説明

基板洗浄装置、基板洗浄方法及び記憶媒体

【課題】基板の反転を必要とせず、且つ基板の周縁部にダメージを与えないように基板の裏面を洗浄することの可能な基板洗浄装置等を提供する。
【解決手段】基板洗浄装置1は、裏面を下方に向けた状態の基板を裏面から支えて保持する2つの基板保持手段(吸着パッド2、スピンチャック3)を備え、支える領域が重ならないようにしながらこれらの基板保持手段の間で基板を持ち替える。洗浄部材(ブラシ5)は基板保持手段により支えられている領域以外の基板の裏面を洗浄し、2つの基板保持手段の間で基板が持ち替えられることを利用して基板の裏面全体を洗浄する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体ウエハや液晶ディスプレイ用のガラス基板(LCD基板)といった基板の裏面を洗浄する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程においては、例えば半導体ウエハ(以下ウエハという)を清浄な状態に保つことが極めて重要である。このため各々の製造プロセスや処理プロセスの前後においては、必要に応じてウエハの表面を洗浄するプロセスが設けられている。
【0003】
ウエハ表面の洗浄は、例えば真空チャックやメカチャックに固定したウエハにブラシを上方から押し当てて、脱イオン水(Deionized Water:以下、DIWという)等を供給しながらウエハとブラシとを相対的に摺動させることにより表面のパーティクルを除去する手法が一般的である。
【0004】
このようなウエハ表面の洗浄は、回路の形成されるウエハ上面のみならずウエハ裏面に対しても実施する必要が生じてきている。例えばウエハ上面にレジスト液を塗布し、レジスト膜を所定のパターンで露光した後、現像してマスクパターンを形成するフォトリソグラフィープロセスにおいて、ウエハの裏面にパーティクルの付着した状態を放置すると、ウエハを載置するためのステージとウエハとの間にパーティクルが入り込んだまま露光が行われてしまう。このようなパーティクルはウエハに反りを生じさせて露光時にデフォーカス(フォーカスが崩れてしまう現象)を引き起こす原因となる。特に近年は、液浸露光やダブルパターニングといった配線技術の更なる微細化に伴って半導体デバイスの製造工程に含まれる工程数も増加している。このためウエハ裏面にパーティクルの付着するリスクも大きくなってきており、ウエハ裏面の洗浄は近年の重要な課題となっている。
【0005】
ところでフォトリソグラフィープロセスは、レジスト液の塗布や現像を行う塗布、現像装置にレジスト液の露光を行う露光装置を接続したシステムにより行われるが、ウエハはこれらの装置内において通常上面を上方に向けた状態で搬送される。このため、上方からブラシを押し当てて洗浄を行うタイプの基板洗浄装置を用いてウエハの裏面を洗浄するには、ウエハの搬送装置と基板洗浄装置との間にリバーサと呼ばれる基板反転装置を設置し、基板洗浄装置へのウエハの搬入出時にウエハ裏面を上方に向けた状態とする必要があった。ところが、このような手法ではリバーサを設置するスペースやウエハの反転動作を行うスペースが必要となり塗布、現像装置が大型化してしまうという問題があった。またリバーサの設置を省略するためブラシをウエハの下方に設置したとしても、ウエハを保持するチャック等で覆われているデッドスペースを生じてしまい、裏面全体を洗浄することができなかった。
【0006】
こうした問題に対し特許文献1には、ウエハを回転可能なように保持するスピンチャックをウエハ径と同程度の中空円筒より構成し、洗浄液を供給するノズルやブラシをこの中空円筒内に配置した基板洗浄装置が記載されている。裏面を下方に向けて(上面を上方に向けて)搬送されてきたウエハが、メカチャック等によって、中空円筒の開口縁上に保持されると、ウエハの裏面に下方からブラシを押し当てた状態となる。この状態で中空円筒を中心軸周りに回転させるとウエハ裏面とブラシとが相対的に摺動するのでリバーサを用いずにウエハの裏面全体を洗浄することができる。
【0007】
【特許文献1】特許第3377414号公報:第0036段落〜第0040段落、図3
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが特許文献1に記載されている基板洗浄装置では、メカチャック等を使って中空円筒上にウエハの周縁部を保持する構成となっているので、ウエハ周縁部にダメージを与えてしまう場合がある。特に液浸露光を行う場合には、レジスト膜の外縁部が液浸露光時に純水と接触して剥離するのを避けるため、ウエハのベベル部や垂直端面までをレジスト膜で覆ってしまうことでレジスト膜の外縁部を液浸状態となる領域に位置させないようにすることが多い。このようなレジスト膜の形成されているウエハの周縁部をメカチャック等により機械的に保持すると、レジスト膜を傷つけてパーティクルを発生させたり、液浸露光時のレジスト膜剥離につながったりしてしまう場合がある。
【0009】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、その目的は基板の反転を必要とせず、且つ基板の周縁部にダメージを与えないように基板の裏面を洗浄することの可能な基板洗浄装置、基板洗浄方法およびこの方法を記憶した記憶媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係わる基板洗浄装置は、基板の裏面を洗浄する基板洗浄装置において、
下方を向いている基板裏面の第1の領域を水平に吸着保持する第1の基板保持手段と、
この第1の基板保持手段より基板を受け取って、前記第1の領域とは重ならない基板裏面の第2の領域を水平に吸着保持する第2の基板保持手段と、
前記第1の基板保持手段または第2の基板保持手段に吸着保持された基板の裏面に洗浄液を供給する洗浄液供給手段と、
前記第1の基板保持手段から前記第2の基板保持手段へ基板を受け渡す前に、前記第2の領域を乾燥するための乾燥手段手段と、
基板が第1の基板保持手段により保持されている間は、前記第2の領域を含む基板の裏面に接触して洗浄し、その基板が前記第2の基板保持手段により保持されている間は、前記第2の領域以外の基板の裏面に接触して洗浄する洗浄部材と、を備えたことを特徴とする。
ここで前記第2の基板保持手段は、基板の略中央を保持して鉛直回りに回転自在に構成され、前記洗浄部材による洗浄を終えた基板を回転させて基板の裏面に残存している洗浄液を振り切り乾燥するようにするとよい。また、前記乾燥手段は、基板の裏面に気体を噴射するように構成する場合が好適である。
【0011】
更に、前記第1の基板保持手段を前記第2の基板保持手段に対して相対的に横方向に移動させるための移動手段を備え、この移動手段により、既に洗浄された第2の領域を第2の基板保持手段の上方に位置させるように構成することが好ましく、このとき前記第1の基板保持部は、吸着保持面が長方形の2つの吸着パッドを備え、これらの吸着パッドは、前記吸着保持面の長手方向が当該第1の基板保持部の移動方向に対して平行となるように、基板周縁部の対向する2箇所の領域を保持してもよいし、また、前記第1の基板保持部は、吸着保持面が円弧状の2つの吸着パッドを備え、これらの吸着パッドは、吸着保持される基板と同心円をなすように基板周縁部の対向する2箇所の領域を保持してもよい。
【0012】
そして、前記第1の基板保持手段または第2の基板保持手段に保持される基板を囲むように構成され、前記移動手段により第1の基板保持手段と共に移動するカップを備え、前記カップの内壁面は、当該内壁面に飛散した洗浄液が跳ね返りにくい材料、例えば親水性の多孔質樹脂や表面が粗面化されたセラミックにて構成されているとなおよい。また前記第2の基板保持手段を取り囲む囲み部材を備え、前記乾燥手段は、この囲み部材の上端に周方向に沿って形成された気体の噴射口を備えるように構成すると更に好適である。この前記囲み部材と、前記第1の基板保持手段または第2の基板保持手段に吸着保持された基板の裏面とにより取り囲まれる空間が減圧雰囲気であることが好ましく、前記洗浄液供給手段から前記囲み部材の上端へと向かって基板の裏面を流れる洗浄液の流れ方向を変えるため、これら洗浄液供給手段と囲み部材の上端との間を遮る軌跡を描くように、例えば洗浄液等の流体を吐出する流体吐出手段を備えていると更によい。
【0013】
第1の基板保持手段と第2の基板保持手段との他の態様として、前記第2の基板保持手段を前記第1の基板保持手段に対して相対的に昇降させるための昇降手段と、この第2の基板保持手段の上面を覆うカバー部材と、を備え、
第1の基板保持手段により保持されている基板の第2の領域の下方に第2の基板保持手段を退避させると共に当該第2の基板保持手段の上方に前記カバー部材を位置させた状態で当該第2の領域を洗浄部材により洗浄するように構成してもよい。
【0014】
またこれら全ての発明において、前記洗浄部材によって洗浄された後の基板の裏面に紫外光を照射して、基板の裏面に残存する粒子を収縮させるための紫外線ランプを更に備えるように構成するとなおよい。更に、前記洗浄部材が基板の裏面と接触する力を計測する計測手段と、当該洗浄部材を前記基板に対して相対的に昇降させる昇降手段と、前記計測手段による計測結果に基づいて前記昇降手段を動作させ、前記洗浄部材が基板の裏面と接触する力が予め定めた範囲内の値となるように制御する制御手段と、を備えてもよい。
【0015】
ここで前記基板の裏面の周縁領域が疎水化処理されている場合には、前記洗浄部材は当該周縁領域を洗浄する際には当該基板の裏面と接触せずに前記洗浄液供給手段より供給された洗浄液を攪拌し、当該攪拌された洗浄液の水勢を利用して前記周縁領域内の基板の裏面を洗浄することが好ましく、または当該周縁領域を親水化するために紫外光を照射する第2の紫外線ランプを備えてもよい。
【0016】
これらに加え、前記第1の基板保持部は基板の裏面を吸引して吸着保持するための吸引管と接続されている場合には、当該吸引管には、吸引管内に流れ込んだ洗浄液を捕捉するためのトラップタンクを介設することが好ましく、また前記第1の基板保持部の吸着保持面に滴下した洗浄液に気体を吹き付けてこれらの洗浄液を吹き飛ばすための気体ノズルを備えていてもよい。
【0017】
また本発明に係る基板洗浄方法は、基板の裏面を洗浄する基板洗浄方法において、
下方を向いている基板裏面の第1の領域を水平に吸着保持する第1の基板保持工程と、
この基板を持ち替えて前記第1の領域とは重ならない基板裏面の第2の領域を水平に吸着保持する第2の基板保持工程と、
前記第1の基板保持工程または第2の基板保持工程にて保持されている基板の裏面に洗浄液を供給する工程と、
前記第1の基板保持工程から前記第2の基板保持工程へと基板を持ち替える前に、前記第2の領域を乾燥する工程と、
前記第1の基板保持工程の期間中は、前記第2の領域を含む基板の裏面の洗浄を行い、前記第2の基板保持工程の期間中は、前記第2の領域以外の基板の裏面の洗浄を行う工程と、を含むことを特徴とする。
【0018】
ここで、基板の裏面の洗浄を終えた後、基板を回転させて基板の裏面に残存している洗浄液を振り切り乾燥する工程を更に含んでいるとよい。また、前記第2の領域を乾燥する工程は、基板の裏面に気体を噴射することにより行われるようにすることが好ましく、前記接触洗浄を行う工程にて洗浄された後の基板の裏面に紫外光を照射して、基板の裏面に残存する粒子を収縮させる工程を更に含むようにしてもよい。
【0019】
また本発明に係る記憶媒体は、基板の裏面を洗浄する基板洗浄装置に用いられるプログラムを格納した記憶媒体であって、
前記プログラムは上述の各基板洗浄方法を実行するためにステップが組まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係わる基板洗浄装置によれば、基板の裏面を支えて保持し、そのままの状態で洗浄を行うので、基板洗浄装置に加えて基板を反転する装置を設置するスペースや、基板の反転動作を行うためのスペースを必要としない。この結果、従来タイプの基板洗浄装置と比較して、当該基板洗浄装置の設置される塗布、現像装置等をコンパクトにすることができる。
【0021】
また当該基板洗浄装置は、2つの基板保持手段の間で基板を持ち替えるので、基板保持手段で覆われてしまい洗浄のできないデッドスペースを生じないようにすることができる。これによりデッドスペースの発生を回避するため基板の周縁部を機械的に保持したりする必要がなくなり、基板周縁部にダメージを与えずに洗浄を行うことを可能とし、パーティクルの発生やレジスト膜へのダメージ等を防止して製品の歩留まり向上に貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に説明する実施の形態においては、基板洗浄装置(以下、洗浄装置という)の一例として塗布、現像装置に設置されるタイプの洗浄装置について説明する。当該洗浄装置による洗浄工程を含むフォトリソグラフィープロセスの具体例については後述するが、本洗浄装置は例えば塗布、現像装置の出口付近に設置され、レジスト膜の形成されたウエハの裏面を洗浄してから後続の露光装置へ向けて送り出す役割を果たす。
【0023】
初めに本実施の形態に係わる洗浄装置の構造について図1〜図3を参照しながら説明する。図1は洗浄装置1の斜視図、図2はその平面図、図3は縦断面図を夫々示している。
【0024】
図1に示すように洗浄装置1は、塗布、現像装置内の搬送手段(後述する第2の受け渡しアームD2)から受け取ったウエハWを略水平に吸着保持する第1の基板保持手段としての吸着パッド2と、この吸着パッド2からウエハWを受け取って同じく略水平に吸着保持する第2の基板保持手段としての役割を果たすスピンチャック3と、ウエハWの裏面を洗浄するブラシ5と、を上面の開口したボックス状のアンダーカップ43に取り付けた構造となっている。
【0025】
初めに第1の基板保持手段である吸着パッド2について説明する。図1に示すように洗浄装置1は2つの吸着パッド2を備え、各々の吸着パッド2は例えば細長いブロックから構成されている。2つの吸着パッド2は、ウエハW裏面の周縁部近傍部(第1の領域)を略平行に支えて保持できるように配置されている。吸着パッド2は図示しない吸引管と接続されており、図2に示した吸着孔2aを介してウエハWを吸着しながら保持する真空チャックとしての機能を備えている。図1に示すように、それぞれの吸着パッド2は細長い棒状のパッド支持部21の略中央部に取り付けられており、これら2本のパッド支持部21の両端部が夫々2本の橋桁部22に取り付けられることによってパッド支持部21と橋桁部22とからなる井桁20が構成されている。
【0026】
2本の橋桁部22の両端は、アンダーカップ43の対向する2側壁(図1に向かって手前側と奥側との側壁)の外側にこれらの側壁に沿って張設された2本のベルト23に夫々固定されている。夫々のベルト23は、2個1組からなる巻掛軸24に巻き掛けられており、各巻掛軸24は上述の2側壁と各々平行に設置された2枚の側板26に取り付けられている。巻掛軸24の一つは移動手段をなす駆動機構25に接続されており、巻掛軸24やベルト23を介して橋桁部22を動かして、既述の井桁20全体を図1、図2に示したX方向に自在に移動させることができるようになっている。
【0027】
また図1に示すように夫々の側板26は、その底面をスライダ27aとガイドレール27bとからなる2組の昇降機構27によって支えられ、洗浄装置1の図示しない筐体床面に固定されている。これらの昇降機構27の1つには図示しない駆動機構が設けられており、スライダ27aをガイドレール27b内で昇降させることにより、前述の井桁20全体を図中のZ方向に昇降させることができるようになっている。
【0028】
また井桁20上には、洗浄液の飛散を抑えるためのドーナツ状のアッパーカップ41が跨設されている。アッパーカップ41の上面には、ウエハWより大口径の開口部41aを設けてあり、この開口部41aを介して搬送手段と吸着パッド2等との間でウエハWの受け渡しを行うことができるようになっている。なお、井桁20上に跨設されたアッパーカップ41は、図3に示すように井桁20の動きに伴ってX方向とZ方向とに移動するように構成されている。
【0029】
次に第2の基板保持手段であるスピンチャック3について説明する。スピンチャック3はウエハWの裏面中央部(第2の領域)を下方から支持する円板である。スピンチャック3は略平行に配置された2つの吸着パッド2の中間に設置されており、夫々の基板保持手段(吸着パッド2、スピンチャック3)により支えられるウエハW裏面の第1の領域と第2の領域とは重ならないようになっている。図3に示すようにスピンチャック3は軸部3bを介して駆動機構(スピンチャックモータ)33に接続されており、スピンチャック3はこのスピンチャックモータ33によって回転及び昇降自在に構成されている。また吸着パッド2と同様にスピンチャック3も図示しない吸引管と接続されており、図2に示した吸着孔3aを介してウエハWを吸着しながら保持する真空チャックとしての機能を備えている。
【0030】
スピンチャック3の側方には、昇降機構32aと接続された支持ピン32がウエハWの裏面を支持して昇降可能なように設けられており、外部の搬送手段との協働作用によって搬送手段から吸着パッド2へ、またスピンチャック3から搬送手段へとウエハWを受け渡しできる。
【0031】
更に図4に示すように、スピンチャック3や支持ピン32の周囲には、これらの機器を取り囲む囲み部材をなすエアナイフ31が設置されている。エアナイフ31は、円筒(囲み部材)の上端に周方向に沿って気体の噴射口31aが形成されており、この噴射口31aからウエハW裏面へ向けて例えば圧縮エア等の気体を噴き出すことにより洗浄液を円筒の外側へ吹き飛ばして、スピンチャック3へとウエハWが受け渡される際に、スピンチャック3の表面とこのスピンチャックで支えられる基板の裏面(第2の領域)とを互いに乾燥した状態で接触させるようにする乾燥手段としての役割を果たす。図7に示すように、エアナイフ31は例えば二重円筒より構成され、図示しない供給部から供給された気体をこの二重円筒間の中空部を介して噴射口31aに供給できるようになっている。
【0032】
次にウエハWの裏面洗浄を行う洗浄部材としてのブラシ5について説明する。ブラシ5は例えば多数のプラスチック繊維を円柱状に束ねた構造となっており、その上面をウエハW裏面に押し付けた状態で回転自在のブラシ5とウエハWとを互いに摺動させることによりウエハW裏面のパーティクルを除去できるようになっている。ブラシ5には、例えばPVCスポンジ、ウレタンスポンジ、ナイロン繊維等が使用される。ブラシ5は、これを支える支持部51の先端に取り付けられており、支持部51はウエハWや橋桁部22と干渉しないように、柄杓型に屈曲した形状となっている。この支持部51の基端は、図1においてスピンチャック3の設置されている方向からブラシ5を見て奥側の側壁に沿って張設されたベルト52に固定されている。ベルト52は2つの巻掛軸53に巻き掛けられており、これらの巻掛軸53は上述の奥側の側壁外面に取り付けられている。巻掛軸53の一方は駆動機構54に接続されており、ベルト52や支持部51を介してブラシ5を図1、図2に示したY方向に自在に移動させることができる。
【0033】
また支持部51の先端には図示しない駆動機構が設けられており、ブラシ5を周方向に回転させることができる。更にまた支持部51の先端には図2に示すように洗浄液ノズル5aとブローノズル5bとが設置されており、洗浄液ノズル5aからはブラシ5でウエハW裏面から除去されたパーティクルを洗い流すための洗浄液(例えばDIW)が供給され、ブローノズル5bからは洗浄を終えた後にウエハW裏面に付着している洗浄液の乾燥を促進するための例えば窒素(N2)等の気体が供給される。
【0034】
この他、図3に示すようにアンダーカップ43の底部には、アンダーカップ43内に溜まった洗浄液を排出するためのドレイン管16と、洗浄装置1内の気流を排気するための2つの排気管15とが設けられている。排気管15はアンダーカップ43底部に溜まった洗浄液が排気管15へ流れ込むのを防ぐため、アンダーカップ43の底面から上方へと延伸されていると共に、上方から滴り落ちてきた洗浄液が排気管15に直接入らないように、エアナイフ31の周囲に取り付けられたリング状のカバーをなすインナーカップ42によって覆われている。また図中の13は、ウエハWの洗浄終了後にウエハW外周縁近傍に上方から圧縮エア等を吹き付けて残存する洗浄液の乾燥を補助するためのブローノズルであり、14は、ブラシ5の支持部51先端にある洗浄液ノズル5aと共に洗浄液をウエハW裏面に供給するための洗浄液ノズルである。なおブローノズル13は、不図示の昇降機構を備え、ウエハW搬入出時には搬送中のウエハWや搬送手段と干渉しないように上方へ退避するようになっている。
【0035】
また、各ベルト23、52の張設されていないアンダーカップ43側壁には、UVランプ12を納めたランプボックス11が取り付けられている。処理対象のウエハWは、左X方向より洗浄装置1内に搬入出され、その際UVランプ12の上方を通過するように構成されている。UVランプ12は、洗浄を終えて搬出されるウエハWの裏面に紫外光を照射して、ウエハW裏面に残存しているパーティクルを収縮させる役割を果たす。
【0036】
また、図2に示すように各駆動機構25、54や、UVランプ12、排気管15に設けられた図示しない圧力調整部等は、塗布、現像装置全体の動作を制御する制御部6により制御されるようになっている。制御部6は、例えば図示しないプログラム格納部を有するコンピュータからなり、プログラム格納部には外部の搬送装置から受け取ったウエハWを吸着パッド2とスピンチャック3との間で受け渡したり、ブラシ5により洗浄したりする動作等についてのステップ(命令)群を備えたコンピュータプログラムが格納されている。そして、当該コンピュータプログラムが制御部6に読み出されることにより、制御部6は洗浄装置1の動作を制御する。なお、このコンピュータプログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク、メモリーカード等の記憶手段に収納された状態でプログラム格納部に格納される。
【0037】
以上に説明した構成に基づいて、ウエハWの裏面を洗浄する動作について図5〜図8を参照しながら説明する。図5及び図6は、ウエハWの裏面洗浄に係わる洗浄装置1の各動作を説明するための縦断面図である。図7は、洗浄時のウエハW裏面の様子を示した説明図である。また図8は、吸着パッド2またはスピンチャック3に保持されている夫々の状態において、ウエハWの洗浄される領域を模式的に示した平面図である。なお、これらの図においては、図示の便宜上UVランプ12やブローノズル13等の記載を必要に応じて適宜省略している。
【0038】
図5(a)に示すように、例えば馬蹄形状の搬送手段(第2の受け渡しアームD2)は処理対象のウエハWを洗浄装置1内に搬入してアッパーカップ41の開口部41a上方で停止し、支持ピン32はスピンチャック3の下方から上昇して搬送手段の下方にて待機する。搬送手段は支持ピン32の上方から下降してウエハWを支持ピン32へと引き渡し、洗浄装置1の外へと退出する。このとき、吸着パッド2はウエハWを保持する面がブラシ5の上面よりも高くなるような位置で待機し、スピンチャック3はブラシ5の上面よりも低い位置まで退避している。このような位置関係により、支持ピン32が下降すると、ウエハWは先ず吸着パッド2に受け渡される(図5(b))。
【0039】
この後吸着パッド2は、裏面からブラシ5を押し当てても動かないようにウエハWを吸着保持し、ウエハWを保持したまま右方向へ移動する。そして、ウエハWを予め決められた位置(例えばエアナイフ31の左端がウエハWの左端と略一致するような位置)まで搬送した後、吸着パッド2は下降してウエハWの裏面をブラシ5の上面に押し当てる(図5(c))。
【0040】
次いで、エアナイフ31を作動させてスピンチャック3の表面に洗浄液が廻り込んで付着するのを防止した後、支持部51先端の洗浄液ノズル5aより洗浄液を供給すると共にブラシ5を回転させてウエハWの裏面洗浄を開始する。裏面洗浄は、吸着パッド2によるウエハWの移動とブラシ5の移動との組み合わせにより進行する。具体的には、例えば図8(a)に示すようにブラシ5は図中のY方向を往復し、ブラシ5の移動方向が切り替わる際にブラシ5の直径よりも短い距離だけ吸着パッド2を左X方向へ移動する。これによりブラシ5は矢印で示したような軌跡を描いてウエハW裏面を移動し、同図中に左上斜線で塗りつぶした領域T1を満遍なく洗浄することができる。
【0041】
ここで洗浄の行われている期間中、ウエハWの裏面全体は図7に示すように洗浄液の液膜Fに覆われており、ブラシ5で除去されたパーティクルは、このウエハW裏面から流れ落ちる洗浄液と共にアンダーカップ43へ洗い流される。また、エアナイフ31の噴出口31aからはウエハW裏面へ向けて気体が噴出され、洗浄液がエアナイフ31の外側へ向けて吹き飛ばされることにより、エアナイフ31と対向するウエハW裏面は乾燥した状態が保たれている。このような構成により、ウエハW裏面を覆う洗浄液がエアナイフ31の内側にまで回り込んでしまうのを防止することができる。この結果、スピンチャック3の表面は常に乾燥状態に維持され、処理された洗浄液による汚染やウォータマークの形成を防止することが可能となる。
【0042】
上述の領域T1の洗浄を終えたら、吸着パッド2を移動させてスピンチャック3の上方にウエハW中央部を位置させ(図6(a))、次に吸着パッド2からスピンチャック3へのウエハWの受け渡しを行う。ウエハWの受け渡しは、例えばエアナイフ31を作動させたままブラシ5の移動や回転、洗浄液の供給を停止し、吸着パッド2によるウエハWの吸着を解除する一方で、退避しているスピンチャック3を上昇させてウエハWの裏面を支え、次に吸着パッド2を下方へ退避させることにより行われる。
【0043】
ウエハWを受け渡されたスピンチャック3は、吸着パッド2と略同じ高さでウエハWを吸着保持するので、ブラシ5はウエハWに押し当てられた状態となる。そこで再びブラシ5を回転させ、洗浄液を供給することにより裏面洗浄が再開される(図6(b))。この際、裏面洗浄はスピンチャック3の回転とブラシ5の移動との組み合わせにより進行する。具体的には、例えば図8(b)に示すように、先ずウエハWの最外周を洗浄できるような位置までブラシ5を移動させてからウエハWをゆっくりと回転させ、ウエハWが一回転したら先の動作で洗浄された環状の領域よりもブラシ5の直径分だけ内周側を洗浄できる位置までブラシ5を移動させてから同様の動作を繰り返す。このような動作により、同心円状の軌跡を描きながらウエハW裏面を移動し、同図中に右上斜線で塗りつぶした領域T2を満遍なく洗浄することができる。
【0044】
ここで、領域T1と領域T2とを合わせた領域は図8(b)に示すようにウエハW裏面全体を包含しており、洗浄されないデッドスペースを生じないように各機器のサイズや移動範囲が調整されている。またウエハWをスピンチャック3で保持して洗浄を行っている期間中は、ブラシ5側の洗浄液ノズル5aだけでなく、図6(b)においてエアナイフ31の左側方に設置されている洗浄液ノズル14からも洗浄液を供給している。ウエハW表面に濡れている領域と乾燥している領域とが混在していると洗浄液を乾燥させた際にウォータマークを生じる原因となるので、洗浄液を満遍なく行き渡らせてウォータマークの発生を抑制するためである。
【0045】
こうしてウエハW裏面全体の洗浄を完了すると、ブラシ5の回転や移動、洗浄液の供給、スピンチャック3の回転を停止して、洗浄液の振り切り乾燥の動作に移る。振り切り乾燥は、スピンチャック3を高速で回転させてウエハW裏面に付着している洗浄液を振り切ることにより行われる。既述のように満遍なく濡らされたウエハWを一気に振り切って乾燥させることにより、ウォータマークの発生が抑制される。このとき、上方に退避していたブローノズル13を下降させ、同時にブラシ5横のブローノズル5bをウエハW周縁部に位置させるように支持部51を移動させて、ウエハW周縁部の上面と下面とから気体を吹き付けることにより、振り切り乾燥が促進される。なお、スピンチャック3に保持される第2の領域については振り切り乾燥を行うことができないが、エアナイフ31によって乾燥された状態でスピンチャック3と接触するようになっているのでウォータマークの発生することは殆どない。
【0046】
以上に説明した動作によりウエハW裏面全体の洗浄と乾燥とを終えたら、搬入時とは逆の動作でウエハWを搬送手段へ引き渡して搬出する。このとき図1〜図3に示したUVランプ12を点灯して馬蹄形状の搬送手段の下方からウエハW裏面へ向けて紫外線を照射して、万一パーティクルが付着している場合であっても、例えば有機物は紫外線の照射により分解されるので、このようなタイプのパーティクルを収縮させて、デフォーカス等の影響を小さくすることができる。
【0047】
ウエハWの搬出動作と並行して、吸着パッド2やスピンチャック3は図5(a)に示した位置まで移動して次のウエハWの搬入を待つ。そして図5〜図8を参照して説明した動作を繰り返し、複数のウエハWを順次洗浄する。
【0048】
次に第2の実施の形態について図9〜図11を参照しながら説明する。図9は第2の実施の形態に係る洗浄装置100の構成を示す平面図であり、図10及び図11はその作用を示す縦断面図である。これらの図において、第1の実施の形態と同様の構成には、図1〜図8で使用したものと同じ符号を付してある。
【0049】
第2の実施の形態に係る洗浄装置100は、第2の基板保持手段であるスピンチャック3をウエハWの第2の領域の下方へ退避させる点が、ウエハWをスピンチャックに対して横方向に移動させる第1の実施の形態と異なっている。第2の実施の形態において、井桁20はX方向に固定されており、Z方向への昇降のみ可能となっている。この井桁20を昇降させる昇降機構27(図1参照)とスピンチャックを昇降させる図示しない昇降機構とは、第2の基板保持手段を前記第1の基板保持手段に対して相対的に昇降させるための昇降手段を構成している。また、ブラシ5は、その支持部51が基端側にてアンダーカップ43に固定されている。当該支持部51は基端部の支軸を中心として回動、伸縮自在に構成されているため、ウエハWを横方向に移動させずにその中心領域(第2の領域)から支持部51の基端部側までをブラシ5により洗浄することができる。
【0050】
またブラシ5の反対側には、第2の領域の洗浄中にこの下方へと退避しているスピンチャック3上に洗浄液が滴下するのを防止するための撥水性を備えた例えばフッ素樹脂製のカバー部材71が伸縮自在な支持部72を介してアンダーカップ43に取り付けられている。更にこの支持部72には第2の領域を乾燥させる乾燥手段としての役割を果たす乾燥ノズル73が取り付けられており、第2の領域へ向けて気体を噴射することが可能となっている。また本実施の形態においてはスピンチャック3の周囲にはエアナイフ31は設置されていなので、カバー部材71の外縁部からは例えば窒素ガス等のガスを下方に向けて噴出し、洗浄時に発生したミストがスピンチャック3に付着しないようになっている。
【0051】
次に第2の実施の形態に係る洗浄装置100の作用について説明すると、図10(a)に示すように、ウエハWの搬入時においてスピンチャック3はアンダーカップ43の下方に退避しており、またカバー部材71はスピンチャック3上方よりも側方に退避している。この状態で昇降ピン32を昇降させて搬送手段D2からウエハWを受け取り、吸着パッド2上にウエハWを吸着保持する。
【0052】
次いで図10(b)に示すようにスピンチャック3の位置まで昇降ピン32を退避させ、カバー部材71を前進させてスピンチャック3の上方に位置させた後、ブラシ5をウエハWの略中央部まで移動させる。そして吸着パッド2を下降させ、第2の領域を含むウエハW中央部の洗浄を開始する。このとき、スピンチャック3は洗浄中の第2の領域の下方に退避していることになるが、カバー部材71が傘となり、更にこのカバー部材71より下方に向けてガスを噴出し、ミストを付着させないようにすることによりスピンチャック3は乾燥した状態に保たれている。ウエハW中央部の洗浄を終えるとブラシ5は側方へ退避して、乾燥ノズル72から第2の領域へ向けて気体を噴射させることによりこの領域を乾燥させる。
【0053】
次いで図11に示すようにカバー部材71を側方へ退避させた後、スピンチャック3を上昇させて、吸着パッド2からスピンチャック3へとウエハWを受け渡し、洗浄及び乾燥の終わった第2の領域を吸着保持する。そして、ウエハWの回転とブラシ5の移動とを組み合わせながら洗浄を終えていない第2の領域以外のウエハW裏面を洗浄する。このとき、カバー部材71は側方へ退避しているため昇降ピン32は例えば鞘体に格納する等して洗浄液と接触しないように構成しておくとよい。
【0054】
洗浄を終えると、スピンチャック3を回転させてウエハWを振り切り乾燥で乾燥させた後、搬入時とは逆の動作で昇降ピン32から外部の搬送手段へと受け渡し洗浄装置100の外部へウエハWを搬出する。なお、図9には示していないが、このときウエハWの裏面にUVランプによる紫外線照射を行ってもよいことは勿論である。
【0055】
本実施の形態に係わる洗浄装置1、100によれば以下のような効果がある。ウエハWの裏面を支えて保持し、そのままの状態で洗浄を行うので、洗浄装置1に加えてウエハWを反転するリバーサを設置するスペースやウエハWの反転動作を行うためのスペースを必要としない。この結果、従来タイプの洗浄装置と比較して、当該洗浄装置1、100の設置される塗布、現像装置をコンパクトにすることができる。
【0056】
また本洗浄装置1、100は、2つの基板保持手段(吸着パッド2、スピンチャック3)の間でウエハWを持ち替えるので、吸着パッド2やスピンチャック3で覆われてしまうことにより洗浄することのできないデッドスペースを生じないようにすることができる。これによりデッドスペースの発生を回避するためウエハWの周縁部を機械的に保持したりする必要がなくなり、ウエハW周縁部にダメージを与えずに洗浄を行うことを可能とし、パーティクルの発生やレジスト膜へのダメージ等を防止して製品の歩留まり向上に貢献できる。
【0057】
また本実施の形態に係わる洗浄装置1、100は、洗浄完了後にウエハWに付着している洗浄液を振り切り乾燥により一気に乾燥させたり、スピンチャック3の周囲にエアナイフ31を設けてスピンチャック3へとウエハWが受け渡される際に、スピンチャック3の表面とこのスピンチャックで支えられる基板の裏面(第2の領域)とを互いに乾燥した状態で接触させたりする機構を採用している。これらの仕組みによりウエハWやスピンチャック3におけるウォータマークの発生を抑制し、洗浄したウエハW裏面が再汚染されてしまうのを防止することができる。
【0058】
また、当該洗浄装置1、100は洗浄効果の高いブラシ5を洗浄部材に採用しているが、洗浄部材はこれに限定されるものではない。例えば二流体ノズルやジェットノズル、メガソニックノズル等、洗浄液等を吹き付けることによってパーティクルを除去するタイプの洗浄部材を採用してもよい。更にまた実施の形態においては回転式のブラシ5を例示したが、これに替えて振動式のブラシを採用してもよい。更に洗浄液の種類もDIWに限定されることなく、他の洗浄液であってもよい。
【0059】
更に、洗浄装置に設置する基板保持手段は、実施の形態に示したように2種類(吸着パッド2、スピンチャック3)だけに限定されるものではない。例えば3種類以上の基板保持手段を備え、これらの基板保持手段の間で2回以上基板を持ち替えるように構成してもよい。この場合には、最後に基板保持するのが第2の基板保持手段、この前に基板を保持するのが第1の基板保持手段と解釈することができる。
【0060】
次に塗布、現像装置に上述した洗浄装置1を適用した一例について簡単に説明する。図12は塗布、現像装置に露光装置を接続したシステムの平面図であり、図13は同システムの斜視図である。また図14は同システムの縦断面図である。塗布、現像装置にはキャリアブロックS1が設けられており、その載置台101上に載置された密閉型のキャリア100から受け渡しアームCがウエハWを取り出して処理ブロックS2に受け渡し、処理ブロックS2から受け渡しアームCが処理済みのウエハWを受け取ってキャリア100に戻すように構成されている。
【0061】
本実施の形態に係わる洗浄装置1(または洗浄装置100、以下同じ)は、処理ブロックS2から露光装置S4へとウエハWを受け渡す際、即ち図12に示すようにインターフェイスブロックS3の入口部にて処理対象となるウエハWの裏面洗浄を行うように構成されている。
【0062】
前記処理ブロックS2は、図13に示すようにこの例では現像処理を行うための第1のブロック(DEV層)B1、レジスト膜の下層側に形成される反射防止膜の形成処理を行うための第2のブロック(BCT層)B2、レジスト膜の塗布を行うための第3のブロック(COT層)B3、レジスト膜の上層側に形成される反射防止膜の形成を行うための第4のブロック(TCT層)B4を、下から順に積層して構成されている。
【0063】
第2のブロック(BCT層)B2と第4のブロック(TCT層)B4とは、各々反射防止膜を形成するための薬液をスピンコーティングにより塗布する本形態に係わる塗布ユニットと、この塗布ユニットにて行われる処理の前処理及び後処理を行うための加熱・冷却系の処理ユニット群と、前記塗布ユニットと処理ユニット群との間に設けられ、これらの間でウエハWの受け渡しを行う搬送アームA2、A4と、で構成されている。第3のブロック(COT層)B3についても前記薬液がレジスト液であることを除けば同様の構成である。
【0064】
一方、第1のブロック(DEV層)B1については図14に示すように一つのDEV層B1内に現像ユニット110が2段に積層されている。そして当該DEV層B1内には、これら2段の現像ユニット110にウエハWを搬送するための搬送アームA1が設けられている。つまり2段の現像ユニットに対して搬送アームA1が共通化された構成となっている。
【0065】
更に処理ブロックS2には、図12及び図14に示すように棚ユニットU5が設けられ、キャリアブロックS1からのウエハWは前記棚ユニットU5の一つの受け渡しユニット、例えば第2のブロック(BCT層)B2の対応する受け渡しユニットCPL2に、前記棚ユニットU5の近傍に設けられた昇降自在な第1の受け渡しアームD1によって順次搬送される。次いでウエハWは第2のブロック(BCT層)B2内の搬送アームA2により、この受け渡しユニットCPL2から各ユニット(反射防止膜ユニット及び加熱・冷却系の処理ユニット群)に搬送され、これらユニットにて反射防止膜が形成される。
【0066】
その後、ウエハWは棚ユニットU5の受け渡しユニットBF2、前記棚ユニットU5の近傍に設けられた昇降自在な第1の受け渡しアームD1、棚ユニットU5の受け渡しユニットCPL3及び搬送アームA3を介して第3のブロック(COT層)B3に搬入され、レジスト膜が形成される。更にウエハWは、搬送アームA3→棚ユニットU5の受け渡しユニットBF3に受け渡される。なおレジスト膜が形成されたウエハWは、第4のブロック(TCT層)B4にて更に反射防止膜が形成される場合もある。この場合は、ウエハWは受け渡しユニットCPL4を介して搬送アームA4に受け渡され、反射防止膜の形成された後搬送アームA4により受け渡しユニットTRS4に受け渡される。
【0067】
一方DEV層B1内の上部には、棚ユニットU5に設けられた受け渡しユニットCPL11から棚ユニットU6に設けられた受け渡しユニットCPL12にウエハWを直接搬送するための専用の搬送手段であるシャトルアームEが設けられている。レジスト膜や更に反射防止膜の形成されたウエハWは、受け渡しアームD1を介して受け渡しユニットBF3、TRS4から受け取り受け渡しユニットCPL11に受け渡され、ここからシャトルアームEにより棚ユニットU6の受け渡しユニットCPL12に直接搬送される。ここで図12に示すように棚ユニットU6と洗浄装置1との間に設置された搬送手段である受け渡しアームD2は、回転、進退、昇降自在に構成され、洗浄前後のウエハWを夫々専門に搬送する例えば2つのアームを備えている。ウエハWは、受け渡しアームD2の洗浄前専用のアームによってTRS12から取り出され、洗浄装置1内に搬入されて裏面洗浄を受ける。洗浄を終えたウエハWは受け渡しアームD2の洗浄後専用のアームでTRS13に載置された後、インターフェイスブロックS3に取り込まれることになる。なお図14中のCPLが付されている受け渡しユニットは温調用の冷却ユニットを兼ねており、BFが付されている受け渡しユニットは複数枚のウエハWを載置可能なバッファユニットを兼ねている。
【0068】
次いで、インターフェイスアームBにより露光装置S4に搬送され、ここで所定の露光処理が行われた後、棚ユニットU6の受け渡しユニットTRS6に載置されて処理ブロックS2に戻される。次いでウエハWは、第1のブロック(DEV層)B1にて現像処理が行われ、搬送アームA1により棚ユニットU5の受け渡しユニットTRS1に受け渡される。その後、第1の受け渡しアームD1により棚ユニットU5における受け渡しアームCのアクセス範囲の受け渡しユニットに搬送され、受け渡しアームCを介してキャリア100に戻される。なお図12においてU1〜U4は各々加熱部と冷却部とを積層した熱系ユニット群である。
【0069】
なお、図12〜図14に示した塗布、現像装置では実施の形態に係わる洗浄装置1をインターフェイスブロックS3の入口部に設けた例を示したが、洗浄装置1を設置する位置はこの例に限定されるものではない。例えばインターフェイスブロックS3内に当該洗浄装置1を設置してもよいし、処理ブロックS2の入口部、例えば棚ユニットU5に設置してレジスト膜の形成される前のウエハWを裏面洗浄するように構成してもよいし、キャリアブロックS1内に設けてもよい。
【0070】
更に、本実施の形態に係わる洗浄装置1を適用可能な装置は、塗布、現像装置に限定されない。例えばイオン注入後のアニール工程を行う熱処理装置にも本洗浄装置1は適用することができる。ウエハWの裏面にパーティクルが付着したままアニール工程を行うと、この工程中にパーティクルがウエハの裏面から入り込み、このパーティクルと表面のトランジスタとの間に電流路が形成されてしまうこともある。このため、この工程の前にウエハWを裏面洗浄することにより製品の歩留まりを向上させることができる。
【0071】
ここで図1〜図11を用いて説明した洗浄装置1、100において、ウエハWから飛散した洗浄液がアッパーカップ41の内壁面と衝突してミストを発生し汚染源となることを防止するため、アッパーカップ41の内壁面は飛散した洗浄液が極力跳ね返らない部材にて構成することが好ましい。例えば図15に示したアッパーカップ41は、液滴の跳ね返りにくい材料から構成されるライニング部材44をアッパーカップ41の内壁面に内張りすることによりミストの発生を抑える構成となっている。このような材料の具体例としては、例えば親水剤を添加する等して親水処理を施した樹脂製のポーラス材料(多孔質樹脂)や、ブラスト処理等により内壁面を粗面化したアルミナ等のセラミック材料等が挙げられる。また、上述のように内張りをする場合は、アッパーカップ41は例えばポリプロピレン樹脂等の材料により構成されているが、アッパーカップ41全体を既述のポーラス材料やセラミックにより構成してもよい。なお図15においてはエアナイフ31等の記載を省略してある。
【0072】
また、例えばウエハWの裏面洗浄時にブラシ5にかかる押圧力やブラシ5の支持部51にかかるトルク等を計測し、ブラシ5がウエハWの裏面と接触する力を計測する計測器(計測手段)と、ブラシ5の支持部51を昇降させる昇降機構(昇降手段)と、既述の制御部6とからなる洗浄圧制御機構を既述の洗浄装置1、100に設け、ウエハWの裏面にブラシ5が接触する力を予め定めた範囲内の値でほぼ一定とするように、ブラシ5を昇降させてもよい。また、ブラシ5の昇降に替え、吸着パッド2やスピンチャック3を昇降させることによりウエハWを上下させて、ブラシ5が接触する力を制御してもよい。ブラシ5がウエハWと接触する力を一定に保つことで、パーティクルの除去率を安定させるとともに、ウエハWに過大な力をかけないため、吸着パッド2やスピンチャック3からのウエハWの脱離を防止できる。
【0073】
このようにブラシ5をウエハWの裏面に押し当てて洗浄を行う手法は、ウエハWの裏面が親水性である場合に特に有効である。一方、ウエハWの表面に対しては、疎水化処理剤の蒸気と接触させることによりレジスト膜との密着性を向上させる疎水化処理が行われている場合がある。この疎水化処理の際に処理剤の蒸気の一部がウエハの裏面側へと流れ込むと、例えばウエハWの裏面周縁部までもが疎水化されてしまう。疎水化された領域には洗浄液を十分に行き渡らせることが困難であり、直接ブラシ5を押し当てて回転させるとブラシの繊維が削り取られて多量のパーティクルを発生し、ウエハWを汚染するおそれがある。そこで疎水化処理されたウエハWの周縁領域を洗浄する場合等には、例えば図16に示すように、ブラシ5の先端とウエハWの裏面との間に例えば1mm未満の隙間ができるようにブラシ5を配置し、この状態で既述の洗浄ノズル5aから洗浄液を供給してブラシ5を回転させて洗浄を行うとよい。この手法によれば、ブラシ5の回転によって激しく攪拌された洗浄液の水勢を利用して洗浄を行うので、ブラシ5からのパーティクルの発生を抑えつつ洗浄を行うことが可能になる。
【0074】
また上述の疎水化処理されたウエハWに対応するため、図17に示すように例えばアンダーカップ43にUVランプ17を設け、このUVランプ17によってウエハWの周縁領域、例えばウエハWの端部より中央側に25mmの領域に紫外線を照射し、疎水化剤を分解する親水化処理を行ってから洗浄を行うようにしてもよい。この場合には、例えば吸着パッド2からスピンチャック3へとウエハWを持ち替えた後、スピンチャック3を回転させながらウエハWの周縁領域をUV光にて所定の幅で走査することにより、当該領域全体を親水化することができる。ここでUVランプ17は、例えば防水処理を施したものをアンダーカップ43内に設置してもよいし、アンダーカップ43の底面にUV光を透過するガラス窓を設け、その下方側にUVランプを設けてもよい。この他、例えばUVランプを別の場所に設置し、ウエハの裏面を照射可能な位置に設けた照射ヘッドを導光ファイバーによりこのUVランプと接続する構成としてもよい。なお、UV光を照射する領域はウエハWの裏面の周縁領域に限られるものではなく、例えばウエハWの裏面全体に照射してもよいことは勿論である。なお図17においてはエアナイフ31等の記載を省略してある。
【0075】
またエアナイフ31の内部では、エアナイフ31から噴射される気体によって上昇気流が形成され、スピンチャック3の駆動機構33や支持ピン32の昇降機構32a等から発生したパーティクルがこの上昇気流によってエアナイフの外側へと流れ出てしまうおそれがある。そこで例えばエアナイフ31の内側の雰囲気を吸引排気し、当該エアナイフ31とウエハWの裏面とにより取り囲まれる空間を減圧雰囲気に保つことにより上昇気流の発生を抑えてもよい。
【0076】
同じくエアナイフ31において、ブラシ5側からの洗浄液の全てを当該エアナイフ31にて吹き飛ばすためには大量の気体を噴射しなければならず、消費エネルギー量が多くなると共に、大量の気体により吹き飛ばされた洗浄液がミストとなって新たな汚染源となってしまう場合もある。そこで、例えば図18に示すようにエアナイフ31とブラシ5との間を遮る軌跡を描くように例えばDIW等の洗浄水を吐出する流体吐出手段であるアシストリンス機構34を設け、当該純水の流れによってブラシ5側から流れてくる洗浄液の流れ方向を変えることにより、エアナイフ31へと向かう洗浄液の流れの勢いを弱めるようにしてもよい。これにより洗浄液を吹き飛ばすために必要な気体の量が減り、エネルギー消費量を減らすことができると共に、ミストの発生を抑えることが可能となる。なお、洗浄液を吐出するアシストリンス機構34に替えて例えば圧縮エア等を吐出してエアナイフ31とブラシ5との間を遮るエアノズルを流体吐出手段として設けてもよい。
【0077】
次に第1の保持手段である吸着パッド2について、吸着パッド2の平面形状は例えば図2に示した細長い長方形に限定されるものではない。例えば図19に示すように、ウエハWを載置した際に、当該ウエハWと同心円をなす円弧状の吸着保持面を備えた吸着パッド2を用いてもよい。かかる形状の吸着パッド2は、対向する吸着パッド2間に形成される領域の面積が広くなるので、より広い領域に洗浄液を行き渡らせることができると共に、ブラシ5を移動させる際の邪魔にもなりにくい。
【0078】
また例えばウエハWがスピンチャック3上に載置されて洗浄されている期間中は、吸着パッド2はウエハWの下方に退避しているため、吸着パッド2の表面には洗浄液が滴下する。このため、吸着パッド2の吸引管を例えば工場のバキュームラインに接続すると、吸着パッド2表面に設けられた吸着孔3aより洗浄液が流れ込み、バキュームラインの真空度を低下させる要因となる。そこで例えば図20に示すように吸着パッド2の吸引管60にトラップタンク61を介設し、吸引管60に流れ込んだ洗浄液を当該トラップタンク61内に捕捉して下流側への流出を防止してもよい。また更に図20に示すように、当該吸引管60をエジェクタ62に接続し、エジェクタ62からの排気は工場の排気ラインへと接続することにより、工場のバキュームラインを利用せずにウエハWの吸着を行えるようにしてもよい。
【0079】
上述のように吸着パッド2の表面が洗浄液で濡れた状態のままウエハWを保持すると、吸着パッド2の吸着力が低下して洗浄中にウエハWが脱離するおそれがあり、また汚れた洗浄液でウエハWの裏面を汚染し、洗浄後のウエハWの清浄度を低下させてしまう場合もある。そこで例えば図21(a)、図21(b)に示すように、アッパーカップ41に例えばエアカーテンノズル45を設置して、例えばウエハWの洗浄が終了し、次のウエハWが搬入されてくるまでの期間中に気体を吹き付けて吸着パッド2表面の洗浄液を吹き飛ばすようにしてもよい。なお図21(a)、図21(b)においてはエアナイフ31等の記載を省略してある。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明に係わる洗浄装置を示す斜視図である。
【図2】前記洗浄装置の平面図である。
【図3】前記洗浄装置の縦断面図である。
【図4】エアナイフの構成を示す斜視図である。
【図5】前記洗浄装置の動作を説明するための第1の工程図である。
【図6】前記洗浄装置の動作を説明するための第2の工程図である。
【図7】洗浄時のウエハ裏面の様子を示した説明図である。
【図8】各動作において洗浄される領域を表した平面図である。
【図9】第2の実施の形態に係る洗浄装置の平面図である。
【図10】前記第2の実施の形態に係る洗浄装置の動作を説明するための第1の工程図である。
【図11】前記第2の実施の形態に係る洗浄装置の動作を説明するための第2の工程図である。
【図12】上記洗浄装置を適用した塗布、現像装置の実施の形態を示す平面図である。
【図13】上記塗布、現像装置の斜視図である。
【図14】上記塗布、現像装置の縦断面図である。
【図15】内壁面にライニング部材を内張りしたアッパーカップの縦断面図である。
【図16】ウエハの裏面とブラシの先端との間に隙間を設けて洗浄を行う実施の形態の説明図である。
【図17】疎水化されたウエハ裏面側の周縁領域にUV光を照射する実施の形態の説明図である。
【図18】エアナイフの気体消費量を削減するためのアシストリンス機構を設けた実施の形態の説明図である。
【図19】平面形状が円弧状の吸着パッドを用いた実施の形態の説明図である。
【図20】吸着パッドの吸気管にトラップタンクやエジェクタを設置した実施の形態の説明図である。
【図21】エアカーテンノズルを備えたアッパーカップの縦断面図である。
【符号の説明】
【0081】
F 液膜
W ウエハ
1 洗浄装置
2 吸着パッド
2a 吸着孔
3 スピンチャック
3a 吸着孔
3b 軸部
5 ブラシ
5a 洗浄液ノズル
5b ブローノズル
6 制御部
11 ランプボックス
12 UVランプ
13 ブローノズル
14 洗浄液ノズル
15 排気管
16 ドレイン管
20 井桁
21 パッド支持部
22 橋桁部
23 ベルト
24 巻掛軸
25 駆動機構
26 側板
27 昇降機構
27a スライダ
27b ガイドレール
31 エアナイフ
31a 噴射口
32 支持ピン
32a 昇降機構
33 スピンチャックモータ
41 アッパーカップ
41a 開口部
42 インナーカップ
43 アンダーカップ
51 支持部
52 ベルト
53 巻掛軸
54 駆動機構
71 カバー部材
72 支持部
73 乾燥ノズル
100 基板洗浄装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の裏面を洗浄処理する基板洗浄装置において、
基板の裏面に洗浄部材を当接して洗浄する洗浄手段と、
基板の裏面に洗浄液を供給して洗浄する洗浄液供給手段と、
基板の裏面中央部を保持して回転及び昇降自在に構成されたスピンチャックと、
前記スピンチャックに対して両側方にそれぞれ設けられ基板裏面の周縁部近傍部を保持する保持部と、
前記保持部を備え前記スピンチャックを挟んで一方向に進退自在で且つ昇降自在に構成された基板保持機構と、
前記基板保持機構に設けられ上面に開口部を備え洗浄液の飛散を抑えるカップ体と、を備え、
前記基板の搬入は、前記カップ体に開口部を介して前記保持部の前記基板を保持する面が前記洗浄部材の上面より高い位置であり、前記スピンチャックが前記洗浄部材の上面よりも低い位置で行われて、前記基板の裏面の洗浄は、前記基板保持機構を前記洗浄手段が基板の裏面に当接する位置まで下降して行われることを特徴とする基板洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−191215(P2012−191215A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−94888(P2012−94888)
【出願日】平成24年4月18日(2012.4.18)
【分割の表示】特願2007−303453(P2007−303453)の分割
【原出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】