説明

活性半導体領域の下全面に存在し、応力を発生する誘電体エレメントを有するトランジスタ

【課題】 活性半導体領域の下全面に存在し、応力を発生する誘電体エレメントを有する半導体を作成すること。
【解決手段】 PFETのソース、ドレイン、及びチャネル領域が配置される活性半導体領域の底面の下全面に存在する独立した応力を発生する誘電体エレメントを含む構造体によって、圧縮応力がPFETのチャネル領域に加えられる。具体的には、応力を発生する誘電体エレメントは、活性半導体領域の底面の全面に接触し、それゆえ底面の面積と同一の広がりを持つ面積を有するコラプスド酸化物の領域を含む。応力を発生する誘電体エレメントの端部にある鳥嘴状酸化物領域が、応力を発生する誘電体エレメントの端部に上向きの力を加えて、PFETのチャネル領域に圧縮応力を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイス及びその加工に関する。より具体的には、本発明は、応力を発生する誘電体エレメントを有する半導体デバイス及びそれの作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トランジスタの性能を高めるために、圧縮応力又は引張応力を幾つかの型のトランジスタに加えることができる。特に、p型電界効果トランジスタ(PFET)の性能は、縦方向の(電流の流れの方向に)圧縮応力をチャネル領域に加えることによって改善される。他方、n型電界効果トランジスタ(NFET)の性能は、縦方向の引張応力をチャネル領域に加えることによって改善される。
【0003】
こうしたトランジスタに圧縮応力又は引張応力を与えるために、種々の構造体が提案されている。幾つかの場合には、トランジスタに有益な応力を加えるために、NFET又はPFETの近傍に1つ又はそれ以上の応力を発生するエレメントを備えることが提案されている。例えば、同一出願人による米国特許公報第2004/0113174号では、NFET又はPFETを収容する活性半導体領域の外端部における絶縁領域中に、応力を発生する誘電体エレメントを埋め込む方法が説明されている。このような場合、応力を発生する誘電体エレメントと絶縁領域とは融合される。効率を上げる一方で、これらの絶縁−応力発生要素は、応力印加機能、絶縁機能、及びそれらを製造するのに必要な加工法に関する潜在的に矛盾する要求を、すべて同時に満たすような設計点に到達することを要求する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、既知の技術によれば、NFET又はPFETに応力を加えるために用いられる応力を発生する誘電体エレメントは、絶縁領域が配置される位置に制約される。こうした制約を克服するために、更に改良された構造体及び加工法が待ち望まれていることは明らかである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の1つの態様によれば、PFETのソース、ドレイン及びチャネル領域が配置される活性半導体領域の底面の下全面に存在する独立した応力を発生する誘電体エレメントを有する構造体によって、圧縮応力がPFETのチャネル領域に加えられる。特に、応力を発生する誘電体エレメントは、活性半導体領域の底面の全面に接触するコラプスド(collapsed)酸化物の領域を含み、それゆえ底面の面積と同一の広がりを持つ面積を有する。応力を発生する誘電体エレメントの端部にある鳥嘴状酸化物領域が、応力を発生する誘電体エレメントの端部において上向きの力を加え、PFETのチャネル領域に圧縮応力を与える。
【0006】
本発明の特定の態様により、活性半導体領域が、半導体基板の主表面に上面を有し、主表面より下の第1の深さに底面を有するチップが提供されることが好ましい。活性半導体領域内に全てが配置されるチャネル領域、ソース領域及びドレイン領域を含むp型電界効果トランジスタ(PFET)が提供される。活性半導体領域の底面の下全面に存在する独立した応力を発生する誘電体エレメントによって、圧縮応力がPFETのチャネル領域に加えられる。特に、応力を発生する誘電体エレメントは、活性半導体領域の底面の全面に接触するコラプスド酸化物の領域を含み、それゆえ底面の面積と同一の広がりを持つ面積を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
ここで説明される本発明の実施形態によれば、活性半導体領域が半導体基板の主表面に上面を有し、主表面より下の第1の深さに底面を有するチップ即ち半導体チップが提供される。活性半導体領域内に全てが配置される、チャネル領域、ソース領域及びドレイン領域を有するp型電界効果トランジスタ(PFET)が提供される。活性半導体領域の底面の下全面に存在する独立した応力を発生する誘電体エレメントによって、圧縮応力がPFETのチャネル領域に加えられる。特に、応力を発生する誘電体エレメントは、活性半導体領域の底面の全面に接触するコラプスド酸化物の領域を含み、それゆえ底面の面積と同一の広がりを持つ面積を有する。
【0008】
図1は、本発明の1つの実施形態によるPFET10を示す断面図である。図2はPFET10の対応する平面図を与え、図1の図は、図2の線1−1に沿って縦方向に描かれている。図3は、図2の線3−3を通るPFET10の横方向の別の断面図を与える。これらの図に示されるように、PFETは、ソース領域12と、ドレイン領域16と、ソース及びドレイン領域の間のチャネル領域14とを有する。拡張部及び/又はハロー領域26、28を、ソース領域及びドレイン領域が、それぞれ、チャネル領域と接する箇所に設けても良い。ゲート導電体36は、ゲート誘電体37で間隔を空けられて、チャネル領域14の上に重なる。ゲート導電体は、典型的には、ドープされた半導体、金属又は導電性の金属化合物を含む。ゲート誘電体は、酸化物及び/又は窒化物、或いは酸化物と窒化物の組み合わせを含むことが好ましい。半導体基板が基本的にシリコンから成る場合、ゲート誘電体は二酸化ケイ素を含むことが好ましい。特定の実施形態においては、ゲート誘電体は、強誘電体、ペロブスカイト型材料、チタン酸ジルコニウム鉛及び類似物を例とする高誘電率材料の任意の1つ又は幾つかを含む。誘電体スペーサ38は、ゲート導電体36の壁39と接触して配置されることが好ましく、こうしたスペーサは、ソース、ドレイン及びチャネル領域の位置を規定するために用いられる注入工程から以後残存している。
【0009】
ソース、ドレイン及びチャネル領域は、半導体基板の活性半導体領域18に配置される。図1を詳しく参照すると、活性半導体領域18は、半導体基板15の主表面20に上面を有する。底面22は、上面から下に活性半導体領域の厚さ24によって規定される深さに配置される。図2において最も良く分かるように、活性半導体領域18は、トレンチ絶縁領域30によって境界付けられる。
【0010】
更に図1を参照すると、トレンチ絶縁領域30は、「浅いトレンチ絶縁(STI)」型であることが好ましく、その用語は通常、堆積に先立って形成されたトレンチに誘電体材料を堆積することによって形成される絶縁領域を指すのに用いられ、そのトレンチは典型的には半導体基板の主表面20から約0.5ミクロンまでの深さを有する。深さに関わらず、「浅いトレンチ絶縁」領域という用語は、基板の活性半導体領域を、STIの遠隔側面に配置された基板の1つ又はそれ以上の他の領域との相互作用から絶縁するのに十分な深さを有するような誘電体構造体を指すこともできる。
【0011】
STI領域30は、好ましくは半導体基板15の少なくとも実質的に垂直な方向27に立ち上がる壁を有する。しかしながら、壁は垂直線に対して角度を持って立ち上がってもよい。活性半導体領域の端部32と34は、PFETの縦方向25において間隔を空けられ、トレンチ絶縁領域の壁の位置によって規定されるが、ここで縦方向とはトランジスタのソース領域とドレイン領域の間の電流の流れの方向である。図1に示されるように、活性半導体領域の端部32、34におけるトレンチ絶縁領域の壁の内側に、誘電体スペーサ35が設けられることが好ましい。スペーサは、シリコン酸化物以外の誘電体材料を含むことが好ましい。より好ましくは、トレンチ絶縁領域30が基本的に二酸化ケイ素から成る場合には、スペーサ35は基本的に窒化ケイ素から成る。
【0012】
図1に更に示されるように、独立した応力を発生する誘電体エレメント40は、活性半導体領域18の底面22の下全面に存在して接触する。つまり、活性半導体領域の底面全体が応力を発生する誘電体エレメント40に接触することが好ましい。結果として、応力を発生する誘電体エレメント40の上面42は、活性半導体領域の底面22の面積と同じ広がりを持つ面積を有する。応力を発生する誘電体エレメント40は、「コラプスド酸化物」の領域を含むが、その領域は活性半導体領域に含まれる半導体の酸化物を含むことが好ましい。「コラプスド」という用語は、半導体材料により当初形成される領域よりも、製造後結果として生じる領域の体積が多少小さい体積を占有することが好ましい故に用いられる。活性半導体領域と同様に、応力を発生する誘電体エレメント40は、STI領域30の壁によって境界付けられ、この壁は、トランジスタの縦方向25に間隔を空けられた応力を発生する誘電体エレメントの端部44と46を規定する。更に、応力を発生する誘電体エレメント40は、その上面42と、基板のバルク半導体領域15に接触する底面45との間の有限の厚さ43を有する。
【0013】
スペーサ35は、半導体基板の主表面20から応力を発生する誘電体エレメントの上面42のわずかだけ下にまで延びることが好ましい。特定の好ましい実施例においては、活性半導体領域の底面から主表面までの厚さ24は、約50ナノメートル(nm)と200ナノメートル(nm)の間であることが好ましく、応力を発生する誘電体エレメント40の厚さ43は、約50ナノメートル(nm)と500ナノメートル(nm)の間であることが好ましく、約50ナノメートル(nm)と200ナノメートル(nm)の間であることがより好ましい。
【0014】
縦方向に沿った断面図(図1)及び横方向に沿った断面図(図3)に更に示されるように、鳥嘴状の酸化物領域50は、STI領域30の壁から横方向に、コラプスド酸化物の応力を発生するエレメント40の下側で内部へ、PFETのチャネル領域14の下にある応力を発生するエレメント40の中央部分に向かって延びる。鳥嘴状酸化物領域は、応力を発生する誘電体エレメント40の端部から内側に向かって延び、端部44、46からより遠くへ延びるほどより薄くなり、典型的には応力を発生する誘電体エレメントの下の位置で終わるまで延びる。応力を発生する誘電体エレメントの一方の端部44から延びる鳥嘴状酸化物領域の先端は、反対側の端部46から延びる鳥嘴状酸化物領域の先端には接触しないことが好ましい。このような形態においては、鳥嘴状酸化物領域は、端部44、46では有限の厚さを有し、先端を越えた活性半導体領域の下には存在しない。しかしながら、先端が接触しないことは所定の必要条件ではない。
【0015】
鳥嘴状酸化物領域50がもたらす1つの効果は、コラプスド酸化物の応力を発生するエレメント40の底面が、その端部44、46において、STI領域に対してより高くなる傾向があり、端部44、46からより離れた点において、底面がより低く沈降する傾向をもつということである。具体的には、底面45が半導体基板のバルク領域15に直接に接触する範囲内で底面がSTI領域に接触したとする場合に比べて、底面は、応力を発生するエレメント40の端部44、46においてSTI領域の壁に沿ったより高い点でSTI領域に接する。従って、鳥嘴状酸化物50の効果は、コラプスド酸化物領域40の底面45を、その端部44、46でのみ支持することである。言い換えると、コラプスド酸化物領域の上面42は、鳥嘴状領域で間接的に支持されて、端部32、34において活性半導体領域18に上向きの力を与える。
【0016】
鳥嘴状酸化物領域によって加えられた上向きの力は、活性半導体領域の端部32、34に存在する。しかしながら、こうした力は、活性半導体領域の中央部分、或いは端部から十分に離れた他の位置には存在しない。結果として、端部32、34における上方に向いた力の正味の効果は、端部32、34において活性半導体領域の上面を上方へ「屈曲させる」即ち反らせることである。この差動的な上方への屈曲が、PFETのチャネル領域14に圧縮応力を加える。
【0017】
ここで図4乃至図7を参照しながら、PFET10(図1乃至図3)の製造方法を説明する。こうした方法は、同一出願人による、Choe他の米国特許公報第2005/0067294号において説明されているのと同様の工程を利用する。Choe他によると、シリコン基板の1つの領域が注入され、シリコン・オン・インシュレータ(SOI)基板の埋め込み酸化物層を形成するように処理される。多孔質のシリコン領域が、p型ドーパント(例えばGa、Al、B及びBF)のイオン注入及びその後の陽極酸化によって形成される。次に、この多孔質シリコン領域は、酸化されて埋め込み酸化物層を形成する。
【0018】
本発明の方法においては、Choe他と同様の工程が用いられるが、SOI基板の埋め込み酸化物層を形成するためにではない。むしろ、本発明の方法では、トレンチ絶縁領域30の壁と壁の間に延びる独立した埋め込み誘電体の応力を発生するエレメント40(図1)が形成され、その中で上記の鳥嘴状酸化物領域50が、トランジスタのチャネル領域に加わる圧縮応力を引き起す。
【0019】
図4に示されるように、この方法においては、例えばフォトレジストのマスキング層200がパターン形成され、基板215の主表面207の下にある埋め込み領域202にp型ドーパントを注入されて、p型ドープ・ポケット領域が形成される。ドーパント濃度は、約1×1019cm−3から約5×1020cm−3或いはそれ以上の範囲にすることができる。しかしながら、いずれの場合でも、得られるホウ素の濃度は極めて高くなくてはならず、即ち、単結晶シリコン中の通常のp型ドーパント濃度よりも1桁又はそれ以上高くなくてはならない。ドーパントは、基本的には、ホウ素(B)又はフッ化ホウ素(BF)から成ることが好ましいが、ガリウム(Ga)及びアルミニウム(Al)を代わりに用いることもできる。半導体基板内にイオンが注入される深さが、応力を発生する誘電体エレメントの厚さ及び主表面207から下の深さを決定する。つまり、注入の深さは、注入が実施されるエネルギーによって選択される。この注入は、フォトリソグラフィでパターン形成されたマスキング層を通して実行されるので、フォトリソグラフィ工程が、注入領域の端部203の位置を規定する。これらの端部203は、注入領域の水平方向に向いた上部表面201から離れる方向に延びる。
【0020】
その後、マスキング層200は剥離され、半導体基板は陽極酸化処理を受けて、p型ドープ・ポケット領域が埋め込み多孔質半導体領域に変わる。ポケット領域は、陽極酸化処理の結果、多孔質半導体領域となる。
【0021】
陽極酸化処理工程は、以下の通りである。好ましくは基本的にシリコンから成り、埋め込みp型注入ポケット領域を有する半導体基板215が、白金電極と共に、フッ化水素(HF)の溶液を含む電解槽中に置かれる又は好ましくは沈められる。半導体基板215は電流電源の正極に接続され、白金電極は、その電流電源の負極に接続され、正極に接続された電流電源と導電性伝達で接続される。電流電源は陽極酸化電流を、半導体基板と陽極酸化処理工程を制御するHF溶液とに供給する。陽極酸化電流の存在下で、HF溶液は、直ちに単結晶半導体(シリコン)を通って、より高濃度のp型ドーパントのポケット領域にまで拡散する。
【0022】
より高ドーパント濃度のポケット領域において、HF溶液は高度にドープされたp型シリコンと反応し、図5に示されるように、多孔質シリコンのポケット領域205を形成する。このステップは、以下に説明するように、付加的なマスキング層208を形成する前に実行される。陽極酸化電流は、この処理の結果生じる多孔質シリコン領域205の多孔度、又は密度に依存して、1mA/cmから100mA/cmまでの範囲とする。シリコン内のホウ素又は他のp型ドーパントの濃度、及び、陽極酸化電流の大きさの両方は、多孔度を制御するのに用いることができる。つまり、これらのパラメータは、各々の埋め込みポケット領域内の残存物であるシリコンの質量をその領域の体積で割って計量される、埋め込みポケット領域の密度を制御する。例えば、低多孔度領域、つまり比較的高密度の領域は、もとのシリコン基板の密度の約44%より大きな密度を有する。他方では、高多孔度領域、つまり比較的低密度の領域は、もとのシリコン基板の密度の約44%より小さな密度を有する。この場合、埋め込み多孔質シリコン領域205は高い多孔度を有することが必要で、それにより、その後の酸化によってその体積が収縮して、上記のようなコラプスド酸化物の応力を発生するエレメント40となる(図1)。
【0023】
陽極酸化の後、次に基板は水素ベーキング処理をされて、シリコン内に残留する注入されたホウ素の大部分が除去される。この段階でシリコン基板から高濃度のホウ素を取り除くことが必要であるが、これは、トランジスタのさまざまにドープされた領域、即ち、チャネル領域、ソース領域、ドレイン領域、ハロー領域及び/又は拡張領域をその後に規定するために用いる工程を、こうした高濃度が妨げることを回避するためである。水素ベーキングは、約摂氏800度(C)から1000度Cまでの範囲の温度で、約30秒から30分までの範囲の時間実施される。
【0024】
陽極酸化及びベーキング後処理の後、元のポケット領域と一般的には少なくとも同一の広がりを持つ位置に、多孔質シリコンの領域が残る。多孔質シリコン領域は、多数のボイドを含む領域である。電子顕微鏡で見ると、多孔質シリコン領域はスポンジ又は発泡材料に似た外観をもち、残存シリコン材料の構造体を連結して互いに支持し合う多数のボイドを有する。
【0025】
次に、図5に示されるように、例えば窒化ケイ素パッドのようなパターン形成されたハード・マスク材料等のもう一つのマスキング層208が、基板の主表面207の上に堆積され、パターン形成されて、開口部209が形成される。マスクをパターン形成する工程は、開口部を通して露出される半導体基板215の範囲が、埋め込み多孔質半導体領域205と重なるように実行される。言い換えれば、ハード・マスク層208の端部220は、基板215の中を下方に延びて、示されるように位置222において埋め込み多孔質半導体領域205と重なる。これらの端部を重ねることは、後に続く処理において、埋め込み多孔質半導体領域が酸化されることを確実にするために重要である。
【0026】
図6に示されるように、次に基板215は、このマスキング層208を用いて、好ましくは反応性イオン・エッチンッグ(RIE)等の異方性の垂直エッチング工程によって、パターン形成される。こうしたエッチング工程の結果、基板の中を下方へ延びる周囲トレンチ(perimetral trenches)210が形成される。このエッチング工程は、トレンチ210が埋め込み多孔質半導体領域205の上面242の少し下の深さに達したときに中断される。その後、トレンチ210の垂直壁に沿って延びる誘電体スペーサ35が形成されるが、これらのスペーサは、窒化ケイ素又は他の窒化物など、二酸化ケイ素(又は他の酸化物)に対して優先的にエッチングすることができる材料を含み、逆もまた同様である。
【0027】
次に、ひとたび誘電体スペーサ35が所定の位置にできると、トレンチ210の底面255が埋め込み多孔質半導体領域205の底面245より下の深さに達するまで、垂直エッチング工程が続けられる。露出された多孔質シリコン領域205は、次に酸化処理を受ける。酸化処理は、一般的には「熱」又は「局所」酸化と呼ばれ、分子状、原子状、又は水蒸気等の化合物状であってもよい酸素源が、トレンチ内の露出された半導体材料に与えられるような酸化処理であることが好ましい。この条件は、所望の量の酸化が起こるまで高温のチャンバ内で維持される。酸化は、埋め込み多孔質半導体領域205の端部244、246から横向きに内側方向248、249に進行する。酸化処理の結果、埋め込み誘電体の応力を発生するエレメント40が形成される(図1及び図3)。更に、この酸化処理中に、埋め込み多孔質半導体領域の底面245と端部244、246との交差部に、鳥嘴状の酸化物領域50が形成される。こうした酸化処理の間、以前に形成された誘電体スペーサ35は、活性半導体領域18の側壁32、34が酸化されるのを防ぐ。
【0028】
再び図1を参照すると、その後、トレンチ210はシリコンの酸化物(例えば二酸化ケイ素)等の誘電体材料で充填され、STI領域30が形成される。誘電体充填物は、高密度プラズマ(HDP)技術、及び/又は、例えば、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)の前駆物質の堆積形成を伴い得る低圧CVD(LPCVD)、プラズマ増速CVD(PECVD)等を含む、他の化学気相堆積(CVD)技術によって堆積される。
【0029】
その後、当業者には既知の工程により、ゲート導電体36、誘電体スペーサ38、及び、随意の拡張領域及び/又はハロー領域26、28を含むソース及びドレイン領域12、16が形成されて、PFET10が完成する(図1乃至図3)。
【0030】
上述の実施形態の1つの変形においては、構造体が有する鳥嘴状酸化物領域は、鳥嘴状酸化物領域50だけではない。図1及び図3を参照すると、こうした変形においては、そこに示される領域50と同様の上部の鳥嘴状酸化物領域(図示せず)が、応力を発生する誘電体エレメントの上面42と活性半導体領域18の底面22との間に配置される。これらの第2の(上部の)鳥嘴状酸化物領域は、第1の鳥嘴状酸化物領域50と協働して、活性半導体領域の端部において活性半導体領域に上向きの力を加える。
【0031】
第2の鳥嘴状酸化物領域は、第1の鳥嘴状酸化物領域50と同様の形状及び広がりを有する。第1の鳥嘴状酸化物領域50と同様に、第2の鳥嘴状酸化物領域は、応力を発生する誘電体エレメント40の端部から内側に延び、端部44、46から遠くへ延びるほど薄くなり、典型的には活性半導体領域の下の位置で終るまで延びる。応力を発生する誘電体エレメントの一方の端部44から延びる鳥嘴状酸化物領域の先端は、反対側の端部46から延びる鳥嘴状酸化物領域の先端に接触しないことが好ましい。このような形態においては、鳥嘴状酸化物領域は、端部44、46では有限の厚さを有し、先端を越えた活性半導体領域の下には存在しない。しかしながら、先端が接触しないことは所定の必要条件ではない。
【0032】
第1及び第2の両方の鳥嘴状酸化物領域を有するPFETを製造するためには、上述の工程が以下の様に変更される。図6を参照すると、トレンチ210がエッチングされる際に、エッチング工程は、トレンチが埋め込み多孔質シリコン領域205の上面242のちょうど上の深さに達したときに停止される。次に、スペーサがトレンチの側壁の内側に形成される。この場合、上述の実施形態とは違って、これらのスペーサは、埋め込み多孔質シリコン領域の端部244、246(図7)と上面242との交差部を覆わない。しかしながら、スペーサは、活性半導体領域の上面に近接した位置では、活性半導体領域の端部を覆う。
【0033】
その後、トレンチの側壁に沿った所定の位置のスペーサを伴って、トレンチが最終的な深さ、即ち、好ましくは埋め込み多孔質シリコン領域の底面245(図7)より下に達するまで、RIE等の工程を用いて垂直方向のエッチングが実行される。酸化が実行されると、ここで説明された上部の鳥嘴状酸化物領域に加えて、下部の鳥嘴状酸化物領域50の両方が形成される。既に述べたように、酸化ステップの間、上部の鳥嘴状酸化物領域の位置の上方で、スペーサは、活性半導体領域が端部32、34(図1)で酸化されるのを防御する。
【0034】
本発明は、その特定の好ましい実施形態に従って説明されてきたが、上記の添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の真の範囲及び精神から逸脱することなく加えることのできる多くの変更及び拡張を、当業者は理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の1つの実施形態によるPFETを示す縦方向の断面図である。
【図2】図1に示されるPFETの対応する平面図である。
【図3】図1に示されるPFETの対応する横方向の断面図である。
【図4】図1乃至図3に示されるPFETを製造する方法における1つの段階を示す断面図である。
【図5】図1乃至図3に示されるPFETを製造する方法における次の段階を示す断面図である。
【図6】図1乃至図3に示されるPFETを製造する方法における更に後の段階を示す断面図である。
【図7】図1乃至図3に示されるPFETを製造する方法における更に後の段階を示す断面図である。
【符号の説明】
【0036】
10:PEFT
12:ソース領域
14:チャネル領域
15、215:半導体基板
16:ドレイン領域
18:活性半導体領域
24、43:厚さ
25:縦方向
27:垂直方向
26、28:ハロー領域
30:トレンチ絶縁領域
32、34、44、46、203、220:端部
35:スペーサ
36:ゲート導電体
37:ゲート誘電体
40:応力を発生するエレメント
50:鳥嘴状酸化物領域
200、208:マスキング層
205:埋め込み多孔質シリコン領域
210:トレンチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の主表面に上面を有し、前記主表面より下の第1の深さに底面を有する活性半導体領域と、
前記活性半導体領域内に全てが配置される、チャネル領域、ソース領域及びドレイン領域を有するp型電界効果トランジスタ(PFET)と、
前記活性半導体領域の前記底面の全面に接触するコラプスド酸化物の領域を含む誘電体の応力を発生するエレメントであって、前記コラプスド酸化物の前記領域の上面が、前記底面の面積と同一の広がりを持つ面積を有し、前記PFETの前記チャネル領域に圧縮応力を加える、誘電体の応力を発生するエレメントと、
を含むチップ。
【請求項2】
前記活性半導体領域を取り囲むトレンチ絶縁領域を更に含む、請求項1に記載のチップ。
【請求項3】
前記トレンチ絶縁領域の壁の内側を覆う第1の誘電体材料を含み、前記活性半導体領域の端部に接触する第1の端部を有し、かつ、前記トレンチ絶縁領域に含まれる第2の誘電体材料に接触する第2の端部を有する、誘電体スペーサを更に含む、請求項2に記載のチップ。
【請求項4】
前記トレンチ絶縁領域が、前記誘電体の応力を発生するエレメントに接触する複数の内壁を有する、請求項2に記載のチップ。
【請求項5】
前記複数の内壁が、前記誘電体の応力を発生するエレメントの複数の端部に横方向に隣接する、請求項4に記載のチップ。
【請求項6】
前記複数の端部において、前記誘電体の応力を発生するエレメントの底面の下に延びる鳥嘴状酸化物領域を更に含む、請求項5に記載のチップ。
【請求項7】
前記鳥嘴状酸化物領域が、前記活性半導体領域の前記複数の端部において、上方に向いた力を前記活性半導体領域に加える、請求項6に記載のチップ。
【請求項8】
前記鳥嘴状酸化物領域は第1の鳥嘴状酸化物領域であり、前記活性半導体領域の底面と前記誘電体の応力を発生するエレメントの上面との間に配置される第2の鳥嘴状酸化物領域を更に含む、請求項6に記載のチップ。
【請求項9】
前記第1及び第2の鳥嘴状酸化物領域が、前記活性半導体領域の前記複数の端部において、上方に向いた力を前記活性半導体領域に加える、請求項8に記載のチップ。
【請求項10】
前記活性半導体領域の前記底面が、第1の端部と、前記チャネル領域の長さ方向の縦方向において前記第1の端部に向き合う第2の端部とを有し、かつ、第3の端部と、前記チャネル領域の幅の方向の横方向において前記第3の端部に向き合う第4の端部とを有し、前記誘電体の応力を発生するエレメントは、前記活性半導体領域の前記第1、第2、第3、及び第4の端部の間に連続的に延びる、請求項1に記載のチップ。
【請求項11】
前記誘電体の応力を発生するエレメントが、半導体の酸化物を含む埋め込み領域を含み、前記半導体は前記活性半導体領域に含まれる半導体と同じ構成を有する、請求項1に記載のチップ。
【請求項12】
前記誘電体の応力を発生するエレメントの前記複数の端部が、フォトリソグラフィによって規定される、請求項1に記載のチップ。
【請求項13】
前記コラプスド酸化物の領域が陽極酸化された多孔質シリコンの領域を含む、請求項1に記載のチップ。
【請求項14】
電界効果トランジスタ(PFET)デバイスを製造する方法であって、
個別多孔質半導体領域を、基板の活性半導体領域の底面より下に、前記底面が前記多孔質半導体領域に全面で接触するように形成するステップと、
コラプスド酸化物の領域を含む誘電体の応力を発生するエレメントを形成するように、前記多孔質半導体領域を酸化するステップと、
前記活性半導体領域内に全てが配置されるチャネル領域、ソース領域及びドレイン領域を有するp型電界効果トランジスタ(PFET)を形成するステップと、
を含み、
前記誘電体の応力を発生するエレメントが、前記PFETの前記チャネル領域に圧縮応力を加える、
方法。
【請求項15】
前記多孔質半導体領域を形成する前記ステップが、p型ドーパントを前記基板のシリコン領域にマスクの開口部を通して注入するステップと、前記多孔質シリコン領域を形成するように、フッ化水素の存在下で前記基板に陽極酸化電流を供給するステップと、水素の存在下で前記基板をベーキングするステップとを含む、請求項14に記載のPFETを製造する方法。
【請求項16】
前記ドーパントを注入する前記ステップは、前記領域が前記基板の主表面において露出されている際に実行され、前記多孔質シリコン領域を形成するためにフッ化水素の存在下で前記基板に前記陽極酸化電流を供給する前記ステップに先立って、前記注入領域の上に重ねて前記半導体のエピタキシャル層を成長させるステップを更に含み、前記活性半導体領域は前記エピタキシャル層中に配置される、請求項14に記載のPFETを製造する方法。
【請求項17】
前記領域に注入する前記ステップが実行される際に、前記半導体基板の前記領域は、前記活性半導体領域の前記底面の下にある、請求項15に記載のPFETを製造する方法。
【請求項18】
前記誘電体の応力を発生するエレメントの境界は、前記マスクの前記開口部によってフォトリソグラフィで規定される、請求項17に記載のPFETを製造する方法。
【請求項19】
前記複数の端部において前記誘電体の応力を発生するエレメントの底面の下に延び、前記活性半導体領域の前記複数の端部において上方に向いた力を前記活性半導体領域に加える、鳥嘴状酸化物領域を形成するステップを更に含む、請求項14に記載のPFETを製造する方法。
【請求項20】
前記鳥嘴状酸化物領域は第1の鳥嘴状酸化物領域であり、前記複数の端部において、前記活性半導体領域の底面と前記誘電体の応力を発生するエレメントの上面との間に、第2の鳥嘴状酸化物領域を形成するステップを更に含み、前記第1及び第2の鳥嘴状酸化物領域が、前記活性半導体領域の前記複数の端部において上方に向いた力を前記活性半導体領域に加える、請求項19に記載のPFETを製造する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−158323(P2007−158323A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−311038(P2006−311038)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(390009531)インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション (4,084)
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MASCHINES CORPORATION
【Fターム(参考)】