説明

運転支援装置、運転支援方法および運転支援プログラム

【課題】運転者の意図を尊重しつつ、確実に目標車速まで減速する技術を提供する。
【解決手段】自車両の前方の所定位置における目標車速を取得し、前記目標車速まで減速させる際の、減速度が異なる複数の減速動作パターンを取得し、前記自車両の車速を制御するための運転操作に基づいて、前記複数の減速動作パターンの中から減速動作パターンを選択し、前記選択された減速動作パターンを基準にして前記所定位置に到達する以前に前記自車両の車速を前記目標車速まで減速させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転支援を行う制御を行う運転支援装置、運転支援方法および運転支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ナビゲーション装置が提供する道路情報を用いて車両の速度を制御する技術が知られている。特許文献1には、前方のカーブ区間の形状に応じて決められた距離手前の地点から減速制御の実施の要否を判断する制御がなされ、必要な減速度が所定値以上であると判断された場合、運転者がアクセルペダルの踏み込みを解除したときに運転者の減速意志有りとして、減速制御を開始することが記載されている。
【特許文献1】特開2004−116637号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の技術においては、ある減速完了目標地点までに確実に車両を減速させることと、減速制御の実施に関して運転者の意図をできるだけ尊重することとを両立できなかった。例えば、特許文献1の技術においては、アクセルペダルが踏み込まれている状態のとき、減速制御を実施することができない。アクセルペダルが踏み込まれていても、例えば速度超過でカーブ区間に進入しそうな場合には、強制的に減速制御を実施することが望ましい。
【0004】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、運転者の意図を尊重しつつ、確実に目標車速まで減速する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明においては、自車両を目標車速まで減速させる際の、減速度が異なる複数の減速動作パターンを取得し、前記自車両の車速を制御するための運転操作に基づいて、前記複数の減速動作パターンの中から減速動作パターンを選択し、前記選択された減速動作パターンを基準にして前記所定位置に到達する以前に前記自車両の車速を前記目標車速まで減速させる構成を採用する。ある所定位置に向かって車両を走行させる際の運転操作の内容やタイミングは、むろん運転者によって異なり、同一の運転者が同一の地点に向かって車両を走行させるとしても、その時々によって異なる。本発明の構成によると、ある所定位置に向かって車両が走行する際、運転者によってなされた運転操作の態様に基づいて、複数の減速動作パターンの中から、運転操作の態様に対して予め対応付けられた減速動作パターンを選択し、選択された減速動作パターンを基準に減速制御を実施することができる。運転操作の態様に対して予め対応付けられた減速動作パターンは、運転操作の態様と、当該運転操作の態様から推定される運転者の意図を尊重するために予め規定した減速動作パターンとが予め対応付けられていることを意味する。そのため、本発明の構成によると、運転者の意図をできるだけ尊重しつつ、確実に目標車速まで車両を減速させることができる。
【0006】
目標車速取得手段においては、自車両の前方の所定位置における目標車速を取得することができればよい。すなわち、自車両の現在位置を特定し、当該現在位置から前方の所定位置における目標車速を取得することができればよい。自車両の現在位置を特定する構成は、例えば、車両の位置をセンサやカメラによって特定する構成や、GPSからの信号や地図上での自車両の軌跡、車車間通信、路車間通信等によって位置を取得する構成等を採用可能である。ここで所定位置とは、ある一連の減速制御における減速完了目標地点を想定してよい。例えば、カーブ区間の入口、道路の制限速度が遅い速度に切り替わる地点、あるいはタイミングとして停止することが予想される信号交差点や、一時停止交差点などを想定してよい。目標車速は、所定位置に対応付けて予め決められているもの(例えば道路の制限速度)をそのまま用いてもよいし、道路形状に基づいて算出するようにしてもよい。具体的には例えば所定位置がカーブ区間の入口である場合、当該カーブ区間を走行する場合の横加速度が所定の値になるように、カーブ区間の形状(ブラインドカーブ、連続カーブ、勾配など)に基づいて当該所定位置での目標車速を算出してもよい。また、路面の摩擦係数や車両の重量、道路の渋滞状況などを加味して算出してもよい。
【0007】
減速動作パターン取得手段においては、前記所定位置を前記目標車速で走行するために自車両を目標車速にまで減速させる際の基準とするパターンであって、減速度の異なる複数の減速動作パターンを取得することができればよい。ここで減速動作パターンは、自車両を目標車速まで減速させる際の減速動作に関して規定することができればよく、例えば、減速度として規定されていてもよいし、所定位置までの各位置における基準車速の集合として規定されていてもよい。あるいは、所定位置に至るまでの各時間における基準車速の集合として規定されていてもよい。
【0008】
減速動作パターン選択手段においては、自車両の車速を制御するための運転操作に基づいて、前記複数の減速動作パターンの中から減速動作パターンを選択する。速度を制御するための運転操作は、加速、車速維持、減速のための種々の運転操作を含む。例えば、アクセルペダルを踏み込んでいる状態を維持する、アクセルペダルの踏み込み量を変える、アクセルペダルを離す、ブレーキペダルの踏み込み量を変える、変速比を変えるなどの操作である。そして、減速動作パターン選択手段においては、加速のための運転操作がなされているときほど、減速度が大きい減速動作パターンを選択する。これは、後述する減速制御手段において、加速のための運転操作がなされている場合はなるべく当該運転操作を尊重するために、減速制御介入のタイミングを遅らせ、かつ、目標車速まで確実に減速できるようにするためである。
【0009】
減速制御手段においては、前記選択された減速動作パターンを基準に用いて、所定位置に到達する以前に自車両の車速を目標車速にまで減速させることができればよい。減速動作パターンを基準にした減速制御とは、少なくとも減速制御を実施するタイミングの判定基準として用いることを意味する。例えば自車両の現在位置における車速から所定位置における目標車速に減速するために必要な減速度が、基準として用いている減速動作パターンが示す減速度を超えたときに減速制御を開始するようにしてよい。そして、減速制御を開始して以降は、例えば選択された減速動作パターンに近似するように自車両を減速させるように制御してもよいし、減速制御を開始した時点での車速と所定距離までの距離と目標車速とから必要減速度を算出し当該必要減速度に基づいて車両が減速するように制御してもよい。減速制御に関しては種々の構成を採用可能であり、例えば、駆動源の出力の調整量(スロットル開度等)や変速機、制動ブレーキ等を制御して減速させる構成を採用可能である。
【0010】
さらに本発明において、減速動作パターン選択手段は、アクセルペダルの操作がなされている場合は、なされていない場合よりも、減速度が大きい(絶対値が大きい)減速動作パターンを選択するようにしてもよい。これは、アクセルペダルを踏み込んでいるという運転者の意図をなるべく尊重するために、減速制御介入のタイミングを遅らせ、かつ、目標車速まで確実に減速できるようにするためである。すなわち、大きな減速度を有する減速動作パターンを選択する方が、自車両の現在位置における現在車速から所定位置において目標車速まで減速するために必要とされる減速度が、選択された減速動作パターンの減速度を超えるタイミングを、遅くすることができる。そして、制御介入のタイミングを遅らせることによって、基準として用いている減速動作パターンの減速度を超えるまで加速した車速を、当該減速動作パターンに近似するように減速させることにより、所定位置において目標車速になるように減速させることができる。
【0011】
逆に、アクセルペダルの操作がなされていない場合は、なされている場合よりも緩やかな減速度の減速動作パターンを選択する。アクセルペダルを踏み込んでいないときは、減速する意図がある(少なくとも加速する意図がない)と推定でき、緩やかな減速度を制御介入のタイミング判定に用いることにより、アクセルペダルを踏み込んでいるときよりも早いタイミングで減速制御を開始することができる。また、緩やかな減速度の減速動作パターンに近づくように減速させ、所定位置において目標車速になるように減速させることができる。
【0012】
さらに本発明において、減速制御手段は、前記減速動作パターンに応じて前記所定位置までの各位置に設定された基準車速を参照し、自車両の現在車速が前記各位置において基準車速より大きいか否かを判定し、現在車速が基準車速より大きい場合、減速制御を実施するようにしてもよい。すなわち、所定位置までの各位置において、自車両の車速が基準車速を超えたかどうかを比較し、超えた時点から減速制御を開始するようにする。そして、減速制御を開始して以降は、選択された減速動作パターンに近づくように自車両を減速させるようにしてもよいし、減速制御を開始した時点での車速と所定距離までの距離と目標車速とから必要減速度を算出し当該必要減速度に基づいて車両が減速するように制御してもよい。
【0013】
なお、本発明のように、自車両を目標車速まで減速させる際の、減速度が異なる複数の減速動作パターンを取得し、前記自車両の車速を制御するための運転操作に基づいて、前記複数の減速動作パターンの中から減速動作パターンを選択し、前記選択された減速動作パターンを基準にして前記自車両を減速させる手法は、この処理を行うプログラムや方法としても適用可能である。また、以上のような運転支援装置、プログラム、方法は、単独の装置として実現される場合もあれば、車両に備えられる各部と共有の部品を利用して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、運転支援装置を制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)ナビゲーション装置の構成:
(2)運転支援処理:
(3)他の実施形態:
【0015】
(1)ナビゲーション装置の構成:
図1は、本発明にかかる運転支援装置を含むナビゲーション装置10の構成を示すブロック図である。ナビゲーション装置10は、CPU、RAM、ROM等を備える制御部20と記憶媒体30とを備えており、記憶媒体30やROMに記憶されたプログラムを制御部20で実行することができる。本実施形態においては、このプログラムの一つとしてナビゲーションプログラム21を実施可能であり、当該ナビゲーションプログラム21は、その機能の一つとして、自車前方の所定位置に向けて自車両を目標車速まで減速させる機能を備えている。
【0016】
自車両(ナビゲーション装置10が搭載された車両)には、ナビゲーションプログラム21による上記の機能を実現するために、GPS受信部40、車速センサ41、ジャイロセンサ42、アクセル操作検出部43、変速部44、制動部45、スロットル制御部46が備えられており、これらの各部と制御部20とが協働することによってナビゲーションプログラム21による機能を実現する。
【0017】
GPS受信部40は、GPS衛星からの電波を受信し、図示しないインタフェースを介して自車両の現在位置を算出するための信号を出力する。制御部20は、この信号を取得して自車両の現在位置を取得する。車速センサ41は、自車両が備える車輪の回転速度に対応した信号を出力する。制御部20は、図示しないインタフェースを介してこの信号を取得し、自車両の速度を取得する。ジャイロセンサ42は、自車両の水平面内の旋回についての角加速度を検出し、自車両の向きに対応した信号を出力する。制御部20は図示しないインタフェースを介してこの信号を取得し、自車両の走行方向を取得する。車速センサ41およびジャイロセンサ42は、GPS受信部40の出力信号から特定される自車両の現在位置を補正するためなどに利用される。また、自車両の現在位置は、後述する地図情報30aと照合することにより適宜補正される。
【0018】
アクセル操作検出部43は、アクセルペダルの位置を検出する位置センサで構成される。アクセル操作検出部43は、検出したアクセルペダルの位置を示す情報を出力する。制御部20は、この情報を取得し、アクセルペダルが踏み込まれている状態か離されている状態かを特定する。
【0019】
変速部44は、例えば複数の変速段を有する自動変速機を備えており、各変速段に対応した変速比で回転数を調整しながらエンジンの駆動力を自車両の車輪に伝達することができる。制御部20は図示しないインタフェースを介して変速段を切り替えるための制御信号を出力し、変速部44は当該制御信号を取得して変速段を切り替えることが可能である。
【0020】
制動部45は、自車両の車輪に搭載されたブレーキによる減速の程度を調整するホイールシリンダの圧力を制御する装置を含み、制御部20は当該制動部45に対して制御信号を出力してホイールシリンダの圧力を調整させることが可能である。従って、制御部20が当該制動部45に対して制御信号を出力してホイールシリンダの圧力を増加させると、ブレーキによる制動力が増加し、自車両が減速される。
【0021】
スロットル制御部46は、自車両に搭載されたエンジンに供給する空気の量を調整するためのスロットルバルブを制御する装置を含み、アクセル操作検出部43が検出したアクセルペダルの位置に対応してスロットルバルブの開度を調整する。スロットル制御部46は、制御部20が当該スロットル制御部46に対して出力した制御信号を取得し、当該制御信号に基づいてスロットルバルブの開度を調整することもできる。制御部20が当該スロットル制御部46に対して制御信号を出力して吸気量を増加させると、エンジンの回転数が増加する。
【0022】
制御部20は、ナビゲーションプログラム21を実行することにより、GPS受信部40の出力情報や後述する地図情報等に基づいて車両の経路探索等を行い、図示しない表示部やスピーカを介して経路案内等を行う。また、自車前方の所定位置に向けて自車両を目標車速まで減速させる減速制御を実現するため、ナビゲーションプログラム21は目標車速取得部21aと減速動作パターン取得部21bと減速動作パターン選択部21cと減速制御部21dとを備えている。
【0023】
また、記憶媒体30には、ナビゲーションプログラム21による上述の機能を実施するため地図情報30aが記憶されている。地図情報30aは、車両が走行する道路上に設定されたノードを示すノードデータ、ノード間の道路の形状を特定するための形状補間点データ、ノード同士の連結を示すリンクデータ、道路やその周辺に存在する地物を示すデータ等を含み、自車両の現在位置の特定や、目的地までの経路探索、目的地への経路案内、減速制御等に利用される。
【0024】
本実施形態においては、カーブ区間(一定半径の区間)に到達する以前に減速制御を行うように構成されており、カーブ区間およびその前後の道路を示す情報が地図情報30aに含まれている。図2は、カーブ区間Zrの例を示す図であり、自車両Cが破線で示すカーブ区間Zrに向かって走行している状態を示している。本実施形態においては、カーブ区間Zrの開始地点Rsに相当するノードデータに当該カーブ区間Zrの開始地点Rsであることを示す情報が対応付けられ、カーブ区間Zrの終了地点Reに相当するノードデータに当該カーブ区間Zrの終了地点Reであることを示す情報が対応付けられている。また、当該開始地点Rsと終了地点Reとの間の道路形状を示す形状補間データはカーブ区間Zrの円弧上の位置を示すデータであり、当該形状補間データに基づいてカーブ区間Zrにおける一定の半径Rおよび当該半径Rの区間を一定の車速で走行する際の車速(目標車速Vreq)を特定することができる。本実施形態においては、カーブ区間Zrの開始地点Rsと終了地点Reとその間の形状補間点を示す情報をカーブ区間情報30a1と呼ぶ。
【0025】
また、上述のカーブ区間Zr以前の区間においては、当該カーブ区間Zrに到達する前に減速を行うための減速区間Zd(図2にて一点鎖線で示す区間)が設定されており、本実施形態においては、減速区間Zdの開始地点Caに相当するノードデータに当該減速区間Zdの開始地点Caであることを示す情報が対応付けられている。なお、本実施形態において、減速区間Zdの終了地点はカーブ区間Zrの開始地点Rsと一致し、減速区間Zdの開始地点Caとカーブ区間Zrの開始地点Rs(減速区間Zdの終了地点)との間の形状は形状補間データによって示される。また、減速区間Zdの開始地点Caと終了地点Rsとの位置を示す情報に基づいて減速区間Zdの距離Lを特定することができる。本実施形態においては、減速区間Zdの開始地点Caと終了地点Rsと、それらの間の道路形状を示す形状補間データを示す情報を減速区間情報30a2と呼ぶ。
【0026】
目標車速取得部21aは、制御部20に自車両の前方の所定位置における目標車速を取得する機能を実現させるモジュールである。すなわち、自車両の現在位置を特定し、当該現在位置から所定距離前方の位置における目標車速を取得する機能を有する。
減速動作パターン取得部21bは、前記所定位置を前記目標車速で走行するために自車両を目標車速にまで減速させる際の基準とするパターンであって、減速度(自車両の進行方向を正とした場合の負の加速度)の異なる複数の減速動作パターンを取得する機能を制御部20に実現させるモジュールである。ここで、減速動作パターンは、自車両を目標車速まで減速させる際の減速動作を規定することができればよく、本実施形態においては、後述するアクセルペダルに関する2種類の操作状態に対応させて、2種類の減速度Go・Gfを減速動作パターンとして取得する。
【0027】
減速動作パターン選択部21cは、自車両の車速を制御するための運転者による運転操作に基づいて、前記複数の減速動作パターンの中から減速動作パターンを選択する機能を制御部20に実現させるモジュールである。車速を制御するための運転操作としては、加速、車速維持、減速等のための種々の運転操作を含んでよい。本実施形態においては、アクセルペダルを踏み込んでいるという状態と、アクセルペダルを離しているという状態とを、請求項に記載の車速を制御するための運転操作とする。そして本実施形態においては、アクセルペダルの操作がなされている場合は、なされていない場合よりも、減速度が大きい(絶対値が大きい)減速動作パターンが選択される。
【0028】
減速制御部21dは、選択された減速動作パターンを基準に用いて自車両を目標車速にまで減速させる機能を制御部20に実現させるモジュールである。減速動作パターンを基準にした減速制御とは、少なくとも減速制御を介入するか否かのタイミングの判定基準として用いることを意味する。本実施形態においては、選択された減速動作パターンに応じて所定位置までの各位置に設定された基準車速を参照し、自車両の現在車速が前記各位置において前記基準車速より大きいか否かを判定し、現在車速が前記基準車速より大きい場合、減速制御を実施する。そして、減速制御を開始して以降は、例えば選択された減速動作パターンを参考に当該減速動作パターンに自車両の減速動作が近づくように、フィードバック制御によって減速を行う。また例えば、減速制御を開始した時点での車速と所定位置までの距離と目標車速とから必要減速度を算出し当該必要減速度に基づいて車両が減速するように制御してもよい。減速制御部21dは、変速部44、制動部45、スロットル制御部46等を制御して車速を減速させる。
以上、ナビゲーション装置10の構成を説明した。
【0029】
(2)運転支援処理:
次に、以上の構成においてナビゲーション装置10が実施する運転支援処理を説明する。ナビゲーション装置10によってナビゲーションプログラム21が実行されているとき、当該ナビゲーションプログラム21が備える各モジュールの機能によって図3に示す処理が実行される。図3に示す処理は、所定時間経過ごとに繰り返し制御部20によって実行される。
【0030】
はじめに、制御部20は、目標車速取得部21aの処理を実行することにより、自車両の現在位置と現在車速Vcとを取得し(ステップS100)、地図情報30aを参照して自車両の現在位置から前方の所定範囲の道路情報を取得し(ステップS105)、取得した道路情報に基づいて自車前方のカーブ区間Zrの開始地点Rsから所定距離L手前の地点Caに到達したか(通過したか)否かを判定する(ステップS110)。すなわち、制御部20は、GPS受信部40等の出力信号に基づいて自車両の現在位置を取得し、道路情報を参照して現在位置の前方の所定範囲にカーブ区間が存在するか検索する。そして、カーブ区間が存在する場合には、そのカーブ区間に関するカーブ区間情報30a1、減速区間情報30a2を取得する。そして、カーブ区間情報30a1を参照してカーブ区間Zrの開始地点Rsの位置を取得し、自車両の現在位置が開始地点Rsの位置よりも所定距離Lだけ手前(カーブ区間Zrと逆側)であるか否かを判定する。現在車速Vcは、車速センサ41の出力情報に基づいて特定される。なお、ステップS110においては、地点Rsを通過したかどうかも判定され、地点Caに未到達であるかまたは地点Rsを通過済みである場合はステップS115に進まずに一旦運転支援処理が終了し所定時間経過後に再びステップS100から処理が実行される。
【0031】
ステップS110にて、地点Ca(減速区間Zdの開始地点)に到達したと判定された場合であって地点Rsを通過するまでの間は、制御部20は、目標車速取得部21aの処理を実行することにより、カーブ区間Zrを走行する際の目標車速を取得する(ステップS115)。具体的には例えば、カーブ区間情報30a1を参照してカーブ区間Zrの半径Rを特定し、当該半径Rの区間を、予め設定された横加速度Gt(例えば、0.2G)にて一定車速で走行するための車速(Gt・R)1/2を目標車速Vreqとして取得する。
【0032】
次に、制御部20は、減速動作パターン取得部21bの処理を実行することにより、目標車速まで減速する際の、減速度が異なる複数の減速動作パターンを取得し(ステップS120)、当該複数の減速動作パターンのそれぞれに基づいて、自車両の現在位置を含み、開始地点Rsまでの各位置における基準車速をそれぞれ算出する(ステップS125)。具体的には、アクセルペダルが踏み込まれている場合に選択される減速動作パターンとして減速度Go(例えば0.2G)、アクセルペダルが離されている場合に選択される減速動作パターンとして減速度Gf(例えば0.1G)を取得する。そして、制御部20は、減速動作パターンとしての減速度Go・Gfに基づいて減速区間Zdの各位置における基準車速を算出する。図4は、減速度Go・Gfに基づいて算出された、減速区間Zdの各位置における基準車速を示すグラフである。自車両の現在位置Pにおいて減速度Goと対応する基準車速をVoと呼び、現在位置において減速度Gfと対応する基準車速をVfと呼ぶものとする。
【0033】
次に、制御部20は、減速動作パターン選択部21cの処理を実行することにより、アクセルペダルが踏み込まれている状態か否かを判定し(ステップS130)、踏み込まれていると判定された場合は減速度Goを選択し自車両の現在位置における現在車速Vcと基準車速Voの大小関係を比較する(ステップS135)。ステップS135にて現在車速Vcが基準車速Voより大きいと判定された場合、制御部20は減速制御部21dの処理により、減速度Goを基準にして自車両を目標車速Vreqまで減速させるための減速制御を実施する(ステップS140)。具体的には、制御部20は、変速部44、制動部45、スロットル制御部46などのいずれかを制御して、減速度Goに基づいて算出された各位置の基準車速に実車速が近づくようにフィードバック制御して車両を減速させる。ステップS135にて現在車速Vcが基準車速Voより大きいと判定されない場合は、まだ減速制御を開始しない。
【0034】
ステップS130にてアクセルペダルが踏み込まれていないと判定された場合は、制御部20は減速動作パターン選択部21cの処理により、減速度Gfを選択し、現在車速Vcと基準車速Vfとの大小関係を比較する(ステップS145)。ステップ145にて現在車速Vcが基準車速Vfより大きいと判定された場合、制御部20は減速制御部21dの処理により、減速度Gfを基準にして自車両を目標車速Vreqまで減速させるための減速制御を実施する(ステップS140)。具体的には、制御部20は、変速部44、制動部45、スロットル制御部46などのいずれかを制御して、減速度Gfに基づいて算出された各位置の基準車速に実車速が近づくようにフィードバック制御して車両を減速させる。ステップS145にて現在車速Vcが基準車速Vfより大きいと判定されない場合は、減速制御を実施しない。すなわちアクセルペダルを離すことによる減速(空気抵抗、路面の摩擦抵抗、エンジンブレーキなどによる減速)以上に減速させるような減速制御は行わない。
【0035】
以上説明した運転支援処理が所定時間ごとに繰り返し実行されることによって減速制御が実施されるタイミングの例を、図5〜図7を用いて説明する。図5は、アクセルペダルを踏み込んだ状態で減速区間Zdを走行しそのままカーブ区間Zrに進入しようとする場合の現在車速Vcの推移例を示している。減速区間Zdの間中、アクセルペダルを踏み込んだ状態であるので、減速制御の開始タイミング判定には減速度Goが選択される。地点Caを通過し地点Pに到達するまでの間は、現在車速Vcはそれぞれの地点における基準車速Voより小さいので減速制御は開始されない。地点Pでは、現在車速Vcが基準車速Voを超えるので、地点P以降、減速制御が開始され、減速度Goで表される減速動作パターンに近似するように減速される。
【0036】
図6は、アクセルペダルを離した状態で減速区間Zdを走行しそのままカーブ区間Zrに進入しようとする場合の現在車速Vcの推移例を示している。減速区間Zdの間中、アクセルペダルを離した状態であるので、減速制御の開始タイミング判定には減速度Gfが選択される。図6の場合、自車両が地点Caを通過した時点で現在車速Vcは基準車速Vfを超えるため、直ちに減速制御が開始され、減速度Gfで表される減速動作パターンに近似するように減速される。
【0037】
このように、本実施形態においては、アクセルペダルの操作がなされている場合は、なされていない場合よりも、減速度が大きい減速動作パターンが選択される。ここで、アクセルペダルを踏み込んでいるということは、運転者には減速の意志がないことを意味する。その場合にアクセルペダルを踏んでいないときと同じ減速動作パターンにて減速制御を実施すると、運転者の意図が反映されない。そこで本実施形態においては前述のようにアクセルペダルの操作に応じて減速動作パターンが選択されることにより、図5および図6に示すように地点Caにおいて現在車速Vcがほぼ同じ速度であったとしても、アクセルペダルを踏み込んだ状態で減速区間Zdを走行している場合の方が、アクセルペダルを離した状態で減速区間Zdを走行している場合よりも、減速制御を開始するタイミングを遅らせることができる。すなわち、アクセルペダルが踏み込まれている場合、アクセルペダルを踏み込んでいるという運転者の意図をなるべく尊重することができる。そして、制御介入のタイミングを遅らせることによって減速度Goに基づく基準車速を超えるまで加速した車速を、減速度Goに近似するように減速させることにより、地点Rsにおいて目標車速Vreqになるように減速させることができる。すなわち、運転者の意図を尊重しつつ、確実に目標車速まで減速させることができる。
【0038】
逆に、アクセルペダルの操作がなされていない場合は、なされている場合よりも緩やかな減速度の減速動作パターンが選択される。そのため、地点Caにおいて現在車速Vcが同じ速度であったとしても、減速制御が開始されるタイミングは、アクセルペダルが踏み込まれているときよりも早いタイミングで減速制御が開始できる。すなわちアクセルペダルを離しているという、運転者の減速の意図(少なくとも加速する意図がないこと)を推定し、所定位置(地点Rs)において目標車速になるように緩やかな減速度の減速動作パターンに近似するように減速させることができる。
【0039】
図7は、地点Caから地点Pまではアクセルペダルが踏み込まれており、地点Pにてアクセルペダルが離された場合の現在車速Vcの推移例を示している。地点Caから地点Pまでは、アクセルペダルが踏み込まれた状態であるので、減速制御の開始タイミングの判定には減速度Goが選択され、地点P以降はアクセルペダルが離された状態なので減速制御の開始タイミングの判定には減速度Gfが選択される。地点Pにおいて、現在車速Vcが基準車速Vfを超えるため、地点Pを通過後から減速制御が実施される。なお、この場合の減速制御は、上述のように減速度Gfで示される減速動作パターンに近似するように減速させてもよいが、例えば図7に示すように、地点Pから地点Rsまでの距離と地点Pにおける現在車速Vcと目標車速Vreqとから必要減速度Gpを算出し、さらに減速度Gpに基づいて地点Pから地点Rsまでの各位置における基準車速を算出し、各位置に対応する基準車速に自車両の車速が近づくように減速させてもよい。あるいは、地点Pにおける現在車速Vcに、GoあるいはGfのうち地点Pにおける基準車速が近い方の減速度を選択して当該減速度で表される減速動作パターンに近似するように自車両を減速させてもよい。以上、図7のように、減速区間内において途中で運転者の意図が加速から非加速に変わる場合であっても、加速の意図がある間はなるべくその意図に反して減速制御が介入しないようにできるとともに、運転者の意図が非加速に変化した場合であって減速介入が必要な場合は直ちに減速制御を開始することができる。
【0040】
以上説明したように、本発明によると、ある所定位置に向かって車両が走行する際、運転者によってなされた運転操作の態様に基づいて、複数の減速動作パターンの中から、運転操作の態様に対して予め対応付けられた減速動作パターンを選択し、選択された減速動作パターンを基準に減速制御を実施することができる。運転操作の態様に対して予め対応付けられた減速動作パターンは、上述したように、運転操作の態様と、当該運転操作の態様から推定される運転者の意図を尊重するために予め規定した減速動作パターンとが予め対応付けられていることを意味する。そのため、運転者の意図をできるだけ尊重しつつ、確実に目標車速まで車両を減速させることができる。
【0041】
(3)他の実施形態:
以上の実施形態は、本発明を実施するための一例であり、自車両を目標車速まで減速させる際の、減速度が異なる複数の減速動作パターンを取得し、前記自車両の車速を制御するための運転操作に基づいて、前記複数の減速動作パターンの中から減速動作パターンを選択し、前記選択された減速動作パターンを基準にして前記自車両を減速させる限りにおいて他にも種々の実施形態を採用可能である。
【0042】
例えば、上記実施形態では、速度を制御するための運転操作として、アクセルペダルの踏み込み操作の有無を例に説明したが、上記運転操作は、加速、車速維持、減速のためのその他の種々の運転操作を含む。例えば、アクセルペダルの踏み込み量を変える、アクセルペダルもブレーキペダルも離す、ブレーキペダルの踏み込み量を変える、変速比を変えるなどの操作に対して本発明が適用されてもよい。その場合、ブレーキ操作検出部、変速操作検出部、などをさらに備えて、アクセルペダルの踏み込み量やブレーキペダルの踏み込み量や変速操作の内容に応じて、運転者の加速や車速維持や減速の意図を推定し、加速の意図がより強いときほど、減速度が大きい減速動作パターンを選択するようにしてもよい。例えば、アクセルペダルの踏み込み量が多いほど加速の意図が強く、ブレーキペダルの踏み込み量が多いほど加速の意図が弱いと判断してよい。その結果、加速のための運転操作がなされている場合はなるべく当該運転操作を尊重するために、減速制御介入のタイミングを遅らせることができる。
【0043】
上記実施形態においては、請求項に記載の所定位置がカーブ区間の入口である場合を説明したが、その他の一連の減速制御における減速完了目標地点を想定してよい。例えば、道路の制限速度が遅い速度に切り替わる地点、あるいはタイミングとして停止することが予想される信号交差点や、一時停止交差点などを想定してよい。目標車速は、所定位置に対応付けて予め決められているもの(例えば道路の制限速度)をそのまま用いてもよいし、道路形状に基づいて算出するようにしてもよい。具体的には例えば所定位置がカーブ区間の入口である場合、当該カーブ区間を走行する場合の横加速度が所定の値になるように、カーブ区間の形状(ブラインドカーブ、連続カーブ、勾配など)に基づいて当該所定位置での目標車速を算出してもよい。また、路面の摩擦係数や車両の重量、道路の渋滞状況などを加味して算出してもよい。
【0044】
なお、減速制御手段において、減速制御開始の判定は、現在車速と基準車速とを比較することに限定されない。例えば自車両の現在位置における車速から所定位置における目標車速に減速するために必要な減速度が、基準として用いている減速動作パターンが示す減速度を超えたときに減速制御を開始するようにしてよい。
【0045】
なお、減速動作パターンは、上記実施形態のように減速度で規定されていなくてもよく、所定位置までの各位置における基準車速の集合として規定されていてもよいし、あるいは、所定位置に至るまでの各時間における基準車速の集合として規定されていてもよい。また、減速動作パターンは、前記所定位置の前後の道路の形状や路面状況、勾配値、交通状況などに応じて、調整されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】ナビゲーション装置のブロック図である。
【図2】カーブ区間と減速区間を示す模式図である。
【図3】運転支援処理を示すフローチャートである。
【図4】減速区間の各位置における基準車速を示すグラフである。
【図5】減速区間における車速の推移例を示すグラフである。
【図6】減速区間における車速の推移例を示すグラフである。
【図7】減速区間における車速の推移例を示すグラフである。
【符号の説明】
【0047】
10:ナビゲーション装置、20:制御部、21:ナビゲーションプログラム、21a:目標車速取得部、21b:減速動作パターン取得部、21c:減速動作パターン、21c:減速動作パターン選択部、21d:減速制御部、30:記憶媒体、30a:地図情報、30a1:カーブ区間情報、30a2:減速区間情報、40:GPS受信部、41:車速センサ、42:ジャイロセンサ、43:アクセル操作検出部、44:変速部、45:制動部、46:スロットル制御部、Ca:減速区間Zdの開始地点、Gf:減速度、Go:減速度、Gp:必要減速度、Gt:横加速度、L:距離、P:地点、R:半径、Re:カーブ区間Zrの終了地点、Rs:カーブ区間Zrの開始地点、Vc:現在車速、Vf:基準車速、Vo:基準車速、Vreq:目標車速、Zd:減速区間、Zr:カーブ区間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の前方の所定位置における目標車速を取得する目標車速取得手段と、
前記目標車速まで減速させる際の、減速度が異なる複数の減速動作パターンを取得する減速動作パターン取得手段と、
前記自車両の車速を制御するための運転操作に基づいて、前記複数の減速動作パターンの中から減速動作パターンを選択する減速動作パターン選択手段と、
前記選択された減速動作パターンを基準にして前記所定位置に到達する以前に前記自車両の車速を前記目標車速まで減速させる減速制御手段と、
を備える運転支援装置。
【請求項2】
前記減速動作パターン選択手段は、アクセルペダルの操作がなされている場合は、なされていない場合よりも減速度が大きい減速動作パターンを選択する、
請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記減速制御手段は、前記減速動作パターンに応じて前記所定位置までの各位置に設定された基準車速を参照して前記自車両の現在車速が前記各位置において前記基準車速より大きいか否かを判定し、前記現在車速が前記基準車速より大きい場合、前記減速制御を実施する、
請求項1または請求項2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
自車両の前方の所定位置における目標車速を取得する目標車速取得工程と、
前記目標車速まで減速させる際の、減速度が異なる複数の減速動作パターンを取得する減速動作パターン取得工程と、
前記自車両の車速を制御するための運転操作に基づいて、前記複数の減速動作パターンの中から減速動作パターンを選択する減速動作パターン選択工程と、
前記選択された減速動作パターンを基準にして前記所定位置に到達する以前に前記自車両の車速を前記目標車速まで減速させる減速制御工程と、
を含む運転支援方法。
【請求項5】
自車両の前方の所定位置における目標車速を取得する目標車速取得機能と、
前記目標車速まで減速させる際の、減速度が異なる複数の減速動作パターンを取得する減速動作パターン取得機能と、
前記自車両の車速を制御するための運転操作に基づいて、前記複数の減速動作パターンの中から減速動作パターンを選択する減速動作パターン選択機能と、
前記選択された減速動作パターンを基準にして前記所定位置に到達する以前に前記自車両の車速を前記目標車速まで減速させる減速制御機能と、
をコンピュータに実現させる運転支援プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−227013(P2009−227013A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−72822(P2008−72822)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【Fターム(参考)】