物体検出装置
【課題】ステレオマッチング処理を行い、外界の環境の変化と、ワイパや付着物等によるノイズとを的確に判別して物体を検出することができる物体検出装置を提供する。
【解決手段】物体検出装置1は、基準画像TOと比較画像TCとを出力するステレオ撮像手段2と、ステレオマッチング処理を行うステレオマッチング手段7と、基準画像TO上に物体Oを検出する物体検出手段10と、前回フレームでの基準画像TO上の物体Oの距離Z等とに基づいて、今回フレームにおける当該物体Oの予測領域ROest、RCestを基準画像TOと比較画像TCに設定する予測領域設定手段11と、予測領域の輝度値の平均値p1ij_ave、p2ij_aveの差の絶対値が所定の閾値Δpth以上である場合には基準画像TO上の予測領域ROestに検出された物体Oの情報または物体Oが検出されなかったという情報にノイズが含まれている旨の情報を対応付ける判断手段12とを備える。
【解決手段】物体検出装置1は、基準画像TOと比較画像TCとを出力するステレオ撮像手段2と、ステレオマッチング処理を行うステレオマッチング手段7と、基準画像TO上に物体Oを検出する物体検出手段10と、前回フレームでの基準画像TO上の物体Oの距離Z等とに基づいて、今回フレームにおける当該物体Oの予測領域ROest、RCestを基準画像TOと比較画像TCに設定する予測領域設定手段11と、予測領域の輝度値の平均値p1ij_ave、p2ij_aveの差の絶対値が所定の閾値Δpth以上である場合には基準画像TO上の予測領域ROestに検出された物体Oの情報または物体Oが検出されなかったという情報にノイズが含まれている旨の情報を対応付ける判断手段12とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体検出装置に係り、特に、ステレオ撮像手段により撮像された一対の画像に対してステレオマッチング処理を行って物体を検出する物体検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のフロントガラスの内側に取り付けられたステレオ撮像手段を用いて自車両の周囲の物体までの距離を測定する手法としては、一対のカメラで撮像された一対の撮像画像を用いて、一対の撮像画像のうち、基準となる一方の撮像画像(以下、基準画像という。)と他方の撮像画像(以下、比較画像という。)とを比較して、同じ物体が撮像されている各画像中の各位置の差すなわち視差を算出し、その視差に基づいて三角測量の原理によって物体までの距離を算出する手法が一般的である。そして、基準画像と比較画像で同じ物体が撮像されている位置を特定する手法としては、通常、ステレオマッチング処理が行われる(例えば特許文献1等参照)。
【0003】
しかし、このようなステレオマッチング処理においては、例えば一対のカメラのうちいずれか一方のカメラの前方のフロントガラス上をワイパが通過し、他方のカメラで撮像されている物体が当該一方のカメラではワイパに隠されて撮像されていない場合、当該一方のカメラで撮像された画像上でその物体の位置を特定できず、物体までの距離を算出できないという問題があった。
【0004】
そこで、単独のカメラを用いた場合であるが、特許文献2に記載の画像処理方法では、今回のフレームで撮像した自車両前方の画像と前回のフレームで撮像した自車両前方の画像との各画素の濃度について差分を算出し、差分処理の結果得られる差分画像の平均濃度や分散に基づいて今回のフレームでの画像にワイパが撮像されているか否かを判定する技術が提案されている。
【0005】
また、同じく単独のカメラを用いた場合であるが、特許文献3に記載の画像処理装置等では、撮像画像内における物体の移動方向と移動速度とをベクトルで表したオプティカルフローを用いて画像内に撮像された物体の画像上の移動速度を算出して画像内に撮像されているワイパを検出し、画像内にワイパが検出された場合には、画像上のワイパによって自車両前方の画像が欠落した領域について過去に撮像したフレームから補間画像を得て補間する技術が提案されている。
【特許文献1】特開平10−283461号公報
【特許文献2】特開2000−123151号公報
【特許文献3】特開2006−107314号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載された技術をステレオ撮像手段に応用し、一対のカメラのそれぞれのカメラに適用した場合、前回のフレームと今回のフレームとで外界の環境が急に変化する場合、例えば先行車両が街路樹の間を走行して木漏れ日が差し込んだり影になったりするような場合等にも今回のフレームで画像中にワイパが撮像されていると判定されてしまう可能性がある。
【0007】
また、特許文献3に記載された技術をステレオ撮像手段に応用する場合、ワイパの移動速度を算出するためにはワイパの動きを連続して捉えることができる程度に速いシャッタ速度で各フレームを撮像する必要があり、また、数フレームにわたってワイパの動きが捉えられるように一対のカメラをフロントガラスから離れた位置に配置することが必要となる。しかし、実用上、ワイパ検出以外の状況ではそれほど速いシャッタ速度で撮像することは必要ではなく、また、車両のレイアウト上の制約等がありステレオ撮像手段をフロントガラスから離れた位置に配置することは困難であることが多い。さらに、通常、オプティカルフローの計算には時間が掛かり、処理の負担が大きくなる。
【0008】
ステレオ撮像手段で撮像した画像に基づいて自車両の周囲の物体を検出する場合、ステレオ撮像手段はフロントガラスの内側に取り付けざるを得ず、フロントガラスに付着した雨粒や汚れ等の付着物により撮像画像にノイズが生じることは避けられない。また、降雨時等にはカメラの前方のフロントガラスに付着した雨粒や汚れをワイパで除去させざるを得ず、カメラで撮像した画像中にワイパが写り込むことは避けられない。そして、撮像画像にワイパや付着物等のノイズが含まれる場合には、それに基づくステレオマッチング処理で得られた物体までの距離の情報は信頼性が低くなる。
【0009】
一方、前述した先行車両が街路樹の間を走行していて樹木の陰になったり木漏れ日が差し込んだりする場合等のように外界の環境が急に変化する場合には、その外界の環境が適切に撮像されている限り、撮像された画像に基づいて行われたステレオマッチング処理で得られた物体までの距離の情報の信頼性は高い。
【0010】
従って、ステレオマッチング処理を行って物体を検出する物体検出装置においては、外界の環境の変化と、ワイパや付着物等によるノイズとを的確に判別して検出できるものであることが求められる。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ステレオマッチング処理を行い、外界の環境の変化と、ワイパや付着物等によるノイズとを的確に判別して物体を検出することができる物体検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の問題を解決するために、第1の発明は、物体検出装置において
フロントガラスの内側に取り付けられた一対の撮像手段を備え、自車両の周囲の物体を同時に撮像して基準画像と比較画像とを出力するステレオ撮像手段と、
基準画像上に設定した所定の画素数の基準画素ブロックに対して比較画像上でステレオマッチング処理を行い、比較画像上に特定された比較画素ブロックと前記基準画素ブロックとの間の視差を算出して基準画素ブロックごとにそれぞれ視差を算出するステレオマッチング手段と、
前記基準画素ブロックごとの各視差に基づいてそれぞれ自車両との距離を算出し、当該各距離に基づいて基準画像上に物体を検出する物体検出手段と、
前回のフレームにおける基準画像上の物体の前記距離と、前記距離に基づいて算出される当該物体の自車両との相対速度とに基づいて、今回のフレームにおいて当該物体が撮像されると予測される予測領域を基準画像上と比較画像上にそれぞれ設定する予測領域設定手段と、
前記基準画像上の予測領域とそれに対応する前記比較画像上の予測領域との輝度値の平均値の差の絶対値が所定の閾値以上であるか否かを判断し、前記差の絶対値が前記閾値以上である場合には、前記基準画像上の予測領域に検出された物体の情報または物体が検出されなかったという情報にノイズが含まれている旨の情報を対応付ける判断手段と、
を備えることを特徴とする。
【0013】
第2の発明は、第1の発明の物体検出装置において、前記判断手段は、前記基準画像上の予測領域に検出された物体について算出された前記視差または前記距離の情報の信頼度を低下させ、または、前記基準画像上の予測領域に物体が検出されなかった場合には当該予測領域に物体が検出されなかったという情報の信頼度を低下させることを特徴とする。
【0014】
第3の発明は、第1または第2の発明の物体検出装置において、
前記物体検出手段は、検出した物体の前記距離に基づいて当該物体の自車両との相対位置を算出して前記相対位置を時系列的に記憶し、
前記予測領域設定手段は、前回のフレームにおける前記相対位置と当該物体の相対速度とに基づいて今回のフレームにおける当該物体の相対位置を予測して当該物体が撮像されると予測される予測領域を基準画像上に設定し、かつ、予測した当該物体の相対位置に基づいて今回のフレームにおける視差を予測して当該視差と前記基準画像上に設定した予測領域とに基づいて比較画像上に予測領域を設定することを特徴とする。
【0015】
第4の発明は、第3の発明の物体検出装置において、今回のフレームで用いた前記物体の相対速度と、前回のフレームにおける前記物体の相対位置に対する今回のフレームにおける前記物体の相対位置の差分とを、加算割合により重み付け加算する平滑化フィルタ処理により、次回のフレームにおける前記相対速度を算出することを特徴とする。
【0016】
第5の発明は、第4の発明の物体検出装置において、前記ノイズが含まれている旨の情報を対応付けた物体が前記基準画像上の予測領域に検出されている場合には、今回のフレームにおける前記平滑化フィルタ処理において、当該物体については前記差分の加算割合を低下させることを特徴とする。
【0017】
第6の発明は、第4または第5の発明の物体検出装置において、前記ノイズが含まれている旨の情報を対応付けた物体が前記基準画像上の予測領域に検出されなかった場合には、当該物体については今回のフレームで用いた物体の相対速度を次回のフレームにおける前記相対速度とすることを特徴とする。
【0018】
第7の発明は、第1から第5のいずれかの発明の物体検出装置において、前記判断手段は、設定された前記基準画像上の予測領域において物体が検出されなかった場合には、当該物体に関する情報を抹消することを特徴とする。
【0019】
第8の発明は、第1から第7のいずれかの発明の物体検出装置において、前記判断手段は、前記基準画像上の予測領域に検出された物体の情報または物体が検出されなかったという情報に前記ノイズが含まれている旨の情報を対応付けた場合には、前記ステレオマッチング手段におけるステレオマッチング処理の基準をより厳しくなるように変更することを特徴とする。
【0020】
第9の発明は、第1から第8のいずれかの発明の物体検出装置において、前記判断手段は、設定された前記基準画像上の予測領域または前記比較画像上の予測領域のいずれか一方の予測領域において、1フレーム程度の間のみ、前記輝度値の平均値が他方の予測領域の輝度値の平均値よりも前記閾値以上に小さい場合には、当該輝度値の平均値が小さい予測領域が属する前記基準画像または前記比較画像を撮像する前記撮像手段の前方をワイパが横切ったと判断することを特徴とする。
【0021】
第10の発明は、第1から第9のいずれかの発明の物体検出装置において、前記判断手段は、設定された前記基準画像上の予測領域または前記比較画像上の予測領域のいずれか一方の予測領域において、前記輝度値の平均値と他方の予測領域の輝度値の平均値との差の絶対値が前記閾値以上である状態が所定のフレーム数以上継続する場合には、前記基準画像または前記比較画像を撮像する前記撮像手段の前方のフロントガラスに付着物が付着したと判断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
第1の発明によれば、今回のフレームで基準画像上に物体が検出されているか否かにかかわらず、前回のフレームの結果に基づいて今回のフレームにおいて当該物体が撮像されると予測される予測領域を基準画像上と比較画像上にそれぞれ設定し、それらの予測領域における輝度値の各平均値の差の絶対値に基づいて基準画像上の予測領域に検出されている物体の情報または物体が検出されなかったという情報にノイズが含まれているか否かを判断するため、一方の撮像手段の前方をワイパが横切ったり一方の撮像手段の前方のフロントガラスに付着物が付着したりして発生したノイズか、或いは外界の環境が変化したのかを的確に判別することが可能となる。
【0023】
また、このようにノイズと外界の環境の変化とを的確に判別して物体を検出することが可能となるため、外界の環境が変化しただけであって検出された物体の情報や物体が検出されなかったという情報の信頼性が高い場合と、ノイズが生じていて検出された物体の情報や物体が検出されなかったという情報の信頼性が低い場合とを的確に区別して、情報の信頼性が低い場合にはその旨を物体の情報等に的確に対応付けて出力することが可能となる。
【0024】
さらに、それにより、出力された情報に基づいて例えば自車両の自動走行制御等を行う場合、それらの情報の信頼性を認識したうえで情報を自動制御等に用いるように構成することが可能となり、自動制御等を的確に行うことが可能となる。
【0025】
第2の発明によれば、物体の情報に例えば信頼度という情報を予め対応付けておき、通常に検出された物体ではその信頼度を大きな値とし、物体が検出された場合または検出されなかった場合にはそれらの情報の信頼度を小さな値に変更することをもって、それらの情報に前記ノイズが含まれている旨の情報を対応付けるように構成することで、信頼度の情報を認識するだけで基準画像上の予測領域に検出された物体の情報または物体が検出されなかったという情報の信頼性を評価することが可能となるため、前記発明の効果がより効果的に発揮される。
【0026】
第3の発明によれば、検出した物体の距離に基づいて当該物体の自車両との相対位置を算出し、それに基づいて予測領域を基準画像上に設定し、また、基準画像上に設定した予測領域から視差を予測して比較画像上に予測領域を設定することで、基準画像上および比較画像上に容易かつ的確に予測領域を設定することが可能となり、前記各発明の効果がより的確に発揮される。
【0027】
第4の発明によれば、次回のフレームで用いる物体の相対速度を、今回のフレームで用いた相対速度と今回のフレームでの物体の検出結果とを平滑化して算出することで、物体の検出結果にばらつきがある場合でも、ばらつきを抑制し、自車両に対する物体の相対速度をより現実に近い状態で取得することが可能となり、基準画像上および比較画像上の予測領域をより適切に設定することが可能となる。そのため、前記各発明の効果がより的確に発揮される。
【0028】
第5の発明によれば、ノイズが含まれている旨の情報を対応付けた物体が基準画像上の予測領域に検出されている場合に、今回のフレームにおける平滑化フィルタ処理において検出結果の加算割合を低下させることで、算出される相対速度が、信頼性が低い検出結果によって現実の値と大きく異なる値となることを防止することが可能となり、適切な相対速度が算出されるため、前記各発明の効果がより的確に発揮される。
【0029】
第6の発明によれば、サンプリング周期が短い場合には、次回のフレームでの物体の相対速度は今回のフレームの相対速度とさほど変わらない。そのため、ノイズが含まれている旨の情報を対応付けた物体が基準画像上の予測領域に検出されなかった場合には、次回のフレームで用いる物体の相対速度を無理に修正するよりは、今回のフレームで用いた相対速度をそのまま用いる方が現実に即していると言える。従って、上記のように構成することで、より現実的な相対速度に基づいて予測領域を設定することが可能となり、前記各発明の効果が適切に発揮される。
【0030】
第7の発明によれば、前記各発明の効果に加え、基準画像上の予測領域に物体が検出されなかった場合に当該物体に関する情報を抹消することで、信頼性が低い物体の情報を出力することが防止されるため、物体検出装置の信頼性を向上させることが可能となる。
【0031】
第8の発明によれば、前記各発明の効果に加え、物体の情報にノイズが含まれている旨の情報を対応付けた場合に、ステレオマッチング手段におけるステレオマッチング処理の基準をより厳しくなるように変更することで、基準画像上および比較画像上の予測領域における輝度値の各平均値の差の絶対値が大きくなり検出される物体の情報の信頼性が低くなるような場合でも、ステレオマッチング処理で、基準画像の基準画素ブロックと輝度パターンが非常に似かよった比較画像の比較画素ブロックしか特定されなくなるため、検出された物体の距離の情報等の信頼性をより向上させることが可能となる。
【0032】
第9の発明によれば、前記各発明の効果に加え、基準画像上および比較画像上の予測領域における輝度値の各平均値の差の絶対値が大きくなるフレーム数が1フレーム程度だけであれば、輝度値の平均値が低下した方の撮像手段の前方をワイパが横切ったと判断することが可能となり、ワイパが横切ったことを検出することが可能となる。
【0033】
第10の発明によれば、前記各発明の効果に加え、基準画像上および比較画像上の予測領域における輝度値の各平均値の差の絶対値が大きくなるフレーム数が比較的大きいフレーム数である場合には、輝度値の平均値が低下した方の撮像手段の前方のフロントガラスに付着物が付着したと判断することが可能となり、撮像手段の前方のフロントガラスに付着物が付着したことを検出することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明に係る物体検出装置の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0035】
本実施形態に係る物体検出装置1は、図1に示すように、ステレオ撮像手段2と、ステレオマッチング手段7等を備える画像処理手段6と、物体検出手段9等を備える検出手段9等で構成されている。
【0036】
なお、ステレオ撮像手段2から検出手段9の物体検出手段9までの構成は本願出願人により先に提出された特開平5−114099号公報、特開平5−265547号公報、特開平6−266828号公報、特開平10−283461号公報、特開平10−283477号公報、特開2006−72495号公報等に詳述されており、詳細な説明はそれらの公報に委ねる。以下、簡単に説明する。
【0037】
ステレオ撮像手段2は、本実施形態では、互いに同期が取られたCCDやCMOSセンサ等のイメージセンサがそれぞれ内蔵された一対の撮像手段であるメインカメラ2aおよびサブカメラ2bからなるステレオカメラが用いられている。メインカメラ2aとサブカメラ2bは、図示しない車両のフロントガラスの内側、例えばルームミラー近傍に車幅方向すなわち左右方向に所定の間隔をあけて取り付けられている。
【0038】
メインカメラ2aとサブカメラ2bは、道路面から同じ高さに取り付けられており、所定のサンプリング周期で同時に車両の周囲、特に前方の物体を撮像して撮像画像の情報を出力するように構成されている。そして、運転者に近い側に配置されたメインカメラ2aは例えば図2に示される基準画像TOの画像データを出力し、運転者から遠い側に配置されたサブカメラ2bは図示しない比較画像の画像データを出力するようになっている。
【0039】
メインカメラ2aとサブカメラ2bから出力された画像データは、図1に示すように、変換手段3であるA/Dコンバータ3a、3bでアナログ画像からそれぞれ画素ごとに例えば256階調のグレースケール等の所定の輝度階調の輝度を有するデジタル画像にそれぞれ変換され、画像補正部4で、ずれやノイズの除去等の画像補正が行われるようになっている。そして、画像補正等が行われた各画像データは、画像データメモリ5に送信されて格納されるとともに、画像処理手段6にも送信されるようになっている。
【0040】
画像処理手段6は、イメージプロセッサ等からなるステレオマッチング手段7と距離データメモリ8とを備えている。ステレオマッチング手段7は、基準画像TOおよび比較画像に対してステレオマッチング処理を行うようになっている。
【0041】
具体的には、ステレオマッチング手段7は、図3に示すように、基準画像TO上に例えば3×3画素や4×4画素等の所定の画素数の基準画素ブロックPBOを設定し、基準画素ブロックPBOに対応する比較画像TC中のエピポーララインEPL上の基準画素ブロックPBOと同形の各比較画素ブロックPBCについて下記(1)式に従って当該基準画素ブロックPBOとの輝度パターンの差異であるSAD値を算出し、SAD値が最小の比較画素ブロックPBCを特定するようになっている。
【0042】
【数1】
【0043】
なお、p1stは基準画素ブロックPBO中の各画素の輝度値を表し、p2stは比較画素ブロックPBC中の各画素の輝度値を表す。また、上記の総和は、基準画素ブロックPBOや比較画素ブロックPBCが例えば3×3画素の領域として設定される場合には1≦s≦3、1≦t≦3の範囲、4×4画素の領域として設定される場合には1≦s≦4、1≦t≦4の範囲の全画素について計算される。
【0044】
ステレオマッチング手段7は、このようにして基準画像TOの各基準画素ブロックPBOについて、特定した比較画素ブロックPBCの比較画像TC上の位置と当該基準画素ブロックPBOの基準画像TO上の位置から視差dpを算出するようになっている。また、本実施形態では、ステレオマッチング処理の基準としてSAD値に対して予め閾値が設定されており、ステレオマッチング手段7は、基準画像TO上のある基準画素ブロックPBOに対して特定された比較画素ブロックPBCとの間のSAD値が閾値より大きい場合には、マッチングが不成立として視差dpとして0を算出するようになっている。
【0045】
ステレオマッチング手段7は、このようにして各基準画素ブロックPBOについて算出した視差dpの情報を距離データメモリ8に送信して格納させるようになっている。
【0046】
ここで、一対のメインカメラ2aとサブカメラ2bの中央真下の道路面上の点を原点とし、自車両の車幅方向(左右方向)をX軸方向、車高方向(高さ方向)をY軸方向、車長方向(前後方向)をZ軸方向とした場合の実空間上の点(X,Y,Z)と、上記の視差dp、距離画像TZ上の点(i,j)とは、三角測量の原理に基づき下記(2)〜(4)式で表される座標変換により一意に対応づけられる。
X=CD/2+Z×PW×(i−IV) …(2)
Y=CH+Z×PW×(j−JV) …(3)
Z=CD/(PW×(dp−DP)) …(4)
【0047】
上記各式において、CDは一対のカメラの間隔、PWは1画素当たりの視野角、CHは一対のカメラの取り付け高さ、IVおよびJVは自車両正面の無限遠点の距離画像TZ上のi座標およびj座標、DPは消失点視差を表す。なお、視差dpが0の場合は上記(2)〜(4)式の計算は行われない。
【0048】
本実施形態では、上記のように基準画像TOの各基準画素ブロックPBOにそれぞれ視差dpが割り当てられた距離画像TZ(図4参照)を用いて各処理が行われるように構成されているが、距離データメモリ8に格納させる段階で視差dpを前記(4)式に従って距離Zに変換し、基準画像TOの各基準画素ブロックPBOにそれぞれ距離Zを割り当てた距離画像を用いて各処理を行うように構成することも可能である。
【0049】
検出手段9は、図示しないCPUやROM、RAM、入出力インターフェース等がバスに接続されたマイクロコンピュータより構成されている。また、検出手段9には、自車両の車速Vやヨーレートγ、ステアリングホイールの操舵角δ等を測定して出力する車速センサやヨーレートセンサ、操舵角センサ等のセンサ類Qが接続されている。なお、ヨーレートセンサの代わりに自車両の車速等からヨーレートを推定する装置等を用いることも可能である。
【0050】
検出手段9は、図1に示すように、物体検出手段10と、予測領域設定手段11と、判断手段12とを備えており、さらに図示しないメモリを備えており、さらに図示しないメモリを備えている。また、検出手段10の各手段には、センサ類Qから必要なデータが入力されるようになっている。
【0051】
検出手段9においては、図5および図6に示すフローチャートに従って処理が行われるようになっていり、以下、このフローチャートに従って説明する。
【0052】
物体検出手段10は、本実施形態では、前述したように特開平10−283461号公報等に記載された車外監視装置等をベースに構成されている。詳細な説明はそれらの公報に委ねる。以下、その構成と処理内容について説明する。
【0053】
物体検出手段10では、上記のように検出された視差dpを距離Zの情報に変換し、互いに隣接する距離Zの情報がグループ化されて基準画像TO上に各物体が検出されるようになっている(図5のステップS1)。
【0054】
具体的には、物体検出手段10は、距離データメモリ8から前述した距離画像TZを読み出して、図7に示すように距離画像TZを所定の画素幅で垂直方向に延びる短冊状の区分Dnに分割する。そして、短冊状の各区分Dnに属する各基準画素ブロックPBOに割り当てられた視差dpを前記(4)式に従ってそれぞれ距離Zに変換し、距離Zについて図8に示すようにヒストグラムHnを作成し、度数Fnが最大の階級の階級値をその短冊状の区分Dnにおける物体の距離Znとする。これを全区分Dnについて行うようになっている。
【0055】
物体検出手段10は、続いて、各区分Dnごとに得られた距離Znを実空間上にプロットすると、距離Znは図9に示すように並ぶ。そして、物体検出手段10は、図10に示すようにプロットされた各点間の距離や方向性に基づいて互いに隣接する各点をそれぞれグループG1、G2、G3、…にまとめてグループ化するようになっている。
【0056】
本実施形態では、物体検出手段10は、図11に示すように各グループに属する各点をそれぞれ直線近似し、それぞれのグループ内の各点が自車両Aの車幅方向すなわちX軸方向に略平行に並ぶグループには“物体”Oとラベルし、各点が自車両Aの車長方向すなわちZ軸方向に略平行に並ぶグループには“側壁”Sとラベルして分類するようになっている。また、同一の物体の“物体”と“側壁”の交点とみなすことができる箇所にコーナー点としてCをラベルするようになっている。
【0057】
そして、物体検出手段10は、図11の例では、[側壁S1]、[物体O1]、[側壁S2]、[物体O2とコーナー点Cと側壁S3]、[側壁S4]、[物体O3]、[物体O4]、[側壁S5とコーナー点Cと物体O5]、[物体O6]、[側壁S6]をそれぞれ1つの物体として検出するようになっている。なお、上記のように便宜上ラベルとして“物体”と“側壁”とが用いられるが、“側壁”も物体として検出される。
【0058】
また、物体検出手段10は、図12に示すように、検出した各物体の情報に基づいて、基準画像TO上に撮像された各物体を包囲する矩形状の枠線を設定して各物体が撮像されている各領域を設定することで、基準画像TO上に各物体を検出するようになっている。
【0059】
物体検出手段10は、このようにして検出した各物体を表す各近似直線の両端の自車両Aに対する実空間上の相対位置(X1new,Y1new,Z1new)、(X2new,Y2new,Z2new)を算出してメモリに保存するようになっている(図5のステップS2)。また、物体検出手段10は、検出した各物体の枠線の情報や、今回のフレームにおいてセンサ類Qから送信されてきた自車両Aのヨーレートγnewの情報もそれぞれメモリに保存するようになっている。
【0060】
物体検出手段10は、さらに、基準画像TO上に各物体を検出すると、検出した物体ごとに、当該物体の両端の相対位置(X1new,Y1new,Z1new)、(X2new,Y2new,Z2new)を、メモリに記憶されている前回のフレームにおける各物体の両端の相対位置(X1old,Y1old,Z1old)、(X2old,Y2old,Z2old)と照合するようになっている。
【0061】
そして、物体検出手段10は、後述する平滑化フィルタ処理(図6のステップS13)により前回のフレームで算出されている自車両Aに対する各物体の両端のX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向の相対速度(ΔX1old,ΔY1old,ΔZ1old)、(ΔX2old,ΔY2old,ΔZ2old)との整合性の範囲内で当該物体に適合する物体が前回のフレームにおける各物体の中にあれば、今回のフレームで検出した当該物体に検出された前回のフレームにおける物体に付した符号等を対応付けて物体の情報を更新するようになっている。
【0062】
予測領域設定手段11は、前回のフレームにおいて物体検出手段10により算出された各物体を表す各近似直線の両端の相対位置(X1old,Y1old,Z1old)、(X2old,Y2old,Z2old)と、前回のフレームで算出された自車両に対する各物体の両端の相対速度(ΔX1old,ΔY1old,ΔZ1old)、(ΔX2old,ΔY2old,ΔZ2old)と、前回のフレームにおける自車両Aのヨーレートγoldに基づいて、今回のフレームにおいて当該物体が撮像されると予測される予測領域を基準画像TO上と比較画像TC上にそれぞれ設定するようになっている。
【0063】
具体的には、図13に示すように、予測領域設定手段11は、メモリから読み出した前回のフレームにおける物体Oを表す各近似直線の両端の相対位置(X1old,Y1old,Z1old)、(X2old,Y2old,Z2old)を、前回のフレームの当該物体Oの両端のX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向の相対速度(ΔX1old,ΔY1old,ΔZ1old)、(ΔX2old,ΔY2old,ΔZ2old)分だけ移動させた後、前回測定された自車両Aのヨーレートγold分だけ自車両Aを中心に回転させて、今回のフレームにおいて当該物体Oが存在すると予測される自車両Aとの物体の両端の相対位置(X1est,Y1est,Z1est)、(X2est,Y2est,Z2est)を算出する。
【0064】
そして、算出した相対位置(X1est,Y1est,Z1est)、(X2est,Y2est,Z2est)を前記(2)、(3)式にそれぞれ代入して、相対位置の基準画像TO上の座標(i1est,j1est)、(i2est,j2est)を算出する。そして、それらとメモリから読み出した当該物体Oの枠線の情報とに基づいて、図14(A)に示すように、基準画像TO上に当該物体Oが撮像されると予測される予測領域ROestを設定する(図5のステップS3)。
【0065】
また、予測領域設定手段11は、当該物体Oの相対位置のZ座標Z1est、Z2estの平均Zest_aveを算出し、それを前記(4)式に代入して今回のフレームにおける視差dpestを予測し、図14(B)に示すように基準画像TO上に設定した予測領域ROestから視差dpestだけずらした比較画像TC上の位置に予測領域RCestを設定するようになっている(図5のステップS4)。
【0066】
また、予測領域設定手段11は、前回のフレームで検出されなかった物体についても当該物体について後述する追跡(ステップS10、S11)が続行されている間は、後続のフレームにおいても基準画像TO上および比較画像TC上に予測領域ROest、RCestの設定を行うようになっている。
【0067】
予測領域設定手段11は、以上のようにして、ステップS3、S4の処理を、前回のフレームで検出されなかった物体も含めて全物体について行うようになっている。
【0068】
判断手段12は、物体ごとに、上記のようにして予測領域設定手段11により基準画像TO上に設定された予測領域ROestにおける輝度値p1ijの平均値p1ij_aveを算出し、また、それに対応して比較画像TC上に設定された予測領域RCestにおける輝度値p2ijの平均値p2ij_aveを算出して、平均値の差の絶対値|p1ij_ave−p2ij_ave|が所定の閾値以上であるか否かを判断するようになっている(ステップS5)。
【0069】
平均値の差の絶対値|p1ij_ave−p2ij_ave|が所定の閾値Δpth未満であれば(ステップS5;NO)、判断手段12は、続いて、基準画像TO上の予測領域ROestに物体が検出されているか否かを判断し(ステップS6)、物体が検出されていれば(ステップS6;YES)、メモリに記憶されている当該物体を表す近似直線の両端の自車両Aに対する実空間上の相対位置(X1new,Y1new,Z1new)、(X2new,Y2new,Z2new)等の当該物体の情報をそのまま維持する。
【0070】
また、平均値の差の絶対値|p1ij_ave−p2ij_ave|が所定の閾値Δpth未満であって(ステップS5;NO)、基準画像TO上の予測領域ROestに物体が検出されていなければ(ステップS6;NO)、基準画像TO上の予測領域ROestの設定の基となった物体は基準画像TO上に存在しなくなった(いわゆるロストした)として、メモリに記憶されている当該物体の情報を抹消して(ステップS7)、当該物体の追跡を停止するようになっている。
【0071】
一方、平均値の差の絶対値|p1ij_ave−p2ij_ave|が所定の閾値Δpth以上であれば(ステップS5;YES)、判断手段12は、基準画像TO上の予測領域ROestに物体が検出されているか否かを判断する(ステップS8)。そして、物体が検出されていれば(ステップS8;YES)、検出された当該物体の情報は信頼性が低いため、メモリに保存されている今回のフレームで検出した当該物体の距離Znの情報や当該物体を表す近似直線の両端の自車両Aに対する実空間上の相対位置(X1new,Y1new,Z1new)、(X2new,Y2new,Z2new)の情報等にノイズが含まれている旨の情報を対応付けて、メモリに保存し直すようになっている(ステップS9)。
【0072】
また、平均値の差の絶対値|p1ij_ave−p2ij_ave|が所定の閾値Δpth以上であって(ステップS5;YES)、基準画像TO上の予測領域ROestに物体が検出されていない場合には(ステップS8;NO)、当該物体を表す近似直線の両端の自車両Aに対する実空間上の相対位置(X1new,Y1new,Z1new)、(X2new,Y2new,Z2new)は算出されない。そこで、判断手段12は、その代わりに当該物体が存在すると予測される自車両Aとの当該物体の両端の相対位置(X1est,Y1est,Z1est)、(X2est,Y2est,Z2est)の情報を当該物体の両端の相対位置(X1new,Y1new,Z1new)、(X2new,Y2new,Z2new)とし(ステップS10)、予測領域ROestの情報を物体の枠線の情報とするとともに、それらの情報に物体が検出されなかったという情報とノイズが含まれている旨の情報を対応付けてメモリに保存して(ステップS11)、当該物体の追跡を続行するようになっている。
【0073】
なお、上記の基準画像TO上の予測領域ROestに物体が検出されているか否かの判断(ステップS6、S8)については、本実施形態では、当該物体について基準画像TO上に設定された予測領域ROestと物体検出手段10により基準画像TO上に設定された矩形状の枠線で示される領域とが重なるか否かを基準として判断され、両者が少なくとも接していることが条件とされている。また、両領域が基準画像TO上で重なる場合であっても、両領域の実空間上の位置が所定距離以上に離れている場合には、予測領域ROestには当該物体は検出されていないと判断するように構成されている。
【0074】
また、本実施形態のように基準画像TO上の予測領域ROestに物体が検出されない場合に当該物体を追跡する場合(ステップS10、S11)においても、予め設定した所定のフレーム数を越えて予測領域ROestに当該物体が検出されない状態が継続された場合に、当該物体は基準画像TO上に存在しなくなったとして、メモリに記憶されている当該物体の情報を抹消して、当該物体の追跡を停止するように構成することも可能である。
【0075】
判断手段12は、以上の処理を、前回のフレームで検出されなかった物体も含めて予測領域ROest、RCestが設定された全物体について終了していなければ(ステップS12;NO)、ステップS5以下の処理を繰り返す。そして、判断手段12は、全物体について以上の処理を終了すると(ステップS12;YES)、上記のようにして検出され或いは検出されなかった物体の情報を必要に応じてメモリから読み出して出力するようになっている。
【0076】
判断手段12は、続いて、次回のフレームにおける物体の両端の相対速度(ΔX1new,ΔY1new,ΔZ1new)、(ΔX2new,ΔY2new,ΔZ2new)の算出を行うようになっている。
【0077】
本実施形態では、次回のフレームにおける物体の両端の相対速度(ΔX1new,ΔY1new,ΔZ1new)、(ΔX2new,ΔY2new,ΔZ2new)は、今回のフレームで用いた物体の両端の相対速度(ΔX1old,ΔY1old,ΔZ1old)、(ΔX2old,ΔY2old,ΔZ2old)と、前回のフレームにおける物体の両端の相対位置(X1old,Y1old,Z1old)、(X2old,Y2old,Z2old)に対する今回のフレームにおける物体の両端の相対位置(X1new,Y1new,Z1new)、(X2new,Y2new,Z2new)の差分とを、加算割合により重み付け加算する平滑化フィルタ処理により算出されるようになっている。
【0078】
すなわち、加算割合をPとした場合、判断手段12は、次回のフレームにおける相対速度ΔX1new、ΔY1new、ΔZ1new、ΔX2new、ΔY2new、ΔZ2newを、
ΔX1new=(1−P)×ΔX1old+P×(X1new−X1old) …(5)
ΔY1new=(1−P)×ΔY1old+P×(Y1new−Y1old) …(6)
ΔZ1new=(1−P)×ΔZ1old+P×(Z1new−Z1old) …(7)
ΔX2new=(1−P)×ΔX2old+P×(X2new−X2old) …(8)
ΔY2new=(1−P)×ΔY2old+P×(Y2new−Y2old) …(9)
ΔZ2new=(1−P)×ΔZ2old+P×(Z2new−Z2old) …(10)
で算出するようになっている(図6のステップS13)。
【0079】
なお、上記(5)〜(10)式において、X1new、Y1new、Z1new、X2new、Y2new、Z2newには、今回のフレームで基準画像TO上の予測領域ROestに物体が検出されていれば物体を表す各近似直線の両端の実空間上の相対位置(X1new,Y1new,Z1new)、(X2new,Y2new,Z2new)が用いられ、今回のフレームで基準画像TO上の予測領域ROestに物体が検出されていない場合には前述したステップS10で物体が存在すると予測される物体の両端の相対位置(X1est,Y1est,Z1est)、(X2est,Y2est,Z2est)を相対位置とした場合の物体の両端の相対位置(X1new,Y1new,Z1new)、(X2new,Y2new,Z2new)が用いられる。また、X1old、Y1old、Z1old、X2old、Y2old、Z2oldには、前回のフレームにおける相対位置(X1new,Y1new,Z1new)、(X2new,Y2new,Z2new)が用いられる(後述するステップS15参照)。
【0080】
本実施形態では、判断手段12は、上記(5)〜(10)式に示される平滑化フィルタ処理を行う際、計算を行う物体の情報に前述したノイズが含まれている旨の情報を対応付けており、当該物体が基準画像TO上の予測領域ROestに検出されている場合には、当該物体については前記加算割合Pを低下させて、平滑化における差分X1new−X1old等の寄与を軽減させるようになっている。今回のフレームで算出された物体の両端の相対位置(X1new,Y1new,Z1new)、(X2new,Y2new,Z2new)の情報の信頼性が低いためである。
【0081】
また、本実施形態では、判断手段12は、物体が基準画像TO上の予測領域ROestに検出されていない場合、すなわちメモリ内にその物体の両端の相対位置(X1new,Y1new,Z1new)、(X2new,Y2new,Z2new)の情報は記憶されているがその情報に物体が検出されなかったという情報とノイズが含まれている旨の情報を対応付けられている場合は、上記(5)〜(10)式における加算割合Pを0とし、今回のフレームで用いた物体の相対速度ΔX1old、ΔY1old、ΔZ1old、ΔX2old、ΔY2old、ΔZ2oldをそのまま次回のフレームにおける相対速度ΔX1new、ΔY1new、ΔZ1new、ΔX2new、ΔY2new、ΔZ2newとするように構成されている。
【0082】
当該物体はそもそも基準画像TO上の予測領域ROestに検出されておらず、その相対位置(X1new,Y1new,Z1new)、(X2new,Y2new,Z2new)は当該物体の追跡のために予測される相対位置(X1est,Y1est,Z1est)、(X2est,Y2est,Z2est)を仮にその物体の両端の相対位置(X1new,Y1new,Z1new)、(X2new,Y2new,Z2new)としたものであるからである。
【0083】
なお、上記(5)〜(10)式における加算割合をそれぞれ異なる値とし、それぞれ独立にその数値を調整するように構成することも可能である。
【0084】
続いて、判断手段12は、次回のフレームで用いるために、算出した相対速度(ΔX1new,ΔY1new,ΔZ1new)、(ΔX2new,ΔY2new,ΔZ2new)をそれぞれ相対速度(ΔX1old,ΔY1old,ΔZ1old)、(ΔX2old,ΔY2old,ΔZ2old)とし(ステップS14)、相対位置(X1new,Y1new,Z1new)、(X2new,Y2new,Z2new)をそれぞれ相対位置(X1old,Y1old,Z1old)、(X2old,Y2old,Z2old)として(ステップS15)、次回のフレームの処理に移るようになっている。
【0085】
次に、本実施形態に係る物体検出装置1の作用について説明する。
【0086】
なお、以下に示す図15(A)、(B)等の基準画像TOや比較画像TCには中央付近の物体Oのほかに右側に他の物体(対向車両)が撮像されており、当該他の物体に対しても中央付近に撮像された物体Oと同様の処理が行われるが、以下では説明を省略する。
【0087】
通常の状態の物体検出時においては、図15(A)、(B)に示すように、基準画像TO上および比較画像TC上に予測領域ROest、RCestが設定される。予測領域ROest、RCestには同一の物体Oが撮像されており、いずれの画像TO、TCにおいても同一の物体Oは同じような輝度値で撮像されるから、基準画像TO上の予測領域ROestにおける輝度値p1ijの平均値p1ij_aveと、比較画像TC上の予測領域RCestにおける輝度値p2ijの平均値p2ij_aveとは、ほぼ同じ値となる。
【0088】
従って、通常の撮像状態ではそれらの平均値の差の絶対値|p1ij_ave−p2ij_ave|は小さな値となり、平均値の差の絶対値が閾値Δpth未満であると判断されるため(図5のステップS5;NO)、判断手段12は、基準画像TO上の予測領域ROestに物体Oが検出されているか否かの判断を行う(ステップS6)。
【0089】
この場合、基準画像TO上に物体Oが検出されているため、物体検出手段10により図15(A)に示すように基準画像TO上には物体Oを包囲するように枠線Frが設定される。そして、基準画像TO上で枠線Frと予測領域ROestとほぼ同じ位置に設定され、各領域が重なり、両領域の実空間上の位置が所定距離以上に離れていないため、判断手段12は、基準画像TO上の予測領域ROestに物体Oが検出されていると判断して(図5のステップS6;YES)、その物体Oを表す近似直線の両端の自車両Aに対する実空間上の相対位置(X1new,Y1new,Z1new)、(X2new,Y2new,Z2new)等の当該物体Oの情報をメモリで更新(図6のステップS15等)しながら維持して、物体Oを追跡する。
【0090】
また、基準画像TO上および比較画像TC上の予測領域ROest、RCestにおける輝度値の各平均値の差の絶対値|p1ij_ave−p2ij_ave|は小さな値である(図5のステップS5;NO)にもかかわらず、基準画像TO上の予測領域ROestに物体Oが検出されなくなれば(図5のステップS6;NO)、判断手段12は、予測領域ROest、RCestにともに物体Oが撮像されておらず、基準画像TO上には物体Oが存在しなくなったとして、メモリに記憶されている当該物体Oの情報を抹消して(ステップS7)、その物体の追跡を停止する。以上が、通常の撮像状態における判断手段12の基本的な処理動作である。
【0091】
しかし、例えば雨天時等にワイパが作動され、図15(B)に示すように比較画像TC上に撮像されていた物体Oが、次のフレームで図16(B)に示すようにワイパWで隠されてしまったとする。その際、メインカメラ2aとサブカメラ2bは、通常、比較画像TC上に撮像されている物体が運転席から見て左側のワイパで隠されるのと同じタイミングで基準画像TO上に撮像されている同一の物体が右側のワイパで隠されるような位置には配置されないから、図16(A)に示すように、撮像を妨害する他の要因がない限り、基準画像TOには物体Oが撮像される。
【0092】
この状態では、ステレオマッチング手段7では正常なステレオマッチング処理が行えず、通常、物体検出手段10では基準画像TO上に物体Oを検出することができない。従って、基準画像TO上に物体Oを包囲する枠線は設定されない。
【0093】
しかし、前述したように今回のフレームにおける基準画像TOおよび比較画像TCの予測領域ROest、RCestは、図15(A)、(B)に示した前回のフレームの基準画像TOと比較画像TCに基づいて物体検出手段10で検出された物体Oの両端の相対位置(X1old,Y1old,Z1old)、(X2old,Y2old,Z2old)と、前回のフレームで算出された自車両に対する物体Oの両端の相対速度(ΔX1old,ΔY1old,ΔZ1old)、(ΔX2old,ΔY2old,ΔZ2old)等に基づいてそれぞれ設定される。
【0094】
従って、今回のフレームで比較画像TCの物体OがワイパWで隠されてしまっても、図16(A)、(B)に示すように基準画像TO上および比較画像TC上に予測領域ROest、RCestが設定される。しかし、比較画像TCの予測領域RCestはワイパWに隠されて輝度値p2ijの平均値p2ij_aveが図17に示すように大きく低下する。それに対して基準画像TOの予測領域ROestの輝度値p1ijの平均値p1ij_aveはさほど大きく変化しない。そのため、予測領域ROest、RCestにおける輝度値の各平均値の差の絶対値|p1ij_ave−p2ij_ave|は大きな値となって閾値Δpthを越える(図5のステップS5;YES)。
【0095】
そして、この場合、基準画像TO上に物体Oを包囲する枠線は設定されず、基準画像TOの予測領域ROestに重なる枠線は存在しないから、判断手段12は、基準画像TO上の予測領域ROestに物体Oが検出されていないと判断する(ステップS8;NO)。本実施形態の場合、この場合、基準画像TO上に物体Oを包囲する枠線が設定されていないが、物体Oを即座にロストさせず、基準画像TO上に予測領域ROestを設定する際に用いた予測される物体Oの両端の相対位置(X1est,Y1est,Z1est)、(X2est,Y2est,Z2est)の情報を当該物体Oの両端の相対位置(X1new,Y1new,Z1new)、(X2new,Y2new,Z2new)としてメモリに保存して(ステップS10)、物体Oを追跡する。
【0096】
しかし、物体Oは、本来、物体検出手段10で検出されていないため、それらの相対位置の情報に、物体が検出されなかったという情報とノイズが含まれている旨の情報を対応付ける(ステップS11)。
【0097】
ステレオ撮像手段2のサンプリング周期やワイパWのフロントガラス上での移動速度等にもよるが、ワイパWは、通常、1〜数フレームで画像上に存在しなくなるから、例えばワイパWが撮像画像上を1フレームで通過するような条件の場合、基準画像TOと比較画像TCとは、図16(A)、(B)に示した状態から次のフレームでは図15(A)、(B)に示したような状態に戻る。そのため、図18に示すように、比較画像TCの予測領域RCestにおける輝度値p2ijの平均値p2ij_aveは元の値程度まで回復し、基準画像TO上と比較画像TC上の予測領域ROest、RCestにおける輝度値の各平均値の差の絶対値|p1ij_ave−p2ij_ave|は小さな値に戻る(図5のステップS5;NO)。
【0098】
そのため、それ以降は、通常の撮像状態における判断手段12の基本的な処理動作(ステップS6、S7)に戻って、物体Oの追跡を続行することが可能となる。
【0099】
なお、上記の予測領域の輝度値の平均値の増減は、基準画像TOを撮像するメインカメラ2aの前方をワイパが横切った場合にも生じ、図19に示すように、メインカメラ2aやサブカメラ2bの前方をワイパWが横切るたびに、それらのカメラ2a、2bで撮像される基準画像TOや比較画像TCの予測領域ROest、RCestにおける輝度値の各平均値p1ij_ave、p2ij_aveが、本実施形態では1フレームの間だけ大きく減少する。
【0100】
上記の予測領域ROest、RCestにおける輝度値p1ij、p2ijの平均値p1ij_ave、p2ij_aveの変化特性を利用すると、メインカメラ2aやサブカメラ2bの前方をワイパWが横切ったことを検出することが可能となる。
【0101】
すなわち、設定された基準画像TO上の予測領域ROestまたは比較画像TC上の予測領域RCestのいずれか一方の予測領域で、1フレーム程度の間だけ、輝度値の平均値が他方の予測領域の輝度値の平均値よりも閾値Δpth以上に小さくなった場合に、輝度値の平均値が小さい予測領域が属する画像を撮像するメインカメラ2aまたはサブカメラ2bの前方をワイパWが横切ったと判断手段12で判断するように構成することで、メインカメラ2aやサブカメラ2bの前方をワイパWが横切ったことを検出することが可能となる。
【0102】
一方、メインカメラ2aかサブカメラ2bの一方の前方のフロントガラスに雨粒や汚れ等の付着物が付着した場合、例えばサブカメラ2bの前方のフロントガラスに汚れが付着し、比較画像TC中の汚れに対応する部分に予測領域RCestが設定されると、その予測領域RCestでは、図20に示すように、輝度値p2ijの平均値p2ij_aveが基準画像TOの対応する部分に設定された予測領域ROestにおける輝度値p1ijの平均値p1ij_aveより小さい状態が続く。
【0103】
また、例えばサブカメラ2bの前方のフロントガラスに雨粒が付着した場合、夜間に対向車両があると、雨粒が付着した部分では対向車両のヘッドライトが拡散されて輝度値が増大し、比較画像TC中の雨粒に対応する部分に予測領域RCestが設定されると、その予測領域RCestでは、図21に示すように、図20の場合とは逆に、輝度値p2ijの平均値p2ij_aveが基準画像TOの対応する部分に設定された予測領域ROestにおける輝度値p1ijの平均値p1ij_aveより大きい状態が続く。
【0104】
これらの場合、ステレオマッチング処理が正常に行われず、基準画像TO上に物体Oを検出することができなければ、上記のワイパの場合と同様に処理が行われる。
【0105】
しかし、ステレオマッチング手段7でステレオマッチング処理が行われて物体検出手段10で基準画像TO上に物体を検出することができる場合もあり、その場合には基準画像TO上に物体を包囲する枠線が設定される。そして、付着物が付着した部分に対応する基準画像TO上および比較画像TC上の予測領域ROest、RCestにおける輝度値の各平均値の差の絶対値|p1ij_ave−p2ij_ave|が閾値Δpth未満の小さな値であれば(図5のステップS5;NO)、判断手段12の通常の物体検出処理(ステップS6、S7)が行われる。
【0106】
また、ステレオマッチング処理が行われて基準画像TO上に物体を包囲する枠線が設定されたとしても、付着物が付着した部分に対応する基準画像TO上および比較画像TC上の予測領域ROest、RCestにおける輝度値の各平均値の差の絶対値|p1ij_ave−p2ij_ave|が閾値Δpth以上の大きな値であれば(図5のステップS5;NO)、その検出結果は信頼性が低い。そのため、判断手段12は、このような場合には、物体の両端の相対位置(X1new,Y1new,Z1new)、(X2new,Y2new,Z2new)の情報等にノイズが含まれている旨の情報を対応付けてメモリに保存する(ステップS9)。また、相対位置の情報が出力される際にはノイズが含まれている旨の情報が対応付けられた状態で出力される。
【0107】
なお、前述したワイパの場合と異なり、付着物が付着した場合には基準画像TO上および比較画像TC上の予測領域ROest、RCestにおける輝度値の各平均値の差の絶対値|p1ij_ave−p2ij_ave|が閾値Δpth以上である状態が比較的長く継続する場合がある。そのような場合には、警報を鳴らす等してドライバに付着物の除去を指示するように構成することも可能である。
【0108】
上記の予測領域ROest、RCestにおける輝度値p1ij、p2ijの平均値p1ij_ave、p2ij_aveの変化特性を利用すると、今度は、メインカメラ2aやサブカメラ2bの前方のフロントガラスに付着物が付着したことを検出することが可能となる。
【0109】
すなわち、設定された基準画像TO上の予測領域ROestまたは比較画像TC上の予測領域RCestのいずれか一方の予測領域で、輝度値の平均値と他方の予測領域の輝度値の平均値との差の絶対値が閾値Δpth以上である状態が所定のフレーム数以上継続する場合には、メインカメラ2aまたはサブカメラ2bの前方のフロントガラスに付着物が付着したと判断手段12で判断するように構成することで、メインカメラ2aやサブカメラ2bの前方のフロントガラスに付着物が付着したことを検出することが可能となる。
【0110】
一方、前述したように、先行車両等が街路樹の間を走行していて樹木の陰になったり木漏れ日が差し込んだりする場合等のように外界の環境が変化する場合、先行車両等の物体自体が明るくなったり暗くなったりするため、先行車両等が撮像された基準画像TO上および比較画像TC上の予測領域ROest、RCestにおける輝度値p1ij、p2ijの平均値p1ij_ave、p2ij_aveは同時に低下し、或いは増加する。
【0111】
そのため、それらの輝度値の各平均値の差の絶対値|p1ij_ave−p2ij_ave|は小さな値のままとなり(図5のステップS5;NO)、判断手段12は、このような場合には通常の撮像状態における基本的な処理動作(ステップS6、S7)で先行車両等の物体の検出を続行する。このように、本実施形態の物体検出装置1では、外界の環境が急に変化しても通常の物体検出処理を行うが、図17〜図19に示したように一方の予測領域の輝度値の平均値のみが低下したり増加したりする場合には通常の処理とは異なる処理を行う。
【0112】
以上のように、本実施形態に係る物体検出装置1によれば、今回のフレームで基準画像TO上に物体が検出されているか否かにかかわらず、前回のフレームの結果に基づいて今回のフレームにおいて当該物体が撮像されると予測される予測領域ROest、RCestを基準画像TO上と比較画像TC上にそれぞれ設定し、それらの予測領域ROest、RCestにおける輝度値の各平均値の差の絶対値|p1ij_ave−p2ij_ave|に基づいて予測領域ROestに検出されている物体の情報または物体が検出されなかったという情報にノイズが含まれているか否かを判断するため、メインカメラ2aやサブカメラ2bの一方の前方をワイパWが横切ったり一方の前方のフロントガラスに付着物が付着したりして発生したノイズか、或いは外界の環境が変化したのかを的確に判別することが可能となる。
【0113】
また、このようにノイズと外界の環境の変化とを的確に判別して物体を検出することが可能となるため、外界の環境が変化しただけであって検出された物体の情報や物体が検出されなかったという情報の信頼性が高い場合と、ノイズが生じていて検出された物体の情報や物体が検出されなかったという情報の信頼性が低い場合とを的確に区別して、情報の信頼性が低い場合にはその旨を物体の情報等に的確に対応付けて出力することが可能となる。
【0114】
さらに、それにより、出力された情報に基づいて例えば自車両の自動走行制御等を行う場合、それらの情報の信頼性を認識したうえで情報を自動制御等に用いるように構成することが可能となり、自動制御等を的確に行うことが可能となる。
【0115】
なお、本実施形態では、基準画像TO上の予測領域ROestに検出された物体の情報または物体が検出されなかったという情報にノイズが含まれている旨の情報を対応付ける場合について説明したが、物体の情報に例えば信頼度という情報を予め対応付けておき、通常に検出された物体ではその信頼度を大きな値とし、物体が検出された場合または検出されなかった場合にはそれらの情報の信頼度を小さな値に変更することをもって、それらの情報に前記ノイズが含まれている旨の情報を対応付けたこととするように構成することも可能である。
【0116】
また、基準画像TO上の予測領域ROestに検出された物体の情報または物体が検出されなかったという情報に前記ノイズが含まれている旨の情報を対応付けた場合に、図22に示すように、判断手段12からステレオマッチング手段7に信号を送信し、ステレオマッチング手段2におけるステレオマッチング処理の基準をより厳しくなるように変更するように構成することも可能である。
【0117】
具体的には、本実施形態ではステレオマッチング処理の基準であるSAD値に対する閾値をより小さな値に変更して、基準画像TOの基準画素ブロックPBOと比較画像TCの比較画素ブロックPBCの輝度パターンが非常に似かよったものである場合にだけ比較画像TC上に比較画素ブロックPBCを特定するように構成する。このように構成すれば、基準画像TO上および比較画像TC上の予測領域ROest、RCestにおける輝度値の各平均値の差の絶対値|p1ij_ave−p2ij_ave|が大きい場合でも、検出された物体の距離の情報等の信頼性をより向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本実施形態に係る物体検出装置の構成を示すブロック図である。
【図2】基準画像の一例を示す図である。
【図3】イメージプロセッサにおけるステレオマッチング処理の手法を説明する図である。
【図4】図2の基準画像に基づいて形成された距離画像を示す図である。
【図5】検出手段における処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】検出手段における処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】距離画像を分割する各区分を示す図である。
【図8】図7の各区分における物体の距離を抽出するためのヒストグラムの一例を示す図である。
【図9】各区分における物体の距離を実空間上にプロットした図である。
【図10】図9の各点のグループ化を説明する図である。
【図11】図10の各グループに属する各点を直線近似して得られる物体を表す図である。
【図12】基準画像上で矩形状の枠線に包囲されて検出された各物体を表す図である。
【図13】予測領域設定手段における前回のフレームの結果から今回のフレームにおいて物体が存在すると予測される相対位置を算出する手法を説明する図である。
【図14】(A)基準画像上に設定された予測領域、および(B)比較画像上に設定された予測領域を表す図である。
【図15】(A)基準画像上に設定された予測領域および物体を包囲する枠線、および(B)比較画像上に設定された予測領域を表す図である。
【図16】(A)物体が撮像された基準画像、および(B)撮像されていた物体がワイパに隠された比較画像を表す図である。
【図17】図16(A)、(B)の状態で比較画像の予測領域の輝度値の平均値が大きく低下する状態を説明するグラフである。
【図18】図15(A)、(B)の状態に戻ると比較画像の予測領域の輝度値の平均値が回復することを説明するグラフである。
【図19】一対の撮像手段の前方をワイパが横切る状態での基準画像と比較画像の各予測領域における輝度値の各平均値を表すグラフである。
【図20】一方の撮像手段の前方のフロントガラスに汚れが付着した場合の基準画像と比較画像の各予測領域における輝度値の各平均値の変化を表すグラフである。
【図21】一方の撮像手段の前方のフロントガラスに雨粒が付着して光が拡散した場合の基準画像と比較画像の各予測領域における輝度値の各平均値の変化を表すグラフである。
【図22】判断手段からステレオマッチング手段に信号を送信してステレオマッチング処理の基準を厳しくなるように変更する場合の構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0119】
1 物体検出装置
2 ステレオ撮像手段
2a、2b 一対の撮像手段(メインカメラ、サブカメラ)
7 ステレオマッチング手段
10 物体検出手段
11 予測領域設定手段
12 判断手段
A 自車両
dp 視差
O 物体
P 加算割合
p1ij、p2ij 輝度値
p1ij_ave、p2ij_ave 輝度値の平均値
Δpth 閾値
PBO 基準画素ブロック
PBC 比較画素ブロック
ROest、基準画像上の予測領域
RCest 比較画像上の予測領域
TO 基準画像
TC 比較画像
W ワイパ
(X1new,Y1new,Z1new) 今回のフレームにおける相対位置
(X2new,Y2new,Z2new) 今回のフレームにおける相対位置
(X1old,Y1old,Z1old) 前回のフレームにおける相対位置
(X2old,Y2old,Z2old) 前回のフレームにおける相対位置
(ΔX1old,ΔY1old,ΔZ1old) 相対速度
(ΔX2old,ΔY2old,ΔZ2old) 相対速度
Z 距離
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体検出装置に係り、特に、ステレオ撮像手段により撮像された一対の画像に対してステレオマッチング処理を行って物体を検出する物体検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のフロントガラスの内側に取り付けられたステレオ撮像手段を用いて自車両の周囲の物体までの距離を測定する手法としては、一対のカメラで撮像された一対の撮像画像を用いて、一対の撮像画像のうち、基準となる一方の撮像画像(以下、基準画像という。)と他方の撮像画像(以下、比較画像という。)とを比較して、同じ物体が撮像されている各画像中の各位置の差すなわち視差を算出し、その視差に基づいて三角測量の原理によって物体までの距離を算出する手法が一般的である。そして、基準画像と比較画像で同じ物体が撮像されている位置を特定する手法としては、通常、ステレオマッチング処理が行われる(例えば特許文献1等参照)。
【0003】
しかし、このようなステレオマッチング処理においては、例えば一対のカメラのうちいずれか一方のカメラの前方のフロントガラス上をワイパが通過し、他方のカメラで撮像されている物体が当該一方のカメラではワイパに隠されて撮像されていない場合、当該一方のカメラで撮像された画像上でその物体の位置を特定できず、物体までの距離を算出できないという問題があった。
【0004】
そこで、単独のカメラを用いた場合であるが、特許文献2に記載の画像処理方法では、今回のフレームで撮像した自車両前方の画像と前回のフレームで撮像した自車両前方の画像との各画素の濃度について差分を算出し、差分処理の結果得られる差分画像の平均濃度や分散に基づいて今回のフレームでの画像にワイパが撮像されているか否かを判定する技術が提案されている。
【0005】
また、同じく単独のカメラを用いた場合であるが、特許文献3に記載の画像処理装置等では、撮像画像内における物体の移動方向と移動速度とをベクトルで表したオプティカルフローを用いて画像内に撮像された物体の画像上の移動速度を算出して画像内に撮像されているワイパを検出し、画像内にワイパが検出された場合には、画像上のワイパによって自車両前方の画像が欠落した領域について過去に撮像したフレームから補間画像を得て補間する技術が提案されている。
【特許文献1】特開平10−283461号公報
【特許文献2】特開2000−123151号公報
【特許文献3】特開2006−107314号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載された技術をステレオ撮像手段に応用し、一対のカメラのそれぞれのカメラに適用した場合、前回のフレームと今回のフレームとで外界の環境が急に変化する場合、例えば先行車両が街路樹の間を走行して木漏れ日が差し込んだり影になったりするような場合等にも今回のフレームで画像中にワイパが撮像されていると判定されてしまう可能性がある。
【0007】
また、特許文献3に記載された技術をステレオ撮像手段に応用する場合、ワイパの移動速度を算出するためにはワイパの動きを連続して捉えることができる程度に速いシャッタ速度で各フレームを撮像する必要があり、また、数フレームにわたってワイパの動きが捉えられるように一対のカメラをフロントガラスから離れた位置に配置することが必要となる。しかし、実用上、ワイパ検出以外の状況ではそれほど速いシャッタ速度で撮像することは必要ではなく、また、車両のレイアウト上の制約等がありステレオ撮像手段をフロントガラスから離れた位置に配置することは困難であることが多い。さらに、通常、オプティカルフローの計算には時間が掛かり、処理の負担が大きくなる。
【0008】
ステレオ撮像手段で撮像した画像に基づいて自車両の周囲の物体を検出する場合、ステレオ撮像手段はフロントガラスの内側に取り付けざるを得ず、フロントガラスに付着した雨粒や汚れ等の付着物により撮像画像にノイズが生じることは避けられない。また、降雨時等にはカメラの前方のフロントガラスに付着した雨粒や汚れをワイパで除去させざるを得ず、カメラで撮像した画像中にワイパが写り込むことは避けられない。そして、撮像画像にワイパや付着物等のノイズが含まれる場合には、それに基づくステレオマッチング処理で得られた物体までの距離の情報は信頼性が低くなる。
【0009】
一方、前述した先行車両が街路樹の間を走行していて樹木の陰になったり木漏れ日が差し込んだりする場合等のように外界の環境が急に変化する場合には、その外界の環境が適切に撮像されている限り、撮像された画像に基づいて行われたステレオマッチング処理で得られた物体までの距離の情報の信頼性は高い。
【0010】
従って、ステレオマッチング処理を行って物体を検出する物体検出装置においては、外界の環境の変化と、ワイパや付着物等によるノイズとを的確に判別して検出できるものであることが求められる。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ステレオマッチング処理を行い、外界の環境の変化と、ワイパや付着物等によるノイズとを的確に判別して物体を検出することができる物体検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の問題を解決するために、第1の発明は、物体検出装置において
フロントガラスの内側に取り付けられた一対の撮像手段を備え、自車両の周囲の物体を同時に撮像して基準画像と比較画像とを出力するステレオ撮像手段と、
基準画像上に設定した所定の画素数の基準画素ブロックに対して比較画像上でステレオマッチング処理を行い、比較画像上に特定された比較画素ブロックと前記基準画素ブロックとの間の視差を算出して基準画素ブロックごとにそれぞれ視差を算出するステレオマッチング手段と、
前記基準画素ブロックごとの各視差に基づいてそれぞれ自車両との距離を算出し、当該各距離に基づいて基準画像上に物体を検出する物体検出手段と、
前回のフレームにおける基準画像上の物体の前記距離と、前記距離に基づいて算出される当該物体の自車両との相対速度とに基づいて、今回のフレームにおいて当該物体が撮像されると予測される予測領域を基準画像上と比較画像上にそれぞれ設定する予測領域設定手段と、
前記基準画像上の予測領域とそれに対応する前記比較画像上の予測領域との輝度値の平均値の差の絶対値が所定の閾値以上であるか否かを判断し、前記差の絶対値が前記閾値以上である場合には、前記基準画像上の予測領域に検出された物体の情報または物体が検出されなかったという情報にノイズが含まれている旨の情報を対応付ける判断手段と、
を備えることを特徴とする。
【0013】
第2の発明は、第1の発明の物体検出装置において、前記判断手段は、前記基準画像上の予測領域に検出された物体について算出された前記視差または前記距離の情報の信頼度を低下させ、または、前記基準画像上の予測領域に物体が検出されなかった場合には当該予測領域に物体が検出されなかったという情報の信頼度を低下させることを特徴とする。
【0014】
第3の発明は、第1または第2の発明の物体検出装置において、
前記物体検出手段は、検出した物体の前記距離に基づいて当該物体の自車両との相対位置を算出して前記相対位置を時系列的に記憶し、
前記予測領域設定手段は、前回のフレームにおける前記相対位置と当該物体の相対速度とに基づいて今回のフレームにおける当該物体の相対位置を予測して当該物体が撮像されると予測される予測領域を基準画像上に設定し、かつ、予測した当該物体の相対位置に基づいて今回のフレームにおける視差を予測して当該視差と前記基準画像上に設定した予測領域とに基づいて比較画像上に予測領域を設定することを特徴とする。
【0015】
第4の発明は、第3の発明の物体検出装置において、今回のフレームで用いた前記物体の相対速度と、前回のフレームにおける前記物体の相対位置に対する今回のフレームにおける前記物体の相対位置の差分とを、加算割合により重み付け加算する平滑化フィルタ処理により、次回のフレームにおける前記相対速度を算出することを特徴とする。
【0016】
第5の発明は、第4の発明の物体検出装置において、前記ノイズが含まれている旨の情報を対応付けた物体が前記基準画像上の予測領域に検出されている場合には、今回のフレームにおける前記平滑化フィルタ処理において、当該物体については前記差分の加算割合を低下させることを特徴とする。
【0017】
第6の発明は、第4または第5の発明の物体検出装置において、前記ノイズが含まれている旨の情報を対応付けた物体が前記基準画像上の予測領域に検出されなかった場合には、当該物体については今回のフレームで用いた物体の相対速度を次回のフレームにおける前記相対速度とすることを特徴とする。
【0018】
第7の発明は、第1から第5のいずれかの発明の物体検出装置において、前記判断手段は、設定された前記基準画像上の予測領域において物体が検出されなかった場合には、当該物体に関する情報を抹消することを特徴とする。
【0019】
第8の発明は、第1から第7のいずれかの発明の物体検出装置において、前記判断手段は、前記基準画像上の予測領域に検出された物体の情報または物体が検出されなかったという情報に前記ノイズが含まれている旨の情報を対応付けた場合には、前記ステレオマッチング手段におけるステレオマッチング処理の基準をより厳しくなるように変更することを特徴とする。
【0020】
第9の発明は、第1から第8のいずれかの発明の物体検出装置において、前記判断手段は、設定された前記基準画像上の予測領域または前記比較画像上の予測領域のいずれか一方の予測領域において、1フレーム程度の間のみ、前記輝度値の平均値が他方の予測領域の輝度値の平均値よりも前記閾値以上に小さい場合には、当該輝度値の平均値が小さい予測領域が属する前記基準画像または前記比較画像を撮像する前記撮像手段の前方をワイパが横切ったと判断することを特徴とする。
【0021】
第10の発明は、第1から第9のいずれかの発明の物体検出装置において、前記判断手段は、設定された前記基準画像上の予測領域または前記比較画像上の予測領域のいずれか一方の予測領域において、前記輝度値の平均値と他方の予測領域の輝度値の平均値との差の絶対値が前記閾値以上である状態が所定のフレーム数以上継続する場合には、前記基準画像または前記比較画像を撮像する前記撮像手段の前方のフロントガラスに付着物が付着したと判断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
第1の発明によれば、今回のフレームで基準画像上に物体が検出されているか否かにかかわらず、前回のフレームの結果に基づいて今回のフレームにおいて当該物体が撮像されると予測される予測領域を基準画像上と比較画像上にそれぞれ設定し、それらの予測領域における輝度値の各平均値の差の絶対値に基づいて基準画像上の予測領域に検出されている物体の情報または物体が検出されなかったという情報にノイズが含まれているか否かを判断するため、一方の撮像手段の前方をワイパが横切ったり一方の撮像手段の前方のフロントガラスに付着物が付着したりして発生したノイズか、或いは外界の環境が変化したのかを的確に判別することが可能となる。
【0023】
また、このようにノイズと外界の環境の変化とを的確に判別して物体を検出することが可能となるため、外界の環境が変化しただけであって検出された物体の情報や物体が検出されなかったという情報の信頼性が高い場合と、ノイズが生じていて検出された物体の情報や物体が検出されなかったという情報の信頼性が低い場合とを的確に区別して、情報の信頼性が低い場合にはその旨を物体の情報等に的確に対応付けて出力することが可能となる。
【0024】
さらに、それにより、出力された情報に基づいて例えば自車両の自動走行制御等を行う場合、それらの情報の信頼性を認識したうえで情報を自動制御等に用いるように構成することが可能となり、自動制御等を的確に行うことが可能となる。
【0025】
第2の発明によれば、物体の情報に例えば信頼度という情報を予め対応付けておき、通常に検出された物体ではその信頼度を大きな値とし、物体が検出された場合または検出されなかった場合にはそれらの情報の信頼度を小さな値に変更することをもって、それらの情報に前記ノイズが含まれている旨の情報を対応付けるように構成することで、信頼度の情報を認識するだけで基準画像上の予測領域に検出された物体の情報または物体が検出されなかったという情報の信頼性を評価することが可能となるため、前記発明の効果がより効果的に発揮される。
【0026】
第3の発明によれば、検出した物体の距離に基づいて当該物体の自車両との相対位置を算出し、それに基づいて予測領域を基準画像上に設定し、また、基準画像上に設定した予測領域から視差を予測して比較画像上に予測領域を設定することで、基準画像上および比較画像上に容易かつ的確に予測領域を設定することが可能となり、前記各発明の効果がより的確に発揮される。
【0027】
第4の発明によれば、次回のフレームで用いる物体の相対速度を、今回のフレームで用いた相対速度と今回のフレームでの物体の検出結果とを平滑化して算出することで、物体の検出結果にばらつきがある場合でも、ばらつきを抑制し、自車両に対する物体の相対速度をより現実に近い状態で取得することが可能となり、基準画像上および比較画像上の予測領域をより適切に設定することが可能となる。そのため、前記各発明の効果がより的確に発揮される。
【0028】
第5の発明によれば、ノイズが含まれている旨の情報を対応付けた物体が基準画像上の予測領域に検出されている場合に、今回のフレームにおける平滑化フィルタ処理において検出結果の加算割合を低下させることで、算出される相対速度が、信頼性が低い検出結果によって現実の値と大きく異なる値となることを防止することが可能となり、適切な相対速度が算出されるため、前記各発明の効果がより的確に発揮される。
【0029】
第6の発明によれば、サンプリング周期が短い場合には、次回のフレームでの物体の相対速度は今回のフレームの相対速度とさほど変わらない。そのため、ノイズが含まれている旨の情報を対応付けた物体が基準画像上の予測領域に検出されなかった場合には、次回のフレームで用いる物体の相対速度を無理に修正するよりは、今回のフレームで用いた相対速度をそのまま用いる方が現実に即していると言える。従って、上記のように構成することで、より現実的な相対速度に基づいて予測領域を設定することが可能となり、前記各発明の効果が適切に発揮される。
【0030】
第7の発明によれば、前記各発明の効果に加え、基準画像上の予測領域に物体が検出されなかった場合に当該物体に関する情報を抹消することで、信頼性が低い物体の情報を出力することが防止されるため、物体検出装置の信頼性を向上させることが可能となる。
【0031】
第8の発明によれば、前記各発明の効果に加え、物体の情報にノイズが含まれている旨の情報を対応付けた場合に、ステレオマッチング手段におけるステレオマッチング処理の基準をより厳しくなるように変更することで、基準画像上および比較画像上の予測領域における輝度値の各平均値の差の絶対値が大きくなり検出される物体の情報の信頼性が低くなるような場合でも、ステレオマッチング処理で、基準画像の基準画素ブロックと輝度パターンが非常に似かよった比較画像の比較画素ブロックしか特定されなくなるため、検出された物体の距離の情報等の信頼性をより向上させることが可能となる。
【0032】
第9の発明によれば、前記各発明の効果に加え、基準画像上および比較画像上の予測領域における輝度値の各平均値の差の絶対値が大きくなるフレーム数が1フレーム程度だけであれば、輝度値の平均値が低下した方の撮像手段の前方をワイパが横切ったと判断することが可能となり、ワイパが横切ったことを検出することが可能となる。
【0033】
第10の発明によれば、前記各発明の効果に加え、基準画像上および比較画像上の予測領域における輝度値の各平均値の差の絶対値が大きくなるフレーム数が比較的大きいフレーム数である場合には、輝度値の平均値が低下した方の撮像手段の前方のフロントガラスに付着物が付着したと判断することが可能となり、撮像手段の前方のフロントガラスに付着物が付着したことを検出することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明に係る物体検出装置の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0035】
本実施形態に係る物体検出装置1は、図1に示すように、ステレオ撮像手段2と、ステレオマッチング手段7等を備える画像処理手段6と、物体検出手段9等を備える検出手段9等で構成されている。
【0036】
なお、ステレオ撮像手段2から検出手段9の物体検出手段9までの構成は本願出願人により先に提出された特開平5−114099号公報、特開平5−265547号公報、特開平6−266828号公報、特開平10−283461号公報、特開平10−283477号公報、特開2006−72495号公報等に詳述されており、詳細な説明はそれらの公報に委ねる。以下、簡単に説明する。
【0037】
ステレオ撮像手段2は、本実施形態では、互いに同期が取られたCCDやCMOSセンサ等のイメージセンサがそれぞれ内蔵された一対の撮像手段であるメインカメラ2aおよびサブカメラ2bからなるステレオカメラが用いられている。メインカメラ2aとサブカメラ2bは、図示しない車両のフロントガラスの内側、例えばルームミラー近傍に車幅方向すなわち左右方向に所定の間隔をあけて取り付けられている。
【0038】
メインカメラ2aとサブカメラ2bは、道路面から同じ高さに取り付けられており、所定のサンプリング周期で同時に車両の周囲、特に前方の物体を撮像して撮像画像の情報を出力するように構成されている。そして、運転者に近い側に配置されたメインカメラ2aは例えば図2に示される基準画像TOの画像データを出力し、運転者から遠い側に配置されたサブカメラ2bは図示しない比較画像の画像データを出力するようになっている。
【0039】
メインカメラ2aとサブカメラ2bから出力された画像データは、図1に示すように、変換手段3であるA/Dコンバータ3a、3bでアナログ画像からそれぞれ画素ごとに例えば256階調のグレースケール等の所定の輝度階調の輝度を有するデジタル画像にそれぞれ変換され、画像補正部4で、ずれやノイズの除去等の画像補正が行われるようになっている。そして、画像補正等が行われた各画像データは、画像データメモリ5に送信されて格納されるとともに、画像処理手段6にも送信されるようになっている。
【0040】
画像処理手段6は、イメージプロセッサ等からなるステレオマッチング手段7と距離データメモリ8とを備えている。ステレオマッチング手段7は、基準画像TOおよび比較画像に対してステレオマッチング処理を行うようになっている。
【0041】
具体的には、ステレオマッチング手段7は、図3に示すように、基準画像TO上に例えば3×3画素や4×4画素等の所定の画素数の基準画素ブロックPBOを設定し、基準画素ブロックPBOに対応する比較画像TC中のエピポーララインEPL上の基準画素ブロックPBOと同形の各比較画素ブロックPBCについて下記(1)式に従って当該基準画素ブロックPBOとの輝度パターンの差異であるSAD値を算出し、SAD値が最小の比較画素ブロックPBCを特定するようになっている。
【0042】
【数1】
【0043】
なお、p1stは基準画素ブロックPBO中の各画素の輝度値を表し、p2stは比較画素ブロックPBC中の各画素の輝度値を表す。また、上記の総和は、基準画素ブロックPBOや比較画素ブロックPBCが例えば3×3画素の領域として設定される場合には1≦s≦3、1≦t≦3の範囲、4×4画素の領域として設定される場合には1≦s≦4、1≦t≦4の範囲の全画素について計算される。
【0044】
ステレオマッチング手段7は、このようにして基準画像TOの各基準画素ブロックPBOについて、特定した比較画素ブロックPBCの比較画像TC上の位置と当該基準画素ブロックPBOの基準画像TO上の位置から視差dpを算出するようになっている。また、本実施形態では、ステレオマッチング処理の基準としてSAD値に対して予め閾値が設定されており、ステレオマッチング手段7は、基準画像TO上のある基準画素ブロックPBOに対して特定された比較画素ブロックPBCとの間のSAD値が閾値より大きい場合には、マッチングが不成立として視差dpとして0を算出するようになっている。
【0045】
ステレオマッチング手段7は、このようにして各基準画素ブロックPBOについて算出した視差dpの情報を距離データメモリ8に送信して格納させるようになっている。
【0046】
ここで、一対のメインカメラ2aとサブカメラ2bの中央真下の道路面上の点を原点とし、自車両の車幅方向(左右方向)をX軸方向、車高方向(高さ方向)をY軸方向、車長方向(前後方向)をZ軸方向とした場合の実空間上の点(X,Y,Z)と、上記の視差dp、距離画像TZ上の点(i,j)とは、三角測量の原理に基づき下記(2)〜(4)式で表される座標変換により一意に対応づけられる。
X=CD/2+Z×PW×(i−IV) …(2)
Y=CH+Z×PW×(j−JV) …(3)
Z=CD/(PW×(dp−DP)) …(4)
【0047】
上記各式において、CDは一対のカメラの間隔、PWは1画素当たりの視野角、CHは一対のカメラの取り付け高さ、IVおよびJVは自車両正面の無限遠点の距離画像TZ上のi座標およびj座標、DPは消失点視差を表す。なお、視差dpが0の場合は上記(2)〜(4)式の計算は行われない。
【0048】
本実施形態では、上記のように基準画像TOの各基準画素ブロックPBOにそれぞれ視差dpが割り当てられた距離画像TZ(図4参照)を用いて各処理が行われるように構成されているが、距離データメモリ8に格納させる段階で視差dpを前記(4)式に従って距離Zに変換し、基準画像TOの各基準画素ブロックPBOにそれぞれ距離Zを割り当てた距離画像を用いて各処理を行うように構成することも可能である。
【0049】
検出手段9は、図示しないCPUやROM、RAM、入出力インターフェース等がバスに接続されたマイクロコンピュータより構成されている。また、検出手段9には、自車両の車速Vやヨーレートγ、ステアリングホイールの操舵角δ等を測定して出力する車速センサやヨーレートセンサ、操舵角センサ等のセンサ類Qが接続されている。なお、ヨーレートセンサの代わりに自車両の車速等からヨーレートを推定する装置等を用いることも可能である。
【0050】
検出手段9は、図1に示すように、物体検出手段10と、予測領域設定手段11と、判断手段12とを備えており、さらに図示しないメモリを備えており、さらに図示しないメモリを備えている。また、検出手段10の各手段には、センサ類Qから必要なデータが入力されるようになっている。
【0051】
検出手段9においては、図5および図6に示すフローチャートに従って処理が行われるようになっていり、以下、このフローチャートに従って説明する。
【0052】
物体検出手段10は、本実施形態では、前述したように特開平10−283461号公報等に記載された車外監視装置等をベースに構成されている。詳細な説明はそれらの公報に委ねる。以下、その構成と処理内容について説明する。
【0053】
物体検出手段10では、上記のように検出された視差dpを距離Zの情報に変換し、互いに隣接する距離Zの情報がグループ化されて基準画像TO上に各物体が検出されるようになっている(図5のステップS1)。
【0054】
具体的には、物体検出手段10は、距離データメモリ8から前述した距離画像TZを読み出して、図7に示すように距離画像TZを所定の画素幅で垂直方向に延びる短冊状の区分Dnに分割する。そして、短冊状の各区分Dnに属する各基準画素ブロックPBOに割り当てられた視差dpを前記(4)式に従ってそれぞれ距離Zに変換し、距離Zについて図8に示すようにヒストグラムHnを作成し、度数Fnが最大の階級の階級値をその短冊状の区分Dnにおける物体の距離Znとする。これを全区分Dnについて行うようになっている。
【0055】
物体検出手段10は、続いて、各区分Dnごとに得られた距離Znを実空間上にプロットすると、距離Znは図9に示すように並ぶ。そして、物体検出手段10は、図10に示すようにプロットされた各点間の距離や方向性に基づいて互いに隣接する各点をそれぞれグループG1、G2、G3、…にまとめてグループ化するようになっている。
【0056】
本実施形態では、物体検出手段10は、図11に示すように各グループに属する各点をそれぞれ直線近似し、それぞれのグループ内の各点が自車両Aの車幅方向すなわちX軸方向に略平行に並ぶグループには“物体”Oとラベルし、各点が自車両Aの車長方向すなわちZ軸方向に略平行に並ぶグループには“側壁”Sとラベルして分類するようになっている。また、同一の物体の“物体”と“側壁”の交点とみなすことができる箇所にコーナー点としてCをラベルするようになっている。
【0057】
そして、物体検出手段10は、図11の例では、[側壁S1]、[物体O1]、[側壁S2]、[物体O2とコーナー点Cと側壁S3]、[側壁S4]、[物体O3]、[物体O4]、[側壁S5とコーナー点Cと物体O5]、[物体O6]、[側壁S6]をそれぞれ1つの物体として検出するようになっている。なお、上記のように便宜上ラベルとして“物体”と“側壁”とが用いられるが、“側壁”も物体として検出される。
【0058】
また、物体検出手段10は、図12に示すように、検出した各物体の情報に基づいて、基準画像TO上に撮像された各物体を包囲する矩形状の枠線を設定して各物体が撮像されている各領域を設定することで、基準画像TO上に各物体を検出するようになっている。
【0059】
物体検出手段10は、このようにして検出した各物体を表す各近似直線の両端の自車両Aに対する実空間上の相対位置(X1new,Y1new,Z1new)、(X2new,Y2new,Z2new)を算出してメモリに保存するようになっている(図5のステップS2)。また、物体検出手段10は、検出した各物体の枠線の情報や、今回のフレームにおいてセンサ類Qから送信されてきた自車両Aのヨーレートγnewの情報もそれぞれメモリに保存するようになっている。
【0060】
物体検出手段10は、さらに、基準画像TO上に各物体を検出すると、検出した物体ごとに、当該物体の両端の相対位置(X1new,Y1new,Z1new)、(X2new,Y2new,Z2new)を、メモリに記憶されている前回のフレームにおける各物体の両端の相対位置(X1old,Y1old,Z1old)、(X2old,Y2old,Z2old)と照合するようになっている。
【0061】
そして、物体検出手段10は、後述する平滑化フィルタ処理(図6のステップS13)により前回のフレームで算出されている自車両Aに対する各物体の両端のX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向の相対速度(ΔX1old,ΔY1old,ΔZ1old)、(ΔX2old,ΔY2old,ΔZ2old)との整合性の範囲内で当該物体に適合する物体が前回のフレームにおける各物体の中にあれば、今回のフレームで検出した当該物体に検出された前回のフレームにおける物体に付した符号等を対応付けて物体の情報を更新するようになっている。
【0062】
予測領域設定手段11は、前回のフレームにおいて物体検出手段10により算出された各物体を表す各近似直線の両端の相対位置(X1old,Y1old,Z1old)、(X2old,Y2old,Z2old)と、前回のフレームで算出された自車両に対する各物体の両端の相対速度(ΔX1old,ΔY1old,ΔZ1old)、(ΔX2old,ΔY2old,ΔZ2old)と、前回のフレームにおける自車両Aのヨーレートγoldに基づいて、今回のフレームにおいて当該物体が撮像されると予測される予測領域を基準画像TO上と比較画像TC上にそれぞれ設定するようになっている。
【0063】
具体的には、図13に示すように、予測領域設定手段11は、メモリから読み出した前回のフレームにおける物体Oを表す各近似直線の両端の相対位置(X1old,Y1old,Z1old)、(X2old,Y2old,Z2old)を、前回のフレームの当該物体Oの両端のX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向の相対速度(ΔX1old,ΔY1old,ΔZ1old)、(ΔX2old,ΔY2old,ΔZ2old)分だけ移動させた後、前回測定された自車両Aのヨーレートγold分だけ自車両Aを中心に回転させて、今回のフレームにおいて当該物体Oが存在すると予測される自車両Aとの物体の両端の相対位置(X1est,Y1est,Z1est)、(X2est,Y2est,Z2est)を算出する。
【0064】
そして、算出した相対位置(X1est,Y1est,Z1est)、(X2est,Y2est,Z2est)を前記(2)、(3)式にそれぞれ代入して、相対位置の基準画像TO上の座標(i1est,j1est)、(i2est,j2est)を算出する。そして、それらとメモリから読み出した当該物体Oの枠線の情報とに基づいて、図14(A)に示すように、基準画像TO上に当該物体Oが撮像されると予測される予測領域ROestを設定する(図5のステップS3)。
【0065】
また、予測領域設定手段11は、当該物体Oの相対位置のZ座標Z1est、Z2estの平均Zest_aveを算出し、それを前記(4)式に代入して今回のフレームにおける視差dpestを予測し、図14(B)に示すように基準画像TO上に設定した予測領域ROestから視差dpestだけずらした比較画像TC上の位置に予測領域RCestを設定するようになっている(図5のステップS4)。
【0066】
また、予測領域設定手段11は、前回のフレームで検出されなかった物体についても当該物体について後述する追跡(ステップS10、S11)が続行されている間は、後続のフレームにおいても基準画像TO上および比較画像TC上に予測領域ROest、RCestの設定を行うようになっている。
【0067】
予測領域設定手段11は、以上のようにして、ステップS3、S4の処理を、前回のフレームで検出されなかった物体も含めて全物体について行うようになっている。
【0068】
判断手段12は、物体ごとに、上記のようにして予測領域設定手段11により基準画像TO上に設定された予測領域ROestにおける輝度値p1ijの平均値p1ij_aveを算出し、また、それに対応して比較画像TC上に設定された予測領域RCestにおける輝度値p2ijの平均値p2ij_aveを算出して、平均値の差の絶対値|p1ij_ave−p2ij_ave|が所定の閾値以上であるか否かを判断するようになっている(ステップS5)。
【0069】
平均値の差の絶対値|p1ij_ave−p2ij_ave|が所定の閾値Δpth未満であれば(ステップS5;NO)、判断手段12は、続いて、基準画像TO上の予測領域ROestに物体が検出されているか否かを判断し(ステップS6)、物体が検出されていれば(ステップS6;YES)、メモリに記憶されている当該物体を表す近似直線の両端の自車両Aに対する実空間上の相対位置(X1new,Y1new,Z1new)、(X2new,Y2new,Z2new)等の当該物体の情報をそのまま維持する。
【0070】
また、平均値の差の絶対値|p1ij_ave−p2ij_ave|が所定の閾値Δpth未満であって(ステップS5;NO)、基準画像TO上の予測領域ROestに物体が検出されていなければ(ステップS6;NO)、基準画像TO上の予測領域ROestの設定の基となった物体は基準画像TO上に存在しなくなった(いわゆるロストした)として、メモリに記憶されている当該物体の情報を抹消して(ステップS7)、当該物体の追跡を停止するようになっている。
【0071】
一方、平均値の差の絶対値|p1ij_ave−p2ij_ave|が所定の閾値Δpth以上であれば(ステップS5;YES)、判断手段12は、基準画像TO上の予測領域ROestに物体が検出されているか否かを判断する(ステップS8)。そして、物体が検出されていれば(ステップS8;YES)、検出された当該物体の情報は信頼性が低いため、メモリに保存されている今回のフレームで検出した当該物体の距離Znの情報や当該物体を表す近似直線の両端の自車両Aに対する実空間上の相対位置(X1new,Y1new,Z1new)、(X2new,Y2new,Z2new)の情報等にノイズが含まれている旨の情報を対応付けて、メモリに保存し直すようになっている(ステップS9)。
【0072】
また、平均値の差の絶対値|p1ij_ave−p2ij_ave|が所定の閾値Δpth以上であって(ステップS5;YES)、基準画像TO上の予測領域ROestに物体が検出されていない場合には(ステップS8;NO)、当該物体を表す近似直線の両端の自車両Aに対する実空間上の相対位置(X1new,Y1new,Z1new)、(X2new,Y2new,Z2new)は算出されない。そこで、判断手段12は、その代わりに当該物体が存在すると予測される自車両Aとの当該物体の両端の相対位置(X1est,Y1est,Z1est)、(X2est,Y2est,Z2est)の情報を当該物体の両端の相対位置(X1new,Y1new,Z1new)、(X2new,Y2new,Z2new)とし(ステップS10)、予測領域ROestの情報を物体の枠線の情報とするとともに、それらの情報に物体が検出されなかったという情報とノイズが含まれている旨の情報を対応付けてメモリに保存して(ステップS11)、当該物体の追跡を続行するようになっている。
【0073】
なお、上記の基準画像TO上の予測領域ROestに物体が検出されているか否かの判断(ステップS6、S8)については、本実施形態では、当該物体について基準画像TO上に設定された予測領域ROestと物体検出手段10により基準画像TO上に設定された矩形状の枠線で示される領域とが重なるか否かを基準として判断され、両者が少なくとも接していることが条件とされている。また、両領域が基準画像TO上で重なる場合であっても、両領域の実空間上の位置が所定距離以上に離れている場合には、予測領域ROestには当該物体は検出されていないと判断するように構成されている。
【0074】
また、本実施形態のように基準画像TO上の予測領域ROestに物体が検出されない場合に当該物体を追跡する場合(ステップS10、S11)においても、予め設定した所定のフレーム数を越えて予測領域ROestに当該物体が検出されない状態が継続された場合に、当該物体は基準画像TO上に存在しなくなったとして、メモリに記憶されている当該物体の情報を抹消して、当該物体の追跡を停止するように構成することも可能である。
【0075】
判断手段12は、以上の処理を、前回のフレームで検出されなかった物体も含めて予測領域ROest、RCestが設定された全物体について終了していなければ(ステップS12;NO)、ステップS5以下の処理を繰り返す。そして、判断手段12は、全物体について以上の処理を終了すると(ステップS12;YES)、上記のようにして検出され或いは検出されなかった物体の情報を必要に応じてメモリから読み出して出力するようになっている。
【0076】
判断手段12は、続いて、次回のフレームにおける物体の両端の相対速度(ΔX1new,ΔY1new,ΔZ1new)、(ΔX2new,ΔY2new,ΔZ2new)の算出を行うようになっている。
【0077】
本実施形態では、次回のフレームにおける物体の両端の相対速度(ΔX1new,ΔY1new,ΔZ1new)、(ΔX2new,ΔY2new,ΔZ2new)は、今回のフレームで用いた物体の両端の相対速度(ΔX1old,ΔY1old,ΔZ1old)、(ΔX2old,ΔY2old,ΔZ2old)と、前回のフレームにおける物体の両端の相対位置(X1old,Y1old,Z1old)、(X2old,Y2old,Z2old)に対する今回のフレームにおける物体の両端の相対位置(X1new,Y1new,Z1new)、(X2new,Y2new,Z2new)の差分とを、加算割合により重み付け加算する平滑化フィルタ処理により算出されるようになっている。
【0078】
すなわち、加算割合をPとした場合、判断手段12は、次回のフレームにおける相対速度ΔX1new、ΔY1new、ΔZ1new、ΔX2new、ΔY2new、ΔZ2newを、
ΔX1new=(1−P)×ΔX1old+P×(X1new−X1old) …(5)
ΔY1new=(1−P)×ΔY1old+P×(Y1new−Y1old) …(6)
ΔZ1new=(1−P)×ΔZ1old+P×(Z1new−Z1old) …(7)
ΔX2new=(1−P)×ΔX2old+P×(X2new−X2old) …(8)
ΔY2new=(1−P)×ΔY2old+P×(Y2new−Y2old) …(9)
ΔZ2new=(1−P)×ΔZ2old+P×(Z2new−Z2old) …(10)
で算出するようになっている(図6のステップS13)。
【0079】
なお、上記(5)〜(10)式において、X1new、Y1new、Z1new、X2new、Y2new、Z2newには、今回のフレームで基準画像TO上の予測領域ROestに物体が検出されていれば物体を表す各近似直線の両端の実空間上の相対位置(X1new,Y1new,Z1new)、(X2new,Y2new,Z2new)が用いられ、今回のフレームで基準画像TO上の予測領域ROestに物体が検出されていない場合には前述したステップS10で物体が存在すると予測される物体の両端の相対位置(X1est,Y1est,Z1est)、(X2est,Y2est,Z2est)を相対位置とした場合の物体の両端の相対位置(X1new,Y1new,Z1new)、(X2new,Y2new,Z2new)が用いられる。また、X1old、Y1old、Z1old、X2old、Y2old、Z2oldには、前回のフレームにおける相対位置(X1new,Y1new,Z1new)、(X2new,Y2new,Z2new)が用いられる(後述するステップS15参照)。
【0080】
本実施形態では、判断手段12は、上記(5)〜(10)式に示される平滑化フィルタ処理を行う際、計算を行う物体の情報に前述したノイズが含まれている旨の情報を対応付けており、当該物体が基準画像TO上の予測領域ROestに検出されている場合には、当該物体については前記加算割合Pを低下させて、平滑化における差分X1new−X1old等の寄与を軽減させるようになっている。今回のフレームで算出された物体の両端の相対位置(X1new,Y1new,Z1new)、(X2new,Y2new,Z2new)の情報の信頼性が低いためである。
【0081】
また、本実施形態では、判断手段12は、物体が基準画像TO上の予測領域ROestに検出されていない場合、すなわちメモリ内にその物体の両端の相対位置(X1new,Y1new,Z1new)、(X2new,Y2new,Z2new)の情報は記憶されているがその情報に物体が検出されなかったという情報とノイズが含まれている旨の情報を対応付けられている場合は、上記(5)〜(10)式における加算割合Pを0とし、今回のフレームで用いた物体の相対速度ΔX1old、ΔY1old、ΔZ1old、ΔX2old、ΔY2old、ΔZ2oldをそのまま次回のフレームにおける相対速度ΔX1new、ΔY1new、ΔZ1new、ΔX2new、ΔY2new、ΔZ2newとするように構成されている。
【0082】
当該物体はそもそも基準画像TO上の予測領域ROestに検出されておらず、その相対位置(X1new,Y1new,Z1new)、(X2new,Y2new,Z2new)は当該物体の追跡のために予測される相対位置(X1est,Y1est,Z1est)、(X2est,Y2est,Z2est)を仮にその物体の両端の相対位置(X1new,Y1new,Z1new)、(X2new,Y2new,Z2new)としたものであるからである。
【0083】
なお、上記(5)〜(10)式における加算割合をそれぞれ異なる値とし、それぞれ独立にその数値を調整するように構成することも可能である。
【0084】
続いて、判断手段12は、次回のフレームで用いるために、算出した相対速度(ΔX1new,ΔY1new,ΔZ1new)、(ΔX2new,ΔY2new,ΔZ2new)をそれぞれ相対速度(ΔX1old,ΔY1old,ΔZ1old)、(ΔX2old,ΔY2old,ΔZ2old)とし(ステップS14)、相対位置(X1new,Y1new,Z1new)、(X2new,Y2new,Z2new)をそれぞれ相対位置(X1old,Y1old,Z1old)、(X2old,Y2old,Z2old)として(ステップS15)、次回のフレームの処理に移るようになっている。
【0085】
次に、本実施形態に係る物体検出装置1の作用について説明する。
【0086】
なお、以下に示す図15(A)、(B)等の基準画像TOや比較画像TCには中央付近の物体Oのほかに右側に他の物体(対向車両)が撮像されており、当該他の物体に対しても中央付近に撮像された物体Oと同様の処理が行われるが、以下では説明を省略する。
【0087】
通常の状態の物体検出時においては、図15(A)、(B)に示すように、基準画像TO上および比較画像TC上に予測領域ROest、RCestが設定される。予測領域ROest、RCestには同一の物体Oが撮像されており、いずれの画像TO、TCにおいても同一の物体Oは同じような輝度値で撮像されるから、基準画像TO上の予測領域ROestにおける輝度値p1ijの平均値p1ij_aveと、比較画像TC上の予測領域RCestにおける輝度値p2ijの平均値p2ij_aveとは、ほぼ同じ値となる。
【0088】
従って、通常の撮像状態ではそれらの平均値の差の絶対値|p1ij_ave−p2ij_ave|は小さな値となり、平均値の差の絶対値が閾値Δpth未満であると判断されるため(図5のステップS5;NO)、判断手段12は、基準画像TO上の予測領域ROestに物体Oが検出されているか否かの判断を行う(ステップS6)。
【0089】
この場合、基準画像TO上に物体Oが検出されているため、物体検出手段10により図15(A)に示すように基準画像TO上には物体Oを包囲するように枠線Frが設定される。そして、基準画像TO上で枠線Frと予測領域ROestとほぼ同じ位置に設定され、各領域が重なり、両領域の実空間上の位置が所定距離以上に離れていないため、判断手段12は、基準画像TO上の予測領域ROestに物体Oが検出されていると判断して(図5のステップS6;YES)、その物体Oを表す近似直線の両端の自車両Aに対する実空間上の相対位置(X1new,Y1new,Z1new)、(X2new,Y2new,Z2new)等の当該物体Oの情報をメモリで更新(図6のステップS15等)しながら維持して、物体Oを追跡する。
【0090】
また、基準画像TO上および比較画像TC上の予測領域ROest、RCestにおける輝度値の各平均値の差の絶対値|p1ij_ave−p2ij_ave|は小さな値である(図5のステップS5;NO)にもかかわらず、基準画像TO上の予測領域ROestに物体Oが検出されなくなれば(図5のステップS6;NO)、判断手段12は、予測領域ROest、RCestにともに物体Oが撮像されておらず、基準画像TO上には物体Oが存在しなくなったとして、メモリに記憶されている当該物体Oの情報を抹消して(ステップS7)、その物体の追跡を停止する。以上が、通常の撮像状態における判断手段12の基本的な処理動作である。
【0091】
しかし、例えば雨天時等にワイパが作動され、図15(B)に示すように比較画像TC上に撮像されていた物体Oが、次のフレームで図16(B)に示すようにワイパWで隠されてしまったとする。その際、メインカメラ2aとサブカメラ2bは、通常、比較画像TC上に撮像されている物体が運転席から見て左側のワイパで隠されるのと同じタイミングで基準画像TO上に撮像されている同一の物体が右側のワイパで隠されるような位置には配置されないから、図16(A)に示すように、撮像を妨害する他の要因がない限り、基準画像TOには物体Oが撮像される。
【0092】
この状態では、ステレオマッチング手段7では正常なステレオマッチング処理が行えず、通常、物体検出手段10では基準画像TO上に物体Oを検出することができない。従って、基準画像TO上に物体Oを包囲する枠線は設定されない。
【0093】
しかし、前述したように今回のフレームにおける基準画像TOおよび比較画像TCの予測領域ROest、RCestは、図15(A)、(B)に示した前回のフレームの基準画像TOと比較画像TCに基づいて物体検出手段10で検出された物体Oの両端の相対位置(X1old,Y1old,Z1old)、(X2old,Y2old,Z2old)と、前回のフレームで算出された自車両に対する物体Oの両端の相対速度(ΔX1old,ΔY1old,ΔZ1old)、(ΔX2old,ΔY2old,ΔZ2old)等に基づいてそれぞれ設定される。
【0094】
従って、今回のフレームで比較画像TCの物体OがワイパWで隠されてしまっても、図16(A)、(B)に示すように基準画像TO上および比較画像TC上に予測領域ROest、RCestが設定される。しかし、比較画像TCの予測領域RCestはワイパWに隠されて輝度値p2ijの平均値p2ij_aveが図17に示すように大きく低下する。それに対して基準画像TOの予測領域ROestの輝度値p1ijの平均値p1ij_aveはさほど大きく変化しない。そのため、予測領域ROest、RCestにおける輝度値の各平均値の差の絶対値|p1ij_ave−p2ij_ave|は大きな値となって閾値Δpthを越える(図5のステップS5;YES)。
【0095】
そして、この場合、基準画像TO上に物体Oを包囲する枠線は設定されず、基準画像TOの予測領域ROestに重なる枠線は存在しないから、判断手段12は、基準画像TO上の予測領域ROestに物体Oが検出されていないと判断する(ステップS8;NO)。本実施形態の場合、この場合、基準画像TO上に物体Oを包囲する枠線が設定されていないが、物体Oを即座にロストさせず、基準画像TO上に予測領域ROestを設定する際に用いた予測される物体Oの両端の相対位置(X1est,Y1est,Z1est)、(X2est,Y2est,Z2est)の情報を当該物体Oの両端の相対位置(X1new,Y1new,Z1new)、(X2new,Y2new,Z2new)としてメモリに保存して(ステップS10)、物体Oを追跡する。
【0096】
しかし、物体Oは、本来、物体検出手段10で検出されていないため、それらの相対位置の情報に、物体が検出されなかったという情報とノイズが含まれている旨の情報を対応付ける(ステップS11)。
【0097】
ステレオ撮像手段2のサンプリング周期やワイパWのフロントガラス上での移動速度等にもよるが、ワイパWは、通常、1〜数フレームで画像上に存在しなくなるから、例えばワイパWが撮像画像上を1フレームで通過するような条件の場合、基準画像TOと比較画像TCとは、図16(A)、(B)に示した状態から次のフレームでは図15(A)、(B)に示したような状態に戻る。そのため、図18に示すように、比較画像TCの予測領域RCestにおける輝度値p2ijの平均値p2ij_aveは元の値程度まで回復し、基準画像TO上と比較画像TC上の予測領域ROest、RCestにおける輝度値の各平均値の差の絶対値|p1ij_ave−p2ij_ave|は小さな値に戻る(図5のステップS5;NO)。
【0098】
そのため、それ以降は、通常の撮像状態における判断手段12の基本的な処理動作(ステップS6、S7)に戻って、物体Oの追跡を続行することが可能となる。
【0099】
なお、上記の予測領域の輝度値の平均値の増減は、基準画像TOを撮像するメインカメラ2aの前方をワイパが横切った場合にも生じ、図19に示すように、メインカメラ2aやサブカメラ2bの前方をワイパWが横切るたびに、それらのカメラ2a、2bで撮像される基準画像TOや比較画像TCの予測領域ROest、RCestにおける輝度値の各平均値p1ij_ave、p2ij_aveが、本実施形態では1フレームの間だけ大きく減少する。
【0100】
上記の予測領域ROest、RCestにおける輝度値p1ij、p2ijの平均値p1ij_ave、p2ij_aveの変化特性を利用すると、メインカメラ2aやサブカメラ2bの前方をワイパWが横切ったことを検出することが可能となる。
【0101】
すなわち、設定された基準画像TO上の予測領域ROestまたは比較画像TC上の予測領域RCestのいずれか一方の予測領域で、1フレーム程度の間だけ、輝度値の平均値が他方の予測領域の輝度値の平均値よりも閾値Δpth以上に小さくなった場合に、輝度値の平均値が小さい予測領域が属する画像を撮像するメインカメラ2aまたはサブカメラ2bの前方をワイパWが横切ったと判断手段12で判断するように構成することで、メインカメラ2aやサブカメラ2bの前方をワイパWが横切ったことを検出することが可能となる。
【0102】
一方、メインカメラ2aかサブカメラ2bの一方の前方のフロントガラスに雨粒や汚れ等の付着物が付着した場合、例えばサブカメラ2bの前方のフロントガラスに汚れが付着し、比較画像TC中の汚れに対応する部分に予測領域RCestが設定されると、その予測領域RCestでは、図20に示すように、輝度値p2ijの平均値p2ij_aveが基準画像TOの対応する部分に設定された予測領域ROestにおける輝度値p1ijの平均値p1ij_aveより小さい状態が続く。
【0103】
また、例えばサブカメラ2bの前方のフロントガラスに雨粒が付着した場合、夜間に対向車両があると、雨粒が付着した部分では対向車両のヘッドライトが拡散されて輝度値が増大し、比較画像TC中の雨粒に対応する部分に予測領域RCestが設定されると、その予測領域RCestでは、図21に示すように、図20の場合とは逆に、輝度値p2ijの平均値p2ij_aveが基準画像TOの対応する部分に設定された予測領域ROestにおける輝度値p1ijの平均値p1ij_aveより大きい状態が続く。
【0104】
これらの場合、ステレオマッチング処理が正常に行われず、基準画像TO上に物体Oを検出することができなければ、上記のワイパの場合と同様に処理が行われる。
【0105】
しかし、ステレオマッチング手段7でステレオマッチング処理が行われて物体検出手段10で基準画像TO上に物体を検出することができる場合もあり、その場合には基準画像TO上に物体を包囲する枠線が設定される。そして、付着物が付着した部分に対応する基準画像TO上および比較画像TC上の予測領域ROest、RCestにおける輝度値の各平均値の差の絶対値|p1ij_ave−p2ij_ave|が閾値Δpth未満の小さな値であれば(図5のステップS5;NO)、判断手段12の通常の物体検出処理(ステップS6、S7)が行われる。
【0106】
また、ステレオマッチング処理が行われて基準画像TO上に物体を包囲する枠線が設定されたとしても、付着物が付着した部分に対応する基準画像TO上および比較画像TC上の予測領域ROest、RCestにおける輝度値の各平均値の差の絶対値|p1ij_ave−p2ij_ave|が閾値Δpth以上の大きな値であれば(図5のステップS5;NO)、その検出結果は信頼性が低い。そのため、判断手段12は、このような場合には、物体の両端の相対位置(X1new,Y1new,Z1new)、(X2new,Y2new,Z2new)の情報等にノイズが含まれている旨の情報を対応付けてメモリに保存する(ステップS9)。また、相対位置の情報が出力される際にはノイズが含まれている旨の情報が対応付けられた状態で出力される。
【0107】
なお、前述したワイパの場合と異なり、付着物が付着した場合には基準画像TO上および比較画像TC上の予測領域ROest、RCestにおける輝度値の各平均値の差の絶対値|p1ij_ave−p2ij_ave|が閾値Δpth以上である状態が比較的長く継続する場合がある。そのような場合には、警報を鳴らす等してドライバに付着物の除去を指示するように構成することも可能である。
【0108】
上記の予測領域ROest、RCestにおける輝度値p1ij、p2ijの平均値p1ij_ave、p2ij_aveの変化特性を利用すると、今度は、メインカメラ2aやサブカメラ2bの前方のフロントガラスに付着物が付着したことを検出することが可能となる。
【0109】
すなわち、設定された基準画像TO上の予測領域ROestまたは比較画像TC上の予測領域RCestのいずれか一方の予測領域で、輝度値の平均値と他方の予測領域の輝度値の平均値との差の絶対値が閾値Δpth以上である状態が所定のフレーム数以上継続する場合には、メインカメラ2aまたはサブカメラ2bの前方のフロントガラスに付着物が付着したと判断手段12で判断するように構成することで、メインカメラ2aやサブカメラ2bの前方のフロントガラスに付着物が付着したことを検出することが可能となる。
【0110】
一方、前述したように、先行車両等が街路樹の間を走行していて樹木の陰になったり木漏れ日が差し込んだりする場合等のように外界の環境が変化する場合、先行車両等の物体自体が明るくなったり暗くなったりするため、先行車両等が撮像された基準画像TO上および比較画像TC上の予測領域ROest、RCestにおける輝度値p1ij、p2ijの平均値p1ij_ave、p2ij_aveは同時に低下し、或いは増加する。
【0111】
そのため、それらの輝度値の各平均値の差の絶対値|p1ij_ave−p2ij_ave|は小さな値のままとなり(図5のステップS5;NO)、判断手段12は、このような場合には通常の撮像状態における基本的な処理動作(ステップS6、S7)で先行車両等の物体の検出を続行する。このように、本実施形態の物体検出装置1では、外界の環境が急に変化しても通常の物体検出処理を行うが、図17〜図19に示したように一方の予測領域の輝度値の平均値のみが低下したり増加したりする場合には通常の処理とは異なる処理を行う。
【0112】
以上のように、本実施形態に係る物体検出装置1によれば、今回のフレームで基準画像TO上に物体が検出されているか否かにかかわらず、前回のフレームの結果に基づいて今回のフレームにおいて当該物体が撮像されると予測される予測領域ROest、RCestを基準画像TO上と比較画像TC上にそれぞれ設定し、それらの予測領域ROest、RCestにおける輝度値の各平均値の差の絶対値|p1ij_ave−p2ij_ave|に基づいて予測領域ROestに検出されている物体の情報または物体が検出されなかったという情報にノイズが含まれているか否かを判断するため、メインカメラ2aやサブカメラ2bの一方の前方をワイパWが横切ったり一方の前方のフロントガラスに付着物が付着したりして発生したノイズか、或いは外界の環境が変化したのかを的確に判別することが可能となる。
【0113】
また、このようにノイズと外界の環境の変化とを的確に判別して物体を検出することが可能となるため、外界の環境が変化しただけであって検出された物体の情報や物体が検出されなかったという情報の信頼性が高い場合と、ノイズが生じていて検出された物体の情報や物体が検出されなかったという情報の信頼性が低い場合とを的確に区別して、情報の信頼性が低い場合にはその旨を物体の情報等に的確に対応付けて出力することが可能となる。
【0114】
さらに、それにより、出力された情報に基づいて例えば自車両の自動走行制御等を行う場合、それらの情報の信頼性を認識したうえで情報を自動制御等に用いるように構成することが可能となり、自動制御等を的確に行うことが可能となる。
【0115】
なお、本実施形態では、基準画像TO上の予測領域ROestに検出された物体の情報または物体が検出されなかったという情報にノイズが含まれている旨の情報を対応付ける場合について説明したが、物体の情報に例えば信頼度という情報を予め対応付けておき、通常に検出された物体ではその信頼度を大きな値とし、物体が検出された場合または検出されなかった場合にはそれらの情報の信頼度を小さな値に変更することをもって、それらの情報に前記ノイズが含まれている旨の情報を対応付けたこととするように構成することも可能である。
【0116】
また、基準画像TO上の予測領域ROestに検出された物体の情報または物体が検出されなかったという情報に前記ノイズが含まれている旨の情報を対応付けた場合に、図22に示すように、判断手段12からステレオマッチング手段7に信号を送信し、ステレオマッチング手段2におけるステレオマッチング処理の基準をより厳しくなるように変更するように構成することも可能である。
【0117】
具体的には、本実施形態ではステレオマッチング処理の基準であるSAD値に対する閾値をより小さな値に変更して、基準画像TOの基準画素ブロックPBOと比較画像TCの比較画素ブロックPBCの輝度パターンが非常に似かよったものである場合にだけ比較画像TC上に比較画素ブロックPBCを特定するように構成する。このように構成すれば、基準画像TO上および比較画像TC上の予測領域ROest、RCestにおける輝度値の各平均値の差の絶対値|p1ij_ave−p2ij_ave|が大きい場合でも、検出された物体の距離の情報等の信頼性をより向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本実施形態に係る物体検出装置の構成を示すブロック図である。
【図2】基準画像の一例を示す図である。
【図3】イメージプロセッサにおけるステレオマッチング処理の手法を説明する図である。
【図4】図2の基準画像に基づいて形成された距離画像を示す図である。
【図5】検出手段における処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】検出手段における処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】距離画像を分割する各区分を示す図である。
【図8】図7の各区分における物体の距離を抽出するためのヒストグラムの一例を示す図である。
【図9】各区分における物体の距離を実空間上にプロットした図である。
【図10】図9の各点のグループ化を説明する図である。
【図11】図10の各グループに属する各点を直線近似して得られる物体を表す図である。
【図12】基準画像上で矩形状の枠線に包囲されて検出された各物体を表す図である。
【図13】予測領域設定手段における前回のフレームの結果から今回のフレームにおいて物体が存在すると予測される相対位置を算出する手法を説明する図である。
【図14】(A)基準画像上に設定された予測領域、および(B)比較画像上に設定された予測領域を表す図である。
【図15】(A)基準画像上に設定された予測領域および物体を包囲する枠線、および(B)比較画像上に設定された予測領域を表す図である。
【図16】(A)物体が撮像された基準画像、および(B)撮像されていた物体がワイパに隠された比較画像を表す図である。
【図17】図16(A)、(B)の状態で比較画像の予測領域の輝度値の平均値が大きく低下する状態を説明するグラフである。
【図18】図15(A)、(B)の状態に戻ると比較画像の予測領域の輝度値の平均値が回復することを説明するグラフである。
【図19】一対の撮像手段の前方をワイパが横切る状態での基準画像と比較画像の各予測領域における輝度値の各平均値を表すグラフである。
【図20】一方の撮像手段の前方のフロントガラスに汚れが付着した場合の基準画像と比較画像の各予測領域における輝度値の各平均値の変化を表すグラフである。
【図21】一方の撮像手段の前方のフロントガラスに雨粒が付着して光が拡散した場合の基準画像と比較画像の各予測領域における輝度値の各平均値の変化を表すグラフである。
【図22】判断手段からステレオマッチング手段に信号を送信してステレオマッチング処理の基準を厳しくなるように変更する場合の構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0119】
1 物体検出装置
2 ステレオ撮像手段
2a、2b 一対の撮像手段(メインカメラ、サブカメラ)
7 ステレオマッチング手段
10 物体検出手段
11 予測領域設定手段
12 判断手段
A 自車両
dp 視差
O 物体
P 加算割合
p1ij、p2ij 輝度値
p1ij_ave、p2ij_ave 輝度値の平均値
Δpth 閾値
PBO 基準画素ブロック
PBC 比較画素ブロック
ROest、基準画像上の予測領域
RCest 比較画像上の予測領域
TO 基準画像
TC 比較画像
W ワイパ
(X1new,Y1new,Z1new) 今回のフレームにおける相対位置
(X2new,Y2new,Z2new) 今回のフレームにおける相対位置
(X1old,Y1old,Z1old) 前回のフレームにおける相対位置
(X2old,Y2old,Z2old) 前回のフレームにおける相対位置
(ΔX1old,ΔY1old,ΔZ1old) 相対速度
(ΔX2old,ΔY2old,ΔZ2old) 相対速度
Z 距離
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントガラスの内側に取り付けられた一対の撮像手段を備え、自車両の周囲の物体を同時に撮像して基準画像と比較画像とを出力するステレオ撮像手段と、
基準画像上に設定した所定の画素数の基準画素ブロックに対して比較画像上でステレオマッチング処理を行い、比較画像上に特定された比較画素ブロックと前記基準画素ブロックとの間の視差を算出して基準画素ブロックごとにそれぞれ視差を算出するステレオマッチング手段と、
前記基準画素ブロックごとの各視差に基づいてそれぞれ自車両との距離を算出し、当該各距離に基づいて基準画像上に物体を検出する物体検出手段と、
前回のフレームにおける基準画像上の物体の前記距離と、前記距離に基づいて算出される当該物体の自車両との相対速度とに基づいて、今回のフレームにおいて当該物体が撮像されると予測される予測領域を基準画像上と比較画像上にそれぞれ設定する予測領域設定手段と、
前記基準画像上の予測領域とそれに対応する前記比較画像上の予測領域との輝度値の平均値の差の絶対値が所定の閾値以上であるか否かを判断し、前記差の絶対値が前記閾値以上である場合には、前記基準画像上の予測領域に検出された物体の情報または物体が検出されなかったという情報にノイズが含まれている旨の情報を対応付ける判断手段と、
を備えることを特徴とする物体検出装置。
【請求項2】
前記判断手段は、前記基準画像上の予測領域に検出された物体について算出された前記視差または前記距離の情報の信頼度を低下させ、または、前記基準画像上の予測領域に物体が検出されなかった場合には当該予測領域に物体が検出されなかったという情報の信頼度を低下させることを特徴とする請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項3】
前記物体検出手段は、検出した物体の前記距離に基づいて当該物体の自車両との相対位置を算出して前記相対位置を時系列的に記憶し、
前記予測領域設定手段は、前回のフレームにおける前記相対位置と当該物体の相対速度とに基づいて今回のフレームにおける当該物体の相対位置を予測して当該物体が撮像されると予測される予測領域を基準画像上に設定し、かつ、予測した当該物体の相対位置に基づいて今回のフレームにおける視差を予測して当該視差と前記基準画像上に設定した予測領域とに基づいて比較画像上に予測領域を設定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の物体検出装置。
【請求項4】
今回のフレームで用いた前記物体の相対速度と、前回のフレームにおける前記物体の相対位置に対する今回のフレームにおける前記物体の相対位置の差分とを、加算割合により重み付け加算する平滑化フィルタ処理により、次回のフレームにおける前記相対速度を算出することを特徴とする請求項3に記載の物体検出装置。
【請求項5】
前記ノイズが含まれている旨の情報を対応付けた物体が前記基準画像上の予測領域に検出されている場合には、今回のフレームにおける前記平滑化フィルタ処理において、当該物体については前記差分の加算割合を低下させることを特徴とする請求項4に記載の物体検出装置。
【請求項6】
前記ノイズが含まれている旨の情報を対応付けた物体が前記基準画像上の予測領域に検出されなかった場合には、当該物体については今回のフレームで用いた物体の相対速度を次回のフレームにおける前記相対速度とすることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の物体検出装置。
【請求項7】
前記判断手段は、設定された前記基準画像上の予測領域において物体が検出されなかった場合には、当該物体に関する情報を抹消することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の物体検出装置。
【請求項8】
前記判断手段は、前記基準画像上の予測領域に検出された物体の情報または物体が検出されなかったという情報に前記ノイズが含まれている旨の情報を対応付けた場合には、前記ステレオマッチング手段におけるステレオマッチング処理の基準をより厳しくなるように変更することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の物体検出装置。
【請求項9】
前記判断手段は、設定された前記基準画像上の予測領域または前記比較画像上の予測領域のいずれか一方の予測領域において、1フレーム程度の間のみ、前記輝度値の平均値が他方の予測領域の輝度値の平均値よりも前記閾値以上に小さい場合には、当該輝度値の平均値が小さい予測領域が属する前記基準画像または前記比較画像を撮像する前記撮像手段の前方をワイパが横切ったと判断することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の物体検出装置。
【請求項10】
前記判断手段は、設定された前記基準画像上の予測領域または前記比較画像上の予測領域のいずれか一方の予測領域において、前記輝度値の平均値と他方の予測領域の輝度値の平均値との差の絶対値が前記閾値以上である状態が所定のフレーム数以上継続する場合には、前記基準画像または前記比較画像を撮像する前記撮像手段の前方のフロントガラスに付着物が付着したと判断することを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の物体検出装置。
【請求項1】
フロントガラスの内側に取り付けられた一対の撮像手段を備え、自車両の周囲の物体を同時に撮像して基準画像と比較画像とを出力するステレオ撮像手段と、
基準画像上に設定した所定の画素数の基準画素ブロックに対して比較画像上でステレオマッチング処理を行い、比較画像上に特定された比較画素ブロックと前記基準画素ブロックとの間の視差を算出して基準画素ブロックごとにそれぞれ視差を算出するステレオマッチング手段と、
前記基準画素ブロックごとの各視差に基づいてそれぞれ自車両との距離を算出し、当該各距離に基づいて基準画像上に物体を検出する物体検出手段と、
前回のフレームにおける基準画像上の物体の前記距離と、前記距離に基づいて算出される当該物体の自車両との相対速度とに基づいて、今回のフレームにおいて当該物体が撮像されると予測される予測領域を基準画像上と比較画像上にそれぞれ設定する予測領域設定手段と、
前記基準画像上の予測領域とそれに対応する前記比較画像上の予測領域との輝度値の平均値の差の絶対値が所定の閾値以上であるか否かを判断し、前記差の絶対値が前記閾値以上である場合には、前記基準画像上の予測領域に検出された物体の情報または物体が検出されなかったという情報にノイズが含まれている旨の情報を対応付ける判断手段と、
を備えることを特徴とする物体検出装置。
【請求項2】
前記判断手段は、前記基準画像上の予測領域に検出された物体について算出された前記視差または前記距離の情報の信頼度を低下させ、または、前記基準画像上の予測領域に物体が検出されなかった場合には当該予測領域に物体が検出されなかったという情報の信頼度を低下させることを特徴とする請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項3】
前記物体検出手段は、検出した物体の前記距離に基づいて当該物体の自車両との相対位置を算出して前記相対位置を時系列的に記憶し、
前記予測領域設定手段は、前回のフレームにおける前記相対位置と当該物体の相対速度とに基づいて今回のフレームにおける当該物体の相対位置を予測して当該物体が撮像されると予測される予測領域を基準画像上に設定し、かつ、予測した当該物体の相対位置に基づいて今回のフレームにおける視差を予測して当該視差と前記基準画像上に設定した予測領域とに基づいて比較画像上に予測領域を設定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の物体検出装置。
【請求項4】
今回のフレームで用いた前記物体の相対速度と、前回のフレームにおける前記物体の相対位置に対する今回のフレームにおける前記物体の相対位置の差分とを、加算割合により重み付け加算する平滑化フィルタ処理により、次回のフレームにおける前記相対速度を算出することを特徴とする請求項3に記載の物体検出装置。
【請求項5】
前記ノイズが含まれている旨の情報を対応付けた物体が前記基準画像上の予測領域に検出されている場合には、今回のフレームにおける前記平滑化フィルタ処理において、当該物体については前記差分の加算割合を低下させることを特徴とする請求項4に記載の物体検出装置。
【請求項6】
前記ノイズが含まれている旨の情報を対応付けた物体が前記基準画像上の予測領域に検出されなかった場合には、当該物体については今回のフレームで用いた物体の相対速度を次回のフレームにおける前記相対速度とすることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の物体検出装置。
【請求項7】
前記判断手段は、設定された前記基準画像上の予測領域において物体が検出されなかった場合には、当該物体に関する情報を抹消することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の物体検出装置。
【請求項8】
前記判断手段は、前記基準画像上の予測領域に検出された物体の情報または物体が検出されなかったという情報に前記ノイズが含まれている旨の情報を対応付けた場合には、前記ステレオマッチング手段におけるステレオマッチング処理の基準をより厳しくなるように変更することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の物体検出装置。
【請求項9】
前記判断手段は、設定された前記基準画像上の予測領域または前記比較画像上の予測領域のいずれか一方の予測領域において、1フレーム程度の間のみ、前記輝度値の平均値が他方の予測領域の輝度値の平均値よりも前記閾値以上に小さい場合には、当該輝度値の平均値が小さい予測領域が属する前記基準画像または前記比較画像を撮像する前記撮像手段の前方をワイパが横切ったと判断することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の物体検出装置。
【請求項10】
前記判断手段は、設定された前記基準画像上の予測領域または前記比較画像上の予測領域のいずれか一方の予測領域において、前記輝度値の平均値と他方の予測領域の輝度値の平均値との差の絶対値が前記閾値以上である状態が所定のフレーム数以上継続する場合には、前記基準画像または前記比較画像を撮像する前記撮像手段の前方のフロントガラスに付着物が付着したと判断することを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の物体検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2009−110173(P2009−110173A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−280483(P2007−280483)
【出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】
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