説明

圧電部品の製造方法

【課題】小型化でき、コストダウンできる圧電部品及びその製造方法を提供する。
【解決手段】圧電基板2f上に形成されたIDT2aからなる振動部及びIDT2aに接続されている素子配線を有する圧電素子2を設ける。圧電素子2と接合基板1とをIDT2aと対向するように、バンプ3及び絶縁性の樹脂枠4により互いに接着する。接合基板1は、IDT2aと対向する一方主面に接合基板配線1b、他方主面に外部端子5、接合基板端部にスルーホール1aをそれぞれ備える。バンプ3と接合基板1の接合基板配線1bとを電気的に接続する。接合基板配線1bと外部端子5とを、スルーホール1aを介して電気的に互いに接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型化できて、携帯電話機等の通信装置に好適に使用される、圧電部品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の小型化、軽量化により、電子部品に対しても多機能化が要求されている。このような背景の中、携帯電話機等の通信装置に使用される、弾性表面波装置としての弾性表面波フィルタ(以下SAWフィルタという)や、圧電体のバルク波を用いた圧電薄膜共振子を利用した圧電フィルタ(以下、BAWフィルタという)などの圧電部品に対しても同様に小型化、軽量化が求められている。
【0003】
上記BAWフィルタは、開口部若しくは凹部を有するSi基板と、該開口部若しくは凹部上に形成されている、少なくとも1層以上の圧電薄膜(ZnOやAlNからなる)を有する薄膜部の上下面を少なくとも一対の上部電極及び下部電極を対向させて挟む構造の振動部とを有する圧電共振子を梯子型に構成してなるものである。
【0004】
上記BAWフィルタでは、振動部で発生する厚み縦振動を利用するため、振動部上に振動空間を確保すると共に、振動部を水分や挨などから保護する必要がある。
【0005】
また、上記SAWフィルタは、水晶やLiTaO、LiNbO等の圧電基板上に、Alなどの金属からなる1対のくし型電極部(インターデジタルトランスデューサ、以下、IDTと略記する)を複数形成してなるものである。
【0006】
上記SAWフィルタにおいては、くし型電極部や圧電基板における弾性表面波の伝搬部分などの振動部上に振動空間を確保すると共に、くし型電極部を水分や挨などから保護する必要がある。
【0007】
よって、上記必要から、従来のBAWフィルタやSAWフィルタなどの圧電部品は、アルミナなどからなるパッケージの底面にダイボンド剤を塗布し、BAWフィルタやSAWフィルタの素子をダイボンドでパッケージに搭載し、パッケージ内部の端子と素子の電極をワイヤボンディングにより接続した後、リッドによって封止されていた。
【0008】
また、圧電部品の小型化のために、アルミナなどからなるパッケージの底面に電極ランドを形成し、BAWフィルタやSAWフィルタの素子をパッケージにフリップチップボンディングで搭載し、パッケージをリッドによって封止することも行なわれていた。
【0009】
しかし、このような構造では、BAWフィルタやSAWフィルタの素子を小型化したところで、パッケージが小型化されない限り、BAWフィルタやSAWフィルタを有する圧電部品の小型化・低背化ができないという問題がある。また、小型のパッケージにかかるコストが高いという問題もあった。
【0010】
また、特にBAWフィルタにおいては、振動部は、基板の開口部若しくは凹部上に形成されているため、素子のダイシング、実装時の素子のピックアップ、ダイボンドなどの工程における衝撃によって、振動部の破壊が発生するという問題があった。
【0011】
これに対し、例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3では、バンプによる実装が行われている。これらの公報によれば、ベース基板(接合基板)に形成したバンプによってSAW素子を実装するフリップチップ実装で、ワイヤボンディングに必要な空間をなくすことにより、SAWフィルタの小型化が図られている。
【0012】
しかしながら、SAW素子にはバンプに対する電極パッドを形成する必要があり、SAW素子の有効面積が小さくなるため、小型化が困難である。また、バンプ形成のコストがかかる。
【0013】
そこで、特許文献4では、SAW素子を、SAW素子の引き出し電極に対向する貫通孔を形成したベース基板(接合基板)に搭載し、貫通孔に金属膜を形成した後、導電材を充填して、外部回路接続部(外部端子)を形成している。これにより、SAWフィルタの小型化が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2001−94390号公報(2001年4月6日公開)
【特許文献2】特開平11−150441号公報(1999年6月2日公開)
【特許文献3】特開2001−60642号公報(2001年3月6日公開)
【特許文献4】特開2001−244785号公報(2001年9月7日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところが、特許文献4に記載の構成では、外部回路接続部(外部端子)を形成する際、ベース基板(接合基板)に貫通孔を形成した後、貫通孔に金属膜を形成した上で、更に貫通孔に導電材を充填するなど複数の工程が必要であり、製造にかかるコストが大きくなっていた。
【0016】
また、外部回路接続部(外部端子)が円筒形のヴィアホールであるため、ベース基板(接合基板)に対する外部回路接続部(外部端子)に占める面積が大きくなり、小型化をしようとすると、SAW素子の配線などに制約が生じ、よって、小型化に障害を生じている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の圧電部品は、以上の課題を解決するために、基板上に形成された少なくとも一つの振動部を有する圧電素子と、接合基板とが、上記振動部を接合基板に対向するように、接合部材及び絶縁性の接着層により互いに接着されている圧電部品であって、接合基板は、振動部と対向する一方主面に接合基板配線、他方主面に外部端子、接合基板端部にスルーホールをそれぞれ備え、前記接合部材と前記接合基板の接合基板配線とが電気的に接続され、接合基板配線と外部端子とはスルーホールを介して電気的に互いに接続されていることを特徴としている。
【0018】
上記圧電部品では、前記接合基板配線は、インダクタンス及びキャパシタンスの少なくとも一方を有していてもよい。
【0019】
本発明の他の圧電部品は、上記の課題を解決するために、基板上に形成された少なくとも一つの振動部を有する圧電素子と、接合基板とが、上記振動部を接合基板に対向するように、接合部材及び絶縁性の接着層により互いに接着されている圧電部品であって、接合基板は多層構造を有し、かつ該接合基板は、振動部と対向する一方主面に接合基板配線、他方主面に外部端子、接合基板端部にスルーホール、内部に接合基板配線とスルーホールとに接続された内部配線をそれぞれ備え、前記接合部材と前記接合基板の接合基板配線とが電気的に接続され、接合基板配線と外部端子とは内部配線及びスルーホールを介して電気的に互いに接続されていることを特徴としている。
【0020】
上記圧電部品においては、前記接合基板配線及び内部配線の少なくとも一方は、インダクタンスとキャパシタンスの少なくとも一方を有していてもよい。
【0021】
上記圧電部品では、接着層は、少なくとも一つの振動部が形成された基板の外縁部に沿って形成されていてもよい。
【0022】
上記圧電部品においては、前記圧電素子は、圧電基板と、圧電基板に形成された少なくとも1つのくし型電極部からなる振動部とを有する弾性表面波素子であってもよい。
【0023】
上記圧電部品では、前記圧電素子は、開口部もしくは凹部を有する基板と、該開口部もしくは凹部上に形成されている少なくとも1層の圧電薄膜の上下面を少なくとも一対の上部電極および下部電極を対向させて挟む構造の振動部とを有する圧電薄膜共振子であってもよい。
【0024】
本発明の通信装置は、前記の課題を解決するために、上記の何れかに記載の圧電部品を備えていることを特徴としている。
【0025】
本発明の圧電部品の製造方法は、前記の課題を解決するために、基板上に形成された少なくとも一つの振動部を有する圧電素子と接合基板とを、上記振動部が接合基板に対向するように、金属バンプ及び絶縁性の樹脂層により互いに接着する圧電部品の製造方法であって、金属バンプを、先端側に低融点金属及び基端側に上記低融点金属より融点が高い高融点金属を有する多層構造に、圧電素子及び接合基板の一方に形成し、樹脂層の高さを、金属バンプの高さより低く圧電素子及び接合基板の一方に形成し、圧電素子と接合基板とを互いに接着することを特徴としている。
【0026】
上記製造方法では、樹脂層の高さを、金属バンプの高融点金属の高さより高く形成することが好ましい。
【0027】
本発明の圧電部品の他の製造方法は、前記の課題を解決するために、集合基板上に形成された少なくとも一つの振動部を有する圧電素子を複数形成して集合素子基板を得る工程と、集合素子基板及び集合接合基板の一方に、上記各圧電素子の外縁線に沿った絶縁性の樹脂層、及び金属バンプを形成する工程と、上記振動部が集合接合基板に対向するように、集合素子基板及び集合接合基板を絶縁性の樹脂層、及び金属バンプにより互いに接着する工程と、樹脂層に沿って集合素子基板及び集合接合基板を分断して個々の圧電部品を得る工程とを有することを特徴としている。
【0028】
上記製造方法においては、さらに、金属バンプを、先端側に低融点金属及び基端側に上記低融点金属より融点が高い高融点金属を有する多層構造に形成する工程と、樹脂層の高さを、金属バンプの高さより低く形成する工程とを有することが望ましい。上記製造方法では、樹脂層の高さを、金属バンプの高融点金属の高さより高く形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0029】
本発明の圧電部品は、以上のように、接合基板は、振動部と対向する一方主面に接合基板配線、他方主面に外部端子、接合基板端部にスルーホールをそれぞれ備え、前記接合部材と前記接合基板の接合基板配線とが電気的に接続され、接合基板配線と外部端子とはスルーホールを介して電気的に互いに接続されている構成である。
【0030】
それゆえ、上記構成では、接合基板の端部にスルーホールを形成しているため、スルーホールに必要な面積が小さくなり、小型化ができる。
【0031】
また、接着層が、少なくとも一つの振動部が形成された基板の外縁部に沿って形成された構成においては、圧電素子の基板の外周に沿って形成された絶縁物からなる接着層(樹脂枠)があるので、接合時に必要以上にバンプがつぶれず、確実に圧電素子の振動空間を確保することができる。
【0032】
上記製造方法は、金属バンプを、先端側に低融点金属及び基端側に上記低融点金属より融点が高い高融点金属を有する多層構造に、圧電素子及び接合基板の一方に形成し、樹脂層の高さを、金属バンプの高さより低く圧電素子及び接合基板の一方に形成し、圧電素子と接合基板とを互いに接着する方法である。
【0033】
それゆえ、上記方法は、樹脂層の高さを、金属バンプの高さより低く設定することにより、接合時に必要以上にバンプがつぶれず、確実に圧電素子の振動空間を確保することができる。
【0034】
また、集合基板を用いる方法では、接合基板が集合基板の状態且つ、圧電素子がウェハの状態でそれぞれ金属バンプなどを形成し、接合し、その後ダイシングで個別の圧電部品にすることで、製造工程が簡素化でき、またコストダウンも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の圧電部品に係る実施の第一形態を示す、分解斜視図である。
【図2】上記実施の第一形態の圧電部品を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図3】上記圧電部品の圧電素子の各IDTの構成図である。
【図4】各弾性表面波共振子及び引き回し配線の一部を形成した圧電基板の平面図である。
【図5】コンデンサやインダクタを有する接合基板配線を形成した接合基板の平面図である。
【図6】上記図4の圧電基板と図5の接合基板とを接合した圧電部品の透視図である。
【図7】上記実施の第一形態に係る他の変形例として、接合基板に用いた多層基板の断面図である。
【図8】本発明の圧電部品に係る実施の第二形態を示す、回路図である。
【図9】上記実施の第二形態の圧電素子の平面図である。
【図10】上記実施の第二形態の製造方法の一工程を示し、各マトリクス状樹脂枠を備えた集合シリコン基板の両面上に各集合接合基板を熱圧着によりそれぞれ貼り合わせて接合した工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の圧電部品に係る実施の各形態について図1ないし図10に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0037】
(実施の第一形態)
図1及び図2に示すように、圧電部品においては、接合基板1と、弾性表面波フィルタ素子(SAWフィルタ)である圧電素子2とが、バンプ(金属バンプ)3及び絶縁性の樹脂枠(樹脂層)4により互いに接着されている。圧電部品では、IDT2aからなる振動部が接合基板1と空隙を有して対向するように形成されている。樹脂枠4は、IDT2aの振動を阻害しないように、上記IDT2aの周囲を囲むように形成されている。上記樹脂枠4における圧電基板2fの表面方向での断面形状は、IDT2aへの密封性を確保するために閉曲線状となっていることが好ましく、圧電基板2fの外縁部に沿って形成されていることがより望ましい。
【0038】
圧電素子2においては、少なくとも1つのIDT2aを有し、詳細には、図3に示すように、該IDT2aを有する各弾性表面波共振子2aa〜2aeに接続されている素子配線2bと、素子配線2bに接続されている各電極パッド2c〜2eとが圧電基板(基板)2f上にそれぞれ形成されている。本実施の第一形態では、5個の各弾性表面波共振子2aa〜2aeは、梯子(ラダー)型となるように互いに配置されて、弾性表面波フィルタ素子が構成されている。
【0039】
図1に示すように、接合基板1は、ガラス基板、ポリイミド基板及びアルミナ基板の何れかからなり、接合基板1の側面端部にスルーホール1aと、IDT2aと対向する一方主面に接合基板配線1bと、IDT2aと対向しない他方主面に外部端子5とをそれぞれ備えている。したがって、スルーホール1aにおける、接合基板1の表面方向断面形状は、側部では略半円状、隅部では四半円状(扇状)となり、外部端子5側からは、スルーホール1aを通して樹脂枠4の一部が露出していることになる。
【0040】
前記バンプ3と前記接合基板1の接合基板配線1bとが電気的に接続されている。接合基板配線1bと外部端子5とはスルーホール1aを介して電気的に互いに接続されている。このため、スルーホール1aの表面上には、Au等の導電性金属薄膜が、上記スルーホール1aの壁面上にてそれぞれ対応する接合基板配線1bと外部端子5とを互いに電気的に接続するように形成されている。
【0041】
次に、本発明の圧電部品の製造方法について説明する。まず、厚さ0.35mm・100mmφの、抵抗率が1.0×10Ω・cm〜1.0×1013Ω・cmであるLiTaO基板からなる集合圧電基板上に、Al電極からなる各弾性表面波共振子2aa〜2aeと各電極パッド2c〜2eを、蒸着によるリフトオフ法でチップ状の各圧電部品に対応させて複数それぞれ形成する。同一プロセスで同時にアライメントマークも集合圧電基板上に形成する。
【0042】
その後、それら電極パッド2c〜2e上にリフトオフ技術を使ってバンプ3を円柱状または角柱状にそれぞれ形成する。上記バンプ3としては、Alからなる電極パッド上において、バンプ3の先端側から、Sn(3μm)/Cu(10μm)/Ti(0.1μm)の多層構造を用いている。
【0043】
続いて、集合圧電基板上に、感光性ポリイミドで、上記バンプ3の高さより低い、高さ11μm、かつ、幅100μm(1つの圧電素子では、幅50μm)のマトリクス状(格子状)に樹脂枠を、各圧電素子2に対応させて複数それぞれ形成する。
【0044】
一方、厚さ50μm・100mmΦのガラス基板、ポリイミド基板及びアルミナ基板の何れかからなる集合接合基板を準備する。上記集合接合基板における、上記で形成したマトリクス状の樹脂枠の中心線と向かい合う部分に、マトリクス状の樹脂枠の幅より小さい60μmΦのスルーホールを上記中心線に対して同軸状にそれぞれ形成する。スルーホールの形成に関しては、ガラス基板の場合はドライエッチングとウエットエッチングを組み合わせることで、ポリイミド基板及びアルミナ基板などの場合はレーザー加工で形成する。上記中心線は、マトリクス状樹脂枠の幅方向の中心線である。
【0045】
その後、スルーホールを有する集合接合基板の全面に無電解めっきでAuを厚さ0.1μmにて形成し、上記Auに対して所望のレジストパターンを形成した後、上記集合接合基板における表裏の不要なAuをウエットエッチングすることで除去する。Auを残す部分は、外部端子5の部分・スルーホール側壁・引き回し配線(接合基板配線)・バンプ用の電極パッド(接合基板配線)である。
【0046】
なお、場合によっては、集合接合基板の貼り合わせ信頼性を向上させるために、上記のスルーホールを形成した集合接合基板のバンプ用の電極パッドを形成している面に、感光性ポリイミドでマトリクス状の樹脂枠(厚さ13μm・幅100μm)を形成してもよい。
【0047】
その次に、前記のアライメントマークを参照しながら位置合わせし、LiTaOからなる集合圧電基板と、集合接合基板とを互いに貼り合わせて、マトリクス状の樹脂枠により互いに熱圧着して機械的に接合する。その際、熱圧着の設定温度を、Snの融点(232℃)以上で、銅の融点(1083℃)未満の温度に設定して、バンプ3による機械的及び電気的な接続も同時に行う。
【0048】
その後、緩衝用の樹脂を集合圧電基板の裏面に塗布し硬化させ、最後に、マトリクス状の樹脂枠の中心線に沿ったダイシングにより、各圧電部品毎に分離して完成とする。最後にダイシングして完成するとき、電鋳ブレードでダイシングすることで、切り代35μm
になるので、マトリクス状の樹脂枠を中心線に沿って分断して得られる樹脂枠4の封止幅を充分に確保できる。
【0049】
本発明の構成及び方法では、ガラス基板、ポリイミド基板及びアルミナ基板の何れかからなる接合基板1の縁端部にスルーホール1aを設けたので、接合基板1上の配線可能な有効面積が大きくでき、かつ、IDT2aからなる振動部の部分にスルーホール1aの配置が回避されるので、圧電基板2fの有効面積も大きくできる。
【0050】
また、上記方法では、引き回し配線や、パンプ用の電極パッドといった接合基板配線1b、スルーホール1aの側壁、外部端子5を一括形成するので低コストにできると共に、スルーホール1aの直径より樹脂枠の幅を大きく設定することで、マトリクス状の樹脂枠を分断した樹脂枠4による封止性を確保できる。
【0051】
さらに、本発明の構成及び方法においては、リフトオフにより形成されるバンプ3をSn/Cuという構造にすることで、Auを使うよりバンプコストを低減できる。上記バンプ3の多層構造は、Snといった低融点金属、Cuといった、上記低融点金属より融点が高い高融点金属を備えていればよい。なお、Cuは、Snに拡散することでSn合金の融点を高くする材料で、安価なことが特徴である。このような多層構造とすることで、接合後の接合部分における金属の融点を接合前より大きくできて耐熱性を向上できる。また、Cuに代えて、AuやAgでも可能である。
【0052】
リフトオフで形成されるバンプの好ましい構造としては、SnにAlが侵入して拡散し易いので、そのAlのSnへの拡散防止のためにNiCr(またはNi)を、Al配線とCuの間に挿入してもよい。つまり、最適なバンプ3を形成した圧電素子の構造の一例としては、Sn/Cu/Ni/Ti/Al配線/圧電基板が挙げられる。バンプ3を受ける接合基板1側のバンプ用の電極パッドも、実際にはCu/Ni/Ti/接合基板とすることが望ましい。Tiは、電極パッド2c〜2eや、圧電基板との密着性を確保するための密着層である。
【0053】
その上、バンプ3より少し背の低いマトリクス状の樹脂枠を設けたので、集合接合基板と集合圧電基板との接合時に、上記バンプ3のSnが溶けてはみ出すこと、つまりバンプ3の形状のつぶれを回避できる。よって、集合接合基板と集合圧電基板とを電気的にかつ機械的に接合するバンプ3が柱状となって上記接合を所望する強度に維持でき、かつ、振動部の振動空間を確保できる。
【0054】
また、上記構成及び方法では、抵抗率が1.0×10Ω・cm〜1.0×1013Ω・cmと焦電性の低い圧電基板2fを使用することで、得られた圧電部品において信頼性を改善できる。
【0055】
すなわち、従来のLiTaO基板では、製造プロセス中の温度変化による電極の焦電破壊が発生することから、特開平5−267971号公報に記載されているように、電極を全てつないで同電位にする等の工程が必要であった。
【0056】
一方、本発明のように、抵抗率が1.0×10Ω・cm〜1.0×1013Ω・cmと焦電性の低いLiTaOの圧電基板2fを用いることで、上記のような工程が不要となり、製造時に生じる焦電破壊から電極を保護するためのアースラインを省くことができて、上記アースラインがパッケージ側面に露出しないことによって、信頼性を確保できる。
【0057】
さらに、上記構成及び方法においては、マトリクス状の樹脂枠による接合基板の熱圧着とバンプ3の接続とを同時にでき、かつ、接合基板1を集合接合基板の状態で、圧電基板
2fを集合圧電基板の状態で互いに接合し、その後、ダイシングで個別の圧電部品にすることで、製造工程を簡素化でき、また、低コストにできる。
【0058】
その上、上記構成及び方法では、マトリクス状の樹脂枠の中心線に沿ったダイシングにより分断するので、マトリクス状の樹脂枠を含めて分断するから、上記マトリクス状の樹脂枠が緩衝材としても機能して、分断により接合基板1や圧電基板2fの損傷を抑制できる。
【0059】
また、図4に示すように、圧電素子2の基板上に、一部の引き回し配線1cしか形成せず、図5、図6に示すように、残余の引き回し配線を接合基板配線1bとして接合基板1上に形成してもよい。これにより、LiTaOやLiNbOの誘電率が高いために電位の異なる配線が対向する箇所で発生する寄生容量の発生を防止できる。また、接合基板配線1bの一部として、コンデンサ6a、6bや、インダクタ7a〜7cを設けてもよい。コンデンサ6a、6bや、インダクタ7a〜7cは、バンプ3により各弾性表面波共振子2aa〜2aeと接続され、各接合基板配線1bによって各外部端子5a〜5eに接続されている。
【0060】
本実施の第一形態の一変形例として、図7に示すように、接合基板1を、セラミック多層基板や樹脂多層基板としてもよい。このとき、スルーホール1aの電極1dが接合基板1の厚み方向の途中まで形成されており、そこから多層基板内部の内部配線1eに接続され、その内部配線1eを通して接合基板配線1bに接続されてもよい。このようなセラミック多層基板や樹脂多層基板を接合基板1として用いる場合、接合基板1の中にインダクタ(L)やコンデンサ(C)を作りこめるというメリットがある。
【0061】
なお、上記実施の第一形態においては、バンプ3を接合部材として用いた例を挙げたが、上記に限定されることはなく、バンプ3に代えて、例えば、導電性接着剤を用いることもできる。
【0062】
(実施の第二形態)
本実施の第二形態に係る圧電部品では、図8及び図9に示すように、上記実施の第一形態に記載の弾性表面波フィルタ素子に代えて、各圧電薄膜共振子12a、12bを梯子型に配置して、圧電薄膜フィルタ(BAWフィルタ)となる圧電薄膜素子を圧電素子2として形成している。図8及び図9では、直列側圧電薄膜共振子を12aにて、並列側圧電薄膜共振子を12bにて示している。本実施の第二形態では、前記実施の第一形態と同様な機能を有する部材については、同一の部材番号を付与してその説明を省いた。
【0063】
圧電薄膜共振子12は、図9及び図10に示すように、シリコンからなる支持基板14の開口部14c上に、酸化亜鉛(ZnO)や窒化アルミニウム(AlN)などからなる圧電薄膜12cを上下(圧電薄膜12cの厚さ)方向からそれぞれ挟む下部電極12d及び上部電極12eを形成して有するものである。
【0064】
本実施の第二形態に係る圧電部品の製造方法を以下に示す。まず、シリコンからなる支持基板14の両面上にSiO、AlN、Alの何れかからなる層、あるいはAlN、Al、SiOとの何れかを積層してなる層等である各絶縁膜14a、14bを形成する。
【0065】
さらに、支持基板14に、支持基板14の厚さ方向に貫通し、絶縁膜14aまで達する開口部(空洞部)14cを形成しておく。また、開口部14cに面した位置の絶縁膜14a上には、順に、Al等からなる下部電極(電極)12d、ZnOあるいはAlN等からなる圧電薄膜12c及びAl等からなる上部電極(電極)12eをそれらの厚さ方向に互
いに積層して形成する。
【0066】
上記絶縁膜14aは開口部14c上においてダイヤフラムを形成している。よって、各圧電薄膜共振子12は、ダイヤフラム上にて、少なくとも1層以上の圧電薄膜を有する薄膜部の上下面を少なくとも一対の下部電極及び上部電極を対向させて挟む構造となっている。
【0067】
本実施の第二形態の構成では、4個の圧電薄膜共振子12を梯子型に配置する際に、入力側の各圧電薄膜共振子12a、12bの上部電極及び下部電極の一部を共通化することにより、引き回し配線を低減して小型化できるものとなっている。
【0068】
そして、本実施の第二形態の製造方法においては、図10に示すように、上記実施の第一形態と同様に、ウエハサイズの集合シリコン基板14d上に、複数の圧電薄膜フィルタである圧電素子2を碁盤の目状に互いに隣接してそれぞれ形成した後、バンプ3を圧電素子2上に形成する。そして、圧電素子2の境界線や、外縁線に沿った、前記実施の第一形態と同様なマトリクス状の樹脂枠24を、集合シリコン基板14dの両面上にそれぞれ形成する。
【0069】
続いて、マトリクス状の各樹脂枠24を備えた集合シリコン基板14dの両面上に各集合接合基板11、21を熱圧着によりそれぞれ貼り合わせて接合する。このとき、圧電薄膜共振子12の上部電極12eに面した一方の集合接合基板21には、圧電素子2の境界線上の位置にスルーホール1aが形成されている。集合接合基板21における、スルーホール1aの貫通孔における一方(圧電薄膜共振子12の上部電極12eへの対向面とは反対面)の周囲表面上には、外部端子5が形成されている。集合接合基板21における、他方(圧電薄膜共振子12の上部電極12eへの対向面)の表面上には、外部端子5と電気的に接続された接合基板配線1bが形成されている。
【0070】
このように各集合接合基板11、21がそれぞれ貼り合わされた集合シリコン基板14dは、前記の実施の第一形態と同様に、マトリクス状の各樹脂枠24の中心線(図10の仮想線A)に沿ってダイシングにより分断されて、個々の圧電部品が得られる。
【0071】
よって、上記圧電部品は、集合シリコン基板14dを分断してなり、支持基板14の両面に、各樹脂枠24によって接合基板がそれぞれ貼り合わされたものとなっている。上記各接合基板は、各集合接合基板11、21が分断されて形成されるものである。また、樹脂枠24により、圧電薄膜共振子12の上部電極12e上には、その振動のための空間が確保されている。
【0072】
本実施の第二形態においても、実施の第一形態と同様に、スルーホール1aを圧電部品の外縁部に沿って形成することで、スルーホール1a部分の面積を小さくでき、また、各接合基板に配線を形成して全体として小型化でき、低コスト化できる。
【0073】
なお、上記の実施の各形態では、バンプ用の電極パッドを形成したが、電極パッドを設けることなく、圧電素子2の引き回し配線を太くして、その上を電極パッドとして用いることも可能である。
【0074】
さらに、上記では、樹脂枠4、24を感光性ポリイミドで形成したが、これ以外では、パターニングできる絶縁性の材料であればよく、具体的には、ガラス封止材(印刷して350℃くらいで気密封止できるもの)、感光性ベンゾシクロブテン(BCB)が挙げられる。
【0075】
その上、上記の実施の各形態においては、貼り付ける接合基板1、11、21はポリイミド基又はガラス基板であるが、これ以外には、アルミナ基板など、絶縁性基板であればよい。
【0076】
ガラス基板やアルミナ基板では、封止材料にガラス封止材を適用すれば、気密封止にできる。また、ガラス基板は透明なので、貼り合わせ時の位置合わせを容易化できる場合がある。
【0077】
ガラス基板では、厚さが薄くて(30μmとか50μmとか)割れにくいものがあるので、圧電部品自体の薄型化、スルーホールの小径化に有利であると共に、スルーホールを一括で形成できる。また、ポリイミド基板を用いた場合、気密封止はできないが、接合を容易化できる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の圧電部品及びその製造方法は、SAWフィルタや、BAWフィルタを、小型化でき、かつ低コスト化できるから、携帯電話等の通信装置といった分野に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0079】
1 接合基板
1a スルーホール
1b 接合基板配線
2 圧電素子
2a IDT(振動部)
2f 圧電基板
3 バンプ(金属バンプ)
4 樹脂枠(樹脂層)
5 外部端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された少なくとも一つの振動部を有する圧電素子と接合基板とを、上記振動部が接合基板に対向するように、金属バンプ及び絶縁性の樹脂層により互いに接着する圧電部品の製造方法であって、
金属バンプを、先端側に低融点金属及び基端側に上記低融点金属より融点が高い高融点金属を有する多層構造に、圧電素子及び接合基板の一方に形成し、
樹脂層の高さを、金属バンプの高さより低く圧電素子及び接合基板の一方に形成し、
圧電素子と接合基板とを互いに接着することを特徴とする、圧電部品の製造方法。
【請求項2】
樹脂層の高さを、金属バンプの高融点金属の高さより高く形成することを特徴とする、請求項1記載の圧電部品の製造方法。
【請求項3】
集合基板上に、少なくとも一つの振動部を有する圧電素子を複数形成して集合素子基板を得る工程と、
集合素子基板及び集合接合基板の一方に、上記各圧電素子の外縁線に沿った絶縁性の樹脂層、及び金属バンプを形成する工程と、
上記振動部が集合接合基板に対向するように、集合素子基板及び集合接合基板を絶縁性の樹脂層、及び金属バンプにより互いに接着する工程と、
樹脂層に沿って集合素子基板及び集合接合基板を分断して個々の圧電部品を得る工程とを有することを特徴とする、圧電部品の製造方法。
【請求項4】
さらに、金属バンプを、先端側に低融点金属及び基端側に上記低融点金属より融点が高い高融点金属を有する多層構造に形成する工程と、
樹脂層の高さを、金属バンプの高さより低く形成する工程とを有することを特徴とする、請求項3記載の圧電部品の製造方法。
【請求項5】
樹脂層の高さを、金属バンプの高融点金属の高さより高く形成することを特徴とする、請求項4記載の圧電部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−183008(P2009−183008A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−123383(P2009−123383)
【出願日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【分割の表示】特願2003−365712(P2003−365712)の分割
【原出願日】平成15年10月27日(2003.10.27)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】