説明

半導体装置

【課題】スイッチング素子のスイッチング動作時における寄生インダクタンスを低減し、小型化、低コスト化が可能な半導体装置を提供する。
【解決手段】正極電極1と負極電極2との間に、FWD12を並列接続したIGBT11と、FWD14を並列接続したIGBT13とを直列に接続し、2個のIGBT11,13の接続点から電力を出力電極3へ出力する半導体装置として、正極電極1と出力電極3とを隣接させ、負極電極2を出力電極3の上側に配置し、正極電極1、負極電極2それぞれの外部接続部を出力電極3の外部接続部と対向する位置に平行に隣接させ、IGBT11、FWD12を正極電極1上に配置し、IGBT13、FWD14を、IGBT11、FWD12と負極電極2を挟んだ位置にある出力電極3上に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、特に、インバータ装置やDC−DCコンバータ装置等の電力変換装置用のスイッチ回路を構成する半導体装置に好適に適用することができる。
【背景技術】
【0002】
従来、インバータ装置やDC−DCコンバータ装置のような電力変換装置には、特許文献1の特開2001−110985号公報「半導体装置」に記載されているように、パワー用の半導体素子からなるスイッチ回路が用いられている。該スイッチ回路の構成としては、入力電源用の正極電極と負極電極との間に、第1の還流用ダイオードを逆並列接続した第1のスイッチング素子を正極電極側に接続し、第2の還流用ダイオードを逆並列接続した第2のスイッチング素子を負極電極側に接続し、第1のスイッチング素子と第2のスイッチング素子とを直列接続した接続点から誘導負荷側に接続するための出力電極を設けるように構成されているのが一般的である。
【特許文献1】特開2001−110985号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の電力変換装置に適用される半導体装置においては、正極電極側に接続する半導体素子(第1のスイッチング素子、第1の還流用ダイオード)と負極電極側に接続する半導体素子(第2のスイッチング素子、第2の還流用ダイオード)とを、出力電極側も含めて、それぞれの電極にワイヤボンディング等によって接続される際のワイヤ等の配線長を考慮して配置位置を決定するようにしているものの、スイッチング素子のスイッチング時における電流経路やあるいは該電流経路の変化によって生じる周回磁束による寄生インダクタンスに関する考慮がなされていないため、寄生インダクタンスを低減し難く、スイッチング素子のスイッチング時に大きなサージ電圧が発生し、スイッチング損失が大きくなり、半導体装置の小型化、低コスト化を図ることが困難であるという問題があった。
【0004】
本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、スイッチング素子のスイッチング動作時における寄生インダクタンスを低減して、大きなサージ電圧の発生を抑止し、装置の小型化、低コスト化を可能とする半導体装置を提供することを、その目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前述の課題を解決するために、正極電極と出力電極とを隣接させた状態で配置し、かつ、負極電極を出力電極の上側の近傍の位置に配置し、かつ、正極電極、負極電極それぞれの外部への接続部を出力電極の外部への接続部と対向する反対側の位置にそれぞれ平行に隣接させて配置した構造とし、正極電極側に接続される第1のスイッチング素子および第1の還流用ダイオードを正極電極上に配置し、一方、負極電極に接続される第2のスイッチング素子および第2の還流用ダイオードを、第1のスイッチング素子および第1の還流用ダイオードと負極電極を挟んで反対側の位置になる出力電極上に配置することを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
本発明の半導体装置によれば、以下のごとき効果を奏することができる。
【0007】
すなわち、本発明の半導体装置は、正極電極と出力電極とを隣接させた状態で配置し、かつ、負極電極を出力電極の上側の近傍の位置に配置し、かつ、正極電極、負極電極それぞれの外部への接続部を出力電極の外部への接続部と対向する反対側の位置にそれぞれ平行に隣接させて配置した構造とし、正極電極側に接続される第1のスイッチング素子および第1の還流用ダイオードを正極電極上に配置し、一方、負極電極に接続される第2のスイッチング素子および第2の還流用ダイオードを、第1のスイッチング素子および第1の還流用ダイオードと負極電極を挟んで反対側の位置になる出力電極上に配置するようにしているので、第1、第2のスイッチング素子のスイッチング動作時に、半導体装置内に生じる電流経路の変化を低減させることが可能になるとともに、同一タイミングで流れる電流の向きが逆向きの電流経路を近傍に配置することが可能となる。
【0008】
而して、電流経路に発生する周回磁束の変化を小さくするとともに、周回磁束を互いに打ち消し合うようにすることが可能となって、サージ発生に寄与する寄生インダクタンスを低減することができ、その結果、大きなサージの発生を抑止して、スイッチング損失を低減させ、もって、装置の小型化、低コスト化を図ることが可能になるという効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明に係る半導体装置の最良の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
まず、本発明に係る半導体装置は、DC−DCコンバータ装置やインバータ装置などの電力変換装置に好適に適用されるスイッチ回路を構成するものであり、その回路構成の一例について図5を用いて説明する。
【0011】
図5は、本発明の半導体装置を適用する電力変換装置としてインバータ回路に適用する場合を例にとって、該インバータ回路における1相分のスイッチ回路を構成する場合の回路構成の一例を示している。
【0012】
なお、図5の回路構成における半導体素子については、スイッチング素子としてIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)11,13を用い、また、還流用ダイオードFWD12,14としてPN接合型ダイオードを用いる場合について示している。しかし、本発明においては、かかる半導体素子に限るものではなく、例えば、スイッチング素子としてMOSFETを用いて構成しても良いし、また、還流用ダイオードFWDとして、PIN(P−Intrinsic−N)型ダイオードなどを用いて構成しても良い。
【0013】
図5のインバータ回路は、入力側の電源となる正極電極1と負極電極2とに対して、第1のスイッチング素子であるIGBT11および第2のスイッチング素子であるIGBT13が直列に接続され、IGBT11およびIGBT13のゲート電極にPWM信号が印加されて、ON/OFFスイッチング動作をさせることによって、IGBT11とIGBT13との接続点から1相分の交流電流が出力電極3に対して出力され、例えば誘導負荷(交流負荷)に対して交流電力が供給される。
【0014】
ここで、第1のスイッチング素子であるIGBT11、第2のスイッチング素子であるIGBT13のそれぞれには、IGBT11、IGBT13のON/OFFの切り替え時点で、負荷が接続される出力電極3に対して電力供給を継続させるように、還流電流を流すための、第1の還流用ダイオードであるFWD12、第2の還流用ダイオードであるFWD14が、それぞれ逆並列に接続されている。
【0015】
図5のインバータ回路では、或るタイミングにおいて、図5(A)の実線矢印に示すように、正極電極1側に接続されているIGBT11がONになって、出力電極3に接続されたモータ等の誘導負荷に対して、正極電極1からIGBT11を介して正側の電流が流れている状態にあったが、次のタイミングにおいて、IGBT11がOFFに切り替わろうとすると、出力電極3に接続された誘導負荷には、継続して電流を流し続けようとする。
【0016】
このため、図5(B)の破線矢印に示すように、電流経路を、負極電極2に接続されている還流用ダイオードFWD14を経由して負極電極2から出力電極3に流れる電流経路に変更して、負極電極2側のFWD14に電流が流れ、出力電極3へ負側の電流を供給するようになる。
【0017】
本発明は、図5に一例を示すような回路構成からなる半導体装置において、第1、第2のスイッチング素子であるIGBT11,13および第1、第2の還流用ダイオードであるFWD12,14を搭載する半導体装置内の電流経路に発生する周回磁束による寄生インダクタンスを低減し、大きなサージ電圧の発生を抑止して、スイッチング損失を低減することを実現するものである。
【0018】
ここで、第1、第2のスイッチング素子であるIGBT11,13がONからOFFに切り替わるときに、サージ発生に寄与する寄生インダクタンスを低減する方策として、例えば、次のような方策がある。
【0019】
つまり、第1、第2のスイッチング素子であるIGBT11,13および第1、第2の還流用ダイオードであるFWD12,14を介して正極電極1、負極電極2、出力電極3の各電極に流れる電流経路について、
(1)同一タイミングで流れている電流経路に対しては、電流の向きが互いに逆向きのものをできるだけ近傍に配置することにより、電流経路に発生する周回磁束を互いに打ち消すようにして、できるだけ磁界を発生させないようにして、周回磁束による寄生インダクタンスを低減する方策、
(2)第1、第2のスイッチング素子であるIGBT11,13のスイッチング動作により電流経路が変化する場合、スイッチング動作の前後での電流経路をできるだけ近傍に配置することにより、電流経路に発生する周回磁束の変化を小さくするようにして、周回磁束による寄生インダクタンスを低減する方策、
という2つの方策がある。
【0020】
本発明の半導体装置においては、前述の2つの方策のうち、いずれか一方または両方を適用可能とする半導体装置を実現するものであり、以下に、その具体的な実施形態について、詳細に説明する。
【0021】
なお、電力変換装置として、例えば3相の交流インバータ装置を必要とする場合には、図5に示す本回路を正極電極1と負極電極2との間に3組並列に接続することにより、それぞれの出力電極に3相交流モータを接続して、PWM制御等によって3相交流電流を生成するように構成することになる。ただし、かかる3相インバータ装置に適用する場合においても、3組のスイッチ回路それぞれを別個の半導体装置として実現する場合のみならず、その他の実施形態として後述するように、複数のスイッチ回路をまとめた半導体装置として、例えば3組のスイッチ回路を1つの半導体装置に集積して構成することも可能である。
【0022】
(第1の実施形態)
<構成>
図1は、本発明に係る半導体装置の構成に関する第1の実施形態を示す配置図であり、半導体装置の上側から眺めた際の平面図を示している。
【0023】
図1の半導体装置10において、正極電極1、負極電極2、および、出力電極3は、銅などからなるバスバーを用いて構成されるとともに、正極電極1と出力電極3とを隣接させた状態で配置し、負極電極2を出力電極3の上側の近傍の位置に配置する。これらの正極電極1、負極電極2、出力電極3は、PPS(Polyphenylene Sulfide:ポリフェニレンサルファイド樹脂)等の樹脂で一体成型し、当該半導体装置10の筐体を形成している。
【0024】
正極電極1側(図5の回路図の上側アーム)の第1のスイッチング素子であるIGBT11の裏面電極(コレクタ電極)と第1の還流用ダイオードであるFWD12の裏面電極(カソード電極)とを正極電極1上に、また、負極電極2側(図5の回路図の下側アーム)の第2のスイッチング素子であるIGBT13の裏面電極(コレクタ電極)と第2の還流用ダイオードであるFWD14の裏面電極(カソード電極)とを、第1のスイッチング素子であるIGBT11と第1の還流用ダイオードであるFWD12と負極電極2を挟んで反対側の位置になる出力電極3上に、それぞれ、はんだ付け等により直結して実装する。
【0025】
また、正極電極1側のIGBT11の表面電極(エミッタ電極)およびFWD12の表面電極(アノード電極)は、それぞれ、ワイヤボンディング等によって、出力電極3に接続され、負極電極2側のIGBT13の表面電極(エミッタ電極)およびFWD14の表面電極(アノード電極)は、それぞれ、ワイヤボンディング等によって、負極電極2に接続される。
【0026】
ここで、正極電極1上に配置する第1のスイッチング素子IGBT11と第1の還流用ダイオードFWD12とを、出力電極3と隣接する側部に沿って、該側部の近傍に配置し、出力電極3上に配置する第2のスイッチング素子IGBT13と第2の還流用ダイオードFWD14とを、負極電極2の側部のうち正極電極1の反対側の側部に沿って、該側部の近傍に位置して、かつ、第1のスイッチング素子IGBT11と第1の還流用ダイオードFWD12とは負極電極2を挟んで反対側の出力電極3上の位置に配置する。これにより、ワイヤボンディング等における配線長を短くすることができる。
【0027】
さらに、IGBT11,13のスイッチング動作により電流経路が変化する際に、スイッチング動作の前後での電流経路をできるだけ近傍に配置することにより、電流経路に発生する周回磁束の変化をより小さくし、寄生インダクタンスをより低減することによって、大きなサージ電圧の発生を抑止するために、図1に示すように、出力電極3の出力電極端子31(つまり、出力電極3の外部接続端子に接続する接続部)と対向する反対側の位置に、正極電極1および負極電極2の外部接続端子に接続する接続部を平行に隣接させて配置する。
【0028】
なお、半導体素子(IGBT11,13およびFWD12,14)の周囲には、半導体素子やボンディングワイヤの保護、および、沿面絶縁の確保のために、シリコーンゲル等のゲル状の絶縁体を注入した構造とされている。
【0029】
また、入出力電極間がトランスなどで分離されていない非絶縁型半導体装置として構成される本実施形態における半導体装置10の下面部を冷却器等へ固定して実装する場合についても、半導体装置10と冷却器との間には、絶縁性を有する絶縁シート等を介在させることにより絶縁した構造とされている。
【0030】
<動作>
以下に、図1に示す半導体装置10において、正極電極1側のIGBT11がON、OFFする場合における半導体装置10の動作について説明する。
【0031】
IGBT11がONした場合、IGBT11を介して、正極電極1から出力電極3の出力電極端子31に接続された誘導負荷に対して、電流が、実線矢印Aに示すように流れる。かかる状態からIGBT11がOFFすると、半導体装置10を流れる電流は、破線矢印Bに示すように、負極電極2から出力電極3の出力電極端子31に接続された誘導負荷に対して、FWD14を介して流れる状態に切り替わる。
【0032】
このスイッチング時点で、負極電極2にFWD14を介して流れる電流の電流経路は、図1に示すように、IGBT11がON時に正極電極1からIGBT11を介して流れ出て出力電極3を流れていた電流経路と、近接し、かつ、平行して流れるので、前述したように、スイッチング動作によって変化した電流経路が近傍に位置することになり、電流経路に発生する周回磁束の変化を小さくし、寄生インダクタンスを低減することにより、大きなサージ電圧の発生を抑止することが可能になるという効果を得ることができる。
【0033】
さらに、負極電極2からボンディングワイヤを通してFWD14の表面電極(アノード電極)に流れ込む電流と、FWD14の裏面電極(カソード電極)から負極電極2の背面を通過して出力電極3の出力電極端子31側へ流れ出す電流とが、近接し、かつ、平行して、逆向きに流れるので、前述したように、同一タイミングで流れている電流経路で電流の向きが互いに逆向きのものが近傍に配置されることになり、電流経路に発生する周回磁束を互いに打ち消し合って、周回磁界の発生を抑止して、寄生インダクタンスを低減することにより、大きなサージ電圧の発生を抑止することが可能になるという効果を得ることができる。
【0034】
以上のように、図1に示す半導体装置10においては、正極電極1と負極電極2との間に、第1の還流用ダイオードFWD12を逆並列接続した第1のスイッチング素子IGBT11と、第2の還流用ダイオードFWD14を逆並列接続した第2のスイッチング素子IGBT13とを直列に接続し、2個の第1、第2のスイッチング素子IGBT11,13の接続点から、電力変換後の出力電力を負荷接続用の出力電極3へ出力するように構成されている。
【0035】
ここで、正極電極1と出力電極3とを隣接させた状態で配置し、かつ、負極電極2を出力電極3の上側の近傍の位置に配置し、かつ、正極電極1、負極電極2それぞれの外部接続端子に接続する接続部を、出力電極3の外部接続端子に接続する接続部すなわち出力電極端子31と対向する反対側の位置にそれぞれ平行に隣接させて配置した構造としている。
【0036】
さらに、正極電極1側に接続される第1のスイッチング素子IGBT11および第1の還流用ダイオードFWD12を正極電極1上に配置し、一方、負極電極2側に接続される第2のスイッチング素子IGBT13および第2の還流用ダイオードFWD14を、第1のスイッチング素子IGBT11および第1の還流用ダイオードFWD12と負極電極2を挟んで反対側の位置になる出力電極3上に配置するように構成している。
【0037】
かくのごとき電極配置とスイッチング素子の実装構成とを採用することによって、第1、第2のスイッチング素子IGBT11,13のスイッチング動作による半導体装置10内の電流経路の変化を低く抑えることができ、かつ、同一タイミングで流れる電流の向きが逆の電流経路を近傍の位置に配置することができるので、電流経路に発生する周回磁束の変化を小さくするとともに、周回磁束を互いに打ち消し合うようにすることが可能となって、サージ発生に寄与する寄生インダクタンスを低減することができ、その結果、大きなサージの発生を抑止して、スイッチング損失を低減させ、もって、装置の小型化、低コスト化を図ることが可能になるという効果を得ることができる。
【0038】
さらには、図1に示すように、負極電極2に接続される第2のスイッチング素子IGBT13を、第1のスイッチング素子IGBT11と負極電極2を挟んで対称な位置の出力電極3上に配置し、第2の還流用ダイオードFWD14を、第1の還流用ダイオードFWD12と負極電極2を挟んで対称な位置の出力電極3上に配置することによって、第1、第2のスイッチング素子IGBT11,13のスイッチング動作による半導体装置10内の電流経路の変化をより確実に抑えることができ、サージ発生に寄与する寄生インダクタンスをより確実に低減することができ、その結果、大きなサージの発生を抑止して、スイッチング損失を低減させ、もって、装置の小型化、低コスト化を図ることがより確実に可能になるという効果を得ることができる。
【0039】
(第2の実施形態)
<構成>
図2は、本発明に係る半導体装置の構成に関する第2の実施形態を示す配置図であり、半導体装置の上側から眺めた際の平面図を示している。
【0040】
図2の半導体装置10Aにおいても、第1の実施形態における図1の半導体装置10の場合と同様、正極電極1、負極電極2、および、出力電極3は、銅などからなるバスバーを用いて構成されるとともに、正極電極1と出力電極3とを隣接させた状態で配置し、負極電極2を出力電極3の上側の近傍の位置に配置する。これらの正極電極1、負極電極2、出力電極3は、PPS等の樹脂で一体成型し、当該半導体装置10Aの筐体を形成している。
【0041】
なお、半導体素子(IGBT11,13およびFWD12,14)の周囲には、第1の実施形態の場合と同様、半導体素子やボンディングワイヤの保護、および、沿面絶縁の確保のために、シリコーンゲル等のゲル状の絶縁体を注入した構造とされている。
【0042】
また、入出力電極間がトランスなどで分離されていない非絶縁型半導体装置として構成される本実施形態における半導体装置10Aの下面部を冷却器等へ固定して実装する場合についても、半導体装置10Aと冷却器との間には、絶縁性を有する絶縁シート等を介在させることにより絶縁した構造とされている。
【0043】
図2の半導体装置10Aにおいて、第1の実施形態における図1の半導体装置10との違いは、負極電極2側の第2のスイッチング素子であるIGBT13と第2の還流用ダイオードであるFWD14とを出力電極3上に配置する位置を逆転させて、負極電極2に対して、正極電極1側の第1のスイッチング素子であるIGBT11の反対側の対称な位置には第2の還流用ダイオードであるFWD14を、また、正極電極1側の第1の還流用ダイオードであるFWD12の反対側の対称な位置には第2のスイッチング素子であるIGBT13を、それぞれ、はんだ付け等により実装している点である。
【0044】
かくのごとく、負極電極2に対して、正極電極1側の第1のスイッチング素子であるIGBT11の反対側の対称な位置には、負極電極2側の第2の還流用ダイオードFWD14を、また、正極電極1側の第1の還流用ダイオードであるFWD12の反対側の対称な位置には、負極電極2側の第2のスイッチング素子であるIGBT13を、それぞれ、配置した構造とすることによって、第1、第2のスイッチング素子IGBT11,13のスイッチング動作により変化する電流経路についてより広い範囲を互いに近傍する位置に配置することができ、第1の実施形態における図1の半導体装置10の場合よりも、寄生インダクタンスをさらに低減することを可能としている。
【0045】
<動作>
以下に、図2に示す半導体装置10Aにおいて、正極電極1側のIGBT11がON、OFFする場合における半導体装置10Aの動作について、第1の実施形態における図1の半導体装置10の動作との違いを中心にして説明する。
【0046】
本実施形態における半導体装置10Aの場合、出力電極3を流れる電流の電流経路は、IGBT11がON時に、実線矢印Cに示すように、正極電極1からIGBT11を介して出力電極3の出力電極端子31に接続された誘導負荷に対して流れる場合と、IGBT11がOFF時に、破線矢印Dに示すように、負極電極2からFWD14を介して出力電極3の出力電極端子31に接続された誘導負荷に対して流れる場合と、の両者の出力電極3上の電流経路は、FWD14の裏面電極(カソード電極)から負極電極2の背面を通過して出力電極3側へ流れ出す部分を除いて、ほとんどの部分で、近接し、かつ、平行に流れるようになるので、図1の半導体装置10に比して、寄生インダクタンスをさらに低減し、大きなサージ電圧の発生をさらに抑止することが可能になるという効果を得ることができる。
【0047】
つまり、本実施形態における半導体装置10Aは、第1の実施形態における半導体装置10に対して、正極電極1側の第1のスイッチング素子IGBT11、第1の還流用ダイオードFWD12の配置順序と負極電極2側の第2のスイッチング素子IGBT13、第2の還流用ダイオードFWD14の配置順序との関係を逆にして、負極電極2に接続される第2のスイッチング素子IGBT13を、第1の還流用ダイオードFWD12と負極電極2を挟んで対称な位置の出力電極3上に配置し、第2の還流用ダイオードFWD14を、第1のスイッチング素子IGBT11と負極電極2を挟んで対称な位置の出力電極3上に配置するようにしている。
【0048】
この結果、第1、第2のスイッチング素子IGBT11,13のスイッチング動作による半導体装置10内の電流経路の変化をより少ない範囲に抑えることができ、サージ発生に寄与する寄生インダクタンスをより多く低減することができ、その結果、大きなサージの発生をより低く抑えて、スイッチング損失をより確実に低減させ、もって、装置の小型化、低コスト化を図ることがより確実に可能になるという効果を得ることができる。
【0049】
(第3の実施形態)
<構成>
図3は、本発明に係る半導体装置の構成に関する第3の実施形態を示す配置図であり、図3(A)が、半導体装置の上側から眺めた際の平面図を示し、図3(B)が、半導体装置の側面から眺めた際の側面図を示している。
【0050】
図3の半導体装置10Bにおいても、第1、第2の実施形態の図1、図2の半導体装置10,10Aの場合と同様、正極電極1、負極電極2、および、出力電極3は、銅などからなるバスバーを用いて構成されるとともに、正極電極1と出力電極3とを隣接させた状態で配置し、負極電極2を出力電極3の上側の近傍の位置に配置する。これらの正極電極1、負極電極2、出力電極3は、PPS等の樹脂で一体成型し、当該半導体装置10Bの筐体を形成している。
【0051】
なお、半導体素子(IGBT11,13およびFWD12,14)の周囲には、第1、第2の実施形態の場合と同様、半導体素子やボンディングワイヤの保護、および、沿面絶縁の確保のために、シリコーンゲル等のゲル状の絶縁体を注入した構造とされている。
【0052】
また、入出力電極間がトランスなどで分離されていない非絶縁型半導体装置として構成される本実施形態における半導体装置10Bの下面部を冷却器等へ固定して実装する場合についても、半導体装置10Bと冷却器との間には、絶縁性を有する絶縁シート等を介在させることにより絶縁した構造とされている。
【0053】
図3の半導体装置10Bにおいて、第1、第2の実施形態の図1、図2の半導体装置10,10Aとの違いは、正極電極1と並置した出力電極3のうち、正極電極1側に面する側部(図3の出力電極3の左側部)に、図3(B)に示すように、上方向に折り曲げて、正極電極1の上側にまで延在させて、正極電極1の上側の近傍の位置に配置した出力電極段差部32を形成して、出力電極段差部32の下面に、正極電極1の出力電極3に面する側部(図3の正極電極1の右側部)を、負極電極2側の半導体素子(IGBT13、FWD14)の実装面となる出力電極3により近接させるとともに、出力電極段差部32と正極電極1の一部とを重ね合わせた構造としている点にある。
【0054】
さらに、図3(B)に示すように、正極電極1の一部と出力電極3とが重なり合った出力電極段差部32の上側の近傍の位置に、負極電極2を配置する。かかる配置にすることによって、正極電極1、負極電極2それぞれの外部接続端子へ接続する接続部は、半導体装置10Bの上方向からの投影面でほぼ同じ場所から引き出すようにすることができる。
【0055】
なお、図3の半導体装置10Bにおける半導体素子の配置(チップ配置)は、第2の実施形態における半導体装置10Aの場合と同様に、負極電極2に対して、第1のスイッチング素子であるIGBT11の反対側の対称な位置には第2の還流用ダイオードであるFWD14を、第1の還流用ダイオードであるFWD12の反対側の対称な位置には第2のスイッチング素子であるIGBT13を、それぞれ、配置している。
【0056】
図3の半導体装置10Bを冷却するためには、前述のように、半導体装置10Bの下面に冷却器が取り付けられるが、出力電極3に出力電極段差部32を設けることによって、主たる発熱部である半導体素子のIGBT11、FWD12を実装する正極電極1の実装面を、負極電極2側の半導体素子のIGBT13、FWD14を実装する出力電極3の実装面と同一平面上に近接させて配置することができ、冷却器の小型化、簡略化を図ることができる。
【0057】
<動作>
以下に、図3に示す半導体装置10Bにおいて、正極電極1側のIGBT11がON、OFFする場合における半導体装置10Bの動作について、第1、第2の実施形態における図1、図2の半導体装置10,10Aの動作との違いを中心にして説明する。
【0058】
IGBT11がONした場合、IGBT11を介して、正極電極1から出力電極3の出力電極端子31に接続された誘導負荷に対して、電流が、実線矢印Eに示すように流れる。かかる状態からIGBT11がOFFすると、半導体装置10を流れる電流は、破線矢印Fに示すように、負極電極2から出力電極3の出力電極端子31に接続された誘導負荷に対して、FWD14を介して流れる状態に切り替わる。
【0059】
このスイッチング時点で、IGBT11がON時に正極電極1に外部から流れ込んでいた電流と、IGBT11がOFF時に負極電極2に外部から流れ込む電流とが、図3(B)の実線矢印Eと破線矢印Fとに示すように、半導体装置3Bの上方向からの投影面で互いに重ね合わせることができるので、スイッチング動作により変化する電流経路を近傍に配置して、電流経路に発生する周回磁束の変化を小さくし、寄生インダクタンスを低減して、大きなサージ電圧の発生を防止するという効果を得ることができる。
【0060】
さらには、正極電極1からIGBT11の裏面電極(コレクタ電極)に流れ込む電流とIGBT11の表面電極(エミッタ電極)からボンディングワイヤを通して流れ出す電流、また、負極電極2からボンディングワイヤを通してFWD14の表面電極(アノード電極)に流れ込む電流とFWD14の裏面電極(カソード電極)から出力電極3に流れ出す電流についても、図3(B)の実線矢印Eと破線矢印Fとに示すように、半導体装置10Bの上方向からの投影面で互いに重ね合わせることができるので、電流経路に発生する周回磁束を互いに打ち消すようにして、できるだけ磁界を発生させなくし、寄生インダクタンスを低減して、大きなサージ電圧の発生を防止するという効果も得ることができる。
【0061】
以上のように、本実施形態における半導体装置10Bは、第1、第2の実施形態における半導体装置10,10Aに対して、正極電極1と隣接させて配置した出力電極3のうち、正極電極1側に面する側部に、正極電極1の上側の近傍の位置に延在する出力電極段差部32を備え、負極電極2を出力電極段差部32の上側の近傍の位置に配置した構造とするとともに、正極電極1、負極電極2それぞれの外部接続端子に接続する接続部を、出力電極段差部32を挟んで正極電極1、負極電極2が上下に重なり合った位置に配置するように構成している。
【0062】
この結果、冷却器の小型化・簡素化を可能とするとともに、正極電極1側の第1のスイッチング素子IGBT11、負極電極2側の第2のスイッチング素子IGBT13それぞれに流れ込む電流と流れ出す電流との電流経路を、さらには、正極電極1側の第1の還流用ダイオードFWD12、負極電極2側の第2の還流用ダイオードFWD14それぞれに流れ込む電流と流れ出す電流との電流経路を、半導体装置10Bの上方向から見た投影面上で互いに重ね合わせて、同一タイミングで逆向きに流れる電流経路を近傍に配置することができるので、さらには、スイッチング動作時により変化する電流経路も、第1、第2の実施形態における半導体装置10,10Aよりも、さらに近傍の位置に配置することができるので、より効果的に、寄生インダクタンスの低減を行うことができ、その結果、サージ電圧の発生をより低く抑えることができ、もって、装置の小型化、低コスト化をより効果的に実現することができる。
【0063】
(第4の実施形態)
図4は、本発明に係る半導体装置の構成に関する第4の実施形態を示す配置図であり、半導体装置の上側から眺めた際の平面図を示している。
【0064】
半導体装置の電流容量を大きくする際に、半導体素子(つまりスイッチング素子IGBT、還流用ダイオードFWD)を複数個並列に搭載することがあるが、図4の半導体装置10Cにおいては、電流容量が大きな半導体装置を効果的に実現するために、複数個のスイッチング素子IGBT、還流用ダイオードFWDを実装する場合の一例として、スイッチング素子IGBTと還流用ダイオードFWDとを、正極電極1側(図5の回路図の上側アーム)と負極電極2側(図5の回路図の下側アーム)とに、それぞれ、2個ずつ実装する例を示している。
【0065】
つまり、図4の半導体装置10Cにおいて、正極電極1側には、第1の還流用ダイオードFWD12を逆並列接続した第1のスイッチング素子IGBT11と第3の還流用ダイオードFWD16を逆並列接続した第3のスイッチング素子IGBT15とを並列接続し、負極電極2側には、第2の還流用ダイオードFWD14を逆並列接続した第2のスイッチング素子IGBT13と第4の還流用ダイオードFWD18を逆並列接続した第4のスイッチング素子IGBT17とを並列接続するように実装している。
【0066】
この際、IGBTとFWDとを交互に配置する。つまり、正極電極1側は、正極電極1の入力端子側に近い方からIGBT11,FWD12,IGBT15,FWD16の順に交互に配置し、負極電極2側は、第2、第3の実施形態における図2、図3の半導体装置10A,10Bの場合と同様、正極電極1側のIGBT、FWDの順番とは逆順に並ぶように、負極電極2の入力端子側に近い方からFWD14,IGBT13,FWD18,IGBT17の順に交互に配置する。この結果、負極電極2を挟んで、正極電極1側のIGBTと負極電極2側のFWDとが、また、正極電極1側のFWDと負極電極2側のIGBTとが、反対側の対称な位置に対向するように配置される。
【0067】
なお、図4の半導体装置10Cにおいても、第1〜第3の実施形態における図1〜図3の半導体装置10,10A,10Bの場合と同様、正極電極1、負極電極2、および、出力電極3は、銅などからなるバスバーを用いて構成されるとともに、正極電極1と出力電極3とを隣接させた状態で配置し、負極電極2を出力電極3の上側の近傍の位置に配置する。これらの正極電極1、負極電極2、出力電極3は、PPS等の樹脂で一体成型し、当該半導体装置10Cの筐体を形成している。
【0068】
なお、半導体素子(IGBT11,13,15,17およびFWD12,14,16,18)の周囲には、第1〜第3の実施形態の場合と同様、半導体素子やボンディングワイヤの保護、および、沿面絶縁の確保のために、シリコーンゲル等のゲル状の絶縁体を注入した構造とされている。
【0069】
また、入出力電極間がトランスなどで分離されていない非絶縁型半導体装置として構成される本実施形態における半導体装置10Cの下面部を冷却器等へ固定して実装する場合についても、半導体装置10Cと冷却器との間には、絶縁性を有する絶縁シート等を介在させることにより絶縁した構造とされている。
【0070】
一般に、スイッチング素子IGBTは、還流用ダイオードFWDに比べて発熱量が大きく、スイッチング損失に占める割合が大きい。したがって、複数のスイッチング素子IGBTを並列接続する際に、スイッチング素子IGBT同士を隣接して配置すると、熱干渉を起こし、通電時の温度上昇が大きくなる。このため、図4の半導体装置10Cのように、正極電極1側は、IGBT11,FWD12,IGBT15,FWD16の順、負極電極2側は、FWD14,IGBT13,FWD18,IGBT17の順というように、スイッチング素子IGBTと還流用ダイオードFWDとを交互に配置し、比較的発熱量が小さい還流用ダイオードFWDを、発熱量が大きいスイッチング素子IGBTの間に配置することによって、スイッチング素子IGBT間の熱干渉を抑え、温度上昇を小さくすることができる。
【0071】
また、負極電極2を挟んで、正極電極1側のスイッチング素子IGBTと負極電極2側の還流用ダイオードFWDとが、また、正極電極1側の還流用ダイオードFWDと負極電極2側のスイッチング素子IGBTとが、反対側の対称な位置に対向するように配置されることにより、第2、第3の実施形態における図2、図3の半導体装置10A,10Bと同様、出力電極3を流れる電流の電流経路は、IGBT11,15がON時に、正極電極1からIGBT11,15を介して出力電極3の出力電極端子31に接続された誘導負荷に対して流れる場合と、IGBT11,15がOFF時に、負極電極2からFWD14,18を介して出力電極3の出力電極端子31に接続された誘導負荷に対して流れる場合と、の両者の出力電極3の電流経路は、FWD14,18の裏面電極(カソード電極)から負極電極2の背面を通過して出力電極3側へ流れ出す部分を除いて、ほとんどの部分で、近接し、かつ、平行に流れるようになるので、寄生インダクタンスをさらに低減する効果も得ることができる。
【0072】
つまり、図4の半導体装置10Cにおいては、第1、第3の還流用ダイオードFWD12,16がそれぞれ逆並列接続された第1、第3のスイッチング素子IGBT11,15および第2、第4の還流用ダイオードFWD14,18がそれぞれ逆並列接続された第2、第4のスイッチング素子IGBT13,17のように、複数の半導体素子が、正極電極1と負極電極2との間に並列接続された構成からなっている場合、正極電極1上に配置する第1、第3のスイッチング素子IGBT11,15と前記第1、第3の還流用ダイオードFWD12,16とを交互に配置し、出力電極3上に配置する第2、第4のスイッチング素子IGBT13,17と第2、第4の還流用ダイオードFWD14,18とを交互に配置する構成としている。
【0073】
この結果、還流用ダイオードFWDに比べて発熱量が大きいスイッチング素子IGBTの間に、発熱量が比較的小さい還流用ダイオードFWDを挟んで配置することになり、発熱量が大きいスイッチング素子IGBT同士を離して配置することにより、熱干渉を抑えることができ、温度上昇を低く抑えることができる。
【0074】
また、第1、第3のスイッチング素子IGBT11,15、第2、第4のスイッチング素子IGBT13,17のように、正極電極1、負極電極2のそれぞれに、複数のスイッチング素子IGBTを搭載する場合、隣り合うスイッチング素子IGBTの信号端子(例えば、ゲート電極等を引き出す端子)の位置を互いに噛み合わせるように配置することによって、信号端子の位置を一列に配置することができ、半導体装置10Cの小型化を図ることもできる。
【0075】
さらには、第3の実施形態における図3の半導体装置10Bの場合と同様に、出力電極3の正極電極1側に面する側部に、出力電極段差部を備える構造とし、該出力電極段差部を正極電極1の一部の上側の近傍の位置に延在させるように配置し、該出力電極段差部と正極電極1の一部とを重ね合わせた構造とすることによって、冷却器の小型化、簡略化を図ることができるとともに、第3の実施形態における図3の半導体装置10Bの場合と同様、さらに、次のような効果も合わせて得られる。
【0076】
すなわち、冷却器の小型化・簡素化を可能とするとともに、正極電極1側の第1、第3のスイッチング素子IGBT11,15、負極電極2側の第2、第4のスイッチング素子IGBT13,17それぞれに流れ込む電流と流れ出す電流との電流経路を、さらには、正極電極1側の第1、第3の還流用ダイオードFWD12,16、負極電極2側の第2、第4の還流用ダイオードFWD14,18それぞれに流れ込む電流と流れ出す電流との電流経路を、半導体装置10Cの上方向から見た投影面上で互いに重ね合わせて、同一タイミングで逆向きに流れる電流経路を近傍に配置することができるので、さらには、スイッチング動作時により変化する電流経路も、第3の実施形態における半導体装置10Bと同様に、第1、第2の実施形態における半導体装置10,10Aよりも、さらに近傍の位置に配置することができるので、より効果的に、寄生インダクタンスの低減を行うことができ、その結果、サージ電圧の発生をより低く抑えることができ、もって、装置の小型化、低コスト化をより効果的に実現することができる。
【0077】
(その他の実施形態)
前述した第1〜第3の実施形態においては、電力変換装置に適用するスイッチ回路として、1組のスイッチ回路のみを切り出して半導体装置として形成する場合について説明したが、本発明は、かかる場合のみに限るものではなく、第4の実施形態に示すように、複数のスイッチ回路を1つの半導体装置に集積して構成するようにしても良く、例えば、3相の交流電力を出力する3相インバータ装置を構成するような場合、3相分の3組のスイッチ回路を一体とした半導体装置を形成することができる。
【0078】
このように、3相分の3組のスイッチ回路を一体構造とした半導体装置を構成する場合には、本発明による半導体装置は、第4の実施形態において説明したように、発熱量が大きいスイッチング素子IGBT同士が隣接しないように、スイッチング素子IGBTと発熱量が比較的小さい還流用ダイオードFWDとを互い違いに配置するようにして、温度上昇を防ぐことができ、あるいは、隣り合うスイッチング素子IGBTの信号端子(例えば、ゲート電極、チップ上に配置するセンサ電極等を引き出す端子)の位置を互いに噛み合わせるように配置することによって、一列に配置することができ、半導体装置の小型化を図ることができる。
【0079】
なお、前述した第1〜第3の実施形態に示すような1組のスイッチ回路からなる半導体装置を3組並列接続することによって、3相のインバータ回路を形成することももちろん可能である。
【0080】
また、前述した各実施形態においては、スイッチング素子としてIGBTを、また、還流用ダイオードとしてPN接合型ダイオードを、用いる場合について説明したが、本発明はかかる半導体素子のみを限るものではない。前述したように、例えば、スイッチング素子として、パワー用MOSFETを用いるようにしても良い。また、還流用ダイオードとしては、PN接合型ダイオードまたはPIN型ダイオードまたはショットキー型ダイオードの1ないし複数の組み合わせ(例えば、1個のみならず複数個のPN接合型ダイオードを並列接続した形態や、1ないし複数個のPIN型ダイオードを並列接続した形態や、あるいは、1ないし複数個のPN接合型ダイオードとショットキー型ダイオードとを並列接続した形態など)を用いるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明に係る半導体装置の構成に関する第1の実施形態を示す配置図である。
【図2】本発明に係る半導体装置の構成に関する第2の実施形態を示す配置図である。
【図3】本発明に係る半導体装置の構成に関する第3の実施形態を示す配置図である。
【図4】本発明に係る半導体装置の構成に関する第4の実施形態を示す配置図である。
【図5】インバータ回路における1相分のスイッチ回路を構成する場合の回路構成の一例を示す回路図である。
【符号の説明】
【0082】
1…正極電極、2…負極電極、3…出力電極、10…半導体装置、10A…半導体装置、10B…半導体装置、10C…半導体装置、11…IGBT、12…FWD(還流用ダイオード)、13…IGBT、14…FWD(還流用ダイオード)、15…IGBT、16…FWD(還流用ダイオード)、17…IGBT、18…FWD(還流用ダイオード)、31…出力電極端子、32…出力電極段差部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極電極と負極電極との間に、第1の還流用ダイオードを逆並列接続した第1のスイッチング素子と、第2の還流用ダイオードを逆並列接続した第2のスイッチング素子とを直列に接続し、前記第1、第2のスイッチング素子の接続点から、出力電力を負荷接続用の出力電極へ出力する半導体装置において、前記正極電極と前記出力電極とを隣接させた状態で配置し、かつ、前記負極電極を前記出力電極の上側の近傍の位置に配置し、かつ、前記正極電極、前記負極電極それぞれの外部接続端子に接続する接続部を、前記出力電極の外部接続端子に接続する接続部と対向する反対側の位置にそれぞれ平行に隣接させて配置した構造とし、前記正極電極側に接続される前記第1のスイッチング素子および前記第1の還流用ダイオードを前記正極電極上に配置し、一方、前記負極電極側に接続される前記第2のスイッチング素子および前記第2の還流用ダイオードを、前記第1のスイッチング素子および前記第1の還流用ダイオードと前記負極電極を挟んで反対側の位置になる前記出力電極上に配置することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、前記負極電極に接続される前記第2のスイッチング素子を、前記第1のスイッチング素子と前記負極電極を挟んで対称な位置の前記出力電極上に配置し、前記第2の還流用ダイオードを、前記第1の還流用ダイオードと前記負極電極を挟んで対称な位置の前記出力電極上に配置することを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体装置において、前記負極電極に接続される前記第2のスイッチング素子を、前記第1の還流用ダイオードと前記負極電極を挟んで対称な位置の前記出力電極上に配置し、前記第2の還流用ダイオードを、前記第1のスイッチング素子と前記負極電極を挟んで対称な位置の前記出力電極上に配置することを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の半導体装置において、前記正極電極に隣接させて配置した前記出力電極のうち、前記正極電極側に面する側部に、前記正極電極の上側の近傍の位置に延在する出力電極段差部を備え、前記負極電極を前記出力電極段差部の上側の近傍の位置に配置した構造とするとともに、前記正極電極、前記負極電極それぞれの外部接続端子に接続する接続部を、前記出力電極段差部を挟んで前記正極電極、前記負極電極が上下に重なり合った位置に配置することを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の半導体装置において、前記正極電極上に配置する前記第1のスイッチング素子と前記第1の還流用ダイオードとを、前記出力電極と隣接する側部に沿って、該側部の近傍に配置し、前記出力電極上に配置する前記第2のスイッチング素子と前記第2の還流用ダイオードとを、前記負極電極の側部のうち前記正極電極の反対側の側部に沿って、該側部の近傍に位置して、かつ、前記第1のスイッチング素子と前記第1の還流用ダイオードとは前記負極電極を挟んで反対側の前記出力電極上の位置に配置することを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の半導体装置において、前記第1の還流用ダイオードが逆並列接続された前記第1のスイッチング素子および前記第2の還流用ダイオードが逆並列接続された前記第2のスイッチング素子が、複数、前記正極電極と前記負極電極との間に並列接続された構成からなっている場合、前記正極電極上に配置する複数の前記第1のスイッチング素子と複数の前記第1の還流用ダイオードとを交互に配置し、かつ、前記出力電極上に配置する複数の前記第2のスイッチング素子と複数の前記第2の還流用ダイオードとを交互に配置することを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の半導体装置において、前記第1、第2のスイッチング素子が、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)またはMOSFETからなることを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の半導体装置において、前記第1、第2の還流用ダイオードが、PN接合型ダイオードまたはPIN型ダイオードまたはショットキー型ダイオードのうち、いずれか1つあるいは複数の組み合わせからなることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−306872(P2008−306872A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−153058(P2007−153058)
【出願日】平成19年6月8日(2007.6.8)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】