説明

半田付けの検査方法、半田接合方法、及び半田接合装置

【課題】鉛フリー半田を用いた半田付けの際にも確実に半田付け状態を監視しながら半田付けを行うことができる半田付けの検査方法、半田接合方法、及び半田接合装置を提供する。
【解決手段】半田による接合が行われる接合部に配置した半田ごてと、接合部に半田を連続的に供給する半田供給手段と、基板を覆って接合部を暗中状態とする遮蔽体と、赤色よりも長波長の光を照射する光源と、この光源で照らされた接合部を撮影するカメラと、このカメラで撮影された画像から、この画像中の接合部における半田の面積を検出して、この半田の面積が所定値を越えた場合に半田供給手段による半田の供給を終了させる制御部とにより半田付けを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半田付けの検査方法、半田接合方法、及び半田接合装置に関するものであり、特に、半田ごてによって半田付けされる半田接合の検査方法、半田接合方法、及び半田接合装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、実装基板に電子部品を実装する場合には、実装基板の所定位置にペースト状の半田をあらかじめ塗布し、このペースト状の半田を介して実装基板上の所定位置に所要の電子部品を載置し、実装基板を半田の溶融温度以上に加熱するリフロー処理を行うことにより半田を溶融させて電子部品の実装基板への半田接合を行っている。
【0003】
しかしながら、電池の電極と接触する電極体のように常に応力が作用した状態となる部材を実装基板に接合したり、高電力で使用されるいわゆるパワーエレクトロニクス部品を実装基板に接合したりする場合には、半田の応力緩和性を利用するために比較的多量の半田を用いて接合する必要があり、リフロー処理ではなく、半田ごてにより半田を盛り上げながら半田付けする必要があった。
【0004】
半田ごてによる半田付けは、比較的高度な技能が要求されるため、最近まで作業者による手作業で行われる場合が多かったが、糸半田の繰出し精度が向上したことによって半田の供給が円滑に行えるようになったことから、自動半田付け機が提案されてきており、手作業での半田付けが、自動半田付け機による半田付けに取って代わることにより、生産性の向上が図られている。
【0005】
なお、自動半田付け機で半田付けする場合には、半田付けが正確に行われているかを監視する必要があり、赤外線センサで半田付け領域部分の温度分布を測定することによって半田付け状態をリアルタイムで監視可能とした監視装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平07−270239号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、赤外線センサで半田付け状態をリアルタイムで監視する場合には、CCDカメラで半田付け状態を監視する場合と比較して精度を向上させることはできるが、赤外線センサが比較的高価であるために製造コストの低減が困難となる不具合があり、より低コストで導入可能なCCDカメラを用いることが望まれていた。
【0007】
ただし、昨今のいわゆる鉛フリー半田を用いた半田付けでは、半田付け時に大量の煙が発生するために、この煙が障害となってCCDカメラによる半田付け状態の直接的な監視ができず、CCDカメラによる半田付け状態のリアルタイムでの監視は行われていなかった。
【0008】
本発明者はこのような現状に鑑み、鉛フリー半田を用いた半田付けの際にも確実に半田付け状態を監視しながら半田付けを行うべく研究開発を行って、本発明を成すに至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の半田付けの検査方法では、半田ごてを半田付けが行われる半田付け領域に配置し、半田ごてに半田を供給して行う半田付けの検査方法において、半田付け領域を遮光体で覆って暗中状態とするステップと、赤色よりも長波長の光を照射する光源で半田付け領域を照らしながら半田付けを行うステップと、半田付け領域をカメラで撮影するステップと、このカメラで得られた画像から、この画像中の半田付け領域における半田の面積を検出して、この半田の面積に基づいて半田付け状態を検査するステップとを有することとした。
【0010】
また、本発明の半田接合方法では、半田による接合が行われる接合部に半田ごてを配置して、この半田ごてに半田を供給して行う半田接合方法において、接合部を遮光体で覆って暗中状態とするステップと、赤色よりも長波長の光を照射する光源で接合部を照らしながら半田付けを行うステップと、接合部をカメラで撮影するステップと、このカメラで得られた画像から、この画像中の接合部における半田の面積を検出するステップと、半田の面積が所定値を越えた場合に接合部への半田の供給を終了させるステップとを有することとした。
【0011】
さらに、半田の面積は、カメラで得られた第1の画像と第2の画像との差分をとって生成した差分画像に基づいて半田が存在している領域を特定して、この差分画像を互いに重ね合わせて合成した領域の面積であることにも特徴を有するものである。
【0012】
また、本発明の半田接合装置では、基板の所定位置に半田付けによって電子部品を接合する半田接合装置において、半田による接合が行われる接合部に配置した半田ごてと、接合部に半田を連続的に供給する半田供給手段と、基板を覆って接合部を暗中状態とする遮蔽体と、赤色よりも長波長の光を照射する光源と、この光源で照らされた接合部を撮影するカメラと、このカメラで撮影された画像から、この画像中の接合部における半田の面積を検出して、この半田の面積が所定値を越えた場合に半田供給手段による半田の供給を終了させる制御部を備えるものである。
【0013】
さらに、制御部は、接合部における半田の面積を検出するプログラムを備えた電子計算機であって、このプログラムを実行させることにより制御部を、カメラで得られた第1の画像と第2の画像の差分をとって差分画像を逐次生成し、半田が存在している領域を特定する手段と、差分画像を互いに逐次重ね合わせて前記領域を合成する手段と、合成された領域の面積を検出する手段として機能させていることにも特徴を有するものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明によれば、半田ごてを半田付けが行われる半田付け領域に配置し、半田ごてに半田を供給して行う半田付けの検査方法において、半田付け領域を遮光体で覆って暗中状態とするステップと、赤色よりも長波長の光を照射する光源で半田付け領域を照らしながら半田付けを行うステップと、半田付け領域をカメラで撮影するステップと、このカメラで得られた画像から、この画像中の半田付け領域における半田の面積を検出して、この半田の面積に基づいて半田付け状態を検査するステップとを有することによって、半田付けにともなって発生する煙の影響を解消して半田付け領域をカメラで確実に監視することができる。したがって、半田付けの異常の発生をリアルタイムで確実に検出できる。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、半田による接合が行われる接合部に半田ごてを配置して、この半田ごてに半田を供給して行う半田接合方法において、接合部を遮光体で覆って暗中状態とするステップと、赤色よりも長波長の光を照射する光源で接合部を照らしながら半田付けを行うステップと、接合部をカメラで撮影するステップと、カメラで得られた画像から、この画像中の接合部における半田の面積を検出するステップと、半田の面積が所定値を越えた場合に接合部への半田の供給を終了させるステップとを有することによって、必要最小限の半田で半田接合を行うことができるので、半田接合の作業時間を短縮できる。
【0016】
しかも、半田接合の状態をリアルタイムで監視できるので、半田接合の異常を半田接合時に検出でき、半田接合後の半田接合部分の検査工程を不要とすることができるので、製造工程の短縮化により製造コストの低減を図ることができる。
【0017】
請求項3記載の発明によれば、請求項2記載の半田接合方法において、半田の面積は、カメラで得られた第1の画像と第2の画像との差分をとって生成した差分画像に基づいて半田が存在している領域を特定して、この差分画像を互いに重ね合わせて合成した領域の面積としていることによって、接合部における半田の面積を確実に検出することができる。
【0018】
すなわち、半田付けにともなって膨脹する接合部においては、中央部では表面形状の変化が少ないことにより、半田が存在しているにもかかわらず、差分画像を生成した際には半田が検出できなくなるが、差分画像を順次重ね合わせていくことによって先に半田が存在した領域では常に半田が存在していることとなり、半田の面積を確実に検出することができる。
【0019】
請求項4記載の発明によれば、基板の所定位置に半田付けによって電子部品を接合する半田接合装置において、半田による接合が行われる接合部に配置した半田ごてと、接合部に半田を連続的に供給する半田供給手段と、基板を覆って接合部を暗中状態とする遮蔽体と、赤色よりも長波長の光を照射する光源と、この光源で照らされた接合部を撮影するカメラと、このカメラで撮影された画像から、この画像中の接合部における半田の面積を検出して、この半田の面積が所定値を越えた場合に半田供給手段による半田の供給を終了させる制御部を備えた半田接合装置としたことによって、接合部に供給した半田の量を確実に検出できるので、必要最小限の半田で半田接合を行うことができ、半田接合の処理速度を向上させた半田接合装置を提供できる。
【0020】
しかも、この半田接合装置では、リアルタイムで半田接合の状態を監視しているので、異常の検出を速やかに行うことができるとともに、この半田接合装置での処理後における半田接合部分の検査工程を不要とすることができる。
【0021】
請求項5記載の発明によれば、請求項4記載の半田接合装置において、制御部を、接合部における半田の面積を検出するプログラムを備えた電子計算機とし、このプログラムを実行させることにより制御部を、カメラで得られた第1の画像と第2の画像の差分をとって差分画像を逐次生成し、半田が存在している領域を特定する手段と、差分画像を互いに逐次重ね合わせて前記領域を合成する手段と、合成された半田領域の面積を検出する手段として機能させていることによって、半田付けにともなって膨脹する接合部の半田において、表面形状の変化が少ない領域が生じることによって発生する半田の検出性の低下を解消して、接合部における半田の面積を確実に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明では、高価な赤外線センサではなく、比較的安価なCCD(Charge Coupled Devices)カメラあるいはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)カメラを用いて半田付けされている部分の半田を監視して、半田付けの終了検出及び異常検出を可能としているものである。
【0023】
特に、CCDカメラあるいはCMOSカメラは、赤色よりも長波長の光の受光感度を高めて、暗中状態下で赤色よりも長波長の光で照らされた被写体を撮影可能としている。以下においては、説明の便宜上、このようなCCDカメラあるいはCMOSカメラを「赤外線カメラ」と呼ぶことにする。このような赤外線カメラは特殊なカメラではなく、昨今の防犯カメラのように夜間撮影モードとして赤色よりも長波長の光の受光感度を高めた撮影モードを備えたCCDカメラあるいはCMOSカメラを用いることができる。
【0024】
そして、本発明では、半田付けが行われる半田付け領域を暗中状態とし、半田付け領域を赤色よりも長波長の光を照射する光源で照らしながら赤外線カメラで半田付け領域を所定のタイミングで連続的に逐次撮影し、撮影された画像を解析することにより、半田付けの際に発生する大量の煙の影響を受けることなく半田付け状態を監視可能としているものである。
【0025】
したがって、本発明では、半田付け領域における半田の状態を確実に監視できることによって、半田付けの終了判定を行うことができるとともに、リアルタイムで半田付け状態を監視しているので付け作業時に半田付け状態の異常を検出することができる。
【0026】
特に、半田付けにおいては、溶融した半田に作用した表面張力によって溶融した半田が球形状化する傾向があるので、赤外線カメラで半田付け領域を撮影して得られた半田の二次元画像中の面積から半田の量を推定可能となっており、赤外線カメラで半田の接合部を一面的に監視するだけでよい。
【0027】
以下において、図面に基づいて本発明の実施形態を詳説する。図1は、本実施形態の半田接合装置の概略模式図である。
【0028】
半田接合装置Aでは、所要の電子部品21が仮装着された実装基板20が載置される載置部11が設けられた基台10と、載置部11に載置された実装基板20を覆う遮光板で形成した遮光ボックス12と、この遮光ボックス12内に配置した赤外線カメラ13と、実装基板20の半田付け領域である接合部を照らすライト14と、接合部に配置した半田ごて15と、この半田ごて15に向けて糸半田16を供給する半田供給手段としての半田供給部17と、この半田供給部17を制御するとともに赤外線カメラ13の出力信号を解析する制御部18とを備えている。
【0029】
図示しないが、半田接合装置Aには載置部11に実装基板20を移送するとともに、半田付け処理が終了した実装基板20を後工程へと移送する移送装置を設けている。具体的には、移送装置には、移送方向に移動するとともに上下に昇降可能とした矩形状の昇降体(図示せず)を設けるとともに、この昇降体には先端を実装基板20に下方から当接させる複数の支持柱(図示せず)を設け、実装基板20を載置部11に移送する際には、昇降体を上昇させることにより支持柱を実装基板20に当接させて持ち上げ、その状態で昇降体を水平方向に移動させて実装基板20を載置部11に移送し、昇降体を降下させることにより載置部11に実装基板20を載置している。同様の移送装置によって、載置部11の実装基板20を後工程へと移送することができる。
【0030】
載置部11は、本実施形態では基台10の上面に突接した複数の柱体11aで構成しており、この柱体11aを所定間隔で配置して実装基板20を水平状態に支持可能としている。
【0031】
遮光ボックス12は、遮光性を有する板体である遮光板で構成しており、本実施形態では、載置部11に載置された実装基板20を覆う矩形ドーム形状としている。特に、本実施形態では、遮光ボックス12には黒の着色を施して遮光性を高めている。
【0032】
また、本実施形態では、遮光ボックス12は図示しない昇降装置によって昇降自在としており、載置部11に実装基板20を移送する際には遮光ボックス12を上方に待避させて実装基板20の移送を行い、半田付け時には遮光ボックス12を降下させて実装基板20を覆い、遮光ボックス12内を暗中状態としている。
【0033】
なお、遮光ボックス12に昇降装置を設ける場合に限定するものではなく、遮光ボックス12の壁面の一部に実装基板20を遮光ボックス12内に導入するための送給開口(図示せず)を設けるとともに、半田付けが終了した実装基板20を遮光ボックス12外に送出するための送出開口(図示せず)を設けて、遮光ボックス12への実装基板20の出し入れを可能としてもよい。この場合には、送給開口及び送出開口にはそれぞれ開閉式のシャッタを設けて、半田付け時には、遮光ボックス12内ができるだけ暗中状態となるようにすることが望ましい。
【0034】
さらに、遮光ボックス12には、排気ファン(図示せず)などの排気装置を装着して、半田付けにともなって発生した煙が遮光ボックス12内に充満することを防止することが望ましい。
【0035】
赤外線カメラ13は、赤外領域の光の感度を高めて撮影を行う撮影モードを備えたCCDカメラとしている。
【0036】
ライト14は、赤色よりも長波長の光を照射するものを使用しており、600nmよりも長波長の光を照射するものが望ましく、好適には800〜900nm程度の光を照射するものが望ましい。
【0037】
赤外線カメラ13及びライト14は、載置部11の直上位置に配置するのではなく、載置部11の直上位置から離隔させて配置して、半田付けにともなって発生した煙が赤外線カメラ13及びライト14に当たらないようにすることが望ましく、赤外線カメラ13は、接合部の半田を撮影する必要があるので、載置部11の斜め上方位置に配置している。
【0038】
さらに、ライト14は、赤外線カメラ13が比較的大きな躯体を有しているので、赤外線カメラ13に装着することにより、ライト14の配設を容易に行うことができるとともに、赤外線カメラ13が半田による強い反射光を得られやすくすることができ、赤外線カメラ13による半田の撮影を確実に行うことができる。
【0039】
半田ごて15は、図示しない昇降装置に装着して昇降自在としており、載置部11に実装基板20が載置された後に降下させて、供給された糸半田を溶融可能としている。なお、1つの実装基板20で複数カ所の半田付けが必要な場合には、昇降装置にX−Y方向の移動手段を設けて半田ごて15の位置を適宜移動可能としてもよいし、実装基板20をX−Yテーブルなどで適宜移動させてもよい。
【0040】
半田供給部17は、糸半田16を所定のタイミングで所定量ずつ繰り出し可能としている。半田供給部17から繰り出された糸半田16は、図示しないガイドに案内されて接合部の半田ごて15に供給されている。本実施形態では、半田供給部17は遮光ボックス12の外部に設けているが、遮光ボックス12の内部に設けてもよい。
【0041】
制御部18は適宜のプログラムを実行可能な電子計算機で構成しており、本実施形態ではパーソナルコンピュータで構成して、赤外線カメラ13の出力信号を解析し、半田供給部17からの糸半田16の繰り出しの終了タイミングを検出して、終了タイミングの検出にともなって半田供給部17の動作を停止させる制御信号を出力している。制御部18も遮光ボックス12の外部に設けているが、遮光ボックス12の内部に設けてもよい。
【0042】
特に、制御部18は、接合部における半田の面積の検出するプログラムを備えており、このプログラムを実行させることにより制御部18を、赤外線カメラ13で得られた2つの画像の差分をとって差分画像を逐次生成し、半田が存在している領域を特定する手段と、差分画像を互いに逐次重ね合わせて前記領域を合成する手段と、合成された領域の面積を検出する手段として機能させ、合成された領域の面積を接合部における半田の面積として検出している。
【0043】
さらに、制御部18では、検出した半田の面積が、接合部に所定量の半田が存在していることに対応する面積以上となったことを検出して、半田供給部17からの糸半田16の繰り出しの終了タイミングの検出とし、この終了タイミングの検出に基づいて半田供給部17の動作を停止させる制御信号を出力している。
【0044】
以下において、図2のフローチャートに基づいて、半田接合装置Aによる半田接合工程について説明する。
【0045】
まず、半田接合装置Aでは、実装基板20を移送して載置部11に載置する(ステップS1)。
【0046】
次いで、半田接合装置Aでは、遮光ボックス12で載置部11の実装基板20を覆って、遮光ボックス12の内部を暗中状態とするとともに(ステップS2)、光源であるライト14で実装基板20の半田付け領域に赤色よりも長波長の光を照射する(ステップS3)。
【0047】
次いで、半田接合装置Aでは、半田供給部17によって糸半田16の供給を開始し(ステップS4)、赤外線カメラ13での接合部の撮影を開始することにより監視を開始する(ステップS5)。このとき、半田付けにともなって煙が発生しているが、赤色よりも長波長の光を照射して赤外線カメラ13で撮影することにより、赤外線カメラ13で撮影された画像に煙が写り込むことはほとんどなく、明瞭な画像を得ることができる。
【0048】
赤外線カメラ13では所定タイミングで接合部を連続的に撮影しており、出力信号を半田接合装置Aの制御部18に入力している。制御部18では、入力された赤外線カメラ13の出力信号から画像を順次再生し、第1画像と、この第1画像よりも撮影タイミングが後となっている第2画像とから差分をとって差分画像を生成する(ステップS6)。
【0049】
第1画像と第2画像とでは撮影タイミングが異なることにより、接合部における半田の形状のみが異なっており、差分画像では、この半田の形状の変化分が抽出されることとなる。本実施形態では、第1画像と第2画像は256階調の画像データとしており、第1画像と第2画像の差分画像において「80」を閾値として、閾値より小さい領域を「0」、閾値以上の領域を「1」とした画像データとしている。なお、本実施形態では、閾値を「80」としているが、「80」に限定するものではなく、半田の正確な抽出が可能となる適宜の閾値を用いてもよい。
【0050】
次いで、制御部18は、差分画像を一時的に記憶するために設けている差分画像用メモリから記憶されている差分画像を読み出す(ステップS7)。ここで、差分画像用メモリには、デフォルトとして全ての領域で「0」となった画像データを記憶しており、差分画像用メモリから読み出した差分画像と、第1画像と第2画像との差分画像との論理和処理を行うことにより差分画像の重ね合わせによる合成を行っている(ステップS8)。
【0051】
差分画像の合成後、制御部18は、合成された差分画像から接合部における半田の面積を検出している(ステップS9)。具体的には、合成された差分画像中の「1」の領域をカウントしている。
【0052】
制御部18は、検出した半田の面積と、あらかじめ設定した終了条件の面積とを比較して(ステップS10)、検出した半田の面積が、終了条件の面積よりも小さい場合には、合成された差分画像を差分画像用メモリに記憶して(ステップS11)、ステップS6に戻り、先の第2画像と、この第2画像よりも撮影タイミングが後となっている第3画像とから差分をとって新たな差分画像を生成している。
【0053】
なお、終了条件の面積は、半田接合装置Aによる半田付け作業の開始前にダミーの実装基板20に対して半田接合装置Aで半田付けを行って、先行の品質保証検査の合否判定を行い、この品質保証検査で、仮に、接合部の半田の量が十分でないと判定されると、終了条件の面積を大きくして再度ダミーの実装基板20に対して半田付けを行い、これを繰返して終了条件の面積を特定している。
【0054】
制御部18では、新たな差分画像を、ステップS7で読み出した差分画像用メモリの差分画像と合成して(ステップS8)、半田の面積の検出を行っている(ステップS9)。
【0055】
このように、制御部18では、差分画像を逐次生成して先の差分画像と合成することにより、接合部における半田の面積を正しく検出することができる。
【0056】
すなわち、半田付けにともなって膨脹する半田では、図3(a)〜(d)に示すように各タイミングでの各差分画像Pa,Pb,Pc,Pdは、特に、半田がある程度の大きさ以上となると、半田の中央部分の形状変化が少なくなることにより、図3(c)及び図3(d)に示すように、差分によって半田の中央部分において差分による抜け落ちが生じることとなる。
【0057】
したがって、たとえば図3(d)の差分画像から半田の面積を検出すると、中心部分の抜け落ちの分だけ面積が小さく評価されるおそれがある。
【0058】
そこで、各差分画像を順次重ね合わせて合成することにより、図3(e)に示すように合成された差分画像Peでは、中心部分に差分による抜け落ちが生じることを解消でき、赤外線カメラ13で撮影した画像中の接合部における半田の面積を確実に検出することができる。
【0059】
このように、制御部18は、差分画像を順次重ね合わせて合成して半田の面積を検出し、ステップS10において半田の面積があらかじめ設定した終了条件の面積よりも大きくなると、半田供給部17の動作を停止させる制御信号を出力している(ステップS12)。
【0060】
その後、半田接合装置Aでは、遮光ボックス12による実装基板20の被覆を解除して(ステップS13)、載置部11から実装基板20を除去して後工程へと移送している(ステップS14)。
【0061】
制御部18では、このように半田付けにともなって発生する煙の影響を受けることがなく、半田接合の状態をリアルタイムで監視できるので、必要最小限の半田で半田接合を行うことができ、半田接合の作業時間を短縮できる。
【0062】
しかも、半田接合時に半田接合の異常を検出できるので、半田接合後の半田接合部分の検査工程を不要とすることができるので、製造工程の短縮化により製造コストの低減を図ることができる。
【0063】
なお、半田接合時における半田接合の異常の検出は、赤外線カメラ13で撮影した画像を用いて、半田の形状異常を検出することによって行ってもよいし、半田供給部17による糸半田16の繰り出し時間を計測して、この繰り出し時間が所定時間以上となった場合には、半田接合に異常が生じていると判定してもよい。
【0064】
前述した実施形態では、赤外線カメラ13から順次出力された画像のうち、時間的に前後する画像の差分画像を順次生成し、さらに各差分画像を重ね合わせて合成画像を生成し、この合成画像における接合部の半田の面積を用いて接合部への半田供給の停止タイミングを特定していたが、他の実施形態として、差分画像を生成するための第1の画像を赤外線カメラ13で最初に撮影した画像とし、第2の画像を第1の画像の撮影後のタイミングで撮影した画像として差分画像を生成してもよい。
【0065】
すなわち、図4のフローチャートに示すように、半田接合装置Aでは、実装基板20を移送して載置部11に載置し(ステップT1)、遮光ボックス12で載置部11の実装基板20を覆って、遮光ボックス12の内部を暗中状態とし(ステップT2)、光源であるライト14で実装基板20の半田付け領域に赤色よりも長波長の光を照射する(ステップT3)。
【0066】
次いで、半田接合装置Aでは、半田供給部17によって糸半田16の供給を開始し(ステップT4)、接合部を赤外線カメラ13で撮影して第1の画像のデータを生成する。生成した第1の画像のデータは、制御部18に設けられているメモリあるいはレジスタに記憶され(ステップT5)、逐次読み出し可能としている。
【0067】
次いで、半田接合装置Aでは、赤外線カメラ13で接合部を撮影して第2の画像のデータを生成し(ステップT6)、先の第2の画像のデータを用いて差分画像を生成して(ステップT7)、この差分画像から接合部における半田の面積を検出している(ステップT8)。
【0068】
制御部18は、検出した半田の面積と、あらかじめ設定した終了条件の面積とを比較して(ステップT9)、検出した半田の面積が、終了条件の面積よりも小さい場合には、ステップT6に戻って赤外線カメラ13で接合部を再度撮影して新規の第2の画像のデータを生成し、この新規の第2の画像のデータを用いて差分画像を生成して(ステップT7)、この差分画像から接合部における半田の面積を検出している(ステップT8)。
【0069】
そして、ステップT9で半田の面積があらかじめ設定した終了条件の面積を越えた場合に、制御部18は、半田供給部17の動作を停止させる制御信号を出力し(ステップT10)、遮光ボックス12による実装基板20の被覆を解除して(ステップT11)、載置部11から実装基板20を除去して後工程へと移送している(ステップT12)。
【0070】
このように、赤外線カメラ13による撮影開始直後の画像データを用いて差分画像を生成することにより、生成された差分画像に抜け落ちが生じることを防止でき、差分画像からそのまま半田の面積を特定して、終了条件の面積との比較判定を行うことができ、比較判定の処理をより単純化することができる。
【0071】
また、差分画像からそのまま半田の面積を特定する際に、差分画像中の「1」の領域をカウントするのではなく、「1」の領域と「0」の領域の境界線を抽出して、境界線で特定される領域の面積、あるいは境界線の長さを利用して半田の面積を特定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の実施形態に係る半田接合装置の概略説明図である。
【図2】本発明の実施形態に係る半田接合装置による半田付け工程のフローチャートである。
【図3】半田の面積の検出手段の説明図である。
【図4】他の実施形態に係る半田接合装置による半田付け工程のフローチャートである。
【符号の説明】
【0073】
A 半田接合装置
10 基台
11 載置部
12 遮光ボックス
13 赤外線カメラ
14 ライト
15 半田ごて
16 糸半田
17 半田供給部
18 制御部
20 実装基板
21 電子部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半田ごてを半田付けが行われる半田付け領域に配置し、前記半田ごてに半田を供給して行う半田付けの検査方法において、
前記半田付け領域を遮光体で覆って暗中状態とするステップと、
赤色よりも長波長の光を照射する光源で前記半田付け領域を照らしながら半田付けを行うステップと、
前記半田付け領域をカメラで撮影するステップと、
前記カメラで得られた画像から、この画像中の前記半田付け領域における半田の面積を検出して、この半田の面積に基づいて半田付け状態を検査するステップと
を有することを特徴とする半田付けの検査方法。
【請求項2】
半田による接合が行われる接合部に半田ごてを配置して、この半田ごてに半田を供給して行う半田接合方法において、
前記接合部を遮光体で覆って暗中状態とするステップと、
赤色よりも長波長の光を照射する光源で前記接合部を照らしながら半田付けを行うステップと、
前記接合部をカメラで撮影するステップと、
前記カメラで得られた画像から、この画像中の前記接合部における半田の面積を検出するステップと、
前記半田の面積が所定値を越えた場合に前記接合部への半田の供給を終了させるステップと
を有することを特徴とする半田接合方法。
【請求項3】
前記半田の面積は、前記カメラで得られた第1の画像と第2の画像との差分をとって生成した差分画像に基づいて半田が存在している領域を特定して、この差分画像を互いに重ね合わせて合成した領域の面積であることを特徴とする請求項2記載の半田接合方法。
【請求項4】
基板の所定位置に半田付けによって電子部品を接合する半田接合装置において、
半田による接合が行われる接合部に配置した半田ごてと、
前記接合部に半田を連続的に供給する半田供給手段と、
前記基板を覆って前記接合部を暗中状態とする遮蔽体と、
赤色よりも長波長の光を照射する光源と、
この光源で照らされた前記接合部を撮影するカメラと、
このカメラで撮影された画像から、この画像中の前記接合部における半田の面積を検出して、この半田の面積が所定値を越えた場合に前記半田供給手段による半田の供給を終了させる制御部と
を備えたことを特徴とする半田接合装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記接合部における半田の面積を検出するプログラムを備えた電子計算機であって、
前記プログラムを実行させることにより前記制御部を、
前記カメラで得られた第1の画像と第2の画像の差分をとって差分画像を逐次生成し、半田が存在している領域を特定する手段と、
前記差分画像を互いに逐次重ね合わせて前記領域を合成する手段と、
合成された領域の面積を検出する手段と
として機能させていることを特徴とする請求項4記載の半田接合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−45956(P2008−45956A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−220723(P2006−220723)
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【特許番号】特許第3962782号(P3962782)
【特許公報発行日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【出願人】(504147243)国立大学法人 岡山大学 (444)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】