説明

半導体装置

【課題】
電源電圧の立ち上がりが緩やかであっても、パワーオンリセット信号を生成することができる半導体装置を提供すること。
【解決手段】
本発明にかかる半導体装置は、電源電圧発生回路11と、クロック生成回路14と、パワーオンリセット回路17とを備え、パワーオンリセット回路17は、クロックパルスに応答してカウント動作するカウンタ回路と、カウンタ値に基づき、リセット信号を出力する出力回路とを備えるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、特に、パワーオンリセット回路を備えた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工場での物流管理、小売店での物品管理において、商品の固有情報を書き込んだICを有するタグを貼り付けて、その情報を無線アンテナで読み取り、リアルタイムに商品の管理をするために、商品を自動認識する手段としてRFID(Radio Frequency IDentification)に関する技術が注目されている。
【0003】
RFID用ICタグ(以下、ICタグという)は、リーダ・ライタと無線通信によってデータの送受信を行い、ICタグに内蔵された不揮発性メモリに商品の固有情報等のデータを書き込んだり、この不揮発性メモリからデータを読み出したりする。ICタグは、電池を搭載せずに無線の電波により電源電圧を生成する"パッシブ型"と、電池を搭載する"アクティブ型"に分類される。
【0004】
パッシブ型のICタグは、ICタグ内部の回路において、リーダ・ライタから送信される搬送波の一部を整流し、動作するために必要な電源電圧を生成する。この生成した電源電圧が供給されることによって、ICタグの半導体装置内部の制御回路や、データが書き込まれる不揮発性メモリ、リーダ・ライタとデータの送受信を行う通信回路等が動作する。また、この制御回路等の内部回路に電源電圧の供給が開始されるとき、パワーオンリセット回路によって、内部回路を初期化するパワーオンリセットが行われる。
【0005】
図11及び図12を用いて、従来のパワーオンリセット回路について説明する。図11は、従来のパワーオンリセット回路の回路図を示しており、図12は、従来のパワーオンリセット回路における、電源電圧VDD、ノードN1、出力S3の電圧を示している。
【0006】
従来のパワーオンリセット回路は、図11に示されるように、電源ラインとノードN1との間に接続された抵抗71、ノードN1と接地ラインGNDとの間に接続されたキャパシタ72、ノードN1と出力S3との間に接続されたインバータ73とによって構成されている。この従来のパワーオンリセット回路は、電源ラインに印加される電源電圧VDDの上昇をキャパシタ72によって積分し、パワーオンリセット信号を生成している。
【0007】
図12(a−1)は、理想的な傾きの電源電圧の例を示しており、このように電源電圧VDDが所定の傾きを持って上昇すると、ノードN1には、図12(a−2)のように電源電圧VDDをキャパシタ73によって積分した電圧が現れる。そして、電源電圧VDDとノードN1の電圧との差分がインバータ73を構成するPチャネルトランジスタの閾値を超えると、電源ラインに接続されたインバータ73の出力S3は、図12(a−3)のようにほぼ電源電圧VDDとなる。
【0008】
本例では、Pチャネルトランジスタの閾値Vtpを1vとしているため、電源電圧VDDが1.5v、ノードN1の電圧が0.5vになったときインバータ73が電源電圧1.5vを出力しハイレベルとなっている。なお、インバータ73を構成するもう一方のトランジスタである、Nチャネルトランジスタの閾値が3vであるとし、電源電圧VDDが3vになった時点で出力S3は0vとなる。このようにして、パワーオンリセット信号である出力S3が生成される。
【0009】
このような従来のパワーオンリセット回路として特許文献1の回路が知られている。
【0010】
通常の安定した電源電圧が供給される半導体装置においては、電源電圧の上昇率があらかじめ分かっているため、パワーオンリセット信号を生成するために最適なキャパシタの値及び抵抗の値を設定することができ、上記従来のパワーオンリセット回路によってパワーオンリセット信号を生成することが可能である。
【特許文献1】特開平10−313240号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、ICタグにおいては、受信した搬送波から電源電圧を生成しており、搬送波の強度は、リーダ・ライタとの距離によって変化するため、リーダ・ライタへの接近速度によって電源電圧の傾き(上昇率)が決定されることになる。
【0012】
リーダ・ライタへの接近速度が速いときは、図12(b−1)に示すように電源電圧VDDの傾きが急峻となり、ノードN1の電圧は、キャパシタ72が急峻に変化した電源電圧VDDに対して強く変化を妨げる方向に働くため、図12(b−2)に示すように最初は殆ど変化せず、途中から急峻に変化する波形となる。そのため、図12(b−3)に示すように、パワーオンリセット信号は、図12(a−3)に示す場合のものよりも細いものとなる。
【0013】
ここでは、電源電圧VDDが1.1v、ノードN1が0.1vのとき、その差分が1vとなり、Pチャネルトランジスタのしきい値を超えるため出力信号S3がハイレベルとなっている。
【0014】
リーダ・ライタへの接近速度が遅いときは、図12(c−1)に示すように、電源電圧VDDの傾きが緩やかとなるため、ノードN1の電圧は、キャパシタが緩やかに変化した電源電圧VDDの変化に対して緩く変化を妨げる方向に働くため、図12(c−2)に示すように、ノードN1の電圧は電源電圧VDDの変化と同じように変化する。そのため、図12(c−3)に示すように、電源電圧VDDが3vに達するまでの間、ノードN1の電圧と電源電圧VDDとの差分がPチャネルトランジスタのしきい値を超えないという状態が発生する。その結果、出力信号S3は0vから全く変化せず、パワーオンリセット信号が生成されなくなる。
【0015】
また、図12(a−1)(b−1)(c−1)の点線に示すように、電源電圧VDDは安定しているものではなく、常にレベルが変動し揺れている。従って、電源電圧VDDが揺れることで再リセットもしくはリセット解除してしまうなど、意図しない動作をする可能性がある。
【0016】
このように、従来のパワーオンリセット回路では、電源電圧の立ち上がりが緩やかな場合、パワーオンリセット信号が生成されなくなり、リセット対象である内部回路のリセット/リセット解除が正常に行われないという問題点があった。
【0017】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、電源電圧の立ち上がりが緩やかであっても、パワーオンリセット信号を生成することができる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明にかかる半導体装置は、受信した無線信号に基づいて電源電圧を生成する電源電圧生成回路と、前記受信した無線信号に基づいてクロックパルスを生成するクロック生成回路と、前記電源電圧と前記クロックパルスとに基づいてリセット信号を生成するパワーオンリセット回路と、前記リセット信号に基づいて内部状態をリセットする内部回路と、を備え、前記パワーオンリセット回路は、前記クロックパルスに応答してカウント動作するカウンタ回路と、前記カウンタ回路のカウント値に基づき、前記リセット信号を出力する出力回路と、を備えるものである。これにより、電源電圧の立ち上がりが緩やかであっても、パワーオンリセット信号を生成し、内部回路のリセット/リセット解除を正常に行うことができる。
【0019】
上述の半導体装置において、前記カウンタ回路は、その入力端に電源電圧に基づく電圧が接続され、前記電源電圧に基づく電圧が所定の電圧以上になったとき前記クロック信号に応じてカウント動作を行うものであってもよい。これにより、内部回路のリセット/リセット解除を効率よく行うことができる。
【0020】
上述の半導体装置において、前記カウンタ回路は、初期値として予め定められた所定のレベルの信号を出力するフリップフロップを有するものであってもよい。これにより、内部回路のリセット/リセット解除を効率よく行うことができる。
【0021】
上述の半導体装置において、前記フリップフロップは、ラッチ回路を構成する第1及び第2のインバータ回路を有し、前記第1のインバータと第2のインバータとは、PchトランジスタとNchトランジスタのサイズ比が異なっていてもよい。これにより、内部回路のリセット/リセット解除をより確実に行うことができる。
【0022】
上述の半導体装置において、前記カウンタ回路は、前記クロックパルスに基づき前記電源電圧を出力する第1のフリップフロップと、前記クロックパルスに基づき前記第1のフリップフロップの出力信号をさらに出力する第2のフリップフロップと、を備え、前記出力回路は、前記第1及び第2のフリップフロップの出力信号に基づき、前記リセット信号を出力するものであってもよい。これにより、内部回路のリセット/リセット解除をより効果的に行うことができる。
【0023】
上述の半導体装置において、前記第1又は第2のフリップフロップは、ラッチ回路を構成する第1及び第2のインバータ回路を有し、前記第1のインバータと第2のインバータとは、PchトランジスタとNchトランジスタのサイズ比が異なっていてもよい。これにより、内部回路のリセット/リセット解除をより確実に行うことができる。
【0024】
上述の半導体装置において、前記第1又は第2のフリップフロップは、ラッチ回路を構成する第1及び第2のインバータ回路を有し、前記第1のインバータと第2のインバータとは、閾値電圧が異なっていてもよい。これにより、内部回路のリセット/リセット解除をより確実に行うことができる。
【0025】
上述の半導体装置において、前記第1又は第2のフリップフロップは、ラッチ回路を構成する第1及び第2のインバータ回路を有し、前記第1のインバータと第2のインバータとは、電流駆動能力が異なっていてもよい。これにより、内部回路のリセット/リセット解除をより確実に行うことができる。
【0026】
上述の半導体装置は、パッシブ型RFID用の半導体装置であってもよい。これにより、パッシブ型RFID用の半導体装置における内部回路のリセット/リセット解除を正常に行うことができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、電源の立ち上がりが緩やかであっても、内部回路のリセット/リセット解除を正常に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
まず、図1を用いて、本発明の実施の形態にかかるICタグシステムの構成について説明する。このICタグシステムは、図に示されるように、ICタグ1とリーダ・ライタ2とを備えており、ICタグ1とリーダ・ライタ2とは、無線による通信が可能である。
【0029】
ICタグ1は、リーダ・ライタ2からの指示に従い所望のデータをICタグ1内の記憶回路に書き込むことができ、さらに、リーダ・ライタ2は、このデータをICタグ1から読み出すことができる。データの書き込みや読み出しを行う場合、例えば、リーダ・ライタ2へICタグ1を近づけると、リーダ・ライタ2は、ICタグ1へ電波を送信し、ICタグ1は、この電波を整流して電源電圧を生成する。この電源電圧は、図12に示したように、電源電圧の立ち上がりの傾きは、ICタグ1をリーダ・ライタ2へ近づける速度に依存する。尚、リーダ・ライタ2をICタグ1へ近づける場合も同様である。
【0030】
次に、図2のブロック図を用いて、本実施形態にかかるICタグの構成について説明する。このICタグ1は、図に示されるように、半導体装置10、アンテナ20を備えており、半導体装置10とアンテナ20とは、アンテナ端子21を介して接続されている。また、半導体装置10は、電源電圧発生回路11、受信回路12、送信回路13、クロック生成回路14、制御回路15及び記憶回路16を備えている。
【0031】
アンテナ20は、リーダ・ライタ2と電波を送受信するアンテナであり、リーダ・ライタ2が送信する電波の周波数等に応じた特性を有している。電源電圧発生回路11は、アンテナ20によって受信された電波を整流し、電波に基づいた電源電圧を生成する。この電源電圧は、受信回路12や送信回路13、クロック生成回路14、制御回路15、記憶回路16、パワーオンリセット回路17等に供給される。
【0032】
受信回路12は、アンテナ20によって受信された電波を復調し、復調信号に変換する。この復調信号は、クロック生成回路14や制御回路15へ出力される。送信回路13は、制御回路15によって生成され送信するデータを含む送信信号を変調し、電波に変換する。この電波は、アンテナ20を介してリーダ・ライタ2へ送信される。
【0033】
クロック生成回路14は、受信回路12によって生成された復調信号から、一定周期の基準信号を抽出し、基準信号に基づいたCLK(クロック)信号を生成する。このCLK信号は、制御回路15やパワーオンリセット回路17等に出力される。尚、クロック生成回路14は、復調信号に限らず、アンテナ20によって受信された電波から直接、基準となる周期を検出しCLK信号を生成してもよい。
【0034】
パワーオンリセット回路17は、電源電圧発生回路11によって生成された電源電圧と、クロック生成回路14によって生成されたCLK信号とに基づいて、内部回路をリセットするRESET信号を生成する。このRESET信号は、制御回路15の他、電源供給開始時にリセットが必要な内部回路に出力される。例えば、RESET信号は、電源供給が開始されると、内部回路をリセットするためにハイレベルを出力し、電源電圧が所定のレベルで安定すると、内部回路のリセットを解除するためにロウレベルを出力する。本実施形態では、後述するように、電源電圧の立ち上がりが緩やかであっても確実に、リセット/リセット解除ができることを特徴としている。
【0035】
制御回路15は、受信回路12によって生成された復調信号から、データを抽出して解析し、このデータに基づいて記憶回路16の書き込みや読み出しを行う。また、制御回路15は、記憶回路16から読み出したデータ等に基づいて、リーダ・ライタ2へ送信するための送信信号を生成し、この送信信号を送信回路13へ出力する。さらに、制御回路15は、パワーオンリセット回路17によって生成されたRESET信号に基づいて、制御回路15の内部状態を初期化する。
【0036】
記憶回路16は、リーダ・ライタ2から受信したデータを記憶するメモリであり、例えば、不揮発性メモリである。記憶回路16は、制御回路15の制御に従って、データを記憶したり、記憶しているデータを出力したりする。記憶回路16は、不揮発性メモリとして、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)やフラッシュメモリ、FeRAM(Ferroelectric RAM)、MRAM(Magnetic RAM)、OUM(Ovonic Unified Memory)等であってもよい。
【0037】
次に、図3の回路図を用いて、本実施形態にかかるパワーオンリセット回路の構成について説明する。このパワーオンリセット回路17は、図に示されるように、フリップフロップ(以下、FFという)31a,31b,31cを備えている。尚、FF31a〜31cのうちの一つをFF31ともいう。
【0038】
FF31a〜31cは、クロック生成回路14が生成したCLK信号のクロックに基づいて電源電圧VDDのレベルをシフトするシフトレジスタを構成するとともに、一種のカウンタ回路を構成している。FF31a〜31cは、電源電圧発生回路11が生成した電源電圧VDDを入力し、クロック生成回路14が生成したCLK信号のクロックの数、すなわち、クロックパルスの数をカウントする。このカウンタ回路は、クロックパルス(CLK信号)に応答してカウント動作する回路であり、電源電圧VDDに基づく電圧が所定の電圧以上になったときクロックパルスに応じてカウント動作を行う回路である。図3において、FF31cは、このカウンタ回路がカウントした数に基づいてRESET信号を出力する出力回路である。図3の例では、FF31aの出力に基づいてFF31bから信号が出力され、FF31bの出力に基づいてFF31cからRESET信号が出力される。本実施形態では、電源供給開始時、RESET信号としてハイレベルを出力するために、FF31a〜31cがロウレベルを出力しやすい回路になっている。尚、FF31a〜31cの全てがロウレベルを出力しやすい回路であってもよいし、FF31a〜31cのうちのいずれか一つがロウレベルを出力しやすい回路であってもよい。
【0039】
この例では、FF31aは1クロック目をカウントし、FF31bは2クロック目をカウントし、FF31cは3クロック目をカウントし、3つのクロックをカウントする構成となっている。すなわち、CLK信号のクロックパルスを3クロックカウントした場合に、電源電圧VDDが安定したことを検出し、RESET信号の出力をハイレベルからロウレベルに切替える。
【0040】
尚、FF31a〜31cを3ビットカウンタとして8つのクロックをカウントしてもよいし、その他の任意の数のFF31を設けて任意の数のクロックをカウントしてもよい。カウントするクロックの数は、電源電圧VDDが安定した状態となるクロックの数であることが好ましい。
【0041】
FF31a〜31cは、例えば、後述するようなマスターラッチとスレーブラッチを有するD−FFであり、データを入力するD端子、ラッチしたデータを出力するQ端子、Q端子の出力の反転信号を出力するQB端子、CLK信号を入力するCLK端子を備えている。すなわち、FF31a〜31cは、CLK端子の入力信号に応じて、D端子の入力信号をQ端子及びQB端子から出力し、次段の回路へ転送する。
【0042】
クロック生成回路14によって生成されたCLK信号は、FF31a〜31cのCLK端子に入力される。電源電圧発生回路11によって生成された電源電圧VDDは、FF31aのD端子に入力される。FF31aの出力信号Q1は、FF31bのD端子に入力され、FF31bの出力信号Q2は、FF31cのD端子に入力される。そして、FF31cのQB端子から出力される出力信号(Q3の反転信号)をRESET信号として出力する。
【0043】
また、パワーオンリセット回路17は、図4及び図5に示すように、複数のFF31の出力に基づいてRESET信号を出力してもよい。図4及び図5では、NAND回路32が、FF31a〜31cのカウントした数に基づいてRESET信号を出力する出力回路となる。図4の例では、NAND回路32は、FF31bと31cの出力に基づいてRESET信号を出力する。すなわち、FF31bと31cの出力信号Q2とQ3がNAND回路32に入力される。図5の例では、NAND回路32は、FF31a〜31cの出力に基づいてRESET信号を出力する。すなわち、FF31a〜31cの出力信号Q1〜Q3がNAND回路32に入力される。尚、図4及び図5において、NAND回路32を他の論理回路としてもよく、例えば、OR回路として、FF31のQB端子の出力に基づいてRESET信号を出力してもよい。
【0044】
図3の構成では、電源電圧VDDが所定の電圧になってから、3クロックカウントするか否かによって、RESET信号を出力するため、より回路を簡素化でき、RESET信号を出力する条件をより単純にすることができる。図4及び図5の構成では、2クロックもしくは3クロックの間、電源電圧VDDが所定の電圧を継続するか否かによって、RESET信号を出力するため、図3よりも冗長な構成になってしまう。しかし、RFIDのような電源電圧が不安定な環境では、フリップフロップの出力が変化してしまい動作が不安定になる可能性があるため、このような状況を考慮し、冗長な検出状態を設定することにより確実にリセット解除を行うことができる。
【0045】
次に、図6のタイミングチャートを用いて、本実施形態にかかるパワーオンリセット回路の動作について説明する。図6は、図3乃至図5に示したパワーオンリセット回路17における各信号の波形を示している。
【0046】
電源電圧VDDは、リーダ・ライタ2から電波を受信すると、電源電圧発生回路11によって供給が開始され、電源立ち上げ期間において上昇し、その後、所定のVDDレベル(ハイレベル)で安定した電圧となる。
【0047】
CLK信号は、電源電圧VDDがVDDレベルになると、クロック生成回路14によって生成され、リーダ・ライタ2から受信した電波に基づいて、所定の周期のクロックパルスとなる。すなわち、CLK信号は、電源立ち上げ期間はロウレベルであり、その後、所定の周期でハイレベルとロウレベルを交互に繰り返す。尚、電源立ち上げ期間の後でも、電源電圧VDDのレベルが低下すると、CLK信号はハイレベルを出力しない。
【0048】
FF31aの出力信号Q1は、電源電圧VDDとCLK信号に基づいて生成され、電源電圧VDDがVDDレベルで、かつ、CLK信号がハイレベルになると、ハイレベルとなる。すなわち、出力信号Q1は、電源立ち上げ期間はロウレベルであり、その後、1つ目のクロックパルスのタイミング、すなわち、CLK信号が1回目にロウレベルからハイレベルに立ち上がるタイミングでハイレベルを出力する。
【0049】
FF31bの出力信号Q2は、FF31aの出力信号Q1とCLK信号に基づいて生成され、FF31aの出力信号Q1がハイレベルで、かつ、CLK信号がハイレベルになると、ハイレベルとなる。すなわち、出力信号Q2は、電源立ち上げ期間はロウレベルであり、その後、2つ目のクロックパルスのタイミング、すなわち、CLK信号が2回目にロウレベルからハイレベルに立ち上がるタイミングでハイレベルを出力する。
【0050】
FF31cの出力信号Q3は、FF31bの出力信号Q2とCLK信号に基づいて生成され、FF31bの出力信号Q2がハイレベルで、かつ、CLK信号がハイレベルになると、ハイレベルとなる。すなわち、出力信号Q3は、電源立ち上げ期間はロウレベルであり、その後、3つ目のクロックパルスのタイミング、すなわち、CLK信号が2回目にロウレベルからハイレベルに立ち上がるタイミングでハイレベルを出力する。
【0051】
RESET信号は、図3の例では、FF31cによってQ3の反転信号として出力され、Q3がロウレベルの場合、ハイレベルとなり、Q3がハイレベルの場合、ロウレベルとなる。図4の例では、RESET信号は、FF31b,31cの出力信号Q2,Q3に基づいてNAND回路32によって生成され、FF31b,31cのいずれか一つがロウレベルの場合、ハイレベルとなり、FF31b,31cの全てがハイレベルの場合、ロウレベルとなる。すなわち、RESET信号は、電源立ち上げ期間は、電源電圧VDDと共に上昇してハイレベルとなり、その後、3つ目のクロックパルスのタイミング、すなわち、CLK信号が3回目にロウレベルからハイレベルに立ち上がるタイミングでロウレベルとなる。尚、この例では、FF31a〜31cは、CLK信号の立ち上がりのタイミングでD端子の入力をラッチして出力しているが、CLK信号の立ち下がりのタイミングで動作してもよい。
【0052】
次に、図7の回路図を用いて、本実施形態にかかるパワーオンリセット回路に用いられるFFの構成について説明する。このFF31は、図4に示したパワーオンリセット回路17に設けられたFFであり、電源供給開始時にQ端子からロウレベル、QB端子からハイレベルを出力するFFである。
【0053】
FF31は、図に示されるように、クロックドライバ51、マスターラッチ52、スレーブラッチ53、出力ドライバ54を備えている。クロックドライバ51は、インバータINV1,INV2を有している。インバータINV1は、CLK端子からCLK信号が入力され、CLK信号を反転させたCKB信号を出力する。インバータINV2は、このCKB信号をさらに反転させた信号、すなわちCLK信号と同相のCK信号を出力する。
【0054】
マスターラッチ52は、クロックド・インバータCINV11,CINV21、インバータINV3を有している。クロックド・インバータCINV11は、D端子から入力信号が入力され、CK信号及びCKB信号に応じてON/OFFされて、入力信号を反転させた信号を接点P1へ出力する。インバータINV3は、接点P1の信号を反転させた信号を接点P2へ出力し、この信号がマスターラッチ52の出力信号となる。クロックド・インバータCINV21は、CK信号及びCKB信号に応じてON/OFFされて、接点P2の信号を反転させた信号を接点P1へ出力する。すなわち、クロックド・インバータCINV21とインバータINV3とは、入力端と出力端が交叉接続され、フィードバックループを形成している。
【0055】
また、クロックド・インバータCINV11とCINV21は、CK信号及びCKB信号によって、交互にON/OFFされ、すなわち、相補的にON/OFFされる。つまり、CK信号がロウレベルでCKB信号がハイレベルならば、クロックド・インバータCINV11はON、クロックド・インバータCINV21はOFFになり、CK信号がハイレベルでCKB信号がロウレベルならば、クロックド・インバータCINV11はOFF、クロックド・インバータCINV21はONになるように接続されている。
【0056】
スレーブラッチ53は、マスターラッチ52と同様に、クロックド・インバータCINV12,CINV22、インバータINV4を有している。クロックド・インバータCINV12は、マスターラッチ52の出力信号が入力され、CK信号及びCKB信号に応じてON/OFFされて、この出力信号を反転させた信号を接点P3へ出力する。インバータINV4は、接点P3の信号を反転させた信号を接点P4へ出力し、この信号がスレーブラッチ53の出力信号となる。クロックド・インバータCINV22は、CK信号及びCKB信号に応じてON/OFFされて、接点P4の信号を反転させた信号を接点P3へ出力する。すなわち、クロックド・インバータCINV22とインバータINV4とは、入力端と出力端が交叉接続され、フィードバックループを形成している。
【0057】
また、クロックド・インバータCINV12とCINV22は、CK信号及びCKB信号によって、交互にON/OFFされ、すなわち、相補的にON/OFFされる。さらに、クロックド・インバータCINV11とCINV12や、クロックド・インバータCINV21とCINV22も、交互にON/OFFされ、すなわち、相補的にON/OFFされる。つまり、CK信号がロウレベルでCKB信号がハイレベルならば、クロックド・インバータCINV12はOFF、クロックド・インバータCINV22はONになり、CK信号がハイレベルでCKB信号がロウレベルならば、クロックド・インバータCINV12はON、クロックド・インバータCINV22はOFFになるように接続されている。
【0058】
出力ドライバ54は、インバータINV5,INV6を有している。インバータINV5は、スレーブラッチ53の出力信号が入力され、この信号を反転させた信号をQB端子へ出力する。インバータINV6は、QB端子の信号をさらに反転させた信号、すなわちスレーブラッチ53の出力信号と同相の信号をQ端子へ出力する。
【0059】
また、インバータINV3やINV4は、例えば、図8(a)に示すように、PchトランジスタであるPMOS1とNchトランジスタであるNMOS1とが縦に直列に接続されて構成されている。入力端子INから入力される信号に応じて、PMOS1とNMOS1がON/OFFし、入力信号を反転させた信号をOUT端子から出力する。クロックド・インバータCINV21やCINV22は、例えば、図8(b)に示すように、PchトランジスタであるPMOS2,PMOS3とNchトランジスタであるNMOS2,NMOS3とが縦に直列に接続されて構成されている。CKB端子やCB端子には、上記のCK信号やCKB信号が入力され、CKB端子に入力される信号に応じてPMOS3がON/OFFし、CB端子に入力される信号に応じてNMOS3がON/OFFする。PMOS3とNMOS3がONのとき、入力端子INから入力される信号に応じて、PMOS1とNMOS1がON/OFFし、入力信号を反転させた信号をOUT端子から出力する。
【0060】
本実施形態では、電源供給開始時にQ端子からロウレベル、QB端子からハイレベルを出力するために、クロックド・インバータCINV22の設定とインバータINV4の設定を異なる値にしている。例えば、クロックド・インバータCINV22とインバータINV4とで、電流駆動能力を相違させてもよいし、閾値電圧を相違させてもよいし、PchトランジスタとNchトランジスタとのサイズ比を相違させてもよい。例えば、図8のPMOS1/NMOS1のサイズ比とPMOS2/NMOS2のサイズ比とが異なる値である。尚、クロックド・インバータCINV21とインバータINV3についても、同様に設定を変更してもよい。これにより、クロックド・インバータCINV21,CINV12がONとなったときの動作を保障し、動作を安定させることができる。
【0061】
次に、図9を用いて、本実施形態にかかるパワーオンリセット回路に用いられるFFの動作について説明する。図9は、図7に示したFF31における電源供給開始時の状態を示しており、この状態は、図6に示した電源立ち上げ期間の状態である。
【0062】
電源供給開始時は、図6に示した通り、CLK信号がロウレベルであるため、CK信号はロウレベル、CKB信号はハイレベルとなる。すなわち、クロックド・インバータCINV11とCINV22はONになり、クロックド・インバータCINV21とCINV12はOFFになる。
【0063】
クロックド・インバータCINV12がOFFであるため、Q端子及びQB端子の出力信号は、スレーブラッチ53のみによって決定される。すなわち、Q端子及びQB端子の出力信号は、接点P3の電位によって決定される。
【0064】
例えば、接点P3の電位がロウレベルとハイレベルの中間電位、すなわち、インバータINV4の閾値電圧に近い電位であれば、インバータINV4の出力レベルは不定となってしまう。そこで、本実施形態では、電源供給開始時、クロックド・インバータCINV22がハイレベルを出力するように設定している。すなわち、インバータINV4の動作よりも先にクロックド・インバータCINV22が動作しハイレベルを出力する。クロックド・インバータCINV22のPchトランジスタのサイズをより大きくしたり、クロックド・インバータCINV22の閾値をより高くしておくことで、電源供給開始時、接点P3へハイレベルを出力しやすいようにする。
【0065】
クロックド・インバータCINV21とインバータINV3、クロックド・インバータCINV22とインバータINV4の閾値電圧が異なる場合について、さらに詳述する。図10は、クロックド・インバータCINV21,CINV22およびインバータINV3,INV4の入出力特性の一例を示すグラフである。図のI1はクロックド・インバータCINV21,CINV22の特性を示し、図のI2はインバータINV3,INV4の特性を示している。
【0066】
I1は0.9V以上をハイレベル、I2は0.6V以上をハイレベルとみなしている。この時、クロックド・インバータCINV21,CINV22およびインバータINV3,INV4がそれぞれ同じ電位をとるような場合になったとしても、電源電圧が0.75Vまで上昇するときに、クロックド・インバータCINV21とCINV22はロウレベルに、また、インバータINV3とINV4はハイレベルと判断し、それぞれハイレベル、ロウレベルを出力する。このようにして、電源がゆっくり立ち上がるような場合でもクロックド・インバータCINV21とCINV22がハイレベルを、インバータINV3とINV4がロウレベルを電源供給開始時でも安定して出力することができる。
【0067】
このような構成により、ICタグのように電源電圧の立ち上がりが緩やかな場合であっても、リセット/リセット解除を正常に行うことができるとともに、電源電圧のレベル変動による誤動作を防止することができる。電源供給開始時に予め決められた所定のレベルを出力するFFを設けることにより、電源供給開始し電源電圧が立ち上がる期間、パワーオンリセット回路からハイレベルを確実に出力して内部回路をリセットすることができる。電源電圧が安定した後のクロックをカウントすることにより、電源電圧が安定した後の所定の期間経過後、パワーオンリセット回路からロウレベルを確実に出力して内部回路のリセットを解除することができる。また、電源電圧が安定した後であっても、電圧レベルが大きく変動し、ICタグが動作できない電圧まで下がってしまうことがある。本発明では、このような場合にも、上述のFFから所定のレベルを出力するため、確実にリセット/リセット解除が行われ、誤動作を防止することができる。
【0068】
尚、上述の例では、ICタグに設けられたパワーオンリセット回路として説明したが、これに限らず、その他の装置に設けられていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明にかかるICタグシステムの構成図である。
【図2】本発明にかかるICタグの構成を示すブロック図である。
【図3】本発明にかかるパワーオンリセット回路の構成を示す回路図である。
【図4】本発明にかかるパワーオンリセット回路の構成を示す回路図である。
【図5】本発明にかかるパワーオンリセット回路の構成を示す回路図である。
【図6】本発明にかかるパワーオンリセット回路の動作を示すタイミングチャートである。
【図7】本発明にかかるパワーオンリセット回路に用いられるフリップフロップの構成を示す回路図である。
【図8】本発明にかかるパワーオンリセット回路に用いられるインバータの構成を示す回路図である。
【図9】本発明にかかるパワーオンリセット回路に用いられるフリップフロップの動作を説明するための図である。
【図10】本発明にかかるパワーオンリセット回路に用いられるインバータの特性を示すグラフである。
【図11】従来のパワーオンリセット回路の構成を示す回路図である。
【図12】従来のパワーオンリセット回路の動作を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0070】
1 ICタグ
2 リーダ・ライタ
10 半導体装置
11 電源電圧発生回路
12 受信回路
13 送信回路
14 クロック生成回路
15 制御回路
16 記憶回路
17 パワーオンリセット回路
21 アンテナ端子
22 アンテナ
31a〜31c フリップフロップ
32 NAND回路
INV1〜INV6 インバータ
CINV11,12,21,22 クロックド・インバータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信した無線信号に基づいて電源電圧を生成する電源電圧生成回路と、
前記受信した無線信号に基づいてクロックパルスを生成するクロック生成回路と、
前記電源電圧と前記クロックパルスとに基づいてリセット信号を生成するパワーオンリセット回路と、
前記リセット信号に基づいて内部状態をリセットする内部回路と、を備え、
前記パワーオンリセット回路は、
前記クロックパルスに応答してカウント動作するカウンタ回路と、
前記カウンタ回路のカウント値に基づき、前記リセット信号を出力する出力回路と、を備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記カウンタ回路は、その入力端に電源電圧に基づく電圧が接続され、前記電源電圧に基づく電圧が所定の電圧以上になったとき前記クロック信号に応じてカウント動作を行うことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記カウンタ回路は、初期値として予め定められた所定のレベルの信号を出力するフリップフロップを有することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記フリップフロップは、ラッチ回路を構成する第1及び第2のインバータ回路を有し、
前記第1のインバータと第2のインバータとは、PchトランジスタとNchトランジスタのサイズ比が異なることを特徴とする請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記カウンタ回路は、前記クロックパルスに基づき前記電源電圧を出力する第1のフリップフロップと、前記クロックパルスに基づき前記第1のフリップフロップの出力信号をさらに出力する第2のフリップフロップと、を備え、
前記出力回路は、前記第1及び第2のフリップフロップの出力信号に基づき、前記リセット信号を出力することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1又は第2のフリップフロップは、ラッチ回路を構成する第1及び第2のインバータ回路を有し、
前記第1のインバータと第2のインバータとは、PchトランジスタとNchトランジスタのサイズ比が異なることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1又は第2のフリップフロップは、ラッチ回路を構成する第1及び第2のインバータ回路を有し、
前記第1のインバータと第2のインバータとは、閾値電圧が異なることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第1又は第2のフリップフロップは、ラッチ回路を構成する第1及び第2のインバータ回路を有し、
前記第1のインバータと第2のインバータとは、電流駆動能力が異なることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置。
【請求項9】
パッシブ型RFID用の半導体装置であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一つに記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−42213(P2006−42213A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−222596(P2004−222596)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【出願人】(000232036)NECマイクロシステム株式会社 (72)
【出願人】(304039102)株式会社キュービックアイディ (8)
【Fターム(参考)】