説明

半導体装置及び電子機器

【課題】薄膜の応力を用いて、トランジスタのしきい値電圧を変化させる。
【解決手段】第1のチャネル形成領域を有する第1の半導体層と、第2のチャネル形成領域を有する第2の半導体層に対して、それらの上に形成された薄膜の応力を用いて、トランジスタのしきい値電圧を異ならせることができる。これらを電気的に接続することで、E/D MOS回路を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に薄膜トランジスタを用いた集積回路を有する半導体装置に関する。
例えば、液晶表示装置に代表される電気光学装置及びその電気光学装置を搭載した電子機
器の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上TFT(薄膜トランジスタ)を多数個配列させて、アクティブマトリクス型液晶
表示装置に代表される半導体装置が開発されている。TFTは少なくとも島状半導体膜か
ら成る活性層と、該活性層の基板側に設けられた第1の絶縁層と、該活性層とは反対側に
設けられた第2の絶縁層とが積層された構造を有している。
【0003】
前記第1の絶縁層を介して、前記活性層に所定の電圧を印加するようにゲート電極を設
けた構造は、逆スタガもしくはボトムゲート型と呼ばれている。本明細書はすべてこの逆
スタガ型構造に関する。
【0004】
ところで、TFT特性を表す特性パラメータはいくつかあるなかで、電界効果移動度と
しきい値電圧が特性の良さの目安とされている。
【0005】
高い電界効果移動度の実現を目標として、TFT構造やその製造工程は理論的解析と経
験的側面から注意深く検討されてきた。特に重要な要因は半導体層中のバルク欠陥密度や
、半導体層と絶縁層との界面における界面凖位密度を可能な限り低減させることが必要で
あると考えられていた。
【0006】
デバイス設計を行う際の最も重要なパラメータである、しきい値電圧の設定によりデバ
イスの種類が区別されている。導通させるためにゲート電圧を印加させる必要のあるTF
Tはエンハンスメント型(Enhancement)またはノーマリーオフ型(Normally-Off)TFT
、導通させないためにゲート電圧を印加させる必要のあるTFTはディプレッション型(
Depletion)またはノーマリーオン型(Normally-On)TFTとよばれる。
【0007】
一般に、しきい値電圧、エンハンスメント型TFT、ディプレッション型TFTは次の
ように定義されている。図1aにあるようにゲート電圧―ドレイン電流特性曲線において
特性曲線の二乗特性領域の接線aと横軸(ゲート電圧軸)との交点をしきい値電圧と定義
する。また、エンハンスメント型TFTを、nチャネル型TFTであり前記しきい値電圧
が零または正電圧であるTFT、またはpチャネル型TFTであり前記しきい値電圧が負
電圧であるTFTと定義する。同様に、ディプレッション型TFTを、nチャネル型TF
Tでありしきい値電圧が負電圧であるTFT、またはpチャネル型TFTでありしきい値
電圧が零または正電圧であるTFTと定義する。
【0008】
しきい値電圧の制御方法としてはイオン打ちこみ法や半導体膜成膜時に不純物ガスを流
すなどの方法で、ゲート絶縁層上の半導体膜に不純物を導入するというチャネルドープ法
が一般に用いられている。
【0009】
チャネルドープをする不純物の種類は、エンハンスメント型TFTではチャネル部にチ
ャネル形成時の導電型と異なる導電型の不純物を添加し、ディプレッション型TFTでは
同じ導電型の不純物を導入する。例えば、nチャネルTFTをエンハンスメント型TFT
にするにはホウ素などのp型不純物を、ディプレッション型にするにはリンやヒ素などの
n型不純物を導入すれば良い。
また、チャネル形成領域での前記不純物の濃度は、SIMS(Secondary Ion Mass Spect
roscopy)分析における検出限界値1×1015atoms/cm3を越える濃度になり、5×1017a
toms/cm3で2V程度のしきい値のシフトがおこるが、5×1017atoms/cm3を越える濃度で
は結晶性悪化により移動度の低化が顕著になるためこれを越えない濃度が好ましい。
【0010】
ところで、しきい値電圧が0VのTFTでも現実にはゲート電圧が0Vのときドレイン
電流は0ではない。ゲート電圧が0Vのときにドレイン電流が小さくなるようにするには
しきい値電圧より、むしろドレイン電流の値が基準値以下になるときのゲート電圧を指標
として、この値を充分0Vに近くする方がよい。本明細書ではドレイン電圧の絶対値1V
の条件(詳しくはpチャネル型TFTではドレイン電圧−1V、nチャネル型TFTでは
ドレイン電圧+1V)でチャネル形成領域の幅1μm当たりのドレイン電流1pA流れる
時のゲート電圧を基準値とし、この値を制御することを考える。(図1b)
【0011】
また本明細書では、前記ドレイン電圧の絶対値1Vでチャネル形成領域の幅1μm当た
りのドレイン電流の絶対値1pAのときのゲート電圧値によってエンハンスメント型TF
Tとディプレッション型TFTを定義する。つまり、エンハンスメント型TFTを、nチ
ャネル型TFTでありドレイン電圧+1Vでチャネル形成領域の幅1μm当たりのドレイ
ン電流1pAのときのゲート電圧が零または正電圧であるTFT、またはpチャネル型T
FTでありドレイン電圧−1Vでチャネル形成領域の幅1μm当たりのドレイン電流1p
Aのときのゲート電圧が負電圧であるTFTと定義する。同様に、ディプレッション型T
FTを、nチャネル型TFTでありドレイン電圧+1Vでチャネル形成領域の幅1μm当
たりのドレイン電流1pAのときのゲート電圧が負電圧であるTFT、またはpチャネル
型TFTでありドレイン電圧+1Vでチャネル形成領域の幅1μm当たりのドレイン電流
1pAのときのゲート電圧が零または正電圧であるTFTと定義する。
【0012】
さらに、ドレイン電圧の絶対値1Vでチャネル形成領域の幅1μm当たりのドレイン電
流1pAのときのゲート電圧を0Vに十分近くにすると、しきい値電圧もある電圧値に制
御される。したがって、本明細書においてドレイン電圧の絶対値1Vでチャネル形成領域
の幅1μm当たりのドレイン電流1pAのときのゲート電圧を0Vに十分近くすることと
、しきい値電圧の制御とは同じ意味であるとする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しきい値電圧の制御にチャネルドープ法を用いて行う場合、活性層に不純物を導入する
ため、必然的にこの不純物起因のバルク結晶欠陥や、半導体層と絶縁層の界面凖位を生じ
させてしまう。この結果、TFT特性、特に電界効果型移動度を悪化させる原因となる。
【0014】
本発明者は、TFT特性を悪化させることなくしきい値電圧の制御をおこなうことが、
デバイス作成上重要であり、したがってチャネルドープ法を用いないでしきい値電圧の制
御をする方法を確立することが重要であると考えた。また、そのためには薄膜の応力を制
御することが有効であると考えた。
【課題を解決するための手段】
【0015】
チャネルドープを行っていない場合について考える。この場合、チャネル形成領域での
p型またはn型不純物濃度は、SIMS分析における検出限界値1×1015atoms/cm3
満になる。
【0016】
TFTに用いられる半導体膜は、非晶質半導体をはじめ、高い電界効果移動度が得られ
る結晶質半導体が適していると考えられている。ここで、結晶質半導体とは、単結晶半導
体、多結晶半導体、または微結晶半導体を含むものである。また、絶縁層は、代表的には
酸化シリコン、窒化シリコン、または窒酸化シリコンなどの材料で形成されている。
【0017】
CVD法(化学的気相成長法)、スパッタ法、または真空蒸着法などの公知の技術で製
作される前記材料の薄膜には内部応力があることが知られている。内部応力はさらにその
薄膜が本来持つ真性応力と、薄膜と基板との熱膨張係数の差に起因する熱応力とに分離し
て考えられていた。熱応力はTFT作製工程の加熱工程で発生するもので、プロセス温度
の設定によりその影響を無視できる。一方、真性応力の発生のメカニズムは必ずしも明確
にはされておらず、薄膜の成長過程やその後の熱処理などによる相変化や組成変化が複雑
に絡み合って発生しているものと考えられていた。
【0018】
一般に、内部応力は図2に示すように、基板に対して薄膜が収縮しようとする時には、
基板はその影響を受けて、薄膜を内側にして変形するのでこれを引っ張り応力と呼んでい
る。一方、薄膜が伸張する時には、基板は押し縮められて薄膜を外側にして変形するので
これを圧縮応力と呼んでいる。このように、便宜上内部応力の定義は基板を中心として考
えられていた。本明細書でも内部応力はこの定義に従って記述する。また、本明細書では
、引っ張り応力は正、圧縮応力は負の符号をもつとして定義する。
【0019】
非晶質半導体膜から熱結晶化やレーザー結晶化などの方法で作製される結晶質半導体膜
は、結晶化の過程で体積収縮が起こることが知られていた。その割合は非晶質半導体膜の
状態にもよるが、0.1〜1%程度であるとされていた。その結果、結晶質半導体膜には
引っ張り応力が発生し、その大きさは約1×109Paに及ぶこともあった。また酸化シリ
コン膜、窒化シリコン膜、および窒酸化シリコン膜などの絶縁膜の内部応力は、膜作製条
件やその後の熱処理条件によって圧縮応力から引っ張り応力まで様々に変化することが知
られていた。
【0020】
ところで、活性層半導体膜とそれに接している基板側または基板と反対側の絶縁膜の応
力を変化させると、しきい値電圧が変化する。これについて詳細な理由は現在までのとこ
ろ明らかではないが、例えば活性層半導体膜が収縮しようとするとき、これを引き伸ばす
方向に応力が作用すれば結晶粒界に歪が生じ、この領域に転位や結晶欠陥の生成および不
対結合手の生成に伴う界面凖位の発生がおこると考えられる。また結晶欠陥や界面凖位は
しきい値電圧に影響を及ぼすことはよく知られたことであった。したがって応力の変化に
よりしきい値電圧を変化させることができる。あるいは、応力が活性層半導体膜に加わる
と、格子定数、すなわち半導体膜を構成している半導体原子の隣接間距離が変化し、これ
に伴って半導体膜のエネルギーバンド構造が変化するためにしきい値電圧も変化すると考
えられる。
【0021】
したがって、活性層に加わる応力を適当に変えることで、しきい値電圧を制御できる。
ところでしきい値電圧と直接的な相関を持つのは第2の絶縁膜の応力と膜厚の積と活性層
の応力と膜厚の積の和であり、同じ膜質であっても、活性層と第2の絶縁層の両方、また
はどちらか一方の膜厚を変えることによっても、しきい値電圧を制御することができる。
【0022】
図11は第2の絶縁層の応力と膜厚の積および活性層の応力と膜厚の積との和、とTF
Tのドレイン電圧の絶対値1Vでチャネル形成領域の幅1μm当たりのドレイン電流の絶
対値1pAのときのゲート電圧の相関曲線である。ただし、図の特性曲線はpチャネル型
TFTとnチャネル型TFTが活性層の不純物濃度を除いて、同じ構造を持っていると仮
定している。この仮定のもとで、ドレイン電圧の絶対値1Vでチャネル形成領域の幅1μ
m当たりのドレイン電流の絶対値1pAのときのゲート電圧が0VになるX座標X0の大
きさは同じになるが、これはX0が第2の絶縁膜の応力と膜厚の積と活性層の応力と膜厚
の積の和という量のみで決まっていることを表している。また、前記相関曲線は直線にな
り、nチャネル型TFTとpチャネル型TFTでは、傾きの符号が等しくなっており、し
たがってエンハンスメント型かディプレッション型かの区別は同じX座標では逆になって
いる。前記相関曲線でX0の絶対値と、前記相関曲線の傾きは、第1の絶縁層の応力と膜
厚の積または活性層の応力と膜厚の積により任意の値をとるが、その場合でも第2の絶縁
層の応力と膜厚を適当なものにすることで、ドレイン電圧の絶対値1Vでチャネル形成領
域の幅1μm当たりのドレイン電流の絶対値1pAのときのゲート電圧を0Vに近い値、
好ましくは絶対値が2V以下にすることが可能である。
【0023】
ところで、しきい値電圧の制御にチャネルドープ法を用いる場合でも、チャネルドープ
なしでドレイン電圧の絶対値1Vでチャネル形成領域の幅1μm当たりのドレイン電流の
絶対値1pAのときのゲート電圧が0V近く好ましくは2V以下になるように第2の絶縁
層と活性層の応力と膜厚の積を適当な値に設定しておけば、チャネル領域にチャネルドー
プする不純物の濃度を小さくでき、したがってチャネルドープ起因のTFT特性悪化が抑
制できるため有効である。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、活性層の応力と膜厚の積または第2の絶縁膜の応力と膜厚の積を
適当な値にすることでチャネルドープを行わずに、TFTのしきい値電圧を制御すること
が可能である。これによりチャネルドープ起因の結晶欠陥のないよりよい電気的特性を持
つTFTの作製が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】エンハンスメント型TFTとディプレッション型TFTの定義図。
【図2】薄膜の内部応力の定義を説明する図。
【図3】実施の形態1を説明するTFTの断面図。
【図4】実施の形態2を説明するTFTの断面図。
【図5】TFTの作製工程を示す断面図。
【図6】TFTの作製工程を示す断面図。
【図7】TFTの作製工程を示す断面図。
【図8】TFTの作製工程を示す断面図。
【図9】CMOS回路の上面図、断面図、回路図。
【図10】E/DMOS回路の上面図、断面図、回路図。
【図11】第2の絶縁層の応力と膜厚の積と本明細書での基準となるゲート電圧との相関図。
【図12】実施例1のTFT作製実験結果。
【図13】実施例6を説明する図。
【図14】実施例6を説明する図。
【図15】実施例6を説明する図。
【図16】チャネルドープを行う場合の実施の形態を説明する図
【図17】チャネルドープを行って作製するCMOS回路の上面図、断面図、回路図。
【図18】チャネルドープを行って作製するE/DMOS回路の上面図、断面図、回路図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[実施の形態1] チャネルドープ法を用いない場合についての実施形態を図3で説明する
。図3の(A)および(B)において絶縁表面を有する基板301上にゲート電極302
が形成され、その上に第1の絶縁層である、引っ張り応力を持つ窒化シリコン膜303aと
圧縮応力を持つ窒酸化シリコン膜303bが積層されている。
【0027】
活性層304は非晶質半導体膜をレーザー結晶化や熱結晶化などの方法で作製された結
晶質半導体膜であり、詳細な作製方法に限定されるものではないが必然的に引張り応力を
有している。そして、必要に応じてチャネル形成領域304c、LDD領域304b、ソ
ース領域304a、ドレイン領域304dが設けられている。ソース電極306とドレイ
ン電極307は、第2の絶縁層305の一部にコンタクトホールを形成して設けられてい
る。
【0028】
チャネル形成領域ではn型不純物であるリンや砒素、またはp型不純物であるホウ素の
濃度がSIMS分析による検出限界以下であり、ソース領域およびドレイン領域ではn型
不純物であるリンや砒素、またはp型不純物であるホウ素が1×1019atoms/cm3以上の
高濃度で注入されている。
【0029】
図3(A)において、第2の絶縁層は圧縮応力を持つ窒酸化シリコン膜である。その応
力と膜厚によりしきい値電圧を制御している。
【0030】
また、図3(B)にあるように、第2の絶縁層は複数の絶縁膜を積層して形成してもよ
い。図3(B)では、第2の絶縁層305aは圧縮応力を持つ窒酸化シリコン膜で、その
上に圧縮応力を持つ第2の絶縁層305bである酸化シリコン膜が積層されており、より
効果的に応力の制御ができた。
【0031】
第1の絶縁層における応力の絶対値と膜厚の積は、第2の絶縁層における応力の絶対値
と膜厚の積と比べ十分小さいため、しきい値電圧への第2の絶縁層からの応力と膜厚の積
が支配的であった。第2の絶縁層における応力[Pa]と膜厚[m]の積と、活性層における応
力[Pa]と膜厚[m]の積、の和が-8.0×101〜-1.2×102であり、ドレイン電圧の
絶対値1Vでチャネル形成領域の幅1μm当たりのドレイン電流の絶対値1pAのときの
ゲート電圧の絶対値は2V以下に制御された。
【0032】
以上の工程により作製されたnチャネル型TFTはディプレッション型TFTとなり、p
チャネル型TFTはエンハンスメント型TFTとなった。
【0033】
[実施の形態2] CMOS回路においては、同一基板上にnチャネル型TFTおよびpチ
ャネル型TFTの両方が作製される。そして、前記nチャネル型TFTおよびpチャネル
型TFTについては両方ともエンハンスメント型である回路構成がよく用いられる。そこ
で、本実施の形態では、チャネルドープ法を用いず、第2の絶縁層における応力と膜厚の
積を適当に設定することで、しきい値電圧を制御し所望のTFTを得る方法を図4で説明
する。
【0034】
ところで,発明の詳細な説明で記述したように、チャネルドープを行っていないnチャ
ネル型TFTおよびpチャネル型TFTにおいては、エンハンスメント型かディプレッシ
ョン型かの区別は、第2の絶縁膜と活性層の応力と膜厚の積が同じなら、互いに反対の種
類になる。そこで、同一基板内でエンハンスメント型かディプレッション型かどちらか一
方のみのTFTを作製するには第2の絶縁層の構造をかえて応力と膜厚の積に差違をつけ
ることが必要となる。
【0035】
図4において絶縁表面を有する基板401上にゲート電極402が形成され、その上に
第1の絶縁層である、引っ張り応力を持つ窒化シリコン膜403aと圧縮応力を持つ窒酸化
シリコン膜403bが積層されている。
【0036】
nチャネル型TFT側において、活性層404は、引張り応力を有した半導体層であり
、必要に応じてチャネル形成領域404c、LDD領域404b、ソース領域404a、
ドレイン領域404dが設けられている。また、pチャネル型TFT側において活性層4
05は、引張り応力を有した半導体層であり、チャネル形成領域405c、ソース領域4
05a、ドレイン領域405dが設けられている。ソース電極406、408とドレイン
電極407、409は、第2の絶縁層410の一部にコンタクトホールを形成して設けら
れている.
【0037】
活性層チャネル形成領域ではn型不純物であるリンや砒素、またはp型不純物であるホ
ウ素の濃度が1×1015atoms/cm3以下であり、活性層ソースおよびドレイン領域ではn
型不純物であるリンや砒素、またはp型不純物であるホウ素が1×1019atoms/cm3以上
の高濃度で注入されている。
【0038】
ところで、図4においてnチャネル型TFTの第2の絶縁層410と活性層404の間
に積層されているのは、前記nチャネル型TFTの不純物ドーピング時に使用される、活
性層保護膜、およびマスク絶縁膜であり、不純物ドーピング後もエッチングせずに残して
おくことで、pチャネル型TFTに対して、第2の絶縁層の膜厚と応力の積に差異が付け
られる。
【0039】
nチャネル型TFTに加わる応力として、第2の絶縁層とマスク絶縁膜とドーピング時に使用した活性層の保護膜の応力[Pa]と膜厚[m]の積、および活性層の応力[Pa]と膜厚[m]の積の和が、nチャネル型TFTでは-1.2×102〜-1.4×102とし、一方pチャネル型TFTでは-8.0×101〜1,2×102とすると、nチャネル型TFTとpチャネル型TFTのどちらもエンハンスメント型であるTFTができる。また、ドレイン電圧の絶対値1Vでチャネル形成領域の幅1μm当たりのドレイン電流の絶対値1pAのときのゲート電圧の絶対値は2V以下に制御される。
【0040】
[実施の形態3]本発明のチャネルト゛ーフ゜法を用いる場合についての実施の形態を図1
6で説明する。CMOS回路では、同一基板内でnチャネル型TFTとpチャネル型TF
Tの両方が作られ、どちらもエンハンスメント型TFTとなるようにしきい値電圧が制御
される。ところが、チャネルドープをしない場合に、第2の絶縁層と活性層の応力と膜厚
が前記nチャネル型TFTと前記pチャネル型TFTで同一になるようにした場合には、
発明の詳細な説明で述べたように、ドレイン電圧の絶対値1Vでチャネル形成領域の幅1
μm当たりのドレイン電流の絶対値1pAのときのゲート電圧の絶対値は0V近くになる
ように制御できるが、エンハンスメント型TFTだけでなく、ディプレッション型TFT
も作られてしまう。この場合には前記nチャネル型TFTか前記pチャネル型TFTのう
ちディプレッション型になっているTFTの活性層にチャネルドープを行い、エンハンス
メント型TFTになるようにしきい値電圧を制御するのが有効である。
【0041】
図16において絶縁表面を有する基板401上にゲート電極402が形成され、その上
に第1の絶縁層である、引っ張り応力を持つ窒化シリコン膜403aと圧縮応力を持つ窒酸
化シリコン膜403bが積層されている。
【0042】
nチャネル型TFT側において、活性層404は、引張り応力を有した半導体層であり
、必要に応じてチャネル形成領域404c、LDD領域404b、ソース領域404a、
ドレイン領域404dが設けられている。また、pチャネル型TFT側において活性層4
05は、引張り応力を有した半導体層であり、チャネル形成領域405c、ソース領域4
05a、ドレイン領域405dが設けられている。ソース電極406、408とドレイン
電極407、409は、第2の絶縁層410の一部にコンタクトホールを形成して設けら
れている。
【0043】
ここで、活性層404と405は同時に成膜された同一の膜厚および応力をもつ半導体膜
であり、第2の絶縁層410と411は同時に成膜された、同一の膜厚及び膜質を持つ絶
縁膜である。例えば図16のpチャネル型TFTがエンハンスメント型になるように第2
の絶縁層と活性層の膜厚と応力を設定した場合には、nチャネル型TFTの活性層チャネ
ル形成領域404にボロンなどのp型不純物でチャネルドープを行いエンハンスメント型
にしきい値を制御する。これにより同一基板内にエンハンスメント型のnチャネル型TF
Tとpチャネル型TFTを作ることができる。
【0044】
以上の方法ではnチャネル型TFTにはチャネルドープを行わないため、その活性層はチ
ャネルドープ起因の結晶欠陥や界面凖位がない良好な結晶性を持つ。また、pチャネル型
TFTにはチャネルドープを行っているが、第2の絶縁層と活性層の応力を考慮して作ら
れているため、チャネルドープにおける不純物濃度は5×1017atoms/cm3以下の十分少
ない量でしきい値電圧が制御できるため、やはり良好な結晶性を持つ活性層をもつTFT
となる。
【実施例1】
【0045】
図5〜図7を用いて本実施例を説明する。まず、基板601としてガラス基板、例えば
コーニング社の#1737基板を用意した。そして、基板601上にゲート電極602を
形成した。ここでは、スパッタ法を用いて、タンタル(Ta)
膜を200nmの厚さにスパッタ法により形成した。また、ゲート電極602を、窒化タ
ンタル膜(膜厚50nm)とタンタル膜(膜厚250nm)の2層構造としても良い。
【0046】
そして、第1の絶縁層603、非晶質半導体層604を順次大気開放しないで連続形成
した。第1の絶縁層は窒素リッチな窒酸化シリコン膜603a(膜厚50nm)と窒酸化
シリコン膜(膜厚125nm)で形成した。窒素リッチな窒酸化シリコン膜603aはS
iH4、N2O、NH3の混合ガスよりプラズマCVD法で作製された。また、非晶質半導
体層604もプラズマCVD法を用い、20〜100nm、好ましくは30〜75nmの
厚さに形成した。(図5(B))
【0047】
そして、450〜550℃で1時間の加熱処理を行った。この加熱処理により第1の絶
縁層603と非晶質半導体層604とから水素が放出され、引張り応力を付与することが
できた。その後、非晶質半導体層604に対して、結晶化の工程を行い、結晶質半導体層
605を形成した。ここでの結晶化の工程は、レーザー結晶化法や熱結晶化法を用いれば
良い。レーザー結晶化法では、例えばXeClエキシマレーザー光(波長308nm)を
用い、線状ビームを形成して、発振パルス周波数30Hz、レーザーエネルギー密度10
0〜500mJ/cm2、線状ビームのオーバーラップ率を96%として非晶質半導体層
の結晶化を行った。ここで、非晶質半導体層が結晶化するに伴って、体積収縮が起こり、
形成された結晶性半導体層605の引張り応力は増大した。(図5(C))
【0048】
ここで、チャネルドープを行う場合には結晶性半導体層605に接して絶縁層を形成後、
レジストマスクを使用してチャネルドープを行うTFTのみ選択的にチャネルドープを行
う。チャネルドープを行った後でレジストマスクを剥離しさらに活性層を覆っていた絶縁
層にはチャネルドープ時に不純物が注入されており、後の工程で活性層にこの絶縁層中の
不純物が拡散する可能性があるためフッ酸系エッチャントをもちいて選択的に除去する。
【0049】
次に、こうして形成された結晶質半導体層605に接して絶縁膜606を形成した。ここ
では、窒酸化シリコン膜を200nmの厚さに形成した。その後、裏面からの露光を用い
たパターニング法により、絶縁膜606に接したレジストマスク607を形成した。ここ
では、ゲート電極602がマスクとなり、自己整合的にレジストマスク607を形成する
ことができた。そして、図示したようにレジストマスクの大きさは、光の回り込みによっ
て、わずかにゲート電極の幅より小さくなった。(図5(D))そして、レジストマスク
607を用いて絶縁膜606をエッチングして、チャネル保護膜608を形成した後、レ
ジストマスク607は除去した。この工程により、チャネル保護膜608と接する領域以
外の結晶性半導体層605の表面を露呈させた。このチャネル保護膜608は、後の不純
物添加の工程でチャネル領域に不純物が添加されることを防ぐ役目を果たした。
(図5(E))
【0050】
次いで、フォトマスクを用いたパターニングによって、nチャネル型TFTの一部とp
チャネル型TFTの領域を覆うレジストマスク609を形成し、結晶質半導体層605の
表面が露呈している領域にn型を付与する不純物元素を添加する工程を行った。そして、
第1の不純物領域(n+型領域)610aが形成された。本実施例では、n型を付与する
不純物元素としてリンを用いたので、イオンドープ法においてフォスフィン(PH3)を
用い、ドーズ量5×1014atoms/cm2、加速電圧10kVとした。また、上記レジスト
マスク609のパターンは実施者が適宣設定することによりn+型領域の幅が決定され、
所望の幅を有するn-型領域、およびチャネル形成領域を容易に得ることができた。(図
6(A))
【0051】
レジストマスク609を除去した後、マスク用絶縁膜611を形成した。ここでは、窒
酸化シリコン膜(膜厚50nm)をプラズマCVD法で作製した。窒酸化シリコン膜は圧
縮応力を有していた。(図6(B))
【0052】
次いで、マスク用絶縁膜611が表面に設けられた結晶質半導体層にn型を付与する不
純物元素を添加する工程を行い、第2の不純物領域(n-型領域)612を形成した。但
し、マスク用絶縁膜611を介してその下の結晶質半導体層に不純物を添加するために、
マスク用絶縁膜611の厚さを考慮にいれ、適宣条件を設定する必要があった。ここでは
、ドーズ量3×1013atoms/cm2、加速電圧60kVとした。こうして形成される第2
の不純物領域612はLDD領域として機能した。(図6(C))
【0053】
次いで、nチャネル型TFTを覆うレジストマスク614を形成し、pチャネル型TF
Tが形成される領域にP型を付与する不純物元素を添加する工程を行った。ここでは、イ
オンドープ法でジボラン(B26)を用い、ボロン(B)を添加した。ドーズ量は4×1
15atoms/cm2、加速電圧30kVとした。(図6(D))
【0054】
ところで、p型不純物添加後に、nチャネル型TFTを覆っていたレジストマスクを剥
離せず、pチャネル型TFTの活性層を覆っているマスク用絶縁膜611およびチャネル
保護膜608をフッ素系エッチング液で選択除去し、nチャネル型TFTとp型TFTに
おける第2の絶縁層の構造を変えることで活性層に加わる応力に差違をつけ、しきい値電
圧を制御してもよい。(図8(A))
【0055】
また、たとえば、同一基板上にあるnチャネル型TFTのなかで、エンハンスメント型
およびディプレッション型TFTの両方を作り込む場合には、不純物添加行程終了後、デ
ィプレッション型にしたいTFT以外をレジストマスクで覆い、フッ素系エッチャント液
でマスク用絶縁膜とチャネル保護膜を選択除去すればよい。
【0056】
その後、レーザーアニールまたは熱アニールによる不純物元素の活性化の工程を行った
後、水素雰囲気中で熱処理(300〜450℃、1時間)を行い全体を水素化した(図7
、8(A))。また、プラズマ化された水素により水素化しても良い。その後、チャネル
保護膜608とマスク用絶縁膜611をフッ酸系エッチング液で選択除去し、公知のパタ
ーニング技術により結晶性半導体層を所望の形状にエッチングした。(図7、8(B))
【0057】
以上の工程を経て、nチャネル型TFTのソース領域615、ドレイン領域616、L
DD領域617、618、チャネル形成領域619が形成され、pチャネル型TFTのソ
ース領域621、ドレイン領域622、チャネル形成領域620が形成された。次いで、
nチャネル型TFTおよびpチャネル型TFTを覆って第2の絶縁層を形成した。第2の
絶縁層は圧縮応力―8.1×108Paを持つ酸化シリコン膜を1000nmの厚さに形
成した。(図7、8(C))
【0058】
そして、コンタクトホールを形成して、ソース電極624、627、ドレイン電極62
5、627を形成した。さらに第2の絶縁層として、酸化シリコン膜から成る絶縁膜62
3上に、ソース電極624、627、ドレイン電極625、627を覆って、窒酸化シリ
コン膜623を形成した。図7、8(D)に示す状態を得た後、最後に水素雰囲気中で熱
処理を行い、全体を水素化してnチャネル型TFTとpチャネル型TFTが完成した。水
素化の工程はプラズマ化した水素雰囲気にさらすことによっても実現できた。
【0059】
以上の工程により作製したTFTによる、ドレイン電圧の絶対値1Vでチャネル形成領
域の幅1μm当たりのドレイン電流の絶対値1pAのときのゲート電圧の絶対値、の応力
依存性(該ゲート電圧に対する、第2の絶縁層の応力と膜厚の積および活性層の応力と膜
厚の積の和の依存性)は図12(A)および(B)のようになった。ここで、図12にあ
る3種類の応力と膜厚の積の値は、表1で表される第2の絶縁層構造によって得られた。
【0060】
【表1】

【0061】
図12(A)は前記TFT作製方法により作製した、nチャネルTFTのしきい値と第
2の絶縁層応力×膜厚の依存性をあらわす。実測データがある直線上にのると仮定し、こ
の直線を最小二乗法を用いて最も実測テ゛ータと誤差の少ない直線(線分)として求めた
のが、図12のFitting-Curveであり、そのFitting-Curveを外挿したのが予想曲線である
。Fitting-Curveと予想曲線より、第2の絶縁層の応力[Pa]と膜厚[m]の積と活性層の応力
[Pa]と膜厚[m]の積の和がおよそ-7.5×101〜―1.1×101の間にある時は、ドレ
イン電圧+1Vでチャネル形成領域の幅1μm当たりのドレイン電流の絶対値1pAのと
きのゲート電圧の絶対値が2V以下になっていることが分かった。またエンハンスメント
型TFTとディプレッション型TFTの両方を、第2の絶縁層の応力と膜厚の積と活性層
の応力と膜厚の積の和を適当な値にすることで、作製できることが分かった。
同様に図12(B)はpチャネルTFTの作製実験結果であるが、やはり2の絶縁層応
力[Pa]と膜厚[m]の積と活性層の応力[Pa]と膜厚[m]の積の和がおよそ-8.5×101〜-1
.1×101の間にある時は、ドレイン電圧の−1Vでチャネル形成領域の幅1μm当た
りのドレイン電流の絶対値1pAのときのゲート電圧の絶対値が2V以下になっているこ
と、エンハンスメント型TFTとディプレッション型TFTの両方を作製できること、が
分かった。
【実施例2】
【0062】
チャネルドープを行わず実施例1の作製工程を用いたnチャネル型TFTとpチャネル
型TFTを備えた半導体装置について図9を用いてその一例を説明する。
図9はCMOS回路の基本構成であるインバータ回路を示す。このようなインバータ回路
を組み合わせることで、NAND回路、NOR回路のような基本回路を構成したり、さら
に複雑なシフトレジスタ回路やバッファ回路などを構成することができる。図9(A)は
CMOS回路の上面図に相当する図であり、図9(A)において点線A-A'の断面構造図を
図9(B)に示す。
【0063】
図9(B)において、nチャネル型TFTおよびpチャネル型TFTの両方は同一基板
上に形成されている。pチャネル型TFTは、ゲート電極902が形成され、その上に第
1の絶縁層として、引張り応力を有する窒素リッチな窒酸化シリコン膜903と、窒酸化
シリコン膜904とが設けられている。そして、第1の絶縁層に接して結晶性半導体膜か
ら成る活性層が形成され、p+領域912(ドレイン領域)、915(ソース領域)とチ
ャネル形成領域914とが設けられている。この半導体層に接して第2の絶縁層917が
設けられ、ここでは酸化シリコン膜919が形成されている。そして酸化シリコン膜に設
けられたコンタクトホールを通してソース電極920、ドレイン電極918が形成されて
いる。一方、nチャネル型TFTの活性層には、n+型領域905(ソース領域)、91
1(ドレイン領域)とチャネル形成領域909と、前記n+型領域とチャネル形成領域と
の間にn-型領域が設けられている。そして活性層の上に、ドープ行程で用いたマスク用
絶縁膜921および活性層保護膜922が除去されず残されており、これにより前記pチ
ャネル型TFTに比べより大きな応力を受け、しきい値電圧を制御させている。さらにp
チャネル型TFTと同様に、第2の絶縁層917にはコンタクトホールが形成され、ソー
ス電極916、ドレイン電極918が設けられている。
【0064】
このようなCMOS回路は、アクティブマトリクス型液晶表示装置の周辺駆動回路や、
EL(ElectroLuminescence)表示装置の駆動回路や、密着型イメージセンサの読み取り
回路などに応用することができる。
【実施例3】
【0065】
チャネルドープを行わず、実施例1の作製工程を用いたnチャネル型TFTを備えた半
導体装置について図10を用いてその一例を説明する。図10はNMOS回路の基本構成
であるE/D MOS(エンハンスメント/ディプレッション)インバータ回路を示す。E
/D MOSインバータの特徴は、一つの回路内にエンハンスメント型とディプレッショ
ン型の両方のTFTが含まれることであり、このようなインバータ回路を組み合わせるこ
とで、NAND回路、NOR回路のような基本回路を構成したり、さらに複雑なシフトレ
ジスタ回路やバッファ回路などを構成することができる点は実施例2のCMOSインバー
タ回路と同様である。図10(A)はE/D MOSインバータ回路の上面図に相当する
図であり、図10(A)において点線A-A'の断面構造図を図10(B)に示し、また図1
0(C)に回路図を表す。
【0066】
図10(B)において、エンハンスメント型とディプレッション型TFTが同一基板上
に形成されている。ディプレッション型TFTは、ゲート電極902が形成され、その上
に第1の絶縁層として、引張り応力を有する窒素リッチな窒酸化シリコン膜903と、窒
酸化シリコン膜904とが設けられている。そして、第1の絶縁層に接して結晶性半導体
膜から成る活性層が形成され、n+領域911(ドレイン領域)、915(ソース領域)
とチャネル形成領域914とが設けられ、またソース領域およびドレイン領域とチャネル
形成領域の間には必要に応じてn-型領域が設けられている。この半導体層に接して第2
の絶縁層917が設けられ、ここでは酸化シリコン膜919が形成されている。そして酸
化シリコン膜に設けられたコンタクトホールを通して、ドレイン電極920が形成されて
いる。一方、エンハンスメント型TFTの活性層には、n+型領域905(ソース領域)
、911(ドレイン領域)とチャネル形成領域909と、前記n+型領域とチャネル形成
領域との間にn-型領域が設けられている。そして活性層の上に、ドープ工程で用いたマ
スク用絶縁膜921および活性層の保護膜922が除去されず残されており、これにより
前記ディプレッション型TFTに比べより大きな応力を受け、しきい値電圧を制御させて
いる。さらにディプレッション型TFTと同様に、第2の絶縁層917にはコンタクトホ
ールが形成され、ソース電極916、が設けられている。
【0067】
このようなE/D MOS回路は、実施例2のCMOS回路同様アクティブマトリクス
型液晶表示装置の周辺駆動回路や、EL(Electro luminescence)型表示装置の駆動回
路や、密着型イメージセンサの読み取り回路などに応用することができる。
【実施例4】
【0068】
同一基板上にエンハンスメント型TFTであるnチャネル型TFTとpチャネル型TF
Tを備え、そのどちらか一方のTFTのチャネル形成領域にチャネルドープが行われてい
る半導体装置について図17を用いてその一例を説明する。図17はCMOS回路の基本
構成であるインバータ回路を示す。このようなインバータ回路を組み合わせることで、N
AND回路、NOR回路のような基本回路を構成したり、さらに複雑なシフトレジスタ回
路やバッファ回路などを構成することができる。図17(A)はCMOS回路の上面図に
相当する図であり、図17(A)において点線A-A'の断面構造図を図17(B)に示す。
【0069】
図17(B)において、nチャネル型TFTおよびpチャネル型TFTの両方は同一基板
上に形成されている。pチャネル型TFTは、ゲート電極902が形成され、その上に第
1の絶縁層として、引張り応力を有する窒素リッチな窒酸化シリコン膜903と、窒酸化
シリコン膜904とが設けられている。そして、第1の絶縁層に接して結晶性半導体膜か
ら成る活性層が形成され、p+領域912(ドレイン領域)、915(ソース領域)とp
型またはn型不純物濃度が1×1015atoms/cm3未満であるチャネル形成領域914とが
設けられている。この半導体層に接して第2の絶縁層917が設けられ、ここでは酸化シ
リコン膜919が形成されている。そして酸化シリコン膜に設けられたコンタクトホール
を通してソース電極920、ドレイン電極918が形成されている。一方、nチャネル型
TFTの活性層には、n+型領域905(ソース領域)、911(ドレイン領域)とチャ
ネル形成領域909と、前記n+型領域とチャネル形成領域との間にn-型領域が設けられ
ている。そして活性層チャネル形成領域の909にBなどのp型不純物が1×1015atom
s/cm3以上5×1017atoms/cm3以下の低濃度でチャネルドープされており、これによりド
レイン電圧+1Vでチャネル形成領域の幅1μm当たりのドレイン電流の絶対値1pAの
ときのゲート電圧をプラス側に制御させている。さらにpチャネル型TFTと同様に、第
2の絶縁層917にはコンタクトホールが形成され、ソース電極916、ドレイン電極9
18が設けられている。以上はnチャネル型TFTにチャネルドープを行う例だが、第2
の絶縁層と活性層の膜厚と応力の設定によってはpチャネル型TFTにチャネルドープを
行っても良い。
【0070】
このようなCMOS回路は、アクティブマトリクス型液晶表示装置の周辺駆動回路や、
EL(ElectroLuminescence)表示装置の駆動回路や、密着型イメージセンサの読み取り
回路などに応用することができる。
【実施例5】
【0071】
同一基板上にエンハンスメント型TFTである第1のnチャネル型TFTとディプレッ
ション型TFTである第2のnチャネル型TFTの両方を備え、その何れか一方にチャネ
ルドープを行った半導体装置について図18を用いて説明する。
図18はNMOS回路の基本構成であるE/D MOS(エンハンスメント/ディプレッシ
ョン)インバータ回路を示す。E/D MOSインバータの特徴は、一つの回路内にエン
ハンスメント型とディプレッション型の両方のTFTが含まれることであり、このような
インバータ回路を組み合わせることで、NAND回路、NOR回路のような基本回路を構
成したり、さらに複雑なシフトレジスタ回路やバッファ回路などを構成することができる
点は実施例2のCMOSインバータ回路と同様である。図18(A)はE/D MOSイ
ンバータ回路の上面図に相当する図であり、図18(A)において点線A-A'の断面構造図
を図18(B)に示し、また図18(C)に回路図を表す。
【0072】
図18(B)において、エンハンスメント型とディプレッション型TFTが同一基板上に
形成されている。ディプレッション型TFTは、ゲート電極902が形成され、その上に
第1の絶縁層として、引張り応力を有する窒素リッチな窒酸化シリコン膜903と、窒酸
化シリコン膜904とが設けられている。そして、第1の絶縁層に接して結晶性半導体膜
から成る活性層が形成され、n+領域911(ドレイン領域)、915(ソース領域)と
p型またはn型不純物濃度が1×1015atoms/cm3未満であるチャネル形成領域914と
が設けられ、またソース領域およびドレイン領域とチャネル形成領域の間には必要に応じ
てn-型領域が設けられている。この半導体層に接して第2の絶縁層917が設けられ、
ここでは酸化シリコン膜919が形成されている。そして酸化シリコン膜に設けられたコ
ンタクトホールを通して、ドレイン電極920が形成されている。一方、エンハンスメン
ト型TFTの活性層には、n+型領域905(ソース領域)、911(ドレイン領域)と
チャネル形成領域909と、前記n+型領域とチャネル形成領域との間にn-型領域が設け
られている。そして活性層チャネル形成領域の909にBなどのp型不純物が1×1015
atoms/cm3以上5×1017atoms/cm3以下の低濃度でチャネルドープされており、これによ
りドレイン電圧+1Vでチャネル形成領域の幅1μm当たりのドレイン電流の絶対値1p
Aのときのゲート電圧をプラス側に制御させている。さらにディプレッション型TFTと
同様に、第2の絶縁層917にはコンタクトホールが形成され、ソース電極916、が設
けられている。以上はエンハンスメント型TFTにチャネルドープを行う例だが、第2の
絶縁層と活性層の膜厚と応力の設定によってはディプレッション型TFTにチャネルドー
プを行っても良い。
【0073】
このようなE/D MOS回路は、実施例2のCMOS回路同様アクティブマトリクス
型液晶表示装置の周辺駆動回路や、EL(Electro luminescence)型表示装置の駆動回
路や、密着型イメージセンサの読み取り回路などに応用することができる。
【実施例6】
【0074】
本実施例では、本発明のTFT回路によるアクティブマトリクス型液晶表示装置を組み
込んだ半導体装置について図13、図14、図15で説明する。
【0075】
このような半導体装置には、携帯情報端末(電子手帳、モバイルコンピュータ、携帯電
話等)、ビデオカメラ、スチルカメラ、パーソナルコンピュータ、テレビ等が挙げられる
。それらの一例を図13と図14に示す。
【0076】
図13(A)は携帯電話であり、本体9001、音声出力部9002、音声入力部90
03、表示装置9004、操作スイッチ9005、アンテナ9006から構成されている
。本願発明は音声出力部9002、音声入力部9003、及びアクティブマトリクス基板
を備えた表示部9004に適用することができる。
【0077】
図13(B)はビデオカメラであり、本体9101、表示部9102、音声入力部91
03、操作スイッチ9104、バッテリー9105、受像部9106から成っている。本
願発明は音声入力部9103、及びアクティブマトリクス基板を備えた表示装置9102
、受像部9106に適用することができる。
【0078】
図13(C)はモバイルコンピュータ或いは携帯型情報端末であり、本体9201、カ
メラ部9202、受像部9203、操作スイッチ9204、表示装置9205で構成され
ている。本願発明は受像部9203、及びアクティブマトリクス基板を備えた表示装置9
205に適用することができる。
【0079】
図13(D)はヘッドマウントディスプレイであり、本体9301、表示部9302、
アーム部9303で構成される。本願発明は表示装置9302に適用することができる。
また、表示されていないが、その他の信号制御用回路に使用することもできる。
【0080】
図13(E)はテレビであり、本体9401、スピーカー9402、表示部9403、
受信装置9404、増幅装置9405等で構成される。液晶表示装置や、EL表示装置は
表示部9403に適用することができる。
【0081】
図13(F)は携帯書籍であり、本体9501、表示部9502、9503、記憶媒体
9504、操作スイッチ9505、アンテナ9506から構成されており、ミニディスク
(MD)やDVDに記憶されたデータや、アンテナで受信したデータを表示するものであ
る。表示部9502、9503は直視型の表示装置であり、本発明はこの表示部に適用す
ることができる。
【0082】
図14(A)はパーソナルコンピュータであり、本体9601、画像入力部9602、
表示部9603、キーボード9604で構成される。
【0083】
図14(B)はプログラムを記録した記録媒体(以下、記録媒体と呼ぶ)を用いるプレ
ーヤーであり、本体9701、表示装置9702、スピーカ部9703、記録媒体970
4、操作スイッチ9705で構成される。なお、この装置は記録媒体としてDVD(Di
gtial Versatile Disc)、CD等を用い、音楽鑑賞や映画鑑賞やゲ
ームやインターネットを行うことができる。
【0084】
図14(C)はデジタルカメラであり、本体9801、表示部9802、接眼部980
3、操作スイッチ9804、受像部(図示しない)で構成される。
【0085】
図15(A)はフロント型プロジェクターであり、表示装置3601、スクリーン36
02で構成される。本発明は表示装置やその他の信号制御回路に適用することができる。
【0086】
図15(B)はリア型プロジェクターであり、本体3701、投射装置3702、ミラ
ー3703、スクリーン3704で構成される。本発明は表示装置やその他の信号制御回
路に適用することができる。
【0087】
なお、図15(C)は、図15(A)及び図15(B)中における投射装置3601、
3702の構造の一例を示した図である。投射装置3601、3702は、光源光学系3
801、ミラー3802、3804〜3806、ダイクロイックミラー3803、プリズ
ム3807、液晶表示装置3808、位相差板3809、投射光学系3810で構成され
る。投射光学系3810は、投射レンズを含む光学系で構成される。本実施例は三板式の
例を示したが、特に限定されず、例えば単板式であってもよい。また、図15(C)中に
おいて矢印で示した光路に実施者が適宜、光学レンズや、偏光機能を有するフィルムや、
位相差を調節するためのフィルム、IRフィルム等の光学系を設けてもよい。
【0088】
また、図15(D)は、図15(C)中における光源光学系3801の構造の一例を示
した図である。本実施例では、光源光学系3801は、リフレクター3811、光源38
12、レンズアレイ3813、3814、偏光変換素子3815、集光レンズ3816で
構成される。なお、図15(D)に示した光源光学系は一例であって特に限定されない。
例えば、光源光学系に実施者が適宜、光学レンズや、偏光機能を有するフィルムや、位相
差を調節するフィルム、IRフィルム等の光学系を設けてもよい。
【0089】
また、本発明はその他にも、イメージセンサやEL型表示素子に適用することも可能で
ある。このように、本願発明の適用範囲はきわめて広く、あらゆる分野の電子機器に適用
することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のチャネル形成領域を有する第1の半導体層と、前記第1のチャネル形成領域と重なるように設けられた第1のゲート電極とを有し、
第2のチャネル形成領域を有する第2の半導体層と、前記第2のチャネル形成領域と重なるように設けられた第2のゲート電極とを有し、
前記第1の半導体層と前記第2の半導体層に接して設けられた第1の絶縁層を有し、
前記第1の絶縁層が設けられた前記第1の半導体層の一方の面の反対側で、前記第1の半導体層と重なる第2の絶縁層を有し、
前記第1の絶縁層が設けられた前記第2の半導体層の一方の面の反対側で、前記第2の半導体層と重なる前記第2の絶縁層及び第3の絶縁層を有し、
前記第1のゲート電極は、前記第1の半導体層のソース領域側と電気的に接続され、かつ、前記第2の半導体層のドレイン領域側と電気的に接続されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
チャネルドープを行っていない第1のチャネル形成領域を有する第1の半導体層と、前記第1のチャネル形成領域と重なるように設けられた第1のゲート電極とを有し、
チャネルドープを行っていない第2のチャネル形成領域を有する第2の半導体層と、前記第2のチャネル形成領域と重なるように設けられた第2のゲート電極とを有し、
前記第1の半導体層と前記第2の半導体層に接して設けられた第1の絶縁層を有し、
前記第1の絶縁層が設けられた前記第1の半導体層の一方の面の反対側で、前記第1の半導体層と重なる第2の絶縁層を有し、
前記第1の絶縁層が設けられた前記第2の半導体層の一方の面の反対側で、前記第2の半導体層と重なる前記第2の絶縁層及び第3の絶縁層を有し、
前記第1のゲート電極は、前記第1の半導体層のソース領域側と電気的に接続され、かつ、前記第2の半導体層のドレイン領域側と電気的に接続されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記第2の絶縁層と前記第3の絶縁層が重なった前記第2の半導体層を有するトランジスタのしきい値電圧は、前記第1の半導体層を有するトランジスタのしきい値電圧と異なることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一において、
前記第2の絶縁層と前記第3の絶縁層が重なった前記第2の半導体層に加わる応力は、前記第1の半導体層に加わる応力と異なることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一において、
前記第1の半導体層と、前記第2の半導体層とは分離されていないことを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一において、
前記第1の半導体層のチャネル長は、前記第2の半導体層のチャネル長より長いことを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一において、
前記第1の半導体層及び前記第2の半導体層に前記第2の絶縁層が接していることを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一において、
前記第3の絶縁層は、前記第2の絶縁層上に設けられることを特徴とする半導体装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一において、
前記第1のチャネル形成領域におけるn型またはp型不純物の濃度はSIMS分析における検出限界値未満であり、前記第2のチャネル形成領域におけるn型またはp型不純物の濃度はSIMS分析における検出限界値未満であることを特徴とする半導体装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一において、
前記第1の半導体層を有するトランジスタはディプレッション型であり、前記第2の半導体層を有するトランジスタはエンハンスメント型であることを特徴とする半導体装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一において、
前記第1の半導体層を有するトランジスタのしきい値電圧は、前記第2の半導体層を有するトランジスタのしきい値電圧より小さいことを特徴とする半導体装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一に記載の半導体装置と、操作スイッチとを有する電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2012−156534(P2012−156534A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−72679(P2012−72679)
【出願日】平成24年3月28日(2012.3.28)
【分割の表示】特願2011−147889(P2011−147889)の分割
【原出願日】平成12年3月2日(2000.3.2)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】