説明

基板の性質を測定する方法、スキャトロメータ、及び、リソグラフィ装置

【課題】誤った低いオーバーレイ計算を識別する方法を提供する。
【解決手段】スキャトロメータで1次回折次数と0次回折次数の両方が検出される。1次回折次数はオーバーレイエラーを検出するために使用される。その後、これがバイアスより大きくしかし回折格子のピッチより小さい大きさの誤ったオーバーレイエラー計算である場合、フラグを立てるために0次回折次数が使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本発明は、例えばリソグラフィ技術によるデバイスの製造において使用可能な検査方法、およびリソグラフィ技術を用いたデバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002] リソグラフィ装置は、所望のパターンを基板上、通常、基板のターゲット部分上に付ける機械である。リソグラフィ装置は、例えば、集積回路(IC)の製造に用いることができる。この場合、ICの個々の層上に形成される回路パターンを生成するために、マスクまたはレチクルとも呼ばれるパターニングデバイスを用いることができる。このパターンは、基板(例えば、シリコンウェーハ)上のターゲット部分(例えば、ダイの一部、または1つ以上のダイを含む)に転写することができる。パターンの転写は通常、基板上に設けられた放射感応性材料(レジスト)層上への結像によって行われる。一般には、単一の基板が、連続的にパターニングされる隣接したターゲット部分のネットワークを含んでいる。公知のリソグラフィ装置としては、ターゲット部分上にパターン全体を一度に露光することにより各ターゲット部分を照射するステッパ、およびある特定の方向(「スキャン」方向)の放射ビームによってパターンをスキャンすると同時に、この方向に平行または逆平行に基板をスキャンすることにより各ターゲット部分を照射する、スキャナが含まれる。パターンを基板上にインプリントすることにより、パターニングデバイスから基板にパターンを転写することも可能である。
【0003】
[0003] 基板のフィーチャ、例えばアライメントを決定するために、基板の表面の例えばアライメント・ターゲットでビームが反射し、反射されたビームのカメラ上に像が形成される。ビームが基板で反射する前と後のビームの性質を比較することによって、基板の性質を判断することができる。これは、例えば、既知の基板の性質に関連する既知の測定値のライブラリに記憶されたデータと、反射ビームとを比較することによって行うことができる。
【0004】
[0004] 上記のような、ターゲットを照らし、かつ反射した放射からデータを収集するためのシステムは、複数の重畳パターン(例えば回折格子など)を照らすためによく用いられる。第2のパターンは、第1のパターンに比べて所定のバイアスを有する。反射した放射の特徴を分析することによって、パターンとパターンとの間のオーバーレイエラーOVを判断することができる。
【0005】
[0005] 反射放射のより高い回折次数の特徴の分析は、例えば±20nm次数の小さいオーバーレイエラーを判断するために用いることができる。同様に、回折格子のピッチの次数のエラーは、米国出願第11/455,942号に記載の方法を用いて検出することができる。ところが、ピッチ(通常400nm〜1μm)よりも小さく、しかし回折格子間のバイアス(通常5〜20nm)よりも大きいオーバーレイエラーは、時として検出されないままとなり得る。この例は図4に示されており、図4の左上の図は、TM偏光(実線)とTE偏光(点線)での照明を示している。この例では、±15nmの回折格子間で所定のバイアスがある。第1対のオーバーレイ回折格子(白丸で示されている)の結果としての非対称性は、0の(正しい)オーバーレイエラーを示している。しかし、第2対のオーバーレイ回折格子の結果としての非対称性(黒点で示されている)も、0のオーバーレイエラーを示しているが、こちらは正しくないエラーである。なぜならば、正しいオーバーレイエラーは70nmだからである。
【0006】
[0006] 従って、バイアスよりも大きく、しかし回折格子のピッチよりも小さい、上記のオーバーレイエラーは、時として検出されないままとなり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
[0007] 誤った低いオーバーレイ計算を識別する方法を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[0008] 本発明の一実施形態に従い、基板の性質を測定する方法は、放射プロジェクタを用いて基板上に放射を投影すること、および反射した放射の0次および±n次(n>1)を検出することを含み、前記反射放射は測定すべき性質を示している。
【0009】
[0009] 本発明の他の実施形態に従い、基板の性質を測定するスキャトロメータは、基板上の複数の重畳パターンに放射を投影する放射プロジェクタ、基板の表面から反射した放射ビームの0次および±n次回折次数(但しn>1)を検出するディテクタ、および前記0次および±n次回折次数に基づき、前記複数の重畳パターンの間のオーバーレイエラーを計算するデータ処理ユニットを備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
[0010] 本発明のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の概略図を参照して以下に説明する。これらの図面において同じ参照符号は対応する部分を示す。
【0011】
【図1a】[0011] リソグラフィ装置を示す。
【図1b】[0012] リソグラフィセルまたはクラスタを示す。
【図2】[0013] スキャトロメータを示す。
【図3】[0014] 高開口数レンズの瞳面内の角度分解スペクトルを測定する際の通常の操作原則を示す。
【図4】[0015] 様々なオーバーレイエラーについての±1次回折次数および0次回折次数の強度を示す一連のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[0016] 図1aは、リソグラフィ装置を概略的に示している。このリソグラフィ装置は、放射ビームB(例えば紫外線またはEUV放射)を調整するように構成された照明システム(イルミネータ)ILを備える。サポート(例えば、マスクテーブル)MTは、パターニングデバイス(例えば、マスク)MAを支持するように構成され、かつ特定のパラメータに従ってパターニングデバイスを正確に位置付けるように構成された第1ポジショナPMに連結されている。基板テーブル(例えば、ウェーハテーブル)WTは、基板(例えば、レジストコートウェーハ)Wを保持するように構成され、かつ特定のパラメータに従って基板を正確に位置付けるように構成された第2ポジショナPWに連結されている。投影システム(例えば、屈折投影レンズシステム)PLは、パターニングデバイスMAによって放射ビームBに付けられたパターンを基板Wのターゲット部分C(例えば、1つ以上のダイを含む)上に投影するように構成されている。
【0013】
[0017] 照明システムとしては、放射を誘導し、整形し、かつ/または制御するために、屈折型、反射型、磁気型、電磁型、静電型、またはその他のタイプの光コンポーネント、あるいはそれらのあらゆる組合せなどのさまざまなタイプの光コンポーネントを含むことができる。
【0014】
[0018] サポートは、パターニングデバイスの重量を支えるなどしてパターニングデバイスを支持する。サポートは、パターニングデバイスの配向、リソグラフィ装置の設計、および、パターニングデバイスが真空環境内で保持されているか否かなどの他の条件に応じた態様で、パターニングデバイスを保持する。サポートは、機械式、真空式、静電式またはその他のクランプ技術を使って、パターニングデバイスを保持することができる。サポートは、例えば、必要に応じて固定または可動式にすることができるフレームまたはテーブルであってもよい。サポートは、パターニングデバイスを、例えば、投影システムに対して所望の位置に確実に置くことができる。本明細書において使われる「レチクル」または「マスク」という用語はすべて、より一般的な「パターニングデバイス」という用語と同義であると考えるとよい。
【0015】
[0019] 本明細書において使われる「パターニングデバイス」という用語は、基板のターゲット部分内にパターンを作り出すように、放射ビームの断面にパターンを与えるために使うことができるあらゆるデバイスを指していると、広く解釈されるべきである。なお、留意すべき点として、放射ビームに付与されたパターンは、例えば、そのパターンが位相シフトフィーチャまたはいわゆるアシストフィーチャを含む場合、基板のターゲット部分内の所望のパターンに正確に一致しない場合もある。通常、放射ビームに付けたパターンは、集積回路などのターゲット部分内に作り出されるデバイス内の特定機能層に対応することになる。
【0016】
[0020] パターニングデバイスは、透過型であっても、反射型であってもよい。パターニングデバイスの例としては、マスク、プログラマブルミラーアレイ、およびプログラマブルLCDパネルが含まれる。マスクは、リソグラフィでは公知であり、バイナリ、レゼンソン型(Alternating)位相シフト、およびハーフトーン型(attenuated)位相シフトなどのマスク型、ならびに種々のハイブリッドマスク型を含む。プログラマブルミラーアレイの一例では、小型ミラーのマトリックス配列が用いられており、各小型ミラーは、入射する放射ビームがさまざまな方向に反射するように、個別に傾斜させることができる。傾斜されたミラーは、ミラーマトリックスによって反射される放射ビームにパターンを付ける。
【0017】
[0021] 本明細書において使われる「投影システム」という用語は、使われている露光放射にとって、あるいは液浸液の使用または真空の使用といった他の要因にとって適切な屈折型、反射型、反射屈折型、磁気型、電磁型、および静電型光学システム、またはそれらのあらゆる組合せを含むあらゆる型の投影システムを包含していると広く解釈されるべきである。本明細書において使われる「投影レンズ」という用語はすべて、より一般的な「投影システム」という用語と同義であると考えるとよい。
【0018】
[0022] 本明細書に示されているとおり、リソグラフィ装置は、透過型のもの(例えば、透過型マスクを採用しているもの)である。また、リソグラフィ装置は、反射型のもの(例えば、上記に言及したプログラマブルミラーアレイを採用しているもの、または反射型マスクを採用しているもの)であってもよい。
【0019】
[0023] リソグラフィ装置は、2つ(デュアルステージ)以上の基板テーブル(および/または2つ以上のマスクテーブル)を有する型のものであってもよい。そのような「マルチステージ」マシンにおいては、追加のテーブルは並行して使うことができ、または予備工程を1つ以上のテーブル上で実行しつつ、別の1つ以上のテーブルを露光用に使うこともできる。
【0020】
[0024] また、リソグラフィ装置は、投影システムと基板との間の空間を満たすように、比較的高屈折率を有する液体、例えば水、によって基板の少なくとも一部を覆うことができるタイプのものであってもよい。さらに、リソグラフィ装置内の、例えば、マスクと投影システムとの間の別の空間に液浸液を加えてもよい。液浸技術は、投影システムの開口数を増加させるための技術においてよく知られている。本明細書において使われている「液浸」という用語は、基板のような構造物を液体内に沈めなければならないという意味ではなく、どちらかといえば、露光中、投影システムと基板との間に液体があるという意味でしかない。
【0021】
[0025] 図1aを参照すると、イルミネータILは、放射源SOから放射を受ける。例えば、放射源がエキシマレーザである場合、放射源とリソグラフィ装置は、別個の構成要素であってもよい。そのような場合には、放射源は、リソグラフィ装置の一部を形成しているとはみなされず、また放射は、放射源SOからイルミネータILへ、例えば、適切な誘導ミラーおよび/またはビームエキスパンダを含むビームデリバリシステムBDを使って送られる。その他の場合においては、例えば、放射源が水銀灯である場合、放射源は、リソグラフィ装置の一体型部品とすることもできる。放射源SOおよびイルミネータILは、必要ならばビームデリバリシステムBDとともに、放射システムと呼んでもよい。
【0022】
[0026] イルミネータILは、放射ビームの角度強度分布を調節するアジャスタADを含むことができる。一般に、イルミネータの瞳面内の強度分布の少なくとも外側および/または内側半径範囲(通常、それぞれσ-outerおよびσ-innerと呼ばれる)を調節することができる。さらに、イルミネータILは、インテグレータINおよびコンデンサCOといったさまざまな他のコンポーネントを含むことができる。イルミネータを使って放射ビームを調整すれば、放射ビームの断面に所望の均一性および強度分布をもたせることができる。
【0023】
[0027] 放射ビームBは、サポート(例えば、マスクテーブルMT)上に保持されているパターニングデバイス(例えば、マスクMA)上に入射して、パターニングデバイスによってパターン形成される。マスクMAを通り抜けた後、放射ビームBは投影システムPSを通過し、投影システムPSは、基板Wのターゲット部分C上にビームの焦点をあわせる。第2ポジショナPWおよび位置センサIF(例えば、干渉計デバイス、リニアエンコーダ、または静電容量センサ)を使って、例えば、さまざまなターゲット部分Cを放射ビームBの経路内に位置付けるように、基板テーブルWTを正確に動かすことができる。同様に、第1ポジショナPMおよび別の位置センサ(図1aには明示的に示されていない)を使い、例えば、マスクライブラリからマスクを機械的に取り出した後またはスキャン中に、マスクMAを放射ビームBの経路に対して正確に位置付けることもできる。通常、マスクテーブルMTの移動は、第1ポジショナPMの一部を形成するロングストロークモジュール(粗動位置決め)およびショートストロークモジュール(微動位置決め)を使って達成することができる。同様に、基板テーブルWTの移動も、第2ポジショナPWの一部を形成するロングストロークモジュールおよびショートストロークモジュールを使って達成することができる。ステッパの場合は(スキャナとは対照的に)、マスクテーブルMTは、ショートストロークアクチュエータのみに連結されてもよく、または固定されてもよい。マスクMAおよび基板Wは、マスクアライメントマークM1およびM2と、基板アライメントマークP1およびP2とを使って、位置合わせされてもよい。例示では基板アライメントマークが専用ターゲット部分を占めているが、基板アライメントマークをターゲット部分とターゲット部分との間の空間内に置くこともできる(これらは、けがき線アライメントマークとして公知である)。同様に、複数のダイがマスクMA上に設けられている場合、マスクアライメントマークは、ダイとダイの間に置かれてもよい。
【0024】
[0028] 例示の装置は、以下に説明するモードのうち少なくとも1つのモードで使用できる。
【0025】
[0029] 1. ステップモードにおいては、マスクテーブルMTおよび基板テーブルWTを基本的に静止状態に保ちつつ、放射ビームに付けられたパターン全体を一度に(すなわち、単一静止露光)ターゲット部分C上に投影する。基板テーブルWTは、つぎにXおよび/またはY方向に移動され、それによって別のターゲット部分Cが露光されることが可能になる。ステップモードにおいては、露光領域の最大サイズによって、単一静止露光時に結像されるターゲット部分Cのサイズが限定される。
【0026】
[0030] 2. スキャンモードにおいては、マスクテーブルMTおよび基板テーブルWTを同期的にスキャンする一方で、放射ビームに付けられたパターンをターゲット部分C上に投影する(すなわち、単一動的露光)。マスクテーブルMTに対する基板テーブルWTの速度および方向は、投影システムPSの(縮小)拡大率および画像反転特性によって決めることができる。スキャンモードにおいては、露光領域の最大サイズよって、単一動的露光時のターゲット部分の幅(非スキャン方向)が限定される一方、スキャン動作の長さによって、ターゲット部分の高さ(スキャン方向)が決まる。
【0027】
[0031] 3. 別のモードにおいては、プログラマブルパターニングデバイスを保持しつつ、マスクテーブルMTを基本的に静止状態に保ち、また基板テーブルWTを動かし、またはスキャンする一方で、放射ビームに付けられているパターンをターゲット部分C上に投影する。このモードにおいては、通常、パルス放射源が採用されており、さらにプログラマブルパターニングデバイスは、基板テーブルWTの移動後ごとに、またはスキャン中の連続する放射パルスと放射パルスとの間に、必要に応じて更新される。この動作モードは、前述の型のプログラマブルミラーアレイといったプログラマブルパターニングデバイスを利用するマスクレスリソグラフィに容易に適用することができる。
【0028】
[0032] 上述の使用モードの組合せおよび/またはバリエーション、あるいは完全に異なる使用モードもまた採用可能である。
【0029】
[0033] 図1bに示されるように、リソグラフィ装置LAは、リソグラフィックセルLC(また場合により「リソセル(リソグラフィックセル)」または「クラスタ」という)の一部を形成し、このリソグラフィックセルLCはまた、基板上の露光前(pre-exposure)および露光後(post-exposure)プロセスを行う装置も含む。クラスタは、レジスト層を堆積するスピンコータSCと、露光されたレジストを現像するデベロッパDEと、冷却プレートCHと、ベークプレートBKとを含む。基板ハンドラまたはロボットROが、入出力ポートI/O1、I/O2から基板を摘み上げ、異なるプロセス装置の間で基板を移動させた後、リソグラフィ装置のローディングベイLBに届ける。これらのデバイス(多くの場合総称して「トラック」という)は、トラック制御ユニットTCUの制御下にあり、このトラック制御ユニットTCU自体は監視制御システムSCSによって制御され、この監視制御システムは、リソグラフィ装置も制御している。よって、スループットと処理効率を最大限のものとするように、様々な装置を操作することができる。
【0030】
[0034] リソグラフィ装置によって露光される基板が、各レジスト層についてばらつきなく露光されるように、リソグラフィ装置によって補正されなければならない、アライメント、回転などの変更があるか否かを判断するために、測定する必要のある基板の性質がある。基板の性質を判断するために、特に、異なる基板の、または同じ基板の異なる層の性質が層ごとにいかに異なるかを判断するために、個別の検査装置を使用する。
【0031】
[0035] 基板Wの表面の性質は、図2に示すようなスキャトロメータなどのセンサを用いて判断してもよい。スキャトロメータは、基板Wに放射を投影する広帯域(白色光)放射プロジェクタ2を備える。反射した放射はスペクトロメータディテクタ4へと送られ、このスペクトロメータディテクタ4は、鏡面反射した放射のスペクトル10(波長の一機能としての強度)を測定する。このデータから、例えば、厳密結合波分析および非線形回帰によって、または図2の下部に示されるようなシミュレートしたスペクトルのライブラリと比較することによって、検出されたスペクトルをもたらす構造またはプロファイルを再構成することができる。一般に、再構成のためには、構造の一般形式が既知であり、かつその構造が形成されたプロセスの知識からいくつかのパラメータが想定され、構造パラメータのうちほんのわずかなパラメータだけが、スキャトロメータのデータから判断されることとなる。
【0032】
[0036] スキャトロメータは、法線入射スキャトロメータでも、斜め入射スキャトロメータでもよい。ある範囲の波長の1つの角度の反射ではなく、むしろ1つの波長(又は限られた範囲の波長)の複数の角度の範囲で反射を測定する、スキャトロメトリの変異形を使用してもよい。
【0033】
[0037] 基板の性質を測定するスキャトロメータは、高開口数レンズの瞳面11において、図3に示すように複数の角度および波長で基板Wに反射した角度分解スペクトルの性質を測定してもよい。このようなスキャトロメータは、基板上に放射を投影する放射プロジェクタ2と、反射したスペクトルを検出するディテクタ14とを備える。瞳面とは、放射の半径方向位置が入射角を定義し、かつ角位置が放射の方位角を定義するところの面であり、かつあらゆる実質的な共益平面である。ディテクタ18は、高開口数レンズの鏡面内に配置される。開口数は高く、少なくとも0.9であることが好ましく、また少なくとも0.95であることがさらに好ましい。液浸スキャトロメータは、1を超える開口数の複数のレンズを有してもよい。
【0034】
[0038] 分散した光の強度を測定するのみの角度分解スキャトロメータもある。しかし、より最近のスキャトロメータは、ある範囲の角度で同時にいくつかの波長を測定することが可能である。様々の波長および角度についてスキャトロメータが測定する性質とは、TMおよびTE偏光の強度、そしてTM偏光とTE偏光との間の位相差であり得る。
【0035】
[0039] 広帯域光源(すなわち、広範囲の光周波数または波長、従って広範囲の色を有する光源)を使用することが可能であり、これによって大きいエタンデュ(Etendue)がもたらされ、多数の波長の混合が可能になる。広帯域の複数の波長はそれぞれ、例えばλδの帯域幅を有し、従って少なくとも2λδの間隔(すなわち波長の2倍)を有するのが好ましい。数個の放射「源」は、例えばファイバー束を用いて分割された拡張放射源の異なる複数の部分とすることができる。このようにして、並行した多数の波長で角度分解散乱スペクトルを測定できる。3次元スペクトル(波長と2つの異なる角度)が測定されるが、これは2次元スペクトルよりも多くの情報を含む。これによってより多くの情報を測定対象とすることができ、メトロロジプロセスのロバスト性を高める。このことは、米国特許出願公開第2006/0066855(A1)号公報および第2006/0033921(A1)号公報により詳細に記載されている。
【0036】
[0040] 本発明で使用できるスキャトロメータが、図3に示されている。放射プロジェクタ2の放射は、レンズシステム12を用いて干渉フィルタ13と偏光子17を通してフォーカスされ、部分反射表面16によって反射されて、顕微鏡対物レンズ15を通して基板上にフォーカスされる。その後放射は、部分反射表面16を通して、後投影瞳面11の中のディテクタ18(例えば、CCDなど)へと送られて、散乱スペクトルが検出される。瞳面11は、レンズシステム15の焦点距離にある。ディテクタと高開口数レンズは、瞳面に配置される。高開口数レンズの瞳面は通常、レンズ内に位置づけられるため、補助光学素子で瞳面を再結像してもよい。
【0037】
[0041] 基準ビームは、多くの場合、例えば入射放射の強度を測定するために使用される。放射ビームがビームスプリッタ16に入射した場合、その一部は、ビームスプリッタ16を通して基準ミラー14へと送られる。その後、基準ビームは、同じディテクタ18の異なる部分に投影される。
【0038】
[0042] 反射した放射の瞳面は、例えば40ミリ秒/フレームの積分時間でディテクタ118上に結像される。このようにして、基板ターゲットの2次元角度散乱スペクトルは、ディテクタ上に結像される。ディテクタは、例えばCCDまたはCMOSセンサのアレイであってもよい。
【0039】
[0043] 例えば405〜790nmの、またはさらにこれよりも低い範囲(200〜300nmなど)の検査対象の波長を選択するために、1セットの干渉フィルタ13が利用可能である。この干渉フィルタは、1セットの異なるフィルタを備えるよりも、むしろ調節可能なものであってよい。回折格子は、干渉フィルタの代わりに使用し得る。
【0040】
[0044] 基板Wは、現像後にバーが立体レジストラインで形成されるようにプリントされた回折格子であってもよい。あるいは、これらのバーは基板にエッチングされてもよい。このパターンは、リソグラフィ投影装置、特に投影システムPL内の色収差に感応し、そして照明対称および前記収差の存在は、プリント回折格子におけるバリエーションで明らかになる。よって、プリント回折格子のスキャトロメトリデータは、回折格子を再構成するために使用される。回折格子のパラメータ(ライン幅や形状など)は、プリント工程および/またはその他のスキャトロメトリプロセスの知識から、再構成プロセスに入力されてもよい。
【0041】
[0045] 図4は、様々なオーバーレイエラーについての非対称性、±1次回折次数および0次回折次数を示している。この図からわかるように、0次の強度は、オーバーレイの一機能として対称的に変動する。従って、0次が検出されると、そうでない場合には同じ値を有する2つの非対称性の差を識別することが可能である。例えば、図4の左上のグラフに示される2つの白丸は、0のオーバーレイエラーだが、±15nmのバイアスを有する非対称性を示している。同グラフの黒点は、オーバーレイエラーが70nmだがバイアスが同じ15nmの場合の非対称性を示している。しかしながら、これら両方の状況(すなわち、オーバーレイエラーが0nmである場合と70nmである場合)に検出された非対称性は、同じになるだろう。0次の強度が検出されたとすると、0nmと70nmのオーバーレイエラーの間の異なる強度が検出される。図4の右下のグラフで示されているとおり、70nmのオーバーレイエラーについて検出された強度(2つの黒点で示されている)は、0のオーバーレイエラーで検出された強度(白丸で示されている)よりも大きくなるであろう。よって、結果として同じ非対称性になる2つの異なるオーバーレイを区別することが可能である。従って、上記のような誤った低オーバーレイエラー計算を識別することができる。大きいオーバーレイエラーを識別するために0次の強度の絶対値を用いる手段に代わる手段とは、正のバイアスを有する回折格子についての0次の強度と、負のバイアスを有する回折格子についての0次の強度との差を用いることである。オーバーレイエラーが小さい場合、0次の対称性(図4に示されるとおり)によって、強度の差は小さくなるだろう。
【0042】
[0046] 装置は、2セットの重なり合った回折格子(第1セットは+dのバイアスを有し、第2セットは−dのバイアスを有する)について、+1、−1、および0次回折次数の強度を測定する。非対称は以下のとおりに計算される。
【数1】


ここで、I1は+1次の強度であり、I-1は−1次の強度であり、OVはオーバーレイエラーである。
【0043】
[0047] そして、オーバーレイは以下の式によって決められる。
【数2】


上記についてのさらなる詳細は、欧州特許出願公開第1628164(A)号で見つけることができる。
【0044】
[0048] 2セットの回折格子の強度の差は、以下のとおり求められる。
【数3】


ここで、I0+は+dのバイアスを有する重なり合う回折格子の0次の強度であり、I0-は−dのバイアスを有する重なり合う回折格子の0次の強度である。
【0045】
[0049] ΔI0が特定の閾値(Ithr)を下回る場合、オーバーレイ測定は有効である。しかし、ΔI0がIthrを上回る場合、それは大きいオーバーレイエラーを示し、かつ計算されたオーバーレイエラーは信頼できない。Ithrの値は、キャリブレーション基板を用いたモデリングまたはキャリブレーションを用いて決定できる。
【0046】
[0050] 本発明は、1次回折次数とともに0次回折次数に関するものとして説明されてきたが、その代わりに、より高い次数(例えば、2次、3次または4次回折次数など)を0次回折次数とともに用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の性質を測定する方法であって、
放射プロジェクタを用いて基板上に放射を投影すること、および
反射した放射の0次および±n次(但しn>1)を検出すること
を含み、
前記反射放射は測定すべき性質を示している、
方法。
【請求項2】
前記放射は、複数の重畳パターン上に投影され、ディテクタが、前記複数の重畳パターンの間のオーバーレイエラーを検出する、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1次回折次数からのデータは前記オーバーレイエラーを測定するために使用され、0次回折次数からのデータはエラーチェックとして使用される、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
±n次回折次数は±1次回折次数である、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
基板の性質を測定するスキャトロメータであって、
基板上の複数の重畳パターンに放射を投影する放射プロジェクタ、
基板の表面で反射した放射ビームの0次および±n次回折次数(但しn>1)を検出するディテクタ、および
0次および±n次回折次数に基づき、前記複数の重畳パターンの間のオーバーレイエラーを計算するデータ処理ユニット、
を備えるスキャトロメータ。
【請求項6】
1次回折次数からのデータは前記オーバーレイエラーを測定するために使用され、0次回折次数からのデータはエラーチェックとして使用される、
請求項5に記載のスキャトロメータ。
【請求項7】
±n次回折次数は±1次回折次数である、
請求項5に記載のスキャトロメータ。
【請求項8】
検査装置を備えるリソグラフィ装置であって、
前記検査装置は、
基板上の複数の重畳パターンに放射を投影する放射プロジェクタ、
基板の表面から反射した放射ビームの0次および±n次回折次数(n>1)を検出するディテクタ、および
0次および±n次回折次数に基づき、前記複数の重畳パターンの間のオーバーレイエラーを計算する、データ処理ユニットを備える、
リソグラフィ装置。
【請求項9】
1次回折次数からのデータは前記オーバーレイエラーを測定するために使用され、0次回折次数からのデータはエラーチェックとして使用される、
請求項8に記載のリソグラフィ装置。
【請求項10】
±n次回折次数は±1次回折次数である、
請求項8に記載のリソグラフィ装置。
【請求項11】
放射ビームを調節する照明システム、
放射ビームの断面にパターンを付与するパターニングデバイスを支持するサポート、
基板を保持する基板テーブル、
基板のターゲット部分にパターン付与された放射ビームを投影する投影システム、および
検査装置、
を備えるリソグラフィ装置であって、
前記検査装置は、
前記基板上の複数の重畳パターンに放射を投影する放射プロジェクタ、
前記基板の表面で反射した放射ビームの0次および±n次回折次数(n>1)を検出するディテクタ、および
0次および±n次回折次数に基づき、前記複数の重畳パターンの間のオーバーレイエラーを計算するデータ処理ユニットを備える、
リソグラフィ装置。
【請求項12】
1次回折次数からのデータは前記オーバーレイエラーを測定するために使用され、0次回折次数からのデータはエラーチェックとして使用される、
請求項11に記載のリソグラフィ装置。
【請求項13】
±n次回折次数は±1次回折次数である、
請求項11に記載のリソグラフィ装置。

【図1a】
image rotate

【図1b】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−251798(P2010−251798A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−161443(P2010−161443)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【分割の表示】特願2007−240597(P2007−240597)の分割
【原出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【出願人】(504151804)エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ. (1,856)
【Fターム(参考)】