説明

超音波による攪拌と電場を用いた静電チャックの洗浄

静電チャック(ESC)の洗浄方法であって、ESCのセラミック表面を誘電性流体に浸す工程と、ESCのセラミック表面を導電性表面から離して、誘電性流体がESCのセラミック表面と導電性表面との間に満たされる工程と、誘電性流体を超音波攪拌すると同時にESCに電圧を印加する工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波による攪拌と電場を用いた静電チャックの洗浄に関する。
【背景技術】
【0002】
静電チャック(ESC)は、プラズマ・エッチング・チェンバーのような半導体処理装置の構成要素であり、化学蒸着、物理蒸着、又はエッチング反応などの処理中において、半導体ウエハやガラス基板(すなわち、フラットパネル・ディスプレイ)の運搬、保持、及び/又は温度調整のために使われる。ESCは、寿命が短い場合が多く、動的な位置合わせの不具合、ESCと支持された基板の下面との間のヘリウム冷却ガスの漏れ、デチャック時間の増加、ESCに対する基板の付着、又はデチャックの失敗などの不具合に繋がる。ESCの早期の不具合は、基板の破損を招き、スループットに影響し、粒子及び欠陥の問題に繋がり、さらにはESCが組み込まれたプラズマ処理機器にかかる費用を高くし得る。
【発明の開示】
【0003】
ESCのセラミック表面を誘電性流体に浸すことを含む静電チャックの洗浄方法が提供される。ESCのセラミック表面は導電性表面から離され、静電チャックのセラミック表面と導電性の表面との間に誘電性流体が満たされる。誘電性流体は超音波攪拌され、同時にESCには電圧が印加される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0004】
汚染物は、エッチング工程中にESCのセラミック表面に堆積される。汚染物はESCの表面特性を変化させる。ESCの性能は、ESC表面の清浄度に大きく依存するため、このような変化は早期の不具合を引き起こす。有機不純物、金属不純物、フッ化物不純物、電極不純物、シリコン粒子、表面粒子、及びこれらの組合せが、誘電プラズマエッチング中や新品のESCの製造中にESC表面に堆積される。フッ化物不純物は、例えばフッ化アルミニウム、フッ化チタン、及びはそれらの組合せを含み、金属不純物は、例えば鉄、クロム、ニッケル、モリブデン、バナジウム、及びこれらの組合せを含み、電極不純物は、例えばタングステンを含み、シリコン粒子は、例えばSi,SiO2,及びこれらの組合せを含む。驚くべきに、新しいESCは事前調整でき、使用済みのESCは、製造工程由来の、又は、エッチング工程中にESC上に堆された汚染物を洗浄するによって回復され、開示された洗浄処理を用いてセラミック表面を再生できることがわかった。
【0005】
ここで使用される誘電性ESCは、酸化シリコン及びlow-k材料をプラズマエッチングのような誘電エッチング処理で使われるESCを意味する。例示的な誘電ESCは、金属基盤(例えば陽極酸化アルミニウム、又は非陽極酸化アルミニウム合金)と、ウエハのような半導体又は基板が支持されるセラミック表面とから構成され得る。例えば、前記セラミック表面は、二つのセラミック層(例えば約0.5mm(20ミル)の厚さのセラミック層)の間に、パターン化された耐火性(refractory)(例えばタングステン又はモリブデン)電極を含む焼結した積層物を含み得る。前記積層物は、導電性粉末(例えばアルミニウム、シリコン、又は類似のもの)を含むシリコーンベースの素材のような結合剤を用いて金属基盤に接着され得る。金属基盤は、約3.8cm(1.5インチ)の厚さであり、一般的に高周波(RF)と直流(DC)電力供給、リフト・ピンのための貫通孔、ヘリウムガス通路、温度制御された流体循環のための流路、温度感知構造などを含む。
【0006】
ESCは、一般的にクーロンタイプ、又はジョンセン・ラーベックタイプのいずれかである。クーロンタイプのESCは、クーロン静電気力を発生させるための高い電気抵抗を持つ誘電表面層を用いる。低い印加電圧でより高い静電クランプ力をよく提供するジョンセン・ラーベックタイプのESCは、例えばTiO2でドープされたAl2O3のような低い抵抗の誘電表面層を利用する。
【0007】
一実施形態によると、ジョンセン・ラーベックタイプのESCのセラミック誘電層は94%のAl2O3、4%のSiO2,1%のTiO2,及び1%のCaOを痕跡量のMgO, Si, Ti, Ca, 及びMg とともに含み得る。別の実施形態によると、クーロンタイプのESCのセラミック誘電層は99%以上のAl2O3を含み得る。従って、セラミック層の組成によって、Ti,Si, Mg, 及びCa等の元素は開示された洗浄処理により取り除くべき汚染物ではないこともあり得る。その一方、金属粒子や電極粒子(例えばタングステン又はモリブデン)などの汚染物は、開示された洗浄処理によってESC表面から取り除かれるのが望ましい。
【0008】
有機不純物、金属不純物、及び電極不純物などの汚染物は新品のESC上で見出され得るが、有機不純物、フッ化物粒子、及びシリコン粒子などの汚染物は誘電エッチングに使用されたESCのセラミック表面に堆積され得る。
【0009】
ここに提供されるのは、ESCのセラミック表面を誘電性流体に浸す工程と、ESCのセラミック表面を導電性表面から離して、誘電性流体がESCのセラミック表面と導電性表面との間に満たされる工程と、誘電性流体が超音波攪拌されると同時にESCに電圧を印加する工程と、を含むESCの洗浄方法である。
【0010】
好ましくは、誘電性流体には94.6〜756.9W/liter(25〜200W/gallon)の超音波力が与えられる。誘電性流体を超音波攪拌すると同時に、ESCに好ましくは15〜120分間電圧が印加される。電圧は、例えば125〜500Vの直流でよく、好ましくは逆転できる。また電圧は例えば30〜90Hz、好ましくは約60Hzの交流(AC)でもよい。ESCのセラミック表面は、導電性表面から好ましくは5〜200μm、更に好ましくは25μmだけ離れており、電圧が印加されるとESCのセラミック表面と導電性表面の間の隙間に好ましくは10〜15MV/mの電場が生じる。導電性表面は、ESCのセラミック表面と導電性表面の間の隙間に均一な電場ができるように、好ましくは静電チャックより横方向に大きく、好ましくは平らである。
【0011】
洗浄方法は、少なくともESCのセラミック表面を脱イオン水に浮遊させて、脱イオン水を超音波攪拌する工程、脱イオン水でESCを濯ぐ工程、及び/又は、ESCを好ましくは約120℃で1時間焼く(bake)工程をさらに含み得る。ESCは、ESCのセラミック表面を下向きにした状態で洗浄されるのが好ましい。洗浄方法はESCのセラミック表面から汚染物粒子を取り除くのが好ましい。特に、洗浄方法は、ESCのセラミック表面と導電性表面との間の距離よりも小さい平均直径をもつ汚染物をESCのセラミック表面から、具体的には平均直径約5〜10μmの汚染物粒子をESCのセラミック表面から取り除くために最も効果的であることがわかった。これより小さい汚染粒子もESCのセラミック表面から取り除くことができる。
【0012】
[実施例]
以下に示す洗浄処理は、新品及び使用済みのESCを洗浄するために使用され得るものであり、例示としてあげているが、本発明を限定するものではない。洗浄処理の効率を決定するための基準を定めるために、洗浄を行う前に、二つのシリコンウエハを、エッチングを行うことなく、ESCに静電的にクランプされる。これらのESCは、誘電エッチングでウエハをクランプするために既に使用されたものである。これらのESCは使用済みであるため、ESCのセラミック表面も既にプラズマに曝されている。その結果、ESCのセラミック表面は汚染物粒子によってひどく汚染されており、洗浄を行ってこれら汚染物粒子を取り除くことになる。
【0013】
図を参照すると、洗浄処理に使う誘電性流体の量を減らすためには、約17.8リットル(4.7gallons)の脱イオン水30が入っている超音波タンク20の中にプラスチックタンク10を配置し、二つのタンクの間に脱イオン水が存在するようにすることができる。超音波タンク20は一般的にステンレススチールであり、超音波変換器40を備えている(その電源は図示されていない)。導電性金属板50はESC60より横方向に大きく、約1.27cm(0.5インチ)の厚さであり、プラスチックタンク10の底に置くことができる。あるいは、導電性金属板50を底に持つプラスチックタンク10の代わりに、平らな底面を持つ導電性タンクも使用され得る。導電性金属プレート50には約25μmの厚さを持つ複数片のテープ(不図示)が貼られている。従って、ESC60の周辺に存在する複数片のテープは、導電性金属板50とESC60のセラミック表面70との間の距離を開けるためのスペーサになり、セラミック表面70は、プラスチックタンク10に下向きに配置され、導電性金属板50の上に位置する。必要であれば、ESC60を浮遊させ、ESC60のセラミック表面70と導電性金属板50の間に距離を置くこともできる。
【0014】
3MTM、St.Paul, MNが販売するFluorinertTMなどのような誘電性流体80を約3.5cm(1.5インチ)ほどプラスチックタンク10に入れ、誘電性流体80がESC60のセラミック表面70を覆い、かつESC電極90は浸さないようにする。超音波タンク20の中にあるプラスチックタンク10は、誘電性流体80の量を減らすために使われるので、プラスチックタンク10を使わずに、誘電性流体80を、導電性で好ましくは平らな底面を持つ超音波タンク、又はその底に金属板が設置された超音波タンクに直接入れることもできる。
【0015】
高電圧供給部100を介して250Vの直流電圧をESC電極90に印加し、約242W/L(64W/gallon) に相当する約300Wの超音波力を前記脱イオン水に与える。約30分後、ESC電極90に印加された電圧を逆転させる。更に約30分後、ESC電極90に印加された電圧を遮断し、超音波力を切り、プラスチックタンク10を超音波タンク20から取り出し、超音波タンク20の底から約2.54cm(1インチ)の隙間を置いてESC60のセラミック表面70を再び下向きにして超音波タンク20の脱イオン水に浮遊させる。約300Wの超音波力を約30分間脱イオン水に与えることができる。ESC60は脱イオン水で濯がれ、120℃で1時間焼かれる。
【0016】
様々な実施形態が説明されたが、当業者に当然である様々な変更、改良が行われてもよいことは明らかである。そのような変更、改良は請求の範囲に含まれると理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ESCを洗浄するための構成の一例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電チャックを洗浄する方法であって、
前記静電チャックのセラミック表面を誘電性流体に浸す工程と、
前記静電チャックの前記セラミック表面を導電性表面から離して、前記誘電性流体を前記静電チャックの前記セラミック表面と前記導電性表面との間の隙間に満たす工程と、
前記誘電性流体を超音波攪拌すると同時に前記静電チャックに電圧を印加する工程と、
を含む方法。
【請求項2】
15〜120分間、前記誘電性流体を超音波攪拌すると同時に前記静電チャックに電圧を印加することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電圧の印加は、前記静電チャックに直流電圧を印加することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記電圧の印加は、前記静電チャックに125〜500Vの直流電圧を印加することを含む請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記電圧の印加は、前記静電チャックに印加する電圧を逆転させることを含む請求項3記載の方法。
【請求項6】
前記静電チャックの前記セラミック表面が下向けの状態で前記静電チャックを洗浄する請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記電圧の印加は、前記静電チャックに交流電圧を印加することを含む請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記電圧の印加は、前記静電チャックに約60Hzの交流電圧を印加することを含む請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記電圧の印加は、前記静電チャックに電圧を印加して10〜15MV/mの電場を生成することを含む請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記誘電性流体を超音波攪拌すると同時に前記静電チャックに電圧を印加する前記工程は、前記静電チャックの前記セラミック表面から汚染物粒子を取り除くために効果的である請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記誘電性流体を超音波攪拌すると同時に前記静電チャックに電圧を引火する前記工程は、前記静電チャックの前記セラミック表面から平均直径約5〜10μmの汚染物粒子を取り除くために効果的である請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記誘電性流体の超音波攪拌は、前記誘電性流体に94.6〜756.9W/literの超音波力を印加することを含む請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記静電チャックを前記誘電性流体から取り出し、少なくとも前記静電チャックの前記セラミック表面を脱イオン水に浮遊させる工程と、
前記脱イオン水を超音波攪拌する工程と、
を更に含む請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記静電チャックを前記誘電性流体から取り出して、脱イオン水で濯ぐ工程を更に含む請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記静電チャックを前記誘電性流体から取り出して、前記静電チャックを焼く工程を更に含む請求項1記載の方法。
【請求項16】
前記セラミック表面を前記導電性表面から離すとき、前記静電チャックの前記セラミック表面を前記導電性表面から5〜200μm離すことを含む請求項1記載の方法。
【請求項17】
前記セラミック表面を前記導電性表面から離すとき、前記静電チャックの前記セラミック表面を前記導電性表面から25μm離すことを含む請求項1記載の方法。
【請求項18】
前記導電性表面は、前記静電チャックより横方向に大きい請求項1記載の方法。
【請求項19】
前記導電性表面は平らである請求項1記載の方法。
【請求項20】
請求項1記載の方法によって洗浄された静電チャック。

【図1】
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【公表番号】特表2009−521311(P2009−521311A)
【公表日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−547295(P2008−547295)
【出願日】平成18年12月11日(2006.12.11)
【国際出願番号】PCT/US2006/047183
【国際公開番号】WO2007/078656
【国際公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(592010081)ラム リサーチ コーポレーション (467)
【氏名又は名称原語表記】LAM RESEARCH CORPORATION
【Fターム(参考)】