説明

超臨界流体による除去または堆積プロセスのための装置および方法

超小型電子デバイスへの薄膜の堆積または超小型電子デバイスからの不要な層、パーティクル、および/または残渣の除去のための連続流式超臨界流体(SCF)装置および方法。SCFと他の薬液成分との均一な混合を保証するために、SCF装置には動的ミキサが含まれることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超小型電子デバイスの製造に有用な超臨界流体装置と、除去または堆積プロセスのためにこの装置を使用する方法とに関し、これらのプロセスは超小型電子デバイスに対するエッチング、洗浄、パーティクルの除去、残渣の除去、薄膜の堆積、およびフォトレジスト層の除去を含むが、これだけに限定されるものではない。
【背景技術】
【0002】
超小型電子デバイス製造業界においては、超小型電子デバイスのエッチング、洗浄、およびイオン注入によって形成された硬化フォトレジストおよびその残渣を超小型電子デバイスから除去するための改良されたプロセスの開発に多大かつ継続的な努力が行われてきた。この努力は、限界寸法の継続的かつ急速な縮小によって頓挫してきた。水性系組成物の使用を含む従来のウェット洗浄方法は、限界寸法(CD)幅が100nm未満になるとほぼ限界に達するが、この一因として洗浄溶液に使用される液体の高表面張力特性が挙げられる。また、水性洗浄溶液は、多孔質低K誘電材料の重要な材料特性、たとえば機械的強度、吸湿、熱膨張係数、およびさまざまな基板への付着性など、に悪影響を強く及ぼしうる。
【0003】
除去プロセスに加え、たとえば集積回路の製造時の薄膜堆積など、超小型電子デバイスへの層の形成が望まれる用途は多数存在する。層形成に一般に用いられる方法として、化学気相堆積(CVD:Chemical Vapor Deposition)法および原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法などが挙げられる。CVD法および/またはALD法に伴う問題として、段差被覆性が100%未満であること、堆積速度が遅いこと、および前駆体から堆積材料への変換が非効率的であることが挙げられる。
【0004】
近年、膜形成面への前駆体の送出に超臨界流体(SCF)を利用する方法が提案されている。一般には、超臨界流体は、その溶解性を利用して、最初に前駆体を超臨界流体に高濃度で溶解するために利用される。次に、内部に基板が配置された反応チャンバに前駆体含有SCFが送り込まれる。その後、(i)このチャンバ内の温度および/または圧力条件を変化させることによって、この流体を非超臨界状態に変える。すると、この流体は溶解性を失い、前駆体を溶液中に保持できなくなるため、前駆体は溶液から落下して基板上に層(または膜)を形成する。あるいは、(ii)基板を加熱することによって、前駆体含有SCF内の前駆体を基板上で分解し、基板上に層を形成する。
【0005】
超臨界流体堆積(SCFD:Supercritical Fluid Deposition)法は、化学気相堆積(CVD)法に勝る重要な利点をいくつか有する。たとえば、(1)動作温度が低いため、CVDでは気相濃度の生成に必要な高温で劣化しうる有機金属前駆体の使用が可能になる、(2)SCFの溶媒和力により、前駆体をより高濃度化(SCF相)できると同時に、金属表面での有機金属錯体の分解後にその金属表面からのリガンドの離脱が容易になる、(3)SCF中に複数の前駆体を同時に溶解させ、複合組成物および多元素組成物を有する材料が堆積されるようにSCF相前駆体組成物を調整できる、(4)真空条件を使用しないので、不安定なリガンドを有する有機金属前駆体化合物を使用できる、(5)毒性が少なく、費用効果がより高い傾向の化合物である非揮発性有機金属前駆体を使用できる、(6)非毒性、低コスト、入手し易く、かつ再利用可能な、二酸化炭素などの溶剤を使用できるなどの利点が挙げられるが、これだけに限定されるものではない。
【0006】
現在のSCFD処理技法は、超臨界溶剤の急速膨張(RESS:Rapid Expansion of Supercritical Solvent)、あるいは水素などの共反応ガスまたは担体を熱的または反応的に用いる基板表面での前駆体の還元に基づく。RESSでは、ミクロン単位寸法のノズルまたは毛細管を通して前駆体含有SCFを急膨張させることによって、基板表面またはその近くに堆積される材料の煙霧質を生成する。このプロセスは、各種材料の薄膜の成長に対応しうるが、流体を膨張させるために必要な極小寸法のノズルを通して膨張しうる前駆物質の量が少ないため、堆積速度および堆積膜の表面面積が限られる。さらに、非均一な膜成長によってパーティクルが生成されうる。後者のプロセスは、CFD(Chemical Fluid Deposition)と称されることも多いが、堆積すべき前駆物質のSCFへの溶媒和、標準開口部を通じた前駆体含有SCFの堆積チャンバへの移送、およびその後の反応、たとえば静的圧力下での基板上での前駆体の還元または分解を伴う。このプロセスは、均一膜の成長を可能にするが、発熱源からの熱放散により、前駆物質のかなりの割合がチャンバ壁に散逸する。また、チャンバ内での前駆体含有SCFの暴露時間が長いため、有機リガンドによる膜の汚染レベルが高いことが報告されている。
【0007】
超臨界流体(SCF)は、フォトレジスト層などの材料および他の残渣を超小型電子デバイス表面から除去するための代替方法も提供する。SCFは、拡散速度が速く、低粘性であり、表面張力がゼロに近いため、深い溝およびバイアに容易に浸透できる。さらに、その低粘性ゆえに、SCFは溶解および/または浮遊された種を素早く移送できる。SCFを用いた洗浄プロセスは、水の消費量、ウエハの損傷、処理が必要な大量の有害化学薬品の必要性、および処理工程の数を大幅に削減する。
【0008】
残念なことに、SCFは無極性が高いため、多くの種はSCF中に適切に溶解されない。現在、SCFに加えて溶解させる成分として、前駆体、錯体、共反応物質、希釈剤、助溶剤、界面活性剤、酸化剤、還元剤、安定剤、キレート剤、受動態化剤、錯化剤、およびエッチング液のうちの1つまたは複数が挙げられるが、これだけに限定されるものではない。上記の各成分は通常、静的混合法を用いてSCFに混合される。すなわち、SCFとその中に溶解される成分(群)とは、混合チャンバに導入され、流体の流れる勢いによって前方への運動量が蛇行経路上の衝突によって横運動または乱流運動に変換されるために物理的混合に必要なエネルギーが与えられる。静的ミキサ内の圧力または温度の何れかの変化、たとえば圧力降下、は混合チャンバ内で固体の沈殿または液体−液体相分離を引き起こしうる。混合チャンバは下流に複数の分岐を有するので、たとえば混合チャンバの下流の装置配管が詰まることも、またはプロセスチャンバ内でパーティクルが形成されることもありうる。さらに、SCFと成分(群)とが分離すると、深い溝およびバイアへの容易な浸透による効果的な洗浄、またはSCFの溶媒和力による前駆体の高濃度化(SCF相)など、SCF組成物の利点が失われる。
【0009】
したがって、当該技術分野においては、成分が固体であっても、またはバルク溶剤への溶解性の低さが公知の成分であっても、バルク溶剤中に成分(群)が均一かつ均質に溶解された媒質を製造する動的ミキサなどの改良された混合方法に対するニーズが存在する。
【0010】
静的混合チャンバに伴う問題に加え、現在の除去システムはSCF洗浄配合物を再循環させるように構成されている。洗浄対象の基板上に使用済みの流体が再循環すると、超小型電子デバイスの表面の効果的かつ効率的な洗浄を保証するために必要な新しい化学物質が到達できない。
【0011】
したがって、当該技術分野においては、不要な層、パーティクル、および/または残渣を効率的かつ効果的に除去するために、新鮮な化学物質を超小型電子デバイス表面に均一に導入させる連続流式システムに対するニーズも存在する。動的ミキサは、連続流式システムの構成要素であることが好ましい。重要なことは、連続流式システムは、薄膜材料の成長プロセスを向上させ、より均一で汚染度の低い膜の堆積を保証することである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、連続流式SCF装置およびこの装置を用いたプロセスに関する。
【0013】
一態様において、本発明は連続流式超臨界流体(SCF:Supercritical Fluid)装置に関し、このSCF装置は、
(a)溶剤を収容する溶剤容器と、
(b)前記溶剤容器に連通連結された高圧溶剤ポンプであって、前記溶剤を当該高圧溶剤ポンプの下流に流すための高圧溶剤ポンプと、
(c)前記高圧溶剤ポンプの下流に配置されて前記高圧溶剤ポンプに連通連結された溶剤ヒータであって、前記溶剤を超臨界状態に変換するように構成された溶剤ヒータと、
(d)高圧薬液成分ポンプであって、少なくとも1つの薬液成分を当該薬液成分ポンプの下流に流すための高圧薬液成分ポンプと、
(e)前記溶剤ヒータおよび前記薬液成分ポンプの両方の下流に配置されて前記溶剤ヒータおよび前記薬液成分ポンプの両方に連通連結された混合チャンバと、
(f)前記溶剤ヒータおよび前記混合チャンバの下流に配置されて前記溶剤ヒータおよび前記混合チャンバに連通連結されたプロセスチャンバと、を備える。
【0014】
別の態様において、本発明は連続流式超臨界流体プロセスチャンバに関し、このプロセスチャンバは、
(a)内部チャンバと、
(b)前記内部チャンバ内に配置された流体散布装置と、
(c)前記内部チャンバ内に配置され、1つ以上の超小型電子デバイスを支持するように構成された超小型電子デバイス支持体と、
(d)前記流体散布装置に対して遠位に配置された少なくとも2つの排出口と、を備える。
【0015】
さらに別の態様において、本発明は、連続流式超臨界流体堆積(SCFD:Supercritical Fluid Deposition)装置を用いて薄膜を超小型電子デバイスに堆積する、超小型電子デバイスの製造方法に関し、このSCFD装置は、
(a)溶剤を収容する溶剤容器と、
(b)前記溶剤容器に連通連結された高圧溶剤ポンプであって、前記溶剤を当該高圧溶剤ポンプの下流に流すための高圧溶剤ポンプと、
(c)前記高圧溶剤ポンプの下流に配置されて前記高圧溶剤ポンプに連通連結された溶剤ヒータであって、前記溶剤を超臨界状態に変換するように構成された溶剤ヒータと、
(d)高圧前駆物質ポンプであって、少なくとも1つの薬液成分を当該前駆物質ポンプの下流に流すための高圧前駆物質ポンプと、
(e)前記溶剤ヒータおよび前記前駆物質ポンプの両方の下流に配置されて前記溶剤ヒータおよび前記前駆物質ポンプの両方に連通連結された混合チャンバと、
(f)前記溶剤ヒータおよび前記混合チャンバの下流に配置されて前記溶剤ヒータおよび前記混合チャンバに連通連結されたプロセスチャンバと、を備える。
【0016】
さらに別の態様において、本発明は、連続流式超臨界流体堆積(SCFD:Supercritical Fluid Deposition)装置を用いて薄膜を基板に堆積させる薄膜堆積方法に関し、このSCFD装置は、
(a)溶剤を収容する溶剤容器と、
(b)前記溶剤容器に連通連結された高圧溶剤ポンプであって、前記溶剤を当該高圧溶剤ポンプの下流に流すための高圧溶剤ポンプと、
(c)前記高圧溶剤ポンプの下流に配置されて前記高圧溶剤ポンプに連通連結された溶剤ヒータであって、前記溶剤を超臨界状態に変換するように構成された溶剤ヒータと、
(d)高圧前駆物質ポンプであって、少なくとも1つの薬液成分を当該前駆物質ポンプの下流に流すための高圧前駆物質ポンプと、
(e)前記溶剤ヒータおよび前記前駆物質ポンプの両方の下流に配置されて前記溶剤ヒータおよび前記前駆物質ポンプの両方に連通連結された混合チャンバと、
(f)前記溶剤ヒータおよび前記混合チャンバの下流に配置されて前記溶剤ヒータおよび前記混合チャンバに連通連結されたプロセスチャンバと、を備える。
【0017】
さらに別の態様において、本発明は連続流式超臨界流体堆積(SCFD:Supercritical Fluid Deposition)装置に関し、このSCFD装置は、
(a)少なくとも1つの溶剤と少なくとも1つの前駆物質との混合物を収容する容器と、
(b)前記容器に連通連結された高圧ポンプであって、前記混合物を当該高圧ポンプの下流に流すための高圧ポンプと、
(c)前記高圧ポンプの下流に配置されて前記高圧ポンプに連通連結されたヒータであって、前記混合物を亜臨界または超臨界状態に変換するように構成されたヒータと、
(d)前記ヒータの下流に配置されて前記ヒータに連通連結されたプロセスチャンバと、を備える。
【0018】
さらに別の態様において、本発明は連続流式超臨界流体堆積(SCFD:Supercritical Fluid Deposition)装置に関する。このSCFD装置は、
(a)溶剤を収容する溶剤容器と、
(b)前記溶剤容器に連通連結された高圧溶剤ポンプであって、前記溶剤を当該高圧溶剤ポンプの下流に流すための高圧溶剤ポンプと、
(c)前記高圧溶剤ポンプの下流に配置されて前記高圧溶剤ポンプに連通連結された溶剤ヒータであって、前記溶剤を超臨界状態に変換するように構成された溶剤ヒータと、
(d)高圧前駆物質ポンプであって、前駆物質を当該前駆物質ポンプの下流に流すための高圧前駆物質ポンプと、
(e)前記溶剤ヒータおよび前記前駆物質ポンプの両方の下流に配置されて前記溶剤ヒータおよび前記前駆物質ポンプの両方に連通連結されたプロセスチャンバであって、混合システムを備えたるプロセスチャンバと、を備える。
【0019】
本発明のさらに別の態様は、改良された超小型電子デバイスと、この改良された超小型電子デバイスを組み込んだ製品とに関する。この改良された超小型電子デバイスは、本願明細書に記載の方法および/またはシステムを用いて行う薄膜の堆積を含む本発明の方法およびシステムを用いて製造され、当該超小型電子デバイスは必要に応じて製品に組み込まれる。
【0020】
本発明のさらに別の態様は、超臨界または亜臨界流体と少なくとも1つの成分とを均質化するための動的混合システムに関し、この混合システムは、
(a)内部チャンバを画成する高圧容器と、
(b)超臨界または亜臨界流体を収容する超臨界または亜臨界流体容器であって、前記高圧容器に対して供給関係に構成された超臨界または亜臨界流体容器と、
(c)少なくとも1つの成分を収容する少なくとも1つの成分容器であって、前記高圧容器に対して供給関係に構成された少なくとも1つ成分容器と、
(d)動的混合を行うために内部チャンバ内に配置された撹拌機と、を備える。
【0021】
さらに別の態様において、本発明は、超臨界または亜臨界流体と、助溶剤、エッチング液、界面活性剤、酸化剤、還元剤、受動態化剤、前駆体、錯化剤、キレート剤、および他の化学添加物から成る群から選択された少なくとも1つの他の成分とを均質化するための動的混合システムに関し、この混合システムは、
(a)内部チャンバを画成する高圧容器と、
(b)超臨界または亜臨界流体と少なくとも1つの他の成分とを収容する単一源試薬容器であって、前記高圧容器に対して供給関係に構成された単一源試薬容器と、
(c)動的混合を行うために内部チャンバ内に配置された撹拌機と、を備える。
【0022】
別の態様において、本発明は連続流式超臨界または亜臨界流体(SCF:Subcritical Fluid)装置に関し、この装置は、
(a)溶剤源試薬と少なくとも1つの他の成分源試薬とを収容する単一源流体容器と、
(b)前記単一源容器に連通連結された高圧ポンプであって、単一源流体を当該高圧ポンプの下流に流すための高圧ポンプと、
(c)前記高圧ポンプの下流に配置されて前記高圧ポンプに連通連結された単一源流体ヒータであって、前記単一源流体を超臨界または亜臨界状態に変換するように構成された単一源流体ヒータと、
(d)前記単一源流体ヒータの下流に配置されて前記単一源流体ヒータに連通連結されたプロセスチャンバと、を備える。
【0023】
さらに別の態様において、本発明は連続流式超臨界または亜臨界流体(SCF)装置に関し、この装置は、
(a)溶剤源試薬を収容する溶剤容器と、
(b)前記溶剤容器に連通連結された高圧ポンプであって、当該高圧ポンプの下流に溶剤源試薬を流すための高圧ポンプと、
(c)前記高圧ポンプの下流に配置されて前記高圧ポンプに連通連結された溶剤源試薬ヒータであって、前記溶剤源試薬を超臨界または亜臨界状態に変換するように構成された溶剤源試薬ヒータと、
(d)薬液配合ポンプであって、当該薬液配合ポンプの下流に薬液配合物を流すための薬液配合ポンプと、
(e)前記溶剤源試薬ヒータおよび前記薬液配合ポンプの両方の下流に配置されて前記溶剤源試薬ヒータおよび前記薬液配合ポンプの両方に連通連結されたプロセスチャンバであって、混合システムを含むプロセスチャンバと、を備える。
【0024】
さらに別の態様において、本発明は、本願明細書に記載の連続流式超臨界流体(SCF)装置を用いて超小型電子デバイスに載っている硬化フォトレジスト材料を除去する方法に関する。
【0025】
さらに別の態様において、本発明は、本願明細書に記載の連続流式超臨界流体(SCF)装置を用いて、超小型電子デバイスに載っている硬化フォトレジスト材料を除去するステップを含む、超小型電子デバイスの製造方法に関する。
【0026】
本発明のさらに別の態様は、改良された超小型電子デバイスと、この改良された超小型電子デバイスを組み込んだ製品とに関する。この改良された超小型電子デバイスは、本願明細書に記載の方法および/またはシステムを用いて行うフォトレジスト材料の除去を含む本発明の方法およびシステムを用いて製造され、当該超小型電子デバイスは必要に応じて製品に組み込まれる。
【0027】
本発明の他の態様、特徴、および実施形態は、以下の開示および付属の特許請求の範囲からより詳細に明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明は、薄膜を超小型電子デバイスに堆積させるための連続流式超臨界流体プロセスチャンバと装置とを目的としている。この連続流式装置は、動的混合システムを含むことが好ましい。
【0029】
また、本発明は、超臨界流体を使用したエッチング、洗浄、パーティクルの除去、残渣の除去、および他の公知の製造工程を含む、超小型電子デバイスの処理のための流体送出システムに関する。具体的には、本発明は、さらに、連続流式装置およびプロセスを用いて行う、超小型電子デバイスからの硬化フォトレジストの除去に関する。この連続流式装置は、動的混合システムを含むことが好ましい。
【0030】
本願明細書で使用する「超臨界流体」という用語は、目的の化合物の圧力−温度線図において臨界温度T以上および臨界圧力P以上の条件下にある材料を指す。本発明で使用される好適な超臨界流体はCOであり、これは単独で使用しても、またはAr、NH、N、CH、C、CHF、C、n−C、HO、NOなどの別の添加剤との混合物の形態で使用してもよい。重要なことは、超臨界流体に言及しているが、本発明は他の濃い流体、たとえば亜臨界流体などの使用も想定していることである。本願明細書で言う「亜臨界流体」とは、亜臨界状態の溶剤、すなわち、その特定の溶剤に係わる温度/圧力が臨界温度未満および/または臨界圧力未満である溶剤を指す。言い換えると、当該流体は超臨界状態ではなく、むしろ可変濃度の液体または気体である。
【0031】
本願明細書で言う「超小型電子デバイス」とは、レジストで被覆された半導体基板、フラットパネルディスプレイ、薄膜記録ヘッド、微小電気機械装置(MEMS:Microelectromechanical Systems)、および他の先進的な超小型電子部品に相当する。この超小型電子デバイスは、パターンおよび/またはベタ膜が形成されたシリコンウエハ、フラットパネルディスプレイ基板、またはフルオロポリマー基板を含みうる。さらに、この超小型電子デバイスは、メソ細孔またはミクロ細孔を有する無機固体を含みうる。「薄膜を超小型電子デバイスに堆積させる」という句は、限定的な意図は一切なく、最終的に超小型電子デバイスになる何れかの基板に薄膜を堆積させることを含むことを理解されたい。
【0032】
本願明細書で言う「高圧容器」とは、混合チャンバのほか、プロセスチャンバも含む。重要なことは、プロセスチャンバが混合チャンバになり、混合チャンバがプロセスチャンバになるように、プロセスチャンバが混合機能を含みうることである。
【0033】
本願明細書で使用する「硬化フォトレジスト」とは、未現像のフォトレジスト、現像されたフォトレジスト、架橋されたフォトレジスト、集積回路の後工程(BEOL:Back−End−Of−Line)デュアルダマシン処理中などにプラズマエッチングが行われたフォトレジスト、および/または、たとえば半導体ウエハの該当する層にドーパント種を注入するための前工程(FEOL:Front−End−Of−Line)処理中などにイオン注入されたフォトレジストを含むが、これだけに限定されるものではない。「超小型電子デバイスから硬化フォトレジスト材料を除去する」という句および「超小型電子デバイスを除去用組成物に接触させる」という句は、限定的な意図は一切なく、最終的に超小型電子デバイスになる何れかの基板から硬化フォトレジスト材料を除去すること、および当該基板を接触させることを含むことを理解されたい。
【0034】
本願明細書で言う「低K誘電材料」とは、積層超小型電子デバイスの誘電材料として使用される材料であって、誘電率が約3.5未満の何れかの材料に相当する。低K誘電材料は、珪素含有有機ポリマー、珪素含有ハイブリッド有機/無機材料、オルガノシリケートグラス(OSG)、TEOS、弗素化ケイ酸塩ガラス(FSG)、二酸化珪素、および炭素ドープ酸化物(CDO)ガラスなどの低極性材料を含むことが好ましい。低K誘電材料は、可変濃度および可変有孔率を有しうることを理解されたい。
【0035】
本願明細書に記載の連続流式装置およびプロセスは、(i)超臨界または亜臨界流動媒質を用いた超小型電子デバイス上への薄膜の成長、および/または(ii)超臨界または亜臨界流動媒質を用いて超小型電子デバイスに対して行うエッチング、洗浄、残渣の除去、薄膜の堆積、および層および/または残渣、好ましくは硬化フォトレジストを含む層、の除去のために使用しうる。本発明の以下の概略説明においては特に超臨界流体に言及するが、これは本発明の一実施例を示すためのものであり、本発明を限定する意図は一切ない。
【0036】
超小型電子デバイスへの薄膜の成長
超小型電子デバイスは、パターンおよび/またはベタ膜が形成されたシリコンウエハ、フラットパネルディスプレイ基板、またはフルオロポリマー基板を含みうる。メソ細孔またはミクロ細孔を有する無機固体にも薄膜を堆積させうる。超臨界流体は、孔への急速な浸透を保証する気体のような移送特性(たとえば、低粘性および表面張力の欠如)を有する。
【0037】
堆積される薄膜は、金属、金属混合物、金属合金、金属酸化物、金属硫化物、混合金属酸化物、混合金属硫化物、絶縁体、誘電材料、または低K誘電材料を含みうる。一部の実施形態においては、薄膜は複数の金属を含み、したがって前駆体はこれら複数の金属に対応する複数の前駆体を含む。さらに、薄膜は、複数の金属の均質または非均質の混合物としうる。たとえば、材料は、プラチナ/ニッケル混合物または合金、または銅混合物または合金としうる。さらに、堆積された薄膜全体にわたって個々の金属の濃度が異なる勾配を生じうる。
【0038】
連続流超臨界流体による堆積(SCFD:Supercritical Fluid Deposition)プロセスにおいては、少なくとも1つの溶剤と少なくとも1つの前駆体とを含有するSCF溶液をプロセスチャンバに導入する前に、このプロセスチャンバを超臨界圧力および超臨界温度の純溶剤(前駆体溶液中の溶剤と同じもの)で満たしておく。その後、少なくとも1つの超小型電子デバイスを収容したプロセスチャンバにSCF溶液を連続的に加えるに伴い、前駆体分解生成物または未使用の反応物質がプロセスチャンバから連続的に除去されてゆく。プロセスチャンバへの入出流量はほぼ等しいので、プロセスチャンバ内の圧力はほぼ一定に保たれるため、超臨界状態および前駆体の均一濃度が確実に維持される。総合的な流量は、特定の反応に応じて最適化される。
【0039】
反応条件下での超臨界溶剤への前駆体の溶解性は、当該技術分野で周知の可変体積観察セルで検証することができる(たとえば、マックヒュー(McHugh)らの「超臨界流体抽出法:原理と実践(Supercritical Fluid Extraction: Principles and Practice)」、バッタワース(Butterworths)発行、1986年ボストン)。既知の量の前駆体および超臨界溶剤をこの観察セルに投入し、単一相が光学的に観察される条件まで前駆体および超臨界溶剤を加熱および圧縮する。
【0040】
SCFDプロセスの温度および圧力は、前駆体(群)および選択した溶剤に応じて異なる。通常、温度は25O℃未満であり、100℃未満であることが多く、圧力は一般に50バールと500バールの間である。超小型電子デバイスと溶液との間の温度勾配は、化学選択性を高めるためにも使用できる。
【0041】
連続流式SCFDプロセスでは、膜の成長速度を制御するために、SCFDチャンバへの前駆体含有SCFの流量の監視および制御を注意深く行う必要がある。一般にRESSチャンバに対応するノズルなど、ミクロン単位寸法のノズルは、前駆体含有SCFを広い面積全体に均一に分布させるために必要な大量の流体流には対応できない。さらに、これらのノズルに対応する最大流量が存在する。これは、連続流SCFDを用いて成長させる膜の成長速度を制御するために必要な最大流量より小さいことが多い。スペクトルのもう一方の端では、複数のCFDチャンバに対応付けられた複数の標準流体送出開口部は一般に大きすぎて、流体流量の細かな制御は不可能である。
【0042】
シャワーヘッドによる送出は、従来技術の流体送出機構の欠陥を解決する。より具体的には、本発明の実施におけるシャワーヘッド型散布装置は、内部容積を閉囲する筐体を含みうる。この筐体は、前駆体含有SCFの供給源からの流れが連通するように接合される。この筐体は、散布装置の放出面を画成する壁を含む。このような壁は、この壁の近くにあってこの壁からの流体を受け止める位置関係にある堆積位置に向けて前駆体含有SCFを放出するための放出通路を多数有する。これらの放出通路は互いに離隔された位置関係にあって、放出面に放出通路開口部の配列を形成している。シャワーヘッドは、電極が一切無いことが好ましい。
【0043】
図1を参照すると、亜臨界および超臨界流動媒質からの薄膜の成長に使用しうるSCFDプロセスチャンバ100が図示されている。内部チャンバ124を画成する高圧チャンバ容器110と高圧頂部120とは、連結手段122を用いて連結しうる。連結手段122としては、たとえば、超臨界流体に対応する高圧に耐える定格のボルトまたはこの同等品などが挙げられる。内部チャンバ124は、約45cmから約60cmの範囲内で可変の容積を有することが好ましい。SCFDプロセスチャンバは、内部容積を画成するものであれば、単一の連続構造にも、または3つ以上の構成要素を含む構造にもしうることを当業者は理解されたい。したがって、SCFDプロセスチャンバは、図1に模式的に示されているような嵌め合わせ係合可能な容器110と頂部120とに限定されるものではない。
【0044】
チャンバ頂部120は、高圧管路130を貫通させるための開口部を含む。この高圧管路は、筐体142と流体散布装置140とによって画成される内部容積144に連通する。この流体散布装置はシャワーヘッドであることが最も好ましい。両頭矢印で示されているように、筐体142は容器110の長さに沿って軸方向に調節可能であるので、流体散布装置140と基板150との間の距離を変えることができる。基板150から流体散布装置140までの距離を軸方向に調節する手段は、当業者が決めることができ、たとえば、筐体142を螺合させたまま軸に沿って上下に移動させることができる螺軸でもよい。基板は、基板支持体160上に配置される。基板支持体160は、発熱体を含みうる。必要であれば、基板支持体160を絶縁材料170、たとえばアルミナ含有セラミック材料またはこの同等物、によって囲んでもよい。高圧容器110の壁によって、円形、楕円形、または多角形の内部チャンバ124が画成されことを当業者は理解されるはずである。
【0045】
稼動時、高圧管路130は多数の貫通孔を有する流体散布装置140を介して前駆体含有SCFを内部チャンバ124に放出することによって、前駆体含有SCF溶液が均一に分散されたシャワーを生じさせる。重要なことは、前駆体含有流体の超臨界状態が流体散布装置140の上流および下流で維持されることである。ただし、温度および圧力は、流体散布装置の上流および下流で同じでも異なってもよいことを指摘しておく。加熱された超小型電子デバイス150への導入によって、前駆体種は超小型電子デバイス150の上で熱分解される。
【0046】
注目すべき点は、筐体142を軸方向に移動させて流体散布装置140と基板150との間の距離を調節しうるので、前駆体含有流体種の滞留時間の制御も行えることである。滞留時間を制御することによって前駆体含有溶液中の前駆体の分解を極力抑え、成長する膜へのパーティクルの混入を最小限に抑えることは当該技術分野で周知である。さらに、流体散布装置が軸方向に調節可能であることによって、前駆体含有SCFに露出される高圧容器110の内壁の総面積を最小化しうるので、チャンバ壁への堆積による前駆体の損失を最小限に抑えることができる。
【0047】
薄膜の成長速度および成長した薄膜の均一性の制御は、SCFDプロセスチャンバの排出口の設計の改良によっても行いうる。通常、SCFDプロセスチャンバは排出口を1つだけ含み、この排出口が一般にはSCFDチャンバの底または後端にあるため、超小型電子デバイスの表面への前駆体含有SCFの拡散が不均一になりうる。
【0048】
図1を参照すると、多数の出口180が流体散布装置140に対して遠位に配置されている。本願明細書で言う「流体散布装置に対して遠位に配置されている」とは、流体散布装置からの軸方向の距離が、基板の露出面からの軸方向の距離より大きいことを指す。図1のSCFDチャンバ100を表す図2を参照すると、チャンバの軸方向の長さが線L−L’で表されている。流体散布装置140、基板150の露出面、および出口180は、それぞれ線P−P’、N−N’、およびM−M’で表されている。言い換えると、「流体散布装置に対して遠位に配置されている」とは、L−L’軸に沿った距離が|((M−M’)−(P−P’))|>|((N−N’)−(P−P’))|である構成に相当する。
【0049】
同じように、本願明細書で言う「流体散布装置に対して近位に配置されている」とは、流体散布装置からの軸方向の距離が基板の露出面からの軸方向の距離より短いことを指す。図2を参照すると、「流体散布装置に対して近位に配置されている」とは、距離L−L’軸に沿った距離が|((N−N’)−(P−P’))|>|((M−M’)−(P−P’))|である構成に相当する。流体の連続流と共に、流体散布装置に対して遠位に配置された出口を複数組み込むことによって、加熱された超小型電子デバイスの全体にわたって前駆体含有流体の均一な流れが保証されるので、より均一な膜が基板の露出面に堆積する。
【0050】
これらの出口は、流体散布装置に対して遠位に配置されると共に、基板支持体160および高圧容器110の内壁の露出面の面積を最小化するために、基板に隣接させて配置されることが好ましい。M−M’からN−N’までの絶対距離は、L−L’軸に沿ったチャンバ100全体の長さの約5%から約20%の範囲内であることが最も好ましい。
【0051】
少なくとも2つの出口180がSCFDチャンバ100の高圧容器110の周囲の同一面に対称的に配置されることが好ましいことを理解されたい。図1には図示されていないが、SCFDチャンバ壁の設計が損なわれない限りは、出口の数は3つ以上でもよい。出口180の数は、約2から約10であることが好ましい。また、少なくとも2つの出口を容器110の周囲に非対称的に、すなわちL−L’軸に沿ってそれぞれ異なるレベルに、配置しうることも理解されたい。
【0052】
また、図1のSCFDチャンバ100は、基板近くの流体の温度を監視するために基板の近傍に配置された少なくとも1つの内蔵熱電対と、流体散布装置に近接させた少なくとも1つの圧力変換器と、少なくとも1つの破裂板とを含みうる。
【0053】
成長プロセスの効率および成長した薄膜の品質の制御は、基板支持体、またはその内部、に配置されたヒータによっても行いうる。図1と同様の構成要素が同様の参照符号で示されている図3を参照すると、少なくとも1つの抵抗カートリッジヒータ210を基板支持体160の内部に配置しうる。抵抗カートリッジヒータ210は、結線220を介して電源230に電気的に接続されるが、必要であれば温度計にも接続される。加熱された基板の全範囲にわたって温度を監視するために、複数の熱電対を基板支持体の内部と外部とに、すなわち基板支持体の中心と基板支持体表面の縁部とに配置してもよい。図3には3つのカートリッジヒータ210が模式的に示されているが、本発明で使用するカートリッジヒータの数は3つに限定されるものではなく、これより多くても少なくてもよいことを理解されたい。
【0054】
カートリッジヒータ210によって発生された熱は、基板支持体の頭部165に局限化されることが好ましい。本願明細書で言う基板支持体の「頭部」とは、基板支持体上の基板に隣接する部分に相当する(図3に点線で近似位置が示されている)。
【0055】
あるいは、図4、図5A、および図5Bを参照すると、発熱体235は基板支持体であり(図4)、絶縁性超小型電子デバイス250の表面に当てられる絶縁体または発熱体260と、伝導性薄膜240とを有する。したがって、基板支持体の表面全体が活性熱源となり、より効率的にエネルギーが伝達される。薄膜の加熱に必要とされるワット密度は低く、より少ない電力で済むため、エネルギー効率が向上するほか、発熱体兼基板支持体235がたとえば0.3μmと極めて薄いことから熱慣性が低いため、加熱応答性が速く、温度制御をより正確に行えるので好都合である。さらに、加熱面の質量が小さいため、反応チャンバの壁への放熱を減らすことができる。
【0056】
これらの加熱設計の利点は、2つある。第1に、チャンバの表面面積が最小化されるので、SCFDチャンバの内壁への堆積によって失われる前駆物質の量が最小限に抑えられ、基板堆積効率が増加する。第2に、熱が基板支持体の頭部に局限化され、ホルダ側面からの熱損失が最小になるので、エネルギー損失による電力補償の必要性が最小になる。
【0057】
堆積される膜厚の微調整と前駆物質の損失の最小化とは、前駆体含有SCF溶液からの膜成長をパルス方式で行うことによって実現することもできる。シャワーヘッド/基板間の距離、基板の温度、およびSCFの濃度などの成長パラメータを最適化した後、前駆体をパルス方式でプロセスチャンバに送出することによって原子層成長(ALE:Atomic Layer Epitaxy)と同様の成長プロセスを実現しうる。
【0058】
このパルス式送出は、連続流の動的プロセスと同様であるが、前駆体含有流体がパルス方式でプロセスチャンバに直接放出され、チャンバ排出口は常時開いており、プロセスチャンバの下流にある背圧調整器によって調整される点が異なる。パルス式送出は、分解する前駆物質を基板表面に拡散させることによって堆積される膜の均一層を形成する。この膜は、次の到来パルスによって覆われる。パルス数を制御することによって、膜厚の微調整を実現し、前駆物質の損失を最小に抑えうる。
【0059】
パルス式送出は、流体散布装置の貫通孔の閉塞も防止しうる。パルス式送出では、流体散布装置の冷却が不要になる。この理由は、プロセスチャンバへの純SCCOの定常流によって冷却が行われるからである。加熱された前駆体含有流体は、流体散布装置の上流に配置されたパルス弁を通してプロセスチャンバに断続的に送り込まれる。このパルス弁は、所望のパルス効果を実現するために、周期的に開閉するように自動化されることが好ましい。したがって、加熱された前駆体が流体散布装置の貫通孔に留まる時間が最小になるため、貫通孔の閉塞も実質的に減る。
【0060】
本発明のSCFD装置300の模式図が図6に示されている。CO容器302からの二酸化炭素が、800〜850psiなどの相当な先端圧力でガスブースタ306に送り込まれる。COをガス状から高圧の濃い液体状に変換しやすくするために、屋内空気または窒素304もガスブースタに導入されてガスブースタ内のピストンを圧縮する。
【0061】
濃い液体COは、高圧ポンプ308に導かれる。オフラインでは、濃いCOはCO冷却装置310を通って循環し、高圧ポンプ308に戻る。CO冷却装置が存在しないと、液体二酸化炭素は最終的に環境との平衡温度に到達してCOが気相に変わりうる。したがって、何れの液体二酸化炭素システムにおいても、流体を循環させ続け、連続的に冷却することが望ましい。さらに、ポンプに液状流体が注入され、冷却システムが稼動した後は、ポンプを最も効率化するにはポンプを作動させ続けることである。以前に冷却された流体が停滞すると必然的に温まる。いったん気相化してしまうと、ポンプに液体COを注入して動作を再開させることは困難になりうる。CO冷却装置310およびCOヒータ312には、熱電対(TC)と、圧力変換器(PT)と、破裂板(RD)とを装備してもよい。
【0062】
堆積中、濃い液体COがCOヒータ312に注入され、高圧の液体が超臨界相に変換される。管路314内の超臨界COの一部をCO混合チャンバ管路316を通して混合チャンバ322に導き、残りをCOプロセスチャンバ管路318を通してプロセスチャンバ324に導いてもよい。CO混合チャンバ管路316に高圧逆止弁320を含めてもよい。これによって流体は弁320の上流にのみ流れ、下流には流れないようになる。重要なことは、プロセスチャンバ324に導かれるSCCOの定常流は、流体散布装置を冷却し、上記のような流体散布装置の目詰まりを最小限に抑えることに役立つ点である。
【0063】
混合チャンバ322は、静的ミキサでも動的ミキサでもよいが、バルク溶剤、助溶剤、および化学前駆体(群)が完全に混合される動的ミキサであることが好ましい。本発明の動的混合チャンバは、単純な希釈流体懸濁液のほか、異常粘性特性を呈しうる複合濃縮スラリーを含む多種多様な固体/液体懸濁システムの混合に使用しうる。動的ミキサの一例として、参照によってその全体を本願明細書に援用したものとする、マイケル・B・コルゼンスキ(Michael B.Korzenski)らによって2005年4月15日に提出された「除去プロセスのための超臨界流体除去配合物を予混合する装置および方法(Apparatus and Method of Pre−Mixing Supercritical Fluid Removal Formulations for Removal Processes)」と題する米国仮特許出願第60/672,170号明細書に開示されたミキサが挙げられる。注目すべき点は、本発明の装置は、前駆体(群)の性質に応じて、動的ミキサのみ、静的ミキサのみ、またはこの両方を含みうることである。SCFと前駆体(群)とは、動的ミキサを用いて混合されることが最も好ましい。
【0064】
プロセスチャンバ324は、このような薄膜堆積プロセスに必要な何れのチャンバでもよい。たとえば、プロセスチャンバは、本願明細書の図1、図3、および図4に開示されているチャンバでもよく、あるいは所望の堆積プロセスに必要な他の何れのチャンバでもよく、当業者が容易に決定しうるものである。プロセスチャンバは、連続式、パルス式、または静的な堆積のための、バッチ式チャンバでも枚葉式チャンバでもよい。
【0065】
複数の前駆体成分容器330からの複数の前駆体溶液成分は、前駆物質ポンプ332に同時に導入され、この中で予混合される。前駆物質ポンプ332は、高圧液体ポンプである。図6には4つの前駆体成分容器330が図示されているが、本願明細書では、堆積すべき特定の材料によってはこれより多い数またはこれより少ない数の容器が必要になることも想定している。前駆体溶液成分として、源試薬(前駆体)化合物(群)、錯体(群)および材料(群)、助溶剤(群)、共反応物質(群)、界面活性剤(群)、キレート剤(群)、希釈剤(群)、および/またはこのような用途に必要であるかまたは望ましい他の堆積促進成分(群)または組成安定化成分(群)が挙げられるが、これだけに限定されるものではない。重要なことは、前駆体成分容器330は前駆体成分を原液形態で、または溶液形態で、たとえば液体または固体の前駆体を適量の溶剤に溶かした形態で、含むことである。
【0066】
前駆体溶液は、薬液混合チャンバ管路334を通して混合チャンバ322に注入しても、または薬液プロセスチャンバ管路336を通してプロセスチャンバ324に直接注入してもよい。後者の方法は、上記のパルス式堆積プロセスで使用しうる。
【0067】
混合チャンバ322では、一定量の予混合済み前駆体成分群が一定量のSCCOと混合されて前駆体含有SCF溶液が形成される。個々の成分の量は、堆積すべき薄膜と処理条件とに基づき、当業者が容易に決めることができる。得られた前駆体含有SCF溶液は、すべての成分を超臨界状態で含むか、あるいは、これらの成分のうちの少なくとも1つが超臨界状態ではなく、超臨界流体に溶媒和されている。
【0068】
前駆体含有SCF溶液は、逆止弁340が内部に配設された前駆体含有SCFプロセスチャンバ管路338を通して、プロセスチャンバ324に導入しうる。たとえば、前駆体含有SCFをプロセスチャンバ324に連続的に導入してもよく、あるいは上記のように前駆体含有SCFをパルス式に送り込んでもよい。あるいは、前駆体含有SCFを混合チャンバ排出管路350経由で混合チャンバ322から排出してもよい。残存流体を減圧するために、背圧調整器(BPR:Back Pressure Regulator)372を混合チャンバ排出管路に設けてもよい。前駆体含有SCFの排出は、プロセスチャンバがオフラインのとき、または堆積装置の標準保守時に実施してもよい。
【0069】
プロセスチャンバ324内での薄膜の堆積に引き続き、未反応の前駆体含有SCFと超小型電子デバイスでの分解反応の生成物とを含む残存流体は、プロセスチャンバ排出管路360経由でプロセスチャンバ324から排出される。この残存流体は、管路内フィルタ362、背圧調整器364、および逆止弁366を通してから、分離器370に入るようにしてもよい。この分離器は、洗浄放出物の相および成分を分離するので、他の用途のための再生用に設けてもよく、あるいはシステムの供給側で再使用できるように再生された洗浄流体または添加剤の戻り管路に使用してもよい。このような分離は、相変化または他の化学的または物理的プロセスを操作することによって行いうる。
【0070】
本発明は、各種の圧力、温度、レベル伝達装置、手動および自動制御弁、逆止弁、逃し弁、破裂板、遮断弁、隔離弁、過圧逃し弁、質量流量制御弁、連結配管、および当該プロセスを安全かつ効果的に運用するために必要な他のハードウェア類を含む。本発明は、オペレータが本システムを制御および監視するために必要な情報の表示装置と適切なユーザインタフェースとを備えた制御パネル内のデジタル制御装置によって制御しうる。
【0071】
重要なことは、混合チャンバとプロセスチャンバとは、圧力変動および非最適性能を減らすために、同等の容積を有する高圧容器である点である。さらに、プロセスチャンバは、プロセスチャンバが混合チャンバにもなり、混合チャンバがプロセスチャンバにもなるように、混合機能を含みうる。本願明細書に記載の連続流式動的装置は、混合および処理の両方をその中で行える単一の高圧容器を含むように、当業者によって簡単に変更しうる。
【0072】
液状化学物質およびSCCOプロセス装置は、その全体を耐化学性金属で製造する必要がある。プロセスチャンバに使用する材料は、処理中に剥離、腐食、食刻、またはガス放出を起こしてはならず、処理用の化学物質類、動作圧力および温度に対応でき、必要な洗浄プロセスに耐えられる必要がある。あらゆる耐食材料は、金属の表面に保護酸化層を形成することによって自身を保護する。たとえば、アルミニウムは酸化アルミニウム(Al)を形成し、ステンレス鋼は酸化クロム(Cr)を形成する。しかし、これらの酸化物は、ハロゲン塩に曝されると点食される。また、あらゆる濃度の塩酸は、低温においても、300系ステンレス鋼を腐食する。硫酸、燐酸、および硝酸の希釈溶液は、高温および高圧下でT316SS(65重量%の鉄、12重量%のニッケル、17重量%のクロム、2.5重量%のモリブデン、2重量%のマンガン、および1重量%のシリコンを含む)を速やかに冒す。
【0073】
当該装置の構成材料の腐食および/または点食を防ぐために、特に混合および/またはプロセスチャンバには、ニッケル基合金の使用が好ましい。たとえば、超ニッケル合金は、過酷な腐食条件に対する卓越した耐性を有することが公知である。塩素点食に耐性があり、本願明細書に記載のSCCO装置の構成材料として使用しうる一般的な市販合金の一覧を以下に示す。
【0074】
合金400
合金400は、66重量%のニッケル、31.5重量%の銅、および1.2重量%の鉄を含む合金である。この合金は、多くの用途においてニッケルとほぼ同じ耐食性を示し、最大使用圧力および温度がより高く、機械加工性の大幅な向上により、より低コストである。合金400は、大半の用途において応力腐食割れを起こさないため、苛性アルカリ溶液および/または塩化物の存在下で広く使用される。この合金は、弗素、弗化水素、および弗化水素酸システムのための材料としても優れている。合金400は、適度な温度および濃度の塩化水素酸および硫酸に対してはある程度の耐性を示すが、これらの酸に対して通常選択される材料ではない。銅含有量が高いことから予想されるように、合金400は硝酸およびアンモニア系による腐食が速い。
【0075】
合金600
合金600は、76重量%のニッケル、15.5重量%のクロム、および8重量%の鉄を含む高ニッケル合金であり、高温および高圧において、硫黄化合物の存在下で苛性アルカリ類および塩化物に対して優れた耐性を示す。この合金は、高温での高強度のために選択されることが多い。合金600は、広範囲の腐食条件に対して推奨できるが、そのコストゆえに、この合金の並外れた特性が必要とされる用途だけに限られることが多い。
【0076】
合金B−2/B−3
合金B−2は、66重量%のニッケル、28重量%のモリブデン、2重量%の鉄、1重量%のクロム、1重量%のマンガン、および1重量%のコバルトを含む。合金B−3は、65重量%のニッケル、28.5重量%のモリブデン、1.5重量%の鉄、1.5重量%のクロム、3重量%のマンガン、1重量%のコバルト、および3重量%のタングステンを含む。両合金は、主に還元性酸環境に対する耐性、特に塩酸、硫酸、および燐酸に対する耐性のために開発されたものである。純粋形態のこれらの酸に対する両合金の耐性は卓越しているが、第二鉄イオンおよび他の酸化イオンが50ppm程度でも存在すると、これらの合金の耐性が劇的に低下しうる。
【0077】
合金C−276
合金C−276は、53重量%のニッケル、15.5重量%のクロム、16重量%のモリブデン、6.5重量%の鉄、4重量%のタングステン、2.5重量%のコバルト、および1重量%のマンガンを含むニッケル−クロム−モリブデン合金であり、一般に使用されるあらゆる合金のうちで最も広範な耐全面腐食性を有する。この合金は、本来は湿塩素に使用するために開発されたものであるが、塩化第二銅および塩化第二鉄などの強い酸化剤、および各種の塩素化合物および塩素汚染材料に対する優れた耐食性もある。その広範な耐薬品性ゆえに、合金C−276は、研究開発作業で使用される容器の材料として、T316SSの次に人気のある合金である。
【0078】
ニッケル200
ニッケル200は、商業上純粋なニッケルの呼称の1つである。ニッケル200は、熱苛性環境に対して究極的な耐食性を示すが、機械加工性が低いことによる高製造コストゆえにその用途は極めて限られる。
【0079】
図6の装置は、大半のSCFシステムが静的または再循環式であるのに対して、連続流式のSCFD装置である。本発明では、新鮮な前駆体含有SCF溶液がプロセスチャンバに入ると同時に、分解反応の望ましくない生成物をプロセスチャンバから除去できる。これにより、ウエハ表面への堆積がより効率化され、汚染物質の再堆積が最小限に抑えられる。
【0080】
超小型電子デバイスからの材料および残渣の除去
本発明の連続流式動的除去装置300の模式図は、上記のように図6にも図示されている。本除去装置の構成は上記の堆積装置に似ているが、図6の装置は複数の除去プロセス、たとえば、さまざまなプロセスチャンバ、薬液成分など、に適合化させる必要がある点が異なる。
【0081】
本願明細書に記載の連続流式装置およびプロセスは、超臨界または亜臨界流動媒質を用いて超小型電子デバイスに対して行うエッチング、洗浄、残渣の除去、薄膜層の堆積、および層および/または残渣の除去に使用しうる。本願明細書に記載の連続流式装置を用いて除去する層は、超小型電子デバイスのパターン面上の硬化フォトレジストを含むことが好ましい。本発明の以下の概略説明においては超臨界二酸化炭素に特に言及しているが、これは本発明の実施例を示すためであり、本発明の範囲を限定する意図は一切ない。
【0082】
連続流式プロセスにおいては、薬液配合成分、たとえば助溶剤および化学添加物、をプロセスチャンバに導入する前に、プロセスチャンバを超臨界圧力および超臨界温度の純溶剤(SCF配合物中の溶剤と同じもの)で満たしておく。その後、少なくとも1つの超小型電子デバイスが収容されたプロセスチャンバに基本的に均質なSCF配合物を連続的に加えてゆくに伴い、除去された生成物および/または未使用のSCF配合物が連続的にプロセスチャンバから除去されてゆく。プロセスチャンバの入出流量をほぼ等しくすることによって、プロセスチャンバ内の圧力がほぼ一定に保たれ、超臨界状態が確実に維持される。
【0083】
連続流式プロセスの温度および圧力は、薬液成分(群)および選択した溶剤に応じて異なる。通常、温度は250℃未満であり、100℃未満であることが多く、圧力は一般に50バールと500バールの間である。
【0084】
処理条件下での超臨界溶剤への薬液成分(群)の溶解性は、当該技術分野で周知の可変体積観察セルで検証することができる(たとえば、マックヒュー(McHugh)らの「超臨界流体抽出法:原理と実践(Supercritical Fluid Extraction: Principles and Practice)」、バッタワース(Butterworths)発行、1986年ボストン)。既知の量の薬液成分(群)および超臨界溶剤をこの観察セルに入れ、単一の相が光学的に観察される条件まで前駆体および超臨界溶剤を加熱および圧縮する。
【0085】
プロセスチャンバ324は、SCF除去プロセスに必要な何れかのチャンバでよく、該当するSCF除去プロセスとして、エッチング、洗浄、パーティクルの除去、エッチ後残渣の除去、および硬化フォトレジストの除去が挙げられるが、これだけに限定されるものではなく、当業者が容易に決定しうるものである。プロセスチャンバは、連続式、パルス式、または静的な処理のための、バッチ式チャンバでも枚葉式チャンバでもよい。
【0086】
SCFD装置と同様に、複数の薬液成分容器330からの複数の薬液成分は、薬液成分ポンプ332に導入され、この中で予混合される。薬液配合ポンプ332は、高圧液体ポンプである。図6には4つの薬液成分容器330が図示されているが、本願明細書では、処理すべき特定の材料に応じてこれより多い数またはこれより少ない数の容器が必要になることも想定している。薬液成分として、助溶剤(群)、酸化剤(群)、還元剤(群)、界面活性剤(群)、受動態化剤(群)、キレート剤(群)、エッチング液(群)、および/またはこのような用途に必要であるかまたは望ましい他の処理成分(群)が挙げられるが、これだけに限定されるものではない。重要なことは、これらの薬液成分容器330は、これらの薬液成分を原液形態で、または溶液形態で、たとえば液体または固体の化学物質を適量の溶剤に溶かした形態で、含むことである。
【0087】
混合チャンバ322では、一定量の予混合済み薬液成分群が一定量のSCCOと混合されてSCCO配合物が形成される。個々の成分の量は、洗浄/除去すべき層および処理条件に基づき当業者が容易に決定しうる。得られたSCCO配合物はすべての成分を超臨界状態で含むか、あるいは、これらの成分のうちの少なくとも1つが超臨界状態ではなく、超臨界流体に溶媒和されている。
【0088】
プロセスチャンバ324内での不要な層の洗浄/除去に引き続き、未反応のSCCO配合物と除去された生成物とを含む残存流体がプロセスチャンバ324からプロセスチャンバ排出管路360経由で排出される。この残存流体は、管路内フィルタ362、背圧調整器364、および逆止弁366を通してから、分離器370に入るようにしてもよい。この分離器は、処理放出物の相および成分を分離するので、他の用途のための再生用に設けてもよく、あるいはシステムの供給側で再使用できる再生済み処理流体または添加剤の戻り管路に使用してもよい。この分離は、相変化または他の化学または物理的プロセスを操作することによって行いうる。
【0089】
SCFD装置と同様に、混合チャンバおよびプロセスチャンバは、圧力変動および非最適性能を減らすために好ましくは同等の容積を有する、ニッケル基合金製の高圧容器であることが好ましい。さらに、プロセスチャンバは、プロセスチャンバが混合チャンバになり、混合チャンバがプロセスチャンバになるように、混合機能を含みうる。本願明細書に記載の連続流式動的装置は、混合および処理の両方をその中で行える単一の高圧容器を含むように、当業者によって簡単に変更しうる。
【0090】
本発明は、各種の圧力、温度、レベル伝達装置、手動および自動制御弁、逆止弁、逃し弁、破裂板、遮断弁、隔離弁、過圧逃し弁、質量流量制御弁、連結配管、および当該プロセスを安全かつ効果的に運用するために必要な他のハードウェア類を含みうる。本発明は、オペレータが本システムを制御および監視するために必要な情報の表示装置と適切なユーザインタフェースとを備えた制御パネル内のデジタル制御装置によって制御しうる。
【0091】
混合チャンバの一実施形態が図7に示されている。混合チャンバは、バルク溶剤、助溶剤、および化学添加物が完全に混合される動的混合チャンバであることが好ましい。本発明の動的混合チャンバは、単純な希釈流体懸濁液のほか、異常粘性特性を呈しうる複合濃縮スラリーを含む多種多様な固体/液体懸濁システムの混合に使用しうる。
【0092】
動的混合チャンバ400は、好ましくはプロセスチャンバと同じ容積を有する高圧容器410である。高圧容器410の壁によって、円形、楕円形、または多角形の混合チャンバが画成されることを当業者は理解されるはずである。動的混合チャンバは、(図7に図示されるような)ジャケット、加熱棒、またはカートリッジなどのヒータ414を具備することが好ましく、このヒータによって動的混合チャンバの外壁が取り囲まれることが好ましい。SCF入口418、助溶剤/化学添加物入口420、およびSCCO配合物出口422は動的混合チャンバの重力底部に配置されるものとして例示的に図示されているが、これらの位置は、図7に図示された位置に限定されないことを理解されたい。
【0093】
動的混合チャンバ400は、モータ駆動式撹拌機、たとえば高圧容器410(図示せず)の重力底部に載った磁気攪拌棒、あるいは高圧容器内でモータ駆動柱412の端に吊るされた多刃付き羽根車416、を含む。撹拌機は、何れのサイズまたは形状でもよく、当業者が容易に決定しうる。
【0094】
必要に応じて、多刃付き羽根車416は、モータ駆動式中空柱412に連通連結された開口部を含む。稼動時は、気体をモータ駆動式中空柱を降下させ、羽根車開口部から取り出すことによって気体を混合チャンバに導入してもよい。
【0095】
本願明細書に記載の動的混合チャンバによってプロセスチャンバへの均質なSCCO配合物の送出が保証されるので、静的混合システムを有する装置に比べ、配合物の洗浄/除去能力が向上する。本願明細書で言う「均質の」SCCO配合物とは、たとえばSCCO、助溶剤などの成分の合計量の少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、が混和している溶液を指す。
【0096】
本発明の特徴および利点は、下記の複数の実施例によってより詳細に示される。
【0097】
超小型電子デバイスからの硬化フォトレジストの除去効率に関して、混合効果、すなわち動的混合対静的混合、を判定するために一連の実験が行われた。サンプル素子として、薄い化学酸化物層と、その上の高線量イオン打ち込み有機フォトレジスト層とを有するパターン形成シリコンウエハを用いた。処理前のサンプルウエハの顕微鏡写真を図8a(左上60°からの斜視図)および図8b(右90°の断面図)に示す。
【0098】
サンプルウエハは、12重量%の助溶剤成分(群)を含むSCCO配合物で処理された。SCCOは、静的混合チャンバを用いて12重量%の助溶剤成分(群)と混合された。処理装置(図示せず)は、プロセスチャンバから出てきた溶液をプロセスチャンバに再導入して再使用するための再循環器をさらに含んでいた。処理パラメータは、10分間の静的混合/再循環と、これに続く4分間のメタノール/SCCOリンスとを含んでいた。10分間の洗浄と4分間のリンスのサイクルは、合計3回繰り返された。顕微鏡写真8aおよび8bに対応する処理後の図8cおよび図8dを参照すると、この静的混合/再循環システムを用いた場合は、フォトレジスト材料が完全には除去されてはいないことが分かる。具体的には、硬化したイオン打ち込みクラストの下にあったフォトレジストは除去されたが、硬化したクラストは除去されなかった(支持する非硬化フォトレジストが存在しないため、クラストは崩壊した)。これは、プロセスチャンバへの導入前の静的ミキサでのSCCO、助溶剤、および化学添加物の混合が不適切であった結果であると考えられる。また、使用済み流体をサンプル表面に再循環させたことによって、適切な洗浄/除去に必要な新鮮な化学物質の到達が阻止された。重要なことは、再循環サイクル中に、プロセス条件、すなわち圧力または温度、の微細な変化が発生すると、相分離が誘発されるため、助溶剤(群)、化学添加物(群)、および/または残渣が沈殿しうる点である。
【0099】
清浄な化学物質をプロセスチャンバに導入することの重要性は、以下の実験によって裏付けられた。本発明の静的混合チャンバを用いて、SCCOに12重量%の助溶剤成分(群)を混合した。本処理装置は、図6に図示の装置と同様であり、プロセスチャンバから出た溶液は分離器に導かれるので、以降の各洗浄サイクルにおいては新しい配合物がプロセスチャンバに導入されるはずである。処理パラメータは、2分間の静的混合/模擬連続流とその後のメタノール/SCCOリンスを含んでいた。2分間の洗浄、リンスサイクルは、新鮮な化学物質を用いて合計3回繰り返された。「模擬」連続流は、各洗浄サイクルにおいて、SCCO配合物の新しいアリコートを導入することによって実現された。硬化フォトレジストは完全に除去されたが、パターン面に多少の沈殿が観察された(図8eおよび図8fを参照)。理論に縛られたくはないが、この沈殿は、静的ミキサ内での不適切な混合のほか、ほぼ飽和したSCCO溶剤の結果であると想定される。
【0100】
溶質に対するSCCO容量の増加、すなわちより不飽和な溶液の使用、によって図8eおよび図8fに見られる球状の沈殿がなくなるか否かを判定するために、6重量%の配合物を使用して、まったく同じプロセスを繰り返した。図8gおよび図8hを参照すると、短い洗浄サイクルとより低濃度の助溶剤とを組み合わせてシミュレートされた動的混合と連続流式プロセスとによってフォトレジストとすべての球状パーティクルとが効率的に除去されたことが分かる。とは言え、この複数工程から成るプロセスは、プロセス時間を長引かせるので望ましくない。
【0101】
動的混合を組み込むと、プロセスを単純化し、洗浄時間を短縮できる。図6の連続流式装置と動的ミキサとを併用すると、フォトレジストが完全に除去される(図8iおよび図8jを参照)。
【0102】
したがって、本願明細書においては本発明を本発明の特定の態様、特徴、および実施例に関して説明してきたが、本発明の有用性はこれだけに限定されるものではなく、他の多数の態様、特徴、および実施形態にわたり、これらを包含することを理解されたい。したがって、付属の特許請求の範囲は、このような態様、特徴、および実施形態のすべてをその精神および範囲内に相応に含むものとして広範に解釈されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明によるSCFDプロセスチャンバの切開図である。
【図2】本発明によるSCFDプロセスチャンバの切開図であり、軸指示線L−L’と、相対距離指示線M−M’、N−N’、およびP−P’とを含む。
【図3】本発明による抵抗カートリッジヒータを含むSCFDプロセスチャンバの切開図である。
【図4】本発明による発熱体兼基板支持体を含むSCFDプロセスチャンバの切開図である。
【図5A】本発明による発熱体兼基板支持体の立面図である。
【図5B】図5Aの発熱体兼基板支持体の断面図である。
【図6】本発明による連続流式装置の構成要素の模式図である。
【図7】本発明による動的混合チャンバの切開図である。
【図8a】処理前の制御ウエハの走査型電子顕微鏡写真である(左上60°斜視図)。
【図8b】処理前の制御ウエハの走査型電子顕微鏡写真である(右90°断面図)。
【図8c】図8aの制御ウエハを静的ミキサと再循環器とを含む装置を用いて処理した後の走査型電子顕微鏡写真である。
【図8d】図8bの制御ウエハを静的ミキサと再循環器とを含む装置を用いて処理した後の走査型電子顕微鏡写真である。
【図8e】図8aの制御ウエハを静的ミキサを含む装置と新しい化学物質とを用いて連続流をシミュレートして処理した後の走査型電子顕微鏡写真である。
【図8f】図8bの制御ウエハを静的ミキサを含む装置と新しい化学物質とを用いて連続流をシミュレートして処理した後の走査型電子顕微鏡写真である。
【図8g】図8aの制御ウエハを静的ミキサを含む装置と希釈した新しい化学物質とを用いて連続流をシミュレートした処理の後の走査型電子顕微鏡写真である。
【図8h】図8bの制御ウエハを静的ミキサを含む装置と希釈した新しい化学物質とを用いて連続流をシミュレートした処理の後の走査型電子顕微鏡写真である。
【図8i】図8aの制御ウエハを図6の連続流式装置と動的ミキサとを用いて処理した後の走査型電子顕微鏡写真である。
【図8j】図8bの制御ウエハを図6の連続流式装置と動的ミキサとを用いて処理した後の走査型電子顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続流式超臨界流体(SCF)装置であって、
(a)溶剤を収容する溶剤容器と、
(b)前記溶剤容器に連通連結された高圧溶剤ポンプであって、前記溶剤を当該高圧溶剤ポンプの下流に流すための高圧溶剤ポンプと、
(c)前記高圧溶剤ポンプの下流に配置されて前記高圧溶剤ポンプに連通連結された溶剤ヒータであって、前記溶剤を超臨界状態に変換するように構成された溶剤ヒータと、
(d)高圧薬液成分ポンプであって、少なくとも1つの薬液成分を当該薬液成分ポンプの下流に流すための高圧薬液成分ポンプと、
(e)前記溶剤ヒータおよび前記薬液成分ポンプの両方の下流に配置されて前記溶剤ヒータおよび前記薬液成分ポンプの両方に連通連結された混合チャンバと、
(f)前記溶剤ヒータおよび前記混合チャンバの下流に配置されて前記溶剤ヒータおよび前記混合チャンバに連通連結されたプロセスチャンバと、
を備える連続流式超臨界流体(SCF)装置。
【請求項2】
請求項1に記載のSCF装置であって、超小型電子デバイス上の薄膜の堆積に有用なSCF装置。
【請求項3】
請求項2に記載のSCF装置であって、前記プロセスチャンバが、
(a)内部チャンバと、
(b)前記内部チャンバ内に配置された流体散布装置と、
(c)前記内部チャンバ内に配置され、1つ以上の超小型電子デバイスを支持するように構成された超小型電子デバイス支持体と、
(d)前記流体散布装置に対して遠位に配置された少なくとも2つの排出口と、
を備える、SCF装置。
【請求項4】
請求項3に記載のSCF装置であって、前記流体散布装置がシャワーヘッドを備えるSCF装置。
【請求項5】
請求項4に記載のSCF装置であって、前記シャワーヘッドと前記超小型電子デバイスとの間の距離を変えるために、前記シャワーヘッドが前記SCFプロセスチャンバの長さに沿って軸方向に調節可能であるSCF装置。
【請求項6】
請求項3に記載のSCF装置であって、前記少なくとも2つの排出口が前記超小型電子デバイスの近くに配置されたSCF装置。
【請求項7】
請求項3に記載のSCF装置であって、前記少なくとも2つの排出口が前記SCFプロセスチャンバの周囲に対称的に配置されたSCF装置。
【請求項8】
請求項3に記載のSCF装置であって、前記超小型電子デバイス支持体、またはその内部、に配置された発熱体をさらに含むSCF装置。
【請求項9】
請求項8に記載のSCF装置であって、前記発熱体が前記超小型電子デバイス支持体の内部に配置された少なくとも1つの抵抗カートリッジヒータを備える、SCF装置。
【請求項10】
請求項8に記載のSCF装置であって、前記少なくとも1つの抵抗カートリッジヒータが前記デバイスの近くで前記超小型電子デバイス支持体に放熱するように配置されたSCF装置。
【請求項11】
請求項8に記載のSCF装置であって、前記発熱体が伝導性薄膜を備える、SCF装置。
【請求項12】
請求項3に記載のSCF装置であって、前記プロセスチャンバが高圧容器と高圧頂部とを備え、前記高圧容器と高圧頂部とが嵌め合わせ係合可能であり、前記内部チャンバを画成するSCF装置。
【請求項13】
請求項3に記載のSCF装置であって、前記溶剤を前記流体散布装置の上流および下流において前記超臨界状態に維持するように構成されたSCF装置。
【請求項14】
請求項2に記載のSCF装置であって、前記少なくとも1つの薬液成分が源試薬化合物、源試薬複合体、源試薬材料、助溶剤、共反応物質、界面活性剤、キレート剤、希釈剤、およびこれらの組み合わせから成る群から選択された種を含む、SCF装置。
【請求項15】
請求項2に記載のSCF装置であって、前記少なくとも1つ薬液成分が金属、金属合金、金属酸化物、金属硫化物、混合金属酸化物、混合金属硫化物、誘電体、低k誘電体、および他の薄膜から成る群から選択された薄膜を堆積させるために使用される、SCF装置。
【請求項16】
請求項1に記載のSCF装置であって、前記溶剤ヒータから前記プロセスチャンバへの前記超臨界溶剤の流れが連続するように構成されたSCF装置。
【請求項17】
請求項1に記載のSCF装置であって、薬液成分含有SCFを形成するために、前記超臨界溶剤と前記少なくとも1つの薬液成分とを前記混合チャンバ内で混合するように構成されたSCF装置。
【請求項18】
請求項17に記載のSCF装置であって、前記混合チャンバから前記プロセスチャンバへの前記薬液成分含有SCFの流れが連続するように構成されたSCF装置。
【請求項19】
請求項17に記載のSCF装置であって、前記混合チャンバから前記プロセスチャンバへの前記化学物質含有SCFの流れがパルス状になるように構成されたSCF装置。
【請求項20】
請求項1に記載のSCF装置であって、前記プロセスチャンバの下流に配置された分離器をさらに備えるSCF装置。
【請求項21】
請求項20に記載のSCF装置であって、前記プロセスチャンバと前記分離器との間に背圧調整器が配置されたSCF装置。
【請求項22】
請求項1に記載のSCF装置であって、前記混合チャンバの容積が前記プロセスチャンバの容積にほぼ等しいSCF装置。
【請求項23】
請求項1に記載のSCF装置であって、前記混合チャンバが静的混合チャンバと動的混合チャンバとから成る群から選択されるSCF装置。
【請求項24】
請求項1に記載のSCF装置であって、前記超臨界溶剤が二酸化炭素を含むSCF装置。
【請求項25】
請求項1に記載のSCF装置であって、前記超臨界溶剤を循環的に冷却するために、前記高圧溶剤ポンプに連通連結された超臨界溶剤冷却装置をさらに備えるSCF装置。
【請求項26】
請求項23に記載のSCF装置であって、前記動的混合チャンバが、
(a)内部チャンバを画成する高圧容器と、
(b)動的混合を行うことによって前記SCFと少なくとも1つの薬液成分とを均質化するために、前記内部チャンバの内部に配置された撹拌機と、
を備える、SCF装置。
【請求項27】
請求項26に記載のSCF装置であって、前記撹拌機が磁気回転棒とモータ駆動式多刃付き羽根車とから成る群から選択されるSCF装置。
【請求項28】
請求項26に記載のSCF装置であって、前記高圧容器の外壁を取り囲む加熱ジャケットをさらに備えるSCF装置。
【請求項29】
(請求項26)
請求項1に記載のSCF装置であって、超小型電子デバイスに載っている不要な層、パーティクル、および/または残渣を除去するために有用なSCF装置。
【請求項30】
(請求項27)
請求項29(請求項26)に記載のSCF装置であって、前記不要な層、パーティクル、および/または残渣が、エッチ後残渣と、バルクフォトレジストと、硬化フォトレジストとから成る群から選択されるSCF装置。
【請求項31】
(請求項28)
請求項29(請求項26)に記載のSCF装置であって、前記少なくとも1つの薬液成分が助溶剤、界面活性剤、酸化剤、還元剤、安定剤、キレート剤、錯化剤、受動態化剤、エッチング液、およびこれらの組み合わせから成る群から選択される種を含むSCF装置。
【請求項32】
(請求項29)
請求項1に記載のSCF装置を用いて、フォトレジスト材料が載っている超小型電子デバイスからイオン打ち込みフォトレジストを除去する方法。
【請求項33】
(請求項30)
請求項26に記載のSCF装置を用いて、フォトレジスト材料が載っている超小型電子デバイスからイオン打ち込みフォトレジストを除去する方法。
【請求項34】
(請求項31)
請求項1に記載のSCF装置を用いて薄膜を超小型電子デバイスに堆積させる方法。
【請求項35】
(請求項32)
請求項17に記載のSCF装置であって、前記薬液成分含有配合がエッチング溶液、洗浄溶液、パーティクル除去溶液、およびエッチ後残渣除去溶液から成る群から選択された溶液を含む、SCF装置。
【請求項36】
(請求項33)
請求項1に記載のSCF装置を用いて超小型電子デバイスから材料を除去する方法であって、薄膜が載っている超小型電子デバイスから前記薄膜をエッチングするプロセス、パーティクル状物質が載っている超小型電子デバイスから前記パーティクル状物質を除去するプロセス、エッチ後残渣が載っている超小型電子デバイスから前記エッチ後残渣を除去するプロセス、水性種が載っている超小型電子デバイスから前記水性種を除去するプロセス、およびこれらのプロセスの組み合わせから成る群から選択されたプロセスを含む方法。
【請求項37】
(請求項34)
請求項1に記載のSCF装置であって、前記混合チャンバおよび前記プロセスチャンバの少なくとも一方がニッケル基合金製の構成材料で構成されたSCF装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−537018(P2008−537018A)
【公表日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−506799(P2008−506799)
【出願日】平成18年4月17日(2006.4.17)
【国際出願番号】PCT/US2006/014321
【国際公開番号】WO2006/113573
【国際公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(599006351)アドバンスド テクノロジー マテリアルズ,インコーポレイテッド (141)
【Fターム(参考)】