説明

半導体製造装置および半導体製造方法

【課題】本発明は、開口部内の残渣を検出すると同時に除去することにより、高いスループットで半導体装置の歩留り、信頼性の向上を図ることが可能な半導体製造方法および半導体製造装置を提供する。
【解決手段】本発明の半導体製造装置は、複数の開口部が形成されたウェーハwが搬入され、検査、処理されるチャンバ11と、ウェーハwの所定位置に電子ビーム14を照射する機構15、16と、電子ビーム14の照射により、複数の開口部より残渣を有する開口部を検出する機構17と、活性化されることにより残渣の除去が可能なプロセスガスを、チャンバ11内に供給するガス供給機構18と、チャンバ11内の圧力を制御して排気するガス排出機構19を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハの検査および再生を行なう半導体製造装置および半導体製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスにおいて、例えば、リソグラフィ工程における現像不十分や、エッチング工程における面内ばらつきにより、半導体チップ内のフォトレジストマスクやコンタクト(ヴィア)ホールといった開口部内に、フォトレジスト膜、絶縁膜などの一部が残ることがある。そして、このような開口部底面の全面あるいは一部の膜残り(以下残渣という)により、十分なコンタクト抵抗が得られなくなる。
【0003】
従って、このような半導体チップ内の全ての開口部が確実に開口していることを確認することは、歩留り、信頼性の向上において、極めて重要である。そこで、通常、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて、ウェーハ表面の観察を行うことにより、開口を確認し、状況に応じて、ウェーハ毎に再現像、再エッチングによる再生、あるいは破棄がなされている。
【0004】
近年、半導体装置の低価格化、高性能化に伴う高集積化により、開口部のアスペクト比も増大し、さらに残渣の問題が深刻化している。しかしながら、不良検出後、迅速かつ確実に残渣を除去し、高いスループットで歩留り、信頼性を向上させることが困難であるという問題がある。
【0005】
欠陥の検出・除去方法としては、例えば、特許文献1において、黒欠陥を有するフォトマスクにレジストを塗布した後、黒欠陥部を検出し、電子ビームおよびアシストガスにより黒欠陥部上のレジストを除去し、黒欠陥部を除去する手法が提案されている。しかしながら、半導体ウェーハの欠陥の検出・除去に言及したものではなく、開口部内の例えばレジスト自体の残渣による開口不良に対応できるものではない。
【特許文献1】特開2005−326773号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、開口部内の残渣を、検出後できるだけ迅速かつ確実に除去することが困難であるという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、従来技術の問題に鑑み、開口部内の残渣を検出すると同時に除去することにより、高いスループットで半導体装置の歩留り、信頼性の向上を図ることが可能な半導体製造装置および半導体製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の半導体製造装置は、複数の開口部が形成されたウェーハを搬入し、検査および処理を行うためのチャンバと、ウェーハの所定位置に電子ビームを照射する機構と、電子ビームの照射により、複数の開口部より残渣を有する開口部を検出する機構と、電子ビームの照射により残渣を有する開口部内で活性化されるプロセスガスを、チャンバ内に供給するガス供給機構と、チャンバ内の圧力を制御して排気するガス排出機構を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の半導体製造装置において、位置制御機構を有し、残渣を有する開口部近傍にプロセスガスを供給するためのノズルを備えることが好ましい。
【0010】
本発明の半導体製造方法は、チャンバ内に、複数の開口部が形成されたウェーハを搬入し、ウェーハの所定位置に第1の電子ビームを照射し、第1の電子ビームの照射により、複数の開口部より残渣を有する開口部を検出し、活性化されることにより残渣の除去が可能なプロセスガスをチャンバ内に供給し、残渣を有する開口部に、第2の電子ビームを照射して、プロセスガスを活性化し、残渣を除去することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の半導体製造方法において、プロセスガスは、フォトレジストの残渣除去には酸素ガスが、またSiOなどの絶縁膜残渣除去には低級フロロカーボンガスであることが好ましい。
【0012】
さらに、本発明の半導体製造方法において、対象となる残渣は、フォトレジストまたは絶縁膜であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、半導体製造プロセスにおいて、開口部内の残渣を検出と同時に除去することにより、高いスループットで半導体装置の歩留りおよび信頼性の向上を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図を参照して説明する。
【0015】
(実施形態1)
図1に本実施形態の半導体製造装置の断面図を示す。基本構成は、一般的な測長SEMと同様であるが、プロセスガスを導入するための機構を備える点が異なっている。
【0016】
図に示すように、チャンバ11内には、開口部を有するフォトレジストパターンが形成されたウェーハwを載置するステージ12と、このステージをX−Y方向に移動させるための位置制御機構13が設けられている。ステージ12の上方には、電子ビーム14を発生させる電子銃15と、電子銃15から放出された電子ビーム14を収束・偏向制御する電子ビーム制御機構16が設けられている。
【0017】
ステージ12斜め上方には、ウェーハw上で反射した二次電子を検出するための二次電子検出器17が設置されている。また、その上方には、プロセスガスを導入するための流量計(図示せず)を備えたプロセスガス供給機構18が設置されている。さらに、チャンバ11下部には、圧力計(図示せず)を備え、チャンバ11内を所定の圧力とし、排気するためのガス排出機構19が設置されている。
【0018】
そして、図2のフローチャートに示すようにして、フォトレジストパターン開口部におけるフォトレジスト残渣の検出・除去が行われる。
【0019】
先ず、ウェーハ上に、直接あるいは絶縁膜などを介してフォトレジスト膜を塗布し、所定パターンに露光現像することにより、複数の開口部を有するフォトレジストパターンを形成する(Step1)。そして、これらの開口部を、図1に示す半導体製造装置を用いて、フォトレジストパターンの開口部を通常の測長SEMと同様に観察し、フォトレジスト残渣を有する開口部を検出する。
【0020】
先ず、フォトレジストパターンの形成されたウェーハwを、チャンバ11に導入し、ステージ12上に載置する(Step2)。そして、ガス排出機構19により排気することにより、チャンバ内を1.33×10−4Pa以下の真空状態とする(Step3)。
【0021】
次いで、ステージ12を位置制御機構13によりX−Y方向に移動させ、例えば、電子銃15より加速電圧1kV以下でウェーハw上に電子ビーム14を照射し、電子ビーム制御機構16により、電子ビーム14を収束・偏向制御して、開口部を含む領域に電子ビーム14を走査させる(Step4)。
【0022】
そして、フォトレジストパターンの形成されたウェーハw表面および開口部の底面に電子ビーム14が照射されることにより発生した二次電子による電位変動を、二次電子検出器により測定する(Step5)。
【0023】
このとき、図3にフォトレジストパターンの開口部断面図を示すように、正常な開口部22aに電子ビーム14が照射されると、二次電子が発生するが、底部にフォトレジスト残渣23があると、開口部22bの底部の帯電状態が変動し、二次電子検出器に到達する二次電子24の数が減少する。従って、例えば、測定された開口部における二次電子数(輝度)が正常値であるかどうか判断し、ある基準値未満となった場合、フォトレジスト残渣を有する開口部として検出される(Step6)。ここで、フォトレジスト残渣の検出されたものを拡大して目視で確認してもよい。
【0024】
そして、このようにして検出された開口部22bにおける底部のフォトレジスト残渣23を、以下のようにして除去する。
【0025】
先ず、チャンバ内にプロセスガス供給機構18によりプロセスガスとして所定流量のOガスを含むガスを導入する(Step7)。そして、電子ビーム制御機構16により、電子ビーム14を収束・偏向制御して、電子銃15より例えば加速電圧0.5〜3.0kVで、検出された開口部に電子ビーム14を照射する(Step8)。
【0026】
導入されたOガスは、図4に示すように、電子ビーム14の照射された位置において、酸素イオン(O2−)および活性な酸素ラジカル(O)が形成される。これらの酸素イオンおよび酸素ラジカルによりフォトレジストがエッチングされ、残渣が除去される(Step9)。なお、エッチングの終点は検出された二次電子の状態で判断される。一般に、フォトレジストの組成は、C(カーボン)およびH(水素)から構成されており、ここで、反応により開口部22b内に発生したCO、HOなどのガスは、チャンバ11内が真空状態となっているため、直ちに開口部22bから放出され、ガス排出機構によりチャンバ11外部に排出される。
【0027】
このとき、フォトレジスト残渣23はフォトレジストパターン21の厚さに対して非常に薄いため、フォトレジストパターン21に対しては大きな影響を与えることなく除去することができる。また、電子ビーム14の照射により、発生した酸素ラジカルは等方的(化学的)に反応するが、開口部22bの壁面に影響を与えるほどではないと考えられる。
【0028】
さらに、ステージを位置制御機構13によりX−Y方向に移動させ、ウェーハw上の全ての開口部について、同様にしてフォトレジスト残渣を有する開口部を検出するとともに、検出された開口部において、フォトレジスト残渣を除去する。
【0029】
このようにして、測長SEMによりウェーハ上に形成されたフォトレジストパターンの開口部の開口状態を観察し、開口部内のフォトレジスト残渣を検出すると同時に高いスループットでこれを除去することができる。そして、フォトレジストパターンをマスクとして、次のエッチング工程において、良好な寸法のコンタクトホールなど開口部を形成することができる。従って、半導体装置の歩留りおよび信頼性を向上させることが可能となる。
【0030】
(実施形態2)
本実施形態においては、実施形態1と同様の装置を用い、同様のフローで開口部内の残渣を検出しているが、残渣がSiOなどの絶縁膜である点で異なっている。
【0031】
先ず、ウェーハ上に順次酸化膜(SiOなど)およびフォトレジストパターンを形成し、絶縁膜をエッチングし、開口部を形成する。そして、フォトレジストパターンを除去した後、この絶縁膜の開口部を、図1に示す半導体製造装置を用いて、実施形態1と同様に通常の測長SEMと同様に観察し、図5に示すような絶縁膜31中に形成され、絶縁膜残渣33を有する開口部32bを検出する。
【0032】
そして、検出された開口部32bにおける底部の絶縁膜残渣33を以下のようにして除去する。
【0033】
先ず、チャンバ内にプロセスガス供給機構18により、プロセスガスとして所定流量の例えばCFガスなどCが2以下の低級フロロカーボンガスを含むガスを導入する。そして、実施形態1と同様に、電子ビーム制御機構16により、電子ビーム14を収束・偏向制御して、電子銃15より例えば加速電圧0.5〜3.0kVで、検出された開口部に電子ビーム14を照射する。
【0034】
電子ビーム14の照射により、導入されたCFガスは主にイオン化する。そして、生成されたCF、CF2+などにより絶縁膜が異方性エッチングされ、除去される。ここで、反応により発生したSiF、COなどのガスは、実施形態1と同様に直ちに開口部32bから放出され、ガス排出機構によりチャンバ11外部に排出される。
【0035】
このとき、絶縁膜残渣は絶縁膜厚に対して非常に薄いため、絶縁膜に対しては大きな影響を与えることなく除去することができる。また、電子ビームの照射により、CFガスの一部はラジカル化し、等方的(化学的)に反応するが、開口部の壁面に影響を与えるほどではないと考えられる。
【0036】
さらに、ステージを位置制御機構13によりX−Y方向に移動させ、ウェーハ上の全ての開口部について、同様にして絶縁膜残渣を有する開口部を検出するとともに、検出された開口部において、絶縁膜残渣を除去する。
【0037】
このようにして、測長SEMによりウェーハ上に形成された絶縁膜の開口部の開口状態を観察し、開口部内の絶縁膜残渣を検出すると同時に高いスループットでこれを除去することができる。そして、次のメタル膜形成工程を経て、良好なコンタクト抵抗を有するコンタクトを形成することができ、半導体装置の歩留りおよび信頼性を向上させることが可能となる。
【0038】
なお、本実施形態において、プロセスガスとして低級フロロカーボンガスを用いているが、CFガスの他、CHF、Cや、これらの(あるいはさらにHとの)混合ガスなどを用いることができる。また、絶縁膜として、SiO膜などの酸化膜を挙げたが、その他層間絶縁膜として用いられるSiN膜や、SiOC膜などおいても適用することができる。さらに、絶縁膜に限らず、多結晶Si膜や非晶質Si膜であっても適用可能である。
【0039】
これら実施形態において、図6に示すように、プロセスガスを、位置制御機構41を備えウェーハ上の所定の位置にプロセスガスを供給するためのノズル42により供給してもよい。このようなノズルを用いることにより、電子ビームが照射される位置に局所的に、かつ電子ビームが照射される間に一時的にプロセスガスの濃度を上げることができ、プロセスガスの消費量を抑制することが可能となる。
【0040】
また、これら実施形態において、電子ビーム照射により発生した二次電子を、二次電子検出器により測定しているが、残渣の有無による電位コントラストの測定方法は特に限定されるものではなく、基板側に電流計を設け、基板電流として測定してもよい。
【0041】
また、これら実施形態において、残渣を有する開口部を検出する度にプロセスガスを供給して残渣を除去しているが、ウェーハ全面をスキャンした後に、プロセスガスを供給し、残渣のある開口部に電子ビームを照射して残渣を除去してもよい。プロセスガス供給の制御が容易であるとともに、処理毎の排気が不要となるため、プロセスガスの消費量を抑制することができるとともに、スループットを向上させることが可能となる。
【0042】
また、処理されるウェーハとしては、特に限定されるものではなく、Si基板のみならず、SiC、GaN、GaAsなどの化合物半導体基板についても適用することができる。そして、開口部は基板上に形成されたフォトレジスト、絶縁膜に形成されるが、例えばトレンチキャパシタなど、基板自体に形成された場合にも応用することができる。例えば、トレンチを開口後、同様にして十分な深さが得られていない開口部を検出し、同様にプロセスガスを供給して、電子ビームを照射することにより深さを修正し、キャパシタンスのばらつきを抑えることが可能となる。
【0043】
なお、本発明は、その他要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一態様における半導体製造装置の断面を示す図。
【図2】本発明の一態様における半導体製造工程のフローチャート。
【図3】本発明の一態様におけるフォトレジストパターンの開口部断面を示す図。
【図4】本発明の一態様におけるフォトレジストパターンの開口部断面を示す図。
【図5】本発明の一態様における絶縁膜の開口部断面を示す図。
【図6】本発明の一態様における半導体製造装置の断面を示す図。
【符号の説明】
【0045】
11…チャンバ、12…ステージ、13…位置制御機構、14…電子ビーム、15…電子銃、16…電子ビーム制御機構、17…二次電子検出器、18…プロセスガス供給機構、19…ガス排出機構、21…フォトレジストパターン、22a、22b、32b、52…開口部、23…フォトレジスト残渣、24…二次電子、31…絶縁膜、33…絶縁膜残渣、41…位置制御機構、42…ノズル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の開口部が形成されたウェーハを搬入し、検査および処理を行うためのチャンバと、
前記ウェーハの所定位置に電子ビームを照射する機構と、
前記電子ビームの照射により、前記複数の開口部より残渣を有する開口部を検出する機構と、
前記電子ビームの照射により前記残渣を有する開口部内で活性化されるプロセスガスを、前記チャンバ内に供給するガス供給機構と、
前記チャンバ内の圧力を制御して排気するガス排出機構を備えることを特徴とする半導体製造装置。
【請求項2】
位置制御機構を有し、前記残渣を有する開口部近傍に前記プロセスガスを供給するためのノズルを備えることを特徴とする請求項1に記載の半導体製造装置。
【請求項3】
チャンバ内に、複数の開口部が形成されたウェーハを搬入し、
前記ウェーハの所定位置に第1の電子ビームを照射し、
前記第1の電子ビームの照射により、前記複数の開口部より残渣を有する開口部を検出し、
活性化されることにより前記残渣の除去が可能なプロセスガスを前記チャンバ内に供給し、
前記残渣を有する開口部に、第2の電子ビームを照射して、前記プロセスガスを活性化し、
前記残渣を除去することを特徴とする半導体製造方法。
【請求項4】
前記プロセスガスは、酸素ガスまたは低級フロロカーボンガスであることを特徴とする請求項3に記載の半導体製造方法。
【請求項5】
前記残渣は、フォトレジストまたは絶縁膜であることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の半導体製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−206333(P2009−206333A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−47946(P2008−47946)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(504162958)株式会社ニューフレアテクノロジー (669)
【Fターム(参考)】