説明

新規のヒストンデアセチラーゼ阻害剤

抗腫瘍活性を有する新規のヒストンデアセチラーゼ阻害剤、及びその調製方法を開示する。構造式(I)に属するこれらの化合物は、Rが、少なくとも2つの共役した二重結合を有する直鎖又は分岐鎖であり、Aは、任意で置換されたフェニル又はピリジル環であり、Arは、アリール又はヘテロアリール基であり、Rは、H又はアルコキシアルキル基である。また、本願は、腫瘍などの、ヒストンデアセチラーゼ活性の脱制御に関連した疾病の処置への上記の化合物の使用について開示するとともに、この処置を必要とする患者に投与するための関連する医薬組成物について開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗腫瘍化合物に関する。本願では、抗腫瘍治療などのヒストンデアセチラーゼ活性の脱制御に関連した疾病の処置に有用な、シンナモイルアミド構造を有するヒストンデアセチラーゼの新規の阻害剤について、開示する。
【背景技術】
【0002】
ヒストンのN末端部分のリジン残基のε−アミノ基上で実行される可逆的なヒストンのアセチル化は、ヌクレオソームにおける重要な立体構造の改変を仲介する。これらの改変は、転写因子とともに遺伝子発現に関与するDNAの機能に影響を及ぼす(非特許文献1)。ヒストンのアセチル化に関与する酵素には、2つのクラスがある:つまり、転写の共活性化物として作用することによりヒストンのアセチル化を触媒するヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HATs)と、ヒストンデアセチラーゼ(HDACs)である;後者の酵素は、Sin3、SMRT及びN−CoRなどの転写リプレッサーやコリプレッサーによりプロモーター領域のレベルにリクルートされ、過剰にアセチル化されたヒストンの形成や転写のサイレンシングへと導く(非特許文献2)。発癌性のタンパク質を介したヒストンデアセチラーゼの異常なリクルートや、正常な細胞におけるヒストンアセチルトランスフェラーゼとヒストンデアセチラーゼとの活性が崩壊した状態は、以下の種々の病態に関連している:
【0003】
その第一としては、腫瘍性病態であり(非特許文献3乃至7);
第二としては、非腫瘍性の病態である:
【0004】
神経系:
ハンチントン病(非特許文献8及び9)、三重体増幅で生じる疾病(非特許文献10及び11)、変性疾患に対する神経防護作用(非特許文献12)、虚血(非特許文献13)、酸化ストレス(非特許文献14)、神経系の炎症反応(非特許文献15)、てんかん(非特許文献16及び17)、蛋白凝集で生じる疾患(非特許文献18)。
【0005】
感染:
HIV(非特許文献19乃至22)、マラリア、リーシュマニア症、原虫、菌類、植物毒素、寄生虫で生じる感染。
【0006】
免疫系:
自己免疫疾患(非特許文献23)、宿主に対する慢性の免疫反応(非特許文献24)。
【0007】
心臓:
心臓肥大及び心臓病(非特許文献25乃至27)。
【0008】
筋肉組織:
皮膚線維症(非特許文献28)、線維症(非特許文献29)、脊髄及び延髄の筋萎縮(非特許文献30)。
【0009】
精神系:
双極性疾患(非特許文献31)、精神疾患(非特許文献32)、X−染色体疾患(非特許文献33及び34)。
【0010】
その他:
関節炎(非特許文献35)、腎疾患(非特許文献36)、乾癬(非特許文献37)、腸疾患、大腸炎(非特許文献38)、βサラセミア(非特許文献39)、呼吸器疾患(非特許文献40)、ルービンシュタイン−タイビ症候群(非特許文献41)。
【0011】
天然物であるトリコスタチンA(TSA)、トラポキシン(TPX)及び環状デプシペプチドであるFK−228など、ブチル酸ナトリウム、フェニルブチレート及びバルプロ酸などの短鎖脂肪酸、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、ピロキサミド、スクリプタイド、オキサムフラチン、NVP−LAQ824、ヒドロキサム酸を有する環状ペプチド(CHAPs)及びベンザミドであるMS−275などのヒドロキサム酸で例示されるヒストンデアセチラーゼ阻害剤は、形質転換した種々の培養細胞や動物モデルにおいて、成長の中断、分化及びアポトーシスを惹起する(非特許文献42)。これらのうち、フェニルブチル酸ナトリウム(単独又は組み合わせ)、デプシペプチドであるSAHA、ピロキサミド、NVP−LAQ824、MS−275は、治療フェーズI及び/又はIIにおいて種々の癌性疾患の処置に用いる(非特許文献43)。それにもかかわらず、毒性の問題(TSA、CHAPs、MS−275)、低い安定性(TSA、トラポキシン)、低い溶解性(TSA)、低い有用性及び選択性のなさ(ブチレート及びそのアナログ)により、これらのものの治療上の有用性は、制限されている(非特許文献44)。
【0012】
特許文献1は、下記の一般式を有する、HDAC阻害剤としてのヒドロキサム酸誘導体を開示する。
【0013】
【化7】

【0014】
ここで、Rは、窒素含有の複素環であって、1つ以上の適当な置換基で任意に置換されたものであり、Rは、ヒドロキシアミノであり、Rは、水素又は適当な置換基であり、Lは、nが0〜6である−(CH−であって、1つ以上の適当な置換基で任意に置換され、1つ以上のメチレンが適当なヘテロ原子と置き換わってもよいものであり、Lは、低級アルキレン鎖である。
【0015】
特許文献2は、ヒドロキサム酸誘導体、及び下記の一般式を有するヒストンデアセチラーゼ阻害剤としての使用について、開示する。
【0016】
【化8】

【0017】
ここで、Aは、任意に置換されたフェニル、又は芳香族ヘテロ環状基であり、m及びnは、独立に0〜4の整数であり、Xは、下記の構造を有する残基から選択されたものである。
【0018】
【化9】

【0019】
ここで、Rは、水素、又は任意に置換したC1〜C4アルキル基である。
【0020】
特許文献3は、下記の一般式を有する、デアセチラーゼ阻害剤としてのヒドロキサム酸誘導体について開示する。
【0021】
【化10】

【0022】
ここで、Rは、H、ハロゲン又はC〜Cのアルキル鎖であり、Rは、H、C〜C10のアルキル基、C〜Cのシクロアルキル基、C〜Cのヘテロシクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基などから選択されたものであり、R及びRは、水素、C〜Cのアルキル基、アシル基又はアシルアミノ基から独立して選択され、Rは、水素、C〜Cのアルキル基及びその他のものから選択され;n、n及びnは、0〜6の整数であり、X及びYは、水素、ハロゲン、C〜Cのアルキル基などから選択されたものである。
【0023】
特許文献4は、以下の一般式のヒストンデアセチラーゼ阻害剤について、開示する。
Cy−L−Ar−Y−C(O)−NH−Z
【0024】
ここで、Cyは、任意に置換されたシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基又はヘテロ環状基であり;Lは、mが0〜4の整数である−(CH−Wであり、Wは、C(O)NH−、S(O)−NH−から選択され;Arは、任意に置換されたアリーレン環であって、このアリーレンは、アリール又はヘテロアリール環と縮合されてもよく、Yは、結合、又は飽和アルキレン鎖であり;Zは、O−Mであって、Mは、水素、又は適当な医薬的な陽イオンである。
【0025】
特許文献5は、下記の一般式で示すヒドロキサム酸誘導体である。
【0026】
【化11】

【0027】
ここで、Rは、フェニル又はアリールオキシフェニルであり;Lは、C〜Cのアルキレン、C〜Cのアルケニレン、(CH−O−(mは、0〜4の整数)、又は−CO−であり;nは、0又は1であり;Rは、水素、C〜Cのアルキル、又はアリールアルキルであり;Mは、水素、アルコイル、アルコキシカルボニルである;また、特許文献5は、平滑筋の成長を抑制する効果を有し血管壁の肥大化を阻止しポスト−PTCAのレチノーシス(retenosis)を阻止し、且つ抗動脈硬化剤として有用な医薬品としての使用について開示する。
【0028】
Maiらは、非特許文献45乃至51に、選択的なHDAC阻害剤としてのピロリルヒドロキサミド誘導体について、開示する。
【0029】
非特許文献52は、さらなるHDAC阻害剤について、開示する。ヒストンデアセチラーゼ阻害剤は、また、異なるサブクラスのヒストンデアセチラーゼ(HD2、HD1−A、HD1−B)に対して異なる親和性を有することが同定されている:種々のサブクラスのヒストンデアセチラーゼの異なる能力は、重要な結果をもたらす:つまり、副作用の消失、及び/又は特定の形態の腫瘍に対する活性、である。
【特許文献1】国際公開第04/063169号パンフレット
【特許文献2】国際公開第03/087066号パンフレット
【特許文献3】国際公開第02/22577号パンフレット
【特許文献4】国際公開第01/38322号パンフレット
【特許文献5】国際公開第95/13264号パンフレット
【非特許文献1】Curr.Opin.Genet.Dev.、1998年、8巻、p.173〜178
【非特許文献2】Trends Biochem.Sci.、2000年、25巻、p.619〜623
【非特許文献3】Oncogene、2001年、20巻、p.7204〜7215
【非特許文献4】Oncogene、2001年、20巻、p.7186〜7203
【非特許文献5】Oncogene、2001年、20巻、p.3116〜3127
【非特許文献6】Nature、1998年、391巻、p.815〜818
【非特許文献7】Mol.Cell.Biol.、1998年、18巻、p.7176〜7184
【非特許文献8】J.Neurosci.、2003年、23巻、p.9418〜27
【非特許文献9】Proc.Natl.Acad.Sci.USA、2003年、100巻、p.2041〜6
【非特許文献10】Curr.Med.Chem.、2003年、10巻、p.2577〜87
【非特許文献11】Curr.Biol.、2002年、12巻、p.R141〜3
【非特許文献12】FEBS Lett.、2003年、542巻、p.74〜8
【非特許文献13】J.Neurochem.、2004年、89巻、p.1358〜67
【非特許文献14】Proc.Natl.Acad.Sci.USA、2003年、100巻、p.4281〜6
【非特許文献15】J.Neurochem.、2003年、87巻、p.407〜16
【非特許文献16】Epilepsia、2004年、45巻、p.737〜44
【非特許文献17】J.Neurosci.、2002年、22巻、p.8422〜8
【非特許文献18】Curr.Biol.、2004年、14巻、p.488〜92
【非特許文献19】Mol.Cell Biol.、2003年、23巻、p.6200〜9
【非特許文献20】Embo J.1996年、15巻、p.1112〜20
【非特許文献21】Biochem Pharmacol.、2004年、68巻、p.1231〜8
【非特許文献22】Aids、2004年、18巻、p.1101〜8
【非特許文献23】Blood、2003年、101巻、p.1430〜8
【非特許文献24】Proc.Natl.Acad.Sci.USA、2004年、101巻、p.3921〜6
【非特許文献25】J.Clin.Invest.、2003年、112巻、p.863〜71
【非特許文献26】Novartis Found Symp、2004年、259巻、p.132〜41,discussion p.141〜5、p.163〜9
【非特許文献27】J.Clin.Invest.、2003年、112巻、p.824〜6
【非特許文献28】Exp.Cell Res.、2002年、278巻、p.184〜97
【非特許文献29】Hepatology、1999年、29巻、p.858〜67
【非特許文献30】Hum.Mol.Genet.、2004年、13巻、p.1183〜92
【非特許文献31】Nature、2002年、417巻、p.292〜5
【非特許文献32】Crit.Rev.Neurobiol.、2003年、15巻、p.121〜42
【非特許文献33】BMC Mol.Biol.、2003年、4巻、p.3
【非特許文献34】Hum.Mol.Genet.、1999年、8巻、p.2317〜23
【非特許文献35】Mol.Ther.、2003年、8巻、p.707〜17
【非特許文献36】J.Clin.Invest.、2003年、111巻、p.539〜52
【非特許文献37】Curr.Drug Targets Inflamm.Allergy、2004年、3巻、p.213〜9
【非特許文献38】Wien.Klin.Wochenschr.、2002年、114巻、p.289〜300
【非特許文献39】Expert Opin.Investig.Drugs、2001年、10巻、p.925〜34
【非特許文献40】Am.J.Respir.Crit.Care Med.、2003年、167巻、p.813〜8
【非特許文献41】Neuron、2004年、42巻、p.947〜59
【非特許文献42】Curr.Opin.Oncol.、2001年、13巻、p.477〜483
【非特許文献43】Nat.Rev.Drug Discov.2002年、1巻、p.287〜299
【非特許文献44】Anti−Cancer Drugs、2001年、13巻、p.1〜13
【非特許文献45】J.Med.Chem.、2001年、44巻、p.2069〜2072
【非特許文献46】J.Med.Chem.、2002年、45巻、p.1778〜1784
【非特許文献47】J.Med.Chem.、2003年、46巻、p.512〜524
【非特許文献48】J.Med.Chem.2003年、46巻、p.4826〜4829
【非特許文献49】J.Med.Chem.、2004年、47巻、p.1098〜1109
【非特許文献50】J.Med.Chem.、2004年、47巻、p.1351〜1359
【非特許文献51】J.Med.Chem.、2005年、48巻、p.3344〜3353
【非特許文献52】Expert Opin.Ther.Patents、2004年、14巻、6号、p.791〜804
【非特許文献53】Larhed,M.、Hallberg,A.著、Handbook of Organopalladium Chemistry for Organic Synthesis、2002年、Negishi,E.編、Wiley−Interscience:New York
【非特許文献54】Greene,T.W.及びWuts,P.G.M.著、Protective Groups in Organic Synthesis、John Wiley & Sons社、New York,1991年、(第2版)
【非特許文献55】Kocienski,P.J.著、Protecting groups. George Thieme Verlag、New York、1994年
【非特許文献56】Remington著、The Science and Practice of Pharmacy、第20版、Lippincott Williams & Willcins: Philadelphia、2000年
【非特許文献57】Saigoら著、Bull.Chem.Soc.Jpn.、1995年、68巻、p.2355〜2362
【非特許文献58】Tetrahedron、1988年、44巻、p.6013〜20
【非特許文献59】Qiuら著、Mol.Biol.Cell.、2000年、11巻、6号、p.2069〜83
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
しかしながら、上述のいずれの化合物でも、今までのところ、完全に満足のゆく特性を示していない。従って、有用な抗腫瘍特性、十分な選択性及び作用の安定性を有する新規のヒストンデアセチラーゼ阻害剤を見出すことが未だ所望されている:また、ヒストンデアセチラーゼに対して、特定のサブクラスに対して可能なより高い活性を示す高い活性を有する新規の阻害剤の研究が始まっている。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明者は、高く安定な抗腫瘍活性を有する新規のヒストンデアセチラーゼ阻害剤を見出した。これらの阻害剤は、以下の一般式を有する。
【0032】
【化12】

【0033】
ここで、Rは、少なくとも1つの共役した二重結合を有する直鎖又は分岐鎖であり;
は、水素、アルコキシアルキルから選択され;
Arは、任意で置換されたアリール又はヘテロアリール基である。
【0034】
Aは、以下の一般式から選択されたものである。
【0035】
【化13】

【0036】
ここで、Rは、水素、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、ヘテロシクリル基、ヘテロシクリルアルキル基、ハロゲン、ハロアルキル基、水酸基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシ基、ハロアルコキシ基、アミノ基、アミノアルキル基、アルキルアミノ基、(チオ)カルボニルアミノ基、(チオ)アミノカルボニル基、スルフォニルアミノ基、アミノスルフォニル基、(チオ)アシル基、(チオ)アシルオキシ基、(チオ)アルコキシカルボニル基、ニトロ基及びニトリル基から選択される。
【0037】
一般式(I)の化合物は、下記式(II)の化合物と、以下の(i)及び(ii)とを処理して合成されてもよく、ここで、A及びRは、上記の通りであり、Rは、適当な脱離基であり、例えば、ブロモ又はヨードなどのハロゲンが挙げられる:
【0038】
【化14】

【0039】
(i)一般式Ar−Wで示す化合物であって、Arは、上記の通りであり、Wは、式(II)のCHO基と反応して上述のR、又はその合成中間体を形成し得る置換基である
(ii)さらに、下記一般式(III)の化合物である。
【0040】
【化15】

【0041】
ここで、Zは、上述の通りのNHOR、又はその前駆体であり、上記のステップ(i)及び(ii)は、いかなる順序で行ってもよい。
【0042】
式(I)の化合物は、1μM又はそれ以下のオーダーのIC50を有する、強力なヒストンデアセチラーゼの阻害剤である。これらの化合物は、広いスペクトル、及び経時的に安定な活性を示す:これらの特徴は、治療に適用する観点から、理想的である。さらに、式(I)の化合物は、腫瘍細胞のパネルに対して、アポトーシスを惹起し、且つ細胞の増殖を阻害する。
【0043】
本発明は、ヒストンデアセチラーゼ活性の脱制御に関連した疾患の処置及び/又は予防における式(I)の化合物の使用、及びこの化合物の投与のための関連する医薬組成物に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
上述の式(I)において、単独又はより高次の構造(例えば、アルコキシ基、アリールアルキル基など)に含まれる上記のアルキル基は、好ましくは1〜8(より好ましくは、1〜4)の炭素原子を有し、直鎖又は分岐鎖であってもよく、また、可能な置換基を有してもよい。
【0045】
単独又はより高次の構造(例えば、アシルオキシ基)に含まれる上記のアシル基は、好ましくは1〜8、より好ましくは1〜4の炭素原子を有し、直鎖又は分岐鎖であってもよく、飽和又は不飽和であってもよく、可能な置換基を有してもよい。
【0046】
上記のシクロアルキル基は、好ましくは3〜8、より好ましくは3〜6の炭素原子を有し、飽和又は不飽和であってもよく、可能な置換基を有してもよい。
【0047】
単独又はより高次の構造(例えば、アリールアルキル基など)に含まれる上記のアリール基は、芳香族単環又は多環基であって、好ましくは単位環当たり6〜10の炭素原子を有し、可能な置換基を有する;アリール基の好ましい例は、フェニル基である。
【0048】
単独又はより高次の構造(例えば、ヘテロシクリルアルキル基など)に含まれる上記のヘテロシクリル基は、単環又は多環であり、好ましくは単位環当たり4〜8員環であり、環を構成する1〜3つの原子は、N、O、Sなどのヘテロ原子であり、飽和又は不飽和であってもよく、可能な置換基を有してもよい。
【0049】
上記の全ての可能な置換基において、可能な置換基としては、例えば、水酸基、アルコキシ基、ハロアルコキシ基、アミノ基、アミノカルボニル基、カルボニルアミノ基、カルボニルアミド基、アミド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アミノアルキル基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、ピリジル基、ピペラジニル基、モルフォリル基、ハロゲン、ニトロ基及びニトリル基から選択される。
【0050】
種々のα,βの不飽和基の属する上記のRは、α,βの不飽和が例えば、酸素、窒素又は硫黄原子などの炭素でない原子を包含するものを含む。従って、Rは、炭素原子鎖、又は=Yで置換された炭素原子であってもよく、ここで、Yは、α,βの不飽和に包含される炭素でない原子を示す。好ましくは、Rは、3〜8の炭素原子を含み;さらに好ましくは、Rは、以下の構造から選択される。
【0051】
【化16】

【0052】
ここで、Yは、O、S、NH、CH、NOH又はNORから選択され、Rは、1〜4の炭素原子を有するアルキル基である。
【0053】
Ar基として、好ましくは、フェニル基、ナフチル基、ピリジル基、ピラニル基、ピロリル基、チエニル基、フラニル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、インドリル基が挙げられる。
【0054】
Ar基の任意の置換基としては、示した場合はいつでも、ハロゲン、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、トリフルオロアルキル基、トリフルオロアルコキシ基、ジアルキルアミノ基、モルフォリル基、ピペラジニル基、メトキシカルボニル基から好ましく選択される。
【0055】
A環のR及びRを含有する残基に対する結合は、好ましくはA環上で、互いにパラの位である。R置換基は、A環の任意の可能な位置に結合されてもよい;好ましくは、Rは、水素、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基である。Rは、好ましくは、水素である。
【0056】
好ましい式(I)の構造は、以下の(Ia)、(Ib)、(Ic)及び(Id)である。
【0057】
【化17】

【0058】
ここで、Ar及びRは、上記の通りであり、Xは、炭素又は窒素原子である。
【0059】
本発明は、式(I)の化合物の調製方法について、さらに含む。最も一般的に意味において、この方法は、下記の式(II)を、下記の(i)及び(ii)で処理することを含む。
【0060】
【化18】

【0061】
ここで、A及びRは、上記の通りであり、Rは、例えば、ブロモ及びヨードなどのハロゲンで例示される適当な脱離基である。
【0062】
(i)式Ar−Wの化合物であって、Arは、上記の通りであり、Wは、式(II)のCHO基と反応して、上記のR、又はその合成中間体を形成し得る基である。
(ii)さらに、式(III)の化合物である。
【0063】
【化19】

【0064】
ここで、Zは、上記の通りのNHOR、又はその前駆体である。
【0065】
化合物Ar−Wの付加反応は、一般的にアルカリ環境下で行う;好ましくは、化合物Ar−Wは、フェニル環に任意で置換されたアセトフェノンである。
【0066】
好ましくは、式(III)の化合物は、アルキルアクリレートであり、より好ましくは、n−ブチルアクリレートである。式(III)の化合物の付加は、一般的に、リン酸カリウム及び酢酸パラジウムの存在下で行う;式(III)がアルキルアクリレートである場合、そのO−アルキル基は、NHOH基の前駆体として作用する;NHOHへの変換は、下記に例示するような公知の方法に従って行う。
【0067】
特に、式(Ia)の好適な化合物は、下記の合成経路に従って、式(IV)又は(IVa)の化合物を脱保護して、得てもよい。
【0068】
【化20】

【0069】
本発明において、「Het」と記した環は、下記のピリジン環を示す。
【0070】
【化21】

【0071】
保護基PGは、通常の化学反応に従って選択される標準法により、除去される。PGがテトラヒドロピラニル基、又は2−メトキシ−2−プロピル基である場合、非プロトン性の溶媒(例えば、ジエチルエーテル、ジオキサン又はTHFなど)中に塩酸などを有する酸性条件を用いる。
【0072】
式(IV)の化合物は、保護されたヒドロキシアミン(NHOPG)を有する式(V)の化合物を反応して、得られる。
【0073】
【化22】

【0074】
このカップリング反応は、EDC(1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド)、DCC(N,N’−ジシクロヘキシル−カルボジイミド)などの有機合成の分野で公知のカップリング剤、又はポリマーを支持するカルボジイミド(PS−DCC;Argonaut Technologies社製)により、適当な溶媒(例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、N,N−ジメチルホルムアミド)中にトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンなどの適当な塩基を有するものの存在下で、行われてもよい。典型的には、HOBT(1−ヒドロキシ−ベンゾトリアゾール)、HOAT(1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール)及びこれらに類する共触媒を反応混合物中に有してもよい。この反応は、約2〜12時間の間、室温で典型的に進行する。
【0075】
式(V)の化合物は、エタノール、メタノール又は水などのプロトン性溶媒中にKOHやNaOHなどの無機塩基を有するものの存在下で、下記の式(VI)の化合物を、下記の式(VII)の化合物と反応させて、得てもよい。
【0076】
【化23】

【0077】
【化24】

【0078】
この反応は、約2〜12時間の時間の間、0℃〜室温で典型的に進行する。
【0079】
式(VII)の化合物は、市販されており、又は公知の方法、又は公知の化合物を調製するのに使用される類似の方法により、公知の化合物から調製されてもよい。
【0080】
式(VI)の化合物は、市販されており、又はBがハロゲン、特にブロモ又はヨードである下記の式(VIII)の化合物を、非特許文献53に記載の従来のHeck反応の条件を用いて、tert−ブチルアクリレートと反応して、調製されてもよい。
【0081】
【化25】

【0082】
この反応は、酢酸パラジウムなどのパラジウム塩、並びに有機及び無機塩基(トリエチルアミン、1,4−ジアゾビシクロ[2.2.2]オクタン、及び重炭酸ナトリウム又は重炭酸カリウム)、及びひいては、DMF中にトリフェニルフォスフィンを有するフォスフィン誘導体の存在下で行う。この反応は、約2〜12時間、通常は100℃で還流して、室温で典型的に進行する。tert−ブチルエステルを対応するカルボン酸に脱保護する適当な方法は、非特許文献54及び55に記載の基本書に従った公知のものであってもよい。
【0083】
式(VIII)の化合物は、市販されており、公知の方法、又は公知の化合物を調製するのに使用される類似の方法により公知の化合物から調製されてもよい。
【0084】
式(V)の化合物は、代替的に、エタノール、メタノール又は水などのプロトン性溶媒中にKOHやNaOHなどの無機塩基を有するものの存在下で、下記の式(IX)の化合物を、式(VII)の化合物と反応させて、得てもよい。
【0085】
【化26】

【0086】
この反応は、約2〜12時間の間、0℃〜室温で典型的に進行する。tert−ブチルエステルを対応するカルボン酸に脱保護する適当な方法は、本技術分野公知の方法であってもよい。
【0087】
式(IX)の化合物は、式(VI)の化合物の合成について述べるものと類似の従来のHeckの反応条件を用い、Bが特にブロモ又はヨードなどのハロゲンである式(VIII)の化合物を、tert−ブチルアクリレートと反応して、調製されてもよい。
【0088】
代替的に、式(V)の化合物は、THFなどの非プロトン性溶媒中に水素化ナトリウムなどの無機塩基を有するものの存在下、下記の式(X)の化合物を、tert−ブチルジエチルフォスフォノアセテートと反応させて、得てもよい。
【0089】
【化27】

【0090】
この反応は、約1〜12時間の間、0℃〜室温で典型的に進行する。tert−ブチルエステルを対応するカルボン酸に変換する適当な脱保護の方法は、本技術分野公知の方法によってもよい。
【0091】
式(X)の化合物は、エタノール、メタノール又は水などのプロトン性溶媒中にKOHやNaOHなどの無機塩基を有するものの存在下で、下記の式(XI)の化合物と、式(VII)の化合物とを反応させて、得てもよい。
【0092】
【化28】

【0093】
この反応は、約1〜12時間の間、0℃〜室温で典型的に進行する。ジメチルアセタールを対応するアルデヒドに変換する適当な脱保護の方法は、非特許文献54及び55に記載の基本書に従った公知のものであってもよい。
【0094】
式(XI)の化合物は、Bが特にブロモやヨードなどのハロゲンである下記の式(XII)の化合物を、n−ブチルリチウムなどのアルキルリチウムと反応し、その後THFなどの非プロトン性溶媒中にDMFを添加して、調製してもよい。
【0095】
【化29】

【0096】
この反応は、約1〜3時間の間、−78℃〜室温で典型的に進行する。
【0097】
式(XII)の化合物は、本技術分野公知の適当な保護法を用いて、アルデヒドを対応するジメチルアセタールに変換することにより、式(VIII)の化合物から得てもよい。
【0098】
代替的に、式(V)の化合物は、式(VI)の化合物の合成で述べた方法と類似する従来のHeckの反応の条件を用い、Bが特にブロモ又はヨードである下記の式(XIII)の化合物を、tert−ブチルアクリレートと反応して、得てもよい。
【0099】
【化30】

【0100】
tertブチルエステルの脱保護は、公知の標準法に従って、実行される。
【0101】
式(XIII)の化合物は、エタノール、メタノール又は水などのプロトン性溶媒中にKOHやNaOHなどの有機又は無機塩基を有するものの存在下、式(VIII)の化合物と式(VII)の化合物とを反応させて、調製されてもよい。この反応は、約1〜36時間の間、0℃から還流することで、典型的に進行する。
【0102】
Aがヘテロアリールである場合、式(Iva)の化合物は、保護されたヒドロキシアミン(NHOPG)を有する下記の式(XVI)の化合物を反応して、得てもよい。
【0103】
【化31】

【0104】
このカップリング反応は、EDC(1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド)、DCC(N,N’−ジシクロヘキシル−カルボジイミド)などの有機合成の分野で公知のカップリング剤、又はポリマーを支持するカルボジイミド(PS−DCC;Argonaut Technologies社製)により、適当な溶媒(例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、N,N−ジメチルホルムアミド)中にトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンなどの適当な塩基を有するものの存在下で、行われてもよい。典型的には、HOBT(1−ヒドロキシ−ベンゾトリアゾール)、HOAT(1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール)及びこれらに類する共触媒を反応混合物中に有してもよい。この反応は、約2〜12時間の時間の間、室温で典型的に進行する。
【0105】
式(XIV)の化合物は、上記と同様の実験条件を用いて、下記の式(XV)の化合物を、式(VII)の化合物と反応して、調製されてもよい。
【0106】
【化32】

【0107】
tert−ブチルエステルの脱保護は、公知の標準法に従って、実行される。
【0108】
式(XV)の化合物は、THFなどの非プロトン性溶媒中に水素化ナトリウムなどの無機塩基を有するものの存在下で、下記の式(XVI)の化合物を、tert−ブチルジエチルフォスフォノアセテートと反応して、調製されてもよい。
【0109】
【化33】

【0110】
この反応は、約1〜12時間の間、0℃〜室温で進行する。ジメチルアセタールを対応するアルデヒドに変換する適当な方法は、本技術分野公知の方法であってもよい。
【0111】
式(XVI)の化合物は、式(XI)の化合物の合成で述べたのと同様の方法を用いて、調製されてもよい。
【0112】
式(Ib)の好適な化合物は、以下の合成経路に従って、得てもよい。
【0113】
【化34】

【0114】
ステップaは、リン酸カリウム及び酢酸パラジウムの存在下で、行ってもよい。ステップbは、アルコール性の塩基環境下で、適当なアセトフェノンをn−ブチル−3−フォルミルシンナメートに添加して、行ってもよい。ステップcは、本技術分野公知の標準的なペプチドカップリング条件下で、標準的な保護されたヒドロキシアミンを有するスキーム2のカルボン酸誘導体を処理して、行ってもよい。式(Ic)の化合物については、以下の合成経路を用いることが可能である。
【0115】
【化35】

【0116】
ステップa及びcは、アルコール性塩基環境下で、行ってもよい。ステップbは、リン酸カリウム及び酢酸パラジウムの存在下で、行ってもよい。ステップdは、エチルクロロフォルミエート及びトリエチルアミンと反応した後、O−(2−メトキシ−2−プロピル)ヒドロキシアミンと反応し、イオン交換樹脂で溶出することで、行ってもよい。
【0117】
式(Id)の化合物は、類似の反応で得てもよい。
【0118】
Ar−とシンナモイルアミド基との間にRが介在することにより、式(I)の化合物は、電子共役の領域が延長するという特徴を有する:特別の役割は、本質的な芳香性故、ArからNHOR基へと伸びる分子の長軸全体に沿った理想的な共鳴の程度を可能とする式(I)に存在する中心の芳香性又はヘテロ芳香性によって、演じられている。
【0119】
式(I)の全ての化合物は、興味ある医薬的特性に寄与する。特に、この化合物は、1μM又はこれ以下のオーダーのIC50を有する高いヒストンデアセチラーゼの阻害活性を示す。種々の細胞株について、この活性は、広範なスペクトルであり、経時的に安定である:この両方の特徴は、治療に適用する観点から、理想的である。式(I)の化合物は、腫瘍細胞のパネルにおいてアポトーシスを惹起し且つ細胞の増殖を阻害する点で、強力な活性を示し、さらに、抗腫瘍の効果を支持する。
【0120】
本発明は、斯かる式(I)の化合物の治療に使用することを含み、特に、ヒストンデアセチラーゼの脱制御に関連する疾病の処置に使用することを含む。
【0121】
本発明のさらなる目的は、ヒストンデアセチラーゼ活性の脱制御に関連した疾病の処置及び予防のための医薬組成物であって、医薬的に許容し得る賦形剤及び希釈剤と組み合わせた、式(I)の1つ以上の活性本体を有することを特徴とする。
【0122】
本発明の化合物は、公知の抗腫瘍薬物と相乗的な作用を有する:従って、上記の医薬組成物は、公知の抗腫瘍剤を更に有してもよく、及び/又は抗腫瘍剤と共投与するのに有用な種々のさらなる薬物(例えば、免疫賦括剤、細胞分化のプロモーターなど)を有してもよい。
【0123】
本発明の化合物は、例えば、経口、静脈、皮下、経粘膜(口腔、舌下、経尿道及び座薬を含む)、局所、経皮、吸入、及びその他の種々の投与経路などの従来の方法で投与されてもよい。
【0124】
式(I)の化合物は、公知の方法に従って、医薬的に処方されてもよい。この医薬組成物は、処置の機能で選択されてもよい。この組成物は、成分を適当な混合方法で調製され、経口や非経口の投与に適当に適合される;この組成物は、錠剤、カプセル、経口製剤、粉末、顆粒、トローチ、再生可能な粉末、液体で注入可能な溶液、懸濁液又は座薬として処方されてもよい。
【0125】
経口投与用の錠剤及びカプセルは、通常、単回投与の形態とされ、結合材、フィラー、希釈剤、錠剤化剤、潤滑剤、界面活性剤、崩壊剤、色素、香料及び湿潤剤などの常套的な賦形剤を有してもよい。錠剤は、公知の方法に従って、コーティングされてもよい。適当なフィラーとしては、セルロース、マンニトール、ラクトース及び同様の剤が挙げられる。適当な崩壊剤としては、スターチ、ポリビニルピロリドン及びスターチグリコール酸ナトリウムなどのスターチ誘導体が挙げられる。適当な潤滑剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウムが挙げられる。適当な湿潤剤としては、ラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0126】
従来の混合、充填及び圧縮の方法により、固形の経口用組成物を調製してもよい。高い含量のフィラーを含有する組成物において活性剤を分散するため、混合を繰り返してもよい。これらの方法は、従来のものである。
【0127】
水性又は油性の懸濁液、溶液、エマルジョン、シロップ又はエリキシールなどの液体の経口用製剤を処方してもよく、或いは使用前に水又は適当なビヒクルを添加して再構成される凍結乾燥品として、調製されてもよい。この液体の製剤は、従来の添加物を有してもよく、添加剤としては、例えば、ソルビトール、シロップ、メチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムゲル、又は水素化された食用脂などの懸濁化剤、レシチン、ソルビタンモノオレイン酸、アカシアなどの乳化剤、アーモンド油、分画されたココナッツ油、グリセリンエステル、プロピレングリコール、エチレンアルコールなどの油状エステルなどの非水性ビヒクル、メチル又はプロピルp−ヒドロキシベンゾエート、ソルビン酸などの保存剤や、所望であれば、従来の香料や色素が挙げられる。
【0128】
経口用の処方としては、腸溶コーティングした錠剤や顆粒などの、従来の持続的に放出する形態を含む。
【0129】
非経口投与について、本発明の化合物及び滅菌されたビヒクルを含有する液状の投与単位を調製することも可能である。ビヒクル及び濃度に応じて、本発明の化合物は、懸濁又は溶解されてもよい。非経口用溶液は、ビヒクルにこの化合物を溶解し、濾過により滅菌し、適当なバイアルに充填し、密封することで、通常調製される。有利なことに、局所麻酔薬、保存料及び緩衝剤などのビヒクルに適当な補助剤に溶解することも可能である。安定性を向上させるため、本発明の組成物は、バイアルに充填し吸引下で水分を除去した後、凍結されてもよい。非経口用懸濁液は、上記と実質的に同様の方法で調製され、異なる点としては、本発明の化合物は、ビヒクルに溶解するよりも懸濁化され得る点であり、滅菌されたビヒクルに懸濁される前にエチレンオキサイドで処理して、滅菌されてもよい。有利なことに、本発明の化合物を均一に分散するのを容易にすることを目的として、本発明の組成物に界面活性剤又は湿潤剤を含有させることも可能である。
【0130】
本発明の化合物は、局所に投与されてもよい。局所用の処方は、例えば、軟膏、クリーム、ゲル、ローション、溶液、ペースト又はこれに類するものを有してもよく、及び/又はリポソーム、ミセル及び/又はマイクロスフェアを含むように調製されてもよい。医薬処方の技術で公知な軟膏は、半固形の製剤であって、ペトロラタム(petrolatum)又はその他の石油誘導体を典型的に基礎としたものである。軟膏の例としては、リージナス(leaginous)な軟膏を基礎としたものが含まれ、例えば、植物油、動物から得た脂肪、石油から得た半固形の炭化水素、ヒドロキシ硫酸ステアリン、無水ラノリン及び親水性ペトロラタムなどの乳化可能な軟膏を基礎としたもの、セチルアルコール、グリセリルモノステアレート、ラノリン及びステアリン酸などのエマルジョン系軟膏を基礎としたもの、及び種々の分子量を有するポリエチレングリコールから調製した水溶性の軟膏を基礎としたものが挙げられる(例えば非特許文献56を参照のこと)。当業者に公知のクリームは、粘性のある液体又は半固形のエマルジョンであって、油相、乳化剤及び水相を有する。この油相は、ペトロラタム、及びセチル又はステアリルアルコールなどの脂肪酸アルコールを一般的に有する。水相は、保湿剤を通常有する。クリーム処方における乳化剤は、非イオン性、陰イオン性、陽イオン性、又は両性の界面活性剤から選択される。単相のゲルは、典型的に水性のキャリア液体に実質的に均一に分散された有機系の大分子を有するが、好ましくは、アルコールを有し、任意で油を有する。好適なゲル化剤は、架橋アクリル酸ポリマーである(Carbopolの登録商標で市販で入手し得るカルボキシポリアルキレンなどの「カーボマー」ポリマーなど)。また、ポリエチレンオキサイド、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体、ポリビニルアルコールなどの親水性ポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート及びメチルセルロースなどのセルロースポリマー、トラガカントガム及びキサンタンガムなどのガム、アルギン酸ナトリウム、ゼラチンなども好適である。均一のゲルを調製するために、アルコールやグリセリンなどの分散剤を添加してもよく、粉砕、機械攪拌及び/又は攪拌により、ゲル化剤を分散してもよい。
【0131】
本発明の化合物は、経皮で投与されてもよい。典型的な経皮処方としては、クリーム、油、ローション又はペーストなどの従来の水性及び非水性ベクターを有し、又はメンブレン、又は医療用貼布剤として提供されてもよい。一実施例において、本発明の化合物は、皮膚に接着する感圧性貼布剤に分散される。この処方により、本発明の化合物は、貼布剤から皮膚を介して患者へと分散され得る。真皮を介して持続的に薬物の放出が起こるように、感圧性接着剤として、天然のゴムやシリコンを使用してもよい。
【0132】
慣行であるように、本発明の組成物は、関連する処置に使用するため、印刷された取扱説明書を通常伴う。
【0133】
また、本発明は、ヒストンデアセチラーゼの活性の脱制御に関連した疾病の予防及び/又は処置のための医薬の調製における上記の式(I)の化合物の使用を含む。斯かる疾病の例としては、腫瘍性疾病、三重体増幅により生じるハンチントン病、変性疾患、虚血、酸化ストレス、神経系の炎症反応、てんかん、蛋白の凝集により生じる疾病、HIVの感染、マラリア、リーシュマニア病、原虫、菌類、植物毒素、ウィルス、寄生虫により生じる感染、自己免疫疾患、慢性の宿主攻撃性免疫反応、心臓肥大、心臓疾患、線維性皮膚疾患、筋肉性脊髄又は延髄の萎縮、双極性疾患、精神系疾患、X−染色体症候群、関節症、腎疾患、乾癬、大腸炎、βサラセミア、呼吸器系疾患、ルービンシュタイン−タイビ症候群が挙げられる。
【0134】
本発明にかなった腫瘍の例としては、白血病、骨髄性及びリンパ性リンパ腫急性及び慢性の骨髄異形性症候群、多発性骨髄腫、乳腺腫瘍、肺腫瘍、肋膜メソテリオーマ(pleuric mesoteliomas)、基底部の癌腫(基底細胞腫)を含む皮膚腫瘍、黒色腫、骨肉腫、線維肉腫、ラブドミオザルコーマ(rabdomyosarcomas)、神経芽腫、膠芽腫、脳腫瘍、精巣腫瘍、卵巣腫瘍、子宮内膜癌、前立腺癌、甲状腺癌、直腸結腸腫瘍、胃腫瘍、胃腸線癌、肝臓癌、膵臓癌、腎腫瘍、奇形癌及び胚腫瘍が挙げられる。
【0135】
本発明のさらなる目的は、必要とする患者に式(I)の化合物の医薬的に有用な量を投与することを特徴とする腫瘍の予防及び/又は処置方法である。斯かる使用及び方法は、式(I)の化合物、公知の活性を有するさらなる薬剤、及び上記の薬剤と共同で行う治療における投与に有用なさらなる薬物の投与に対して、共投与、同時投与又は遅延された投与を含んでもよい。
【0136】
式(I)の化合物の投与量は、患者の機能及びその状態、疾患の進行度合い、選択した投与方法、選択した日当たりの投与回数などに応じて、種々改変し得る。参考として、本発明の化合物は、0.001〜1000mg/kg/日の投与間隔で投与されてもよい。
【実施例】
【0137】
本発明について、限定する目的なく以下の例で述べる。
【0138】
実験の部
1.化学
方法
他に記載しない限り、出発物質の全ては、市販品であり、さらなる精製を行うことなく使用した。
【0139】
特に、以下の略語は、下記の例及び明細書全文を通じて、使用する。
【0140】
【表1】

【0141】
塩水と称する全ては、NaClの飽和水溶液を参照する。他に示さない限り、全ての温度は、℃(セ氏)として、示す。
【0142】
H−NMRのスペクトルは、Brucker社製の300MHzで記録した。化学シフトは、百万分の一として示す(ppm、δ単位)。結合定数は、ヘルツ(Hz)である。分裂パターンは、みかけの多重度で参照し、s(シングレット)、d(ダブレット)、t(トリプレット)、q(クアトレット)、quit(クインテット)、m(マルチプレット)として、示す。種々の記号の前のbは、ブロードを意味する。
【0143】
融点は、Buchi530計測器で同定した。赤外スペクトル(KBr)は、Parkin−Elmer社製のSpectrum One装置を用いた。質量スペクトル(MS)は、JEOL社製のJMS−HX100スペクトルメーターで得た。
【0144】
LCMSは、以下の条件で記録した。
【0145】
方法A:
ポンプ 1525、2777 サンプラーマネージャー、PDA 996 Micromass ZQ Single quadrupole(Waters社製)、カラム Sunfire C18(50×2.1mm,3.5μm);
流量:0.25 mL/分
分割比 MS:ウェースト/1:4;
移動相:
A相=水/CHCN 95/5 + 0.1% TFA;
B相=水/CHCN 5/95 + 0.1% TFA
0〜1.0分(A:98%、B:2%)
1.0〜5.0分(A:0%、B:100%)
5.0〜9.0分(A:0%、B:100%),
9.1.0〜12分(A:98%、B:2%)
UV検出 波長254nm又はBPI;
注入量:5μL
【0146】
方法B:
ポンプ 1525、2777 サンプラーマネージャー、PDA 996 Micromass ZQ Single quadrupole(Waters社製)、カラム Luna C18(30×2.1mm,3μm);
流量:0.25mL/分
分割比 MS:ウェースト/1:4;
移動相:
A相=水/CHCN 95/5 + 0.1% TFA;
B相=水/CHCN 5/95 + 0.1% TFA
0〜1.0分(A:98%、B:2%)
1.0〜5.0分(A:0%、B:100%)
5.0〜9.0分(A:0%、B:100%)
9.1.0〜12分(A:98%、B:2%)
UV検出 波長254nm又はBPI;
注入量:5μL
【0147】
方法C:
ポンプ 1525、2777 サンプラーマネージャー、PDA 996 Micromass ZQ Single quadrupole(Waters社製)、カラム XTerra C18(50×2.1mm,2.5μm);
流量:0.25 mL/分
分割比 MS:ウェースト/1:4;
移動相:
A相=水/CHCN 95/5 + 0.1% TFA;
B相=水/CHCN 5/95 + 0.1% TFA
0〜1.0分(A:98%、B:2%)
1.0〜5.0分(A:0%、B:100%)
5.0〜9.0分(A:0%、B:100%)
9.1.0〜12分(A:98%、B:2%);
UV検出 波長254nm又はBPI
注入量:5μL
【0148】
方法D:
ポンプ 1525、2777 サンプラーマネージャー、PDA 996 Micromass ZQ Single quadrupole(Waters社製)、カラム Atlantis dC18(100×2.1mm,3μm);
流量:0.25mL/分
分割比 MS:ウェースト/1:4;
移動相:
A相=水/CHCN 95/5 + 0.1% TFA;
B相=水/CHCN 5/95 + 0.1% TFA
0〜1.0分(A:98%、B:2%)
1.0〜5.0分(A:0%、B:100%)
5.0〜9.0分(A:0%、B:100%)
9.1.0〜12分(A:98%、B:2%);
UV検出 波長254nm又はBPI;
注入量:5μL
【0149】
方法E:
ポンプ 1525、2777 サンプラーマネージャー、PDA 996 Micromass ZQ Single quadrupole(Waters社製)、カラム Disc. HS F5 C18(50×2.1mm,3μm);
流量:0.25mL/分
分割比 MS:ウェースト/1:4;
移動相:
A相=水/CHCN 95/5 + 0.1% TFA;
B相=水/CHCN 5/95 + 0.1% TFA
0〜1.0分(A:98%、B:2%)
1.0〜5.0分(A:0%、B:100%)
5.0〜9.0分(A:0%、B:100%)
9.1.0〜12分(A:98%、B:2%);
UV検出 波長254nm又はBPI;
注入量:5μL
【0150】
方法F:
ポンプ 1525、2777 サンプラーマネージャー、PDA 996 Micromass ZQ Single quadrupole(Waters社製)、カラム SunFire C18(50×2.1mm,3.5μm);
流量:0.25mL/分
分割比 MS:ウェースト/1:4;
移動相:
A相=HCOONH pH=8/MeOH/CHCN 85/10//5;
B相=HCOONH pH=8/MeOH/CHCN 5/10/85
0〜1.0分(A:98%、B:2%)
1.0〜5.0分(A:0%、B:100%)
5.0〜9.0分(A:0%、B:100%)
9.1.0〜12分(A:98%、B:2%);
UV検出 波長254nm又はBPI;
注入量:5μL
【0151】
全ての質量スペクトルは、電気スプレーイオン化法(ESI)で行った。
【0152】
反応の殆どを、0.2mmのMerck社製シリカゲルプレート(60F−254)の薄層クロマトグラフィーを用い、紫外光で可視化した。フラッシュクロマトグラフィーは、シリカゲル60(0.04〜0.063mm、Merck社製)で行った。
【0153】
エチル 4−フォルミルシンナメートの合成
この合成は、非特許文献57に従って、行った。
【0154】
n−ブチル 3−フォルミルシンナメートの合成
10mLのシュレンク管をオーブンで乾燥し、窒素下、KPO(2.37g、11.16ミリモル)及びDMA(2.0mL)を導入した。その後、3−ヨードベンズアルデヒド(1.85g、7.97ミリモル)及びn−ブチルアクリレート(2.28mL、15.94ミリモル)をシリンジで添加した。DMA(0.5mL)中にPd(OAc)(0.18g、0.797ミリモル)を有する溶液をシリンジでさらに添加した。その後、このシュレンク管を窒素下で密封し、前もって140℃に加熱した油浴に載置し、この反応混合物を24時間攪拌した。室温に冷却した後、反応混合物を水(50mL)に注入し、酢酸エチル(3×50mL)で抽出した。この組み合わせた有機抽出物を塩水で洗浄し、乾固(NaSO)し、吸引下で乾燥して濃縮した。得た粗生成物を、シリカゲルを用いたクロマトグラフィーカラムで精製し、n−ヘキサン/酢酸エチル/メタノール=12/3/1で溶出した(収量47%)。
【0155】
H NMR(CDCl)δ:0.91−0.96(t,3H,OCHCHCHCH),1.39−1.42(m,2H,OCHCHCHCH),1.65−1.68(m,2H,OCHCHCHCH),4.17−4.21(m,2H,OCHCHCHCH),6.48−6.53(d,1H,ArCH=CHCO),7.52−7.54(m,1H,ベンゼン H−5),7.53−7.75(m,2H,ArCH=CHCO及びベンゼン H−6),7.84−7.86(m,1H,ベンゼン H−4),7.99(m,1H,ベンゼン H−2),10.01(s,1H,CHO)
【0156】
スキーム3に示すn−ブチル 4−シンナモイルシンナメートは、同様の方法を用いて、調製した。
【0157】
3位及び4位が置換された桂皮酸の合成の一般的方法
例:3−[3−[3−(3−フルオロフェニル)−3−オキソプロペン−1−イル]ベンゼンプロピオン酸の合成
n−ブチル−4−フォルミル桂皮酸(6.0ミリモル、1.40g)、3−フルオロアセトフェノン(6.0ミリモル、0.93g)及び2NのKOH(24.0ミリモル、12.4mL)を有するエタノール(15mL)/水(15mL)の混液を、24時間、室温で攪拌した。その後、この液を水(100mL)に注入し、2NのHClで酸性とした。その後得た沈殿物を、濾過し、再結晶して、純粋な酸性物を得た。収量は、72%であり、融点は、157〜159℃であり、再結晶の溶媒は、アセトニトリルである。
【0158】
H NMR(DMSO−d)δ6.69−6.73(d,1H,CH=CHCOOH),7.48−7.54(m,2H,ベンゼン H),7.61−7.65(m,2H,ベンゼン H及びCOCH=CH),7.74−7.80(m,2H,ベンゼン H及びCOCH=CH),7.88−7.90(m,1H,ベンゼン H),8.02−8.06(m,3H,ベンゼン H及びCH=CHCOOH),8.31(s,1H,ベンゼン H),12.50(bs,1H,OH)
【0159】
スキーム3に示す4−ブロモフェニル−2−フェニルビニルケトンは、同様の方法で調製した。
【0160】
3位及び4位が置換されたN−ヒドロキシシンナミックアミドの合成の一般的方法
例:N−ヒドロキシ−3−[3−[3−(3−フルオロフェニル)−3−オキソプロペン−1−イル]ベンゼンプロペナミドの合成
3−[3−[3−(3−フルオロフェニル)−3−オキソプロペン−1−イル]ベンゼンプロピオン酸(4.2ミリモル、1.2g)を有する乾燥THF(10mL)の冷却溶液(0℃)を、エチルクロロフォルミエート(5.0ミリモル、0.5mL)及びトリエチルアミン(5.4ミリモル、0.8mL)に添加し、この混合物を、10分間攪拌した。この反応混合物を濾過し、濾物を、O−(2−メトキシ−2−プロピル)ヒドロキシルアミン(4.71ミリモル、0.35mL)に添加した(非特許文献58)。この溶液を0℃で15分間攪拌し、その後、減圧下で蒸留し、残渣を、メタノール(10mL)で希釈した。この酸素が保護されたヒドロキサメートの溶液を、Amberlyst(登録商標)15 イオン交換樹脂(0.3g)に添加し、得た混合物を、45℃で1時間攪拌した。その後、反応混合物を濾過し、濾液を、吸引下で濃縮し、粗N−ヒドロキシアミドを得、その後、これを結晶法により精製した。収量は、74%であり、融点は、166〜168℃であり、再結晶の溶媒は、アセトニトリルである。
【0161】
H NMR(DMSO−d)δ6.54−6.58(d,1H,CH=CHCOOH),7.48−7.56(m,3H,ベンゼン H),7.62−7.66(m,2H,ベンゼン H),7.76−7.80(m,1H,COCH=CH),7.87−7.89(m,1H,ベンゼン H),7.96−8.03(m,3H,ベンゼン H、COCH=CH及びCH=CHCOOH),8.15(s,1H,ベンゼン H),9.07(s,1H,NH),10.80(s,1H,OH)
【0162】
上記の一般的方法に従って、複数の化合物を合成し、その構造及び合成データについて、表1に示す。
【0163】
【表2】

【0164】
【表3】

【0165】
【表4】

【0166】
例1:3−[3−フルオロ−4−(3−オキソ−3−フェニル−プロペニル)−フェニル]−N−ヒドロキシ−アクリルアミド
【0167】
【化36】

【0168】
ステップA
4−ブロモ−2−フルオロベンズアルデヒド(2g、9.9ミリモル)を有するDMF(50mL)及びトリエチルアミン(6mL)の溶液を、30分間、窒素を導入して、脱気した。PPh(130mg、0.459ミリモル)、Pd(OAc)(44.3mg、0.20ミリモル)、NaHCO(1.6g、18.6ミリモル)及びtert−ブチルアクリレート(1.27g、9.9ミリモル)を添加し、得た混合物を、加熱して、4時間還流した。さらに、tert−ブチルアクリレート(633mg)及びPd(OAc)(20mg)を添加し、この混合物を、100℃で3時間攪拌し、その後、この液を、水で希釈し、EtOで抽出した。この有機層を、NaSO上で乾固し、減圧下で溶媒を留去し、粗生成物を得、シリカゲルのカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/EtOAc=95:5)で精製した。集めた画分は、2gの3−(3−フルオロ−4−フォルミル−フェニル)アクリル酸tert−ブチルエステルを与えた。収量は、80%であった。
【0169】
ステップB
3−(3−フルオロ−4−フォルミル−フェニル)アクリル酸tert−ブチルエステル(2g、8ミリモル)をDCM(23mL)及びトリフルオロ酢酸(6mL)に溶解した。この混合物を、室温で6時間攪拌し、その後、減圧下で溶媒を留去し、1.62gの3−(3−フルオロ−4−フォルミル−フェニル)アクリル酸を得た。収量は、定量的であった。
【0170】
ステップC
3−(3−フルオロ−4−フォルミル−フェニル)アクリル酸(500mg、2.57ミリモル)をエタノール/水(1:1、10mL)及び1.7MのKOH(3mL)に溶解した。得た溶液に、アセトフェノン(0.3mL、2.57ミリモル)を添加した。この混合物を、室温で一昼夜攪拌し、その後、10%のHClで酸性とし、EtOAcで抽出した。この有機層を、NaSO上で乾固し、減圧下で溶媒を留去した。得た粗生成物を、EtOAcで粉砕し、濾過して、560mgの3−[3−フルオロ−4−(3−オキソ−3−フェニル−プロペニル)−フェニル]アクリル酸を得た。収量は、73%であった。
【0171】
ステップD
3−[3−フルオロ−4−(3−オキソ−3−フェニル−プロペニル)−フェニル]アクリル酸(450mg、1.52ミリモル)をTHF(10mL)及びDMF(1mL)に溶解した。得た溶液に、HOBT(413mg、3.04ミリモル)、EDC(580mg、3.04ミリモル)、TEA(0.423mL、3.04ミリモル)及びNHOTHP(213mg、1.82ミリモル)を添加した。この混合物を、室温で一昼夜攪拌し、水とEtOAcとで分配した。この有機抽出物を、水で洗浄し、その後、NaSO上で乾固し、減圧下で蒸留した。
【0172】
得た粗生成物を、シリカゲルのクロマトグラフィー(石油エーテル/EtOAc=1:1)で精製し、得た油状物をDCMに溶解し、HCl/EtOで1時間処理した。得た沈殿物を、ブフナーロートで濾過し、DCM/MeOHで洗浄し、200mgの3−[3−フルオロ−4−(3−オキソ−3−フェニル−プロペニル)−フェニル]−N−ヒドロキシアクリルアミドを得た。
【0173】
LC−MS法=B RT=6.01;(ES+)で、MH:312.2であった。
【0174】
H−NMR(DMSO−d):10.84(s br,1H);9.07(s br,1H);8.15(m,3H);8.00(d,1H);7.81(d,1H);7.69(ddd,1H);7.63−7.52(m,4H);7.48(d,1H);6.60(d,1H)
【0175】
表2の化合物は、上記の方法(中間体が市販されている場合には、ステップA〜D又はC〜D)に従って調製した。
【0176】
【表5】

【0177】
【表6】

【0178】
【表7】

【0179】
【表8】

【0180】
例49:3−{4−[3−(3,4−ジフルオロ−フェニル)−3−オキソ−プロペニル]−フェニル}−N−ヒドロキシ−アクリルアミド
【0181】
【化37】

【0182】
ステップA
4−ブロモベンズアルデヒド(2g、10.8ミリモル)を有するDMF(50mL)及びトリエチルアミン(3.4mL、27ミリモル)を有する溶液を、30分間、窒素を導入して、脱気した。PPh(141mg、0.54ミリモル)、Pd(OAc)(48.4mg、0.21ミリモル)、NaHCO(1.84g、21.6ミリモル)及びtert−ブチルアクリレート(1.58mL、10.8ミリモル)を添加し、得た混合物を、加熱して、3時間還流した。さらに、Pd(OAc)(24mg)を添加し、この混合物を、100℃で1時間攪拌した。この液を、水で希釈し、EtOで抽出した。この有機層を、NaSO上で乾固し、減圧下で溶媒を留去し、粗生成物を得、イソプロピルエーテルで粉砕し、1.6gの3−(4−フォルミル−フェニル)アクリル酸tert−ブチルエステルを得た。収量は、70%であった。
【0183】
ステップB
3−(4−フォルミル−フェニル)アクリル酸tert−ブチルエステル(150mg、0.64ミリモル)及びKOH(72mg、1.28ミリモル)をエタノール/水(1:1、5mL)に溶解し、この液に、3,4−ジフルオロアセトフェノン(83.2μL、0.64ミリモル)を添加した。得た混合物を、室温で一昼夜攪拌し、その後、水で希釈した。得た沈殿物を濾過し、減圧下で乾固し、210mgの3−{4−[3−(3,4−ジフルオロ−フェニル)−3−オキソ−プロペニル]−フェニル}アクリル酸tert−ブチルエステルを得た。収量は、88%であった。
【0184】
ステップC
3−{4−[3−(3,4−ジフルオロ−フェニル)−3−オキソ−プロペニル]−フェニル}アクリル酸tert−ブチルエステル(210mg、0.56ミリモル)をDCM(5mL)に溶解し、トリフルオロ酢酸を添加した(2mL)。この反応を、室温で12時間攪拌しながら行った。減圧下で溶媒を留去し、200mgの3−{4−[3−(3,4−ジフルオロ−フェニル)−3−オキソ−プロペニル]−フェニル}アクリル酸を得た。収量は、定量的であった。
【0185】
ステップD
3−{4−[3−(3,4−ジフルオロ−フェニル)−3−オキソ−プロペニル]−フェニル}アクリル酸(100mg、0.32ミリモル)をDCM(10mL)に溶解した。得た液に、HOBT(72mg、0.44ミリモル)、EDC(91mg、0.44ミリモル)、TEA(129μL、0.96ミリモル)及びNHOTHP(55mg、0.32ミリモル)を添加した。この混合物を、室温で一昼夜攪拌し、水とEtOAcとで分配した。有機抽出物を、水で洗浄し、その後、NaSO上で乾固し、減圧下で蒸留した。
【0186】
得た粗生成物を、シリカゲルのクロマトグラフィー(石油エーテル/EtOAc=8:2)で精製し、得た油状物をDCMに溶解し、HCl/EtOで1時間処理した。得た沈殿物を、ブフナーロートで濾過し、減圧下で蒸留して、40mgの3−{4−[3−(3,4−ジフルオロ−フェニル)−3−オキソ−プロペニル]−フェニル}−N−ヒドロキシアクリルアミドを得た。収量は、40%であった。
【0187】
LC−MS法=B RT=6.29;(ES+)で、MH:330.1であった。
【0188】
H−NMR(DMSO−d)δ:10.72(s br,1H);9.16(s br,1H);8.25(ddd,1H);8.08(m,1H);7.98(d,1H);7.95(d,2H);7.77(d,1H);7.70−7.60(m,3H);7.49(d,1H);6.57(d,1H)
【0189】
表3に記載の化合物を、上記の方法に従って、調製した。
【0190】
【表9】

【0191】
例60:N−ヒドロキシ−3−[2−メトキシ−4−(3−オキソ−3−フェニル−プロペニル)−フェニル]−アクリルアミド
【0192】
【化38】

【0193】
ステップA
4−ブロモ−2−メトキシベンズアルデヒド(1g、4.67ミリモル)をMeOH(20mL)及びトリエチルオルト蟻酸塩(562μL、5.139ミリモル)に溶解し、得た溶液にp−トルエン硫酸一水和物(89mg、0.467ミリモル)を添加した。この混合物を、室温で一昼夜攪拌し、その後、減圧下で溶媒を留去した。残渣をEtOにとり、5%のNaCO及び水で洗浄した。その有機相を、NaSO上で乾固し、蒸留して、無色の油状物として、1.22gの4−ブロモ−1−ジメトキシメチル−2−メトキシ−ベンゼンを得た。収量は、99%であった。
【0194】
ステップB
4−ブロモ−1−ジメトキシメチル−2−メトキシ−ベンゼン(1.22g、4.67ミリモル)を乾燥THF(16mL)に溶解し、得た液を窒素環境下で、−78℃に冷却した。n−BuLiを有するヘキサン(2.24mLの2.5Mの溶液)を滴下し、この混合物を、20分間、−78℃で攪拌し、その後、DMF(467μL、6.07ミリモル)で処理し、室温で、0.5時間攪拌した。
【0195】
この液を、EtOと水とで分配し、その有機抽出物を水及び塩水で洗浄し、その後、NaSO上で乾固し、減圧下で蒸留した。シリカゲルを用いたフラッシュカラムクロマトグラフィー(EtOAc/石油エーテル=1:6)により、716mgの4−ジメトキシメチル−3−メトキシ−ベンズアルデヒドを分離した。収量は、72%であった。
【0196】
ステップC
4−ジメトキシメチル−3−メトキシ−ベンズアルデヒド(716mg、3.41ミリモル)をEtOH/HO(1:1、20mL)に溶解し、得た溶液に、アセトフェノン(409mg、3.41ミリモル)及び1.7MのKOH(3mL)を添加した。
【0197】
この混合物を、室温で5時間攪拌し、EtOAcで希釈し、水で2回洗浄した。その有機相をNaSO上で乾固し、吸引下で蒸留した。得た油状物を、THF(10mL)に溶解し、1NのHCl(10mL)で処理した。この液を室温で0.5時間攪拌し、その後、EtOAcで希釈し、水で洗浄した。その有機相をNaSO上で乾固し、吸引下、濃縮した。得た固形物を、EtOAcで粉砕し、ブフナーロートで濾過し、黄色の粉末として、550mgの2−メトキシ−4−(3−オキソ−3−フェニル−プロペニル)−ベンズアルデヒドを得た。収量は、61%であった。
【0198】
ステップD
2−メトキシ−4−(3−オキソ−3−フェニル−プロペニル)−ベンズアルデヒド(550mg、2.07ミリモル)をTHF(5mL)に溶解し、得た溶液を、THF(5mL)にtert−ブチルジエチルフォスフォノ酢酸(603mg、2.27ミリモル)及びNaH(107mg、2.69ミリモル、60%の油状懸濁液)を有する混合物に攪拌しながら添加した。15分後、この反応を、水を添加して停止し、水とEtOAcとで分配した。この有機抽出物を、NaSO上で乾固し、吸引下で蒸留し、粗生成物を得、これをシリカゲルクロマトグラフィー(EtOAc/石油エーテル=1:6)で精製した。画分を収集し、黄色の油状物として、635mgの3−[2−メトキシ−4−(3−オキソ−フェニル−プロペニル)−フェニル]−アクリル酸tert−ブチルエステルを得た。収量は、84%であった。
【0199】
ステップE
3−[2−メトキシ−4−(3−オキソ−フェニル−プロペニル)−フェニル]−アクリル酸tert−ブチルエステル(635mg、1.74ミリモル)をDCM(12mL)に溶解し、得た液に、TFA(3mL)を添加した。室温で2時間攪拌した後、吸引下で溶媒を留去し、黄色の粉末として、541mgの3−[2−メトキシ−4−(3−オキソ−3−フェニル−プロペニル)−フェニル]−アクリル酸を得た。収量は、99%であった。
【0200】
ステップF
3−[2−メトキシ−4−(3−オキソ−3−フェニル−プロペニル)−フェニル]−アクリル酸(200mg、0.65ミリモル)をTHF(6mL)に溶解し、得た液に、HOBT(196mg、1.30ミリモル)、EDC(248mg、1.30ミリモル)、TEA(182μL、1.30ミリモル)及びNHOTHP(91mg、0.78ミリモル)を添加した。この混合物を室温で一昼夜攪拌し、水とEtOAcとで分配した。その有機抽出物を、水で3回洗浄し、NaSO上で乾固し、吸引下で蒸留した。得た粗生成物を、シリカゲルクロマトグラフィー(EtOAc/石油エーテル=1:1)で精製し、得た固形物を、DCMで希釈し、HCl/EtOで15分間処理した。得た沈殿物を、ブフナーロートで濾過し、118mgのN−ヒドロキシ−3−[2−メトキシ−4−(3−オキソ−3−フェニル−プロペニル)−フェニル]−アクリルアミドを得た。収量は、56%であった。
【0201】
LC−MS法=A RT=7.42;(ES+)で、MH:324.1であった。
【0202】
H−NMR(DMSO−d)δ:8.16(d,2H);7.98(d,1H);7.74(d,1H);7.68(m,2H);7.63−7.54(m,4H);7.49(d,1H);7.60(d,1H);3.97(s,3H)
【0203】
表4で示す化合物は、上記の方法に従って調製した。
【0204】
【表10】

【0205】
例63:N−ヒドロキシ−3−[4−(3−オキソ−3−ピリジン−3−イル−プロペニル)−フェニル]−アクリルアミド
【0206】
【化39】

【0207】
ステップA
4−ブロモベンズアルデヒド(1g、5.40ミリモル)をMeOH(26mL)及び2MのNaOH(5.4mL)に溶解した。得た液を、0℃に冷却し、3−アセチル−ピリジン(592μL、5.40ミリモル)を滴下して添加した。得た混合物を、0℃で1時間攪拌し、得た固形物を濾過し、MeOHで洗浄して、白色の粉末として、832mgの3−(4−ブロモ−フェニル)−1−ピリジン−3−イル−プロペノンを得た。収量は、53%であった。
【0208】
ステップB
3−(4−ブロモ−フェニル)−1−ピリジン−3−イル−プロペノン(823mg、2.87ミリモル)をDMF(18mL)及びTEA(1.9mL)に溶解し、得た液を、窒素を導入しながら、20分間、脱気した。
【0209】
この混合物に、NaHCO(481mg、5.73ミリモル)、PPh(37.5mg、0.14ミリモル)、Pd(OAc)(13mg、0.06ミリモル)及びtert−ブチルアクリレート(420μL、2.87ミリモル)を添加し、100℃に加熱して、5時間反応を行った。得た茶色の液を、水とEtOとで分配し、その有機抽出物を、水で洗浄し、NaSO上で乾固し、吸引下で蒸留して、粗生成物を得、これを、シリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル/EtOAc=1:1)で精製した。画分を収集し、680mgの3−[4−(3−オキソ−3−ピリジン−3−イル−プロペニル)−フェニル]−アクリル酸tert−ブチルエステルを得た。収量は、70%であった。
【0210】
ステップC
3−[4−(3−オキソ−3−ピリジン−3−イル−プロペニル)−フェニル]−アクリル酸tert−ブチルエステル(680mg、2.03ミリモル)をDCM(15mL)及びTFA(5mL)に溶解した。得た液を、室温で4時間攪拌し、吸引下で、その溶媒を留去し、600mgの3−[4−(3−オキソ−3−ピリジン−3−イル−プロペニル)−フェニル]−アクリル酸のトリフルオロ酢酸塩を得た。収量は、75%であった。
【0211】
ステップD
3−[4−(3−オキソ−3−ピリジン−3−イル−プロペニル)−フェニル]−アクリル酸のトリフルオロ酢酸塩(550mg、1.4ミリモル)をTHF/DMF(1:1、20mL)に溶解し、得た液に、HOBT(536mg、3.94ミリモル)、EDC(752mg、3.94ミリモル)、TEA(822μL、3.94ミリモル)及びNHOTHP(276mg、2.36ミリモル)を添加した。この混合物を室温で一昼夜攪拌し、その後、水とEtOAcとで分配した。その有機抽出物を、水及び塩水で洗浄し、その後、NaSO上で乾固し、吸引下で蒸留した。
【0212】
得た粗生成物を、シリカゲルクロマトグラフィー(EtOAc)で精製し、得た油状物を、DCMに溶解し、HCl/EtOで1時間処理した。その沈殿物を、ブフナーロートで濾過し、熱EtOHで粉砕して、380mgのN−ヒドロキシ−3−[4−(3−オキソ−3−ピリジン−3−イル−プロペニル)−フェニル]−アクリルアミドの塩酸塩を得た、収量は、82%であった。
【0213】
LC−MS法=B RT=4.99;(ES+)で、MH:295.1であった。
【0214】
H−NMR(DMSO−d)δ:9.43(d,1H);8.93(dd,1H);8.69(ddd,1H);8.01(d,1H);7.96(d,2H);7.82(d,1H);7.81(m,1H);7.67(d,2H);7.49(d,1H);6.59(d,1H)
【0215】
表5に示す化合物を、上記の方法に従って調製した。
【0216】
【表11】

【0217】
例68:3−[3−フルオロ−4−(3−オキソ−ピリジン−3−イル−プロペニル)−フェニル]−N−ヒドロキシアクリルアミド
【0218】
【化40】

【0219】
ステップA
4−ブロモ−2−フルオロベンズアルデヒド(988mg、4.86ミリモル)及び3−アセチルピリジン(533μL、4.86ミリモル)をEtOH(10mL)及びTEA(10.8mL)に溶解した。得た液を、加熱して、16時間還流した後、TEA(5mL)をさらに添加した。この混合物を、加熱し、16時間還流した後、吸引下で溶媒を留去し、得た残渣を、水及びEtOAcで採取した。その有機抽出物を、NaSO上で乾固し、蒸留した。得た固形物を、イソプロピルエーテルで粉砕し、ブフナーロートで濾過し、黄色の粉末として、680mgの3−(4−ブロモ−2−フルオロ−フェニル)−1−ピリジン−3−イル−プロペノンを得た。収量は、45%であった。
【0220】
ステップB
3−(4−ブロモ−フェニル)−1−ピリジン−3−イル−プロペン(668mg、21.8ミリモル)をDCM(11mL)及びTEA(1.3mL)に溶解し、得た液を、窒素を導入しながら20分間、脱気した。
【0221】
この混合物に、NaHCO(366mg、4.37ミリモル)、PPh(28.5mg、0.11ミリモル)、Pd(OAc)(10mg、0.044ミリモル)、tert−ブチルアクリレート(352μL、2.40ミリモル)を添加し、100℃に加熱して、5時間反応を行った。得た茶色の液を、水とEtOとで分配し、有機抽出物を、水で洗浄し、NaSO上で乾固し、吸引下で蒸留して、粗生成物を得、これを、シリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル/EtOAc=7:3)で精製した。画分を収集し、550mgの3−[3−フルオロ−4−(3−オキソ−3−ピリジン−3−イル−プロペニル)−フェニル]−アクリル酸tert−ブチルエステルを得た。収量は、71%であった。
【0222】
ステップC
3−[3−フルオロ−4−(3−オキソ−3−ピリジン−3−イル−プロペニル)−フェニル]−アクリル酸tert−ブチルエステル(550mg、1.55ミリモル)をDCM(15mL)及びTFA(5mL)に溶解した。得た液を、室温で4時間攪拌し、その後、吸引下で溶媒を留去した後、636mgの3−[3−フルオロ−4−(3−オキソ−3−ピリジン−3−イル−プロペニル)−フェニル]−アクリル酸のトリフルオロ酢酸塩を得た。収量は、定量的であった。
【0223】
ステップD
3−[3−フルオロ−4−(3−オキソ−3−ピリジン−3−イル−プロペニル)−フェニル]−アクリル酸のトリフルオロ酢酸塩(300mg、0.64ミリモル)をTHF(5mL)及びDMF(2mL)に溶解した。この液に、HOBT(174mg、1.28ミリモル)、EDC(245mg、1.28ミリモル)、TEA(178μL、1.28ミリモル)及びNHOTHP(90mg、0.77ミリモル)を添加した。この混合物を室温で6時間攪拌し、その後、水とEtOAcとで分配した。その有機抽出物を、水、塩水で洗浄し、NaSO上で乾固し、吸引下で蒸留した。
【0224】
得た粗生成物を、EtOAcで粉砕し、ブフナーロートで濾過し、得た固形物を、DCMに溶解し、HCl/EtOで3時間処理した。その沈殿物を濾過して、150mgの3−[3−フルオロ−4−(3−オキソ−3−ピリジン−3−イル−プロペニル)−フェニル]−N−ヒドロキシ−アクリルアミドの塩酸塩を得た。収量は、67%であった。
【0225】
LC−MS法=A RT=5.23;(ES+)で、MH:313.1であった。
【0226】
H−NMR(DMSO−d)δ:9.40(d,1H);8.92(dd,1H);8.63(ddd,1H);8.20(dd,1H);8.05(d,1H);7.87(d,1H);7.77(dd,1H);7.55(m,2H);7.48(d,1H);6.63(d,1H)
【0227】
例69:N−ヒドロキシ−3−[5−(3−オキソ−3−フェニル−プロペニル)−ピリジン−2−イル]−アクリルアミド
【0228】
【化41】

【0229】
ステップA
トリメチルオルトフォルメート(643μL、5.9ミリモル)及びp−トルエン硫酸一水和物(102mg、0.54ミリモル)を、MeOH(40mL)に溶解した6−ブロモ−ピリジン−3−カルバルデヒド(1g、5.37ミリモル)に添加した。この混合物を室温で24時間攪拌し、その後、水とEtOとで分配した。その有機抽出物を、水、5%のNaCOで洗浄し、NaSO上で乾固し、吸引下で蒸留して、茶色の油状物として、1.2gの2−ブロモ−5−ジメトキシメチル−ピリジンを得た。収量は、99%であった。
【0230】
ステップB
2−ブロモ−5−ジメトキシメチル−ピリジン(503mg、2.13ミリモル)を乾燥THF(20mL)に溶解し、得た液を、窒素雰囲気で−70℃に冷却した。ヘキサン(0.94mL)にn−BuLiを有する2.5Mの溶液を滴下で添加し、この混合物を、−70℃で15分間攪拌し、その後、DMF(245μL、3.19ミリモル)で処理した。30分後、室温とし、この混合物を、水とEtOとで分配した。その有機抽出物を、NaSO上で乾固し、吸引下で蒸留した。粗生成物を、クロマトグラフィーカラム(石油エーテル/EtOAc=7:3)で精製し、206mgの5−ジメトキシメチル−ピリジン−2−カルバルデヒドを得た。収量は、44%であった。
【0231】
ステップC
5−ジメトキシメチル−ピリジン−2−カルバルデヒド(355mg、1.97ミリモル)をTHF(10mL)に溶解し、得た液を、THF(5mL)にtert−ブチルジエチルフォスフォノ酢酸(547mg、2.169ミリモル)及びNaH(102mg、2.56ミリモル、60%の油状懸濁液)を有する混合物に攪拌しながら添加した。15分後、水を添加してこの反応を停止して、得たスラリーをEtOで抽出した。その有機相を、NaSO上で乾固し、吸引下で蒸留した。得た粗生成物を、シリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル/EtOAc=95:5)で精製して、491mgの3−(5−ジメトキシメチル−ピリジン−2−イル)−アクリル酸tert−ブチルエステルを得た。収量は、89%であった。
【0232】
ステップD
3−(5−ジメトキシメチル−ピリジン−2−イル)−アクリル酸tert−ブチルエステル(491mg、1.76ミリモル)をTHF(20mL)及び1NのHCl(7mL)に溶解した。
【0233】
得た液を、4時間攪拌した。これに、水(1mL)及び10%のHCl(1mL)を添加した。この混合物を、室温で一昼夜攪拌し、20%のNaOHでpHが10となるように、塩基性とし、EtOAcで抽出した。その有機相を、NaSO上で乾固し、吸引下で蒸留して、固形物として、3−(5−フォルミル−ピリジン−2−イル)−アクリル酸tert−ブチルエステルを得た。収量は、88%であった。
【0234】
ステップE
3−(5−フォルミル−ピリジン−2−イル)−アクリル酸tert−ブチルエステル(364mg、1.56ミリモル)をMeOH(10mL)に溶解し、この液を、0℃に冷却した。これに、アセトフェノン(188mg、1.56ミリモル)及び1.7MのKOH(1.8mL)を添加した。0℃で3時間攪拌して、反応を行った。得た固形物を、ブフナーロートで濾過し、黄色の粉末として、130mgの3−[5−(3−オキソ−3−フェニル−プロペニル)−ピリジン−2−イル]−アクリル酸tert−ブチルエステルを得た。収量は、25%であった。
【0235】
ステップF
3−[5−(3−オキソ−3−フェニル−プロペニル)−ピリジン−2−イル]−アクリル酸tert−ブチルエステル(130mg、0.38ミリモル)をDCM(4mL)及びTFA(1mL)に溶解した。得た液を、室温で4時間攪拌し、その後、吸引下で溶媒を留去した。得た油状物を、EtOで結晶化し、165mgの3−[5−(3−オキソ−3−フェニル−プロペニル)−ピリジン−2−イル]−アクリル酸のトリフルオロ酢酸塩を得た。収量は、定量的であった。
【0236】
ステップG
HOBT(133mg、0.98ミリモル)、EDC(187mg、0.98ミリモル)、TEA(148mg、1.47ミリモル)及びNHOTHP(68.8mg、0.59ミリモル)を、THF/DMF(1:1、10mL)に溶解した3−[5−(3−オキソ−3−フェニル−プロペニル)−ピリジン−2−イル]−アクリル酸のトリフルオロ酢酸塩(193mg、0.49ミリモル)に添加した。この混合物を、室温で6時間攪拌した後、水とEtOとで分配した。その有機抽出物を塩水で洗浄し、NaSO上で乾固し、吸引下で蒸留した。
【0237】
得た粗生成物を、シリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル/EtOAc=4:6)で精製し、得た油状物を、DCMに溶解し、HCl/EtOで1.5時間処理した。その沈殿物を、ブフナーロートで濾過し、DCM及びEtOで洗浄して、55mgのN−ヒドロキシ−3−[5−(3−オキソ−3−フェニル−プロペニル)−ピリジン−2−イル]−アクリルアミドの塩酸塩を得た。収量は、33%であった。
【0238】
LC−MS法=B RT=5.58;(ES+)で、MH:295.2であった。
【0239】
H−NMR(DMSO−d)δ:9.06(d,1H);8.45(dd,1H);8.18(d,2H);8.11(d,1H);7.78(d,1H);7.76−7.66(m,2H);7.59(dd,2H);7.53(d,1H);7.04(d,1H)
【0240】
表6に示す化合物を、上記の方法に従って調製した。
【0241】
【表12】

【0242】
2.生化学及び薬理学
ヌクレオソームのヒストンのアセチル化及び脱アセチル化は、クロマチン構造及びクロマチンの機能の調節、並びに遺伝子発現の制御において、重要な役割を演じる。構造的に異なるクラスの種々の化合物は、HDACの阻害剤として同定されている;これらの化合物は、腫瘍細胞及び正常な組織の両方において、アセチル化されたヒストンタンパク質の蓄積をもたらす。HDAC阻害剤は、分化を活性化し、細胞周期をG1及び/又はG2にアレストし、且つ形質転換した細胞又は癌細胞においてアポトーシスを誘導し得る。
【0243】
実験セット1
1.ヒストンのアセチル化
U937造血細胞株を、ヒストンデアセチラーゼの最も強力な公知の阻害剤であるトリコスタチンAの濃度と比較して適当な間隔の濃度(μM程度の濃度)で複数の化合物を処理した。ヒストンのアセチル化のレベルは、H3及びH4のアセチル化ヒストンを認識する抗体を用いて、細胞蛍光分析で測定した。異なる技術(ウェスタンブロット)及び他の細胞株でも、同様の結果を得た。
【0244】
図1に示すように、検討した化合物は、(4時間処理した後に得たデータと比較して)効力のスペクトル及び阻害の安定性の点で、強力な阻害活性を示し、これは、化合物の安定性、及び/又はヒストンデアセチラーゼの阻害の程度と関連するものである。
【0245】
2.細胞成長/アポトーシス/細胞周期
式(I)の化合物に対するU937細胞の生物学的反応性について、検討した。参照として、トリコスタチンAで24時間処理したところ、既に報告されているように(非特許文献59)、U937細胞においてアポトーシスを強力に誘導(約60%が細胞死)するとともに、G2/Mにおいて成長する細胞の数が増加した。
【0246】
最初に、2つの化合物(MC1610及びMC1645)について検討したところ、図2に示すように、両方の化合物(濃度1μM)は、細胞の成長を完全に阻害し、アポトーシスを誘導するとともに、G2/Mにブロックするのを刺激した。
【0247】
上記の方法に従って、本発明の化合物について、デアセチラーゼ活性の主要な酵素であるHD2、HD1−B及びHD1−Aに対する阻害活性を検討した。特に、HD1−B及びHD1−Aは、それぞれ、哺乳動物のクラスI及びIIのデアセチラーゼのホモログである。得た結果を、表7に示す。
【0248】
【表13】

【0249】
【表14】

【0250】
【表15】

【0251】
表7のデータが示すように、検討した全ての化合物は、ヒストンデアセチラーゼの強力な阻害活性を有する。
【0252】
実験セット2
方法
In Vitroにおける検討
2.1 ヒストンアセチル化アッセイ
ヒストンのアセチル化のアッセイは、培養細胞における相対的なアセチル化のヒストンのレベルを従来通り検出することについて、定式化されている。懸濁した細胞(組織球性リンパ腫及び骨髄性白血病にそれぞれ由来するU937又はK562)に、濃度を増加させたHDAC阻害剤(HDACi)を曝露して、ヒストンのアセチル化を誘導した。3時間後、細胞を固定した(1%のパラホルムアルデヒドを有するPBS)し、透過性を付与した(Triton X−100、0.1%PBS、室温)。洗浄後(PBS−1%BSA)、10%のヤギ血清(30分、4℃)で細胞をプレインキュベーションした。その後、アセチル化されたヒストンに対するモノクローナル抗体(PBS−1%BSA;室温で1時間)でインキュベーションし、その後、マウスFITCをコンジュゲートした抗体で処理した(PBS−1%BSA、室温で1時間)。最終的に洗浄した後、細胞を、FACSで分析した。
【0253】
2.2 HDAC阻害アッセイ
取扱説明書に従って、HDAC fluorescent activity assay kit(Biomol社製)を用いて、各抽出物について、HDAC活性のアッセイを行った。このアッセイは、以下の2つのステップで行った;第一に、5μgのHELA細胞の各抽出物(HDAC活性)を、HDAC阻害剤、及び基質(アセチル化されたリジンの側鎖、116μM)を有する溶液に添加し、その後、この混合物を、室温(25℃)で10分間インキュベートした。第二のステップにおいて、この反応を、現像剤(developer)を添加して、停止した(室温で15分間)。このステップにおいて、蛍光プローブを生じた。
【0254】
この蛍光を、355nmの励起波長、460nmの放射光の検出波長で、Vector 3 fluorimeter(Perkin−Elmer社製)を用いて、分析した。
【0255】
2.3 MTTアッセイ
MTT(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロマイド)アッセイは、生細胞に由来するミトコンドリアのデヒドロゲナーゼが、淡黄色のMTTのテトラゾリウム環を開裂させ、暗青色のフォルマザン結晶を生じさせる活性に基づくものであって、これは、細胞膜を極めて透過しにくく、従って、健常な細胞中に蓄積するものである。界面活性剤を添加することにより、細胞を可溶化すると、この結晶が放出され、溶解される。生存する細胞の数は、生成したフォルマザン結晶のレベルに直接比例する。その後、その色調を簡単な比色計アッセイを用いて、定量化し得る。その結果を、マルチウェル走査型分光光度計(ELISA reader)で読みとることができる。
【0256】
検討する異なる濃度の化合物で、腫瘍細胞株(HT29、MCF−7、PC3、U937)をインキュベートした(24、48及び72時間)。異なる時間に、MTT(5mg/mLを有するPBS)を添加し、37℃で3〜4時間インキュベートした。インキュベーション後、MTT溶液を有する培地を除去し、走査型のマルチウェルの分光光度計(550〜570nm)で読み取る前に、有機溶媒(DMSO/エタノール=1:1)でフォルマザン結晶を可溶化した。生存する細胞の百分率を、(処理したウェルの吸光度/コントロールのウェルの吸光度)×100として、示す。
【0257】
2.4 細胞成長/アポトーシス/細胞周期
細胞の懸濁液又は接着細胞(HT29又はK562)を、増加する濃度のHDACiの化合物で曝露し、その生物学的反応を検討した。細胞周期及びアポトーシスについては、細胞を収集した後、70%のエタノールで30分間固定した。洗浄した後、細胞をプロピジウムヨーダイド(RNase(250μg/mL)に添加したPI;50μg/mL)に懸濁し、室温で3時間インキュベートした。
【0258】
サンプルをフローサイトメトリー(FC)分析用に処理した。FCは、FACScan Cytometer(Beckton Dickinson社製)で行った。図3に示すように、検討した化合物は、細胞成長を完全にアレストし、アポトーシスを誘導し且つ、G0/G1ブロックを刺激し得る。
【0259】
In vivoにおける検討
抗腫瘍活性の検討
2.5 発癌性の検討及びHDACiの投与
6週齢のメスのマウス(129匹)に、最初に25μgのDMBA(200μLのアセトンに溶解したもの)を、毛を剃った背中の皮膚に塗布した。2週間後、3μgのTPA(200μLのアセトンに溶解したもの)で処理し、その後、13週間に渡り、1週間に2度、処理した。TPA処理の後、6週間後に、視認し得る皮膚の腫瘍(乳頭腫)が観察された。視認し得る乳頭腫が発生した時点で、HDACiの投与を開始した。HDACの阻害剤をグリセロール/HO/DMSO(7:2:1)に溶解した。通常の動物、又はDMBA−TPAで処理した動物の両方の群にHDACiを投与し、この1つのグループは、シャム(Sham)(ビヒクルのみを投与)と考えられる。HDACi(又はビヒクル)を、毛を剃った背中の皮膚の部分(2×3cm)に投与した。全ての群について、一週間に2回処理し、以下、6〜7週間にかけて継続した。視認し得る腫瘍の全てを一週間に1度、計数し、6週間後に屠殺(CO吸入)して解剖した。
【0260】
2.6 組織化学及び組織免疫化学的分析
腫瘍のサンプルを10%の緩衝性フォルマリンで固定し、パラフィン包埋し、区分に分けた(4μm)。1つのシリーズを、ヘマトキシリン及びエオシンで染色し、他のシリーズを、アセチル化ヒストンのレベルを検出するように、免疫組織化学的に処理した。要約すると、脱パラフィンし、段階的なアルコールで組織の水和を行い、クエン酸液(pH6)で抗原の脱マスキングを行った後、区分を緩和(3%のHを有するTBS)し、抗アセチル化(TBS1×−BSA2%−NGS2%−Tween0.05%)を用いて室温で2時間インキュベーションを行った。その後、区分を、用事調製の2次抗体(DAKO Envision System社製のHRP抗マウス)を用いて、室温で1時間インキュベーションした後、続いてペルオキシダーゼ基質溶液(1mLのDAB(DAKO buffer)中にクロモーゲンを有するものを1滴)中でインキュベーションした。最終的に、区分を水で洗浄し、載置及び観察用に、脱水した。
【0261】
結果
3.1 ヒストンアセチル化アッセイ及びHDAC阻害アッセイ
パラグラフ2.1及び2.2に示した方法に従って、本発明による化合物について、ヒストンデアセチラーゼの阻害能を検討した。得た結果を表8にまとめる。
【0262】
【表16】

【0263】
IC50の範囲(nM): 100未満=+++
100〜200=++
200〜600=+
アセチル化の増加の範囲: 4倍未満=+
4〜6倍=++
6倍以上=+++
【0264】
表8に示すデータが示すように、検討した化合物は、ヒストンデアセチラーゼに対して強力な阻害活性を有する。
【0265】
3.2 MTTアッセイ
パラグラフ2.3に述べた方法に従って、本発明の化合物について、異なる細胞株に対して、増殖のブロック及び/又は細胞死を誘導する能力を検討した。得た結果を表9にまとめる。
【0266】
【表17】

【0267】
IC50の範囲(μM): 0.5未満=+++
0.5〜5=++
5以上=+
【0268】
表9に示す結果が示すように、本発明の化合物は、種々の腫瘍細胞株において、増殖のブロック及び/又は細胞死を誘導し得る。
【0269】
3.3 In vivoにおける検討
パラグラフ2.5及び2.6に説明した方法に従って、正常なマウス、又はDMBA−TPA処理に曝露したマウスからの真皮について、免疫組織化学的、又はヘマトキシリン及びエオシン染色をそれぞれ行って、分析した。得た結果の例を図4及び図5に示す。その結果、検討した化合物は、通常の動物において、ヒストンのアセチル化を強く誘導し得る一方で、処理した動物において、腫瘍のサイズを低下し得る。さらに、試験した化合物は、図6に示すように、誘導された乳頭腫のさらなる数の増加を完全に阻止し得る。
【図面の簡単な説明】
【0270】
【図1】示した化合物(200nM、1μM)でU937細胞を4及び24時間処理した結果である。
【図2】本発明の化合物で処理したU937細胞における細胞増殖及びアポトーシスの効果である。
【図3】本発明の化合物で処理したK562細胞及びHT29細胞における細胞周期、細胞増殖及びアポトーシスの効果である。
【図4】正常細胞に対する新規のHDACi投与の効果である。
【図5】乳頭腫を誘導発生させた後の真皮に対する新規のHDACi投与の効果である。
【図6】種々の乳頭腫に対する新規のHDACiで処理した効果である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)
【化1】


に示す化合物であって、
は、少なくとも2つの共役した二重結合を有する直鎖又は分岐鎖であり、
は、水素、アルコキシアルキルから選択され、
Arは、任意に置換されたアリール基又はヘテロアリール基であり、
Aは、下記の構造
【化2】


から選択され、
は、水素、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、ヘテロシクリル基、ヘテロシクリルアルキル基、ハロゲン、ハロアルキル基、水酸基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシ基、ハロアルコキシ基、アミノ基、アミノアルキル基、アルキルアミノ基、(チオ)カルボニルアミノ基、(チオ)アミノカルボニル基、スルフォニルアミノ基、アミノスルフォニル基、(チオ)アシル基、(チオ)アシルオキシ基、(チオ)アルコキシカルボニル基、ニトロ基及びニトリル基から選択される;
ことを特徴とする化合物。
【請求項2】
は、以下の構造
【化3】


から選択され、
Yは、O、S、NH、CH、NOH又はNORを示し、
は、1〜4の炭素原子を有するアルキル基であることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Arは、フェニル基、ナフチル基、ピリジル基、ピラニル基、ピロリル基、チエニル基、フラニル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、これらの任意の置換体から選択されることを特徴とする請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
Arは、ハロゲン、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、トリフルオロアルキル基、トリフルオロアルコキシ基、ジアルキルアミノ基、モルフォリル基、ピペラジニル基、メトキシカルボニル基の1つ以上の置換基で置換されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
、及びRを含有する基は、A環上に、互いにパラ位に結合されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
は、水素、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基から選択されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
は、水素であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
以下の構造
【化4】


の少なくとも1つのもの有する化合物であって、
Ar及びRは、上記の通りであり、
Xは、炭素又は窒素原子であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
式(Ia)乃至(Id)において、
Xは、炭素原子であり、
は、水素であり、
Arは、フェニル基、2−クロロフェニル基、3−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、1−ナフチル基、5−ジヒドロベンゾフリル基から選択されることを特徴とする請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
3−[3−フルオロ−4−(3−オキソ−3−フェニル−プロペニル)−フェニル]−N−ヒドロキシ−アクリルアミド;
3−[3−クロロ−4−(3−オキソ−3−フェニル−プロペニル)−フェニル]−N−ヒドロキシ−アクリルアミド;
3−[3−クロロ−4−(3−オキソ−3−o−トリル−プロペニル)−フェニル]−N−ヒドロキシ−アクリルアミド;
3−{3−クロロ−4−[3−(2−メトキシ−フェニル)−3−オキソ−プロペニル]−フェニル}−N−ヒドロキシ−アクリルアミド;
3−{3−クロロ−4−[3−(2−フルオロ−フェニル)−3−オキソ−プロペニル]−フェニル}−N−ヒドロキシ−アクリルアミド;
3−{3−クロロ−4−[3−(2−クロロ−フェニル)−3−オキソ−プロペニル]−フェニル}−N−ヒドロキシ−アクリルアミド;
3−[3−クロロ−4−(3−オキソ−3−m−トリル−プロペニル)−フェニル]−N−ヒドロキシ−アクリルアミド;
3−{3−クロロ−4−[3−(3−メトキシ−フェニル)−3−オキソ−プロペニル]−フェニル}−N−ヒドロキシ−アクリルアミド;
3−{3−クロロ−4−[3−(3−フルオロ−フェニル)−3−オキソ−プロペニル]−フェニル}−N−ヒドロキシ−アクリルアミド;
3−{3−クロロ−4−[3−(3−クロロ−フェニル)−3−オキソ−プロペニル]−フェニル}−N−ヒドロキシ−アクリルアミド;
3−[3−クロロ−4−(3−オキソ−3−p−トリル−プロペニル)−フェニル]−N−ヒドロキシ−アクリルアミド;
3−{3−クロロ−4−[3−(4−メトキシ−フェニル)−3−オキソ−プロペニル]−フェニル}−N−ヒドロキシ−アクリルアミド;
3−{3−クロロ−4−[3−(4−フルオロ−フェニル)−3−オキソ−プロペニル]−フェニル}−N−ヒドロキシ−アクリルアミド;
3−{3−クロロ−4−[3−(4−クロロ−フェニル)−3−オキソ−プロペニル]−フェニル}−N−ヒドロキシ−アクリルアミド;
3−[3−クロロ−4−(3−オキソ−3−チオフェン−2−イル−プロペニル)−フェニル]−N−ヒドロキシ−アクリルアミド;
3−[3−フルオロ−4−(3−オキソ−3−o−トリル−プロペニル)−フェニル]−N−ヒドロキシ−アクリルアミド;
3−{3−フルオロ−4−[3−(2−メトキシ−フェニル)−3−オキソ−プロペニル]−フェニル}−N−ヒドロキシ−アクリルアミド;
3−{3−フルオロ−4−[3−(2−フルオロ−フェニル)−3−オキソ−プロペニル]−フェニル}−N−ヒドロキシ−アクリルアミド;
3−{4−[3−(2−クロロ−フェニル)−3−オキソ−プロペニル]−3−フルオロ−フェニル}−N−ヒドロキシ−アクリルアミド;
3−[3−フルオロ−4−(3−オキソ−3−m−トリル−プロペニル)−フェニル]−N−ヒドロキシ−アクリルアミド;
3−{3−フルオロ−4−[3−(3−メトキシ−フェニル)−3−オキソ−プロペニル]−フェニル}−N−ヒドロキシ−アクリルアミド;
3−{3−フルオロ−4−[3−(3−フルオロ−フェニル)−3−オキソ−プロペニル]−フェニル}−N−ヒドロキシ−アクリルアミド;
3−{4−[3−(3−クロロ−フェニル)−3−オキソ−プロペニル]−3−フルオロ−フェニル}−N−ヒドロキシ−アクリルアミド;
3−[3−フルオロ−4−(3−オキソ−3−p−トリル−プロペニル)−フェニル]−N−ヒドロキシ−アクリルアミド;
3−{3−フルオロ−4−[3−(4−メトキシ−フェニル)−3−オキソ−プロペニル]−フェニル}−N−ヒドロキシ−アクリルアミド;
3−{3−フルオロ−4−[3−(4−フルオロ−フェニル)−3−オキソ−プロペニル]−フェニル}−N−ヒドロキシ−アクリルアミド;
3−{4−[3−(4−クロロ−フェニル)−3−オキソ−プロペニル]−3−フルオロ−フェニル}−N−ヒドロキシ−アクリルアミド;
3−[3−フルオロ−4−(3−オキソ−3−チオフェン−2−イル−プロペニル)−フェニル]−N−ヒドロキシ−アクリルアミド;
3−{3−フルオロ−4−[3−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−3−オキソ−プロペニル]−フェニル}−N−ヒドロキシ−アクリルアミド;
N−ヒドロキシ−3−{4−[3−(2−メトキシ−フェニル)−3−オキソ−プロペニル]−フェニル}−アクリルアミド;
N−ヒドロキシ−3−{4−[3−オキソ−3−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−プロペニル]−フェニル}−アクリルアミド;
N−ヒドロキシ−3−{4−[3−オキソ−3−(2−トリフルオロメトキシ−フェニル)−プロペニル]−フェニル}−アクリルアミド;
3−{4−[3−(2−ブロモ−フェニル)−3−オキソ−プロペニル]−フェニル}−N−ヒドロキシ−アクリルアミド;
N−ヒドロキシ−3−{4−[3−(3−メトキシ−フェニル)−3−オキソ−プロペニル]−フェニル}−アクリルアミド;
3−{4−[3−(3−ブロモ−フェニル)−3−オキソ−プロペニル]−フェニル}−N−ヒドロキシ−アクリルアミド;
N−ヒドロキシ−3−{4−[3−(4−メトキシ−フェニル)−3−オキソ−プロペニル]−フェニル}−アクリルアミド;
N−ヒドロキシ−3−{4−[3−オキソ−3−(4−トリフルオロメチル−フェニル)−プロペニル]−フェニル}−アクリルアミド;
N−ヒドロキシ−3−{4−[3−オキソ−3−(4−トリフルオロメトキシ−フェニル)−プロペニル]−フェニル}−アクリルアミド;
3−{4−[3−(4−ブロモ−フェニル)−3−オキソ−プロペニル]−フェニル}−N−ヒドロキシ−アクリルアミド;
3−{4−[3−(4−ジエチルアミノ−フェニル)−3−オキソ−プロペニル]−フェニル}−N−ヒドロキシ−アクリルアミド;
N−ヒドロキシ−3−{4−[3−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−3−オキソ−プロペニル]−フェニル}−アクリルアミド;
3−[4−(3−フラン−2−イル−3−オキソ−プロペニル)−フェニル]−N−ヒドロキシ−アクリルアミド;
N−ヒドロキシ−3−[4−(3−オキソ−3−チオフェン−2−イル−プロペニル)−フェニル]−アクリルアミド;
N−ヒドロキシ−3−{4−[3−オキソ−3−(1H−ピロール−2−イル)−プロペニル]−フェニル}−アクリルアミド;
3−[4−(3−ベンゾフラン−2−イル−3−オキソ−プロペニル)−フェニル]−N−ヒドロキシ−アクリルアミド;
3−[4−(3−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル−3−オキソ−プロペニル)−フェニル]−N−ヒドロキシ−アクリルアミド;
N−ヒドロキシ−3−[4−(3−オキソ−3−チオフェン−3−イル−プロペニル)−フェニル]−アクリルアミド;
N−ヒドロキシ−3−{4−[3−(3−メトキシ−4−モルフォリン−4−イルメチル−フェニル)−3−オキソ−プロペニル]−フェニル}−アクリルアミド;
3−{4−[3−(3,4−ジフルオロ−フェニル)−3−オキソ−プロペニル]−フェニル}−N−ヒドロキシ−アクリルアミド;
3−{4−[3−(3,5−ジフルオロ−フェニル)−3−オキソ−プロペニル]−フェニル}−N−ヒドロキシ−アクリルアミド;
3−{4−[3−(2,5−ジフルオロ−フェニル)−3−オキソ−プロペニル]−フェニル}−N−ヒドロキシ−アクリルアミド;
3−{4−[3−(2,6−ジフルオロ−フェニル)−3−オキソ−プロペニル]−フェニル}−N−ヒドロキシ−アクリルアミド;
N−ヒドロキシ−3−[3−メトキシ−4−(3−オキソ−3−チオフェン−2−イル−プロペニル)−フェニル]−アクリルアミド;
N−ヒドロキシ−3−[3−メチル−4−(3−オキソ−3−チオフェン−2−イル−プロペニル)−フェニル]−アクリルアミド;
4−{3−[4−(2−ヒドロキシカルバモイル−ビニル)−フェニル]−アクリロイル}−安息香酸メチルエステル;
3−{3−[4−(2−ヒドロキシカルバモイル−ビニル)−フェニル]−アクリロイル}−安息香酸メチルエステル;
3−{4−[3−(5−クロロ−チオフェン−2−イル)−3−オキソ−プロペニル]−フェニル}−N−ヒドロキシ−アクリルアミド;
N−ヒドロキシ−3−{4−[3−(3−ヒドロキシ−フェニル)−3−オキソ−プロペニル]−フェニル}−アクリルアミド;
N−ヒドロキシ−3−(4−{3−[4−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−フェニル]−3−オキソ−プロペニル}−フェニル)−アクリルアミド;
N−ヒドロキシ−3−[2−メトキシ−4−(3−オキソ−3−フェニル−プロペニル)−フェニル]−アクリルアミド;
3−[2−フルオロ−4−(3−オキソ−3−フェニル−プロペニル)−フェニル]−N−ヒドロキシ−アクリルアミド;
3−[2−クロロ−4−(3−オキソ−3−フェニル−プロペニル)−フェニル]−N−ヒドロキシ−アクリルアミド;
N−ヒドロキシ−3−[4−(3−オキソ−3−ピリジン−3−イル−プロペニル)−フェニル]−アクリルアミド;
N−ヒドロキシ−3−[4−(3−オキソ−3−ピリジン−2−イル−プロペニル)−フェニル]−アクリルアミド;
N−ヒドロキシ−3−[4−(3−オキソ−3−ピリジン−4−イル−プロペニル)−フェニル]−アクリルアミド;
N−ヒドロキシ−3−[3−メチル−4−(3−オキソ−3−フェニル−プロペニル)−フェニル]−アクリルアミド;
N−ヒドロキシ−3−[3−メトキシ−4−(3−オキソ−3−フェニル−プロペニル)−フェニル]−アクリルアミド;
3−[3−フルオロ−4−(3−オキソ−3−ピリジン−3−イル−プロペニル)−フェニル]−N−ヒドロキシアクリルアミド;
N−ヒドロキシ−3−[5−(3−オキソ−3−フェニル−プロペニル)−ピリジン−2−イル]−アクリルアミド;
N−ヒドロキシ−3−{5−[3−(2−メトキシ−フェニル)−3−オキソ−プロペニル]−ピリジン−2−イル}−アクリルアミド;
N−ヒドロキシ−3−[5−(3−オキソ−3−チオフェン−2−イル−プロペニル)−ピリジン−2−イル]−アクリルアミド.
3−{5−[3−(3,4−ジフルオロ−フェニル)−3−オキソ−プロペニル]−ピリジン−2−イル}−N−ヒドロキシ−アクリルアミド;
から選択されることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
式(I)の化合物の調製方法であって、下記式(II)の化合物
【化5】


であって、A及びRは、上記の通りであり、
は、適当な脱離基である
ものを、
i)式Ar−Wの化合物であって、
Arは、上記の通りであり、
Wは、式(II)のCHO基と反応して、上記のR、又はその合成中間体を形成し得る置換基であるもの;
ii)式(III)の化合物
【化6】


であって、
Zは、上記のNHOR、又はその前駆体を示すもの;
で処理するステップを有することを特徴とする方法。
【請求項12】
前記化合物Ar−Wは、フェニル環に任意に置換されたアセトフェノンであることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
化合物Ar−Wの付加反応は、アルカリ環境で行うことを特徴とする請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
式(III)の化合物は、アルキルアクリレートであることを特徴とする請求項11乃至13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
式(III)の化合物は、n−ブチルアクリレートであることを特徴とする請求項11乃至14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
式(III)の化合物の付加反応は、リン酸カリウム及び酢酸パラジウムの存在下で行うことを特徴とする請求項11乃至15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
治療に用いるための請求項1乃至9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項18】
1つ以上の請求項1乃至9のいずれか一項に記載の式(I)の活性本体と、医薬的に許容可能な賦形剤及び希釈剤とを有することを特徴とする医薬組成物。
【請求項19】
錠剤、カプセル、経口製剤、粉末、顆粒、トローチ、再生可能粉末、注入可能液体溶液若しくは懸濁液、座剤、水性若しくは油性懸濁液、溶液、エマルジョン、シロップ、エリキシル、又は経皮の形態である、経口又は非経口に有用であることを特徴とする請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
軟膏、クリーム、ゲル、ローション、溶液、ペースト、又はこれらに類するものの形態で局所に使用するのに有用であって、リポソーム、ミセル及び/又はマイクロスフェアを可能に含有することを特徴とする請求項18に記載の組成物。
【請求項21】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の式(I)の化合物の1種類以上の使用であって、ヒストンデアセチラーゼ活性の脱制御に関連した疾病の予防及び/又は処理用の医薬の調製への使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−514682(P2008−514682A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−534030(P2007−534030)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【国際出願番号】PCT/EP2005/054949
【国際公開番号】WO2006/037761
【国際公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(507094810)ダック ソシエタ ア レスポンサビリタ リミタータ (1)
【Fターム(参考)】