説明

磁気抵抗素子、磁気抵抗素子の製造方法及び磁性多層膜作成装置

【課題】 熱安定性にすぐれ、MR比の高い磁気抵抗素子を提供すること。
【解決手段】 磁気抵抗素子は、マンガンを有する層で形成した反強磁性層と、反強磁性層側に位置し、強磁性体及び白金族系金属を有する層で形成した第一磁化固定層、強磁性体を有する層で形成した第二磁化固定層及び該第一磁化固定層と該第二磁化固定層との間に位置する第一非磁性中間層を有する積層磁化固定層と、強磁性体を有する層で形成した磁化自由層と、積層磁化固定層と前記磁化自由層との間に位置する第二非磁性中間層と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトンネル磁気抵抗素子及び巨大磁気抵抗素子などの磁気抵抗素子及びその製造方法、磁性多層膜作成装置に係わり、特に磁気ディスク駆動装置の磁気ヘッド及び磁気ランダムアクセスメモリに用いることができるトンネル磁気抵抗素子及び巨大磁気抵抗素子などの磁気抵抗素子、その製造方法及び磁性多層膜作成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の磁気ディスク駆動装置の磁気ヘッドには、巨大磁気抵抗素子やトンネル磁気抵抗素子が用いられてきた。
【0003】
巨大磁気抵抗素子は反強磁性層、強磁性固定層、非磁性伝導層、強磁性自由層を有し、トンネル磁気抵抗素子は反強磁性層、強磁性固定層、トンネルバリア層、強磁性自由層を有している。
【0004】
巨大磁気抵抗素子やトンネル磁気抵抗素子において、強磁性固定層に使われる強磁性材料としては、Fe,Co,Niの少なくとも1種の元素を用いることができる。また反強磁性層に使われる反強磁性材料としてはPtMn、IrMnなどMnに貴金属元素を添加したものを用いることができる。
【0005】
しかしながら、従来の磁気抵抗素子は、熱に対する安定性が悪く、例えば、300℃の温度以上で、磁気抵抗素子が加熱に曝されると、そのMR(magnetoresistive)比が著しく低下してしまう問題が存していた。
【0006】
特許文献1、特許文献2、特許文献3及び特許文献4に記載された磁気抵抗素子においては、ある程度の熱安定性の改善が見られるものの、未だに、実用に耐えるのに十分なMR比は、達成させていない。
【特許文献1】特開2000−67418号公報(米国特許第6,052,263号)
【特許文献2】特開2003−258335号公報
【特許文献3】特開2003−304012号公報
【特許文献4】特開2005−203790号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らの研究及び解析によれば、磁気抵抗素子の熱に対する不安定性の原因は、以下のとおりである、ことが判明した。
【0008】
例えば、磁気ヘッドの製造工程では、トンネル磁気抵抗素子は、反強磁性層であるPtMn層を磁化させるため、成膜後に数T(テスラ)の強磁場中にて250〜300℃の熱処理を数時間行っている。また、磁気ランダムアクセスメモリにおいては、成膜後の強磁場中での熱処理以外にさらに後工程において300℃を超える熱処理が行われる。このような熱処理工程においては、上記した反強磁性層中のマンガン(Mn)がこの加熱処理時の熱によって他の層、例えば、強磁性固定層やトンネルバリア層にまで拡散し、そこで、強磁性固定層の磁気特性を劣化させたり、トンネルバリア層のトンネルバリア効果を劣化させてしまい、この結果、磁気抵抗素子のMR比を低下させていた。
【0009】
また、強磁性固定層やトンネルバリア層は、微結晶、多結晶又は単結晶のような結晶構造であることが好ましく、この結晶性強磁性固定層や結晶性トンネルバリア層が拡散されてきたマンガン(Mn)による悪影響を受け、この結果、MR比を低下させると、推察される。
【0010】
特に、強磁性固定層が基板側に位置するコバルト鉄(CoFe)を含有した結晶性第1強磁性固定層、その上のルテニウム(Ru)などの非磁性中間層及び結晶性コバルト鉄ボロン(CoFeB)を含有した結晶性第2強磁性固定層の3層を持つSAF(Synthetic Anti−Ferromagnet:反平行結合素子)構造体の強磁性固定層を用いた場合では、反強磁性層中のマンガン(Mn)の熱拡散による悪影響を受け、その結果、磁気抵抗素子としてのMR比を低下させていた。
【0011】
上記した熱拡散現象は、巨大磁気抵抗素子においても同様に発生している。
【0012】
本発明の目的は、熱安定性にすぐれ、MR比の高い磁気抵抗素子、例えば、トンネル磁気抵抗素子及び巨大磁気抵抗素子及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成する本発明にかかる磁気抵抗素子、磁気抵抗素子の製造方法、磁性多層膜作成装置は、主として以下の構成を備える。
【0014】
本発明にかかる磁気抵抗素子は、
マンガンを有する層で形成した反強磁性層と、
前記反強磁性層側に位置し、強磁性体及び白金族系金属を有する層で形成した第一磁化固定層、強磁性体を有する層で形成した第二磁化固定層及び該第一磁化固定層と該第二磁化固定層との間に位置する第一非磁性中間層を有する積層磁化固定層と、
強磁性体を有する層で形成した磁化自由層と、
前記積層磁化固定層と前記磁化自由層との間に位置する第二非磁性中間層と、
を有することを特徴とする。
【0015】
また、本発明にかかる磁気抵抗素子の製造方法は、
反強磁性層と、
第一磁化固定層、第一非磁性中間層及び第二磁化固定層を有する積層構造の積層磁化固定層と、
第二非磁性中間層と、
磁化自由層と、を有する磁気抵抗素子の製造方法であって、
マンガン(Mn)を含有するターゲットを用いたスパッタリング法により、前記反強磁性層を成膜する第1の工程と、
前記第1の工程の後で、白金族系金属を含有するターゲット及び強磁性体を含有するターゲットを用いたスパッタリング法により、前記第一磁化固定層を成膜する第2の工程と、
前記第2の工程の後で、非磁性体を含有するターゲットを用いたスパッタリング法により、前記第一非磁性中間層を成膜する第3の工程と、
前記第3の工程の後で、強磁性体を含有するターゲットを用いたスパッタリング法により、前記第二磁化固定層を成膜する第4の工程と、
前記第4の工程の後で、非磁性体を含有するターゲットを用いたスパッタリング法により、前記第二非磁性中間層を成膜する第5の工程と、
前記第5の工程の後で、強磁性体を含有するターゲットを用いたスパッタリング法により、前記磁化自由層を成膜する第6の工程と、
前記第6の工程の後で、前記反強磁性層と、前記第一磁化固定層、前記第一非磁性中間層及び前記第二磁化固定層を有する積層構造の前記積層磁化固定層と、前記第二非磁性中間層と、並びに、前記磁化自由層と、を加熱炉で加熱処理を行なう工程を有する第7の工程と、
を有することを特徴とする。
【0016】
あるいは、本発明にかかる磁気抵抗素子の製造方法は、
反強磁性層と、
第一磁化固定層、第一非磁性中間層及び第二磁化固定層を有する積層構造の積層磁化固定層と、
第二非磁性中間層と、
磁化自由層と、を有する磁気抵抗素子の製造方法であって、
マンガン(Mn)を含有するターゲットを用いたスパッタリング法により、前記反強磁性層を成膜する第1の工程と、
前記第1の工程の後で、白金族系金属及び強磁性体を含有するターゲットを用いたスパッタリング法により、前記第一磁化固定層を成膜する第2の工程と、
前記第2の工程の後で、非磁性体を含有するターゲットを用いたスパッタリング法により、前記第一非磁性中間層を成膜する第3の工程と、
前記第3の工程の後で、強磁性体を含有するターゲットを用いたスパッタリング法により、前記第二磁化固定層を成膜する第4の工程と、
前記第4の工程の後で、非磁性体を含有するターゲットを用いたスパッタリング法により、前記第二非磁性中間層を成膜する第5の工程と、
前記第5の工程の後で、強磁性体を含有するターゲットを用いたスパッタリング法により、前記磁化自由層を成膜する第6の工程と、
前記第6の工程の後で、前記反強磁性層と、前記第一磁化固定層、前記第一非磁性中間層及び前記第二磁化固定層を有する積層構造の前記積層強磁性固定層と、前記第二非磁性中間層と、並びに、前記磁化自由層と、を加熱炉で加熱処理を行なう工程を有する第7の工程と、
を有することを特徴とする。
【0017】
また、本発明にかかる磁性多層膜作成装置は、
ロボット搬送装置を備えた搬送チャンバと、
磁性多層膜を作成するための基板を前記搬送チャンバに搬入するための搬入機構と、
前記搬送チャンバとゲートバルブを介して接続配置し、前記ロボット搬送装置により搬送された基板に、マンガン(Mn)を含有する反強磁性体ターゲットを用いたスパッタリング法により、反強磁性体層を成膜する第1の成膜チャンバと、
前記搬送チャンバとゲートバルブを介して接続配置し、前記ロボット搬送装置により搬送された前記基板に、白金族系金属を含有した強磁性体ターゲットを用いたスパッタリング法により、白金族系金属を含有した第一強磁性固定層を成膜する第2の成膜チャンバと、
前記搬送チャンバとゲートバルブを介して接続配置し、前記ロボット搬送装置により搬送された前記基板に、強磁性体を含有した強磁性体ターゲットを用いたスパッタリング法により、第二強磁性固定層を成膜する第3の成膜チャンバと、
前記搬送チャンバとゲートバルブを介して接続配置し、前記ロボット搬送装置により搬送された前記基板に、非磁性体ターゲットを用いたスパッタリング法により、第一非磁性中間層を成膜する第4の成膜チャンバと、
前記搬送チャンバとゲートバルブを介して接続配置し、前記ロボット搬送装置により搬送された前記基板に、結晶性酸化マグネシウム層を成膜する第5の成膜チャンバと、
前記反強磁性層、該反強磁性層の上の第一強磁性固定層、該第一強磁性固定層の上の第一非磁性中間層、該第一非磁性中間層の上の第二強磁性固定層及び結晶性酸化マグネシウム層が積層された前記基板を排出するための排出機構と、
を有することを特徴とする。
【0018】
あるいは、本発明にかかる磁性多層膜作成装置は、
ロボット搬送装置を備えた搬送チャンバと、
磁性多層膜を作成するための基板を前記搬送チャンバに搬入するための搬入機構と、
前記搬送チャンバとゲートバルブを介して接続配置し、前記ロボット搬送装置により搬送された基板に、マンガン(Mn)を含有する反強磁性体ターゲットを用いたスパッタリング法により、反強磁性体層を成膜する第1の成膜チャンバと、
前記搬送チャンバとゲートバルブを介して接続配置し、前記ロボット搬送装置により搬送された前記基板に、白金族系金属を含有した白金ターゲットと強磁性体を含有したターゲットとを用いたコスパッタリング法により、白金族系金属を含有した第一強磁性固定層を成膜する第2の成膜チャンバと、
前記搬送チャンバとゲートバルブを介して接続配置し、前記ロボット搬送装置により搬送された前記基板に、強磁性体を含有した強磁性体ターゲットを用いたスパッタリング法により、第二強磁性固定層を成膜する第3の成膜チャンバと、
前記搬送チャンバとゲートバルブを介して接続配置し、前記ロボット搬送装置により搬送された前記基板に、非磁性体ターゲットを用いたスパッタリング法により、第一非磁性中間層を成膜する第4の成膜チャンバと、
前記搬送チャンバとゲートバルブを介して接続配置し、前記ロボット搬送装置により搬送された前記基板に、結晶性酸化マグネシウム層を成膜する第5の成膜チャンバと、
前記反強磁性層、該反強磁性層の上の第一強磁性固定層、該第一強磁性固定層の上の第一非磁性中間層、該第一非磁性中間層の上の第二強磁性固定層及び結晶性酸化マグネシウム層が積層された前記基板を排出するための排出機構と、
を有することを特徴とする。
【0019】
また、本発明にかかる磁性多層膜作成装置は、
ロボット搬送装置を備えた搬送チャンバと、
磁性多層膜を作成するための基板を前記搬送チャンバに搬入するための搬入機構と、
前記搬送チャンバとゲートバルブを介して接続配置し、前記ロボット搬送装置により搬送された基板に、マンガン(Mn)を含有する反強磁性体ターゲットを用いたスパッタリング法により、反強磁性体層を成膜し、白金族系金属を含有した白金含有ターゲットと強磁性体を含有した強磁性体ターゲットとを用いたコスパッタリング法により、白金族系金属を含有した第一強磁性固定層を成膜し、非磁性体ターゲットを用いたスパッタリング方により、非磁性中間層を成膜し、強磁性体を含有した強磁性体ターゲットを用いたスパッタリング法により、第二強磁性固定層を成膜する成膜チャンバと、
前記反強磁性層、該反強磁性層の上の第一強磁性固定層、該第一強磁性固定層の上の非磁性中間層及び該非磁性中間層の上の第二強磁性固定層が積層された磁性多層膜を有する基板を排出するための排出機構と、
を有することを特徴とする磁性多層膜作成装置。
【0020】
また、本発明にかかる磁性多層膜作成装置は、
ロボット搬送装置を備えた搬送チャンバと、
磁性多層膜を作成するための基板を前記搬送チャンバに搬入するための搬入機構と、
前記搬送チャンバとゲートバルブを介して接続配置し、前記ロボット搬送装置により搬送された基板に、マンガン(Mn)を含有する反強磁性体ターゲットを用いたスパッタリング法により、反強磁性体層を成膜し、白金族系金属を含有した白金含有ターゲットと強磁性体を含有した強磁性体ターゲットとを用いたコスパッタリング法により、白金族系金属を含有した第一強磁性固定層を成膜し、非磁性体ターゲットを用いたスパッタリング方により、非磁性中間層を成膜し、強磁性体を含有した強磁性体ターゲットを用いたスパッタリング法により、第二強磁性固定層を成膜する第一成膜チャンバと、
前記搬送チャンバとゲートバルブを介して接続配置し、前記ロボット搬送装置により搬送された基板に、酸化マグネシウムターゲット又は金属マグネシウムターゲットを用いたスパッタリング法により、酸化マグネシウム層又は金属マグネシウム層を成膜する第二成膜チャンバと、
前記反強磁性層、該反強磁性層の上の第一強磁性固定層、該第一強磁性固定層の上の非磁性中間層、該非磁性中間層の上の第二強磁性固定層、及び酸化マグネシウム層又は金属マグネシウム層が積層された磁性多層膜を有する基板を排出するための排出機構と、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、熱安定性の高い、よりMR比の高い磁気抵抗素子を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって確定されるのであって、以下の個別の実施形態によって限定されるわけではない。
【0023】
図1は本発明の第1実施形態に係わるトンネル磁気抵抗素子の断面図である。
【0024】
本実施形態のトンネル磁気抵抗素子は、下部電極層11、反強磁性層12、第一強磁性固定層(第一磁化固定層)13、第一非磁性中間層14、第二強磁性固定層(第二磁化固定層)15、第二非磁性中間層(トンネルバリア層)16、強磁性自由層(磁化自由層)17、上部電極層18の順に積層されて構成される。成膜は、例えば、DCスパッタリング法によって行われる。ここで、第一強磁性固定層13は反強磁性層12との交換結合により磁気モーメントが一方向に固定されている。さらに第二強磁性固定層15は第一非磁性中間層14を介した反強磁性的交換結合により第一強磁性固定層13と反平行方向に磁気モーメントが固定されている。このような第一強磁性固定層13、第一非磁性中間層14及び第二強磁性固定層15の3層を持った積層磁化固定層は、上記のSAF構造体を形成している。
【0025】
また、本発明の実施形態にかかる強磁性固定層は、第一強磁性固定層13、第一非磁性中間層14及び第二強磁性固定層15からなる3層構成に限定されるものではなく、1層の強磁性層で構成しても良く、また、4層以上の積層構造であってもよい。
【0026】
本発明で用いる反強磁性層12の材料としては、白金マンガン(PtMn)、イリジウムマンガン(IrMn)等が用いられる。反強磁性層12は、スパッタリング法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、イオンビーム蒸着法やエピタキャル法等を用いた成膜法によって得られる。
本発明で用いる第一強磁性固定層13としては、Fe、Co及びNiから成る金属群から選択された少なくとも1種の金属と白金族系金属とを含有した下記一般式Aに示す合金を用いることができる。
【0027】
一般式A
(FeCoNid(M)e
(但し、0≦a<100、0≦b<100、0≦c<100、a+b+c=100、95.5≦d≦50、0.5≦e≦50、d+e=100) Mは、白金族系金属を示す。)
本発明で用いる白金族系金属としては、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Rh)及びロジウム(Ru)からなる白金系元素から選ばれる少なくとも1種類以上の元素(これら元素の合金を含む)の金属を用いることが出来る。特に、本発明では、上記白金族系金属として、白金(Pt)を用いることが好ましい。
【0028】
合金中の白金族系金属の添加量は、0.5原子%〜50原子%で、好ましくは、10原子%〜40原子%である。
【0029】
本発明の実施形態では、CoFe系合金またはCoFeNi系合金を用いた第一強磁性固定層13は、上記白金族元素から選ばれる少なくとも1種類の元素からなる金属を添加含有させることで、上記の反強磁性層12中のMnの熱拡散を抑制でき、この結果、下述の第二強磁性固定層15及び第二非磁性中間層(トンネルバリア層)16への拡散を抑制することができる。
【0030】
また、本発明で用いる第一強磁性固定層13には、ボロン(B)を前記一般式Aに示す合金中に0.5原子%〜30原子%、好ましくは、5原子%〜25原子%を含有させることができる。
【0031】
本発明では、上記の一般式Aに示す合金又はこの合金にB(ボロン)を含有した合金は、スパッタリング法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、イオンビーム蒸着法やエピタキャル法等を用いて成膜される。成膜された第一強磁性固定層13は、アモルファス、微結晶若しくは多結晶の非単結晶構造又は単結晶構造とすることができる。特に、本発明では、第一強磁性固定層13が多結晶構造の強磁性体によって形成されていることが、効果を高める上で、有利である。本発明によれば、第一強磁性固定層13にSAF(Synthetic antiferromagnet)構造を用いることによって、トンネル磁気抵抗素子の熱安定性を向上させることができる。
【0032】
本発明で用いる第二強磁性固定層15としては、好ましくは、Fe、Co及びNiから成る金属群から選択された少なくとも1種の金属を含有する合金、又は合金とボロン(B)とを含有した下記一般式Bに示す合金を用いることができる。
【0033】
一般式B
(FexCoyNiz(B)
(但し、0≦x<100、0≦y<100、0≦z<100、x+y+z=100、m+n=100、0≦n<30、70<m≦100)
また、上記の第二強磁性固定層15は、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Rh)又はロジウム(Ru)などの白金系元素からなる白金族系金属を添加含有させることができる。この際、白金族系金属の合金中での含有量は、0.5原子%〜30原子%、好ましくは、5原子%〜25原子%である。特に、白金族系金属のうち、白金(Pt)を用いるのが好ましい。
【0034】
本発明で用いる第一非磁性中間層14としては、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、クロム(Cr)若しくはイリジウム(Ir)等又はその合金を用いることができる。また、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、クロム(Cr)若しくはイリジウム(Ir)等又はその合金で成膜した第一の層と銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)若しくはアルミニウム(Al)又はその合金で成膜した第二の層とからなる積層体を用いることもできる。本発明で用いる第一非磁性中間層14は、スパッタリング法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、イオンビーム蒸着法やエピタキャル法等を用いた成膜法によって得られる。本発明のトンネル磁気抵抗素子では、第二非磁性中間層16は、トンネルバリア層として機能する。トンネルバリア層としては、アモルファス、微結晶、多結晶等の非単結晶構造又は単結晶構造の酸化マグネシウム((Mg)f(O)g:f+g=100 40<f<60 60<g<40)を用いることができる。トンネルバリア層は、スパッタリング法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、イオンビーム蒸着法やエピタキャル法等を用いた成膜法によって得られる。本発明のトンネルバリア層で用いる多結晶又は単結晶の酸化マグネシウムは、その層内において、その膜厚方向で、その層界面に平行な(100)面の結晶で形成されるのが好適である。
【0035】
本発明の巨大磁気抵抗素子では、第二非磁性中間層16は、銅(Cu)などの非磁性体を用いることができる。
【0036】
本発明で用いる強磁性自由層17としては、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)及びコバルト(Co)からなる元素群から選択された少なくとも1種の元素を含有した合金、例えば、コバルト鉄(CoFe)合金、コバルト鉄ニッケル(CoFeNi)合金を含有する強磁性体ターゲットを用いたスパッタリン法などにより得られる。
【0037】
また、本発明では、強磁性自由層17に、ボロン(B)を含有させることができ、また、前述した白金族系金属を添加含有させることができる。
【0038】
図2は、本発明の第二実施形態で、前述の第一実施形態中のSAF構造の別の態様を表している。
【0039】
図2に図示するSAF構造における第一強磁性固定層13は、第三強磁性層21と第四強磁性層22との積層構造体で、第二強磁性固定層15は、第五強磁性層23と第六強磁性層24との積層構造体である。
【0040】
第三強磁性層21は、Fe、Co及びNiから成る金属群から選択された少なくとも1種の金属と白金族系金属とを含有した一般式Aに示す合金を用いることができる。この合金中の白金族系金属の添加量は、0.5原子%〜50原子%で、好ましくは、10原子%〜40原子%である。
【0041】
第二実施形態では、CoFe系合金またはCoFeNi系合金を用いた第三強磁性層21は、上記白金族元素から選ばれる少なくとも1種類の元素からなる金属を添加含有させることで、反強磁性層12中のMnの熱拡散を抑制でき、この結果、下述の第二強磁性固定層15及び第二非磁性中間層16への拡散を抑制することができる。
【0042】
また、本発明で用いる第三強磁性層21には、ボロン(B)を前記一般式Aに示す合金中に0.5原子%〜30原子%、好ましくは、5原子%〜25原子%を含有させることができる。
【0043】
第二実施形態では、上記した一般式Aに示す合金又はこの合金にB(ボロン)を含有した合金は、スパッタリング法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、イオンビーム蒸着法やエピタキャル法等を用いて成膜される。成膜された第三強磁性層21は、アモルファス、微結晶若しくは多結晶の非単結晶構造又は単結晶構造とすることができる。特に、第二実施形態では、第三強磁性層21が多結晶構造の強磁性体によって形成されていることが、効果を高める上で、有利である。第二実施形態で用いた第四強磁性層22、第五強磁性層23及び第六強磁性層24としては、好ましくは、Fe、Co及びNiから成る金属群から選択された少なくとも1種の金属を含有する合金、又は合金とボロン(B)とを含有した前記一般式Bに示す合金を用いることができる。
【0044】
また、第二実施形態では、第四強磁性層22、第五強磁性層23及び第六強磁性層24のうち少なくとも一つの層中に、好ましくは、全層中に、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Rh)又はロジウム(Ru)などの白金系元素からなる白金族系金属を添加含有させることができる。この際、白金族系金属の合金中での含有量は、0.5原子%〜30原子%、好ましくは、5原子%〜25原子%である。特に、白金族系金属のうち、白金(Pt)を用いるのが好ましい。
【0045】
次に、図3を参照して、上記の積層構造を有するトンネル磁気抵抗素子を製造する装置と製造方法を説明する。図3は、トンネル磁気抵抗素子を製造する装置の概略的な平面図であり、本装置は複数の磁性膜を含む多層膜を作製することのできる装置であり、量産用のスパッタリング成膜装置である。
【0046】
図3に示された磁性多層膜作製装置30はクラスタ型装置であり、スパッタリング法に基づく複数の成膜チャンバを備えている。磁性多層膜作製装置30では、図示しないロボット搬送装置を備える搬送チャンバ32が中央位置に設置されている。磁性多層膜作製装置30の搬送チャンバ32には、2つのロード/アンロードチャンバ35及び36が設けられ、それぞれにより基板(シリコン基板)31の搬入/搬出が行われる。これらのロード及びアンロードチャンバ35及び36を交互に使用することによって、生産性よく多層膜を作製できる構成となっている。
【0047】
上記の磁性多層膜作製装置30では、搬送チャンバ32の周囲に、例えば、3つの成膜チャンバ37A、37B及び37Cと1つのエッチングチャンバ38と1つの酸化チャンバ39が設けられている。エッチングチャンバ38ではトンネル磁気抵抗素子の所要表面をエッチング処理する。酸化チャンバ39では金属膜を酸化して酸化膜のトンネルバリア層を形成する。各チャンバ(37A, 37B, 37C, 38, 39)と搬送チャンバ32との間には各チャンバ(37A, 37B, 37C, 38, 39)を隔離しかつ必要に応じて開閉自在であるゲートバルブ40が設けられている。なお、各チャンバには、図示しない真空排気機構、ガス導入機構、電力供給機構などが付設されている。
【0048】
磁性多層膜作製装置30の成膜チャンバ37A、37B及び37Cの各々ではスパッタリング法により基板31の上に前述した各磁性膜を下側から順次に堆積する。例えば成膜チャンバ37A,37B,37Cの天井部には、それぞれ、適当な円周の上に配置された4基または5基のターゲット(タンタル(Ta)41,銅(Cu)42,コバルト鉄ボロン(CoFeB)43,ニッケル鉄(NiFe)44,コバルト鉄(C90Fe10)45)、(白金マンガン(PtMn)51,コバルト鉄白金(CoFePt)52,ルテニウム(Ru)53,コバルト鉄(C90Fe10)54,コバルト鉄(C70Fe30)55)、(酸化マグネシウム(MgO)61,ニッケル鉄クロム(NiFeCr)62,マグネシウム(Mg)63,アルミニウム(Al)64)が配置される。さらに当該円周と同軸上に位置する基板ホルダ上に基板31が配置される。
【0049】
上記において、ターゲット(41,42,43,44,45)、(51,52,53,54,55)、(61,62,63,64)としては、成膜する層の材料に応じて選択される。第一強磁性固定層13のターゲット52としては、例えば、コバルト鉄白金(CoFePt)ターゲットであっても良く、またターゲット52を白金(Pt)ターゲットとし、ターゲット55をコバルト鉄(Co70Fe30)ターゲットとしたコスパッタリング法、またはターゲット52を白金(Pt)ターゲットとし、ターゲット54をコバルト鉄(Co90Fe10)ターゲットとしたコスパッタリング法によっても良い。
【0050】
また、ターゲット41の材料は下地電極層および上部電極層のための「Ta」であり、ターゲット43の材料は第二強磁性固定層15のための「CoFeB」であってもよい。またターゲット51の材料は、反強磁性層12のための「PtMn」ターゲットであってもよい。また、ターゲット53の材料は、第一非磁性中間層14のための「Ru」ターゲットであっても良い。さらにターゲット61の材料は、トンネルバリア層となる第二非磁性中間層16のための「MgO」ターゲットであっても良い。また、ターゲット63および64は酸化処理によってトンネルバリア層を形成する際の前駆体となる金属層のための「Mg」および「Al」ターゲットであっても良い。
【0051】
上記の複数のターゲットは、効率よくかつ適切な組成の磁性膜を堆積させるために、好適には各基板に向くように傾斜して設けられるが、基板面に平行な状態で設けられてもよい。また、複数のターゲットと基板とは相対的に回転するような構成に基づいて配置されている。上記の構成を有する磁性多層膜作製装置30において、各成膜チャンバ37A、37B及び37Cを利用して、基板31の上に、図1に示した磁性多層膜がスパッタリング法により順次に成膜される。
【0052】
以上説明した実施形態ではトンネル磁気抵抗素子について説明したが、本発明は、第二非磁性中間層16として、前述のトンネルバリア層を銅(Cu)などの非磁性伝導層に変えることで、巨大磁気抵抗素子を構成することができる。
【0053】
成膜チャンバ37A、37B及び37Cのそれぞれでスパッタリング成膜を行って積層が完了したトンネル磁気抵抗素子は、熱処理炉において、アニーリング処理が行われる。このとき、アニーリング温度は例えば約200℃〜400℃であり、例えば8kOe(64 KA/m)の磁場中で、例えば4時間アニーリング処理が行われる。これにより、トンネル磁気抵抗素子の反磁性層であるPtMnに所要の磁化が与えられる。
【0054】
次に本発明の実施例について図面を用いて説明する。
【0055】
(実施例1)
図4は本発明のトンネル磁気抵抗素子の実施例1の構成を示す断面図である。本実施例のトンネル磁気抵抗素子は、ボトムタイプ構造のトンネル磁気抵抗素子であり、図1に示した構成に対応している。
【0056】
図4において、Ta層71-1(ターゲット41を使用)、CuN層71-2(ターゲット42を使用)、Ta層71-3(ターゲット41を使用)は下部電極層を構成し、厚さはそれぞれ、5nm、20nm、3nmである。PtMn層72(ターゲット51を使用)は反強磁性層で、厚さは15nmである。(Co70Fe30100-XPtX層73(ターゲット52とターゲット55とのコ・スパッタリングターゲットを使用)は第一強磁性固定層で、厚さは2.5nmである。Ru層74(ターゲット53を使用)は非磁性層(非磁性中間層)で、厚さは0.85nmである。Co70Fe30層75(ターゲット55を使用)は第二強磁性固定層で、厚さは2.5nmである。AlOX層76(ターゲット64を使用)は第二非磁性中間層(トンネルバリア層)で、厚さは1.2nmである。(Co70Fe308020層77(ターゲット43を使用)は強磁性自由層で、厚さは3nmである。Ta層78-1(ターゲット41を使用)、Ru層78-2(ターゲット53を使用)は上部電極層を構成し、厚さはそれぞれ、10nm、7nmである。本実施例では第一強磁性固定層に下記表1に示す添加量(原子%)で白金(Pt)を添加した。
【0057】
AlOx層76は、Al層を成膜した後、図3に図示する酸化チャンバ39にて酸化処理が施される。
【0058】
AlOx層76に換えて、酸化マグネシウム(MgO)のトンネルバリア層76としてもよい。この際、ターゲット64を酸化マグネシウム(MgO)ターゲット又は金属マグネシウムターゲットを用いることができる。金属マグネシウムターゲットを用いた際には、金属マグネシウム層を酸化するため、酸化チャンバ39にて酸化処理が施される。
【0059】
次に、得られたトンネル磁気抵抗素子をアニールチャンバに移し、そこで、270℃、300℃及び330℃のアニール処理を施し、夫々の温度でのMR(%)を測定した。この結果を下記表1に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
表1によれば、白金(Pt)非添加の時は、アニール処理温度が上がるにつれてMR(%)は低下していた。Ptを添加することでMR比の低下率が小さくなることが分かる。そして、特に白金(Pt)を添加することで、MR(%)の温度依存性が改善されていた。特に、白金(PT)の添加量が18原子%を超えると、MR(%)の低下率を大幅に小さくすることができた。白金(Pt)の添加量の上限は、特に限定されないが、50原子%が上限とするのが良い。
【0062】
(実施例2)
実施例1で用いた白金(Pt)に換え、イリジウム(Ir)、Os(オスミウム)、パラジウム(Pd)、Rh(ロジウム)及びRu(ルテニウム)を夫々用いて、同様のトンネル磁気抵抗素子を作成し、実施例1と同様の温度依存性の試験を行なった。この結果、実施例1同様に、夫々温度依存性が改善された。
【0063】
(実施例3)
実施例1で用いた第二強磁性固定層であるCo70Fe30層75をCo60Fe20Pt10層に変えた他は、実施例1と同様の方法で、トンネル磁気抵抗素子を作成し、実施例1と同様の方法で、温度依存性を試験した。この結果は、下記表2のとおりであった。
【0064】
【表2】

【0065】
(比較例1)
実施例3で用いた第一強磁性固定層である(Co70Fe30100-XPtX層73を白金非含有のCo70Fe30層に換えた他は、上記実施例3と同様に、トンネル磁気抵抗素子を作成し、実施例1と同様の温度依存性を試験した。この結果は、下記表3のとおりであった。
【0066】
【表3】

【0067】
(実施例4)
図5は本発明の巨大磁気抵抗素子の実施例の構成を示す断面図である。本実施例の巨大磁気抵抗素子は、ボトムタイプ構造の巨大磁気抵抗素子である。
【0068】
図5において、ニッケル鉄クロム(NiFeCr)層501(ターゲット62を使用)は下部電極層で、厚さは4nmである。白金マンガン(PtMn)層502(ターゲット51を使用)は反強磁性層で、厚さは12nmである。コバルト鉄白金(Co90Fe10100-XPtX層503(ターゲット52(CoFePt)とターゲット54とのコ・スパッタリングターゲットを使用)は第一強磁性固定層で、厚さは1.8nmである。ルテニウム(Ru)層504(ターゲット53を使用)は第一非磁性中間層で、厚さは0.9nmである。コバルト鉄(Co90Fe10層)505(ターゲット54を使用)は第二強磁性固定層で、厚さは2.2nmである。銅(Cu)層506(ターゲット42を使用)は第二非磁性中間層で、厚さは2nmである。コバルト鉄(Co90Fe10層)507(ターゲット45を使用)は強磁性自由層で、厚さは1.3nmである。ニッケル鉄(Ni83Fe17層)508-1(ターゲット44を使用)、銅(Cu)層508-2(ターゲット42を使用)、タンタル(Ta層)508-3(ターゲット41を使用)は上部電極層を構成し、厚さはそれぞれ、2.5nm、6nm、3nmである。本実施例では第一強磁性固定層に白金(Pt)を添加した。この素子を300℃の温度でアニールし、この時のMR(%)を測定した。この結果を図6に示す。
【0069】
図6は、成膜後に、0.8Tの高磁場中にて、4時間の熱処理(300℃)を施した巨大磁気抵抗素子のMR(%)と、第一強磁性固定層への白金(Pt)添加量との関係を示す図である。白金(Pt)を添加するにつれてMR(%)が上昇し、8原子%で約16.0%のMR(%)が得られる。そして、白金(Pt)含有量が12〜24原子%付近で約16.3%のMR(%)が得られた。白金(Pt)を添加しない場合のMR%(15.5%)から約0.8%の増大である。白金(Pt)添加量の上限は強磁性層として好ましい範囲で規定されるが、ほぼ50at%が上限となる。したがって、白金(Pt)Pt添加量は0原子%を超え、50原子%以下、好ましくは8原子%以上、50原子%以下、さらに好ましくは12原子%以上、24原子%以下である。
【0070】
本発明のトンネル磁気抵抗素子及び巨大磁気抵抗素子は、磁気ディスク駆動装置の磁気ヘッド及び磁気ランダムアクセスメモリに用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施形態に係わるトンネル磁気抵抗素子の断面図である。
【図2】本発明の別の実施形態に係わるトンネル磁気抵抗素子の断面図である。
【図3】本発明の磁気抵抗素子の製造装置の概略的な構成を示す図である。
【図4】実施例1に係わるトンネル磁気抵抗素子の断面図である。
【図5】本発明の巨大磁気抵抗素子の断面図である。
【図6】図5の素子の温度依存性を示す特性を示す図である。
【符号の説明】
【0072】
11 下部電極層
12 反強磁性層
13 第一強磁性固定層
14 非磁性中間層
15 第二強磁性固体層
16 トンネルバリア層
17 強磁性自由層
18 上部電極
21 第三強磁性層
22 第四強磁性層
23 第五強磁性層
24 第六強磁性層
30 磁性多層膜作製装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンガンを有する層で形成した反強磁性層と、
前記反強磁性層側に位置し、強磁性体及び白金族系金属を有する層で形成した第一磁化固定層、強磁性体を有する層で形成した第二磁化固定層及び該第一磁化固定層と該第二磁化固定層との間に位置する第一非磁性中間層を有する積層磁化固定層と、
強磁性体を有する層で形成した磁化自由層と、
前記積層磁化固定層と前記磁化自由層との間に位置する第二非磁性中間層と、
を有することを特徴とする磁気抵抗素子。
【請求項2】
前記白金族系金属は、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、Os(オスミウム)、パラジウム(Pd)、Rh(ロジウム)及びRu(ルテニウム)から成る群から選択された少なくとも1種の金属であることを特徴とする請求項1に記載の磁気抵抗素子。
【請求項3】
前記白金族系金属は、白金(Pt)であることを特徴とする請求項1に記載の磁気抵抗素子。
【請求項4】
前記第一磁化固定層及び第二磁化固定層は、結晶構造の強磁性体を有することを特徴とする請求項1に記載の磁気抵抗素子。
【請求項5】
前記結晶構造は、微結晶、多結晶又は単結晶であることを特徴とする請求項4に記載の磁気抵抗素子。
【請求項6】
前記第二非磁性中間層は、結晶構造の酸化マグネシウムを有することを特徴とする請求項1に記載の磁気抵抗素子。
【請求項7】
前記結晶構造は、微結晶、多結晶又は単結晶であることを特徴とする請求項6に記載の磁気抵抗素子。
【請求項8】
前記第二磁化固定層は、白金族系金属を含有することを特徴とする請求項6に記載の磁気抵抗素子。
【請求項9】
前記磁化自由層は、白金族系金属を含有することを特徴とする請求項1に記載の磁気抵抗素子。
【請求項10】
前記第二非磁性中間層は、酸化アルミニウムを有することを特徴とする請求項1に記載の磁気抵抗素子。
【請求項11】
前記第一磁化固定層は、前記白金族系金属を0.5原子%〜50原子%の範囲で含有することを特徴とする請求項1に記載の磁気抵抗素子。
【請求項12】
前記第一磁化固定層は、前記白金族系金属を10原子%〜40原子%の範囲で含有することを特徴とする請求項1に記載の磁気抵抗素子。
【請求項13】
反強磁性層と、
第一磁化固定層、第一非磁性中間層及び第二磁化固定層を有する積層構造の積層磁化固定層と、
第二非磁性中間層と、
磁化自由層と、を有する磁気抵抗素子の製造方法であって、
マンガン(Mn)を含有するターゲットを用いたスパッタリング法により、前記反強磁性層を成膜する第1の工程と、
前記第1の工程の後で、白金族系金属を含有するターゲット及び強磁性体を含有するターゲットを用いたスパッタリング法により、前記第一磁化固定層を成膜する第2の工程と、
前記第2の工程の後で、非磁性体を含有するターゲットを用いたスパッタリング法により、前記第一非磁性中間層を成膜する第3の工程と、
前記第3の工程の後で、強磁性体を含有するターゲットを用いたスパッタリング法により、前記第二磁化固定層を成膜する第4の工程と、
前記第4の工程の後で、非磁性体を含有するターゲットを用いたスパッタリング法により、前記第二非磁性中間層を成膜する第5の工程と、
前記第5の工程の後で、強磁性体を含有するターゲットを用いたスパッタリング法により、前記磁化自由層を成膜する第6の工程と、
前記第6の工程の後で、前記反強磁性層と、前記第一磁化固定層、前記第一非磁性中間層及び前記第二磁化固定層を有する積層構造の前記積層磁化固定層と、前記第二非磁性中間層と、並びに、前記磁化自由層と、を加熱炉で加熱処理を行なう工程を有する第7の工程と、
を有することを特徴とする磁気抵抗素子の製造方法。
【請求項14】
反強磁性層と、
第一磁化固定層、第一非磁性中間層及び第二磁化固定層を有する積層構造の積層磁化固定層と、
第二非磁性中間層と、
磁化自由層と、を有する磁気抵抗素子の製造方法であって、
マンガン(Mn)を含有するターゲットを用いたスパッタリング法により、前記反強磁性層を成膜する第1の工程と、
前記第1の工程の後で、白金族系金属及び強磁性体を含有するターゲットを用いたスパッタリング法により、前記第一磁化固定層を成膜する第2の工程と、
前記第2の工程の後で、非磁性体を含有するターゲットを用いたスパッタリング法により、前記第一非磁性中間層を成膜する第3の工程と、
前記第3の工程の後で、強磁性体を含有するターゲットを用いたスパッタリング法により、前記第二磁化固定層を成膜する第4の工程と、
前記第4の工程の後で、非磁性体を含有するターゲットを用いたスパッタリング法により、前記第二非磁性中間層を成膜する第5の工程と、
前記第5の工程の後で、強磁性体を含有するターゲットを用いたスパッタリング法により、前記磁化自由層を成膜する第6の工程と、
前記第6の工程の後で、前記反強磁性層と、前記第一磁化固定層、前記第一非磁性中間層及び前記第二磁化固定層を有する積層構造の積層強磁性固定層と、前記第二非磁性中間層と、並びに、前記磁化自由層と、を加熱炉で加熱処理を行なう工程を有する第7の工程と、
を有することを特徴とする磁気抵抗素子の製造方法。
【請求項15】
ロボット搬送装置を備えた搬送チャンバと、
磁性多層膜を作成するための基板を前記搬送チャンバに搬入するための搬入機構と、
前記搬送チャンバとゲートバルブを介して接続配置し、前記ロボット搬送装置により搬送された基板に、マンガン(Mn)を含有する反強磁性体ターゲットを用いたスパッタリング法により、反強磁性体層を成膜する第1の成膜チャンバと、
前記搬送チャンバとゲートバルブを介して接続配置し、前記ロボット搬送装置により搬送された前記基板に、白金族系金属を含有した強磁性体ターゲットを用いたスパッタリング法により、白金族系金属を含有した第一強磁性固定層を成膜する第2の成膜チャンバと、
前記搬送チャンバとゲートバルブを介して接続配置し、前記ロボット搬送装置により搬送された前記基板に、強磁性体を含有した強磁性体ターゲットを用いたスパッタリング法により、第二強磁性固定層を成膜する第3の成膜チャンバと、
前記搬送チャンバとゲートバルブを介して接続配置し、前記ロボット搬送装置により搬送された前記基板に、非磁性体ターゲットを用いたスパッタリング法により、第一非磁性中間層を成膜する第4の成膜チャンバと、
前記搬送チャンバとゲートバルブを介して接続配置し、前記ロボット搬送装置により搬送された前記基板に、結晶性酸化マグネシウム層を成膜する第5の成膜チャンバと、
前記反強磁性体層、該反強磁性体層の上の第一強磁性固定層、該第一強磁性固定層の上の第一非磁性中間層、該第一非磁性中間層の上の第二強磁性固定層及び結晶性酸化マグネシウム層が積層された前記基板を排出するための排出機構と、
を有することを特徴とする磁性多層膜作成装置。
【請求項16】
ロボット搬送装置を備えた搬送チャンバと、
磁性多層膜を作成するための基板を前記搬送チャンバに搬入するための搬入機構と、
前記搬送チャンバとゲートバルブを介して接続配置し、前記ロボット搬送装置により搬送された基板に、マンガン(Mn)を含有する反強磁性体ターゲットを用いたスパッタリング法により、反強磁性体層を成膜する第1の成膜チャンバと、
前記搬送チャンバとゲートバルブを介して接続配置し、前記ロボット搬送装置により搬送された前記基板に、白金族系金属を含有した白金ターゲットと強磁性体を含有したターゲットとを用いたコスパッタリング法により、白金族系金属を含有した第一強磁性固定層を成膜する第2の成膜チャンバと、
前記搬送チャンバとゲートバルブを介して接続配置し、前記ロボット搬送装置により搬送された前記基板に、強磁性体を含有した強磁性体ターゲットを用いたスパッタリング法により、第二強磁性固定層を成膜する第3の成膜チャンバと、
前記搬送チャンバとゲートバルブを介して接続配置し、前記ロボット搬送装置により搬送された前記基板に、非磁性体ターゲットを用いたスパッタリング法により、第一非磁性中間層を成膜する第4の成膜チャンバと、
前記搬送チャンバとゲートバルブを介して接続配置し、前記ロボット搬送装置により搬送された前記基板に、結晶性酸化マグネシウム層を成膜する第5の成膜チャンバと、
前記反強磁性体層、該反強磁性体層の上の第一強磁性固定層、該第一強磁性固定層の上の第一非磁性中間層、該第一非磁性中間層の上の第二強磁性固定層及び結晶性酸化マグネシウム層が積層された前記基板を排出するための排出機構と、
を有することを特徴とする磁性多層膜作成装置。
【請求項17】
ロボット搬送装置を備えた搬送チャンバと、
磁性多層膜を作成するための基板を前記搬送チャンバに搬入するための搬入機構と、
前記搬送チャンバとゲートバルブを介して接続配置し、前記ロボット搬送装置により搬送された基板に、マンガン(Mn)を含有する反強磁性体ターゲットを用いたスパッタリング法により、反強磁性体層を成膜し、白金族系金属を含有した白金含有ターゲットと強磁性体を含有した強磁性体ターゲットとを用いたコスパッタリング法により、白金族系金属を含有した第一強磁性固定層を成膜し、非磁性体ターゲットを用いたスパッタリング方により、非磁性中間層を成膜し、強磁性体を含有した強磁性体ターゲットを用いたスパッタリング法により、第二強磁性固定層を成膜する成膜チャンバと、
前記反強磁性体層、該反強磁性体層の上の第一強磁性固定層、該第一強磁性固定層の上の非磁性中間層及び該非磁性中間層の上の第二強磁性固定層が積層された磁性多層膜を有する基板を排出するための排出機構と、
を有することを特徴とする磁性多層膜作成装置。
【請求項18】
ロボット搬送装置を備えた搬送チャンバと、
磁性多層膜を作成するための基板を前記搬送チャンバに搬入するための搬入機構と、
前記搬送チャンバとゲートバルブを介して接続配置し、前記ロボット搬送装置により搬送された基板に、マンガン(Mn)を含有する反強磁性体ターゲットを用いたスパッタリング法により、反強磁性体層を成膜し、白金族系金属を含有した白金含有ターゲットと強磁性体を含有した強磁性体ターゲットとを用いたコスパッタリング法により、白金族系金属を含有した第一強磁性固定層を成膜し、非磁性体ターゲットを用いたスパッタリング方により、非磁性中間層を成膜し、強磁性体を含有した強磁性体ターゲットを用いたスパッタリング法により、第二強磁性固定層を成膜する第一成膜チャンバと、
前記搬送チャンバとゲートバルブを介して接続配置し、前記ロボット搬送装置により搬送された基板に、酸化マグネシウムターゲット又は金属マグネシウムターゲットを用いたスパッタリング法により、酸化マグネシウム層又は金属マグネシウム層を成膜する第二成膜チャンバと、
前記反強磁性体層、該反強磁性体層の上の第一強磁性固定層、該第一強磁性固定層の上の非磁性中間層、該非磁性中間層の上の第二強磁性固定層、及び酸化マグネシウム層又は金属マグネシウム層が積層された磁性多層膜を有する基板を排出するための排出機構と、
を有することを特徴とする磁性多層膜作成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−306169(P2008−306169A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−110434(P2008−110434)
【出願日】平成20年4月21日(2008.4.21)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】