説明

緊急ジェネレーターモードを有するパルス幅変調インバータ

本発明は電気機械(1)をモーターモードまたはジェネレーターモードで作動させるパルス幅変調インバータに関する。パルス幅変調インバータは制御機器(6)用の接続端子(7)を有しており、制御機器はパルス幅変調インバータ(2)とデータ接続部(4)を介して通信する。制御機器(6)とパルス幅変調インバータ(2)との間のデータ接続部(4)に障害が生じた場合のエネルギー供給を保護するために、パルス幅変調インバータ(2)は自動的に緊急作動に切り替わるように設計されている。この緊急作動においてパルス幅変調インバータは自身の直流電圧−出力側(10)に所定の出力を供給し、当該出力によって少なくとも、電気的負荷の緊急作動が維持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載された、モーターモードまたはジェネレーターモードで電気機械を作動させるパルス幅変調インバータ、請求項5の上位概念に記載された、機械エネルギーを電気エネルギーに変換する装置および請求項9の上位概念に記載された、ハイブリッド車両におけるパルス幅変調インバータの作動方法に関する。
【0002】
ハイブリッド車両は内燃機関の他に通常、電気機械を有する。この電気機械は走行状況に依存してモーターモードか、またはジェネレーターモードで作動される。モーターモードではこの電気機械は付加的な駆動トルクを形成する。この駆動トルクは内燃機関を例えば加速フェーズにおいてサポートする。これに対してジェネレーターモードでは、車両減速時に自由になった運動エネルギーを電気エネルギーに変換する(回収熱:Rrekuperation)。このようにして得られた電気エネルギーはエネルギー蓄積部(例えばバッテリーまたはスーパーキャパシター)内に蓄積され、他の走行状況において(例えば車両の駆動のため、または電気的負荷を給電するために)使用される。これによって車両の効率は格段に改善される。
【0003】
既知のパルス幅変調インバータ(Pulswechselrichter:PWR)は通常、PWR内に組み込まれたパワーエレクトロニクス並びに計算機中心部を含む。PWRは外部の制御機器によって駆動制御される。ここでこの外部制御機器は運転手の要望(加速ないし減速)に依存して、内燃機関および電気機械のための目標動作点を計算する。パルス幅変調インバータはこの制御機器と接続されており、ここから相応の動作データないし制御命令を得る。
【0004】
図1はハイブリッド車両の車両搭載電源の一部を示している。この装置は、パルス幅変調インバータ2を備えた電気機械1を有している。パルス幅変調インバータは、電気機械1をモーターモードまたはジェネレーターモードで作動させることができる。モーターモードでは内燃機関は電気機械1によってサポートされる;ジェネレーターモードでは、エネルギー蓄積部(ここではバッテリー3)内に蓄積される電気エネルギーが生成される。
【0005】
電気機械1およびバッテリー3はパルス幅変調インバータ2(PWR)を介して相互に接続されている。PWR2は電気機械1の出力および作動様式を定め、制御機器6によって相応に駆動制御される。
【0006】
パルス幅変調インバータ2は、自身のパワーエレクトロニクス並びに計算装置を含み、CANバス4を介して外部制御機器6と接続されている。この制御機器6は運転手の要望(例えば減速ないし加速)を求め、相応の情報ないし制御命令をパルス幅変調インバータ2に伝達する。ここで殊にエネルギー蓄積部3の充電状態(SOC)も考慮され、エネルギー蓄積部はジェネレーターモードにおいて過度に充電されることがない。
【0007】
パルス幅変調インバータ2および制御機器6は、ターミナル15に接続されており、通常はイグニッションスイッチ(KL15)を操作することによってスイッチオンされる。
【0008】
既知のパルス幅変調インバータ2は、通信接続部(CANバス4)に障害がある場合にセーフティ状態に切り換えられるように駆動制御される。このセーフティ状態ではもはや電気エネルギーは生成されず、これによって、パルス幅変調インバータ2がエネルギー蓄積部3をジェネレーターモードにおいて過度に充電してしまうことが阻止される。しかしこのようなセーフティ状態において、電気エネルギーはもはや全く生成されないので、エネルギー蓄積部3は、スイッチオンされている負荷の数が多い場合には、比較的迅速に充電が空になってしまう。従って車両は、比較的短い時間の後にとどまったままになってしまう。
【0009】
従って本発明の課題は、パルス幅変調インバータと制御機器との間の通信接続に障害がある場合にも、車両搭載電源のエネルギー供給を保証し、同時にエネルギー蓄積部の過度の充電(オーバーロード)を阻止することである。
【0010】
上述の課題は、本発明に相応して、請求項1、5および9に記載された特徴部分の構成によって解決される。本発明の発展形態は、従属請求項に記載されている。
【0011】
本発明の基本となる考えは、データ接続ないし通信接続にエラーがある場合に自動的に緊急ジェネレーターモードに切り替わるように、パルス幅変調インバータを設計することである。この緊急ジェネレーターモードでは、ジェネレータは所定の電気的出力を生成し、PWRはこの電気的出力を自身の直流電圧−出力側に供給する。この出力は有利には次のように決められる。すなわち少なくとも、車両が作動するのに重要な特定の継続負荷(例えば制御機器およびセンサ)の平均出力がカバーされるように決められる。これによって、車両は作動可能なままであり、運転者が少なくとも1つの工場を探すことができる。
【0012】
緊急作動時に生成される出力は例えば100W〜500Wの間であり、有利には約300Wである。
【0013】
本発明の有利な実施形態では、通信接続部に故障が生じた場合、運転手にこのことが示され、工場を探すように促される。運転者に情報を与えるために、例えば光学的または音響的な装置を設けることができる。
【0014】
本発明のパルス幅変調インバータは有利には、制御機器へ向かうデータバス(CAN)用の第1の接続端子と、制御線路用の第2の接続端子を有する。ここでこの制御線路には同じように制御機器が接続されている。第2の接続端子は有利には、単なる制御端子(オン/オフ)であって、この制御端子を介して電気機械が作動状態にされる、ないしは非作動状態にされる。従ってこの上位の制御機器は、通信接続に障害がある場合にもパルス幅変調インバータを制御することができ、殊に完全にスイッチオフにすることができる。これによって、電気的搭載電源のエネルギー蓄積部が緊急ジェネレーターモード時に過度に充電されてしまうことが阻止される。
【0015】
制御機器は有利にはエネルギー蓄積部とも接続されており、少なくとも1つの状態量(例えばエネルギー蓄積部の電流値および/または電圧値)を処理し、この状態量に基づいてジェネレーターモードが監視される。ジェネレーターモード時に過度に高い電圧または電流ないしは他のエラーが確認されると、制御機器はパルス幅変調インバータを付加的な制御線路を介して遮断する。制御機器は有利にはバス接続を介して、エネルギー蓄積部のセンサ装置と接続されている。
【0016】
エネルギー蓄積部は有利には状態識別部を含む。ここでこの状態識別部は、エネルギー蓄積部の充電状態を求め、制御機器に供給する。状態識別部は例えば相応のソフトウェアを有する計算装置によって実現される。このソフトウェアは充電状態を例えばCANバスを介して制御機器に送出する。択一的に、状態識別部が制御機器内に組み込まれてもよい。このような場合には、制御機器には種々異なる電気的なバッテリー状態量(例えばターミナル電圧およびターミナル電流)が供給され、ここからバッテリー充電状態(SOC)を計算する。
【0017】
本発明を以下で、添付の図面に基づいて、例として、より詳細に説明する。すなわち:
図1は、従来技術に従った、パルス幅変調インバータおよび属する制御部を伴う電気機械を有する車両搭載電源の概略図である。
【0018】
図2は、本発明の実施例に従った、パルス幅変調インバータおよび属する制御部を伴う電気機械を有する車両搭載電源の概略図である。
【0019】
図3は、車両搭載電源における電気的なエネルギー供給を維持する方法の基本的なステップのフローチャートである。
【0020】
図1の説明に関しては、明細書の冒頭箇所を参照されたい。
【0021】
図2は、本発明の実施形態に相応する、ハイブリッド車両の電気的搭載電源の一部を示している。この装置は、パルス幅変調インバータ2およびそれに属する制御機器6を備えた電気機械1を含む。制御機器6は運転手の要望(加速ないし減速)を評価し、それに依存して内燃機関(図示されていない)および電気機械1に対する目標動作点を計算する。図示の制御機器6は例えば内燃機関の制御機器である。この目標値は(通常時には)パルス幅変調インバータ2にCANバス4を介して供給される。パルス幅変調インバータは電気機械1を相応にモーターモードまたはジェネレーターモードで作動させる。モーターモードでは、電気機械1は内燃機械をサポートする駆動トルクを生成する。ジェネレーターモードでは、パルス幅変調インバータ2は自身の直流電圧−出力側10に所定の直流電圧を生成する。この直流電圧によって、エネルギー蓄積部3が充電される。
【0022】
パルス幅変調インバータ2は、データ伝送に障害がある場合に、CANバス4を介して自動的に緊急ジェネレーターモードに切り替わり、このモードにおいて所定のジェネレータ出力を供給するように設計されている。これによって、少なくとも重要な電気的負荷、例えば制御機器が給電され続け、車両が動作可能であり続ける。データ伝送に障害がある場合には、運転手に故障が示され、工場を探すように促される。このために、光学的なまたは音響的な表示装置11が設けられる。この表示装置は制御機器6と接続され、この制御機器によってアクティブにされる。
【0023】
制御機器6はさらにエネルギー蓄積部3と接続され、少なくとも1つの電気的な量(例えば電流値または電圧値)を得る。このような電気的な量に基づいて、この緊急作動が監視される。従って搭載電源網電圧または充電電流が過度に上昇している場合には、緊急作動を作動停止させることができる。制御機器はこのために別個の制御線路5を介してパルス幅変調インバータ2と接続されている。エネルギー蓄積部3が過度に充電されてしまう恐れがある場合には、制御機器6はパルス幅変調インバータ2を信号「ロー」ないし「ハイ」によってスイッチオフないしスイッチオンすることができる。
【0024】
図示の例では、図1とは異なり、制御機器6はイグニッションスイッチ(KL15)と接続されているが、PWR2はイグニッションスイッチと接続されていない。パルス幅変調インバータ2は制御線路5を介してスイッチオンされる。
【0025】
図3は、パルス幅変調インバータ2と制御機器6との間の通信システム4に故障がある場合にエネルギー供給を維持する方法の基本的なステップを示している。ここで、ステップ15においてまずは、PWR2と制御機器6との間でデータ接続部4が機能しているか否かが検査される(この検査は例えば確認を要求することによって行われる)。機能が正常である場合(J)にはこの方法は終了する。これに対して、故障がある場合には(N)、パルス幅変調インバータ2は緊急ジェネレーターモードに移行する(ステップ16)。パルス幅変調インバータ2がデータ伝送部の機能エラーを識別した場合には、この移行は自動的に行われる。緊急ジェネレーターモードは、計器板内の警告ランプ11によって、または他の装置によって示される。
【0026】
ステップ17では、車両制御部6がエネルギー蓄積部3の充電過程を監視する。ここで充電電流および/または充電電圧が検出され、処理される。緊急ジェネレーターモードが正常に機能している場合には、この方法は終了する。これとは異なり、過度に高い電流または電圧が確認された場合には(N)、制御機器6はパルス幅変調インバータ2を付加的な制御線路5を介してスイッチオフすることができる。このために制御機器6は例えば信号「ロー」を相応の出力側に生成する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】従来技術に従った、パルス幅変調インバータおよび属する制御部を伴う電気機械を有する車両搭載電源の概略図
【図2】本発明に従った、パルス幅変調インバータおよび属する制御部を伴う電気機械を有する車両搭載電源の概略図
【図3】車両搭載電源における電気的なエネルギー供給を維持する方法の基本的なステップのフローチャート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機械(1)をモーターモードまたはジェネレーターモードで作動させるパルス幅変調インバータであって、
当該パルス幅変調インバータは制御機器(6)とのデータ接続部(4)のための接続端子(7)を有しており、
前記データ接続(4)に障害がある場合に、自動的に緊急作動に切り替わるように前記パルス幅変調インバータ(2)が設計されている形式のものにおいて、
前記パルス幅変調インバータ(2)は前記データ接続部(4)に障害がある場合には自身の直流電圧−出力側(10)に所定の出力を供給し、当該出力によって少なくとも、電気的負荷の緊急作動が維持される、
ことを特徴とするパルス幅変調インバータ。
【請求項2】
前記緊急作動時に生成される出力は100Wから500Wの間である、請求項1記載のパルス幅変調インバータ。
【請求項3】
前記パルス幅変調インバータ(2)は、前記制御機器(6)用の付加的な接続端子(8)を有しており、当該接続端子を介してパルス幅変調インバータ(2)は制御機器(6)によって、必要な場合に非作動状態にされる、請求項1記載のパルス幅変調インバータ。
【請求項4】
前記パルス幅変調インバータ(2)はバス(4)のための第1の接続端子(7)と、制御線路(5)のための第2の接続端子(8)を有しており、
前記接続端子に制御機器(6)が接続されている、請求項1または2記載のパルス幅変調インバータ。
【請求項5】
車両搭載電源において電気的エネルギーを生成する装置であって、
パルス幅変調インバータ(2)を伴う電気機械(1)を有しており、
当該パルス幅変調インバータは前記電気機械(1)と直流電圧搭載電源との間に接続されており、さらにデータ接続部(4)を介して制御機器(6)と接続されている形式のものにおいて、
前記データ接続部(4)に障害がある場合に、自動的に緊急作動に切り替わるように前記パルス幅変調インバータ(2)が設計されており、当該緊急作動時にパルス幅変調インバータは自身の直流電圧−出力側(10)に所定の出力を供給し、当該出力によって少なくとも、電気的負荷の緊急作動が維持される、
ことを特徴とする、車両搭載電源において電気的エネルギーを生成する装置。
【請求項6】
前記パルス幅変調インバータ(2)は、前記制御機器(6)用の付加的な接続端子(8)を有しており、当該接続端子を介してパルス幅変調インバータ(2)は制御機器(6)によって、必要な場合に非作動状態にされる、請求項5記載の装置。
【請求項7】
前記制御機器(6)はバッテリー状態識別部を有している、請求項5または6記載の装置。
【請求項8】
前記制御機器(6)は、エネルギー蓄積部(3)の少なくとも1つの電気的な量(U,I)を監視し、当該電気的な量に依存してパルス幅変調インバータ(2)を制御する、請求項5から7までのいずれか1項記載の装置。
【請求項9】
ハイブリッド車両におけるエネルギー供給を改善するための方法であって、
当該ハイブリッド車両は内燃機関と電気機械(1)を有しており、当該電気機械はモーターモードかまたはジェネレーターモードで作動し、
前記電気機械(1)はパルス幅変調インバータ(2)によって制御され、当該パルス幅変調インバータはデータ接続部(4)を介して制御機器(6)と接続されている形式の方法において、
前記データ接続部(4)の機能を監視し、障害がある場合に前記パルス幅変調インバータ(2)をセーフティ緊急作動に切り換え、当該緊急作動においてパルス幅変調インバータは自身の直流電圧−出力側(10)に所定の出力を生成し、当該出力によって少なくとも、電気的負荷の緊急作動を維持することができる、
ことを特徴とする、ハイブリッド車両におけるエネルギー供給を改善するための方法。
【請求項10】
前記制御機器(6)は、エネルギー蓄積部(3)の少なくとも1つの電気的な量(U,I)を緊急作動時に監視し、当該電気的な量に依存して前記パルス幅変調インバータ(2)を非作動状態にする、または非作動状態にしない、請求項9記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−521195(P2009−521195A)
【公表日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−539372(P2008−539372)
【出願日】平成18年9月18日(2006.9.18)
【国際出願番号】PCT/EP2006/066460
【国際公開番号】WO2007/051670
【国際公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】