太陽電池装置およびその製造方法
【課題】電極層を介さず太陽光を空乏層あるいは真性層に導く構成を採用するとともに、これを安価なガラス基板等で実現する。
【解決手段】透明非晶質基板上に真性の半導体層を形成させ、半導体層表面に仕事関数の異なる材料を接合させる。また、異なる材料は、不純物を拡散させたp型とn型の導電型の拡散層であり、互いに隣接または隔離して形成されている。
【解決手段】透明非晶質基板上に真性の半導体層を形成させ、半導体層表面に仕事関数の異なる材料を接合させる。また、異なる材料は、不純物を拡散させたp型とn型の導電型の拡散層であり、互いに隣接または隔離して形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方の面に異なる仕事関数の材料、例えばp型あるいはn型の電極を形成し、他方の面に、真性の結晶を露出させて、太陽光を電極層を介さずに仕事関数の差で生じる内部電界層に導入させる太陽電池装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、異なる仕事関数を持つ材料の接合であるシリコンのpn接合を用いた太陽電池が一般的に使用されている。こうした構造の太陽電池で発生できる開放電圧は、フェルミレベルのエネルギー差、即ち、電子が受ける仕事関数の差に相当する電位差である。
【0003】
この種の太陽電池は、厚み200−400umのp型シリコン基板の表面に薄い(厚さ1um以下)n型拡散層が形成され、これを表面電極として用いる。こうした太陽電池では、シリコン基板が太陽光を吸収して電子・正孔の電荷が発生するが、それが拡散して電極に到達したものが発電に寄与するため、電気エネルギーに変換できるかどうかは、その太陽光の吸収と電荷の発生場所に依存して決まる。
【0004】
図17に、典型的な従来のシリコンpn接合の太陽電池の断面模式図を示している。なお、ここでは、表面の透明電極と裏面の金属電極は示してない。図17に示すように、p型層12の表面にn型層11が形成され、これとp型層12との界面に空乏層13が形成され、空乏層13には、内部電界が発生する。また、太陽光は、n型層11の表面から導入される。
【0005】
太陽光は、一般的に、波長に依存する屈折率の違う材料の界面で反射される。また、n型層11には、多数キャリアの電子が存在する。このために、この層の表面は、反射面1となり、太陽光の反射が起きる。これによって、進入太陽光1aの強度は反射面1で減衰する。また、この反射面1を通過した進入太陽光1bは、減衰しながら反射面2に到達する。しかしながら、空乏層13とn型層11との多数キャリアの密度が違うために屈折率が異なり、反射を起こして、進入太陽光1bは反射面2で減衰する。
【0006】
また、空乏層13を通過した進入太陽光1cは空乏層13とp型層12の界面である反射面3に到達して、屈折率の違いのために反射面3で反射されて減衰する。一方で、反射面3を通過した進入太陽光はp型層12内部に到達する。以上のように、太陽光に対する屈折率の違う層の界面で太陽光の反射がおきるため、進入太陽光は反射面1、2、3で反射による減衰とシリコンのバンド間遷移の吸収による減衰を伴いながらp型層に到達する。
【0007】
こうした屈折率の違いによる反射を利用するために、従来の太陽電池では、基板または基板上の電極に凹凸を形成して太陽光を反射させることによって長い光路長を確保し、光電変換効率を向上させていた(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
空乏層13が太陽光を吸収すると電子と正孔が生成される。生成された電子と正孔は、空乏層13内の内部電界で加速されて、n型層11とp型層12に到達して電圧を生じさせて電気エネルギーを作る。
【0009】
さらに、n型層11の少数キャリア(正孔)拡散長Lpとp型層12の少数キャリア(電子)拡散長Lnの範囲で太陽光が吸収されて生成された正孔と電子も拡散により空乏層13に到達して、空乏層13の電界で加速されて移動し、電気エネルギーに変換される。
【0010】
一般に、n型層11は、高ドープするため、電子や正孔の再結合時間が短く、Lpは小さい。加えて、光減衰もあるため、この層は薄く設計する必要がある。つまり、発電効率を上げるには、n型層11を通過させることなく、太陽光を空乏層13にまで導くことが望ましい。
【0011】
発電に寄与する太陽光は、空乏層13とそれを挟むLnとLpの領域で吸収される太陽光であることを述べたが、半導体が結晶であるときには、LnとLpとは一定の値を持つため、この領域は、発電に寄与できる領域として働く。しかし、半導体層がアモルファスであったり、結晶欠陥の多いポリ結晶であると、少数キャリアのLnとLpは短くなり、発電に寄与できる領域は狭くなる。
【0012】
これを解決させるための構造がpinダイオード接合の構造である。この断面構造を図18に示す。このpinダイオード接合は、真性アモルファス層14をn型アモルファス層15とp型アモルファス層16とで挟む構造になっている。電極としてのn型アモルファス層15とp型アモルファス層16層は、少数キャリアライフタイムが短いために、発電に寄与できない層であり、もっぱら、内部電界のある真性アモルファス層14で吸収される太陽光が発電に寄与する。そのため、発電効率を上げるにはn型アモルファス層15を通過させることなく太陽光を真性アモルファス層14に導くことが望ましい。
【特許文献1】特開2006−19481号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ここで、太陽光の反射に伴う課題を整理する。反射面1で生じる進入太陽光1aの反射は、低抵抗拡散層の多数キャリアに依存する反射である。また、その反射は層の厚みにも依存する。可視光の波長が600−400nmとすると、n型層11の厚みが1um程度あるいは、それ以下で干渉が生じる。実際、この干渉を利用して層の厚みを測定することが可能である。このように、反射と進入(透過)は、n型層11のキャリア濃度と厚みに依存して生じるが、高い光電気変換効率を得るためには、この層を通過させずに、高抵抗の空乏層13または真性アモルファス層14に太陽光を導くことが必要である。
【0014】
また、進入太陽光1bの反射はn型層11と空乏層13との界面である反射面2またはn型層11と真性の高抵抗である真性アモルファス層14との界面である反射面2で生じる。この反射により、進入太陽光1bの強度は減衰する。
【0015】
空乏層13とp型層12との界面である反射面3、または、真性の高抵抗である真性アモルファス層14とp型アモルファス層16との界面である反射面3では、進入太陽光1cの反射が生じる。このとき、反射太陽光は空乏層13また真性アモルファス層14に戻るため、進入太陽光1cの電気エネルギー変換の損失は軽減される。したがって、空乏層13または、真性アモルファス層14に至るまでの太陽光の減衰を小さくするには、太陽光を電極層を介さずに直接に空乏層13、または真性アモルファス層14に導くことが必要である。
【0016】
そこで、本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、電極層を介さず太陽光を空乏層あるいは真性層に導く構成を採用するとともに、これを安価なガラス基板で実現する太陽電池装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、上記した課題を解決するために以下の事項を提案している。
【0018】
(1)本発明は、透明非晶質基板上に真性の半導体層を形成させ、当該半導体層表面に仕事関数の異なる材料を接合させた太陽電池装置を提案している。
なお、本発明で用いた「真性(i型)の半導体」とは、実際に製造されているpinダイオードの表現で使用されているように、p型半導体とn型半導体とに対比させて用いた言葉であり、p型またはn型の不純物を全く含まない、または、フェルミレベルがバンドギャップの中心にあるという理論的な狭義の「真性の半導体」を意味するものではなく、p型またはn型の一方に、導電型を決定させる不純物ドーピングを行っていない半導体材料の意味で用いているものである。
【0019】
(2)本発明は、(1)の太陽電池装置について、前記異なる材料が不純物を拡散させたp型とn型の導電型の拡散層であり、互いに隣接または隔離して形成されていることを特徴とする太陽電池装置を提案している。
【0020】
(3)本発明は、(1)または(2)の太陽電池装置について、前記透明非晶質基板がガラスまたは樹脂またはプラスチックからなることを特徴とする太陽電池装置を提案している。
【0021】
(4)本発明は、(1)から(3)の太陽電池装置について、前記透明非晶質基板がガラスまたは樹脂またはプラスチックの上にそれらと異なる透明な薄膜をのせた基板であることを特徴とする太陽電池装置を提案している。
【0022】
(5)本発明は、(1)から(4)の太陽電池装置について、前記半導体層は真性のシリコンであることを特徴とする太陽電池装置を提案している。
【0023】
(6)本発明は、(1)から(4)の太陽電池装置について、前記半導体層はシリコンと炭素とを含むことを特徴とする太陽電池装置を提案している。
【0024】
(7)本発明は、(1)から(6)の太陽電池装置について、前記半導体層は前記基板に近いほどエネルギーバンドギャップが大きくなる組成を有することを特徴とする太陽電池装置を提案している。
【0025】
(8)本発明は、(1)から(7)の太陽電池装置について、前記透明非晶質基板側から前記真性の半導体層に太陽光を導入することを特徴とする太陽電池装置を提案している。
【0026】
(9)本発明は、支持台上に載置された前記基板の表面に、該基板の支持台温度より高温に加熱したガスを前記基板表面に対向させて置かれたガス射出口からライン状に吹き付けて表面を加熱することを特徴とする太陽電池装置の製造方法を提案している。
【0027】
(10)本発明は、(9)の太陽電池装置の製造方法について、前記ガスは窒素、酸素、水素,Ar,Heのいずれか、またはそれらの混合ガスを含むことを特徴とする太陽電池装置の製造方法を提案している。
【0028】
(11)本発明は、(9)または(10)の太陽電池装置の製造方法について、支持台上に載置された前記基板の表面に、基板の支持台温度より高温に加熱したガスを基板表面に対向させて置かれた異なる2つ以上のガス射出口からライン状に吹き付けて表面を加熱し、前記基板上に半導体層を形成させることを特徴とする太陽電池装置の製造方法を提案している。
【0029】
(12)本発明は、(11)の太陽電池装置の製造方法について、異なるガス射出口に挟まれたガス射出口からシリコンあるいはカーボン、または両方を含むガスが導入されることを特徴とする太陽電池装置の製造方法。
【0030】
(13)本発明は、(9)または(10)の太陽電池装置の製造方法について、支持台上に載置された前記基板の上から、該基板の支持台温度より高温に加熱したガスを、該基板に対向させて置かれた異なる2つ以上のガス射出口からライン状に吹き付けて表面に絶縁膜を成長させることを特徴とする太陽電池装置の製造方法を提案している。
【0031】
(14)本発明は、(13)の太陽電池装置の製造方法について、前記異なる2つ以上のガス射出口のうち、一のガス射出口から射出される前記ガスがシラン(SiH4、Si2H6)またはハロゲン化シランを含み、他のガス射出口から射出されるガスが、これと反応するN2O,NO2、水、酸素を含む酸化ガス、NH3を含む窒化ガスのいずれか、または両方を含み、基板上に絶縁膜を成長させることを特徴とする太陽電池装置の製造方法を提案している。
【0032】
(15)本発明は、(11)の太陽電池装置の製造方法について、酸素または水を含む酸化性ガスを導入して、前記半導体層の表面を酸化させることにより酸化膜を形成することを特徴とする太陽電池装置の製造方法を提案している。
【0033】
(16)本発明は、(9)または(10)の太陽電池装置の製造方法について、不純物を含むガスを導入して、該不純物を拡散させて拡散層を形成することを特徴とする太陽電池装置の製造方法を提案している。
【0034】
(17)本発明は、(16)の太陽電池装置の製造方法について、前記不純物が半導体層をn型またはp型にさせる元素であることを特徴とする太陽電池装置の製造方法を提案している。
【0035】
(18)本発明は、(9)から(17)の太陽電池装置の製造方法について、前記ガス射出口から射出されるガスが前記支持台上に載置された前記基板の表面に、ほぼ垂直に吹き付けられることを特徴とする太陽電池装置の製造方法を提案している。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、高温の加熱ガスビームをガラス基板やプラスチック基板にほぼ垂直に衝突させるように吹き付けることで、基板の表面だけを高温にでき、基板内部とその裏面とを一定の低い温度に維持しながら、基板より高い温度で、表面のみを加熱処理して不純物熱拡散をすること、および、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜、ポリシリコンなどの高温熱CVD材料を成長させる製造方法を用いることが可能となるという効果がある。
【0037】
また、上記製造方法により、真性半導体層を成長させn型拡散層電極とp型拡散層電極とを表面に離間して配置させたラテラルpin/i接合構造を持った太陽電池をガラス基板または、その軟化点(300℃)より低温に保持する必要のある基板のうえに製造することが可能となるという効果がある。
【0038】
さらに、太陽光が、ガラス基板から電極層を介さずに、真性半導体層に直接に、当たるため損失が低減されて、高い変換効率の太陽電池が製造可能であるという効果がある。また、真性半導体層をバンドギャップの違う層の階段型接合や傾斜組成にすることも可能であり、太陽光スペクトルを幅広く利用できる構造を可能になるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて、詳細に説明する。
なお、本実施形態における構成要素は適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、また、他の既存の構成要素との組合せを含む様々なバリエーションが可能である。したがって、本実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【0040】
<太陽電池装置の構造>
すでに、図17および図18を用いて、説明したように、太陽光の損失を小さくするためには、n型層11の表面の反射面1とn型層11と空乏層13または真性アモルファス層14との界面の反射面2、空乏層13または真性アモルファス層14とp型層12またはp型アモルファス層16との界面の反射面3を減らすまたは、無くすことが必要である。なお、以後、内部電界の存在する空乏層13または真性アモルファス層14の両方をキャリアを拡散層に集める内部電界領域と総称する場合がある。
【0041】
ここで、図1に、従来のpinダイオード構造の光通信用受光素子の構造を示す。図1において、真性層23は、内部電界領域である。前述のように、図1に示す電極やn型拡散層21を通して太陽光を入射させると、n型拡散層21の表面の反射面、n型拡散層21と真性層23との界面の反射面、真性層23とp型拡散層22との界面の反射面による太陽光の減衰が避けられないため、これを回避するためには、真性層23に太陽光を直接導入する必要がある。
【0042】
その一つの方法として、図1の紙面に垂直な方向から太陽光を導入させるが考えられるが、この場合には、真性層23の断面積が小さく、通信用の受光素子では、その目的を達成できても、太陽電池には応用できないという問題がある。
【0043】
そこで、これを太陽電池に応用する本発明について、図2および図3を用いて、詳細に説明する。
【0044】
まず、図1に示したpinダイオード構造の真性層23をXX方向で分離したものを図2に示す。図2において、左側は、n型拡散層21と真性層23(i層)のni接合25、右側はi層とp型拡散層22のip接合26である。
【0045】
次に、分離したもの同士をZZの端面で接合した構造を図3に示す。こうすることにより、真性層23の上にn型拡散層21とp型拡散層22とが真性層23を挟んで隔離して配置された構造が出来上がる。
【0046】
図4は、透明基板30上に、図3で示したように、真性半導体層33を形成し、この真性半導体層33の上にn型拡散層21とp型拡散層22とを真性半導体層33を挟んで隔離して配置したものである。この図によれば、太陽光を下側から直接に真性半導体層33に当てることが可能になる。
【0047】
すなわち、本実施形態の太陽電池装置は、透明非晶質基板(透明基板30)上に真性の半導体層(真性半導体層33)を形成させ、当該半導体層表面に仕事関数の異なる材料を接合させた構造になっている。また、前記異なる材料がp型とn型の不純物を拡散させた導電型の拡散層(n型拡散層21、p型拡散層22)であり、互いに隣接または隔離して形成されていることを特徴とする。
【0048】
こうした構造によれば、従来、光強度の減衰の原因となっていた反射面1、2が存在しない構造を実現することができる。なお、従来の反射面3は存在しているが、n型拡散層21およびp型拡散層22が隔離して存在しているので、その割合が相対的に減少する。そのため、反射面3により反射した太陽光は、もう一度、電界領域のある真性半導体層33に再進入するので、再び発電に寄与できる。ここで、この構造を真性半導体層33の上にn型拡散層21とp型拡散層22とが離間して配置された、ラテラルpin/i構造と呼ぶ。
【0049】
次に、ラテラルpin/i構造のi層に太陽光を当てたときの動作を説明する。
図4は、ラテラルpin/i接合太陽電池の構造の模式図である。透明基板30の上にラテラルpin/i接合31が構成されている。図4に示すラテラルpin/i接合太陽電池では、太陽光が、真性半導体層33の中に直接に進入する。そして、真性半導体層33で電子34と正孔35が生成される。
【0050】
太陽光で生成した電子34と正孔35とは、それぞれ電界領域の電界で加速されてn型拡散層21とp型拡散層22とによって集められて、電圧が両拡散層の間に発生する。そして、絶縁膜24の窓を介してn型拡散層21とp型拡散層22とに付けられた金属電極36からその電圧を取り出して用いる。なお、図4においては、n型拡散層21とp型拡散層22は、互いに離間させて配置したが、pn接合を形成するように隣接していても良い。
【0051】
また、真性半導体層33は、結晶であっても、多結晶、アモルファスであってもよく、有機無機の材料の種類に依らず半導体であれば良く、単一の半導体であっても、複数の種類を重ね合わせても、または傾斜して組成を変化させても良い。特に、製造技術の産業成熟度から、真性のシリコンまたはシリコンと炭素を含むものが望ましい。
【0052】
ただし、組成を変化させるときは、太陽光を入射させる側、すなわち、透明基板30に近いほどエネルギーバンドキャップが大きいことが望ましい。これは太陽光のスペクトルのうち、高いエネルギーの太陽光が、高いエネルギーバンドギャップの半導体で吸収され、低いエネルギーの太陽光は、その層を通過して深い位置にある低エネルギーバンドギャップの半導体で吸収されるため、広いスペクトル領域の太陽光を利用できるからである。
【0053】
図5に、バンドギャップの違う真性半導体層41、42、43のラテラルpin/i接合31の太陽電池の構造を模式的に示す。ここで、真性半導体層41、42、43のバンドギャップをそれぞれEg1、Eg2、Eg3とすると、これらの間には、Eg1<Eg2<Eg3の関係が成立し、太陽光が入射する透明基板40に向かってバンドギャップが大きくなっている。
【0054】
ここで、太陽光を吸収して生成した電子34は、ギャップエネルギーの高い真性半導体層43からギャップエネルギーの低い真性半導体層41に向かってできる伝導帯の傾斜に沿って、n型拡散層21に集まる。一方、太陽光を吸収して生成した正孔35は、ギャップエネルギーの高い真性半導体層43から低い真性半導体層41に向かってできる価電子帯の傾斜に沿って、p型拡散層22に集まる。このことを図6に示すバンドダイヤグラムで説明する。
【0055】
図5のおけるNN断面とPP断面のバンドダイヤグラムをそれぞれ図6および図7に示す。
図6および図7に示すように、透明基板40の上に、バンドギャップEg3、Eg2、Eg1の真性半導体層43、42、41が積層されている。図6に示すように、NN断面においては、透明基板40の側から太陽光が入射して光励起51により、電子34と正孔35を生成する。生成された電子34は伝導帯に沿って、電位差をくだりn型拡散層21に至り、金属電極にマイナスの電荷を運ぶ。一方、価電子帯の正孔35は、真性半導体層41を経由して電位差を上がりp型拡散層22に至り、プラスの電荷を金属電極に運ぶ。
【0056】
また、図7に示すように、pp断面においては、透明基板40の側から太陽光が入射して光励起51により電子34と正孔35を生成する。生成された正孔35は、価電子帯に沿って電位差を上りp型拡散層22に至り、金属電極にプラスの電荷を運ぶ。一方、伝導帯の電子34は、真性半導体層41を経由して電位差を下り、n型拡散層21に至り、マイナス電荷を金属電極に運ぶ。
【0057】
従って、太陽光が入射する側のエネルギーギャプの大きい真性半導体は、電子34と正孔35のエミッタとして作用する。また、n型拡散層21およびp型拡散層22を通過した太陽光およびn型拡散層21とp型拡散層22との間を通過した太陽光は、金属電極で反射されて再び電界領域で電子34と正孔35を発生させて、発電に寄与する。
【0058】
以上、説明したように、本発明に係る太陽電池装置の構造によれば、従来にあった拡散層を通過させて、太陽光を入射するときの反射による減衰をラテラルpin/i接合31を採用することにより防止することができる。また、この構造を採用したことにより、従来のpn接合構造やpin接合構造ではできなかった電子と正孔との真性半導体エミッタ層を太陽光が入射する側の全部の面に配置することができる。さらに、エミッタ層として、太陽光の入射する方向に、エネルギーバンドギャップが大きくなる組成の材料を設けることにより、太陽光の幅広いスペクトルを有効に発電に寄与させる構造が可能なる。
【0059】
<太陽電池装置の製造方法>
異なる仕事関数を持つp型拡散層とn型拡散層とを片側表面に横方向に並べてアレイ状に配置した本構造は、太陽光を透過させる必要のあるp型拡散層とn型拡散層の層を縦方向に重ねた従来構造では実現しえなかった性能を可能にさせる。
【0060】
即ち、異なる仕事関数の電極材料として太陽光を透過させなくてもよいため、例えば、金属を選ぶことも本構造では、可能になる。ここで、半導体と金属の接合をショットキー接合と呼ぶが、必要な接合は、このショットキー接合でも良い。
【0061】
したがって、真性の半導体に異なる仕事関数を持つ材料を接合させると、フェルミレベルの違いが無くなるまで、電子の移動が半導体を通して起こり、原理的には、二つの材料の仕事関数の差に相当する電位差が当該材料に生じる。なお、半導体と接合させる電極材料としては、製造方法が許す範囲で仕事関数の異なる材料を選ぶことが可能となる。ただし、異なる仕事関数の金属のショットキー接合による発生電位差は、表面の界面準位に依存したバンド湾曲に依存する。この界面準位の制御は製造上難しいために、半導体内部に接合を作る安定したp型とn型の拡散層を形成する方法が好ましい。
【0062】
ここで、拡散層の形成は高温を必要とするため、以下にその方法について説明する。一般に、加熱したガスを基板の表面に垂直に吹き付けると、ガスの温度を基板に伝えることができる。ここで、高温ガスを絞ってビーム状にして基板と平行でなく垂直に入射または衝突させると、淀み層としての停滞層が薄くなる。または、相対的に実質上停滞層が形成されない程度にすることができる。ここで、停滞層が薄いと、効率よくガスの温度を基板に伝えられる。別の言い方をすると、基板の表面は垂直に入射する高温ガスビームから効率よく熱を受け取るので表面だけを加熱できる。
【0063】
また、基板裏面が冷却されていると、一定の熱容量のヒートシンクをもっているため、温度が上昇して、ガスの温度に到達するのは、基板表面に限定される。この原理を用いると、基板表面のみを加熱して基板の裏面と内部は一定温度以下に維持できる。
【0064】
この状態を実現した構造例を模式的に図8に示す。なお、以下では、透明基板の一例として、ガラス基板を例にとって説明するが、これに限らず、樹脂基板やプラスチック基板等を用いてもよい。
【0065】
図8の構造では、ガラス基板60に加熱ガスビーム61、62がほぼ垂直に衝突入射する。ガラス基板60は、冷却された支持台(図示せず)に保持されていて、基板裏面温度は冷却材により一定に保持される。
【0066】
一方、ガス加熱器65の加熱電力制御により、ガスビーム61、62の温度は、300℃以上の高温にすることができる。ガス加熱器65に通すガスは窒素、酸素、水素、ヘリウム、アルゴン、などから適宜、一種類を選択することも可能であるし、二つ以上混合して用いることもできる。ガスビーム61、62の温度が800℃のとき、シリコン半導体プロセスで行う不純物の熱拡散をシリコンに対して行うことが可能である。また、水分の雰囲気があるとき、シリコン表面の熱酸化も可能になる。酸素を当該ガスとして選択するときは加熱器65は酸化されて燃えない材料で構成するかまたは酸化されて気体にならない材料で構成する必要がある。
【0067】
さらに、ポリシリコンは、シランの600℃熱分解から成長可能であり、シランとともに酸化ガスとして酸化窒素N2Oや水を導入すると、熱反応の酸化膜の成長が、ガスビーム温度700ないし800℃で可能である。また、アンモニアNH3ガスをシランとともに導入すると、シリコン窒化膜がガスビーム温度700℃で可能である。なお、シランに代えて、ハロゲン化シラン(SiH2Cl2等)を用いてもよい。
【0068】
ここで、図8の構造とそれぞれの役割を説明する。
図8においては、半導体の層を成長させるのに適するよう加熱ガスビーム61と62とが加熱せずに導入するガス導入管63を挟むように配置されている。なお、ガスビームで表面のみを加熱するだけのプロセスはとくに構造を選ばないため、ビームは一つだけでも良い。
【0069】
膜を成長させるためには、熱を閉じ込めて、高温の空間(ルーム)を作り出して、そのルームに熱分解すべきガスを長時間停滞させ、反応分解種を生成させて、効率よく基板にそれを補給できる構造が必要である。そのためには、ルームを作るために、吹き付ける高温の線状ビームのガスを2箇所から射出することが有効である。ここで、加熱ガスビーム61と62とで囲まれた空間である高温ガスで囲まれたルームを高温ガスルーム66と呼ぶ。
【0070】
加熱しないガス導入管63から、例えば、シランを選び、導入すると、高温ガスルーム66で熱分解が進行して、活性種が生成されて、停滞層を拡散してシリコン膜をガラス基板60上に成長させる。また、加熱ビーム61と62に酸化反応するガスを含むように選ぶと、この高温ガスルーム66に停滞したシランと互いに熱分解反応を起こし、酸化膜が成長する。
【0071】
気相中に異種物質の核がなければ、一定濃度以下では、自然核形成は起こさない。高温ガスルーム66の下には、温度の低い異種物質である巨大核としてのガラス基板60がある。異種物質である基板表面は温度が低いので、核成長から始まり膜の成長が起きる。これが、ガラス基板60の温度を低く維持しながら、基板の温度より高い温度のガスを接触させて熱CVDを基板表面で起こさせる原理である。
【0072】
ガス導入管63からシランとともに、例えば、アセチレンC2H2を導入すると、シリコンカーバイドやシリコンとの混晶の多結晶膜を成長できる。また、ガラス基板60に近い側をバンドギャップの大きいシリコンカーバイドの組成にし、階段的にあるいは、傾斜させて組成をシリコンにまで変化させると、表面はシリコン、ガラス基板60側には、バンドギャップの大きいシリコンカーバイドという組成の真性半導体層を成長させることができる。ただし、このとき、ガラス基板から金属不純物が拡散するのを防止するために上に述べた方法で酸化膜を成長させておくことが望ましい。なお、導電性酸化膜としては、酸化亜鉛等の透明なものであればよい。また、別な方法、例えば、スパッタリングの方法で金属酸化物をつけることも不純物拡散防止に有効であるが過剰な金属が含まれるときは、上に述べた本発明の酸化方法で、それを酸化して透明度を改善することが可能である。
【0073】
以上、説明したように、本発明に係る太陽電池装置の製造方法によれば、高温の加熱ガス61、62をガラス基板60にほぼ垂直に衝突させるように吹き付けることで、基板60の表面だけを高温にでき、基板内部と裏面を冷却効果に応じた一定の温度に維持しながら、基板より高い温度で表面のみを加熱処理して不純物熱拡散をすること、およびシリコン酸化膜やシリコン窒化膜、ポリシリコンなどの高温熱CVD材料を成長させる製造方法を用いることが可能である。
【0074】
したがって、この製造方法により、ラテラルpin/i接合構造を持った太陽電池装置をガラス基板またはその軟化点(300℃)より低温に保持する必要のある透明な非晶質基板の上に製造することが可能となる。
【0075】
<ラテラルpin/i接合太陽電池の製造方法>
上記では、本発明に係る太陽電池装置の構造およびその製造方法について、説明したが、以下では、本発明の実施形態として図面に基づいて、ラテラルpin/i接合太陽電池の製造方法に関してさらに詳細に説明する。なお、複数添付する図面中、同一または相当部分には同一符号を付している。
【0076】
図9から図14は、ラテラルpin/i接合太陽電池の製造方法を模式的に示した図である。
図9は、ガラス基板60上に真性の半導体結晶層67(Si(1−X)CX)を成長させる工程の模式図である。なお、ガラス基板60には金属不純物を含むことから、この拡散防止のために、酸化膜71を100nm成長させている。
【0077】
まず、ガス導入口63からシランを導入するとともに、酸化性のガスN2Oガスを含む窒素ガスをガス導入口61、62から導入する。なお、これは、プラズマCVD酸化膜でもよい。
【0078】
次に、ガラス基板60の支持台の表面温度を300℃に設定し、次いで、ガス加熱器65の設定温度を650℃から750℃の範囲で設定して、窒素ガスビーム(N2ガスビーム)61、62を基板に衝突させて、高温のガスルーム66を形成する。同時に1%に窒素で希釈したシランSiH4とアセチレンC2H2とを石英のガス導入口63を通して加熱することなく、ガス導入口から射出される窒素ガスビーム61と62とに挟まれた空間の高温のガスルーム66に射出する。なお、シランSiH4とアセチレンC2H2を例示したのは、熱分解温度がその他のガスに比べて低いためである。
【0079】
なお、高いエネルギーバンドギャップ値を持つSiCを成長性させるときは、設定温度を750℃とする。ここで、シリコンカーバイドは、Si−Cの結合が安定なために、酸化膜上には、Si−C−Si−Cというように、結合が膜厚方向に連続する性質が強い。面心立方結晶では、この方向は<111>軸であるため、<111>優先配向の膜となる性質がある。
【0080】
こうした性質があるため、多結晶の軸をそろえる目的の場合には、SiCの膜を最初に成長させるのが適している。ただし、シリコン酸化膜の上にSiCの核成長が起きにくい性質があるため、最初に、シランだけでシリコン膜を核成長させることが容易にSiC成長を起こさせるのには、好適である。また、シリコンの多結晶層を成長させるときは、650℃に設定する。そして、アセチレンの割合を減じながら、設定温度を750℃と650℃間で変化させて、厚み方向に組成が変化する膜Si(1−X)CXの多結晶で真性の半導体結晶層67をガラス基板60の上に300nm成長させる。
【0081】
このとき、ガラス基板60に近い側は、SiCの組成が主であり、表面は、シリコンの多結晶である。アセチレンを導入しないときは、多結晶のシリコン膜が成長する。ガラス基板60を横方向に往復運動させることで、成長領域を広げることが可能である。
【0082】
図10は、多結晶で真性の半導体結晶層のエッチングによる分離の工程の模式図を示している。ここでは、レジスト68を多結晶で真性の半導体結晶層67の上面に塗布して、レジスト分離パタンを露光現像で作り、ドライエッチングの方法を用いて、多結晶で真性の半導体結晶層67を分離する。
【0083】
図11は、分離した多結晶で真性の半導体結晶層67への絶縁膜成長の工程の模式図を示している。ガス導入口63からシランを導入するとともに、酸化性のガスN2Oガスを含む窒素ガスをガス導入口61、62から温度700℃で導入することにより、シリコン酸化膜72を成長させることが可能となる。
【0084】
または、TEOSガスをガス導入口63から導入し、次いで、高温のガスルーム66に導入して、熱分解させて、シリコン酸化膜72を形成することも可能である。このとき、この半導体層の表面は再結合準位を形成する。これを制御して減じるために、水を含む窒素ガスビームを800℃で照射して、CVD膜形成前に、熱シリコン酸化膜を予め形成すれば、経年劣化防止の要求品質対応に有効である。
【0085】
図12は、n型不純物拡散層の形成工程の模式図である。レジストの拡散層パタンの転写とドライエッチングの方法とを用いて、n型拡散層73を形成すべき場所のシリコン酸化膜72を開口させる。次に、ガス導入口63から不純物として、フォスフィンガス含む窒素ガスを導入し、ガス導入口61、62から窒素ガスビームを設定温度800℃で導入して、シリコン酸化膜72の開口部からリンを熱拡散させて、n型拡散層73を形成する。なお、別の方法、例えば、プラズマCVD法でリンを含むアモルファスシリコンを成長させて、これを本実施形態のガスビーム加熱方法でアニールしてリンを拡散させても良い。
【0086】
図13は、p型不純物拡散層の形成工程の模式図である。前述のシリコン酸化膜72の形成工程と同じ方法で、シリコン酸化膜72を追加成長させて、n型拡散層73の開口部をふさぐ。レジストのp型拡散層パタンの転写とドライエッチングの方法とを用いてp型拡散層74を形成すべき場所のシリコン酸化膜72を開口させる。次に、ガス導入口63から、不純物として、ジボランガス含む窒素ガスを導入し、さらに、ガス導入口61、62から窒素ガスビームを設定温度800℃で導入して、シリコン酸化膜72のp型拡散層開口部からボロンを熱拡散させてp型拡散層74を形成する。なお、別の方法、例えば、プラズマCVD法でボロンを含むアモルファスシリコンを成長させて、これを本実施形態のガスビーム加熱方法でアニールしてボロンを拡散させても良い。
【0087】
図14は、アルミニウム金属電極を形成する工程の模式図である。再び、レジストのn型拡散層73に接続する電極パタンを転写して、n型拡散層73の上の酸化膜をエッチング除去して、n型拡散層73とp型拡散層74とが接続する接続孔を酸化膜72に開口する。次に、アルミニウム膜をスパッタリングで成長させ、レジストの金属電極層パタンの転写とドライエッチングの方法とを用いて、アルミニウム電極75のパタンを形成する。
【0088】
図15は、ラテラルpin/i接合太陽電池の直列接続を示す図である。ラテラルpin/i接合81のn型拡散層73とラテラルpin/i接合82のp型拡散層74とがアルミニウム電極75で接続されている。ここで、太陽光80が照射されると、ラテラルpin/i接合81の発生電圧Vout1と、ラテラルpin/i接合82の発生電圧Vout2の和である電圧Vs(=Vout1+Vout2)がラテラルpin/i接合81のn型拡散層73とラテラルpin/i接合82のp型拡散層74との間に発生する。この接続を多段に行うことでさらに高い電圧を発生できる。
【0089】
図16は、表面に凹凸を加工したガラス基板90に、ラテラルpin/i接合太陽電池を作製した例である。この例では、凹凸の周期とラテラルpin/i接合太陽電池の周期を一致させてあるが、一致させなくても良い。また、この凹凸は太陽光を真性の半導体結晶層67に効率よく進入させる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の太陽電池装置の構造を用いることにより、ガラス基板の全面から太陽光を導入して、その全面にある真性半導体層の内部電界領域に電極層を介することなく太陽光を導入できる。この構造は電極を介して接続することなくエネルギーバンドギャップの違う材料を連続接続させる構造である。したがって、太陽光エネルギースペクトルを有効に利用できる。本発明の太陽電池装置の構造は、希少金属のインジュームを用いる透明電極を用いないため、資源の経済的な問題をも解決する。
【0091】
また、本発明の太陽電池装置の構造を可能にさせた製造方法は、安価なガラス基板を低温に保ったまま、結晶半導体を成長させる方法であるため、安価に太陽エネルギーを高い効率で電気に変えることができ、地球環境を守りながら、これまで以上のエネルギーを利用できる世界を実現する。
【0092】
以上、この発明の実施形態につき、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】pin接合ダイオード構造の模式図である。
【図2】XXで図1のpin接合ダイオードを分割した模式図である。
【図3】ZZ面で図1のpi接合とin接合を横方向に接合したダイオードの模式図である。
【図4】ラテラルpin/i接合ダイオード太陽電池の構造を模式的に示した図である。
【図5】バンドギャップの違う半導体真性層ラテラルpin/i接合太陽電池の構造を模式的に示した図である。
【図6】バンドギャップの違う半導体真性層ラテラルpin/i接合の模式図において、NN断面のバンドダイヤグラムを示す図である。
【図7】バンドギャップの違う半導体真性層ラテラルpin/i接合の模式図において、PP断面のバンドダイヤグラムを示す図である。
【図8】ガラス基板の表面だけを加熱する膜形成装置の構造を示した模式図である。
【図9】ラテラルpin/i接合太陽電池の製造工程において、ガラス基板上に真性の半導体結晶層Si(1−X)CXを成長させる工程を示した模式図である。
【図10】ラテラルpin/i接合太陽電池の製造工程において、真性半導体結晶層のエッチング分離工程を示した模式図である。
【図11】ラテラルpin/i接合太陽電池の製造工程において、分離した真性半導体結晶層へのシリコン酸化膜成長工程を示す模式図である。
【図12】ラテラルpin/i接合太陽電池の製造工程において、n型不純物拡散層の形成工程を示す模式図である。
【図13】ラテラルpin/i接合太陽電池の製造工程において、p型不純物拡散層の形成工程を示す模式図である。
【図14】ラテラルpin/i接合太陽電池の製造工程において、アルミニウム電極の形成工程を示す模式図である。
【図15】ラテラルpin/i接合太陽電池の直列接続の模式図である。
【図16】表面に凹凸のある基板に製造したラテラルpin/i接合太陽電池の模式図である。
【図17】従来のpnダイオードの断面模式図である。
【図18】従来のpinダイオードの断面模式図である。
【符号の説明】
【0094】
11・・・n型層
12・・・p型層
13・・・空乏層
14・・・真性アモルファス層
15・・・n型アモルファス層
16・・・p型アモルファス層
21・・・n型拡散層
22・・・p型拡散層
23・・・真性層
24・・・絶縁膜
25・・・ni接合
26・・・ip接合
30・・・透明基板
31・・・ラテラルpin/i接合
33・・・真性半導体層
34・・・太陽光で生成した電子
35・・・太陽光で生成した正孔
36・・・金属電極
40・・・透明基板
41・・・真性半導体層
42・・・真性半導体層
43・・・真性半導体層
51・・・光励起
60・・・ガラス基板
61、62・・・ガスビーム
63・・・加熱しないガス導入管
65・・・ガス加熱器
66・・・高温のガスルーム
67・・・真性の半導体結晶層
68・・・レジスト
71・・・酸化膜
72・・・シリコン酸化膜
73・・・n型拡散層
74・・・p型拡散層
75・・・アルミニウム膜
80・・・太陽光
81・・・ラテラルpin/i接合
82・・・ラテラルpin/i接合
90・・・表面に凹凸のあるガラス基板
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方の面に異なる仕事関数の材料、例えばp型あるいはn型の電極を形成し、他方の面に、真性の結晶を露出させて、太陽光を電極層を介さずに仕事関数の差で生じる内部電界層に導入させる太陽電池装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、異なる仕事関数を持つ材料の接合であるシリコンのpn接合を用いた太陽電池が一般的に使用されている。こうした構造の太陽電池で発生できる開放電圧は、フェルミレベルのエネルギー差、即ち、電子が受ける仕事関数の差に相当する電位差である。
【0003】
この種の太陽電池は、厚み200−400umのp型シリコン基板の表面に薄い(厚さ1um以下)n型拡散層が形成され、これを表面電極として用いる。こうした太陽電池では、シリコン基板が太陽光を吸収して電子・正孔の電荷が発生するが、それが拡散して電極に到達したものが発電に寄与するため、電気エネルギーに変換できるかどうかは、その太陽光の吸収と電荷の発生場所に依存して決まる。
【0004】
図17に、典型的な従来のシリコンpn接合の太陽電池の断面模式図を示している。なお、ここでは、表面の透明電極と裏面の金属電極は示してない。図17に示すように、p型層12の表面にn型層11が形成され、これとp型層12との界面に空乏層13が形成され、空乏層13には、内部電界が発生する。また、太陽光は、n型層11の表面から導入される。
【0005】
太陽光は、一般的に、波長に依存する屈折率の違う材料の界面で反射される。また、n型層11には、多数キャリアの電子が存在する。このために、この層の表面は、反射面1となり、太陽光の反射が起きる。これによって、進入太陽光1aの強度は反射面1で減衰する。また、この反射面1を通過した進入太陽光1bは、減衰しながら反射面2に到達する。しかしながら、空乏層13とn型層11との多数キャリアの密度が違うために屈折率が異なり、反射を起こして、進入太陽光1bは反射面2で減衰する。
【0006】
また、空乏層13を通過した進入太陽光1cは空乏層13とp型層12の界面である反射面3に到達して、屈折率の違いのために反射面3で反射されて減衰する。一方で、反射面3を通過した進入太陽光はp型層12内部に到達する。以上のように、太陽光に対する屈折率の違う層の界面で太陽光の反射がおきるため、進入太陽光は反射面1、2、3で反射による減衰とシリコンのバンド間遷移の吸収による減衰を伴いながらp型層に到達する。
【0007】
こうした屈折率の違いによる反射を利用するために、従来の太陽電池では、基板または基板上の電極に凹凸を形成して太陽光を反射させることによって長い光路長を確保し、光電変換効率を向上させていた(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
空乏層13が太陽光を吸収すると電子と正孔が生成される。生成された電子と正孔は、空乏層13内の内部電界で加速されて、n型層11とp型層12に到達して電圧を生じさせて電気エネルギーを作る。
【0009】
さらに、n型層11の少数キャリア(正孔)拡散長Lpとp型層12の少数キャリア(電子)拡散長Lnの範囲で太陽光が吸収されて生成された正孔と電子も拡散により空乏層13に到達して、空乏層13の電界で加速されて移動し、電気エネルギーに変換される。
【0010】
一般に、n型層11は、高ドープするため、電子や正孔の再結合時間が短く、Lpは小さい。加えて、光減衰もあるため、この層は薄く設計する必要がある。つまり、発電効率を上げるには、n型層11を通過させることなく、太陽光を空乏層13にまで導くことが望ましい。
【0011】
発電に寄与する太陽光は、空乏層13とそれを挟むLnとLpの領域で吸収される太陽光であることを述べたが、半導体が結晶であるときには、LnとLpとは一定の値を持つため、この領域は、発電に寄与できる領域として働く。しかし、半導体層がアモルファスであったり、結晶欠陥の多いポリ結晶であると、少数キャリアのLnとLpは短くなり、発電に寄与できる領域は狭くなる。
【0012】
これを解決させるための構造がpinダイオード接合の構造である。この断面構造を図18に示す。このpinダイオード接合は、真性アモルファス層14をn型アモルファス層15とp型アモルファス層16とで挟む構造になっている。電極としてのn型アモルファス層15とp型アモルファス層16層は、少数キャリアライフタイムが短いために、発電に寄与できない層であり、もっぱら、内部電界のある真性アモルファス層14で吸収される太陽光が発電に寄与する。そのため、発電効率を上げるにはn型アモルファス層15を通過させることなく太陽光を真性アモルファス層14に導くことが望ましい。
【特許文献1】特開2006−19481号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ここで、太陽光の反射に伴う課題を整理する。反射面1で生じる進入太陽光1aの反射は、低抵抗拡散層の多数キャリアに依存する反射である。また、その反射は層の厚みにも依存する。可視光の波長が600−400nmとすると、n型層11の厚みが1um程度あるいは、それ以下で干渉が生じる。実際、この干渉を利用して層の厚みを測定することが可能である。このように、反射と進入(透過)は、n型層11のキャリア濃度と厚みに依存して生じるが、高い光電気変換効率を得るためには、この層を通過させずに、高抵抗の空乏層13または真性アモルファス層14に太陽光を導くことが必要である。
【0014】
また、進入太陽光1bの反射はn型層11と空乏層13との界面である反射面2またはn型層11と真性の高抵抗である真性アモルファス層14との界面である反射面2で生じる。この反射により、進入太陽光1bの強度は減衰する。
【0015】
空乏層13とp型層12との界面である反射面3、または、真性の高抵抗である真性アモルファス層14とp型アモルファス層16との界面である反射面3では、進入太陽光1cの反射が生じる。このとき、反射太陽光は空乏層13また真性アモルファス層14に戻るため、進入太陽光1cの電気エネルギー変換の損失は軽減される。したがって、空乏層13または、真性アモルファス層14に至るまでの太陽光の減衰を小さくするには、太陽光を電極層を介さずに直接に空乏層13、または真性アモルファス層14に導くことが必要である。
【0016】
そこで、本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、電極層を介さず太陽光を空乏層あるいは真性層に導く構成を採用するとともに、これを安価なガラス基板で実現する太陽電池装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、上記した課題を解決するために以下の事項を提案している。
【0018】
(1)本発明は、透明非晶質基板上に真性の半導体層を形成させ、当該半導体層表面に仕事関数の異なる材料を接合させた太陽電池装置を提案している。
なお、本発明で用いた「真性(i型)の半導体」とは、実際に製造されているpinダイオードの表現で使用されているように、p型半導体とn型半導体とに対比させて用いた言葉であり、p型またはn型の不純物を全く含まない、または、フェルミレベルがバンドギャップの中心にあるという理論的な狭義の「真性の半導体」を意味するものではなく、p型またはn型の一方に、導電型を決定させる不純物ドーピングを行っていない半導体材料の意味で用いているものである。
【0019】
(2)本発明は、(1)の太陽電池装置について、前記異なる材料が不純物を拡散させたp型とn型の導電型の拡散層であり、互いに隣接または隔離して形成されていることを特徴とする太陽電池装置を提案している。
【0020】
(3)本発明は、(1)または(2)の太陽電池装置について、前記透明非晶質基板がガラスまたは樹脂またはプラスチックからなることを特徴とする太陽電池装置を提案している。
【0021】
(4)本発明は、(1)から(3)の太陽電池装置について、前記透明非晶質基板がガラスまたは樹脂またはプラスチックの上にそれらと異なる透明な薄膜をのせた基板であることを特徴とする太陽電池装置を提案している。
【0022】
(5)本発明は、(1)から(4)の太陽電池装置について、前記半導体層は真性のシリコンであることを特徴とする太陽電池装置を提案している。
【0023】
(6)本発明は、(1)から(4)の太陽電池装置について、前記半導体層はシリコンと炭素とを含むことを特徴とする太陽電池装置を提案している。
【0024】
(7)本発明は、(1)から(6)の太陽電池装置について、前記半導体層は前記基板に近いほどエネルギーバンドギャップが大きくなる組成を有することを特徴とする太陽電池装置を提案している。
【0025】
(8)本発明は、(1)から(7)の太陽電池装置について、前記透明非晶質基板側から前記真性の半導体層に太陽光を導入することを特徴とする太陽電池装置を提案している。
【0026】
(9)本発明は、支持台上に載置された前記基板の表面に、該基板の支持台温度より高温に加熱したガスを前記基板表面に対向させて置かれたガス射出口からライン状に吹き付けて表面を加熱することを特徴とする太陽電池装置の製造方法を提案している。
【0027】
(10)本発明は、(9)の太陽電池装置の製造方法について、前記ガスは窒素、酸素、水素,Ar,Heのいずれか、またはそれらの混合ガスを含むことを特徴とする太陽電池装置の製造方法を提案している。
【0028】
(11)本発明は、(9)または(10)の太陽電池装置の製造方法について、支持台上に載置された前記基板の表面に、基板の支持台温度より高温に加熱したガスを基板表面に対向させて置かれた異なる2つ以上のガス射出口からライン状に吹き付けて表面を加熱し、前記基板上に半導体層を形成させることを特徴とする太陽電池装置の製造方法を提案している。
【0029】
(12)本発明は、(11)の太陽電池装置の製造方法について、異なるガス射出口に挟まれたガス射出口からシリコンあるいはカーボン、または両方を含むガスが導入されることを特徴とする太陽電池装置の製造方法。
【0030】
(13)本発明は、(9)または(10)の太陽電池装置の製造方法について、支持台上に載置された前記基板の上から、該基板の支持台温度より高温に加熱したガスを、該基板に対向させて置かれた異なる2つ以上のガス射出口からライン状に吹き付けて表面に絶縁膜を成長させることを特徴とする太陽電池装置の製造方法を提案している。
【0031】
(14)本発明は、(13)の太陽電池装置の製造方法について、前記異なる2つ以上のガス射出口のうち、一のガス射出口から射出される前記ガスがシラン(SiH4、Si2H6)またはハロゲン化シランを含み、他のガス射出口から射出されるガスが、これと反応するN2O,NO2、水、酸素を含む酸化ガス、NH3を含む窒化ガスのいずれか、または両方を含み、基板上に絶縁膜を成長させることを特徴とする太陽電池装置の製造方法を提案している。
【0032】
(15)本発明は、(11)の太陽電池装置の製造方法について、酸素または水を含む酸化性ガスを導入して、前記半導体層の表面を酸化させることにより酸化膜を形成することを特徴とする太陽電池装置の製造方法を提案している。
【0033】
(16)本発明は、(9)または(10)の太陽電池装置の製造方法について、不純物を含むガスを導入して、該不純物を拡散させて拡散層を形成することを特徴とする太陽電池装置の製造方法を提案している。
【0034】
(17)本発明は、(16)の太陽電池装置の製造方法について、前記不純物が半導体層をn型またはp型にさせる元素であることを特徴とする太陽電池装置の製造方法を提案している。
【0035】
(18)本発明は、(9)から(17)の太陽電池装置の製造方法について、前記ガス射出口から射出されるガスが前記支持台上に載置された前記基板の表面に、ほぼ垂直に吹き付けられることを特徴とする太陽電池装置の製造方法を提案している。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、高温の加熱ガスビームをガラス基板やプラスチック基板にほぼ垂直に衝突させるように吹き付けることで、基板の表面だけを高温にでき、基板内部とその裏面とを一定の低い温度に維持しながら、基板より高い温度で、表面のみを加熱処理して不純物熱拡散をすること、および、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜、ポリシリコンなどの高温熱CVD材料を成長させる製造方法を用いることが可能となるという効果がある。
【0037】
また、上記製造方法により、真性半導体層を成長させn型拡散層電極とp型拡散層電極とを表面に離間して配置させたラテラルpin/i接合構造を持った太陽電池をガラス基板または、その軟化点(300℃)より低温に保持する必要のある基板のうえに製造することが可能となるという効果がある。
【0038】
さらに、太陽光が、ガラス基板から電極層を介さずに、真性半導体層に直接に、当たるため損失が低減されて、高い変換効率の太陽電池が製造可能であるという効果がある。また、真性半導体層をバンドギャップの違う層の階段型接合や傾斜組成にすることも可能であり、太陽光スペクトルを幅広く利用できる構造を可能になるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて、詳細に説明する。
なお、本実施形態における構成要素は適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、また、他の既存の構成要素との組合せを含む様々なバリエーションが可能である。したがって、本実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【0040】
<太陽電池装置の構造>
すでに、図17および図18を用いて、説明したように、太陽光の損失を小さくするためには、n型層11の表面の反射面1とn型層11と空乏層13または真性アモルファス層14との界面の反射面2、空乏層13または真性アモルファス層14とp型層12またはp型アモルファス層16との界面の反射面3を減らすまたは、無くすことが必要である。なお、以後、内部電界の存在する空乏層13または真性アモルファス層14の両方をキャリアを拡散層に集める内部電界領域と総称する場合がある。
【0041】
ここで、図1に、従来のpinダイオード構造の光通信用受光素子の構造を示す。図1において、真性層23は、内部電界領域である。前述のように、図1に示す電極やn型拡散層21を通して太陽光を入射させると、n型拡散層21の表面の反射面、n型拡散層21と真性層23との界面の反射面、真性層23とp型拡散層22との界面の反射面による太陽光の減衰が避けられないため、これを回避するためには、真性層23に太陽光を直接導入する必要がある。
【0042】
その一つの方法として、図1の紙面に垂直な方向から太陽光を導入させるが考えられるが、この場合には、真性層23の断面積が小さく、通信用の受光素子では、その目的を達成できても、太陽電池には応用できないという問題がある。
【0043】
そこで、これを太陽電池に応用する本発明について、図2および図3を用いて、詳細に説明する。
【0044】
まず、図1に示したpinダイオード構造の真性層23をXX方向で分離したものを図2に示す。図2において、左側は、n型拡散層21と真性層23(i層)のni接合25、右側はi層とp型拡散層22のip接合26である。
【0045】
次に、分離したもの同士をZZの端面で接合した構造を図3に示す。こうすることにより、真性層23の上にn型拡散層21とp型拡散層22とが真性層23を挟んで隔離して配置された構造が出来上がる。
【0046】
図4は、透明基板30上に、図3で示したように、真性半導体層33を形成し、この真性半導体層33の上にn型拡散層21とp型拡散層22とを真性半導体層33を挟んで隔離して配置したものである。この図によれば、太陽光を下側から直接に真性半導体層33に当てることが可能になる。
【0047】
すなわち、本実施形態の太陽電池装置は、透明非晶質基板(透明基板30)上に真性の半導体層(真性半導体層33)を形成させ、当該半導体層表面に仕事関数の異なる材料を接合させた構造になっている。また、前記異なる材料がp型とn型の不純物を拡散させた導電型の拡散層(n型拡散層21、p型拡散層22)であり、互いに隣接または隔離して形成されていることを特徴とする。
【0048】
こうした構造によれば、従来、光強度の減衰の原因となっていた反射面1、2が存在しない構造を実現することができる。なお、従来の反射面3は存在しているが、n型拡散層21およびp型拡散層22が隔離して存在しているので、その割合が相対的に減少する。そのため、反射面3により反射した太陽光は、もう一度、電界領域のある真性半導体層33に再進入するので、再び発電に寄与できる。ここで、この構造を真性半導体層33の上にn型拡散層21とp型拡散層22とが離間して配置された、ラテラルpin/i構造と呼ぶ。
【0049】
次に、ラテラルpin/i構造のi層に太陽光を当てたときの動作を説明する。
図4は、ラテラルpin/i接合太陽電池の構造の模式図である。透明基板30の上にラテラルpin/i接合31が構成されている。図4に示すラテラルpin/i接合太陽電池では、太陽光が、真性半導体層33の中に直接に進入する。そして、真性半導体層33で電子34と正孔35が生成される。
【0050】
太陽光で生成した電子34と正孔35とは、それぞれ電界領域の電界で加速されてn型拡散層21とp型拡散層22とによって集められて、電圧が両拡散層の間に発生する。そして、絶縁膜24の窓を介してn型拡散層21とp型拡散層22とに付けられた金属電極36からその電圧を取り出して用いる。なお、図4においては、n型拡散層21とp型拡散層22は、互いに離間させて配置したが、pn接合を形成するように隣接していても良い。
【0051】
また、真性半導体層33は、結晶であっても、多結晶、アモルファスであってもよく、有機無機の材料の種類に依らず半導体であれば良く、単一の半導体であっても、複数の種類を重ね合わせても、または傾斜して組成を変化させても良い。特に、製造技術の産業成熟度から、真性のシリコンまたはシリコンと炭素を含むものが望ましい。
【0052】
ただし、組成を変化させるときは、太陽光を入射させる側、すなわち、透明基板30に近いほどエネルギーバンドキャップが大きいことが望ましい。これは太陽光のスペクトルのうち、高いエネルギーの太陽光が、高いエネルギーバンドギャップの半導体で吸収され、低いエネルギーの太陽光は、その層を通過して深い位置にある低エネルギーバンドギャップの半導体で吸収されるため、広いスペクトル領域の太陽光を利用できるからである。
【0053】
図5に、バンドギャップの違う真性半導体層41、42、43のラテラルpin/i接合31の太陽電池の構造を模式的に示す。ここで、真性半導体層41、42、43のバンドギャップをそれぞれEg1、Eg2、Eg3とすると、これらの間には、Eg1<Eg2<Eg3の関係が成立し、太陽光が入射する透明基板40に向かってバンドギャップが大きくなっている。
【0054】
ここで、太陽光を吸収して生成した電子34は、ギャップエネルギーの高い真性半導体層43からギャップエネルギーの低い真性半導体層41に向かってできる伝導帯の傾斜に沿って、n型拡散層21に集まる。一方、太陽光を吸収して生成した正孔35は、ギャップエネルギーの高い真性半導体層43から低い真性半導体層41に向かってできる価電子帯の傾斜に沿って、p型拡散層22に集まる。このことを図6に示すバンドダイヤグラムで説明する。
【0055】
図5のおけるNN断面とPP断面のバンドダイヤグラムをそれぞれ図6および図7に示す。
図6および図7に示すように、透明基板40の上に、バンドギャップEg3、Eg2、Eg1の真性半導体層43、42、41が積層されている。図6に示すように、NN断面においては、透明基板40の側から太陽光が入射して光励起51により、電子34と正孔35を生成する。生成された電子34は伝導帯に沿って、電位差をくだりn型拡散層21に至り、金属電極にマイナスの電荷を運ぶ。一方、価電子帯の正孔35は、真性半導体層41を経由して電位差を上がりp型拡散層22に至り、プラスの電荷を金属電極に運ぶ。
【0056】
また、図7に示すように、pp断面においては、透明基板40の側から太陽光が入射して光励起51により電子34と正孔35を生成する。生成された正孔35は、価電子帯に沿って電位差を上りp型拡散層22に至り、金属電極にプラスの電荷を運ぶ。一方、伝導帯の電子34は、真性半導体層41を経由して電位差を下り、n型拡散層21に至り、マイナス電荷を金属電極に運ぶ。
【0057】
従って、太陽光が入射する側のエネルギーギャプの大きい真性半導体は、電子34と正孔35のエミッタとして作用する。また、n型拡散層21およびp型拡散層22を通過した太陽光およびn型拡散層21とp型拡散層22との間を通過した太陽光は、金属電極で反射されて再び電界領域で電子34と正孔35を発生させて、発電に寄与する。
【0058】
以上、説明したように、本発明に係る太陽電池装置の構造によれば、従来にあった拡散層を通過させて、太陽光を入射するときの反射による減衰をラテラルpin/i接合31を採用することにより防止することができる。また、この構造を採用したことにより、従来のpn接合構造やpin接合構造ではできなかった電子と正孔との真性半導体エミッタ層を太陽光が入射する側の全部の面に配置することができる。さらに、エミッタ層として、太陽光の入射する方向に、エネルギーバンドギャップが大きくなる組成の材料を設けることにより、太陽光の幅広いスペクトルを有効に発電に寄与させる構造が可能なる。
【0059】
<太陽電池装置の製造方法>
異なる仕事関数を持つp型拡散層とn型拡散層とを片側表面に横方向に並べてアレイ状に配置した本構造は、太陽光を透過させる必要のあるp型拡散層とn型拡散層の層を縦方向に重ねた従来構造では実現しえなかった性能を可能にさせる。
【0060】
即ち、異なる仕事関数の電極材料として太陽光を透過させなくてもよいため、例えば、金属を選ぶことも本構造では、可能になる。ここで、半導体と金属の接合をショットキー接合と呼ぶが、必要な接合は、このショットキー接合でも良い。
【0061】
したがって、真性の半導体に異なる仕事関数を持つ材料を接合させると、フェルミレベルの違いが無くなるまで、電子の移動が半導体を通して起こり、原理的には、二つの材料の仕事関数の差に相当する電位差が当該材料に生じる。なお、半導体と接合させる電極材料としては、製造方法が許す範囲で仕事関数の異なる材料を選ぶことが可能となる。ただし、異なる仕事関数の金属のショットキー接合による発生電位差は、表面の界面準位に依存したバンド湾曲に依存する。この界面準位の制御は製造上難しいために、半導体内部に接合を作る安定したp型とn型の拡散層を形成する方法が好ましい。
【0062】
ここで、拡散層の形成は高温を必要とするため、以下にその方法について説明する。一般に、加熱したガスを基板の表面に垂直に吹き付けると、ガスの温度を基板に伝えることができる。ここで、高温ガスを絞ってビーム状にして基板と平行でなく垂直に入射または衝突させると、淀み層としての停滞層が薄くなる。または、相対的に実質上停滞層が形成されない程度にすることができる。ここで、停滞層が薄いと、効率よくガスの温度を基板に伝えられる。別の言い方をすると、基板の表面は垂直に入射する高温ガスビームから効率よく熱を受け取るので表面だけを加熱できる。
【0063】
また、基板裏面が冷却されていると、一定の熱容量のヒートシンクをもっているため、温度が上昇して、ガスの温度に到達するのは、基板表面に限定される。この原理を用いると、基板表面のみを加熱して基板の裏面と内部は一定温度以下に維持できる。
【0064】
この状態を実現した構造例を模式的に図8に示す。なお、以下では、透明基板の一例として、ガラス基板を例にとって説明するが、これに限らず、樹脂基板やプラスチック基板等を用いてもよい。
【0065】
図8の構造では、ガラス基板60に加熱ガスビーム61、62がほぼ垂直に衝突入射する。ガラス基板60は、冷却された支持台(図示せず)に保持されていて、基板裏面温度は冷却材により一定に保持される。
【0066】
一方、ガス加熱器65の加熱電力制御により、ガスビーム61、62の温度は、300℃以上の高温にすることができる。ガス加熱器65に通すガスは窒素、酸素、水素、ヘリウム、アルゴン、などから適宜、一種類を選択することも可能であるし、二つ以上混合して用いることもできる。ガスビーム61、62の温度が800℃のとき、シリコン半導体プロセスで行う不純物の熱拡散をシリコンに対して行うことが可能である。また、水分の雰囲気があるとき、シリコン表面の熱酸化も可能になる。酸素を当該ガスとして選択するときは加熱器65は酸化されて燃えない材料で構成するかまたは酸化されて気体にならない材料で構成する必要がある。
【0067】
さらに、ポリシリコンは、シランの600℃熱分解から成長可能であり、シランとともに酸化ガスとして酸化窒素N2Oや水を導入すると、熱反応の酸化膜の成長が、ガスビーム温度700ないし800℃で可能である。また、アンモニアNH3ガスをシランとともに導入すると、シリコン窒化膜がガスビーム温度700℃で可能である。なお、シランに代えて、ハロゲン化シラン(SiH2Cl2等)を用いてもよい。
【0068】
ここで、図8の構造とそれぞれの役割を説明する。
図8においては、半導体の層を成長させるのに適するよう加熱ガスビーム61と62とが加熱せずに導入するガス導入管63を挟むように配置されている。なお、ガスビームで表面のみを加熱するだけのプロセスはとくに構造を選ばないため、ビームは一つだけでも良い。
【0069】
膜を成長させるためには、熱を閉じ込めて、高温の空間(ルーム)を作り出して、そのルームに熱分解すべきガスを長時間停滞させ、反応分解種を生成させて、効率よく基板にそれを補給できる構造が必要である。そのためには、ルームを作るために、吹き付ける高温の線状ビームのガスを2箇所から射出することが有効である。ここで、加熱ガスビーム61と62とで囲まれた空間である高温ガスで囲まれたルームを高温ガスルーム66と呼ぶ。
【0070】
加熱しないガス導入管63から、例えば、シランを選び、導入すると、高温ガスルーム66で熱分解が進行して、活性種が生成されて、停滞層を拡散してシリコン膜をガラス基板60上に成長させる。また、加熱ビーム61と62に酸化反応するガスを含むように選ぶと、この高温ガスルーム66に停滞したシランと互いに熱分解反応を起こし、酸化膜が成長する。
【0071】
気相中に異種物質の核がなければ、一定濃度以下では、自然核形成は起こさない。高温ガスルーム66の下には、温度の低い異種物質である巨大核としてのガラス基板60がある。異種物質である基板表面は温度が低いので、核成長から始まり膜の成長が起きる。これが、ガラス基板60の温度を低く維持しながら、基板の温度より高い温度のガスを接触させて熱CVDを基板表面で起こさせる原理である。
【0072】
ガス導入管63からシランとともに、例えば、アセチレンC2H2を導入すると、シリコンカーバイドやシリコンとの混晶の多結晶膜を成長できる。また、ガラス基板60に近い側をバンドギャップの大きいシリコンカーバイドの組成にし、階段的にあるいは、傾斜させて組成をシリコンにまで変化させると、表面はシリコン、ガラス基板60側には、バンドギャップの大きいシリコンカーバイドという組成の真性半導体層を成長させることができる。ただし、このとき、ガラス基板から金属不純物が拡散するのを防止するために上に述べた方法で酸化膜を成長させておくことが望ましい。なお、導電性酸化膜としては、酸化亜鉛等の透明なものであればよい。また、別な方法、例えば、スパッタリングの方法で金属酸化物をつけることも不純物拡散防止に有効であるが過剰な金属が含まれるときは、上に述べた本発明の酸化方法で、それを酸化して透明度を改善することが可能である。
【0073】
以上、説明したように、本発明に係る太陽電池装置の製造方法によれば、高温の加熱ガス61、62をガラス基板60にほぼ垂直に衝突させるように吹き付けることで、基板60の表面だけを高温にでき、基板内部と裏面を冷却効果に応じた一定の温度に維持しながら、基板より高い温度で表面のみを加熱処理して不純物熱拡散をすること、およびシリコン酸化膜やシリコン窒化膜、ポリシリコンなどの高温熱CVD材料を成長させる製造方法を用いることが可能である。
【0074】
したがって、この製造方法により、ラテラルpin/i接合構造を持った太陽電池装置をガラス基板またはその軟化点(300℃)より低温に保持する必要のある透明な非晶質基板の上に製造することが可能となる。
【0075】
<ラテラルpin/i接合太陽電池の製造方法>
上記では、本発明に係る太陽電池装置の構造およびその製造方法について、説明したが、以下では、本発明の実施形態として図面に基づいて、ラテラルpin/i接合太陽電池の製造方法に関してさらに詳細に説明する。なお、複数添付する図面中、同一または相当部分には同一符号を付している。
【0076】
図9から図14は、ラテラルpin/i接合太陽電池の製造方法を模式的に示した図である。
図9は、ガラス基板60上に真性の半導体結晶層67(Si(1−X)CX)を成長させる工程の模式図である。なお、ガラス基板60には金属不純物を含むことから、この拡散防止のために、酸化膜71を100nm成長させている。
【0077】
まず、ガス導入口63からシランを導入するとともに、酸化性のガスN2Oガスを含む窒素ガスをガス導入口61、62から導入する。なお、これは、プラズマCVD酸化膜でもよい。
【0078】
次に、ガラス基板60の支持台の表面温度を300℃に設定し、次いで、ガス加熱器65の設定温度を650℃から750℃の範囲で設定して、窒素ガスビーム(N2ガスビーム)61、62を基板に衝突させて、高温のガスルーム66を形成する。同時に1%に窒素で希釈したシランSiH4とアセチレンC2H2とを石英のガス導入口63を通して加熱することなく、ガス導入口から射出される窒素ガスビーム61と62とに挟まれた空間の高温のガスルーム66に射出する。なお、シランSiH4とアセチレンC2H2を例示したのは、熱分解温度がその他のガスに比べて低いためである。
【0079】
なお、高いエネルギーバンドギャップ値を持つSiCを成長性させるときは、設定温度を750℃とする。ここで、シリコンカーバイドは、Si−Cの結合が安定なために、酸化膜上には、Si−C−Si−Cというように、結合が膜厚方向に連続する性質が強い。面心立方結晶では、この方向は<111>軸であるため、<111>優先配向の膜となる性質がある。
【0080】
こうした性質があるため、多結晶の軸をそろえる目的の場合には、SiCの膜を最初に成長させるのが適している。ただし、シリコン酸化膜の上にSiCの核成長が起きにくい性質があるため、最初に、シランだけでシリコン膜を核成長させることが容易にSiC成長を起こさせるのには、好適である。また、シリコンの多結晶層を成長させるときは、650℃に設定する。そして、アセチレンの割合を減じながら、設定温度を750℃と650℃間で変化させて、厚み方向に組成が変化する膜Si(1−X)CXの多結晶で真性の半導体結晶層67をガラス基板60の上に300nm成長させる。
【0081】
このとき、ガラス基板60に近い側は、SiCの組成が主であり、表面は、シリコンの多結晶である。アセチレンを導入しないときは、多結晶のシリコン膜が成長する。ガラス基板60を横方向に往復運動させることで、成長領域を広げることが可能である。
【0082】
図10は、多結晶で真性の半導体結晶層のエッチングによる分離の工程の模式図を示している。ここでは、レジスト68を多結晶で真性の半導体結晶層67の上面に塗布して、レジスト分離パタンを露光現像で作り、ドライエッチングの方法を用いて、多結晶で真性の半導体結晶層67を分離する。
【0083】
図11は、分離した多結晶で真性の半導体結晶層67への絶縁膜成長の工程の模式図を示している。ガス導入口63からシランを導入するとともに、酸化性のガスN2Oガスを含む窒素ガスをガス導入口61、62から温度700℃で導入することにより、シリコン酸化膜72を成長させることが可能となる。
【0084】
または、TEOSガスをガス導入口63から導入し、次いで、高温のガスルーム66に導入して、熱分解させて、シリコン酸化膜72を形成することも可能である。このとき、この半導体層の表面は再結合準位を形成する。これを制御して減じるために、水を含む窒素ガスビームを800℃で照射して、CVD膜形成前に、熱シリコン酸化膜を予め形成すれば、経年劣化防止の要求品質対応に有効である。
【0085】
図12は、n型不純物拡散層の形成工程の模式図である。レジストの拡散層パタンの転写とドライエッチングの方法とを用いて、n型拡散層73を形成すべき場所のシリコン酸化膜72を開口させる。次に、ガス導入口63から不純物として、フォスフィンガス含む窒素ガスを導入し、ガス導入口61、62から窒素ガスビームを設定温度800℃で導入して、シリコン酸化膜72の開口部からリンを熱拡散させて、n型拡散層73を形成する。なお、別の方法、例えば、プラズマCVD法でリンを含むアモルファスシリコンを成長させて、これを本実施形態のガスビーム加熱方法でアニールしてリンを拡散させても良い。
【0086】
図13は、p型不純物拡散層の形成工程の模式図である。前述のシリコン酸化膜72の形成工程と同じ方法で、シリコン酸化膜72を追加成長させて、n型拡散層73の開口部をふさぐ。レジストのp型拡散層パタンの転写とドライエッチングの方法とを用いてp型拡散層74を形成すべき場所のシリコン酸化膜72を開口させる。次に、ガス導入口63から、不純物として、ジボランガス含む窒素ガスを導入し、さらに、ガス導入口61、62から窒素ガスビームを設定温度800℃で導入して、シリコン酸化膜72のp型拡散層開口部からボロンを熱拡散させてp型拡散層74を形成する。なお、別の方法、例えば、プラズマCVD法でボロンを含むアモルファスシリコンを成長させて、これを本実施形態のガスビーム加熱方法でアニールしてボロンを拡散させても良い。
【0087】
図14は、アルミニウム金属電極を形成する工程の模式図である。再び、レジストのn型拡散層73に接続する電極パタンを転写して、n型拡散層73の上の酸化膜をエッチング除去して、n型拡散層73とp型拡散層74とが接続する接続孔を酸化膜72に開口する。次に、アルミニウム膜をスパッタリングで成長させ、レジストの金属電極層パタンの転写とドライエッチングの方法とを用いて、アルミニウム電極75のパタンを形成する。
【0088】
図15は、ラテラルpin/i接合太陽電池の直列接続を示す図である。ラテラルpin/i接合81のn型拡散層73とラテラルpin/i接合82のp型拡散層74とがアルミニウム電極75で接続されている。ここで、太陽光80が照射されると、ラテラルpin/i接合81の発生電圧Vout1と、ラテラルpin/i接合82の発生電圧Vout2の和である電圧Vs(=Vout1+Vout2)がラテラルpin/i接合81のn型拡散層73とラテラルpin/i接合82のp型拡散層74との間に発生する。この接続を多段に行うことでさらに高い電圧を発生できる。
【0089】
図16は、表面に凹凸を加工したガラス基板90に、ラテラルpin/i接合太陽電池を作製した例である。この例では、凹凸の周期とラテラルpin/i接合太陽電池の周期を一致させてあるが、一致させなくても良い。また、この凹凸は太陽光を真性の半導体結晶層67に効率よく進入させる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の太陽電池装置の構造を用いることにより、ガラス基板の全面から太陽光を導入して、その全面にある真性半導体層の内部電界領域に電極層を介することなく太陽光を導入できる。この構造は電極を介して接続することなくエネルギーバンドギャップの違う材料を連続接続させる構造である。したがって、太陽光エネルギースペクトルを有効に利用できる。本発明の太陽電池装置の構造は、希少金属のインジュームを用いる透明電極を用いないため、資源の経済的な問題をも解決する。
【0091】
また、本発明の太陽電池装置の構造を可能にさせた製造方法は、安価なガラス基板を低温に保ったまま、結晶半導体を成長させる方法であるため、安価に太陽エネルギーを高い効率で電気に変えることができ、地球環境を守りながら、これまで以上のエネルギーを利用できる世界を実現する。
【0092】
以上、この発明の実施形態につき、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】pin接合ダイオード構造の模式図である。
【図2】XXで図1のpin接合ダイオードを分割した模式図である。
【図3】ZZ面で図1のpi接合とin接合を横方向に接合したダイオードの模式図である。
【図4】ラテラルpin/i接合ダイオード太陽電池の構造を模式的に示した図である。
【図5】バンドギャップの違う半導体真性層ラテラルpin/i接合太陽電池の構造を模式的に示した図である。
【図6】バンドギャップの違う半導体真性層ラテラルpin/i接合の模式図において、NN断面のバンドダイヤグラムを示す図である。
【図7】バンドギャップの違う半導体真性層ラテラルpin/i接合の模式図において、PP断面のバンドダイヤグラムを示す図である。
【図8】ガラス基板の表面だけを加熱する膜形成装置の構造を示した模式図である。
【図9】ラテラルpin/i接合太陽電池の製造工程において、ガラス基板上に真性の半導体結晶層Si(1−X)CXを成長させる工程を示した模式図である。
【図10】ラテラルpin/i接合太陽電池の製造工程において、真性半導体結晶層のエッチング分離工程を示した模式図である。
【図11】ラテラルpin/i接合太陽電池の製造工程において、分離した真性半導体結晶層へのシリコン酸化膜成長工程を示す模式図である。
【図12】ラテラルpin/i接合太陽電池の製造工程において、n型不純物拡散層の形成工程を示す模式図である。
【図13】ラテラルpin/i接合太陽電池の製造工程において、p型不純物拡散層の形成工程を示す模式図である。
【図14】ラテラルpin/i接合太陽電池の製造工程において、アルミニウム電極の形成工程を示す模式図である。
【図15】ラテラルpin/i接合太陽電池の直列接続の模式図である。
【図16】表面に凹凸のある基板に製造したラテラルpin/i接合太陽電池の模式図である。
【図17】従来のpnダイオードの断面模式図である。
【図18】従来のpinダイオードの断面模式図である。
【符号の説明】
【0094】
11・・・n型層
12・・・p型層
13・・・空乏層
14・・・真性アモルファス層
15・・・n型アモルファス層
16・・・p型アモルファス層
21・・・n型拡散層
22・・・p型拡散層
23・・・真性層
24・・・絶縁膜
25・・・ni接合
26・・・ip接合
30・・・透明基板
31・・・ラテラルpin/i接合
33・・・真性半導体層
34・・・太陽光で生成した電子
35・・・太陽光で生成した正孔
36・・・金属電極
40・・・透明基板
41・・・真性半導体層
42・・・真性半導体層
43・・・真性半導体層
51・・・光励起
60・・・ガラス基板
61、62・・・ガスビーム
63・・・加熱しないガス導入管
65・・・ガス加熱器
66・・・高温のガスルーム
67・・・真性の半導体結晶層
68・・・レジスト
71・・・酸化膜
72・・・シリコン酸化膜
73・・・n型拡散層
74・・・p型拡散層
75・・・アルミニウム膜
80・・・太陽光
81・・・ラテラルpin/i接合
82・・・ラテラルpin/i接合
90・・・表面に凹凸のあるガラス基板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明非晶質基板上に真性の半導体層を形成させ、当該半導体層表面に仕事関数の異なる材料を接合させた太陽電池装置。
【請求項2】
前記異なる材料が不純物を拡散させたp型とn型の導電型の拡散層であり、互いに隣接または隔離して形成されていることを特徴とする請求項1記載の太陽電池装置。
【請求項3】
前記透明非晶質基板がガラスまたは樹脂またはプラスチックからなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の太陽電池装置。
【請求項4】
前記透明非晶質基板がガラスまたは樹脂またはプラスチックの上にそれらと異なる透明な薄膜をのせた基板であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の太陽電池装置。
【請求項5】
前記半導体層は真性のシリコンであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の太陽電池装置。
【請求項6】
前記半導体層はシリコンと炭素とを含むことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の太陽電池装置。
【請求項7】
前記半導体層は前記基板に近いほどエネルギーバンドギャップが大きくなる組成を有することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の太陽電池装置。
【請求項8】
前記透明非晶質基板側から前記真性の半導体層に太陽光を導入することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の太陽電池装置。
【請求項9】
支持台上に載置された前記基板の表面に、該基板の支持台温度より高温に加熱したガスを前記基板表面に対向させて置かれたガス射出口からライン状に吹き付けて表面を加熱することを特徴とする太陽電池装置の製造方法。
【請求項10】
前記ガスは窒素、酸素、水素,Ar,Heのいずれか、またはそれらの混合ガスを含むことを特徴とする請求項9に記載の太陽電池装置の製造方法。
【請求項11】
支持台上に載置された前記基板の表面に、基板の支持台温度より高温に加熱したガスを基板表面に対向させて置かれた異なる2つ以上のガス射出口からライン状に吹き付けて表面を加熱し、前記基板上に半導体層を形成させることを特徴とする請求項9または請求項10に記載の太陽電池装置の製造方法。
【請求項12】
異なるガス射出口に挟まれたガス射出口からシリコンあるいはカーボン、または両方を含むガスが導入されることを特徴とする請求項11に記載の太陽電池装置の製造方法。
【請求項13】
支持台上に載置された前記基板の上から、該基板の支持台温度より高温に加熱したガスを、該基板に対向させて置かれた異なる2つ以上のガス射出口からライン状に吹き付けて表面に絶縁膜を成長させることを特徴とする請求項9または請求項10に記載の太陽電池装置の製造方法。
【請求項14】
前記異なる2つ以上のガス射出口のうち、一のガス射出口から射出される前記ガスがシラン(SiH4、Si2H6)またはハロゲン化シランを含み、他のガス射出口から射出されるガスが、これと反応するN2O,NO2、水、酸素を含む酸化ガス、NH3を含む窒化ガスのいずれか、または両方を含み、基板上に絶縁膜を成長させることを特徴とする請求項13に記載の太陽電池装置の製造方法。
【請求項15】
酸素または水を含む酸化性ガスを導入して、前記半導体層の表面を酸化させることにより酸化膜を形成することを特徴とする請求項11に記載の太陽電池装置の製造方法。
【請求項16】
不純物を含むガスを導入して、該不純物を拡散させて拡散層を形成することを特徴とする請求項9または請求項10に記載の太陽電池装置の製造方法。
【請求項17】
前記不純物が半導体層をn型またはp型にさせる元素であることを特徴とする請求項16に記載の太陽電池装置の製造方法。
【請求項18】
前記ガス射出口から射出されるガスが前記支持台上に載置された前記基板の表面に、ほぼ垂直に吹き付けられることを特徴とする請求項9から請求項17に記載の太陽電池装置の製造方法。
【請求項1】
透明非晶質基板上に真性の半導体層を形成させ、当該半導体層表面に仕事関数の異なる材料を接合させた太陽電池装置。
【請求項2】
前記異なる材料が不純物を拡散させたp型とn型の導電型の拡散層であり、互いに隣接または隔離して形成されていることを特徴とする請求項1記載の太陽電池装置。
【請求項3】
前記透明非晶質基板がガラスまたは樹脂またはプラスチックからなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の太陽電池装置。
【請求項4】
前記透明非晶質基板がガラスまたは樹脂またはプラスチックの上にそれらと異なる透明な薄膜をのせた基板であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の太陽電池装置。
【請求項5】
前記半導体層は真性のシリコンであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の太陽電池装置。
【請求項6】
前記半導体層はシリコンと炭素とを含むことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の太陽電池装置。
【請求項7】
前記半導体層は前記基板に近いほどエネルギーバンドギャップが大きくなる組成を有することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の太陽電池装置。
【請求項8】
前記透明非晶質基板側から前記真性の半導体層に太陽光を導入することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の太陽電池装置。
【請求項9】
支持台上に載置された前記基板の表面に、該基板の支持台温度より高温に加熱したガスを前記基板表面に対向させて置かれたガス射出口からライン状に吹き付けて表面を加熱することを特徴とする太陽電池装置の製造方法。
【請求項10】
前記ガスは窒素、酸素、水素,Ar,Heのいずれか、またはそれらの混合ガスを含むことを特徴とする請求項9に記載の太陽電池装置の製造方法。
【請求項11】
支持台上に載置された前記基板の表面に、基板の支持台温度より高温に加熱したガスを基板表面に対向させて置かれた異なる2つ以上のガス射出口からライン状に吹き付けて表面を加熱し、前記基板上に半導体層を形成させることを特徴とする請求項9または請求項10に記載の太陽電池装置の製造方法。
【請求項12】
異なるガス射出口に挟まれたガス射出口からシリコンあるいはカーボン、または両方を含むガスが導入されることを特徴とする請求項11に記載の太陽電池装置の製造方法。
【請求項13】
支持台上に載置された前記基板の上から、該基板の支持台温度より高温に加熱したガスを、該基板に対向させて置かれた異なる2つ以上のガス射出口からライン状に吹き付けて表面に絶縁膜を成長させることを特徴とする請求項9または請求項10に記載の太陽電池装置の製造方法。
【請求項14】
前記異なる2つ以上のガス射出口のうち、一のガス射出口から射出される前記ガスがシラン(SiH4、Si2H6)またはハロゲン化シランを含み、他のガス射出口から射出されるガスが、これと反応するN2O,NO2、水、酸素を含む酸化ガス、NH3を含む窒化ガスのいずれか、または両方を含み、基板上に絶縁膜を成長させることを特徴とする請求項13に記載の太陽電池装置の製造方法。
【請求項15】
酸素または水を含む酸化性ガスを導入して、前記半導体層の表面を酸化させることにより酸化膜を形成することを特徴とする請求項11に記載の太陽電池装置の製造方法。
【請求項16】
不純物を含むガスを導入して、該不純物を拡散させて拡散層を形成することを特徴とする請求項9または請求項10に記載の太陽電池装置の製造方法。
【請求項17】
前記不純物が半導体層をn型またはp型にさせる元素であることを特徴とする請求項16に記載の太陽電池装置の製造方法。
【請求項18】
前記ガス射出口から射出されるガスが前記支持台上に載置された前記基板の表面に、ほぼ垂直に吹き付けられることを特徴とする請求項9から請求項17に記載の太陽電池装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2010−34124(P2010−34124A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−191988(P2008−191988)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【出願人】(305054854)株式会社フィルテック (45)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【出願人】(305054854)株式会社フィルテック (45)
【Fターム(参考)】
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