自動車の追従走行装置
【課題】
自動車の追従走行装置において、自車両のギクシャク運転を抑制し、乗員の乗り心地や安心感の向上を図ることを課題とする。
【解決手段】
追従走行装置1は、車間距離検出手段11で検出された前方車両Wfと自車両Wとの車間距離L1が目標車間距離Ltに維持されるように自車両Wの車速vを制御する車速制御手段17,18を備えている。追従走行装置1は、前々方車両Wffと前方車両Wfとの車間距離L2が所定の車間距離Lmよりも短くなったときは短くなっていないときよりも車速制御手段17,18の制御感度を鈍化させるコントロールユニット10を備えている。
自動車の追従走行装置において、自車両のギクシャク運転を抑制し、乗員の乗り心地や安心感の向上を図ることを課題とする。
【解決手段】
追従走行装置1は、車間距離検出手段11で検出された前方車両Wfと自車両Wとの車間距離L1が目標車間距離Ltに維持されるように自車両Wの車速vを制御する車速制御手段17,18を備えている。追従走行装置1は、前々方車両Wffと前方車両Wfとの車間距離L2が所定の車間距離Lmよりも短くなったときは短くなっていないときよりも車速制御手段17,18の制御感度を鈍化させるコントロールユニット10を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両と前方車両との目標車間距離を維持しながら自車両を前方車両に追従走行させる自動車の追従走行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車載カメラで自車両の前方車両を認識し、レーダで自車両と前方車両との車間距離を検出して、自車両と前方車両との実車間距離が所定の目標車間距離に維持されるように自車両を前方車両に追従走行させる自動車の追従走行装置が知られている。そして、近年、そのような追従走行装置において、乗員の乗り心地や安心感を改善・改良する様々な技術が提案されている。例えば、特許文献1には、自車両の前方車両に加えて自車両の前々方車両も認識し、追従走行時に検出される前々方車両の減速度や前方車両と前々方車両との車間時間等から前方車両と前々方車両との衝突可能性が大きくなったと判断したときは、自車両と前方車両との衝突可能性も大きくなったと判断して、自車両における衝突対応装置、例えばシートベルト装置やブレーキ装置等の作動タイミングを早めたり作動量を大きくする技術が開示されている。
【特許文献1】特開2005−31967号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、一般に、前述したように、追従走行時は自車両と前方車両との車間距離を目標車間距離に維持しようとする制御が働くので、例えば前方車両が前々方車両に接近して走行し、前方車両が急ブレーキや急加速を繰り返すギクシャク運転をすると、それに連動して自車両も急ブレーキや急加速を頻繁に行うこととなり、乗員の乗り心地や安心感が損なわれるという不具合がある。しかしながら、この不具合に対処する技術の提案は現在のところ見当たらない。
【0004】
そこで、本発明は、自動車の追従走行装置において、前方車両を目標車両として車間距離を維持しようとする結果、前方車両のギクシャク運転に連動して自車両もギクシャク運転をしてしまうという前記不具合に対処し、乗員の乗り心地や安心感の向上を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、前記課題を解決するため、本願の請求項1に記載の発明は、自車両の前方車両を認識する前方車両認識手段と、自車両と前方車両との目標車間距離を設定する目標車間距離設定手段と、前記前方車両認識手段で認識された前方車両と自車両との車間距離を検出する車間距離検出手段と、該車間距離検出手段で検出された車間距離が前記目標車間距離設定手段で設定された目標車間距離に維持されるように自車両の車速を制御する車速制御手段とを備える自動車の追従走行装置であって、自車両の前々方車両を認識する前々方車両認識手段と、該前々方車両認識手段で認識された前々方車両と前記前方車両認識手段で認識された前方車両との車間距離を検出する第2の車間距離検出手段と、該第2の車間距離検出手段で検出された車間距離が所定の車間距離よりも短くなったときは短くなっていないときよりも前記車速制御手段の制御感度を鈍化させる制御感度鈍化手段とが設けられていることを特徴とする。
【0006】
次に、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の自動車の追従走行装置において、前記目標車間距離設定手段は、前記第2の車間距離検出手段で検出された車間距離が所定の車間距離よりも短くなったときは短くなっていないときよりも目標車間距離を所定距離だけ延長することを特徴とする。
【0007】
次に、請求項3に記載の発明は、前記請求項2に記載の自動車の追従走行装置において、前記目標車間距離設定手段は、前記第2の車間距離検出手段で検出された車間距離が所定の車間距離よりも短くなった後は、該車間距離が短くなるに従い目標車間距離を徐々に延長することを特徴とする。
【0008】
次に、請求項4に記載の発明は、前記請求項2又は3に記載の自動車の追従走行装置において、前記目標車間距離設定手段は、前記第2の車間距離検出手段で検出された車間距離が前記所定の車間距離よりも短い第2の所定の車間距離よりも短くなったときは目標車間距離を第2の所定距離だけさらに延長することを特徴とする。
【0009】
次に、請求項5に記載の発明は、前記請求項1から4のいずれかに記載の自動車の追従走行装置において、前記制御感度鈍化手段は、前記車間距離検出手段で検出された車間距離と前記目標車間距離設定手段で設定された目標車間距離との偏差に対する自車両の車速制御量を低減することにより前記車速制御手段の制御感度を鈍化させることを特徴とする。
【0010】
次に、請求項6に記載の発明は、前記請求項1から5のいずれかに記載の自動車の追従走行装置において、前記制御感度鈍化手段は、前記車間距離検出手段で検出された車間距離と前記目標車間距離設定手段で設定された目標車間距離との偏差に対する自車両の車速制御の開始を遅延することにより前記車速制御手段の制御感度を鈍化させることを特徴とする。
【0011】
次に、請求項7に記載の発明は、前記請求項1から6のいずれかに記載の自動車の追従走行装置において、前記制御感度鈍化手段は、前記車間距離検出手段で検出された車間距離と前記目標車間距離設定手段で設定された目標車間距離との偏差を小さくすることにより前記車速制御手段の制御感度を鈍化させることを特徴とする。
【0012】
そして、請求項8に記載の発明は、前記請求項1から7のいずれかに記載の自動車の追従走行装置において、前記制御感度鈍化手段は、前記車間距離検出手段で検出された車間距離が前記目標車間距離設定手段で設定された目標車間距離よりも大きい場合にのみ前記車速制御手段の制御感度を鈍化させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
まず、請求項1に記載の発明によれば、例えば前方車両が前々方車両に接近して走行し、その結果、前方車両と前々方車両との車間距離が所定の車間距離よりも短くなって、前方車両がギクシャク運転をしそうな状況においては、自車両と前方車両との車間距離を目標車間距離に維持しようとする自車両の車速制御の感度を鈍化させるようにしたから、たとえ前方車両が急ブレーキや急加速を繰り返すギクシャク運転をしても、それに連動して自車両が急ブレーキや急加速を頻繁に行うことが抑制され、乗員の乗り心地や安心感の向上が図られる。
【0014】
その場合に、請求項2に記載の発明によれば、自車両の車速制御の感度を鈍化させると共に、目標車間距離を所定距離だけ延長するようにしたから、自車両と前方車両との車間距離に余裕ができて、たとえ自車両の車速制御の感度が鈍化しても乗員の安心感が確保される。
【0015】
また、その場合に、請求項3に記載の発明によれば、目標車間距離を一気に所定距離だけ延長するのではなく、前方車両と前々方車両との車間距離が短くなるに従い目標車間距離を徐々に延長するようにしたから、自車両は前方車両から徐々に離間していくこととなり、円滑な追従走行制御が実現して、この点からも乗員の乗り心地の向上が図られる。
【0016】
さらに、請求項4に記載の発明によれば、前方車両と前々方車両との車間距離が前記所定の車間距離よりも短い第2の所定の車間距離よりも短くなって、前方車両がギクシャク運転をより一層しそうな状況、あるいは前方車両と前々方車両との接触が起こりそうな状況においては、目標車間距離を第2の所定距離だけさらに延長するようにしたから、自車両と前方車両との車間距離にさらに余裕ができて、たとえ自車両の車速制御の感度が鈍化しても乗員の安心感が確保されると共に、たとえ前方車両が前々方車両に接触した場合でも自車両が前方車両に接触する可能性が低減できて安全性が担保される。
【0017】
次に、請求項5に記載の発明によれば、前記自車両の車速制御感度を鈍化させる具体的態様が示され、それによれば、自車両と前方車両との車間距離と、自車両と前方車両との目標車間距離との偏差に対する自車両の車速制御量を低減することにより、前記自車両の車速制御感度を確実に鈍化させることができる。
【0018】
同じく、請求項6に記載の発明によれば、前記自車両の車速制御感度を鈍化させる別の具体的態様が示され、それによれば、自車両と前方車両との車間距離と、自車両と前方車両との目標車間距離との偏差に対する自車両の車速制御の開始を遅延することにより、前記自車両の車速制御感度を確実に鈍化させることができる。
【0019】
同じく、請求項7に記載の発明によれば、前記自車両の車速制御感度を鈍化させるさらに別の具体的態様が示され、それによれば、自車両と前方車両との車間距離と、自車両と前方車両との目標車間距離との偏差を小さくすることにより、前記自車両の車速制御感度を確実に鈍化させることができる。
【0020】
そして、請求項8に記載の発明によれば、前記自車両の車速制御感度の鈍化は、自車両と前方車両との車間距離が自車両と前方車両との目標車間距離よりも大きい場合、つまり自車両が前方車両から目標以上に離間している場合にのみ行われるので、逆にいえば、自車両と前方車両との車間距離が自車両と前方車両との目標車間距離よりも小さい場合、つまり自車両が前方車両に目標以上に接近している場合には自車両の車速制御感度は鈍化されないので、たとえ自車両が前方車両に目標以上に接近している場合に前方車両が急ブレーキや急停止することがあっても、これに遅れなく対応でき、自車両が前方車両に接触する可能性が低減できて安全性が担保される。以下、発明の実施形態を通して本発明をさらに詳しく説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、本実施形態に係る自動車の追従走行装置1の各構成要素のレイアウト図である。この追従走行装置1は、自車両Wと前方車両Wfとの車間距離及び自車両Wと前々方車両Wffとの車間距離を検出するためのレーダ11と、自車両Wの前方空間を撮像して前方車両Wf及び前々方車両Wffを認識するためのカメラ12とを含んでいる。
【0022】
また、この追従走行装置1は、車車間通信により、自車両Wの周囲に存在する他の車両から送信されてくる信号を受信したり、逆に、自車両Wの周囲に存在する他の車両へ信号を発信するための車車間通信用アンテナ13と、路車間通信により、道路側方に設けられたアンテナ(図示せず)と信号の遣り取りを行うための路車間通信用アンテナ14と、自車両Wの前方に存在する前方車両Wfのナンバープレートに内蔵されたIDタグ(このようなナンバープレートをスマートプレートという)から送信されてくる信号を受信するためのスマートプレート信号受信用アンテナ15とを含んでいる。
【0023】
また、この追従走行装置1は、操舵角を検出するための舵角センサ16の他、スロットルアクチュエータ17、ブレーキアクチュエータ18及びステアリングアクチュエータ19を含んでいる。
【0024】
図2は、この追従走行装置1のコントロールユニット10を中心とした制御システム図である。コントロールユニット10は、レーダ11からの信号と、カメラ12からの信号と、車車間通信用アンテナ13からの信号と、路車間通信用アンテナ14からの信号と、スマートプレート信号受信用アンテナ15からの信号と、舵角センサ16からの信号とを入力し、これらの信号に基いて、スロットルアクチュエータ17、ブレーキアクチュエータ18及びステアリングアクチュエータ19に制御信号を出力する。また、コントロールユニット10は、車車間通信用アンテナ13及び路車間通信用アンテナ14を介して自車両に関する情報を周囲に送信する。
【0025】
本実施形態では、図3に示すように、自車両Wと前方車両Wfとの車間距離(第1車間距離)L1、及び前方車両Wfと前々方車両Wffとの車間距離(第2車間距離)L2が重要である。第1車間距離L1は、前述したように、レーダ11で検出できる。第2車間距離L2は、自車両Wと前々方車両Wffとの車間距離から、第1車間距離L1と前方車両Wfの全長Lfとを減算することにより、検出できる(コントロールユニット10の動作)。ここで、自車両Wと前々方車両Wffとの車間距離は、レーダ11としてミリ波レーダを用いると、前述したように、該レーダ11で検出できる。というのは、図示したように、ミリ波は、前方車両Wfのフロアの下の路面で反射して前々方車両Wffに到達し、跳ね返ってくるからである。
【0026】
ここで、前方車両Wfが大型車の場合は、ギクシャクした挙動を起こし難いから、前方車両Wfの全長Lfを一律5m等として計算してもよいが、車車間通信により、前方車両Wfから直接前方車両Wfの全長Lfに関する情報を取得してもよい。あるいは、車車間通信により、前方車両Wfから直接第2車間距離L2に関する情報を取得することもできる。その場合は、レーダ11としてミリ波レーダ以外のレーダ、例えば、光、電波、超音波等を利用した各種レーダも用いることができる。
【0027】
また、図4に示すように、カーブを走行中に前方車両Wfの全長Lfを検出することも可能である。すなわち、舵角センサ16により自車両Wがカーブを走行していることが検出されているときに(図例は、前輪20、20の向きから、左カーブの走行中を示す)、レーダ11を用いて、前方車両Wfの内輪側の前端Fと自車両Wとの距離D2、前方車両Wfの内輪側の後端Rと自車両Wとの距離D1、及び、前方車両Wfの内輪側の前端Fと自車両Wとを結ぶ直線と、前方車両Wfの内輪側の後端Rと自車両Wとを結ぶ直線とで挟まれた角度Θを検出する。点Rから線D2に垂線を下ろし、交点をPとする。すると、前方車両Wfの全長Lfは、数1で表され、ここでFP,PRは、数2、数3で表されるから、結局、前方車両Wfの全長Lfは、数4で表されることとなり、前記距離D1,D2及び前記角度Θに基いて前方車両Wfの全長Lfを検出することが可能となる(コントロールユニット10の動作)。また、これに準じて、前方車両Wfと前々方車両Wffとの第2車間距離L2をカーブを走行中に検出することも可能である。
【0028】
【数1】
【0029】
【数2】
【0030】
【数3】
【0031】
【数4】
【0032】
また、前方車両Wfのナンバープレートに表示されている内容から前方車両Wfの全長Lfを検出することも可能である。すなわち、カメラ12を用いて、前方車両Wfのナンバープレート(図示せず)を撮像し、例えば、ナンバーが「1x」であれば、大型車(大型貨物、トラック)であると判断できるので、前方車両Wfの全長Lfを例えば12m等に設定し、ナンバーが「3x」であれば、普通車であると判断できるので、前方車両Wfの全長Lfを例えば5m等に設定し、ナンバーが「5x」であれば、小型車であると判断できるので、前方車両Wfの全長Lfを例えば4.5m等に設定する。これに準じて、ナンバーが「2x」(大型バス)、「4x」(小型貨物)、「6x」(小型貨物)、「7x」(小型普通車、バス)、「8x」(キャンピングカー等の特殊用途車)、「9x」(大型特殊)、「0x」(大型特殊)のときも、同様に、前方車両Wfの全長Lfを設定することが可能である。また、ナンバーが黄色又は黒色であれば、軽自動車であると判断できるので、前方車両Wfの全長Lfを例えば3.4m等に設定する。
【0033】
さらには、前方車両Wfのナンバープレートに内蔵されたIDタグから送信されてくる信号(スマートプレート信号)に基いて前方車両Wfの全長Lfを検出することも可能である。すなわち、スマートプレート信号受信用アンテナ15を用いて、前記スマートプレート信号を受信し、該信号に含まれるナンバー、全長、全幅、全高等の車両緒元情報から前方車両Wfの全長Lfを取得することができる。
【0034】
コントロールユニット10は、図5に示すように、前方車両Wfと前々方車両Wffとの第2車間距離L2が第1の所定車間距離Lmよりも長いとき、すなわち前方車両Wfがギクシャク運転をしそうな状況にないとき(通常時)は、自車両Wと前方車両Wfとの目標車間距離Ltとして、数5に従い、第1の目標車間距離Lt(i)を設定する。ここで、A,Bは、比例定数であり、停止車間距離Lxとは、自車両W及び前方車両Wfの停止時にとるべき車間距離のことである。
【0035】
【数5】
【0036】
ここで、A項の関数f(v)は、例えば、k・v2とすることができる。その場合に、kは、車両重量に比例する比例定数であり、乗員数や積載量に応じて補正される(より詳しくは、乗員数や積載量が多いほど大きな値に補正される)。また、B項の関数g(vf−v)は、例えば、h・(vf−v)とすることができる。その場合に、hは、0(零)未満の負の値の比例定数である。したがって、前方車両速度vfが自車両速度vよりも大きくなるほど(自車両Wが前方車両Wfから離間する傾向にあるほど)、B項の値がマイナス側に大きくなり、第1の目標車間距離Lt(i)は小さい値に設定される。その結果、車間距離偏差ΔL(次に説明するように、実車間距離L1と目標車間距離Ltとの偏差ΔL(=L1−Lt)をいう)が見かけ上大きくされることとなる。逆に、自車両速度vが前方車両速度vfよりも大きくなるほど(自車両Wが前方車両Wfに接近する傾向にあるほど)、B項の値がプラス側に大きくなり、第1の目標車間距離Lt(i)は大きな値に設定される。その結果、車間距離偏差ΔL(=L1−Lt)が見かけ上小さくされることとなる。このことは、いずれにおいても、車間距離偏差ΔLが見かけ上絶対値で大きくされることとなり、自車両Wと前方車両Wfとの相対速度差(vf−v)に応じて目標車間距離Ltへの自車両W位置の収束を早めるように働く。
【0037】
また、コントロールユニット10は、通常時は、車速制御特性qとして、図6に示す第1車速制御特性q(i)を用いる。この車速制御特性qは、一般に、実車間距離L1と目標車間距離Ltとの偏差ΔL(=L1−Lt)に対する自車両Wの車速制御量の値を示すもので、原点、すなわち前記車間距離偏差ΔLが0のときは車速制御量は0となる。そして、前記車間距離偏差ΔLがプラス側に大きくなるに従い、つまり自車両Wが前方車両Wfから離間していくに従い、車速制御量はプラス側、つまり加速側に大きくなる。逆に、前記車間距離偏差ΔLがマイナス側に大きくなるに従い、つまり自車両Wが前方車両Wfに接近していくに従い、車速制御量はマイナス側、つまり減速側に大きくなる。なお、この第1車速制御特性q(i)は、後述する第2車速制御特性q(ii)及び第3車速制御特性q(iii)と共に、予め、例えばコントロールユニット10の記録装置(メインメモリ等)に登録・格納されている。
【0038】
その場合に、符号アで示すように、前記車間距離偏差ΔLが離間側にγ1になるまで及び接近側にγ2になるまで車速制御量が0とされる不感帯が設けられている。また、符号イで示すように、前記車間距離偏差ΔLが前記不感帯アを超えて比較的小さい間は車速制御量の増分・減分が比較的小さい緩応答帯が設けられている。そして、符号ウで示すように、前記車間距離偏差ΔLが前記緩応答帯イを超えて比較的大きくなると車速制御量の増分・減分が比較的大きい急応答帯が設けられている。
【0039】
次に、コントロールユニット10は、図7に示すように、前方車両Wfと前々方車両Wffとの第2車間距離L2が第1の所定車間距離Lmよりも短いとき、すなわち前方車両Wfがギクシャク運転をしそうな状況にあるとき(接近時)は、自車両Wと前方車両Wfとの目標車間距離Ltとして、数6に従い、第2の目標車間距離Lt(ii)を設定する。ここで、第1の所定車間距離Lmとしては、例えば、(A・f(v)+Lx)等とすることができる。明らかなように、第1の目標車間距離Lt(i)に比べて、C・v・(Lm−L2)というC項が追加されている。つまり、第2目標車間距離Lt(ii)はC項の分だけ延長されている[請求項2に対応]。ここで、Cは、比例定数である。そして、このC項の値C・v・(Lm−L2)は、第2車間距離L2が第1の所定車間距離Lmよりも短くなった後、第2車間距離L2が短くなるに従い、徐々に大きくなっていく。換言すれば、第2目標車間距離Lt(ii)が徐々に延長されることとなる[請求項3に対応]。
【0040】
【数6】
【0041】
また、その場合に、第2目標車間距離Lt(ii)における比例定数Bの値は、第1目標車間距離Lt(i)における比例定数Bの値に比べて小さくされている。それゆえ、自車両Wが前方車両Wfから離間する傾向にあるほど、第2の目標車間距離Lt(ii)が小さい値に設定され、前記車間距離偏差ΔLが見かけ上大きくされるという効果、及び、自車両Wが前方車両Wfに接近する傾向にあるほど、第2の目標車間距離Lt(ii)が大きい値に設定され、前記車間距離偏差ΔLが見かけ上小さくされるという効果、すなわち、自車両Wと前方車両Wfとの相対速度差(vf−v)に応じて目標車間距離Ltへの自車両W位置の収束が早まるという効果が低減されることとなる。換言すれば、自車両Wの車速制御感度が鈍化されていることとなる[請求項7に対応]。
【0042】
また、コントロールユニット10は、接近時は、車速制御特性qとして、図8に示す第2車速制御特性q(ii)を用いる。この第2車速制御特性q(ii)は、第1車速制御特性q(i)と比べると(図中点線で示す)、車間距離偏差ΔLがプラス側、つまり離間側において、緩応答帯イ及び急応答帯ウのいずれも、車速制御量の増分・減分が小さくされている[請求項8に対応]。すなわち、自車両Wの車速制御量が低減されて、自車両Wの車速制御感度が鈍化されている[請求項5に対応]。
【0043】
次に、コントロールユニット10は、図9に示すように、前方車両Wfと前々方車両Wffとの第2車間距離L2が第1の所定車間距離Lmよりも短い第2の所定車間距離Lnよりも短いとき、すなわち前方車両Wfがより一層ギクシャク運転をしそうな状況にあるとき(異常接近時)は、自車両Wと前方車両Wfとの目標車間距離Ltとして、数7に従い、第3の目標車間距離Lt(iii)を設定する。ここで、第2の所定車間距離Lnとしては、例えば、空走距離(前方車両Wfの空走距離)等とすることができる。明らかなように、第2の目標車間距離Lt(ii)に比べて、B項が削除され、代わりに、D・vというD項が追加されている。ここで、D項の値は、B項の値よりも大きくされている。すなわち、第3目標車間距離Lt(iii)は、(D項の値−B項の値)の分だけ、第2目標車間距離Lt(ii)よりもさらに延長されている[請求項4に対応]。ここで、Dは、比例定数である。
【0044】
【数7】
【0045】
また、その場合に、B項が削除された結果、自車両Wが前方車両Wfから離間する傾向にあるほど、第3の目標車間距離Lt(iii)が小さい値に設定され、前記車間距離偏差ΔLが見かけ上大きくされるという効果、及び、自車両Wが前方車両Wfに接近する傾向にあるほど、第3の目標車間距離Lt(iii)が大きい値に設定され、前記車間距離偏差ΔLが見かけ上小さくされるという効果、すなわち、自車両Wと前方車両Wfとの相対速度差(vf−v)に応じて目標車間距離Ltへの自車両W位置の収束が早まるという効果が無くなることとなる。換言すれば、自車両Wの車速制御感度がさらに鈍化されていることとなる[請求項7に対応]。
【0046】
また、コントロールユニット10は、異常接近時は、車速制御特性qとして、図10に示す第3車速制御特性q(iii)を用いる。この第3車速制御特性q(iii)は、第2車速制御特性q(ii)と比べると(図中点線で示す)、車間距離偏差ΔLがプラス側、つまり離間側において、不感帯アがγ3まで大きくされている[請求項8に対応]。すなわち、自車両Wの車速制御の開始がより一層遅延されて、自車両Wの車速制御感度が鈍化されている[請求項6に対応]。また、それに伴い、帰りの緩応答帯イの変化量、すなわち増分・減分がさらに小さくされている。
【0047】
次に、図11のフローチャートに従って、前記コントロールユニット10が行う追従走行制御の具体的動作の1例を説明する。まず、ステップS1で、各種信号を入力したうえで、ステップS2で、前方車両WFの有無を判定する。前方車両Wfが無いときは、ステップS3で、目標車間距離Ltの設定を行わず、ステップS4で、目標車速制御量の設定も行わないまま、リターンする。
【0048】
前方車両Wfが有るときは、ステップS5で、前々方車両Wffの有無を判定する。前々方車両Wffが無いときは、ステップS6で、目標車間距離Ltを第1目標車間距離Lt(i)に設定し、ステップS7で、車間距離偏差ΔL(i)を算出し、ステップS8で、目標車速制御量を第1車速制御特性q(i)により設定する(この詳しい動作はさらに後述する)。そして、ステップS9で、設定した目標車速制御量が得られるようにスロットルアクチュエータ17(加速時)及びブレーキアクチュエータ18(減速時)を制御する。これにより、自車両Wと前方車両Wfとの実車間距離L1が所定の目標車間距離Ltに維持されるように自車両Wを前方車両Wfに追従走行させることとなる。
【0049】
前々方車両Wffが有るときは、ステップS10で、前方車両Wfと前々方車両Wffとの第2車間距離L2が第1の所定車間距離Lmよりも短いか否かを判定する。次いで、ステップS11で、前記第2車間距離L2が第2の所定車間距離Lnよりも短いか否かを判定する。その結果、前記第2車間距離L2が第1の所定車間距離Lmよりも長い場合(図5、図6参照)は、ステップS6に進み、前記第2車間距離L2が第1の所定車間距離Lmよりも短い場合(図7、図8参照)は、ステップS12に進み、前記第2車間距離L2が第2の所定車間距離Lnよりも短い場合(図9、図10参照)は、ステップS15に進む。
【0050】
いずれの場合も、まず、目標車間距離Ltを第1、第2、第3目標車間距離Lt(i),Lt(ii),Lt(iii)に設定し(ステップS6,S12,S15)、車間距離偏差ΔL(i),ΔL(ii),ΔL(iii)を算出し(ステップS7,S13,S16)、目標車速制御量を第1、第2、第3車速制御特性q(i),q(ii),q(iii)により設定する(ステップS8,S14,S17)。そして、いずれの場合も、ステップS9で、設定した目標車速制御量が得られるようにスロットルアクチュエータ17(加速時)及びブレーキアクチュエータ18(減速時)を制御する。これにより、自車両Wと前方車両Wfとの実車間距離L1が所定の目標車間距離Ltに維持されるように自車両Wを前方車両Wfに追従走行させることとなる。
【0051】
前記ステップS8,S14,S17の目標車速制御量の設定動作は、およそ図12に示すフローチャートに従って行われる。まず、ステップS21で、γ3の設定の有無を判定する。無い場合(通常時又は接近時)は、ステップS22で、車間距離偏差ΔLがγ1より大きいか否かを判定する。大きい場合は、ステップS23で、目標車速制御量を車速制御特性qに従い決定する。一方、ステップS22で車間距離偏差ΔLがγ1より小さい場合は、ステップS24で、車間距離偏差ΔLがγ2より小さいか否かを判定する。小さい場合は、ステップS23で、目標車速制御量を車速制御特性qに従い決定する。しかし、大きい場合は、不感帯アにあるとして、ステップS25で、目標車速制御量を0と決定する。
【0052】
同様に、ステップS21でγ3の設定が有る場合(異常接近時)は、ステップS26で、車間距離偏差ΔLがγ3より大きいか否かを判定する。大きい場合は、ステップS23で、目標車速制御量を車速制御特性qに従い決定する。一方、ステップS26で車間距離偏差ΔLがγ3より小さい場合は、ステップS24で、車間距離偏差ΔLがγ2より小さいか否かを判定する。小さい場合は、ステップS23で、目標車速制御量を車速制御特性qに従い決定する。しかし、大きい場合は、不感帯アにあるとして、ステップS25で、目標車速制御量を0と決定する。
【0053】
以上のように、本実施形態においては、例えば前方車両Wfが前々方車両Wffに接近して走行し、その結果、前方車両Wfと前々方車両Wffとの車間距離L2が所定の車間距離Lmよりも短くなって(L2<Lm)、前方車両Wfがギクシャク運転をしそうな状況においては(図7の接近時)、自車両Wと前方車両Wfとの車間距離L1を目標車間距離Ltに維持しようとする自車両Wの車速制御の感度を鈍化させるようにしたから(図8の第2車速制御特性q(ii)、ひいては図10の第3車速制御特性q(iii))、たとえ前方車両Wfが急ブレーキや急加速を繰り返すギクシャク運転をしても、それに連動して自車両Wが急ブレーキや急加速を頻繁に行うことが抑制され、乗員の乗り心地や安心感の向上が図られる。
【0054】
その場合に、自車両Wの車速制御の感度を鈍化させると共に、目標車間距離Ltを所定距離(C項:C・v・(Lm−L2))だけ延長するようにしたから、自車両Wと前方車両Wfとの車間距離L1に余裕ができて、たとえ自車両Wの車速制御の感度が鈍化しても乗員の安心感が確保される。
【0055】
また、その場合に、目標車間距離Ltを一気に所定距離だけ延長するのではなく、前方車両Wfと前々方車両Wffとの車間距離L2が短くなるに従い目標車間距離Ltを徐々に延長するようにしたから(前記C項参照)、自車両Wは前方車両Wfから徐々に離間していくこととなり、円滑な追従走行制御が実現して、この点からも乗員の乗り心地の向上が図られる。
【0056】
さらに、前方車両Wfと前々方車両Wffとの車間距離L2が前記所定の車間距離Lmよりも短い第2の所定の車間距離Lnよりも短くなって(L2<Ln)、前方車両Wfがギクシャク運転をより一層しそうな状況、あるいは前方車両Wfと前々方車両Wffとの接触が起こりそうな状況においては(図9の異常接近時)、目標車間距離Ltを第2の所定距離(D項の値−B項の値)だけさらに延長するようにしたから、自車両Wと前方車両Wfとの車間距離L1にさらに余裕ができて、たとえ自車両Wの車速制御の感度が鈍化しても乗員の安心感が確保されると共に、たとえ前方車両Wfが前々方車両Wffに接触した場合でも自車両Wが前方車両Wfに接触する可能性が低減できて安全性が担保される。
【0057】
一方、前記自車両Wの車速制御感度を鈍化させる具体的態様の1つとして、自車両Wと前方車両Wfとの車間距離L1と、自車両Wと前方車両Wfとの目標車間距離Ltとの偏差ΔLに対する自車両Wの車速制御量を低減するようにしたから(図8及び図10における緩応答帯イ及び急応答帯ウの変化量の減少)、前記自車両Wの車速制御感度を確実に鈍化させることができる。
【0058】
同じく、前記自車両Wの車速制御感度を鈍化させる別の具体的態様の1つとして、自車両Wと前方車両Wfとの車間距離L1と、自車両Wと前方車両Wfとの目標車間距離Ltとの偏差ΔLに対する自車両Wの車速制御の開始を遅延するようにしたから(図10における不感帯アの拡大)、やはりこの場合も前記自車両Wの車速制御感度を確実に鈍化させることができる。
【0059】
同じく、前記自車両Wの車速制御感度を鈍化させるさらに別の具体的態様の1つとして、自車両Wと前方車両Wfとの車間距離L1と、自車両Wと前方車両Wfとの目標車間距離Ltとの偏差ΔLを小さくする(絶対値で小さくする)ようにしたから(図7における比例定数Bの値の減少、図9におけるB項の削除)、やはりこの場合も前記自車両Wの車速制御感度を確実に鈍化させることができる。
【0060】
そして、前記自車両Wの車速制御感度の鈍化を、自車両Wと前方車両Wfとの車間距離L1が自車両Wと前方車両Wfとの目標車間距離Ltよりも大きい場合、つまり自車両Wが前方車両Wfから目標以上に離間している場合(車間距離偏差ΔLがプラスの場合)にのみ行うようにしたから、逆にいえば、自車両Wと前方車両Wfとの車間距離L1が自車両Wと前方車両Wfとの目標車間距離Ltよりも小さい場合、つまり自車両Wが前方車両Wfに目標以上に接近している場合(車間距離偏差ΔLがマイナスの場合)には、自車両Wの車速制御感度の鈍化を行わないようにしたから、たとえ自車両Wが前方車両Wfに目標以上に接近している場合に前方車両Wfが急ブレーキや急停止することがあっても、これに遅れなく対応でき、自車両Wが前方車両Wfに接触する可能性が低減できて安全性が担保される。
【0061】
次に、本発明の第2の実施形態を特徴部分のみ取り出して説明する。図13(図8に対応)、図14(図10に対応)に例示したように、コントロールユニット10は、接近時及び異常接近時は、車速制御特性qとして、車間距離偏差ΔLがマイナス側、つまり接近側においても、自車両Wの車速制御量が低減されて、自車両Wの車速制御感度が鈍化されている第2の車速制御特性q(ii)、及び自車両Wの車速制御の開始がより一層遅延されて(γ4)、自車両Wの車速制御感度が鈍化されている第3の車速制御特性q(iii)を用いてもよい。
【0062】
その場合にコントロールユニット10が行う追従走行制御は、前記図11に示した第1実施形態と同様であるが、目標車速制御量の設定動作は、およそ図15に示すフローチャートに従って行われる。
【0063】
まず、ステップS31で、γ3の設定の有無を判定する。無い場合(通常時又は接近時)は、ステップS32で、車間距離偏差ΔLがγ1より大きいか否かを判定する。大きい場合は、ステップS33で、目標車速制御量を車速制御特性qに従い決定する。一方、ステップS32で車間距離偏差ΔLがγ1より小さい場合は、ステップS34で、γ4の設定の有無を判定する。無い場合(通常時又は接近時)は、ステップS35で、車間距離偏差ΔLがγ2より小さいか否かを判定する。小さい場合は、ステップS33で、目標車速制御量を車速制御特性qに従い決定する。しかし、大きい場合は、不感帯アにあるとして、ステップS36で、目標車速制御量を0と決定する。また、ステップS34でγ4の設定が有る場合(異常接近時)は、ステップS38で、車間距離偏差ΔLがγ4より小さいか否かを判定する。小さい場合は、ステップS33で、目標車速制御量を車速制御特性qに従い決定する。しかし、大きい場合は、不感帯アにあるとして、ステップS36で、目標車速制御量を0と決定する。
【0064】
同様に、ステップS31でγ3の設定が有る場合(異常接近時)は、ステップS37で、車間距離偏差ΔLがγ3より大きいか否かを判定する。大きい場合は、ステップS33で、目標車速制御量を車速制御特性qに従い決定する。一方、ステップS37で車間距離偏差ΔLがγ3より小さい場合は、ステップS34で、γ4の設定の有無を判定する。無い場合(通常時又は接近時)は、ステップS35で、車間距離偏差ΔLがγ2より小さいか否かを判定する。小さい場合は、ステップS33で、目標車速制御量を車速制御特性qに従い決定する。しかし、大きい場合は、不感帯アにあるとして、ステップS36で、目標車速制御量を0と決定する。また、ステップS34でγ4の設定が有る場合(異常接近時)は、ステップS38で、車間距離偏差ΔLがγ4より小さいか否かを判定する。小さい場合は、ステップS33で、目標車速制御量を車速制御特性qに従い決定する。しかし、大きい場合は、不感帯アにあるとして、ステップS36で、目標車速制御量を0と決定する。
【0065】
次に、本発明の第3の実施形態を特徴部分のみ取り出して説明する。図16(図7、図9に対応)に例示したように、この第3実施形態では、第3目標車間距離Lt(iii)は設定されず、前方車両Wfと前々方車両Wffとの第2車間距離L2が第1の所定車間距離Lmよりも短くなった後は、連続して第2目標車間距離Lt(ii)のみ用いられる。
【0066】
また、図17(図8、図10に対応)に例示したように、この第3実施形態では、第3車速制御特性q(iii)は用いられず、前方車両Wfと前々方車両Wffとの第2車間距離L2が第1の所定車間距離Lmよりも短くなった後は、連続して第2車速制御特性q(ii)のみ用いられる。その場合に、この第2車速制御特性q(ii)では、図8に示した第2車速制御特性q(ii)と比較して、不感帯アがγ3まで大きくされている。
【0067】
この第3実施形態では、コントロールユニット10が行う目標車速制御量の設定動作は、前記図12に示した第1実施形態と同様であるが、追従走行制御は、およそ図18に示すフローチャートに従って行われる。
【0068】
まず、ステップS41で、各種信号を入力したうえで、ステップS42で、前方車両WFの有無を判定する。前方車両Wfが無いときは、ステップS43で、目標車間距離Ltの設定を行わず、ステップS44で、目標車速制御量の設定も行わないまま、リターンする。
【0069】
前方車両Wfが有るときは、ステップS45で、前々方車両Wffの有無を判定する。前々方車両Wffが無いときは、ステップS46で、目標車間距離Ltを第1目標車間距離Lt(i)に設定し、ステップS47で、車間距離偏差ΔL(i)を算出し、ステップS48で、目標車速制御量を第1車速制御特性q(i)により設定する。そして、ステップS49で、設定した目標車速制御量が得られるようにスロットルアクチュエータ17(加速時)及びブレーキアクチュエータ18(減速時)を制御する。これにより、自車両Wと前方車両Wfとの実車間距離L1が所定の目標車間距離Ltに維持されるように自車両Wを前方車両Wfに追従走行させることとなる。
【0070】
前々方車両Wffが有るときは、ステップS50で、前方車両Wfと前々方車両Wffとの第2車間距離L2が第1の所定車間距離Lmよりも短いか否かを判定する。その結果、前記第2車間距離L2が第1の所定車間距離Lmよりも長い場合(図5、図6参照)は、ステップS46に進み、前記第2車間距離L2が第1の所定車間距離Lmよりも短い場合(図16、図17参照)は、ステップS51に進む。
【0071】
いずれの場合も、まず、目標車間距離Ltを第1、第2目標車間距離Lt(i),Lt(ii)に設定し(ステップS46,S51)、車間距離偏差ΔL(i),ΔL(ii)を算出し(ステップS47,S52)、目標車速制御量を第1、第2車速制御特性q(i),q(ii)により設定する(ステップS48,S53)。そして、いずれの場合も、ステップS49で、設定した目標車速制御量が得られるようにスロットルアクチュエータ17(加速時)及びブレーキアクチュエータ18(減速時)を制御する。これにより、自車両Wと前方車両Wfとの実車間距離L1が所定の目標車間距離Ltに維持されるように自車両Wを前方車両Wfに追従走行させることとなる。
【0072】
なお、前記各実施形態は、本発明の最良の実施形態ではあるが、特許請求の範囲を逸脱しない限り、なお種々の修正、変更が可能なことはいうまでもない。例えば、前記実施形態では、前方車両Wfと前々方車両Wffとの第3車間距離L3が第1の所定車間距離Lmよりも長い通常時に用いる第1車速制御特性q(i)と、前記第3車間距離L3が第1の所定車間距離Lmよりも短い接近時に用いる第2車速制御特性q(ii)と、前記第3車間距離L3が第2の所定車間距離Lnよりも短い異常接近時に用いる第3車速制御特性q(iii)とを、予め、例えばコントロールユニット10の記録装置等に登録・格納しておく場合で説明したが、これに代えて、例えば、標準形である前記第1車速制御特性q(i)だけを記録装置等に登録・格納しておき、接近時又は異常接近時になれば、該第1車速制御特性q(i)をその都度第2車速制御特性q(ii)又は第3車速制御特性q(iii)に変形・修正して用いるようにすることもできる。また、自車両Wの車速制御感度を鈍化させる手段として、比例定数Bの値の減少、不感帯アの拡大、緩応答帯イ及び急応答帯ウの変化量の減少の3つを挙げたが、これらを様々に組み合わせて適用することができる。また、第3実施形態において、第2実施形態のように、車間距離偏差ΔLがマイナス側、つまり接近側においても、自車両Wの車速制御感度を鈍化させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0073】
以上、具体例を挙げて詳しく説明したように、本発明は、たとえ前方車両が急ブレーキや急加速を繰り返すギクシャク運転をしても、それに連動して自車両が急ブレーキや急加速を頻繁に行うことが抑制され、乗員の乗り心地や安心感の向上が図られるもので、自動車の追従走行装置の技術分野において幅広い産業上の利用可能性が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の最良の実施形態に係る自動車の追従走行装置の各構成要素のレイアウト図である。
【図2】前記追従走行装置のコントロールユニットを中心とした制御システム図である。
【図3】自車両と前々方車両との車間距離を検出する具体的一態様の説明図である。
【図4】前方車両の全長を検出する具体的一態様の説明図である。
【図5】前々方車両と前方車両との車間距離が第1所定車間距離よりも長い場合における自車両と前方車両との目標車間距離の説明図である。
【図6】前記場合における車間距離偏差に対する車速制御量の特性(第1特性)を示す説明図である。
【図7】前々方車両と前方車両との車間距離が第1所定車間距離よりも短い場合における自車両と前方車両との目標車間距離の説明図である。
【図8】前記場合における車間距離偏差に対する車速制御量の特性(第2特性)を示す説明図である。
【図9】前々方車両と前方車両との車間距離が第2所定車間距離よりも短い場合における自車両と前方車両との目標車間距離の説明図である。
【図10】前記場合における車間距離偏差に対する車速制御量の特性(第3特性)を示す説明図である。
【図11】前記コントロールユニットが行う追従走行制御の具体的動作の1例を示すフローチャートである。
【図12】前記コントロールユニットが行う目標車速制御量設定動作の1例を示すフローチャートである。
【図13】本発明の第2の実施形態における第2特性の説明図である。
【図14】本発明の第2の実施形態における第3特性の説明図である。
【図15】本発明の第2の実施形態における目標車速制御量設定動作の1例を示すフローチャートである。
【図16】本発明の第3の実施形態における自車両と前方車両との目標車間距離の説明図である。
【図17】本発明の第3の実施形態における第2特性の説明図である。
【図18】本発明の第3の実施形態における追従走行制御の具体的動作の1例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0075】
1 追従走行装置
10 コントロールユニット(目標車間距離設定手段、第2の車間距離検出手段、制御感度鈍化手段)
11 レーダ(車間距離検出手段)
12 カメラ(前方車両認識手段、前々方車両認識手段)
13 車車間通信用アンテナ
14 路車間通信用アンテナ
15 スマートプレート信号受信用アンテナ
16 舵角センサ
17 スロットルアクチュエータ(車速制御手段)
18 ブレーキアクチュエータ(車速制御手段)
19 ステアリングアクチュエータ
20 前輪
L1 第1車間距離
L2 第2車間距離
Lt 目標車間距離
W 自車両
Wf 前方車両
Wff 前々方車両
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両と前方車両との目標車間距離を維持しながら自車両を前方車両に追従走行させる自動車の追従走行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車載カメラで自車両の前方車両を認識し、レーダで自車両と前方車両との車間距離を検出して、自車両と前方車両との実車間距離が所定の目標車間距離に維持されるように自車両を前方車両に追従走行させる自動車の追従走行装置が知られている。そして、近年、そのような追従走行装置において、乗員の乗り心地や安心感を改善・改良する様々な技術が提案されている。例えば、特許文献1には、自車両の前方車両に加えて自車両の前々方車両も認識し、追従走行時に検出される前々方車両の減速度や前方車両と前々方車両との車間時間等から前方車両と前々方車両との衝突可能性が大きくなったと判断したときは、自車両と前方車両との衝突可能性も大きくなったと判断して、自車両における衝突対応装置、例えばシートベルト装置やブレーキ装置等の作動タイミングを早めたり作動量を大きくする技術が開示されている。
【特許文献1】特開2005−31967号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、一般に、前述したように、追従走行時は自車両と前方車両との車間距離を目標車間距離に維持しようとする制御が働くので、例えば前方車両が前々方車両に接近して走行し、前方車両が急ブレーキや急加速を繰り返すギクシャク運転をすると、それに連動して自車両も急ブレーキや急加速を頻繁に行うこととなり、乗員の乗り心地や安心感が損なわれるという不具合がある。しかしながら、この不具合に対処する技術の提案は現在のところ見当たらない。
【0004】
そこで、本発明は、自動車の追従走行装置において、前方車両を目標車両として車間距離を維持しようとする結果、前方車両のギクシャク運転に連動して自車両もギクシャク運転をしてしまうという前記不具合に対処し、乗員の乗り心地や安心感の向上を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、前記課題を解決するため、本願の請求項1に記載の発明は、自車両の前方車両を認識する前方車両認識手段と、自車両と前方車両との目標車間距離を設定する目標車間距離設定手段と、前記前方車両認識手段で認識された前方車両と自車両との車間距離を検出する車間距離検出手段と、該車間距離検出手段で検出された車間距離が前記目標車間距離設定手段で設定された目標車間距離に維持されるように自車両の車速を制御する車速制御手段とを備える自動車の追従走行装置であって、自車両の前々方車両を認識する前々方車両認識手段と、該前々方車両認識手段で認識された前々方車両と前記前方車両認識手段で認識された前方車両との車間距離を検出する第2の車間距離検出手段と、該第2の車間距離検出手段で検出された車間距離が所定の車間距離よりも短くなったときは短くなっていないときよりも前記車速制御手段の制御感度を鈍化させる制御感度鈍化手段とが設けられていることを特徴とする。
【0006】
次に、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の自動車の追従走行装置において、前記目標車間距離設定手段は、前記第2の車間距離検出手段で検出された車間距離が所定の車間距離よりも短くなったときは短くなっていないときよりも目標車間距離を所定距離だけ延長することを特徴とする。
【0007】
次に、請求項3に記載の発明は、前記請求項2に記載の自動車の追従走行装置において、前記目標車間距離設定手段は、前記第2の車間距離検出手段で検出された車間距離が所定の車間距離よりも短くなった後は、該車間距離が短くなるに従い目標車間距離を徐々に延長することを特徴とする。
【0008】
次に、請求項4に記載の発明は、前記請求項2又は3に記載の自動車の追従走行装置において、前記目標車間距離設定手段は、前記第2の車間距離検出手段で検出された車間距離が前記所定の車間距離よりも短い第2の所定の車間距離よりも短くなったときは目標車間距離を第2の所定距離だけさらに延長することを特徴とする。
【0009】
次に、請求項5に記載の発明は、前記請求項1から4のいずれかに記載の自動車の追従走行装置において、前記制御感度鈍化手段は、前記車間距離検出手段で検出された車間距離と前記目標車間距離設定手段で設定された目標車間距離との偏差に対する自車両の車速制御量を低減することにより前記車速制御手段の制御感度を鈍化させることを特徴とする。
【0010】
次に、請求項6に記載の発明は、前記請求項1から5のいずれかに記載の自動車の追従走行装置において、前記制御感度鈍化手段は、前記車間距離検出手段で検出された車間距離と前記目標車間距離設定手段で設定された目標車間距離との偏差に対する自車両の車速制御の開始を遅延することにより前記車速制御手段の制御感度を鈍化させることを特徴とする。
【0011】
次に、請求項7に記載の発明は、前記請求項1から6のいずれかに記載の自動車の追従走行装置において、前記制御感度鈍化手段は、前記車間距離検出手段で検出された車間距離と前記目標車間距離設定手段で設定された目標車間距離との偏差を小さくすることにより前記車速制御手段の制御感度を鈍化させることを特徴とする。
【0012】
そして、請求項8に記載の発明は、前記請求項1から7のいずれかに記載の自動車の追従走行装置において、前記制御感度鈍化手段は、前記車間距離検出手段で検出された車間距離が前記目標車間距離設定手段で設定された目標車間距離よりも大きい場合にのみ前記車速制御手段の制御感度を鈍化させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
まず、請求項1に記載の発明によれば、例えば前方車両が前々方車両に接近して走行し、その結果、前方車両と前々方車両との車間距離が所定の車間距離よりも短くなって、前方車両がギクシャク運転をしそうな状況においては、自車両と前方車両との車間距離を目標車間距離に維持しようとする自車両の車速制御の感度を鈍化させるようにしたから、たとえ前方車両が急ブレーキや急加速を繰り返すギクシャク運転をしても、それに連動して自車両が急ブレーキや急加速を頻繁に行うことが抑制され、乗員の乗り心地や安心感の向上が図られる。
【0014】
その場合に、請求項2に記載の発明によれば、自車両の車速制御の感度を鈍化させると共に、目標車間距離を所定距離だけ延長するようにしたから、自車両と前方車両との車間距離に余裕ができて、たとえ自車両の車速制御の感度が鈍化しても乗員の安心感が確保される。
【0015】
また、その場合に、請求項3に記載の発明によれば、目標車間距離を一気に所定距離だけ延長するのではなく、前方車両と前々方車両との車間距離が短くなるに従い目標車間距離を徐々に延長するようにしたから、自車両は前方車両から徐々に離間していくこととなり、円滑な追従走行制御が実現して、この点からも乗員の乗り心地の向上が図られる。
【0016】
さらに、請求項4に記載の発明によれば、前方車両と前々方車両との車間距離が前記所定の車間距離よりも短い第2の所定の車間距離よりも短くなって、前方車両がギクシャク運転をより一層しそうな状況、あるいは前方車両と前々方車両との接触が起こりそうな状況においては、目標車間距離を第2の所定距離だけさらに延長するようにしたから、自車両と前方車両との車間距離にさらに余裕ができて、たとえ自車両の車速制御の感度が鈍化しても乗員の安心感が確保されると共に、たとえ前方車両が前々方車両に接触した場合でも自車両が前方車両に接触する可能性が低減できて安全性が担保される。
【0017】
次に、請求項5に記載の発明によれば、前記自車両の車速制御感度を鈍化させる具体的態様が示され、それによれば、自車両と前方車両との車間距離と、自車両と前方車両との目標車間距離との偏差に対する自車両の車速制御量を低減することにより、前記自車両の車速制御感度を確実に鈍化させることができる。
【0018】
同じく、請求項6に記載の発明によれば、前記自車両の車速制御感度を鈍化させる別の具体的態様が示され、それによれば、自車両と前方車両との車間距離と、自車両と前方車両との目標車間距離との偏差に対する自車両の車速制御の開始を遅延することにより、前記自車両の車速制御感度を確実に鈍化させることができる。
【0019】
同じく、請求項7に記載の発明によれば、前記自車両の車速制御感度を鈍化させるさらに別の具体的態様が示され、それによれば、自車両と前方車両との車間距離と、自車両と前方車両との目標車間距離との偏差を小さくすることにより、前記自車両の車速制御感度を確実に鈍化させることができる。
【0020】
そして、請求項8に記載の発明によれば、前記自車両の車速制御感度の鈍化は、自車両と前方車両との車間距離が自車両と前方車両との目標車間距離よりも大きい場合、つまり自車両が前方車両から目標以上に離間している場合にのみ行われるので、逆にいえば、自車両と前方車両との車間距離が自車両と前方車両との目標車間距離よりも小さい場合、つまり自車両が前方車両に目標以上に接近している場合には自車両の車速制御感度は鈍化されないので、たとえ自車両が前方車両に目標以上に接近している場合に前方車両が急ブレーキや急停止することがあっても、これに遅れなく対応でき、自車両が前方車両に接触する可能性が低減できて安全性が担保される。以下、発明の実施形態を通して本発明をさらに詳しく説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、本実施形態に係る自動車の追従走行装置1の各構成要素のレイアウト図である。この追従走行装置1は、自車両Wと前方車両Wfとの車間距離及び自車両Wと前々方車両Wffとの車間距離を検出するためのレーダ11と、自車両Wの前方空間を撮像して前方車両Wf及び前々方車両Wffを認識するためのカメラ12とを含んでいる。
【0022】
また、この追従走行装置1は、車車間通信により、自車両Wの周囲に存在する他の車両から送信されてくる信号を受信したり、逆に、自車両Wの周囲に存在する他の車両へ信号を発信するための車車間通信用アンテナ13と、路車間通信により、道路側方に設けられたアンテナ(図示せず)と信号の遣り取りを行うための路車間通信用アンテナ14と、自車両Wの前方に存在する前方車両Wfのナンバープレートに内蔵されたIDタグ(このようなナンバープレートをスマートプレートという)から送信されてくる信号を受信するためのスマートプレート信号受信用アンテナ15とを含んでいる。
【0023】
また、この追従走行装置1は、操舵角を検出するための舵角センサ16の他、スロットルアクチュエータ17、ブレーキアクチュエータ18及びステアリングアクチュエータ19を含んでいる。
【0024】
図2は、この追従走行装置1のコントロールユニット10を中心とした制御システム図である。コントロールユニット10は、レーダ11からの信号と、カメラ12からの信号と、車車間通信用アンテナ13からの信号と、路車間通信用アンテナ14からの信号と、スマートプレート信号受信用アンテナ15からの信号と、舵角センサ16からの信号とを入力し、これらの信号に基いて、スロットルアクチュエータ17、ブレーキアクチュエータ18及びステアリングアクチュエータ19に制御信号を出力する。また、コントロールユニット10は、車車間通信用アンテナ13及び路車間通信用アンテナ14を介して自車両に関する情報を周囲に送信する。
【0025】
本実施形態では、図3に示すように、自車両Wと前方車両Wfとの車間距離(第1車間距離)L1、及び前方車両Wfと前々方車両Wffとの車間距離(第2車間距離)L2が重要である。第1車間距離L1は、前述したように、レーダ11で検出できる。第2車間距離L2は、自車両Wと前々方車両Wffとの車間距離から、第1車間距離L1と前方車両Wfの全長Lfとを減算することにより、検出できる(コントロールユニット10の動作)。ここで、自車両Wと前々方車両Wffとの車間距離は、レーダ11としてミリ波レーダを用いると、前述したように、該レーダ11で検出できる。というのは、図示したように、ミリ波は、前方車両Wfのフロアの下の路面で反射して前々方車両Wffに到達し、跳ね返ってくるからである。
【0026】
ここで、前方車両Wfが大型車の場合は、ギクシャクした挙動を起こし難いから、前方車両Wfの全長Lfを一律5m等として計算してもよいが、車車間通信により、前方車両Wfから直接前方車両Wfの全長Lfに関する情報を取得してもよい。あるいは、車車間通信により、前方車両Wfから直接第2車間距離L2に関する情報を取得することもできる。その場合は、レーダ11としてミリ波レーダ以外のレーダ、例えば、光、電波、超音波等を利用した各種レーダも用いることができる。
【0027】
また、図4に示すように、カーブを走行中に前方車両Wfの全長Lfを検出することも可能である。すなわち、舵角センサ16により自車両Wがカーブを走行していることが検出されているときに(図例は、前輪20、20の向きから、左カーブの走行中を示す)、レーダ11を用いて、前方車両Wfの内輪側の前端Fと自車両Wとの距離D2、前方車両Wfの内輪側の後端Rと自車両Wとの距離D1、及び、前方車両Wfの内輪側の前端Fと自車両Wとを結ぶ直線と、前方車両Wfの内輪側の後端Rと自車両Wとを結ぶ直線とで挟まれた角度Θを検出する。点Rから線D2に垂線を下ろし、交点をPとする。すると、前方車両Wfの全長Lfは、数1で表され、ここでFP,PRは、数2、数3で表されるから、結局、前方車両Wfの全長Lfは、数4で表されることとなり、前記距離D1,D2及び前記角度Θに基いて前方車両Wfの全長Lfを検出することが可能となる(コントロールユニット10の動作)。また、これに準じて、前方車両Wfと前々方車両Wffとの第2車間距離L2をカーブを走行中に検出することも可能である。
【0028】
【数1】
【0029】
【数2】
【0030】
【数3】
【0031】
【数4】
【0032】
また、前方車両Wfのナンバープレートに表示されている内容から前方車両Wfの全長Lfを検出することも可能である。すなわち、カメラ12を用いて、前方車両Wfのナンバープレート(図示せず)を撮像し、例えば、ナンバーが「1x」であれば、大型車(大型貨物、トラック)であると判断できるので、前方車両Wfの全長Lfを例えば12m等に設定し、ナンバーが「3x」であれば、普通車であると判断できるので、前方車両Wfの全長Lfを例えば5m等に設定し、ナンバーが「5x」であれば、小型車であると判断できるので、前方車両Wfの全長Lfを例えば4.5m等に設定する。これに準じて、ナンバーが「2x」(大型バス)、「4x」(小型貨物)、「6x」(小型貨物)、「7x」(小型普通車、バス)、「8x」(キャンピングカー等の特殊用途車)、「9x」(大型特殊)、「0x」(大型特殊)のときも、同様に、前方車両Wfの全長Lfを設定することが可能である。また、ナンバーが黄色又は黒色であれば、軽自動車であると判断できるので、前方車両Wfの全長Lfを例えば3.4m等に設定する。
【0033】
さらには、前方車両Wfのナンバープレートに内蔵されたIDタグから送信されてくる信号(スマートプレート信号)に基いて前方車両Wfの全長Lfを検出することも可能である。すなわち、スマートプレート信号受信用アンテナ15を用いて、前記スマートプレート信号を受信し、該信号に含まれるナンバー、全長、全幅、全高等の車両緒元情報から前方車両Wfの全長Lfを取得することができる。
【0034】
コントロールユニット10は、図5に示すように、前方車両Wfと前々方車両Wffとの第2車間距離L2が第1の所定車間距離Lmよりも長いとき、すなわち前方車両Wfがギクシャク運転をしそうな状況にないとき(通常時)は、自車両Wと前方車両Wfとの目標車間距離Ltとして、数5に従い、第1の目標車間距離Lt(i)を設定する。ここで、A,Bは、比例定数であり、停止車間距離Lxとは、自車両W及び前方車両Wfの停止時にとるべき車間距離のことである。
【0035】
【数5】
【0036】
ここで、A項の関数f(v)は、例えば、k・v2とすることができる。その場合に、kは、車両重量に比例する比例定数であり、乗員数や積載量に応じて補正される(より詳しくは、乗員数や積載量が多いほど大きな値に補正される)。また、B項の関数g(vf−v)は、例えば、h・(vf−v)とすることができる。その場合に、hは、0(零)未満の負の値の比例定数である。したがって、前方車両速度vfが自車両速度vよりも大きくなるほど(自車両Wが前方車両Wfから離間する傾向にあるほど)、B項の値がマイナス側に大きくなり、第1の目標車間距離Lt(i)は小さい値に設定される。その結果、車間距離偏差ΔL(次に説明するように、実車間距離L1と目標車間距離Ltとの偏差ΔL(=L1−Lt)をいう)が見かけ上大きくされることとなる。逆に、自車両速度vが前方車両速度vfよりも大きくなるほど(自車両Wが前方車両Wfに接近する傾向にあるほど)、B項の値がプラス側に大きくなり、第1の目標車間距離Lt(i)は大きな値に設定される。その結果、車間距離偏差ΔL(=L1−Lt)が見かけ上小さくされることとなる。このことは、いずれにおいても、車間距離偏差ΔLが見かけ上絶対値で大きくされることとなり、自車両Wと前方車両Wfとの相対速度差(vf−v)に応じて目標車間距離Ltへの自車両W位置の収束を早めるように働く。
【0037】
また、コントロールユニット10は、通常時は、車速制御特性qとして、図6に示す第1車速制御特性q(i)を用いる。この車速制御特性qは、一般に、実車間距離L1と目標車間距離Ltとの偏差ΔL(=L1−Lt)に対する自車両Wの車速制御量の値を示すもので、原点、すなわち前記車間距離偏差ΔLが0のときは車速制御量は0となる。そして、前記車間距離偏差ΔLがプラス側に大きくなるに従い、つまり自車両Wが前方車両Wfから離間していくに従い、車速制御量はプラス側、つまり加速側に大きくなる。逆に、前記車間距離偏差ΔLがマイナス側に大きくなるに従い、つまり自車両Wが前方車両Wfに接近していくに従い、車速制御量はマイナス側、つまり減速側に大きくなる。なお、この第1車速制御特性q(i)は、後述する第2車速制御特性q(ii)及び第3車速制御特性q(iii)と共に、予め、例えばコントロールユニット10の記録装置(メインメモリ等)に登録・格納されている。
【0038】
その場合に、符号アで示すように、前記車間距離偏差ΔLが離間側にγ1になるまで及び接近側にγ2になるまで車速制御量が0とされる不感帯が設けられている。また、符号イで示すように、前記車間距離偏差ΔLが前記不感帯アを超えて比較的小さい間は車速制御量の増分・減分が比較的小さい緩応答帯が設けられている。そして、符号ウで示すように、前記車間距離偏差ΔLが前記緩応答帯イを超えて比較的大きくなると車速制御量の増分・減分が比較的大きい急応答帯が設けられている。
【0039】
次に、コントロールユニット10は、図7に示すように、前方車両Wfと前々方車両Wffとの第2車間距離L2が第1の所定車間距離Lmよりも短いとき、すなわち前方車両Wfがギクシャク運転をしそうな状況にあるとき(接近時)は、自車両Wと前方車両Wfとの目標車間距離Ltとして、数6に従い、第2の目標車間距離Lt(ii)を設定する。ここで、第1の所定車間距離Lmとしては、例えば、(A・f(v)+Lx)等とすることができる。明らかなように、第1の目標車間距離Lt(i)に比べて、C・v・(Lm−L2)というC項が追加されている。つまり、第2目標車間距離Lt(ii)はC項の分だけ延長されている[請求項2に対応]。ここで、Cは、比例定数である。そして、このC項の値C・v・(Lm−L2)は、第2車間距離L2が第1の所定車間距離Lmよりも短くなった後、第2車間距離L2が短くなるに従い、徐々に大きくなっていく。換言すれば、第2目標車間距離Lt(ii)が徐々に延長されることとなる[請求項3に対応]。
【0040】
【数6】
【0041】
また、その場合に、第2目標車間距離Lt(ii)における比例定数Bの値は、第1目標車間距離Lt(i)における比例定数Bの値に比べて小さくされている。それゆえ、自車両Wが前方車両Wfから離間する傾向にあるほど、第2の目標車間距離Lt(ii)が小さい値に設定され、前記車間距離偏差ΔLが見かけ上大きくされるという効果、及び、自車両Wが前方車両Wfに接近する傾向にあるほど、第2の目標車間距離Lt(ii)が大きい値に設定され、前記車間距離偏差ΔLが見かけ上小さくされるという効果、すなわち、自車両Wと前方車両Wfとの相対速度差(vf−v)に応じて目標車間距離Ltへの自車両W位置の収束が早まるという効果が低減されることとなる。換言すれば、自車両Wの車速制御感度が鈍化されていることとなる[請求項7に対応]。
【0042】
また、コントロールユニット10は、接近時は、車速制御特性qとして、図8に示す第2車速制御特性q(ii)を用いる。この第2車速制御特性q(ii)は、第1車速制御特性q(i)と比べると(図中点線で示す)、車間距離偏差ΔLがプラス側、つまり離間側において、緩応答帯イ及び急応答帯ウのいずれも、車速制御量の増分・減分が小さくされている[請求項8に対応]。すなわち、自車両Wの車速制御量が低減されて、自車両Wの車速制御感度が鈍化されている[請求項5に対応]。
【0043】
次に、コントロールユニット10は、図9に示すように、前方車両Wfと前々方車両Wffとの第2車間距離L2が第1の所定車間距離Lmよりも短い第2の所定車間距離Lnよりも短いとき、すなわち前方車両Wfがより一層ギクシャク運転をしそうな状況にあるとき(異常接近時)は、自車両Wと前方車両Wfとの目標車間距離Ltとして、数7に従い、第3の目標車間距離Lt(iii)を設定する。ここで、第2の所定車間距離Lnとしては、例えば、空走距離(前方車両Wfの空走距離)等とすることができる。明らかなように、第2の目標車間距離Lt(ii)に比べて、B項が削除され、代わりに、D・vというD項が追加されている。ここで、D項の値は、B項の値よりも大きくされている。すなわち、第3目標車間距離Lt(iii)は、(D項の値−B項の値)の分だけ、第2目標車間距離Lt(ii)よりもさらに延長されている[請求項4に対応]。ここで、Dは、比例定数である。
【0044】
【数7】
【0045】
また、その場合に、B項が削除された結果、自車両Wが前方車両Wfから離間する傾向にあるほど、第3の目標車間距離Lt(iii)が小さい値に設定され、前記車間距離偏差ΔLが見かけ上大きくされるという効果、及び、自車両Wが前方車両Wfに接近する傾向にあるほど、第3の目標車間距離Lt(iii)が大きい値に設定され、前記車間距離偏差ΔLが見かけ上小さくされるという効果、すなわち、自車両Wと前方車両Wfとの相対速度差(vf−v)に応じて目標車間距離Ltへの自車両W位置の収束が早まるという効果が無くなることとなる。換言すれば、自車両Wの車速制御感度がさらに鈍化されていることとなる[請求項7に対応]。
【0046】
また、コントロールユニット10は、異常接近時は、車速制御特性qとして、図10に示す第3車速制御特性q(iii)を用いる。この第3車速制御特性q(iii)は、第2車速制御特性q(ii)と比べると(図中点線で示す)、車間距離偏差ΔLがプラス側、つまり離間側において、不感帯アがγ3まで大きくされている[請求項8に対応]。すなわち、自車両Wの車速制御の開始がより一層遅延されて、自車両Wの車速制御感度が鈍化されている[請求項6に対応]。また、それに伴い、帰りの緩応答帯イの変化量、すなわち増分・減分がさらに小さくされている。
【0047】
次に、図11のフローチャートに従って、前記コントロールユニット10が行う追従走行制御の具体的動作の1例を説明する。まず、ステップS1で、各種信号を入力したうえで、ステップS2で、前方車両WFの有無を判定する。前方車両Wfが無いときは、ステップS3で、目標車間距離Ltの設定を行わず、ステップS4で、目標車速制御量の設定も行わないまま、リターンする。
【0048】
前方車両Wfが有るときは、ステップS5で、前々方車両Wffの有無を判定する。前々方車両Wffが無いときは、ステップS6で、目標車間距離Ltを第1目標車間距離Lt(i)に設定し、ステップS7で、車間距離偏差ΔL(i)を算出し、ステップS8で、目標車速制御量を第1車速制御特性q(i)により設定する(この詳しい動作はさらに後述する)。そして、ステップS9で、設定した目標車速制御量が得られるようにスロットルアクチュエータ17(加速時)及びブレーキアクチュエータ18(減速時)を制御する。これにより、自車両Wと前方車両Wfとの実車間距離L1が所定の目標車間距離Ltに維持されるように自車両Wを前方車両Wfに追従走行させることとなる。
【0049】
前々方車両Wffが有るときは、ステップS10で、前方車両Wfと前々方車両Wffとの第2車間距離L2が第1の所定車間距離Lmよりも短いか否かを判定する。次いで、ステップS11で、前記第2車間距離L2が第2の所定車間距離Lnよりも短いか否かを判定する。その結果、前記第2車間距離L2が第1の所定車間距離Lmよりも長い場合(図5、図6参照)は、ステップS6に進み、前記第2車間距離L2が第1の所定車間距離Lmよりも短い場合(図7、図8参照)は、ステップS12に進み、前記第2車間距離L2が第2の所定車間距離Lnよりも短い場合(図9、図10参照)は、ステップS15に進む。
【0050】
いずれの場合も、まず、目標車間距離Ltを第1、第2、第3目標車間距離Lt(i),Lt(ii),Lt(iii)に設定し(ステップS6,S12,S15)、車間距離偏差ΔL(i),ΔL(ii),ΔL(iii)を算出し(ステップS7,S13,S16)、目標車速制御量を第1、第2、第3車速制御特性q(i),q(ii),q(iii)により設定する(ステップS8,S14,S17)。そして、いずれの場合も、ステップS9で、設定した目標車速制御量が得られるようにスロットルアクチュエータ17(加速時)及びブレーキアクチュエータ18(減速時)を制御する。これにより、自車両Wと前方車両Wfとの実車間距離L1が所定の目標車間距離Ltに維持されるように自車両Wを前方車両Wfに追従走行させることとなる。
【0051】
前記ステップS8,S14,S17の目標車速制御量の設定動作は、およそ図12に示すフローチャートに従って行われる。まず、ステップS21で、γ3の設定の有無を判定する。無い場合(通常時又は接近時)は、ステップS22で、車間距離偏差ΔLがγ1より大きいか否かを判定する。大きい場合は、ステップS23で、目標車速制御量を車速制御特性qに従い決定する。一方、ステップS22で車間距離偏差ΔLがγ1より小さい場合は、ステップS24で、車間距離偏差ΔLがγ2より小さいか否かを判定する。小さい場合は、ステップS23で、目標車速制御量を車速制御特性qに従い決定する。しかし、大きい場合は、不感帯アにあるとして、ステップS25で、目標車速制御量を0と決定する。
【0052】
同様に、ステップS21でγ3の設定が有る場合(異常接近時)は、ステップS26で、車間距離偏差ΔLがγ3より大きいか否かを判定する。大きい場合は、ステップS23で、目標車速制御量を車速制御特性qに従い決定する。一方、ステップS26で車間距離偏差ΔLがγ3より小さい場合は、ステップS24で、車間距離偏差ΔLがγ2より小さいか否かを判定する。小さい場合は、ステップS23で、目標車速制御量を車速制御特性qに従い決定する。しかし、大きい場合は、不感帯アにあるとして、ステップS25で、目標車速制御量を0と決定する。
【0053】
以上のように、本実施形態においては、例えば前方車両Wfが前々方車両Wffに接近して走行し、その結果、前方車両Wfと前々方車両Wffとの車間距離L2が所定の車間距離Lmよりも短くなって(L2<Lm)、前方車両Wfがギクシャク運転をしそうな状況においては(図7の接近時)、自車両Wと前方車両Wfとの車間距離L1を目標車間距離Ltに維持しようとする自車両Wの車速制御の感度を鈍化させるようにしたから(図8の第2車速制御特性q(ii)、ひいては図10の第3車速制御特性q(iii))、たとえ前方車両Wfが急ブレーキや急加速を繰り返すギクシャク運転をしても、それに連動して自車両Wが急ブレーキや急加速を頻繁に行うことが抑制され、乗員の乗り心地や安心感の向上が図られる。
【0054】
その場合に、自車両Wの車速制御の感度を鈍化させると共に、目標車間距離Ltを所定距離(C項:C・v・(Lm−L2))だけ延長するようにしたから、自車両Wと前方車両Wfとの車間距離L1に余裕ができて、たとえ自車両Wの車速制御の感度が鈍化しても乗員の安心感が確保される。
【0055】
また、その場合に、目標車間距離Ltを一気に所定距離だけ延長するのではなく、前方車両Wfと前々方車両Wffとの車間距離L2が短くなるに従い目標車間距離Ltを徐々に延長するようにしたから(前記C項参照)、自車両Wは前方車両Wfから徐々に離間していくこととなり、円滑な追従走行制御が実現して、この点からも乗員の乗り心地の向上が図られる。
【0056】
さらに、前方車両Wfと前々方車両Wffとの車間距離L2が前記所定の車間距離Lmよりも短い第2の所定の車間距離Lnよりも短くなって(L2<Ln)、前方車両Wfがギクシャク運転をより一層しそうな状況、あるいは前方車両Wfと前々方車両Wffとの接触が起こりそうな状況においては(図9の異常接近時)、目標車間距離Ltを第2の所定距離(D項の値−B項の値)だけさらに延長するようにしたから、自車両Wと前方車両Wfとの車間距離L1にさらに余裕ができて、たとえ自車両Wの車速制御の感度が鈍化しても乗員の安心感が確保されると共に、たとえ前方車両Wfが前々方車両Wffに接触した場合でも自車両Wが前方車両Wfに接触する可能性が低減できて安全性が担保される。
【0057】
一方、前記自車両Wの車速制御感度を鈍化させる具体的態様の1つとして、自車両Wと前方車両Wfとの車間距離L1と、自車両Wと前方車両Wfとの目標車間距離Ltとの偏差ΔLに対する自車両Wの車速制御量を低減するようにしたから(図8及び図10における緩応答帯イ及び急応答帯ウの変化量の減少)、前記自車両Wの車速制御感度を確実に鈍化させることができる。
【0058】
同じく、前記自車両Wの車速制御感度を鈍化させる別の具体的態様の1つとして、自車両Wと前方車両Wfとの車間距離L1と、自車両Wと前方車両Wfとの目標車間距離Ltとの偏差ΔLに対する自車両Wの車速制御の開始を遅延するようにしたから(図10における不感帯アの拡大)、やはりこの場合も前記自車両Wの車速制御感度を確実に鈍化させることができる。
【0059】
同じく、前記自車両Wの車速制御感度を鈍化させるさらに別の具体的態様の1つとして、自車両Wと前方車両Wfとの車間距離L1と、自車両Wと前方車両Wfとの目標車間距離Ltとの偏差ΔLを小さくする(絶対値で小さくする)ようにしたから(図7における比例定数Bの値の減少、図9におけるB項の削除)、やはりこの場合も前記自車両Wの車速制御感度を確実に鈍化させることができる。
【0060】
そして、前記自車両Wの車速制御感度の鈍化を、自車両Wと前方車両Wfとの車間距離L1が自車両Wと前方車両Wfとの目標車間距離Ltよりも大きい場合、つまり自車両Wが前方車両Wfから目標以上に離間している場合(車間距離偏差ΔLがプラスの場合)にのみ行うようにしたから、逆にいえば、自車両Wと前方車両Wfとの車間距離L1が自車両Wと前方車両Wfとの目標車間距離Ltよりも小さい場合、つまり自車両Wが前方車両Wfに目標以上に接近している場合(車間距離偏差ΔLがマイナスの場合)には、自車両Wの車速制御感度の鈍化を行わないようにしたから、たとえ自車両Wが前方車両Wfに目標以上に接近している場合に前方車両Wfが急ブレーキや急停止することがあっても、これに遅れなく対応でき、自車両Wが前方車両Wfに接触する可能性が低減できて安全性が担保される。
【0061】
次に、本発明の第2の実施形態を特徴部分のみ取り出して説明する。図13(図8に対応)、図14(図10に対応)に例示したように、コントロールユニット10は、接近時及び異常接近時は、車速制御特性qとして、車間距離偏差ΔLがマイナス側、つまり接近側においても、自車両Wの車速制御量が低減されて、自車両Wの車速制御感度が鈍化されている第2の車速制御特性q(ii)、及び自車両Wの車速制御の開始がより一層遅延されて(γ4)、自車両Wの車速制御感度が鈍化されている第3の車速制御特性q(iii)を用いてもよい。
【0062】
その場合にコントロールユニット10が行う追従走行制御は、前記図11に示した第1実施形態と同様であるが、目標車速制御量の設定動作は、およそ図15に示すフローチャートに従って行われる。
【0063】
まず、ステップS31で、γ3の設定の有無を判定する。無い場合(通常時又は接近時)は、ステップS32で、車間距離偏差ΔLがγ1より大きいか否かを判定する。大きい場合は、ステップS33で、目標車速制御量を車速制御特性qに従い決定する。一方、ステップS32で車間距離偏差ΔLがγ1より小さい場合は、ステップS34で、γ4の設定の有無を判定する。無い場合(通常時又は接近時)は、ステップS35で、車間距離偏差ΔLがγ2より小さいか否かを判定する。小さい場合は、ステップS33で、目標車速制御量を車速制御特性qに従い決定する。しかし、大きい場合は、不感帯アにあるとして、ステップS36で、目標車速制御量を0と決定する。また、ステップS34でγ4の設定が有る場合(異常接近時)は、ステップS38で、車間距離偏差ΔLがγ4より小さいか否かを判定する。小さい場合は、ステップS33で、目標車速制御量を車速制御特性qに従い決定する。しかし、大きい場合は、不感帯アにあるとして、ステップS36で、目標車速制御量を0と決定する。
【0064】
同様に、ステップS31でγ3の設定が有る場合(異常接近時)は、ステップS37で、車間距離偏差ΔLがγ3より大きいか否かを判定する。大きい場合は、ステップS33で、目標車速制御量を車速制御特性qに従い決定する。一方、ステップS37で車間距離偏差ΔLがγ3より小さい場合は、ステップS34で、γ4の設定の有無を判定する。無い場合(通常時又は接近時)は、ステップS35で、車間距離偏差ΔLがγ2より小さいか否かを判定する。小さい場合は、ステップS33で、目標車速制御量を車速制御特性qに従い決定する。しかし、大きい場合は、不感帯アにあるとして、ステップS36で、目標車速制御量を0と決定する。また、ステップS34でγ4の設定が有る場合(異常接近時)は、ステップS38で、車間距離偏差ΔLがγ4より小さいか否かを判定する。小さい場合は、ステップS33で、目標車速制御量を車速制御特性qに従い決定する。しかし、大きい場合は、不感帯アにあるとして、ステップS36で、目標車速制御量を0と決定する。
【0065】
次に、本発明の第3の実施形態を特徴部分のみ取り出して説明する。図16(図7、図9に対応)に例示したように、この第3実施形態では、第3目標車間距離Lt(iii)は設定されず、前方車両Wfと前々方車両Wffとの第2車間距離L2が第1の所定車間距離Lmよりも短くなった後は、連続して第2目標車間距離Lt(ii)のみ用いられる。
【0066】
また、図17(図8、図10に対応)に例示したように、この第3実施形態では、第3車速制御特性q(iii)は用いられず、前方車両Wfと前々方車両Wffとの第2車間距離L2が第1の所定車間距離Lmよりも短くなった後は、連続して第2車速制御特性q(ii)のみ用いられる。その場合に、この第2車速制御特性q(ii)では、図8に示した第2車速制御特性q(ii)と比較して、不感帯アがγ3まで大きくされている。
【0067】
この第3実施形態では、コントロールユニット10が行う目標車速制御量の設定動作は、前記図12に示した第1実施形態と同様であるが、追従走行制御は、およそ図18に示すフローチャートに従って行われる。
【0068】
まず、ステップS41で、各種信号を入力したうえで、ステップS42で、前方車両WFの有無を判定する。前方車両Wfが無いときは、ステップS43で、目標車間距離Ltの設定を行わず、ステップS44で、目標車速制御量の設定も行わないまま、リターンする。
【0069】
前方車両Wfが有るときは、ステップS45で、前々方車両Wffの有無を判定する。前々方車両Wffが無いときは、ステップS46で、目標車間距離Ltを第1目標車間距離Lt(i)に設定し、ステップS47で、車間距離偏差ΔL(i)を算出し、ステップS48で、目標車速制御量を第1車速制御特性q(i)により設定する。そして、ステップS49で、設定した目標車速制御量が得られるようにスロットルアクチュエータ17(加速時)及びブレーキアクチュエータ18(減速時)を制御する。これにより、自車両Wと前方車両Wfとの実車間距離L1が所定の目標車間距離Ltに維持されるように自車両Wを前方車両Wfに追従走行させることとなる。
【0070】
前々方車両Wffが有るときは、ステップS50で、前方車両Wfと前々方車両Wffとの第2車間距離L2が第1の所定車間距離Lmよりも短いか否かを判定する。その結果、前記第2車間距離L2が第1の所定車間距離Lmよりも長い場合(図5、図6参照)は、ステップS46に進み、前記第2車間距離L2が第1の所定車間距離Lmよりも短い場合(図16、図17参照)は、ステップS51に進む。
【0071】
いずれの場合も、まず、目標車間距離Ltを第1、第2目標車間距離Lt(i),Lt(ii)に設定し(ステップS46,S51)、車間距離偏差ΔL(i),ΔL(ii)を算出し(ステップS47,S52)、目標車速制御量を第1、第2車速制御特性q(i),q(ii)により設定する(ステップS48,S53)。そして、いずれの場合も、ステップS49で、設定した目標車速制御量が得られるようにスロットルアクチュエータ17(加速時)及びブレーキアクチュエータ18(減速時)を制御する。これにより、自車両Wと前方車両Wfとの実車間距離L1が所定の目標車間距離Ltに維持されるように自車両Wを前方車両Wfに追従走行させることとなる。
【0072】
なお、前記各実施形態は、本発明の最良の実施形態ではあるが、特許請求の範囲を逸脱しない限り、なお種々の修正、変更が可能なことはいうまでもない。例えば、前記実施形態では、前方車両Wfと前々方車両Wffとの第3車間距離L3が第1の所定車間距離Lmよりも長い通常時に用いる第1車速制御特性q(i)と、前記第3車間距離L3が第1の所定車間距離Lmよりも短い接近時に用いる第2車速制御特性q(ii)と、前記第3車間距離L3が第2の所定車間距離Lnよりも短い異常接近時に用いる第3車速制御特性q(iii)とを、予め、例えばコントロールユニット10の記録装置等に登録・格納しておく場合で説明したが、これに代えて、例えば、標準形である前記第1車速制御特性q(i)だけを記録装置等に登録・格納しておき、接近時又は異常接近時になれば、該第1車速制御特性q(i)をその都度第2車速制御特性q(ii)又は第3車速制御特性q(iii)に変形・修正して用いるようにすることもできる。また、自車両Wの車速制御感度を鈍化させる手段として、比例定数Bの値の減少、不感帯アの拡大、緩応答帯イ及び急応答帯ウの変化量の減少の3つを挙げたが、これらを様々に組み合わせて適用することができる。また、第3実施形態において、第2実施形態のように、車間距離偏差ΔLがマイナス側、つまり接近側においても、自車両Wの車速制御感度を鈍化させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0073】
以上、具体例を挙げて詳しく説明したように、本発明は、たとえ前方車両が急ブレーキや急加速を繰り返すギクシャク運転をしても、それに連動して自車両が急ブレーキや急加速を頻繁に行うことが抑制され、乗員の乗り心地や安心感の向上が図られるもので、自動車の追従走行装置の技術分野において幅広い産業上の利用可能性が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の最良の実施形態に係る自動車の追従走行装置の各構成要素のレイアウト図である。
【図2】前記追従走行装置のコントロールユニットを中心とした制御システム図である。
【図3】自車両と前々方車両との車間距離を検出する具体的一態様の説明図である。
【図4】前方車両の全長を検出する具体的一態様の説明図である。
【図5】前々方車両と前方車両との車間距離が第1所定車間距離よりも長い場合における自車両と前方車両との目標車間距離の説明図である。
【図6】前記場合における車間距離偏差に対する車速制御量の特性(第1特性)を示す説明図である。
【図7】前々方車両と前方車両との車間距離が第1所定車間距離よりも短い場合における自車両と前方車両との目標車間距離の説明図である。
【図8】前記場合における車間距離偏差に対する車速制御量の特性(第2特性)を示す説明図である。
【図9】前々方車両と前方車両との車間距離が第2所定車間距離よりも短い場合における自車両と前方車両との目標車間距離の説明図である。
【図10】前記場合における車間距離偏差に対する車速制御量の特性(第3特性)を示す説明図である。
【図11】前記コントロールユニットが行う追従走行制御の具体的動作の1例を示すフローチャートである。
【図12】前記コントロールユニットが行う目標車速制御量設定動作の1例を示すフローチャートである。
【図13】本発明の第2の実施形態における第2特性の説明図である。
【図14】本発明の第2の実施形態における第3特性の説明図である。
【図15】本発明の第2の実施形態における目標車速制御量設定動作の1例を示すフローチャートである。
【図16】本発明の第3の実施形態における自車両と前方車両との目標車間距離の説明図である。
【図17】本発明の第3の実施形態における第2特性の説明図である。
【図18】本発明の第3の実施形態における追従走行制御の具体的動作の1例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0075】
1 追従走行装置
10 コントロールユニット(目標車間距離設定手段、第2の車間距離検出手段、制御感度鈍化手段)
11 レーダ(車間距離検出手段)
12 カメラ(前方車両認識手段、前々方車両認識手段)
13 車車間通信用アンテナ
14 路車間通信用アンテナ
15 スマートプレート信号受信用アンテナ
16 舵角センサ
17 スロットルアクチュエータ(車速制御手段)
18 ブレーキアクチュエータ(車速制御手段)
19 ステアリングアクチュエータ
20 前輪
L1 第1車間距離
L2 第2車間距離
Lt 目標車間距離
W 自車両
Wf 前方車両
Wff 前々方車両
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の前方車両を認識する前方車両認識手段と、
自車両と前方車両との目標車間距離を設定する目標車間距離設定手段と、
前記前方車両認識手段で認識された前方車両と自車両との車間距離を検出する車間距離検出手段と、
該車間距離検出手段で検出された車間距離が前記目標車間距離設定手段で設定された目標車間距離に維持されるように自車両の車速を制御する車速制御手段とを備える自動車の追従走行装置であって、
自車両の前々方車両を認識する前々方車両認識手段と、
該前々方車両認識手段で認識された前々方車両と前記前方車両認識手段で認識された前方車両との車間距離を検出する第2の車間距離検出手段と、
該第2の車間距離検出手段で検出された車間距離が所定の車間距離よりも短くなったときは短くなっていないときよりも前記車速制御手段の制御感度を鈍化させる制御感度鈍化手段とが設けられていることを特徴とする自動車の追従走行装置。
【請求項2】
前記請求項1に記載の自動車の追従走行装置において、
前記目標車間距離設定手段は、前記第2の車間距離検出手段で検出された車間距離が所定の車間距離よりも短くなったときは短くなっていないときよりも目標車間距離を所定距離だけ延長することを特徴とする自動車の追従走行装置。
【請求項3】
前記請求項2に記載の自動車の追従走行装置において、
前記目標車間距離設定手段は、前記第2の車間距離検出手段で検出された車間距離が所定の車間距離よりも短くなった後は、該車間距離が短くなるに従い目標車間距離を徐々に延長することを特徴とする自動車の追従走行装置。
【請求項4】
前記請求項2又は3に記載の自動車の追従走行装置において、
前記目標車間距離設定手段は、前記第2の車間距離検出手段で検出された車間距離が前記所定の車間距離よりも短い第2の所定の車間距離よりも短くなったときは目標車間距離を第2の所定距離だけさらに延長することを特徴とする自動車の追従走行装置。
【請求項5】
前記請求項1から4のいずれかに記載の自動車の追従走行装置において、
前記制御感度鈍化手段は、前記車間距離検出手段で検出された車間距離と前記目標車間距離設定手段で設定された目標車間距離との偏差に対する自車両の車速制御量を低減することにより前記車速制御手段の制御感度を鈍化させることを特徴とする自動車の追従走行装置。
【請求項6】
前記請求項1から5のいずれかに記載の自動車の追従走行装置において、
前記制御感度鈍化手段は、前記車間距離検出手段で検出された車間距離と前記目標車間距離設定手段で設定された目標車間距離との偏差に対する自車両の車速制御の開始を遅延することにより前記車速制御手段の制御感度を鈍化させることを特徴とする自動車の追従走行装置。
【請求項7】
前記請求項1から6のいずれかに記載の自動車の追従走行装置において、
前記制御感度鈍化手段は、前記車間距離検出手段で検出された車間距離と前記目標車間距離設定手段で設定された目標車間距離との偏差を小さくすることにより前記車速制御手段の制御感度を鈍化させることを特徴とする自動車の追従走行装置。
【請求項8】
前記請求項1から7のいずれかに記載の自動車の追従走行装置において、
前記制御感度鈍化手段は、前記車間距離検出手段で検出された車間距離が前記目標車間距離設定手段で設定された目標車間距離よりも大きい場合にのみ前記車速制御手段の制御感度を鈍化させることを特徴とする自動車の追従走行装置。
【請求項1】
自車両の前方車両を認識する前方車両認識手段と、
自車両と前方車両との目標車間距離を設定する目標車間距離設定手段と、
前記前方車両認識手段で認識された前方車両と自車両との車間距離を検出する車間距離検出手段と、
該車間距離検出手段で検出された車間距離が前記目標車間距離設定手段で設定された目標車間距離に維持されるように自車両の車速を制御する車速制御手段とを備える自動車の追従走行装置であって、
自車両の前々方車両を認識する前々方車両認識手段と、
該前々方車両認識手段で認識された前々方車両と前記前方車両認識手段で認識された前方車両との車間距離を検出する第2の車間距離検出手段と、
該第2の車間距離検出手段で検出された車間距離が所定の車間距離よりも短くなったときは短くなっていないときよりも前記車速制御手段の制御感度を鈍化させる制御感度鈍化手段とが設けられていることを特徴とする自動車の追従走行装置。
【請求項2】
前記請求項1に記載の自動車の追従走行装置において、
前記目標車間距離設定手段は、前記第2の車間距離検出手段で検出された車間距離が所定の車間距離よりも短くなったときは短くなっていないときよりも目標車間距離を所定距離だけ延長することを特徴とする自動車の追従走行装置。
【請求項3】
前記請求項2に記載の自動車の追従走行装置において、
前記目標車間距離設定手段は、前記第2の車間距離検出手段で検出された車間距離が所定の車間距離よりも短くなった後は、該車間距離が短くなるに従い目標車間距離を徐々に延長することを特徴とする自動車の追従走行装置。
【請求項4】
前記請求項2又は3に記載の自動車の追従走行装置において、
前記目標車間距離設定手段は、前記第2の車間距離検出手段で検出された車間距離が前記所定の車間距離よりも短い第2の所定の車間距離よりも短くなったときは目標車間距離を第2の所定距離だけさらに延長することを特徴とする自動車の追従走行装置。
【請求項5】
前記請求項1から4のいずれかに記載の自動車の追従走行装置において、
前記制御感度鈍化手段は、前記車間距離検出手段で検出された車間距離と前記目標車間距離設定手段で設定された目標車間距離との偏差に対する自車両の車速制御量を低減することにより前記車速制御手段の制御感度を鈍化させることを特徴とする自動車の追従走行装置。
【請求項6】
前記請求項1から5のいずれかに記載の自動車の追従走行装置において、
前記制御感度鈍化手段は、前記車間距離検出手段で検出された車間距離と前記目標車間距離設定手段で設定された目標車間距離との偏差に対する自車両の車速制御の開始を遅延することにより前記車速制御手段の制御感度を鈍化させることを特徴とする自動車の追従走行装置。
【請求項7】
前記請求項1から6のいずれかに記載の自動車の追従走行装置において、
前記制御感度鈍化手段は、前記車間距離検出手段で検出された車間距離と前記目標車間距離設定手段で設定された目標車間距離との偏差を小さくすることにより前記車速制御手段の制御感度を鈍化させることを特徴とする自動車の追従走行装置。
【請求項8】
前記請求項1から7のいずれかに記載の自動車の追従走行装置において、
前記制御感度鈍化手段は、前記車間距離検出手段で検出された車間距離が前記目標車間距離設定手段で設定された目標車間距離よりも大きい場合にのみ前記車速制御手段の制御感度を鈍化させることを特徴とする自動車の追従走行装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2007−62403(P2007−62403A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−247158(P2005−247158)
【出願日】平成17年8月29日(2005.8.29)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月29日(2005.8.29)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]