092】
次に、上述した液晶装置1を携帯電話に適用した例について説明する。図16は、電子機器の一例である携帯電話の斜視図である。図16において、携帯電話1300は、複数の操作ボタン1302とともに、反射型の表示形式を採用し、且つ上述した液晶装置と同様の構成を有する液晶装置1005を備えている。したがって、携帯電話1300によれば、高品位の画像表示が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本実施形態に係る液晶装置の平面図である。
【図2】図1のII−II´断面図である。
【図3】本実施形態に係る液晶装置の画像表示領域を構成するマトリクス状に形成された複数の画素における各種素子、配線等の等価回路である。
【図4】本実施形態に係る液晶装置の画素部の構造の一部を周辺回路部の一部と共に示した断面図である。
【図5】本実施形態に係る液晶装置が有するPチャネル型のTFTの平面図である。
【図6】図5のVI−VI´断面図である。
【図7】保護膜が形成されていない状態のPチャネル型TFT及びNチャネル型TFTの夫々の断面図である。
【図8】本願発明者による実験結果を示したグラフである。
【図9】本実施形態に係る液晶装置における一の変形例の一部の平面図である。
【図10】本実施形態に係る液晶装置における他の変形例の一部の平面図である。
【図11】本実施形態に係る液晶装置における他の変形例の一部の平面図である。
【図12】図11のXII−XII´断面図である。
【図13】本実施形態に係る液晶装置の製造方法の主要な工程を示した工程断面図(その1)である。
【図14】本実施形態に係る液晶装置の製造方法の主要な工程を示した工程断面図(その2)である。
【図15】本実施形態に係る液晶装置を具備してなる電子機器の一例を示した斜視図である。
【図16】本実施形態に係る液晶装置を具備してなる電子機器の他の例を示した斜視図である。
【符号の説明】
【0094】
1・・・液晶装置、1a,130a・・・半導体層、1a´,130a´・・・チャネル領域、1d,130d・・・ソース領域、1e,130e・・・ドレイン領域、1b,1c・・・LDD領域、41、42、43,44,45,46,47・・・絶縁膜、43g・・・ゲート絶縁膜、133a,133b,133c,133d,133e,133f・・・保護獏

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された下地膜と、
前記下地膜上の一の領域に形成されており、(i)第1チャネル領域、第1ソース領域及び第1ドレイン領域を含む第1半導体層、(ii)前記第1半導体層上に形成された第1ゲート絶縁膜、及び(iii)前記第1ゲート絶縁膜上において前記第1チャネル領域に重なる第1ゲート電極を有するPチャネル型の第1トランジスタ素子と、
前記第1ソース領域及び前記第1ドレイン領域の各々と前記第1チャネル領域との境界領域に重なるように前記第1ゲート電極上に形成されており、前記下地膜上の他の領域に形成されたNチャネル型の第2トランジスタ素子に高圧水蒸気処理が施された際に、前記下地膜のうち前記第1チャネル領域に重なる部分に水分が回り込まないように前記重なる部分を保護する保護膜と
を備えたことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記保護膜は、前記第1半導体層が延びる方向に沿って前記第1ゲート電極の全体に重なっていること
を特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1ソース領域に電気的に接続された第1端子部と、
前記第1ドレイン領域に電気的に接続された第2端子部とを備え、
前記保護膜は、前記下地膜上において前記第1端子部及び前記第2端子部の夫々と前記第1ゲート電極とを相互に隔てる領域の全体に重なっていること
を特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記保護膜は、前記下地膜上において前記第1端子部及び前記第2端子部と同層に形成された導電膜であること
を特徴とする請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記保護膜は、前記第1端子部及び前記第2端子部と、前記第1ゲート電極を覆う絶縁膜との間に延びていること
を特徴とする請求項3に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記保護膜は、SiN膜であること
を特徴とする請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第2トランジスタ素子は、(i)第2チャネル領域、第2ソース領域及び第2ドレイン領域を含む第2半導体層、(ii)前記第2半導体層上に形成された第2ゲート絶縁膜、及び(iii)前記第2ゲート絶縁膜上において前記第2チャネル領域に重なる第2ゲート電極を有しており、
前記高圧水蒸気処理は、前記一の領域及び前記他の領域の夫々に前記第1トランジスタ素子及び前記第2トランジスタ素子の夫々が形成された後、前記第2ゲート絶縁膜及び前記第2半導体層に含まれる欠陥を補償するために施されること
を特徴とする請求項1から6の何れか一項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第1半導体層及び前記第1ゲート絶縁膜の夫々は、前記保護膜が形成されるに先んじてアニール処理を施されていること
を特徴とする請求項1から7の何れか一項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記他の領域は、前記基板上において複数の画素部が形成された表示領域であり、
前記一の領域は、前記基板上において前記表示領域の周辺に延びる周辺領域であり、
前記第1トランジスタ素子は、前記画素部を駆動するために前記周辺領域に形成された周辺回路部の一部を構成していること
を特徴とする請求項1から8の何れか一項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第2トランジスタ素子は、前記表示領域において前記画素部毎に形成された画素スイッチング用素子であること
を特徴とする請求項9に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記画素部に画像信号を供給するデータ線を備え、
前記保護膜は、前記下地膜上において前記データ線と同層に形成されていること
を特徴とする請求項9又は10に記載の半導体装置。
【請求項12】
基板上に形成された下地膜上の一の領域に、(i)第1チャネル領域、第1ソース領域及び第1ドレイン領域を含む第1半導体層、(ii)前記第1半導体層を覆う第1ゲート絶縁膜、及び(iii)前記第1ゲート絶縁膜上において前記第1チャネル領域に重なる第1ゲート電極を有するPチャネル型の第1トランジスタ素子を形成する工程と、
前記下地膜上の他の領域に、(iv)第2チャネル領域、第2ソース領域及び第2ドレイン領域を含む第2半導体層、(v)前記第2半導体層上に形成された第2ゲート絶縁膜、及び(vi)前記第2ゲート絶縁膜上において前記第2チャネル領域に重なる第2ゲート電極を有するNチャネル型の第2トランジスタ素子を形成する工程と、
前記第1ソース領域及び前記第1ドレイン領域の各々と前記第1チャネル領域との境界領域に重なるように前記第1ゲート電極上に保護膜を形成する工程と、
前記保護膜の上層側から前記第1トランジスタ素子及び前記第2トランジスタ素子に一括で高圧の水蒸気を供給することによって、前記下地膜のうち前記第1チャネル領域に重なる部分に水分が回り込まないように前記第2半導体層、及び前記第2ゲート絶縁膜の夫々に高圧水蒸気処理を施す工程と
を備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−43948(P2009−43948A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−207515(P2007−207515)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】