説明

電気的接続構造の製造方法

【課題】 低抵抗の電気的接続構造を提供する。
【解決手段】 ビアホールの底部の導電体上に導電性触媒担持体層を設け、予め微粒子化した触媒微粒子を当該導電性触媒担持体層上に堆積し、その後リフトオフ法により前記ビアホール底部以外の前記触媒粒子を除去して触媒微粒子層となし、当該触媒微粒子層上に炭素細長構造体を設ける電気的接続構造の製造方法において、前記触媒微粒子が、Co、Ni、Feからなる群から選ばれた金属の微粒子であること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的接続構造、その製造方法および半導体集積回路装置に関し、特にカーボンナノチューブ等の炭素細長構造体を利用した電気的接続構造、その製造方法および半導体集積回路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置やプリント配線基板等を含む半導体集積回路装置には、異なる層や面に存在する配線等の導電体間を電気的に接続するため、層間絶縁膜や基板等にビアホールを形成し、そこに導電性材料を形成したビア構造が広く採用されている。
【0003】
配線材料には銅(Cu)が用いられていることが多く、そのようなCu配線に通じるよう所定位置に形成したビアホール内にCu等の導電性金属材料を充填等することにより、ビアを形成するのが一般的である。
【0004】
近年では、このようなビアに、Cuのような金属材料の他、いわゆるカーボンナノチューブ(CNT)やカーボンファイバ中に見出される筒状になった炭素材料を用いる検討がされている。特にCNTは、化学的安定性に優れ、また、特異な物理的・電気的性質を有する等、様々な特性を有しており、半導体デバイスの形成材料として注目され、たとえば、その太さや長さの制御のほか、形成位置制御やカイラリティ制御等、現在も様々な検討が続けられている。
【0005】
図1に、そのようなCNTを利用した配線ビア構造(たとえば特許文献1および非特許文献1参照。)の一例を示す。このようなビア構造は、図1に示すように、たとえば、基板1上に、下地層2およびCu配線層3を設け、このCu配線層3上にCuの拡散を防ぐバリア膜(Ta膜など)4を堆積し、絶縁層5をその上に設け、ビアホールを設けた後、触媒金属担持膜(例えばTi膜)6とCo等の触媒金属膜7とをスパッタ等により堆積し、ついで、炭化水素系ガス(CH4、C22等)を用いた熱CVD法(化学的気相成長法)等でCNT8を成長させ、その後、上部配線を形成することで作製することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−329723号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2005−022885号公報(特許請求の範囲)
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】二瓶ら,「ジャパン・ジャーナル・オブ・アプライド・フジックス(Japan Journal of Applied Physics)」,2005年,第44巻,p. 1626
【非特許文献2】佐藤ら,「ケミカル・フィジックス・レターズ(Chemical Physics Letters)」,2003年,第381巻,p.361
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように触媒スパッタ膜からCNTを成長する場合、CNTの直径や密度の制御が難しく、結果としてCNT配線の特性を制御することが困難となることが判明した。
【0009】
このような問題を解決するため、あらかじめ粒径を制御した触媒微粒子を生成した後堆積し、そこから直径、本数の制御されたCNTを成長することが試みられている(たとえば特許文献2、非特許文献2参照。)。
【0010】
この場合、触媒微粒子は通常、Ta等のバリア膜や、近年CNTの成長を促進することが明らかとなったTiの膜上に堆積され、そこからCNTが成長されることになる。図2は、ビアホール底に堆積されたTi膜上コバルト微粒子から成長したCNTがビアホール上にまで伸びている状態を示す写真である。図2から、CNTが、ビアの軸方向に配向して、高密度でビアホール内に成長していることがわかる。
【0011】
しかしながら、この場合にも解決しなければならない課題があることが判明した。すなわち、これらのCNTビアの上下に電極を取り、ビア配線の抵抗を測定すると数メガオーム(ビア径:2μm)であり、数オーム程度という予想に反し非常に高いことがわかった。
【0012】
本発明は、この問題を解決し、CNT等の炭素細長構造体を高密度に配した低抵抗の電気的接続構造を提供することを目的としている。本発明のさらに他の目的および利点は、以下の説明から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様によれば、導電体に炭素細長構造体が電気的に接続された電気的接続構造において、当該導電体上に、導電性触媒担持体層と当該炭素細長構造体を生成するための触媒微粒子層と当該炭素細長構造体とが順次積層されてなる電気的接続構造が提供される。本発明態様により、低抵抗の電気的接続構造が得られる。前記触媒微粒子層が、前記導電性触媒担持体層上に、予め微粒子化した触媒微粒子を堆積してなるものであることが好ましい。
【0014】
本発明の他の一態様によれば、導電体上に導電性触媒担持体層を設け、予め微粒子化した触媒微粒子を当該導電性触媒担持体層上に堆積して触媒微粒子層となし、当該触媒微粒子層上に炭素細長構造体を設ける、電気的接続構造の製造方法が提供される。本発明態様により、低抵抗の電気的接続構造を製造することができる。なお前記触媒微粒子層は、低圧下において粒径を揃えた触媒微粒子ビームを前記導電性触媒担持体層面上に照射して形成することが好ましい。
【0015】
さらに、上記二つの態様に共通して、前記炭素細長構造体がビアホール中に設けられたものであること、前記導電性触媒担持体層が耐酸化性物質よりなること、前記導電性触媒担持体層が炭素細長構造体の成長を促進する機能を有すること、前記導電性触媒担持体層が前記導電体を構成する金属の拡散防止機能を有すること、前記触媒微粒子が、Co、Ni、Fe、Pd、Ptおよびそれらを含む合金からなる群から選ばれた金属の微粒子であること、前記導電性触媒担持体層が、HfN膜層、ZrN膜層、TiN膜層、またはそれらの多層膜であること、前記導電性触媒担持体層が、前記導電体側に設けられた、前記導電体を構成する金属の拡散防止機能を有する第一層と、前記触媒微粒子層側に設けられた、炭素細長構造体の成長を促進する機能を有する第二層とを含んでなること、前記第一層がTa層であり、前記第二層が、HfN膜層、ZrN膜層またはTiN膜層であることが好ましい。
【0016】
本発明の更に他の態様によれば、上記二つの態様に係る電気的接続構造を有してなる半導体集積回路装置が提供される。本発明態様により、低抵抗の電気的接続構造を有する、信頼性が高く、高度に集積した半導体集積回路装置が得られる。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、低抵抗の電気的接続構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】CNTを利用したビア構造を有する電気的接続構造を示す模式図である。
【図2】ビアホール底に堆積されたTi膜上コバルト微粒子から成長したCNTがビアホール上にまで伸びている状態を示す写真である。
【図3】CNT成長後、CNT成長表面のX線回折を行った結果を示すX線回折チャートである。
【図4】HfN膜上、TiN膜上、Si基板上およびMo膜上に堆積した平均直径5nmのCo微粒子から成長したCNTの走査電子顕微鏡像を示す写真である。
【図5−A】本実施例で得られたCNTビア構造の一例を示す断面図である。
【図5−B】本実施例で得られたCNTビア構造を作製中の様子を示す断面図である。
【図5−C】本実施例で得られたCNTビア構造を作製中の様子を示す断面図である。
【図5−D】本実施例で得られたCNTビア構造を作製中の様子を示す断面図である。
【図5−E】本実施例で得られたCNTビア構造を作製中の様子を示す断面図である。
【図6】本発明に係る電気的接続構造を利用した半導体集積回路装置を模式的に示す断面図である。
【図7】本発明に係る触媒微粒子層の作製に使用できる堆積装置を示す模式図である。
【図8】CNT成長直後の電気的接続構造体がビアホールから顔を出している様子を示すSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施の形態を図、実施例等を使用して説明する。なお、これらの図、実施例等および説明は本発明を例示するものであり、本発明の範囲を制限するものではない。本発明の趣旨に合致する限り他の実施の形態も本発明の範疇に属し得ることは言うまでもない。図中、同一の符号は同一の要素を表す。
【0020】
本発明に係る電気的接続構造は、導電体に炭素細長構造体が電気的に接続された電気的接続構造において、当該導電体上に、導電性触媒担持体層と当該炭素細長構造体を生成するための触媒微粒子層と当該炭素細長構造体とが順次積層されてなる。
【0021】
本発明において、「導電体」は、典型的には、半導体集積回路装置等の配線部を意味するが、炭素細長構造体と電気的に接続できる導電性物質よりなるものであれば、その形状に特別な制限はない。このような導電性物質としてはアルミニウム、銅、金、銀、タングステン、ポリシリコン等を挙げることができる。導電体の厚さには特に制限はないが、半導体集積回路装置の配線の場合には100〜1000nmの範囲が一般的である。本発明における導電体の作製方法については特に制限はなく、公知の方法から選択することができる、めっき法、スパッタ法を例示できる。
【0022】
なお、以下において、上下の関係は「導電体」を最下層として判断するものであるが、マクロ的に見ると、導電性触媒担持体層の上に設けた触媒微粒子層上に炭素細長構造体を形成した場合でも、ミクロ的に見ると、後述するように、導電性触媒担持体層が、間に触媒微粒子層を挟まずに、直接炭素細長構造体と接触している構造部分もあり得るものと考えられている。従って、本発明における上下関係は、あくまでマクロ的に各層を形成する順序を示すと解するべきである。
【0023】
上記図1に係る構造が高抵抗である原因の一つとして触媒微粒子層の下にある金属膜(チタン膜)の酸化が考えられることが判明した。通常、触媒微粒子を金属膜上に堆積する際には、金属膜は大気に一度曝されることになるが、その際酸化されやすい金属であると、程度の差はあれ酸化されることになる。上記の例で、CNT成長後CNT成長表面のX線回折を行った結果を図3に示す。チタン膜を利用した場合、膜が酸化していなければ、炭素とチタンが結合したTiCのピークが見られ、低抵抗接合を与えることが知られているが、この場合にはTiCが観察されなかった。図3には、触媒スパッタ膜をTi膜上に連続成膜し、Tiの酸化を防いだ場合の結果も示してある。この場合には、CNTの直径等の制御性は十分ではないもののCNTを形成でき、TiCの存在が確認された。このことより、上記の高抵抗はTi膜の酸化に起因するのではないかと推測された。
【0024】
本発明に係る電気的接続構造では、このような推測に鑑み、炭素細長構造体を形成するに当たり、触媒微粒子層の下に導電性触媒担持体層を設ける。
【0025】
本発明に係る触媒微粒子層は、導電性触媒担持体層上に予め微粒子化した触媒微粒子を堆積してなるものであることが好ましい。すなわち、導電体上に導電性触媒担持体層を設け、予め微粒子化した触媒微粒子を導電性触媒担持体層上に堆積して触媒微粒子層となし、ついで、触媒微粒子層上に炭素細長構造体を設ける。こうすることにより、触媒微粒子の粒径を揃えることができ、CNTの直径制御や密度制御が容易になる。
【0026】
このような触媒としては、使用する炭素細長構造体に応じて、適宜公知のものから選択することができる。Co、Ni、Fe、Pd、Ptおよびそれらを含む合金からなる群から選ばれた金属を挙げることができる。炭素細長構造体がカーボンナノチューブの場合には、特に、Co、NiまたはFeやそれらを含む合金が好ましい。
【0027】
触媒微粒子の大きさには特に制限はないが、カーボンナノチューブを形成するためには、平均粒径が0.5〜50nmの範囲のものが好ましい。この粒径は電子顕微鏡による観察から測定することができる。カーボンナノチューブが触媒微粒子を核に成長することを考慮すると、たとえばビアホールにおけるカーボンナノチューブの直径と密度(所定面積に何本のカーボンナノチューブが立つか)が、触媒微粒子の粒径と分布密度に左右されることになる。所望のカーボンナノチューブの密度は、カーボンナノチューブの直径にもよるが、一般的には高ければ高い方がよい。より具体的には5×1010本/cm2以上が好ましい。触媒微粒子の粒径と分布密度とは、このようなカーボンナノチューブの直径や密度が得られるように決めることが好ましい。
【0028】
触媒微粒子の堆積の仕方については特に制限はないが、何らかの方法で触媒微粒子を形成し、必要であれば分級して粒径を揃え、この触媒微粒子を導電性触媒担持体層上に堆積させる方法が挙げられる。本発明に係る炭素細長構造体は、触媒微粒子を核にして成長するので、粒径の均一化は、炭素細長構造の直径や形成位置の制御に重要である。一般的には導電性触媒担持体層上に均一に分布して堆積することが好ましい。
【0029】
触媒微粒子は、レーザーアブレーション法、蒸発凝縮法等、公知の方法を適宜選択して形成することができる。予め微粒子化した触媒微粒子を堆積させる方法としては、触媒微粒子を堆積させる場所が充分広い場合には、帯電粒子または非帯電粒子の噴霧等で充分であるが、ビアホールの底部の場合のように、アスペクト比が1/1以上と高い場合には、方向の揃えられた微粒子ビームを低圧下で導電性触媒担持体層に衝突させる方法が好ましい(特許文献2参照。)。分級には微分式移動度測定器(DMA)やインパクター等を利用することができる。
【0030】
本発明に係る導電性触媒担持体層とは、導電性を有し、炭素細長構造体を生成するための触媒微粒子層を堆積しているあるいは堆積していた層を意味する。
【0031】
触媒微粒子層は、炭素細長構造体を形成する前に導電性触媒担持体層上に堆積される。しかしながら炭素細長構造体の形成と共に触媒微粒子が(たとえば炭素細長体構造の先端に)移動する場合があることが知られている。さらに、触媒微粒子がカーボンナノチューブの根本にある場合でも、上記のようにTiC等の金属炭化物が生じる場合には、導電性触媒担持体層とカーボンナノチューブとの直接の接触が生じていると考えられる。上記の「触媒微粒子層を堆積しているあるいは堆積していた層」はこのような意味を有している。
【0032】
「導電性を有する」とは、導電性を有する物質を使用してなることを意味するのではなく、例えば、本発明に係る炭素細長構造体を用いてビアを形成した場合に、所望の抵抗値以下の抵抗値が得られることを意味する。
【0033】
導電体との間の導電性については特に問題はないが、炭素細長構造体との間の導電性については、導電性触媒担持体層を構成する物質によっては、酸化等により導電性が低下する場合があるので、導電性触媒担持体層を構成する物質を選択する際に留意することが重要である。この意味で、本発明に係る導電性触媒担持体層には、本発明に係る電気的接続構造を製造する際に、耐酸化性物質、すなわち、酸化により導電性を消失または減少しない物質を使用することができ、好ましい。
【0034】
上記所望の抵抗値は用途に応じ任意に定めることができる。具体的には、直径2μm、厚さ350nmのビアホールに5×1010本/cm2のカーボンナノチューブを形成した場合には、5Ω以下の抵抗値になることが好ましく、1Ω以下の抵抗値になることがより好ましい。
【0035】
本発明に係る導電性触媒担持体層は、炭素細長構造体の成長を促進する機能を有することが好ましい。炭素細長構造体は触媒微粒子の触媒作用により生成するものであるが、導電性触媒担持体層によっても影響を受け、炭素細長構造体が全く生成しないケースや、炭素細長構造体が生成してもその直径や密度の制御が困難になる場合があるので、適切な材料の選択が重要になる。炭素細長構造体が所定の長さ成長した後は、機能炭素細長構造体の成長を促進する機能を失ってもよいことはいうまでもない。
【0036】
本導電性触媒担持体層は、上記機能と共に、下にある導電体を構成する金属の拡散防止機能を有するものであることが好ましい。導電性触媒担持体層がこのような機能を有することにより、導電性触媒担持体層としての本来の機能を保持しつつ、導電体の拡散による電気的接続構造の機能劣化を防止できる。
【0037】
本導電性触媒担持体層は、一層からなっていても複数の層からなっていてもよい。従って、上記機能は、一層ですべて兼ね備えてもよいが、複数の層に機能を分担させてもよい。後者の場合、具体的には、本導電性触媒担持体層が、導電体側に設けられた第一層であって、導電体を構成する金属の拡散防止機能を有する層と、触媒微粒子層側に設けられた第二層であって、炭素細長構造体の成長を促進する機能を有する層とを含んでなる構造を挙げることができる。第一層と第二層の間には他の層が存在していてもよい。
【0038】
本導電性触媒担持体層は、HfN膜層、ZrN膜層、TiN膜層、またはそれらの多層膜であることが好ましい。「それらの多層膜」は、それらのみの多層膜であっても、それらのいずれか一以上と他の材料よりなる層との組み合わせであってもよい。
【0039】
これらの膜は大気に曝しても酸化しにくいことが知られている。一例として、図4に、(a)HfN膜上、(b)TiN膜上、(c)Si基板上および(d)Mo膜上に堆積した平均直径5nmのCo微粒子から成長したCNTの走査電子顕微鏡像を示す。CNT成長温度は600℃程度、原料ガスはアセチレン・アルゴン混合ガスである。図4からわかるように、この条件では、Si基板上やMo膜上ではほとんどCNTは成長していないが、HfN、TiN膜上ではCNTが良好に成長していることがわかる。このように、HfN、ZrN、TiN膜は、CNTの成長を促進する膜である。上でも述べたように、これら膜は非常に酸化しにくいことが知られており、CNT配線における電極の材料として好適であることがわかる。
【0040】
HfN膜層、ZrN膜層およびTiN膜層は単一層で、導電体を構成する金属の拡散防止機能とその他の機能と兼ね備えたものとして扱うこともできるが、導電体側に、導電体を構成する金属の拡散防止機能を有する層を設けた積層構造の一部として使用することが好ましい場合も多い。この場合には、導電体側に設ける第一層として公知のどのような金属拡散防止用の材料を使用してもよいが、Ta層を使用することが好ましい。
【0041】
なお、本発明に係る導電性触媒担持体層の厚さについては特に制限はないが、拡散防止機能も兼ね備える場合には、1〜50nmの範囲が一般的である。本発明に係る導電性触媒担持体層の作製方法には特に制限はなく、真空蒸着法、スパッタリング、CVD等を利用することができる。
【0042】
本発明において、「炭素細長構造体」には、典型的にはカーボンナノチューブが含まれるが、その他のサイズや形状のものであっても、主として炭素からなっており、細長い形状を有している導電体であればどのようなものでもよい。
【0043】
カーボンナノチューブには、金属的な性質を示すための条件を満たすバンド構造を取るものと、半導体的(半金属的)な性質を示すための条件を満たすバンド構造を取るものがある。本発明に係るカーボンナノチューブとしては金属的な性質を示すものが好ましい。
【0044】
本発明に係る炭素細長構造体を使用することにより、低抵抗の電気的接続構造を提供することができる。断線の原因となるマイグレーション耐性を高くできる。また、本発明に係る炭素細長構造体は、ビアホールのように、高アスペクト比の場合に有用である。
【0045】
たとえば、ビアホール充填材としてアルミニウムや銅を使用した場合には、マイグレーション現象として知られる配線材料の金属原子の移動現象問題が知られている。これは、導電材料に加わるストレスや配線中を流れる電子に起因する断線現象で、複雑な構造を採らざるを得ない配線やビア部分などで、特にこの現象が生じることが多い。ストレスに起因して発生するマイグレーションはストレスマイグレーション、配線中を流れる電子に起因するものはエレクトロマイグレーションと呼ばれる。マイグレーション耐性は導電材料の放熱能力とも密接な関係にあり、放熱が悪く導電材料の温度が上昇するとマイグレーション耐性が低下することが知られている。
【0046】
これに対し、たとえば、カーボンナノチューブをビアホール充填材として使用した場合には、機械的強度に優れることから、ストレスマイグレーション耐性が高く、炭素原子同士の結合が強固であることから原子の移動が起こりにくく、従ってエレクトロマイグレーション耐性も高い。また、炭素の熱伝導性が良好であることから放熱能力の点でも良好である。
【0047】
本炭素細長構造体が、ビアホールのように高アスペクト比の場合に有用であるのは、触媒微粒子層上に自己組織化により形成できるため、アスペクト比による影響を受け難いこと、カーボンナノチューブの筒直径が、0.5〜50nm程度であり、例えば、2μm直径のビアホールに数百本以上のカーボンナノチューブを林立させることが可能であること等による。
【0048】
なお、ビアホールの壁を形成する材料については特に制限はない。たとえば酸化ケイ素等のケイ素系絶縁材料を使用することができる。多孔質であってもよい。低誘電率性の材料であってもよいことは言うまでもない。
【0049】
カーボンナノチューブの形成には、従来はアーク放電やレーザーアブレーションが用いられてきたが、現在ではプラズマCVDや熱CVDがよく用いられている。CVDによる形成方法は、ナノチューブを直接基板上に形成できることから、集積回路の製造への応用が期待されている。
【0050】
なお、本発明に係るカーボンナノチューブは、金属を内包したフラーレンなどの、全体として金属的性質を示す、ナノチューブとは別のナノ構造体がカーボンナノチューブ内に詰まっている、いわゆるピーポッド構造のナノチューブとして形成してもよい。
【0051】
このような別のナノ構造体を含むピーポッド構造のナノチューブを用いることにより、ビアの電気伝導特性あるいは機械的強度を増強することが可能になる。例えば、金属内包フラーレンを含むカーボンナノチューブの場合、内包された金属の電荷がフラーレン外側に現れ、更にナノチューブ外側に現れることが、第一原理計算から知られており、それによってビアの電気伝導特性を向上させることができる。
【0052】
金属内包フラーレンのように全体として金属的性質を示す、ナノチューブとは別の構造体もしくは分子あるいは原子は、ナノチューブ内ではなく、一つのビアを構成している隣接ナノチューブ間に存在してもいてもよい。また、内部に金属フラーレンを含む隣接ナノチューブ間に、上記のナノチューブとは別の構造体もしくは分子あるいは原子を配置することも可能である。
【0053】
このようにして、本発明に係る電気的接続構造は、半導体集積回路装置に利用することができる。その場合、信頼性が高く、高度に集積した半導体集積回路装置を実現することができる。
【0054】
図6は、本発明に係る電気的接続構造を利用した半導体集積回路装置を模式的に示す断面図である。シリコン基板61にトランジスタ62等の素子が複数作りこまれ、それらを覆って複数の絶縁層(層間絶縁膜)63a〜63fが形成されている。絶縁層を挟んで配線層が位置し、所定の配線層の配線65は絶縁層を貫通して形成されたビア66により別の層の配線65につながれている。67は、素子同士をつなぐ配線65に接続するコンタクトを表している。一番上の配線層は保護層68で被覆されている。この図に示した集積回路装置では、ビア66に本発明に係る電気的接続構造を適用することができる。
【実施例】
【0055】
次に本発明の実施例を詳述する。図5−Aは、本実施例で得られたCNTビア構造の一例である。図5−Aには、銅配線層51上に拡散防止用の5nm厚のTa膜52が形成され、その上に膜厚350nmのSiO2絶縁層53が形成された多層体にビアホール54が開けられ、そのビアホール54にCNT55が形成されている様子が、電気的接続構造の模式的横断面図として示されている。銅配線層51が本発明に係る導電体に該当する。Ta膜52は銅の拡散防止層である。
【0056】
ビアホール54の底部には、Ta膜52の上に、厚さ5nmのTiN膜56が形成されており、その上に平均直径5nmのCo微粒子57が堆積され、その触媒微粒子からCNT55が成長している。Co微粒子からCNT55が成長している様子は想像図である。TiN膜56が本発明に係る導電性触媒担持層に該当し、微粒子57の層が本発明に係る触媒微粒子層に該当し、CNT55が本発明に係る炭素細長構造体に該当する。Ta膜52+TiN膜56を本発明に係る導電性触媒担持層と考えてもよい。
【0057】
図5−Aでは触媒微粒子がCNTの根本にあるが、上述したように、触媒微粒子がCNTの先端にある場合や、CNTの構造中に取り込まれている場合もある。CNTの先端は、触媒微粒子を除去したり、結合の弱い5員環構造部分を除去するために酸素プラズマアッシング処理を行ってもよい。CNT上部の平坦化にはCMP(化学的機械的ポリッシング)を適用することもできる。図5−Aには描いていないが、このビアにさらに上部銅配線を接続することができる。
【0058】
以下に、このようなCNTビアの作製法について説明する。まず、下部銅配線51をスパッタ法で堆積した。スパッタ法の代わりにめっき法を採用してもよい。その上に、スパッタ法によりTa膜52を5nm堆積した。その後、TEOS(テトラエトキシシラン)−CVD法により350nmのSiO2酸化膜53を堆積した。これにより、図5−Bの断面構造が得られた。
【0059】
ついで、SiO2酸化膜53上にフォトレジストを塗布し、フォトリソグラフィ法により、ビアホール54の開口予定箇所のフォトレジストを除去し、その後フッ素を用いたドライエッチングによりSiO2酸化膜53にビアホール54を開口した。ドライエッチングのかわりにフッ酸を用いたウェットエッチング等を採用することもできる。これにより、図5−Cの断面構造が得られた。なお、SiO2酸化膜53上にはフォトレジスト層58が残されている。
【0060】
その後、基板全面に、TiN膜56をスパッタ法で5nm堆積し、その上に、特許文献2に記載された方法で、平均直径5nmのCo微粒子57を堆積した。具体的には、図7に示すような堆積装置を用いた。
【0061】
この堆積装置では、真空下において、粒径を揃えた触媒微粒子ビームを前記導電性触媒担持体層面上に照射して前記触媒微粒子層を形成する。このような方法は、本発明に係る触媒微粒子層を形成するのに適している。
【0062】
この堆積装置の操作方法は次の通りである。堆積装置は、微粒子を生成する発生手段71と、微粒子を所定サイズのものに分級する分級手段73と、微粒子ビームの照射及び微粒子の堆積が実行される堆積チャンバー74とを備えて構成される。
【0063】
堆積チャンバー74は差動排気部75と高真空部77(例えば、10-3Pa程度の圧力)とを有し、微粒子ビームの方向を揃えるための微粒子収束部78、被照射対象である基板70が載置される可動ステージ79等を備えている。
【0064】
微粒子は、発生手段71により例えばレーザアブレーションや蒸発凝縮法等で生成され、その後、必要ならば分級手段73、例えば微分式移動度測定器(DMA)等を利用してサイズが揃えられ(分級し)、キャリアガスと共に堆積チャンバー74に導かれる。本実施例では、分級手段として微分式移動度測定器(DMA)を用いた。
【0065】
微粒子を含むキャリアガスは、ノズル76を通して堆積チャンバー74に導入された。ノズル76は細孔(オリフィス)又はキャピラリーを有している。本実施例ではオリフィスを用いた。
【0066】
堆積チャンバー74に導入された微粒子は、1段または多段の差動排気部75を通って高真空部77に導かれる。本実施例では差動排気部は2段になっており、それぞれ70Pa、0.1Pa程度の圧力に保たれている。このとき、微粒子の慣性を利用してキャリアガスのみが、2段の差動排気用真空ポンプ75a,75bに導かれるようにする。高真空部77はポンプ72により高真空(例えば、10-3Pa)に保たれている。高真空部77に導かれた微粒子は、キャリアガスの影響でいくらかの広がりを持っている。このような微粒子は次に微粒子収束部78(たとえば静電レンズ)に導かれ、その収束効果により方向が揃えられた微粒子ビームとされた。
【0067】
方向が揃えられた高指向性の微粒子ビームは、可動ステージ79上に載置固定された高アスペクト比の溝構造が形成された基板70へ照射された。高真空下であるため気体分子による攪乱は小さい。この結果、微粒子は微粒子収束部78において与えられた方向をほぼ維持し、高アスペクト比の溝構造における実質的な底部に堆積された。
【0068】
これにより、図5−Dの断面構造が得られた。なお、このTiN膜56は、上記のTa膜の堆積時に連続して堆積しておいてもよい。
【0069】
その後、リフトオフ法により、ビアホール底部以外のTiN膜およびCo微粒子を除去する。これにより、図5−Eの断面構造が得られた。
【0070】
このようにしてビアホールが作製された電気的接続構造体は、CVD室に搬送され、熱CVD法によりビアホールでのCNT成長を行った。本実施例では、原料ガスとしてアセチレン・アルゴン混合ガス(体積比率1:9)を使用した。原料ガスの圧力、流量はそれぞれ1kPa、200sccm(標準立方センチメートル毎分)であり、成長温度は510℃であった。この結果、図5−Aの構造が得られた。本実施例では、CNT成長後、CNT束の上端にさらに金属電極を作製し、CNTビアの抵抗測定を行った。図8は上記CNT成長直後の電気的接続構造体がビアホールから顔を出している様子を示すSEM写真(下側は上側の拡大図)である。
【0071】
このように作製したCNTビアが1000個直列しているビアチェーンの抵抗を測定し、それから径2μmのビア一個あたりの抵抗を求めた結果、約1オームであった。この結果、予想通り、本発明に係る電気的接続構造が低い抵抗を与えることがわかった。なお、HfN膜やZrN膜を使用した場合も、ほぼ同様の結果が得られた。
【0072】
なお、上記に開示した内容から、下記の付記に示した発明が導き出せる。
【0073】
(付記1)
導電体に炭素細長構造体が電気的に接続された電気的接続構造において、当該導電体上に、導電性触媒担持体層と当該炭素細長構造体を生成するための触媒微粒子層と当該炭素細長構造体とが順次積層されてなる
電気的接続構造。
【0074】
(付記2)
前記触媒微粒子層が、前記導電性触媒担持体層上に、予め微粒子化した触媒微粒子を堆積してなるものである、請求項1に記載の電気的接続構造。
【0075】
(付記3)
前記炭素細長構造体がビアホール中に設けられたものである、請求項1または2に記載の電気的接続構造。
【0076】
(付記4)
前記導電性触媒担持体層が耐酸化性物質よりなる、請求項1〜3のいずれかに記載の電気的接続構造。
【0077】
(付記5)
前記導電性触媒担持体層が炭素細長構造体の成長を促進する機能を有する、請求項1〜4のいずれかに記載の電気的接続構造。
【0078】
(付記6)
前記導電性触媒担持体層が前記導電体を構成する金属の拡散防止機能を有する、請求項1〜5のいずれかに記載の電気的接続構造。
【0079】
(付記7)
前記触媒微粒子が、Co、Ni、Fe、Pd、Ptおよびそれらの合金からなる群から選ばれた金属の微粒子である、請求項1〜6のいずれかに記載の電気的接続構造。
【0080】
(付記8)
前記導電性触媒担持体層が、HfN膜層、ZrN膜層、TiN膜層、またはそれらの多層膜である、請求項1〜7のいずれかに記載の電気的接続構造。
【0081】
(付記9)
前記導電性触媒担持体層が、前記導電体側に設けられた、前記導電体を構成する金属の拡散防止機能を有する第一層と、前記触媒微粒子層側に設けられた、炭素細長構造体の成長を促進する機能を有する第二層とを含んでなる、請求項1〜8のいずれかに記載の電気的接続構造。
【0082】
(付記10)
前記第一層がTa層であり、前記第二層が、HfN膜層、ZrN膜層またはTiN膜層である、請求項9に記載の電気的接続構造。
【0083】
(付記11)
請求項1〜10のいずれかに記載の電気的接続構造を有してなる半導体集積回路装置。
【0084】
(付記12)
導電体上に導電性触媒担持体層を設け、
予め微粒子化した触媒微粒子を当該導電性触媒担持体層上に堆積して触媒微粒子層となし、
当該触媒微粒子層上に炭素細長構造体を設ける、
電気的接続構造の製造方法。
【0085】
(付記13)
真空下において、粒径を揃えた触媒微粒子ビームを前記導電性触媒担持体層面上に照射して前記触媒微粒子層を形成する、請求項12に記載の電気的接続構造の製造方法。
【0086】
(付記14)
前記炭素細長構造体がビアホール中に設けられたものである、請求項12または13に記載の電気的接続構造の製造方法。
【0087】
(付記15)
前記導電性触媒担持体層が耐酸化性物質よりなる、請求項12〜14のいずれかに記載の電気的接続構造の製造方法。
【0088】
(付記16)
前記導電性触媒担持体層が炭素細長構造体の成長を促進する機能を有する、請求項12〜15のいずれかに記載の電気的接続構造の製造方法。
【0089】
(付記17)
前記導電性触媒担持体層が前記導電体を構成する金属の拡散防止機能を有する、請求項12〜16のいずれかに記載の電気的接続構造の製造方法。
【0090】
(付記18)
前記触媒微粒子が、Co、Ni、Fe、Pd、Ptおよびそれらの合金からなる群から選ばれた金属の微粒子である、請求項12〜17のいずれかに記載の電気的接続構造の製造方法。
【0091】
(付記19)
前記導電性触媒担持体層が、HfN膜層、ZrN膜層、TiN膜層、またはそれらの多層膜である、請求項12〜18のいずれかに記載の電気的接続構造の製造方法。
【0092】
(付記20)
前記導電性触媒担持体層が、前記導電体側に設けられた、前記導電体を構成する金属の拡散防止機能を有する第一層と、前記触媒微粒子層側に設けられた、炭素細長構造体の成長を促進する機能を有する第二層とを含んでなる、請求項12〜19のいずれかに記載の電気的接続構造の製造方法。
【0093】
(付記21)
前記第一層がTa層であり、前記第二層が、HfN膜層、ZrN膜層またはTiN膜層である、請求項20に記載の電気的接続構造の製造方法。
【0094】
(付記22)
請求項12〜21のいずれかに記載の電気的接続構造の製造方法により製造された電気的接続構造を有してなる半導体集積回路装置。
【符号の説明】
【0095】
1 基板
2 下地層
3 Cu配線層
4 Ta膜
5 絶縁層
6 Ti膜
7 触媒金属膜
8 CNT
51 銅配線層
52 Ta膜
53 SiO2絶縁層
54 ビアホール
55 CNT
56 TiN膜
57 Co微粒子
58 フォトレジスト層
61 シリコン基板
62 トランジスタ
63a〜63f
層間絶縁膜
65 配線
66 ビア
67 コンタクト
68 保護層
70 基板
71 微粒子発生手段
72 ポンプ
73 分級手段
74 堆積チャンバー
75 差動排気部
75a,b 差動排気用真空ポンプ
76 ノズル
77 高真空部
78 微粒子収束部
79 可動ステージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビアホールの底部の導電体上に導電性触媒担持体層を設け、
予め微粒子化した触媒微粒子を当該導電性触媒担持体層上に堆積し、その後リフトオフ法により前記ビアホール底部以外の前記触媒粒子を除去して触媒微粒子層となし、
当該触媒微粒子層上に炭素細長構造体を設ける電気的接続構造の製造方法であって、
前記触媒微粒子が、Co、Ni、Feからなる群から選ばれた金属の微粒子である電気的接続構造の製造方法。
【請求項2】
真空下において、粒径を揃えた触媒微粒子ビームを前記導電性触媒担持体層面上に照射して前記触媒微粒子層を形成する、請求項1に記載の電気的接続構造の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5−A】
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【図5−B】
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【図5−C】
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【図5−D】
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【図5−E】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−263227(P2010−263227A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136707(P2010−136707)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【分割の表示】特願2005−165004(P2005−165004)の分割
【原出願日】平成17年6月6日(2005.6.6)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「ナノカーボン応用製品創製プロジェクト」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】