説明

電界効果型トランジスタ及びその製造方法並びに画像表示装置

【課題】プラスチックフィルム基板と電界効果型トランジスタとの密着性を下地層を形成することで化学的に高め、フォトリソグラフィ工程で用いる強酸や強アルカリへの浸漬によっても電界効果型トランジスタがプラスチックフィルム基板から剥離することなく再現性良く製造する電界効果型トランジスタ及びその製造方法並びに画像表示装置を提供する。
【解決手段】基板、ゲート電極、ゲート絶縁層、ソース電極、ドレイン電極及び半導体を有して形成された電界効果型トランジスタであって、基板上に高分子化合物と金属化合物との混合物を含有する下地層を備えることを特徴とする電界効果型トランジスタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界効果型トランジスタ及びその製造方法並びに電界効果型トランジスタを用いた画像表示装置に関する。特に、基板と電界効果型トランジスタとの密着性が向上した電界効果型トランジスタ及びその製造方法並びに画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、一般に普及している液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ及び電気泳動型ディスプレイ等の表示装置の多くは薄膜トランジスタ(TFT)を表示スイッチングデバイスとしたアクティブマトリックス型の駆動装置を利用している。このような表示スイッチとしてのTFTには、ゲート電極、ゲート絶縁層、ソース電極−ドレイン電極、ソース電極−ドレイン電極間に配置された半導体からなる電界効果型トランジスタ(FET)が利用されている。FETの駆動原理は、ゲート電極に電圧を印加することにより半導体中の電子またはホールからなるチャージキャリア量をコントロールし、ソース電極−ドレイン電極間のチャージ移動、すなわち電流を制御するもので、このような作用によりスイッチの役割を果たしている。
【0003】
以上のようなTFTアレイの半導体には、従来、アモルファスもしくは多結晶の薄膜シリコンを半導体として利用したものが使われているが、一般的に、薄膜シリコンTFTの電極や半導体、絶縁層等の各層は真空プロセス及び300℃以上の高温プロセスが必要であり、比較的煩雑で高コストなプロセスにより形成されている。
【0004】
これに対して近年、透明酸化物半導体、有機半導体などの低温形成可能な半導体材料が開発され、アモルファスシリコン以上の電気伝導特性を有するなど、プロセスの低温化、高速化、低コスト化が実現可能となってきた。また低温プロセスを採用することによりプラスチックフィルムや紙などの可撓性基材を採用し、ロールトゥロールによる製造やフレキシブルデバイスの作製などへの応用が期待されている。
【0005】
TFTを形成するために、一般的にフォトリソグラフィによるパターニング手法を用いている。フォトリソグラフィにおけるレジスト現像及び剥離、半導体及び電極等のエッチングには強酸や強アルカリを用いるため、基材上に形成する電極や絶縁体、半導体などの材料が、これら現像液やエッチャントによって基材から剥離してしまうという問題があった。特に、プラスチックフィルムを基板として用いた場合、プラスチックと金属や金属酸化物の密着性が十分でなく、またUV/オゾン処理やコロナ処理など、基板の表面処理によって密着性を向上させても、酸やアルカリにより化学的に基板との結合が分解されてしまうため、この問題は顕著であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−200365号公報
【特許文献2】特開2001−352068号公報
【特許文献3】特開2002−28961号公報
【特許文献4】特開2003−258260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、プラスチックフィルム基板と電界効果型トランジスタとの密着性を下地層を形成することで化学的に高め、フォトリソグラフィ工程で用いる強酸や強アルカリへの浸漬によっても電界効果型トランジスタがプラスチックフィルム基板から剥離することなく再現性良く製造する電界効果型トランジスタ及びその製造方法並びに画像表示装置を提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に係る発明は、基板、ゲート電極、ゲート絶縁層、ソース電極、ドレイン電極及び半導体を有して形成された電界効果型トランジスタであって、基板上に高分子化合物と金属化合物との混合物を含有する下地層を備えることを特徴とする電界効果型トランジスタとしたものである。
【0009】
本発明の請求項2に係る発明は、下地層の高分子化合物が金属と酸素原子を介して結合を有することを特徴とする請求項1に記載の電界効果型トランジスタとしたものである。
【0010】
本発明の請求項3に係る発明は、下地層が、高分子化合物または金属と酸素原子または窒素原子を介して結合を有する有機分子を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の電界効果型トランジスタとしたものである。
【0011】
本発明の請求項4に係る発明は、下地層の金属が、第4族元素、第5族元素、第6族元素、第13族元素、亜鉛、錫のうちから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の電界効果型トランジスタとしたものである。
【0012】
本発明の請求項5に係る発明は、下地層が少なくとも2種類の金属を含むことを特徴とする請求項4に記載の電界効果型トランジスタとしたものである。
【0013】
本発明の請求項6に係る発明は、下地層がケイ素化合物を含むことを特徴とする請求項5に記載の電界効果型トランジスタとしたものである。
【0014】
本発明の請求項7に係る発明は、下地層の金属原子と高分子化合物における単量体の含有比が1:1以上1:5以下であり、金属原子と有機分子の含有比が1:1以上1:6以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の電界効果型トランジスタとしたものである。
【0015】
本発明の請求項8に係る発明は、半導体が金属酸化物を主成分とする材料からなることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の電界効果型トランジスタとしたものである。
【0016】
本発明の請求項9に係る発明は、半導体が有機化合物を主成分とする材料からなることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の電界効果型トランジスタとしたものである。
【0017】
本発明の請求項10に係る発明は、基板が可撓性基板であることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の電界効果型トランジスタとしたものである。
【0018】
本発明の請求項11に係る発明は、基板が紙またはプラスチックを主成分とすることを特徴とする請求項10に記載の電界効果型トランジスタとしたものである。
【0019】
本発明の請求項12に係る発明は、基板上に高分子化合物と金属化合物を含む溶液を塗布し、溶液を乾燥し、溶液を焼成して下地層を形成することを特徴とする電界効果型トランジスタの製造方法としたものである。
【0020】
本発明の請求項13に係る発明は、下地層を形成する前に基板の表面を処理することを特徴とする請求項12に記載の電界効果型トランジスタの製造方法としたものである。
【0021】
本発明の請求項14に係る発明は、基板の表面を処理する工程が親水化処理であることを特徴とする請求項13に記載の電界効果型トランジスタの製造方法としたものである。
【0022】
本発明の請求項15に係る発明は、親水化処理がUV/オゾン処理、酸素プラズマ処理、窒素プラズマ処理、コロナ処理のいずれか一つであることを特徴とする請求項14に記載の電界効果型トランジスタの製造方法としたものである。
【0023】
本発明の請求項16に係る発明は、金属化合物における金属が、第4族元素、第5族元素、第6族元素、第13族元素、亜鉛、錫のうちから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項12乃至請求項15のいずれかに記載の電界効果型トランジスタの製造方法としたものである。
【0024】
本発明の請求項17に係る発明は、金属化合物として、少なくとも2種類の金属化合物を用いることを特徴とする請求項12乃至請求項16のいずれかに記載の電界効果型トランジスタの製造方法としたものである。
【0025】
本発明の請求項18に係る発明は、金属化合物として、ケイ素化合物を用いることを特徴とする請求項17に記載の電界効果型トランジスタの製造方法としたものである。
【0026】
本発明の請求項19に係る発明は、金属酸化物を主成分とする材料からなる半導体を形成する工程を含むことを特徴とする請求項12乃至請求項18のいずれかに記載の電界効果型トランジスタの製造方法としたものである。
【0027】
本発明の請求項20に係る発明は、有機化合物を主成分とする材料からなる半導体を形成する工程を含むことを特徴とする請求項12乃至請求項18のいずれかに記載の電界効果型トランジスタの製造方法としたものである。
【0028】
本発明の請求項21に係る発明は、請求項1乃至請求項11のいずれかに記載の電界効果型トランジスタを用いたことを特徴とする画像表示装置としたものである。
【0029】
本発明の請求項22に係る発明は、画像表示装置が液晶表示装置、有機EL及び電子ペーパのいずれかであることを特徴とする請求項21に記載の画像表示装置としたものである。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、プラスチックフィルム基板と電界効果型トランジスタとの密着性を下地層を形成することで化学的に高め、フォトリソグラフィ工程で用いる強酸や強アルカリへの浸漬によっても電界効果型トランジスタがプラスチックフィルム基板から剥離することなく再現性良く製造する電界効果型トランジスタ及びその製造方法並びに画像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態に係る電界効果型トランジスタを示す概略断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る電界効果型トランジスタを示す概略断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る電界効果型トランジスタを示す概略断面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る電界効果型トランジスタに用いる下地層の化学的構造を示す模式図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る電界効果型トランジスタに用いる下地層の形成用溶液を示す模式図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る画像表示装置を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0033】
図1乃至図3は、本発明の実施の形態に係る電界効果型トランジスタ100を示す概略断面図である。本発明の実施の形態において、例えば、図1はボトムゲート構造、ボトムコンタクトであり、図2は、ボトムゲート構造、トップコンタクトである。図3はトップゲート構造である。本発明の実施の形態に係る電界効果型トランジスタ100は上述した構造に限定されずいずれの構造にも適用できる。
【0034】
図1乃至図3に示すように、本発明の実施の形態に係る電界効果型トランジスタ100は、基板10、下地層20、ゲート電極30、ゲート絶縁層40、ソース電極50、ドレイン電極60及び半導体70を有している。
【0035】
本発明の実施の形態に係る電界効果型トランジスタ100に用いる基板10としては、表面に絶縁性がありシート状で、表面が平坦であれば何でも用いることができ、例えば、紙、ソーダライムガラス、石英ガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シクロオレフィンポリマー、ポリイミド(PI)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリルレートなどを使用することができる。また、ステンレスシート、アルミ箔、銅箔、シリコンウェハ等の導電性あるいは半導体性の基材であっても、表面に絶縁性の、例えば高分子材料あるいは金属酸化物などを塗布または蒸着することにより用いることができる。更に、以上の基板10は表面に易接着層等の表面処理層を形成しても良いし、親水化処理であるコロナ処理、プラズマ処理、UV/オゾン処理等の表面処理を施しても良い。
【0036】
本発明の実施の形態に係る電界効果型トランジスタ100に用いる下地層20は、高分子化合物と金属化合物の混合物を含有することを特徴としている。高分子化合物と金属化合物の混合物は、それぞれの前駆体を溶液中で混合し、反応することで高分子化合物骨格と金属間に結合を有する混合物から得られる。反応は下地層20を形成する前の溶液中で行ってもよいし、下地層20を塗布あるいは印刷形成した後に、加熱、乾燥によって行ってもよい。
【0037】
本発明の実施の形態に係る下地層20は高分子化合物と金属は酸素原子を介して結合を有する。具体的には、図4を参照して説明する。図4は、本発明の実施の形態に係る電界効果型トランジスタ100に用いる下地層20の化学的構造を示す模式図である。図4に示すように、本発明の実施の形態に係る下地層20は金属原子が酸素原子を介して高分子と結合している。Mは金属原子を表し、Rは有機分子を表し、Oは酸素原子を表す。図4に示すように、本発明の実施の形態に係る下地層20は、高分子が酸素原子又は窒素原子を介して金属原子と結合することにより、架橋されている。
【0038】
高分子化合物と金属化合物との混合物を与える高分子化合物としては、金属化合物等と反応し、酸素原子を介して結合を有する高分子を選択する必要がある。例えばヒドロキシル基やアルコール基、カルボキシル基、エポキシ基、あるいはそれらの置換基に変換可能な前駆体となりうる官能基を有する高分子化合物が望ましい。すなわち、当該高分子のモノマー単位に例示したような官能基が各単位、一定間隔あるいはランダムに含まれることが望ましい。具体的な高分子材料としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、アセチルセルロース、エポキシ樹脂、ヒドロキシアルキルアクリレート等を用いたアクリル樹脂あるいはブロック共重合体、アクリルポリオール樹脂、エステルポリオール樹脂等が挙げられるがこの限りではない。
【0039】
高分子化合物と金属化合物との混合物を与える金属化合物前駆体としては、ヒドロキシル基やアルコール基、カルボキシル基、エポキシ基、あるいはそれらの置換基に変換可能な前駆体となりうる官能基を有する高分子化合物と反応し、酸素原子を介して結合を有することのできる化合物を用いることができ、金属のアルコキシド化合物、ハロゲン化化合物、アルキル化化合物、シクロペンタジエニル化合物、アミノ化合物、アセチルアセトナート化合物、イソシアネ−ト化合物等が挙げられる。具体的な金属原子としては、第4族元素、第5族元素、第6族元素、第13族元素、亜鉛、錫から選ばれる少なくとも一種の金属であることが好ましく、用いた金属と酸素を介した高分子化合物との結合が酸やアルカリに対して解離しない、あるいは解離しにくいことが好ましい。金属化合物は2種以上用いても良いし、それぞれが異なる金属原子を有する金属化合物を用いても良い。
【0040】
本発明の実施の形態に係る下地層20が2種以上の金属原子を含む時にケイ素原子を含んでいても良いが、ケイ素原子の酸素原子を介した高分子化合物との結合(ケイ素−酸素−炭素結合)はアルカリに対して耐性が無く、結合が解離してしまうため、ケイ素化合物の混入量が多すぎないようにする必要がある。本発明の実施の形態に係る下地層20におけるケイ素原子の含有量は、他金属原子に対して3倍量を超えないようにすることが好ましい。具体的な金属化合物としては、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、チタンテトラキスアセチルアセトナート、塩化チタン、チタンジオクチロキシビス(オクチレングリコレート)、チタンジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)、チタンラクテート、テトラプロピルジルコネート、テトラブチルジルコネート、ジルコニウムテトラキスアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート、塩化ジルコニア、オクタン酸ジルコニウム、テトラキスジメチルアミノジルコニウム、テトラプロピルハフネート、テトラブチルハフネート、ハフニウムテトラキスアセチルアセトナート、塩化ハフニウム、ペンタエチルニオベート、ペンタブトキシニオベート、塩化ニオブ、ペンタエチルタンタレート、ペンタブチルタンタレート、塩化タンタル、塩化モリブデン、塩化亜鉛、しゅう酸亜鉛、プロピオン酸亜鉛、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムブトキシド、塩化アルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、アルミニウムトリスアセチルアセトナート、インジウムトリスアセチルアセトナート、塩化インジウム、塩化錫、塩化ブチル錫、テトラエチルシリケート、テトライソプロピルシリケート、テトラブチルシリケート等があげられるがこの限りではない。
【0041】
本発明の実施の形態に係る下地層20は、高分子化合物または金属原子と酸素原子あるいは窒素原子を介して金属原子と結合を有する有機分子を含んでいてもよい。有機分子が金属原子と結合を有するのは、架橋による下地層20の構造安定化と、高い絶縁性を得るためであり、更には、反応性の高い金属化合物に安定性を付与する効果と、これらの混合によって溶解性を付与することで下地層20の形成用の塗布溶液を提供するためである。
【0042】
本発明の実施の形態に係る下地層20に用いる有機分子は、上記高分子化合物または金属化合物と反応して、酸素原子あるいは窒素原子を介して結合を有する有機分子を選択する必要がある。例えば、ヒドロキシル基やアルコール基、アルデヒド基、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、イソシアノ基、イミノ基、アクリル基、エステル基、スルホン酸基、あるいはそれらの置換基に変換可能な前駆体となりうる官能基を有する有機分子が望ましい。より具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、グルコース、尿素、グアニジン、フェノール、クレゾール、カテコール、カテコールアミン、メラミン、ヒドロキシエチルアクリレート、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、あるいはこれらの類似化合物等が挙げられるがこの限りではない。
【0043】
本発明の実施の形態に係る下地層20は、上記金属原子から少なくとも1種選択し、金属原子に対応する金属化合物を溶媒中に溶解し、更に、上記した高分子、及び有機分子を適宜選択した上でそれぞれ同溶媒、あるいは別種の溶媒に溶解した上で、適宜条件を勘案した後に混合することで得ることができる。図5は、本発明の実施の形態に係る電界効果型トランジスタ100に用いる下地層20の形成用溶液を示す模式図である。金属化合物のみの場合、金属化合物の反応性が早く、常温でも重合が進むことから、高分子の架橋に用いる際に一定量を超えると、凝集し、溶媒中で沈殿してしまう。そこで金属化合物の一部に有機分子を結合しておくことにより、溶解性を制御することができ、安定した溶液となる。
【0044】
金属原子と高分子化合物における単量体の含有比は1:1以上1:5以下であることが好ましく、金属原子と有機分子の含有比が1:1以上1:6以下であることが好ましい。金属原子の混入量が高分子や有機分子に対して多すぎる場合、金属化合物の反応性の速さから、非常に早い硬化が起こってしまい溶解性が得られなくなる他、絶縁性も低くなる傾向にある。また、金属原子の混入量が高分子や有機分子に対して少なすぎる場合、金属化合物の添加の効果が得られず、酸やアルカリに対する耐性が得られない。この時、下地層20中の金属原子及び高分子における単量体あるいは有機分子の含有比は、XPS(X線光電子分光)等の元素分析手法より得られた元素組成比から求めることができる。金属化合物、高分子及び有機分子の最終的な混合物は全て溶液中に溶解していることが好ましく、不溶物が発生した場合はPTFEフィルタ等でろ過することにより除去することが好ましい。金属化合物、高分子、及び有機分子を溶解させる溶媒は、それぞれの物性に合わせて急な反応促進の無いように適宜選択する必要があり、水、アルコール、有機溶媒等を用いることができる。より具体的には、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ノルマルブタノール、ノルマルペンタノール、ノルマルヘキサノール、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、アニソール、アセチルアセトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、テトラヒドロフラン等が挙げられるがこの限りではない。溶媒は単一の溶媒であってもよいし、複数種を混合してもよい。
【0045】
本発明の実施の形態に係る下地層20は、以上で得られた形成用溶液を塗布、あるいは印刷し、乾燥または焼成することにより形成することができる。具体的な形成方法としては、マイクログラビアコート、ディップコート、スクリーンコート、ダイコート、スピンコート等既存のウエットコーティング法を用いることができる。焼成温度は、用いた溶媒がほぼ完全に蒸発し、得られた薄膜が再溶解せず、また基板10への十分な密着性を得ることを満たすように適宜選択し、耐熱性の基板10を用いている場合は60℃から250℃の間、フィルム基板等の耐熱性の低い基板10を用いている場合は、60℃から200℃程度で選択することが好ましい。また乾燥および焼成に当たっては、真空下で行ってもよい。
【0046】
本発明の実施の形態に係る電界効果型トランジスタ100に用いるゲート電極30、ソース電極50、及びドレイン電極60としては、Al、Cr、Mo、Cu、Au、Pt、Pd、Fe、Mn、Agなどの金属をPVDやCVD、めっき等の方法で成膜した後にフォトリソグラフィなどの方法を用いて形成できる。また、インジウム・錫酸化物(ITO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)等の透明導電性材料や、PEDOT:PSS、ポリアニリン、ポリチオフェン等の有機導電性材料等を用いることもできるが、これらを用いた時に比較的高い配線抵抗を有する場合は金属バス電極を用いて抵抗の軽減を図ることがより好ましい。また、以上の金属、透明酸化物、有機導電性高分子等の導電性材料あるいはそれらの前駆体を、溶液、ペースト、ナノ粒子分散液等に加工した後、印刷法で塗工し、乾燥、焼成、光硬化あるいはエージング等によって形成することもできる。用いられる印刷方法は、特に限定されることはないが、凸版印刷、凹版印刷、平版印刷、反転オフセット印刷、スクリーン印刷、インクジェット、熱転写印刷、ディスペンサ等のパターニング可能な印刷方法を用いることが工程の簡略化、低コスト化、高速化を達成できることから、より好ましい。また、スピンコート、ダイコート、マイクログラビアコート、ディップコート等とフォトリソグラフィ等のパターニング手法を組み合わせても良い。さらに、以上の印刷法を組み合わせて用いても良い。
【0047】
本発明の実施の形態に係る電界効果型トランジスタ100に用いるゲート絶縁層40としては、酸化シリコン、窒化シリコン、シリコンオキシナイトライド(SiNxOy)、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化イットリウム、酸化ハフニウム、ハフニウムアルミネート、酸化ジルコニア、酸化チタン等の無機材料、または、PMMA(ポリメチルメタクリレート)等のポリアクリレート、PVA(ポリビニルアルコール)、PS(ポリスチレン)、ポリイミド、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリビニルフェノール(PVP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ブタジエンゴム等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。ゲートリーク電流を抑えるためには、絶縁材料の抵抗率は1011Ωcm以上、より好ましくは1014Ωcm以上であることが好ましい。膜厚は50nm〜2μmであることが好ましい。
【0048】
本発明の実施の形態に係るゲート絶縁層40は、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、レーザアブレーション法、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法、光CVD法、ホットワイヤCVD法、スピンコート法、ディップコート法、スクリーン印刷法、マイクログラビア印刷法、ダイコート法などの方法を用いて形成することができる。ゲート絶縁層40は単層として用いても構わないし、複数の層を積層したものを用いても構わない。また層の成長方向に向けて組成を傾斜したものもまた好適に用いられる。以上のゲート絶縁層40は、コロナ処理、プラズマ処理、UV/オゾン処理等の表面処理を施しても良いが、処理による表面粗さが粗くならないように注意する必要がある。ゲート絶縁層40の表面は比較的平滑でピンホールや突起、起伏が無いことが好ましい。
【0049】
なお本発明の実施の形態に係る電界効果型トランジスタ100は半導体層70とその下層との界面に自己組織化単分子膜(図示せず)を形成しても良い。すなわち、図1あるいは図2のようなボトムゲート構造の電界効果型トランジスタの場合には、ゲート絶縁層40上、図3のようなトップゲート構造の電界効果型トランジスタの場合には下地層20上にそれぞれ自己組織化単分子膜を形成しても良い。自己組織化単分子膜の形成方法は、自己組織化単分子膜を形成する化合物を真空下で対応する基板に蒸着する方法、該化合物の溶液中に基板を浸漬する方法、Langmuir−Blodgett法などを用いることができるがこれらに限るものではない。しかしながら、例えば、化合物がより緻密で確実に自己組織化単分子膜のみを得る方法として、Langmuir 19, 1159 (2003).及びJ. Phys. Chem. B 110, 21101 (2006).に記載の方法を用いることがより好ましい。自己組織化単分子膜を半導体70とその下層との界面の間に形成することにより、半導体層形成面の濡れ性や表面エネルギーを制御することができ、特性の優れた電界効果型トランジスタ100を作製することができる。
【0050】
自己組織化単分子膜を形成する前に、ゲート絶縁層40あるいは下地層20の表面にコロナ処理、プラズマ処理、UV/オゾン処理等の表面処理を施しても良い。特に図3に示す電界効果型トランジスタ100のように下地層20と半導体層70が接している場合には、下地層20にこのような表面処理を施すことにより、酸素と金属原子との結合が一部切断してヒドロキシル基を表出させることができる。このため、ゲート絶縁膜30上に緻密な自己組織化単分子膜を形成することができ、特性の優れた電界効果型トランジスタ100を作製できる。
【0051】
本発明の実施の形態に係る電界効果型トランジスタ100に用いる半導体70としては、金属酸化物半導体材料、もしくは有機半導体材料が好適に使用できる。本発明の実施の形態に係る半導体70で用いられる金属酸化物半導体材料は亜鉛、インジウム、スズ、タングステン、マグネシウム、ガリウムのうち1種類以上の元素を含む酸化物である、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム亜鉛、酸化スズ、酸化タングステン(WO)、酸化亜鉛ガリウムインジウム(In−Ga−Zn−O)等の材料が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらの材料は実質的に透明であり、バンドギャップが2.8eV以上、好ましくはバンドギャップが3.2eV以上であることが望ましい。これらの材料の構造は単結晶、多結晶、微結晶、結晶/アモルファスの混晶、ナノ結晶散在アモルファス、アモルファスのいずれであってもかまわない。半導体70の膜厚は少なくとも20nm以上が望ましい。
【0052】
金属酸化物からなる半導体70は、スパッタリング法、パルスレーザ堆積法、真空蒸着法、CVD法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法、ゾルゲル法などの方法を用いて形成されるが、好ましくはスパッタリング法、パルスレーザ堆積法、真空蒸着法、CVD法である。スパッタリング法ではRFマグネトロンスパッタリング法、DCスパッタリング法、真空蒸着法では加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、イオンプレーティング法、CVD法ではホットワイヤCVD法、プラズマCVD法などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0053】
本発明の実施の形態に係る半導体70で用いられる有機半導体材料としては、半導体性を示すπ共役有機高分子、例えば、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアニリン類、ポリアリルアミン類、フルオレン類、ポリカルバゾール類、ポリインドール類、ポリ(p−フェニレンビニレン)類などや、π共役系を持つ低分子物質、例えば、ペンタセンなどの多環芳香族の誘導体、フタロシアニン誘導体、ペリレン誘導体、テトラチアフルバレン誘導体、テトラシアノキノジメタン誘導体、フラーレン類、カーボンナノチューブ類などを用いることができるがこの限りではない。有機半導体の形成法は、真空蒸着法、CVD法、溶液を用いた印刷法等を用いることができるが、生産性、低コスト化等の観点から溶媒に可溶な半導体を用いて塗工する方法を用いることがより好ましい。印刷法を用いる場合は、特に限定されることはないが、凸版印刷、凹版印刷、平版印刷、反転オフセット印刷、スクリーン印刷法、インクジェット、熱転写印刷、ディスペンサ、スピンコート、ダイコート、マイクログラビアコート、ディップコート等を用いることができ、以上の印刷法を組み合わせて用いても良い。
【0054】
本発明の実施の形態に係る電界効果型トランジスタ100は、さらに保護層、層間絶縁膜、上部画素電極、保護膜、エッチングストッパ層等を形成して用いても良い。保護層や層間絶縁膜には、ポリビニルフェノール(PVP)、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリイミド(PI)、エポキシ樹脂、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ブタジエンゴム等の有機高分子化合物、またはこれらの混合物、またはアルコキシシラン基やビニル基、アクリル酸エステル、エポキシ基など反応性置換基を有する化合物との混合物を用いることができ、さらには、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化タンタル、酸化アルミニウム、酸化ニオブ、酸化ジルコニウム、酸化銅、酸化ニッケル、酸化インジウム、酸化ハフニウム等の酸化物、あるいはこれらの複合酸化物または酸化物混合物、酸窒化物なども用いることができる。
【0055】
以上、一画素の構造に沿って本発明の実施の形態に係る電界効果型トランジスタ100の詳細を説明したが、本発明の実施の形態に係る電界効果型トランジスタ100は通常、画素をアレイ状に配列させることにより、画像表示装置の画素点灯装置として用いることができる。
【0056】
図6は、本発明の実施の形態に係る電界効果型トランジスタ100を画素点灯装置として用いた画像表示装置300の例を示す概略断面図である。図6に示すように、本発明の実施の形態に係る画像表示装置300は、上述した電界効果型トランジスタ100を画素ごとに少なくとも一つ配置した電界効果型トランジスタアレイとし、画像表示媒体303と接続する。画像表示媒体303の例としては、電気泳動方式の表示媒体(電子ペーパ)や、液晶表示媒体、有機EL、無機EL等が挙げられる。
【0057】
図6の本発明の実施の形態に係る画像表示装置300の例では、電界効果型トランジスタ100を形成した基板110上に層間絶縁膜301が形成され、ソース電極150又はドレイン電極160と画素電極302が接続され、画素電極302と対向電極304で画像表示媒体303を挟持する構成となっている。本発明の実施の形態に係る電界効果型トランジスタ100は、材料の選択によって透明とすることができるため、対向電極304側、電界効果型トランジスタ100側のいずれから視認できるようにしても良い。図6の画像表示装置300の例では、層間絶縁膜301上の全面に画素電極302を配置できる。その上に例えば対向電極302を形成した電気泳動方式の表示媒体を貼り合わせることにより、画像表示装置200を作製することができる。
【0058】
また本発明の実施の形態に係る画像表示装置300の別の例として、電界効果型トランジスタ100上に画素を区画する隔壁を形成し、ソース電極150又はドレイン電極160から延長された画素電極302上に画像表示媒体303を形成した構成としても良い。例えば、インクジェット法や印刷法を用いて形成した有機ELを表示媒体として用いることができる。
【実施例1】
【0059】
以下、具体的な実施例によって本発明を詳細に説明するが、これらの実施例は説明を目的としたもので、本発明はこれに限定されるものではない。
【0060】
まず、下地層20の溶液には、金属化合物としてテトラ−n−ブチルチタネート((BuO)Ti)1gを、高分子としてポリビニルフェノール(PVP)1gを、有機分子としてメチロールメラミン2gを選択し、それぞれn−ブタノール、トルエン/n−ブタノール、トルエン/n−ブタノール溶媒に溶解させ、Ar雰囲気下で攪拌しながら慎重に滴下することで混合し、オレンジ色溶液を得た。更に得られたオレンジ色溶液を0.2μmのPTFEフィルタに通すことで、透明なオレンジ色溶液を得た。
【0061】
次に、得られた溶液の2mLをガラス基板及びPET基板上にスピンコートし、90℃で10分間乾燥、さらに120℃で1時間焼成することにより膜厚200nmの薄膜(下地層20)を得た。溶液の塗布に先立ち、ガラス基板及びPET基板をUV/オゾン洗浄器で5分間表面を洗浄した。
【0062】
以上で得られた薄膜を形成したガラス基板及びPET基板を30分間、2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に浸漬したところ、薄膜の剥離は無かった。
【0063】
得られた薄膜をXPSで分析した。Arイオンビームで10秒間エッチングすることで薄膜の内部を分析した。チタンとPVPのモノマーの含有比は1:3であり、チタンとメチロールメラミンの含有比は1:2であった。
【実施例2】
【0064】
実施例1と同様に、まず、下地層20の溶液には、金属化合物としてテトラ−n−ブチルチタネート((BuO)Ti)1gを、高分子としてポリビニルフェノール(PVP)1gを、有機分子としてメチロールメラミン2gを選択し、それぞれn−ブタノール、トルエン/n−ブタノール、トルエン/n−ブタノール溶媒に溶解させ、さらに、テトラブチルシリケート1gのブタノール溶液を用意し、Ar雰囲気下で攪拌しながら慎重に滴下することで混合し、オレンジ色溶液を得た。更に得られたオレンジ色溶液を0.2μmのPTFEフィルタに通すことで、透明なオレンジ色溶液を得た。
【0065】
次に、得られた溶液の2mLをガラス基板及びPEN基板上にスピンコートし、90℃で10分間乾燥、さらに120℃で1時間焼成することにより膜厚200nmの薄膜(下地層20)を得た。溶液の塗布に先立ち、ガラス基板及びPET基板をUV/オゾン洗浄器で5分間表面を洗浄した。
【0066】
以上で得られた薄膜を形成したガラス基板およびPEN基板を30分間、2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に浸漬したところ、薄膜の剥離は無かった。
【0067】
得られた薄膜をXPSで分析した。Arイオンビームで10秒間エッチングすることで薄膜の内部を分析した。チタンとPVPのモノマーの含有比は1:3であり、チタンとケイ素の含有比は1:1であり、チタンとメチロールメラミンの含有比は1:2であった。
【実施例3】
【0068】
まず、下地層20の溶液には、金属化合物としてチタンジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)80%溶液1.5gを、高分子としてポリビニルアルコール(PVA)1gを、有機分子として3−アミノ−1,2,4−トリアゾール2gを選択し、それぞれ水に溶解させ、Ar雰囲気下で攪拌しながら慎重に滴下することで混合し、無色溶液を得た。更に得られた無色溶液を0.2μmの親水性PTFEフィルタに通すことで、透明溶液を得た。
【0069】
次に、得られた溶液の2mLをガラス基板及びPEN基板上にスピンコートし、90℃で10分間乾燥、さらに150℃で1時間焼成することにより膜厚100nmの薄膜(下地層20)を得た。溶液の塗布に先立ち、ガラス基板及びPET基板をUV/オゾン洗浄器で5分間表面を洗浄した。
【0070】
以上で得られた薄膜を形成したガラス基板及びPEN基板を30分間、2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に浸漬したところ、薄膜の剥離は無かった。
【0071】
得られた薄膜をXPSで分析した。Arイオンビームで10秒間エッチングすることで薄膜の内部を分析した。チタンとPVAのモノマーの含有比は1:2であり、チタンと3−アミノ−1,2,4−トリアゾールの含有比は1:3であった。
【実施例4】
【0072】
まず、下地層20の溶液には、金属化合物としてテトラブチルジルコネート1gを、高分子としてポリビニルフェノール(PVP)1gを、有機分子としてメチロールメラミン3gを選択し、実施例1と同様に混合することで、透明溶液を得た。
【0073】
次に、得られた溶液の2mLをガラス基板及びPEN基板上にスピンコートし、90℃で10分間乾燥、さらに150℃で1時間焼成することにより膜厚100nmの薄膜(下地層20)を得た。溶液の塗布に先立ち、ガラス基板及びPET基板をUV/オゾン洗浄器で5分間表面を洗浄した。
【0074】
以上で得られた薄膜を形成したガラス基板及びPEN基板を30分間、2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に浸漬したところ、薄膜の剥離は無かった。
【0075】
得られた薄膜をXPSで分析した。Arイオンビームで10秒間エッチングすることで薄膜の内部を分析した。ジルコニウムとPVPのモノマーの含有比は1:3であり、ジルコニウムとメチロールメラミンの含有比は1:3であった。
【実施例5】
【0076】
図2と同様の構造を有する電界効果型トランジスタ100を作製した。基板10として125μm厚のPENを用い、片側の表面を5分間UV/オゾン洗浄した後、実施例1乃至実施例4で作製した下地層20の溶液をそれぞれスピンコートにより塗布して、150℃で1時間焼成することにより下地層20として膜厚100nmでそれぞれ形成した。
【0077】
次に、下地層20上にゲート電極30としてアルミニウムを真空蒸着法により50nm形成したのちフォトリソグラフィ及びエッチングによってパターニングした。続いて、ゲート電極30を覆うように、ゲート絶縁層40として窒化シリコン(Si)のターゲットを用いてRFスパッタリング法でSiONを膜厚350nmに形成し、次に、ゲート絶縁層40上に半導体70として、InGaZnOのターゲットを用いて、アモルファスIn−Ga−Zn−OをRFスパッタリング法で膜厚15nmに形成した。
【0078】
次に、半導体70上にレジストを塗布し、乾燥、現像を行った後、ITOをDCマグネトロンスパッタリング法により膜厚50nmで形成し、リフトオフを行いソース電極50及びドレイン電極60として形成した。
【0079】
以上より得られた電界効果型トランジスタ100の伝達特性をゲート電圧20Vから−20V、ドレイン電圧15Vで測定したところ、移動度は3.4cm/Vs〜8.2cm/Vs、on/offは約10、閾値電圧は−2V〜5Vであった。
【0080】
フォトリソグラフィ工程によって各薄膜の剥離は観察されず、再現性良く電界効果型トランジスタ100を作製することができた。
【実施例6】
【0081】
図1と同様の構造を有する電界効果型トランジスタ100を作製した。基板10として125μm厚のPENを用い、片側の表面を5分間UV/オゾン洗浄した後、実施例1乃至実施例4で作製した下地層20の溶液をそれぞれスピンコートにより塗布して、150℃で1時間焼成することにより下地層20として膜厚100nmでそれぞれ形成した。
【0082】
次に、下地層20上にゲート電極30としてアルミニウムを真空蒸着法により50nm形成したのちフォトリソグラフィ及びエッチングによってパターニングした。続いて、ゲート電極30を覆うように、ゲート絶縁層40として窒化シリコン(Si)のターゲットを用いてRFスパッタリング法でSiONを膜厚350nmに形成し、次に、ゲート絶縁層40上にレジストを塗布し、乾燥、現像を行った後、チタン及び金を、電子ビームを用いた真空蒸着法によりそれぞれ膜厚5nm及び膜厚50nmで連続して形成した後、リフトオフを行いソース電極50及びドレイン電極60としてパターン形成した。
【0083】
次に、にゲート絶縁層40の表面にオクタデシルトリメトキシシラン(OTS)自己組織化単分子膜(図示せず)をCVD法により形成し、続いて半導体70としてペンタセンを60℃で40nm蒸着することで電界効果型トランジスタ100を得た。
【0084】
以上より得られた電界効果型トランジスタ100の伝達特性をゲート電圧20Vから−20V、ドレイン電圧−15Vで測定したところ、移動度は0.85cm/Vs〜1.2cm/Vs、on/offは約10、閾値電圧は−6V〜−2Vであった。
【0085】
フォトリソグラフィ工程によって各薄膜の剥離は観察されず、再現性良く電界効果型トランジスタを作製することができた。
【0086】
[比較例1]
PVPとメチロールメラミンの10:1混合物をシクロヘキサノン溶液にして、得られた溶液の2mLをガラス基板及びPET基板上にスピンコートし、90℃で10分間乾燥、さらに150℃で1時間焼成することにより膜厚200nmの薄膜を得た。溶液の塗布に先立ち、ガラス基板及びPET基板をUV/オゾン洗浄器で5分間表面を洗浄した。
【0087】
以上で得られた薄膜を形成したガラス基板及びPET基板を15分間、2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に浸漬したところ、薄膜は剥離した。
【0088】
[比較例2]
PVP1gとメチロールメラミン1gの混合物をシクロヘキサノン溶液にし、テトラブチルシリケート1gのブタノール溶液を用意し、Ar雰囲気下で攪拌しながら慎重に滴下することで混合し、得られた溶液の2mLをガラス基板及びPEN基板上にスピンコートし、90℃で10分間乾燥、さらに180℃で1時間焼成することにより膜厚100nmの薄膜を得た。溶液の塗布に先立ち、ガラス基板及びPEN基板をUV/オゾン洗浄器で5分間表面を洗浄した。
【0089】
以上で得られた薄膜を形成したガラス基板及びPEN基板を15分間、2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に浸漬したところ、薄膜は剥離した。
【0090】
実施例及び比較例に係る電界効果型トランジスタ100を比較すると、基板10上に下地層20を形成することで、密着性を化学的に高め、フォトリソグラフィによって電界効果型トランジスタ100が基板10から剥離することなく再現性良く製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、電界効果型トランジスタ(FET)、及びそれを用いたアクティブマトリックス型のTFTアレイを背面板として有する液晶表示素子、有機EL、電子ペーパ等の表示素子に利用される。
【符号の説明】
【0092】
10…基板、20…下地層、30…ゲート電極、40…ゲート絶縁層、50…ソース電極、60…ドレイン電極、70…半導体、100…電界効果型トランジスタ、110…基板、120…下地層、130…ゲート電極、140…ゲート絶縁層、150…ソース電極、160…ドレイン電極、170…半導体、180…保護層、301…層間絶縁膜、302…画素電極、303…画像表示媒体、304…対向電極、300…画像表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板、ゲート電極、ゲート絶縁層、ソース電極、ドレイン電極及び半導体を有して形成された電界効果型トランジスタであって、
前記基板上に高分子化合物と金属化合物との混合物を含有する下地層を備えることを特徴とする電界効果型トランジスタ。
【請求項2】
前記下地層の前記高分子化合物が金属と酸素原子を介して結合を有することを特徴とする請求項1に記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項3】
前記下地層が、前記高分子化合物または前記金属と前記酸素原子または窒素原子を介して結合を有する有機分子を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項4】
前記下地層の前記金属が、第4族元素、第5族元素、第6族元素、第13族元素、亜鉛、錫のうちから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項5】
前記下地層が少なくとも2種類の前記金属を含むことを特徴とする請求項4に記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項6】
前記下地層がケイ素化合物を含むことを特徴とする請求項5に記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項7】
前記下地層の前記金属原子と前記高分子化合物における単量体の含有比が1:1以上1:5以下であり、前記金属原子と前記有機分子の含有比が1:1以上1:6以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項8】
前記半導体が金属酸化物を主成分とする材料からなることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項9】
前記半導体が有機化合物を主成分とする材料からなることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項10】
前記基板が可撓性基板であることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項11】
前記基板が紙またはプラスチックを主成分とすることを特徴とする請求項10に記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項12】
基板上に高分子化合物と金属化合物を含む溶液を塗布し、
前記溶液を乾燥し、
前記溶液を焼成して下地層を形成することを特徴とする電界効果型トランジスタの製造方法。
【請求項13】
前記下地層を形成する前に前記基板の表面を処理することを特徴とする請求項12に記載の電界効果型トランジスタの製造方法。
【請求項14】
前記基板の表面を処理する工程が親水化処理であることを特徴とする請求項13に記載の電界効果型トランジスタの製造方法。
【請求項15】
前記親水化処理がUV/オゾン処理、酸素プラズマ処理、窒素プラズマ処理、コロナ処理のいずれか一つであることを特徴とする請求項14に記載の電界効果型トランジスタの製造方法。
【請求項16】
前記金属化合物における金属が、第4族元素、第5族元素、第6族元素、第13族元素、亜鉛、錫のうちから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項12乃至請求項15のいずれかに記載の電界効果型トランジスタの製造方法。
【請求項17】
前記金属化合物として、少なくとも2種類の金属化合物を用いることを特徴とする請求項12乃至請求項16のいずれかに記載の電界効果型トランジスタの製造方法。
【請求項18】
前記金属化合物として、ケイ素化合物を用いることを特徴とする請求項17に記載の電界効果型トランジスタの製造方法。
【請求項19】
金属酸化物を主成分とする材料からなる半導体を形成する工程を含むことを特徴とする請求項12乃至請求項18のいずれかに記載の電界効果型トランジスタの製造方法。
【請求項20】
有機化合物を主成分とする材料からなる半導体を形成する工程を含むことを特徴とする請求項12乃至請求項18のいずれかに記載の電界効果型トランジスタの製造方法。
【請求項21】
請求項1乃至請求項11のいずれかに記載の電界効果型トランジスタを用いたことを特徴とする画像表示装置。
【請求項22】
前記画像表示装置が液晶表示装置、有機EL及び電子ペーパのいずれかであることを特徴とする請求項21に記載の画像表示装置。

【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−278118(P2010−278118A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−127561(P2009−127561)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】