説明

基板処理装置および基板処理方法

【課題】処理槽内の洗浄液に浸漬された基板に対し超音波を照射して基板を洗浄する場合に、装置の構造を複雑化させることなく、基板の洗浄面全域に効果的に超音波を照射して洗浄効果の均一性を高めることができる装置を提供する。
【解決手段】洗浄液を貯留する処理槽10の底部外面側に配設される超音波振動板20と、複数の基板Wを保持部16により支持して処理槽10の内部に保持する基板保持具との間に、超音波透過性材料で形成された平板状をなす一対の超音波屈折部材24を左右対称に配設し、支持手段により超音波屈折部材24を鉛直面に沿った方向において揺動可能に支持し、揺動手段により超音波屈折部材24を基板Wの洗浄処理中に揺動させて超音波屈折部材24と超音波振動板20とのなす角度を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体ウエハ、液晶表示装置(LCD)用ガラス基板、プラズマディスプレイ(PDP)用ガラス基板、磁気/光ディスク用のガラス/セラミック基板、電子デバイス用基板等の各種の基板を洗浄液に浸漬させながら、基板に対し処理槽の底部側から超音波を照射して基板を洗浄する基板処理装置および基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体ウエハ、LCD用ガラス基板等の基板の洗浄に、超音波を用いた超音波洗浄法が用いられている。この超音波洗浄法を利用したバッチ式の基板洗浄装置では、複数枚の基板を基板保持具により保持して処理槽内に固定し、処理槽内へ洗浄液を供給しながら、処理槽の底部外面側に設置された超音波振動振動子から超音波を処理槽内部へ照射し、処理槽内の洗浄液中に伝達された超音波による物理エネルギにより、基板の表面に付着したパーティクル、有機物質、不純物等の汚れが除去される。この超音波による物理エネルギは主として、粗密波による加速エネルギと、超音波の振動の腹の部分で発生するキャビテーションの収縮・崩壊によるエネルギとに大別される。特に、数十kHz〜数MHzの周波数帯の超音波を用いた洗浄では、キャビテーションによる物理力が洗浄効果に大きく寄与すると言われており、当該周波数帯の超音波を利用するバッチ式基板洗浄においては、洗浄液中の溶存気体量を過飽和状態にするなど、キャビテーションが生じやすい状況に処理条件が調整される。
【0003】
図5は、バッチ式の超音波洗浄装置の概略構成の1例を示す模式的断面図である。この洗浄装置は、洗浄液を貯留する処理槽1、複数枚の半導体ウエハ等の基板Wを保持する保持部2、3を有する基板保持具(リフタ)、処理槽1の底部近傍の左右両側に配設され処理槽1の内部に向けて洗浄液を吐出する一対の吐出管4、4、処理槽1の底壁外面に処理槽1と一体的に設けられ脱気された伝播水で満たされた伝播槽5、伝播槽5の底壁外面に取り付けられた超音波振動板6、超音波振動板6に接続された超音波発振器7などから構成されている。このような構成の超音波洗浄装置において、超音波発振器7で超音波振動板6を作動させて高周波の超音波振動を発生させ、基板保持具により処理槽1内に保持された基板Wに対して高周波の超音波を照射したときに、超音波の特性に起因して、基板Wの表面に直進波の照射痕(洗浄むら)が強く形成される、といった問題点がある。
【0004】
すなわち、超音波は、光と同様に反射、散乱、屈折、回折、減衰といった波動的特性を持つ。また、超音波は高周波となるほど強い指向性(直進性)を持つことが確認されている。図5に示した超音波洗浄装置において、超音波振動板6から伝播槽5を介して処理槽1内部へ超音波を照射したとき、超音波が洗浄液中を液面に向かって伝播する過程で、基板保持具の保持部2、3による超音波の吸収や反射を生じる。そして、超音波は直進性が強いために、超音波の進行方向に対して基板保持具の保持部2、3の背面側となる領域に影となる部分(超音波が十分に照射されない部分)8、9を生じることとなる。この場合において、処理槽1内の洗浄液の液面に到達した超音波が液面で反射すれば、残響効果により基板保持具の保持部2、3の背面側となる領域にも超音波が作用することとなる。ところが、バッチ式の超音波洗浄装置では、上記したようにキャビテーションが生じやすい状況とするために処理槽1内の洗浄液中の溶存気体量を過飽和状態にしているので、液面付近では、音響流によって液面に集結した気泡による超音波の散乱、吸収の影響で超音波が大きく減衰する、といったことが知られている。このため、500kHz以上の超音波を用いた洗浄装置では、超音波振動板6から直進した超音波と液面での反射波との干渉が生じにくく、超音波の進行方向に対して基板保持具の保持部2、3の背面側となる領域には、やはり超音波が行き届かないこととなる。この結果、基板Wの表面に洗浄むらが発生して、洗浄性能において基板W面内における均一性が得られない、といった問題点がある。
【0005】
上記したような洗浄むらを防止するために、従来、種々の超音波洗浄装置や超音波洗浄方法が提案されている。例えば、複数枚のウエハを保持して洗浄槽内へ搬入する上下移動式ウエハチャックと、洗浄槽の底部に配設され上下移動式ウエハチャックから複数枚のウエハを受け取って保持する上下移動可能なリフター式ウエハガイドとを備えた超音波洗浄装置が提案されている。この洗浄装置において、洗浄第1段階では、上下移動式ウエハチャックがウエハを保持していない開いた状態とし、リフター式ウエハガイドにウエハを保持して洗浄を行う。この段階では、リフター式ウエハガイドの影になる部分に十分に超音波が照射されないために、ウエハの全面にわたる均一な洗浄効果が得られないが、洗浄第2段階では、上下移動式ウエハチャックが閉じられてウエハを保持し、この状態でウエハチャックが上昇して、ウエハの上端が洗浄槽内の洗浄液の液面から露出しない高さ位置でウエハチャックにウエハを保持して洗浄を行う。このときには、ウエハの下部とウエハガイドの水平部分(保持部)との距離が洗浄第1段階に比べて離れるため、ウエハガイドの影になる部分とウエハとが重なる領域を最小限に抑えることができる。これにより、ウエハの全域を洗浄することが可能となる(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2006−324495号公報(第4−5頁、図3−図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1で提案されている超音波洗浄装置の構成によると、ウエハガイドの影になる領域にも超音波を照射することが可能となるが、それによる効果には限界があり、超音波が照射されない部分を完全に無くすことはできない。また、超音波洗浄装置の構造が複雑化する、といった問題点もある。
【0007】
この発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、処理槽内の洗浄液に浸漬された基板に対し超音波を照射して基板を洗浄する場合において、装置の構造を複雑化させることなく、基板の洗浄面全域に効果的に超音波を照射して、洗浄効果の均一性を高めることができる基板処理方法を提供すること、ならびに、その処理方法を好適に実施することができる基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、洗浄液を貯留する処理槽と、複数の基板を、その各下端部を保持部により支持して鉛直姿勢で互いに平行にかつ水平方向に配列させた状態で前記処理槽の内部に保持する基板保持手段と、前記処理槽内へ洗浄液を供給する洗浄液供給手段と、前記処理槽の底部外面側に平面状に配設され、前記基板保持手段に保持された複数の基板に対して超音波を照射する超音波振動子と、を備え、前記基板保持手段に保持された複数の基板を洗浄する基板処理装置において、前記超音波振動子と前記基板保持手段との間に、超音波透過性材料で形成され前記基板保持手段に保持された複数の基板の配列方向に延びる平板状をなす超音波屈折部材を、複数の基板の中心を通る鉛直面に対し左右対称に一対配設し、支持手段によって前記超音波屈折部材を、鉛直面に沿った方向において揺動可能に支持し、前記超音波屈折部材と前記超音波振動子とのなす角度が変化するように、前記支持手段によって支持された前記超音波屈折部材を基板の洗浄処理中に揺動させる揺動手段、および、この揺動手段の駆動を制御する制御手段を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の基板処理装置において、前記処理槽の底部側に伝播槽を設け、その伝播槽の底壁外面に前記超音波振動子を設けたことを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の基板処理装置において、前記超音波屈折部材を石英板で形成することを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の基板処理装置において、前記超音波屈折部材の厚みDを、前記超音波振動子から照射される超音波の波長をλとしたときにλ≦D≦3λとすることを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る発明は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の基板処理装置において、前記超音波屈折部材を前記処理槽の底部近傍に配設したことを特徴とする。
【0013】
請求項6に係る発明は、請求項2ないし請求項4のいずれかに記載の基板処理装置において、前記超音波屈折部材を前記伝播槽の内部に配設したことを特徴とする。
【0014】
請求項7に係る発明は、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の基板処理装置において、前記制御手段により、前記超音波振動子に対して前記超音波屈折部材のなす角度θが−5°≦θ≦5°となる範囲で超音波照射時間が長くなるように前記揺動手段を制御することを特徴とする。
【0015】
請求項8に係る発明は、基板保持手段の保持部によりそれぞれ下端部が支持されて鉛直姿勢で互いに平行にかつ水平方向に配列された複数の基板を処理槽内に保持し、洗浄液供給手段から前記処理槽内へ洗浄液を供給しながら、前記処理槽の底部外面側に平面状に配設された超音波振動子から、前記基板保持手段に保持された複数の基板に対し超音波を照射して、複数の基板を洗浄する基板処理方法において、前記超音波振動子と前記基板保持手段との間に、超音波透過性材料で形成され前記基板保持手段に保持された複数の基板の配列方向に延びる平板状をなす一対の超音波屈折部材を、複数の基板の中心を通る鉛直面に対し左右対称に配置し、基板の洗浄処理中に、前記超音波屈折部材と前記超音波振動子とのなす角度が変化するように前記超音波屈折部材を鉛直面に沿った方向において揺動させることを特徴とする。
【0016】
請求項9に係る発明は、請求項8に記載の基板処理方法において、前記超音波振動子に対して前記超音波屈折部材のなす角度θが−5°≦θ≦5°となる範囲で超音波照射時間が長くなるように超音波屈折部材を揺動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る発明の基板処理装置においては、基板の洗浄処理中に、超音波屈折部材と超音波振動子とのなす角度を経時的に変化させることにより、基板保持手段の保持部に対して超音波が照射される角度が経時的に変化する。このため、超音波の進行方向に対して基板保持手段の保持部の背面側に影となる部分(超音波が十分に照射されない部分)を生じることが最小限に抑えられる。
したがって、請求項1に係る発明の基板処理装置を使用して基板の超音波洗浄を行うときは、基板の洗浄面全域に効果的に超音波を照射して、洗浄効果の均一性を高めることができる。また、超音波振動子と基板保持手段との間に超音波屈折部材を配設してそれを揺動させるだけであるので、装置の構造が複雑化することもない。
【0018】
請求項2に係る発明の基板処理装置では、超音波振動子で発生した超音波振動が伝播槽内の伝播水中を伝播して処理槽内部へ伝達される。
【0019】
請求項3に係る発明の基板処理装置では、超音波振動子で発生した超音波が、超音波屈折部材で吸収されたり散乱したり反射したりして弱められることなく、超音波屈折部材を透過して処理槽内部へ照射される。
【0020】
請求項4に係る発明の基板処理装置では、超音波屈折部材に斜入した超音波を減衰させることなく確実に屈折させてその方向を変えることができる。
【0021】
請求項5に係る発明の基板処理装置では、超音波振動子から処理槽の内部へ照射された超音波は、処理槽の底部近傍の超音波屈折部材を透過する際に屈折してその方向が変わる。
【0022】
請求項6に係る発明の基板処理装置では、超音波振動子で発生した超音波振動が伝播槽内の伝播水中を伝播する過程で、超音波が超音波屈折部材を透過する際に屈折してその方向が変わり、その進行方向を変えた超音波が処理槽内部へ照射される。そして、超音波屈折部材は、処理槽内部と隔絶された伝播槽の内部に配設されていて、可動部を有する超音波屈折部材が処理槽内に設けられていないため、基板汚染の原因となるパーティクル等が発生する心配が無いので好ましい。
【0023】
請求項7に係る発明の基板処理装置では、超音波が超音波屈折部材を透過する際に、超音波の干渉が原因で処理槽内部へ伝達される超音波が弱まる、といった現象による影響を最小限に抑えることができる。
【0024】
請求項8に係る発明の基板処理方法によると、基板の洗浄処理中に、超音波屈折部材と超音波振動子とのなす角度が経時的に変化することにより、基板保持手段の保持部に対して超音波が照射される角度が経時的に変化する。このため、超音波の進行方向に対して基板保持手段の保持部の背面側に影となる部分を生じることが最小限に抑えられる。
したがって、請求項9に係る発明の基板処理方法を用いて基板の超音波洗浄を行うときは、基板の洗浄面全域に効果的に超音波を照射して、洗浄効果の均一性を高めることができる。また、超音波振動子と基板保持手段との間に配置される超音波屈折部材を揺動させるだけであるので、装置の構造を複雑化させることもない。
【0025】
請求項9に係る発明の基板処理方法では、超音波が超音波屈折部材を透過する際に、超音波の干渉が原因で処理槽内部へ伝達される超音波が弱まる、といった現象による影響を最小限に抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、この発明の最良の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、この発明の実施形態の1例を示し、基板を超音波洗浄する基板処理装置の概略構成を示す模式的断面図である。
【0027】
この基板処理装置は、上面が開口し洗浄液を貯留する処理槽10、および、複数枚の半導体ウエハ等の基板Wを保持する基板保持具(リフタ)を備えている。処理槽10の上部外周には、処理槽10の上端口から溢れ出た処理液が流入する液受け部12が設けられており、処理槽10の底壁外面に処理槽10と一体的に、純水等の伝播水で満たされた伝播槽14が設けられている。基板保持具は、その構造の詳しい説明を省略するが、鉛直方向に配設されたリフタ部(図示せず)、ならびに、このリフタ部の下端部分にそれぞれ取着され基板Wの下端部を支持する複数の保持部16を有している。各保持部16には、基板Wの周縁部と係合する複数の基板保持溝がそれぞれ形設されている。そして、複数枚の基板Wは、基板保持具により鉛直姿勢で互いに平行に僅かな間隔をあけて水平方向に配列された状態で保持され、処理槽10の内部へ挿入されて処理槽10内の洗浄液中に浸漬させられ、また、処理槽10内の洗浄液中から引き上げられて処理槽10の上方位置へ排出される。
【0028】
処理槽10の底部近傍の左右両側には、洗浄液を吐出する一対の吐出管18、18が設けられている。各吐出管18は、基板保持具に保持される複数枚の基板Wの配列方向に沿って(紙面に対して垂直方向に)延びるようにそれぞれ配設されている。吐出管18には、その軸線方向に沿って、例えば複数のスリット状の吐出口が直線上に配列して形成されている。そして、一対の吐出管18、18の吐出口から処理槽10の内部へ、それぞれ処理槽10内部の中央方向に向けて斜め下向きに洗浄液が供給される。
【0029】
処理槽10の底壁外面に設けられた伝播槽14の底壁外面には、超音波振動板(超音波振動子)20が水平方向に平面状に取り付けられている。超音波振動板20は、超音波発振器22に接続されている。超音波発振器22としては、例えばパルス波を発振するパルス発振器が使用される。そして、超音波発振器22から振動子駆動用発振信号が出力されて、超音波振動板20が高周波振動することにより、超音波振動板20で超音波振動が発生する。
【0030】
また、処理槽10の底部近傍には、一対の超音波屈折部材24、24が左右対称(複数の基板Wの中心を通る鉛直面に対し左右対称)に配設されている。超音波屈折部材24は、基板保持具に保持された複数の基板Wの配列方向に延びる平板状をなし、超音波を透過させる材料、例えば石英板等で形成されている。超音波屈折部材24の厚みDは、超音波振動板20から照射される超音波の波長をλとしたときにλ≦D≦3λとすることが好ましく、D≒2λとすることがより好ましい。例えば、超音波屈折部材24の厚みは2mm〜6mmとされる。超音波屈折部材24をそのような厚みとすることにより、超音波屈折部材24に対し斜め方向に入射した超音波を減衰させることなく屈折させてその方向を変えることができる。また、超音波屈折部材24は、詳細な図示を省略しているが支持機構により、鉛直面に沿った方向、すなわち基板W面に沿った方向において揺動可能に支持されている。そして、図2に斜視図を示すように、超音波屈折部材24は、一辺側がその端縁部に下端部が固着されたワイヤ26によって吊り下げられており、他辺側(処理槽10の中央側)を支点として回動可能となっている。ワイヤ26は、処理槽10外に導出されて揺動駆動装置(図示せず)に連結されており、揺動駆動装置の駆動は、制御装置(図示せず)によって制御される。
【0031】
上記した構成を備えた基板処理装置を使用して基板Wを超音波洗浄するときは、吐出管18から処理槽10の内部に向けて洗浄液を吐出しながら、超音波振動板20に対し超音波発振器22から電圧を印加して、超音波振動板20で超音波振動、例えば500kHz〜1MHzの周波数の超音波振動を発生させる。超音波振動板20で発生した超音波振動は、伝播槽14内の伝播水中を伝播して処理槽10内部へ伝達され、処理槽10の内部に向けて超音波が照射される。これにより、基板保持具に保持された複数枚の基板Wが超音波洗浄される。この洗浄処理中において、図1中に実線と二点鎖線とでそれぞれ示すように、揺動駆動装置により一対の超音波屈折部材24、24を所定の角度範囲内、例えば超音波振動板20(図示例では水平面)に対して超音波屈折部材24がなす角度をθ(左側の超音波屈折部材24については右回りの方向を+、左回りの方向を−とし、右側の超音波屈折部材24については左回りの方向を+、右回りの方向を−とする。以下、同じ)としたときに0≦θ≦45°の角度範囲内において緩やかに揺動させる。このように、基板Wの洗浄処理中に超音波屈折部材24を揺動させて、超音波振動板20に対し超音波屈折部材24のなす角度θを経時的に変化させることにより、超音波屈折部材24を透過する超音波が超音波屈折部材24と洗浄液との界面で屈折してその進行方向を経時的に変化させる。これにより、基板保持具の保持部16に対して超音波が照射される角度が経時的に変化することとなる。この結果、超音波の進行方向に対して基板保持具の保持部16の背面側に生じる影となる部分が変化するので、超音波の進行方向に対して常に影となる部分の領域が小さくなって、洗浄効果の均一性が高まることとなる。
【0032】
図3は、この発明の別の実施形態を示し、基板処理装置の概略構成を示す模式的断面図である。図3中において、図1中で使用した符号と同一符号を付した構成部材は、図1に関して上記説明した部材と同一機能を有する同一部材であり、それらについての説明を省略する。
【0033】
図3に示した装置では、処理槽28の底部が左右対称のテーパー状とされ、伝播槽30も処理槽28の底壁外面に沿わせた左右対称のテーパー状とされている。そして、超音波発振器32に一対の超音波振動板34を接続し、各超音波振動板34をそれぞれ伝播槽30のテーパー状の底壁外面に沿わせて取り付けている。したがって、超音波振動板34は、水平面に対し傾斜して設置されている。処理槽28の底部近傍には、図1に示した装置と同様に、石英板で形成された平板状をなす一対の超音波屈折部材36、36が左右対称に配設されている。また、超音波屈折部材36は、支持機構(詳細な図示を省略)により、鉛直面に沿った方向において揺動可能に支持されており、超音波屈折部材36の一辺側は、その端縁部に下端部が固着されたワイヤ38によって吊り下げられ、超音波屈折部材36は、処理槽28の中央近傍の他辺側を支点として回動可能となっている。ワイヤ38は、処理槽28外に導出されて揺動駆動装置(図示せず)に連結されており、揺動駆動装置は、制御装置(図示せず)によって駆動制御される。
【0034】
図3に示した基板処理装置では、洗浄処理中において、図3中に実線で示すように超音波振動板34に対して超音波屈折部材36のなす角度がθ=0である角度位置と、図3中に二点鎖線で示すようにθが−(マイナス)となる角度位置との範囲内において、超音波屈折部材36が緩やかに揺動させられる。これに伴い、超音波振動板34に対し超音波屈折部材36のなす角度θが経時的に変化し、超音波屈折部材36を透過する超音波が超音波屈折部材36と洗浄液との界面で屈折してその進行方向を経時的に変化させる。したがって、図1に示した装置と同様の作用効果が奏され、超音波の進行方向に対して常に影となる部分の領域が小さくなって、洗浄効果の均一性が高まることとなる。
【0035】
次に、図4は、この発明のさらに別の実施形態を示し、基板処理装置の概略構成を示す模式的断面図である。図4中において、図1中で使用した符号と同一符号を付した構成部材は、図1に関して上記説明した部材と同一機能を有する同一部材であり、それらについての説明を省略する。
【0036】
図4に示した装置では、処理槽40の底部側に、処理槽40の底部を取り囲むように伝播槽42が設けられており、超音波発振器44に接続された超音波振動板46が伝播槽42の底壁外面に取り付けている。また、この装置では、処理槽40に超音波屈折部材を設けるのに代えて、伝播水で満たされた伝播槽42の内部に、石英板で形成された平板状をなす一対の超音波屈折部材48、48が左右対称に配設されている。超音波屈折部材48は、支持機構(詳細な図示を省略)により、鉛直面に沿った方向において揺動可能に支持されており、超音波屈折部材48の一辺側は、その端縁部に下端部が固着されたワイヤ50によって吊り下げられている。そして、超音波屈折部材48は、伝播槽42の中央近傍の他辺側を支点として回動可能となっている。ワイヤ50は、伝播槽42外に導出されて揺動駆動装置(図示せず)に連結されており、揺動駆動装置は、制御装置(図示せず)によって駆動制御される。
【0037】
図4に示した基板処理装置では、洗浄処理中において、図4中に実線で示すように超音波振動板46(図示例では水平面)に対して超音波屈折部材48のなす角度がθ=0である角度位置を含んで、図4中にそれぞれ二点鎖線で示すようにθが+(プラス)となる角度位置と−(マイナス)となる角度位置との範囲内において、超音波屈折部材48が緩やかに揺動させられる。これに伴い、超音波振動板46に対し超音波屈折部材48のなす角度θが経時的に変化し、超音波屈折部材48を透過する超音波が超音波屈折部材48と洗浄液との界面で屈折してその進行方向を経時的に変化させる。したがって、図1に示した装置と同様の作用効果が奏され、超音波の進行方向に対して常に影となる部分の領域が小さくなって、洗浄効果の均一性が高まることとなる。また、図4に示した基板処理装置では、超音波屈折部材48が処理槽40の内部とは隔絶された伝播槽42の内部に配設されていて、可動部を有する超音波屈折部材48が処理槽40内に設けられていないので、基板Wの汚染原因となるパーティクル等が処理槽40内で発生する心配が無い。
【0038】
なお、超音波振動板20、34、46に対して超音波屈折部材24、36、48のなす角度θが−5°≦θ≦5°であるときは、超音波の干渉が原因となって処理槽10、28、40内の洗浄液中を伝達される超音波が弱まる(超音波屈折部材に対する透過率が低下する)ことが分かっている。そこで、超音波振動板20、34、46に対して超音波屈折部材24、36、48のなす角度θが−5°≦θ≦5°となる範囲、より好ましくは−2°≦θ≦2°となる範囲で超音波照射時間が長くなるように、すなわち、超音波屈折部材24、36、48が当該範囲にあるときに超音波屈折部材24、36、48の移動速度を遅くするように、制御装置により揺動駆動装置を制御するようにしてもよい。また、超音波屈折部材24、36、48が当該範囲にあるときに、超音波発振器22、32、44から超音波振動板20、34、46に対して印加する電圧を大きくし、超音波振動板20、34、46で発生するエネルギを増加させるように、制御装置により超音波発振器22、32、44を制御するようにしてもよい。
【0039】
また、超音波屈折部材の揺動駆動装置や動力伝達機構および支持機構などの構成は、特に限定されず、所要の機能を有するものであればどのような機構であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】この発明の実施形態の1例を示し、基板を超音波洗浄する基板処理装置の概略構成を示す模式的断面図である。
【図2】図1に示した基板処理装置の構成要素の1つである超音波屈折部材の斜視図である。
【図3】この発明の別の実施形態を示し、基板を超音波洗浄する基板処理装置の概略構成を示す模式的断面図である。
【図4】この発明のさらに別の実施形態を示し、基板を超音波洗浄する基板処理装置の概略構成を示す模式的断面図である。
【図5】従来のバッチ式超音波洗浄装置の概略構成の1例を示す模式的断面図である。
【符号の説明】
【0041】
10、28、40 処理槽
14、30、42 伝播槽
16 基板保持具の保持部
18 吐出管
20、34、46 超音波振動板
22、32、44 超音波発振器
24、36、48 超音波屈折部材
26、38、50 ワイヤ
W 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄液を貯留する処理槽と、
複数の基板を、その各下端部を保持部により支持して鉛直姿勢で互いに平行にかつ水平方向に配列させた状態で前記処理槽の内部に保持する基板保持手段と、
前記処理槽内へ洗浄液を供給する洗浄液供給手段と、
前記処理槽の底部外面側に平面状に配設され、前記基板保持手段に保持された複数の基板に対して超音波を照射する超音波振動子と、
を備え、前記基板保持手段に保持された複数の基板を洗浄する基板処理装置において、
超音波透過性材料で形成され、前記基板保持手段に保持された複数の基板の配列方向に延びる平板状をなし、前記超音波振動子と前記基板保持手段との間に、複数の基板の中心を通る鉛直面に対し左右対称に配設された一対の超音波屈折部材と、
前記超音波屈折部材を鉛直面に沿った方向において揺動可能に支持する支持手段と、
前記支持手段によって支持された前記超音波屈折部材を基板の洗浄処理中に揺動させて、前記超音波屈折部材と前記超音波振動子とのなす角度を変化させる揺動手段と、
前記揺動手段の駆動を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置において、前記処理槽の底部側に伝播槽が設けられ、その伝播槽の底壁外面に前記超音波振動子が設けられたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の基板処理装置において、前記超音波屈折部材は石英板であることを特徴とする基板処理装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の基板処理装置において、前記超音波屈折部材の厚みDは、前記超音波振動子から照射される超音波の波長をλとしたときにλ≦D≦3λであることを特徴とする基板処理装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の基板処理装置において、前記超音波屈折部材が前記処理槽の底部近傍に配設されたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項6】
請求項2ないし請求項4のいずれかに記載の基板処理装置において、前記超音波屈折部材が前記伝播槽の内部に配設されたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の基板処理装置において、
前記制御手段は、前記超音波振動子に対して前記超音波屈折部材のなす角度θが−5°≦θ≦5°となる範囲で超音波照射時間が長くなるように前記揺動手段を制御することを特徴とする基板処理装置。
【請求項8】
基板保持手段の保持部によりそれぞれ下端部が支持されて鉛直姿勢で互いに平行にかつ水平方向に配列された複数の基板を処理槽内に保持し、洗浄液供給手段から前記処理槽内へ洗浄液を供給しながら、前記処理槽の底部外面側に平面状に配設された超音波振動子から、前記基板保持手段に保持された複数の基板に対し超音波を照射して、複数の基板を洗浄する基板処理方法において、
前記超音波振動子と前記基板保持手段との間に、超音波透過性材料で形成され前記基板保持手段に保持された複数の基板の配列方向に延びる平板状をなす一対の超音波屈折部材を、複数の基板の中心を通る鉛直面に対し左右対称に配置し、基板の洗浄処理中に前記超音波屈折部材を、その超音波屈折部材と前記超音波振動子とのなす角度が変化するように、鉛直面に沿った方向において揺動させることを特徴とする基板処理方法。
【請求項9】
請求項8に記載の基板処理方法において、前記超音波振動子に対して前記超音波屈折部材のなす角度θが−5°≦θ≦5°となる範囲で超音波照射時間が長くなるように超音波屈折部材を揺動させることを特徴とする基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−231668(P2009−231668A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−77191(P2008−77191)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】