説明

衝突軽減制御装置

【課題】この発明は、被害時に被ったエネルギを吸収して損害を抑制し、乗員への被害を軽減し、車両の挙動が不安定とならないようにすることを目的としている。
【解決手段】この発明は、衝突軽減制御装置において、衝突軽減制御手段は、予知装置により側方衝突が予知された時に、予知された衝突が発生する衝突発生側を判別し、自動ブレーキ制御装置を、ブレーキ装置が作動しない程度に遊びをなくす与圧駆動制御し、拘束制御装置がシートベルト装置に設けたモータを駆動して所定の状態までシートベルトを巻取るよう巻取り駆動制御し、サスペンション制御装置は衝突発生側とは車両上で逆側のサスペンション装置を選出した上でそれらの減衰力を衝突発生側と比較して減少させるよう減衰力低減制御し、警報装置を所定の状態で警報動作制御する、第一の段階の統合制御を実施することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は衝突軽減制御装置に係り、特に、車両の衝突を予知して被害を軽減する予防安全技術に関し、車両の走行中に、車両側方からの衝撃が加わる状況下において複数の車載制御装置の統合制御を実施する衝突軽減制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、走行中の衝突を予知して衝撃を緩和し、乗員の保護を図るための衝突軽減制御装置を搭載しているものがある。
【0003】
従来の衝突軽減制御装置には、
(1).運転者による障害物への衝突回避操作を推定し、各車輪のサスペンション装置の特性を変更することで、車両行動不安定化を有効に抑制するもの(特許文献1)。
(2).障害物が側方の近くに来た場合に、アクチュエータが側方衝突を回避するために、ブレーキ装置、ステアリング装置、サスペンション装置を制御し、車両の経路を設定するもの(特許文献2)。
(3).車両の衝突に伴う加速度の大きさ、方向に基づいて、エアバッグ、自動消火装置、電源遮断装置、事故通報装置、プリロードシートベルト,自動ブレーキ、ドアロック解除装置の動作を制御し、二次災害を防止するもの(特許文献3)。
(4).衝突及び衝突形態を予知した際に、エアバッグを膨張させてから、膨張したエアバッグを衝突形態に応じて予め設定された方向に移動させることで、乗員の着座姿勢を適正状態に修正するもの(特許文献4)。
(5).車両の衝突を予測・検知した場合に、ブレーキ装置を作動させて車両を制動するもの(特許文献5)。
(6).車両の衝突が予知された場合に、車高を最下限まで低下させてから、車両姿勢変化を抑制するよう、サスペンション装置の動作を制御するもの(特許文献6)。
、がある。
【0004】
【特許文献1】特開2007−118742号公報
【特許文献2】特表2008−519725号公報
【特許文献3】特開平6−234642号公報
【特許文献4】特開2007−314015号公報
【特許文献5】特開2003−95084号公報
【特許文献6】特開2004−345247号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年は、交通事故死者数は減少しているが、事故件数は増加傾向にある。その中で特に事故件数の多いのが、追突事故と出会い頭事故である。追突事故については、車間距離制御付きクルーズコントロールシステム(ACC)や衝突被害軽減ブレーキシステム(プリクラッシュ)等により被害軽減が可能である。しかし、出会い頭事故による側方からの衝突については、現状被害軽減可能な技術の開発が十分になされていない。
【0006】
この発明は、被害時に被ったエネルギを吸収して損害を抑制すること、乗員への被害を軽減すること、車両の挙動が不安定とならないようにすることなどを目的とする。
特に、この発明は、衝突が起こってしまった場合には、ほぼそのままの走行速度が維持されるといった走行状態の維持によって、2次的な衝突など不測の事態が発生することを絶対なくす、極力なくすことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、車両に対して側方から接近する障害物を検知する予知装置と、車両に対して側方からの衝突発生を検知できる衝突検知装置と、シートベルト装置のシートベルトを巻き取って乗員を拘束可能とする拘束制御装置と、所定の条件が成立した際にブレーキ装置の非作動状態から作動状態までの間で状態を切り替え可能な自動ブレーキ制御装置と、サスペンション装置の減衰力を変更可能なサスペンション制御装置と、警報装置とを備え、前記予知装置が側方からの衝突を予知した場合に前記拘束制御装置を含む複数の制御装置を衝突軽減制御手段により統合して制御する衝突軽減制御装置において、前記衝突軽減制御手段は、前記予知装置により側方衝突が予知された時に、予知された衝突が発生する衝突発生側を判別し、前記自動ブレーキ制御装置を、ブレーキ装置が作動しない程度に遊びをなくす与圧駆動制御し、前記拘束制御装置が前記シートベルト装置に設けたモータを駆動して所定の状態までシートベルトを巻取るよう巻取り駆動制御し、前記サスペンション制御装置は衝突発生側とは車両上で逆側の前記サスペンション装置を選出した上でそれらの減衰力を衝突発生側と比較して減少させるよう減衰力低減制御し、前記警報装置を所定の状態で警報動作制御する、第一の段階の統合制御を実施することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明の衝突軽減制御装置は、乗員における衝突可能性の認知に関わらず、乗員の上体を予めシートに拘束することができ、また、もし衝突が起こった場合に、衝突初期のピークエネルギを車両が大きく吸収することによって、乗員への負担を減らすことができ、さらに、予め車両が姿勢変化を容易とするように備えるので、もし衝突が起こった場合に、車両が姿勢変化によってエネルギを吸収することができ、車体の損傷などを低減できる。
以上のことから、この発明の衝突軽減制御装置は、危険度を下げて、安全性を高めることができる。
また、この発明の衝突軽減制御装置は、この準備動作を完了した段階で、人為的な制動動作が行われれば、遅滞なく制動が行われるため、衝突回避の可能性を高めたり、衝突エネルギを下げたりすることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下図面に基づいて、この発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0010】
図1〜図3は、この発明の実施例を示すものである。図1は衝突軽減制御装置のシステムブロック図、図2は車両における衝突軽減制御装置のシステム構成並びに車両の側方衝突状態を示す図、図3は衝突軽減制御装置の制御フローチャートである。
図1において、1は衝突軽減制御装置である。衝突軽減制御装置1は、図2に示すように、運転者が自ら運転操作する車両(自車両)2に搭載され、この車両2に側方から接近する障害物である他の車両(他車両)3が衝突した際の衝撃を緩和する。
衝突軽減制御装置1は、図1に示すように、予知装置4と、衝突検知装置5と、拘束制御装置6と、自動ブレーキ制御装置7と、サスペンション制御装置8と、警報装置9と、車速検知装置10と、衝突軽減制御手段11とを備えている。
【0011】
前記予知装置4は、車両2に対して側方から接近する障害物である他の車両3を検知する左右のサイドカメラ12・13と、サイドカメラ12・13の映像を画像処理して車両2の左右どちらの側方に衝突(側突)するかを予測し、側突予測信号を出力する画像処理ユニット14とからなる。サイドカメラ12・13は、図2に示すように、車両2の左右のサイドミラー15・16にそれぞれ内蔵されている。画像処理ユニット14は、サイドカメラ12・13が撮影した映像による他の車両3のフロントビュー(前面画像)の検知を、ソフトウエアによって検出速度を上げる。画像処理ユニット14は、車両3のフロントビューの検出速度を、フロントガラスや灯火類など、位置が法規で決まっているもののレイアウトによって抽出を速め、その変化(クローズアップ有無)によって判断する。
なお、サイドカメラ12・13は、車両2のフロントバンパ17又はグリル18に設けるプリズムタイプでも良い。また、予知装置4は、側方用レーダで代替することが可能である。側方用レーダの場合は、相対拒理、相対速度から、側方衝突(側突)を予測する。
【0012】
前記衝突検知装置5は、車両2に対して側方からの他の車両3の衝突発生を検知できるエアバッグ制御装置19からなる。エアバッグ制御装置19は、車両2に対して側方からの他の車両3の衝突発生を検知する左右の加速度センサ(Gセンサ)20・21を備え、加速度センサ20・21により左・右側方の衝突発生を検知するとエアバッグの展開信号(側突信号)を出力し、この展開信号により左右のサイドエアバッグ22・23を衝突発生側を展開させる。
ここで、エアバッグ制御装置について説明する。エアバッグ制御装置は、車両衝突時に、正面からの衝撃が規定値を超えると、SRS(Supplemental Restraint System)エアバッグを展開作動し、側面は衝撃を受けた右側又は左側のSRSサイドエアバッグ及びSRSカーテンエアバッグを同時に展開作動する。エアバッグ装置は、システム作動エネルギの貯蔵、衝突の検出、エアバッグの展開作動、セルフダイアグノーシスの機能を備えている。なお、エアバッグ制御装置は、運転席/助手席インフレータの制御を行うものと、運転席/助手席インフレータの制御に加え、運転席/助手席サイドインフレータ、左右カーテンインフレータの制御を行うものとがある。
前記SRSエアバッグは、前席乗員の頭部、胸部とステアリングホイール、インストルメントパネルとの衝突を緩和する。前記SRSサイドエアバッグは、運転席及び助手席に装備し、前席乗員の胸部及び腹部を保護する。なお、インフレータモジュールは、シートバックフレーム(ドア側)に装備している。前記SRSカーテンエアバッグのインフレータモジュールは、インフレータをルーフサイドインナパネルに、エアバッグを左右のルーフサイド部(フロントピラーから車体後部のクォータパネル)に装着し、エアバッグ展開時は前席及び後席乗員の頭部を保護する。また、側方の衝撃を検出するサイドエアバッグセンサ(加速度センサ)は、センタピラー下部に左右1個ずつ取り付けられている。
SRSサイドエアバッグ及びSRSカーテンエアバッグは、車両の衝撃を受けた側のインフレータモジュールのみを展開動作させる。シートベルトを着用していない場合にも、SRSサイドエアバッグ及びSRSカーテンエアバッグは展開動作する。助手席に乗員がいない場合でも、助手席SRSサイドエアバッグ及びSRSカーテンエアバッグは展開動作する。
SRSサイドエアバッグ及びSRSカーテンエアバッグの作動・非作動の条件は、以下のようになっている。作動する場合は、約25km/h以上の速度で自車両と同等の他の車両が真横から客室部に衝突したとき、また、それと同等かそれ以上の衝撃を受けたとき、である。作動しない場合は、正面衝突のとき、後ろからの衝突のとき、である。作動しないことがある場合は、客室以外(エンジンルーム、荷室部)に側面から衝突されたとき、斜め側面から衝突されたとき、車高の高い車両に側面から衝突されたとき、バイクに側面から衝突されたとき、電柱・立ち木・縁石等に衝突したとき、横転または転覆したとき、である。
【0013】
前記拘束制御装置6は、図2に示すように、前席左右のシートベルト装置24・25のシートベルト26・27をモータ28・29により巻き取って乗員を拘束可能とする。
ここで、シートベルト装置について説明する。シートベルト装置は、SRSエアバッグとともに作動し、前両席のシートベルトの主に肩ベルトのたるみを瞬時に巻取るリトラクタプリテンションナをセンタピラー内部に備えている。また、リトラクタプリテンションナは、可変フォースリミッタ機構を備えており、設定値以上の荷重がかかると、肩ベルトを2段階に繰り出すことで乗員の胸部の衝撃を緩和する。運転席のシートベルトには、SRSエアバッグとともに作動し、腰ベルトのたるみを引き込む(巻取る)ラップアウタプリテンションナをサイドシルに装備している。ただし、ラップアウタプリテンションナには、フォースリミッタ機構を備えていず、作動時には腰ベルトを引き込むが、腰ベルトは引き込まれた状態でロックされる。これらのシートベルトプリテンショナは、前記エアバッグ制御装置が出力するエアバッグの展開信号によって制御され、SRSエアバッグとともに作動する。
前記ラップアウタプリテンションナは、ガスジェネレータ、ピストン、シリンダ、ワイヤ及びストッパボールで構成されている。ラップアウタプリテンションナは、エアバッグ制御装置から展開信号が入力されると、ガスジェネレータからガスが発生する。この発生ガス圧がピストンにかかることでワイヤを介してウェビングが引き込まれ、腰ベルトを巻取る。ウェビングは、引き込まれた後、腰ベルトから引き戻す方向に荷重を受けるが、ストッパボールがピストン斜面部に食い込むためピストンが戻らず、引き込まれた状態でウェビングがロックされ、腰ベルトの巻出しをロックする。
前記シートベルトの巻取りの作動源としては、ガス圧を利用しているが、モータとの併用や、モータみので代替するものがある。この発明の拘束制御装置6は、シートベルト装置24・25のシートベルト26・27の巻取り作動源としてモータ28・29を用い、モータ28・29によりシートベルト26・27を巻取って乗員を拘束するものである。
【0014】
前記自動ブレーキ制御装置7は、所定の条件が成立した際にブレーキ装置30〜33の非作動状態から作動状態までの間で状態を切り替え可能である。ブレーキ装置30〜33は、前後左右の各車輪に設けられ、ピストンあるいはプランジャを駆動するブレーキ液に与圧することで作動状態として制動動作を得て、奪圧することで非作動状態として制動解除動作を得る。自動ブレーキ制御装置7は、ヒルホールド制御などとは違い、トリガとなる初期油圧が得られない。自動ブレーキ制御装置7は、ブレーキ装置30〜33に作動圧を供給できる圧力供給源となるアクチュエータを動かしたり停止したりすることで、ブレーキ装置30〜33を非作動状態から作動状態までの間で状態を切り替る。
【0015】
前記サスペンション制御装置8は、サスペンション装置34〜37の減衰力を変更可能である。サスペンション装置34〜37は、前後左右の各車輪に設けられ、左前サスペンション装置34、右前サスペンション装置35、左後ろサスペンション装置36、右後ろサスペンション装置37からなり、それぞれ弾反力を発生するスプリングと、減衰力を発生するアブソーバ(ダンパー)とが設けられている。減衰力を発生するアブソーバには、空気圧、油圧、オリフィス径を可変するタイプ等ものがあり、減衰力を可変可能なタイプのものである。流体の粘性を変化させるため、ガスでも液体でも可能である。
【0016】
前記警報装置9は、警報を吹鳴する警報ブザーからなる。警報装置9は、警報ブザーだけでなく、警告灯を併用してもよい。
【0017】
前記車速検知装置10は、車両2の速度を検知して車速信号を出力する車速センサからなる。あるいは、車速検知装置10は、車輪速度を検知する車輪速センサとすることもできる。また、車速信号は、エンジン制御装置や変速制御装置、メータ制御装置などから得ることもできる。
【0018】
前記衝突軽減制御手段11には、前記予知装置4が接続され、また、前記衝突検知装置5と拘束制御装置6と自動ブレーキ制御装置7とサスペンション制御装置8と警報装置9と車速検知装置10とがCAN(Control Area Network)を介して接続されている。衝突軽減制御装置1は、衝突軽減制御手段11により、予知装置4が側方からの衝突を予知した場合に前記拘束制御装置6を含む複数の制御装置7〜9を統合して制御する。
【0019】
この衝突軽減制御装置1は、衝突軽減制御手段11に側突予測信号、側突信号、車速信号を入力し、衝突軽減制御手段11により衝突検知装置5と拘束制御装置6と自動ブレーキ制御装置7とサスペンション制御装置8と警報装置9とに3つの段階に応じて作動信号を出力して制御を行い、車両2の側突被害を軽減する。
前記衝突軽減制御手段11は、予知装置4により側方衝突が予知された時に、予知された衝突が発生する衝突発生側を判別し、自動ブレーキ制御装置7を、ブレーキ装置30〜33が作動しない程度に遊びをなくす与圧駆動制御し、拘束制御装置6がシートベルト装置2・25に設けたモータ28・29を駆動して所定の状態までシートベルト26・27を巻取るよう巻取り駆動制御し、サスペンション制御装置8は衝突発生側とは車両上で逆側のサスペンション装置34〜37を選出した上でそれらの減衰力を衝突発生側と比較して減少させるよう減衰力低減制御し、警報装置9を所定の状態で警報動作制御する、第一の段階の統合制御を実施する。
前記衝突軽減制御手段11は、衝突検知装置5により実際に側方衝突が発生したことが検知された場合に、自動ブレーキ制御装置7を、与圧をさらに高めてブレーキ装置30〜33を自動作動させるよう自動制動制御し、その後車両2の停止後に、その自動作動したブレーキ装置30〜33を非作動状態となるまで減圧動作して自動制動解除動作する、第二の段階の統合制御を実施する。
前記衝突軽減制御手段11は、予知装置4により側方衝突が予知されてから衝突検知装置5により衝突の発生が検知されずかつ設定時間tが経過した場合に、自動ブレーキ制御装置7を、ブレーキ装置30〜33が作動しない程度に与圧駆動された状態を解除して初期状態に復帰するブレーキ復帰駆動制御し、拘束制御装置6がシートベルト装置24・25に設けたモータ38・39を駆動して所定の状態までシートベルト26・27の巻取り状態を解除して初期状態に復帰するベルト復帰駆動制御し、サスペンション制御装置8は選出したサスペンション装置34〜37の減衰力を減少させた減衰力低減制御から初期の減衰力に復帰するように減衰力復帰制御を行う、第三の段階の統合制御を実施する。
前記衝突軽減制御手段11は、前記第一の段階から第三の段階のいずれの段階の統合制御も、車両2が低速走行中となる設定車速x以下である場合にのみ実施する。
【0020】
次に作用を説明する。
この衝突軽減制御装置1は、側突予測信号、側突信号、車速信号を入力し、車載の制御装置6〜9を段階に応じて制御し、車両2の側突被害を軽減するものである。なお、この実施例においては、図2に示すように、車両2の左側方から他の車両3が接近するものとして説明する。
図3に示すように、衝突軽減制御装置1は、制御のプログラムがスタートすると(101)、車両2の速度が設定車速x以下であるかを判断する(102)。
この判断(102)がNOの場合は、プログラムをエンドにする(109)。車両2が低速走行状態で、この判断(102)がYESの場合は、予知装置4から側突予測信号が入力したか(側方衝突の危険があるか)を判断する(103)。この判断(103)においては、予知装置4によって、予知された衝突が発生する衝突発生側も判別する。予知装置4は、左右のサイドカメラ12・13から画像処理ユニット14に映像を入力し、画像処理ユニット14により映像を画像処理して他の車両3が車両2のどちらの側方に衝突するかを予測し、側突予測信号を出力する。衝突軽減制御手段11は、予知装置4の画像処理ユニット14が出力する側突予測信号により、衝突発生側を判断する。あるいは、衝突軽減制御手段11は、衝突発生側を判断可能な信号をCANにより通信して取得することもできる。
前記判断(103)がNOの場合は、プログラムをエンドにする(109)。前記判断(103)がYESの場合は、自動ブレーキ制御装置7を与圧駆動制御してブレーキ装置30〜33が作動しない程度(実利がない程度)に遊びをなくし、拘束制御装置6を巻取り駆動制御してシートベルト装置24・25のモータ28・29で所定の状態(遊び(余剰分)を無くし、ゼロないしテンションを与える)までシートベルト26・27を巻取り、サスペンション制御装置8を減衰力低減制御して衝突発生側とは車両上で逆側のサスペンション装置34〜37(図2においては、右前サスペンション装置35、右後ろサスペンション装置37)を選出した上でそれらの減衰力を衝突発生側と比較して減少(柔らかく)し、警報装置9を警報作動させて警報ブザーを吹鳴(一時的)する(104)、第一の段階の統合制御を実施する。
その後、衝突検知装置5を構成するエアバッグ制御装置19からエアバッグの展開信号が入力したか(側方衝突されたか)を判断する(105)。この判断(105)がYESの場合は、自動ブレーキ制御装置7を自動制動制御して与圧をさらに高めてブレーキ装置30〜33を自動作動(自動制動を実施)させ(106)、車速信号により車両2が停止したかを判断する(107)。この判断(107)がNOの場合は、ブレーキ装置30〜33の自動作動(106)に戻る。この判断(107)がYESの場合は、自動ブレーキ制御装置7を自動制動解除制御して自動作動したブレーキ装置30〜33を非作動状態となるまで減圧動作(自動制動を解除)する(108)、第二の段階の統合制御を実施し、プログラムをエンドにする(109)。
なお、前記判断(107)においては、車速信号だけで車両2の停止を判断したが、変速機がパーキングレンジPであることや、パーキングブレーキが作動状態であることの成立を車両2の停止の判断条件に加えることで、より不測の事態が起こる可能性を下げることができる。
前記展開信号が入力したかの判断(105)がNOの場合は、予知装置4から側突予測信号が入力してから、側方衝突されずに設定時間tが経過したかを判断する(110)。この判断(110)がNOの場合は、判断(105)に戻る。この判断(110)がYESの場合は、自動ブレーキ制御装置7をブレーキ復帰駆動制御してブレーキ装置30〜33が作動しない程度に与圧駆動された状態を解除して初期状態に復帰し、拘束制御装置6をベルト復帰駆動制御してシートベルト装置24・25のモータ28・29で所定の状態までシートベルト26・27の巻取り状態を解除して初期状態に復帰し、サスペンション制御装置8を減衰力復帰制御して選出したサスペンション装置34〜37(図2においては、右前サスペンション装置35、右後ろサスペンション装置37)の減衰力を減少させた減衰力低減制御から初期の減衰力に復帰する(111)、第三の段階の統合制御を実施し、プログラムをエンドにする(109)。
【0021】
このように、衝突軽減制御装置1は、車両2への側方衝突が予知された時、ブレーキ装置30〜33を与圧し、シートベルト26・27を巻取り、サスペンション装置34〜37の減衰力を減少し、警報装置9により警報する、第一の段階の統合制御を実施する。
また、衝突軽減制御装置1は、実際に車両2への側突が起きた場合に、ブレーキ装置30〜33の与圧を高めてブレーキ装置30〜33を自動作動させ、その後車両2の停車後に自動作動したブレーキ装置30〜33を自動解除する、第二の段階の統合制御を実施する。
さらに、衝突軽減制御装置1は、側突が予知されてから設定時間t待った後、ブレーキ装置30〜33の与圧を解除(ゼロ点復帰)し、シートベルト26・27の巻取りを解除し、サスペンション装置34〜37の減衰力を復帰する、第三の段階の統合制御を実施する。
衝突軽減制御装置1は、いずれの段階の統合制御も、車両2が設定車速x以下の低速走行中である場合にのみ、統合制御を実施する。
車両2の事故においては、通常出会い頭事故の車速はあまり高くなく、高速で側突された場合はロールが大きくなり、制御を行なうことで車両挙動が乱れる恐れがある。このため、衝突軽減制御装置1は、設定車速x(例えば、40km/h)以下で制御を行なっている。
【0022】
前記自動ブレーキ制御装置7は、各車輪に設けられたブレーキ装置30〜33のピストンあるいはプランジャを駆動するブレーキ液に与圧することで作動状態として制動動作を得て、奪圧することで非作動状態として制動解除動作を得る。この自動的な与奪機能は、乗員のペダル操作に応じて与奪する人為的な与奪機能と並列に設けてある。これらの与圧機能の機械的な構成は、並列に設けてもよいし、人為的な与奪機能の構成の中に自動的な与奪機能を介在させて設けても良い。
第一の段階における自動ブレーキ制御装置7の与圧によって、ブレーキ装置30〜33は、実質的な制動力を発揮しない程度の制動状態下となるので、この状態で、人為的な制動動作が行われれば、直ちに制動力を発揮することが可能となり、そのタイミングの違いにより感覚的には強い制動が得られ、また、自動的な制動動作であっても、直ちに制動することが可能となる。
乗員の頑強な急ブレーキ操作は、ABS(Antilock Brake System)等の機能が作用すれば、瞬時に抑制される。また、ESP(Electronic Stability Program)等のスタビリティコントロール制御は、協調させたモードを設定することが好ましいが、そのようなモードの設定が困難な場合は、制御を禁止した方がよい。
【0023】
前記拘束制御装置6は、シートベルト装置24・25のシートベルト26・27をモータ28・29により巻き取って乗員を拘束する。これにより、乗員は、シートベルト装置24・25のシートベルト26・27によって、シートにしっかり拘束するように締め付けられるので、大きな上体の揺れ動きは最小限に抑えられて、側方からの衝突発生に備えることになる。シートベルト26・27は、腰部だけでなく、上半身をしっかり拘束することによって、乗員の姿勢が大きく変化することを抑制できる。
このため、シートベルト装置24・25は、乗員が衝突エネルギの大きさに依存した動きを余儀なくされても、それらを最小限に抑えることができ、被害を抑制することができる。車両2に備えられた、衝撃緩和機能付き内装や、SRSサイドエアバッグやSRSカーテンエアバッグがある場合には、それらの動作によって、さらに被害を被る可能性を低減することができる。
【0024】
サスペンション装置34〜37には、弾反力を発生するスプリングと、減衰力を発生するアブソーバ(ダンパー)とが設けられている。サスペンション装置34〜37は、減衰力を低減させると、低減させていない状態と比べて、同じ初期入力に対して、初回ストロークの減衰量が減るため、弾発力を生むスプリングのたわみ量(縮み量)がやや大きくなる傾向となる。その後、サスペンション装置34〜37は、原点復帰しようとして収縮伸張を繰り返す振動的なスプリングのストロークのいずれの方向に対しても減衰力が小さくなるので、振動周期は若干短くなり、収束するまでの時間は長くなる。
基本的に車両がロールした状態では、ロールした側に重心が移り、ロールした側の車輪への分担荷重が増大するため、ロールした側の車輪の駆動力が増大する傾向がある。そのため、先の状態では、横から外力が加わったことによって、通常の車両と比べて左右のバランスが異なっている状態であるので、他の外部環境条件が重なることで、不測の挙動を起こす可能性も推測される。
しかし、これは、ばね上となる車体のみに入力があった場合には顕著になると考えられるものの、前後車輪間の距離や車両が衝突中も移動していることを勘案すれば、ばね下となる車輪や車軸にも同時に荷重を加える場合の方が遥かに多い。車輪に横方向の大きな荷重が加われば、タイヤはスライドを起こし易く、車輪と路面との間のスリップアングルは容易に増大する。つまり、車両の走行する軌道に変化が加えられることになる。よって、サスペンションのストロークにおける僅かな差は比較的影響が少ないといえる。
そして、衝突軽減制御装置1は、車両2の車速が低い場合(設定車速x)にのみ選択的に制御を実施することによって、より外部環境の影響を受け難い状態として、不測の事態に陥る可能性を低減している。
【0025】
衝突軽減制御装置1により制御が実施される設定車速xは、この衝突軽減制御装置1による制御を適用する車両2の上限速度を規制することにより、車両2の速度域(低速域)を範囲設定する。ここでは、設定車速xの一例として40km/hとしたのは、変速機の変速比がトップギヤ(オーバードライブ)で走行維持が困難な程度の速度である低速ということである。変速段はそれまでの走行状態に依存している場合が多く、速度と一対一に対応しているわけではないので、また、変速比を無段階に変更できる無段変速機でもほぼ同様のことがいえる。
衝突軽減制御装置1による制御を解除するまでの設定時間tは、設定車速xによって範囲設定された車両の速度域(低速域)と、側突みこみの予知をする予知装置4の検知可能範囲を考慮して決めればよい。すなわち、衝突軽減制御装置1による制御を適用可能とする上限速度が低い場合は、要注意エリアを通過する時間が長くなるので、設定時間tを長くする。予知装置4の検知範囲が広くなれば、特定の対象の検知を始めてから終わるまで継続する時間が長くなるので、設定時間tを長くする。
【0026】
このように、衝突軽減制御装置1は、衝突軽減制御手段11によって、予知装置4により側方衝突が予知された時に、予知された衝突が発生する衝突発生側を判別し、自動ブレーキ制御装置7を、ブレーキ装置30〜33が作動しない程度に遊びをなくす与圧駆動制御し、拘束制御装置6がシートベルト装置24・25に設けたモータ28・29を駆動して所定の状態までシートベルト26・27を巻取るよう巻取り駆動制御し、サスペンション制御装置8は衝突発生側とは車両上で逆側のサスペンション装置34〜37を選出した上でそれらの減衰力を衝突発生側と比較して減少させるよう減衰力低減制御し、警報装置9を所定の状態で警報動作制御する、第一の段階の統合制御を実施する。
これにより、衝突軽減制御装置1は、乗員における衝突可能性の認知に関わらず、乗員の上体を予めシートに拘束することができ、また、もし衝突が起こった場合に、衝突初期のピークエネルギを車両2が大きく吸収することによって、乗員への負担を減らすことができ、さらに、予め車両2が姿勢変化を容易とするように備えるので、もし衝突が起こった場合に、車両2が姿勢変化によってエネルギを吸収することができ、車体の損傷などを低減できる。
以上のことから、衝突軽減制御装置1は、危険度を下げて、安全性を高めることができる。また、衝突軽減制御装置1は、この準備動作を完了した段階で、人為的な制動動作が行われれば、遅滞なく制動が行われるため、衝突回避の可能性を高めたり、衝突エネルギを下げたりすることが可能である。
【0027】
衝突軽減制御装置1は、衝突軽減制御手段11によって、衝突検知装置5により実際に側方衝突が発生したことが検知された場合に、自動ブレーキ制御装置7を、与圧をさらに高めてブレーキ装置30〜33を自動作動させるよう自動制動制御し、その後車両2の停止後に、その自動作動したブレーキ装置30〜33を非作動状態となるまで減圧動作して自動制動解除動作する、第二の段階の統合制御を実施する。
これにより、衝突軽減制御装置1は、漫然と速度を出したままの走行を防ぐことができ、二次的な衝突の発生を防ぐことができる。また、衝突軽減制御装置1は、走行エネルギを制動における熱エネルギに変えて、不安定さに繋がるエネルギを低減することができる。
【0028】
衝突軽減制御装置1は、衝突軽減制御手段11によって、予知装置4により側方衝突が予知されてから衝突検知装置5により衝突の発生が検知されずかつ設定時間tが経過した場合に、自動ブレーキ制御装置7を、ブレーキ装置30〜33が作動しない程度に与圧駆動された状態を解除して初期状態に復帰するブレーキ復帰駆動制御し、拘束制御装置6がシートベルト装置24・25に設けたモータ28・29を駆動して所定の状態までシートベルト26・2の巻取り状態を解除して初期状態に復帰するベルト復帰駆動制御し、サスペンション制御装置8は選出したサスペンション装置34〜37の減衰力を減少させた減衰力低減制御から初期の減衰力に復帰するように減衰力復帰制御を行う、第三の段階の統合制御を実施する。
これにより、衝突軽減制御装置1は、予知(みこみ)に対する準備なので、衝突が回避でき衝突発生の可能性が下がれば、衝突に対する準備を速やかに解除して、通常復帰する。つまり、衝突軽減制御装置1は、より快適な着座状態、より快適な乗り心地に復帰できる。また、衝突軽減制御装置1は、設定した所定時間xが経過するまでは、拘束力が大きく、応答が速い状態に留めておくことができる。
【0029】
衝突軽減制御装置1は、衝突軽減制御手段11によって、前記第一の段階から第三の段階のいずれの段階の統合制御も、車両2が低速走行中となる設定車速x以下である場合にのみ実施する。
これにより、衝突軽減制御装置1は、高速度での走行による大きな走行エネルギ状態での不測の事態を避けることができる。
【0030】
なお、上述実施例においては、予知装置4を左右のサイドカメラ12・13と画像処理ユニット14とにより構成したが、サイドカメラの代わりにプリクラッシュで用いられているレーダセンサを車両2の左右に付けることで同様の効果が期待できる。また、上述実施例においては、車両2への側方衝突が予知された場合に、衝突発生側とは逆側のサスペンション装置34〜37(図2においては、右前サスペンション装置35、右後ろサスペンション装置37)の減衰力を減少したが、車両2の側方の前側または後側に側突された場合に、残りの3輪を支持するサスペンション装置の減衰力を柔らかくして、衝撃を緩和することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0031】
この発明の衝突軽減制御装置は、車両の走行中に、車両側方からの衝撃が加わる状況下において複数の車載制御装置の統合制御を実施することで被害を軽減する予防安全技術であり、拘束制御装置や自動ブレーキ制御装置、サスペンション制御装置などを備えた車両に応用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明の実施例を示す衝突軽減制御装置のシステムブロック図である。
【図2】車両における衝突軽減制御装置のシステム構成並びに車両の側方衝突状態を示す図である。
【図3】衝突軽減制御装置の制御フローチャートである。
【符号の説明】
【0033】
1 衝突軽減制御装置
2 車両(自車両)
3 車両(他車両)
4 予知装置
5 衝突検知装置
6 拘束制御装置
7 自動ブレーキ制御装置
8 サスペンション制御装置
9 警報装置
10 車速検知装置
11 衝突軽減制御手段
12・13 サイドカメラ
14 画像処理ユニット
15・16 サイドミラー
17 フロントバンパ
18 グリル
19 エアバッグ制御装置
20・21 加速度センサ
22・23 サイドエアバッグ
24・25 シートベルト装置
26・27 シートベルト
28・29 モータ
30〜33 ブレーキ装置
34〜37 サスペンション装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に対して側方から接近する障害物を検知する予知装置と、車両に対して側方からの衝突発生を検知できる衝突検知装置と、シートベルト装置のシートベルトを巻き取って乗員を拘束可能とする拘束制御装置と、所定の条件が成立した際にブレーキ装置の非作動状態から作動状態までの間で状態を切り替え可能な自動ブレーキ制御装置と、サスペンション装置の減衰力を変更可能なサスペンション制御装置と、警報装置とを備え、
前記予知装置が側方からの衝突を予知した場合に前記拘束制御装置を含む複数の制御装置を衝突軽減制御手段により統合して制御する衝突軽減制御装置において、
前記衝突軽減制御手段は、前記予知装置により側方衝突が予知された時に、予知された衝突が発生する衝突発生側を判別し、
前記自動ブレーキ制御装置を、ブレーキ装置が作動しない程度に遊びをなくす与圧駆動制御し、
前記拘束制御装置が前記シートベルト装置に設けたモータを駆動して所定の状態までシートベルトを巻取るよう巻取り駆動制御し、
前記サスペンション制御装置は衝突発生側とは車両上で逆側の前記サスペンション装置を選出した上でそれらの減衰力を衝突発生側と比較して減少させるよう減衰力低減制御し、
前記警報装置を所定の状態で警報動作制御する、第一の段階の統合制御を実施することを特徴とする衝突軽減制御装置。
【請求項2】
前記衝突軽減制御手段は、前記衝突検知装置により実際に側方衝突が発生したことが検知された場合に、前記自動ブレーキ制御装置を、与圧をさらに高めて前記ブレーキ装置を自動作動させるよう自動制動制御し、
その後車両の停止後に、その自動作動したブレーキ装置を非作動状態となるまで減圧動作して自動制動解除動作する、第二の段階の統合制御を実施することを特徴とする請求項1に記載の衝突軽減制御装置。
【請求項3】
前記衝突軽減制御手段は、前記予知装置により側方衝突が予知されてから前記衝突検知装置により衝突の発生が検知されずかつ設定時間が経過した場合に、
前記自動ブレーキ制御装置を、前記ブレーキ装置が作動しない程度に与圧駆動された状態を解除して初期状態に復帰するブレーキ復帰駆動制御し、
前記拘束制御装置が前記シートベルト装置に設けたモータを駆動して所定の状態までシートベルトの巻取り状態を解除して初期状態に復帰するベルト復帰駆動制御し、
前記サスペンション制御装置は選出したサスペンション装置の減衰力を減少させた減衰力低減制御から初期の減衰力に復帰するように減衰力復帰制御を行う、第三の段階の統合制御を実施することを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか一項に記載の衝突軽減制御装置。
【請求項4】
前記衝突軽減制御手段は、前記第一の段階から第三の段階のいずれの段階の統合制御も、車両が低速走行中となる設定車速以下である場合にのみ実施することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の衝突軽減制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−143358(P2010−143358A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−321870(P2008−321870)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】