説明

画像形成装置

【課題】作像を実施する作像装置と作像を停止する作像装置とが混在する作像モードを行う際に、作像を停止する作像装置における放電生成物の発生や付着を抑える。
【解決手段】複数の作像装置1(1A,1B)の帯電装置3には、一若しくは複数のコロナ帯電器4の帯電能力を制御する帯電制御装置6は、コロナ帯電器4の帯電能力Aを変更する帯電能力可変手段7と、各作像装置1で作像すべき色成分画像があるか否かを判別する作像有無判別手段8と、作像有無判別手段8にて作像すべき色成分画像があると判別された作像装置1ではコロナ帯電器4に作像時の帯電能力Aを付与するように帯電能力可変手段7による帯電能力Aを設定する一方、作像すべき色成分画像がないと判別された作像装置1ではコロナ帯電器4の帯電能力Aの合計が作像時よりも低下するように帯電能力可変手段7による帯電能力Aを設定する帯電能力設定手段9とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、特にカラー画像を形成するために、色毎に対応した作像装置を例えば中間転写体に対して直列に並べてカラー画像を形成するようにした、所謂タンデム型の画像形成装置が広く知られている。このような画像形成装置における作像装置は、トナー像を保持する感光体等の像保持体と、像保持体を帯電する帯電装置と、帯電された像保持体に露光等によって形成された静電潜像を現像剤にて現像して可視像化する現像装置等が含まれ、作像装置夫々の現像装置によって、夫々色毎の現像剤による現像がなされてカラー画像が形成されるようになっている。
【0003】
このような複数の作像装置として、例えばイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの四色の作像装置を備える画像形成装置では、全ての作像装置を用いてフルカラー画像を形成する作像モードと、例えばブラック色の作像装置のみによってモノクロ画像を形成する作像モードとが混在して使用されるようになる。このような混在使用に対応するために、作像モードに応じて作像に関与しない作像装置を中間転写体から離間させ、作像装置を停止させる方式の画像形成装置が知られている。
【0004】
また、複数の作像装置を有する画像形成装置において、作像に関与しない作像装置での不要な劣化を防ぐようにした方式が知られている。特許文献1には、作像に関与しない作像装置の現像器を減速させて現像剤の劣化を抑えるようにした方式が開示されている。また、特許文献2には、放電生成物の発生及び像保持体への付着を少なくするために、像保持体に接触して帯電する接触帯電部材に印加する電流の直流成分をそのままにして交流成分を減少させる方式が開示されている。更に、特許文献3には、像保持体に付着した放電生成物に対し、作像装置が作像に関与していないときに除去するようにした方式が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2006−18109号公報(実施の形態1、図5)
【特許文献2】特開2005−25008号公報(発明の実施の形態、図5)
【特許文献3】特開2004−20660号公報(発明の実施の形態、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の技術的課題は、複数の作像装置を備えた画像形成装置にあって、作像を実施する作像装置と作像を停止する作像装置とが混在する作像モードを行う際に、作像を停止する作像装置における放電生成物の発生や像保持体への放電生成物の付着を抑えることで像保持体の長寿命化や長期に亘り高画質の維持を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、転写媒体へ転写可能な色成分画像を夫々形成する複数の作像装置を備えた画像形成装置であって、各作像装置は、表面に色成分画像を保持して移動する像保持体と、像保持体に離間して配置され且つ像保持体表面を帯電する一若しくは複数のコロナ帯電器を含む帯電装置と、像保持体に対向して設けられ、前記帯電装置によって帯電された像保持体に形成される静電潜像を現像剤で可視像化する現像装置とを有し、各作像装置の帯電装置には、前記一若しくは複数のコロナ帯電器の帯電能力を制御する帯電制御装置が設けられ、この帯電制御装置は、コロナ帯電器の帯電能力を変更する帯電能力可変手段と、各作像装置で作像すべき色成分画像があるか否かを判別する作像有無判別手段と、この作像有無判別手段にて作像すべき色成分画像があると判別された作像装置では一若しくは複数のコロナ帯電器に作像時の帯電能力を付与するように前記帯電能力可変手段による帯電能力を設定する一方、作像すべき色成分画像がないと判別された作像装置では一若しくは複数のコロナ帯電器の帯電能力の合計が作像時よりも低下するように前記帯電能力可変手段による帯電能力を設定する帯電能力設定手段とを備える画像形成装置である。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る画像形成装置のうち、前記帯電装置が、像保持体表面のうち現像装置による現像位置よりも像保持体の移動方向上流側に位置する主帯電位置にて像保持体に対し予め帯電が施される主コロナ帯電器を有する態様において、前記帯電能力設定手段は、作像有無判別手段にて作像すべき色成分画像がないと判別された作像装置では、主コロナ帯電器の帯電能力が作像時よりも小さくなるように前記帯電能力可変手段による帯電能力を設定する画像形成装置である。
請求項3に係る発明は、請求項1に係る画像形成装置のうち、前記帯電装置が、像保持体表面のうち現像装置による現像位置よりも像保持体の移動方向上流側に位置する主帯電位置にて像保持体に対し予め帯電が施される主コロナ帯電器と、現像位置よりも像保持体の移動方向下流側に位置する補助帯電位置にて像保持体に対し補助的な帯電が施される補助コロナ帯電器を有する態様において、前記帯電能力設定手段は、作像有無判別手段にて作像すべき色成分画像がないと判別された作像装置では、主コロナ帯電器及び補助コロナ帯電器の帯電能力が夫々作像時よりも小さくなるように前記帯電能力可変手段による帯電能力を設定する画像形成装置である。
請求項4に係る発明は、請求項1に係る画像形成装置のうち、前記帯電装置が、像保持体表面のうち現像装置による現像位置よりも像保持体の移動方向上流側に位置する帯電位置にて像保持体に対し予め帯電が施される主コロナ帯電器と、現像位置よりも像保持体の移動方向下流側に位置する補助帯電位置にて像保持体に対し補助的な帯電が施される補助コロナ帯電器を有する態様において、前記帯電能力設定手段は、作像有無判別手段にて作像すべき色成分画像がないと判別された作像装置では、主コロナ帯電器の帯電能力を作像時の条件とする一方、補助コロナ帯電器の帯電能力が作像時よりも小さくなるように前記帯電能力可変手段による帯電能力を設定する画像形成装置である。
【0009】
請求項5に係る発明は、請求項2又は3に係る画像形成装置において、前記帯電能力設定手段は、作像有無判別手段にて作像すべき色成分画像がないと判別された作像装置では、主コロナ帯電器の帯電能力が現像装置からの現像剤が像保持体へ飛散しない程度の大きさに収まるように帯電能力可変手段による帯電能力を設定する画像形成装置である。
【0010】
請求項6に係る発明は、請求項5に係る画像形成装置において、前記現像装置には、像保持体に対向配置され且つ現像剤を保持搬送する回転自在な現像剤保持体と、この現像剤保持体に現像剤を搬送する搬送部材と、現像装置の現像能力を制御する現像制御装置とが設けられ、現像制御装置は、現像剤保持体に変更自在な現像電圧を供給する現像電圧供給手段と、各作像装置で作像すべき色成分画像があるか否かを判別する作像有無判別手段と、作像有無判別手段にて作像すべき色成分画像があると判別された作像装置では現像剤保持体に作像時の現像電圧が供給されるように前記現像電圧供給手段による現像電圧を設定する一方、作像すべき色成分画像がないと判別された作像装置では現像剤保持体に作像時より小さい現像電圧が供給されるように前記現像電圧供給手段による現像電圧を設定する現像電圧設定手段とを備える画像形成装置である。
請求項7に係る発明は、請求項6に係る画像形成装置において、前記現像制御装置は、更に、前記現像剤保持体及び前記搬送部材の回転状態を変更する回転可変手段と、前記作像有無判別手段にて作像すべき色成分画像があると判別された作像装置では現像剤保持体及び搬送部材に作像時の回転状態を付与するように前記回転可変手段による回転状態を設定する一方、作像すべき色成分画像がないと判別された作像装置では現像剤保持体及び搬送部材が停止するように前記回転可変手段による回転状態を設定する回転状態設定手段とを備える画像形成装置である。
【0011】
請求項8に係る発明は、請求項2又は3に係る画像形成装置において、前記現像装置には、像保持体に対向配置され且つ現像剤を保持搬送する回転自在な現像剤保持体と、この現像剤保持体に現像剤を搬送する搬送部材と、現像装置の現像能力を制御する現像制御装置とが設けられ、現像制御装置は、前記現像剤保持体及び前記搬送部材の回転状態を変更する回転可変手段と、各作像装置で作像すべき色成分画像があるか否かを判別する作像有無判別手段と、作像有無判別手段にて作像すべき色成分画像があると判別された作像装置では現像剤保持体及び搬送部材に作像時の回転状態を付与するように前記回転可変手段による回転状態を設定する一方、作像すべき色成分画像がないと判別された作像装置では現像剤保持体及び搬送部材が停止するように前記回転可変手段による回転状態を設定する回転状態設定手段とを備える画像形成装置である。
【0012】
請求項9に係る発明は、請求項1乃至8のいずれかに係る画像形成装置において、前記帯電能力可変手段はコロナ帯電器の帯電電流を変更するものであり、前記帯電能力設定手段は、帯電能力を小さくするコロナ帯電器に対し、帯電電流を作像時よりも小さくするように帯電能力可変手段による帯電電流を設定する画像形成装置である。
請求項10に係る発明は、請求項1乃至8のいずれかに係る画像形成装置のうち、少なくとも一つのコロナ帯電器が、像保持体側に向かって開口する枠体と、前記枠体内にて枠体から絶縁されて設けられ且つ像保持体の回転方向と交差する方向に張られた一本以上の放電ワイヤと、枠体の前記開口側に設けられ且つ像保持体上の帯電電位を調整する調整電極とを有する態様において、前記帯電能力可変手段は前記調整電極に印加する調整電圧を変更するものであり、前記帯電能力設定手段は、帯電能力を小さくするコロナ帯電器に対し、前記調整電極に印加する調整電圧を作像時よりも小さくするように帯電能力可変手段による調整電圧を設定する画像形成装置である。
請求項11に係る発明は、請求項10に係る画像形成装置において、前記帯電能力可変手段は、更に、コロナ帯電器の帯電電流を変更するものであり、前記帯電能力設定手段は、帯電能力を小さくするコロナ帯電器が調整電極を有する場合には、このコロナ帯電器に対し、更に、帯電電流を作像時よりも小さくするように帯電能力可変手段による帯電電流を設定する画像形成装置である。
【0013】
請求項12に係る発明は、請求項2乃至4のいずれかに係る画像形成装置のうち、補助コロナ帯電器を有する態様において、前記帯電能力設定手段は、作像有無判別手段にて作像すべき色成分画像がないと判別された作像装置では、補助コロナ帯電器の帯電電流をゼロにするように帯電能力可変手段による帯電電流を設定する画像形成装置である。
請求項13に係る発明は、請求項1乃至12のいずれかに係る画像形成装置において、前記像保持体は少なくとも一種以上の電荷輸送性化合物を含み且つ架橋構造を有する樹脂製の表面保護層を備える画像形成装置である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、複数の作像装置を備えた画像形成装置にあって、作像を実施する作像装置と作像を停止する作像装置とが混在する作像モードを行う際に、作像を停止する作像装置での放電生成物の発生及び像保持体への放電生成物の付着を抑えることができ、像保持体の長寿命化や長期に亘る高画質性維持を図ることができる。
請求項2に係る発明によれば、本構成を有しないものに比して、主コロナ帯電器の帯電能力を小さくすることで、放電生成物の発生及び像保持体への放電生成物の付着を効果的に抑えることができる。
請求項3に係る発明によれば、本構成を有しないものに比して、主コロナ帯電器及び補助コロナ帯電器の帯電能力を共に小さくすることで、放電生成物の発生及び像保持体への放電生成物の付着を一層効果的に抑えることができる。
請求項4に係る発明によれば、本構成を有しないものに比して、補助コロナ帯電器の帯電能力を小さくすることで、不要な放電生成物の発生を抑え、像保持体への放電生成物の付着を抑えることができる。
【0015】
請求項5に係る発明によれば、本構成を有しないものに比して、作像を停止している作像装置にて、現像装置から像保持体への不要な現像剤の飛散を抑えることができ、良好な画像を形成することができるようになる。
請求項6に係る発明によれば、本構成を有しないものに比して、作像を停止している作像装置にて、現像剤保持体からの不要な現像剤の飛散を防ぐことができ、一層良好な画像形成を行うことができるようになる。
請求項7に係る発明によれば、本構成を有しないものに比して、作像を停止している作像装置にて、現像剤の不要な劣化を抑えることができると共に、現像剤保持体からの不要な現像剤の飛散を防ぐことができ、より長期に亘る良好な画像形成を行うことができるようになる。
請求項8に係る発明によれば、本構成を有しないものに比して、作像を停止している作像装置にて、現像剤保持体及び搬送部材の回転を停止することで、現像剤の不要な劣化を抑えることができるようになる。
【0016】
請求項9に係る発明によれば、本構成を有しないものに比して、帯電電流を変更するという簡単な操作でコロナ帯電器の帯電能力を小さくすることができ、制御系が簡易化される。
請求項10に係る発明によれば、調整電極(所謂グリッド電極)を備える態様において、本構成を有しないものに比して、調整電極の電位を低くする簡易な方式で像保持体の帯電電位を安定して低くすることができるようになり、放電生成物の発生及び像保持体への付着を抑えることができるようになる。
請求項11に係る発明によれば、本構成を有しないものに比して、コロナ帯電器の帯電電流及び調整電極の電位を共に小さくすることで、放電生成物の発生及び像保持体への付着を一層抑えることができるようになる。
請求項12に係る発明によれば、本構成を有しないものに比して、補助コロナ帯電器の帯電電流をゼロとすることで、当該補助コロナ帯電器による放電生成物の発生をなくすことができるようになる。
請求項13に係る発明によれば、像保持体が表面保護層を備えることで、像保持体の耐摩耗性が向上し、長期に亘る安定した高画質性維持を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
◎実施の形態モデルの概要
先ず、本発明が適用される実施の形態モデルの概要について説明する。
図1は本発明を具現化する実施の形態モデルに係る画像形成装置の概要を示したものである。同図において、本実施の形態モデルの画像形成装置は、転写媒体Mへ転写可能な色成分画像を夫々形成する複数の作像装置1(1A,1B)を備えた画像形成装置であって、各作像装置1(1A,1B)は、表面に色成分画像を保持して移動する像保持体2と、像保持体2に離間して配置され且つ像保持体2表面を帯電する一若しくは複数のコロナ帯電器4を含む帯電装置3と、像保持体2に対向して設けられ、帯電装置3によって帯電された像保持体2に形成される静電潜像を現像剤で可視像化する現像装置5とを有し、各作像装置1の帯電装置3には、一若しくは複数のコロナ帯電器4の帯電能力Aを制御する帯電制御装置6が設けられ、帯電制御装置6は、コロナ帯電器4の帯電能力Aを変更する帯電能力可変手段7と、各作像装置1で作像すべき色成分画像があるか否かを判別する作像有無判別手段8と、作像有無判別手段8にて作像すべき色成分画像があると判別された(図中例えばmで示す)作像装置1では一若しくは複数のコロナ帯電器4に作像時の帯電能力Aを付与するように帯電能力可変手段7による帯電能力Aを設定する一方、作像すべき色成分画像がないと判別された(図中例えばmで示す)作像装置1では一若しくは複数のコロナ帯電器4の帯電能力Aの合計が作像時よりも低下するように帯電能力可変手段7による帯電能力Aを設定する帯電能力設定手段9とを備えている。尚、図1では、作像装置1(1A,1B)を二個としたものを示したが、作像装置1の数量はこれに限られず、複数あればよい。また、転写媒体Mとしては、作像装置1で形成された画像を一時的に保持する中間転写体の態様や、直接転写される記録媒体の態様が挙げられる。
【0018】
ここで、帯電装置3としては、一若しくは複数のコロナ帯電器4が含まれればよく、例えば像保持体2に対して静電潜像を形成するために帯電する帯電器としては、コロナ帯電器4であってもよいし、接触型の帯電器であっても差し支えない。
【0019】
次に、帯電能力を低下させることについて説明する。図2は、代表的に作像装置1を二つ(具体的には1A,1B)備えた画像形成装置を仮定したときの帯電能力Aの変更の様子を示したもので、二つの作像装置1A,1Bが共に作像すべき色成分画像があると判別された場合((a)の場合)、一方の作像装置1Bは作像すべき色成分画像があり、他方の作像装置1Aには作像すべき色成分画像がないと判別された場合((b)(c)の場合)を想定すると、コロナ帯電器4の帯電能力Aは、(a)では共に作像時の帯電能力Aを付与し、(b)では作像時の一方の作像装置(本例では1A)の帯電能力Aを作像時の帯電能力Aから低下させるようにしている。また、(c)では、帯電能力Aをゼロ(A=0)としている。このように、一方の作像装置1の帯電能力Aを低下させることにより全体としての帯電能力Aが低下するようになる。このとき、例えば一方の帯電能力Aが低下し、もう一方の帯電能力Aが若干上昇したとしても、全体としての帯電能力Aが低下するようになっていればよい。
【0020】
そして、像保持体2としては移動自在な構成であればよく、ドラム状、ベルト状いずれであっても差し支えない。また、コロナ帯電器4は放電ワイヤからのコロナ放電を利用して像保持体2表面を帯電するものであり、通常、像保持体2の表面側に離間配置されるが、例えば像保持体2がベルト状にあっては、像保持体2を挟んだ両側に設け、像保持体2の両側から帯電するようにしても差し支えない。更に、コロナ帯電器4の放電ワイヤの本数や、コロナ帯電器4が像保持体2の帯電電位を微調整するための調整電極(所謂グリッド電極)を備えるか否かは問わない。そして、コロナ帯電器4としては、像保持体2に静電潜像を形成するために主帯電位置にて像保持体2に対し予め帯電を施す主コロナ帯電器4aや、現像位置より下流側の補助帯電位置にて像保持体2に対し主コロナ帯電器4aとは異なる補助的な帯電を施す補助コロナ帯電器4bとして、例えば像保持体2上の残留トナーを清掃する前に像保持体2側を帯電する清掃前帯電器や、像保持体2上のトナー像を転写媒体Mに転写する前の転写前帯電器等が挙げられる。また、コロナ帯電器4としては、上述の補助コロナ帯電器4bのみを有して、例えば主コロナ帯電器4aの代わりに接触型帯電器を備える態様も含む。更に、主コロナ帯電器4aや補助コロナ帯電器4bの数量は一つに限られず、複数備えるようにしてもよく、例えば隣接して配置するようにしてもよいし、離間して配置するようにしてもよい。
【0021】
また、使用される現像剤としては、トナーのみからなる一成分現像剤であってもよいし、トナー及びキャリアからなる二成分現像剤を用いるようにしても差し支えない。
更に、「色成分画像」の色とは、カラー色に限られず、黒色や、透明色をも含む趣旨である。
【0022】
そして、帯電能力Aを小さくするには、像保持体2への帯電能力Aが小さくなるようにするものであればよく、例えばコロナ帯電器4の放電ワイヤに通電する帯電電流の大きさを小さくしたり、印加する電圧を変更させるようにしても差し支えない。更には、例えば主コロナ帯電器4aが後述する調整電極を有するものである場合には、調整電極に印加する電圧を変更させるようにしてもよい。
【0023】
そして、コロナ帯電器4として、現像位置よりも像保持体2の移動方向上流側に位置する主帯電位置にて像保持体2に対し潜像形成前に予め帯電を施す主コロナ帯電器4aを備える態様にあっては、図1に示すように、帯電能力設定手段9は、作像有無判別手段8にて作像すべき色成分画像がないと判別された(m)作像装置1では、主コロナ帯電器4aの帯電能力Aが作像時よりも小さくなるように帯電能力可変手段7による帯電能力Aを設定することが好ましい。このとき、主コロナ帯電器4aを有するものであればよく、コロナ帯電器4として主コロナ帯電器4a以外の補助コロナ帯電器4bを備えるか否かは問われない。
【0024】
また、コロナ帯電器4として、主コロナ帯電器4a及び補助コロナ帯電器4bを備える態様にあっては、帯電能力設定手段9は、作像有無判別手段8にて作像すべき色成分画像がないと判別された(m)作像装置1では、主コロナ帯電器4a及び補助コロナ帯電器4bの帯電能力Aが夫々作像時よりも小さくなるように帯電能力可変手段7による帯電能力Aを設定することが好ましい。あるいは、帯電能力設定手段9は、作像有無判別手段8にて作像すべき色成分画像がないと判別された(m)作像装置1では、主コロナ帯電器4aの帯電能力Aを作像時の条件とする一方、補助コロナ帯電器4bの帯電能力Aが作像時よりも小さくなるように帯電能力可変手段7による帯電能力Aを設定することが好ましい。尚、補助コロナ帯電器4bを複数備える態様にあっては、少なくとも一つの補助コロナ帯電器4bの帯電能力を低減するようにすればよい。
【0025】
また、作像を停止する作像装置1にて、主コロナ帯電器4aの帯電能力Aが小さくなる態様において、現像装置5から像保持体2への不要な現像剤の飛散を防ぐ観点から、帯電能力設定手段9は、作像有無判別手段8にて作像すべき色成分画像がないと判別された作像装置1では、主コロナ帯電器4aの帯電能力Aが現像装置5からの現像剤が像保持体2へ飛散しない程度の大きさに収まるように帯電能力可変手段7による帯電能力Aを設定することが好ましい。仮に、主コロナ帯電器4aの帯電能力Aを小さくし過ぎると、帯電された像保持体2の帯電電位が小さくなり過ぎ、現像装置5との対向する現像位置では現像装置5側から像保持体2への現像剤の飛散が生じ易くなり、かぶり等の画質劣化を生じるようになる。
【0026】
そして、この場合、現像剤の飛散を効果的に防ぐ観点からすれば、現像装置5が、像保持体2に対向配置され且つ現像剤を保持搬送する回転自在な現像剤保持体5aと、この現像剤保持体5aに現像剤を搬送する搬送部材を有し、更に、現像装置5の現像能力を制御する現像制御装置が設けられるものであり、現像制御装置が、現像剤保持体5aに変更自在な現像電圧を供給する現像電圧供給手段と、各作像装置1で作像すべき色成分画像があるか否かを判別する作像有無判別手段8と、作像有無判別手段8にて作像すべき色成分画像があると判別された作像装置1では現像剤保持体5aに作像時の現像電圧が供給されるように現像電圧供給手段による現像電圧を設定する一方、作像すべき色成分画像がないと判別された作像装置1では現像剤保持体5aに作像時より小さい現像電圧が供給されるように現像電圧供給手段による現像電圧を設定する現像電圧設定手段とを備えることが好ましい。尚、この作像有無判別手段8としては、帯電制御装置6のものとは別に設けてもよいが、効率的運用を図る観点から、兼用することが好ましい。
【0027】
更に、作像を停止している作像装置1での現像剤の不要な劣化を抑える観点から、現像制御装置は、更に、現像剤保持体5a及び搬送部材の回転状態を変更する回転可変手段と、作像有無判別手段8にて作像すべき色成分画像があると判別された作像装置1では現像剤保持体5a及び搬送部材に作像時の回転状態を付与するように回転可変手段による回転状態を設定する一方、作像すべき色成分画像がないと判別された作像装置では現像剤保持体5a及び搬送部材が停止するように回転可変手段による回転状態を設定する回転状態設定手段とを備えることが好ましい。仮に、作像を停止している作像装置1にて、現像剤保持体5a及び搬送部材の回転状態を作像時の回転状態のままにしておくと、現像装置5内で現像剤の不要な撹拌が行われ続けるようになり、その分、現像剤の劣化を生じるようにもなる。
【0028】
そして、作像を停止する作像装置1にて、現像装置5内の現像剤の不要な劣化を抑える観点からすれば、現像装置5が、像保持体2に対向配置され且つ現像剤を保持搬送する回転自在な現像剤保持体5aと、この現像剤保持体5aに現像剤を搬送する搬送部材を有し、更に、現像装置5の現像能力を制御する現像制御装置が設けられるものであり、現像制御装置5が、現像剤保持体5a及び搬送部材の回転状態を変更する回転可変手段と、各作像装置1で作像すべき色成分画像があるか否かを判別する作像有無判別手段8と、作像有無判別手段8にて作像すべき色成分画像があると判別された作像装置1では現像剤保持体5a及び搬送部材に作像時の回転状態を付与するように回転可変手段による回転状態を設定する一方、作像すべき色成分画像がないと判別された作像装置1では現像剤保持体5a及び搬送部材が停止するように回転可変手段による回転状態を設定する回転状態設定手段とを備えることが好ましい。
このように現像剤保持体5a及び搬送部材の回転を停止すると、像保持体2への微量のトナーかぶりやトナーから離脱した外添剤等の供給がなされなくなるため、像保持体2を清掃する清掃部材の潤滑性が低下することで清掃部材の負荷が増大し、清掃装置の劣化が生じ易くなる懸念があるが、そもそも帯電能力が低下されている構成においては、放電生成物の発生が抑えられ、像保持体2への放電生成物の付着が抑えられることから、現像剤の劣化及び清掃装置の劣化の両者が抑えられるようになる。
【0029】
そして、帯電能力Aを小さくする操作を簡略化させる観点からすれば、帯電能力可変手段7がコロナ帯電器4の帯電電流を変更する場合、帯電能力設定手段9は、帯電能力Aを小さくするコロナ帯電器4に対し、帯電電流を作像時よりも小さくするように帯電能力可変手段7による帯電電流を設定することが好ましい。また、コロナ帯電器4として調整電極を有する態様にあっては、帯電能力可変手段7は調整電極に印加する調整電圧を変更する場合、帯電能力設定手段9は、帯電能力Aを小さくするコロナ帯電器4に対し、調整電極に印加する調整電圧を作像時よりも小さくするように帯電能力可変手段7による調整電圧を設定することが好ましい。更に、帯電能力設定手段9は、帯電能力Aを小さくするコロナ帯電器4が調整電極を有する場合には、このコロナ帯電器4に対し、更に、帯電電流を作像時よりも小さくするように帯電能力可変手段7による帯電電流を設定することが好ましい。
【0030】
そして、コロナ帯電器4として補助コロナ帯電器4bを有する態様にあっては、補助コロナ帯電器4bの帯電能力Aを容易に低下させる観点から、帯電能力設定手段9は、作像有無判別手段8にて作像すべき色成分画像がないと判別された作像装置1では、補助コロナ帯電器4bの帯電電流をゼロにするように帯電能力可変手段7による帯電電流を設定することが好ましい。このような態様にあっては、補助コロナ帯電器4bの帯電電流をゼロにするという簡単な構成で帯電能力Aの低下を図ることができるようになる。尚、補助コロナ帯電器4bの数量は特に限定さればいが、補助コロナ帯電器4bを複数備える場合、帯電電流をゼロとする対象は一部のものであってもよいし、全てのものを対象とするようにしてもよい。また、このような補助コロナ帯電器4bの帯電電流をゼロにする際、主コロナ帯電器4aの帯電能力Aは作像時と同様にしてもよいし、作像時より低下させるようにしてもよい。尚、主コロナ帯電器4aの代わりに接触型帯電器を使用することもある。
【0031】
更に、放電生成物の発生及び付着を抑え且つ長期に亘る像保持体2の高画質性を維持する観点から、像保持体2は、少なくとも一種以上の電荷輸送性化合物を含み且つ架橋構造を有する樹脂製の表面保護層を備えることが好ましい。このような表面保護層を設けることで、像保持体2の耐摩耗性を更に向上させることができるようになる。
【0032】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明をより詳細に説明する。
◎実施の形態1
図3は上述の実施の形態モデルで示した画像形成装置の実施の形態1を示す。同図において、本実施の形態の画像形成装置は、トナー像を一時的に保持搬送可能な中間転写ベルト30の直線状に張られた部分に沿って例えばイエロー(Y色)、マゼンタ(M色)、シアン(C色)、ブラック(K色)の四色の作像を行う四つの作像装置10(10Y〜10K)を並べた所謂タンデム型のフルカラー用画像形成装置である。
【0033】
夫々の作像装置10(10Y〜10K)は、トナー像を保持する回転可能な像保持体としての感光体11を有し、感光体11の周りには、現像前の感光体11を初期帯電する主コロナ帯電器12、主コロナ帯電器12にて帯電された感光体11に潜像を形成するレーザー走査装置からなる露光装置13、露光装置13によって所定の露光がなされて形成された感光体11上の静電潜像を現像剤にて現像することでトナー像として可視像化する現像装置14、中間転写ベルト30を挟んで感光体11に対向配置されて感光体11上のトナー像を中間転写ベルト30上に転写する一次転写装置15、転写を終えた感光体11上の残留トナーを清掃する清掃装置16等が設けられている。尚、本実施の形態では、露光装置13は、四つの作像装置10(10Y〜10K)の全ての感光体11を同時に露光できるように構成されている。尚、作像装置10の配列はこれに限られるものではなく、作像装置10の数量もこれに限られない。
【0034】
中間転写ベルト30は、複数の張架ロール31〜34に掛け渡され、例えば張架ロール31を駆動ロールとして循環するようになっている。そのため、夫々の作像装置10によって形成された各色トナー像が、中間転写ベルト30の回転によって、中間転写ベルト30上で順次多重化され、多重化された多重化トナー像は中間転写ベルト30の循環に連れて移動する。また、張架ロール34と中間転写ベルト30を挟んで対向する位置には、中間転写ベルト30上の多重化トナー像を記録材S上に一括転写する二次転写装置35が設けられ、張架ロール34をバックアップロールとして両者の間に中間転写ベルト30上の多重化トナー像を記録材S上に転写するための転写電界が作用するようになっている。尚、図中符号36は、中間転写ベルト30上の残留トナーを清掃するベルト清掃装置である。
【0035】
一方、本実施の形態における記録材Sの搬送系は次のようになっている。図示外の記録材供給部から供給された記録材Sは、レジストロール37によって一旦位置決め規制された後に、所定のタイミングで二次転写部位(張架ロール34と二次転写装置35とが対向する部位)に搬送される。二次転写部位では、記録材S上に中間転写ベルト30上の多重化トナー像が一括転写され、トナー像が一括転写された記録材Sは、搬送ベルト38を介して定着装置39に搬送されて例えば加熱及び加圧によるトナー像の定着が行われる。トナー像が定着された記録材Sは、図示外の記録材排出部に排出されて収容される。
【0036】
そして、本実施の形態では、画像形成時の各種制御が制御装置50によってなされるようになっており、特に、四つの作像装置10Y〜10Kの各種制御もこの制御装置50によって行われるようになっている。
【0037】
本実施の形態では、四つの作像装置10(10Y〜10K)の構成は使用する現像剤が異なる他は略同一のため、ここでは、一つの作像装置10について図4を基に更に詳細に説明する。本実施の形態の主コロナ帯電器12は、感光体11側に対し開口を有する例えばアルミニウム合金等にて構成される枠体としてのケース12aと、ケース12a内にてケース12aから絶縁されて張られた放電ワイヤ12bと、ケース12aの開口側に設けられた調整電極であるグリッド電極12cとを有するものである。また、放電ワイヤ12bにはバイアス電源21が接続され、放電ワイヤ12bに流れる帯電電流を変更できるようになっている。一方、グリッド電極12cにはバイアス電源22が接続されている。このバイアス電源22は、グリッド電極12cに調整電圧を印加するようになっており、更に、調整電圧自体も可変できるようになっているが、ここでは調整電圧を一定としている。つまり、本実施の形態では、バイアス電源21が帯電能力可変手段に相当するものとなっている。尚、放電ワイヤ12bの数量は一本に限られず、複数本備えるようにしても差し支えない。また、放電ワイヤ12bの代わりに例えば鋸歯状の多針電極を用いるようにしてもよい。
【0038】
また、本実施の形態の現像装置14は、感光体11に対向配置される現像ロール14aを有し、この現像ロール14aによって現像剤(本例では二成分現像剤を用いるが、二成分現像剤に限られず、トナーのみの一成分現像剤を用いるようにしても差し支えない)を保持搬送し、感光体11と現像ロール14aとが対向する現像位置に現像剤を供給するようになっている。更に、この現像位置では、現像ロール14aと感光体11との間にバイアス電源23が接続され、現像ロール14a上の現像剤からトナーを感光体11上の静電潜像に対し飛翔させる方向の現像電界が作用するようになっている。そして、現像装置14には、現像ロール14aに現像剤を供給するための搬送部材14bが設けられている。
【0039】
更に、一次転写装置15にはバイアス電源24が接続され、感光体11上のトナー像を中間転写ベルト30上に転写するための一次転写電界が作用するようになっている。
【0040】
ここで、本実施の形態で用いられる感光体11について説明する。本実施の形態の感光体11は、図5に示すように、例えばアルミニウム合金からなるドラム状の導電性基材111の表面に、下引き層112を形成し、その上に電荷発生層114、電荷輸送層115、保護層116を順次積層した構成のものとなっている。そして、この例では、電荷発生層114、電荷輸送層115及び保護層116の三層構成が感光層113を構成するものとなっている。
【0041】
下引き層112は、感光層113を帯電する際に、導電性基材111から感光層113への電荷注入を阻止すると共に、感光層113と導電性基材111との密着性を向上させるようにしたもので、バインダ中に例えば金属酸化物微粒子を含んだ構成のものとなっている。また、電荷発生層114は、光が照射されることにより層内に電子及び正孔のキャリア対を発生するものとなっている。更に、電荷輸送層115は、光照射によって電荷発生層114で発生したキャリアを輸送できるようになっている。電荷輸送層115は、例えばバインダ及び電荷輸送性化合物を溶媒に溶解または分散させた溶液を塗布/乾燥することで形成される。尚、本実施の形態では電荷輸送層115は正孔をキャリアとするものとなっている。
【0042】
そして、保護層116は、感光体11の外周面の耐摩耗性を向上させるために設けられたもので、少なくとも一種以上の電荷輸送性化合物を含有する樹脂にて構成されている。このような保護層116を構成する樹脂としては、感光体11として十分な耐摩耗性を有し且つ十分な硬度を確保するために、架橋構造を有するものを用いることが好ましい。仮に、このような樹脂を用いない場合には、保護層116として十分な表面硬度が得られず、また、保護層116自体に傷が付き易くなったり、摩耗が進行し易くなる。そのため、特に、作像速度を速めたり、長期に亘る作像を行うような適用に際してこのような保護層116が機能しない感光体11を用いると、高い画質を得ることができなくなる。本実施の形態では、保護層116の樹脂として架橋構造を有する樹脂を用いることで、感光体11として長期に亘る高画質画像を得ることができるようになる。
【0043】
また、保護層116を構成する樹脂としては、架橋構造を有する樹脂に加え、必要に応じて架橋構造を持たないバインダ樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂等からなる潤滑性微粒子を含むようにしてもよい。更に、保護層116の形成に当たって、必要に応じてシリコーン樹脂やアクリル樹脂等からなるハードコート剤を使用するようにしてもよい。
【0044】
このような保護層116を形成するには、架橋構造を有する樹脂を構成する前駆体を少なくとも含む溶液を用いるようにすればよく、このような架橋構造を有する樹脂としては次のものが挙げられる。保護層116の硬度を確保する観点から各種材料を用いることができ、例えばフェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、シロキサン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられ、中でも、耐久性の点からは、フェノール樹脂、メラミン樹脂及びベンゾグアナミン樹脂が好適であり、特に、メラミン樹脂が最も好ましい。
【0045】
更に、架橋構造を有する樹脂としては、電気特性や画質維持性の観点から、樹脂自体が電荷輸送性を有している(電荷輸送能を有する構造単位を含んでいる)ことが好ましい。この場合、積層構成型の感光層113では、保護層116を電荷輸送層115の一部として機能させるようにすることが好ましく、この点、保護層116に電荷輸送性を持たせる方がよい。このような電荷輸送能を有する構造単位としては、水酸基、カルボキシル基、アルコキシシリル基、エポキシ基、チオール基及びアミノ基から選択される少なくとも一種のものを含む樹脂であることが好ましい。
本実施の形態では、感光体11としてこのような構成のものとしたことにより、耐摩耗性が向上し、より高画質の作像が長期に亘って可能なものとなっている。
【0046】
次に、本実施の形態における制御装置50について説明する。制御装置50は、図6に示すように、形成画像毎の画像信号に基づいて夫々の作像装置10Y〜10Kに対する作像すべき色成分画像があるか否かを判別する作像有無判別部51と、この作像有無判別部51の判別結果に基づいて感光体11の駆動系を制御する感光体制御部52、主コロナ帯電器12のバイアス電源21を制御する帯電制御部53、現像ロール14a及び搬送部材14bの回転駆動系や現像バイアス電源23を制御する現像制御部54と、作像有無判別部51の判別結果に基づいて感光体制御部52、帯電制御部53、現像制御部54をどのように制御するかの情報が記憶された記憶部55等を備えている。また、制御装置50では、夫々の作像装置10での露光制御、転写制御や各種搬送制御等も行っているが、ここでは省略している。尚、ここでいう画像信号とは、形成画像毎に作像装置10が作像を行うか否かを判断できる情報であればよく、本例では四色分の色成分画像が含まれる情報を意味するもので、情報の形成式は特に限定されるものではない。
【0047】
また、ここでは、形成する画像毎に対応した画像信号に基づいて制御する方式を採っているが、例えば事前にモード設定を行うことで、一部の作像装置10では画像信号が入力されないような方式であっても同様である。更に、作像有無判別部51や感光体制御部52、帯電制御部53、現像制御部54は、各色作像装置10をまとめて一つ設ける態様を示しているが、例えば作像装置10毎に夫々備えるようにしても差し支えない。更には、作像有無判別部51のみをまとめて設けるようにしても差し支えない。
【0048】
このような制御装置50による制御フローの例について説明する。図7は、本実施の形態の制御装置50での制御フローを示すもので、記録材に出力すべき形成画像の画像信号を制御装置50が入手される(S1)と、この画像信号から、作像有無判別部51では、夫々の作像装置10(10Y〜10K)に対し、作像すべき色成分画像があるか否かの判別がなされる。つまり、カラー画像であれば全ての作像装置10による作像が予定される一方、白黒画像ではK色の作像装置10Kのみの作像が予定されると共に他色の作像装置10Y,10M,10Cでは作像がないものと判別がなされる(S2)。そこで、カラーと判別された場合には全て(全ての作像装置10)の主コロナ帯電器12の帯電電流(ワイヤ電流)を制御装置50内の記憶部55に記憶された作像時の条件に設定する(S3)。
【0049】
一方、ステップS2にて、カラーではなく、白黒画像を形成すると判別された場合には、作像を行うK色の作像装置10Kの主コロナ帯電器12の帯電電流を作像時の条件にすると共に、他色の作像装置10Y,10M,10Cの主コロナ帯電器12の帯電電流を作像時の条件より低下させるようにする(S4)。
【0050】
次に、夫々設定された条件で一枚の画像形成が完了したかどうかの判断がなされ(S5)、一枚の画像形成が完了したと判断されると、全ての画像形成は完了したかどうかの判断がなされる(S6)。そこで、全ての画像形成が完了した場合は終了し、そうでない場合にはステップS2に戻り、以降のステップを繰り返す。
【0051】
次に、このような制御が行われる作像装置10での各種制御タイミングについて説明する。図8は画像信号に対する感光体11の動作、主コロナ帯電器12の帯電電流(ワイヤ電流)、現像装置14での制御タイミングを示したタイミングチャートである。ここでは、画像信号として、形成画像がカラー画像と白黒画像とが交互に出力されるような信号が入力されるものとし、四枚の画像形成で完了する場合を示している。
【0052】
先ず、画像信号としてカラー画像用の画像信号が制御装置50で入手されると、所定のタイミングで全ての作像装置10の感光体11が回転を開始する。この感光体11の回転とほぼ同じタイミングで、全ての作像装置10の主コロナ帯電器12の帯電電流が作像時の条件であるIに設定される。そして、感光体11が主コロナ帯電器12によって帯電され、露光装置13によって露光されて静電潜像が形成されると、この形成された静電潜像に対して現像を行うように現像装置14が起動し、現像ロール14aが回転すると共に現像ロール14aに印加される現像電圧が作像時の条件であるVB0に設定される。
その結果、夫々の作像装置10(10Y〜10K)で所定の作像が行われ、中間転写ベルト30上に多重化されたトナー像が形成され、カラー画像が形成されるようになる。
【0053】
次に、画像信号が白黒画像用に切り替わると、色成分画像がない作像装置10Y,10M,10Cでは、感光体11の回転はそのまま継続されるものの、主コロナ帯電器12の帯電電流を低下させる。つまり、K色の作像装置10Kの主コロナ帯電器12の帯電電流はそのまま作像時の条件を維持するものの、作像が停止されるカラー色である三色の作像装置10Y,10M,10Cの主コロナ帯電器12の帯電電流を作像時の条件であるIから作像を停止するものでの条件であるIに低下させる。また、現像装置14では、作像が停止される作像装置10Y,10M,10Cの現像ロール14a及び搬送部材14bの回転を停止させる。そして、このような設定がなされた状態で白黒画像の画像形成が実施され、その後、このような操作が形成画像毎に繰り返される。
【0054】
本実施の形態では、このようなタイミング制御を行うようにすることで、作像すべき色成分画像がない作像装置(本例では白黒画像のときのカラー色の作像装置10(具体的には10Y,10M,10C))では、主コロナ帯電器12による放電量が作像時の条件より少なくなり、その分、放電により発生するオゾンや窒素酸化物等の放電生成物の発生量や感光体11表面への放電生成物の付着量が少なくなる。また、現像装置14の現像ロール14a及び搬送部材14bを停止することで、現像装置14内の現像剤が徒に撹拌されることもなく、現像剤の劣化も抑えるようになる。
【0055】
ここで、帯電電流について説明する。図9は、主コロナ帯電器12での帯電電流(ワイヤ電流Iwir)と感光体11の表面電位との関係を示したもので、(a)は主コロナ帯電器12の構成を示し、(b)が帯電電流Iwirの変化の様子を示したものとなっている。帯電電流Iwirは、主コロナ帯電器12の放電ワイヤ12bに流れる電流であり、バイアス電源21を調整することで小さくすることができる。そして、帯電電流Iwirを小さくすると、感光体11の表面電位(帯電電位に相当)は徐々に低下して行き、あるところから急激に低下するようになる。そのため、帯電電流Iwirを作像時の条件より低下させることで、感光体11の表面電位を小さくすることが容易にできるようになる。尚、図9にてバイアス電源21,22を直流電圧で示しているが、これに限定されるものではなく、例えば使用するトナーの帯電特性等によって電界方向を決めたり、適宜交流バイアスを重畳するようにしてもよい。
【0056】
更に、帯電電流Iwirは、作像時においては感光体11上を安定した帯電電位に帯電させるために、十分な電流を流す必要がある。つまり、感光体11における帯電電位の面内での変動があると、例えばハーフトーン画像でむらが生じ易くなり、得られる画質が低下したものとなる。このような点を防ぐように、通常、帯電電流Iwirとしては十分な電流を流す必要がある。しかしながら、作像をしない場合には、主コロナ帯電器12による帯電は感光体11上に非画像部が形成できる程度のものであればよく、その点、帯電電位を作像時のように安定させる必要がないことから、帯電電流Iwirを作像時の条件より低下させるようにしても問題の発生はない。
【0057】
このように、主コロナ帯電器12の帯電電流Iwirを作像時の条件より低下させることで、感光体11表面での放電現象を作像時の条件のときよりも少なくすることができ、放電生成物の発生量及び付着量を少なくすることができるようになる。
本実施の形態では、主コロナ帯電器12としてグリッド電極12cを備える態様を示したが、主コロナ帯電器12としてグリッド電極12cを備えないものを使用するようにしても差し支えない。
【0058】
◎実施の形態2
図10は、実施の形態2の作像装置10の主コロナ帯電器12を示すもので、実施の形態1の主コロナ帯電器12が帯電電流を変化させるようにしたものであるのに対し、本実施の形態では主コロナ帯電器12のグリッド電極12cに印加される調整電圧を変化させることにより、帯電能力を低下させるようにしたものとなっている。
すなわち、グリッド電極12cを備える態様にあっては、十分な帯電電流(ワイヤ電流)の下では、帯電電流の感光体11の帯電電位に与える寄与は比較的少なく、帯電電位を変化させるには、グリッド電極12cに印加される調整電圧による方が支配的になる。つまり、このような構成においては、感光体11とグリッド電極12c間の電界収束作用が利用され、感光体11の帯電電位がグリッド電極12cの調整電位(調整電圧に相当)に近づいてくると、放電ワイヤ12bからの帯電電流がケース12aやグリッド電極12c側に流れることで、感光体11の帯電電位を調整電位に収束させるようになっている。
【0059】
そのため、このようなグリッド電極12cを備える態様では、グリッド電極12cに印加する調整電圧を変化させることで、感光体11の帯電電位が容易に変更されるようになる。
【0060】
本実施の形態では、グリッド電極12cに印加する調整電圧のみを変化させる態様を示したが、グリッド電極12cに印加する調整電圧に加えて、実施の形態1のように、放電ワイヤ12bに流れる帯電電流を組み合わせて変化させ、感光体11の帯電電位を変更するようにしても差し支えない。
【0061】
◎実施の形態3
図11は、実施の形態3の作像装置での制御装置50の制御フローを示す。本実施の形態の作像装置10は実施の形態1と同様に構成(装置構成は図4参照)されるため、ここではその詳細な説明を省略し、制御装置50での制御フローについて説明する。実施の形態1が主コロナ帯電器12の帯電電流Iwirを変更する態様を示したのに対し、本実施の形態では、作像を停止している感光体11に不要なかぶり(現像剤の飛散)を起こさせないようにするため、現像ロール14aに印加する現像電圧も同じように変更させるようにしたものとなっている。また、本実施の形態では、現像剤への不要な劣化を抑えるように、現像ロール14aや搬送部材14bを停止するようにしている。
【0062】
図11に示すように、記録材に出力すべき形成画像の画像信号を制御装置50を入手する(S11)と、この画像信号から、夫々の作像装置10(10Y〜10K)に対し、作像すべき色成分画像があるか否かの判別がなされる(S12)。そこで、カラーと判別された場合には全て(全ての作像装置10)の主コロナ帯電器12の帯電電流(ワイヤ電流)を制御装置50内の記憶部55に記憶された作像時の条件に設定し(S13)、また、全ての現像装置14の現像電位(バイアス電源23による現像電圧に相当)を作像時の条件にする(S14)。
【0063】
一方、ステップS12にて、白黒画像を形成すると判別された場合には、作像を行うK色の作像装置10Kの主コロナ帯電器12の帯電電流を作像時の条件にすると共に、他色の作像装置10Y,10M,10Cの主コロナ帯電器12の帯電電流を作像時の条件より低下させるようにする(S15)。また、K色の作像装置10Kの現像装置14の現像電圧を作像時の条件とし、他色の作像装置10Y,10M,10Cの現像装置14の現像電圧を作像時の条件より低下させると共に、これらの現像装置14の現像ロール14a及び搬送部材14bを停止させる(S16)。
【0064】
次に、夫々設定された条件で一枚の画像形成が完了したかどうかの判断がなされ(S17)、一枚の画像形成が完了したと判断されると、全ての画像形成は完了したかどうかの判断がなされる(S18)。そこで、全ての画像形成が完了した場合は終了し、そうでない場合にはステップS12に戻り、以降のステップを繰り返す。
【0065】
次に、このような制御が行われる作像装置10での各種制御タイミングについて図12を基に説明する。本実施の形態の制御タイミングは、実施の形態1の制御タイミング(図8参照)と略同様になっているが、現像電圧を変化させる点が異なる。つまり、カラー画像用の画像信号に対しては、現像装置14では、現像ロール14a、搬送部材14bが回転すると共に現像ロール14aに印加される現像電圧が作像時の条件であるVB0に設定される。一方、白黒画像用に画像信号に切り替わると、K色の作像装置10Kでは作像条件が維持されるものの、色成分画像がない作像装置10Y,10M,10Cでは、現像ロール14a、搬送部材14bの回転を停止させると共に、現像電位を作像時の条件であるVB0から作像を停止するものでの条件であるVB1に低下させるようにしている。
【0066】
次に、このような作用について説明する。
図13に示すように、作像時の条件としては、感光体11の非画像部の電位をVH0、画像部の電位をVL0とし、現像電位であるVB0をVH0とVL0の間に設定することで、現像時の画像部へのトナー供給を行うようになっている。一方、作像を停止するものでの条件として、主コロナ帯電器12による感光体11の帯電電位(非画像部に相当する)がVH1に低下したものとすると、現像電位をVB0とすると帯電電位と現像電位との差(VH1−VB0)が小さくなり過ぎ、本来非画像部であるべき感光体11表面に現像剤の飛散(トナーの飛散)が生じ、画像にかぶりを生じる虞がある。そのため、感光体11の帯電電位を低下させることに合わせて、現像電位を作像時の条件より低下させた現像電位であるVB1に低下させるようにしている。このとき、作像時のΔV(=VH0−VB0)と作像を停止するものでのΔV(=VH1−VB1)を略等しくすることで、停止している作像装置10の現像位置で、現像器14側から感光体11側への現像剤の飛散が抑えられるようになる。尚、作像時のΔVと作像を停止するものでのΔVとは略等しければよく、具体的にはトナーの飛散が生じない程度であればよいが、±15%程度の誤差は許容可能である。
【0067】
つまり、本実施の形態のように現像電位を低下させずに、感光体11の帯電電位のみを低下させるようにすると、帯電電位の低下が少ない場合には特に大きな支障を生じることはないが、帯電電位の低下が大きい場合には、感光体11の帯電電位(非画像部に相当)に対し現像電位が大きくなり過ぎ、例えば現像剤中のトナーの飛散を生じ易くなり、かぶり等の画質劣化を生じるようにもなる。一方、現像電位を小さくし過ぎると、作像を停止する作像装置10では、帯電された感光体11側へキャリアの飛散を生じ易くなり、画質劣化を生じるようにもなる。そのため、適切な範囲に現像電位を維持することが重要となる。
【0068】
また、作像を停止する作像装置10では、現像ロール14a及び搬送部材14bを停止することで、現像剤が不要に撹拌されることもなく、現像ロール14a及び搬送部材14bを回転させるものに比べ、現像剤の劣化が抑えられるようになる。
このような現像電圧の変更は、実施の形態2における主コロナ帯電器12のグリッド電極12cに印加する調整電圧を変更する態様においても同様に適用可能である。つまり、感光体11の帯電電位が低下する場合には、この帯電電位の低下に合わせて現像電位を低下させるようにすればよい。
また、現像ロール14a及び搬送部材14bの停止は、実施の形態1や実施の形態2の態様においても適用可能である。
【0069】
◎実施の形態4
図14は、実施の形態3の画像形成装置を示す。本実施の形態の画像形成装置は、実施の形態2(実施の形態1参照)と略同様に構成されているが、コロナ帯電器として、主コロナ帯電器12以外に二つの補助コロナ帯電器17,18を備えたものとなっている。尚、実施の形態2と同様の構成要素には同様の符号を付し、ここではその詳細な説明を省略する。
【0070】
本実施の形態の二つの補助コロナ帯電器17,18は、現像装置14より感光体11の回転方向下流側で一次転写部位(感光体11と一次転写装置15とが対向する部位)との間の感光体11と対向する位置に設けられた転写前帯電器17と、一次転写部位と清掃装置16との間の感光体11と対向する位置に設けられた清掃前帯電器18となっている。ここで、転写前帯電器17は、一次転写する前に感光体11上のトナーに対し転写を促進する方向の帯電を行うことで、一次転写部位での転写電界の作用で感光体11から中間転写ベルト30へのトナー像の転写が良好になされるように配置したものであり、また、清掃前帯電器18は、転写後の感光体11上の残留トナーに対し、感光体11への付着力を低下させる方向に電界を作用させるように配置したものとなっている。
【0071】
このような転写前帯電器17や清掃前帯電器18を用いると、これらの補助コロナ帯電器17,18での放電によっても少なからず放電生成物の発生や感光体11の表面への放電生成物の付着がなされるようになり、主コロナ帯電器12に加え、転写前帯電器17や清掃前帯電器18によって、放電生成物の発生量及び付着量は重畳されるようになる。
【0072】
そのため、本実施の形態では、このような放電生成物の発生及び付着をより少なくするために、作像装置10が作像を停止する際には、主コロナ帯電器12の帯電電流を小さくすると共に、転写前帯電器17及び清掃前帯電器18の帯電電流をカットする(ゼロにする)ようにしている。
【0073】
図15は、本実施の形態におけるタイミングチャートであり、実施の形態2(図11参照)と略同様であるが、主コロナ帯電器12以外の補助コロナ帯電器(転写前帯電器17及び清掃前帯電器18)の帯電電流も変化させるようにしている。すなわち、画像信号がカラー画像のときは、全ての作像装置10にて転写前帯電器17及び清掃前帯電器18の帯電電流を作像時の条件とするようにし、画像信号が白黒画像のときには、作像を停止する作像装置10(本例では10Y,10M,10C)の転写前帯電器17及び清掃前帯電器18の帯電電流をゼロにしている。
【0074】
このように、画像形成装置として補助コロナ帯電器(本例では転写前帯電器17及び清掃前帯電器18)を備える態様においては、停止する作像装置10では、主コロナ帯電器12の帯電電流を作像時の条件より小さくすると共に、転写前帯電器17及び清掃前帯電器18を停止させることで、主コロナ帯電器12、転写前帯電器17及び清掃前帯電器18による放電生成物の発生及び付着をより抑えることができるようになる。また、本実施の形態の転写前帯電器17及び清掃前帯電器18は単に停止させるようにすればよいことから、これらの補助コロナ帯電器17,18に印加される電圧が交流成分の重畳されたような波形であっても、停止するだけの制御でよく、制御系自体も簡略化される。更に、転写前帯電器17や清掃前帯電器18は、感光体11にトナー像が形成された場合に必要となるため、現像装置14による現像がなされない状態の感光体11では、転写前帯電器17及び清掃前帯電器18を停止してこれらの帯電器17,18による帯電がなされなくなり、画質に対する支障を考慮することも殆どない。
【0075】
本実施の形態では、転写前帯電器17及び清掃前帯電器18を備える態様を示したが、例えば清掃前帯電器18のみを有する画像形成装置にあっては、清掃前帯電器18を対象に上述した制御を行うようにすればよい。また、本実施の形態では、主コロナ帯電器12も合わせて制御するようにしたが、例えば作像を停止する作像装置10の主コロナ帯電器12の帯電電流を作像時と同様の条件で行い、転写前帯電器17や清掃前帯電器18の帯電電流のみを制御する(停止する)ようにしてもよく、この場合、主コロナ帯電器12も合わせて制御するものに比べ、放電生成物の発生量を抑える効果は小さくなるものの、全体としての放電生成物の発生及び付着を抑える効果はあり、その制御自体も比較的容易になされる。
【0076】
更に、本実施の形態では主コロナ帯電器12の帯電電流を変化させる態様を示したが、例えば主コロナ帯電器12がグリッド電極を備える態様にあっては、グリッド電極に印加する調整電圧を変化させるようにしてもよいし、調整電圧と共に帯電電流を変化させるようにしてもよい。
更にまた、本実施の形態では、主コロナ帯電器12を用いる態様を示したが、主コロナ帯電器12の代わりに接触型の帯電器(例えば帯電ロール)を用い、転写前帯電器17や清掃前帯電器18の補助コロナ帯電器を用いるようにしても差し支えない。そして、この場合、接触型の帯電器の帯電能力を変化させるために、この帯電器の帯電電流を変化させるようにしてもよいし、接触型の帯電器の帯電能力は作像時の条件とし、補助コロナ帯電器の帯電能力のみを変化させるようにしてもよい。
【0077】
また、上述した実施の形態1〜3では、作像を停止する作像装置10での現像ロール14a及び搬送部材14bを停止する態様を示したが、現像ロール14a及び搬送部材14bを停止させないようにしても差し支えない。この場合、現像装置14内の現像剤が撹拌され過ぎる虞はあるものの、現像ロール14aに印加された現像電位によって現像装置14から感光体11側への現像剤の飛散は抑えられる。
更に、上述した実施の形態1〜3ではフルカラー用の画像形成装置の態様を示したが、複数の作像装置10を備え、作像モードによって作像を実施する作像装置10と作像を停止する作像装置10とが混在する態様の画像形成装置であれば、同様の制御を行うことができ、例えば作像装置10として、透明色を用いるような態様であってもよいし、例えば二色の作像装置10のみで構成されるような態様であってもよい。更には、同系色の二色のみの作像装置10で構成されるような態様にも適用できる。
【実施例】
【0078】
◎感光体の作製方法
本実施例は、感光体の作製における一例としての下引き層、電荷発生層、電荷輸送層及び保護層の形成を行ったものである。
−下引き層の形成−
ポリビニルブチラール樹脂(エスレックBM−S:積水化学社製)4部を溶解したn−ブチルアルコール170部に、有機ジルコニウム化合物(アセチルアセトンジルコニウムブチレート)30部及び有機シラン化合物(γ−アミノプロピルトリメトキシシラン)3部を添加し、混合撹拌して下引き層形成用の溶液を得た。
この溶液にホーニング処理によって粗面化された外径84mmのアルミニウム合金パイプ(導電性基材)を浸漬塗布し、室温で5分間風乾した後、この部材を10分間で50℃まで昇温し、50℃85%RH(露点47℃)の恒温恒湿槽中に入れて、20分間加湿硬化促進処理を行った。その後、熱風乾燥機中で160℃15分間の乾燥を行い、下引き層の形成を完了した。
【0079】
−電荷発生層の形成−
電荷発生材料として機能するクロロガリウムフタロシアニン15部、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂(VMCH:日本ユニオンカーバイト社製)10部及びn―ブチルアルコール300部からなる混合物をサンドミルにて4時間の分散を行った。得られた溶液を下引き層上に塗布(浸漬塗布)し、乾燥して膜厚約0.25μmの電荷発生層を形成した。
【0080】
−電荷輸送層の形成−
電荷輸送材料として機能するN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン40部とビスフェノールZポリカーボネート樹脂(分子量40,000)60部とを、テトラヒドロフラン230部及びモノクロロベンゼン100部の混合溶媒中に十分に溶解混合して得られた溶液を電荷発生層上に塗布(浸漬塗布)し、115℃で40分間乾燥させ、膜厚約22μmの電荷輸送層を形成した。
【0081】
−保護層の形成−
下記構造式で表される化合物1を6部、ベンゾグアナミン樹脂(ニカラックBL−60:三和ケミカル社製)7部をイソプロピルアルコール10部に溶解させ、保護層形成用溶液を得た。この保護層形成用溶液を電荷輸送層上に塗布(浸漬塗布)し、室温で20分風乾した後、150℃で35分乾燥させ、膜厚約4μmの保護層を形成した。
【0082】
【化1】

【0083】
◎帯電電流の評価
本実施例は、実施例1で作製した感光体を用い、実施の形態1の作像装置にて主コロナ帯電器の帯電電流を低下させることでの効果を評価確認したものである。
評価は、一つの作像装置を用い、コロナ帯電器として主コロナ帯電器の他に清掃前帯電器を備えたものとした。また、帯電電流としては、主コロナ帯電器の電流を変化させ、非作像時の条件でプリントを繰り返し行い(10万枚、20万枚)、その後、通常の作像による像流れの発生状況を確認すると共に、清掃装置内のブレードエッジの損傷状況(ブレードエッジダメージ)を確認した。
像流れについては、感光体の放電生成物の吸湿による影響を確認するため、高温高湿中で作像装置による作像と非作像を交互に5枚ずつ行い、目視評価を行った。また、ブレードエッジダメージは、レーザー顕微鏡(VK8500:キーエンス社製)により、エッジ先端部の損傷状況を観察し、官能評価を行った。
【0084】
条件としては、次のようにした。
実施例1:主コロナ帯電器のみを制御し、作像時1000μAの条件を非作像時700μAとした。
実施例2:主コロナ帯電器のみを制御し、作像時1000μAの条件を非作像時600μAとした。
実施例3:主コロナ帯電器の作像時1000μAの条件を非作像時600μAとし、更に、清掃前帯電器を非作像時にOFFした。
実施例4:清掃前帯電器のみを非作像時にOFFした(主コロナ帯電器は1000μAのまま)。
比較例1:比較のために、主コロナ帯電器の帯電電流を更に小さくし、作像時1000μAの条件を非作像時400μAとした。
比較例2:比較として帯電電流の制御を行わなかった。
【0085】
評価点は、次にようにした。
◎印は確認されずに全く問題ないレベル、○印は問題ないレベル、△印は実用上問題ないレベル、×印は問題あり、とした。
【0086】
結果は、図16に示すように、実施例1〜4はいずれも良好な結果が得られたが、主コロナ帯電器の帯電電流を少なくする方がより大きな効果をもたらすことが確認された。また、清掃前帯電器を非作像時に停止することでも大きな効果をもたらすことが確認された。一方、主コロナ帯電器の帯電電流を小さくし過ぎると、感光体の表面電位が低下しすぎる結果、現像装置でのトナーのかぶりが発生し、記録材上に地肌かぶりが生じることも確認された。
【0087】
◎グリッド電極への調整電位の評価
ここでは、主コロナ帯電器としてグリッド電極を有するものを用い、帯電電流(ワイヤ電流)及びグリッド電極に印加する調整電位を変化させて繰り返した時の帯電電位と感光体表面の水の接触角との関係がどうなるかを評価確認した。
帯電電流としては、1000μAと、600μAの二水準とし、初期並びに放電の繰り返しを6000回行った後の感光体表面に対する純水の接触角を測定し、初期と終期での接触角の変化(接触角低下)を求めた。
結果は、図17に示すように、帯電電位が大きい方が、純水の接触角低下が大きくなることが判明した。このことは、帯電電位が大きい方が感光体上に放電生成物の付着量が多いことを示しており、このことから、帯電電位を低下させる方が好ましいことが理解される。
したがって、グリッド電極への調整電位を変化させるようにしても放電生成物の発生を抑えられることが確認された。また、本件発明者は、更に、調整電位を変化させるものと、単に帯電電流を変化させるものとを比較したところ、調整電位を変化させることによっても、像流れの発生状況やブレードエッジのダメージが同様の効果が得られることを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明を具現化する実施の形態モデルに係る画像形成装置の概要を示す説明図である。
【図2】帯電能力の低下を示す概念図である。
【図3】実施の形態1に係る画像形成装置の概要を示す説明図である。
【図4】実施の形態1の作像装置を示す説明図である。
【図5】実施の形態1の感光体を示す説明図である。
【図6】実施の形態1の制御系を示すブロック図である。
【図7】制御フローを示すフローチャートである。
【図8】実施の形態1のタイミングチャートである。
【図9】主コロナ帯電器と感光体との関係を示す説明図であり、(a)は構成、(b)は帯電電流と感光体の表面電位との関係を示す。
【図10】実施の形態2に係る主コロナ帯電器の概要を示す説明図である。
【図11】実施の形態3に係る制御フローを示すフローチャートである。
【図12】実施の形態3のタイミングチャートである。
【図13】作像時と非作像時での電位変化を示す説明図である。
【図14】実施の形態4に係る画像形成装置の概要を示す説明図である。
【図15】実施の形態4のタイミングチャートである。
【図16】実施例の帯電電流の評価結果を示す表である。
【図17】実施例の調整電位の評価結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0089】
1(1A,1B)…作像装置,2…像保持体,3…帯電装置,4…コロナ帯電器,4a…主コロナ帯電器,4b…補助コロナ帯電器,5…現像装置,5a…現像剤保持体,6…帯電制御装置,7…帯電能力可変手段,8…作像有無判別手段,9…帯電能力設定手段,M…転写媒体,A(A,A)…帯電能力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写媒体へ転写可能な色成分画像を夫々形成する複数の作像装置を備えた画像形成装置であって、
各作像装置は、
表面に色成分画像を保持して移動する像保持体と、
像保持体に離間して配置され且つ像保持体表面を帯電する一若しくは複数のコロナ帯電器を含む帯電装置と、
像保持体に対向して設けられ、前記帯電装置によって帯電された像保持体に形成される静電潜像を現像剤で可視像化する現像装置とを有し、
各作像装置の帯電装置には、前記一若しくは複数のコロナ帯電器の帯電能力を制御する帯電制御装置が設けられ、
この帯電制御装置は、
コロナ帯電器の帯電能力を変更する帯電能力可変手段と、
各作像装置で作像すべき色成分画像があるか否かを判別する作像有無判別手段と、
この作像有無判別手段にて作像すべき色成分画像があると判別された作像装置では一若しくは複数のコロナ帯電器に作像時の帯電能力を付与するように前記帯電能力可変手段による帯電能力を設定する一方、作像すべき色成分画像がないと判別された作像装置では一若しくは複数のコロナ帯電器の帯電能力の合計が作像時よりも低下するように前記帯電能力可変手段による帯電能力を設定する帯電能力設定手段とを備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像形成装置のうち、前記帯電装置が、像保持体表面のうち現像装置による現像位置よりも像保持体の移動方向上流側に位置する主帯電位置にて像保持体に対し予め帯電が施される主コロナ帯電器を有する態様において、
前記帯電能力設定手段は、作像有無判別手段にて作像すべき色成分画像がないと判別された作像装置では、主コロナ帯電器の帯電能力が作像時よりも小さくなるように前記帯電能力可変手段による帯電能力を設定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1記載の画像形成装置のうち、前記帯電装置が、像保持体表面のうち現像装置による現像位置よりも像保持体の移動方向上流側に位置する主帯電位置にて像保持体に対し予め帯電が施される主コロナ帯電器と、現像位置よりも像保持体の移動方向下流側に位置する補助帯電位置にて像保持体に対し補助的な帯電が施される補助コロナ帯電器を有する態様において、
前記帯電能力設定手段は、作像有無判別手段にて作像すべき色成分画像がないと判別された作像装置では、主コロナ帯電器及び補助コロナ帯電器の帯電能力が夫々作像時よりも小さくなるように前記帯電能力可変手段による帯電能力を設定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1記載の画像形成装置のうち、前記帯電装置が、像保持体表面のうち現像装置による現像位置よりも像保持体の移動方向上流側に位置する帯電位置にて像保持体に対し予め帯電が施される主コロナ帯電器と、現像位置よりも像保持体の移動方向下流側に位置する補助帯電位置にて像保持体に対し補助的な帯電が施される補助コロナ帯電器を有する態様において、
前記帯電能力設定手段は、作像有無判別手段にて作像すべき色成分画像がないと判別された作像装置では、主コロナ帯電器の帯電能力を作像時の条件とする一方、補助コロナ帯電器の帯電能力が作像時よりも小さくなるように前記帯電能力可変手段による帯電能力を設定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項2又は3記載の画像形成装置において、
前記帯電能力設定手段は、作像有無判別手段にて作像すべき色成分画像がないと判別された作像装置では、主コロナ帯電器の帯電能力が現像装置からの現像剤が像保持体へ飛散しない程度の大きさに収まるように帯電能力可変手段による帯電能力を設定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項5記載の画像形成装置において、
前記現像装置には、像保持体に対向配置され且つ現像剤を保持搬送する回転自在な現像剤保持体と、この現像剤保持体に現像剤を搬送する搬送部材と、現像装置の現像能力を制御する現像制御装置とが設けられ、
現像制御装置は、
現像剤保持体に変更自在な現像電圧を供給する現像電圧供給手段と、
各作像装置で作像すべき色成分画像があるか否かを判別する作像有無判別手段と、
作像有無判別手段にて作像すべき色成分画像があると判別された作像装置では現像剤保持体に作像時の現像電圧が供給されるように前記現像電圧供給手段による現像電圧を設定する一方、作像すべき色成分画像がないと判別された作像装置では現像剤保持体に作像時より小さい現像電圧が供給されるように前記現像電圧供給手段による現像電圧を設定する現像電圧設定手段とを備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項6記載の画像形成装置において、
前記現像制御装置は、
更に、前記現像剤保持体及び前記搬送部材の回転状態を変更する回転可変手段と、
前記作像有無判別手段にて作像すべき色成分画像があると判別された作像装置では現像剤保持体及び搬送部材に作像時の回転状態を付与するように前記回転可変手段による回転状態を設定する一方、作像すべき色成分画像がないと判別された作像装置では現像剤保持体及び搬送部材が停止するように前記回転可変手段による回転状態を設定する回転状態設定手段とを備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項2又は3記載の画像形成装置において、
前記現像装置には、像保持体に対向配置され且つ現像剤を保持搬送する回転自在な現像剤保持体と、この現像剤保持体に現像剤を搬送する搬送部材と、現像装置の現像能力を制御する現像制御装置とが設けられ、
現像制御装置は、
前記現像剤保持体及び前記搬送部材の回転状態を変更する回転可変手段と、
各作像装置で作像すべき色成分画像があるか否かを判別する作像有無判別手段と、
作像有無判別手段にて作像すべき色成分画像があると判別された作像装置では現像剤保持体及び搬送部材に作像時の回転状態を付与するように前記回転可変手段による回転状態を設定する一方、作像すべき色成分画像がないと判別された作像装置では現像剤保持体及び搬送部材が停止するように前記回転可変手段による回転状態を設定する回転状態設定手段とを備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の画像形成装置において、
前記帯電能力可変手段はコロナ帯電器の帯電電流を変更するものであり、
前記帯電能力設定手段は、帯電能力を小さくするコロナ帯電器に対し、帯電電流を作像時よりも小さくするように帯電能力可変手段による帯電電流を設定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれかに記載の画像形成装置のうち、少なくとも一つのコロナ帯電器が、像保持体側に向かって開口する枠体と、前記枠体内にて枠体から絶縁されて設けられ且つ像保持体の回転方向と交差する方向に張られた一本以上の放電ワイヤと、枠体の前記開口側に設けられ且つ像保持体上の帯電電位を調整する調整電極とを有する態様において、
前記帯電能力可変手段は前記調整電極に印加する調整電圧を変更するものであり、
前記帯電能力設定手段は、帯電能力を小さくするコロナ帯電器に対し、前記調整電極に印加する調整電圧を作像時よりも小さくするように帯電能力可変手段による調整電圧を設定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
請求項10記載の画像形成装置において、
前記帯電能力可変手段は、更に、コロナ帯電器の帯電電流を変更するものであり、
前記帯電能力設定手段は、帯電能力を小さくするコロナ帯電器が調整電極を有する場合には、このコロナ帯電器に対し、更に、帯電電流を作像時よりも小さくするように帯電能力可変手段による帯電電流を設定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
請求項2乃至4のいずれかに記載の画像形成装置のうち、補助コロナ帯電器を有する態様において、
前記帯電能力設定手段は、作像有無判別手段にて作像すべき色成分画像がないと判別された作像装置では、補助コロナ帯電器の帯電電流をゼロにするように帯電能力可変手段による帯電電流を設定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれかに記載の画像形成装置において、
前記像保持体は少なくとも一種以上の電荷輸送性化合物を含み且つ架橋構造を有する樹脂製の表面保護層を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−2843(P2010−2843A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−163399(P2008−163399)
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】