説明

半導体装置

【課題】ビアホールに起因し基板に生じる亀裂を抑制し、かつチップ面積を削減することが可能な半導体装置を提供すること。
【解決手段】本発明は、長方形の基板10と、楕円形状または直線部分をその長軸方向に有するトラック形状からなり、その長軸が基板10の長辺方向に沿って配置されてなるビアホール12と、を具備することを特徴とするである。本発明によれば、ビアホールに起因した基板に生じる亀裂を抑制し、かつチップ面積を削減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置に関し、特に、ビアホールを有する基板を具備する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
FET(Field Effect Transistor)等の半導体素子が形成された基板に、表面から裏面に貫通するビアホールを形成する場合がある。ビアホールの内面は金属層で被覆され、基板の裏面からビアホールを介し半導体素子と電気的に接続することができる。これにより、半導体素子と電気的に接続する際に寄生インピーダンス等を低減させることができる。
【0003】
特許文献1には、楕円形状のビアホールを有する基板が開示されている。
【特許文献1】特開2000−138236号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ビアホールを有する基板は、温度サイクルや基板を実装する実装基板の反りに起因し基板に加わるストレスにより亀裂が生じる場合がある。一方、基板に生じる亀裂を抑制するためにビアホールを大きくするとチップ面積が大きくなってしまう。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、ビアホールに起因し基板に生じる亀裂を抑制し、かつチップ面積を削減することが可能な半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、長方形の基板と、楕円形状または直線部分をその長軸方向に有するトラック形状からなり、その長軸が前記基板の長辺方向に沿って配置されてなるビアホールと、を具備することを特徴とする半導体装置である。本発明によれば、ビアホールに起因した基板に生じる亀裂を抑制し、かつチップ面積を削減することができる。
【0007】
上記構成において、前記ビアホールは前記基板の長辺方向に沿って複数設けられている構成とすることができる。
【0008】
上記構成において、前記基板の表面に形成された半導体素子は、ソースフィンガー、ドレインフィンガーおよびゲートフィンガーを有する複数の単位FETを有し、前記複数の単位FETは並列に接続され、前記ソースフィンガー、ドレインフィンガーおよびゲートフィンガーの少なくとも1つが前記ビアホールに接続され、前記ソースフィンガー、ドレインフィンガーおよびゲートフィンガーは前記基板の短辺方向に沿って設けられている構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、複数の前記ソースフィンガーが一つのソースパッドに設けられ、前記ソースパッドの下部に前記ビアホールが設けられている構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記ビアホールの短軸に対する長軸の比は1.1以上である構成とすることができる。この構成によれば、ビアホールに起因し基板に生じる亀裂をより抑制することができる。
【0011】
上記構成において、前記ビアホールの短軸に対する長軸の比は1.5以上である構成とすることができる。この構成によれば、ビアホールに起因し基板に生じる亀裂をより抑制することができる。
【0012】
上記構成において、前記基板は、SiC、Si、サファイア、GaN、GaAsおよびInPのいずれかからなる構成とすることができる。
【0013】
上記構成において、前記基板をAuSn、Agペーストおよび半田のいずれかからなる接合金属を介し実装する実装面を具備する構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記実装面は、Cu、CuMo、CuW、CuとMoとの積層、およびCuとCuMoとの積層のいずれかの部材からなる構成とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ビアホールに起因した基板に生じる亀裂を抑制し、かつチップ面積を削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
まず、本発明の原理を説明するために行った実験について説明する。図1(a)は、実験に用いたチップの上面図である。厚さが約100μm、長辺41の長さL1が約5mm、短辺42の長さL2が約1mmのSiC基板10の長辺41に沿って15個のビアホール12bが配列されている。ビアホール12bの表面から見た形状は円形状である。ビアホール12は基板10の表面に設けられたNiからなるパッド13に接触するように設けられている。基板10の裏面およびビアホール12の内面には膜厚が約10μmの金属膜(不図示)が被覆している。
【0017】
ビアホール12bの大きさが異なるサンプルを100個ずつ試作した。試作した各チップをCuからなる実装基板にAuSnを用い実装した。各チップを実装した実装基板に対し温度サイクル試験を行った。温度サイクル試験は、−65℃と150℃との間の温度サイクルを500回行った。
【0018】
表1は円形状のビアホール12bを有するサンプルの温度サイクル試験の結果である。各100個のサンプルについて試験し、基板10に亀裂が生じたサンプルを不良とした。不良数は不良となったサンプル数、不良率は、不良数/試験数×100%を示している。図2は、ビアホール12bの直径に対する不良率を示した図である。黒丸は実験値、実線は近似値を示している。
【表1】

【0019】
温度サイクル試験による不良は、基板10と実装基板との間の熱膨張係数に起因する熱ストレスや実装基板の反りが原因と考えられる。表1および図2より、直径の大きなビアホールほど不良率が小さい。これは、ビアホール12の曲率が大きいほど基板10に亀裂が生じにくいことを示している。しかしながら、直径の大きなビアホール12を用いるとチップ面積が大きくなってしまう。
【0020】
図1(b)は亀裂が生じたサンプルの一例の上面模式図である。本発明者は、図1(b)のように、長方形の基板10に生じる亀裂45がビアホール12から短辺42方向に生じることに着目した。これは、短辺42の方が長辺41よりも大きなストレスが働くためと考えられる。そこで、ビアホール12の亀裂の生じやすい領域を曲率の大きな曲線または直線とすることで、基板10に生じる亀裂が抑制でき、亀裂の生じにくい領域の曲率を小さくすることでチップ面積を削減できると考えた。
【0021】
図3(a)および図3(b)は、基板に生じる亀裂を抑制するビアホールの例を示した図である。図3(a)を参照に、ビアホール12は楕円形状を有している。楕円形状の長軸ALを長方形基板の長辺方向に沿って配置する。これにより、ビアホール12は、基板の亀裂が生じやすい短辺方向に相対するビアホール12の境界領域は曲率の大きな曲線で構成され、亀裂が生じにくい長辺方向に相対するビアホール12の境界の領域は曲率の小さな曲線で構成される。よって、基板10の亀裂が生じにくく、かつチップ面積を削減することができる。
【0022】
図3(b)を参照に、ビアホール12aは例えばトラック(track)形状を有している。このトラック形状とは、基板の亀裂が生じやすい短辺方向に相対するビアホール12aの境界領域は直線で構成され(つまり、直線部分をその長軸方向に有する)、亀裂が生じにくい長辺方向に相対するビアホール12aの境界領域は曲線で構成される。
【0023】
図3(a)および図3(b)のように、基板10は、表面から見た形状が横長形状のビアホール12または12aを有し、ビアホール12または12aの長軸は基板10の長辺方向に沿って配置する。これにより、ビアホール12または12aに起因し基板に生じる亀裂を抑制し、かつチップ面積を削減することができる。
【0024】
以下、図面を参照に本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0025】
実施例1は、半導体素子としてFETを有する例である。図4(a)は実施例1に係る半導体装置の上面図、図4(b)は下面図、図4(c)は図4(a)および図4(b)のA−A断面図である。
【0026】
図4(a)を参照に、チップ100はSiC基板10を有している。SiC基板10は表面から見た形状が長方形である。基板10の表面に半導体素子18が形成されている。半導体素子18は、ソースフィンガー22、ドレインフィンガー26およびゲートフィンガー24を有する単位FET20を有し、複数の単位FET20が並列に接続されている。
【0027】
ソースフィンガー22、ドレインフィンガー26およびゲートフィンガー24は、基板10の短辺42の延伸する方向(短辺方向)に沿って設けられている。ソースフィンガー22、ドレインフィンガー26およびゲートフィンガー24は、それぞれ、ソースパッド23、ドレインパッド27およびゲートバスバー28に接続されている。ソースパッド23、ドレインパッド27およびゲートバスバー28は、それぞれソースフィンガー22、ドレインフィンガー26およびゲートフィンガー24の延伸方向上に配置されている。ソースフィンガー22はゲートバスバー28上を空隙を介し交差している。すなわちエアーブリッジ構造となっている。ゲートバスバー28にはゲートパッド25が接続されている。ドレインパッド27およびゲートパッド25は、ボンディングワイヤをボンディングするための領域である。
【0028】
ソースフィンガー22は一つのソースパッド23に接続され、ソースパッド23の下部にビアホール12が設けられている。これにより、ソースフィンガー22は、ソースパッド23を介しビアホール12に接続されている。ビアホール12の形状は楕円形状であり、長軸が長方形基板10の長辺41の延伸する方向(長辺方向)に沿って設けられている。FET20は、例えばSiC基板10上に順次形成されたGaN走行層、AlGaN電子供給層およびGaNキャップ層を有している。ソースフィンガー22およびドレインフィンガー26は、GaNキャップ走行層上に形成された下からTi/Al等の金属からなる。ゲートフィンガー24はGaNキャップ層上に形成された下からNi/Au等の金属からなる。
【0029】
図4(b)を参照に、基板10の裏面には例えば基板側からTi/Au等からなる金属膜14が形成されている。図4(c)を参照に、ビアホール12は基板10の表面と裏面とを貫通しており、ビアホール12の内面は金属膜14で被覆されている。
【0030】
実施例1のように、単位FET20を複数並列に接続したFETにおいては、ゲート幅を大きくしようとすると基板の形状が短冊型になる。また、ゲート幅の大きいFETは放熱のため基板10が薄い。よって、基板10に亀裂が発生しやすく、横長形状のビアホール12を用いることが有効である。
【0031】
実施例1では、ビアホール12がソースフィンガー22に接続される例を説明した。ビアホール12がソースフィンガー22に接続されることにより、ソースインピーダンスを低減することができる。ビアホール12は、ソースフィンガー22、ドレインフィンガー26およびゲートフィンガー24の少なくとも1つに接続されていればよい。実施例1では、半導体素子18としてFETを例に説明したが、ビアホール12は半導体素子18に接続されていればよい。また、ビアホール12は複数用いられなくとも1つでもよい。
【実施例2】
【0032】
実施例2は、実施例1のチップを実装基板に実装した例である。図5は、実施例2の断面図である。図6(a)は実施例2の上面図であり、図6(b)は実施例2に係る電子部品を基板にねじ止めした際の上面図である。図5を参照に、実施例1のチップ100は、例えばCuからなる実装基板30の実装面31にAuSnからなる接合金属32を用い実装されている。接合金属32は、AuSn以外にも、例えばAgペースト、半田等を用いてもよい。実装基板30としては、Cuからなる実装基板以外にも、例えば、CuとMoとの合金(CoMo)の単層、CuとWとの合金(CoW)の単層、CuとMoとが複数積層された実装基板、またはCuとCuMoとが複数積層された実装基板等を用いることができる。
【0033】
図6(a)を参照に、実装基板30上には、チップ100を気密封止するためのフレーム34、チップ100に信号をフレーム34の外から入出力するための伝送路36が設けられている。伝送路36とチップ100のゲートパッドおよびドレインパッドは、それぞれボンディングワイヤ40で接続される。チップ100のソースパッドは実装基板30表面とボンディングワイヤ40で接続される。実装基板30の両端には、ねじ止めのための凹部38が設けられている。図6(b)を参照に、実施例2に係る電子部品は例えば、Cu等の金属からなる基板50にねじ52を用いねじ止めされている。これにより、実装基板30は基板50と電気的かつ熱的に接続される。
【0034】
図5および図6(a)のように、実装基板30が金属(特にCuを含む金属)からなる場合、実装基板30と基板10との線熱膨張係数の差が大きい。よって、熱ストレスに起因し基板10に亀裂が生じ易く、横長形状のビアホールを用いることが有効である。
【0035】
また、図6(b)のように、実装基板30を基板50にねじ止めする場合、実装基板30の歪等により、基板10に亀裂が生じ易く、横長形状のビアホールを用いることが有効である。
【実施例3】
【0036】
図1と同様に、ビアホールが楕円形状のサンプルを複数試作し、表1と同様に温度サイクル試験を行った。試作したサンプルは、楕円形状の長軸長/短軸長(短軸に対する長軸の比)が80μm/70μm、90μm/60μm、100μm/55μm、110μm/50μm、または130μm/40μmである。表2は楕円形状のビアホールを有するサンプルの温度サイクル試験の結果を示す表である。図7は、ビアホール12の楕円軸比(長軸長/短軸長)に対する不良率を示した図である。黒丸は実験値、実線は近似値を示している。
【表2】

【0037】
表1の直径が75μmのビアホールでは、不良率は58%であるが、表2および図7より、ほぼ同じ大きさの楕円軸比が1.14のものでは不良率が急激に低減し37%となる。このように、楕円軸比が1.1以上では、不良率が減少する。1.5以上ではさらに不良率が減少し、1.8以上では不良率は0である。以上より、ビアホール12の長軸/短軸は1.1以上が好ましい。さらに、1.5以上が好ましく、1.8以上がより好ましい。このビアホール12の製造バラツキを考慮すると、2.2以上がさらに好ましい。また、図3(b)で示したトラック形状のビアホール12aの楕円軸比もビアホール12と同様に1.1以上が好ましい。
【0038】
実施例1および実施例2においては、半導体素子がSiC基板10に形成される例について説明した。基板10としては、例えば、SiC、Si、サファイア、GaN、GaAsおよびInPのいずれかからなる基板とすることができる。特に、SiC,サファイアまたはGaNからなる基板は硬度が大きいため、基板10に亀裂が生じやすく、横長形状のビアホールを用いることが有効である。
【0039】
以上、発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1(a)は、実験に用いたチップの上面図、図1(b)は、発生した亀裂を示す上面模式図である。
【図2】図2は、ビアホールの直径に対する不良率を示した図である。
【図3】図3(a)および図3(b)はビアホールの表面から見た形状の例である。
【図4】図4(a)は実施例1に係る半導体装置の上面図、図4(b)は下面図、図4(c)は、A−A断面図である。
【図5】図5は、実施例2の断面図である。
【図6】図6(a)は実施例2の上面図であり、図6(b)は実施例2を基板にねじ止めをした際の上面図である。
【図7】図7は、ビアホールの楕円軸比に対する不良率を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
10 基板
12 ビアホール
14 金属膜
20 単位FET
22 ソースフィンガー
23 ソースパッド
24 ゲートフィンガー
25 ゲートパッド
26 ドレインフィンガー
27 ドレインパッド
28 ゲートバスバー
30 実装基板
32 接合金属
41 長辺
42 短辺

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長方形の基板と、
楕円形状または直線部分をその長軸方向に有するトラック形状からなり、その長軸が前記基板の長辺方向に沿って配置されてなるビアホールと、を具備することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記ビアホールは前記基板の長辺方向に沿って複数設けられていることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記基板の表面に形成された半導体素子は、ソースフィンガー、ドレインフィンガーおよびゲートフィンガーを有する複数の単位FETを有し、前記複数の単位FETは並列に接続され、
前記ソースフィンガー、ドレインフィンガーおよびゲートフィンガーの少なくとも1つが前記ビアホールに接続され、
前記ソースフィンガー、ドレインフィンガーおよびゲートフィンガーは前記基板の短辺方向に沿って設けられていることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】
複数の前記ソースフィンガーが一つのソースパッドに設けられ、
前記ソースパッドの下部に前記ビアホールが設けられていることを特徴とする請求項3記載の半導体装置。
【請求項5】
前記ビアホールの短軸に対する長軸の比は1.1以上であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項6】
前記ビアホールの短軸に対する長軸の比は1.5以上であることを特徴とする請求項5記載の半導体装置。
【請求項7】
前記基板は、SiC、Si、サファイア、GaN、GaAsおよびInPのいずれかからなることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項8】
前記基板をAuSn、Agペーストおよび半田のいずれかからなる接合金属を介し実装する実装面を具備することを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項9】
前記実装面は、Cu、CuMo、CuW、CuとMoとの積層、およびCuとCuMoとの積層のいずれかの部材からなることを特徴とする請求項8記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−289935(P2009−289935A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−140305(P2008−140305)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(000154325)住友電工デバイス・イノベーション株式会社 (291)
【復代理人】
【識別番号】100137615
【弁理士】
【氏名又は名称】横山 照夫
【復代理人】
【識別番号】100134511
【弁理士】
【氏名又は名称】八田 俊之
【Fターム(参考)】