説明

走行支援装置

【課題】ハイブリット車両の渋滞走行時の燃費向上に寄与することができる走行支援装置を提供する。
【解決手段】駆動源としてエンジン及びモータを有する車両の走行を支援する走行支援装置1であって、少なくともエンジンを駆動源として走行するHVモードとHVモードに比べて車両全体として得られる動力におけるエンジンの動力の寄与が小さくなるように少なくともモータを駆動源として走行するEVモードとを選択的に切替制御する走行モード切替制御部12と、渋滞情報を取得する情報取得部10と、渋滞情報に基づいて、渋滞区間を走行する前に、走行モード切替制御部12の当該渋滞区間における切替制御を決定する走行モード切替計画部11とを備えて構成することで、渋滞区間の走行前に渋滞区間での切替制御を予め決定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイブリット車両の走行モードとして、エンジンを運転させた状態で走行を行なうハイブリッド車両モード(HVモード)と、エンジンを停止させモータのみで走行を行う電気自動車モード(EVモード)が知られている。このようなハイブリット車両の走行支援装置として、所定の条件に基づいてEVモードでの走行を抑制する装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の走行支援装置は、渋滞区間の手前でEVモードでの走行(モータによる走行)を抑制してバッテリ充電量の消費を回避し、EVモードでの走行を優先的に渋滞走行時に割り当てるものである。これにより、渋滞走行時(低速走行時)はできるだけEVモードで走行することが可能となり、燃費の向上を期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−109577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の走行支援装置にあっては、バッテリの充電量によってはEVモードでの走行で渋滞区間を完走できない場合があり、残りの渋滞区間をHVモードで低速で走行することとなる。EVモードではエンジンを停止するため、例えばEVモードで長期間走行した後はエンジン温度が低下している。この場合、残りの渋滞区間をHVモードで走行するためには、低速走行中に低いエンジン温度でエンジン始動を行うこととなり、燃費向上の観点から好ましくない。
【0006】
そこで、本発明はこのような技術課題を解決するためになされたものであって、ハイブリット車両の渋滞走行時の燃費向上に寄与することができる走行支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明に係る走行支援装置は、駆動源としてエンジン及びモータを有する車両の走行を支援する走行支援装置であって、少なくとも前記エンジンを駆動源として走行する第1走行モードと前記第1走行モードに比べて車両全体として得られる動力における前記エンジンの動力の寄与が小さくなるように少なくとも前記モータを駆動源として走行する第2走行モードとを選択的に切替制御する切替制御手段と、渋滞情報を取得する渋滞情報取得手段と、前記渋滞情報に基づいて、渋滞区間を走行する前に、前記切替制御手段の当該渋滞区間における切替制御を決定する決定手段と、を備えて構成される。
【0008】
本発明に係る走行支援装置では、切替制御手段により、車両の走行モードが、少なくともエンジンを駆動源として走行する第1走行モード、及び第1走行モードよりもエンジン動力の寄与が小さい第2走行モードの何れか一方に選択的に切替えられるとともに、決定手段により、渋滞区間の走行前に、当該渋滞区間での第1走行モードと第2走行モードとの切替制御が決定される。このため、例えば、エンジン温度の低下やバッテリ充電量の低下に伴うエンジン暖気を渋滞区間で行わないように予め決定することが可能となるので、燃費向上に寄与することができる。
【0009】
ここで、前記渋滞区間を前記第2走行モードで走行する場合において予測される当該渋滞区間での車両状態を取得する車両状態取得手段をさらに備え、前記決定手段は、前記車両状態に基づいて前記切替制御手段の切替制御を決定することが好適である。
【0010】
このように構成することで、車両状態取得手段により、第2走行モードで走行する場合において予測される渋滞区間での車両状態を取得することができ、決定手段により、車両状態に基づいて、例えば車両状態に起因するエンジン暖気を渋滞区間で行わないように予め決定することが可能となる。このため、燃費向上に寄与することができる。
【0011】
また、前記車両状態推定手段は、前記車両状態として、前記エンジンの温度に関する情報を取得してもよい。また、前記車両は、前記モータを発電機として作動させ回生制御によりバッテリを充電可能に構成されており、前記車両状態推定手段は、前記車両状態として、前記バッテリの充電量に関する情報を取得してもよい。
【0012】
このように構成することで、エンジン温度の低下やバッテリ充電量の低下に伴うエンジン暖気を渋滞区間で行わないように予め決定することができる。
【0013】
また、前記決定手段は、前記渋滞区間を走行し始めてから所定の期間が経過するまで前記第1走行モードで走行するように前記切替制御手段の切替制御を決定することが好適である。このように構成することで、エンジン再始動時のイナーシャによるエネルギー損失の機会を少なくすることができるので、燃費向上に寄与することが可能となる。
【0014】
あるいは、前記決定手段は、前記渋滞区間の前半の方が後半に比べて前記第1走行モードで走行する割合が高くなるように前記切替制御手段の切替制御を決定してもよい。このように構成することで、渋滞区間の後半におけるエンジン温度が低い状態で第1走行モードでの走行を少なくし、その代わりに渋滞区間の前半におけるエンジン温度が高い状態で第1走行モードでの走行を多くすることができるので、燃費向上に寄与することが可能となる。
【0015】
また、走行支援装置が前記車両状態推定手段を備える場合において、前記車両は、前記エンジンの温度が所定値以下となった場合には前記エンジンを駆動させる暖気手段を有するとともに、前記モータを発電機として作動させ回生制御によりバッテリを充電可能に構成されており、前記車両状態推定手段は、前記車両状態として、前記バッテリの充電量に関する情報及び前記エンジンの温度に関する情報を取得し、前記決定手段は、前記渋滞情報、前記バッテリの充電量に関する情報、及び前記エンジンの温度に関する情報に基づいて、渋滞時に前記第2走行モードで走行可能な走行距離を算出し、算出した前記走行距離に基づいて前記渋滞区間を前記第2走行モードで完走できないと判定した場合には、前記第2走行モードで走行する区間の終了が前記渋滞区間の終了と重なるように前記切替制御手段の切替制御を決定してもよい。
【0016】
このように構成することで、第2走行モードで渋滞区間を走行できない場合には、第2走行モードから第1走行モードへの切替制御が渋滞区間で行われないように切替制御を決定することができるので、燃費向上に寄与することができる。
【0017】
また、本発明に係る走行支援装置は、駆動源としてエンジン及びモータを有する車両の走行を支援する走行支援装置であって、少なくとも前記エンジンを駆動源として走行する第1走行モードと前記第1走行モードに比べて車両全体として得られる動力における前記エンジンの動力の寄与が小さくなるように少なくとも前記モータを駆動源として走行する第2走行モードとを選択的に切替制御する切替制御手段と、渋滞情報を取得する渋滞情報取得手段と、を備え、前記切替制御手段は、前記渋滞情報に基づいて、前記渋滞区間を走行し始めてから所定の期間が経過するまで前記第1走行モードで走行するように切替制御することを特徴として構成される。
【0018】
本発明に係る走行支援装置では、切替制御手段により、渋滞区間の走行前に、当該渋滞区間での第1走行モードと第2走行モードとの切替制御が決定される。このため、例えば、エンジン温度の低下やバッテリ充電量の低下に伴うエンジン暖気を渋滞区間で行わないように予め決定することが可能となるので、燃費向上に寄与することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ハイブリット車両の渋滞走行時の燃費向上に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態に係る走行支援装置を有する車両の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す走行支援装置を備える車両の動作を示すフローチャートである。
【図3】図1に示す走行支援装置を備える車両の動作を示すフローチャートである。
【図4】図1に示す走行支援装置を備える車両の動作を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0022】
本実施形態に係る走行支援装置は、駆動源としてエンジン及びモータを有するハイブリット車両の走行を支援する場合に好適に採用されるものである。
【0023】
最初に、本実施形態に係る走行支援装置の構成を説明する。図1は、実施形態に係る走行支援装置1を有する車両3の構成を示すブロック図である。図1に示す車両3は、エンジン42、モータ43及びバッテリ44を含むハイブリットシステム4を備えている。
【0024】
ハイブリットシステム4は、エンジン42及びモータ43の2つの駆動源(動力源)を、単独であるいは組み合わせて駆動させることにより車両3を走行させる機能を有している。エンジン42は、例えば電子スロットル等のスロットルアクチュエータで出力が制御可能に構成されている。モータ43は、接続されたバッテリ44から供給される電力、あるいは発電機(不図示)を介して供給される電力により駆動する機能を有している。また、ハイブリットシステム4は、回生ブレーキあるいは発電機により、モータ43を回転させて運動エネルギーを電気エネルギーに変換する回生制御を行う機能を有している。すなわち、モータ43は発電機としても機能する。そして、ハイブリットシステム4は、得られた電気エネルギーをバッテリ44に充電する機能を有している。ハイブリットシステム4は、後述するECU(Electronic Control Unit)2に接続され、ECU2から出力される信号に基づいて駆動制御、回生制御を行う機能を有している。
【0025】
また、車両3は、通信装置30、センサ31、ナビゲーションシステム32及びECU2(走行支援装置)を備えている。ECUは、電子制御する自動車デバイスのコンピュータであり、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のメモリ、及び入出力インターフェイスなどを備えて構成されている。
【0026】
通信装置30は、例えば、路側に配置された路側支援装置や周辺車両等と通信可能に構成されており、車両5の進行方向における道路情報、交通情報及び環境情報等を取得する機能を有している。路側支援装置として、例えば光ビーコン等が用いられる。道路情報は、例えば、道路形状、勾配、車線数等に関する情報である。また、交通情報は、例えば、渋滞区間の位置及び長さ、渋滞時間、推定通過時間等の渋滞情報を含む情報である。また、環境情報は、例えば、天気や気温に関する情報である。また、通信装置30は、路側支援装置や周辺車両等と通信することにより、推定通過時間から予測されるエンジンの温度変化を取得する機能を有していても良い。通信装置30は、通信により取得した情報をECU2へ出力する機能を有している。
【0027】
センサ31は、車両3の周囲の走行環境情報や、車両3の車両状態情報を取得する機能を有している。センサ31としては、例えば、混雑状況を把握する画像センサ、車両3の周辺の障害物や後続車両を検知する電磁波センサやミリ波センサ、外気温を取得する温度センサ、エンジン42の温度を取得する温度センサ、バッテリ44の充電量(SOC:State Of Charge)を検出するセンサ等が用いられる。また、センサ31は、取得した情報をECU2へ出力する機能を有している。
【0028】
ナビゲーションシステム32は、所定地点(例えば目的地)までの経路案内等を行う機能を有している。また、ナビゲーションシステム32は、例えば地図データベースから現在走行中付近の道路情報を読み出し、その道路情報をナビ信号としてECU2へ出力する機能を有している。さらに、ナビゲーションシステム32は、信号機点灯情報等の交通情報をナビ信号としてECU2へ出力する機能を有している。
【0029】
ECU2は、通信装置30、センサ31、ナビゲーションシステム32に接続されており、情報取得部(渋滞情報取得手段、車両状態取得手段)10、走行モード切替計画部(決定手段)11及び走行モード切替制御部(切替制御手段)12を備えている。
【0030】
情報取得部10は、通信装置30、センサ31及びナビゲーションシステム32が出力した渋滞情報、車両状態情報、外気温に関する情報等を取得する機能を有している。例えば、情報取得部10は、車両状態情報として、エンジン42の温度に関する情報、バッテリ44のSOCに関する情報を取得する機能を有している。また、情報取得部10は、エンジン42の温度変化に関する情報を通信装置30から取得してもよいし、通信装置30により出力した渋滞の推定通過時間と、センサ31により検出されたエンジン42の温度とを例えばECU2に備わる推定演算部(不図示)に出力し、推定演算部により推定されたエンジン42の温度変化を取得してもよい。情報取得部10は、取得した情報を走行モード切替計画部11へ出力する機能を有している。
【0031】
走行モード切替計画部11は、走行区間における車両3の走行モードを計画する機能を有している。車両3の走行モードとして、例えば、エンジン42を駆動させた状態で走行するHVモード(第1走行モード)と、エンジン42を停止させモータ43のみで走行するEVモード(第2走行モード)が用いられる。走行モード切替計画部11は、例えば、情報取得部10が出力した渋滞情報、車両状態情報及び外気温に関する情報に基づいて車両3の走行モードを計画する機能を有している。走行モード切替計画部11は、例えば、渋滞区間を走行し始めてから所定の期間が経過するまでHVモードで走行するように走行モードを計画する機能を有している。あるいは、走行モード切替計画部11は、例えば、渋滞区間の前半の方が後半に比べてHVモードで走行する割合が高くなるように走行モードを計画する機能を有してもよい。あるいは、走行モード切替計画部11は、例えば、渋滞情報、バッテリ44のSOCに関する情報、及びエンジン42の温度に関する情報に基づいて、渋滞時にEVモードで走行可能な走行距離を算出し、算出した走行距離に基づいて渋滞区間をEVモードで完走できないと判定した場合には、EVモードで走行する区間の終了が渋滞区間の終了と重なるように走行モードを計画する機能を有していてもよい。あるいは、走行モード切替計画部11は、例えば、情報取得部10から取得した渋滞突入前のエンジン42の温度、渋滞区間の長さ、推定通過時間、渋滞区間でのエンジン温度変化及び外気温に基づいて、エンジン42の温度変化により定まるEVモードの走行可能距離を算出し、当該走行可能距離に基づいて渋滞区間における走行モードを決定する機能を有していてもよい。そして、走行モード切替計画部11は、渋滞区間における走行モードの切替計画を、走行モード切替制御部12へ出力する機能を有している。
【0032】
走行モード切替制御部12は、ハイブリットシステム4に接続されており、走行モード切替計画部11が出力した切替計画に基づいて、ハイブリットシステム4を駆動させる機能を有している。走行モード切替制御部12は、HVモードの場合、エンジン42を駆動させるとともに必要に応じてモータ43を駆動させる機能を有している。また、例えば、走行モード切替制御部12は、EVモードの場合、エンジン42を停止させてモータ43を駆動させる機能を有している。
【0033】
次に、本実施形態に係る走行支援装置1の動作について説明する。図2は、本実施形態に係る走行支援装置1を備える車両の動作を示すフローチャートである。図2に示す制御処理は、例えばイグニッションオン又は車両3に備わる開始ボタンがオンされてから、所定のタイミングで繰り返し実行される。なお、説明理解の容易性を考慮して、以下では図4を参照しつつ走行支援装置1の動作について説明する。図4は、走行支援装置1の動作を説明するために、走行経路、走行速度、切替制御及びエンジン温度を関連付けて示す概要図である。
【0034】
図2に示すように、走行支援装置1は、渋滞情報取得処理から開始する(S10)。S10の処理は、情報取得部10が実行し、渋滞情報を取得する処理である。情報取得部10は、例えば、通信装置30、センサ31及びナビゲーションシステム32から渋滞情報として、渋滞区間の位置及び長さ、推定通過時間を取得する。S10の処理が終了すると、渋滞判定処理へ移行する(S12)。
【0035】
S12の処理は、走行モード切替計画部11が実行し、渋滞の有無を判定する処理である。走行モード切替計画部11は、例えば、S10の処理で取得した渋滞区間の位置に基づいて、ナビゲーションシステム32から取得した走行予定のルート上に渋滞が発生しているか否かを判定する。例えば、走行モード切替計画部11は、図4(a)に示す走行経路上に渋滞区間L2が存在するか否かを判定する。図4(a)では、現在地点又は出発地点をP1、目的地をP4として示している。S12の処理において、渋滞が発生していないと判定した場合には、図2に示す制御処理を終了する。一方、S12の処理において、渋滞が発生していると判定した場合には、エンジン温度取得処理へ移行する(S14)。なお、図4(a)に対応する走行速度を図4(b)に示す。
【0036】
S14の処理は、情報取得部10が実行し、センサ31から渋滞区間L2走行前のエンジン温度を取得する処理である。例えば、情報取得部10は、図4(a)に示す現在地点P1におけるエンジン温度をセンサ31から取得する。S14の処理が終了すると、エンジン温度変化予測処理へ移行する(S16)。
【0037】
S16の処理は、ECU2が実行し、走行経路におけるエンジン温度変化を予測する処理である。ECU2は、例えば、S10の処理で取得した渋滞区間L2の推定通過時間、S14の処理で取得した現在地点P1のエンジン42の温度、及びセンサ31が出力した外気温に基づいて、走行経路のエンジン温度の推移を予測する。なお、EUC2は、従来の渋滞時の走行モード制御と同様に、走行速度が所定の速度Vaより小さい場合ではEVモードでの走行を優先させて制御するものとして、エンジン温度Tの推移を予測する。図4(a)に対応する切替制御及びエンジン温度Tの変化を図4(c)に示す。図4(c)の切替制御では、走行経路における走行モードと、各走行モードで走行する際に駆動される駆動源(エンジン42、モータ43)を示している。また、図4(c)のエンジン温度Tを示すグラフにおいて、エンジン温度Ta,Tbは、エンジン温度制限閾値である。切替制御により、エンジン温度TがTaを超えないようにエンジン42の出力を制御する冷却制御(エンジン出力抑制制御、エンジン停止制御)がされ、エンジン温度TがTbより小さくならないように暖気制御(エンジン始動制御、エンジン出力増加制御)がされる。図4(c)に示すように、現在地点P1での温度がTaである場合において、図4(b)に示すように渋滞区間L2の開始地点P2までは走行速度がVa以上であるので、HVモードでの走行が優先され、エンジン温度TはTaを超えない状態で保たれて非渋滞区間L1を通過する。一方、渋滞開始地点P2を通過すると走行速度はVaより小さくなるので、EVモードでの走行が優先される。このため、エンジン42が停止され、渋滞区間L2の開始地点P2の通過後からエンジン温度Tが低下する。このエンジン温度Tの低下の傾きは外気温や予測通過時間を考慮してもよい。エンジン温度Tはエンジン停止時間に応じて低下し続けるが、閾値Tb以下とならないように、暖気のために地点P6においてエンジン42が始動される(HVモード)。このため、エンジン温度Tは地点P6を境に上昇する。そして、渋滞区間L2を終了後、走行速度もVa以上となるため、HVモードでの走行が継続される。そして地点P8で走行速度がVaより再度小さくなるので、EVモードでの走行が優先されてエンジン温度Tは再び低下する。ECU2は以上のようにエンジン温度Tの推移を予測する。
【0038】
情報取得部10はECU2からエンジン温度Tの予測結果を取得する。なお、エンジン温度変化を予測する処理は、ECU2が実行する場合に限られず、推定通過時間、走行前エンジン温度及び外気温を通信装置30を介して路側支援装置等に送信し、路側支援装置等と通信可能な中央管理センター等が実行してもよい。S16の処理が終了すると、EV走行予測処理へ移行する(S18)。
【0039】
S18の処理は、走行モード切替計画部11が実行し、渋滞区間L2におけるEVモードでの走行可能距離を予測する処理である。走行モード切替計画部11は、例えば、S18の処理で予測された渋滞区間L2におけるエンジン温度変化に基づいて、EVモードで走行可能な距離を算出する。例えば、図4(c)に示すように、地点P6においてHVモードでの走行となるため、渋滞開始地点P2から地点P6までの距離がEVモードで走行可能な距離となる。S18の処理が終了すると、完走判定処理へ移行する(S20)。
【0040】
S20の処理は、走行モード切替計画部11が実行し、渋滞区間L2をEVモードで完走できるか否かを判定する処理である。走行モード切替計画部11は、S18の処理で算出したEVモードで走行可能な距離が、S10の処理で取得した渋滞区間L2の区間距離と同一かそれ以上である場合には、渋滞区間L2をEVモードで完走できると判定する。S20の処理において、渋滞区間をEVモードで完走できると判定した場合には、図2に示す制御処理を終了する。一方、S20の処理において、渋滞区間をEVモードで完走できないと判定した場合には、HV走行距離算出処理へ移行する(S22)。
【0041】
S22の処理は、走行モード切替計画部11が実行し、渋滞区間L2の初期の所定区間をHVモードで走行するように、HVモードで走行する距離を算出する処理である。走行モード切替計画部11は、渋滞区間L2からS18の処理で算出したEVモードで走行可能な距離を減算してHVモードで走行する距離を算出する。例えば、図4(c)に示すように、地点P2〜地点P3の距離から地点P2〜地点P6の距離を減算し、地点P6〜地点P3の距離をHVモードで走行する距離とする。S22の処理が終了すると、走行モード制御計画処理へ移行する(S24)。
【0042】
S24の処理は、走行モード切替計画部11が実行し、渋滞区間L2における走行モードの切替制御を計画する処理である。走行モード切替計画部11は、S22の処理で算出したHVモードで走行する距離に基づいて、渋滞区間L2の初期の所定区間をHVモードでの走行に割り当てる。すなわち、走行モード切替計画部11は、渋滞区間L2の前半の方が後半に比べてHVモードで走行する距離が多くなるようにHVモード、EVモードでの走行区間を割り当てる。具体的には、図4(d)に示すように、走行モード切替計画部11は、EVモードでの走行区間と渋滞区間L2との最後が一致するように、S18の処理で算出したEVモードで走行可能な距離を渋滞区間L2の地点P9から地点P3に割り当てて、渋滞区間L2の地点P2から地点P9ではHVモードで走行するように計画する。S24の処理が終了すると、図2に示す制御処理を終了する。
【0043】
以上で図2に示す制御処理を終了する。図2に示す制御処理を実行することにより、目的地P4までの走行経路に存在する渋滞区間L2をEVモードで完走できない場合には、渋滞区間L2におけるHVモードでの走行区間とEVモードでの走行区間を入れ替えることができる。このため、渋滞区間L2において暖気のためにEVモードからHVモードに切り替わるような制御が行われることを回避できる。すなわち、エンジン温度Tに依存する暖気のタイミングと速度に依存するHVモードでの走行タイミングを同一とすることが可能となるので、暖気運転のためのエンジン始動の回数を低減させることができる。よって、燃費向上に寄与することが可能となる。
【0044】
次に、本実施形態に係る走行支援装置1の他の動作について説明する。図3は、本実施形態に係る走行支援装置1を備える車両の動作を示すフローチャートである。イグニッションオン又は車両3に備わる開始ボタンがオンされてから、所定のタイミングで繰り返し実行される。なお、説明理解の容易性を考慮して、以下では図4を参照しつつ走行支援装置1の動作について説明する。
【0045】
図3に示すように、走行支援装置1は、情報取得処理から開始する(S30)。S30の処理は、情報取得部10が実行し、目的地P4までの距離情報を取得する処理である。S30の処理が終了すると、切替ロス判定処理へ移行する(S32)。
【0046】
S32の処理は、走行モード切替計画部11が実行し、走行モードの切替ロスが発生するか否かを判定する処理である。走行モード切替計画部11は、目的地P4までの距離情報が所定値以上である場合には、走行モードの切替によるロスが発生しないと判定する。この場合、図3に示す制御処理を終了する。一方、S32の処理において、目的地P4までの距離情報が所定値より小さい場合には、走行モードの切替によるロスが発生すると判定する。例えば、図4(c)の地点P8が目的地P4から所定値より小さい場合には、地点P8での走行モードの切替制御はロスが発生すると判定する。この場合、走行状態保持処理へ移行する(S34)。
【0047】
S34の処理は、走行モード切替計画部11が実行し、走行状態を保持する処理である。例えば、図4(d)に示すように、走行モード切替計画部11は、地点Pでの切替制御を取りやめてHVモードでの走行を維持するように計画する。S34の処理が終了すると、図3に示す制御処理を終了する。
【0048】
以上で図3に示す制御処理を終了する。図3に示す制御処理を実行することにより、目的地周辺での走行モードの切替を回避できるので、燃費向上に寄与することができる。
【0049】
以上、本実施形態に係る走行支援装置1によれば、走行モード切替制御部12により、車両の走行モードが、少なくともエンジンを駆動源として走行するHVモード、及びHVモードよりもエンジン動力の寄与が小さいEVモードの何れか一方に選択的に切替えられるとともに、走行モード切替計画部11により、渋滞区間L2の走行前に、渋滞区間L2でのHVモードとEVモードとの切替制御が決定される。このため、例えば、エンジン温度Tの低下に伴うエンジン暖気を渋滞区間L2行わないように予め決定することが可能となるので、燃費向上に寄与することができる。すなわち、渋滞情報を利用し、エンジン温度Tを考慮した車両走行制御をすることができるとともに、従来のようにエンジン42の温度センサの出力結果のみを用いた成り行きの自律ハイブリッド車両制御を回避することが可能となるので、無駄な暖機運転を低減することができる。
【0050】
また、本実施形態に係る走行支援装置1によれば、情報取得部10により、EVモードで走行する場合において予測される渋滞区間L2でのエンジン温度Tを取得することができ、走行モード切替計画部11により、エンジン温度Tに基づいて、エンジン暖気を渋滞区間L2で行わないように予め決定することが可能となる。このため、燃費向上に寄与することができる。
【0051】
また、本実施形態に係る走行支援装置1によれば、走行モード切替計画部11により、渋滞区間L2を走行し始めてから所定の期間が経過するまでHVモードで走行するように走行モードの切替制御を予め計画することができる。また、本実施形態に係る走行支援装置1によれば、渋滞区間L2の前半の方が後半に比べてHVモードで走行する割合が高くなるように走行モードの切替制御を計画することができる。このため、エンジン再始動時のイナーシャによるエネルギー損失の機会を少なくすることができるので、燃費向上に寄与することが可能となる。また、渋滞区間L2の後半におけるエンジン温度Tが低い状態でHVモードでの走行を少なくし、その代わりに渋滞区間L2の前半におけるエンジン温度が高い状態でHVモードでの走行を多くすることができるので、燃費向上に寄与することが可能となる。
【0052】
また、本実施形態に係る走行支援装置1によれば、EVモードで渋滞区間L2を走行できない場合には、EVモードからHVモードへの切替制御が渋滞区間L2で行われないように切替制御を決定することができるので、燃費向上に寄与することができる。
【0053】
なお、上述した実施形態は本発明に係る走行支援装置の一例を示すものである。本発明に係る走行支援装置は、実施形態に係る走行支援装置に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、実施形態に係る走行支援装置を変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【0054】
例えば、上述した実施形態では、EVモードをモータ43のみを駆動させるモードとして説明したが、これに限られるものではなく、EVモードはHVモードに比べて全体動力に対するエンジン動力の寄与率が低いモードであればよい。
【0055】
また、例えば、上述した実施形態では、図2のS18において、エンジン温度Tを基準にEVモードでの走行可能距離を算出する例を説明したが、これに限られるものではなく、EVモードでの走行可能距離をバッテリ44のSOCに基づいて判断してもよい。
【0056】
また、例えば、上述した実施形態では、図2のS20の処理において、EVモードで渋滞区間L2を通過できるか否かを判定したが、EVモードで目的地P4まで走行できるか否かを判定してもよい。
【0057】
また、例えば、上述した実施形態では、走行モード切替計画部11と走行モード切替制御部12とを分けて説明したが、機能的に統一した1つの制御部で実行させてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1…走行支援装置、2…ECU、3…車両、4…ハイブリットシステム、10…情報取得部(渋滞情報取得手段、車両状態取得手段)、11…走行モード切替計画部(決定手段)、12…走行モード切替制御部(切替制御手段)、42…エンジン、43…モータ、44…バッテリ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源としてエンジン及びモータを有する車両の走行を支援する走行支援装置であって、
少なくとも前記エンジンを駆動源として走行する第1走行モードと前記第1走行モードに比べて車両全体として得られる動力における前記エンジンの動力の寄与が小さくなるように少なくとも前記モータを駆動源として走行する第2走行モードとを選択的に切替制御する切替制御手段と、
渋滞情報を取得する渋滞情報取得手段と、
前記渋滞情報に基づいて、渋滞区間を走行する前に、前記切替制御手段の当該渋滞区間における切替制御を決定する決定手段と、
を備えることを特徴とする走行支援装置。
【請求項2】
前記渋滞区間を前記第2走行モードで走行する場合において予測される当該渋滞区間での車両状態を取得する車両状態取得手段をさらに備え、
前記決定手段は、前記車両状態に基づいて前記切替制御手段の切替制御を決定すること、
を特徴とする請求項1に記載の走行支援装置。
【請求項3】
前記車両状態推定手段は、前記車両状態として、前記エンジンの温度に関する情報を取得することを特徴とする請求項2に記載の走行支援装置。
【請求項4】
前記車両は、前記モータを発電機として作動させ回生制御によりバッテリを充電可能に構成されており、
前記車両状態推定手段は、前記車両状態として、前記バッテリの充電量に関する情報を取得すること、
を特徴とする請求項2又は3に記載の走行支援装置。
【請求項5】
前記決定手段は、前記渋滞区間を走行し始めてから所定の期間が経過するまで前記第1走行モードで走行するように前記切替制御手段の切替制御を決定することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の走行支援装置。
【請求項6】
前記決定手段は、前記渋滞区間の前半の方が後半に比べて前記第1走行モードで走行する割合が高くなるように前記切替制御手段の切替制御を決定することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の走行支援装置。
【請求項7】
前記車両は、前記エンジンの温度が所定値以下となった場合には前記エンジンを駆動させる暖気手段を有するとともに、前記モータを発電機として作動させ回生制御によりバッテリを充電可能に構成されており、
前記車両状態推定手段は、前記車両状態として、前記バッテリの充電量に関する情報及び前記エンジンの温度に関する情報を取得し、
前記決定手段は、前記渋滞情報、前記バッテリの充電量に関する情報、及び前記エンジンの温度に関する情報に基づいて、渋滞時に前記第2走行モードで走行可能な走行距離を算出し、算出した前記走行距離に基づいて前記渋滞区間を前記第2走行モードで完走できないと判定した場合には、前記第2走行モードで走行する区間の終了が前記渋滞区間の終了と重なるように前記切替制御手段の切替制御を決定すること、
を特徴とする請求項2に記載の走行支援装置。
【請求項8】
駆動源としてエンジン及びモータを有する車両の走行を支援する走行支援装置であって、
少なくとも前記エンジンを駆動源として走行する第1走行モードと前記第1走行モードに比べて車両全体として得られる動力における前記エンジンの動力の寄与が小さくなるように少なくとも前記モータを駆動源として走行する第2走行モードとを選択的に切替制御する切替制御手段と、
渋滞情報を取得する渋滞情報取得手段と、
を備え、
前記切替制御手段は、前記渋滞情報に基づいて、前記渋滞区間を走行し始めてから所定の期間が経過するまで前記第1走行モードで走行するように切替制御すること、
を特徴とする走行支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−42312(P2011−42312A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−193148(P2009−193148)
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】