説明

車両用運転支援装置、及び、運転支援システム

【課題】他車両の運転者に関する情報に基づいて適切な運転支援制御を行なうことが可能な車両用運転支援装置、及びこれを含む運転支援システムを提供すること。
【解決手段】自車両の現在位置を特定する現在位置特定手段と、無線通信を行なう通信手段と、運転支援動作を行なう車載機器を制御する制御手段と、を備え、現在位置特定手段により特定された自車両の現在位置を含む要求信号を通信手段により車外設備に送信し、要求信号に対する応答として通信手段により受信された自車両周辺を走行する他車両の運転者に関する運転者情報に基づいて、制御手段の制御内容を決定及び/又は変更することを特徴とする、車両用運転支援装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両周辺を走行する他車両の存在に基づき車載機器による運転支援動作を行なう車両用運転支援装置、及び、これと情報センターとにより実現される運転支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、他の移動体(車両や船舶等)に関する情報を移動体間又はセンターとの通信により取得し、当該情報に基づいて他の移動体の安全度を判定し、判定結果を出力する装置についての発明が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、他の移動体の使用者(運転者)の運転歴や交通違反歴、事故歴、当該他の移動体の位置や速度、進行方向等に対して重み付けして安全度を判定することにより、適切な判定を行なって出力することができるものとしている。
【特許文献1】特開2006−85336号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の装置に関する発明では、交通違反歴や事故歴等により判定された他の移動体の安全度を出力、すなわち表示等することが記載されているが、この結果、運転者が単に危険度の高い移動体の存在を知ることができるのみであって、具体的にどのように回避や注意を行なえばよいかを自分で考慮判断しなければならない。従って、運転者の注意負担が過大なものとなる。
【0004】
また、上記従来の装置に関する発明では、移動体制御部を備え、他の移動体の安全度(危険度)に基づいて移動体の走行状態を制御することについて一応触れられてはいるが、具体的に、如何なる機器に対して如何なる内容の制御を行なうかについての記載は全くなされていない。従って、他の移動体やその運転者に起因する危険を回避するための制御を、適切に行なうことができない場合が生じる。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、他車両の運転者に関する情報に基づいて適切な運転支援制御を行なうことが可能な車両用運転支援装置、及びこれを含む運転支援システムを提供することを、主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の第1の態様は、自車両の現在位置を特定する現在位置特定手段と、無線通信を行なう通信手段と、運転支援動作を行なう車載機器を制御する制御手段と、を備え、現在位置特定手段により特定された自車両の現在位置を含む要求信号を通信手段により車外設備に送信し、要求信号に対する応答として通信手段により受信された自車両周辺を走行する他車両の運転者に関する運転者情報に基づいて、制御手段の制御内容を決定及び/又は変更することを特徴とする、車両用運転支援装置である。ここで、「車外設備」とは、情報センターのような設備であってもよいし、他車両であってもよい。
【0007】
この本発明の第1の態様によれば、他車両の運転者に関する運転者情報に基づいて、制御手段の制御内容を決定する。すなわち、運転支援動作の内容や制御閾値、開始条件等を運転者情報に基づいて個別具体的に決定・変更するのである。これにより、運転者情報に基づいた適切な制御を行なうことが可能となる。
【0008】
また、本発明の第1の態様において、運転者情報は、例えば、自車両周辺を走行する他車両の運転者の違反情報及び/又は事故歴を含む。
【0009】
また、本発明の第1の態様において、車載機器による運転支援動作は、例えば、自車両周辺を走行する他車両に関する注意喚起を含む。
【0010】
また、本発明の第1の態様において、制御手段の制御内容の決定は、例えば、車載機器による運転支援動作の制御閾値を決定又は変更することを含む。
【0011】
また、本発明の一態様は、好ましくは、ユーザーにより入力された目的地までの推奨経路を設定する推奨経路設定手段を備え、推奨経路設定手段は、通信手段により受信された運転者情報に基づいて推奨経路を設定する手段である。
【0012】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様の車両用運転支援装置と、車外設備に相当する情報センターと、を有する運転支援システムであって、情報センターは、運転者に関する情報が記憶されるデータベースと、走行中の車両及び該走行中の車両を運転する運転者を監視する車両監視手段と、車両用運転支援装置との通信を行なうセンター側通信手段と、を備え、センター側通信手段により受信された要求信号に含まれる当該車両の現在位置の周辺を走行する車両の運転者を車両監視手段により特定し、特定した運転者に関する情報をデータベースから抽出し、この抽出した情報に基づいて運転者情報を作成して要求信号を送信した車両に送信することを特徴とする、運転支援システムである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、他車両の運転者に関する情報に基づいて適切な運転支援制御を行なうことが可能な車両用運転支援装置、及びこれを含む運転支援システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。
【実施例】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。図1は、本発明の一実施例に係る運転支援システム1の全体構成の一例を示す図である。運転支援システム1は、車両用運転支援装置10と、情報センター100と、により構成される。
【0016】
車両用運転支援装置10は、ナビゲーション装置20と、通信装置30と、を備える。また、ナビゲーション装置20には、多重通信線40を介して、ヨーレートセンサー50、車速センサー52、車間距離制御用ECU(Electronic Control Unit)60、後方警戒制御用ECU62、及び、右折支援制御用ECU64、が接続されている。なお、多重通信線40を介した機器間の通信は、CAN(Controller Area Network)やBEAN、AVC−LAN等の適切な通信プロトコルを用いて行なわれる。
【0017】
ナビゲーション装置20は、主要な構成として、統合アンテナ21と、メモリ22と、ディスプレイパネル23と、音声入出力装置24と、ナビゲーションコンピューター25と、を備える。
【0018】
統合アンテナ21は、各種電波信号を送受信可能なアンテナであり、GPS衛星からのGPS信号や道路交通情報送信サービスに係る電波ビーコン、ETC信号等を受信し、ナビゲーションコンピューター25に出力する。
【0019】
メモリ22は、ハードディスクやDVD(Digital Versatile Disk)、CD−ROM等の記憶媒体であり、地図情報が記憶されている。この地図情報は、交差点等を示すノード及び道路を示すリンクの形式で表現したものである。
【0020】
ディスプレイパネル23は、グラフィックシステムとしてVGA(Video Graphics Array)を採用して動画を含む画像表示を行なうと共に、タッチパネルとしてユーザーによる各種の入力操作を可能に構成されたディスプレイ装置である。ディスプレイパネル23は、その表面にユーザーがタッチ操作したことによる電圧の変化を検出して、タッチ操作された位置を認識する。ディスプレイパネル23の表示内容はナビゲーションコンピューター25により決定され、ディスプレイパネル23になされた入力操作はナビゲーションコンピューター25に送信される。
【0021】
音声入出力装置24は、例えば、音声入力が可能なマイク、及びスピーカーから構成される。音声入出力装置24の出力内容はナビゲーションコンピューター25により決定され、音声入出力装置24に入力された音声はナビゲーションコンピューター25に入力される。
【0022】
ナビゲーションコンピューター25は、例えば、CPUを中心としてROMやRAM等がバスを介して相互に接続されたコンピューターユニットであり、その他、入出力インターフェイスやタイマー、カウンター等を備える。なお、ROMには、CPUが実行するプログラムやデータが格納されている。また、ナビゲーションコンピューター25は、こうしたハードウエア構成を用いて実現される主要な機能ブロックとして、現在位置特定部25Aと、経路案内部25Bと、通信制御部25Cと、制御内容決定部25Dと、を備える。
【0023】
現在位置特定部25Aは、GPS信号の時間差に基づく演算により自車両の現在位置(緯度、経度、高度)を特定する。また、現在位置特定部25Aは、ヨーレートセンサー50及び車速センサー52から入力されるセンサー出力値や、上記統合アンテナ21が受信する電波ビーコンに含まれる情報に基づいて自車両の現在位置を補正する。この他にも、FM多重放送により受信される情報に基づいて補正を行なってもよいし、周知のマップマッチング技術に基づく補正を行なってもよい。
【0024】
なお、ヨーレートセンサー50は、例えば、圧電セラミックスの歪み量と方向により、車両の鉛直軸方向の回転角速度(ヨーレート)を検出して、多重通信線40に出力する。また、車速センサー52は、例えば、各輪に取り付けられた車輪速センサーとスキッドコントロールコンピューターから構成され、車輪速センサーが出力する車輪速パルス信号をスキッドコントロールコンピューターが車速矩形波パルス信号(車速信号)に変換して、多重通信線40に出力する。
【0025】
経路案内部25Bは、通常のナビゲーション装置が有する機能としての経路案内を行なう。すなわち、現在位置特定部25Aが特定した自車両の現在位置からユーザーがディスプレイパネル23や音声入出力装置24を用いて入力した目的地に至るまでの推奨経路を、メモリ22に記憶された地図情報を参照して設定し、EEPROM等の記憶媒体に記憶する。そして、推奨経路に従って自車両が走行するように、ディスプレイパネル23や音声入出力装置24を用いた画像表示・音声案内を行なう。なお、本実施例では、推奨経路の設定に際して、情報センター100から送信される運転者情報を参照している。詳しくは、後述する。
【0026】
通信制御部25Cは、通信装置30に指示信号を送信することにより、情報センター100に対して現在位置特定部25Aが特定した自車両の現在位置を含む要求信号を送信する。要求信号の送信は、例えば、自車両の走行時(又は車両システムの起動時)において所定時間(例えば、数[sec]〜数[h]等)毎に行なわれる。そして、要求信号に対する応答として通信装置30が受信した運転者情報をメモリ22に記憶する。
【0027】
通信装置30と情報センター100との通信は、例えば、無線基地局80及びネットワーク90を介して行なわれる。通信装置30と無線基地局80との間では、携帯電話網、PHS(Personal Handy-phone System)網、無線LAN、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)、衛星電話、ビーコン、TVやラジオの放送網等を利用した無線通信が行なわれる。また、無線基地局80と情報センター100を接続するネットワーク90は、例えば、公衆電話交換網(PSTN)やデジタル通信ネットワーク(ISDN)、光ファイバ等の有線ネットワークである。データの送受信には例えばTCP(Transmission Control Protocol)/IP(Internet Protocol)等のプロトコルと上位互換であるHTTP(Hyper Text Transfer Protocol)やFTP(File Transfer Protocol)、MIME(Multipurpose Internet Mail Extension)等のプロトコルが使用される。
【0028】
従って、通信装置30は、例えば、データ通信アンテナや通信モジュール等からなる。また、Bluetooth対応の携帯電話機が用いられてもよいし、機械的に携帯電話を連結して用いてもよい。更に、ビーコン送受信機、TVやラジオの受信機等が用いられてもよい。
【0029】
以下、情報センター100について説明する。情報センター100は、例えば、警察や交通安全協会等の情報サービス施設や放送局等を基に構成され、データベース102と、センター側通信装置104と、車両監視装置106と、情報処理装置108と、を備える。なお、これらの構成要素の全てが同一の施設内に設置される必要はなく、それぞれがネットワークを通じて接続された構成であってもよい。
【0030】
データベース102には、運転免許を保有する運転者の運転者IDに対応する過去の違反情報(過去にした交通違反の履歴)や事故歴、運転経歴等が記憶されている。当該情報は、警察による取締り等の結果として、リアルタイムにアップデートされる。センター側通信装置104は、上記の通信態様に適用可能な設備であり、例えば、モデムや通信端末、TV電波やラジオ電波の送信設備等を含む。
【0031】
車両監視装置106は、無線通信等により走行中の車両の現在位置及び当該車両を運転している運転者の運転者IDを検知し、情報処理装置108に入力する。車両監視装置106の具体的態様について特段の制限は存在しないが、例えば、前述した通信装置30と情報センター100との通信設備がそのまま共用され、走行中の車両から自動的に送信される運転者ID信号を検知する態様であってもよいし、道路端のインフラにより各車両から送信されるビーコン波等を検出する態様であってもよい。また、既存の自動速度違反取締装置(通称、オービス(ORBIS))の如く、ナンバープレートを撮像するカメラを道路端に設置してこれを情報処理装置108に入力する態様であってもよい。なお、これらの複数の態様が同時に採用されてよいのは言うまでもない。
【0032】
情報処理装置108は、車両監視装置106により検知された走行中の車両の現在位置を運転者IDと対応付けて逐次記憶するための、EEPROM等の一時記憶用メモリを備える。図2は、センター側通信装置104が要求信号を受信した際の情報処理装置108の処理の流れを示すフローチャートの一例である。
【0033】
まず、当該要求信号に含まれる現在位置の「周辺」を走行中の車両の現在位置及び運転者IDを一時記憶用メモリから抽出する(S200)。ここで、「周辺」とは、例えば、所定距離を半径とする円領域内や、これを要求信号を送信してきた車両の進行方向に引き伸ばした楕円状の領域内、また、法定速度等の基準速度で走行したと仮定した場合に所要時間が一定時間以下となる領域内等と定義できる。また、「周辺」を走行中の車両及び運転者IDは複数抽出されることが当然に想定される(もとより、一つだけ抽出されることも、全く抽出されないこともあり得る)。
【0034】
そして、抽出された各運転者IDを用いてデータベース102を検索し(S210)、検索の結果得られた車両の現在位置及び過去の違反情報や事故歴から、各種交通違反、及び事故歴の延べ回数を集計して運転者情報を作成し(S220)、要求信号を送信してきた車両に対して、作成した運転者情報を送信する(S230)。図3は、データベース102に逐次記憶される元データのデータ形式、及び、情報処理装置108により作成され、運転者情報として送信されるデータのデータ形式の一例を示す図である。このように、集計処理を行なってコンパクト化したデータを運転者情報として送信することにより、通信負荷を軽減することができる。なお、図示する如く、推奨経路の設定のため、運転者情報は、リンク別の内訳を含んでもよい。
【0035】
以下、車両用運転支援装置10についての説明に戻る。経路案内部25Bは、上記の如く送信された運転者情報に基づいて、推奨経路の設定(既に推奨経路を設定済みの場合は、推奨経路の変更であってよい)を行なう。例えば、(1)まず運転者情報を考慮せずに仮推奨経路を作成し(図4(A)参照)、(2)次に仮推奨経路上の各リンクの中で、全交通違反及び事故歴の合計が所定数以上である危険リンクが存在するか否かを判定する。そして、(3)危険リンクが存在する場合には、その領域を迂回する経路を探索し、迂回経路があればそれを採用して推奨経路を決定する(図4(B)、(C)参照)。なお、迂回経路があっても余りにも遠回りになる場合はこれを採用しない等、更に詳細な場合分けをして推奨経路が作成されることが望ましい。例えば、予想所要時間や総走行距離の増加程度について所定の条件を設けることとすればよい。
【0036】
交通事故や速度超過、駐車違反等の違反経験者は、類似の事故や違反を繰り返す傾向にあるため、こうした者が運転する車両が走行している場所を回避して走行することにより、例えば同一加害者による事故や違反を減少させることができる。従って、本実施例の如く、過去に交通違反をした運転者の運転する車両が所定台数以上走行している場所を検知してこれを迂回するように推奨経路を設定することにより、未然に事故等を防止することができる。
【0037】
制御内容決定部25Dは、上記の如く送信された運転者情報に基づいて、運転支援動作を行なうための車載機器(本実施例では、スロットルモータ72及び注意喚起装置74を指す)を制御する、車間距離制御用ECU60、後方警戒制御用ECU62、及び右折支援制御用ECU64に対して種々の指示信号を送信する(すなわち、制御内容を決定・変更する)。
【0038】
ここで、各制御用ECUが行なう運転支援制御の内容について述べる。各制御用ECUは、例えば、前述したナビゲーションコンピューター25と同様のハードウエア構成を有するコンピューターユニットである。各制御用ECUは、統合されて単独のものであってもよいし、エンジンコントロールコンピューター等の他の車載ECU類に統合されてもよいが、本実施例ではそれぞれ独立したものとして説明する。
【0039】
車間距離制御用ECU60は、先行車両検出装置71を用いて検知された自車両の前方を自車両と同方向に走行する車両(以下、先行車両と称する)との車間距離を、予め設定された目標車間距離に維持して走行するように、スロットルモータ72や変速機等の制御を行なう。先行車両検出装置71は、例えば、自車両前方を検出範囲とするミリ波レーダー装置であり、ミリ波の反射波が帰ってくるまでの時間、反射波の角度、及び周波数変化を利用して、自車両周辺における物体の距離、方位、速度等を検出する。そして、所定の大きさ以上の物体であって自車両と同方向に移動しているものが、車間距離制御用ECU60により先行車両として認識される。なお、先行車両検出装置71は、レーザーレーダーや赤外線レーダー、ステレオカメラ装置等による代替も可能である。
【0040】
目標車間距離は、原則として、ユーザーによるハードスイッチやGUI(Graphical User Interface)の操作、音声入力等によって、例えば大・中・小の三段階に設定されるが、後述する如く、ナビゲーションコンピューター25からの指示信号に基づいて増減変更される。なお、車間距離制御用ECU60が生成する制御信号は、エンジンコントロールコンピューター等の他の車載ECUを介してスロットルモータ72や変速機に送信されてもよい。また、車間距離制御用ECU60は、自車両前方の所定距離以内に先行車両が存在しない場合には、セット車速を維持して走行するようにスロットル開度や変速段の調節を行なう(定速走行制御)。このセット車速も、目標車間距離と同様に原則としてユーザー設定されるが、ナビゲーションコンピューター25からの指示信号に基づいて増減変更されてよい。
【0041】
後方警戒制御用ECU62は、後方車両検出装置73により検出された自車両の後方を自車両と同方向に走行する車両(以下、後方車両と称する)が後方警戒距離以内に接近した場合に、注意喚起装置74を用いて運転者に注意喚起を行なう。後方車両検出装置73は、例えば、自車両後方を検出範囲とするミリ波レーダー装置であり、先行車両検出装置71と同様の代替が可能である。後方警戒距離は、例えば、予め設定されて後方警戒制御用ECU62のROM等に記憶されているが、ナビゲーションコンピューター25からの指示信号に基づいて増減変更される。注意喚起装置74は、ブザーやスピーカー、表示・明滅(フラッシュ)装置等を含み、音声入出力装置24が共用されてよい。
【0042】
右折支援制御用ECU64は、自車両が交差点を右折しようとする際に、対向車両検出装置75により検出された対向車両が交差点に到達するまでの時間(到達時間)を推定し、到達時間が所定時間以内であり且つ前方の信号が青である場合に、「右折が危険を伴うため対向車両の通過を待つ」ように促す旨のアナウンスを注意喚起装置74により行なう。
【0043】
自車両が交差点を右折しようとしていることの判定は、ナビゲーション装置20において行なうことができる。例えば、現在位置特定部25Aが特定した自車両の現在位置が交差点付近(交差点から所定距離の領域内)であって、操舵角センサーの出力により車輪の車体に対する傾き(操舵角)が所定角度以上右に向いている場合に、自車両が交差点を右折しようとしていると判定することができる。そして、肯定的な判定を得た場合に、多重通信線40にその旨を出力することとすればよい。また、前方の信号が青であることの判定は、対向車両検出装置75が有するカメラの撮像画像解析により行なうことができる。
【0044】
対向車両検出装置75は、例えば、自車両前方を撮像するカメラとレーダー装置等との組み合わせからなる。到達時間は、レーダー装置により検出される対向車両の速度と位置に基づいて算出可能である。また、所定時間は、原則として、上記交差点を右折しようとしている旨の判定を得た都度、標準的な運転者の運転能力と当該交差点のサイズに基づいて算出される(十分余裕をもった初期設定値を用いてもよい)が、ナビゲーションコンピューター25からの指示信号に基づいて増減変更される。
【0045】
図5は、ナビゲーションコンピューター25により実行される本発明の特徴的な処理の流れを示すフローチャートである。本フローは、所定時間毎に(例えば、前述した要求信号の送信周期に合わせて)実行される。
【0046】
まずは、前述の如く、情報センター100に対して要求信号を送信し(S300)、これに対する応答として情報センター100から送信される運転者情報を受信する(S310)。
【0047】
次に、経路案内部25Bによる推奨経路の設定(既に設定されている場合は、再設定)を行なう(S320)。なお、目的地が設定されていない場合は、何も処理を行なわない。
【0048】
そして、運転者情報を参照し、事故歴の延べ回数が第1の所定数以上であること、及び駐車違反の延べ回数が第2の所定数以上であること、の少なくとも一方を満たすか否かを判定し(S330)、少なくとも一方を満たす場合には、現在制御に用いられている目標車間距離を大きく変更し、且つセット車速を小さく変更するように車間距離制御用ECU60に指示する(S340)。
【0049】
事故歴のある運転者は、車両前後の確認がおろそかであるため、後方車両の存在に気付かずに急停車する可能性が比較的高いと考えられる。また、再事故の巻き添えとなる可能性もある。一方、駐車違反をしたことのある運転者は、路上駐車のために急停車をする可能性が比較的高いと考えられる。従って、こうした運転者の運転する車両に対して比較的小さい車間距離をもって走行するのは危険度が高いと考えられるため、目標車間距離を大きく変更することとした。更に、事故歴のある運転者は、信号のない交差点における飛び出し(一時停止無視)等の可能性も比較的高いと考えられるため、より安全面を重視した走行をすべく、セット車速を小さくすることとした。これらの処理により、事故歴や駐車違反歴のある運転者の運転する車両が自車両周辺を走行していることによる危険を軽減することができる。
【0050】
続いて、速度超過違反の延べ回数が第3の所定数以上であるか否かを判定し(S350)、所定数以上存在する場合には、現在制御に用いられている後方警戒距離を大きく変更するように後方警戒制御用ECU62に指示する(S360)。
【0051】
速度超過違反をしたことのある運転者は、概して高速走行する傾向にあると考えられるため、自車両の周辺にこうした運転者の運転する車両が存在する場合、追突を受ける可能性が比較的高いと考えられる。そこで、後方警戒距離を大きく変更することとした。このような処理により、速度超過違反歴のある運転者の運転する車両が自車両周辺を走行していることによる危険を軽減することができる。
【0052】
更に、信号無視の延べ回数が第4の所定数以上であるか否かを判定し(S370)、第4の所定数以上である場合には、現在制御に用いられている所定時間(到達時間に対する閾値の所定時間)と前方の信号が青であることの条件を変更するように後方警戒制御用ECU62に指示して(S380)、本フローの1ルーチンを終了する。すなわち、実際に前方の信号が青でなくなってもしばらくの間(数[sec]〜十数[sec]程度)は青であるとみなし、且つ所定時間を大きく変更する。また、対向車両の通過を待つように促すアナウンスの語調を強いものに変更したり、音量を大きくする指示を併せて行なってもよい。
【0053】
信号無視をしたことのある運転者は、前方の信号が黄色や赤に変わっても駆け込み通過をする傾向が高いと考えられる。仮に、自車両が右折をしようとしている際に、こうした運転者が対向車両を運転しているとすると、通常時よりも慎重な右折の開始が望まれる。そこで、前方の信号が黄色や赤に変わってもしばらくの間は警戒体制を継続することとし、対向車両が交差点手前で加速して交差点を通過する可能性を考慮して、所定時間を大きく変更することとした。このような処理により、信号無視歴のある運転者の運転する車両が自車両周辺を走行していることによる危険を軽減することができる。
【0054】
なお、上記第1〜第4の所定数は適合値であり、任意に定めてよい。S330、S350、S370のいずれにおいても否定的な判定を得た場合には、何も制御を行なわず、本フローの1ルーチンを終了する。
【0055】
以上説明した本実施例の運転支援システム1、及び車両用運転支援装置10によれば、自車両周辺を走行する車両の運転者に関する運転者情報を取得し、当該運転者情報に含まれる違反情報や事故歴を考慮して、運転支援動作の作動条件等が適切に決定される。従って、違反歴や事故歴のある運転者の運転する車両が自車両周辺を走行していることによる危険を軽減し、安全運転に寄与することができる。
【0056】
また、違反歴や事故歴のある運転者の運転する車両が自車両周辺を走行している場合に、画一的に全ての運転支援動作を積極的に行なうものとすれば、過剰な運転支援動作により煩わしさを感じるような不都合も生じ得るが、本実施例の車両用運転支援装置10では、違反情報や事故歴の種類に応じて個別具体的に制御内容を決定するから、このような不都合は抑制されることとなる。
【0057】
また、違反歴や事故歴のある運転者の運転する車両が自車両周辺を走行している場合に、これを迂回するように推奨経路を設定・変更するから、危険度の高いルートを回避して走行することができる。
【0058】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【0059】
例えば、実施例で例示した運転者情報に基づく制御内容の決定は、あくまで一例である。従って、運転者情報の内容に応じた適切なものであれば、任意に制御内容を決定してよい。例えば、事故歴のある車両が所定数以上存在する場合に(図5のフローチャートにおけるS330の判定においてYES)、後方警戒制御用ECU62や右折支援制御用ECU64にも何らかの指示を行なってよい。
【0060】
また、運転者情報に基づく制御内容の決定は、実施例の如く制御閾値や作動条件を変更するものに限られず、各運転支援動作の程度を変更するものであってもよい。具体的には、実施例で示唆したように注意喚起アナウンスの音量等を変更して注意喚起効果を大きくしてもよいし、車間距離制御に係る運転支援動作のゲインを大きくして(例えば、スロットルバルブ開度の調節量をより大きく変更して)、より迅速に車両挙動に反映させてもよい。更に、各運転支援動作のオン/オフを決定するものであってもよい。
【0061】
また、運転者情報の取得は、必ずしも情報センター100から取得するものに限られず、車車間通信により取得するものとしてもよい。
【0062】
また、運転者情報は、実施例のものに限られず、データベースに登録された元データがそのまま送信されてもよい。この場合、実施例の如く交通違反歴や事故歴の絶対数に基づく制御に限られず、交通違反歴や事故歴を有する運転者の割合に基づく制御が行なわれてもよい。また、実施例で例示したデータ項目の一部が省略されても構わないし、運転者固有の運転癖等が更に含まれてもよい。
【0063】
また、運転者情報に基づく推奨経路の設定において、リンク毎に判定を行なうことを例示したが、リンク以外の予め定められた領域毎に同様の判定を行なってもよい。
【0064】
また、運転者情報に基づく推奨経路の設定を省略しても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、自動車製造業や自動車部品製造業等に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の一実施例に係る運転支援システム1の全体構成の一例を示す図である。
【図2】センター側通信装置104が要求信号を受信した際の情報処理装置108の処理の流れを示すフローチャートの一例である。
【図3】データベース102に逐次記憶される元データのデータ形式、及び、情報処理装置108により作成され、運転者情報として送信されるデータのデータ形式の一例を示す図である。
【図4】運転者情報に基づいて推奨経路の設定を行なう様子を示す図である。
【図5】ナビゲーションコンピューター25により実行される本発明の特徴的な処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0067】
1 運転支援システム
10 車両用運転支援装置
20 ナビゲーション装置
21 統合アンテナ
22 メモリ
23 ディスプレイパネル
24 音声入出力装置
25 ナビゲーションコンピューター
25A 現在位置特定部
25B 経路案内部
25C 通信制御部
25D 制御内容決定部
30 通信装置
40 多重通信線
50 ヨーレートセンサー
52 車速センサー
60 車間距離制御用ECU
62 後方警戒制御用ECU
64 右折支援制御用ECU
71 先行車両検出装置
72 スロットルモータ
73 後方車両検出装置
74 注意喚起装置
75 対向車両検出装置
80 無線基地局
90 ネットワーク
100 情報センター
102 データベース
104 センター側通信装置
106 車両監視装置
108 情報処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の現在位置を特定する現在位置特定手段と、
無線通信を行なう通信手段と、
運転支援動作を行なう車載機器を制御する制御手段と、を備え、
前記現在位置特定手段により特定された自車両の現在位置を含む要求信号を前記通信手段により車外設備に送信し、該要求信号に対する応答として前記通信手段により受信された自車両周辺を走行する他車両の運転者に関する運転者情報に基づいて、前記制御手段の制御内容を決定及び/又は変更することを特徴とする、車両用運転支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用運転支援装置であって、
前記運転者情報は、自車両周辺を走行する他車両の運転者の違反情報及び/又は事故歴を含む、車両用運転支援装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両用運転支援装置であって、
前記車載機器による運転支援動作は、自車両周辺を走行する他車両に関する注意喚起を含む、車両用運転支援装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の車両用運転支援装置であって、
前記制御手段の制御内容の決定は、前記車載機器による運転支援動作の制御閾値を決定又は変更することを含む、車両用運転支援装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の車両用運転支援装置であって、
ユーザーにより入力された目的地までの推奨経路を設定する推奨経路設定手段を備え、
該推奨経路設定手段は、前記通信手段により受信された運転者情報に基づいて前記推奨経路を設定する手段である、車両用運転支援装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の車両用運転支援装置と、前記車外設備である情報センターと、を有する運転支援システムであって、
前記情報センターは、
運転者に関する情報が記憶されるデータベースと、
走行中の車両及び該走行中の車両を運転する運転者を監視する車両監視手段と、
前記車両用運転支援装置との通信を行なうセンター側通信手段と、を備え、
該センター側通信手段により受信された前記要求信号に含まれる当該車両の現在位置の周辺を走行する車両の運転者を前記車両監視手段により特定し、該特定した運転者に関する情報を前記データベースから抽出し、該抽出した情報に基づいて運転者情報を作成して前記要求信号を送信した車両に送信する、
ことを特徴とする、運転支援システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−59171(P2008−59171A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−234073(P2006−234073)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】