説明

薄膜形成方法および薄膜形成装置、並びにそれを用いて製造された薄膜半導体装置

【課題】薄膜中に均一に配置された微粒子を含む薄膜を形成することができる薄膜形成装置を得ること。
【解決手段】基板5を載置して加熱しながら保持する基板ホルダ6と、ガス供給部47から基板5付近まで原料ガスを導くガス供給管41a,41bと、ガス供給管41a,41bから吹出されるガスからプラズマ48a,48bを生成するプラズマ源46a,46bとを有し、基板5に対してプラズマ処理するプラズマ処理室4a,4bと、微粒子供給部34からの微粒子含有媒体を基板5表面に噴出する噴出口31とを有し、基板5表面に微粒子を配置する微粒子噴出室3と、プラズマ処理室4a,4bからの原料ガスと、微粒子噴出室3からの微粒子含有媒体と、を収集する排気部8a,8bと、を備え、基板ホルダ6とプラズマ処理室4a,4bと微粒子噴出室3とを同一の容器2内に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、薄膜半導体装置を製造する薄膜形成装置および薄膜形成方法と、それを用いて製造された、薄膜シリコン系太陽電池や薄膜トランジスタなどの半導体層が薄膜で形成される薄膜半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光電変換素子である薄膜系太陽電池には発電層の種類によって薄膜シリコン系(たとえば、アモルファスシリコン、微結晶シリコン)や多結晶シリコン系などがある。薄膜シリコン系の太陽電池は、ガラス基板や樹脂シートなどの透光性基板の主表面上に、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)またはスズをドープした酸化インジウム(以下、ITOという)などの透明導電性材料からなる第1の電極と、薄膜シリコン膜からなる光電変換層と、アルミニウム、銀または酸化亜鉛などからなる第2の電極と、を順次積層して構成される。
【0003】
この薄膜シリコン系の太陽電池の効率を高めるために、従来様々な工夫がなされている。その1つに、薄膜シリコン層からなる光電変換層において、効率を高めるために太陽光の波長域に最適な光電変換層を組み合わせた構造が採用されている。たとえば、太陽光の短波長から中波長の波長域で光電変換を行わせる非晶質(アモルファス)シリコンによる光電変換層と、中波長から長波長の波長域で光電変換を行わせる微結晶シリコンによる光電変換層と、を積層させた構造を有するものが採用されている。このように、それぞれの波長域で量子効率が高い光電変換層を用いることによって、太陽光の広い波長域を有効に活用することができ、薄膜シリコン系太陽電池の効率を高めることができる。また、このほかにも、シリコン微粒子を含む非晶質シリコン半導体を形成することで、光電変換層の効率を高める工夫がなされている。たとえば、原料ガスとともに微粒子を含むガスを反応室内に導入しプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いて微粒子を含む非晶質シリコン半導体を形成する方法(たとえば、特許文献1参照)や、溶射法でシリコン微粒子を堆積させることで微粒子を含む凝集体層を形成する方法(たとえば、特許文献2参照)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3162781号公報(段落[0011]〜[0016]、図1)
【特許文献2】特開2000−101109号公報(段落[0016]〜[0019]、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1に記載のプラズマCVD法を用いた薄膜形成装置にあっては、キャリアガスによって微粒子を導入するため、基板上に微粒子を均一に配置することができないという問題点があった。また、微粒子は空中に浮遊する間にプラズマに曝されており、電子はイオンよりも速度が速いために、微粒子は負の電荷に帯電しやすい。たとえば、平行平板プラズマ装置の場合、高周波を印加した電極付近に微粒子が捕捉されやすいため、プラズマを消滅させると、電極付近に浮遊していた微粒子が一気に基板表面に落下することになり、その結果、薄膜形成後に薄膜上が微粒子で覆われてしまうという問題点もあった。さらに、反応室中にガス配管を介してキャリアガスとともに微粒子を導入するために、ガス配管が詰まりやすいという問題点もあった。また、薄膜の厚さ方向において膜中に含まれる微粒子の平均粒径を変化させることは困難であるという問題点もあった。
【0006】
一方の上記特許文献2に記載の溶射法を用いた薄膜形成装置にあっては、再結晶化によって生成される微粒子の位置および大きさを制御することが困難であるという問題点があった。また、溶射による加熱のため、下地膜や基板が変質してしまうという問題点もあった。
【0007】
この発明は、上記に鑑みてなされたもので、薄膜中に均一に配置された微粒子を含む薄膜を形成することができる薄膜形成方法および薄膜形成装置を得ることを目的とする。また、この発明は、薄膜形成後のプラズマ消滅時に電極近傍に浮遊している微粒子が薄膜上を覆わないようにすることができ、また、熱によって下地膜や基板の変質を抑えることができる薄膜形成方法および薄膜形成装置を得ることも目的とする。さらに、この発明は、薄膜の厚さ方向において膜中の微粒子の平均粒径を制御することができる薄膜形成方法および薄膜形成装置を得ることを目的とする。また、この発明は、この薄膜形成方法および薄膜形成装置で製造された薄膜半導体装置を得ることも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、この発明にかかる薄膜形成装置は、処理対象である基板を載置して、基板の一部または全体を加熱しながら保持する基板保持手段と、原料ガスを供給する原料ガス供給手段に接続され、前記原料ガス供給手段からの前記原料ガスを前記基板付近まで導くガス供給管と、前記ガス供給管から吹出されるガスからプラズマを生成するプラズマ生成手段とを有し、前記基板に対してプラズマ処理するプラズマ処理室と、微粒子を含む微粒子含有媒体を供給する微粒子含有媒体供給手段に接続され、前記微粒子含有媒体供給手段からの前記微粒子含有媒体を前記基板表面に噴出する噴出口を有する微粒子噴出室と、前記プラズマ処理室からの前記原料ガスと、前記微粒子噴出室からの前記微粒子を含有していた媒体とを収集する収集手段と、を備え、前記基板保持手段と前記プラズマ処理室と前記微粒子噴出室とを同一の容器内に配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、微粒子を含む微粒子含有媒体を基板表面に噴出するように構成したので、所望の位置に微粒子を配置することができるとともに、薄膜中に均一に配置された微粒子を含む薄膜を形成する薄膜形成装置を得ることができるという効果を有する。また、微粒子を噴出する微粒子噴出室と薄膜を形成するプラズマ処理室とを分離したので、微粒子がプラズマ処理室に入り込まず、プラズマを消滅させても、従来のように薄膜上に微粒子が堆積することはない。さらに、溶射によって薄膜を形成する方法ではないため、下地膜や基板を熱によって変質させてしまうことを防ぐことができるという効果も有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、この発明の実施の形態1による薄膜形成装置の構成を模式的に示す断面図である。
【図2】図2は、図1の薄膜形成装置の微粒子噴出室およびプラズマ処理室のA−A断面図である。
【図3】図3は、薄膜形成装置の微粒子噴出室およびプラズマ処理室と基板との関係を示す断面図である。
【図4】図4は、プラズマ処理室内のプラズマ源を電極側から見た概略図である。
【図5】図5は、薄膜形成装置の微粒子噴出室およびプラズマ処理室と基板およびヒータの位置関係を示す上面図である。
【図6】図6は、薄膜シリコン系太陽電池の構成を模式的に示す断面図である。
【図7】図7は、薄膜形成処理工程を示す工程フロー図である。
【図8】図8は、薄膜形成処理の手順の概略を模式的に示す断面図である。
【図9】図9は、この発明の実施の形態2による薄膜形成装置の構成を模式的に示す断面図である。
【図10】図10は、この発明の実施の形態3による薄膜形成装置の構成を模式的に示す断面図である。
【図11】図11は、薄膜形成装置の微粒子噴出室およびプラズマ処理室と基板およびヒータの位置関係を示す上面図である。
【図12】図12は、この実施の形態2の薄膜形成装置で形成された薄膜シリコン系太陽電池の構造の一例を示す断面図である。
【図13】図13は、この発明の実施の形態4による薄膜形成装置の構成を模式的に示す断面図である。
【図14】図14は、この発明の実施の形態5による薄膜形成装置の構成を模式的に示す断面図である。
【図15】図15は、この発明の実施の形態6による薄膜形成装置の構成を模式的に示す断面図である。
【図16】図16は、この発明の実施の形態7による薄膜形成装置の構成を模式的に示す断面図である。
【図17】図17は、この発明の実施の形態8による薄膜形成装置の構成を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる薄膜形成方法および薄膜形成装置、並びにそれを用いて製造された薄膜半導体装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、これらの実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、以下の実施の形態で用いられる太陽電池の断面図は模式的なものであり、層の厚みと幅との関係や各層の厚みの比率などは現実のものとは異なる。
【0012】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1にかかる薄膜形成装置の構成を模式的に示す断面図であり、図2は、図1の薄膜形成装置の微粒子噴出室およびプラズマ処理室のA−A断面図であり、図3は、薄膜形成装置の微粒子噴出室およびプラズマ処理室と基板との関係を示す断面図であり、図4は、プラズマ処理室内のプラズマ源を電極側から見た概略図であり、図5は、薄膜形成装置の微粒子噴出室およびプラズマ処理室と基板およびヒータの位置関係を示す上面図である。なお、図1において、紙面の左右方向をX軸方向とし、X軸に垂直な紙面内の方向をZ軸とし、X軸とZ軸の両方に垂直な方向(紙面に垂直な方向)をY軸とする。
【0013】
薄膜形成装置1は、図1に示されるように、容器2中に、微粒子を噴出する微粒子噴出室3と、微粒子噴出室3のX軸方向両側に配置され、プラズマを生成して薄膜を形成するプラズマ処理室4a,4bと、処理対象である基板5を保持する基板ホルダ6と、を備える。微粒子噴出室3は、微粒子を含む液体(以下、微粒子含有液体という。また、特許請求の範囲の微粒子含有媒体に対応している。)を噴出する噴出口31を容器2下部側に配置して、その上部が容器2の上部に固定されている。また、プラズマ処理室4a,4bは、プラズマを生成するプラズマ源46a,46bを容器2下部側にして、その上部が容器2の上部に固定されている。さらに、基板ホルダ6は、容器2中の下部付近に設けられ、図示しない移動手段によって、水平面(XY面)内の方向を移動可能に構成されている。この基板ホルダ6の下側の微粒子噴出室3およびプラズマ処理室4a,4bと対向する位置には、基板5を加熱するヒータ7が備えられている。また、容器2は、容器2内のガスを排気するための排気部8a,8bを備えている。
【0014】
この実施の形態1では、微粒子を基板5上に配置する方法として微粒子含有液体を微粒子噴出室3の噴出口31より噴霧する方法を用いる。そのため、微粒子噴出室3には、微粒子含有液体を収納する容器を有し、微粒子含有液体を供給する微粒子供給部34が、微粒子供給配管32を介して接続されている。図2に示されるように、微粒子噴出室3のXY面内の断面形状は、Y軸方向に長い長方形状を有している。微粒子噴出室3では、噴出口31から均一に微粒子含有液体を噴出することができるように複数の微粒子供給配管32が1つの直線上にほぼ等間隔に配置されている。なお、この微粒子供給配管32の配置方法は、噴出口31から均一に微粒子含有液体を噴出することができるものであれば、どのような配置方法であってもよい。たとえば、複数本のそれぞれの直線上に微粒子供給配管32を配置してもよいし、また、スリット状の噴出口31となるように微粒子供給配管32もスリットに合わせた断面形状としてもよい。さらに、微粒子噴出室3のXY面内の断面形状は、この例ではY軸方向に伸びた長方形状であったが、楕円形状であってもよい。さらに、微粒子を液体中に含ませるため、粉として扱う場合に比べて、配管の目詰まりの可能性がなく、安定して微粒子を供給することができる。このような微粒子噴出室3の形状によって、基板上の幅広い領域に微粒子の噴出を行うことができる。
【0015】
また、微粒子噴出室3には、微粒子含有液体を噴出口31よりミスト37として噴霧するためのコントローラ35が接続されている。コントローラ35は、噴出口31付近に設けられている図示しないピエゾ素子を駆動することにより、微粒子噴出室3内に設けられた、微粒子含有液体が蓄えられている小さい容器から微粒子含有液体をミスト37として基板5上に噴霧させる。
【0016】
この実施の形態1では、プラズマ処理室4a,4bにおいてプラズマを生成する方法として、平行平板電極による放電方式を用いる。プラズマ処理室4a,4bは、ガス供給部47からのプラズマ処理用のガスを供給するガス供給管41a,41bと、ガス供給管41a,41bのガス供給口42a,42bの下部に配置され、プラズマ生成用電源45に接続された電極43a,43bと、これらの電極43a,43bに対向する接地電極44a,44bと、図示しない冷却装置と、を備える。ここで、ガス供給管41a,41bのガス供給口42a,42b付近の電極43a,43bと接地電極44a,44bを含む部分をプラズマ源46a,46bというものとする。なお、ここでは、プラズマ生成方法として平行平板電極による放電(高周波放電またはDCグロー放電)を用いる場合を例に挙げているが、マイクロ波や誘導結合プラズマなどの他の放電方式を用いてもよい。
【0017】
図2に示されるように、プラズマ処理室4a,4bにおいても、微粒子噴出室3の場合と同様に、そのXY面内の断面形状は、Y軸方向に長い長方形状を有しており、複数のガス供給管41a,41bが1つの直線上にほぼ等間隔に配置されている。このような構造によって、電極43(43a,43b)と接地電極44(44a,44b)間に一様なガス圧力とガス流れを生じさせ、基板5上の幅広い領域にプラズマ処理をすることができる。また、大気圧または圧力の高い状態(減圧状態)での放電のため、図4に示されるように、ガス供給管41a,41bのガス供給口42a,42bに設置されている電極43a,43bと接地電極44a,44b間の距離は狭くなっている。
【0018】
ガス供給部47から供給された原料ガスは複数のガス供給管41a,41bを通り、細長い形状の電極43a,43bと接地電極44a,44bとの間に流れ込む。このときプラズマ生成用電源45を用いて電極43a,43bに電圧を印加することにより、電極43a,43bと接地電極44a,44bとの間で細長い形状のプラズマ48a,48bが生成される。大気圧プラズマまたは圧力の高い状態でのプラズマ48a,48bでは、プラズマ48a,48bが照射される電極43a,43bや接地電極44a,44bなどの領域での入熱が大きいため、プラズマ源46a,46bはたとえば水やフッ素系不活性液体などを循環させる図示しない冷却装置によって冷却される。また、基板5へのプラズマ照射量は電極43a,43bと接地電極44a,44bの間隔、ガス圧力、ガス流量などによって決めることができるが、電極43a,43bや接地電極44a,44bへの入射量に比べて少ない。
【0019】
図1と図3に示されるように、これらの微粒子噴出室3およびプラズマ処理室4a,4bの周囲は隔壁10で覆われており、排気部8aは、容器2内のこの隔壁10で覆われた空間のガスを排気するように、この空間に接続して配置されている。微粒子噴出室3とプラズマ処理室4a,4bを囲む隔壁10は、基板5と接触しないように、基板5とのZ軸方向の間隔が数mm以内となるように配置されている。
【0020】
微粒子噴出室3は、噴出口31から基板5に噴出され、蒸発した気体の液化防止のため、その器壁は隔壁10とともにヒータや暖かい溶媒によって所定の温度に温められている。また、多量のミスト37を噴出し基板5表面で飛散が生じてしまった場合や微粒子噴出室3内にて蒸発気体の液化が生じてしまった場合に、液体が基板5表面に落下することを防止するために基板5側に位置する隔壁10の微粒子噴出室3側の内面には溝が設けられている。なお、基板5の移動速度によって一部の気体は隔壁10と基板5の隙間からプラズマ処理室4側に侵入することもあるが、後述するプラズマ処理室4内部でのガスの流れにより排気される。
【0021】
プラズマ処理室4a,4bにおけるプラズマ源46a,46bの下部と基板5とのZ軸方向の距離は、基板5と隔壁10との間の距離よりも大きくなるように形成されている。このようにすることで、隔壁10と基板5の間隔よりもプラズマ源46a,46bと隔壁10の間隔の方が大きくコンダクタンスが小さいため、プラズマ生成処理時にプラズマ化されなかった原料ガスや上記の微粒子噴出室3から流れ込んできたガスは、プラズマ源46a,46bと隔壁10の間を通って排気部8aへと流れ、排気される。
【0022】
また、プラズマ処理室4を囲む隔壁10の先端部12は逆テーパ状となっている。すなわち、隔壁10の先端部12において、下部に行くほど隔壁10の厚さが厚くなる構造となっている。このような逆テーパ状の構造とすることによって、排気部8aを通して原料ガスを収集することを容易にしている。また、基板5が移動する際に原料ガスの一部が領域外に漏れる可能性があるが、先端部12を逆テーパ状にした隔壁10によって領域外へ漏れるガスの量を少なくすることができる。さらに、安全のため、基板5と隔壁10の隙間から容器2内の他の空間に漏れ出した原料ガスは排気部8bよって排気される。なお、ここでは、排気部8a,8bは、別々の排気部として構成されているが、共通の排気部として構成してもよい。また、隔壁10の先端部12は、ここでは逆テーパ形状としたが、曲率を持ったU字形状としてもよい。
【0023】
ヒータ7は、図5に示されるように、破線で囲った部分に位置し、微粒子噴出室3の噴出口31からのミスト37が基板5上に噴出される面積と、プラズマ処理室4a,4bによってプラズマ48a,48bが基板5上に照射される面積とを合わせた面積よりも広い領域を加熱する。このヒータ7としてたとえばランプのような非接触で基板を加熱するものや、セラミックヒータなどのように基板5に接触させて加熱するものなどを用いることができる。なお、ヒータ7は基板5の全面を加熱するように構成してもよい。また、接触させて加熱する場合には、基板ホルダ6とヒータ7とが一体となって移動できるように構成し、基板ホルダが移動する際には、微粒子噴出室3の噴出口31からのミスト37が基板5上に噴出される面積と、プラズマ処理室4a,4bによってプラズマ48a,48bが基板5上に照射される面積とを合わせた面積よりも広い領域を加熱するよう構成する。
【0024】
基板ホルダ6は、XY面内で基板5を移動させる。薄膜を形成中には、上述したようにX軸方向に微粒子噴出室3とプラズマ処理室4a,4bが並んで配置されているが、Y軸方向の位置を固定して、X軸方向に移動させることで、基板5上の所定の領域に微粒子を含む薄膜を形成することが可能となる。具体的には、図5に示される状態で、基板ホルダ6によって基板5が左方向(X軸負方向)に移動すると、プラズマ処理室4aにおいて基板5上にシリコン膜が形成され、その後、微粒子噴出室3において微粒子を含むミスト37がプラズマ処理室4aで形成されたシリコン膜上に噴出されて微粒子層が形成され、続いてプラズマ処理室4bにおいて微粒子層上にシリコン膜が形成される。
【0025】
つぎに、このような構成の薄膜形成装置1を用いた薄膜の形成方法について説明する。ここでは、薄膜シリコン系太陽電池の光電変換層を形成する場合を例に挙げて説明する。図6は、薄膜シリコン系太陽電池の構成を模式的に示す断面図である。この薄膜シリコン系太陽電池は、入射した太陽光を有効活用するために表面にテクスチャ構造が設けられたガラスなどの透光性の基板5上に、透明導電性材料からなる第1の電極51と、p型シリコン薄膜52と、一様にシリコン微粒子54が含まれるi型シリコン薄膜53と、n型シリコン薄膜55と、裏面透明道電膜57と入射した光を反射させる金属膜58からなる第2の電極56と、が順に形成された構成を有する。
【0026】
なお、基板5にアルカリガラスを使用する場合にはこの基板5と第1の電極51との間にナトリウムなどのアルカリ金属の拡散を防止する金属拡散防止膜を形成することがある。また、入射した太陽光を有効に活用するために基板5と第1の電極51との間に反射防止膜を形成することもある。なお、この図6では説明の簡略化のため、金属拡散防止膜や反射防止膜を省略している。
【0027】
以下では、このような構造の薄膜シリコン系太陽電池のi型シリコン薄膜53を上記の薄膜形成装置1を用いて形成する場合を例に挙げて説明する。図7は、薄膜形成処理の工程を示す工程フロー図である。また、図8は、実施の形態1に合わせ図7に示した薄膜形成処理の手順の概略を模式的に示す断面図である。
【0028】
図7の薄膜形成処理の工程では、ステップS1で基板上にプラズマを用いて薄膜を形成する。つぎに、ステップS2で薄膜が形成された基板上に微粒子を配置する。最後に、ステップS3で微粒子が配置された基板の上からプラズマを用いて薄膜を形成する。この工程により微粒子を含む薄膜が形成される。ステップS3の後、ステップS1に戻り、ステップS2、ステップS3をさらに繰り返すことで微粒子を複数の層に含む所望の膜厚の薄膜を得ることができる。なお、図7の工程フロー図ではステップS1を薄膜形成工程としたが、基板表面を活性化させるためのプラズマ処理としてもよい。あるいは、ステップS1を薄膜形成のためのプラズマ処理と基板表面を活性化させるためのプラズマ処理を切り替えるようにしてもよい。
【0029】
実施の形態1では、図8に示すように、まず、基板ホルダ6に図示しない第1の電極51とp型シリコン薄膜52を形成した基板5を載置した後、容器2内の圧力をガス供給部47および排気部8a,8bによって大気圧または大気圧よりやや低い圧力状態(減圧状態)にする。また、ここでは、図5に示される位置に基板5が配置され、X軸負方向に基板ホルダ6によって基板5が移動していくものとし、以下では、基板5上の特定の領域Rにおける薄膜の形成状態について説明する。最初の状態では、領域Rはプラズマ処理室4aと対向した状態にある。また、基板5は、ヒータ7によって所定の温度に加熱されているものとする。
【0030】
プラズマ処理室4aでは、シリコン薄膜を形成するが、ここではプラズマ処理室4aに供給される原料ガスとしてシラン(SiH4)またはシランと水素(H2)の混合ガスを用いる。これらのガス容器を含むガス供給部47からプラズマ処理室4a,4bへと原料ガスが供給される。原料ガスはガス供給管41a,41bからプラズマ処理室4a,4b内の電極43a,43bと接地電極44a,44bとの間に流れ込み、電極43a,43bにプラズマ生成用電源45から電圧を印加することによって電極43a,43bと接地電極44a,44bとの間にプラズマ48aが生成される。基板5へのプラズマ照射量は電極43a,43bと接地電極44a,44bとの間の間隔、ガス圧力、ガス流量などによって決めることができる。
【0031】
図7に示した工程および図8を参照しながら、微粒子54を含む薄膜53の形成方法について説明する。生成されたプラズマ48aにはシランと水素の解離したイオンと電子、そしてSiHx(x=1〜3)などの前駆体と水素原子が含まれている。容器2内の圧力が高い(ほぼ大気圧に近い)ため、イオンや電子などの荷電粒子は基板5へ到達するまでに、そのほとんどが再結合によって消滅してしまうが、中性粒子であるSiHxなどの前駆体と水素原子はガスの流れによって基板5に到達することができる。これらのSiHxなどの前駆体と水素原子はシリコンを水素で終端しながら、非晶質シリコンなどのシリコン薄膜を基板5の領域R上に形成する(ステップS1)。
【0032】
基板ホルダ6によって基板5がX軸負方向に移動することで、基板5の移動方向に垂直な方向(Y軸方向)の電極43a,43bと接地電極44a,44b(プラズマ源46a,46b)の幅に依存した幅でシリコン薄膜を形成することができる。なお、プラズマ生成中は、壁へのシリコン膜堆積防止のため、プラズマ処理室4a,4b内の器壁と隔壁10は、ヒータまたは温かい溶媒によって所定の温度に温められている。
【0033】
基板ホルダ6によって基板5がX軸負方向に移動すると、シリコン薄膜が形成された領域Rは微粒子噴出室3と対向するようになる。微粒子噴出室3では、微粒子供給部34から微粒子含有液体が供給され、噴出口31から微粒子含有液体が基板5の領域R上にミスト37として噴出される。具体的には、微粒子噴出室3のXY面内の断面は図2で示すように縦長の長方形の形状であり、複数の噴出口31またはスリット状の細長い形状の噴出口から、所定の幅で微粒子含有液体がミスト37として噴出される。噴出可能な液滴の平均の大きさは最小で約2μmであるので、液滴中に微粒子54を均等に含めるために微粒子54の平均粒径を1μm以下とする。また、微粒子54の平均粒径は、1nm(数nm)以上であることが望ましい。微粒子54の平均粒径を数nm以上1μm以下とすることで、数nm〜1nmの波長の光に対応した光学特性を有する太陽電池を形成することができる。さらに、基板5上に配置する微粒子54の数は液体中の微粒子54の濃度、微粒子噴出室3による液滴の大きさおよび液滴の重なりにより調整することができる。ここで、ヒータ7によって基板5は加熱されているため、基板5に到達した液滴中の液体は蒸発するが、液滴中に含まれる微粒子54はほぼ均一に基板5上に配置される(ステップS2)。液体の蒸発気体は図2と図3に示される噴出口31の周囲の空間を伝わって排気部8aによって容器2外に排気される。
【0034】
微粒子54を堆積させた後、基板ホルダ6によって基板5がさらにX軸負方向に移動すると、微粒子54が配置された領域Rがプラズマ処理室4bと対向するようになる。ここでは、プラズマ処理室4aの場合と同様に、微粒子54が配置された領域R上にはシリコン薄膜が形成される(ステップS3)。
【0035】
その後、基板5をY軸方向の位置を固定して、X軸正方向、X軸負方向、・・・とX軸方向の往復動を繰り返すことによって、厚さ(Z軸)方向に微粒子54を含むi型シリコン薄膜53を複数重ねることができる。以上のように、図7に示したステップ1からステップ3を繰り返すことによりシリコン薄膜上に配置された微粒子54の上からさらにシリコン薄膜を形成し、これを所定の厚さとなるまで繰り返すことによって、膜中に微粒子54を含むi型シリコン薄膜53を形成することができる。さらに、図5に示されるように上記の微粒子を含む薄膜形成処理を、異なるY軸方向の位置ごとに行うことで、大面積の基板5上に微粒子54を含むi型シリコン薄膜53を形成することができる。
【0036】
なお、上述した薄膜形成装置1の構成では、微粒子噴出室3の移動方向(X軸方向)の両側にプラズマ処理室4a,4bを備えているため、X軸の双方向(正負両方向)に基板5を移動させながら薄膜形成処理を行うことができる。一方、1つのプラズマ処理室が微粒子噴出室3のいずれか一方にだけ備えられている場合には、X軸方向の一方向のみ(X軸方向の正負いずれか一方向のみ)に移動しているときに薄膜形成処理を行う。
【0037】
このように、図1の薄膜形成装置1を用いて、図6に示されるi型シリコン薄膜53にシリコン微粒子54を含む薄膜シリコン系太陽電池を形成することができる。この太陽電池はi型シリコン薄膜53にシリコン微粒子54を含むため、シリコン微粒子54が無い場合に比べて、長波長領域での分光感度を高くすることができる。つまり、太陽光の波長領域を有効に活用できるので、太陽電池の効率を高くすることができる。
【0038】
また、図6の薄膜シリコン系太陽電池におけるp型シリコン薄膜52やn型シリコン薄膜55は、別の薄膜形成装置で形成してもよいし、上記した薄膜形成装置1で形成してもよい。上記した薄膜形成装置1で形成する場合には、p型シリコン薄膜52は、シラン、水素の混合ガスにジボラン(B26)を添加することによって形成することができ、n型シリコン薄膜55は、シラン、水素の混合ガスにホスフィン(PH3)を添加することによって形成することができる。ただし、コントローラ35によって微粒子噴出室3内の噴出口31を駆動させない状態とする。
【0039】
また、上述した説明では、微粒子噴出室3では、微粒子54を供給するための媒体として液体を用いたが、気体を用いてもよい。さらに、上述した説明では、シリコン薄膜を例に挙げたが、形成する薄膜および微粒子はシリコンに限られるものではなく、誘電体、金属、半導体に対しても適用することができる。
【0040】
この実施の形態1によれば、基板5の移動方向に微粒子54を含む媒体を噴出する微粒子噴出室3と、薄膜を形成するプラズマ処理室4a,4bとを並べて配置させ、プラズマ処理室4a,4bによる薄膜形成と微粒子噴出室3による微粒子の配置を交互に繰り返し行うことによって、所望の位置に、所望の濃度で微粒子を配置した薄膜を形成することができ、所望の特性を持つ薄膜(太陽電池)を安定に製造することができる。
【0041】
また、この実施の形態1によれば、大気圧または大気圧に近い圧力で薄膜を形成するようにしたので、装置構成が簡単となり、メンテナンスも容易であり、高速度で薄膜を形成できるという効果を有するとともに、容器2内を真空にする必要がないので、省エネルギの効果も有する。さらに、微粒子を配置する処理を行う微粒子噴出室3と、薄膜を形成するプラズマ処理室4a,4bとは異なる領域で別々に行われるようにしたので、プラズマ48a,48bを消滅させても、従来のように、薄膜上が微粒子で覆われてしまうということがない。また、この実施の形態1では、溶射による加熱を行わないため、従来のように、下地膜や基板5が変質してしまう虞もない。さらに、上記の薄膜形成装置を用いることによって、膜中に含まれる微粒子を均一に配置した薄膜を有する薄膜半導体装置を製造することができるという効果を有する。また、シリコン微粒子の平均粒径を1μm以下とすることで、1μm以下の波長領域に対応した光学特性を持つ薄膜シリコン系太陽電池を形成することができるという効果を有する。
【0042】
実施の形態2.
図9は、この発明の実施の形態2にかかる薄膜形成装置の構成を模式的に示す断面図である。この薄膜形成装置1は、実施の形態1において、基板ホルダ6を容器2に固定し、微粒子噴出室3とプラズマ処理室4a,4bを容器2に対して可動にした構成を有する。つまり、容器2の上部は、開口部2aと、この開口部2aを覆い、容器2上部と密着して設けられる支持部材15と、支持部材15をXY平面(基板面)方向に移動可能な図示しない移動手段と、を備え、微粒子噴出室3とプラズマ処理室4a,4bとこれらの処理室を容器2中の他の空間と区切る隔壁10とは、その上部が支持部材15に固定されるように構成されている。また、基板ホルダ6とヒータ7とは、基板5を基板ホルダ6に載置させたときに、ヒータ7が基板5を加熱することができるように一体的に構成されている。この例では、ヒータ7は、基板ホルダ6の底部を構成している場合が示されている。このような基板ホルダ6の構造によれば、ヒータ7によって基板5全体を加熱することができ、実施の形態1の図1の薄膜形成装置1に比べて、基板5の温度の制御がしやすくなる。なお、実施の形態1で説明した構成要素と同一の構成要素には、同一の符号を付して、その説明を省略している。
【0043】
この実施の形態2によっても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0044】
実施の形態3.
図10は、この発明の実施の形態3にかかる薄膜形成装置の構成を模式的に示す断面図であり、図11は、薄膜形成装置の微粒子噴出室およびプラズマ処理室と基板およびヒータの位置関係を示す上面図である。この薄膜形成装置1は、実施の形態1において、微粒子供給部34a,34b,34cが複数設けられ、さらに、切替器38と、排出部39と、を備える構成を有する。また、基板ホルダ6には、基板5のほかに、ダミー基板62を保持するダミー基板保持部61が設けられている。なお、実施の形態1の構成と同一の構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略している。
【0045】
それぞれの微粒子供給部34a,34b,34cは、異なる平均粒径を有する微粒子含有液体を格納しており、予め微粒子の粒径分布が調整されている。ここでは、微粒子供給部34a,34b,34cに含まれる微粒子の平均粒径はra,rb,rc(ra<rb<rc)であるものとする。なお、この図では、3つの微粒子供給部34a,34b,34cを備える構成が示されているが、これに限られるものではない。
【0046】
切替器38は、複数の微粒子噴出室3と微粒子供給部34a,34b,34cとの間に設けられ、微粒子を基板5上に配置する際に、所望の粒径の微粒子を含む微粒子含有液体を供給するように微粒子供給部34a,34b,34cを切替える機能を有する。
【0047】
排出部39は、切替器38で微粒子供給部34a,34b,34cを選択する際に、切替器38と微粒子噴出室3の間の微粒子供給配管に残る、切替え前の微粒子含有液体を排出する。
【0048】
基板ホルダ6のダミー基板保持部61は、基板5を載置する領域に隣接して設けられ、ダミー基板62を保持する。上記した排出部39では、微粒子噴出室3の噴出口31付近の微粒子含有液体まで排出することができず、残存している。そのため、切替器38で微粒子供給部34を選択し、排出部39で微粒子含有液体を排出した後、ダミー基板62が微粒子噴出室3の噴出口31に対向するように基板ホルダ6を移動させて、ダミー基板62上に微粒子含有液体を噴出させる。また、ダミー基板62は、定期的な補修作業の際に容器2内から取り出され、ダミー基板62を洗浄することによって微粒子を最終的に装置外に排出することができる。
【0049】
このような構成によれば、切替器38によって基板5上に配置する微粒子の粒径を選択することができる。また、切替の際に、切替前に使用され、微粒子噴出室3に接続された微粒子供給配管および噴出口31に残留していた微粒子含有液体を完全に排出することができる。さらに、容器2は大気圧または減圧状態のため、容易に補修作業を行える利点がある。
【0050】
この薄膜形成装置1を用いた微粒子を有する薄膜の形成方法は、基本的に実施の形態1で説明した手順と同一であるが、微粒子供給部34の切替え処理が入る点が異なるので、以下では、微粒子供給部34の切替え処理を行って薄膜形成を行う手順の概略について説明する。
【0051】
まず、プラズマ処理室4aでシリコン薄膜を形成した後、微粒子供給部34aから粒径raの微粒子を含む微粒子含有液体を用いて微粒子を配置する処理を行い、プラズマ処理室4bでシリコン薄膜を形成する。この粒径raの微粒子を含む層を所定の厚さ形成した後、微粒子供給部34aから微粒子供給部34bに切替器38によって切替え、微粒子供給配管32および噴出口31に残っていた粒径raの微粒子を含む微粒子含有液体を排出する。その後、微粒子供給部34bから粒径rbの微粒子を含む微粒子含有液体を用いて微粒子を配置しながらシリコン薄膜を形成する処理を、粒径rbの微粒子を含むシリコン薄膜が所望の厚さになるまで行い、微粒子供給部34bから微粒子供給部34cに切替器38によって切替え、微粒子供給配管32および噴出口31に残っていた粒径rbの微粒子を含む微粒子含有液体を排出する。その後、微粒子供給部34cから粒径rcの微粒子を含む微粒子含有液体を用いて微粒子を配置しながらシリコン薄膜を形成する処理を、粒径rcの微粒子を含むシリコン薄膜が所望の厚さになるまで行う。このように、異なる粒径の微粒子が含まれる微粒子含有液体を順次切替えて微粒子を含むシリコン薄膜を形成することができる。
【0052】
図12は、この実施の形態3の薄膜形成装置で形成された薄膜シリコン系太陽電池の構造の一例を示す断面図である。上記した方法によって、この図12に示される薄膜シリコン系太陽電池を形成することができる。つまり、この薄膜シリコン系太陽電池は、実施の形態1の図8において、i型シリコン薄膜53が、基板5側から順に小さい粒径raの微粒子54aを含む層53a、粒径rbの微粒子54bを含む層53b、そして、最も大きい粒径rcの微粒子54cを含む層53cを含む構成となっている。
【0053】
このように粒径の異なる微粒子54a〜54cを配置したi型シリコン薄膜53においては、微粒子の平均粒径が大きくなるに従って、シリコン膜のバンドギャップは大きくなる。すなわち、微粒子の平均粒径が大きくなるに従って、太陽光の長波長領域での分光感度が高くなる。その結果、i型シリコン薄膜53に含まれるシリコン微粒子54a〜54cの粒径を太陽光の入射面側より順次大きくすることによって、太陽光の広い波長領域を活用できる光電変換層を持つ太陽電池、つまり効率の高い太陽電池を得ることができる。
【0054】
この実施の形態3によれば、実施の形態1の効果に加えて、微粒子を配置した薄膜の形成時において、平均粒径の異なる微粒子を有する薄膜を形成することができるという効果を有する。また、平均粒径の異なる微粒子を有する微粒子含有液体を切替える際に、微粒子供給部34から微粒子噴出室3につながる微粒子供給配管と噴出口31に含まれる切替え前の微粒子含有液体を完全に除去してから、異なる粒径の微粒子含有液体を基板5上に噴出させるようにしたので、各粒径の微粒子を含む薄膜層の厚さを精確に制御することができるという効果も有する。
【0055】
また、薄膜シリコン系太陽電池のi型シリコン薄膜53において、太陽光の入射面側から薄膜に含まれる微粒子54a〜54cの粒径を順次大きくすることによって、太陽光の広い波長領域を活用できる光電変換層を形成することができ、効率の高い太陽電池を得ることができるという効果を有する。また、平均粒径の異なる微粒子54a〜54cの平均粒径を膜の厚さごとに変えることができるという効果も有する。さらに、上記の薄膜形成装置1を用いることによって、薄膜の厚さ方向において膜中に含まれる微粒子の平均粒径を変えて配置した薄膜を有する薄膜装置を製造することができるという効果を有する。特に、粒径の異なる微粒子をシリコン薄膜中に配置することで、太陽電池として使用できる太陽光中の波長域が広がり、変換効率が高まり、エネルギを有効利用することができる。
【0056】
実施の形態4.
図13は、この発明の実施の形態4にかかる薄膜形成装置の構成を模式的に示す断面図である。この薄膜形成装置1は、実施の形態1において、複数の微粒子噴出室3a,3bを設け、各微粒子噴出室3a,3bに対して、微粒子供給部34a,34bとコントローラ35a,35bが設けられた構成を有する。なお、ここでは、微粒子噴出室3a,3bと微粒子供給部34a,34bとコントローラ35a,35bがそれぞれ2つ設けられ、代わりにプラズマ処理室4が1つとなっている。また、この例では、微粒子噴出室3a,3bと微粒子供給部34a,34bとコントローラ35a,35bが2つの場合を示しているが、これに限られるものではない。さらに、上述した実施の形態と同一の構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略している。
【0057】
実施の形態3で述べたように、微粒子供給部34a,34bに平均粒径の異なる微粒子含有液体を入れ、微粒子供給部34a,34bに接続される微粒子噴出室3a,3bは、それぞれコントローラ35a,35bで噴出口31a,31bを駆動または休止させることによって、基板5に配置する微粒子の平均粒径を変えることができる。
【0058】
この薄膜形成装置1を用いた薄膜太陽電池の製造方法も、上述した実施の形態で説明したものと基本的に同様であるので、その説明を省略する。そして、このような薄膜形成装置1を用いて、図12に示される薄膜シリコン系太陽電池を製造することができる。
【0059】
また、微粒子噴出室3aで微粒子供給部34aを用いて微粒子を配置した直後に連続して微粒子噴出室3bで微粒子供給部34bを用いて微粒子を配置することで、膜中に複数の異なる平均粒径の微粒子を含む薄膜を形成することもできる。
【0060】
この実施の形態4によっても、実施の形態3の効果に加えて、1つの薄膜層中に、複数の異なる粒径の微粒子を同時に含む薄膜を形成することができるという効果を有する。
【0061】
なお、この実施の形態4では、複数の微粒子供給部34a,34bに対してそれぞれ微粒子噴出室3a,3bを設けたが、一つの微粒子噴出室3a,3b内にそれぞれの微粒子供給部34a,34bが接続された複数の噴出口31a,31bを設けることによって同様な効果が得られる。
【0062】
また、実施の形態4では、微粒子の材料は同じとして、その平均粒径を変えて薄膜を形成したが、複数の微粒子供給部34の液体に材料の異なる微粒子をそれぞれ入れることによって、膜中に含まれる微粒子の材料を変えて薄膜を形成することができる。
【0063】
実施の形態5.
上述した薄膜形成装置において、基板の移動方向に対して配置されるプラズマ処理室と微粒子噴出室は複数であってもよい。図14は、この発明の実施の形態5にかかる薄膜形成装置の構成を模式的に示す断面図である。この薄膜形成装置1は、実施の形態1において、X軸方向に1つの微粒子噴出室3と2つのプラズマ処理室4a,4bが順に配置された構成を有している。ここで、プラズマ源46aでは水素プラズマ48aを生成し、プラズマ源46bではシリコン薄膜を形成するためのプラズマ48bを生成する。このような構成にすることによって、微粒子噴出室3によって基板5上に配置したシリコン微粒子の表面に付着した、液体中に含まれ蒸発しきれなかった不純物をまずプラズマ処理室4aで水素プラズマによって除去し、さらに、プラズマ処理室4bでのプラズマ処理によって、シリコン微粒子表面および基板5表面を水素で終端させながらシリコン膜を形成することで、最終的に形成される微粒子を含むシリコン薄膜の膜質を改善することができる。また、プラズマ処理とプラズマ処理の間の時間は基板5の移動時間しか含まないため、その場で連続して処理することができ、時間による膜質劣化が小さい利点がある。
【0064】
なお、この実施の形態5では、一方のプラズマ処理室4aで水素プラズマ処理を行い、もう一方のプラズマ処理室4bでシリコン薄膜を形成した例を説明したが、これ以外のプラズマ処理を行ってもよい。また、プラズマ処理室4a,4bや微粒子噴出室3は上記の例に限られるものではない。
【0065】
この実施の形態5によれば、複数の微粒子噴出室3の後に複数のプラズマ処理室4a,4bを設けたので、微粒子噴出室3によって基板5上に配置したシリコン微粒子の表面に付着した、液体中に含まれ蒸発しきれなかった不純物をまずプラズマ処理室4aによる水素プラズマによって除去した後、プラズマ処理室4bによるプラズマによってシリコン薄膜を形成することができるという効果を有する。
【0066】
実施の形態6.
この実施の形態6では、上記したプラズマ生成方法以外の方法を用いてプラズマ源を構成する場合を説明する。図15は、この発明の実施の形態6にかかる薄膜形成装置の構成を模式的に示す断面図である。この薄膜形成装置1は、実施の形態1において、プラズマ源46a,46bの電極43a,43bが、誘電体71a,71bで覆われた構造を有し、基板5が電極43a,43bの対向電極である接地電極の役割を果たす構造となっている。なお、上述した構成と同一の構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略している。
【0067】
このような構造のプラズマ源46a,46bは、基板5が導体である場合、または基板5の表面に導体膜が形成されている場合に有効である。このような場合に、基板ホルダ6を介して基板5の表面をグランドに接続し、基板5と電極43a,43bとの間でプラズマ48a,48bを生成させて、プラズマ処理を行うことが可能となる。そして、基板5(基板ホルダ6)をグランドにしているため、プラズマ48a,48b中の荷電粒子の基板5への入射量が多くなる。これに対して、実施の形態1で示したプラズマ源46a,46bでは、電極面が基板面に対して垂直となるように配置して、電極43a,43bと接地電極44a,44bを対向させるようにしていたので、生成されたプラズマ48a,48bのうち基板5に到達する荷電粒子の量は少なかった。つまり、この実施の形態6のプラズマ源46a,46bの構成によって、基板5へ入射する荷電粒子の量を多くすることができる。
【0068】
この実施の形態6によれば、プラズマ処理室4a,4bにおけるプラズマ源46a,46bにおいて、基板5へ入射する荷電粒子の量を実施の形態1の構造のプラズマ源に比して多くすることができるので、膜堆積機構においてイオンによる促進効果が高い反応を用いる膜堆積では、堆積速度を速くすることができるという効果を有する。
【0069】
実施の形態7.
図16は、この発明の実施の形態7にかかる薄膜形成装置の構成を模式的に示す断面図である。この薄膜形成装置1は、実施の形態1において、フィルム状基板5aにも薄膜を形成可能な構成としている。つまり、容器2を挟んだX軸上の両側にフィルム状基板5aを供給したり巻き取ったりするローラ9a,9bを設け、ローラ9a,9b間の対応する容器2にフィルム状基板5aを通すための開口部72a,72bが設けられた構成を有する。この場合、フィルム状基板5aのX軸方向の移動は、ローラ9a,9bを回転させてフィルム状基板5aを移動させることによって行い、フィルム状基板5aのY軸方向の移動は、左右のローラ9a,9bをY軸方向に同期して移動させる図示しない移動手段によって行う。
【0070】
この実施の形態7によれば、フィルム状基板5aを巻いたローラ9a,9bを容器2の外部に設置し、それを巻くことによってフィルム状基板5aを移動するようにしたので、実施の形態1の場合に比してX軸方向の装置のサイズを小さくすることができるという効果を有する。
【0071】
実施の形態8.
上述した説明では、微粒子を基板に配置する方法として、微粒子含有液体を噴霧する方法を例に挙げて説明したが、微粒子を含む気体(以下、微粒子含有気体という。また、特許請求の範囲における微粒子含有媒体に対応する。)を基板に吹き付ける方法を用いてもよい。
【0072】
図17は、この発明の実施の形態8にかかる薄膜形成装置の構成を模式的に示す断面図である。この薄膜形成装置1は、微粒子供給部34から微粒子噴出室3へと微粒子含有気体を供給する点が実施の形態1と異なっている。つまり、この薄膜形成装置1の微粒子供給部34は、微粒子を、気体を媒体として供給する機能を有し、微粒子供給部34と噴出口31との間には貯気室36を備えている。微粒子を含む気体は微粒子供給部34から貯気室36を通って微粒子噴出室3の噴出口31から基板5上に噴出され、噴出口31はコントローラ35によって開閉される。その際に、ガス配管の圧力が急変し、突発的に大量の微粒子含有気体が噴出することを防ぐために、貯気室36を設けている。この貯気室36でガス流れおよび圧力を一定にすることによって、噴出口31からのガス流れを安定にすることができる。なお、上述した実施の形態と同一の構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略している。
【0073】
また、微粒子噴出室3とプラズマ処理室4a,4bの隔壁10の断面は図3に示す形状のものを使用する。微粒子を含む気体を噴出することによって、条件によっては微粒子噴出室3内に微粒子を含む気体が充満する可能性があり、排気部8aで収集しきれない微粒子が基板5上に落下することを防ぐために、隔壁10の下部に溝11を設けている。
【0074】
なお、この薄膜形成装置1における薄膜形成方法は、上記した説明と同一であるので、その説明を省略する。また、ここでは、実施の形態1の構成に微粒子含有気体を基板5に吹き付ける方法を適用する場合を例に挙げたが、上述してきたその他の実施の形態に対しても同様に微粒子含有気体を基板5に吹き付ける方法を適用することができる。
【0075】
この実施の形態8によれば、実施の形態1と同様に、膜中に微粒子を均一に含む薄膜を形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上のように、この発明にかかる薄膜形成装置は、微粒子を有する薄膜を含む薄膜を形成する場合に有用であり、特に、微粒子を含むi型半導体薄膜を有する薄膜太陽電池の製造に適している。
【符号の説明】
【0077】
1 薄膜形成装置
2 容器
2a 開口部
3,3a,3b 微粒子噴出室
4,4a,4b プラズマ処理室
5 基板
5a フィルム状基板
6 基板ホルダ
7 ヒータ
8a,8b 排気部
9a,9b ローラ
10 隔壁
11 溝
12 先端部
15 支持部材
31,31a,31b 噴出口
32 微粒子供給配管
34,34a,34b,34c 微粒子供給部
35,35a,35b コントローラ
36 貯気室
37 ミスト
38 切替器
39 排出部
41a,41b ガス供給管
42a,42b ガス供給口
43,43a,43b 電極
44,44a,44b 接地電極
45 プラズマ生成用電源
46a,46b プラズマ源
47 ガス供給部
48a,48b プラズマ
51 第1の電極
52 p型シリコン薄膜
53 i型シリコン薄膜
54,54a,54b,54c 微粒子
55 n型シリコン薄膜
56 第2の電極
57 裏面透明道電膜
58 金属膜
61 ダミー基板保持部
62 ダミー基板
71a,71b 誘電体
72a,72b 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマを生成させて原料ガスを分解させることで基板表面上に薄膜を形成する、あるいは、原料ガスにより前記基板表面を処理するプラズマ処理工程と、
微粒子を含む媒体を前記基板表面に噴出することで前記基板表面に微粒子を配置する微粒子配置工程と、
を含み、
前記プラズマ処理工程と前記微粒子配置工程とを同一容器内で行う処理工程を1サイクルとし、前記1サイクルが繰り返し行われることを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項2】
前記1サイクル内で、前記微粒子配置工程を複数含むことを特徴とする請求項1に記載の薄膜形成方法。
【請求項3】
前記1サイクル内で、前記プラズマ処理工程を複数含むことを特徴とする請求項1に記載の薄膜形成方法。
【請求項4】
処理対象である基板を載置して、基板の一部または全体を加熱しながら保持する基板保持手段と、
原料ガスを供給する原料ガス供給手段に接続され、前記原料ガス供給手段からの前記原料ガスを前記基板付近まで導くガス供給管と、前記ガス供給管から吹出されるガスからプラズマを生成するプラズマ生成手段とを有し、前記基板に対してプラズマ処理するプラズマ処理室と、
微粒子を含む微粒子含有媒体を供給する微粒子含有媒体供給手段に接続され、前記微粒子含有媒体供給手段からの前記微粒子含有媒体を前記基板表面に噴出する噴出口を有する微粒子噴出室と、
前記プラズマ処理室からの前記原料ガスと、前記微粒子噴出室からの前記微粒子を含有していた媒体とを収集する収集手段と、
を備え、
前記基板保持手段と前記プラズマ処理室と前記微粒子噴出室とを同一の容器内に配置したことを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項5】
前記プラズマ処理室と前記微粒子噴出室とは隣接して配置されるとともに、前記プラズマ処理室と前記微粒子噴出室は前記容器内の他の空間とを区切る隔壁によって、基板に対向する面に垂直な方向の面を囲まれていることを特徴とする請求項4に記載の薄膜形成装置。
【請求項6】
前記隔壁の厚さは、基板側の先端部において、基板に近いほど厚くなる形状を有することを特徴とする請求項5に記載の薄膜形成装置。
【請求項7】
前記微粒子噴出室を囲む前記隔壁の前記微粒子噴出室側の内面の基板側先端部には、溝が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の薄膜形成装置。
【請求項8】
前記プラズマ処理室の前記基板の対向する面側は、直線状に配列された複数の噴出口またはスリット状の噴出口で構成されることを特徴とする請求項4に記載の薄膜形成装置。
【請求項9】
前記基板保持手段、または前記プラズマ処理室と前記微粒子噴出室のいずれかを、基板面に対して平行な方向に移動させる移動手段をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載の薄膜形成装置。
【請求項10】
前記微粒子噴出室は、複数の微粒子含有媒体供給手段を有し、前記複数の微粒子含有媒体供給手段と前記噴出口との間に、前記噴出口へ供給する微粒子含有液体の切替を行う切替え手段と、を備えることを特徴とする請求項4に記載の薄膜形成装置。
【請求項11】
前記微粒子噴出室と前記切替え手段との間に存在する切替え前の前記微粒子含有媒体を排出する排出手段をさらに備えることを特徴とする請求項10に記載の薄膜形成装置。
【請求項12】
前記基板保持手段は、ダミー基板を保持するダミー基板保持部をさらに有し、
前記切替え手段による前記微粒子噴出室の切替えが行われ、前記排出手段による前記微粒子噴出室と前記切替え手段との間に存在する切替え前の前記微粒子含有媒体の排出の後に、前記噴出口付近に残留している前記切替え前の前記微粒子含有媒体を前記ダミー基板保持部上の前記ダミー基板に排出することを特徴とする請求項11に記載の薄膜形成装置。
【請求項13】
前記微粒子噴出室は、複数設けられ、それぞれの前記微粒子噴出室に対して、前記微粒子含有媒体供給手段が設けられることを特徴とする請求項4に記載の薄膜形成装置。
【請求項14】
前記プラズマ処理室または前記微粒子噴出室は、複数備えられることを特徴とする請求項4に記載の薄膜形成装置。
【請求項15】
前記基板はフィルム状の基板であり、
前記基板ホルダは、前記フィルム状の基板を巻き取って保持することが可能な一対のローラによって構成されることを特徴とする請求項4に記載の薄膜形成装置。
【請求項16】
前記微粒子含有媒体は、前記微粒子を含有する液体であることを特徴とする請求項4に記載の薄膜形成装置。
【請求項17】
前記微粒子含有媒体は、前記微粒子を含有する気体であることを特徴とする請求項4に記載の薄膜形成装置。
【請求項18】
透明な基板上に、透明性導電材料からなる第1の電極と、第1の導電型の半導体からなる第1の半導体膜と、真性半導体からなる第2の半導体膜と、第2の導電型の半導体からなる第3の半導体膜と、第2の電極と、が順に積層された構造を有する薄膜半導体装置において、
前記第2の半導体膜は、均一に配置された所定の平均粒径を有する微粒子を複数含むことを特徴とする薄膜半導体装置。
【請求項19】
前記第2の半導体膜に含まれる前記微粒子は、前記基板側から前記第2の電極に向かうにつれて、平均粒径が大きくなることを特徴とする請求項18に記載の薄膜半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−260281(P2009−260281A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−46917(P2009−46917)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】