説明

成膜方法、成膜装置、圧電体膜、圧電素子、及び液体吐出装置

【課題】成膜する膜の組成及び基板サイズによらず、面内方向の組成等の膜特性を高度に均一化することが可能な成膜方法を提供する。
【解決手段】基板BとターゲットTとを対向させて、プラズマを用いた気相成長法により基板B上にターゲットTの構成元素を含む膜を成膜するに際して、ターゲットTの表面から基板B側に2〜3cm離れた位置のプラズマ空間のプラズマ電位Vs(V)の基板Bの面内方向のばらつきを±10V以内に調整して、成膜を行う。ターゲットTの表面から基板20側に2〜3cm離れた位置におけるガス圧力の基板Bの面内方向のばらつきを±1.5%以内に調整して、成膜を行うことが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマを用いた気相成長法により基板上にターゲットの構成元素を含む膜を成膜する成膜方法及び成膜装置に関するものである。本発明はまた、この成膜方法により成膜された圧電体膜、及びこれを備えた圧電素子と液体吐出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スパッタリング法は、基板とターゲットとを対向配置させ、減圧下でプラズマ化させたガスをターゲットに衝突させ、そのエネルギーによりターゲットから飛び出した分子や原子を基板に付着させる成膜方法である。特許文献1,2には、一般的なスパッタリング成膜において、面内方向の膜厚分布を均一化させることを目的とした成膜装置が開示されている。
【0003】
特許文献1には、成膜が行われる処理室を真空排気するための排気流路側に、プラズマ化させるガスのガス導入口を備えたスパッタ成膜装置が開示されている(請求項1及び図1等)。この装置においては、処理室内の圧力勾配が抑えられて、面内方向の膜厚分布を均一化できることが記載されている(段落0019)。
【0004】
特許文献2には、成膜が行われる処置室と排気室との間の隔壁の領域に、プラズマ化させるガスの流れを制限するガス制限手段(又はガス調整手段)を設けた成膜装置が開示されている(請求項1,2,4,5)。具体的な態様としては、処置室と排気室との間の隔壁の領域に設けられたガス制限板と、排気室に設けられたシャッタとから構成されたガス制限手段が記載されている(請求項7,8、図1等)。
【0005】
特許文献2には、上記ガス制限手段によって、処理室内のプラズマ密度分布を一様にできること(請求項1,4)、及び処理室内のガスの圧力勾配を緩和できること(請求項2,5)が記載されている。そして、これらの効果により、面内方向の膜厚分布を均一化できることが記載されている(段落0024等)。
【0006】
特許文献2にはまた、上記ガス制限手段によって、ガス導入側、排気側共にアース面で囲むことにより処理対象周辺の電位分布を一様にできることが記載されている(請求項3,6等)。このことも、面内方向の膜厚分布の均一化に効果的であることが記載されている(段落0024等)。
【0007】
スパッタリング法において、理論的には成膜される膜組成はターゲット組成と略同一となるはずである。しかしながら、膜の構成元素の中に蒸気圧の高い元素がある場合、その元素が成膜された膜表面で逆スパッタされやすく、ターゲット組成と略同一の組成を得ることが難しい傾向にある。
【0008】
逆スパッタリング現象は、構成元素間でスパッタされやすさ(スパッタ率)に大きな差がある場合に、ターゲットにおいてはほぼ同じ組成でスパッタされるのに対して、基板上においては、堆積された元素のうち、スパッタされやすい構成元素が膜表面においてスパッタ粒子により優先的にスパッタされて膜からたたき出されてしまう現象である。
【0009】
例えば、強誘電性に優れたペロブスカイト型酸化物であるPZT(チタン酸ジルコニウム酸鉛)では、TiとZrに比してPbが逆スパッタされやすく、膜中のPb濃度がターゲット中のPb濃度よりも減少してしまう傾向にある。AサイトがBiあるいはBaを含むペロブスカイト型酸化物においても、これらの元素の蒸気圧が高く、同様の傾向にある。
【0010】
その他、Zn含有化合物においても、Znの元素の蒸気圧が高く、同様の傾向にある。例えば、インジウム錫酸化物(ITO)に匹敵する優れた電気的・光学的特性を有し、かつ低コストで資源的にも豊富なInGaZnO(IGZO)等の酸化亜鉛系の透明導電膜又は透明半導体膜においても、他の構成元素に比してZnが逆スパッタされやすく、膜組成がターゲット組成に比してZnの少ない組成となりやすい。
上記例示したような系では、所望組成を得るために、逆スパッタされやすい元素の濃度を高めに設定したターゲットを用いるなどの工夫がなされている。
【特許文献1】特開平11-335828号公報
【特許文献2】特開平11-350126号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者は、市販のスパッタリング装置を用いて6インチφの基板にPZT膜の成膜を実施したところ、面内方向にPb濃度のばらつきが生じることが分かった(後記比較例1,2を参照)。逆スパッタリングが起こりやすい組成では、面内方向の成膜条件をよりシビアに均一に制御する必要があると考えられる。
【0012】
特許文献1,2には、ガスの流れを調整して、処理室内のガス圧力あるいはプラズマ密度分布を均一化することが記載されているが、その均一化のレベルについては、記載がなく不明である。
【0013】
特許文献1に記載の構成では、基板の側方の一箇所からガスを導入し、同じ側からガスを排気している。特許文献2に記載の構成では、基板の一側方からガスを導入し、他側方からガスを排気し、ガスの排気をガス制限手段によって制限している。いずれの構成においても、ガスの流れを基板の側方からのみ調整しているので、処置室内における基板の面内方向のガスの圧力分布を高レベルに均一化できるとは到底思えない。特許文献1に記載の構成では、排気流路側にガス導入口を設けるので、処置室内に導入されたガスが直ちに排気されて、処置室に必要量のガスが供給されない可能性も大きい。
【0014】
特許文献1,2は、逆スパッタリングが起こりやすい組成系のようなシビアな条件が求められていない一般的なスパッタリング成膜に関するものであり、処理室内のガス圧力とプラズマ密度分布の均一化のレベルは高くない。したがって、特許文献1,2に記載の構成を逆スパッタリングが起こりやすい組成系に適用しても、面内方向の組成のばらつきを高いレベルで抑制することはできない。
【0015】
上記問題はスパッタリング法に限らず、基板とターゲットとを対向させて、プラズマを用いた気相成長法により基板上にターゲットの構成元素を含む膜を成膜する成膜方法において、同様に起こり得る。また、かかる問題は基板サイズが大きい程、例えば6インチφ以上で顕著となる。
【0016】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、逆スパッタリングが起こりやすい組成系等に好ましく適用することができ、成膜する膜の組成及び基板サイズによらず、面内方向の組成等の膜特性を高度に均一化することが可能な成膜方法と成膜装置を提供することを目的とするものである。
本発明は上記成膜方法により成膜され、面内方向の組成等の膜特性が高度に均一化された圧電体膜を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者が使用した市販のスパッタリング装置は、真空容器が内釜と外釜とを有し、これら内釜と外釜との間の空隙に1個のガスノズルからガスが導入され、内釜と外釜との間の空隙に充填されたガスが内釜の内部に流れ込む構造を有するものであった。このように、従来のスパッタリング装置は、真空容器内にガスを噴出する環状のガス噴出部材(上記態様では内釜と外釜とが環状のガス噴出部材からなり、内釜と外釜との空隙から真空容器内にガスが噴出される。)と、ガス噴出部材に接続され、真空容器の外部からガス噴出部材内にガスを供給する1個のガス供給部材(上記態様ではガスノズル)とを有している。
【0018】
本発明者は、従来のスパッタリング装置を用いてPZT膜の成膜を実施した際のPb濃度は、ガス供給部材から近い側が高くガス供給部材から遠い側が低い傾向にあることを見出した。本発明者は、従来のガス導入構造では、環状のガス噴出部材に対して一箇所からガスが導入されるため、環状のガス噴出部材から真空容器内へのガスの噴出が均一でないこと、及びガス圧力の不均一によってプラズマ空間内のプラズマ電位Vs(V)にばらつきが生じていることを見出した。ガス圧力が相対的に高い側は真空度が相対的に低くプラズマ電位Vs(V)が相対的に低くなり、Pbの逆スパッタリングが相対的に起こりにくく、Pb濃度が相対的に高くなると考えられる。本発明者は、真空容器内へのガスの流入を均一化させることで、プラズマ空間内のプラズマ電位Vs(V)を均一化できることを見出し、本発明を完成した。
【0019】
本発明の成膜方法は、基板とターゲットとを対向させて、プラズマを用いた気相成長法により前記基板上に前記ターゲットの構成元素を含む膜を成膜する成膜方法において、
前記ターゲットの表面から前記基板側に2〜3cm離れた位置のプラズマ空間のプラズマ電位Vs(V)の前記基板の面内方向のばらつきを±10V以内に調整して、前記成膜を行うことを特徴とするものである。
【0020】
ターゲットの表面から基板側に1.0〜1.5cm離れた位置はシースと呼ばれている。本発明では、ターゲットの表面から基板側に2〜3cm離れた位置(シースより基板側に少し離れた位置)におけるプラズマ電位Vs(V)のばらつきを上記範囲内に調整して成膜を行う。
【0021】
本明細書において、「プラズマ電位Vs及びフローティング電位Vf」は、ラングミュアプローブを用い、シングルプローブ法により測定するものとする。フローティング電位Vfの測定は、プローブに成膜中の膜等が付着して誤差を含まないように、プローブの先端を基板近傍に配し、できる限り短時間で行うものとする。プラズマ電位Vsとフローティング電位Vfとの電位差Vs−Vf(V)はそのまま電子温度(eV)に変換することができる。電子温度1eV=11600K(Kは絶対温度)に相当する。
【0022】
本発明の成膜方法において、前記ターゲットの表面から前記基板側に2〜3cm離れた位置におけるガス圧力の前記基板の面内方向のばらつきを±1.5%以内に調整して、前記成膜を行うことが好ましい。
本発明者は、ガス圧力のばらつきを上記範囲内に調整することにより、プラズマ電位Vs(V)のばらつきを本発明の規定範囲内に調整することができることを見出している。
【0023】
本明細書において、「ターゲットの表面から基板側に2〜3cm離れた位置におけるプラズマ電位Vsあるいはガス圧力のばらつき」は、ターゲットの中心から基板側に2〜3cm離れた位置を基準とし、ターゲットと同面積の領域内のばらつきにより定義するものとする。
【0024】
「背景技術」の項で挙げた特許文献1,2には、ガスの流れを調整して、処理室内のガス圧力あるいはプラズマ密度分布を均一化することが記載されていること述べたが、特許文献1,2に記載の装置では、ガス圧力を本発明で規定しているような高いレベルで均一化することはできない。
【0025】
本発明が適用可能な気相成長法としては、スパッタリング法が挙げられる。
本発明は、前記膜が圧電体膜である場合に好ましく適用できる。
本発明は、前記膜が下記一般式(P)で表される1種又は2種以上のペロブスカイト型酸化物を主成分とする圧電体膜である場合に好ましく適用できる。
一般式ABO・・・(P)
(A:Aサイトの元素であり、Pb,Ba,Sr,Bi,Li,Na,Ca,Cd,Mg,K,及びランタニド元素からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を含む。
B:Bサイトの元素であり、Ti,Zr,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Mn,Mg,Sc,Co,Cu,In,Sn,Ga,Zn,Cd,Fe,Ni,Hf,及びAlからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を含む。
O:酸素。
Aサイト元素とBサイト元素と酸素元素のモル比は1:1:3が標準であるが、これらのモル比はペロブスカイト構造を取り得る範囲内で基準モル比からずれてもよい。)
本明細書において、「主成分」とは、含量80モル%以上の成分と定義する。
【0026】
本発明は、前記膜が前記一般式(P)で表され、かつAサイトがPb,Bi,及びBaからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属元素を含む1種又は2種以上のペロブスカイト型酸化物を含む場合に好ましく適用できる。
【0027】
本発明は、前記膜がZn含有化合物を含む場合に好ましく適用できる。
本発明は、前記膜が下記一般式(S)で表されるZn含有酸化物を含む場合に好ましく適用できる。
InZn(x+3y/2+3z/2) ・・・(S)
(式中、MはIn,Fe,Ga,及びAlからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素である。x,y,zはいずれも0超の実数である。)
【0028】
本発明の成膜装置は、
内部に互いに対向配置された基板ホルダ及びターゲットホルダが装着された真空容器と、
前記真空容器内にプラズマを発生させるプラズマ発生手段と、
前記真空容器内にプラズマ化させるガスを導入するガス導入手段とを備え、
プラズマを用いた気相成長法により基板上にターゲットの構成元素を含む膜を成膜する成膜装置において、
前記ターゲットの表面から前記基板側に2〜3cm離れた位置のプラズマ空間のプラズマ電位Vs(V)の前記基板の面内方向のばらつきが±10V以内に調整されていることを特徴とするものである。
【0029】
本発明の成膜装置において、前記ターゲットの表面から前記基板側に2〜3cm離れた位置におけるガス圧力の前記基板の面内方向のばらつきが±1.5%以内に調整されていることが好ましい。
【0030】
前記ガス導入手段の態様としては、
前記真空容器内の前記基板ホルダと前記ターゲットホルダとの間に介挿され、内部に前記ガスが導入可能とされ、前記真空容器内に該ガスを噴出する複数のガス噴出口を有する環状のガス噴出部材と、
前記ガス噴出部材に接続され、前記真空容器の外部から前記ガス噴出部材内に前記ガスを供給するガス供給部材とを有するものが挙げられる。
【0031】
前記ガス導入手段の好適な態様としては、前記ガス噴出部材に対して複数の前記ガス供給部材が均等間隔に接続されており、かつ、前記ガス噴出部材に前記複数のガス噴出口が均等間隔に設けられているものが挙げられる。
【0032】
前記ガス導入手段の他の好適な態様としては、前記ガス噴出部材に対して単数の前記ガス供給部材が接続されており、かつ、前記ガス噴出部材には、前記ガス供給部材から近い側は前記ガス噴出口の数が相対的に少なく、前記ガス供給部材から遠い側は前記ガス噴出口の数が相対的に多く設けられているものが挙げられる。
【0033】
本発明の成膜装置において、前記真空容器の最内壁面が電気的に絶縁状態又はフローティング状態とされていることが好ましい。
【0034】
本発明の圧電体膜は、上記の本発明の成膜方法により成膜されたものであることを特徴とするものである。
本発明の圧電素子は、上記の本発明の圧電体膜と、該圧電体膜に対して電界を印加する電極とを備えたことを特徴とするものである。
【0035】
本発明の液体吐出装置は、上記の本発明の圧電素子と、該圧電素子に隣接して設けられた液体吐出部材とを備え、該液体吐出部材は、液体が貯留される液体貯留室と、前記圧電体膜に対する前記電界の印加に応じて該液体貯留室から外部に前記液体が吐出される液体吐出口とを有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、逆スパッタリングが起こりやすい組成系等に好ましく適用することができ、成膜する膜の組成及び基板サイズによらず、面内方向の組成等の膜特性を高度に均一化することが可能な成膜方法と成膜装置を提供することができる。
本発明によれば、上記成膜方法により成膜され、面内方向の組成等の膜特性が高度に均一化された圧電体膜を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
「成膜装置とこれを用いた成膜方法」
図面を参照して、本発明に係る一実施形態の成膜装置とこれを用いた成膜方法について説明する。図1Aは装置の全体構成を示す断面図、図1Bは基板B側から見たガス導入手段17等の平面図である。
【0038】
本発明は基板とターゲットとを対向させて、プラズマを用いた気相成長法により基板上にターゲットの構成元素を含む膜を成膜する成膜装置に適用可能である。
本発明が適用可能な気相成長法としては、2極スパッタリング法、3極スパッタリング法、直流スパッタリング法、高周波スパッタリング法(RFスパッタリング法)、ECRスパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、対向ターゲットスパッタリング法、パルススパッタリング法、及びイオンビームスパッタリング法等のスパッタリング法が挙げられる。本発明が適用可能な気相成長法としては、スパッタリング法の他、イオンプレーティング法、及びプラズマCVD法等が挙げられる。本実施形態では高周波スパッタリング法(RFスパッタリング法)を例として説明する。
【0039】
図1に示す成膜装置(高周波スパッタリング装置)1は、内部に、基板Bが装着可能であり、装着された基板Bを所定温度に加熱することが可能な基板ホルダ11と、ターゲットTが装着可能なターゲットホルダ12とが備えられた真空容器10から概略構成されている。本実施形態の装置では、真空容器10内が成膜室となっている。
【0040】
真空容器10内において、基板ホルダ11とターゲットホルダ12とは互いに対向するように離間配置されている。ターゲットホルダ12は真空容器10の外部に配置された高周波電源(RF電源)13に接続されており、ターゲットホルダ12がプラズマを発生させるためのプラズマ電極(カソード電極)となっている。本実施形態では、真空容器10内にプラズマを発生させるプラズマ発生手段14として、高周波電源13及びプラズマ電極(カソード電極)として機能するターゲットホルダ12が備えられている。
【0041】
基板Bは特に制限されず、Si基板、酸化物基板、ガラス基板、及び各種フレキシブル基板など、用途に応じて適宜選択することができる。ターゲットTの組成は、成膜する膜の組成に応じて選定される。
【0042】
成膜装置1には、真空容器10内にプラズマ化させるガスGを導入するガス導入手段17が備えられている。本実施形態において、ガス導入手段17は、真空容器10内の基板ホルダ11とターゲットホルダ12との間に介挿され、内部にガスGが導入可能とされ、真空容器10内にガスGを噴出する複数のガス噴出口15aを有する環状のガス噴出部材15と、ガス噴出部材15に接続され、真空容器10の外部からガス噴出部材15内にガスGを供給するガスノズルあるいはガス管等のガス供給部材16とを備えている。ガスGとしては特に制限なく、Ar、又はAr/O混合ガス等が使用される。
【0043】
従来のスパッタリング装置ではガス供給部材は単数であるが、本実施形態では複数のガス供給部材16が備えられている。本実施形態においては、ガス噴出部材15に対して同一内径の複数のガス供給部材16が均等間隔に接続されており、かつ、ガス噴出部材15に同一口径の複数のガス噴出口15aが均等間隔に設けられている。ガス噴出口15aとガス供給部材16の数は特に制限なく、これらの数は同一でも非同一でもよい。ガス噴出口15aとガス供給部材16とがいずれも4個である場合について、図示してある。
【0044】
図1Bに示すように、真空容器10内へのガスの流入均一性を考慮すれば、ガス噴出部材15におけるガス噴出口15aの開口箇所とガス供給部材16のガス噴出部材15への接続箇所とは、互いにずれていることが好ましい。かかる構成とすることで、複数のガス供給部材16からガス噴出部材15に導入されたガスGは、ガス噴出口15aから直ちに放出されることなく、ガス噴出部材15内をある程度循環してからガス噴出口15aから放出される。
【0045】
真空容器10には、真空容器10内のガスの排気Vを行うガス排出管18が接続されている。ガス排出管18の接続箇所は特に制限なく、本実施形態では真空容器10の底部にガス排出管18が接続されている。
【0046】
図1A,図1Bに示すガス導入手段17の構成では、環状のガス噴出部材15に対して複数箇所から均等にガスGが導入され、環状のガス噴出部材15に設けられた複数のガス噴出口15aから均等に真空容器10内にガスGが噴出される。本発明者は、かかる構成では、ターゲットTの表面から基板B側に2〜3cm離れた位置におけるガス圧力の基板Bの面内方向のばらつきを±1.5%以内に調整することができることを見出している。
【0047】
成膜圧力は特に制限なく、10Pa以下であることが好ましい。成膜圧力が10Paより大きいと、元素の種類によってはターゲットTからたたき出された粒子が散乱等の影響により基板Bに到達する割合が少なくなることがある。成膜圧力が10Pa以下では、プラズマ空間が分子流と粘性流の中間である中間流から分子流の間の条件となるため、ターゲットTからたたき出された粒子が基板Bに到達するまでに散乱される可能性が、元素の種類によらず無視できるほど少ない。
【0048】
ガス導入手段17は図2A及び図2Bに示す構成としてもよい。図2A中のガス導入手段17は斜視図で示してある。図2A及び図2Bに示す態様では、ガス噴出部材15に対して単数のガス供給部材16が接続されており、かつ、ガス噴出部材15には、ガス供給部材16から近い側はガス噴出口15aの数が相対的に少なく、ガス供給部材16から遠い側はガス噴出口15aの数が相対的に多く設けられている。
【0049】
ガス噴出部材15に対して単数のガス供給部材16が接続された構成では、ガス噴出部材15においてガス供給部材16から近い側はガス供給量が多いので、図2A及び図2Bに示す構成とすることで、ガス噴出部材15から真空容器10内へのガスGの噴出を均等にすることができ、図1A及び図1Bに示す構成と同様の効果を得ることができる。
【0050】
ガス噴出部材15に対して単数のガス供給部材16が接続された構成では、図2A及び図2Bに示した構成の代わりに、複数のガス噴出口15aを均等間隔に設け、ガス供給部材16から近い側はガス噴出口15aの口径を相対的に小さくし、ガス供給部材16から遠い側はガス噴出口15aの口径を相対的に大きくする構成としてもよい。
【0051】
図3に模式的に示すように、プラズマ電極(本実施形態ではターゲットホルダ12がプラズマ電極として機能する。)の放電により真空容器10内に導入されたガスGがプラズマ化され、Arイオン等のプラスイオンIpが生成する。生成したプラスイオンIpはターゲットTをスパッタする。プラスイオンIpにスパッタされたターゲットTの構成元素Tpは、ターゲットから放出され中性あるいはイオン化された状態で基板Bに蒸着される。図中、符号Pがプラズマ空間を示している。
【0052】
プラズマ空間Pの電位はプラズマ電位Vs(V)となる。通常、基板Bは絶縁体であり、かつ、電気的にアースから絶縁されている。したがって、基板Bはフローティング状態にあり、その電位はフローティング電位Vf(V)となる。ターゲットTと基板Bとの間にあるターゲットの構成元素Tpは、プラズマ空間Pのプラズマ電位Vsと基板Bの電位Vfとの電位差であるVs−Vfの加速電圧分の運動エネルギーを持って、成膜中の基板Bに衝突すると考えられる。
【0053】
プラズマ電位Vs及び基板電位Vfは、ラングミュアプローブを用いて測定することができる。プラズマP中にラングミュアプローブの先端を挿入し、プローブに印加する電圧を変化させると、例えば図4に示すような電流電圧特性が得られる(小沼光晴著、「プラズマと成膜の基礎」p.90、日刊工業新聞社発行)。この図では電流が0となるプローブ電位がフローティング電位Vfである。この状態は、プローブ表面へのイオン電流と電子電流の流入量が等しくなる点である。絶縁状態にある金属の表面や基板表面はこの電位になっている。プローブ電圧をフローティング電位より高くしていくと、イオン電流は次第に減少し、プローブに到達するのは電子電流だけとなる。この境界の電圧がプラズマ電位Vsである。
【0054】
本発明者は、本実施形態の構成では、ターゲットTの表面から基板B側に2〜3cm離れた位置におけるガス圧力の基板Bの面内方向のばらつきを±1.5%以内に調整することができるので、ターゲットTの表面から基板B側に2〜3cm離れた位置のプラズマ空間のプラズマ電位Vs(V)の基板Bの面内方向のばらつきを±10V以内に調整することができることを見出している。
【0055】
すなわち、本発明の成膜方法は、基板とターゲットとを対向させて、プラズマを用いた気相成長法により前記基板上に前記ターゲットの構成元素を含む膜を成膜する成膜方法において、
前記ターゲットの表面から前記基板側に2〜3cm離れた位置のプラズマ空間のプラズマ電位Vs(V)の前記基板の面内方向のばらつきを±10V以内に調整して、前記成膜を行うことを特徴とするものである。
【0056】
本発明の成膜方法において、前記ターゲットの表面から前記基板側に2〜3cm離れた位置におけるガス圧力の前記基板の面内方向のばらつきを±1.5%以内に調整して、前記成膜を行うことが好ましい。
【0057】
本発明者は、ターゲットTの表面から基板B側に2〜3cm離れた位置におけるガス圧力の基板Bの面内方向のばらつきを±1.5%以内に調整し、同位置におけるプラズマ電位Vs(V)の基板Bの面内方向のばらつきを±10V以内に調整することにより、成膜する膜の組成及び基板サイズによらず、面内方向の組成等の膜特性を高度に均一化することができることを見出している。
【0058】
成膜装置1において、真空容器10の最内壁面10Sが電気的に絶縁状態又はフローティング状態とされていることが好ましい。例えば、真空容器10の内面を絶縁膜で覆うなどすることで、真空容器10の最内壁面10Sを電気的に絶縁状態又はフローティング状態とすることができる。
【0059】
本発明者は、真空容器10の最内壁面10Sがアース状態にあると、プラズマ空間のプラズマ電位Vs(V)が変動しやすく、成膜される膜の組成等の膜特性がばらつきやすいことを見出している。真空容器10の最内壁面10Sが電気的に絶縁状態又はフローティング状態にあると、プラズマ空間のプラズマ電位Vs(V)が安定して、均一なプラズマ電位Vs(V)が得られやすく、成膜される膜の組成等の膜特性のばらつきが小さくなることを見出している。
【0060】
本実施形態の成膜装置1及びこれを用いた成膜方法は、任意の組成の膜の成膜に適用することができる。本実施形態の成膜装置1及びこれを用いた成膜方法は、逆スパッタリングが起こりやすい組成系等に好ましく適用することができ、かかる組成系においても、面内方向の組成等の膜特性を高度に均一化することができる。
【0061】
スパッタされやすさはスパッタ率で表されることが多く、スパッタ率が高いものほどスパッタされやすい。「スパッタ率」とは、入射イオンの数とそれによってスパッタされた原子数との比で定義されるものであり、その単位は(atoms/ion)である。
【0062】
圧電材料であるPZTのスパッタ成膜においては、PZTの構成元素であるPb,Zr,及びTiの中で、Pbが最もスパッタ率が大きくスパッタされやすいことは以前より知られている。例えば、「真空ハンドブック」((株)アルバック編、オーム社発行)の表8.1.7には、Arイオン300eVの条件におけるスパッタ率は、Pb=0.75、Zr=0.48,Ti=0.65であることが記載されている。このことは、Zrに比してPbは1.5倍以上スパッタされやすいということを意味している。
【0063】
本発明は、圧電体膜の成膜に好ましく適用できる。
本発明は、下記一般式(P)で表される1種又は2種以上のペロブスカイト型酸化物を主成分とする圧電体膜の成膜に好ましく適用できる。
一般式ABO・・・(P)
(A:Aサイトの元素であり、Pb,Ba,Sr,Bi,Li,Na,Ca,Cd,Mg,K,及びランタニド元素からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を含む。
B:Bサイトの元素であり、Ti,Zr,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Mn,Mg,Sc,Co,Cu,In,Sn,Ga,Zn,Cd,Fe,Ni,Hf,及びAlからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を含む。
O:酸素。
Aサイト元素とBサイト元素と酸素元素のモル比は1:1:3が標準であるが、これらのモル比はペロブスカイト構造を取り得る範囲内で基準モル比からずれてもよい。)
【0064】
上記一般式(P)で表されるペロブスカイト型酸化物としては、
チタン酸鉛、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、ジルコニウム酸鉛、チタン酸鉛ランタン、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン、マグネシウムニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛、ニッケルニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛、亜鉛ニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛等の鉛含有化合物、及びこれらの混晶系;
チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウムバリウム、チタン酸ビスマスナトリウム、チタン酸ビスマスカリウム、ニオブ酸ナトリウム、ニオブ酸カリウム、ニオブ酸リチウム等の非鉛含有化合物、及びこれらの混晶系が挙げられる。
【0065】
電気特性がより良好となることから、上記一般式(P)で表されるペロブスカイト型酸化物は、Mg,Ca,Sr,Ba,Bi,Nb,Ta,W,及びLn(=ランタニド元素(La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,及びLu))等の金属イオンを、1種又は2種以上含むものであることが好ましい。
【0066】
本発明は、一般式(P)で表され、かつAサイトがPb,Bi,及びBaからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属元素を含む1種又は2種以上のペロブスカイト型酸化物を含む膜の成膜に好ましく適用できる。Pb,Bi,あるいはBaは蒸気圧が高く、逆スパッタされやすい元素である。
【0067】
上記一般式(P)で表され、Pbを含むペロブスカイト型酸化物としては、チタン酸鉛、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、ジルコニウム酸鉛、チタン酸鉛ランタン、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン、マグネシウムニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛、及びニッケルニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛等が挙げられる。
【0068】
上記一般式(P)で表され、BiあるいはBaを含むペロブスカイト型酸化物としては、チタン酸バリウム、チタン酸バリウムストロンチウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、チタン酸ビスマスナトリウム、チタン酸ビスマスカリウム、ビスマスフェライト、ビスマスフェライトランタン、及びビスマスフェライトバリウム等が挙げられる。
【0069】
本発明は、Zn含有化合物を含む膜の成膜に好ましく適用できる。Znも蒸気圧が高く、逆スパッタされやすい元素である。
本発明は、下記一般式(S)で表されるZn含有酸化物を含む膜の成膜に好ましく適用できる。
InZn(x+3y/2+3z/2) ・・・(S)
(式中、MはIn,Fe,Ga,及びAlからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素である。x,y,zはいずれも0超の実数である。)
【0070】
上記式(S)で表されるZn含有酸化物としては、透明導電膜又は透明半導体膜として各種用途に用いられているInGaZnO(IGZO)、及びZnIn等が挙げられる。
【0071】
以上説明したように、本実施形態によれば、逆スパッタリングが起こりやすい組成系等に好ましく適用することができ、成膜する膜の組成及び基板サイズによらず、面内方向の組成等の膜特性を高度に均一化することが可能な成膜装置1と成膜方法を提供することができる。
本発明者は、3インチφ以上、さらには6インチφ以上の基板に、逆スパッタリングが起こりやすい組成系の膜を成膜する場合にも、面内方向の組成等の膜特性を高度に均一化できることを確認している(後記実施例1,2を参照)。
【0072】
「圧電素子及びインクジェット式記録ヘッド」
図5を参照して、本発明に係る一実施形態の圧電素子及びこれを備えたインクジェット式記録ヘッド(液体吐出装置)の構造について説明する。図5はインクジェット式記録ヘッドの要部断面図(圧電素子の厚み方向の断面図)である。視認しやすくするため、構成要素の縮尺は実際のものとは適宜異ならせてある。
【0073】
本実施形態の圧電素子2は、基板20上に、下部電極30と圧電体膜40と上部電極50とが順次積層された素子であり、圧電体膜40に対して、下部電極30と上部電極50とにより厚み方向に電界が印加されるようになっている。
【0074】
下部電極30は基板20の略全面に形成されており、この上に図示手前側から奥側に延びるライン状の凸部41がストライプ状に配列したパターンの圧電体膜40が形成され、各凸部41の上に上部電極50が形成されている。
【0075】
圧電体膜40のパターンは図示するものに限定されず、適宜設計される。また、圧電体膜40は連続膜でも構わない。但し、圧電体膜40は、連続膜ではなく、互いに分離した複数の凸部41からなるパターンで形成することで、個々の凸部41の伸縮がスムーズに起こるので、より大きな変位量が得られ、好ましい。
【0076】
基板20としては特に制限なく、シリコン、ガラス、ステンレス(SUS)、イットリウム安定化ジルコニア(YSZ)、アルミナ、サファイヤ、シリコンカーバイド等の基板が挙げられる。基板20としては、シリコン基板の表面にSiO酸化膜が形成されたSOI基板等の積層基板を用いてもよい。
【0077】
下部電極30の組成は特に制限なく、Au,Pt,Ir,IrO,RuO,LaNiO,及びSrRuO等の金属又は金属酸化物、及びこれらの組合せが挙げられる。上部電極50の組成は特に制限なく、下部電極30で例示した材料,Al,Ta,Cr,Cu等の一般的に半導体プロセスで用いられている電極材料、及びこれらの組合せが挙げられる。下部電極30と上部電極50の厚みは特に制限なく、50〜500nmであることが好ましい。
【0078】
圧電体膜40は、上記の成膜装置1を用いた成膜方法により成膜された膜である。圧電体膜40は好ましくは、上記一般式(P)で表される1種又は2種以上のペロブスカイト型酸化物を主成分とする圧電体膜である。圧電体膜40はより好ましくは、上記一般式(P)で表され、かつAサイトがPb,Bi,及びBaからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属元素を含む1種又は2種以上のペロブスカイト型酸化物を含む圧電体膜である。圧電体膜40の膜厚は特に制限なく、通常1μm以上であり、例えば1〜5μmである。
【0079】
圧電アクチュエータ3は、圧電素子2の基板20の裏面に、圧電体膜40の伸縮により振動する振動板60が取り付けられたものである。圧電アクチュエータ3には、圧電素子2の駆動を制御する駆動回路等の制御手段(図示略)も備えられている。
【0080】
インクジェット式記録ヘッド(液体吐出装置)4は、概略、圧電アクチュエータ3の裏面に、インクが貯留されるインク室(液体貯留室)71及びインク室71から外部にインクが吐出されるインク吐出口(液体吐出口)72を有するインクノズル(液体貯留吐出部材)70が取り付けられたものである。インクジェット式記録ヘッド4では、圧電素子2に印加する電界強度を増減させて圧電素子2を伸縮させ、これによってインク室71からのインクの吐出や吐出量の制御が行われる。
【0081】
基板20とは独立した部材の振動板60及びインクノズル70を取り付ける代わりに、基板20の一部を振動板60及びインクノズル70に加工してもよい。例えば、基板20がSOI基板等の積層基板からなる場合には、基板20を裏面側からエッチングしてインク室61を形成し、基板自体の加工により振動板60とインクノズル70とを形成することができる。
【0082】
本実施形態の圧電素子2及びインクジェット式記録ヘッド4は、以上のように構成されている。本実施形態によれば、上記成膜方法により成膜され、面内方向の組成等の膜特性が高度に均一化された圧電体膜40、及びこれを備えた圧電素子2を提供することができる。
【0083】
「インクジェット式記録装置」
図6及び図7を参照して、上記実施形態のインクジェット式記録ヘッド4を備えたインクジェット式記録装置の構成例について説明する。図6は装置全体図であり、図7は部分上面図である。
【0084】
図示するインクジェット式記録装置100は、インクの色ごとに設けられた複数のインクジェット式記録ヘッド(以下、単に「ヘッド」という)4K,4C,4M,4Yを有する印字部102と、各ヘッド4K,4C,4M,4Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部114と、記録紙116を供給する給紙部118と、記録紙116のカールを除去するデカール処理部120と、印字部102のノズル面(インク吐出面)に対向して配置され、記録紙116の平面性を保持しながら記録紙116を搬送する吸着ベルト搬送部122と、印字部102による印字結果を読み取る印字検出部124と、印画済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部126とから概略構成されている。
印字部102をなすヘッド4K,4C,4M,4Yが、各々上記実施形態のインクジェット式記録ヘッド4である。
【0085】
デカール処理部120では、巻き癖方向と逆方向に加熱ドラム130により記録紙116に熱が与えられて、デカール処理が実施される。
ロール紙を使用する装置では、図6のように、デカール処理部120の後段に裁断用のカッター128が設けられ、このカッターによってロール紙は所望のサイズにカットされる。カッター128は、記録紙116の搬送路幅以上の長さを有する固定刃128Aと、該固定刃128Aに沿って移動する丸刃128Bとから構成されており、印字裏面側に固定刃128Aが設けられ、搬送路を挟んで印字面側に丸刃128Bが配置される。カット紙を使用する装置では、カッター128は不要である。
【0086】
デカール処理され、カットされた記録紙116は、吸着ベルト搬送部122へと送られる。吸着ベルト搬送部122は、ローラ131、132間に無端状のベルト133が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも印字部102のノズル面及び印字検出部124のセンサ面に対向する部分が水平面(フラット面)となるよう構成されている。
【0087】
ベルト133は、記録紙116の幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引孔(図示略)が形成されている。ローラ131、132間に掛け渡されたベルト133の内側において印字部102のノズル面及び印字検出部124のセンサ面に対向する位置には吸着チャンバ134が設けられており、この吸着チャンバ134をファン135で吸引して負圧にすることによってベルト133上の記録紙116が吸着保持される。
【0088】
ベルト133が巻かれているローラ131、132の少なくとも一方にモータ(図示略)の動力が伝達されることにより、ベルト133は図6上の時計回り方向に駆動され、ベルト133上に保持された記録紙116は図6の左から右へと搬送される。
【0089】
縁無しプリント等を印字するとベルト133上にもインクが付着するので、ベルト133の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部136が設けられている。
吸着ベルト搬送部122により形成される用紙搬送路上において印字部102の上流側に、加熱ファン140が設けられている。加熱ファン140は、印字前の記録紙116に加熱空気を吹き付け、記録紙116を加熱する。印字直前に記録紙116を加熱しておくことにより、インクが着弾後に乾きやすくなる。
【0090】
印字部102は、最大紙幅に対応する長さを有するライン型ヘッドを紙送り方向と直交方向(主走査方向)に配置した、いわゆるフルライン型のヘッドとなっている(図7を参照)。各印字ヘッド4K,4C,4M,4Yは、インクジェット式記録装置100が対象とする最大サイズの記録紙116の少なくとも一辺を超える長さにわたってインク吐出口(ノズル)が複数配列されたライン型ヘッドで構成されている。
【0091】
記録紙116の送り方向に沿って上流側から、黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の順に各色インクに対応したヘッド4K,4C,4M,4Yが配置されている。記録紙116を搬送しつつ各ヘッド4K,4C,4M,4Yからそれぞれ色インクを吐出することにより、記録紙116上にカラー画像が記録される。
印字検出部124は、印字部102の打滴結果を撮像するラインセンサ等からなり、ラインセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まり等の吐出不良を検出する。
【0092】
印字検出部124の後段には、印字された画像面を乾燥させる加熱ファン等からなる後乾燥部142が設けられている。印字後のインクが乾燥するまでは印字面と接触することは避けた方が好ましいので、熱風を吹き付ける方式が好ましい。
後乾燥部142の後段には、画像表面の光沢度を制御するために、加熱・加圧部144が設けられている。加熱・加圧部144では、画像面を加熱しながら、所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラ145で画像面を加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
【0093】
こうして得られたプリント物は、排紙部126から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト印字とは分けて排出することが好ましい。このインクジェット式記録装置100では、本画像のプリント物と、テスト印字のプリント物とを選別してそれぞれの排出部126A、126Bへと送るために排紙経路を切り替える選別手段(図示略)が設けられている。
大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に並列にプリントする場合には、カッター148を設けて、テスト印字の部分を切り離す構成とすればよい。
インクジェット記記録装置100は、以上のように構成されている。
【0094】
(設計変更)
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、適宜設計変更可能である。
【実施例】
【0095】
本発明に係る実施例及び比較例について説明する。
【0096】
(実施例1)
3インチφのSOI基板上にスパッタリング法により、基板温度350℃の条件で20nm厚のTi膜と150nm厚のIr下部電極とを順次成膜した。得られた基板上に、図1A及び図1Bに示した成膜装置を用いて、RFスパッタリング法により4μm厚のPZT圧電体膜を成膜した。真空容器10は内面が絶縁膜で覆われており、真空容器10の最内壁面10Sは電気的に絶縁状態であった。
【0097】
図1A及び図1Bに示したように、本実施例では、ガス噴出部材15に対して同一内径の複数のガス供給部材16が均等間隔に接続されており、かつ、ガス噴出部材15に同一口径の複数のガス噴出口15aが均等間隔に設けられた成膜装置を用いた。本実施例では、4個のガス噴出口15aと4個のガス供給部材16とが設けられた成膜装置を用いた。成膜ガスとしてはAr/O混合ガス(=30sccm/0.8sccm)を用いた。成膜室内の成膜圧力は0.5Paに調整した。シミュレーションにてガス圧力分布を計算したところ、ターゲットの表面から基板側に2〜3cm離れた位置におけるガス圧力の基板の面内方向のばらつきは±1.0%以内であった。
【0098】
その他の成膜条件は以下の通りとした。
ターゲット:Pb1.3(Zr0.52Ti0.48)O(150mmφ)、
基板温度:475℃、
RFパワー:500W。
【0099】
成膜条件におけるプラズマ空間のプラズマ電位Vs(V)の測定を実施した。プラズマ電位Vs(V)の測定は、ターゲットの表面から基板側に2cm離れた位置にて基板の面内方向に複数箇所実施した。結果を以下に示す。ターゲットの表面から基板側に2cm離れた位置におけるプラズマ電位Vs(V)のばらつきは35±2(V)であり、ほぼ均一であった。
中心:Vs=35(V)、
中心から±4cmの位置:Vs=36(V)、
中心から±7cmの位置:Vs=37(V)。
【0100】
得られたPZT膜についてXRD分析を実施したところ、ペロブスカイト構造を有する(100)配向膜であった。面内方向に多数の領域に分割して各領域のXRD分析を実施したところ、面内全体的に結晶配向性の良い良質な膜が形成されていた。
【0101】
得られたPZT膜について、エッジ5mmの領域は除いて面内方向に9箇所の領域に分割して各領域のXRF組成分析を実施したところ、Pb/(Zr+Ti)のモル比のばらつきは1.07±0.03であり、ほぼ均一であった。
【0102】
基板を6インチφのSOI基板に変えて実施例1と同様に成膜を実施したところ、実施例1と同様に面内全体的に結晶配向性の良い良質な膜が形成され、面内方向の組成のばらつきの小さい膜を得ることができた。
【0103】
(実施例2)
実施例1と同様にして、3インチφのSOI基板上に20nm厚のTi膜と150nm厚のIr下部電極とを順次成膜した。次いで、図2A及び図2Bに示した成膜装置を用いた以外は実施例1と同条件にて、PZT圧電体膜を成膜した。
【0104】
図2A及び図2Bに示したように、本実施例では、ガス噴出部材15に対して単数のガス供給部材16が接続されており、かつ、ガス噴出部材15には、ガス供給部材16から近い側はガス噴出口15aの数が相対的に少なく、ガス供給部材16から遠い側はガス噴出口15aの数が相対的に多く設けられた成膜装置を用いた。
【0105】
図2A及び図2Bに示したように、本実施例では、ガス供給部材16から近い側に2個のガス噴出口15aが設けられ、ガス供給部材16から遠い側に5個のガス噴出口15aが設けられ成膜装置を用いた。成膜ガスとしてはAr/O混合ガス(=30sccm/0.8sccm)を用いた。成膜室内の成膜圧力は0.5Paに調整した。シミュレーションにてガス圧力分布を計算したところ、ターゲットの表面から基板側に2〜3cm離れた位置におけるガス圧力の基板の面内方向のばらつきは±1.0%以内であった。
【0106】
成膜条件におけるプラズマ空間のプラズマ電位Vs(V)の測定を実施した。プラズマ電位Vs(V)の測定は、ターゲットの表面から基板側に2cm離れた位置にて基板の面内方向に複数箇所実施した。結果を以下に示す。ターゲットの表面から基板側に2cm離れた位置におけるプラズマ電位Vs(V)のばらつきは35±3(V)であり、ほぼ均一であった。
中心:Vs=35(V)、
中心から±4cmの位置:Vs=36(V)、
中心から±7cmの位置:Vs=38(V)。
【0107】
得られたPZT膜についてXRD分析を実施したところ、ペロブスカイト構造を有する(100)配向膜であった。面内方向に多数の領域に分割して各領域のXRD分析を実施したが、面内全体的に結晶配向性の良い良質な膜が形成されていた。
【0108】
得られたPZT膜について、エッジ5mmの領域は除いて面内方向に9箇所の領域に分割して各領域のXRF組成分析を実施したところ、Pb/(Zr+Ti)のモル比は1.07±0.03であり、ほぼ均一であった。
【0109】
基板を6インチφのSOI基板に変えて実施例2と同様に成膜を実施したところ、実施例1と同様に面内全体的に結晶配向性の良い良質な膜が形成され、面内方向の組成のばらつきの小さい膜を得ることができた。
【0110】
(比較例1)
実施例1と同様にして、3インチφのSOI基板上に20nm厚のTi膜と150nm厚のIr下部電極とを順次成膜した。次いで、ガス噴出部材15に対して単数のガス供給部材16が接続され、ガス噴出部材15に4個のガス噴出口15aが均等間隔に設けられた成膜装置を用いた以外は実施例1と同条件にて、PZT圧電体膜を成膜した。
【0111】
シミュレーションにてガス圧力分布を計算したところ、ターゲットの表面から基板側に2〜3cm離れた位置におけるガス圧力の基板の面内方向のばらつきは±2.0%であった。成膜条件におけるプラズマ空間のプラズマ電位Vs(V)の測定を実施した。プラズマ電位Vs(V)の測定は、ターゲットの表面から基板側に2cm離れた位置にて基板の面内方向に複数箇所実施した。結果を以下に示す。ターゲットの表面から基板側に2cm離れた位置におけるプラズマ電位Vs(V)のばらつきは30±12(V)であり、大きなばらつきが見られた。
中心:Vs=30(V)、
中心からガス供給部材16側に4cmの位置:Vs=26(V)、
中心からガス供給部材16の反対側に7cmの位置:Vs=42(V)。
【0112】
得られたPZT膜について、エッジ5mmの領域は除いて面内方向に9箇所の領域に分割して各領域のXRF組成分析を実施したところ、Pb/(Zr+Ti)のモル比はガス供給部材16から最も近い側は1.14であり、ガス供給部材16から最も離れた側は1.07であり、Pb/(Zr+Ti)のモル比に大きなばらつきが見られた。
【0113】
(比較例2)
実施例1と同様にして、3インチφのSOI基板上に20nm厚のTi膜と150nm厚のIr下部電極とを順次成膜した。次いで、ガス噴出部材15に対して単数のガス供給部材16が接続され、ガス噴出部材15に8個のガス噴出口15aが均等間隔に設けられた成膜装置を用いた以外は実施例2と同条件にて、PZT圧電体膜を成膜した。
【0114】
シミュレーションにてガス圧力分布を計算したところ、ターゲットの表面から基板側に2〜3cm離れた位置におけるガス圧力の基板の面内方向のばらつきは±2.0%であった。シミュレーションデータを図8に示す。図8においては、黒い方が圧力が高く、白い方が圧力が低く表されており、階調ムラが圧力ムラを示している。
【0115】
成膜条件におけるプラズマ空間のプラズマ電位Vs(V)の測定を実施した。プラズマ電位Vs(V)の測定は、ターゲットの表面から基板側に2cm離れた位置にて基板の面内方向に複数箇所実施した。結果を以下に示す。ターゲットの表面から基板側に2cm離れた位置におけるプラズマ電位Vs(V)のばらつきは32±12(V)であり、大きなばらつきが見られた。
中心:Vs=32(V)、
中心からガス供給部材16側に4cmの位置:Vs=28(V)、
中心からガス供給部材16の反対側に7cmの位置:Vs=44(V)。
【0116】
得られたPZT膜について、エッジ5mmの領域は除いて面内方向に9箇所の領域に分割して各領域のXRF組成分析を実施したところ、Pb/(Zr+Ti)のモル比はガス供給部材16から最も近い側は1.15であり、ガス供給部材16から最も離れた側は1.06であり、Pb/(Zr+Ti)のモル比に大きなばらつきが見られた。
【0117】
(比較例3)
実施例1と同様にして、3インチφのSOI基板上に20nm厚のTi膜と150nm厚のIr下部電極とを順次成膜した。次いで、真空容器の内面を接地電位とした成膜装置を用いた以外は実施例1と同条件にて、PZT圧電体膜を成膜した。
【0118】
成膜条件におけるプラズマ空間のプラズマ電位Vs(V)の測定を実施した。プラズマ電位Vs(V)の測定は、ターゲットの表面から基板側に2cm離れた位置にて基板の面内方向に複数箇所実施した。結果を以下に示す。ターゲットの表面から基板側に2cm離れた位置におけるプラズマ電位Vs(V)のばらつきは36±12(V)であり、大きなばらつきが見られた。
中心:Vs=36(V)、
中心から±10cmの位置:Vs=42(V)、
中心から±14cmの位置:Vs=48(V)。
【0119】
得られたPZT膜についてXRD分析を実施したところ、ペロブスカイト構造を有する(100)配向膜であった。面内方向に多数の領域に分割して各領域のXRD分析を実施したところ、エッジ部分(エッジ5mmの領域)はパイロクロア相を含んでおり、結晶性が良くなかった。
【0120】
得られたPZT膜について、エッジ5mmの領域は除いて面内方向に9箇所の領域に分割して各領域のXRF組成分析を実施したところ、Pb/(Zr+Ti)のモル比は1.05±0.1であり、実施例1よりも組成の均一性が良くなかった。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明は、プラズマを用いる気相成長法により成膜する場合に適用することができる。本発明は、インクジェット式記録ヘッド,磁気記録再生ヘッド,MEMS(Micro Electro-Mechanical Systems)デバイス,マイクロポンプ,超音波探触子,及び超音波モータ等に搭載される圧電アクチュエータ、及び強誘電体メモリ等の強誘電体素子に用いられる圧電体膜の成膜、あるいはZn含有化合物を含む導電体膜又は半導体膜の成膜等に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1A】本発明に係る一実施形態の成膜装置の全体構成を示す断面図
【図1B】ガス導入手段等の平面図
【図2A】成膜装置の設計変更例を示す断面図
【図2B】ガス導入手段の設計変更例を示す平面図
【図3】成膜中の様子を模式的に示す図
【図4】プラズマ電位Vs及びフローティング電位Vfの測定方法を示す説明図
【図5】本発明に係る一実施形態の圧電素子及びインクジェット式記録ヘッド(液体吐出装置)の構造を示す断面図
【図6】図5のインクジェット式記録ヘッドを備えたインクジェット式記録装置の構成例を示す図
【図7】図6のインクジェット式記録装置の部分上面図
【図8】比較例2のシミュレーションデータ
【符号の説明】
【0123】
1 成膜装置(高周波スパッタリング装置)
10 真空容器
10S 真空容器の最内壁面
11 基板ホルダ
12 ターゲットホルダ(プラズマ電極)
13 高周波電源
14 プラズマ発生手段
15 環状のガス噴出部材
15a ガス噴出口
16 ガス供給部材
17 ガス導入手段
B 基板
T ターゲット
G ガス
2 圧電素子
4,4K,4C,4M,4Y インクジェット式記録ヘッド(液体吐出装置)
20 基板
30,50 電極
40 圧電体膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板とターゲットとを対向させて、プラズマを用いた気相成長法により前記基板上に前記ターゲットの構成元素を含む膜を成膜する成膜方法において、
前記ターゲットの表面から前記基板側に2〜3cm離れた位置のプラズマ空間のプラズマ電位Vs(V)の前記基板の面内方向のばらつきを±10V以内に調整して、前記成膜を行うことを特徴とする成膜方法。
【請求項2】
前記ターゲットの表面から前記基板側に2〜3cm離れた位置におけるガス圧力の前記基板の面内方向のばらつきを±1.5%以内に調整して、前記成膜を行うことを特徴とする請求項1に記載の成膜方法。
【請求項3】
前記気相成長法はスパッタリング法であることを特徴とする請求項1又は2に記載の成膜方法。
【請求項4】
前記膜は圧電体膜であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の成膜方法。
【請求項5】
前記膜は下記一般式(P)で表される1種又は2種以上のペロブスカイト型酸化物を主成分とすることを特徴とする請求項4に記載の成膜方法。
一般式ABO・・・(P)
(A:Aサイトの元素であり、Pb,Ba,Sr,Bi,Li,Na,Ca,Cd,Mg,K,及びランタニド元素からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を含む。
B:Bサイトの元素であり、Ti,Zr,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Mn,Mg,Sc,Co,Cu,In,Sn,Ga,Zn,Cd,Fe,Ni,Hf,及びAlからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を含む。
O:酸素。
Aサイト元素とBサイト元素と酸素元素のモル比は1:1:3が標準であるが、これらのモル比はペロブスカイト構造を取り得る範囲内で基準モル比からずれてもよい。)
【請求項6】
前記膜は、前記一般式(P)で表され、かつAサイトがPb,Bi,及びBaからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属元素を含む1種又は2種以上のペロブスカイト型酸化物を含むことを特徴とする請求項5に記載の成膜方法。
【請求項7】
前記膜はZn含有化合物を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の成膜方法。
【請求項8】
前記膜は下記一般式(S)で表されるZn含有酸化物を含むことを特徴とする請求項7に記載の成膜方法。
InZn(x+3y/2+3z/2) ・・・(S)
(式中、MはIn,Fe,Ga,及びAlからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素である。x,y,zはいずれも0超の実数である。)
【請求項9】
内部に互いに対向配置された基板ホルダ及びターゲットホルダが装着された真空容器と、
前記真空容器内にプラズマを発生させるプラズマ発生手段と、
前記真空容器内にプラズマ化させるガスを導入するガス導入手段とを備え、
プラズマを用いた気相成長法により基板上にターゲットの構成元素を含む膜を成膜する成膜装置において、
前記ターゲットの表面から前記基板側に2〜3cm離れた位置のプラズマ空間のプラズマ電位Vs(V)の前記基板の面内方向のばらつきが±10V以内に調整されていることを特徴とする成膜装置。
【請求項10】
前記ターゲットの表面から前記基板側に2〜3cm離れた位置におけるガス圧力の前記基板の面内方向のばらつきが±1.5%以内に調整されていることを特徴とする請求項9に記載の成膜装置。
【請求項11】
前記ガス導入手段は、
前記真空容器内の前記基板ホルダと前記ターゲットホルダとの間に介挿され、内部に前記ガスが導入可能とされ、前記真空容器内に該ガスを噴出する複数のガス噴出口を有する環状のガス噴出部材と、
前記ガス噴出部材に接続され、前記真空容器の外部から前記ガス噴出部材内に前記ガスを供給するガス供給部材とを有することを特徴とする請求項9又は10に記載の成膜装置。
【請求項12】
前記ガス噴出部材に対して複数の前記ガス供給部材が均等間隔に接続されており、
かつ、前記ガス噴出部材に前記複数のガス噴出口が均等間隔に設けられていることを特徴とする請求項11に記載の成膜装置。
【請求項13】
前記ガス噴出部材に対して単数の前記ガス供給部材が接続されており、
かつ、前記ガス噴出部材には、前記ガス供給部材から近い側は前記ガス噴出口の数が相対的に少なく、前記ガス供給部材から遠い側は前記ガス噴出口の数が相対的に多く設けられていることを特徴とする請求項11に記載の成膜装置。
【請求項14】
前記真空容器の最内壁面が電気的に絶縁状態又はフローティング状態とされていることを特徴とする請求項9〜13のいずれかに記載の成膜装置。
【請求項15】
請求項1〜6のいずれかに記載の成膜方法により成膜されたものであることを特徴とする圧電体膜。
【請求項16】
請求項15に記載の圧電体膜と、該圧電体膜に対して電界を印加する電極とを備えたことを特徴とする圧電素子。
【請求項17】
請求項16に記載の圧電素子と、該圧電素子に隣接して設けられた液体吐出部材とを備え、該液体吐出部材は、液体が貯留される液体貯留室と、前記圧電体膜に対する前記電界の印加に応じて該液体貯留室から外部に前記液体が吐出される液体吐出口とを有することを特徴とする液体吐出装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−73979(P2010−73979A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−241244(P2008−241244)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】