説明

薄膜トランジスタアレイおよびその製造方法

【課題】 本発明は、クシ型電極を用いた薄膜トランジスタのフィードスルーを低減しつつ、電極の電気抵抗の増大や作製の難しさを改善した薄膜トランジスタアレイを提供することを課題とする。
【解決手段】 ソース・ドレイン電極をクシ型とし、ドレイン電極の幅をソース電極の幅より細くし、ドレイン電極あるいはソース・ドレイン電極の根元をテーパー状にすることにより、電気抵抗の増大を抑制し、かつ歩留まりを向上した薄膜トランジスタアレイ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置等に用いる薄膜トランジスタアレイに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体自体を基板としたトランジスタや集積回路技術を基礎として、ガラス基板上にアモルファスシリコン(a−Si)やポリシリコン(poly−Si)の薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:TFT)が製造され、液晶ディスプレイに応用されている(非特許文献1)。TFTとしては、例えば図10のようなものが用いられている。ここでTFTはスイッチの役割を果たしており、ゲート配線2’に与えられた選択電圧によってTFTをオンにした時に、ソース配線4’に与えられた信号電圧をドレイン5に接続された画素電極8に書き込む。書き込まれた電圧は、画素電極8/ゲート絶縁膜3/キャパシタ電極10によって構成される蓄積キャパシタに保持される。
【0003】
ここで、TFTアレイの場合、ソースとドレインの働きは書き込む電圧の極性によって変わるため、動作で名称を決められない。そこで、便宜的に一方をソース、他方をドレインと、呼び方を統一しておく。本発明では、配線に接続されている方をソース、画素電極に接続されている方をドレインと呼ぶ。
【0004】
近年、有機半導体や酸化物半導体が登場し、200℃以下の低温でTFTを作製できることが示され、プラスチック基板を用いたフレキシブルディスプレイへの期待が高まっている。フレキシブルという特長以外に、軽量、壊れにくい、薄型化できるというメリットも期待されている。また、印刷によってTFTを形成することにより、安価で大面積なディスプレイが期待されている。
【0005】
ところで、ディスプレイを大面積化するには、大面積にパターニングできるだけでなく、on電流を大きくする必要がある。チャネル幅をW、チャネル長をLとした時、on電流はW/Lに比例する。大きなon電流を得たい場合、ソース・ドレイン電極としては、直線状のクシ歯を交互に配置したクシ型電極がよく用いられる。クシ型は、大きなWと小さなLを有するからである。ここで、通常、クシ型電極は、図9(a)のように等しい幅を有する。
【0006】
しかし、クシ型電極の場合、クシの長さや歯の数が大きいため、ゲート・ドレイン間の電極重なり面積が大きくなって、フィードスルーが大きくなるという問題があった。
【0007】
ここで、フィードスルーとは、ゲート電位がonからoffに変わる際に、画素の電位が変化する現象であり、ゲート・ドレイン間のキャパシタンスが原因である。
フィードスルーが大きいと、画素の電位が設計値からずれてしまうため、想定通りの表示ができなくなる。
【0008】
一方、電極重なり面積を小さくする目的で電極幅を小さくすれば、電極の電気抵抗が大きくなる、電極の作製が難しくなる、という問題があった。
【非特許文献1】松本正一編著:「液晶ディスプレイ技術 −アクティブマトリクスLCD−」産業図書。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、係る従来技術の状況に鑑みてなされたもので、クシ型電極を用いた薄膜トランジスタのフィードスルーを低減しつつ、電極の電気抵抗の増大や作製の難しさを改善した薄膜トランジスタアレイを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための、請求項1に記載の発明は、絶縁基板上に、少なくともゲート配線に接続されたゲート電極と、ゲート絶縁膜と、ソース配線に接続されたソース電極と、画素電極に接続されたドレイン電極と、前記ソース電極と前記ドレイン間に形成された半導体層とを有する薄膜トランジスタをマトリクス状に配置した薄膜トランジスタアレイであって、前記ソース電極と前記ドレイン電極がクシ型であり、且つ前記ドレイン電極の幅が前記ソース電極の幅より小さいことを特徴とする薄膜トランジスタアレイである。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記ドレイン電極の前記画素電極との接続部分の形状が、テーパー形状であることを特徴とする請求項1記載の薄膜トランジスタアレイである。
【0012】
請求項3に記載の発明は、前記ソース電極の前記ソース配線との接続部分の形状がテーパー形状になっていることを特徴とする請求項1または2に記載の薄膜トランジスタアレイである。
【0013】
請求項4に記載の発明は、前記半導体が、有機半導体または酸化物半導体であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の薄膜トランジスタアレイである。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の薄膜トランジスタアレイの製造方法であって、前記ソース電極と前記ドレイン電極を、反転印刷によって形成することを特徴とする薄膜トランジスタアレイの製造方法である。
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、ソース電極の幅を太く保ちながらドレイン電極の幅を細くすることにより、電気抵抗の増大、作製時の断線の恐れの両方を、ドレイン電極側だけに留めることができる。従って、電気抵抗の増大を低減し、歩留まりを向上させることができる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、ドレイン電極の画素電極との接続部分の形状を、テーパー形状にすることにより、ドレイン電極においても作製時の断線の恐れを低減することができる。従って、歩留まりを向上させることができる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、ソース電極のソース配線との接続部分の形状を、テーパー形状にすることにより、ソース電極作製時の断線の恐れをより低減することができる。従って、歩留まりを向上させることができる。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、半導体として有機半導体または酸化物半導体を用いることにより、薄膜トランジスタアレイを200℃以下の低温で作製することが可能になり、熱に弱いプラスチック基板の使用ができて、フレキシブルディスプレイを作製できる。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、ソース・ドレイン電極を反転印刷法で形成することにより、高精度のパターニングを簡便かつ高速に行うことができ、性能のよい薄膜トランジスタアレイを容易に製造できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、まず、ソース・ドレイン電極をクシ型とし、ドレイン電極の幅をソース電極の幅より細くすることにより、ゲート・ドレイン間容量を小さく抑えつつ、電気抵抗の増大を抑制し、かつ歩留まりを向上できた。また、ドレイン電極の画素電極との接続部分の形状をテーパー形状にすること、あるいはソース電極のソース配線との接続部分の形状及びドレイン電極のドレイン配線との接続部分の形状をテーパー形状にすることにより、さらに歩留まりを向上できた。さらには、半導体を、有機半導体または酸化物半導体とすることにより、低温での作製が可能になり、プラスチック基板を使用できた。さらにはソース・ドレイン電極を反転印刷法で形成することにより、高精度の素子を容易に製造できた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の実施の形態について、以下に図面を使用して詳細に説明する。なお、以下に使用する図面では、説明を判り易くするために縮尺は正確には描かれていない。
【0022】
本発明の実施形態に係わる薄膜トランジスタアレイの例を、図1に示す。薄膜トランジスタアレイの1画素領域を示す平面配置図を示している。即ち、図1の画素をマトリクス状に並べたものが、本発明の薄膜トランジスタアレイである。 図1に示すように本発明の実施形態に係わる薄膜トランジスタアレイは、ソース電極4・ドレイン電極5がクシ型であり、ドレイン電極5の幅がソース電極4の幅より小さい。そのため、ソース電極4の電気抵抗の増大および歩留りの減少(形成時の断線)を抑えつつ、ゲート電極2・ドレイン電極5の重なり面積を小さくすることができる。
【0023】
ソース電極4およびドレイン電極5の電気抵抗の目安は、電極幅をそれぞれLs、Ldとし、クシの長さをw、厚さt、抵抗率ρとすれば、それぞれρw/Lst、ρw/Ldtと考えることができる。即ち、電気抵抗は電極幅に反比例する。例えばソース電極4およびドレイン電極5の幅を両方とも半分にすれば電気抵抗は2倍になってしまうが、ドレイン電極5の幅のみを半分にすれば電気抵抗は1.5倍で済む。一方、ドレイン電極5とゲート電極2との重なりは、1/2倍になる。また、ソース電極4は太いので形成が容易であり、ドレイン電極5の歩留り減少(形成時の断線)が懸念事項となるのみである。
【0024】
さらに改善されたソース電極4・ドレイン電極5の例を、図2に示す。図2(a)のようにドレイン電極5の画素電極8との接続部分の形状を、テーパー形状にすることにより、ドレイン電極5の歩留りの減少(形成時の断線)を抑えることができる。また、図2(b)のようにソース電極4のソース配線4’との接続部分の形状もテーパー形状にしてもよいし、図2(c)のようにテーパー部を曲線にしてもよい。
【0025】
なお、ソース電極4の歯の数をドレイン電極5の数よりも1本多くしているのも、ゲート電極2・ドレイン電極5の重なり面積を小さくするために有効である。
【0026】
半導体層6は、ソース電極4・ドレイン電極5が近接している領域に形成され、ゲート絶縁膜3を挟んで、ゲート電極2と重なっている。ゲート電極2の電位によって、半導体層6/ゲート絶縁膜3の界面の電荷を制御し、ドレイン電流を制御できる。素子構造は、ボトムゲートでもよいし、トップゲートでもよい。また、ボトムコンタクトでもよいし、トップコンタクトでもよい。これらについて、図3で説明する。図3は、図1の線A−A’の断面図である。ボトムゲート・ボトムコンタクト(図3(a))では、積層順序が、基板1、ゲート電極2、ゲート絶縁膜3、ソース電極4およびドレイン電極5、半導体層6となる。ボトムゲート・トップコンタクト(図3(b))では、積層順序が、基板1、ゲート電極2、ゲート絶縁膜3、半導体層6、ソース電極4およびドレイン電極5となる。トップゲート・ボトムコンタクト(図3(c))では、積層順序が、基板1、ソース電極4およびドレイン電極5、半導体層6、ゲート絶縁膜3、ゲート電極2となる。トップゲート・トップコンタクト(図3(d))では、積層順序が、基板1、半導体層6、ソース電極4およびドレイン電極5、ゲート絶縁膜3、ゲート電極2となる。ゲート電極2と同層にゲート配線2’を、ソース電極4・ドレイン電極5と同層にソース配線4’、画素電極8を有することは、言うまでもない。また、ゲート電極2と同層または別層に、キャパシタ電極10およびキャパシタ配線10’を有してもよい。ボトムゲートの場合、半導体層6上に封止層7を有してもよい。
【0027】
また、さらに層間絶縁膜9および上部画素電極12を有し、上部画素電極12が画素電極8と接続されていてもよい。特にトップゲートでは、層間絶縁膜9および上部画素電極12を有することが望ましい。
【0028】
ただし、上部画素電極12は画素電極8に接続されている必要があり、ボトムゲートでは層間絶縁膜9に、トップゲートでは層間絶縁膜9およびゲート絶縁膜3に開口が必要である。
【0029】
半導体層6としては、有機半導体や、酸化物半導体を用いる。具体的には、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリチエニレンビニレン誘導体、ポリアリルアミン誘導体、ポリアセチレン誘導体、アセン誘導体、オリゴチオフェン誘導体等の有機半導体や、InGaZnO系、ZnGaO系、InZnO系、InO系、GaO系、SnO系、あるいはそれらの混合物等の酸化物半導体を用いることができる。有機半導体は、溶液をスピンコート、ダイコート、インクジェット等で塗布・焼成することにより、酸化物半導体は、スパッタ、蒸着、レーザアブレーション等により、200℃以下の低温で成膜できる。
【0030】
また、有機半導体は、溶液をフレキソ印刷で塗布・焼成することによっても、200℃以下の低温で成膜できる。
【0031】
そのため、絶縁基板1としてプラスチックを使用することが可能になる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ナイロン(Ny)等が使用できる。
【0032】
なお、半導体層6は全面形成でも動作可能だが、図1や図5〜8のようにパターニングされている方が、オフ電流を小さくできて好ましい。スピンコート、ダイコート、スパッタ、蒸着、レーザアブレーション等で全面成膜後に、フォトリソグラフィ、あるいはそれに類する方法を用いてパターニングするか、成膜とパターニングを同時に行うことができる印刷、マスク蒸着等を用いるか、あらかじめレジストパターンを形成しておき、全面成膜後にレジストを除去するリフトオフ法を用いることができる。あるいは有機半導体の場合、後述する封止層7を形成後、封止層7をマスクとして、Oプラズマ、Nプラズマ、Arプラズマ等によるエッチングを行うか、封止層7を溶解せず半導体層6を溶解する液体でリンスする等の方法によっても、パターニングが可能である。
【0033】
ゲート電極2、キャパシタ電極10としては、Al、Cr、Au、Ag、Ni、Cu、Mo等の金属や、ITO等の透明導電膜を使用することができる。製法としては、蒸着やスパッタ成膜後にフォトリソ+エッチングで形成する方法が一般的であるが、印刷法(スクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、反転印刷等)を用いることができる。印刷を用いる場合、Agインク、Niインク、Cuインク等を用いることができる。
【0034】
ゲート絶縁膜3としては、ポリビニルフェノール、エポキシ、ポリイミド等の有機絶縁膜や、SiO、SiN、SiON、Al等の無機絶縁膜を用いることができる。製法としては、溶媒可溶性有機物の場合にはスピンコート、ダイコート、インクジェット等を、それ以外の場合にはスパッタ、蒸着、レーザアブレーション等を用いることができる。
【0035】
例えば、トップゲートのようにパターニングが必要な場合、フォトリソグラフィとエッチング、リフトオフ等でパターニングするか、インクジェット等の印刷法や、感光性有機物をゲート絶縁膜3の材料とし露光・現像するなどして、直接パターニングすることが可能である。
【0036】
ソース電極4、ソース配線4’、ドレイン電極5、画素電極8としては、ゲート電極2等と同様の材料と同様の方法が使用できるが、特に反転印刷が最適である。
【0037】
封止層7としては、フッ素化樹脂が好適である。製法としては、スクリーン印刷が好適である。層間絶縁膜9としては、ポリビニルフェノール、アクリル、エポキシ、ポリイミド等が使用可能である。製法としては、スクリーン印刷が好適であるが、感光性膜を形成後、露光・現像によって形成してもよい。上部画素電極12としては、Al、Cr、Au、Ag、Ni、Cu等の金属や、ITO等の透明導電膜等を用いることができる。製法としては、蒸着、スパッタ等の成膜後にフォトリソ、エッチングする等の方法も可能であるが、Agインク、Niインク、Cuインク等をスクリーン印刷するのが好適である。
【0038】
次に、本発明の薄膜トランジスタの製造方法の特徴である、反転印刷について説明する。図4に、反転印刷の概略を示す。
【0039】
反転印刷は、インク剥離性を有するブランケット21上へインク液膜23を形成する工程と、該インク液膜23に凸版24を接触させて凸部形状のインクを除去する工程と、前記ブランケット21上に残ったインクを基材25に接触することにより基材25上に画像パターンを転写する工程とを有する印刷方法である。通常、ブランケット21にはシリコーン樹脂を表面に有する円筒(転写胴)が用いられ、凸版24にはガラスに画像パターンのネガ形状の凸部を残したものが用いられる。
【0040】
使用するインクとしては、平均粒子径が50nm以下の金属粒子と、水性溶媒と、水溶性樹脂を含む導電性インクが望ましい。金属としてはAgが好適である。印刷後に焼成することにより、低抵抗の電極が得られる。
【0041】
図5及び図6は、図1の薄膜トランジスタの製造方法の一例である。絶縁基板1上にゲート電極2およびキャパシタ電極10を形成し(図5(a))、全面にゲート絶縁膜3を形成する(図5(b))。さらに、ソース電極4、ソース配線4’、ドレイン電極5、画素電極8を上記反転印刷によって形成し(図5(c))、半導体層6を形成する(図5(d))。
【0042】
以上は、ボトムゲート・ボトムコンタクトの場合の手順であるが、ボトムゲート・トップトンタクトや、トップゲート・ボトムコンタクト、トップゲート・トップコンタクトの場合には、層順を入れ替えればよい。
【0043】
例えば、図7および図8はボトムゲート・トップコンタクトの場合であり、ソース電極4、ソース配線4’、ドレイン電極5、画素電極8を形成する工程と、半導体層6を形成する工程とを入れ替えている。
【0044】
また、さらに封止層7(図6(e))、層間絶縁膜9(図6(f))、上部画素電極12(図6(g))を形成してもよいことも、既に述べた。
【実施例】
【0045】
(実施例1)
本発明の実施例について、図1および図5、図6を用いて説明する。図1に示す素子を、図5(a)〜図6(g)の工程によって作製した。まず初めに、絶縁基板1であるPEN上に、蒸着によってAlを50nm成膜し、フォトリソおよびウェットエッチによってゲート電極2、キャパシタ電極10を形成した(図5(a))。次に、ポリビニルフェノール溶液をスピンコートし、150℃焼成することにより、ゲート絶縁膜3としてポリビニルフェノールを1μm形成した(図5(b))。さらに、ソース電極4、ソース配線4’、ドレイン電極5、画素電極8として、Agインクを反転印刷し180℃で焼成することによって厚さ50nmのパターンを形成した(図5(c))。その時のソース電極4・ドレイン電極5の形状は、図1のようであり、ドレイン電極幅は5μm、ソース電極幅は10μm、チャネル長は5μm、チャネル幅は800μmである。顕微鏡観察によれば、ソース電極の歩留りは90%、ドレイン電極の歩留りは60%であった。
【0046】
ここで、歩留まりとは、電極のクシの本数のうち、長さが設計値の90%以上のクシの割合である。
【0047】
さらに、ポリチオフェン溶液をスピンコート、100℃焼成することにより、半導体層6を形成した(図5(d))。
【0048】
ただし、半導体層6は未パターニングである。
【0049】
そして、フッ素化樹脂であるサイトップをスクリーン印刷して封止層7を形成した(図6(e))。
【0050】
その後、キシレンでリンスすることよって封止層下以外の半導体層を除去した(図6(e))。
【0051】
さらにエポキシ樹脂をスクリーン印刷して層間絶縁膜9を形成し(図6(f))、Agペーストをスクリーン印刷して上部画素電極12を形成した(図6(g))。
【0052】
こうして作製した薄膜トランジスタアレイと、対向電極付き基板の間に電気泳動表示体を挟んだ構造の電気泳動ディスプレイを作製した。ドレイン電極欠損分のばらつきはあるものの、ほぼ想定通りに動作することを確認した。
【0053】
詳しくは、電気泳動表示体の特性およびトランジスタの特性から計算される所定の書き込み動作(所定のソース電圧、ゲート電圧、ゲートパルス幅、書き込み周期、書き込み回数)を行ったところ、無欠陥の画素部分はほぼ想定通りの書き込み回数で動作することを確認した。
【0054】
以下の実施例においても「想定通りの動作」とは所定の書き込み条件下、想定通りの書き込み回数で動作したという意味である。
【0055】
(実施例2)
ソース電極4・ドレイン電極5の形状が図2(a)である以外は、実施例1と同様の薄膜トランジスタアレイを作製した。具体的には、ドレイン電極の画素電極と接している幅は25μmであり、この接している部分から20μm以上離れた部分で幅が一定(5μm)となるテーパー形状である。顕微鏡観察によれば、ソース電極の歩留りは90%、ドレイン電極の歩留りも90%になった。
【0056】
(実施例3)
ソース電極4・ドレイン電極5の形状が図2(b)である以外は、実施例1と同様の薄膜トランジスタアレイを作製した。具体的には、ソース電極のソース配線と接している部分の幅は20μmであり、この接している部分から5μm以上離れた部分で幅が一定(10μm)となるテーパー形状である。顕微鏡観察によれば、ソース電極の歩留りは95%、ドレイン電極の歩留りは90%になった。
【0057】
(実施例4)
ソース電極4・ドレイン電極5の形状が図2(c)である以外は、実施例1と同様の薄膜トランジスタアレイを作製した。具体的には、ドレイン電極の画素電極と接している部分は半径10μmの円弧、ソース電極のソース配線と接している部分は半径7.5μmの円弧で丸めたテーパー形状である。顕微鏡観察によれば、ソース電極の歩留りは95%、ドレイン電極の歩留りは90%になった。
【0058】
(実施例5)
本発明の実施例について、図1および図7、図8を用いて説明する。図1に示す素子(ただし、ドレイン電極形状は図2(a))を、図7(a)〜図8(g)の工程によって作製した。まず初めに、絶縁基板1であるPEN上に、蒸着によってAlを50nm成膜し、フォトリソおよびウェットエッチによってゲート電極2、キャパシタ電極10を形成した(図7(a))。次に、SiNをターゲットとし、Ar、O、Nを流してRFスパッタを行うことにより、ゲート絶縁膜3としてSiONを500nm形成した(図7(b))。さらに、InGaZnOをターゲットとし、Ar、Oを流してRFスパッタを行うことにより、半導体層6としてInGaZnOを50nm成膜し、フォトリソおよび塩酸によるウェットエッチによりパターニングした(図7(c))。さらに、ソース電極4、ソース配線4’、ドレイン電極5、画素電極8として、Agインクを反転印刷し180℃で焼成することによって厚さ50nmのパターンを形成した(図7(d))。その時のソース電極4・ドレイン電極5の形状は、図2(a)のようであり、ドレイン電極幅は5μm、ソース電極幅は10μm、チャネル長は5μm、チャネル幅は800μmである。
【0059】
また、ドレイン電極の画素電極と接している幅は25μmであり、この接している部分から20μm以上離れた部分で幅が一定(5μm)となるテーパー形状である。
【0060】
顕微鏡観察によれば、ソース電極の歩留りは90%、ドレイン電極の歩留りも90%であった。
【0061】
そして、フッ素化樹脂であるサイトップをスクリーン印刷して封止層7を形成した(図8(e))。さらにエポキシ樹脂をスクリーン印刷して層間絶縁膜9を形成し(図8(f))、Agペーストをスクリーン印刷して上部画素電極12を形成した(図8(g))。
【0062】
こうして作製した薄膜トランジスタアレイと、対向電極付き基板の間に電気泳動表示体を挟んだ構造の電気泳動ディスプレイを作製し、ほぼ想定通りに動作することを確認した。
【0063】
(実施例6)
本発明の実施例について、図1および図5、図6を用いて説明する。図1に示す素子(ただし、ドレイン電極形状は図2(a))を、図5(a)〜図6(g)の工程によって作製した。まず初めに、絶縁基板1であるPEN上に、蒸着によってAlを50nm成膜し、フォトリソおよびウェットエッチによってゲート電極2、キャパシタ電極10を形成した(図5(a))。次に、ポリビニルフェノール溶液をスピンコートし、150℃焼成することにより、ゲート絶縁膜3としてポリビニルフェノールを1μm形成した(図5(b))。さらに、ソース電極4、ソース配線4’、ドレイン電極5、画素電極8として、Agインクを反転印刷し180℃で焼成することによって厚さ50nmのパターンを形成した(図5(c))。その時のソース電極4・ドレイン電極5の形状は、図2(a)のようであり、ドレイン電極幅は5μm、ソース電極幅は10μm、チャネル長は5μm、チャネル幅は800μm、ドレイン電極の画素電極と接している幅は25μmであり、この接している部分から20μm以上離れた部分で幅が一定(5μm)となるテーパー形状である。顕微鏡観察によれば、ソース電極の歩留りは90%、ドレイン電極の歩留りも90%であった。
【0064】
さらに、ポリチオフェン溶液をフレキソ印刷、100℃焼成することにより、半導体層6を形成した(図5(d))。そして、フッ素化樹脂であるサイトップをスクリーン印刷して封止層7を形成した(図6(e))。さらにエポキシ樹脂をスクリーン印刷して層間絶縁膜9を形成し(図6(f))、Agペーストをスクリーン印刷して上部画素電極12を形成した(図6(g))。
【0065】
こうして作製した薄膜トランジスタアレイと、対向電極付き基板の間に電気泳動表示体を挟んだ構造の電気泳動ディスプレイを作製し、ほぼ想定通りに動作することを確認した。
【0066】
(比較例1)
ソース電極4・ドレイン電極5の形状が図9(a)である以外は、実施例1と同様の薄膜トランジスタアレイを作製した。具体的には、ドレイン電極幅は5μm、ソース電極幅も5μm、チャネル長は5μm、チャネル幅は800μmである。顕微鏡観察によれば、例えば、図9(b)のように一部の電極に欠損が見られ、ソース電極の歩留りは60%、ドレイン電極の歩留りも60%であった。図9(b)では、ソース電極3本のうち1本が欠損し、ドレイン電極2本のうち1本が欠損している。
【0067】
(比較例2)
ソース電極4・ドレイン電極5の形状が図9(a)である以外は、実施例1と同様の薄膜トランジスタアレイを作製した。具体的には、ドレイン電極幅は10μm、ソース電極幅も10μm、チャネル長は10μm、チャネル幅は1600μmである。顕微鏡観察によれば、ソース電極の歩留りは90%、ドレイン電極の歩留りも90%であった。
【0068】
こうして作製した薄膜トランジスタアレイと、対向電極付き基板の間に電気泳動表示体を挟んだ構造の電気泳動ディスプレイを作製したところ、フィードスルーが大きいため、想定の10倍の回数の書込みを行わないと表示できなかった。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の薄膜トランジスタアレイの一例を示す平面図である。
【図2】本発明の薄膜トランジスタアレイのソース・ドレイン電極形状の他の例を示す平面図である。
【図3】図1の薄膜トランジスタアレイの積層構造の例を示す断面図である。
【図4】反転印刷法を示す説明図である。
【図5】本発明の薄膜トランジスタの製造工程の一例を示す断面図および平面図である。
【図6】本発明の薄膜トランジスタの製造工程の一例を示す断面図および平面図である。
【図7】本発明の薄膜トランジスタの製造工程の別の一例を示す断面図および平面図である。
【図8】本発明の薄膜トランジスタの製造工程の別の一例を示す断面図および平面図である。
【図9】従来のクシ型電極を有する薄膜トランジスタアレイのソース・ドレイン電極形状を示す平面図である。
【図10】従来の薄膜トランジスタアレイの構造を示す平面図である。
【符号の説明】
【0070】
1 … 絶縁基板
2 … ゲート電極
2’ … ゲート配線
3 … ゲート絶縁膜
4 … ソース電極
4’ … ソース配線
5 … ドレイン電極
6 … 半導体層
7 … 封止層
8 … 画素電極
9 … 層間絶縁膜
10 … キャパシタ電極
10’ … キャパシタ配線
12 … 上部画素電極
21 … ブランケット
22 … インク塗布機構
23 … インク液膜
24 … 凸版(除去版)
25 … 基材
26 … ステージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板上に、少なくともゲート配線に接続されたゲート電極と、ゲート絶縁膜と、ソース配線に接続されたソース電極と、画素電極に接続されたドレイン電極と、前記ソース電極と前記ドレイン間に形成された半導体層とを有する薄膜トランジスタをマトリクス状に配置した薄膜トランジスタアレイであって、前記ソース電極と前記ドレイン電極がクシ型であり、且つ前記ドレイン電極の幅が前記ソース電極の幅より小さいことを特徴とする薄膜トランジスタアレイ。
【請求項2】
前記ドレイン電極の前記画素電極との接続部分の形状が、テーパー形状であることを特徴とする請求項1記載の薄膜トランジスタアレイ。
【請求項3】
前記ソース電極の前記ソース配線との接続部分の形状がテーパー形状になっていることを特徴とする請求項1または2に記載の薄膜トランジスタアレイ。
【請求項4】
前記半導体が、有機半導体または酸化物半導体であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の薄膜トランジスタアレイ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の薄膜トランジスタアレイの製造方法であって、前記ソース電極と前記ドレイン電極を、反転印刷によって形成することを特徴とする薄膜トランジスタアレイの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図9】
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【図10】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−205451(P2008−205451A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−12419(P2008−12419)
【出願日】平成20年1月23日(2008.1.23)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】