成膜装置、成膜方法、プログラム、およびコンピュータ可読記憶媒体
【課題】膜の成膜中に膜厚をリアルタイムにモニターすることが可能な成膜装置、成膜方法、プログラム、およびコンピュータ可読記憶媒体を提供する。
【解決手段】開示する成膜装置200は、真空容器1の天板11に透過窓201を有しており、この透過窓201を通してサセプタ2上のウエハWに光を照射することにより、上に成膜される膜の膜厚が測定される。具体的には、膜厚測定システム101は、透過窓201の上面に配置される3つの光学ユニット102aから102cと、光学ユニット102aから102cのそれぞれに光学的に接続される光ファイバ線104aから104cと、これらの光ファイバ線104aから104cが光学的に接続される測定ユニット106と、測定ユニット106を制御するため測定ユニット106と電気的に接続される制御ユニット108とを有している。
【解決手段】開示する成膜装置200は、真空容器1の天板11に透過窓201を有しており、この透過窓201を通してサセプタ2上のウエハWに光を照射することにより、上に成膜される膜の膜厚が測定される。具体的には、膜厚測定システム101は、透過窓201の上面に配置される3つの光学ユニット102aから102cと、光学ユニット102aから102cのそれぞれに光学的に接続される光ファイバ線104aから104cと、これらの光ファイバ線104aから104cが光学的に接続される測定ユニット106と、測定ユニット106を制御するため測定ユニット106と電気的に接続される制御ユニット108とを有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜中の膜厚モニターを可能とする成膜装置、成膜方法、プログラム、およびコンピュータ可読記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路の製造においては、種々の薄膜を基板上に成膜するため、種々の成膜工程が行われる。高集積化のため回路パターンの微細化や薄膜の薄層化が更に進むにつれて、成膜工程における基板面内の膜厚均一性と膜厚制御性の更なる改善が求められている。このような要求に対応するため、原子層堆積法(分子層堆積法とも言う)が注目されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
原子層堆積法に好適な薄膜成膜装置の一つに、2枚から6枚程度のウエハが平置きされるサセプタを利用するものがある。このような薄膜成膜装置においては、一般に、回転可能なサセプタと、サセプタの上方においてサセプタの半径方向に延在する、一の原料化合物ガス用のガス供給ノズル、パージガス用のガス供給ノズル、他の原料ガス用のガス供給ノズル、およびパージガス用のガス供給ノズルと、が設けられている。これらのガス供給部はこの順に配置されており、これらのガス供給部から対応するガスを供給しつつ、サセプタを回転すると、サセプタ上に載置される基板に対して、一の原料化合物ガスの分子の吸着、一の原料化合物ガスのパージ、他の原料化合物ガスの分子の吸着、および他の原料化合物ガスのパージがこの順に行われる。このようにしてサセプタが1回転すると、基板上に、一の原料化合物ガスの分子と他の原料化合物ガスの分子を一分子層ずつ吸着することができ、両者が反応することにより、一分子層分の反応生成物が基板上に成膜される。
【0004】
したがって、原理上、成膜しようとする物質の目標膜厚を、その物質の一分子層あたりの厚さで除算すれば、必要なサセプタ回転数を求めることができ、その回転数で目標膜厚を達成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許公報6,646,235号明細書(図2,図3)
【特許文献2】特開2003−224108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、本発明の発明者らが検討した結果、以下の種々の理由により、回転数だけで膜厚が決まらない場合があることが分かった。例えば、成膜しようとする物質の一分子層あたりの厚さは、成膜温度などの成膜条件により異なる場合がある。また、その物質が、多結晶やアモルファス状であると、単結晶とは異なり、一分子層あたりの厚さ(原子間距離)が不明であることも多い。さらに、成膜しようとする物質が化合物の場合は、組成によって一分子層あたりの厚さが変化することもある。
【0007】
また、使用する原料化合物ガスによっては、その蒸気圧や分子間力などにより、基板に吸着する分子が二分子層以上となってしまう場合がある。さらに、真空容器内のガスの流れのパターン、サセプタの回転速度、原料ガスの供給量、サセプタの(僅かな)温度分布などによっても、基板上に吸着する分子が二分子層以上となってしまう場合もある。
【0008】
このような事情により、目標膜厚を一分子層あたりの厚さで除算して必要回転数を求めても、その回転数によって目標膜厚を実現できるとは限らない。このため、所定の成膜条件のもとで、いわゆる条件だしランを行って、サセプタの必要回転数を求めることが一般に行われている。条件だしランは、成膜する膜の種類や製造するデバイスの種類に応じて行わなければならないため、製造コストの増加や製造ラン回数の低下といった問題が生じる。
【0009】
一方、半導体装置の製造に用いられるエッチング装置では、製造ランにおいても処理の終点を検出することができる方法が知られているが(例えば特許文献2)、本発明者らの知るところによれば、本来的に膜厚制御性に優れた原子層堆積法においてまで、そのような検討は十分に行われていない。しかし、将来、膜厚制御性および膜厚均一性のより一層の改善が要求されるため、原子層堆積法においても成膜中に膜厚を測定することが望まれる。
【0010】
本発明は、上記の事情に鑑み、膜の成膜中に膜厚をリアルタイムにモニターすることが可能な成膜装置、成膜方法、プログラム、およびコンピュータ可読記憶媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するため、本発明の第1の態様は、容器内にて、互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板に供給するサイクルを実行して反応生成物の層を当該基板上に生成することにより膜を堆積する成膜装置を提供する。この成膜装置は、前記容器内に回転可能に設けられ、一の面に画定されて前記基板が載置される載置領域を有するサセプタ;前記容器の前記サセプタに対向する部分に、前記容器に対して気密に設けられる窓部;前記サセプタに載置される前記基板に堆積される膜の膜厚を前記窓部を通して光学的に測定する膜厚測定部;前記一の面に第1の反応ガスを供給するよう構成される第1の反応ガス供給部;前記サセプタの回転方向に沿って前記第1の反応ガス供給部から離れた、前記一の面に第2の反応ガスを供給するよう構成される第2の反応ガス供給部;前記回転方向に沿って、前記第1の反応ガスが供給される第1の処理領域と前記第2の反応ガスが供給される第2の処理領域との間に位置し、前記第1の処理領域と前記第2の処理領域とを分離する分離領域;前記第1の処理領域と前記第2の処理領域とを分離するために、前記容器の中央部に位置し、前記一の面に沿って第1の分離ガスを吐出する吐出孔を有する中央領域;および前記容器内を排気するために前記容器に設けられた排気口;を備える。上記の分離領域は、第2の分離ガスを供給する分離ガス供給部と、前記第2の分離ガスが前記回転方向に対し前記分離領域から前記処理領域側へ流れることができる狭隘な空間を、前記サセプタの前記一の面に対して形成する天井面とを含んでいる。
【0012】
本発明の第2の態様は、第1の態様の成膜装置であって、前記膜厚測定部が、前記基板の複数の点のそれぞれに対して光を照射し、当該照射した光の反射光を受光する複数の投受光部を含む成膜装置を提供する。
【0013】
本発明の第3の態様は、第1または第2の態様の成膜装置であって、前記基板に成膜された膜について前記膜厚測定部により測定された膜厚と、当該膜の目標膜厚とが比較され、当該比較の結果、前記測定された膜厚が前記目標膜厚以上と判定された場合、成膜を停止するように構成される成膜装置を提供する。
【0014】
本発明の第4の態様は、第1から第3のいずれかの態様であって、前記膜厚測定部がエリプソメータを含む成膜装置を提供する。
【0015】
本発明の第5の態様は、容器内にて、互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板に供給するサイクルを実行して反応生成物の層を当該基板上に生成することにより膜を堆積する成膜方法を提供する。この成膜方法は、前記容器内に回転可能に設けられサセプタであって、一の面に画定され前記基板が載置される載置領域に前記基板を載置するステップ;前記基板が載置されたサセプタを回転するステップ;第1の反応ガス供給部から前記サセプタへ第1の反応ガスを供給するステップ;前記サセプタの回転方向に沿って前記第1の反応ガス供給部から離れた第2の反応ガス供給部から前記サセプタへ第2の反応ガスを供給するステップ;前記第1の反応ガス供給部から前記第1の反応ガスが供給される第1の処理領域と前記第2の反応ガス供給部から前記第2の反応ガスが供給される第2の処理領域との間に位置する分離領域に設けられた分離ガス供給部から、第1の分離ガスを供給し、前記分離領域の天井面と前記サセプタとの間に形成される狭隘な空間において前記回転方向に対し前記分離領域から前記処理領域側に前記第1の分離ガスを流すステップ;前記容器の中央部に位置する中央部領域に形成される吐出孔から第2の分離ガスを供給するステップ;前記容器を排気するステップ;前記回転するステップにより回転されるサセプタ上の前記基板に光を照射するステップ;前記光を照射するステップにより前記基板に照射された光の反射光を受光するステップ;前記受光するステップにより受光した前記反射光の分光強度を利用して前記基板上に成膜される膜の膜厚を計算するステップ;を含んでいる。
【0016】
本発明の第6の態様は、第5の態様の成膜方法であって、前記照射するステップにおいて、複数の光ビームが前記基板に対して照射され、当該複数の光ビームに対応する複数の反射ビームがそれぞれ受光され、前記膜の膜厚を計算するステップにおいて、前記複数の反射ビームそれぞれの分光強度が利用されて、前記膜の膜厚が形成される成膜方法を提供する。
【0017】
本発明の第7の態様は、第5または第6の態様の成膜方法であって、前記膜の膜厚を計算するステップにおいて計算された膜厚と、当該膜の目標膜厚とを比較するステップを更に含む成膜方法を提供する。
【0018】
本発明の第8の態様は、第5から第7のいずれかの態様の成膜方法であって、前記比較するステップにおける比較の結果、前記計算された膜厚が前記目標膜厚以上と判定された場合に、前記第1の反応ガスと前記第2の反応ガスの供給を停止するステップを更に含む成膜方法を提供する。
【0019】
本発明の第9の態様は、第5から第8のいずれかの態様の成膜方法であって、前記膜の膜厚を計算するステップにおいて、エリプソメトリにより前記膜厚が計算される成膜方法を提供する。
【0020】
本発明の第10の態様は、第1から第4のいずれかの態様の成膜装置に、第5から第9のいずれかの態様の成膜方法を実施させるプログラムを提供する。
【0021】
本発明の第11の態様は、第10の態様のプログラムを格納するコンピュータ可読記憶媒体を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の実施形態によれば、膜の成膜中に膜厚をリアルタイムにモニターすることが可能な成膜装置、成膜方法、プログラム、およびコンピュータ可読記憶媒体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態による成膜装置を示す模式図
【図2】図1の成膜装置の容器本体の内部を示す斜視図
【図3】図1の成膜装置の容器本体の内部を示す上面図
【図4】(a)は図1の成膜装置で用いられるサセプタの一部と、一のサセプタトレイとを示す斜視図、(b)は(a)のI−I線に沿った断面図
【図5】図1の成膜装置に設けられる膜厚測定システムを示す模式図
【図6】図1の成膜装置の一部断面図
【図7】図1の成膜装置の破断斜視図
【図8】図1の成膜装置におけるパージガスの流れを示す一部断面図
【図9】図1の成膜装置の容器本体内へアクセスする搬送アームを示す斜視図
【図10】図1の成膜装置の容器本体内を流れるガスのフローパターンを示す上面図
【図11】図1の成膜装置内の突出部の形状を説明する図
【図12】図1の成膜装置のガス供給ノズルの変形例を示す図
【図13】図1の成膜装置内の凸状部の変形例を示す図
【図14】図1の成膜装置内の凸状部とガス供給ノズルの変形例を示す図
【図15】図1の成膜装置内の凸状部の他の変形例を示す図
【図16】図1の成膜装置におけるガス供給ノズルの配置位置の変形例を示す図
【図17】図1の成膜装置内の凸状部のまた別の変形例を示す図
【図18】図1の成膜装置内において、反応ガス供給ノズルに対して凸状部を設けた例を示す図
【図19】図1の成膜装置内の凸状部の更に別の変形例を示す図
【図20】本発明の他の実施形態による成膜装置を示す模式図
【図21】図1または図23の成膜装置を含む基板処理装置を示す模式図
【図22】図1または図23の成膜装置を含む他の基板処理装置を示す模式図
【図23】図22のII−II線に沿った断面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態による成膜装置について、添付図面を参照しながら説明する。
【0025】
本発明の実施形態による成膜装置200は、図1(図3のB−B線に沿った断面図)に示すように、平面形状が概ね円形である扁平な真空容器1と、この真空容器1内に設けられ、当該真空容器1の中心に回転中心を有するサセプタ2と、を備えている。真空容器1は天板11が容器本体12から分離できるように構成されている。天板11は、例えばOリングなどの封止部材13を介して容器本体12に取り付けられ、これにより真空容器1が気密に密閉される。一方、天板11を容器本体12から分離する必要があるときは、図示しない駆動機構により上方に持ち上げられる。
【0026】
また、天板11には段部を有する開口が設けられており、この段部を利用して、透過窓201がOリングなどの封止部材(図示せず)を介して取り付けられている。これにより、透過窓201は真空容器1に対し気密に取り付けられる。透過窓201は、例えば石英ガラスから作製されており、膜厚測定システム101によりウエハW上に成膜される膜の膜厚を測定するために用いられる。また、透過窓201は、後述するサセプタ2に載置されるウエハWの直径とほぼ等しい幅を有し、真空容器1の直径方向に沿って設けられている。これにより、ウエハWの直径方向に沿った複数の点での膜厚測定が可能である。膜厚測定システム101は、本実施形態ではエリプソメトリに基づく膜厚測定システムである。
【0027】
サセプタ2は、本実施形態においては約20mmの厚さを有するカーボン板で作製され、約960mmの直径を有する円板形状に形成されている。また、サセプタ2の上面、裏面および側面をSiCでコーティングしても良い。ただし、サセプタ2は、他の実施形態においては、石英などの他の材料で形成しても良い。図1を参照すると、サセプタ2は、中央に円形の開口部を有しており、開口部の周りで円筒形状のコア部21により上下から挟まれて保持されている。コア部21は、鉛直方向に伸びる回転軸22の上端に固定されている。回転軸22は容器本体12の底面部14を貫通し、その下端が当該回転軸22を鉛直軸回りに回転させる駆動部23に取り付けられている。この構成により、サセプタ2はその中心を軸に例えば図2に示す回転方向RDに回転することができる。なお、回転軸22および駆動部23は、上面が開口した筒状のケース体20内に収納されている。このケース体20はその上面に設けられたフランジ部分20aを介して真空容器1の底面部14の下面に気密に取り付けられており、これにより、ケース体20の内部雰囲気が外部雰囲気から隔離されている。
【0028】
図2及び図3に示すように、サセプタ2の上面に、それぞれウエハWが載置される複数(図示の例では5つ)の円形凹部状の載置部24が形成されている。ただし、図3ではウエハWを1枚のみを示している。載置部24は、サセプタ2に互いに約72°の角度間隔で配置されている。
【0029】
ここで、図4(a)を参照すると、載置部24と載置部24に載置されたウエハWとの断面が図示されている。この図に示すように、載置部24は、ウエハWの直径よりも僅かに大きい、例えば4mm大きい直径と、ウエハWの厚さに等しい深さとを有している。したがって、ウエハWが載置部24に載置されたとき、ウエハWの表面は、サセプタ2の載置部24を除く領域の表面と同じ高さにある。仮に、ウエハWとその領域との間に比較的大きい段差があると、その段差によりガスの流れに乱流が生じ、ウエハW上での膜厚均一性が影響を受ける。このため、2つの表面が同じ高さにある。「同じ高さ」は、ここでは高さの差が約5mm以下であることを意味するが、その差は、加工精度が許す範囲でできるだけゼロに近くすべきである。
【0030】
また、載置部24の底には、3つの貫通孔(図示せず)が形成されており、これらを通して3つの昇降ピン(図9参照)が昇降する。昇降ピンは、ウエハWの裏面を支え、ウエハWを昇降させる。
【0031】
容器本体12の側壁には、図2、図3及び図9に示すように、搬送口15が形成されている。ウエハWは、搬送口15を通して搬送アーム10により真空容器1の中へ、又は真空容器1から外へと搬送される。この搬送口15にはゲートバルブ(図示せず)が設けられ、これにより搬送口15が開閉される。一の載置部24が搬送口15に整列し、ゲートバルブが開くと、ウエハWは、搬送アーム10により真空容器1内へ搬送され、搬送アーム10から載置部24に置かれる。ウエハWを搬送アーム10から載置部24へ降ろすため、また、載置部24から持ち上げるために、昇降ピン16(図9)が設けられており、昇降ピンは昇降機構(図示せず)によって、サセプタ2の載置部24に形成された貫通孔を通して昇降される。このようにして、ウエハWが載置部24に載置される。
【0032】
再び図1を参照すると、透過窓201の上方には、膜厚測定システム101が配置されている。膜厚測定システム101は、透過窓201の上面に配置される3つの光学ユニット102aから102cと、光学ユニット102aから102cのそれぞれに光学的に接続される光ファイバ線104aから104cと、これらの光ファイバ線104aから104cが光学的に接続される測定ユニット106と、測定ユニット106を制御するため測定ユニット106と電気的に接続される制御ユニット108とを有している。制御ユニット108は、例えばコンピュータであって良く、成膜装置200の全体の制御を行う制御部100と電気的に接続され、両者の間で信号の送受信が行われる。これにより、成膜装置200と膜厚測定ユニット101とが協働する。
【0033】
図5は、光学ユニット102aと測定ユニット106の構成を示す概略図である。図示のとおり、光学ユニット102aは、投光部LEと受光部Dとを有している。また、測定ユニット106は、キセノンランプなどを含む光源106aと、分光器106bと、分光器106bそれぞれからの光を受光する受光器106cとを有している。さらに、光ファイバ線104は、2本の光ファイバOF1,OF2を有する2芯の光ファイバ線である。
【0034】
なお、図5においては、光学ユニット102bおよび102cを省略するが、これらは光学ユニット102aと同じ構成を有し、また、測定ユニット106は光学ユニット102bおよび102cに対応して分光器106bと受光器106cとを有している。
【0035】
図示のとおり、光学ユニット102aの投光部LEは、光ファイバ線104aの光ファイバOF1により、測定ユニット106の光源106aと光学的に接続されている。これにより、光源106aからの光が、光ファイバOF1を通して投光部LEに導かれ、投光部LEから出射される。また、投光部LEは、光ファイバOF1により導かれた光をビームBiとしてウエハWに向けて出射するため、レンズ(図示せず)などを含む光学系を有している。この光学系には、ウエハWに向けて出射するビームBiを直線偏光に偏光する偏光子Pが含まれる。さらに、投光部LEは、ビームBiを所定の角度でウエハWに照射するため、光学系の角度を調整する角度調整部(図示せず)を有している。
【0036】
一方、光学ユニット102aの受光部Dは、光ファイバ線104aの光ファイバOF2により、測定ユニット106の光源106aと光学的に接続されている。受光部Dは、投光部LEからウエハWに対して所定の角度で出射されたビームBiがウエハWの表面で反射された反射ビームBrを受光するように配置されている。たとえば、投光部LEと受光部Dは、ウエハWの法線に対して等角度で傾斜し、かつ、ビームBi、反射ビームBrおよび法線が一の平面を形成するように配置される。また、受光部Dは、このように受光した反射ビームBrを光ファイバOF2に入射するため、所定の光学系を有している。この光学系には、反射ビームBrを円偏光に偏光する光弾性変調器PEMと、偏光子Pとが含まれる。以上のように、光学ユニット102aから102cは、位相変調型のエリプソメータに必要な光学部品を含んで構成されている。
【0037】
受光部Dにより受光された反射ビームBrは、光ファイバOF2を通して分光器106bに導かれ、分光器106bにおいて反射ビームBr(白色光)が分光され、分光光が受光器106cへ入射される。受光器106cは、例えばフォトダイオードや光電子増倍管などを含み、受光器106cに入射した分光光の強度に応じた出力信号を制御ユニット108へ出力する。また、制御ユニット108は、分光器106bへ制御信号を出力し、分光器106bを駆動する。したがって、制御ユニット108は、分光器106bで分光された光の波長(フォトンエネルギー)とその光強度との関係を取得することができる。制御ユニット108は、この関係に基づき所定のアルゴリズムに従って、ウエハW上に成膜される膜の膜厚を求めることができる。
【0038】
また、制御ユニット108は、測定ユニット106の光源106aへ電力を供給する電源(図示せず)を制御することができ、電源へ制御信号を出力することを通して、光源106aを制御することができる。また、光源106aと光ファイバOF1との間には、光源からの光を光ファイバOF1に入射するための光学系(図示せず)が設けられている。また、光源106aと光ファイバOF1との間には、制御ユニット108の制御により開閉するシャッタ(図示せず)が配置されており、これにより、ウエハWに対して所定のタイミングでビームBiが照射され、所定のタイミングでウエハW上に成膜される膜の膜厚が測定される。
【0039】
図2および図3を再び参照すると、サセプタ2の上方に第1の反応ガス供給ノズル31、第2の反応ガス供給ノズル32、及び分離ガス供給ノズル41,42が設けられ、これらは、所定の角度間隔で半径方向に延在している。この構成により、載置部24は、ノズル31,32,41,及び42の下を通過することができる。図示の例では、第2の反応ガス供給ノズル32、分離ガス供給ノズル41、第1の反応ガス供給ノズル31、及び分離ガス供給ノズル42がこの順に時計回りに配置されている。これらのガスノズル31,32,41,42は、容器本体12の周壁部を貫通し、ガス導入ポート31a,32a,41a,42aである端部を壁の外周壁に取り付けることにより、支持されている。ガスノズル31,32,41,42は、図示の例では、真空容器1の周壁部から真空容器1内へ導入されているが、環状の突出部5(後述)から導入しても良い。この場合、突出部5の外周面と天板11の外表面とに開口するL字型の導管を設け、真空容器1内でL字型の導管の一方の開口にガスノズル31(32,41,42)を接続し、真空容器1の外部でL字型の導管の他方の開口にガス導入ポート31a(32a、41a、42a)を接続することができる。
【0040】
図示していないが、反応ガス供給ノズル31は、第1の反応ガスであるビスターシャルブチルアモノシラン(BTBAS)のガス供給源に接続され、反応ガス供給ノズル32は、第2の反応ガスであるオゾン(O3)のガス供給源に接続されている。
【0041】
反応ガス供給ノズル31、32には、下方側に反応ガスを吐出するための吐出孔33がノズルの長さ方向に間隔を置いて配列されている。本実施形態においては、吐出孔33は、約0.5mmの口径を有し、反応ガス供給ノズル31、32の長さ方向に沿って約10mmの間隔で配列されている。また、反応ガス供給ノズル31の下方領域はBTBASガスをウエハに吸着させるための第1の処理領域P1であり、反応ガス供給ノズル32の下方領域はO3ガスをウエハに吸着させるための第2の処理領域P2である。
【0042】
一方、分離ガス供給ノズル41,42は、チッ素ガス(N2)のガス供給源(図示せず)に接続されている。分離ガス供給ノズル41、42は、下方側に分離ガスを吐出するための吐出孔40を有している。吐出孔40は、長さ方向に所定の間隔で配置されている。本実施形態においては、吐出孔40は、約0.5mmの口径を有し、分離ガス供給ノズル41、42の長さ方向に沿って約10mmの間隔で配列されている。
【0043】
分離ガス供給ノズル41、42は、第1の処理領域P1と第2の処理領域P2とを分離するよう構成される分離領域Dに設けられている。各分離領域Dにおいては、真空容器1の天板11に、図2、図3、図4(a)および図4(b)に示すように、凸状部4が設けられている。凸状部4は、扇形の上面形状を有しており、その頂部は真空容器1の中心に位置し、円弧は容器本体12の内周壁の近傍に沿って位置している。また、凸状部4は、凸状部4が二分割されるように半径方向に延びる溝部43を有している。溝部43には分離ガス供給ノズル41(42)が収容されている。分離ガス供給ノズル41(42)の中心軸と扇形の凸状部4の一方の辺との間の距離は、分離ガス供給ノズル41(42)の中心軸と扇形の凸状部4の他方の辺との間の距離とほぼ等しい。なお、溝部43は、本実施形態では、凸状部4を二等分するように形成されるが、他の実施形態においては、例えば、凸状部4におけるサセプタ2の回転方向上流側が広くなるように、溝部43を形成しても良い。
【0044】
上記の構成によれば、図4(a)に示すように、分離ガス供給ノズル41(42)の両側には平坦な低い天井面44(第1の天井面)があり、低い天井面44の両側方には高い天井面45(第2の天井面)がある。凸状部4(天井面44)は、第1及び第2の反応ガスが凸状部4とサセプタ2との間に侵入するのを阻止して混合するのを阻止するための狭隘な空間である分離空間を形成する。
【0045】
図4(b)を参照すると、サセプタ2の回転方向に沿って反応ガス供給ノズル32から凸状部4に向かって流れるO3ガスが当該空間へ侵入するのが阻止され、またサセプタ2の回転方向と反対方向に沿って反応ガス供給ノズル31から凸状部4に向かって流れるBTBASガスが当該空間へ侵入するのが阻止される。「ガスが侵入するのが阻止される」とは、分離ガス供給ノズル41から吐出した分離ガスであるN2ガスが第1の天井面44とサセプタ2の表面との間に拡散して、この例では当該第1の天井面44に隣接する第2の天井面45の下方側の空間に吹き出し、これにより第2の天井面45の下方側空間からのガスが侵入できなくなることを意味する。そして「ガスが侵入できなくなる」とは、第2の天井面45の下方側空間から凸状部4の下方側空間に全く入り込むことができない場合のみを意味するのではなく、反応ガスの一部が侵入しても、その反応ガスが分離ガス供給ノズル41に向かって更に進むことができず、よって、混ざり合うことができないことも意味する。すなわち、このような作用が得られる限り、分離領域Dは、第1の処理領域P1と第2の処理領域P2とを分離することとなる。また、ウエハに吸着したガスについては当然に分離領域D内を通過することができる。したがって、ガスの侵入阻止は、気相中のガスを意味している。
【0046】
図1、図2、及び図3を参照すると、天板11の下面には、内周縁がコア部21の外周面に面するように配置された環状の突出部5が設けられている。突出部5は、コア部21よりも外側の領域においてサセプタ2と対向している。また、突出部5は、凸状部4と一体に形成され、凸状部4の下面と突出部5の下面とは一の平面を形成している。すなわち、突出部5の下面のサセプタ2からの高さは、凸状部4の下面(天井面44)と高さと等しい。この高さは、後に高さhと言及される。ただし、突出部5と凸状部4は、必ずしも一体でなくても良く、別体であっても良い。なお、図2及び図3は、凸状部4を真空容器1内に残したまま天板11を取り外した真空容器1の内部構成を示している。
【0047】
本実施形態においては、分離領域Dは、凸状部4となるべき扇形プレートに溝部43を形成して、分離ガス供給ノズル41(42)を溝部43に配置することにより形成される。しかし、2つの扇形プレートが分離ガス供給ノズル41(42)の両側に配置されるように、これら2つの扇形プレートを天板11の下面にネジで取り付けるようにしても良い。
【0048】
本実施形態において、約300mmの直径を有するウエハWが真空容器1内で処理されることとなる場合、凸状部4は、サセプタの回転中心から140mm離れた内側の円弧li(図3)に沿った例えば140mmの周方向長さと、サセプタ2の載置部24の最外部に対応する外側の円弧lo(図3)に沿った例えば502mmの周方向長さとを有する。また、外側の円弧loに沿った、凸状部4の一側壁から溝部43の直近の側壁までの周方向長さは、約246mmである。
【0049】
また、凸状部4の下面、即ち、天井面44の、サセプタ2の表面から測った高さh(図4(a))は、例えば約0.5mmから約10mmであって良く、約4mmであると好適である。また、サセプタ2の回転数は例えは1rpm〜500rpmに設定されている。分離領域Dの分離機能を確保するためには、処理真空容器1内の圧力やサセプタ2の回転数などに応じて、凸状部4の大きさや凸状部4の下面(第1の天井面44)とサセプタ2の表面との高さhを例えば実験などを通して設定してよい。なお分離ガスとしては、本実施形態ではN2ガスだが、分離ガスが酸化シリコンの成膜に影響を与えない限りにおいて、HeやArガスなどの不活性ガスや水素ガスなどであってもよい。
【0050】
図6は、図3のA−A線に沿った断面図の半分を示し、ここには凸状部4と、凸状部4と一体に形成された突出部5が図示されている。図6を参照すると、凸状部4は、その外縁においてL字状に屈曲する屈曲部46を有している。凸状部4は天板11に取り付けられ天板11とともに容器本体12から分離され得るため、屈曲部46とサセプタ2との間及び屈曲部46と容器本体12との間に僅かな隙間があるが、屈曲部46は、サセプタ2と容器本体12との間の空間を概ね埋めており、反応ガス供給ノズル31aからの第1の反応ガス(BTBAS)と反応ガス供給ノズル32aからの第2の反応ガス(オゾン)とがこの隙間を通して混合するのを防止する。屈曲部46と容器本体12との間の隙間、及び屈曲部46とサセプタ2との間に僅かな隙間は、上述のサセプタから凸状部4の天井面44までの高さhとほぼ同一の寸法とされている。図示の例において、屈曲部46のサセプタ2の外周面に面する側壁が、分離領域Dの内周壁を構成している。
【0051】
図3に示すB−B線に沿った断面図である図1を再び参照すると、容器本体12は、サセプタ2の外周面に対向する容器本体12の内周部に凹み部を有している。これ以降、この凹み部を排気領域6と称する。排気領域6の下方には、排気口61(他の排気口62については図3参照)が設けられ、これらには他の排気口62についても使用され得る排気管63を介して真空ポンプ64に接続されている。また、排気管63には圧力調整器65が設けられている。複数の圧力調整器65を、対応する排気口61,62に対して設けてもよい。
【0052】
図3を再び参照すると、排気口61は、上方から見て、第1の反応ガス供給ノズル31と、第1の反応ガス供給ノズル31に対してサセプタ2の時計回転方向の下流に位置する凸状部4との間に配置されている。この構成により、排気口61は、実質的に、第1の反応ガス供給ノズル31からのBTBASガスを専ら排気することができる。一方、排気口62は、上方から見て、第2の反応ガス供給ノズル32と、第2の反応ガス供給ノズル32に対してサセプタ2の時計回転方向の下流に位置する凸状部4との間に配置されている。この構成により、排気口62は、実質的に、第2の反応ガス供給ノズル32からのO3ガスを専ら排気することができる。したがって、このように構成される排気口61、62は、分離領域DがBTBASガスとO3ガスとが混合するのを防止するのを補助することができる。
【0053】
本実施形態では、2つの排気口が容器本体12に設けられているが、他の実施形態では、3つの排気口が設けられてもよい。例えば、第2の反応ガス供給ノズル32と、第2の反応ガス供給ノズル32に対してサセプタ2の時計回転方向の上流に位置する分離領域Dとの間に追加の排気口を設けてもよい。また、更に追加の排気口をどこかに設けてもよい。図示の例では、排気口61、62はサセプタ2よりも低い位置に設けることで真空容器1の内周壁とサセプタ2の周縁との間の隙間から排気するようにしているが、容器本体12の側壁に設けてもよい。また、排気口61,62を容器本体12の側壁に設ける場合、排気口61,62はサセプタ2よりも高く位置して良い。この場合、ガスはサセプタ2の表面に沿って流れ、サセプタ2の表面より高く位置する排気口61,62へ流れ込む。したがって、真空容器1内のパーティクルが吹き上げられないという点で、排気口が例えば天板11に設けられた場合に比べて、有利である。
【0054】
図1、図2及び図7に示すように、サセプタ2と容器本体12の底部14との間の空間には、加熱部としての環状のヒータエレメントから構成されるヒータユニット7が設けられ、これにより、サセプタ2上のウエハWがサセプタ2を介してプロセスレシピで決められた温度に加熱される。また、カバー部材71が、サセプタ2の下方においてサセプタ2の外周の近くに、ヒータユニット7を取り囲むように設けられ、ヒータユニット7が置かれている空間が、ヒータユニット7の外側の領域から区画されている。カバー部材71は上端にフランジ部71aを有し、フランジ部71aは、カバー部材71内にガスが流入することを防止するため、サセプタ2の下面とフランジ部との間に僅かな間隙が維持されるように配置される。
【0055】
再び図1を参照すると、底部14は、環状のヒータユニット7の内側に隆起部を有している。隆起部の上面は、サセプタ2と隆起部との間及び隆起部とコア部21とに接近しており、隆起部の上面とサセプタ2との間、及び隆起部の上面とコア部21の裏面との間に僅かな隙間を残している。また、底部14は、回転軸22が通り抜ける中心孔を有している。この中心孔の内径は、回転軸22の直径よりも僅かに大きく、フランジ部20aを通してケース体20と連通する隙間を残している。パージガス供給管72がフランジ部20aの上部に接続されている。また、ヒータユニット7が収容される領域をパージするため、複数のパージガス供給管73が所定の角度間隔でヒータユニット7の下方の領域に接続されている。
【0056】
このような構成により、回転軸22と底部14の中心孔との間の隙間、コア部21と底部14の隆起部との間の隙間、及び底部14の隆起部とサセプタ2の裏面との間の隙間を通して、パージガス供給管72からヒータユニット空間へN2パージガスが流れる。また、パージガス供給管73からヒータユニット7の下の空間へN2ガスが流れる。そして、これらのN2パージガスは、カバー部材71のフランジ部71aとサセプタ2の裏面との間の隙間を通して排気口61へ流れ込む。N2パージガスのこのような流れは、図8に矢印で示してある。N2パージガスは、第1(第2)の反応ガスがサセプタ2の下方の空間を回流して第2(第1)の反応ガスと混合するのを防止する分離ガスとして働く。
【0057】
図8を参照すると、真空容器1の天板11の中心部には分離ガス供給管51が接続され、これにより、天板11とコア部21との間の空間52に分離ガスであるN2ガスが供給される。この空間52に供給された分離ガスは、突出部5とサセプタ2との狭い隙間50を通して、サセプタ2の表面に沿って流れ、排気領域6に到達する。この空間53と隙間50は分離ガスが満たされているので、サセプタ2の中心部を介して反応ガス(BTBAS、O3)が混合することがない。即ち、本実施形態の成膜装置200は、第1の処理領域P1と第2の処理領域P2とを分離するためにサセプタ2の回転中心部と真空容器1とにより画成され、分離ガスをサセプタ2の上面に向けて吐出する吐出口を有するように構成される中心領域Cが設けられている。なお、図示の例では、吐出口は突出部5とサセプタ2との狭い隙間50に相当する。
【0058】
また、この実施形態による成膜装置200には、装置全体の動作のコントロールを行うための制御部100が設けられている。この制御部100は、例えばコンピュータで構成されるプロセスコントローラ100aと、ユーザインタフェース部100bと、メモリ装置100cとを有する。ユーザインタフェース部100bは、成膜装置200の動作状況を表示するディスプレイや、成膜装置200の操作者がプロセスレシピを選択したり、プロセス管理者がプロセスレシピのパラメータを変更したりするためのキーボードやタッチパネル(図示せず)などを有する。
【0059】
メモリ装置100cは、プロセスコントローラ100aに種々のプロセスを実施させる制御プログラム、プロセスレシピ、及び各種プロセスにおけるパラメータなどを記憶している。また、これらのプログラムは、成膜装置200に例えば後述する動作(成膜方法(膜厚測定を含む))を行わせるためのステップ群を有している。これらの制御プログラムやプロセスレシピは、ユーザインタフェース部100bからの指示に従って、プロセスコントローラ100aにより読み出されて実行される。また、これらのプログラムは、コンピュータ可読記憶媒体100dに格納され、これらに対応した入出力装置(図示せず)を通してメモリ装置100cにインストールしてよい。コンピュータ可読記憶媒体100dは、ハードディスク、CD、CD−R/RW、DVD−R/RW、フレキシブルディスク、半導体メモリなどであってよい。また、プログラムは通信回線を通してメモリ装置100cへダウンロードしてもよい。
【0060】
次に、本実施形態の成膜装置200の動作(成膜方法)について説明する。
(ウエハ搬入工程)
始めに、ウエハWがサセプタ2上に載置される工程について、主として図10と図11を参照しながら説明する。まず、サセプタ2を回転して載置部24を搬送口15に整列させ、ゲートバルブ(図示せず)を開く。次に、図9に示すように、ウエハWが搬送アーム10によって搬送口15を通して真空容器1内に搬入され、載置部24の上方に保持される(図9参照)。次いで、昇降ピン16が上昇して搬送アーム10からウエハWを受け取り、搬送アーム10が真空容器1から退出し、ゲートバルブ(図示せず)が閉まり、昇降ピン16が下降してウエハWをサセプタトレイ201の載置部24に載置する。
この一連の動作が、一ランで処理されるウエハの枚数に等しい回数繰り返されると、ウエハ搬入が終了する。
【0061】
(成膜工程)
ウエハ搬入後、真空ポンプ64(図1)により真空容器1内が予め設定した圧力にまで排気される。次に、サセプタ2が上から見て時計回りに回転(公転)を開始する。サセプタ2およびサセプタトレイ201は、ヒータユニット7により前もって所定の温度(例えば300℃)に加熱されており、ウエハWは、載置部24に載置されることにより加熱される。ウエハWが加熱され、所定の温度に維持されたことが温度センサ(図示せず)により確認された後、第1の反応ガス(BTBAS)が第1の反応ガス供給ノズル31を通して第1の処理領域へ供給され、第2の反応ガス(O3)が第2の反応ガス供給ノズル32を通して第2の処理領域P2へ供給される。加えて、分離ガス供給ノズル41、42から分離ガス(N2)が供給される。
【0062】
ウエハWが第1の反応ガス供給ノズル31の下方の第1の処理領域P1を通過するときに、ウエハWの表面にBTBAS分子が吸着し、第2の反応ガス供給ノズル32の下方の第2の処理領域P2と通過するときに、ウエハWの表面にO3分子が吸着され、O3によりBTBAS分子が酸化される。したがって、サセプタ2の回転により、ウエハWが領域P1、P2の両方を一回通過すると、ウエハWの表面に酸化シリコンの一分子層が形成される。
【0063】
(膜厚測定)
上述のようにして成膜している間に、以下の膜厚測定が行われる。
始めに、サセプタ2の回転速度に応じた測定タイミングが決定される。測定タイミングは、サセプタ2を回転する回転軸22の外周の所定の位置(例えば、サセプタ2の載置部24に対応した位置)に、例えば磁石を取り付けて回転軸22とも回転させ、所定のヘッドで磁気の変化を測定することにより把握することができる。
【0064】
次に、制御ユニット108は、光源106aの電源を制御して光源106aを点灯させるとともに、把握したタイミングに基づいてシャッタ(図示せず)を開け閉めして、光源106aからの光を光ファイバOF1にパルス状に入射させる。これにより、測定対象のウエハWに光を照射することができる。すなわち、光源106aからの光は、光ファイバOF1を通して投光部LEに至り、投光部LEからビームBiとして出射されて、回転しているサセプタ2上の測定対象のウエハWに選択的に照射される。そして、そのウエハWで反射した反射ビームBrは、受光部Dに入射し、光ファイバOF2を通過して、分光器106bに至る。このとき、分光器106bは、制御ユニット108により制御され、ウエハWからの反射ビームBrが光ファイバOF2から出射している間に、例えば、約248nmから約827nmまで(フォトンエネルギー換算で約1.5eVから5eVまで)波長スキャン(分光)をする。具体的には、制御ユニット108がシャッタの開閉を制御する信号と同期して分光器106bへ制御信号を送信し、分光器106bは、この制御信号に基づき、波長スキャンを行うことができる。このようにして、ビームBiがパルス状にウエハWに照射される間に分光測定が行われ、反射ビームBrの分光強度の波長(フォトンエネルギー)依存性に関するデータが取得される。
【0065】
この後、制御ユニット108は、上記の分光光強度の波長(フォトンエネルギー)依存性のデータに基づき所定のアルゴリズムにより、ウエハW上に成膜される膜の膜厚を算出する。そして、算出した膜厚が、その膜の目標膜厚と比較される。目標膜厚は、例えば制御部100にダウンロードされたレシピを参照することにより比較のたびに取得しても良いし、予め制御部100から制御ユニット108に通知され記憶されても良い。比較の結果、算出した膜厚が目標膜厚と等しいか、目標膜厚以上であると判定された場合、制御部100に通知信号を出力することにより、制御部100に対して成膜を停止すべきことを通知する。制御部100は、通知信号を受信すると、第1の反応ガス、第2の反応ガス、および分離ガスを停止し、サセプタ2の回転を中止して、次のウエハ搬出工程を開始する。
【0066】
なお、上記の膜厚測定は、光学ユニット102aから102cに対応した位置において、同時に測定することもできる。この場合、ウエハW上の3点で膜厚が測定されるが、3点すべてにおいて目標膜厚以上となったときに成膜を停止しても良いし、1点または2点が目標膜厚以上となったときに成膜を中止しても良い。また、サセプタ2上の所定の載置部24に載置される一枚のウエハWに対してのみ膜厚測定を行っても良いし、サセプタ2上のすべてのウエハWに対して膜厚測定を行っても良い。
【0067】
また、パルス状にウエハWに照射されるビームBiの持続時間(duration)は、例えばサセプタ2の回転速度に応じて決定して良い。具体的には、ビームBiの持続時間(シャッタが開いている時間)は、10ミリ秒から100ミリ秒までの期間であって良い。また、サセプタ2の一回転毎に膜厚を測定する必要はなく、例えば、サセプタ2が5から20回回転する毎に測定をしても良い。
【0068】
(ウエハ搬出工程)
成膜工程終了後、真空容器1内をパージする。次いで、ウエハWが、搬入動作と逆の動作により搬送アーム10により真空容器1から順次搬出される。すなわち、載置部24が搬送口15に整列し、ゲートバルブが開いた後、昇降ピン16が上昇してウエハWをサセプタトレイ201の上方に保持する。次に、搬送アーム10がウエハWの下方にまで進入し、昇降ピン16が下降して、搬送アーム10によりウエハWが受け取られる。この後、搬送アーム10が真空容器1から退出し、ウエハWを真空容器1から搬出する。これにより、一のウエハWの搬出が終了する。続けて、上記の動作が繰り返されて、サセプタ2上のすべてのウエハWが搬出される。
【0069】
以下、本発明の実施形態による成膜装置を用いた成膜工程の利点について説明する。
図10は、ガスノズル31,32,41,42から真空容器1内へ供給されたガスのフローパターンを模式的に示す図である。図示のとおり、第2の反応ガス供給ノズル32から吐出されたO3ガスの一部は、サセプタ2の表面(及びウエハWの表面)に当たって、その表面に沿ってサセプタ2の回転方向と逆の方向に流れる。次いで、このO3ガスは、サセプタ2の回転方向の上流側から流れてきたN2ガスに押し戻され、サセプタ2の周縁と真空容器1の内周壁の方へ向きを変える。最後に、O3ガスは、排気領域6に流れ込み、排気口62を通して真空容器1から排気される。
【0070】
第2の反応ガス供給ノズル32から吐出されたO3ガスの他の部分は、サセプタ2の表面(及びウエハWの表面)に当たって、その表面に沿ってサセプタ2の回転方向と同じ方向に流れる。この部分のO3ガスは、主に、中心領域Cから流れるN2ガスと排気口62を通した吸引力によって、排気領域6に向かって流れる。一方、この部分のO3ガスの少量部分が、第2の反応ガス供給ノズル32に対してサセプタ2の回転方向の下流側に位置する分離領域Dに向かって流れ、天井面44とサセプタ2との間の隙間に入る可能性がある。しかし、その隙間の高さhが意図した成膜条件下で当該隙間への流入を阻止する程度の高さに設定されているため、O3ガスはその隙間に入るのが阻止される。喩え、少量のO3ガスがその隙間に流れ込んだとしても、そのO3ガスは、分離領域Dの奥まで流れることができない。隙間に流れ込んだ少量のO3ガスは、分離ガス供給ノズル41から吐出された分離ガスによって押し戻される。したがって、図10に示すように、サセプタ2の上面を回転方向に沿って流れる実質的にすべてのO3ガスが、排気領域6へ流れ排気口62によって排気される。
【0071】
同様に、第1の反応ガス供給ノズル31から吐出され、サセプタ2の回転方向と反対の方向にサセプタ2の表面に沿って流れる一部のBTBASガスは、第1の反応ガス供給ノズル31に対して回転方向上流側に位置する凸状部4の天井面44とサセプタ2との間の隙間に流れ込むことが防止される。喩え少量のBTBASガスが流れ込んだとしても、分離ガス供給ノズル41から吐出されるN2ガスによって押し戻される。押し戻されたBTBASガスは、分離ガス供給ノズル41からのN2ガスと中心領域Cから吐出されているN2ガスと共に、サセプタ2の外周縁と真空容器1の内周壁とに向かって流れ、排気領域6を介して排気口61を通して排気される。
【0072】
第1の反応ガス供給ノズル31から下方側に吐出され、サセプタ2の回転方向と同じ方向にサセプタ2の表面(及びウエハWの表面)に沿って流れる他の部分のBTBASガスは、第1の反応ガス供給ノズル31に対して回転方向下流側に位置する凸状部4の天井面44とサセプタ2との間に流れ込むことができない。喩え少量のBTBASガスが流れ込んだとしても、分離ガス供給ノズル42から吐出されるN2ガスによって押し戻される。押し戻されたBTBASガスは、分離領域Dの分離ガス供給ノズル42からのN2ガスと中心領域Cから吐出されているN2ガスと共に、排気領域6に向かって流れ、排気口61により排気される。
【0073】
上述のように、分離領域Dは、BTBASガスやO3ガスが分離領域Dへ流れ込むのを防止するか、分離領域Dへ流れ込むBTBASガスやO3ガスの量を十分に低減するか、または、BTBASガスやO3ガスを押し戻すことができる。ウエハWに吸着したBTBAS分子とO3分子は、分離領域Dを通り抜けるのを許され、膜の成膜に寄与する。
【0074】
また、図8及び図10に示すように、中心領域Cからは分離ガスがサセプタ2の外周縁に向けて吐出されているので、第1の処理領域P1のBTBASガス(第2の処理領域P2のO3ガス)は、中心領域Cへ流入することができない。喩え、第1の処理領域P1の少量のBTBAS(第2処理領域P2のO3ガス)が中心領域Cへ流入したとしても、そのBTBASガス(O3ガス)はN2ガスにより押し戻され、第1の処理領域P1のBTBASガス(第2の処理領域P2のO3ガス)が、中心領域Cを通って第2の処理領域P2(第1の処理領域P1)に流入することが阻止される。
【0075】
また、第1の処理領域P1のBTBASガス(第2の処理領域P2のO3ガス)は、サセプタ2と容器本体12の内周壁との間の空間を通して第2の処理領域P2(第1の処理領域P1)に流入することも阻止される。これは、屈曲部46が凸状部4から下向きに形成され、屈曲部46とサセプタ2との隙間、及び屈曲部46と容器本体12の内周壁との間の隙間が、凸状部4の天井面44のサセプタ2からの高さhと同じくらい小さいため、2つの処理領域の間の連通を実質的に回避しているからである。したがって、BTBASガスは、排気口61から排気され、O3ガスは排気口62から排気されて、これら2つの反応ガスが混合することはない。また、サセプタ2の下方の空間は、パージガス供給管72,73から供給されるN2ガスによりパージされている。したがって、BTBASガスは、サセプタ2の下方を通してプロセス領域P2へと流れ込むことはできない。
【0076】
なお、上記の成膜工程中、離ガス供給管51からも分離ガスであるN2ガスが供給され、これにより中心領域Cから、即ち、突出部5とサセプタ2との間の隙間50からサセプタ2の表面に沿ってN2ガスが吐出される。この実施形態では、第2の天井面45の下の空間であって反応ガス供給ノズル31(32)が配置されている空間は、中心領域C、及び第1の天井面44とサセプタ2との間の狭隘な空間よりも低い圧力を有している。これは、天井面45の下の空間に隣接して排気領域6が設けられ、その空間は排気領域6を通して直接に排気されるからである。また、狭隘な空間が、反応ガス供給ノズル31(32)が配置されている空間、または第1(第2)の処理領域P1(P2)と狭隘な空間との間の圧力差が高さhによって維持され得るように形成されているためでもある。
【0077】
上述のように、本実施形態による成膜装置200においては、真空容器1内で2つの原料ガス(BTBASガス、オゾンガス)が混合してしまうのを極力抑えることができるため、理想的に近い原子層堆積を実現され、優れた膜厚制御性を提供することができる。これに加えて、成膜装置200には膜厚測定システム101が設けられているため、更に優れた膜厚制御性が提供される。すなわち、膜厚測定システム101によれば、成膜中にリアルタイムに膜厚をモニターしつつ、目標膜厚に達した時点で成膜を停止することができるため、目標膜厚を確実に達成できる。したがって、本実施形態による成膜装置200を半導体デバイスの製造に利用すれば、その半導体デバイスの性能が確実に発揮されるとともに、製造歩留まりを向上することができる。
【0078】
また、通常、製造ランに先立って、目標膜厚を達成するための成膜条件を把握するために条件だしランが行われるが、膜厚測定システム101を備える成膜装置200によれば、条件だしランを行う必要がない。このため、条件だしランに要する費用の分、製造コストを低減することができる。また、条件だしランを行っていた時間に製造ランを行えるため、より多くの製造ロットを処理することが可能となる。さらに、条件だしランの分だけラン数を低減できるため、メンテナンス間隔を長くすることができる。
【0079】
また、本実施形態における膜厚測定システム101は、エリプソメータとして構成されるため、上述のとおり、10ミリ秒から100ミリ秒までといった極めて短い期間に膜厚を測定することができる。したがって、ウエハWが回転していても、ウエハW面内における極小な箇所(スポット)での膜厚を測定できる。さらに、一つの光学ユニット102aにより、ウエハW面内の数カ所で膜厚を測定することも可能である。3つの光学ユニット102aから102cでウエハW面内の数カ所で膜厚を測定すれば、ウエハW面内の膜厚分布を求めることも可能である。
【0080】
さらに、本実施形態における膜厚測定システム101は、エリプソメータとして構成されるため、複数の物質が積層される積層膜について、各層の膜厚を測定することができる。したがって、本実施形態による成膜装置200により、例えば、酸化膜−窒化膜−酸化膜(ONO膜)を連続して成膜する場合であっても、各膜の膜厚を測定することができる。また、例えば、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)膜を、酸化チタン(TiO)膜と酸化ストロンチウム(SrO)膜との積層膜として実現する場合であっても、TiO膜とSrO膜それぞれの膜厚を測定することも可能である。
【0081】
また、上述のとおり、2つの原料ガスが真空容器1内で混合するのを効果的に防止できるため、成膜はウエハW上およびサセプタ2上に限られる。このため、透過窓201に膜が成膜されることは殆ど無く、したがって、透過窓201のメンテナンスの頻度を極めて低くすることができる。すなわち、膜厚測定システム101に起因する成膜装置200のダウンタイムの増加は殆どない。
【0082】
次に、本実施形態による成膜装置200において、BTBASとO3とを用いてSiO2膜を成膜する場合の好適なプロセスパラメータを以下に掲げる。
・サセプタ2の回転速度: 1−500rpm(ウエハWの直径が300mmの場合)
・真空容器1の圧力: 1067 Pa(8 Torr)
・ウエハ温度: 350℃
・BTBASガスの流量: 100 sccm
・O3ガスの流量: 10000 sccm
・分離ガス供給ノズル41,42からのN2ガスの流量: 20000 sccm
・分離ガス供給管51からのN2ガスの流量: 5000 sccm
・サセプタ2の回転数: 600回転(必要な膜厚による)
この実施形態による成膜装置200によれば、成膜装置200が、BTBASガスが供給される第1の処理領域と、O3ガスが供給される第2の処理領域との間に、低い天井面44を含む分離領域Dを有しているため、BTBASガス(O3ガス)が第2の処理領域P2(第1の処理領域P1)へ流れ込むのが防止され、O3ガス(BTBASガス)と混合されるのが防止される。したがって、ウエハWが載置されたサセプタ2を回転させて、ウエハWを第1の処理領域P1、分離領域D、第2の処理領域P2、及び分離領域Dを通過させることにより、酸化シリコン膜の分子層成膜が確実に実施される。また、BTBASガス(O3ガス)が第2の処理領域P2(第1の処理領域P1)へ流れ込みO3ガス(BTBASガス)と混合するのを更に確実に防止するため、分離領域Dは、N2ガスを吐出する分離ガス供給ノズル41,42を更に含む。さらに、この実施形態による成膜装置200の真空容器1は、N2ガスが吐出される吐出孔を有する中心領域Cを有しているため、中心領域Cを通ってBTBASガス(O3ガス)が第2の処理領域P2(第1の処理領域P1)へ流れ込みO3ガス(BTBASガス)と混合されるのを防止することができる。さらにまた、BTBASガスとO3ガスが混合されないため、サセプタ2への酸化シリコンの成膜が殆ど生じず、よって、パーティクルの問題を低減することができる。
【0083】
なお、本実施形態による成膜装置200においては、サセプタ2は5つの載置部24を有し、対応する5つの載置部24に載置された5枚のウエハWを一回のランで処理することができるが、5つの載置部24のうちの一つに1枚のウエハWを載置しても良いし、サセプタ2に載置部24を一つのみ形成しても良い。
【0084】
さらに、酸化シリコン膜の分子層成膜に限定されず、成膜装置200によって窒化シリコン膜の分子層成膜を行うこともできる。窒化シリコン膜の分子層成膜のための窒化ガスとしては、アンモニア(NH3)やヒドラジン(N2H2)などを利用することができる。
【0085】
また、酸化シリコン膜や窒化シリコン膜の分子層成膜のための原料ガスとしては、BTBASに限らず、ジクロロシラン(DCS)、ヘキサクロロジシラン(HCD)、トリスジメチルアミノシラン(3DMAS)、テトラエトキシシラン(TEOS)などを利用することができる。
【0086】
さらにまた、本発明の実施形態による成膜装置及び成膜方法においては、酸化シリコン膜や窒化シリコン膜に限らず、窒化シリコン(NH3)の分子層成膜、トリメチルアルミニウム(TMA)とO3又は酸素プラズマとを用いた酸化アルミニウム(Al2O3)の分子層成膜、テトラキスエチルメチルアミノジルコニウム(TEMAZ)とO3又は酸素プラズマとを用いた酸化ジルコニウム(ZrO2)の分子層成膜、テトラキスエチルメチルアミノハフニウム(TEMAHf)とO3又は酸素プラズマとを用いた酸化ハフニウム(HfO2)の分子層成膜、ストロンチウムビステトラメチルヘプタンジオナト(Sr(THD)2)とO3又は酸素プラズマとを用いた酸化ストロンチウム(SrO)の分子層成膜、チタニウムメチルペンタンジオナトビステトラメチルヘプタンジオナト(Ti(MPD)(THD))とO3又は酸素プラズマとを用いた酸化チタニウム(TiO)の分子層成膜などを行うことができる。
【0087】
サセプタ2の外周縁に近いほど大きい遠心力が働くため、例えば、BTBASガスは、サセプタ2の外周縁に近い部分において、大きい速度で分離領域Dへ向かう。したがって、サセプタ2の外周縁に近い部分では天井面44とサセプタ2との間の隙間にBTBASガスが流入する可能性が高い。そこで、凸状部4の幅(回転方向に沿った長さ)を外周縁に向うほど広くすれば、BTBASガスがその隙間に入りにくくすることができる。この観点からは、本実施形態において上述したように、凸状部4が扇形の上面形状を有すると好ましい。
【0088】
以下に、凸状部4(又は天井面44)のサイズを再び例示する。図11(a)及び図11(b)を参照すると、分離ガス供給ノズル41(42)の両側に狭隘な空間を形成する天井面44は、ウエハ中心WOが通る経路に対応する円弧の長さLとしてウエハWの直径の約1/10〜約1/1の長さであって良く、約1/6以上であると好ましい。具体的には、ウエハWが300mmの直径を有している場合、この長さLは、約50mm以上が好ましい。この長さLが短い場合、天井面44とサセプタ2との間の狭隘な空間の高さhは、反応ガスが狭隘な空間へ流れ込むのを効果的に防止するため、低くしなければならない。しかし、長さLが短くなり過ぎて、高さhが極端に低くなると、サセプタ2が天井面44に衝突し、パーティクルが発生してウエハの汚染が生じたり、ウエハが破損したりする可能性がある。したがって、サセプタ2の天井面44に衝突するのを避けるため、サセプタ2の振動を抑える、又はサセプタ2を安定して回転させるための方策が必要となる。一方、長さLを短くしたまま狭隘な空間の高さhを比較的大きく維持する場合には、天井面44とサセプタ2との間の狭隘な空間に反応ガスが流れ込むのを防止するため、サセプタ2の回転速度を低くしなければならず、製造スループットの点でむしろ不利になる。これらの考察から、ウエハ中心WOの経路に対応する円弧に沿った、天井面44の長さLは、約50mm以上が好ましい。しかし、凸状部4又は天井面44のサイズは、上記のサイズに限定されることなく、使用されるプロセスパラメータやウエハサイズに従って調整して良い。また、狭隘な空間が、分離領域Dから処理領域P1(P2)への分離ガスの流れが形成される程度の高さを有している限りにおいて、上述の説明から明らかなように、狭隘な空間の高さhもまた、使用されるプロセスパラメータやウエハサイズに加えて、たとえば天井面44の面積に応じて調整して良い。
【0089】
また、上記の実施形態においては、凸状部4に設けられた溝部43に分離ガス供給ノズル41(42)が配置され、分離ガス供給ノズル41(42)の両側に低い天井面44が配置されている。しかし、他の実施形態においては、分離ガス供給ノズル41の代わりに、図12に示すように凸状部4の内部においてサセプタ2の直径方向に伸びる流路47を形成し、この流路47の長さ方向に沿って複数のガス吐出孔40を形成し、これらのガス吐出孔40から分離ガス(N2ガス)を吐出するようにしてもよい。
【0090】
分離領域Dの天井面44は平坦面に限られるものではなく、図13(a)に示すように凹面状に湾曲してよいし、図13(b)に示すように凸面形状にしてもよく、また図13(c)に示すように波型状に構成してもよい。
【0091】
また、凸状部4は中空であって良く、中空内に分離ガスを導入するように構成しても良い。この場合、複数のガス吐出孔33を、図14(a)から図14(c)に示すように配列してもよい。
【0092】
図14(a)を参照すると、複数のガス吐出孔33は、それぞれ傾斜したスリットの形状を有している。これらの傾斜スリット(複数のガス吐出孔33)は、サセプタ2の半径方向に沿って隣接するスリットと部分的にオーバーラップしている。図14(b)では、複数のガス吐出孔33は、それぞれ円形である。これらの円形の孔(複数のガス吐出孔33)は、全体としてサセプタ2の半径方向に沿って伸びる曲がりくねった線に沿って配置されている。図14(c)では、複数のガス吐出孔33は、それぞれ円弧状のスリットの形状を有している。これらの円弧状スリット(複数のガス吐出孔33)は、サセプタ2の半径方向に所定の間隔で配置されている。
【0093】
また、本実施形態では凸状部4はほぼ扇形の上面形状を有するが、他の実施形態では、図15(a)に示す長方形、又は正方形の上面形状を有して良い。また、凸状部4は、図15(b)に示すように、上面は全体として扇形であり、凹状に湾曲した側面4Scを有していても良い。加えて、凸状部4は、図15(c)に示すように、上面は全体として扇形であり、凸状に湾曲した側面4Svを有していても良い。さらにまた、図15(d)に示すとおり、凸状部4における、サセプタ2(図1)の回転方向の上流側の部分が凹状の側面4Scを有し、凸状部4における、サセプタ2(図1)の回転方向の下流側の部分が平面状の側面4Sfを有していても構わない。なお、図15(a)から図15(d)において、点線は凸状部4に形成された溝部43(図4(a)、図4(b))を示している。これらの場合、溝部43に収容される分離ガス供給ノズル41(42)(図2)は真空容器1の中央部、例えば突出部5(図1)から伸びる。
【0094】
ウエハを加熱するためのヒータユニット7は、抵抗発熱体の代わりに、加熱ランプを有して構成されてもよい。また、ヒータユニット7は、サセプタ2の下方側に設ける代わりにサセプタ2の上方側に設けてもよいし、上下両方に設けてもよい。
【0095】
処理領域P1,P2及び分離領域Dは、他の実施形態においては図16に示すように配置されても良い。図16を参照すると、第2の反応ガス(例えば、O3ガス)を供給する第2の反応ガス供給ノズル32が、搬送口15よりもサセプタ2の回転方向上流側であって、搬送口15と分離ガス供給ノズル42との間に設置されている。このような配置であっても、各ノズル及び中心領域Cから吐出されるガスは、概ね、同図において矢印で示すように流れて、両反応ガスの混合が防止される。したがって、このような配置であっても、適切な分子層成膜を実現することができる。
【0096】
また、既に述べたように、2枚の扇形プレートが分離ガス供給ノズル41(42)の両側に位置されるように、天板11の下面にネジで取り付けることにより、分離領域Dを構成してよい。図17は、このような構成示す平面図である。この場合、凸状部4と分離ガス供給ノズル41(42)との間の距離や、凸状部4のサイズは、分離領域Dの分離作用を効率よく発揮するため、分離ガスや反応ガスの吐出レートを考慮して決定して良い。
【0097】
上述の実施の形態では、第1の処理領域P1及び第2の処理領域P2は、分離領域Dの天井面44よりも高い天井面45を有する領域に相当している。しかし、第1の処理領域P1及び第2の処理領域P2の少なくとも一方は、反応ガス供給ノズル31(32)の両側でサセプタ2に対向し、天井面45よりも低い他の天井面を有してもよい。当該天井面とサセプタ2との間の隙間にガスが流れ込むのを防止するためである。この天井面は、天井面45よりも低く、分離領域Dの天井面44と同じくらい低くてもよい。図18は、そのような構成の一例を示している。図示のとおり、扇状の凸状部30は、O3ガスが供給される第2の処理領域P2に配置され、反応ガス供給ノズル32が凸状部30に形成された溝部(図示せず)に配置されている。言い換えると、この第2の処理領域P2は、ガスノズルが反応ガスを供給するために使用されるが、分離領域Dと同様に構成されている。なお、凸状部30は、図14(a)から図14(c)に一例を示す中空の凸状部と同様に構成されても良い。
【0098】
また、分離ガス供給ノズル41(42)の両側に狭隘な空間を形成するために低い天井面(第1の天井面)44が設けられる限りにおいて、他の実施形態では、上述の天井面、つまり、天井面45より低く、分離領域Dの天井面44と同じくらい低い天井面が、反応ガス供給ノズル31,32の両方に設けられ、天井面44に到達するまで延びていても良い。換言すると、凸状部4の代わりに、他の凸状部400が天板11の下面に取り付けられていて良い。図19を参照すると、凸状部400は、ほぼ円盤状の形状を有し、サセプタ2の上面のほぼ全体と対向し、ガスノズル31,32,41,42がそれぞれ収容され半径方向に延びる4つのスロット400aを有し、かつ、凸状部400の下に、サセプタ2にする狭隘な空間を残している。その狭隘な空間の高さは、上述の高さhと同程度であって良い。凸状部400を使用すると、反応ガス供給ノズル31(32)から吐出された反応ガスは、凸状部400の下で(又は狭隘な空間において)反応ガス供給ノズル31(32)の両側に拡散し、分離ガス供給ノズル41(42)から吐出された分離ガスは、凸状部400の下で(又は狭隘な空間において)分離ガス供給ノズル41(42)の両側に拡散する。この反応ガスと分離ガスは狭隘な空間において合流し、排気口61(62)を通して排気される。この場合であっても、反応ガス供給ノズル31から吐出された反応ガスは、反応ガス供給ノズル32から吐出された反応ガスと混合することはなく、適切な分子層成膜を実現できる。
【0099】
なお、凸状部400を、図14(a)から図14(c)のいずれかに示す中空の凸状部4を組み合わせることにより構成し、ガスノズル31,32,33,34及びスリット400aを用いずに、反応ガス及び分離ガスを、対応する中空凸状部4の吐出孔33からそれぞれガスを吐出するようにしても良い。
【0100】
上記の実施形態では、サセプタ2を回転する回転軸22は、真空容器1の中央部に位置している。また、コア部21と天板11との間の空間52は、反応ガスが中央部を通して混合するのを防止するため、分離ガスでパージされている。しかし、真空容器1は、他の実施形態において図20のように構成されても良い。図20を参照すると、容器本体12の底部14は、中央開口を有し、ここには収容ケース80が気密に取り付けられている。また、天板11は、中央凹部80aを有している。支柱81が収容ケース80の底面に載置され、支柱81の状端部は中央凹部80aの底面にまで到達している。支柱81は、第1の反応ガス供給ノズル31から吐出される第1の反応ガス(BTBAS)と第2の反応ガス供給ノズル32から吐出される第2の反応ガス(O3)とが真空容器1の中央部を通して互いに混合するのを防止する。
【0101】
また、天板11の開口には、例えば石英ガラス製の透過窓201がOリングなどの封止部材(図示せず)を介して気密に取り付けられている。また、透過窓201は、サセプタ2に載置されるウエハWの直径とほぼ等しい幅を有し、天板11の直径方向に沿って設けられている。これにより、ウエハWの直径方向に沿った複数の点での膜厚測定が可能である。
【0102】
図20に示す成膜装置200においても、透過窓201を通してウエハW上に成膜される膜の膜厚を測定する上述の膜厚測定システム101が設けられている。したがって、この成膜装置200を用いれば、成膜中に膜厚を測定することができ、目標膜厚に達した時点で成膜を停止することが可能となる。このため、この成膜装置200においても上述の効果が奏される。
【0103】
また、回転スリーブ82が、支柱81を同軸状に囲むように設けられている。回転スリーブ82は、支柱81の外面に取り付けられた軸受け86,88と、収容ケース80の内側面に取り付けられた軸受け87とにより支持されている。さらに、回転スリーブ82は、その外面にギヤ部85が取り付けられている。また、環状のサセプタ2の内周面が回転スリーブ82の外面に取り付けられている。駆動部83が収容ケース80に収容されており、駆動部83から延びるシャフトにギヤ84が取り付けられている。ギヤ84はギヤ部85と噛み合う。このような構成により、回転スリーブ82ひいてはサセプタ2が駆動部83により回転される。
【0104】
パージガス供給管74が収容ケース80の底に接続され、収容ケース80へパージガスが供給される。これにより、反応ガスが収容ケース80内へ流れ込むのを防止するために、収容ケース80の内部空間を真空容器1の内部空間よりも高い圧力に維持することができる。したがって、収容ケース80内での成膜が起こらず、メンテナンスの頻度を低減できる。また、パージガス供給管75が、真空容器1の上外面から凹部80aの内壁まで至る導管75aにそれぞれ接続され、回転スリーブ82の上端部に向けてパージガスが供給される。このパージガスのため、BTBASガスとO3ガスは、凹部80aの内壁と回転スリーブ82の外面との間の空間を通して混合することができない。図20には、2つのパージガス供給管75と導管75aが図示されているが、供給管75と導管75aの数は、BTBASガスとO3ガスとの混合が凹部80aの内壁と回転スリーブ82の外面との間の空間近傍において確実に防止されるように決定されて良い。
【0105】
図20の実施の形態では、凹部80aの側面と回転スリーブ82の上端部との間の空間は、分離ガスを吐出する吐出孔に相当し、そしてこの分離ガス吐出孔、回転スリーブ82及び支柱81により、真空容器1の中心部に位置する中心領域が構成される。
【0106】
本発明の実施形態による成膜装置200(図1等、図20)においては、2種類の反応ガスを用いることに限られず、3種類以上の反応ガスを順番に基板上に供給しても良い。その場合には、例えば第1の反応ガス供給ノズル、分離ガス供給ノズル、第2の反応ガス供給ノズル、分離ガス供給ノズル、第3の反応ガス供給ノズル及び分離ガス供給ノズルの順番で真空容器1の周方向に各ガスノズルを配置し、各分離ガス供給ノズルを含む分離領域を既述の実施の形態のように構成すればよい。
【0107】
本発明の実施形態による成膜装置200(図1等、図20)は、基板処理装置に組み込むことができ、その一例が図21に模式的に示されている。基板処理装置は、搬送アーム103が設けられた大気搬送室102と、雰囲気を真空と大気圧との間で切り替え可能なロードロック室(準備室)105と、2つの搬送アーム107a、107bが設けられた搬送室106と、本発明の実施形態にかかる、膜厚測定ユニット101と同じ膜厚測定ユニット(図示せず)が設けられた成膜装置109,110とを含む。また、この処理装置は、たとえばFOUPなどのウエハカセットFが載置されるカセットステージ(図示せず)を含んでいる。ウエハカセットFは、カセットステージの一つに運ばれ、カセットステージと大気搬送室102との間の搬入出ポートに接続される。次いで、開閉機構(図示せず)によりウエハカセットF(FOUP)の蓋が開けられて、搬送アーム103からウエハカセットFからウエハが取り出される。次に、ウエハはロードロック室104(105)へ搬送される。ロードロック室104(105)が排気された後、ロードロック室104(105)内のウエハは、搬送アーム107a(107b)により、真空搬送室106を通して成膜装置109,110へ搬送される。成膜装置109,110では、上述の方法でウエハ上に膜が成膜される。この基板処理装置は、上述の成膜装置200と同じ成膜装置109,110を有しているため、成膜装置200が奏する効果と同じ効果が奏される。また、同時に5枚のウエハを主要可能な2つの成膜装置109,110を有しているため、高いスループットで分子層成膜を行うことができる。
【0108】
また、本発明の実施形態による成膜装置200(図1等、図20)は、他の基板処理装置に組み込むことができ、その一例が図22に模式的に示されている。
図22は、本発明の他の実施形態による基板処理装置700の概略上面図である。図示のとおり、基板処理装置700は、2つの真空容器111と、それぞれの真空装置111の側壁の搬送口に取り付けられた搬送路270aと、搬送路270aに取り付けられたゲートバルブ270Gと、ゲートバルブ270Gにより連通可能に設けられる搬送モジュール270と、搬送モジュール270にそれぞれゲートバルブ272Gを介して接続されるロードロック室272a、272bとを有している。
【0109】
2つの真空容器111は、ともに真空容器1と同一の構成を有し、天板には透過窓201が設けられ、透過窓201上には光学ユニット102aから102cが配置されている。光学ユニット102aから102cには、対応する光ファイバ線104aから104cが接続され、光ファイバ線104aから104cは測定ユニット106に接続され、測定ユニット106は制御ユニット108に接続されている。また、制御ユニット108は、図示しない制御部(制御部100)に接続されている。このような構成により、上述の膜厚測定を行うことができ、上述の効果が奏される。
【0110】
搬送モジュール270は、内部に2つの搬送アーム10a、10bを有している。これらの搬送アーム10a、10bは、伸縮自在であり、基部を中心に回動可能であり、2つの真空容器111およびロードロック質272a、272bにアクセスすることができる。これにより、図22に示す搬送アーム10aのように、ゲートバルブ270Gが開いたときに、ウエハWを真空容器111内へ搬入し、真空容器111から搬出することができる。また、ゲートバルブ272Gが開いたときに、ウエハWをロードロック室272a、272bに対し搬入出することができる。
【0111】
ロードロック室272b(272a)は、図22のII−II線に沿った断面図である図23に示すように、図示しない駆動部により昇降可能な例えば5段のウエハ載置部272cを有しており、各ウエハ載置部272cにウエハWが載置される。また、ロードロック室272a、272bの一方は、ウエハWを一時的に格納するバッファ室として機能して良く、他方は、外部(成膜工程に先んじた工程)からウエハWを成膜装置700へ搬入するためのインターフェイス室として機能して良い。
【0112】
なお、搬送モジュール270、およびロードロック室272a、272bには、それぞれ図示しない真空系が接続されている。これらの真空系は、例えばロータリーポンプと必要に応じてターボ分子ポンプとを含んで良い。
【0113】
以上の構成によれば、上述の成膜装置200と同じ効果が発揮されるとともに、高いスループットで分子層成膜を行うことができる。
【0114】
なお、上記の実施形態による成膜装置200(基板処理装置に含まれるものを含む)において、反応ガス供給ノズル31(32)を、ウエハWの直径方向に長さの異なる3本の有孔パイプを有するように構成すれば、例えば、光学ユニット102aから102cのそれぞれで測定した結果に基づいて、各有孔パイプ(の孔)から供給される原料ガスの流量を調整することにより、膜厚均一性を向上することも可能となる。
【0115】
また、上の説明においては、膜厚測定システム101により測定された膜厚と目標膜厚とが、膜厚測定システム101の制御ユニット108において比較されたが、測定した膜厚を示す情報を制御ユニット108から制御部100へ送信し、制御部100において比較および判定を行っても良い。
【0116】
また、上記の実施形態においては、膜厚測定システム101として、位相変調型のエリプソメータを例示したが、これに限らず、消光型、回転偏光子型、回転検光子型、回転補償子型のいずれであっても良い。また、光源106aとしては、キセノンランプに限らず、ハロゲンランプや重水素ランプなどを使用することができる。
【0117】
さらに、天板11に追加の開口を形成して、この追加の開口に他の透過窓を気密に取り付けても良い。この場合、光学ユニット102aから102c(のケース)を用いずに、投光部LEからのビームBi(図5)の反射ビームBrが受光部Dに入射するように、一の透過窓201に投光部LEを設け、他の透過窓に受光部Dを設けても良い。これによれば、投光部LEからのビームBiのウエハW表面に対する入射角をブリュースター角に近い角度に合わせることが容易となり、測定精度を向上することができる。
【0118】
また、光学ユニット102a等の数は3つに限らず、4つ以上であっても良い。光学ユニットの数はウエハWのサイズなどに応じて適宜決定して良い。
【0119】
さらに、膜厚測定システム101は、エリプソメトリに基づいて膜厚測定を行うのではなく、ウエハW上に成膜される膜の表面と、この膜および下地膜またはウエハWの間の界面との間で生じる多重反射を利用して膜厚を測定することができるよう構成されても良い。
【符号の説明】
【0120】
200・・・成膜装置、2・・・サセプタ、24・・・載置部、203・・・駆動装置、204・・・昇降ロッド、24・・・載置部、10a,10b・・・搬送アーム、4・・・凸状部、5・・・突出部、31,32・・・反応ガス供給ノズル、41,42・・・分離ガス供給ノズル、101・・・膜厚測定システム、102a、102b、102c・・・光学ユニット、106a・・・光源、106b・・・分光器、106c・・・受光器、W・・・ウエハ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜中の膜厚モニターを可能とする成膜装置、成膜方法、プログラム、およびコンピュータ可読記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路の製造においては、種々の薄膜を基板上に成膜するため、種々の成膜工程が行われる。高集積化のため回路パターンの微細化や薄膜の薄層化が更に進むにつれて、成膜工程における基板面内の膜厚均一性と膜厚制御性の更なる改善が求められている。このような要求に対応するため、原子層堆積法(分子層堆積法とも言う)が注目されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
原子層堆積法に好適な薄膜成膜装置の一つに、2枚から6枚程度のウエハが平置きされるサセプタを利用するものがある。このような薄膜成膜装置においては、一般に、回転可能なサセプタと、サセプタの上方においてサセプタの半径方向に延在する、一の原料化合物ガス用のガス供給ノズル、パージガス用のガス供給ノズル、他の原料ガス用のガス供給ノズル、およびパージガス用のガス供給ノズルと、が設けられている。これらのガス供給部はこの順に配置されており、これらのガス供給部から対応するガスを供給しつつ、サセプタを回転すると、サセプタ上に載置される基板に対して、一の原料化合物ガスの分子の吸着、一の原料化合物ガスのパージ、他の原料化合物ガスの分子の吸着、および他の原料化合物ガスのパージがこの順に行われる。このようにしてサセプタが1回転すると、基板上に、一の原料化合物ガスの分子と他の原料化合物ガスの分子を一分子層ずつ吸着することができ、両者が反応することにより、一分子層分の反応生成物が基板上に成膜される。
【0004】
したがって、原理上、成膜しようとする物質の目標膜厚を、その物質の一分子層あたりの厚さで除算すれば、必要なサセプタ回転数を求めることができ、その回転数で目標膜厚を達成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許公報6,646,235号明細書(図2,図3)
【特許文献2】特開2003−224108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、本発明の発明者らが検討した結果、以下の種々の理由により、回転数だけで膜厚が決まらない場合があることが分かった。例えば、成膜しようとする物質の一分子層あたりの厚さは、成膜温度などの成膜条件により異なる場合がある。また、その物質が、多結晶やアモルファス状であると、単結晶とは異なり、一分子層あたりの厚さ(原子間距離)が不明であることも多い。さらに、成膜しようとする物質が化合物の場合は、組成によって一分子層あたりの厚さが変化することもある。
【0007】
また、使用する原料化合物ガスによっては、その蒸気圧や分子間力などにより、基板に吸着する分子が二分子層以上となってしまう場合がある。さらに、真空容器内のガスの流れのパターン、サセプタの回転速度、原料ガスの供給量、サセプタの(僅かな)温度分布などによっても、基板上に吸着する分子が二分子層以上となってしまう場合もある。
【0008】
このような事情により、目標膜厚を一分子層あたりの厚さで除算して必要回転数を求めても、その回転数によって目標膜厚を実現できるとは限らない。このため、所定の成膜条件のもとで、いわゆる条件だしランを行って、サセプタの必要回転数を求めることが一般に行われている。条件だしランは、成膜する膜の種類や製造するデバイスの種類に応じて行わなければならないため、製造コストの増加や製造ラン回数の低下といった問題が生じる。
【0009】
一方、半導体装置の製造に用いられるエッチング装置では、製造ランにおいても処理の終点を検出することができる方法が知られているが(例えば特許文献2)、本発明者らの知るところによれば、本来的に膜厚制御性に優れた原子層堆積法においてまで、そのような検討は十分に行われていない。しかし、将来、膜厚制御性および膜厚均一性のより一層の改善が要求されるため、原子層堆積法においても成膜中に膜厚を測定することが望まれる。
【0010】
本発明は、上記の事情に鑑み、膜の成膜中に膜厚をリアルタイムにモニターすることが可能な成膜装置、成膜方法、プログラム、およびコンピュータ可読記憶媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するため、本発明の第1の態様は、容器内にて、互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板に供給するサイクルを実行して反応生成物の層を当該基板上に生成することにより膜を堆積する成膜装置を提供する。この成膜装置は、前記容器内に回転可能に設けられ、一の面に画定されて前記基板が載置される載置領域を有するサセプタ;前記容器の前記サセプタに対向する部分に、前記容器に対して気密に設けられる窓部;前記サセプタに載置される前記基板に堆積される膜の膜厚を前記窓部を通して光学的に測定する膜厚測定部;前記一の面に第1の反応ガスを供給するよう構成される第1の反応ガス供給部;前記サセプタの回転方向に沿って前記第1の反応ガス供給部から離れた、前記一の面に第2の反応ガスを供給するよう構成される第2の反応ガス供給部;前記回転方向に沿って、前記第1の反応ガスが供給される第1の処理領域と前記第2の反応ガスが供給される第2の処理領域との間に位置し、前記第1の処理領域と前記第2の処理領域とを分離する分離領域;前記第1の処理領域と前記第2の処理領域とを分離するために、前記容器の中央部に位置し、前記一の面に沿って第1の分離ガスを吐出する吐出孔を有する中央領域;および前記容器内を排気するために前記容器に設けられた排気口;を備える。上記の分離領域は、第2の分離ガスを供給する分離ガス供給部と、前記第2の分離ガスが前記回転方向に対し前記分離領域から前記処理領域側へ流れることができる狭隘な空間を、前記サセプタの前記一の面に対して形成する天井面とを含んでいる。
【0012】
本発明の第2の態様は、第1の態様の成膜装置であって、前記膜厚測定部が、前記基板の複数の点のそれぞれに対して光を照射し、当該照射した光の反射光を受光する複数の投受光部を含む成膜装置を提供する。
【0013】
本発明の第3の態様は、第1または第2の態様の成膜装置であって、前記基板に成膜された膜について前記膜厚測定部により測定された膜厚と、当該膜の目標膜厚とが比較され、当該比較の結果、前記測定された膜厚が前記目標膜厚以上と判定された場合、成膜を停止するように構成される成膜装置を提供する。
【0014】
本発明の第4の態様は、第1から第3のいずれかの態様であって、前記膜厚測定部がエリプソメータを含む成膜装置を提供する。
【0015】
本発明の第5の態様は、容器内にて、互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板に供給するサイクルを実行して反応生成物の層を当該基板上に生成することにより膜を堆積する成膜方法を提供する。この成膜方法は、前記容器内に回転可能に設けられサセプタであって、一の面に画定され前記基板が載置される載置領域に前記基板を載置するステップ;前記基板が載置されたサセプタを回転するステップ;第1の反応ガス供給部から前記サセプタへ第1の反応ガスを供給するステップ;前記サセプタの回転方向に沿って前記第1の反応ガス供給部から離れた第2の反応ガス供給部から前記サセプタへ第2の反応ガスを供給するステップ;前記第1の反応ガス供給部から前記第1の反応ガスが供給される第1の処理領域と前記第2の反応ガス供給部から前記第2の反応ガスが供給される第2の処理領域との間に位置する分離領域に設けられた分離ガス供給部から、第1の分離ガスを供給し、前記分離領域の天井面と前記サセプタとの間に形成される狭隘な空間において前記回転方向に対し前記分離領域から前記処理領域側に前記第1の分離ガスを流すステップ;前記容器の中央部に位置する中央部領域に形成される吐出孔から第2の分離ガスを供給するステップ;前記容器を排気するステップ;前記回転するステップにより回転されるサセプタ上の前記基板に光を照射するステップ;前記光を照射するステップにより前記基板に照射された光の反射光を受光するステップ;前記受光するステップにより受光した前記反射光の分光強度を利用して前記基板上に成膜される膜の膜厚を計算するステップ;を含んでいる。
【0016】
本発明の第6の態様は、第5の態様の成膜方法であって、前記照射するステップにおいて、複数の光ビームが前記基板に対して照射され、当該複数の光ビームに対応する複数の反射ビームがそれぞれ受光され、前記膜の膜厚を計算するステップにおいて、前記複数の反射ビームそれぞれの分光強度が利用されて、前記膜の膜厚が形成される成膜方法を提供する。
【0017】
本発明の第7の態様は、第5または第6の態様の成膜方法であって、前記膜の膜厚を計算するステップにおいて計算された膜厚と、当該膜の目標膜厚とを比較するステップを更に含む成膜方法を提供する。
【0018】
本発明の第8の態様は、第5から第7のいずれかの態様の成膜方法であって、前記比較するステップにおける比較の結果、前記計算された膜厚が前記目標膜厚以上と判定された場合に、前記第1の反応ガスと前記第2の反応ガスの供給を停止するステップを更に含む成膜方法を提供する。
【0019】
本発明の第9の態様は、第5から第8のいずれかの態様の成膜方法であって、前記膜の膜厚を計算するステップにおいて、エリプソメトリにより前記膜厚が計算される成膜方法を提供する。
【0020】
本発明の第10の態様は、第1から第4のいずれかの態様の成膜装置に、第5から第9のいずれかの態様の成膜方法を実施させるプログラムを提供する。
【0021】
本発明の第11の態様は、第10の態様のプログラムを格納するコンピュータ可読記憶媒体を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の実施形態によれば、膜の成膜中に膜厚をリアルタイムにモニターすることが可能な成膜装置、成膜方法、プログラム、およびコンピュータ可読記憶媒体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態による成膜装置を示す模式図
【図2】図1の成膜装置の容器本体の内部を示す斜視図
【図3】図1の成膜装置の容器本体の内部を示す上面図
【図4】(a)は図1の成膜装置で用いられるサセプタの一部と、一のサセプタトレイとを示す斜視図、(b)は(a)のI−I線に沿った断面図
【図5】図1の成膜装置に設けられる膜厚測定システムを示す模式図
【図6】図1の成膜装置の一部断面図
【図7】図1の成膜装置の破断斜視図
【図8】図1の成膜装置におけるパージガスの流れを示す一部断面図
【図9】図1の成膜装置の容器本体内へアクセスする搬送アームを示す斜視図
【図10】図1の成膜装置の容器本体内を流れるガスのフローパターンを示す上面図
【図11】図1の成膜装置内の突出部の形状を説明する図
【図12】図1の成膜装置のガス供給ノズルの変形例を示す図
【図13】図1の成膜装置内の凸状部の変形例を示す図
【図14】図1の成膜装置内の凸状部とガス供給ノズルの変形例を示す図
【図15】図1の成膜装置内の凸状部の他の変形例を示す図
【図16】図1の成膜装置におけるガス供給ノズルの配置位置の変形例を示す図
【図17】図1の成膜装置内の凸状部のまた別の変形例を示す図
【図18】図1の成膜装置内において、反応ガス供給ノズルに対して凸状部を設けた例を示す図
【図19】図1の成膜装置内の凸状部の更に別の変形例を示す図
【図20】本発明の他の実施形態による成膜装置を示す模式図
【図21】図1または図23の成膜装置を含む基板処理装置を示す模式図
【図22】図1または図23の成膜装置を含む他の基板処理装置を示す模式図
【図23】図22のII−II線に沿った断面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態による成膜装置について、添付図面を参照しながら説明する。
【0025】
本発明の実施形態による成膜装置200は、図1(図3のB−B線に沿った断面図)に示すように、平面形状が概ね円形である扁平な真空容器1と、この真空容器1内に設けられ、当該真空容器1の中心に回転中心を有するサセプタ2と、を備えている。真空容器1は天板11が容器本体12から分離できるように構成されている。天板11は、例えばOリングなどの封止部材13を介して容器本体12に取り付けられ、これにより真空容器1が気密に密閉される。一方、天板11を容器本体12から分離する必要があるときは、図示しない駆動機構により上方に持ち上げられる。
【0026】
また、天板11には段部を有する開口が設けられており、この段部を利用して、透過窓201がOリングなどの封止部材(図示せず)を介して取り付けられている。これにより、透過窓201は真空容器1に対し気密に取り付けられる。透過窓201は、例えば石英ガラスから作製されており、膜厚測定システム101によりウエハW上に成膜される膜の膜厚を測定するために用いられる。また、透過窓201は、後述するサセプタ2に載置されるウエハWの直径とほぼ等しい幅を有し、真空容器1の直径方向に沿って設けられている。これにより、ウエハWの直径方向に沿った複数の点での膜厚測定が可能である。膜厚測定システム101は、本実施形態ではエリプソメトリに基づく膜厚測定システムである。
【0027】
サセプタ2は、本実施形態においては約20mmの厚さを有するカーボン板で作製され、約960mmの直径を有する円板形状に形成されている。また、サセプタ2の上面、裏面および側面をSiCでコーティングしても良い。ただし、サセプタ2は、他の実施形態においては、石英などの他の材料で形成しても良い。図1を参照すると、サセプタ2は、中央に円形の開口部を有しており、開口部の周りで円筒形状のコア部21により上下から挟まれて保持されている。コア部21は、鉛直方向に伸びる回転軸22の上端に固定されている。回転軸22は容器本体12の底面部14を貫通し、その下端が当該回転軸22を鉛直軸回りに回転させる駆動部23に取り付けられている。この構成により、サセプタ2はその中心を軸に例えば図2に示す回転方向RDに回転することができる。なお、回転軸22および駆動部23は、上面が開口した筒状のケース体20内に収納されている。このケース体20はその上面に設けられたフランジ部分20aを介して真空容器1の底面部14の下面に気密に取り付けられており、これにより、ケース体20の内部雰囲気が外部雰囲気から隔離されている。
【0028】
図2及び図3に示すように、サセプタ2の上面に、それぞれウエハWが載置される複数(図示の例では5つ)の円形凹部状の載置部24が形成されている。ただし、図3ではウエハWを1枚のみを示している。載置部24は、サセプタ2に互いに約72°の角度間隔で配置されている。
【0029】
ここで、図4(a)を参照すると、載置部24と載置部24に載置されたウエハWとの断面が図示されている。この図に示すように、載置部24は、ウエハWの直径よりも僅かに大きい、例えば4mm大きい直径と、ウエハWの厚さに等しい深さとを有している。したがって、ウエハWが載置部24に載置されたとき、ウエハWの表面は、サセプタ2の載置部24を除く領域の表面と同じ高さにある。仮に、ウエハWとその領域との間に比較的大きい段差があると、その段差によりガスの流れに乱流が生じ、ウエハW上での膜厚均一性が影響を受ける。このため、2つの表面が同じ高さにある。「同じ高さ」は、ここでは高さの差が約5mm以下であることを意味するが、その差は、加工精度が許す範囲でできるだけゼロに近くすべきである。
【0030】
また、載置部24の底には、3つの貫通孔(図示せず)が形成されており、これらを通して3つの昇降ピン(図9参照)が昇降する。昇降ピンは、ウエハWの裏面を支え、ウエハWを昇降させる。
【0031】
容器本体12の側壁には、図2、図3及び図9に示すように、搬送口15が形成されている。ウエハWは、搬送口15を通して搬送アーム10により真空容器1の中へ、又は真空容器1から外へと搬送される。この搬送口15にはゲートバルブ(図示せず)が設けられ、これにより搬送口15が開閉される。一の載置部24が搬送口15に整列し、ゲートバルブが開くと、ウエハWは、搬送アーム10により真空容器1内へ搬送され、搬送アーム10から載置部24に置かれる。ウエハWを搬送アーム10から載置部24へ降ろすため、また、載置部24から持ち上げるために、昇降ピン16(図9)が設けられており、昇降ピンは昇降機構(図示せず)によって、サセプタ2の載置部24に形成された貫通孔を通して昇降される。このようにして、ウエハWが載置部24に載置される。
【0032】
再び図1を参照すると、透過窓201の上方には、膜厚測定システム101が配置されている。膜厚測定システム101は、透過窓201の上面に配置される3つの光学ユニット102aから102cと、光学ユニット102aから102cのそれぞれに光学的に接続される光ファイバ線104aから104cと、これらの光ファイバ線104aから104cが光学的に接続される測定ユニット106と、測定ユニット106を制御するため測定ユニット106と電気的に接続される制御ユニット108とを有している。制御ユニット108は、例えばコンピュータであって良く、成膜装置200の全体の制御を行う制御部100と電気的に接続され、両者の間で信号の送受信が行われる。これにより、成膜装置200と膜厚測定ユニット101とが協働する。
【0033】
図5は、光学ユニット102aと測定ユニット106の構成を示す概略図である。図示のとおり、光学ユニット102aは、投光部LEと受光部Dとを有している。また、測定ユニット106は、キセノンランプなどを含む光源106aと、分光器106bと、分光器106bそれぞれからの光を受光する受光器106cとを有している。さらに、光ファイバ線104は、2本の光ファイバOF1,OF2を有する2芯の光ファイバ線である。
【0034】
なお、図5においては、光学ユニット102bおよび102cを省略するが、これらは光学ユニット102aと同じ構成を有し、また、測定ユニット106は光学ユニット102bおよび102cに対応して分光器106bと受光器106cとを有している。
【0035】
図示のとおり、光学ユニット102aの投光部LEは、光ファイバ線104aの光ファイバOF1により、測定ユニット106の光源106aと光学的に接続されている。これにより、光源106aからの光が、光ファイバOF1を通して投光部LEに導かれ、投光部LEから出射される。また、投光部LEは、光ファイバOF1により導かれた光をビームBiとしてウエハWに向けて出射するため、レンズ(図示せず)などを含む光学系を有している。この光学系には、ウエハWに向けて出射するビームBiを直線偏光に偏光する偏光子Pが含まれる。さらに、投光部LEは、ビームBiを所定の角度でウエハWに照射するため、光学系の角度を調整する角度調整部(図示せず)を有している。
【0036】
一方、光学ユニット102aの受光部Dは、光ファイバ線104aの光ファイバOF2により、測定ユニット106の光源106aと光学的に接続されている。受光部Dは、投光部LEからウエハWに対して所定の角度で出射されたビームBiがウエハWの表面で反射された反射ビームBrを受光するように配置されている。たとえば、投光部LEと受光部Dは、ウエハWの法線に対して等角度で傾斜し、かつ、ビームBi、反射ビームBrおよび法線が一の平面を形成するように配置される。また、受光部Dは、このように受光した反射ビームBrを光ファイバOF2に入射するため、所定の光学系を有している。この光学系には、反射ビームBrを円偏光に偏光する光弾性変調器PEMと、偏光子Pとが含まれる。以上のように、光学ユニット102aから102cは、位相変調型のエリプソメータに必要な光学部品を含んで構成されている。
【0037】
受光部Dにより受光された反射ビームBrは、光ファイバOF2を通して分光器106bに導かれ、分光器106bにおいて反射ビームBr(白色光)が分光され、分光光が受光器106cへ入射される。受光器106cは、例えばフォトダイオードや光電子増倍管などを含み、受光器106cに入射した分光光の強度に応じた出力信号を制御ユニット108へ出力する。また、制御ユニット108は、分光器106bへ制御信号を出力し、分光器106bを駆動する。したがって、制御ユニット108は、分光器106bで分光された光の波長(フォトンエネルギー)とその光強度との関係を取得することができる。制御ユニット108は、この関係に基づき所定のアルゴリズムに従って、ウエハW上に成膜される膜の膜厚を求めることができる。
【0038】
また、制御ユニット108は、測定ユニット106の光源106aへ電力を供給する電源(図示せず)を制御することができ、電源へ制御信号を出力することを通して、光源106aを制御することができる。また、光源106aと光ファイバOF1との間には、光源からの光を光ファイバOF1に入射するための光学系(図示せず)が設けられている。また、光源106aと光ファイバOF1との間には、制御ユニット108の制御により開閉するシャッタ(図示せず)が配置されており、これにより、ウエハWに対して所定のタイミングでビームBiが照射され、所定のタイミングでウエハW上に成膜される膜の膜厚が測定される。
【0039】
図2および図3を再び参照すると、サセプタ2の上方に第1の反応ガス供給ノズル31、第2の反応ガス供給ノズル32、及び分離ガス供給ノズル41,42が設けられ、これらは、所定の角度間隔で半径方向に延在している。この構成により、載置部24は、ノズル31,32,41,及び42の下を通過することができる。図示の例では、第2の反応ガス供給ノズル32、分離ガス供給ノズル41、第1の反応ガス供給ノズル31、及び分離ガス供給ノズル42がこの順に時計回りに配置されている。これらのガスノズル31,32,41,42は、容器本体12の周壁部を貫通し、ガス導入ポート31a,32a,41a,42aである端部を壁の外周壁に取り付けることにより、支持されている。ガスノズル31,32,41,42は、図示の例では、真空容器1の周壁部から真空容器1内へ導入されているが、環状の突出部5(後述)から導入しても良い。この場合、突出部5の外周面と天板11の外表面とに開口するL字型の導管を設け、真空容器1内でL字型の導管の一方の開口にガスノズル31(32,41,42)を接続し、真空容器1の外部でL字型の導管の他方の開口にガス導入ポート31a(32a、41a、42a)を接続することができる。
【0040】
図示していないが、反応ガス供給ノズル31は、第1の反応ガスであるビスターシャルブチルアモノシラン(BTBAS)のガス供給源に接続され、反応ガス供給ノズル32は、第2の反応ガスであるオゾン(O3)のガス供給源に接続されている。
【0041】
反応ガス供給ノズル31、32には、下方側に反応ガスを吐出するための吐出孔33がノズルの長さ方向に間隔を置いて配列されている。本実施形態においては、吐出孔33は、約0.5mmの口径を有し、反応ガス供給ノズル31、32の長さ方向に沿って約10mmの間隔で配列されている。また、反応ガス供給ノズル31の下方領域はBTBASガスをウエハに吸着させるための第1の処理領域P1であり、反応ガス供給ノズル32の下方領域はO3ガスをウエハに吸着させるための第2の処理領域P2である。
【0042】
一方、分離ガス供給ノズル41,42は、チッ素ガス(N2)のガス供給源(図示せず)に接続されている。分離ガス供給ノズル41、42は、下方側に分離ガスを吐出するための吐出孔40を有している。吐出孔40は、長さ方向に所定の間隔で配置されている。本実施形態においては、吐出孔40は、約0.5mmの口径を有し、分離ガス供給ノズル41、42の長さ方向に沿って約10mmの間隔で配列されている。
【0043】
分離ガス供給ノズル41、42は、第1の処理領域P1と第2の処理領域P2とを分離するよう構成される分離領域Dに設けられている。各分離領域Dにおいては、真空容器1の天板11に、図2、図3、図4(a)および図4(b)に示すように、凸状部4が設けられている。凸状部4は、扇形の上面形状を有しており、その頂部は真空容器1の中心に位置し、円弧は容器本体12の内周壁の近傍に沿って位置している。また、凸状部4は、凸状部4が二分割されるように半径方向に延びる溝部43を有している。溝部43には分離ガス供給ノズル41(42)が収容されている。分離ガス供給ノズル41(42)の中心軸と扇形の凸状部4の一方の辺との間の距離は、分離ガス供給ノズル41(42)の中心軸と扇形の凸状部4の他方の辺との間の距離とほぼ等しい。なお、溝部43は、本実施形態では、凸状部4を二等分するように形成されるが、他の実施形態においては、例えば、凸状部4におけるサセプタ2の回転方向上流側が広くなるように、溝部43を形成しても良い。
【0044】
上記の構成によれば、図4(a)に示すように、分離ガス供給ノズル41(42)の両側には平坦な低い天井面44(第1の天井面)があり、低い天井面44の両側方には高い天井面45(第2の天井面)がある。凸状部4(天井面44)は、第1及び第2の反応ガスが凸状部4とサセプタ2との間に侵入するのを阻止して混合するのを阻止するための狭隘な空間である分離空間を形成する。
【0045】
図4(b)を参照すると、サセプタ2の回転方向に沿って反応ガス供給ノズル32から凸状部4に向かって流れるO3ガスが当該空間へ侵入するのが阻止され、またサセプタ2の回転方向と反対方向に沿って反応ガス供給ノズル31から凸状部4に向かって流れるBTBASガスが当該空間へ侵入するのが阻止される。「ガスが侵入するのが阻止される」とは、分離ガス供給ノズル41から吐出した分離ガスであるN2ガスが第1の天井面44とサセプタ2の表面との間に拡散して、この例では当該第1の天井面44に隣接する第2の天井面45の下方側の空間に吹き出し、これにより第2の天井面45の下方側空間からのガスが侵入できなくなることを意味する。そして「ガスが侵入できなくなる」とは、第2の天井面45の下方側空間から凸状部4の下方側空間に全く入り込むことができない場合のみを意味するのではなく、反応ガスの一部が侵入しても、その反応ガスが分離ガス供給ノズル41に向かって更に進むことができず、よって、混ざり合うことができないことも意味する。すなわち、このような作用が得られる限り、分離領域Dは、第1の処理領域P1と第2の処理領域P2とを分離することとなる。また、ウエハに吸着したガスについては当然に分離領域D内を通過することができる。したがって、ガスの侵入阻止は、気相中のガスを意味している。
【0046】
図1、図2、及び図3を参照すると、天板11の下面には、内周縁がコア部21の外周面に面するように配置された環状の突出部5が設けられている。突出部5は、コア部21よりも外側の領域においてサセプタ2と対向している。また、突出部5は、凸状部4と一体に形成され、凸状部4の下面と突出部5の下面とは一の平面を形成している。すなわち、突出部5の下面のサセプタ2からの高さは、凸状部4の下面(天井面44)と高さと等しい。この高さは、後に高さhと言及される。ただし、突出部5と凸状部4は、必ずしも一体でなくても良く、別体であっても良い。なお、図2及び図3は、凸状部4を真空容器1内に残したまま天板11を取り外した真空容器1の内部構成を示している。
【0047】
本実施形態においては、分離領域Dは、凸状部4となるべき扇形プレートに溝部43を形成して、分離ガス供給ノズル41(42)を溝部43に配置することにより形成される。しかし、2つの扇形プレートが分離ガス供給ノズル41(42)の両側に配置されるように、これら2つの扇形プレートを天板11の下面にネジで取り付けるようにしても良い。
【0048】
本実施形態において、約300mmの直径を有するウエハWが真空容器1内で処理されることとなる場合、凸状部4は、サセプタの回転中心から140mm離れた内側の円弧li(図3)に沿った例えば140mmの周方向長さと、サセプタ2の載置部24の最外部に対応する外側の円弧lo(図3)に沿った例えば502mmの周方向長さとを有する。また、外側の円弧loに沿った、凸状部4の一側壁から溝部43の直近の側壁までの周方向長さは、約246mmである。
【0049】
また、凸状部4の下面、即ち、天井面44の、サセプタ2の表面から測った高さh(図4(a))は、例えば約0.5mmから約10mmであって良く、約4mmであると好適である。また、サセプタ2の回転数は例えは1rpm〜500rpmに設定されている。分離領域Dの分離機能を確保するためには、処理真空容器1内の圧力やサセプタ2の回転数などに応じて、凸状部4の大きさや凸状部4の下面(第1の天井面44)とサセプタ2の表面との高さhを例えば実験などを通して設定してよい。なお分離ガスとしては、本実施形態ではN2ガスだが、分離ガスが酸化シリコンの成膜に影響を与えない限りにおいて、HeやArガスなどの不活性ガスや水素ガスなどであってもよい。
【0050】
図6は、図3のA−A線に沿った断面図の半分を示し、ここには凸状部4と、凸状部4と一体に形成された突出部5が図示されている。図6を参照すると、凸状部4は、その外縁においてL字状に屈曲する屈曲部46を有している。凸状部4は天板11に取り付けられ天板11とともに容器本体12から分離され得るため、屈曲部46とサセプタ2との間及び屈曲部46と容器本体12との間に僅かな隙間があるが、屈曲部46は、サセプタ2と容器本体12との間の空間を概ね埋めており、反応ガス供給ノズル31aからの第1の反応ガス(BTBAS)と反応ガス供給ノズル32aからの第2の反応ガス(オゾン)とがこの隙間を通して混合するのを防止する。屈曲部46と容器本体12との間の隙間、及び屈曲部46とサセプタ2との間に僅かな隙間は、上述のサセプタから凸状部4の天井面44までの高さhとほぼ同一の寸法とされている。図示の例において、屈曲部46のサセプタ2の外周面に面する側壁が、分離領域Dの内周壁を構成している。
【0051】
図3に示すB−B線に沿った断面図である図1を再び参照すると、容器本体12は、サセプタ2の外周面に対向する容器本体12の内周部に凹み部を有している。これ以降、この凹み部を排気領域6と称する。排気領域6の下方には、排気口61(他の排気口62については図3参照)が設けられ、これらには他の排気口62についても使用され得る排気管63を介して真空ポンプ64に接続されている。また、排気管63には圧力調整器65が設けられている。複数の圧力調整器65を、対応する排気口61,62に対して設けてもよい。
【0052】
図3を再び参照すると、排気口61は、上方から見て、第1の反応ガス供給ノズル31と、第1の反応ガス供給ノズル31に対してサセプタ2の時計回転方向の下流に位置する凸状部4との間に配置されている。この構成により、排気口61は、実質的に、第1の反応ガス供給ノズル31からのBTBASガスを専ら排気することができる。一方、排気口62は、上方から見て、第2の反応ガス供給ノズル32と、第2の反応ガス供給ノズル32に対してサセプタ2の時計回転方向の下流に位置する凸状部4との間に配置されている。この構成により、排気口62は、実質的に、第2の反応ガス供給ノズル32からのO3ガスを専ら排気することができる。したがって、このように構成される排気口61、62は、分離領域DがBTBASガスとO3ガスとが混合するのを防止するのを補助することができる。
【0053】
本実施形態では、2つの排気口が容器本体12に設けられているが、他の実施形態では、3つの排気口が設けられてもよい。例えば、第2の反応ガス供給ノズル32と、第2の反応ガス供給ノズル32に対してサセプタ2の時計回転方向の上流に位置する分離領域Dとの間に追加の排気口を設けてもよい。また、更に追加の排気口をどこかに設けてもよい。図示の例では、排気口61、62はサセプタ2よりも低い位置に設けることで真空容器1の内周壁とサセプタ2の周縁との間の隙間から排気するようにしているが、容器本体12の側壁に設けてもよい。また、排気口61,62を容器本体12の側壁に設ける場合、排気口61,62はサセプタ2よりも高く位置して良い。この場合、ガスはサセプタ2の表面に沿って流れ、サセプタ2の表面より高く位置する排気口61,62へ流れ込む。したがって、真空容器1内のパーティクルが吹き上げられないという点で、排気口が例えば天板11に設けられた場合に比べて、有利である。
【0054】
図1、図2及び図7に示すように、サセプタ2と容器本体12の底部14との間の空間には、加熱部としての環状のヒータエレメントから構成されるヒータユニット7が設けられ、これにより、サセプタ2上のウエハWがサセプタ2を介してプロセスレシピで決められた温度に加熱される。また、カバー部材71が、サセプタ2の下方においてサセプタ2の外周の近くに、ヒータユニット7を取り囲むように設けられ、ヒータユニット7が置かれている空間が、ヒータユニット7の外側の領域から区画されている。カバー部材71は上端にフランジ部71aを有し、フランジ部71aは、カバー部材71内にガスが流入することを防止するため、サセプタ2の下面とフランジ部との間に僅かな間隙が維持されるように配置される。
【0055】
再び図1を参照すると、底部14は、環状のヒータユニット7の内側に隆起部を有している。隆起部の上面は、サセプタ2と隆起部との間及び隆起部とコア部21とに接近しており、隆起部の上面とサセプタ2との間、及び隆起部の上面とコア部21の裏面との間に僅かな隙間を残している。また、底部14は、回転軸22が通り抜ける中心孔を有している。この中心孔の内径は、回転軸22の直径よりも僅かに大きく、フランジ部20aを通してケース体20と連通する隙間を残している。パージガス供給管72がフランジ部20aの上部に接続されている。また、ヒータユニット7が収容される領域をパージするため、複数のパージガス供給管73が所定の角度間隔でヒータユニット7の下方の領域に接続されている。
【0056】
このような構成により、回転軸22と底部14の中心孔との間の隙間、コア部21と底部14の隆起部との間の隙間、及び底部14の隆起部とサセプタ2の裏面との間の隙間を通して、パージガス供給管72からヒータユニット空間へN2パージガスが流れる。また、パージガス供給管73からヒータユニット7の下の空間へN2ガスが流れる。そして、これらのN2パージガスは、カバー部材71のフランジ部71aとサセプタ2の裏面との間の隙間を通して排気口61へ流れ込む。N2パージガスのこのような流れは、図8に矢印で示してある。N2パージガスは、第1(第2)の反応ガスがサセプタ2の下方の空間を回流して第2(第1)の反応ガスと混合するのを防止する分離ガスとして働く。
【0057】
図8を参照すると、真空容器1の天板11の中心部には分離ガス供給管51が接続され、これにより、天板11とコア部21との間の空間52に分離ガスであるN2ガスが供給される。この空間52に供給された分離ガスは、突出部5とサセプタ2との狭い隙間50を通して、サセプタ2の表面に沿って流れ、排気領域6に到達する。この空間53と隙間50は分離ガスが満たされているので、サセプタ2の中心部を介して反応ガス(BTBAS、O3)が混合することがない。即ち、本実施形態の成膜装置200は、第1の処理領域P1と第2の処理領域P2とを分離するためにサセプタ2の回転中心部と真空容器1とにより画成され、分離ガスをサセプタ2の上面に向けて吐出する吐出口を有するように構成される中心領域Cが設けられている。なお、図示の例では、吐出口は突出部5とサセプタ2との狭い隙間50に相当する。
【0058】
また、この実施形態による成膜装置200には、装置全体の動作のコントロールを行うための制御部100が設けられている。この制御部100は、例えばコンピュータで構成されるプロセスコントローラ100aと、ユーザインタフェース部100bと、メモリ装置100cとを有する。ユーザインタフェース部100bは、成膜装置200の動作状況を表示するディスプレイや、成膜装置200の操作者がプロセスレシピを選択したり、プロセス管理者がプロセスレシピのパラメータを変更したりするためのキーボードやタッチパネル(図示せず)などを有する。
【0059】
メモリ装置100cは、プロセスコントローラ100aに種々のプロセスを実施させる制御プログラム、プロセスレシピ、及び各種プロセスにおけるパラメータなどを記憶している。また、これらのプログラムは、成膜装置200に例えば後述する動作(成膜方法(膜厚測定を含む))を行わせるためのステップ群を有している。これらの制御プログラムやプロセスレシピは、ユーザインタフェース部100bからの指示に従って、プロセスコントローラ100aにより読み出されて実行される。また、これらのプログラムは、コンピュータ可読記憶媒体100dに格納され、これらに対応した入出力装置(図示せず)を通してメモリ装置100cにインストールしてよい。コンピュータ可読記憶媒体100dは、ハードディスク、CD、CD−R/RW、DVD−R/RW、フレキシブルディスク、半導体メモリなどであってよい。また、プログラムは通信回線を通してメモリ装置100cへダウンロードしてもよい。
【0060】
次に、本実施形態の成膜装置200の動作(成膜方法)について説明する。
(ウエハ搬入工程)
始めに、ウエハWがサセプタ2上に載置される工程について、主として図10と図11を参照しながら説明する。まず、サセプタ2を回転して載置部24を搬送口15に整列させ、ゲートバルブ(図示せず)を開く。次に、図9に示すように、ウエハWが搬送アーム10によって搬送口15を通して真空容器1内に搬入され、載置部24の上方に保持される(図9参照)。次いで、昇降ピン16が上昇して搬送アーム10からウエハWを受け取り、搬送アーム10が真空容器1から退出し、ゲートバルブ(図示せず)が閉まり、昇降ピン16が下降してウエハWをサセプタトレイ201の載置部24に載置する。
この一連の動作が、一ランで処理されるウエハの枚数に等しい回数繰り返されると、ウエハ搬入が終了する。
【0061】
(成膜工程)
ウエハ搬入後、真空ポンプ64(図1)により真空容器1内が予め設定した圧力にまで排気される。次に、サセプタ2が上から見て時計回りに回転(公転)を開始する。サセプタ2およびサセプタトレイ201は、ヒータユニット7により前もって所定の温度(例えば300℃)に加熱されており、ウエハWは、載置部24に載置されることにより加熱される。ウエハWが加熱され、所定の温度に維持されたことが温度センサ(図示せず)により確認された後、第1の反応ガス(BTBAS)が第1の反応ガス供給ノズル31を通して第1の処理領域へ供給され、第2の反応ガス(O3)が第2の反応ガス供給ノズル32を通して第2の処理領域P2へ供給される。加えて、分離ガス供給ノズル41、42から分離ガス(N2)が供給される。
【0062】
ウエハWが第1の反応ガス供給ノズル31の下方の第1の処理領域P1を通過するときに、ウエハWの表面にBTBAS分子が吸着し、第2の反応ガス供給ノズル32の下方の第2の処理領域P2と通過するときに、ウエハWの表面にO3分子が吸着され、O3によりBTBAS分子が酸化される。したがって、サセプタ2の回転により、ウエハWが領域P1、P2の両方を一回通過すると、ウエハWの表面に酸化シリコンの一分子層が形成される。
【0063】
(膜厚測定)
上述のようにして成膜している間に、以下の膜厚測定が行われる。
始めに、サセプタ2の回転速度に応じた測定タイミングが決定される。測定タイミングは、サセプタ2を回転する回転軸22の外周の所定の位置(例えば、サセプタ2の載置部24に対応した位置)に、例えば磁石を取り付けて回転軸22とも回転させ、所定のヘッドで磁気の変化を測定することにより把握することができる。
【0064】
次に、制御ユニット108は、光源106aの電源を制御して光源106aを点灯させるとともに、把握したタイミングに基づいてシャッタ(図示せず)を開け閉めして、光源106aからの光を光ファイバOF1にパルス状に入射させる。これにより、測定対象のウエハWに光を照射することができる。すなわち、光源106aからの光は、光ファイバOF1を通して投光部LEに至り、投光部LEからビームBiとして出射されて、回転しているサセプタ2上の測定対象のウエハWに選択的に照射される。そして、そのウエハWで反射した反射ビームBrは、受光部Dに入射し、光ファイバOF2を通過して、分光器106bに至る。このとき、分光器106bは、制御ユニット108により制御され、ウエハWからの反射ビームBrが光ファイバOF2から出射している間に、例えば、約248nmから約827nmまで(フォトンエネルギー換算で約1.5eVから5eVまで)波長スキャン(分光)をする。具体的には、制御ユニット108がシャッタの開閉を制御する信号と同期して分光器106bへ制御信号を送信し、分光器106bは、この制御信号に基づき、波長スキャンを行うことができる。このようにして、ビームBiがパルス状にウエハWに照射される間に分光測定が行われ、反射ビームBrの分光強度の波長(フォトンエネルギー)依存性に関するデータが取得される。
【0065】
この後、制御ユニット108は、上記の分光光強度の波長(フォトンエネルギー)依存性のデータに基づき所定のアルゴリズムにより、ウエハW上に成膜される膜の膜厚を算出する。そして、算出した膜厚が、その膜の目標膜厚と比較される。目標膜厚は、例えば制御部100にダウンロードされたレシピを参照することにより比較のたびに取得しても良いし、予め制御部100から制御ユニット108に通知され記憶されても良い。比較の結果、算出した膜厚が目標膜厚と等しいか、目標膜厚以上であると判定された場合、制御部100に通知信号を出力することにより、制御部100に対して成膜を停止すべきことを通知する。制御部100は、通知信号を受信すると、第1の反応ガス、第2の反応ガス、および分離ガスを停止し、サセプタ2の回転を中止して、次のウエハ搬出工程を開始する。
【0066】
なお、上記の膜厚測定は、光学ユニット102aから102cに対応した位置において、同時に測定することもできる。この場合、ウエハW上の3点で膜厚が測定されるが、3点すべてにおいて目標膜厚以上となったときに成膜を停止しても良いし、1点または2点が目標膜厚以上となったときに成膜を中止しても良い。また、サセプタ2上の所定の載置部24に載置される一枚のウエハWに対してのみ膜厚測定を行っても良いし、サセプタ2上のすべてのウエハWに対して膜厚測定を行っても良い。
【0067】
また、パルス状にウエハWに照射されるビームBiの持続時間(duration)は、例えばサセプタ2の回転速度に応じて決定して良い。具体的には、ビームBiの持続時間(シャッタが開いている時間)は、10ミリ秒から100ミリ秒までの期間であって良い。また、サセプタ2の一回転毎に膜厚を測定する必要はなく、例えば、サセプタ2が5から20回回転する毎に測定をしても良い。
【0068】
(ウエハ搬出工程)
成膜工程終了後、真空容器1内をパージする。次いで、ウエハWが、搬入動作と逆の動作により搬送アーム10により真空容器1から順次搬出される。すなわち、載置部24が搬送口15に整列し、ゲートバルブが開いた後、昇降ピン16が上昇してウエハWをサセプタトレイ201の上方に保持する。次に、搬送アーム10がウエハWの下方にまで進入し、昇降ピン16が下降して、搬送アーム10によりウエハWが受け取られる。この後、搬送アーム10が真空容器1から退出し、ウエハWを真空容器1から搬出する。これにより、一のウエハWの搬出が終了する。続けて、上記の動作が繰り返されて、サセプタ2上のすべてのウエハWが搬出される。
【0069】
以下、本発明の実施形態による成膜装置を用いた成膜工程の利点について説明する。
図10は、ガスノズル31,32,41,42から真空容器1内へ供給されたガスのフローパターンを模式的に示す図である。図示のとおり、第2の反応ガス供給ノズル32から吐出されたO3ガスの一部は、サセプタ2の表面(及びウエハWの表面)に当たって、その表面に沿ってサセプタ2の回転方向と逆の方向に流れる。次いで、このO3ガスは、サセプタ2の回転方向の上流側から流れてきたN2ガスに押し戻され、サセプタ2の周縁と真空容器1の内周壁の方へ向きを変える。最後に、O3ガスは、排気領域6に流れ込み、排気口62を通して真空容器1から排気される。
【0070】
第2の反応ガス供給ノズル32から吐出されたO3ガスの他の部分は、サセプタ2の表面(及びウエハWの表面)に当たって、その表面に沿ってサセプタ2の回転方向と同じ方向に流れる。この部分のO3ガスは、主に、中心領域Cから流れるN2ガスと排気口62を通した吸引力によって、排気領域6に向かって流れる。一方、この部分のO3ガスの少量部分が、第2の反応ガス供給ノズル32に対してサセプタ2の回転方向の下流側に位置する分離領域Dに向かって流れ、天井面44とサセプタ2との間の隙間に入る可能性がある。しかし、その隙間の高さhが意図した成膜条件下で当該隙間への流入を阻止する程度の高さに設定されているため、O3ガスはその隙間に入るのが阻止される。喩え、少量のO3ガスがその隙間に流れ込んだとしても、そのO3ガスは、分離領域Dの奥まで流れることができない。隙間に流れ込んだ少量のO3ガスは、分離ガス供給ノズル41から吐出された分離ガスによって押し戻される。したがって、図10に示すように、サセプタ2の上面を回転方向に沿って流れる実質的にすべてのO3ガスが、排気領域6へ流れ排気口62によって排気される。
【0071】
同様に、第1の反応ガス供給ノズル31から吐出され、サセプタ2の回転方向と反対の方向にサセプタ2の表面に沿って流れる一部のBTBASガスは、第1の反応ガス供給ノズル31に対して回転方向上流側に位置する凸状部4の天井面44とサセプタ2との間の隙間に流れ込むことが防止される。喩え少量のBTBASガスが流れ込んだとしても、分離ガス供給ノズル41から吐出されるN2ガスによって押し戻される。押し戻されたBTBASガスは、分離ガス供給ノズル41からのN2ガスと中心領域Cから吐出されているN2ガスと共に、サセプタ2の外周縁と真空容器1の内周壁とに向かって流れ、排気領域6を介して排気口61を通して排気される。
【0072】
第1の反応ガス供給ノズル31から下方側に吐出され、サセプタ2の回転方向と同じ方向にサセプタ2の表面(及びウエハWの表面)に沿って流れる他の部分のBTBASガスは、第1の反応ガス供給ノズル31に対して回転方向下流側に位置する凸状部4の天井面44とサセプタ2との間に流れ込むことができない。喩え少量のBTBASガスが流れ込んだとしても、分離ガス供給ノズル42から吐出されるN2ガスによって押し戻される。押し戻されたBTBASガスは、分離領域Dの分離ガス供給ノズル42からのN2ガスと中心領域Cから吐出されているN2ガスと共に、排気領域6に向かって流れ、排気口61により排気される。
【0073】
上述のように、分離領域Dは、BTBASガスやO3ガスが分離領域Dへ流れ込むのを防止するか、分離領域Dへ流れ込むBTBASガスやO3ガスの量を十分に低減するか、または、BTBASガスやO3ガスを押し戻すことができる。ウエハWに吸着したBTBAS分子とO3分子は、分離領域Dを通り抜けるのを許され、膜の成膜に寄与する。
【0074】
また、図8及び図10に示すように、中心領域Cからは分離ガスがサセプタ2の外周縁に向けて吐出されているので、第1の処理領域P1のBTBASガス(第2の処理領域P2のO3ガス)は、中心領域Cへ流入することができない。喩え、第1の処理領域P1の少量のBTBAS(第2処理領域P2のO3ガス)が中心領域Cへ流入したとしても、そのBTBASガス(O3ガス)はN2ガスにより押し戻され、第1の処理領域P1のBTBASガス(第2の処理領域P2のO3ガス)が、中心領域Cを通って第2の処理領域P2(第1の処理領域P1)に流入することが阻止される。
【0075】
また、第1の処理領域P1のBTBASガス(第2の処理領域P2のO3ガス)は、サセプタ2と容器本体12の内周壁との間の空間を通して第2の処理領域P2(第1の処理領域P1)に流入することも阻止される。これは、屈曲部46が凸状部4から下向きに形成され、屈曲部46とサセプタ2との隙間、及び屈曲部46と容器本体12の内周壁との間の隙間が、凸状部4の天井面44のサセプタ2からの高さhと同じくらい小さいため、2つの処理領域の間の連通を実質的に回避しているからである。したがって、BTBASガスは、排気口61から排気され、O3ガスは排気口62から排気されて、これら2つの反応ガスが混合することはない。また、サセプタ2の下方の空間は、パージガス供給管72,73から供給されるN2ガスによりパージされている。したがって、BTBASガスは、サセプタ2の下方を通してプロセス領域P2へと流れ込むことはできない。
【0076】
なお、上記の成膜工程中、離ガス供給管51からも分離ガスであるN2ガスが供給され、これにより中心領域Cから、即ち、突出部5とサセプタ2との間の隙間50からサセプタ2の表面に沿ってN2ガスが吐出される。この実施形態では、第2の天井面45の下の空間であって反応ガス供給ノズル31(32)が配置されている空間は、中心領域C、及び第1の天井面44とサセプタ2との間の狭隘な空間よりも低い圧力を有している。これは、天井面45の下の空間に隣接して排気領域6が設けられ、その空間は排気領域6を通して直接に排気されるからである。また、狭隘な空間が、反応ガス供給ノズル31(32)が配置されている空間、または第1(第2)の処理領域P1(P2)と狭隘な空間との間の圧力差が高さhによって維持され得るように形成されているためでもある。
【0077】
上述のように、本実施形態による成膜装置200においては、真空容器1内で2つの原料ガス(BTBASガス、オゾンガス)が混合してしまうのを極力抑えることができるため、理想的に近い原子層堆積を実現され、優れた膜厚制御性を提供することができる。これに加えて、成膜装置200には膜厚測定システム101が設けられているため、更に優れた膜厚制御性が提供される。すなわち、膜厚測定システム101によれば、成膜中にリアルタイムに膜厚をモニターしつつ、目標膜厚に達した時点で成膜を停止することができるため、目標膜厚を確実に達成できる。したがって、本実施形態による成膜装置200を半導体デバイスの製造に利用すれば、その半導体デバイスの性能が確実に発揮されるとともに、製造歩留まりを向上することができる。
【0078】
また、通常、製造ランに先立って、目標膜厚を達成するための成膜条件を把握するために条件だしランが行われるが、膜厚測定システム101を備える成膜装置200によれば、条件だしランを行う必要がない。このため、条件だしランに要する費用の分、製造コストを低減することができる。また、条件だしランを行っていた時間に製造ランを行えるため、より多くの製造ロットを処理することが可能となる。さらに、条件だしランの分だけラン数を低減できるため、メンテナンス間隔を長くすることができる。
【0079】
また、本実施形態における膜厚測定システム101は、エリプソメータとして構成されるため、上述のとおり、10ミリ秒から100ミリ秒までといった極めて短い期間に膜厚を測定することができる。したがって、ウエハWが回転していても、ウエハW面内における極小な箇所(スポット)での膜厚を測定できる。さらに、一つの光学ユニット102aにより、ウエハW面内の数カ所で膜厚を測定することも可能である。3つの光学ユニット102aから102cでウエハW面内の数カ所で膜厚を測定すれば、ウエハW面内の膜厚分布を求めることも可能である。
【0080】
さらに、本実施形態における膜厚測定システム101は、エリプソメータとして構成されるため、複数の物質が積層される積層膜について、各層の膜厚を測定することができる。したがって、本実施形態による成膜装置200により、例えば、酸化膜−窒化膜−酸化膜(ONO膜)を連続して成膜する場合であっても、各膜の膜厚を測定することができる。また、例えば、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)膜を、酸化チタン(TiO)膜と酸化ストロンチウム(SrO)膜との積層膜として実現する場合であっても、TiO膜とSrO膜それぞれの膜厚を測定することも可能である。
【0081】
また、上述のとおり、2つの原料ガスが真空容器1内で混合するのを効果的に防止できるため、成膜はウエハW上およびサセプタ2上に限られる。このため、透過窓201に膜が成膜されることは殆ど無く、したがって、透過窓201のメンテナンスの頻度を極めて低くすることができる。すなわち、膜厚測定システム101に起因する成膜装置200のダウンタイムの増加は殆どない。
【0082】
次に、本実施形態による成膜装置200において、BTBASとO3とを用いてSiO2膜を成膜する場合の好適なプロセスパラメータを以下に掲げる。
・サセプタ2の回転速度: 1−500rpm(ウエハWの直径が300mmの場合)
・真空容器1の圧力: 1067 Pa(8 Torr)
・ウエハ温度: 350℃
・BTBASガスの流量: 100 sccm
・O3ガスの流量: 10000 sccm
・分離ガス供給ノズル41,42からのN2ガスの流量: 20000 sccm
・分離ガス供給管51からのN2ガスの流量: 5000 sccm
・サセプタ2の回転数: 600回転(必要な膜厚による)
この実施形態による成膜装置200によれば、成膜装置200が、BTBASガスが供給される第1の処理領域と、O3ガスが供給される第2の処理領域との間に、低い天井面44を含む分離領域Dを有しているため、BTBASガス(O3ガス)が第2の処理領域P2(第1の処理領域P1)へ流れ込むのが防止され、O3ガス(BTBASガス)と混合されるのが防止される。したがって、ウエハWが載置されたサセプタ2を回転させて、ウエハWを第1の処理領域P1、分離領域D、第2の処理領域P2、及び分離領域Dを通過させることにより、酸化シリコン膜の分子層成膜が確実に実施される。また、BTBASガス(O3ガス)が第2の処理領域P2(第1の処理領域P1)へ流れ込みO3ガス(BTBASガス)と混合するのを更に確実に防止するため、分離領域Dは、N2ガスを吐出する分離ガス供給ノズル41,42を更に含む。さらに、この実施形態による成膜装置200の真空容器1は、N2ガスが吐出される吐出孔を有する中心領域Cを有しているため、中心領域Cを通ってBTBASガス(O3ガス)が第2の処理領域P2(第1の処理領域P1)へ流れ込みO3ガス(BTBASガス)と混合されるのを防止することができる。さらにまた、BTBASガスとO3ガスが混合されないため、サセプタ2への酸化シリコンの成膜が殆ど生じず、よって、パーティクルの問題を低減することができる。
【0083】
なお、本実施形態による成膜装置200においては、サセプタ2は5つの載置部24を有し、対応する5つの載置部24に載置された5枚のウエハWを一回のランで処理することができるが、5つの載置部24のうちの一つに1枚のウエハWを載置しても良いし、サセプタ2に載置部24を一つのみ形成しても良い。
【0084】
さらに、酸化シリコン膜の分子層成膜に限定されず、成膜装置200によって窒化シリコン膜の分子層成膜を行うこともできる。窒化シリコン膜の分子層成膜のための窒化ガスとしては、アンモニア(NH3)やヒドラジン(N2H2)などを利用することができる。
【0085】
また、酸化シリコン膜や窒化シリコン膜の分子層成膜のための原料ガスとしては、BTBASに限らず、ジクロロシラン(DCS)、ヘキサクロロジシラン(HCD)、トリスジメチルアミノシラン(3DMAS)、テトラエトキシシラン(TEOS)などを利用することができる。
【0086】
さらにまた、本発明の実施形態による成膜装置及び成膜方法においては、酸化シリコン膜や窒化シリコン膜に限らず、窒化シリコン(NH3)の分子層成膜、トリメチルアルミニウム(TMA)とO3又は酸素プラズマとを用いた酸化アルミニウム(Al2O3)の分子層成膜、テトラキスエチルメチルアミノジルコニウム(TEMAZ)とO3又は酸素プラズマとを用いた酸化ジルコニウム(ZrO2)の分子層成膜、テトラキスエチルメチルアミノハフニウム(TEMAHf)とO3又は酸素プラズマとを用いた酸化ハフニウム(HfO2)の分子層成膜、ストロンチウムビステトラメチルヘプタンジオナト(Sr(THD)2)とO3又は酸素プラズマとを用いた酸化ストロンチウム(SrO)の分子層成膜、チタニウムメチルペンタンジオナトビステトラメチルヘプタンジオナト(Ti(MPD)(THD))とO3又は酸素プラズマとを用いた酸化チタニウム(TiO)の分子層成膜などを行うことができる。
【0087】
サセプタ2の外周縁に近いほど大きい遠心力が働くため、例えば、BTBASガスは、サセプタ2の外周縁に近い部分において、大きい速度で分離領域Dへ向かう。したがって、サセプタ2の外周縁に近い部分では天井面44とサセプタ2との間の隙間にBTBASガスが流入する可能性が高い。そこで、凸状部4の幅(回転方向に沿った長さ)を外周縁に向うほど広くすれば、BTBASガスがその隙間に入りにくくすることができる。この観点からは、本実施形態において上述したように、凸状部4が扇形の上面形状を有すると好ましい。
【0088】
以下に、凸状部4(又は天井面44)のサイズを再び例示する。図11(a)及び図11(b)を参照すると、分離ガス供給ノズル41(42)の両側に狭隘な空間を形成する天井面44は、ウエハ中心WOが通る経路に対応する円弧の長さLとしてウエハWの直径の約1/10〜約1/1の長さであって良く、約1/6以上であると好ましい。具体的には、ウエハWが300mmの直径を有している場合、この長さLは、約50mm以上が好ましい。この長さLが短い場合、天井面44とサセプタ2との間の狭隘な空間の高さhは、反応ガスが狭隘な空間へ流れ込むのを効果的に防止するため、低くしなければならない。しかし、長さLが短くなり過ぎて、高さhが極端に低くなると、サセプタ2が天井面44に衝突し、パーティクルが発生してウエハの汚染が生じたり、ウエハが破損したりする可能性がある。したがって、サセプタ2の天井面44に衝突するのを避けるため、サセプタ2の振動を抑える、又はサセプタ2を安定して回転させるための方策が必要となる。一方、長さLを短くしたまま狭隘な空間の高さhを比較的大きく維持する場合には、天井面44とサセプタ2との間の狭隘な空間に反応ガスが流れ込むのを防止するため、サセプタ2の回転速度を低くしなければならず、製造スループットの点でむしろ不利になる。これらの考察から、ウエハ中心WOの経路に対応する円弧に沿った、天井面44の長さLは、約50mm以上が好ましい。しかし、凸状部4又は天井面44のサイズは、上記のサイズに限定されることなく、使用されるプロセスパラメータやウエハサイズに従って調整して良い。また、狭隘な空間が、分離領域Dから処理領域P1(P2)への分離ガスの流れが形成される程度の高さを有している限りにおいて、上述の説明から明らかなように、狭隘な空間の高さhもまた、使用されるプロセスパラメータやウエハサイズに加えて、たとえば天井面44の面積に応じて調整して良い。
【0089】
また、上記の実施形態においては、凸状部4に設けられた溝部43に分離ガス供給ノズル41(42)が配置され、分離ガス供給ノズル41(42)の両側に低い天井面44が配置されている。しかし、他の実施形態においては、分離ガス供給ノズル41の代わりに、図12に示すように凸状部4の内部においてサセプタ2の直径方向に伸びる流路47を形成し、この流路47の長さ方向に沿って複数のガス吐出孔40を形成し、これらのガス吐出孔40から分離ガス(N2ガス)を吐出するようにしてもよい。
【0090】
分離領域Dの天井面44は平坦面に限られるものではなく、図13(a)に示すように凹面状に湾曲してよいし、図13(b)に示すように凸面形状にしてもよく、また図13(c)に示すように波型状に構成してもよい。
【0091】
また、凸状部4は中空であって良く、中空内に分離ガスを導入するように構成しても良い。この場合、複数のガス吐出孔33を、図14(a)から図14(c)に示すように配列してもよい。
【0092】
図14(a)を参照すると、複数のガス吐出孔33は、それぞれ傾斜したスリットの形状を有している。これらの傾斜スリット(複数のガス吐出孔33)は、サセプタ2の半径方向に沿って隣接するスリットと部分的にオーバーラップしている。図14(b)では、複数のガス吐出孔33は、それぞれ円形である。これらの円形の孔(複数のガス吐出孔33)は、全体としてサセプタ2の半径方向に沿って伸びる曲がりくねった線に沿って配置されている。図14(c)では、複数のガス吐出孔33は、それぞれ円弧状のスリットの形状を有している。これらの円弧状スリット(複数のガス吐出孔33)は、サセプタ2の半径方向に所定の間隔で配置されている。
【0093】
また、本実施形態では凸状部4はほぼ扇形の上面形状を有するが、他の実施形態では、図15(a)に示す長方形、又は正方形の上面形状を有して良い。また、凸状部4は、図15(b)に示すように、上面は全体として扇形であり、凹状に湾曲した側面4Scを有していても良い。加えて、凸状部4は、図15(c)に示すように、上面は全体として扇形であり、凸状に湾曲した側面4Svを有していても良い。さらにまた、図15(d)に示すとおり、凸状部4における、サセプタ2(図1)の回転方向の上流側の部分が凹状の側面4Scを有し、凸状部4における、サセプタ2(図1)の回転方向の下流側の部分が平面状の側面4Sfを有していても構わない。なお、図15(a)から図15(d)において、点線は凸状部4に形成された溝部43(図4(a)、図4(b))を示している。これらの場合、溝部43に収容される分離ガス供給ノズル41(42)(図2)は真空容器1の中央部、例えば突出部5(図1)から伸びる。
【0094】
ウエハを加熱するためのヒータユニット7は、抵抗発熱体の代わりに、加熱ランプを有して構成されてもよい。また、ヒータユニット7は、サセプタ2の下方側に設ける代わりにサセプタ2の上方側に設けてもよいし、上下両方に設けてもよい。
【0095】
処理領域P1,P2及び分離領域Dは、他の実施形態においては図16に示すように配置されても良い。図16を参照すると、第2の反応ガス(例えば、O3ガス)を供給する第2の反応ガス供給ノズル32が、搬送口15よりもサセプタ2の回転方向上流側であって、搬送口15と分離ガス供給ノズル42との間に設置されている。このような配置であっても、各ノズル及び中心領域Cから吐出されるガスは、概ね、同図において矢印で示すように流れて、両反応ガスの混合が防止される。したがって、このような配置であっても、適切な分子層成膜を実現することができる。
【0096】
また、既に述べたように、2枚の扇形プレートが分離ガス供給ノズル41(42)の両側に位置されるように、天板11の下面にネジで取り付けることにより、分離領域Dを構成してよい。図17は、このような構成示す平面図である。この場合、凸状部4と分離ガス供給ノズル41(42)との間の距離や、凸状部4のサイズは、分離領域Dの分離作用を効率よく発揮するため、分離ガスや反応ガスの吐出レートを考慮して決定して良い。
【0097】
上述の実施の形態では、第1の処理領域P1及び第2の処理領域P2は、分離領域Dの天井面44よりも高い天井面45を有する領域に相当している。しかし、第1の処理領域P1及び第2の処理領域P2の少なくとも一方は、反応ガス供給ノズル31(32)の両側でサセプタ2に対向し、天井面45よりも低い他の天井面を有してもよい。当該天井面とサセプタ2との間の隙間にガスが流れ込むのを防止するためである。この天井面は、天井面45よりも低く、分離領域Dの天井面44と同じくらい低くてもよい。図18は、そのような構成の一例を示している。図示のとおり、扇状の凸状部30は、O3ガスが供給される第2の処理領域P2に配置され、反応ガス供給ノズル32が凸状部30に形成された溝部(図示せず)に配置されている。言い換えると、この第2の処理領域P2は、ガスノズルが反応ガスを供給するために使用されるが、分離領域Dと同様に構成されている。なお、凸状部30は、図14(a)から図14(c)に一例を示す中空の凸状部と同様に構成されても良い。
【0098】
また、分離ガス供給ノズル41(42)の両側に狭隘な空間を形成するために低い天井面(第1の天井面)44が設けられる限りにおいて、他の実施形態では、上述の天井面、つまり、天井面45より低く、分離領域Dの天井面44と同じくらい低い天井面が、反応ガス供給ノズル31,32の両方に設けられ、天井面44に到達するまで延びていても良い。換言すると、凸状部4の代わりに、他の凸状部400が天板11の下面に取り付けられていて良い。図19を参照すると、凸状部400は、ほぼ円盤状の形状を有し、サセプタ2の上面のほぼ全体と対向し、ガスノズル31,32,41,42がそれぞれ収容され半径方向に延びる4つのスロット400aを有し、かつ、凸状部400の下に、サセプタ2にする狭隘な空間を残している。その狭隘な空間の高さは、上述の高さhと同程度であって良い。凸状部400を使用すると、反応ガス供給ノズル31(32)から吐出された反応ガスは、凸状部400の下で(又は狭隘な空間において)反応ガス供給ノズル31(32)の両側に拡散し、分離ガス供給ノズル41(42)から吐出された分離ガスは、凸状部400の下で(又は狭隘な空間において)分離ガス供給ノズル41(42)の両側に拡散する。この反応ガスと分離ガスは狭隘な空間において合流し、排気口61(62)を通して排気される。この場合であっても、反応ガス供給ノズル31から吐出された反応ガスは、反応ガス供給ノズル32から吐出された反応ガスと混合することはなく、適切な分子層成膜を実現できる。
【0099】
なお、凸状部400を、図14(a)から図14(c)のいずれかに示す中空の凸状部4を組み合わせることにより構成し、ガスノズル31,32,33,34及びスリット400aを用いずに、反応ガス及び分離ガスを、対応する中空凸状部4の吐出孔33からそれぞれガスを吐出するようにしても良い。
【0100】
上記の実施形態では、サセプタ2を回転する回転軸22は、真空容器1の中央部に位置している。また、コア部21と天板11との間の空間52は、反応ガスが中央部を通して混合するのを防止するため、分離ガスでパージされている。しかし、真空容器1は、他の実施形態において図20のように構成されても良い。図20を参照すると、容器本体12の底部14は、中央開口を有し、ここには収容ケース80が気密に取り付けられている。また、天板11は、中央凹部80aを有している。支柱81が収容ケース80の底面に載置され、支柱81の状端部は中央凹部80aの底面にまで到達している。支柱81は、第1の反応ガス供給ノズル31から吐出される第1の反応ガス(BTBAS)と第2の反応ガス供給ノズル32から吐出される第2の反応ガス(O3)とが真空容器1の中央部を通して互いに混合するのを防止する。
【0101】
また、天板11の開口には、例えば石英ガラス製の透過窓201がOリングなどの封止部材(図示せず)を介して気密に取り付けられている。また、透過窓201は、サセプタ2に載置されるウエハWの直径とほぼ等しい幅を有し、天板11の直径方向に沿って設けられている。これにより、ウエハWの直径方向に沿った複数の点での膜厚測定が可能である。
【0102】
図20に示す成膜装置200においても、透過窓201を通してウエハW上に成膜される膜の膜厚を測定する上述の膜厚測定システム101が設けられている。したがって、この成膜装置200を用いれば、成膜中に膜厚を測定することができ、目標膜厚に達した時点で成膜を停止することが可能となる。このため、この成膜装置200においても上述の効果が奏される。
【0103】
また、回転スリーブ82が、支柱81を同軸状に囲むように設けられている。回転スリーブ82は、支柱81の外面に取り付けられた軸受け86,88と、収容ケース80の内側面に取り付けられた軸受け87とにより支持されている。さらに、回転スリーブ82は、その外面にギヤ部85が取り付けられている。また、環状のサセプタ2の内周面が回転スリーブ82の外面に取り付けられている。駆動部83が収容ケース80に収容されており、駆動部83から延びるシャフトにギヤ84が取り付けられている。ギヤ84はギヤ部85と噛み合う。このような構成により、回転スリーブ82ひいてはサセプタ2が駆動部83により回転される。
【0104】
パージガス供給管74が収容ケース80の底に接続され、収容ケース80へパージガスが供給される。これにより、反応ガスが収容ケース80内へ流れ込むのを防止するために、収容ケース80の内部空間を真空容器1の内部空間よりも高い圧力に維持することができる。したがって、収容ケース80内での成膜が起こらず、メンテナンスの頻度を低減できる。また、パージガス供給管75が、真空容器1の上外面から凹部80aの内壁まで至る導管75aにそれぞれ接続され、回転スリーブ82の上端部に向けてパージガスが供給される。このパージガスのため、BTBASガスとO3ガスは、凹部80aの内壁と回転スリーブ82の外面との間の空間を通して混合することができない。図20には、2つのパージガス供給管75と導管75aが図示されているが、供給管75と導管75aの数は、BTBASガスとO3ガスとの混合が凹部80aの内壁と回転スリーブ82の外面との間の空間近傍において確実に防止されるように決定されて良い。
【0105】
図20の実施の形態では、凹部80aの側面と回転スリーブ82の上端部との間の空間は、分離ガスを吐出する吐出孔に相当し、そしてこの分離ガス吐出孔、回転スリーブ82及び支柱81により、真空容器1の中心部に位置する中心領域が構成される。
【0106】
本発明の実施形態による成膜装置200(図1等、図20)においては、2種類の反応ガスを用いることに限られず、3種類以上の反応ガスを順番に基板上に供給しても良い。その場合には、例えば第1の反応ガス供給ノズル、分離ガス供給ノズル、第2の反応ガス供給ノズル、分離ガス供給ノズル、第3の反応ガス供給ノズル及び分離ガス供給ノズルの順番で真空容器1の周方向に各ガスノズルを配置し、各分離ガス供給ノズルを含む分離領域を既述の実施の形態のように構成すればよい。
【0107】
本発明の実施形態による成膜装置200(図1等、図20)は、基板処理装置に組み込むことができ、その一例が図21に模式的に示されている。基板処理装置は、搬送アーム103が設けられた大気搬送室102と、雰囲気を真空と大気圧との間で切り替え可能なロードロック室(準備室)105と、2つの搬送アーム107a、107bが設けられた搬送室106と、本発明の実施形態にかかる、膜厚測定ユニット101と同じ膜厚測定ユニット(図示せず)が設けられた成膜装置109,110とを含む。また、この処理装置は、たとえばFOUPなどのウエハカセットFが載置されるカセットステージ(図示せず)を含んでいる。ウエハカセットFは、カセットステージの一つに運ばれ、カセットステージと大気搬送室102との間の搬入出ポートに接続される。次いで、開閉機構(図示せず)によりウエハカセットF(FOUP)の蓋が開けられて、搬送アーム103からウエハカセットFからウエハが取り出される。次に、ウエハはロードロック室104(105)へ搬送される。ロードロック室104(105)が排気された後、ロードロック室104(105)内のウエハは、搬送アーム107a(107b)により、真空搬送室106を通して成膜装置109,110へ搬送される。成膜装置109,110では、上述の方法でウエハ上に膜が成膜される。この基板処理装置は、上述の成膜装置200と同じ成膜装置109,110を有しているため、成膜装置200が奏する効果と同じ効果が奏される。また、同時に5枚のウエハを主要可能な2つの成膜装置109,110を有しているため、高いスループットで分子層成膜を行うことができる。
【0108】
また、本発明の実施形態による成膜装置200(図1等、図20)は、他の基板処理装置に組み込むことができ、その一例が図22に模式的に示されている。
図22は、本発明の他の実施形態による基板処理装置700の概略上面図である。図示のとおり、基板処理装置700は、2つの真空容器111と、それぞれの真空装置111の側壁の搬送口に取り付けられた搬送路270aと、搬送路270aに取り付けられたゲートバルブ270Gと、ゲートバルブ270Gにより連通可能に設けられる搬送モジュール270と、搬送モジュール270にそれぞれゲートバルブ272Gを介して接続されるロードロック室272a、272bとを有している。
【0109】
2つの真空容器111は、ともに真空容器1と同一の構成を有し、天板には透過窓201が設けられ、透過窓201上には光学ユニット102aから102cが配置されている。光学ユニット102aから102cには、対応する光ファイバ線104aから104cが接続され、光ファイバ線104aから104cは測定ユニット106に接続され、測定ユニット106は制御ユニット108に接続されている。また、制御ユニット108は、図示しない制御部(制御部100)に接続されている。このような構成により、上述の膜厚測定を行うことができ、上述の効果が奏される。
【0110】
搬送モジュール270は、内部に2つの搬送アーム10a、10bを有している。これらの搬送アーム10a、10bは、伸縮自在であり、基部を中心に回動可能であり、2つの真空容器111およびロードロック質272a、272bにアクセスすることができる。これにより、図22に示す搬送アーム10aのように、ゲートバルブ270Gが開いたときに、ウエハWを真空容器111内へ搬入し、真空容器111から搬出することができる。また、ゲートバルブ272Gが開いたときに、ウエハWをロードロック室272a、272bに対し搬入出することができる。
【0111】
ロードロック室272b(272a)は、図22のII−II線に沿った断面図である図23に示すように、図示しない駆動部により昇降可能な例えば5段のウエハ載置部272cを有しており、各ウエハ載置部272cにウエハWが載置される。また、ロードロック室272a、272bの一方は、ウエハWを一時的に格納するバッファ室として機能して良く、他方は、外部(成膜工程に先んじた工程)からウエハWを成膜装置700へ搬入するためのインターフェイス室として機能して良い。
【0112】
なお、搬送モジュール270、およびロードロック室272a、272bには、それぞれ図示しない真空系が接続されている。これらの真空系は、例えばロータリーポンプと必要に応じてターボ分子ポンプとを含んで良い。
【0113】
以上の構成によれば、上述の成膜装置200と同じ効果が発揮されるとともに、高いスループットで分子層成膜を行うことができる。
【0114】
なお、上記の実施形態による成膜装置200(基板処理装置に含まれるものを含む)において、反応ガス供給ノズル31(32)を、ウエハWの直径方向に長さの異なる3本の有孔パイプを有するように構成すれば、例えば、光学ユニット102aから102cのそれぞれで測定した結果に基づいて、各有孔パイプ(の孔)から供給される原料ガスの流量を調整することにより、膜厚均一性を向上することも可能となる。
【0115】
また、上の説明においては、膜厚測定システム101により測定された膜厚と目標膜厚とが、膜厚測定システム101の制御ユニット108において比較されたが、測定した膜厚を示す情報を制御ユニット108から制御部100へ送信し、制御部100において比較および判定を行っても良い。
【0116】
また、上記の実施形態においては、膜厚測定システム101として、位相変調型のエリプソメータを例示したが、これに限らず、消光型、回転偏光子型、回転検光子型、回転補償子型のいずれであっても良い。また、光源106aとしては、キセノンランプに限らず、ハロゲンランプや重水素ランプなどを使用することができる。
【0117】
さらに、天板11に追加の開口を形成して、この追加の開口に他の透過窓を気密に取り付けても良い。この場合、光学ユニット102aから102c(のケース)を用いずに、投光部LEからのビームBi(図5)の反射ビームBrが受光部Dに入射するように、一の透過窓201に投光部LEを設け、他の透過窓に受光部Dを設けても良い。これによれば、投光部LEからのビームBiのウエハW表面に対する入射角をブリュースター角に近い角度に合わせることが容易となり、測定精度を向上することができる。
【0118】
また、光学ユニット102a等の数は3つに限らず、4つ以上であっても良い。光学ユニットの数はウエハWのサイズなどに応じて適宜決定して良い。
【0119】
さらに、膜厚測定システム101は、エリプソメトリに基づいて膜厚測定を行うのではなく、ウエハW上に成膜される膜の表面と、この膜および下地膜またはウエハWの間の界面との間で生じる多重反射を利用して膜厚を測定することができるよう構成されても良い。
【符号の説明】
【0120】
200・・・成膜装置、2・・・サセプタ、24・・・載置部、203・・・駆動装置、204・・・昇降ロッド、24・・・載置部、10a,10b・・・搬送アーム、4・・・凸状部、5・・・突出部、31,32・・・反応ガス供給ノズル、41,42・・・分離ガス供給ノズル、101・・・膜厚測定システム、102a、102b、102c・・・光学ユニット、106a・・・光源、106b・・・分光器、106c・・・受光器、W・・・ウエハ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内にて、互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板に供給するサイクルを実行して反応生成物の層を当該基板上に生成することにより膜を堆積する成膜装置であって、
前記容器内に回転可能に設けられ、一の面に画定されて前記基板が載置される載置領域を有するサセプタ;
前記容器の前記サセプタに対向する部分に、前記容器に対して気密に設けられる窓部;
前記サセプタに載置される前記基板に堆積される膜の膜厚を前記窓部を通して光学的に測定する膜厚測定部;
前記一の面に第1の反応ガスを供給するよう構成される第1の反応ガス供給部;
前記サセプタの回転方向に沿って前記第1の反応ガス供給部から離れた、前記一の面に第2の反応ガスを供給するよう構成される第2の反応ガス供給部;
前記回転方向に沿って、前記第1の反応ガスが供給される第1の処理領域と前記第2の反応ガスが供給される第2の処理領域との間に位置し、前記第1の処理領域と前記第2の処理領域とを分離する分離領域;
前記第1の処理領域と前記第2の処理領域とを分離するために、前記容器の中央部に位置し、前記一の面に沿って第1の分離ガスを吐出する吐出孔を有する中央領域;および
前記容器内を排気するために前記容器に設けられた排気口;
を備え、
前記分離領域が、第2の分離ガスを供給する分離ガス供給部と、前記第2の分離ガスが前記回転方向に対し前記分離領域から前記処理領域側へ流れることができる狭隘な空間を、前記サセプタの前記一の面に対して形成する天井面と、を含む成膜装置。
【請求項2】
前記膜厚測定部が、前記基板の複数の点のそれぞれに対して光を照射し、当該照射した光の反射光を受光する複数の投受光部を含む、請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記基板に成膜された膜について前記膜厚測定部により測定された膜厚と、当該膜の目標膜厚とが比較され、当該比較の結果、前記測定された膜厚が前記目標膜厚以上と判定された場合、成膜を停止するように構成される、請求項1または2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記膜厚測定部がエリプソメータを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項5】
容器内にて、互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板に供給するサイクルを実行して反応生成物の層を当該基板上に生成することにより膜を堆積する成膜方法であって、
前記容器内に回転可能に設けられサセプタであって、一の面に画定され前記基板が載置される載置領域に前記基板を載置するステップ;
前記基板が載置されたサセプタを回転するステップ;
第1の反応ガス供給部から前記サセプタへ第1の反応ガスを供給するステップ;
前記サセプタの回転方向に沿って前記第1の反応ガス供給部から離れた第2の反応ガス供給部から前記サセプタへ第2の反応ガスを供給するステップ;
前記第1の反応ガス供給部から前記第1の反応ガスが供給される第1の処理領域と前記第2の反応ガス供給部から前記第2の反応ガスが供給される第2の処理領域との間に位置する分離領域に設けられた分離ガス供給部から、第1の分離ガスを供給し、前記分離領域の天井面と前記サセプタとの間に形成される狭隘な空間において前記回転方向に対し前記分離領域から前記処理領域側に前記第1の分離ガスを流すステップ;
前記容器の中央部に位置する中央部領域に形成される吐出孔から第2の分離ガスを供給するステップ;
前記容器を排気するステップ;
前記回転するステップにより回転されるサセプタ上の前記基板に光を照射するステップ;
前記光を照射するステップにより前記基板に照射された光の反射光を受光するステップ;
前記受光するステップにより受光した前記反射光の分光強度を利用して前記基板上に成膜される膜の膜厚を計算するステップ;
を含む、成膜方法。
【請求項6】
前記照射するステップにおいて、複数の光ビームが前記基板に対して照射され、当該複数の光ビームに対応する複数の反射ビームがそれぞれ受光され、
前記膜の膜厚を計算するステップにおいて、前記複数の反射ビームそれぞれの分光強度が利用されて、前記膜の膜厚が形成される、請求項5に記載の成膜方法。
【請求項7】
前記膜の膜厚を計算するステップにおいて計算された膜厚と、当該膜の目標膜厚とを比較するステップを更に含む、請求項5または6に記載の成膜方法。
【請求項8】
前記比較するステップにおける比較の結果、前記計算された膜厚が前記目標膜厚以上と判定された場合に、前記第1の反応ガスと前記第2の反応ガスの供給を停止するステップを更に含む、請求項5から7のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項9】
前記膜の膜厚を計算するステップにおいて、エリプソメトリにより前記膜厚が計算される、請求項5から8のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項10】
請求項1から4のいずれか一項に記載の成膜装置に、請求項5から9のいずれか一項に記載の成膜方法を実施させるプログラム。
【請求項11】
請求項10に記載のプログラムを格納するコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項1】
容器内にて、互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板に供給するサイクルを実行して反応生成物の層を当該基板上に生成することにより膜を堆積する成膜装置であって、
前記容器内に回転可能に設けられ、一の面に画定されて前記基板が載置される載置領域を有するサセプタ;
前記容器の前記サセプタに対向する部分に、前記容器に対して気密に設けられる窓部;
前記サセプタに載置される前記基板に堆積される膜の膜厚を前記窓部を通して光学的に測定する膜厚測定部;
前記一の面に第1の反応ガスを供給するよう構成される第1の反応ガス供給部;
前記サセプタの回転方向に沿って前記第1の反応ガス供給部から離れた、前記一の面に第2の反応ガスを供給するよう構成される第2の反応ガス供給部;
前記回転方向に沿って、前記第1の反応ガスが供給される第1の処理領域と前記第2の反応ガスが供給される第2の処理領域との間に位置し、前記第1の処理領域と前記第2の処理領域とを分離する分離領域;
前記第1の処理領域と前記第2の処理領域とを分離するために、前記容器の中央部に位置し、前記一の面に沿って第1の分離ガスを吐出する吐出孔を有する中央領域;および
前記容器内を排気するために前記容器に設けられた排気口;
を備え、
前記分離領域が、第2の分離ガスを供給する分離ガス供給部と、前記第2の分離ガスが前記回転方向に対し前記分離領域から前記処理領域側へ流れることができる狭隘な空間を、前記サセプタの前記一の面に対して形成する天井面と、を含む成膜装置。
【請求項2】
前記膜厚測定部が、前記基板の複数の点のそれぞれに対して光を照射し、当該照射した光の反射光を受光する複数の投受光部を含む、請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記基板に成膜された膜について前記膜厚測定部により測定された膜厚と、当該膜の目標膜厚とが比較され、当該比較の結果、前記測定された膜厚が前記目標膜厚以上と判定された場合、成膜を停止するように構成される、請求項1または2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記膜厚測定部がエリプソメータを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項5】
容器内にて、互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板に供給するサイクルを実行して反応生成物の層を当該基板上に生成することにより膜を堆積する成膜方法であって、
前記容器内に回転可能に設けられサセプタであって、一の面に画定され前記基板が載置される載置領域に前記基板を載置するステップ;
前記基板が載置されたサセプタを回転するステップ;
第1の反応ガス供給部から前記サセプタへ第1の反応ガスを供給するステップ;
前記サセプタの回転方向に沿って前記第1の反応ガス供給部から離れた第2の反応ガス供給部から前記サセプタへ第2の反応ガスを供給するステップ;
前記第1の反応ガス供給部から前記第1の反応ガスが供給される第1の処理領域と前記第2の反応ガス供給部から前記第2の反応ガスが供給される第2の処理領域との間に位置する分離領域に設けられた分離ガス供給部から、第1の分離ガスを供給し、前記分離領域の天井面と前記サセプタとの間に形成される狭隘な空間において前記回転方向に対し前記分離領域から前記処理領域側に前記第1の分離ガスを流すステップ;
前記容器の中央部に位置する中央部領域に形成される吐出孔から第2の分離ガスを供給するステップ;
前記容器を排気するステップ;
前記回転するステップにより回転されるサセプタ上の前記基板に光を照射するステップ;
前記光を照射するステップにより前記基板に照射された光の反射光を受光するステップ;
前記受光するステップにより受光した前記反射光の分光強度を利用して前記基板上に成膜される膜の膜厚を計算するステップ;
を含む、成膜方法。
【請求項6】
前記照射するステップにおいて、複数の光ビームが前記基板に対して照射され、当該複数の光ビームに対応する複数の反射ビームがそれぞれ受光され、
前記膜の膜厚を計算するステップにおいて、前記複数の反射ビームそれぞれの分光強度が利用されて、前記膜の膜厚が形成される、請求項5に記載の成膜方法。
【請求項7】
前記膜の膜厚を計算するステップにおいて計算された膜厚と、当該膜の目標膜厚とを比較するステップを更に含む、請求項5または6に記載の成膜方法。
【請求項8】
前記比較するステップにおける比較の結果、前記計算された膜厚が前記目標膜厚以上と判定された場合に、前記第1の反応ガスと前記第2の反応ガスの供給を停止するステップを更に含む、請求項5から7のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項9】
前記膜の膜厚を計算するステップにおいて、エリプソメトリにより前記膜厚が計算される、請求項5から8のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項10】
請求項1から4のいずれか一項に記載の成膜装置に、請求項5から9のいずれか一項に記載の成膜方法を実施させるプログラム。
【請求項11】
請求項10に記載のプログラムを格納するコンピュータ可読記憶媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
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【図18】
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【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2010−206026(P2010−206026A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−51257(P2009−51257)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
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