説明

導電材の形成方法、該形成方法により形成された導電材及び該導電材を有するデバイス

【課題】安価で且つエレクトロマイグレーションの生じない銅を使用して、低温焼成であっても高導電性を有する導電材を形成する方法及び該方法により形成された導電材を提供すること。
【解決手段】本発明の導電材の形成方法は、一次粒子の平均粒径が1〜150nmの銅微粒子(P)を、少なくとも、分子中に1又は2以上の水酸基を有するアルコール及び/又は多価アルコールからなる有機溶媒を含む分散媒(S)に分散させて銅微粒子分散液を調整する工程と、前記銅微粒子分散液を被塗布体上に付与して、所定パターンを有する銅微粒子分散液の液膜を形成する工程と、前記所定パターンを有する銅微粒子分散液の液膜を焼成して焼結導電層を形成する工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅微粒子分散液を用いた導電材の形成方法、該形成方法により形成された導電材及び該導電材を有する各種デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器における微細な配線パターンや微小な導電性部品の形成に、インクジェット法やスクリーン印刷法等、各種印刷方法が用いられている。例えば、特許文献1には、金属ナノ粒子の表面が有機化合物で被覆され、有機溶媒中に安定に分散した金属微粒子分散液を用いて、インクジェットやスクリーン印刷等の手法によって、回路パターンを形成することが提案されている。
【0003】
また、ナノインプリント技術を利用して、微細な配線パターンを形成する方法が提案されている。例えば、特許文献2には、凹凸を含むパターニングが施された樹脂製テンプレートの表面に、導電性粒子を含むペースト(溶媒中に導電性粒子が分散されている液体)を塗布し、当該表面を基板上に押し当てる、すなわちコンタクトプリントを行うことにより基板上に導電材のパターンを形成することが提案されている。
【0004】
上記の印刷方法及びナノインプリント方法においては、金属ナノ粒子を溶媒中に分散させた金属微粒子分散液を基板へ吐出、塗布、あるいは転写によって付与し、乾燥、焼成することによって微細配線パターンを形成する。このような方法は、現在広く用いられているフォトリソグラフィー技術を利用した導体回路形成方法と比較して、工程の簡略化及びそれに伴う製造コストの低減が可能で、且つ、多品種少量生産に適していることから、新たな回路形成方法としてエレクトロニクス分野を中心に幅広い分野において注目されている。
【特許文献1】特開2002−299833号公報
【特許文献2】特開2007−110054号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
微細な配線パターン及び微小な導電性部品に使用する金属微粒子としては、金属材料自体が金、銀及びニッケル等に比較して格段に安価であり、且つ、銀を使用するときのようなエレクトロマイグレーションに起因する配線間の短絡を回避する観点から、銅を利用することが望まれる。
しかしながら、銅、銅合金、又は銅化合物の微粒子(以下、単に銅微粒子という)の分散液を使用する場合、酸化雰囲気中で加熱すると銅が酸化して導電性が低下するため、不活性ガス雰囲気あるいは水素ガス等の還元性ガス雰囲気中で加熱する必要がある。このため、上記特許文献1のように、金属微粒子の分散性を考慮して表面が厚い高分子化合物層で被覆されているような場合には、耐熱性の高い高分子は、酸素の存在しない不活性ガス又は還元性ガス雰囲気中では分解され難く、金属微粒子同士の焼結が阻害されて、最終的に得られる焼結配線の導電性が不十分となってしまう。
【0006】
導電性を向上させるためには、高分子化合物を昇華させるような高温で焼成することが考えられるが、そのような高温で焼成を行う場合、耐熱温度の低いプラスチック基板への応用や、熱による影響を受けやすい有機材料が周囲に存在するデバイスへの応用が困難であり、用途が制限されるという問題がある。
【0007】
なお、上記特許文献1では、金属ナノ粒子として銀を用いた場合について、250℃以下の焼成温度で回路パターンを形成することが記載されているが、金属ナノ粒子として銅を使用する場合の問題点については何ら考慮されていない。すなわち、銅微粒子を使用する場合には、酸化されにくい銀を使用する場合と異なり、不活性ガス雰囲気あるいは水素ガス等の還元性ガス雰囲気中で加熱する必要があること、それにより銅微粒子を被覆する高分子が低温焼結では分解され難く、焼結配線の導電性が不十分になることについて考慮されてなく、耐熱温度の低いプラスチック基板や有機材料が周囲に存在するデバイスへ適用することはできない。
また、上記特許文献2でも、銀ナノペーストを用いた場合について、220℃で焼成して、銀配線パターンを形成することが記載されているが、特許文献1と同様、銅を使用する場合の問題点については何ら考慮されていない。
【0008】
本発明の目的は、安価で且つエレクトロマイグレーションの生じない銅を使用して、低温焼成であっても高導電性を有する導電材を形成する方法、該方法により形成された導電材及び該導電材を備えた各種デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、一次粒子の平均粒径が1〜150nmの銅微粒子(P)を、
(i)アミド系化合物を含む有機溶媒(A)5〜90体積%と、常圧における沸点が20〜100℃である低沸点の有機溶媒(B)5〜45体積%と、常圧における沸点が100℃を超え、且つアルコール及び/又は多価アルコールからなる有機溶媒(C)5〜90体積%とを含む分散媒(S1)、
(ii)アミド系化合物を含む有機溶媒(A)5〜95体積%と、常圧における沸点が100℃を超え、且つアルコール及び/又は多価アルコールからなる有機溶媒(C)5〜95体積%とを含む分散媒(S2)、
(iii)常圧における沸点が100℃を超え、且つアルコール及び/又は多価アルコールからなる有機溶媒(C)を含む分散媒(S3)、
(iv)アミド系化合物を含む有機溶媒(A)24〜64体積%と、常圧における沸点が20〜100℃である低沸点の有機溶媒(B)5〜39体積%と、常圧における沸点が100℃を超え、且つアルコール及び/又は多価アルコールからなる有機溶媒(C)30〜70体積%と、アミン系化合物を含む有機溶媒(E)1〜40体積%とを含む分散媒(S4)
(v)アミド系化合物を含む有機溶媒(A)30〜94体積%と、常圧における沸点が100℃を超え、且つアルコール及び/又は多価アルコールからなる有機溶媒(C)30〜94体積%,アミン系化合物を含む有機溶媒(E)1〜40 体積%と、を含む分散媒(S5)及び、
(vi)常圧における沸点が100℃を超え、且つアルコール及び/又は多価アルコールからなる有機溶媒(C)60〜99体積%と、アミン系化合物を含む有機溶媒(E)1〜40 体積%と、含む分散媒(S6)
から選択される分散媒(S)に分散させて銅微粒子分散液を調整する工程と、
前記銅微粒子分散液を、吐出、塗布及び転写のいずれかの方法によって被塗布体上に付与して、所定パターンを有する銅微粒子分散液の液膜を形成する工程と、
前記所定パターンを有する銅微粒子分散液の液膜を焼成して焼結導電層を形成する工程
とを有することを特徴とする導電材の形成方法である。
【0010】
本発明の第2の態様は、前記第1の態様に係る導電材の形成方法において、
前記分散媒(S)中の銅微粒子(P)は、
(a)表面に高分子分散剤が実質的に存在しないか、又は、
(b)高分子分散剤(D)と銅微粒子(P)との重量比(D/P)が0<D/P<0.001の範囲で、表面に高分子分散剤(D)が付着していることを特徴とする。
【0011】
本発明の第3の態様は、前記第1又は第2の態様に係る導電材の形成方法において、前記銅微粒子分散液の液膜を焼成する際の温度は、190〜300℃の範囲であることを特徴とする。
【0012】
本発明の第4の態様は、前記第1から第3のいずれかの態様に係る導電材の形成方法において、前記銅微粒子分散液の吐出、塗布及び転写方法は、インクジェット法、スクリーン印刷法、ナノインプリント法、ワイヤーバーコート法、ブレードコート法及びロールコート法を含むことを特徴とする。
【0013】
本発明の第5の態様は、前記第1から第4のいずれかの態様に係る導電材の形成方法により形成された導電材である。
【0014】
本発明の第6の態様は、前記第5の態様に係る導電材を、配線として有する基板である。
【0015】
本発明の第7の態様は、前記第6の態様に係る基板において、前記基板は、一方の面に半導体素子が搭載され他方の面に実装基板が接合されるインターポーザ、プリント配線板及び、電子部品を内蔵する部品内蔵基板を含むことを特徴とする。
【0016】
本発明の第8の態様は、前記第5の態様に係る導電材を、配線又は電極として有する表示装置である。
【0017】
本発明の第9の態様は、前記第8の態様に係る表示装置において、前記表示装置は、有機ELディスプレイ及び液晶ディスプレイを含むことを特徴とする。
【0018】
本発明の第10の態様は、前記第5の態様に係る導電材を、配線として有することを特徴とする光モジュールである。
【0019】
本発明の第11の態様は、前記第5の態様に係る導電材を、配線又は電極として有する半導体素子である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の導電材の形成方法では、銅微粒子を上記特定の有機溶媒を含む分散媒(S)に分散させた銅微粒子分散液を、吐出、塗布及び転写のいずれかの方法によって被塗布体上に付与して、所定パターンを有する銅微粒子分散液の液膜を形成する。銅微粒子をこのような特定の有機溶媒を含む分散媒に分散させることで、表面に高分子化合物が実質的に存在しない、あるいは、ごく少量の高分子化合物で被覆された銅微粒子であっても、微粒子の分散性を高めることができ、被塗布体への吐出、塗布、あるいは転写を安定して行うことができる。そして、表面に高分子化合物が実質的に存在しない、あるいは、ごく少量の高分子化合物で被覆された銅微粒子の分散液を使用することで、銅微粒子同士の焼結の阻害要因を排除又は低減することができ、低温焼成が可能となる。これより、耐熱温度の低いプラスチック基板や有機材料が周囲に存在するデバイスへの適用が可能となり、安価で且つエレクトロマイグレーションの生じない銅を使用して、低温焼成であっても高導電性を有する導電材を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本発明の実施の形態に係る導電材の形成方法について説明する。
本発明の導電材の形成方法は、一次粒子の平均粒径が1〜150nmの銅微粒子(P)を、
(i)アミド系化合物を含む有機溶媒(A)5〜90体積%と、常圧における沸点が20〜100℃である低沸点の有機溶媒(B)5〜45体積%と、常圧における沸点が100℃を超え、且つアルコール及び/又は多価アルコールからなる有機溶媒(C)5〜90体積%とを含む分散媒(S1)、
(ii)アミド系化合物を含む有機溶媒(A)5〜95体積%と、常圧における沸点が100℃を超え、且つアルコール及び/又は多価アルコールからなる有機溶媒(C)5〜95体積%とを含む分散媒(S2)、
(iii)常圧における沸点が100℃を超え、且つアルコール及び/又は多価アルコールからなる有機溶媒(C)を含む分散媒(S3)、
(iv)アミド系化合物を含む有機溶媒(A)24〜64体積%と、常圧における沸点が20〜100℃である低沸点の有機溶媒(B)5〜39体積%と、常圧における沸点が100℃を超え、且つアルコール及び/又は多価アルコールからなる有機溶媒(C)30〜70体積%と、アミン系化合物を含む有機溶媒(E)1〜40体積%とを含む分散媒(S4)、
(v)アミド系化合物を含む有機溶媒(A)30〜94体積%と、常圧における沸点が100℃を超え、且つアルコール及び/又は多価アルコールからなる有機溶媒(C)30〜94体積%,アミン系化合物を含む有機溶媒(E)1〜40 体積%と、を含む分散媒(S5)及び、
(vi)常圧における沸点が100℃を超え、且つアルコール及び/又は多価アルコールからなる有機溶媒(C)60〜99体積%と、アミン系化合物を含む有機溶媒(E)1〜40 体積%と、含む分散媒(S6)
から選択される分散媒(S)に分散させて銅微粒子分散液を調整する工程と、
前記銅微粒子分散液を、吐出、塗布及び転写のいずれかの方法によって被塗布体上に付与して、所定パターンを有する銅微粒子分散液の液膜を形成する工程と、
前記所定パターンを有する銅微粒子分散液の液膜を焼成して焼結導電層を形成する工程と
を有する。
【0022】
(銅微粒子分散液)
まず、本発明で使用する銅微粒子分散液の構成成分について説明する。
【0023】
−銅微粒子−
本発明の銅微粒子は、銅、銅合金及び銅化合物の微粒子を含み、銅化合物は、銅及び銅合金の酸化物を含む。遷移金属粒子である銅微粒子は、酸化物がまったく含まれないものは少なく、この場合の酸化レベルは微粒子生成時および保管時の雰囲気、温度、保持時間によりさまざまであるが、微粒子の最表面だけ薄く酸化されて内側は金属のままの場合、微粒子が殆ど酸化されている場合もある。本発明でいう銅化合物はこのようなさまざまな酸化状態の粒子をすべて含有する。
【0024】
また、銅微粒子は、
(a)表面に高分子分散剤が実質的に存在しないか、又は、
(b)高分子分散剤(D)と銅微粒子(P)との重量比(D/P)が0<D/P<0.001の範囲で、表面に高分子分散剤(D)が付着している状態で、後述する分散媒(S)中に分散される。
【0025】
−有機溶媒(A)−
有機溶媒(A)は、アミド基(−CONH−)を有するアミド系化合物、又は、アミド系化合物を含む有機溶媒である。有機溶媒(A)は、分散媒中で分散性と保存安定性を向上し、更に銅微粒子を含有している状態で被塗布体上に焼成した場合に被塗布体に対する密着性を向上する作用を有する。
【0026】
アミド系化合物としては、N−メチルアセトアミド(191.3 at 32℃)、N−メチルホルムアミド(182.4 at 20℃)、N−メチルプロパンアミド(172.2 at 25℃)、ホルムアミド(111.0 at 20℃)、N,N−ジメチルアセトアミド(37.78 at 25℃)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(37.6 at 25℃)、N,N−ジメチルホルムアミド(36.7 at 25℃)、1−メチル−2−ピロリドン(32.58 at 25℃)、ヘキサメチルホスホリックトリアミド(29.0 at 20℃)、2−ピロリジノン、ε−カプロラクタム、アセトアミド等が挙げられ、これらを混合して使用することもできる。尚、上記アミド系化合物名の後の括弧中の数字は各溶媒の測定温度における比誘電率を示す。これらの中でも比誘電率が100以上である、N−メチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、ホルムアミド、アセトアミドなどが好適に使用できる。尚、N−メチルアセトアミド(融点:26〜28℃)のように常温で固体の場合には他の溶媒と混合して作業温度で液状として使用することができる。
【0027】
−有機溶媒(B)−
有機溶媒(B)は、常圧における沸点が20〜100℃である低沸点の有機溶媒である。常圧における沸点が20℃未満であると、有機溶媒(B)を含む微粒子分散液を常温で保存した際、容易に有機溶媒(B)の成分が揮発し、分散液中の溶媒組成が変化してしまうおそれがある。また常圧における沸点が100℃以下の場合に、該溶媒添加による溶媒分子間の相互引力を低下させ、微粒子の分散性を更に向上させる効果が有効に発揮されることが期待できる。
【0028】
また、有機溶媒(B)は、分散媒中で溶媒分子間の相互作用を低下させ、分散粒子の溶媒に対する親和性を向上する作用を有していると考えられる。有機溶媒(B)の中でも特にエーテル系化合物が、その溶媒分子間の相互作用を低減する効果が大きいことから好ましい。
【0029】
また、有機溶媒(B)を使用すると、超音波等の照射により微粒子分散液を調製する際に撹拌時間を著しく短縮する、例えば1/2程度に短縮することが可能である。また、分散媒中に有機溶媒(B)が存在していると、一端微粒子が凝集状態になってもより容易に再分散させることが可能である。
【0030】
有機溶媒(B)としては、一般式R1−O−R2(R1、R2は、それぞれ独立にアルキル基で、炭素原子数は1〜4である。)で表されるエーテル系化合物(B1)、一般式R3−OH(R3は、アルキル基で、炭素原子数は1〜4である。)で表されるアルコール(B2)、一般式R4−C(=O)−R5(R4、R5は、それぞれ独立にアルキル基で、炭素原子数は1〜2である。)で表されるケトン系化合物(B3)が例示できる。
以下に上記有機溶媒(B)を例示するが、化合物名の後のカッコ内の数字は常圧における沸点を示す。
【0031】
前記エーテル系化合物(B1)としては、ジエチルエーテル(35℃)、メチルプロピルエーテル(31℃)、ジプロピルエーテル(89℃)、ジイソプロピルエーテル(68℃)、メチル-t-ブチルエーテル(55.3℃)、t-アミルメチルエーテル(85℃)、ジビニルエーテル(28.5℃)、エチルビニルエーテル(36℃)、アリルエーテル(94℃)等が例示出来る。
【0032】
前記アルコール(B2)としては、メタノール(64.7℃)、エタノール(78.0℃)、1−プロパノール(97.15℃)、2−プロパノール(82.4℃)、2−ブタノール(100℃)、2−メチル2−プロパノール(83℃)等が例示できる。
【0033】
前記ケトン系化合物(B3)としては、アセトン(56.5℃)、メチルエチルケトン(79.5℃)、ジエチルケトン(100℃)等が例示できる。
【0034】
−有機溶媒(C)−
有機溶媒(C)は、常圧における沸点が100℃を超える、分子中に1又は2以上の水酸基を有するアルコール及び/又は多価アルコールからなる有機化合物であるが、この場合、アルコールと多価アルコールは共に常圧における沸点が100℃を超えるものである。また、炭素数が5以上のアルコールあるいは炭素数が2以上の多価アルコールが好ましく、常温で液状であり、比誘電率が高いもの、例えば10以上のものが好ましい。
【0035】
有機溶媒(A)と有機溶媒(B)とを含有する混合有機溶媒は、撹拌により優れた分散性を有するが、一般に有機溶媒において時間の経過により微粒子同士が接合する傾向にある。有機溶媒(C)を分散媒中に存在させると、このような接合をより効果的に抑制して、銅微粒子の分散性の向上及び、分散液の長期安定性化を図ることが可能になる。また、有機溶媒(C)は、加熱分解時に還元性物質を発生し、銅微粒子の酸化被膜を還元することができるので、後述する焼成工程において、還元性ガス雰囲気を必要としないという効果を奏する。そして、有機溶媒(C)を含む銅微粒子分散液を、被塗布体に塗布、焼成した際には、有機溶媒(C)の有する高い分散能及び還元促進能により、焼結体の均一性及び導電性を向上させることができる。
【0036】
有機溶媒(C)の具体例としては、エチレングリコ−ル、ジエチレングリコ−ル、1,2−プロパンジオ−ル、1,3−プロパンジオ−ル、1,2−ブタンジオ−ル、1,3−ブタンジオ−ル、1,4−ブタンジオ−ル、2−ブテン−1,4−ジオール、2,3−ブタンジオ−ル、ペンタンジオ−ル、ヘキサンジオ−ル、オクタンジオ−ル、グリセロール、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタン、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール等が例示できる。
【0037】
また、トレイトール(D-Threitol)、エリトリト−ル(Erythritol)、ペンタエリスリト−ル(Pentaerythritol)、ペンチト−ル(Pentitol)、ヘキシト−ル(Hexitol)等の糖アルコ−ル類も使用可能であり、ペンチトールには、キシリトール(Xylitol)、リビトール(Ribitol)、アラビトール(Arabitol)が含まれる。前記ヘキシトールには、マンニトール(Mannitol)、ソルビトール(Sorbitol)、ズルシトール(Dulcitol)等が含まれる。更に、グリセリンアルデヒド(Glyceric aldehyde)、ジオキシアセトン(Dioxy-acetone)、トレオース(threose)、エリトルロース(Erythrulose)、エリトロース(Erythrose)、アラビノース(Arabinose)、リボース(Ribose)、リブロース(Ribulose)、キシロース(Xylose)、キシルロース(Xylulose)、リキソース(Lyxose)、グルコ−ス(Glucose)、フルクト−ス(Fructose)、マンノース(Mannose)、イドース(Idose)、ソルボース(Sorbose)、グロース(Gulose)、タロース(Talose)、タガトース(Tagatose)、ガラクトース(Galactose)、アロース(Allose)、アルトロース(Altrose)、ラクト−ス(Lactose)、キシロ−ス(Xylose)、アラビノ−ス(Arabinose)、イソマルト−ス(Isomaltose)、グルコヘプト−ス(Gluco-heptose)、ヘプト−ス(Heptose)、マルトトリオース(Maltotriose)、ラクツロース(Lactulose)、トレハロース(
Trehalose)、等の糖類も使用可能である。
上記アルコール類のなかでは、分子中に2個以上のヒドロキシル基を有する多価アルコールがより好ましく、エチレングリコール(Ethylene glycol)及びグリセリン(Glycerin)が特に好ましい。
【0038】
−有機溶媒(E)−
有機溶媒(E)は、常圧における沸点が20℃以上である、脂肪族第一アミン、脂肪族第二アミン、脂肪族第三アミン、脂肪族不飽和アミン、脂環式アミン、芳香族アミン及びアルカノールアミンの中から選択される1種又は2種以上のアミン系化合物、又は、これらアミン系化合物を含む有機溶媒である。
アミン系化合物としては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、n-プロピルアミン、n-ブチルアミン、t-プロピルアミン、t-ブチルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、テトラメチルプロピレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、モノ−nオクチルアミン、モノ−2エチルヘキシルアミン、ジ−nオクチルアミン、ジ−2エチルヘキシルアミン、トリ−nオクチルアミン、トリ−2エチルヘキシルアミン、トリイソブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリイソオクチルアミン、トリイソノニルアミン、トリフェニルアミン、ジメチルココナットアミン、ジメチルオクチルアミン、ジメチルデシルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチルミリスチルアミン、ジメチルパルミチルアミン、ジメチルステアリルアミン、ジメチルベヘニルアミン、ジラウリルモノメチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、メタノールアミン、ジメタノールアミン、トリメタノールアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ブタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N−n−ブチルエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン、および2−(2−アミノエトキシ)エタノール等が例示できる。
アミン系化合物が常温で気体又は固体の場合には、他の溶媒に溶解して作業温度で液体として使用することができる。
【0039】
―分散媒(S)−
分散媒(S)は、以下の分散媒(S1)〜(S6)のいずれかから選択される。
【0040】
−分散媒(S1)−
分散媒(S1)は、上記有機溶媒(A)5〜90体積%と、上記有機溶媒(B)5〜45体積%および、上記有機溶媒(C)5〜90体積%を含む混合有機溶媒である。
有機溶媒(A)、有機溶媒(B)及び、有機溶媒(C)から前記配合割合で100体積%となるように配合されていてもよく、また前記配合割合の範囲内で、更に本発明の効果を損なわない範囲で他の有機溶媒成分を配合してもよいが、この場合、有機溶媒(A)、有機溶媒(B)及び、有機溶媒(C)からなる成分が90体積%以上含まれていることが好ましく、95体積%以上がより好ましい。
上記以外の他の有機溶媒成分を配合する場合には、テトラヒドロフラン、ジグライム、エチレンカルボナート、プロピレンカルボナート、スルホラン、ジメチルスルホキシド等の極性有機溶媒を使用することが好ましい。
【0041】
銅微粒子を、このような特定の有機溶媒(A)、有機溶媒(B)及び有機溶媒(C)を含む分散媒(S1)に分散させることで、表面に高分子化合物が実質的に存在しないか、又は、高分子分散剤(D)と銅微粒子(P)との重量比(D/P)が0<D/P<0.001の範囲で、表面に高分子分散剤(D)が付着している銅微粒子であっても、微粒子の分散性を高めることができる。このような、表面に高分子化合物が実質的に存在しないか、又は、ごく少量の高分子化合物が付着した銅微粒子の分散液を使用することで、銅微粒子同士の焼結の阻害要因を排除又は低減することができるので、後述する焼成工程において、低温焼成が可能となる。そして、分散媒(S1)を用いた銅微粒子分散液を、被塗布体上に塗布、焼成することにより、低温焼成であっても導電性が高く、且つ、被塗布体に対する密着性に優れた焼結体を得ることができる。
このような特徴を効果的に発揮するには、分散媒(S1)中の有機溶媒(A)の配合量は、50〜90体積%がより好ましく、60〜80体積%が更に好ましい、有機溶媒(B)の配合量は、5〜40体積%がより好ましく、10〜30体積%が更に好ましく、また、有機溶媒(C)の配合量は、5〜45体積%がより好ましく、10〜30体積%が更に好ましい。
【0042】
−分散媒(S2)−
分散媒(S2)は、上記有機溶媒(A)5〜95体積%と、上記有機溶媒(C)5〜95体積%とを含む混合有機溶媒である。
分散媒(S2)中で、有機溶媒(A)及び有機溶媒(C)が前記配合割合で100体積%となるように配合されていてもよく、また前記配合割合の範囲内で更に、本発明の効果を損なわない範囲で他の有機溶媒成分を配合してもよい。この場合、有機溶媒(A)及び有機溶媒(C)からなる成分が90体積%以上含まれることが好ましく、95体積%以上がより好ましい。
【0043】
上記以外の他の有機溶媒成分を配合する場合には、テトラヒドロフラン、ジグライム、エチレンカルボナート、プロピレンカルボナート、スルホラン、ジメチルスルホキシド、等の極性有機溶媒が使用できる。
銅微粒子を、このような特定の有機溶媒(A)及び有機溶媒(C)を含む分散媒(S2)に分散させることで、上記分散媒(S1)と同様に、微粒子の分散性を高めることができ、後述する焼成工程において、低温焼成が可能である。さらに、低温焼成であっても導電性が高く、且つ、被塗布体に対する密着性に優れた焼結体を得ることができる。
このような特徴を効果的に発揮するには、分散媒(S2)中の有機溶媒(A)の配合量は、50〜90体積%がより好ましく、60〜80体積%が更に好ましい、また、有機溶媒(C)の配合量は、10〜50体積%がより好ましく、20〜40体積%が更に好ましい。
【0044】
−分散媒(S3)−
分散媒(S3)は、上記有機溶媒(C)を含む有機溶媒である。分散媒(S3)は、前記有機溶媒(S1)と有機溶媒(S2)と比較して、分散性に多少劣るものの、後述する焼成工程において、低温焼成が可能であり、低温焼成であっても導電性の高い焼結体を得ることができる。
このような特徴を効果的に発揮する限り、有機溶媒(C)に他の有機溶媒を配合して使用することが可能であり、この場合、他の有機溶媒の配合量は、10体積%以内が好ましく、5体積%以内がより好ましい。
【0045】
−分散媒(S4)−
分散媒(S4)は、上記有機溶媒(A)24〜64体積%と、上記有機溶媒(B)5〜39体積%と、上記有機溶媒(C)30〜70体積%及び上記有機溶媒(E)1〜40体積%とを含む混合有機溶媒である。
【0046】
有機溶媒(A)、有機溶媒(B)、有機溶媒(C)及び有機溶媒(E)から前記配合割合で100体積%となるように配合されていてもよく、また前記配合割合の範囲内で、更に本発明の効果を損なわない範囲で他の有機溶媒成分を配合してもよい。この場合、有機溶媒(A)、有機溶媒(B)、有機溶媒(C)及び有機溶媒(E)からなる成分が90体積%以上含まれていることが好ましく、95体積%以上がより好ましい。
上記以外の他の有機溶媒成分を配合する場合には、テトラヒドロフラン、ジグライム、エチレンカルボナート、プロピレンカルボナート、スルホラン、ジメチルスルホキシド等の極性有機溶媒を使用することが好ましい。
【0047】
−分散媒(S5)−
分散媒(S5)は、上記有機溶媒(A)30〜94体積%と、上記有機溶媒(C)30〜94体積%及び,上記有機溶媒(E)1〜40 体積%とを含む混合有機溶媒である。有機溶媒(A)が30体積%未満では、極性有機溶媒における金属等の微粒子(P)の分散性と保存安定性が不十分になるおそれがある。
【0048】
有機溶媒(C)は、分散媒(S5)中に30体積%以上含まれていることが必要である。有機溶媒(C)をこのような配合割合とすることにより、分散媒(S5)において、長期間保存しても銅微粒子(P)が凝集するのを抑制して分散安定性がより向上し、またその微粒子分散液を焼結した際に得られる焼成膜の緻密性および導電性もより向上する。
【0049】
有機溶媒(E)は、分散媒(S5)中に1〜40体積%含まれていることが必要である。有機溶媒(E)をこのような配合割合とすることにより、分散媒(S5)において、分散粒子の溶媒に対する親和性が向上するため、長期間保存しても銅微粒子(P)が凝集するのを抑制して分散安定性がより向上する。
【0050】
なお、分散媒(S5)では、有機溶媒(C)および(E)を共存させるため、有機溶媒(C)および(E)のそれぞれの一部が、分散媒(S5)中で銅微粒子(P)表面を覆うようにして存在していると考えられる。よって、有機溶媒(C)が分散媒(S5)において、その微粒子分散液を焼結した際に得られる焼成膜の緻密性および導電性をより向上する作用を発揮するには、有機溶媒(C)を30体積%以上配合することが必要であり、よって、上述したような効果を発するためには、有機溶媒(A)を30〜94体積%とする必要がある。
【0051】
有機溶媒(A)、有機溶媒(C)及び有機溶媒(E)から前記配合割合で100体積%となるように配合されていてもよく、また前記配合割合の範囲内で、更に本発明の効果を損なわない範囲で他の有機溶媒成分を配合してもよい。この場合、有機溶媒(A)、有機溶媒(C)及び有機溶媒(E)からなる成分が90体積%以上含まれていることが好ましく、95体積%以上がより好ましい。
上記以外の他の有機溶媒成分を配合する場合には、テトラヒドロフラン、ジグライム、エチレンカルボナート、プロピレンカルボナート、スルホラン、ジメチルスルホキシド等の極性有機溶媒を使用することが好ましい。
【0052】
−分散媒(S6)−
分散媒(S6)は、上記有機溶媒(C)60〜99体積%及び上記有機溶媒(E)1〜40体積%を含む混合有機溶媒である。
【0053】
有機溶媒(C)及び有機溶媒(E)(D)から前記配合割合で100体積%となるように配合されていてもよく、また前記配合割合の範囲内で、更に本発明の効果を損なわない範囲で他の有機溶媒成分を配合してもよい。この場合、有機溶媒(C)及び有機溶媒(E)からなる成分が90体積%以上含まれていることが好ましく、95体積%以上がより好ましい。
【0054】
有機溶媒(C)は、分散媒(S6)中に60体積%以上含まれていることが必要である。有機溶媒(C)をこのような配合割合とすることにより、分散媒(S6)において、長期間保存しても銅微粒子(P)が凝集するのを抑制して分散安定性がより向上し、またその微粒子分散液を焼結した際に得られる焼成膜の緻密性および導電性もより向上する。
【0055】
有機溶媒(E)は、分散媒(S6)中に1〜40体積%含まれていることが必要である。有機溶媒(D)をこのような配合割合とすることにより、分散媒(S6)において、分散粒子の溶媒に対する親和性が向上するため、長期間保存しても銅微粒子(P)が凝集するのを抑制して分散安定性がより向上する。
【0056】
少なくとも表面の一部に高分子分散剤(D)が付着している銅微粒子(P)の分散液を調製する方法としては、銅微粒子(P)が液相還元で形成される場合には、前記分散媒(S1)〜(S6)から選択されるいずれかの分散媒(S)中に銅微粒子(P)と高分子分散剤(D)を添加、撹拌する方法が挙げられる。また、予め他の溶媒中で、銅微粒子(P)と高分子分散剤(D)を撹拌後、該溶媒中でその表面に高分子分散剤(D)が付着した銅微粒子(P)を形成し、該銅微粒子(P)を溶媒中で凝集、沈殿等させて、少なくともその表面の一部に高分子分散剤(D)で覆われた銅微粒子(P)を回収し、回収した銅微粒子(P)を前記分散媒(S1)〜(S6)から選択されるいずれかの分散媒(S)中に再分散させてもよい。銅微粒子(P)を分散媒(S)へ再分散させる方法としては、公知の撹拌方法を採用することができるが、超音波照射方法を採用するのが好ましい。
【0057】
上記したように、有機溶媒(C)を少なくとも有し、有機溶媒(A)、有機溶媒(B)及び有機溶媒(E)をそれぞれ一定割合含む分散媒(S1)〜(S6)は、超音波等の撹拌により容易に分散して、かつ分散溶媒中の微粒子の分散性にも優れており、一端、粒子が凝集状態になっても容易に再分散させることが可能である。また、長期の分散安定性に優れ、その微粒子分散液を基板上に塗布焼結した際、比較的定温での焼結が可能となる。
【0058】
分散媒(S1)〜(S6)は、有機溶媒(C)を含むことで、加熱分解時に還元性物質を発生し、銅微粒子の酸化被膜を還元することができるので、焼成工程において、還元性ガス雰囲気を必要としないという効果を奏する。そして、有機溶媒(C)を含む銅微粒子分散液を、被塗布体に塗布、焼成した際には、有機溶媒(C)の有する高い分散能及び還元促進能により、焼結体の均一性及び導電性を向上させることができる。
また、有機溶媒(A)と有機溶媒(B)とを含有する混合有機溶媒は、撹拌により優れた分散性を有するが、一般に有機溶媒において時間の経過により微粒子同士が接合する傾向にある。有機溶媒(C)を分散媒中に存在させると、このような接合をより効果的に抑制して、銅微粒子の分散性の向上及び、分散液の長期安定性化を図ることが可能になる。
【0059】
本発明で使用する分散媒(S1)及び(S2)においては、実用的には、有機溶媒(C)濃度を20〜90体積%程度とするのがより好ましい。分散媒(S4)、(S5)においては、有機溶媒(A)及び有機溶媒(E)が共存し、かつ、得られる焼成膜の緻密性および導電性をより向上する作用を発揮するには、有機溶媒(C)を30〜60体積%以上配合することが必要である。また、分散媒(S6)においては、有機溶媒(E)との共存により、実用的には、有機溶媒(C)濃度を70〜90体積%程度とするのがより好ましい。
【0060】
本発明において、分散媒に分散されている銅微粒子(P)の一次粒子の平均粒径は、1〜150nmであるが、本発明の分散媒は銅微粒子(P)の分散性に優れているので、これらの銅微粒子(P)からなる二次凝集粒子の平均二次凝集サイズを超音波照射等の撹拌により500nm以下、好ましくは300nm以下とすることは容易に可能である。
【0061】
(銅分散液の調整工程)
次に、銅微粒子分散液の調整工程について説明する。
銅微粒子分散液は、前記銅微粒子を、前記分散媒(S1)〜(S6)から選択される分散媒(S)中に分散させることで調整される。
具体的には、例えば、水溶液中で、高分子分散剤(D)の存在下に銅イオンの液相還元反応、又は公知の還元反応によりにより得られた銅微粒子(Pc)から、高分子分散剤(D)を含む不純物を除去し、高分子分散剤(D)で表面が被覆されていない、あるいは比較的少量の高分子分散剤(D)で被覆された銅微粒子(P)を、上記分散媒(S)に再分散することで調整することができる。
【0062】
前記銅イオンの形成には、塩化銅、硝酸銅、亜硝酸銅、硫酸銅、酢酸銅等を使用することができる。
高分子分散剤(D)の除去方法としては、還元反応終了後に水溶液中に凝集促進剤を添加して、銅微粒子を凝集又は沈殿させた後、水溶液から該凝集又は沈殿した微粒子をろ過等の操作により分離する方法を採用することができる。これにより、高分子分散剤(D)が除去された銅微粒子(P)を得ることができる。
銅微粒子(P)を分散媒(S)へ再分散させる方法としては、公知の撹拌方法を採用することができるが、超音波照射方法を採用するのが好ましい。
【0063】
還元により生成される微粒子(P)の一次粒子の平均粒径は、1〜150nmであり、実用上は1〜100nmが好ましい。ここで、一次粒径とは、二次粒子を構成する個々の金属等微粒子の一次粒子の直径を意味する。該一次粒径は、透過電子型顕微鏡を用いて測定することができる。また、平均粒径とは、金属等微粒子の数平均粒径を意味する。なお、二次粒子は、分散媒中において一次粒子が集合して形成されたものを指す。
【0064】
銅微粒子(P)は、有機溶媒中で一次粒径1〜150nmの微粒子同士が再分散可能な弱い力で引き合っている軟凝集体である二次凝集体を形成するが、その二次凝集サイズを、動的光散乱型粒度分布測定装置により測定することができる。銅微粒子(P)を、有機溶媒(S)、有機溶媒(S)及び有機溶媒(C)を含む分散媒(S)に分散させることで、粒子分散性の高い(二次凝集サイズの小さい)微粒子分散液を得ることができるので、銅微粒子(P)からなる二次凝集粒子の平均二次凝集サイズを500nm以下、好ましくは300nm以下とすることは容易に可能である。
【0065】
尚、銅微粒子(P)の一次粒子の平均粒径の制御は、銅イオン、高分子分散剤(D)、還元剤の種類と配合濃度の調整及び銅イオンを還元反応させる際の、かく拌速度、温度、時間、pH等の調整により行うことが可能である。具体的には、例えば、無電解の液相還元の場合には、水溶液中で、ポリビニルピロリドン(PVP、数平均分子量約3500)の存在下に銅イオン(酢酸第二銅等)を水素化ホウ素ナトリウムで還元する際に、還元温度が80℃程度であれば、一次粒子の平均粒径が100nmの銅微粒子を得ることが可
能である。
【0066】
−高分子分散剤(D)−
高分子分散剤(D)は、水に対して溶解性を有していると共に、溶媒中で金属等からなる微粒子の表面を覆うように存在して、銅微粒子の凝集を抑制して分散性を良好に維持する作用を有する。
【0067】
本発明の高分子分散剤(D)は、例えば、銅微粒子(P)が水溶液中で銅イオンを電解還元又は還元剤を使用した無電解還元等の液相還元により製造される場合には、該水溶液中に水溶性の高分子分散剤(D)を溶解させておいて、還元反応により析出する銅微粒子(P)の凝集を抑制して、銅微粒子(P)を効率良く形成することができる。
【0068】
本発明の高分子分散剤(D)は、水溶性であると共に、反応系中で析出した銅微粒子(P)の表面を覆うように存在している場合には、銅微粒子(P)の凝集を抑制して分散性を良好に維持する作用を有する。
【0069】
高分子分散剤(D)存在下の液相還元により、銅微粒子(P)を水溶液中で形成する場合には、これらの高分子分散剤(D)は、水に対して溶解性を有すると共に、析出した銅微粒子(P)の表面を覆うように存在して、金属等の微粒子(P)の凝集を抑制し、分散を維持する働きをする。
【0070】
前記高分子分散剤(D)としては、その化学構造にもよるが分子量が100〜100,000程度の、水に対して溶解性を有し、かつ水溶液で金属イオンから還元反応で析出した金属等微粒子を良好に分散させることが可能なものであればいずれも使用可能である。
【0071】
高分子分散剤(D)として好ましいのは、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン等のアミン系の高分子;ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース等のカルボン酸基を有する炭化水素系高分子;ポリアクリルアミド等のアクリルアミド;ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、更にはデンプン及びゼラチンの中から選択される1種又は2種以上である。
【0072】
上記例示した高分子分散剤(D)化合物の分子量の具体例として、ポリビニルピロリドン(分子量:1000〜500、000)、ポリエチレンイミン(分子量:100〜100,000)、カルボキシメチルセルロース(アルカリセルロースのヒドロキシル基Na塩のカルボキシメチル基への置換度:0.4以上、分子量:1000〜100,000)、ポリアクリルアミド(分子量:100〜6,000,000)、ポリビニルアルコール(分子量:1000〜100,000)、ポリエチレングリコール(分子量:100〜50,000)、ポリエチレンオキシド(分子量:50,000〜900,000)、ゼラチン(平均分子量:61,000〜67,000)、水溶性のデンプン等が挙げられる。
【0073】
上記かっこ内にそれぞれの高分子分散剤(D)の数平均分子量を示すが、このような分子量範囲にあるものは水溶性を有するので、本発明において好適に使用できる。尚、これらの2種以上を混合して使用することもできる。
その他、チオール、カルボン酸、アミド、カルボニトリル、エステル類が挙げられる。また、極性基を有するポリマーとしてポリメチルビニルエーテル等を例示できる。
【0074】
前記凝集剤としては、常温又は操作温度で液状又は気体上であり、還元反応後に水溶液に添加することにより、微粒子を凝集又は沈殿させ、かつ高分子分散剤(D)を析出させないものであればとくに限定されるものではないが、好適な例として、ハロゲン系炭化水素等を挙げることができる。該ハロゲン系炭化水素としては、炭素原子数1〜4の塩素化合物、臭素化合物、等のハロゲン化合物、塩素系、臭素系統のハロゲン系芳香族化合物が好ましい。
【0075】
以上のようにして、表面に高分子分散剤(D)が存在しないか、又は、高分子分散剤(D)と銅微粒子(P)との重量比(D/P)が0<D/P<0.001の範囲で、表面に高分子分散剤(D)が付着している銅微粒子の分散液を得ることができる。
微粒子分散液中の、銅微粒子(P)表面を覆っている高分子分散剤(D)と銅微粒子(P)との重量比(D/P)の確認は、例えば、下記(i)又は(ii)の方法により行うことができる。
(i)微粒子分散液を採取して、遠心分離等の操作により、微粒子分散液から銅微粒子(P)を分離し、酸化性の溶液中で、高分子分散剤(D)が反応しない条件下で銅粒子を溶解した溶液を調製し、該溶液を液体クロマトグラフィー(Liquid Chromatography)等により定量分析して、重量比(D/P)を測定する。尚、該分析法による高分子分散剤(D)の検出限界は、0.02重量%程度とすることが可能である。
(ii)微粒子分散液を採取して、遠心分離等の操作により、微粒子分散液から微粒子(P)を分離し、溶剤抽出等の操作により、微粒子(P)から高分子分散剤(D)を溶剤中に抽出した後に、必要がある場合には蒸発等の濃縮操作を行い、液体クロマトグラフィー、又は高分子分散剤(D)中の特定の元素(窒素、イオウ等)をX線光電子分光(XPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy))、オージェ電子分光分析(AES(Auger Electron Spectroscopy))等の分析により行うことが可能である。
【0076】
(銅微粒子分散液の被塗布体への付与工程)
次に、上記工程により得られた銅微粒子分散液を、被塗布体に吐出、塗布及び転写のいずれかの方法によって被塗布体上に付与し、所定パターンを有する銅微粒子分散液の液膜を形成する。
銅微粒子分散液の付与方法は、インクジェット法、スクリーン印刷法、ナノインプリント法、ワイヤーバーコート法、ブレードコート法及びロールコート法などを適用可能である。これら付与方法については、後にさらに詳述する。
被塗布体を構成する材料としては、例えば、種々の合成樹脂、絶縁材料、セラミック、金属、半導体、紙、ガラス(SOG膜含む)及びこれらの組合せが挙げられ、その形状については限定されない。
【0077】
前記半導体材料としては、Si、Ge、SiC、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InP、InAs、GaSb、InP、InAs、InSb、ZnO、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、ZnSe,ZnTe,CdS,CdSe、CdTe、HgS、PbS、PbSe、PbTe、AlGaAs、AlInAs、AlInP、GaAsP、GaInAs、GaInP、AlGaAsSb、AlGaInP及びGaInAsP等が挙げられる。
【0078】
(焼成工程)
次に、銅微粒子分散液の液膜を乾燥及び焼成して銅微粒子の焼結配線層を形成する。
このとき、銅微粒子は、表面に高分子分散剤(D)が存在しないか、又は、ごく少量の高分子分散剤(D)で被覆された状態であるので、従来の高分子化合物層で厚く被覆された銅微粒子のように銅微粒子同士の焼結が阻害されることがなく、190〜300℃程度の低温焼成が可能となる。
【0079】
具体的には、乾燥条件は、使用する溶媒にもよるが例えば100〜200℃で15〜30分程度であり、焼成条件は、塗布厚みにもよるが例えば190〜250℃で20〜40分間程度、好ましくは190〜220℃で20〜40分間程度である。
乾燥及び焼成は、水素ガス等の還元ガスを使用することなく、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことができる。
【0080】
以上の工程により、金属材料自体が金、銀及びニッケル等に比較して格段に安価であり、且つ、銀を使用するときのようなエレクトロマイグレーションに起因する配線間の短絡が生じない、銅を使用した導電材が形成される。
得られた導電材は、低温焼成であっても導電性に優れ、その電気抵抗値は、1.0×10−5Ωcm〜10×10−4Ωcm程度を達成することが可能である。
【0081】
また、分散媒(S1)〜(S6)は、銅微粒子分散液の乾燥、焼成の際に、銅微粒子の粒子間相互作用が強くなるように設計されているので、乾燥、焼成過程での銅微粒子の緻密な積層状態を得ることができ、銅微粒子の焼結時における収縮量を最小限に抑えることができる。より詳細には、分散媒として、比誘電率の高いものや、溶媒分子間の相互作用を低下させ分散粒子の溶媒に対する親和性を向上する作用を持つものを用いているため、分散液中の銅微粒子は良好な分散状態(粒子間相互作用が弱い状態)が保たれており、この状態から乾燥・焼成過程において溶媒が蒸発することにより、粒子間相互作用(粒子間引力)が強まり、銅粒子の緻密な積層状態を得ることができる。このため、焼結体内の熱歪みを緩和することができ、被塗布体に対する高い密着性を得ることが可能となる。
【0082】
次に、上記銅微粒子分散液の付与方法として、インクジェット法、スクリーン印刷法、ナノインプリント法及びその他の塗布方法を用いた場合について、より具体的に説明する。
【0083】
−インクジェット法によるパターン形成−
インクジェット法においては、上記銅微粒子分散液をインクジェットプリンターのヘッドから吐出させ、被塗布体に直接描画することで所定のパターンを形成する。吐出面積及び吐出パターンは、コンピュータ制御により任意に設定することができる。インクジェット法としては、圧電素子を用いたピエゾジェット方式やエネルギー発生素子として電気熱変換体を用いたバブルジェット(登録商標)方式が使用可能である。
【0084】
−スクリーン印刷法によるパターン形成−
図1は、スクリーン印刷法を用いたパターン形成の一例を示す概略図である。図1に示すように、スクリーンマスク11は、所定のパターン形状の孔11aが形成されている。スクリーンマスク11と被塗布体である基板16との間にある程度の間隔をもたせた状態で、スキージ12を下降させてスクリーンマスク11を基板16に接触させ押圧する。次いで、スクリーンマスク11を基板16へ押圧した状態で、スキージ12をスクリーンマスク11上で摺動させ、パターン孔11aから銅微粒子分散液13を基板16へ塗布する。そして、スクリーンマスク11を基板16から離間させることで、所定のパターン15が形成される。
【0085】
−ナノインプリント法によるパターン形成−
図2は、ナノインプリント法を用いたパターン形成の一例を説明する概略図である。まず、図2(a)に示すような、スタンパー21を準備する。スタンパー21は、樹脂シート21aと、ナノメートルスケールの微細加工を施すことができるナノインプリント技術により形成された、凹凸による微細パターン21cとを有する。次いで、スタンパー21のパターンの形成された面上に、銅微粒子分散液をスピンコートする。これによりスタンパー21上には、パターン21cの凹凸にしたがい表面に起伏をもつ銅微粒子分散液の液膜23が形成される。なお、銅微粒子分散液の塗布は、液膜23を形成できる方法であればスピンコート以外によっても行うことができる。
次に、図2(b)に示すように、銅微粒子分散液が塗布されたスタンパー21を、被塗布体である基板24に対して、所定の圧力で押し当ててコンタクトプリントを行う。
【0086】
次に、図2(c)に示すように、基板24からスタンパー21を離間させると、スタンパー21の凸部の銅微粒子分散液が基板24上に転写され、基板24上に銅微粒子分散液のパターン25が形成される。
【0087】
−その他の塗布方法によるパターン形成−
まず、図3(a)に示すように、基板34上に、例えばポリメチルメタクリレートからなる高分子樹脂をスピンコート等により塗布し、高分子樹脂膜で被覆された基板を得る。
次に、図3(b)に示すように、基板34及び高分子樹脂膜33を樹脂のガラス転移温度(110℃)以上に加熱し、所定の微細パターンが形成されたスタンパー31を、高分子樹脂膜33対して、所定の温度及び圧力で押し当てる。
【0088】
次に、図3(c)に示すように、スタンパー31を基板34から離間させる。これにより、スタンパー31の微細パターンが高分子樹脂膜33に転写される。
次に、図3(d)に示すように、パターニングされた高分子樹脂膜33の凹部に、銅微粒子分散液36を充填する。充填方法としては、上記のインクジェット法及びスクリーン印刷法の他、ワイヤーバーコート法、ブレードコート法、ロールコート法等の塗布方法を利用することができる。これにより、被塗布体である基板34上に銅微粒子分散液のパターン36が形成される。
【0089】
(基板)
次に、本発明の導電材の形成方法により形成された導電材を、配線として有する基板について説明する。
本発明の基板としては、一方の面に半導体素子が搭載され他方の面に実装基板が接合されるインターポーザ、プリント配線板、電子部品を内蔵する部品内蔵基板及び電子部品と他の電子部品とが実装されてモジュールを形成するモジュール基板等が挙げられる。
【0090】
これら基板の材料としては、例えば、紙基材フェノール樹脂、紙基材エポキシ樹脂、紙基材ポリエステル樹脂、ガラス基材エポキシ樹脂、ガラス基材ポリイミド樹脂、ガラス基材フッ素樹脂などが挙げられる。ガラス基材としては、例えば、ソーダ硝子、無アルカリ硝子、石英ガラスなどを使用することができる。また、種々の合成樹脂;アルミナ(Al2O3)、窒化アルミニウム(AlN)、炭化ケイ素(SiC)などのセラミックス;ノンドープシリコンなどであってもよい。
【0091】
−インターポーザ−
以下に、一方の面に半導体素子が搭載され他方の面に実装基板が接合されるインターポーザにおいて、本発明の導電材を配線として用いた例について説明する。図4に、一例として、本発明の導電材の形成方法により形成した配線を有するインターポーザ40の断面構造を示す。図4に示すように、インターポーザ40は、基板41と、絶縁樹脂層43と、絶縁樹脂層43を貫通する銅の貫通配線45と、所定のパターンを有する上部配線46とを有する。貫通配線45は、例えば、無電解銅メッキ又は銅ペースト充填により形成される。そして、上部配線46は、本発明の銅微粒子分散液を、吐出、塗布及び転写のいずれかの方法によって、被塗布体である絶縁樹脂層43及び貫通配線45上に付与、焼成して形成される。
【0092】
所定のパターンを有する上部配線46には、LSIチップのような半導体素子を搭載可能である。例えば、半導体素子に外部端子として予め形成された半田バンプ(不図示)とインターポーザ40の上部配線46に形成されたバンプ(不図示)とをフリップチップ接合することで、半導体素子が搭載された半導体パッケージが得られる。半導体パッケージは、貫通配線45の外部露出面に半田ボールが形成され、実装基板に実装される。
インターポーザ40の基板41としては、上記のような基板材料から選択できるが、本発明においては、低温焼成が可能であることから、比較的耐熱温度の低い樹脂基板を使用することが可能となる。
このようなインターポーザにおいては、低温焼成であっても導電性に優れた配線が形成されるので、回路をより微細に形成することが可能となり、半導体素子及び半導体パッケージの小型化に対応できる。
【0093】
−部品内蔵基板−
次に、電子部品を内蔵する部品内蔵基板において、本発明の導電材を配線として用いた例について説明する。図5に、一例として、本発明の導電材の形成方法により形成した配線を有する部品内蔵基板50の断面構造を示す。図5に示すように、部品内蔵基板50は、例えばPETなどからなる絶縁性基材51と、例えばエポキシ樹脂などからなる接着層52と、突起電極55を有する電子部品としてのICチップ53と、電極端子56を有するチップ状のコンデンサ54と、電子部品の固定と耐湿信頼性を確保するための絶縁層57と、配線パターン58とを有する。配線パターン58は、ICチップ53の突起電極55及びチップコンデンサ54の電極端子56の露出面に接続されている。そして、この配線パターン58は、本発明の銅微粒子分散液を、吐出、塗布及び転写のいずれかの方法によって、被塗布体である絶縁層57上に付与、焼成して形成される。このようにして、絶縁層57の表面に配線パターン58を備えた電子部品内蔵基板50が得られる。
【0094】
絶縁層57としては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PPE(ポリフェニレンエーテル)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、BTレジン(ビスマレイミドトリアジン)、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂などの樹脂材料を用いることができるが、本発明においては、低温焼成が可能であることから、比較的耐熱温度の低い樹脂材料を使用することが可能となる。
さらに、低温焼成が可能であることから、例えば、内蔵部品として積層コンデンサを用いる場合に、熱による内部クラックの発生を防止できるといった効果が得られる。
【0095】
また、上述のように、本発明の基板は配線の低温焼成が可能であり、その基板材料として樹脂を使用することができることから、各種電子機器の部品として、本発明による樹脂基板を使用すれば、電子機器の小型軽量化及び低コスト化に対する要求に応えることが可能となる。また、基板に形成された配線は被塗布体に対する密着性に優れるので、本発明の基板を備える電子機器の信頼性を高めることができる。
特に、携帯電話・デジタルカメラなど小型電子機器の場合、集積化に伴って配線導体が細く且つ薄くなり、高抵抗化してしまうが、本発明の導電性の高い配線材を用いることで、配線の微細化及び電子機器の小型化が進んでも高い導電性を持つため、電気信号の伝達性の低減が抑えられ、信頼性を高めることができる。また、大型のテレビ受像機や冷蔵庫など大型家電製品を作製する際には、大面積配線を低コストで実現することができる。さらに、導電性も高いので、高抵抗になりやすい長距離配線の際においても、電気信号伝達の信頼性も高くなる。
【0096】
電子機器としては、上記の携帯電話、デジタルカメラ、テレビ受像機の他、パーソナルコンピュータ(PC)及びエンジニアリング・ワークステーション(EWS)、ゲーム機、ラジオ、CDプレイヤー、DVDプレイヤー、ビデオカメラ、ハードディスクレコーダー、プリンター、電子手帳、電子卓上計算機、電子辞書、カーナビゲーション装置、POS(Point-Of-Sale)端末などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0097】
(表示装置)
次に、本発明の導電材の形成方法により形成された導電材を、配線又は電極として有する表示装置について説明する。
表示装置としては、有機ELディスプレイ及び液晶ディスプレイ等が挙げられる。
【0098】
−有機ELディスプレイ(1)−
以下に、有機ELディスプレイにおいて、本発明の導電材を、駆動用回路に導通する配線として用いた例について説明する。
図6に、有機ELディスプレイに含まれる、有機EL素子を用いたパッシブマトリックス型発光装置を示す。図6(a)は上面図であり、図6(b)は、図6(a)に示すP−P’で切断した時の断面図である。
【0099】
図6(a)において、符号61はプラスチック基板である。符号62は酸化導電膜からなる走査線(陽極)であり、例えば、酸化亜鉛に酸化ガリウムを添加した酸化物導電膜を用いることができる。符号63は金属膜からなるデータ線(陰極)であり、例えばビスマス膜を用いることができる。符号64はアクリル樹脂からなるバンクであり、データ線63を分断するための隔壁として機能する。走査線62とデータ線63は両方とも、ストライプ状に複数形成されており、互いに直交するように設けられている。図6(a)では図示していないが、走査線62とデータ線63の間には有機EL層が挟まれており、交差部65が画素となる。
【0100】
符号68は走査線62に接続された配線群を表し、符号69はデータ線63に接続された接続配線66の集合からなる配線群を表す。これら配線群68及び69は、それぞれTABテープ57を介して外部の駆動回路に接続されている。そして、これら配線群68及び69は、銅微粒子分散液を、被塗布体である基板61上に付与、焼成して形成される。
基板61としては、例えば、ポリイミド、ポリアミド、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、PES(ポリエチレンサルファイル)、PC(ポリカーボネート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)もしくはPEN(ポリエチレンナフタレート)を板状、もしくはフィルム上にしたものを使用することができるが、本発明においては、低温焼成が可能であることから、比較的耐熱温度の低い樹脂材料を使用することが可能となる。
【0101】
また、図6で示した発光装置においては、配線群68及び69の低温焼成が可能であることから、配線群68及び69の近傍に存在する耐熱温度の低い有機EL層や樹脂部材等に与える熱影響を低減することができる。これにより、このような発光装置を備えた有機ELディスプレイの長寿命化が可能になる。
【0102】
−有機ELディスプレイ(2)−
次に、有機ELディスプレイにおいて、本発明の導電材を、駆動用回路に導通する配線として用いた他の例について説明する。
図7は、有機ELディスプレイに含まれる、有機ELユニット700の一部分を拡大して示す分解斜視図である。有機ELユニット700は、複数のIC(集積回路)基板701と、1枚の有機ELパネル710を有している。各IC基板701のドライバIC702は、フレキシブル配線板703を用いて、それぞれ有機ELパネル710の裏面710B側の電気接続部分に電気的に且つ機械的に接続され、大型の有機ELパネル710を、破線で示すように区分面711に分けてそれぞれ駆動する。
【0103】
図8は、IC基板701と有機ELパネル710とが貼り合わされ、それぞれの電気接続部分が電気的に且つ機械的に接続された状態を示す断面図である。図8では、IC基板701は、第1基板701aと第2基板701bとが積層された積層構造を有している。
図8において、透明基板721は、たとえばガラス基板やプラスラック基板を用いることができる。透明基板721がガラス基板の場合には、たとえばソーダ硝子、無アルカリ硝子、石英硝子などを使用することができ、プラスチック基板の場合には、たとえばPC(ポリカーボネート)、フッ素PI(ポリイミド)、PMMA(アクリル樹脂)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PAR(ポリアリレート)、PES(ポリエーテルスルフォン)、PEN(ポリエーテルニトリル)、シクロ・オレフィン系樹脂などを用いることができる。
【0104】
透明基板721の表面と裏面には、ガスバリア膜722が形成されている。一方のガスバリア膜722の上には、抵抗値を下げるための補助電極723が形成されている。この補助電極723は、たとえばクロムにより作られておりたとえば櫛状に形成されている。
補助電極723の上には、透明電極(陽極)724が形成されている。この透明電極704は、ストライプ状に形成されており、たとえばITO膜(Indium tin oxide膜)である。
透明電極724の上には第1絶縁層725が形成されている。第1絶縁層725の上には、有機EL膜726が形成されている。この有機EL膜726は、正孔輸送層と発光層とが積層された多層構造である。第1絶縁層725と有機EL膜726の上には、陰極(カソード電極)727が形成されている。第1絶縁層725は、たとえばSiN等により作られており、電気絶縁性ばかりでなく水分や酸素に対するガスバリア機能を有している。陰極727は、たとえばフッ化リチウム(LiF)等からなる。第1絶縁層725と陰極727の上には、第2絶縁層728が形成されている。この第2絶縁層728は、素子全体に亘って形成されており、たとえばSiN、AlN等により作られている。
【0105】
第2絶縁層728と第1絶縁層725には、開口部730,731が形成されている。この開口部730,731には、それぞれ導電性を有する金属、たとえばNiの電極部分732,733が設けられている。第2絶縁層728の上には、接着剤734を介して、IC基板701が貼り付けられている。接着剤734は、たとえば両面粘着テープである。
【0106】
そして、接着剤734の開口部735,736の中には、導電性の金属膜740が設けられている。この金属膜740は、銅微粒子分散液を、被塗布体である電極部分732,733上に付与、焼成して形成される。
【0107】
IC基板701は、穴750を有しており、これらの穴750を形成する周囲部分760には、導電性の接続部分751があらかじめ形成されている。この導電性の接続部分751は、たとえばCuを採用することができる。導電性の接続部分751は、IC基板701の導体パターン752に電気的に接続されている。
また、溶融半田ボール770によって、IC基板701の導電性の接続部分751と、有機ELパネル710の導電性の金属膜740とが、電気的かつ機械的に接続されている。これにより、IC基板701の各導体パターン752は、導電性の接続部分751、溶融半田ボール770及び導電性の金属膜740を介して、有機ELパネル710の陰極727と透明電極724に対して電気的にかつ機械的に接続される。
【0108】
このような有機ELパネル710では、透明電極724と、陰極727の間に電流が印加されると、陰極727から注入された正孔が、有機EL膜の正孔輸送層を経て発光層に達するとともに、透明電極724から注入された電子が有機EL膜726の発光層に到達する。従って、発光層内で電子−正孔の再結合が生じる。この時に、所定の波長を持った光が発生し、この光は、透明基板721から外に射出することになる。
【0109】
図7及び図8で示した有機ELユニット700においても、導電性の金属膜740の低温焼成が可能であることから、金属膜740の近傍に存在する耐熱温度の低い有機EL層726や樹脂部材等に与える熱影響を低減することができる。これにより、このような有機ELユニットを備える有機ELディスプレイの長寿命化が可能になる。
【0110】
また、各種電子機器の部品として、本発明による寿命の長い表示装置を使用すれば、電子機器自体を長寿命化することができる。また、表示装置内に形成された配線は被塗布体に対する密着性に優れるので、電子機器の信頼性を向上させることができる。
表示装置を備える電子機器としては、テレビジョン受像機、携帯電話、コンピュータのモニター装置、携帯情報端末、デジタルスチルカメラ、ビデオカメラ、携帯用ゲーム機などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0111】
(光モジュール)
次に、本発明の導電材の形成方法により形成された導電材を、配線として有する光モジュールについて説明する。
【0112】
−光モジュール(1)−
図9に、光モジュールの概略図を示す。符号905は受光素子901及び発光素子904を搭載するためのSi基板である。発光素子901と受光素子904の間には、電気的クロストーク低減を目的として導体壁919が設置されている。受光素子901及び発光素子904を駆動するための配線パターン906a,906bは、導体壁919を挟む態様で導体壁919の両サイドに分離配置されている。発光素子901、受光素子904は、配線パターン906a,906bをアライメントマークとして用いて位置決めされ、半田により固定されている。両素子901,904の光出射方向および、光入射方向は、光ファイバ911と結合する方向に設置されている。
【0113】
符号913は、光モジュールの外形の一部を構成するリードフレームであり、受光素子901、発光素子904を搭載したSi基板905の他、受光素子901からの検出電流を取り出すためのバイアス及び出力端子915、916、発光素子904の駆動電流を供給するための+端子及び−端子917、918及び、接地端子914が設けられており、これに、光ファイバ911との接続を行うための光フェルール912が取り付けられる。
また、リードフレーム913上には、受光素子901からの検出信号を増幅して、光モジュール外部に送り出すためのプリアンプ203が取り付けられている。
【0114】
そして、Si基板905上の各素子や配線パターン、あるいは、リードフレーム913上の端子やプリアンプ903は、配線902によって接続されている。これら配線902は、インクジェット法により、銅微粒子分散液を吐出、焼成して形成される。
【0115】
このように、従来のボンディングワイヤの代わりに、無加圧のインクジェット法により各素子や端子間を接続することにより、配線部の高さを低く抑えることができるので、光デバイスのパッケージの薄型化に対応可能である。
また、配線902の低温焼成が可能であることから、光デバイスのパッケージのコストダウンを目的としたパッケージ材料の樹脂化の要求に対しても対応可能である。また特に、パッケージ材料の樹脂化によって、パッケージ内に組み込まれる金属材料からなるヒートスプレッダーとの熱膨張係数のミスマッチが増加する場合には、低温焼成が有効となる。
【0116】
−光モジュール(2)−
図10は、光モジュールの他の例を示す概略図である。この光モジュールは、光ファイバに結合されて光信号を受信する光受信器(ハイブリッド光受信モジュール)である。
図10の光モジュールは、キャンパッケージ101内に導波路型受光素子102、プリアンプIC104、バイパスコンデンサ106を実装して構成され、導波路型受光素子102を球レンズ105に光学的に結合させた構造を有する。導波路型受光素子2をその上面に実装されたプリアンプIC104を、キャンパッケージ101のステム101aに立設したピラー101b上に実装し、このプリアンプIC104を介して導波路型受光素子102を球レンズ105との光学的結合位置に位置付けるようにしている。また同時にプリアンプIC104を導波路型受光素子2のヒートシンクとして機能させるものとなっている。
【0117】
導波路型受光素子102をプリアンプIC4上に実装することによって生まれた前記ピラー101b上の余剰スペースには、バイパスコンデンサ106が実装される。
そして、これらの導波路型受光素子102、プリアンプIC104及びバイパスコンデンサ106との間を、配線107によって接続し、更にリード端子108との間を接続することで光モジュールが実現されている。これら配線107は、インクジェット法により、銅微粒子分散液を吐出、焼成して形成される。なお図10では、便宜上、配線107をキャンパッケージ101内の空間に図示しているが、実際は、本発明の銅微粒子分散液は、キャンパッケージ101内壁やステム101aなどの被塗布体上に塗布され、配線される。
このような光モジュールにおいても、配線107の低温焼成が可能であることから、光デバイスのパッケージのコストダウンを目的としたパッケージ材料の樹脂化の要求に対しても対応可能である。
【0118】
−光モジュール(3)−
図11は、光モジュールのさらに他の例を示す概略図である。図11の光モジュールは、基板112とパッケージ116とを備えている。基板112の搭載面112bには電気の配線パターン113が中央に複数形成され、これらの配線パターン113を挟む幅方向両側に2本のV溝112cが設けられている。また、基板112は、搭載面112bの前部に半導体レーザ(以下、単に「LD」という)114と光ダイオード115が搭載され、それぞれ所定の配線パターン113と接続されている。
【0119】
パッケージ116は、導電性金属からなる搭載部116aと複数のリード119から成るリードフレームとが一体にモールド成形された板状の部材で、搭載部116a及び複数のリード119が表面に露出している。各リード119は、幅方向外方へ延出した後、上方又は下方へ垂下している。また、パッケージ116は、前部に段部116bが、後部に係合壁116cが、それぞれ形成され、幅方向両側には側壁116dが設けられている。
そして、各配線パターン113と対応するリード119との間は、配線118によって接続されている。これら配線118は、インクジェット法により、銅微粒子分散液を吐出、焼成して形成される。
【0120】
図11に示す光モジュールにおいては、従来のボンディングワイヤの代わりに、無加圧のインクジェット法により各素子や端子間を接続することにより、配線118の配線長を短くすることができるので、配線118に起因する寄生インダクタンスの影響を低減することができる。
また、配線118の低温焼成が可能であることから、光デバイスのパッケージのコストダウンを目的としたパッケージ材料の樹脂化の要求に対しても対応可能である。
【0121】
本発明の光モジュールは、例えば、パーソナルコンピュータ、PDA(携帯型情報端末)、電子手帳など各種電子機器に備えられ、これらの電子機器において機器内部での情報通信や外部機器等との間における情報通信に用いられる。
【0122】
(半導体素子)
次に、本発明の導電材の形成方法により形成された導電材を、配線又は電極として有する半導体素子について説明する。
半導体素子としては、主に表示装置に応用される薄膜トランジスタや、シリコンあるいは化合物半導体を用いたMOSトランジスタ集積回路(IC,LSI)等が挙げられる。
【0123】
−薄膜トランジスタ(1)−
薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor,TFT)において、本発明の導電材を電極として用いた例について説明する。図12に、一例として、薄膜トランジスタである有機FET(Field Effect Transistor)を含む有機ELパネルの画素の断面構造を示す。有機FETは、有機ELパネルの各画素のスイッチング素子として機能する。
【0124】
図12に示すように、有機ELパネル1200は、有機FET1201と有機LED(Light Emitting Diode)1202とを有する。有機FET1201は、ガラス基板1203上に、ゲート電極1204と、ゲート絶縁膜1205と、ソース電極1206と、ドレイン電極1207と、有機化合物からなる半導体層1208が形成されている。有機LED1202は、ガラス基板1203上に、陽極としての透明導電膜1210、正孔輸送層1211,発光層1212及び陰極1213が、この順に形成されている。
【0125】
このような構成において、ゲート電極1204、ソース電極1206及びドレイン電極1207のうちの少なくとも1の電極は、インクジェット法により、銅微粒子分散液を吐出し、焼成して形成される。
有機ELパネル1200に・BR>ィいては、有機FET1201の電極の低温焼成が可能であるので、電極近傍に存在する有機半導体層1208や発光層1212に与える熱影響を低減することができ、有機ELパネル1200及びこれを備える有機ELディスプレイの長寿命化が可能になる。
また、本発明の銅微粒子分散液を用いて形成された電極は、被塗布体に対する密着性に優れるので、このような有機FETにおける電極のように、焼結時の収縮量が異なる異種材質間をつなぐ場合にも剥がれ難いという効果がある。
【0126】
−薄膜トランジスタ(2)−
図13に、薄膜トランジスタ(TFT)を含む液晶パネルの断面構造を示す。薄膜トランジスタは、液晶パネルの液晶素子のスイッチング素子として機能する。
図13に示すTFTのゲート電極、ソース電極及びドレイン電極のうちの少なくとも1の電極は、インクジェット法により、銅微粒子分散液を吐出し、焼成して形成される。
本発明の銅微粒子分散液を用いて形成された電極は、低温焼成であっても導電性に優れる。また、被塗布体に対する密着性に優れるので、このような液晶パネルのTFTにおける電極においても、上記の有機EFTの電極と同様に剥がれ難いという効果がある。
【0127】
−集積回路−
図14に、CMOS LSIの断面構造を示す。Si基板の上面に回路が形成されたLSI形成部がある。図中、LSI形成部が位置する側を上部と称し、その反対側を下部と称する。図14においては、この上部側を、下方向に向けて図示している。
LSI形成部の上には、配線1、中間配線及びグローバル配線を含む多層配線部が形成されている。グローバル配線(下部配線)の配線ピッチは、10〜20μmより大きいため、本発明の銅微粒子分散液を用いて、インクジェット法により形成することができる。
【0128】
図15は、グローバル配線(下部配線)の3次元的な構造を示す模式図である。配線層151と配線層152、配線層152と配線層153及び配線層153と配線層154は、それぞれビアによって接続されている。これらの配線層及びビアは、本発明の銅微粒子分散液を用いて、インクジェット法により形成される。
【0129】
図16は、図15に示すようなグローバル配線を形成するプロセスの一例を示す図である。まず、図16(a)に示すように、第1の絶縁層161上に形成された第1の配線層162上に、第2の絶縁層163を形成し、この第2の絶縁層163にナノインプリント用のスタンパー165を押し当て、スタンパー165の形状を転写する。
【0130】
次に、図16(b)に示すように、第2の絶縁層163を、さらに公知のエッチング技術によりエッチングし、第1の配線層162に達するビアホールとなる孔164を形成する。
【0131】
次に、図16(c)に示すように、インクジェット法により、孔164内に銅微粒子分散液を充填し、さらに第2の絶縁層162上に所定のパターンを直接描画して焼成する。これにより、第1の配線層162とビアを介して接続された第2の配線層166が形成される。
【0132】
次に、図16(d)に示すように、第2の配線層166上に、第3の絶縁層167を形成し、この第3の絶縁層167にナノインプリント用のスタンパー168を押し当て、スタンパー168の形状を転写する。
【0133】
次に、図16(e)に示すように、第3の絶縁層167を、さらに公知のエッチング技術によりエッチングし、第2の配線層166に達するビアホールとなる孔169を形成する。
【0134】
次に、図16(f)に示すように、インクジェット法により、孔169内に銅微粒子分散液を充填し、さらに第3の絶縁層167上に所定のパターンを直接描画して焼成する。これにより、第2の配線層166とビアを介して接続された第3の配線層170が形成される。
以上のプロセスにより、グローバル配線を形成することができる。
【0135】
このようにして形成されたグローバル配線は、低温焼成であっても導電性に優れ、且つ、被塗布体に対する密着性にも優れるので、半導体素子の特性及び信頼性の向上に寄与することができる。
【0136】
本発明の半導体素子は、上述した基板を有する電子機器と同様の電子機器に備えられ、同様の効果を奏することができる。
【0137】
(実施例)
次に、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0138】
まず、以下の実施例、比較例における評価方法を以下に記載する。
【0139】
(1)焼成膜の電気抵抗
焼成膜の電気抵抗値は、直流四端子法(使用測定機:Keithley社製、デジタルマルチメータDMM2000型(四端子電気抵抗測定モード))を用いて測定した。電気抵抗値の評価は下記の方法によった。
○:1×10-4[Ω・cm]未満
△:1×10-2[Ω・cm]未満、10×10-4[Ω・cm]以上
×:1×10-2[Ω・cm]以上
【0140】
(2)焼成膜の基板密着性
JIS D0202−1988に準拠して焼成膜のテープ剥離試験を行った。評価試料の描画パターンを1mmずつ、計10マス区切り、セロハンテープ(「CT24」,ニチバン(株)製)を用い、フィルムに密着させた後剥離した。判定は10マスの内、剥離しないマス目の数から以下の規準により表した。
○:剥離したマス目が1マス以下
△:剥離したマス目が4〜2マス
×:5マス以上剥離した
【0141】
(3)焼成膜の耐曲げ歪み性
ステンレス棒に被塗布体の裏面を接触させて曲げることにより、曲げ歪み(ε)を加えた。このとき、曲げ歪みを加えない状態、および前述のような曲げ歪みを加えた状態で電気抵抗率を測定して、曲げ歪みを加えない場合の電気抵抗率と曲げ歪みを加えた状態の電気抵抗率の比較を行い、以下の基準により評価した。
○:曲げ歪みを加えても電気抵抗値がほとんど変化しない
△:曲げ歪みを加えることで電気抵抗値が増加(10倍未満)
×:曲げ歪みを加えることで電気抵抗値が大きく増加(10倍以上)
【0142】
1.銅微粒子分散液の調整
まず、高分子分散剤で覆われた銅微粒子を下記方法で調製した。
銅微粒子の原料として酢酸銅((CH3COO)2Cu・1H2O)0.2gを蒸留水10mlに溶解させた酢酸銅水溶液10mlと、金属イオンの還元剤として水素化ホウ素ナトリウムを5.0mol/リットル(l)の濃度となるように蒸留水に溶解して、水素化ホウ素ナトリウム水溶液100mlを調製した。その後、上記水素化ホウ素ナトリウム水溶液に、更に高分子分散剤としてポリビニルピロリドン(PVP、数平均分子量約3500)0.5gを添加して、攪拌溶解させた。
【0143】
窒素ガス雰囲気中で、前記還元剤と高分子分散剤とが溶解している水溶液に、上記酢酸銅水溶液10mlを滴下した。この還元反応液を約60分間よく攪拌しながら反応させた結果、一次粒子の平均粒径5〜10nmの銅微粒子が水溶液中に分散した微粒子分散液が得られた。
【0144】
次に、上記方法で得られた銅微粒子が分散した分散液100mlに、凝集促進剤としてクロロホルムを5ml添加してよく攪拌した。数分間攪拌した後、静置して反応液である水相を遠心分離機に供給し、銅微粒子を分離、回収した。その後、得られた銅微粒子と30mlの蒸留水とを試験管に入れ、超音波ホモジナイザーを用いてよく攪拌した後、遠心分離機で粒子成分を回収する水洗浄を3回、続いて、同じく試験管中で、得られた銅微粒子と30mlの1−ブタノールとを入れよく攪拌した後、遠心分離機で銅微粒子を回収するアルコール洗浄を3回行った。以上の工程により、最終分散溶媒に分散させる銅微粒子が得られた。
【0145】
別途、本発明の混合有機溶媒の一例として、有機媒(A)としてN-メチルアセトアミドを、有機溶媒(B)としてジエチルエーテルを、有機溶媒(C)としてエチレングリコールを、有機溶媒(E)としてトリエチルアミンを用い、これらを表1及び表2に示す溶媒混合比にて混合し、実施例1−1〜1−25の混合有機溶媒をそれぞれ調整した。
【0146】
上記の方法によって得られた銅微粒子を、上記実施例1−1〜1−25の有機混合溶媒10mlに分散させ、超音波ホモジナイザーを用いて分散液中に1時間超音波振動を与えることで、実施例1−1〜1−25の銅微粒子分散液を調整した。
【0147】
2.導電性評価
上記の方法で調製した銅微粒子分散液(実施例1−1〜1−25)、並びに比較例1として、(株)アルバック (ULVAC, Inc.) 製、銅ナノ粒子分散液(商品名:Cuナノメタルインク「Cu1T」)、比較例2として、蒸留水に上記の方法によって得られた銅微粒子を分散させた銅粒子分散液、比較例3−1〜3−7として、表3に示す混合比の溶媒に、上記の方法によって得られた銅微粒子を分散させた銅粒子分散液を用い、インクジェット用ヘッド(メクト社製:MICROJET(登録商標) Model MJ−040)に入れ、幅が50mm、厚みが50μmのポリイミドフィルム((株)カネカ製、アピカルAH)上に直線パターンを100本形成した。窒素雰囲気中120℃で30分間乾燥した後、さらに窒素雰囲気中、160℃、190℃、220℃、260℃、300℃でそれぞれ1時間熱処理することによって焼成膜を得た。得られた焼成膜の電気抵抗を測定した。
【0148】
測定結果を表1〜3に示す。表1から、実施例1−1〜1−25の銅微粒子分散液は、ポリイミドフィルム上にインクジェットによりパターン描画し乾燥した後、窒素雰囲気中210℃以上の温度での熱処理により導電性の良い焼成膜とすることができた。特に、有機溶媒(C)が95体積%以上のような場合(実施例1−7、1−13、1−23)には、焼結温度が180℃の低温でも電気抵抗がよく、有機溶媒(C)が20体積%未満の場合には、焼結温度180℃、190℃の低温側で電気抵抗があまりよくないことがわかった。
一方、比較例において得られた焼成膜は、250℃以上の温度で熱処理を行っても抵抗が高いままであった。
【0149】
【表1】

【0150】

【表2】

【表3】

【0151】
3.密着性評価
また、上記の実施例1−1〜1−25の銅微粒子分散液を用いて、上記の方法で220℃の熱処理により作製した焼成膜について、テープ剥離試験を行った。
【0152】
試験結果を表1及び表2に示す。表1及び表2から、実施例1−1〜1−25の銅微粒子分散液から得られた焼成膜は、密着性に優れていた。ただし、導電性評価において、焼結温度が180℃の低温でも電気抵抗がよかった、有機溶媒(C)が95体積%以上のような場合(実施例1−7、1−13、1−23)では、密着性があまり優れているとはいえないことがわかった。
【0153】
以上より、有機溶媒(A)〜(D)を所定の割合の範囲内で配合を行った分散媒を用いることで、導電性および密着性を両立した導電材を形成することができた。
【0154】
次に、銅微粒子の表面を覆っている高分子分散剤の分析を行った。
まず、上記工程で得られた銅微粒子に、0.2M硝酸水溶液、0.2M塩酸水溶液、メタノールを1:1:2で混合することで調製した溶離液を入れ、銅粒子成分を溶解させた。得られた溶液を適量の水酸化ナトリウム水溶液で中和した後、昭和電工(株)製、ゲル濾過クロマトグラム(GPC、ディテクター:Shodex RI SE−61、カラム:Tosoh TSKgel G3000PWXL)を用いて高分子分散剤成分の含有量を調べた。その結果、使用した高分子分散剤成分(ポリビニルピロリドン)はまったく検出されなかった。尚、該測定装置の検出限界は、0.02重量%である。
この実験結果と測定装置の検出感度から、本製法により得られた銅微粒子に付着した高分子分散剤量(D)は、微粒子量(P)との重量比(D/P)として、少なくとも0.001未満であることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0155】
【図1】本発明の実施形態に係るスクリーン印刷法を用いたパターン形成の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の実施形態に係るナノインプリント法を用いたパターン形成の一例を示す概略図である。
【図3】本発明の実施形態に係る塗布法を用いたパターン形成の他の例を示す概略図である。
【図4】本発明の導電材の形成方法により形成した配線を有するインターポーザの断面図である。
【図5】本発明の導電材の形成方法により形成した配線を有する部品内蔵基板の断面図である。
【図6】図6(a)は、本発明の導電材の形成方法により形成した配線を有する発光装置の上面図であり、図6(b)は、図6(a)に示すP−P‘で切断したときの断面図である。
【図7】本発明の導電材の形成方法により形成した配線を有する有機ELユニットの一部を拡大して示す分解斜視図である。
【図8】本発明の導電材の形成方法により形成した配線を有する有機ELユニットの断面である。
【図9】本発明の導電材の形成方法により形成した配線を有する光モジュールの一例を示す概略図である。
【図10】本発明の導電材の形成方法により形成した配線を有する光モジュールの他の例を示す概略図である。
【図11】本発明の導電材の形成方法により形成した配線を有する光モジュールのさらに他の例を示す概略図である。
【図12】本発明の導電材の形成方法により形成した電極を有する有機ELパネルの断面図である。
【図13】本発明の導電材の形成方法により形成した電極を有する液晶パネルの断面図である。
【図14】本発明の導電材の形成方法により形成した電極を有するCMOS LSIの断面図である。
【図15】グローバル配線の3次元的な構造を示す模式図である。
【図16】グローバル配線を形成するプロセスの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0156】
11 スクリーンマスク
11a パターン孔
13 銅微粒子分散液
15 パターン
16 基板
21 スタンパー
21a 樹脂シート
21c 微細パターン
23 液膜
24 基板
25 銅微粒子分散液パターン
31 スタンパー
33 高分子樹脂膜
34 基板
36 銅微粒子分散液
40 インターポーザ
41 基板
43 絶縁樹脂層
45 貫通配線
46 上部配線
50 部品内蔵基板
51 絶縁性基材
52 接着層
55 突起電極
57 絶縁層
58 配線パターン
61 プラスチック基板
68,69 配線群
102 導波路型受光素子
104 プリアンプIC
106 バイパスコンデンサ
107 配線
108 リード端子
112 基板
116 パッケージ
118 配線
119 リード
700 有機ELユニット
701 IC基板
710 有機ELパネル
703 フレキシブル配線板
732,733 電極部分
740 金属膜
901 受光素子
902 配線
904 発光素子
905 Si基板
913 リードフレーム




【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次粒子の平均粒径が1〜150nmの銅微粒子(P)を、
(i)アミド系化合物を含む有機溶媒(A)5〜90体積%と、常圧における沸点が20〜100℃である低沸点の有機溶媒(B)5〜45体積%と、常圧における沸点が100℃を超え、且つアルコール及び/又は多価アルコールからなる有機溶媒(C)5〜90体積%とを含む分散媒(S1)、
(ii)アミド系化合物を含む有機溶媒(A)5〜95体積%と、常圧における沸点が100℃を超え、アルコール及び/又は多価アルコールからなる有機溶媒(C)5〜95体積%とを含む分散媒(S2)、
(iii)常圧における沸点が100℃を超え、且つ分子中に1又は2以上の水酸基を有するアルコール及び/又は多価アルコールからなる有機溶媒(C)を含む分散媒(S3)、
(iv)アミド系化合物を含む有機溶媒(A)24〜64体積%と、常圧における沸点が20〜100℃である低沸点の有機溶媒(B)5〜39体積%と、常圧における沸点が100℃を超え、且つアルコール及び/又は多価アルコールからなる有機溶媒(C)30〜70体積%と、アミン系化合物を含む有機溶媒(E)1〜40体積%とを含む分散媒(S4)、
(v)アミド系化合物を含む有機溶媒(A)30〜94体積%と、常圧における沸点が100℃を超え、且つアルコール及び/又は多価アルコールからなる有機溶媒(C)30〜94体積%,アミン系化合物を含む有機溶媒(E)1〜40 体積%と、を含む分散媒(S5)及び
(vi)常圧における沸点が100℃を超え、且つアルコール及び/又は多価アルコールからなる有機溶媒(C)60〜99体積%と、アミン系化合物を含む有機溶媒(E)1〜40体積%と、含む分散媒(S6)
から選択される分散媒(S)に分散させて銅微粒子分散液を調整する工程と、
前記銅微粒子分散液を、吐出、塗布及び転写のいずれかの方法によって被塗布体上に付与して、所定パターンを有する銅微粒子分散液の液膜を形成する工程と、
前記所定パターンを有する銅微粒子分散液の液膜を焼成して焼結導電層を形成する工程と
を有することを特徴とする導電材の形成方法。
【請求項2】
前記分散媒(S)中の銅微粒子(P)は、
(a)表面に高分子分散剤が実質的に存在しないか、又は、
(b)高分子分散剤(D)と銅微粒子(P)との重量比(D/P)が0<D/P<0.001の範囲で、表面に高分子分散剤(D)が付着していることを特徴とする請求項1に記載の導電材の形成方法。
【請求項3】
前記銅微粒子分散液の液膜を焼成する際の温度は、190〜300℃の範囲であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の導電材の形成方法。
【請求項4】
前記銅微粒子分散液の吐出、塗布及び転写方法は、インクジェット法、スクリーン印刷法、ナノインプリント法、ワイヤーバーコート法、ブレードコート法及びロールコート法を含むことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の導電材の形成方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の導電材の形成方法により形成された導電材。
【請求項6】
請求項5に記載の導電材を、配線として有する基板。
【請求項7】
前記基板は、一方の面に半導体素子が搭載され他方の面に実装基板が接合されるインターポーザ、プリント配線板及び、電子部品を内蔵する部品内蔵基板を含むことを特徴とする請求項6に記載の基板。
【請求項8】
請求項5に記載の導電材を、配線又は電極として有する表示装置。
【請求項9】
前記表示装置は、有機ELディスプレイ及び液晶ディスプレイを含むことを特徴とする請求項8に記載の表示装置。
【請求項10】
請求項5に記載の導電材を、配線として有することを特徴とする光モジュール。
【請求項11】
請求項5に記載の導電材を、配線又は電極として有する半導体素子。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−105040(P2009−105040A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−257459(P2008−257459)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】