説明

道路情報取得装置、運転支援装置、道路情報取得方法および道路情報取得プログラム

【課題】段差が存在せず、車両の安定化制御を実施する必要がない場所であっても安定化制御を実施してしまうことがあった。
【解決手段】自車両の現在位置を示す情報を取得し、前記自車両が道路から退出することを判定し、前記自車両が道路から退出すると判定されたときに、前記自車両が段差を通過したか否かを検出する検出部の検出結果を参照して段差を示す情報を取得し、前記退出路に前記段差が存在するときに、前記自車両の現在位置を示す情報に基づいて前記段差の位置を記憶媒体に記録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路に関する情報を取得する道路情報取得装置、道路情報取得方法および道路情報取得プログラム、並びに道路情報に基づいて自車両を制御する運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ナビゲーション装置や方向指示器、車速センサからの信号を取得することによって車両が道路から逸れて駐車場などに進入することを判定し、道路から逸れると判定されたときに車高やショックアブソーバの減衰率を調整する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−352056号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の技術においては、段差が存在せず、車両の安定化制御を実施する必要がない場所であっても安定化制御を実施してしまうことがあった。
すなわち、道路を退出して駐車場などの施設に進入する際に当該施設の手前に必ず段差が存在するとは限らない。しかし、上述の技術においては、道路を退出して駐車場などの施設に進入するときに車両の安定化制御を行っているため、すべての施設の進入に際して安定化制御が実施される。このため、例えば、サスペンションの減衰率やスタビライザの固さなどが不適切に変動し、乗り心地が悪化するとともに走行安定性を低下させてしまう。
本発明は、上記課題にかんがみてなされたもので、安定化制御が必要な場合に確実に安定化制御を実施することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的を達成するため、本発明においては、自車両が道路から退出すると判定されたときに、自車両が段差を通過したか否かを検出する検出部の検出結果を参照し、段差を示す情報を取得する。そして、当該段差を示す情報が段差の存在を示しているときに自車両の現在位置を取得し、段差の位置を示す情報として記憶媒体に記録する。
【0005】
すなわち、単に自車両が道路から退出することをもって段差の存在を推定するのではなく、確実に段差が存在することを特定できるようにするため、自車両が道路から退出するときに段差を特定し、その位置を記録することとしている。この結果、正確に段差の存在を示す情報を取得することができ、この情報を参照すれば段差が存在することを確実に特定した状態で自車両における安定化制御を実施することが可能になる。従って、安定化制御が必要な場合に確実に安定化制御を実施するための情報を容易に取得することができる。
【0006】
ここで、現在位置取得手段は、自車両の現在位置を示す情報を取得することができればよく種々の構成を採用可能である。例えば、GPSからの信号に基づいて自車両の現在位置を特定する構成や、自車両の位置をセンサやカメラによって特定する構成や、地図上での自車両の軌跡,車車間通信,路車間通信等に基づいて自車両の位置を特定する構成等を採用可能である。
【0007】
退出判定手段は、自車両が道路から退出することを判定(以下、退出判定とも呼ぶ)することができれば良く、自車両が走行している道路の境界線を越えて道路以外の施設に進入しようとしている状態であることを判定することができればよい。例えば、自車両に搭載されたカメラを利用して退出判定を行う構成を採用しても良い。すなわち、当該カメラによって自車両の周囲を含む画像情報を取得すれば、当該画像情報に基づいて前記自車両が前記道路から退出することを示す情報を取得することが可能である。
【0008】
より具体的には、画像情報に基づいて自車両が走行する道路の地物の画像内における動作を特定し、当該地物の画像内における動作から自車両の動作を特定すれば、当該自車両が道路から退出しようとしている状態であるか否かを特定することができる。なお、地物は自車両の周囲に存在する地物であって、自車両の走行によって自車両との相対関係が変動する物であればよく、道路標示(例えば、道路上の線,矢印,文字,数字,記号,横断歩道,道路鋲,石)や道路上の構造物(例えば、高速道路の壁,路肩,歩道,中央分離帯,建築物,標識,看板,信号機)を当該地物として採用可能である。
【0009】
さらに、自車両の目的地に基づいて上述の退出判定を行う構成としても良い。すなわち、自車両において走行経路を案内する際に目的地が設定されていれば、自車両が当該目的地に進入する可能性が極めて高いと言える。そこで、自車両の現在位置と目的地との距離が所定距離以下である場合に当該目的地に進入するために自車両が道路から退出すると判定すれば、極めて高い精度で退出判定を行うことができる。なお、ここでの目的地は、退出判定を行うための目的地であるため、道路から退出した先にある施設等が当該目的地となる。
【0010】
むろん、退出判定を行うための構成は、ほかにも種々の構成を採用可能であり、自車両が交差点付近に存在していない状態で方向指示器が操作されたことを示す情報を取得し、当該方向指示器が道路の外側を指示しているときに自車両が道路から退出すると判定する構成等を採用可能である。また、自車両が左右端の車線を走行しているときにステアリングセンサによって道路からの退出を示す舵角を取得したときに道路からの退出を判定しても良い。さらに、以上の各種の退出判定を行うための構成を組み合わせてもよい。
【0011】
さらに、段差情報取得手段は、退出判定がなされたときに自車両に搭載された検出部の検出結果を参照して段差を示す情報を取得すればよい。ここで、段差は車両が通過する路面に存在する凹凸であり、自車両における安定化制御によってその影響を低減すべき対象となる凹凸である。
【0012】
従って、検出部においては、自車両が凹凸等の段差を通過したことが検出可能できれば良く、車両における振動を検出するセンサや車両に作用する加速度を検出するセンサ等を採用可能である。また、カメラによって路面を撮影し、当該撮影した画像情報に基づいて段差の通過を検出しても良いし、サスペンションやスタビライザの動作に基づいて間接的に段差の通過を検出しても良い。
【0013】
いずれにしても、段差情報取得手段においては、自車両が段差を通過したことを検出する検出部の検出結果を参照し、検出結果において段差が存在することを示しているときに段差を示す情報として段差の存在を示す情報を取得する構成とすればよい。さらに、段差位置情報記録手段は、段差の存在を検出したときにその位置を示す情報を取得し、記憶媒体に記録することができればよく、緯度や経度など、直接的に位置を示した情報であっても良いし、施設や道路など位置が特定されている地物に対応付けて段差の位置を示す情報としても良く、種々の構成を採用可能である。
【0014】
さらに、以上のようにして段差の位置を示す情報を記憶媒体に記録すれば、当該記憶媒体を参照して段差の位置を特定し、当該段差の位置と自車両の現在位置との距離が所定距離以下である場合に自車両に搭載された走行安定化部において自車両の走行安定化制御を行えば、自車両が段差を通過する際の走行安定性を高めることが可能である。すなわち、安定化制御が必要な場合には確実に安定化制御を実施することが可能である。
【0015】
なお、走行安定化部においては、自車両の走行を安定化させることができればよく、例えば、サスペンションやスタビライザにおいて衝撃の吸収程度が通常の道路の走行時よりも高くなるように設定する構成を採用可能である。むろん、ここでは、自車両が段差を通過する際に走行安定化部において走行安定化のための制御を実施することができれば良く、上述の退出判定を組み合わせても良い。例えば、自車両が道路から退出すると判定され、かつ、段差の位置と自車両の位置との距離が所定距離以下である場合に自車両の走行を安定化するための制御を行わせる構成であっても良い。
【0016】
さらに、本発明のように自車両が段差を通過したか否かを検出し、その検出結果に基づいて段差の位置を特定して記憶媒体に記録する手法は、プログラムや方法としても適用可能である。また、以上のような装置、プログラム、方法は、単独の装置として実現される場合もあれば、車両に備えられる各部と共有の部品を利用して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。例えば、以上のような装置を備えたナビゲーション装置や方法、プログラムを提供することが可能である。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、装置を制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)ナビゲーション装置の構成:
(2)段差位置取得処理:
(3)サスペンション制御処理:
(4)他の実施形態:
【0018】
(1)ナビゲーション装置の構成:
図1は、本発明にかかる道路情報取得装置、運転支援装置を含むナビゲーション装置10の構成を示すブロック図である。ナビゲーション装置10は、CPU,RAM,ROM等を備える制御部20と記憶媒体30とを備えており、記憶媒体30やROMに記憶されたプログラムを制御部20で実行することができる。本実施形態においては、このプログラムの一つとしてナビゲーションプログラム21を実施可能であり、当該ナビゲーションプログラム21はその機能として段差の位置を取得して記録する機能と段差の位置の手前で安定化制御を行う機能を備えている。
【0019】
本実施形態における車両(ナビゲーション装置10が搭載された車両)は、ナビゲーションプログラム21による機能を実現するためにGPS受信部40と車速センサ41とカメラ42と加速度センサ43とサスペンション44とを備えており、これらの各部と制御部20とが協働することによってナビゲーションプログラム21による機能を実現する。GPS受信部40は、GPS衛星からの電波を受信し、図示しないインタフェースを介して車両の現在位置を算出するための情報を出力する。制御部20は、この信号を取得して車両の現在位置を取得する。車速センサ41は、車両が備える車輪の回転速度に対応した信号を出力する。制御部20は、図示しないインタフェースを介してこの信号を取得し、車両の速度を取得する。
【0020】
カメラ42は自車両が走行している道路を視野に含むように自車両に対して取り付けられ、撮影した画像を示す画像データを出力する。制御部20は、図示しないインタフェースを介してこの画像データを取得する。加速度センサ43は自車両に作用する加速度に対応した信号を出力する。制御部20は、図示しないインタフェースを介してこの信号を取得し、自車両に作用する加速度に基づいて段差を示す情報を取得する。従って、加速度センサ43は、請求項における「自車両が段差を通過したか否かを検出する検出部」に相当する。
【0021】
車速センサ41や加速度センサ43は、各センサの出力信号が示す情報を取得するために利用されるとともに、GPS受信部40の出力信号から特定される車両の現在位置を補正するためにも利用される。むろん、車両の現在位置を取得するための構成は上述の構成に限られず、ジャイロセンサ等を利用して車両の動作を取得する構成を採用してもよいし、車速センサやジャイロセンサ等の出力信号や車両の軌跡に基づいて現在位置を補正する構成を採用しても良い。なお、車両の動作を示す情報を取得するための構成は、ほかにも種々の構成を採用可能であり、自車両の現在位置をセンサやカメラによって特定する構成や、GPSからの信号や地図上での車両の軌跡,車車間通信,路車間通信等によって自車両動作情報を取得する構成等を採用可能である。
【0022】
サスペンション44は、自車両に搭載された防振機構であり、路面から自車両に作用する外力の伝達特性を調整可能な機構を備えている。制御部20は、図示しないインタフェースを介してサスペンション44に対して制御信号を出力し、上述の伝達特性を調整することができる。すなわち、サスペンション44による外力の伝達程度(サスペンションの固さ)を調整することができる。
【0023】
制御部20は、ナビゲーションプログラム21を実行することにより、GPS受信部40の出力情報や後述する地図情報等に基づいて車両の経路探索等を行い、図示しない表示部やスピーカーを介して経路案内等を行う。また、このとき、自車両が段差を通過したか否かを検出し、その検出結果に基づいて段差の位置を特定して記憶媒体に記録し、さらに、当該段差の位置を通過する際にサスペンション44において安定化制御を行う機能を実現するため、ナビゲーションプログラム21は案内部21aと現在位置取得部21bと退出判定部21cと段差情報取得部21dと段差位置記録部21eと安定化制御部21fとを備えている。
【0024】
また、記憶媒体30には、ナビゲーションプログラム21による案内を実施するため地図情報30aが記憶されている。地図情報30aは、車両が走行する道路上に設定されたノードを示すノードデータ,ノード間の道路の形状を特定するための形状補間点データ,ノード同士の連結を示すリンクデータ,道路やその周辺に存在する地物を示すデータ,段差の位置を示す情報等を含み、自車両の現在位置の特定や目的地への案内や安定化制御を実施するか否かの判断等に利用される。
【0025】
案内部21aは、車両における走行経路の特定や経路案内を行うモジュールであり、地図情報30aを参照して自車両を目的地へ導く経路案内処理を行う。本実施形態において案内部21aは、目的地に到達するための経路を決定し、図示しない表示部やスピーカーを介して当該経路に沿って運転を行うように案内を行う。なお、本実施形態において、当該目的地を示す情報は退出判定部21cに受け渡され、自車両が道路から退出することを判定するためにも利用される。
【0026】
現在位置取得部21bは、自車両の現在位置を示す情報を取得するモジュールであり、GPS受信部40の出力信号が示す位置情報を、車速センサ41が出力する出力信号や地図情報30aを用いて地図上での軌跡を基に補正し、自車両の現在位置を取得する。取得された現在位置を示す情報は、退出判定部21c,段差位置記録部21eや安定化制御部21fに受け渡される。
【0027】
退出判定部21cは、自車両が走行している道路の境界線を越えて自車両が道路以外の施設に進入しようとしている状態であることを検出して退出判定を行うモジュールである。本実施形態においては、カメラ42が出力する画像情報に基づいて退出判定を行い、また、案内部21aによって決定された目的地および現在位置取得部21bにて取得された現在位置に基づいて退出判定を行う。すなわち、カメラ42が出力する画像情報は、自車両の周囲を含む画像の情報であり、自車両の動作に伴って画像内を移動する地物を含んでいる。そこで、画像情報に基づいて自車両が走行する道路の地物の画像内における動作を特定し、当該地物の画像内における動作から自車両の動作を特定すれば、当該自車両が道路から退出しようとしている状態であるか否かを特定することができる。
【0028】
例えば、カメラ42が自車両の後方あるいは前方を撮影するカメラである場合、自車両の両側に存在する白線はカメラで撮影した画像内で、ある点(いわゆる消失点)に向かって延びる。そして、これらの白線の延びる方向が自車両の走行方向に平行である場合には、消失点が画像内の左右方向の略中央に位置し、自車両の走行方向が変動すると当該消失点が画像内で移動する。そこで、当該消失点の移動量を検出し、当該移動量が予め決められた移動量を超えたか否かを判別すれば、自車両が道路外へ退出しようとしていると判定することが可能である。なお、地物は自車両の周囲に存在する地物であって、自車両の走行によって自車両との相対関係が変動する物であればよく、道路標示(例えば、道路上の線,矢印,文字,数字,記号,横断歩道,道路鋲,石)や道路上の構造物(例えば、高速道路の壁,路肩,歩道,中央分離帯,建築物,標識,看板,信号機)を当該地物として採用可能である。
【0029】
さらに、上述のように自車両の目的地が設定されていれば、自車両が道路を走行した後に道路を退出して当該目的地に進入する可能性が極めて高いと言える。そこで、本実施形態においては、自車両の現在位置と目的地との距離を取得し、当該距離が所定距離以下である場合に自車両が道路から退出すると判定する。なお、ここでの目的地は、退出判定を行うための目的地であるため、道路から退出した先にある施設等が当該目的地となる。
【0030】
段差情報取得部21dは、自車両が道路から退出すると判定されたときに、加速度センサ43による加速度の検出結果を参照して段差を示す情報を取得する。すなわち、自車両の上下方向(自車両が走行する路面に対して垂直の方向)に作用する加速度の大きさや加速度の変化等に基づいて自車両が段差を通過したか否かを判定し、自車両が段差を通過したと判別されたときに段差の存在を検出する。なお、当該段差は車両が通過する路面に存在する凹凸であり、自車両における安定化制御によってその影響を低減すべき対象となる凹凸である。
【0031】
段差位置記録部21eは、段差情報取得部21dによって段差が存在することを示す情報が取得されたときに、当該段差の位置を取得して地図情報30aの一部として記録する。すなわち、自車両の現在位置を示す情報を取得し、段差の存在を検出したタイミングにて取得した自車両の現在位置を段差の位置を示す情報として取得し、段差の位置を示す情報として地図情報30aに記録する。
【0032】
安定化制御部21fは、サスペンション44に対して制御信号を出力してサスペンションの固さを調整する。すなわち、自車両の現在位置を取得し、地図情報30aを参照して当該現在位置の付近に存在する段差を検索し、検索された段差の位置と自車両の現在位置とに基づいて両者の距離を取得する。そして、当該距離が所定距離以下である場合に、サスペンション44に前記自車両の走行を安定化するための制御を行わせるための信号(例えば、通常走行時よりもサスペンション44の固さを柔らかくするための信号)を出力する。この結果、サスペンション44の固さが段差に適応した固さになり、自車両が段差を通過するときの走行安定性が向上する。
【0033】
(2)段差位置取得処理:
次に、以上の構成においてナビゲーション装置10が実施する段差位置取得処理を説明する。自車両の前方において段差の位置を示す情報が取得されていない場合には当該段差位置取得処理によって段差の位置を取得するための処理が行われる。また、ナビゲーション装置10によってナビゲーションプログラム21が実行されているとき、ナビゲーションプログラム21は、自車両の運転者に対して経路等の案内処理を行っている。この処理の過程において、本実施形態では、いわゆるマップマッチング処理を行っている。
【0034】
当該マップマッチング処理は、自車両の走行軌跡とノードや形状補間点の並びとが適合するときに自車両がノードや形状補間点で示される道路を走行していると見なす処理であり、逆に、このマップマッチング処理によって自車両がノードや形状補間点の並びとマッチング中であるときには、自車両が道路を走行していると見なすことができる。以上のような案内処理やマップマッチング処理を実行中にナビゲーションプログラム21は図2に示す段差位置取得処理を一定時間(例えば、100ms)毎に実行する。
【0035】
図2に示す段差位置取得処理が開始されると、まず、ナビゲーションプログラム21が上述のマッチング処理において自車両の走行軌跡が任意のノードや形状補間点の並びにマッチング中であるか否かを判別し(ステップS100)、マッチング中であると判別されないときには段差位置取得処理を終了する。
【0036】
ステップS100にてマッチング中であると判別されたときには、案内部21aが自車両の前方の地図情報30aを参照し(ステップS105)、自車両の現在位置よりも前方の所定範囲に位置する目的地や地物等の情報を取得する。次に、ナビゲーションプログラム21は、車速センサ41が出力する車速を示す情報に基づいて自車両が走行中であるか否かを判別し(ステップS110)、自車両が走行中であると判別されないときには段差位置取得処理を終了する。
【0037】
ステップS110にて自車両が走行中であると判別されたとき、退出判定部21cは、自車両が左右端の車線を走行中であるか否か判別する(ステップS115)。すなわち、自車両が左端の車線あるいは右端の車線を走行中であるか否かを判別する。本実施形態においては路面上の白線に基づいて当該判別を行うように構成されており、退出判定部21cは、まずカメラ42が出力する画像情報を取得し、当該画像情報に基づいて路面上の白線を抽出する。当該白線の抽出はハフ変換等を利用することができる。
【0038】
図4は本実施形態による動作例を説明するための説明図であり、同図4においては、道路R上を走行する自車両Cおよび道路Rの脇に施設Fが存在する例を示している。この例において、自車両Cには、当該自車両Cの後方の路面を視野に含むカメラ42が搭載されており、図4においては当該カメラ42の視野を一点鎖線で示している。この構成においては、カメラ42にて取得する画像情報に自車両Cの後方に位置する路面上の白線が含まれるので、これらの白線を抽出する。
【0039】
白線を抽出すると、退出判定部21cは、さらに、当該白線が実線あるいは破線のいずれであるのかを判別し、自車両が走行する車線の境界線に相当する白線が実線であり、当該境界線に相当する実線の白線が自車両の左側に存在する場合には自車両が左端の車線を走行中であると判別する。また、自車両が走行する車線の境界線に相当する白線が実線であり、当該境界線に相当する実線の白線が自車両の右側に存在する場合には自車両が右端の車線を走行中であると判別する。
【0040】
すなわち、本実施形態においては、図4に示すように道路Rの端に存在する車線の境界線が実線であり、道路Rの端以外に存在する車線の境界線が破線であることに基づいて自車両が道路の端を走行しているか否かを判別し、道路の端を走行しているときには自車両が道路を退出する可能性があると見なす。
【0041】
ステップS115にて、自車両が左右端の車線を走行中であると判別されないときには、自車両が道路を退出することはないとみなし、段差位置取得処理を終了する。ステップS115にて、自車両が左右端の車線を走行中であると判別されたとき、さらに、退出判定部21cは、案内部21aから前記目的地を取得し、当該目的地が自車両から所定距離L1(例えば、50m)以内に存在するか否かを判別する(ステップS120)。すなわち、退出判定部21cは、案内部21aから目的地を示す情報を取得して当該目的地の位置を特定し、自車両の現在位置を特定して両者の距離を取得し、当該距離が予め決められた所定距離L1以内であるか否かを判別する。
【0042】
図4に示す例においては、道路Rの左端を走行する自車両Cにおいて、目的地が施設Fに設定されており、その距離が自車両から所定距離L1以内である場合には、当該自車両Cが道路Rを退出して目的地である施設Fに進入すると見なす。ステップS120にて、目的地が所定距離以内であると判別されたときには、段差情報取得部21dが段差を示す情報の参照を開始する(ステップS140)。すなわち、加速度センサ43が出力する加速度を示す情報の参照を開始する。
【0043】
一方、ステップS120にて、目的地が所定距離L1以内であると判別されないとき、さらに、退出判定部21cは画像情報に基づいて自車両が道路から退出するか否か判定する。本実施形態においては、カメラ42が出力する画像情報から白線を抽出し(ステップS125)、当該白線の移動を検出する(ステップS130)。すなわち、上述の処理と同様の処理にて取得した白線の画像内での位置を特定し、カメラ42から継続的に出力される画像情報に基づいて当該白線の画像内での位置の経時変化を特定する。
【0044】
そして、退出判定部21cは、白線の画像内での位置の経時変化に基づいて自車両の退出が検出されたか否かを判別する(ステップS135)。すなわち、自車両が車線に沿って走行する状態から車線を横切って走行する状態に変化する過程において、自車両に固定されたカメラ42にて取得する画像内での白線の移動量に基づいて自車両が道路を退出することを検出する。
【0045】
例えば、図4に示す例において、カメラ42は、自車両Cの後方の路面を視野に含むように取り付けられているため、自車両Cが車線内を直進しているときには、画像の水平方向の中央付近の消失点に向けて白線が延びた状態になる。一方、自車両Cが施設Fに進入するために左側に寄り、または、左折する際には、当該カメラ42にて取得した画像における白線の消失点が画像の水平方向にずれていくので、当該白線の移動量に基づいて退出判定を行う。
【0046】
ステップS135にて、自車両の退出が検出されない場合には、以降の処理をスキップして処理を終了する。また、ステップS135にて、自車両の退出が検出された場合には、ステップS140にて、段差情報取得部21dが段差を示す情報の参照を開始する。ステップS140を経て段差情報取得部21dが段差を示す情報の参照を開始すると、さらに、段差情報取得部21dは、当該段差を示す情報に基づいて自車両が段差を通過したか否かを判別する(ステップS145)。
【0047】
すなわち、段差情報取得部21dは、自車両の上下方向に作用する加速度の大きさや加速度の変化等に基づいて自車両が段差を通過したか否かを判別する。例えば、図4に示す例において、施設Fと道路Rとの境界(図4に破線で示す領域B)で道路Rとの段差(例えば、歩道)が形成されていている場合、当該段差を通過することによって自車両に作用する上下方向の加速度には段差に対応した変化が生じる。そこで、当該上下方向の加速度の変化を検出したときに自車両が段差を通過したと判別する。
【0048】
ステップS145にて自車両が段差を通過したと判別したときには、段差情報取得部21dが段差の存在を示す情報を段差位置記録部21eに出力し、段差位置記録部21eが自車両の現在位置を段差の位置とし、地図情報30aに当該段差の位置を示す情報を記録する(ステップS150)。図4に示す例においては、段差の位置Pに対応する緯度および経度を示す情報が地図情報30aに記録される。
【0049】
一方、ステップS145にて自車両が段差を通過したと判別されないときには、退出判定部21cが、自車両の動作を特定し、退出が中断した、あるいは、退出が完了したか否かを判別する(ステップS155)。すなわち、上述のカメラ42が出力する画像情報に基づいて前記白線の画像内での位置を特定し、白線が延びる方向が他の方向から自車両の後方に向けた方向に復帰したときには退出が中断されたと判別する。また、案内部21aにおけるマッチング処理の状態を取得し、道路上のノードや形状補間点の並びにマッチングしていないときには自車両において道路からの退出を完了したと判別する。
【0050】
ステップS155にて、退出が中断した、あるいは、退出が完了したと判別されないときにはステップS145以降の処理を繰り返す。ステップS155にて、退出が中断した、あるいは、退出が完了したと判別されたときには、段差情報取得部21dが段差を示す情報の参照を終了する(ステップS160)。この場合、施設Fに進入する際に段差が存在せず、段差の位置を示す情報は記録されない。従って、図4に示す例において、領域Bに段差が存在しない場合には、施設Fに進入する際に自車両Cが通過する路面に関して地図情報30aに対して段差の位置は記録されない。
【0051】
(3)サスペンション制御処理:
次に、以上のようにして取得した段差の位置を示す情報に基づいてサスペンション44を制御するサスペンション制御処理を説明する。サスペンション制御処理もナビゲーションプログラム21によって上述の案内処理やマップマッチング処理を実行中に一定時間(例えば、100ms)毎に実行される。
【0052】
図3は、当該サスペンション制御処理を示しており、同図3に示すように、サスペンション制御処理におけるステップS200〜S235は、図2に示す段差位置取得処理のステップS100〜S135と同様の処理である。すなわち、経路案内時の目的地やカメラ42にて取得した画像情報に基づいて退出判定を行う。
【0053】
なお、ステップS220にて目的地が所定距離L1以内であると判別されたときには、自車両が道路を退出すると見なしてステップS240以降の処理を実行する。また、ステップS235にてカメラ42の画像情報に基づいて自車両の退出を検出したときにもステップS240以降の処理を実行する。当該ステップS240において、安定化制御部21fは、段差が自車両から所定距離L2(例えば、50m)以内に存在するか否かを判別する。
【0054】
すなわち、安定化制御部21fは、地図情報30aを参照して自車両の前方に存在する段差の位置を示す情報を検索し、現在位置取得部21bにて特定された自車両の現在位置を取得して段差の位置と自車両の現在位置との距離を取得し、当該距離が予め決められた所定距離L2以内であるか否かを判別する。例えば、図4に示すように道路Rの左端を走行する自車両Cにおいて、段差の位置Pと自車両Cとの距離が自車両から所定距離L2以内である場合には、当該自車両Cが道路Rを退出して段差を通過すると見なす。
【0055】
ステップS240にて段差が自車両から所定距離L2以内に存在すると判別されないときには、ステップS245以降の処理をスキップして処理を終了する。一方、ステップS240にて段差が自車両から所定距離L2以内に存在すると判別されたときには、安定化制御部21fがサスペンション44の制御を実施する(ステップS245)。
【0056】
すなわち、安定化制御部21fはサスペンション44に制御信号を出力し、通常走行時よりもサスペンション44の固さを柔らかくするための制御を行う。この結果、サスペンション44の固さが段差に適応した固さになる。図4に示す例において、既に段差の位置Pの情報が地図情報30aに記録されており、ステップS220〜S235にて退出判定がなされ、さらに、自車両Cと段差の位置Pとの距離が所定距離L2以内であるときにはステップS240の判別を経てサスペンション44の固さが柔らかくなる。
【0057】
次に、安定化制御部21fは、自車両の動作を特定し、退出が中断した、あるいは、退出が完了したか否かを判別する(ステップS250)。すなわち、上述のステップS155と同様の判別処理を行う。ステップS250においては、退出が中断した、あるいは、退出が完了したと判別されるまで当該判別を繰り返し、退出が中断した、あるいは、退出が完了したと判別されたときには、サスペンション44の制御を終了する(ステップS255)。
【0058】
すなわち、安定化制御部21fはサスペンション44に制御信号を出力し、通常走行時のサスペンション44の固さとして予め設定された固さにするための制御を行う。この結果、サスペンション44の固さは通常走行時に適した固さになる。図4に示す例においては、ステップS250の判別により、段差の位置Pを通過して退出完了と判別されるまでサスペンション44の固さが柔らかくなった状態が維持される。従って、自車両Cが段差の位置Pを通過するとき、サスペンション44は当該段差による自車両Cの上下動を抑制する固さに設定されているため、自車両Cは高い走行安定性を維持しながら段差を通過することができる。
【0059】
一方、図4に示す例において、領域Bに段差が存在しない場合には、施設Fに進入する際に自車両Cが通過する路面に関して地図情報30aに対して段差の位置は記録されない。従って、自車両Cが図4に示す状態となって、ステップS220やステップS235にて退出判定がなされたとしても、ステップS240にて段差が所定距離L2以内に存在すると判別されないため、ステップS245以降の処理は実施されない。このため、サスペンション44の固さは通常走行時の固さとして予め設定された固さに維持され、自車両Cが施設Fに進入する際に段差の存在しない状態に対応したサスペンション44の固さとなり、高い走行安定性を維持することができる。
【0060】
以上のように、本実施形態によれば、単に自車両が道路から退出することをもって段差の存在を推定するのではなく、自車両が道路から退出するときに段差の有無を特定し、その位置を記録するため、確実に段差が存在することを特定することができる。また、正確に段差の存在を示す情報を取得することができるため、この情報を参照すれば段差が存在することを確実に特定した状態で自車両における安定化制御を実施することが可能になる。従って、安定化制御が必要な場合に確実に安定化制御を実施することができる。
【0061】
(4)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、自車両が段差を通過したか否かを検出し、その検出結果に基づいて段差の位置を特定して記憶媒体に記録する限りにおいて、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、自車両の現在位置を特定するための情報はGPS受信部40が出力する情報に限定されず、公知の種々のセンサやカメラを採用可能であり、例えば、自車両の現在位置をセンサやカメラによって特定する構成や、地図上での自車両の軌跡,車車間通信,路車間通信等に基づいて自車両の位置を特定する構成等を採用可能である。
【0062】
さらに、上述の実施形態において、退出判定部21cはカメラ42にて取得した画像情報と目的地とに基づいて退出判定を行っていたが、むろん、退出判定を行うための構成は、ほかにも種々の構成を採用可能であり、自車両が交差点付近に存在していない状態で方向指示器が操作されたことを示す情報を取得し、当該方向指示器が道路の外側を指示しているときに自車両が道路から退出すると判定する構成等を採用可能である。また、自車両が左右端の車線を走行しているときにステアリングセンサによって道路からの退出を示す舵角を取得したときに道路からの退出を判定しても良い。さらに、以上の各種の退出判定を行うための構成を組み合わせてもよい。
【0063】
さらに、段差情報を取得するためには、退出判定がなされたときに自車両に搭載された検出部の検出結果を参照して段差を示す情報を取得すればよい。従って、検出部においては、自車両が凹凸等の段差を通過したことが検出できれば良く、上述の加速度センサ43の他、車両における振動を検出するセンサ等を採用可能である。また、カメラによって路面を撮影し、当該撮影した画像情報に基づいて段差の通過を検出しても良いし、サスペンションやスタビライザの動作に基づいて間接的に段差の通過を検出しても良い。
【0064】
段差の位置を示す情報は、緯度や経度など、直接的に位置を示した情報であっても良いし、施設や道路など位置が特定されている地物に対応付けて段差の位置を示す情報としても良く、種々の構成を採用可能である。
【0065】
なお、段差の位置を示す情報を利用して自車両の走行を安定化させる際の制御対象はサスペンションに限定されず、スタビライザであっても良い。いずれにしても、走行安定化部における衝撃の吸収程度が通常の道路の走行時よりも高くなるように設定する構成を採用可能である。
【0066】
さらに、上述の実施形態においては、段差の位置を示す情報を利用した走行安定化制御を行うにあたり、退出判定を行った上で段差の位置を参照して制御を開始していたが、ここでは、自車両が段差を通過する際に走行安定化部において走行安定化のための制御を実施することができれば良い。従って、退出判定は省略し、段差の位置と自車両の位置との距離が所定距離以下である場合に自車両の走行を安定化するための制御を行わせる構成であっても良い。
【0067】
さらに、段差位置記録部21eにおいて段差の位置を示す情報を記録する際に、段差の程度を示す情報を合わせて記録しておき、安定化制御部21fにおいては、当該段差の程度に合わせて走行安定化部における衝撃吸収力を調整しても良い。この結果、段差の程度に応じて走行安定化制御を行うことができ、より的確に走行を安定化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】道路情報取得装置、運転支援装置を含むナビゲーション装置のブロック図である。
【図2】段差位置取得処理のフローチャートである。
【図3】サスペンション制御処理のフローチャートである。
【図4】動作例を示す図である。
【符号の説明】
【0069】
10…ナビゲーション装置、20…制御部、21…ナビゲーションプログラム、21a…案内部、21b…現在位置取得部、21c…退出判定部、21d…段差情報取得部、21e…段差位置記録部、21f…安定化制御部、30…記憶媒体、30a…地図情報、40…GPS受信部、41…車速センサ、42…カメラ、43…加速度センサ、44…サスペンション

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の現在位置を示す情報を取得する現在位置取得手段と、
前記自車両が道路から退出することを判定する退出判定手段と、
前記自車両が道路から退出すると判定されたときに、前記自車両が段差を通過したか否かを検出する検出部の検出結果を参照して段差を示す情報を取得する段差情報取得手段と、
前記段差が存在するときに、前記自車両の現在位置を示す情報に基づいて前記段差の位置を示す情報を記憶媒体に記録する段差位置記録手段と、
を備える道路情報取得装置。
【請求項2】
前記退出判定手段は、前記自車両に搭載されたカメラが出力する当該自車両の周囲を含む画像情報を取得し、当該画像情報に基づいて前記自車両が前記道路から退出することを判定する、
請求項1に記載の道路情報取得装置。
【請求項3】
前記自車両の目的地へ走行するための走行経路を案内する案内手段を備え、
前記退出判定手段は、前記自車両の現在位置を示す情報を取得し、当該自車両の現在位置と前記目的地との距離が所定距離以下であるときに前記自車両が道路から退出することを判定する、
請求項1または請求項2のいずれかに記載の道路情報取得装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の前記記憶媒体を参照して前記段差の位置を示す情報を取得し、当該段差の位置と前記自車両の現在位置との距離が所定距離以下である場合に、前記自車両に搭載された走行安定化部に前記自車両の走行を安定化するための制御を行わせる安定化制御手段
を備える運転支援装置。
【請求項5】
自車両の現在位置を示す情報を取得する現在位置取得工程と、
前記自車両が道路から退出することを判定する退出判定工程と、
前記自車両が道路から退出すると判定されたときに、前記自車両が段差を通過したか否かを検出する検出部の検出結果を参照して段差を示す情報を取得する段差情報取得工程と、
前記退出路に前記段差が存在するときに、前記自車両の現在位置を示す情報に基づいて前記段差の位置を記憶媒体に記録する段差位置記録工程と、
を含む道路情報取得方法。
【請求項6】
自車両の現在位置を示す情報を取得する現在位置取得機能と、
前記自車両が道路から退出することを判定する退出判定機能と、
前記自車両が道路から退出すると判定されたときに、前記自車両が段差を通過したか否かを検出する検出部の検出結果を参照して段差を示す情報を取得する段差情報取得機能と、
前記退出路に前記段差が存在するときに、前記自車両の現在位置を示す情報に基づいて前記段差の位置を記憶媒体に記録する段差位置記録機能と、
をコンピュータに実現させる道路情報取得プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−58285(P2009−58285A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−224316(P2007−224316)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】