説明

圧電振動片、圧電振動子、及び圧電振動子の製造方法、並びに発振器、電子機器及び電波時計

【課題】高融点ハンダを用いた場合であっても、圧電振動片とパッケージとの接合性を向上させることができ、信頼性の高い圧電振動片、圧電振動子、及び圧電振動子の製造方法、並びに前記圧電振動子を有する発振器、電子機器、電波時計を提供する。
【解決手段】実装領域の表面に、第1クロム層18a及び第1金層18bを順に積層した第1積層体18を有する圧電振動片であって、マウント電極15,16の第1積層体18上に、第2クロム層33a及び第2金層33bを順に積層した第2積層体33を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動片、圧電振動子、及び圧電振動子の製造方法、並びに前記圧電振動子を有する発振器、電子機器及び電波時計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や携帯情報端末機器には、時刻源や制御信号等のタイミング源、リファレンス信号源等として水晶等を利用した圧電振動子が用いられている。この種の圧電振動子は、様々なものが知られており、例えば音叉型の圧電振動片を有するものや、厚み滑り振動する圧電振動片を有するもの等が知られている。
【0003】
具体的に、圧電振動子は、音叉型の圧電振動片と、プラグと、プラグとともに圧電振動片を気密封止するケースとを備えている。プラグは、圧電振動片が実装される一対のインナーリードと、インナーリードを保持するプラグ本体とを備えている。また、圧電振動片は、圧電材料からなる圧電板と、圧電板上に形成され、所定の駆動電圧が印加されたときに圧電板を振動させる一対の励振電極と、圧電板の基端側に形成され一対の励振電極にそれぞれ電気的に接続されたマウント電極と、を備えている。
なお、一対の励振電極及びマウント電極は、クロム等からなる下地金属層と金等からなる仕上金属層とが積層されることで形成された電極層である。
【0004】
上述した圧電振動片を製造するにあたっては、例えば特許文献1に示すように、まず水晶からなるウエハを音叉形状にエッチングした後、その表面に励振電極やマウント電極となる下地金属層(クロム)と、仕上金属層(金)とを連続して成膜し、ウエハから個々の圧電振動片を切断する。その後、インナーリードとマウント電極とをハンダ等を用いて接合するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−326668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、圧電振動子の製造工程においては、高温(例えば300度を超える温度)で加熱しながら作業を行う工程がある。そのため、圧電振動片とインナーリードとの接合に用いるハンダとしては、比較的融点の高い高融点ハンダ(例えば、融点が300度程度)を用いる場合がある。
【0007】
しかしながら、圧電振動片とインナーリードとを高融点ハンダにより接合する場合、マウント電極との接合性が低下し、圧電振動片とインナーリードとを良好な状態で接合できないことがある。
具体的には、上述した圧電振動片では励振電極及びマウント電極を形成した後、様々な工程を経て完成に至るが、いくつかの工程において圧電振動片が加熱される。例えば、圧電振動片の先端側に周波数調整用の重り金属膜(例えば金、銀等)や、励振電極の短絡防止のための絶縁膜、マスクパターンとなるフォトレジスト膜を形成したりするが、この際に圧電振動片が加熱される。このように、圧電振動片が加熱されることで、下地金属層のクロム(またはクロム酸化物)が仕上金属層の表面に析出するという問題がある。その結果、仕上金属層上において、いわゆるハンダ流れ(ハンダの濡れ性)が低下し、ハンダとマウント電極との接合性が低下するという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、圧電振動片とパッケージとの接合性を向上させることができ、信頼性の高い圧電振動片、圧電振動子、及び圧電振動子の製造方法、並びに前記圧電振動子を有する発振器、電子機器及び電波時計を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明に係る圧電振動片は、実装領域の表面に、第1クロム層及び第1金層を順に積層した第1積層体を有する圧電振動片であって、前記第1積層体の表面に、第2クロム層及び第2金層を順に積層した第2積層体を有することを特徴としている。
【0010】
ところで、本発明の構成では、第1クロム層、第1金層からなる第1積層体上に、再度、第2クロム層、第2金層からなる第2積層体を積層している。第1クロム層は、硬度が高いため、圧電振動片自体を保護するとともに、実装領域と第1クロム層上に形成される第1金層との密着性を向上させることができる。また、第2クロム層は、軟らかい上に電気抵抗値が低いため、圧電振動片を実装する際の接合性や導電性を高めることができる。
しかしながら、第1クロム層は酸化し易いので、第1クロム層が露出した状態で各工程を経ることで、表面が徐々に酸化してしまう。そのため、第1クロム層の上層に直接第2クロム層を積層しても、第1クロム層と第2クロム層との密着性が悪いという問題がある。また、クロムが析出した第1金層は第2金層との密着性が悪く、強度不足になって第2積層体が剥離したりする虞がある。
【0011】
これに対して、本発明の構成によれば、圧電振動片をパッケージに実装する前に、パッケージとの実装を行う第2積層体を第1積層体上に形成することで、第2積層体は形成後に高温に曝されることがない。そのため、パッケージが接合される第2積層体を、クロムの析出がない良好な層に維持することができる。これにより、パッケージと圧電振動片との接合に高融点ハンダや金からなる接合材料を用いた場合であっても、第2積層体上における接合材料の濡れ性を向上させることができる。すなわち、第2積層体上に接合材料が良好に濡れ広がるので、パッケージと圧電振動片とを確実に接合させることができる。
【0012】
また、前記第1クロム層が振動領域に延設されて励振電極が形成され、前記励振電極の表面に、絶縁膜が形成されていることを特徴としている。
この構成によれば、万が一励振電極に導電性粒子が付着した場合でも、電極間の短絡を防止することができる。また、第1金層を除去した後に第1クロム層上に絶縁膜を形成することで、絶縁膜の密着性を向上させることができ、励振電極の短絡をより確実に防ぐことができる。
特に、絶縁膜形成時には圧電振動片が加熱されるが、本発明の構成によれば、絶縁膜形成後に第2積層体を形成することで、第2積層体をクロムの析出がない良好な層に維持することができる。
【0013】
また、前記振動領域の先端側には、周波数調整用の重り金属膜が形成され、前記重り金属膜の一部の前記第1金層仕上に、さらに上層金属層を有していることを特徴としている。
ところで、上層金属層形成時には圧電振動片が加熱されるが、本発明の構成によれば、絶縁膜形成後に第2積層体を形成することで、実装領域の第2積層体をクロムの析出がない良好な層に維持することができる。
【0014】
また、本発明の圧電振動子は、上記本発明の圧電振動片を備えた圧電振動子であって、前記圧電振動片の前記第2積層体が高融点ハンダまたは金からなる接合材料によりパッケージに実装されていることを特徴としている。
この構成によれば、上記本発明の圧電振動片を備えているので、パッケージと圧電振動片との接合に高融点ハンダや金からなる接合材料を用いた場合であっても、第2積層体上における接合材料の濡れ性を向上させることができる。すなわち、第2積層体上に接合材料が良好に濡れ広がるので、パッケージと圧電振動片とを確実に接合させることができる。
したがって、パッケージと圧電振動片との導通を確保でき、信頼性の高い圧電振動子を提供することができる。
【0015】
また、前記パッケージは、外表面に高融点ハンダめっきが施されたインナーリードを備え、前記圧電振動片の前記第2積層体は、前記インナーリードに実装されていることを特徴としている。
この構成によれば、第2積層体とインナーリードとの接合時には、高融点ハンダめっきが溶解し、第2積層体上に濡れ広がることで、インナーリードと第2積層体とを接合することができる。すなわち、圧電振動片をパッケージに実装するためにバンプ等を形成する必要がないため、製造コストの低下及び製造効率の向上を図ることができる。
【0016】
また、本発明の圧電振動子の製造方法は、実装領域の表面に、第1クロム層及び第1金層を順に積層した第1積層体を有する圧電振動片を備え、前記圧電振動片を高融点ハンダまたは金からなる接合材料によりパッケージに実装する工程を有する圧電振動子の製造方法であって、前記圧電振動片をパッケージに実装する工程の前に、前記第1積層体の表面に、第2クロム層及び第2金層を順に積層した第2積層体を形成する工程を有し、前記圧電振動片をパッケージに実装する工程では、前記第2積層体を前記接合材料により前記パッケージに実装することを特徴としている。
この構成によれば、圧電振動片をパッケージに実装する前に、パッケージとの実装を行う第2積層体を第1積層体上に形成することで、第2積層体は形成後に高温に曝されることがない。そのため、パッケージが接合される第2積層体を、クロムの析出がない良好な層に維持することができる。これにより、パッケージと圧電振動片との接合に高融点ハンダや金からなる接合材料を用いた場合であっても、第2積層体上における接合材料の濡れ性を向上させることができる。すなわち、第2積層体上に接合材料が良好に濡れ広がるので、パッケージと圧電振動片とを確実に接合させることができる。
したがって、パッケージと圧電振動片との導通を確保でき、信頼性の高い圧電振動子を提供することができる。
【0017】
また、前記第2積層体を形成する工程では、前記パッケージとの実装領域のみに前記第2積層体を形成することを特徴としている。
この構成によれば、第2積層体を形成することによる圧電振動片の振動特性への影響(膜応力や重量の変化)を考慮することがないので、圧電振動片の振動特性を維持することができる。
【0018】
また、本発明に係る発振器は、上記本発明の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴としている。
【0019】
また、本発明に係る電子機器は、上記本発明の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴としている。
【0020】
また、本発明に係る電波時計は、上記本発明の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴としている。
【0021】
本発明に係る発振器、電子機器及び電波時計においては、上述した圧電振動子を備えているので、圧電振動子と同様に信頼性の高い製品を提供することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る圧電振動片及びそれを備えた圧電振動子並びに圧電振動子の製造方法によれば、第2積層体上に接合材料が良好に濡れ広がるので、パッケージと圧電振動片とを確実に接合させることができる。したがって、パッケージと圧電振動片との導通を確保でき、信頼性の高い圧電振動子を提供することができる。
本発明に係る発振器、電子機器及び電波時計においては、上述した圧電振動子を備えているので、圧電振動子と同様に信頼性の高い製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る一実施形態の圧電振動子のケースの中身を見た図であって、圧電振動片を平面視した状態の図である。
【図2】図1に示す圧電振動片を上面から見た平面図である。
【図3】図1に示す圧電振動片を下面から見た平面図である。
【図4】図1に示す圧電振動片の斜視図である。
【図5】図2のA−A線に沿う断面図である。
【図6】図1のB−B線に沿う断面図である。
【図7】図1に示す圧電振動子を製造する際のフローチャートである。
【図8】図7に示すフローチャートの続きである。
【図9】圧電振動子の製造方法を示す工程図であって、図2のC−C線に相当する断面図である。
【図10】圧電振動子の製造方法を示す工程図であって、図2のC−C線に相当する断面図である。
【図11】圧電振動子の製造方法を示す工程図であって、図2のC−C線に相当する断面図である。
【図12】圧電振動子の製造方法を示す工程図であって、図2のC−C線に相当する断面図である。
【図13】圧電振動子の製造方法を示す工程図であって、図2のC−C線に相当する断面図である。
【図14】圧電振動子の製造方法を示す工程図であって、図2のC−C線に相当する断面図である。
【図15】図1のB−B線に相当する圧電振動子の製造方法を示す工程図である。
【図16】図1のB−B線に相当する圧電振動子の製造方法を示す工程図である。
【図17】図1のB−B線に相当する圧電振動子の製造方法を示す工程図である。
【図18】本発明に係る発振器の一実施形態を示す構成図である。
【図19】本発明に係る電子機器の一実施形態を示す構成図である。
【図20】本発明に係る電波時計の一実施形態を示す構成図である。
【図21】本発明に係る表面実装型の圧電振動子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(圧電振動子)
図1は、本実施形態に係る圧電振動子の斜視図である。図1に示すように、圧電振動子1は、シリンダパッケージタイプの圧電振動子であって、音叉型の圧電振動片2と、圧電振動片2がマウントされたプラグ4と、プラグ4とともに圧電振動片2を気密封止するケース3とを備えている。
【0025】
図2は圧電振動片の上面から見た平面図であり、図3は下面から見た平面図である。また、図4は圧電振動片の斜視図であり、図5は図2のA−A線に沿う断面図である。
図2,3に示すように、圧電振動片2は、水晶、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウム等の圧電材料から形成された音叉型の振動片であり、所定の電圧が印加されたときに振動するものである。
この圧電振動片2は、平行に配置された一対の振動腕部(振動領域)8,9と、これら一対の振動腕部8,9の基端側を一体的に固定する基部10と、一対の振動腕部8,9の外表面上に形成されて一対の振動腕部8,9を振動させる第1の励振電極12と第2の励振電極13とからなる励振電極14と、第1の励振電極12及び第2の励振電極13に電気的に接続されたマウント電極15,16とを有している。
また、本実施形態の圧電振動片2は、一対の振動腕部8,9の両主面上に、振動腕部8,9の基端部から先端部に向かって一定長さL形成された溝部17を備えている。この溝部17は、図4に示すように、振動腕部8,9の基端部から略中間付近まで形成されている。なお、一対の振動腕部8,9の腕幅は共通であり、それぞれWとする。また、基部10において一対の振動腕部8,9の基端部と連結されている部分を股部10aとする。
【0026】
図2,3,5に示すように、第1の励振電極12と第2の励振電極13とからなる励振電極14は、一対の振動腕部8,9を互いに接近又は離間する方向に所定の共振周波数で振動させる電極であり、一対の振動腕部8,9の外表面に、それぞれ電気的に切り離された状態でパターニングされて形成されている。具体的には、第1の励振電極12が、一方の振動腕部8の溝部17上と、他方の振動腕部9の両側面上とに主に形成され、第2の励振電極13が、一方の振動腕部8の両側面上と他方の振動腕部9の溝部17上とに主に形成されている。
【0027】
また、図2,3に示すように、第1の励振電極12及び第2の励振電極13は、基部10の両主面上において連続的に形成されており、それぞれ引き出し電極19,20を介してマウント電極15,16に電気的に接続されている。このマウント電極15,16は、圧電板11の基端側に形成されている。すなわち、励振電極14、マウント電極15,16及び引き出し電極19,20は、所定の電圧が印加されたときに一対の振動腕部8,9を振動させる第1積層体18として機能している。
【0028】
図6は、図1のB−B線に沿う断面図である。
図6に示すように、第1積層体18は、基部10の両主面上に形成されたクロム(Cr)により形成された第1クロム層18aと、金(Au)により形成された第1金層18bとが順次積層されて構成されている。
第1クロム層18aは、第1金層18bと圧電振動片2との密着性を向上させるためのものであり、圧電振動片2と第1金層18bとの間に挟まれるようにして形成されている。第1クロム層18aは、マウント電極15,16から引き出し電極19,20、励振電極14に亘って連続的に形成されている。
また、第1金層18bは、図4に示すように、少なくとも振動腕部8,9の基端部から先端部に至る領域で、第1金層18bの一部或いは全部が除去されている。より詳しくは、振動腕部8,9の基端部より先端部側では、基端部から一定長さL以上離間した位置まで(図4に示す領域RA)、図5に示すように、第1金層18bの全部が除去されている。さらに、振動腕部8,9の基端部より基部10側には、基端部から基部10に向かって振動腕部8,9の腕幅Wの2倍離間した位置に至るまで(図4に示す領域RB)、第1金層18bの全部が除去されている。
【0029】
すなわち、第1積層体18は、振動腕部8,9の溝部17が形成されている領域を含む領域RA及び領域RBで、溝部17内を含めて全面的に第1クロム層18aだけが形成されている。そして、領域RA及び領域RBには、第1クロム層18aを覆うように酸化珪素(SiO)等からなる絶縁膜34が被覆されている。これにより、振動腕部8,9の励振電極12,13間に導電性粒子が付着した場合でも、電極間の短絡を防止することができる。そして、本実施形態のように励振電極12,13の形成領域である領域RA,RBにおいて、第1金層18bを除去した状態で第1クロム層18a上に絶縁膜34を形成することで、絶縁膜34の密着性を向上させて励振電極12,13の短絡をより防ぐことができる。なお、以下の説明では、領域RA及び領域RBを合わせた領域を単層領域Rとして説明する。
【0030】
また、一対の振動腕部8,9の先端には、自身の振動状態を所定の周波数の範囲内で振動するように調整(周波数調整)を行うための重り金属膜21が被膜されている。この重り金属膜21は、周波数を粗く調整する際に使用される粗調膜21aと、微小に調整する際に使用される微調膜21bとに分かれている。これら粗調膜21a及び微調膜21bを利用して周波数調整を行うことで、一対の振動腕部8,9の周波数をデバイスの公称周波数の範囲内に収めることができる。
【0031】
重り金属膜21のうち、振動腕部8,9の先端側に形成された粗調膜21aは、第1積層体18と同様に第1クロム層18a及び第1金層18bが順次積層され、この第1金層18b上にさらに金(Au)または銀(Ag)等からなる上層金属層が積層されて構成されている。これに対して、粗調膜21aよりも基端側に形成された微調膜21bは、第1積層体18と同様に第1クロム層18a及び第1金層18bが順次積層されて構成されている。すなわち、重り金属膜21を構成する第1クロム層18a及び第1金層18bは、上述した第1積層体18と同時に積層される。
【0032】
ここで、図2,6に示すように、圧電板11の一方の主面(図2に示す上面側)におけるマウント電極15,16は、第1積層体18上に後述するインナーリード31aに接合される第2積層体33を備えている。
第2積層体33は、第1積層体18上に第1第2クロム層33aと、第2金層33bとが順次積層されて構成されている。
【0033】
第2クロム層33aは、クロム(Cr)により形成されており、第2積層体33の剥離やクラック等を防止し、第2積層体33の強度を確保するためのものである。第2クロム層33aは、マウント電極15,16の第1積層体18上における後述するインナーリード31aとの実装領域Dのみに形成されている。
また、第2金層33bは、金(Au)により形成されており、第2クロム層33aに重なるように形成されている。そして、インナーリード31aとマウント電極15,16とは、第2金層33b上で後述する接合部Eを介して接合されている。このように、本実施形態では、マウント電極15,16において、第1クロム層18a、第1金層18bが積層された第1積層体18上に、さらに第2クロム層33a及び第2金層33bが積層された第2積層体33が形成されている。
【0034】
ケース3は、図1に示すように、有底円筒状に形成されており、圧電振動片2を内部に収納した状態でプラグ4の後述するステム30の外周に対して圧入されて、嵌合固定されている。なお、このケース3の圧入は、真空雰囲気下で行われており、ケース3内の圧電振動片2を囲む空間が真空に保たれた状態となっている。
【0035】
プラグ4は、ケース3を密閉させるステム30と、このステム30を貫通するように平行配置され、ステム30を間に挟んで一端側が圧電振動片2をマウント(機械的に接合及び電気的に接続)するインナーリード31aとされ、他端側が外部に電気的に接続されるアウターリード31bとされた2本のリード端子31と、ステム30の内側に充填されてステム30とリード端子31とを固定させる絶縁性の充填材32とを有している。
ステム30は、金属材料で環状に形成されたものである。また、充填材32の材料としては、例えばホウ珪酸ガラスである。また、リード端子31の表面及びステム30の外周には、それぞれ同材料の後述するめっき層35が施されている。
【0036】
2本のリード端子31は、ケース3内に突出している部分がインナーリード31aとなり、ケース3外に突出している部分がアウターリード31bとなっている。リード端子31は、その直径が例えば約0.12mmであり、リード端子31の母材の材質としては、コバール(FeNiCo合金)が慣用されている。また、リード端子31の外表面及びステム30の外周には、めっき層35が被覆されている。被膜させるめっきの材質としては、下地膜35aに銅(Cu)めっき等が用いられ、仕上膜35bに融点が例えば300度程度の高融点ハンダめっき(錫と鉛の合金で、その重量比が1:9)が用いられる。
【0037】
そして、インナーリード31aとマウント電極15,16とは、仕上膜(高融点ハンダめっき)35bを溶解させて形成された接合部Eを介して第2金層33b上にマウントされている。すなわち、接合部Eを介してインナーリード31aとマウント電極15,16とが機械的に接合されていると同時に、電気的に接続されている。その結果、圧電振動片2は、2本のリード端子31にマウントされた状態となっている。
【0038】
なお、上述した2本のリード端子31は、一端側(アウターリード31b側)が外部に電気的に接続され、他端側(インナーリード31a側)が圧電振動片2に対してマウントされる外部接続端子として機能する。
また、ステム30の外周に被膜されためっき層を介在させながらケース3の内周に真空中で冷間圧接させることにより、ケース3の内部を真空状態で気密封止できるようになっている。
【0039】
このように構成された圧電振動子1を作動させる場合には、2本のリード端子31のアウターリード31bに対して、所定の駆動電圧を印加する。これにより、インナーリード31a、接合部E、マウント電極15,16及び引き出し電極19,20を介して、第1の励振電極12及び第2の励振電極13からなる励振電極14に電流を流すことができ、一対の振動腕部8,9を接近・離間させる方向に所定の周波数で振動させることができる。そして、この一対の振動腕部8,9の振動を利用して、時刻源、制御信号のタイミング源やリファレンス信号源等として利用することができる。
【0040】
(圧電振動子の製造方法)
次に、上述した圧電振動子の製造方法について説明する。図7,8は、圧電振動子の製造方法を示すフローチャートである。
まず、水晶のランバート原石を所定の角度でスライスして一定の厚みのウエハSとする。続いて、このウエハS(図9参照)をラッピングして粗加工した後、加工変質層をエッチングで取り除き、その後ポリッシュ等の鏡面研磨加工を行って、所定の厚みのウエハSとする(S10)。
【0041】
次に、研磨後のウエハSを複数の圧電振動片2の外形形状をパターニングする外形形成工程を行う(S20)。具体的には、圧電振動片2の外形形状にパターニングされたエッチング保護膜(不図示)をマスクとしてエッチングすることで、エッチング保護膜でマスクされていない領域を選択的に除去して、圧電振動片2の外形形状を形作ることができる。なお、圧電振動片2は、後に行う切断工程を行うまで、図示しない連結部を介してウエハSに連結された状態となっている。
続いて、本実施形態では、後述する第1積層体形成工程を行う前に一対の振動腕部8,9に溝部17を形成する溝部形成工程を行う(S30)。これにより、ウエハS上に上述した圧電振動片11が複数連結された状態となる。
【0042】
次に、複数の圧電板11の外表面上に第1クロム層18a及び第1金層18bを積層して、第1積層体18(励振電極14、引き出し電極19,20及びマウント電極15、16)及び重り金属膜21を形成する第1積層体形成工程を行う(S40)。
【0043】
図9〜14は、圧電振動子の製造方法を示す工程図であって、図2のC−C線に相当する断面図である。
始めに、図9に示すように、圧電板11上に第1クロム層18a及び第1金層18bを、蒸着やスパッタリング等により成膜する(S41)。
【0044】
次に、図10に示すように、スプレーコート等によりフォトレジスト膜41を成膜した後、フォトリソ技術でパターニングする(S42)。この際、第1積層体18を残しておきたい部分、すなわちすなわちマウント電極15,16、励振電極12,13、引き出し電極19,20及び重り金属膜21の形成領域が、フォトレジスト膜41によって被膜されるようにパターニングする。そして、残ったフォトレジスト膜41をマスクとして、図11に示すように、第1積層体18をエッチング加工するエッチング工程を行う(S43)。これにより、第1クロム層18a及び第1金層18bが積層された第1積層体18が形成される。その後フォトレジスト膜41を除去する。
【0045】
続いて、単層領域R(図4参照)に存在する第1積層体18の第1金層18bの除去を行う。具体的には、第1金層18bを除去するために、図12に示すように、スプレーコート等によりフォトレジスト膜42を成膜した後、フォトリソ技術を用いて、フォトリソ技術を用いて、フォトレジスト膜42をパターニングする(S44)。この際、第1金層18bを残しておきたい部分、すなわちマウント電極15,16及び重り金属膜21の形成領域を覆うようにパターニングする。つまり、単層領域Rに形成されたフォトレジスト膜42を除去する。そして、そのフォトレジスト膜42をマスクとしてエッチングする(S45)。これにより、図13に示すように、単層領域Rに存在する第1積層体18において、第1金層18bを除去することができる。その後フォトレジスト膜42を除去する。
以上の工程を実施することで、第1積層体形成工程が終了する。
【0046】
その後、図14に示すように、第1金層18bが除去された単層領域Rにおいて、第1クロム層18a上にSiO等の無機絶縁材料からなる絶縁膜34を、図示しないメタルマスク等を介してCVD法等により形成する(S47)。すると、単層領域Rの第1クロム層18aを覆うように絶縁膜34が形成される。
【0047】
また、上述した第1積層体形成工程が終了した後、一対の振動腕部8,9の先端に周波数調整用の重り金属膜21のうち、粗調膜21aの形成領域における第1金層18b上に例えば、銀や金等からなる上層金属層を、蒸着やスパッタリング等を用いて被膜させる(S51)。そして、水晶ウエハに形成された全ての振動腕部8,9に対して、共振周波数を粗く調整する粗調工程を行う。これは、重り金属膜21の粗調膜21aにレーザー光を照射して、一対の振動腕部8,9の先端にかかる重量を軽減させることで、周波数を粗く調整する工程である。
【0048】
ここで、第1積層体18のマウント電極15,16の形成領域に第2積層体33を形成する第2積層体形成工程を行う(S52)。図15〜17は、圧電振動子の製造方法を示す工程図であって、図6に相当する圧電振動片の断面図である。
具体的には、図15に示すように、まず圧電板11の一方の主面側に、スプレーコート等によりフォトレジスト膜43を成膜した後、フォトリソ技術でパターニングする(S53)。この際、第2積層体33の形成領域(実装領域D)のフォトレジスト膜43を除去するようにパターニングする。
【0049】
次に、図16に示すように、フォトレジスト膜43をマスクとして、クロムからなる第2クロム層33a及び第2金層33bを、スパッタリング等により順次成膜する(S54)。
これにより、図6に示すように、第2クロム層33a及び第2金層33bが積層された第2積層体33が形成される。そして、第2積層体33の形成後にフォトレジスト膜42を除去する。
【0050】
次いで、ウエハSと圧電振動片2とを連結していた連結部を切断して、複数の圧電振動片2をウエハSから切り離して小片化する切断工程を行う(S55)。これにより、ウエハSから、第1積層体18(励振電極14、引き出し電極19,20及びマウント電極15,16)、第2積層体33及び重り金属膜21が形成された圧電振動片2を一度に複数製造することができる。
【0051】
次いで、圧電振動片2をマウントする前に、共振周波数の粗調を行う(S56)。これは、重り金属膜21の粗調膜21aにレーザ光を照射して一部を蒸発させ、重量を変化させることで行う。なお、共振周波数をより高精度に調整する微調に関しては後に行う。これについては、後に説明する。
【0052】
次に、図8に示すように、プラグ4を作製する気密端子作製工程を行う(S60)。
続いて、プラグ4のリード端子31の外表面及びステム30の外周に、同一材料のめっき層を湿式めっき法で被膜させるめっき工程を行う(S71)。具体的には、まずリード端子31の外表面及びステム30の外周面に下地膜35aを形成する。例えば、Cuメッキ或いはNiメッキを略2μmμm〜5μmの膜厚で被膜させる。続いて、下地膜35a上に仕上膜35bを形成する。例えば高融点めっきを、約8μm〜15μmの膜厚で被膜させる。
このように、下地膜35a及び仕上膜35bからなるめっき層35をリード端子31に被膜することで、インナーリード31aと圧電振動片2との接続を可能にすることができる。また、圧電振動片2の接続だけでなく、ステム30の外周に被膜されためっき層35が柔らかく弾性変形する特性を有しているので、ステム30とケース3との冷間圧接を可能にすることができ、気密接合を行うことができる。
【0053】
そして、圧電振動片2のマウント電極15,16をインナーリード31aに接合するマウント工程を行う(S74)。具体的には、図17に示すように、インナーリード31aを300度を超える温度で加熱しながら、インナーリード31aと圧電振動片2とを所定の圧力で重ね合わせる。これにより、インナーリード31aの仕上膜35bである高融点ハンダめっきが溶解し、第2金層33b上に濡れ広がる。これにより、インナーリード31aと第2積層体33とを接続することができる。その結果、圧電振動片2をマウントすることができる。すなわち、圧電振動片2は、リード端子31に機械的に支持されると共に、電気的に接続された状態となる。
なお、インナーリード31aとマウント電極15,16とを接続する際に、加熱・加圧を行ってマウントしたが、超音波を利用して接続を行っても構わない。
【0054】
次に、封止工程を行う前に、上述したマウントによる歪みをなくすために、所定の温度でベーキングを行った後(S75)、圧電振動片2の周波数調整(微調)を行う(S76)。具体的には、圧電振動子1全体を真空チャンバーに入れた状態で、アウターリード31b間に電圧を印加して圧電振動片2を振動させる。そして、周波数を計測しながら、レーザーにより重り金属膜21の微調膜21bを蒸発させることで、周波数の調整を行う。
なお、上述した微調及び先に行った粗調の際に、レーザーの照射により重り金属膜21を蒸発させることで、周波数調整を行ったが、レーザーではなくアルゴンイオンを利用しても構わない。この場合には、アルゴンイオンの照射によりスパッタリングを行い、重り金属膜21を除去することで周波数調整を行う。
【0055】
最後に、マウントされた圧電振動片2を内部に収納するようにケース3をステム30に圧入し、圧電振動片2を気密封止するケース圧入工程を行う(S77)。具体的には、真空中で所定の荷重を加えながらケース3をプラグ4のステム30の外周に圧入する。すると、ステム30の外周に形成された金属膜が弾性変形するので、冷間圧接により気密封止することができる。これにより、ケース3内に圧電振動片2を密閉して真空封止することができる。
なお、この工程を行う前に、圧電振動片2、ケース3及びプラグ4を十分に加熱して、表面吸着水分等を脱離させておくことが好ましい。
【0056】
そして、ケース3の固定が終了した後、スクリーニングを行う(S78)。このスクリーニングは、周波数や共振抵抗値の安定化を図ると共に、ケース3を圧入した嵌合部に圧縮応力に起因する金属ウイスカが発生してしまうことを抑制するために行うものである。
スクリーニング終了後、内部の電気特性検査を行う(S79)。即ち、圧電振動片2の共振周波数、共振抵抗値、ドライブレベル特性(共振周波数及び共振抵抗値の励振電力依存性)等を測定してチェックする。また、絶縁抵抗特性等を併せてチェックする。そして、最後に圧電振動子1の外観検査を行って、寸法や品質等を最終的にチェックする。この結果、図1に示す圧電振動子1を製造することができる。
【0057】
ところで、上述したように、本実施形態ではマウント電極15,16における第1クロム層18a、第1金層18bからなる第1積層体18上に、再度、第2クロム層33a、第2金層33bからなる第2積層体33を積層している。第1クロム層18aは、硬度が高いため、圧電振動片2自体を保護するとともに、圧電板11と各層との密着性を向上させることができる。また、第2金層33bは、軟らかい上に電気抵抗値が低いため、圧電振動片2を接合する際の接合性や導電性を高めることができる。
これに対して、例えば第1クロム層18a上に、第2クロム層33a、第2金層33bのみを形成したり(すなわち、クロム、クロム、金:第1参考例)、第1クロム層18a及び第1金層18bを形成した後、第1金層18b上に第2金層33bのみを形成したり(すなわち、クロム、金、金または銅:第2参考例)すること等も考えられる。
【0058】
しかしながら、第1クロム層18aは酸化し易いので、第1クロム層18aが露出した状態で各工程を経ることで、表面が徐々に酸化してしまう。そのため、第1参考例を採用した場合には、第1クロム層18aの上層に積層される第2クロム層33aとの密着性が悪いという問題がある。
また、第2参考例を採用した場合にも、クロムが析出した第1金層18bと第2金層33bとの密着性が悪く、強度不足になって第2積層体33が剥離したりする虞がある。
【0059】
これに対して、本実施形態では、圧電振動片2とプラグ4とを接合する接合工程との前に、第1積層体18上に第2積層体33を形成する第2積層体形成工程を有する構成とした。
この構成によれば、圧電振動片2をマウント電極15,16にマウントする前に、インナーリード31aとの接合を行う第2積層体33を第1積層体18上に形成することで、第2積層体33は形成後に高温に曝されることがない。そのため、インナーリード31aが接続される第2クロム層33aを、クロムの析出がない良好な層に維持することができる。これにより、マウント工程において、高融点ハンダを用いた場合であっても、第2金層33b上におけるハンダの濡れ性を向上させることができる。すなわち、第2金層33b上にハンダが良好に濡れ広がるので、インナーリード31aと第2積層体33とを確実に接合させることができる。
したがって、プラグ4と圧電振動片2との導通を確保でき、信頼性の高い圧電振動子1を提供することができる。
【0060】
また、第2積層体形成工程において、第2積層体33をインナーリード31aとの実装領域Dのみに形成することで、第2積層体33を形成することによる圧電振動片2の振動特性への影響(膜応力や重量の変化)を考慮することがないので、圧電振動片2の振動特性を維持することができる。
さらに、励振電極12,13の表面に、絶縁膜34が形成されているため、万が一励振電極12,13に導電性粒子が付着した場合でも、電極間の短絡を防止することができる。また、第1金層18bを除去した後に第1クロム層18a上に絶縁膜34を形成することで、絶縁膜34の密着性を向上させることができ、励振電極12,13の短絡をより確実に防ぐことができる。
特に、絶縁膜34形成時や上層金属層形成時には圧電振動片2が加熱されるが、本発明の構成によれば、絶縁膜34形成後に第2積層体33を形成することで、第2積層体33をクロムの析出がない良好な層に維持することができる。
【0061】
また、インナーリード31aの外表面に、高融点ハンダめっきにより仕上膜35bが被覆されているため、第2積層体33とインナーリード31aとの接合時には、仕上膜35bが溶解し、第2金層33b上に濡れ広がり、インナーリード31aと第2積層体33とを接合することができる。すなわち、第2積層体33とインナーリード31aとの接合を行うためにバンプ等を形成する必要がないため、製造コストの低下及び製造効率の向上を図ることができる。
【0062】
(発振器)
次に、本発明に係る発振器の一実施形態について、図18を参照しながら説明する。
本実施形態の発振器100は、図18に示すように、圧電振動子1を、集積回路101に電気的に接続された発振子として構成したものである。この発振器100は、コンデンサ等の電子部品102が実装された基板103を備えている。基板103には、発振器用の上述した集積回路101が実装されており、この集積回路101の近傍に、圧電振動子1が実装されている。これら電子部品102、集積回路101及び圧電振動子1は、図示しない配線パターンによってそれぞれ電気的に接続されている。なお、各構成部品は、図示しない樹脂によりモールドされている。
【0063】
このように構成された発振器100において、圧電振動子1に電圧を印加すると、この圧電振動子1内の圧電振動片2が振動する。この振動は、圧電振動片2が有する圧電特性により電気信号に変換されて、集積回路101に電気信号として入力される。入力された電気信号は、集積回路101によって各種処理がなされ、周波数信号として出力される。これにより、圧電振動子1が発振子として機能する。
また、集積回路101の構成を、例えば、RTC(リアルタイムクロック)モジュール等を要求に応じて選択的に設定することで、時計用単機能発振器等の他、当該機器や外部機器の動作日や時刻を制御したり、時刻やカレンダー等を提供したりする機能を付加することができる。
【0064】
上述したように、本実施形態の発振器100によれば、小型化及び高品質化された信頼性の高い圧電振動子1を備えているので、発振器100自体も同様に小型化及び高品質化を図ることができる。さらにこれに加え、長期にわたって安定した高精度な周波数信号を得ることができる。
【0065】
(電子機器)
次に、本発明に係る電子機器の一実施形態について、図19を参照して説明する。なお電子機器として、上述した圧電振動子1を有する携帯情報機器110を例にして説明する。始めに本実施形態の携帯情報機器110は、例えば、携帯電話に代表されるものであり、従来技術における腕時計を発展、改良したものである。外観は腕時計に類似し、文字盤に相当する部分に液晶ディスプレイを配し、この画面上に現在の時刻等を表示させることができるものである。また、通信機として利用する場合には、手首から外し、バンドの内側部分に内蔵されたスピーカ及びマイクロフォンによって、従来技術の携帯電話と同様の通信を行うことが可能である。しかしながら、従来の携帯電話と比較して、格段に小型化及び軽量化されている。
【0066】
次に、本実施形態の携帯情報機器110の構成について説明する。この携帯情報機器110は、図19に示すように、圧電振動子1と、電力を供給するための電源部111とを備えている。電源部111は、例えば、リチウム二次電池からなっている。この電源部111には、各種制御を行う制御部112と、時刻等のカウントを行う計時部113と、外部との通信を行う通信部114と、各種情報を表示する表示部115と、それぞれの機能部の電圧を検出する電圧検出部116とが並列に接続されている。そして、電源部111によって、各機能部に電力が供給されるようになっている。
【0067】
制御部112は、各機能部を制御して音声データの送信及び受信、現在時刻の計測や表示等、システム全体の動作制御を行う。また、制御部112は、予めプログラムが書き込まれたROMと、このROMに書き込まれたプログラムを読み出して実行するCPUと、このCPUのワークエリアとして使用されるRAM等とを備えている。
【0068】
計時部113は、発振回路、レジスタ回路、カウンタ回路及びインターフェース回路等を内蔵する集積回路と、圧電振動子1とを備えている。圧電振動子1に電圧を印加すると圧電振動片2が振動し、この振動が水晶の有する圧電特性により電気信号に変換されて、発振回路に電気信号として入力される。発振回路の出力は二値化され、レジスタ回路とカウンタ回路とにより計数される。そして、インターフェース回路を介して、制御部112と信号の送受信が行われ、表示部115に、現在時刻や現在日付或いはカレンダー情報等が表示される。
【0069】
通信部114は、従来の携帯電話と同様の機能を有し、無線部117、音声処理部118、切替部119、増幅部120、音声入出力部121、電話番号入力部122、着信音発生部123及び呼制御メモリ部124を備えている。
無線部117は、音声データ等の各種データを、アンテナ125を介して基地局と送受信のやりとりを行う。音声処理部118は、無線部117又は増幅部120から入力された音声信号を符号化及び複号化する。増幅部120は、音声処理部118又は音声入出力部121から入力された信号を、所定のレベルまで増幅する。音声入出力部121は、スピーカやマイクロフォン等からなり、着信音や受話音声を拡声したり、音声を集音したりする。
【0070】
また、着信音発生部123は、基地局からの呼び出しに応じて着信音を生成する。切替部119は、着信時に限って、音声処理部118に接続されている増幅部120を着信音発生部123に切り替えることによって、着信音発生部123において生成された着信音が増幅部120を介して音声入出力部121に出力される。
なお、呼制御メモリ部124は、通信の発着呼制御に係るプログラムを格納する。また、電話番号入力部122は、例えば、0から9の番号キー及びその他のキーを備えており、これら番号キー等を押下することにより、通話先の電話番号等が入力される。
【0071】
電圧検出部116は、電源部111によって制御部112等の各機能部に対して加えられている電圧が、所定の値を下回った場合に、その電圧降下を検出して制御部112に通知する。このときの所定の電圧値は、通信部114を安定して動作させるために必要な最低限の電圧として予め設定されている値であり、例えば、3V程度となる。電圧検出部116から電圧降下の通知を受けた制御部112は、無線部117、音声処理部118、切替部119及び着信音発生部123の動作を禁止する。特に、消費電力の大きな無線部117の動作停止は、必須となる。更に、表示部115に、通信部114が電池残量の不足により使用不能になった旨が表示される。
【0072】
即ち、電圧検出部116と制御部112とによって、通信部114の動作を禁止し、その旨を表示部115に表示することができる。この表示は、文字メッセージであっても良いが、より直感的な表示として、表示部115の表示面の上部に表示された電話アイコンに、×(バツ)印を付けるようにしても良い。
なお、通信部114の機能に係る部分の電源を、選択的に遮断することができる電源遮断部126を備えることで、通信部114の機能をより確実に停止することができる。
【0073】
上述したように、本実施形態の携帯情報機器110によれば、小型化及び高品質化された信頼性の高い圧電振動子1を備えているので、携帯情報機器自体も同様に小型化及び高品質化を図ることができる。さらにこれに加え、長期にわたって安定した高精度な時計情報を表示することができる。
【0074】
(電波時計)
次に、本発明に係る電波時計の一実施形態について、図20を参照して説明する。
本実施形態の電波時計130は、図20に示すように、フィルタ部131に電気的に接続された圧電振動子1を備えたものであり、時計情報を含む標準の電波を受信して、正確な時刻に自動修正して表示する機能を備えた時計である。
日本国内には、福島県(40kHz)と佐賀県(60kHz)とに、標準の電波を送信する送信所(送信局)があり、それぞれ標準電波を送信している。40kHz若しくは60kHzのような長波は、地表を伝播する性質と、電離層と地表とを反射しながら伝播する性質とを併せもつため、伝播範囲が広く、上述した2つの送信所で日本国内を全て網羅している。
【0075】
以下、電波時計130の機能的構成について詳細に説明する。
アンテナ132は、40kHz若しくは60kHzの長波の標準電波を受信する。長波の標準電波は、タイムコードと呼ばれる時刻情報を、40kHz若しくは60kHzの搬送波にAM変調をかけたものである。受信された長波の標準電波は、アンプ133によって増幅され、複数の圧電振動子1を有するフィルタ部131によって濾波、同調される。
本実施形態における圧電振動子1は、上述した搬送周波数と同一の40kHz及び60kHzの共振周波数を有する水晶振動子部138、139をそれぞれ備えている。
【0076】
さらに、濾波された所定周波数の信号は、検波、整流回路134により検波復調される。
続いて、波形整形回路135を介してタイムコードが取り出され、CPU136でカウントされる。CPU136では、現在の年、積算日、曜日、時刻等の情報を読み取る。読み取られた情報は、RTC137に反映され、正確な時刻情報が表示される。
搬送波は、40kHz若しくは60kHzであるから、水晶振動子部138、139は、上述した音叉型の構造を持つ振動子が好適である。
【0077】
なお、上述の説明は、日本国内の例で示したが、長波の標準電波の周波数は、海外では異なっている。例えば、ドイツでは77.5KHzの標準電波が用いられている。従って、海外でも対応可能な電波時計130を携帯機器に組み込む場合には、さらに日本の場合とは異なる周波数の圧電振動子1を必要とする。
【0078】
上述したように、本実施形態の電波時計130によれば、小型化及び高品質化された信頼性の高い圧電振動子1を備えているので、電波時計自体も同様に小型化及び高品質化を図ることができる。さらにこれに加え、長期にわたって安定して高精度に時刻をカウントすることができる。
【0079】
(表面実装型圧電振動子)
なお、本発明は、上述したシリンダータイプの圧電振動子1に限られず、表面実装型の圧電振動子に本発明を適用することもできる。図21は、表面実装型の圧電振動子を示す断面図である。なお、以下の説明では、上述した実施形態と同一の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。
図21に示すように、本実施形態の圧電振動子201は、ベース基板202とリッド基板203とで2層に積層された箱状に形成されており、内部のキャビティC内に上述した圧電振動片2が収納されている。
【0080】
リッド基板203は、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明の絶縁基板であり、板状に形成されている。そして、ベース基板202が接合される接合面側には、圧電振動片2が収まる矩形状の凹部203aが形成されている。この凹部203aは、両基板202,203が重ね合わされたときに、圧電振動片2を収容するキャビティCとなるキャビティ用の凹部である。そして、リッド基板203は、この凹部203aをベース基板202側に対向させた状態でベース基板202に対して陽極接合されている。
【0081】
一方、ベース基板202は、リッド基板203と同様にガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明な絶縁基板であり、リッド基板203に対して重ね合わせ可能な大きさで板状に形成されている。
このベース基板202には、ベース基板202を貫通する一対のスルーホール230,231が形成されている。これらスルーホール230,231は、マウントされた圧電振動片2の基部10側に対応した位置に一方のスルーホール230が形成され、振動腕部8,9の先端側に対応した位置に他方のスルーホール231が形成されている。
【0082】
そして、これら一対のスルーホール230,231には、これらスルーホール230,231を埋めるように形成された一対の貫通電極232,233が形成されている。これら貫通電極232,233は、焼成によってスルーホール230,231に対して一体的に固定された筒体206及び芯材部207によって形成されたものであり、スルーホール230,231を完全に塞いでキャビティC内の気密を維持しているとともに、後述する外部電極238,239と引き回し電極236,237とを導通させる役割を担っている。
【0083】
筒体206は、ペースト状のガラスフリットが焼成されたものであり、その中心には芯材部207が筒体206を貫通するように配されている。
芯材部207は、導電性を有する金属材料により円柱状に形成された導電性の芯材であり、この芯材部207を通して貫通電極232,233の電気導通性が確保されている。
【0084】
ベース基板202の上面側(リッド基板203が接合される接合面側)には、導電性材料(例えば、アルミニウム)により、陽極接合用の接合膜235と、一対の引き回し電極236,237とがパターニングされている。このうち接合膜235は、リッド基板203に形成された凹部203aの周囲を囲むようにベース基板202の周縁に沿って形成されている。
【0085】
また、一対の引き回し電極236,237は、一対の貫通電極232,233のうち、一方の貫通電極232と圧電振動片2の一方のマウント電極15とを電気的に接続するとともに、他方の貫通電極233と圧電振動片2の他方のマウント電極16とを電気的に接続するようにパターニングされている。
また、ベース基板202の下面には、一対の貫通電極232,233に対してそれぞれ電気的に接続される外部電極238,239が形成されている。
【0086】
ここで、一対の引き回し電極236,237上には、それぞれ金からなるバンプBが形成されており、このバンプBを利用して圧電振動片2がマウントされている。より具体的には、ベース基板202の上面にパターニングされた後述する引き回し電極236,237上に形成された2つのバンプB上に、一対のマウント電極15,16がそれぞれ接触した状態でバンプ接合されている。これにより、圧電振動片2は、ベース基板202の上面から浮いた状態で支持されるとともに、マウント電極15,16と引き回し電極236,237とがそれぞれ電気的に接続された状態となっている。この場合においても、第2金層33bはクロム析出のない良好な層に維持されているので、マウント工程において、第2金層33b上におけるバンプBの濡れ性を向上させることができる。すなわち、第2金層33b上にバンプBが良好に濡れ広がるので、引き回し電極236,237と第2積層体33との接合性を向上させ、両者を確実に接合させることができる。
したがって、引き回し電極236,237と圧電振動片2との導通を確保でき、信頼性の高い圧電振動子201を提供することができる。
【0087】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこれら実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、上述した実施形態では、圧電振動子の一例として、シリンダパッケージタイプや表面実装型の圧電振動子1,201を例に挙げて説明したが、この圧電振動子1に限定されるものではない。例えば、セラミックパッケージタイプの圧電振動子や、シリンダパッケージタイプの圧電振動子1を、さらにモールド樹脂部で固めて表面実装型振動子としても構わない。
また、音叉型の圧電振動片2に限られず、AT型の圧電振動片に本発明を適用することも可能である。
【0088】
さらに、上述した実施形態では、単層領域Rの全面に亘って絶縁膜34を形成した場合について説明したが、これに限らず、単層領域Rの第1金層18b上のみに絶縁膜34を形成してもよい。
【0089】
また、上述した実施形態では、フォトレジスト膜43をマスクとして成膜することで、第2積層体33を形成したが、第2クロム層33a及び第2金層33bを成膜した後、第2積層体33の形成領域をマスキングしてエッチングを行うことで、それ以外の領域の第2クロム層33a及び第2金層33bを除去することができる。
【0090】
また、上述した実施形態では、インナーリード31aの外周面に形成された仕上膜35bを溶解することで、インナーリード31aと第2金層33bとを接合する場合について説明したが、インナーリード31aと第2金層33bとの間に両者を接合するためのバンプを介在させてもよい。この場合においても、バンプ溶解時のハンダ流れが良好になり、インナーリード31aと第2金層33bとを確実に接合することができる。
さらに、上述した実施形態では振動腕部8,9に一定長さLの溝部17を形成した場合について説明したが、溝部17を形成しなくてもよい。
【符号の説明】
【0091】
1…圧電振動子 2…圧電振動片 4…プラグ 8,9…振動腕部(振動領域) 11…圧電板 12…第1の励振電極 13…第2の励振電極 14…励振電極 18…第1積層体 18a…第1クロム層 18b…第1金層 31a…インナーリード 33…第2積層体 33a…第2クロム 33b…第2金層 34…絶縁膜 35b…仕上膜(接合材料) B…バンプ(接合材料)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装領域の表面に、第1クロム層及び第1金層を順に積層した第1積層体を有する圧電振動片であって、
前記第1積層体の表面に、第2クロム層及び第2金層を順に積層した第2積層体を有することを特徴とする圧電振動片。
【請求項2】
前記第1クロム層が振動領域に延設されて励振電極が形成され、
前記励振電極の表面に、絶縁膜が形成されていることを特徴とする請求項1記載の圧電振動片。
【請求項3】
前記振動領域の先端側には、周波数調整用の重り金属膜が形成され、前記重り金属膜の一部の前記第1金層仕上に、さらに上層金属層を有していることを特徴とする請求項1または請求項2記載の圧電振動片。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の圧電振動片を備えた圧電振動子であって、
前記圧電振動片の前記第2積層体が高融点ハンダまたは金からなる接合材料によりパッケージに実装されていることを特徴とする圧電振動子。
【請求項5】
前記パッケージは、外表面に高融点ハンダめっきが施されたインナーリードを備え、
前記圧電振動片の前記第2積層体は、前記インナーリードに実装されていることを特徴とする請求項4記載の圧電振動子。
【請求項6】
実装領域の表面に、第1クロム層及び第1金層を順に積層した第1積層体を有する圧電振動片を備え、
前記圧電振動片を高融点ハンダまたは金からなる接合材料によりパッケージに実装する工程を有する圧電振動子の製造方法であって、
前記圧電振動片をパッケージに実装する工程の前に、前記第1積層体の表面に、第2クロム層及び第2金層を順に積層した第2積層体を形成する工程を有し、
前記圧電振動片をパッケージに実装する工程では、前記第2積層体を前記接合材料により前記パッケージに実装することを特徴とする圧電振動子の製造方法。
【請求項7】
前記第2積層体を形成する工程では、前記パッケージとの実装領域のみに前記第2積層体を形成することを特徴とする請求項6記載の圧電振動子の製造方法。
【請求項8】
請求項4または請求項5に記載の前記圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする発振器。
【請求項9】
請求項4または請求項5に記載の前記圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする電子機器。
【請求項10】
請求項4または請求項5に記載の前記圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする電波時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2010−187306(P2010−187306A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−31354(P2009−31354)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】