説明

電磁波検出素子の製造方法

【課題】電磁波検出素子の製造に際し、フォトダイオードなどの半導体層の下層に配置される層間絶縁膜の材料制約を緩和する。例えば、有機系材料からなる層間絶縁膜の配置を可能にする。
【解決手段】TFTアレイが形成された基板1の上に、TFTアレイを覆うように層間絶縁膜12を形成した後、PIN型のフォトダイオード層6の形成前に、フォトダイオード層6よりエッチング速度の遅いIZO膜14を形成し、フォトダイオード層6の一部を、IZO膜14が露出するまでドライエッチング処理により除去してパターニングした後、露出したIZO膜14をフォトリソグラフィー技術により除去してパターン化することにより下部電極14aを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波検出素子の製造方法に関し、特に、互いに交差して配設された複数の走査配線及び複数の信号配線の各交差部に対応してセンサ部が設けられ、画像を検出するTFTアクティブマトリクス基板を用いた電磁波検出素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、TFT(Thin film transistor)アクティブマトリックス基板上にX線感応層を配置し、X線情報を直接デジタルデータに変換できるFPD(flat panel detector)等の放射線画像検出装置が実用化されている。このFPDは、従来のイメージングプレートに比べて、即時に画像を確認でき、動画も確認できるといったメリットがあり、急速に普及が進んでいる。
【0003】
この種の放射線画像検出装置は、種々のタイプのものが提案されており、例えば、放射線を直接電荷に変換して蓄積する直接変換方式や、放射線を一度CsI:Tl、GOS(GdS:Tb)などのシンチレータで光に変換し、変換した光を半導体層で電荷に変換して蓄積する間接変換方式がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
従来の間接変換型の放射線画像検出装置の一例として、図6に間接変換型の放射線画像検出装置に用いられる電磁波検出素子の1画素単位の構造を示す平面図を示し、図7に図6のA−A線断面図を示す。
図6に示すように、電磁波検出素子10’は、互いに交差して配設された複数の走査配線101’及び複数の信号配線3’の各交差部に対応してセンサ部が設けられている。
このセンサ部は、図7に示されるように、光が照射されることにより電荷が発生する半導体層6’、半導体層6’の光が照射される照射面側に光透過性を有する導電性部材により形成され、当該半導体層6’に対してバイアス電圧を印加する上部電極7’、及び光の入射方向における半導体層6’の下流側(半導体層6’の光の非照射面側)に形成され、半導体層6’に発生した電荷を収集する下部電極14’を備えている。
【0005】
このような電磁波検出素子の作製は、一般には、図8に示すように行なわれている。まず、基板1’上に、ゲート配線層として、ゲート電極2’及び走査配線(不図示)を形成し、次いでゲート配線層上に、絶縁膜15’、半導体活性層8’、及び不図示のコンタクト層を順次堆積した後、さらに絶縁膜15’及び半導体活性層8’の上層に信号配線層として、信号配線3’、ソース電極9’、ドレイン電極13’、及び不図示の共通電極配線を形成する。その後、図8(D)に示すように、これらの各層の保護機能を兼ねる層間絶縁膜12’を積層し、この層間絶縁膜12’上の所望領域に図8(E)のようにパターン化して下部電極14’を形成する。更に、CVD法等によりフォトダイオードなどの半導体層(例えば、層間絶縁膜側から順にN+、I、P+の各層を堆積)を形成した後、この半導体層をドライエッチング法でエッチング加工を施して、図8(F)に示すように、パターン状の半導体層6’を形成する。エッチング加工終了後、さらに半導体層6’の表面全体に上部電極7’を形成する。その後、図8(G)に示すように、層間絶縁膜12’の露出領域、半導体層6’、及び上部電極7’を、上部電極7’の一部が露出するように絶縁膜17’で覆い、上部電極7’の層間絶縁膜で覆われていない領域に、図8(H)に示すように共通電極配線25’を形成する。
【特許文献1】特開2000−137080号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のように電磁波検出素子を作製する場合、層間絶縁膜12’上に設けられるフォトダイオードなどの半導体層は、数μm程度と比較的厚く形成されているため、そのパターニングには一般にドライエッチング法が利用されているが、半導体層の下層に位置する層間絶縁膜12’が、無機材料(ナイトライド等)ではなく、有機系材料で形成されている場合、半導体層をドライエッチング処理する際に層間絶縁膜がエッチングダメージを受け、表層の改質により層間絶縁膜と接する上層である半導体層との密着性が低下したり、あるいは層間絶縁膜自身がエッチングされ膜減りしてしまう課題があった。
【0007】
そのため、従来のTFT型の電磁波検出素子では、有機系材料からなる層間絶縁膜のドライエッチ耐性が低いことから、半導体層はSiN等を用いた無機絶縁膜上に形成する必要があった。
その一方、一般的に無機絶縁膜を形成するための材料は誘電率が高く、また、膜厚も厚くすることができないため、収集電極と配線間の容量が高くなってしまう課題があった。
【0008】
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、層間絶縁膜に対するドライエッチダメージを防ぐことにより、フォトダイオードなどの半導体層の下層に配置される層間絶縁膜の材料制約を緩和する(例えば、有機系材料からなる層間絶縁膜を配置する)ことができる電磁波検出素子の製造方法を提供することを目的とし、該目的を達成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
本発明の電磁波検出素子の製造方法は、薄膜トランジスタアレイが形成された絶縁性基板の上に、前記薄膜トランジスタアレイを覆うように層間絶縁膜を形成する工程と、前記層間絶縁膜の上に、半導体層を形成する工程と、前記層間絶縁膜の形成後、前記半導体層の形成前に前記層間絶縁膜と前記半導体層との間に配置されるように、前記半導体層よりエッチング速度が遅い導電性材料を堆積して導電性層を形成する工程と、前記半導体層の一部を、前記導電性層が露出するまでドライエッチング処理により除去し、半導体層のパターニングを行なう工程と、前記半導体層の除去により露出した前記導電性層をフォトリソグラフィー技術により除去し、下部電極パターンを形成する工程と、を設けて構成されたものである。
【0010】
本発明の電磁波検出素子の製造方法によれば、薄膜トランジスタ(以下、「TFT」と略記することがある。)アレイが形成された絶縁性基板の上に、該絶縁性基板側から層間絶縁膜/導電性層/半導体層の積層構造となるように、半導体層の下層として、該半導体層よりエッチング速度が遅い導電性材料を堆積してなる導電性層を設けることで、導電性層は半導体層をドライエッチングする際のエッチングストッパとして機能し、ドライエッチング処理により層間絶縁膜にダメージを与えることなく、半導体層のパターンニングが行なえると共に、半導体層のドライエッチング後に導電性層をウェットエッチング等の方法で除去可能であるので、ドライエッチング後は導電性層をパターニングされた下部電極として利用することができる。
【0011】
本発明の電磁波検出素子の製造方法は、半導体層として、アモルファスシリコンを主体とするフォトダイオード層を設けることができる。フォトダイオード層は、電磁波の入射で生じた電圧、電流の変化を受けて画像の検出を行なえる。ここで、アモルファスシリコンが「主体」とは、半導体層中のアモルファスシリコンの割合が50%以上である場合である。
【0012】
本発明の電磁波検出素子の製造方法で用いられる導電性材料は、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム・酸化亜鉛(IZO)、Al、Cu、Mo、W、又はAl、Cu、Mo及びWのいずれかを主体とする合金、あるいはこれらの積層膜であることが好ましい。なお、「いずれかを主体」とは、合金中の割合が50%以上であることをいう。
【0013】
前記導電性材料として、ITO、IZO、Al、Cu、Mo、W、又はAl、Cu、Mo及びWのいずれかを主体とする合金、あるいはこれらの積層膜を用いることで、ドライエッチング時のプラズマ耐性が高められ、エッチングストッパ機能を確保すると共に、導電性を有し、ドライエッチング後にはウェットエッチング等の方法で容易にパターニングして下部電極として利用することが可能である。
【0014】
また、導電性材料を用いて形成される導電性層は、遮光性を有していることが望ましい。導電性材料で形成された下部電極パターンが、絶縁性基板上のTFTの上に設けられるので、TFTスイッチへの光の進入を低減することが可能であり、フォトセンサーとしての性能を向上させることができる。
ここで、「遮光性」とは、導電性層を形成した場合に、該導電性層の一方の側から入射した光が他方の側に透過して抜け出る光の量が入射光量の20%以下である性質をいう。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、層間絶縁膜に対するドライエッチダメージを防ぐことにより、フォトダイオードなどの半導体層の下層に配置される層間絶縁膜の材料制約を緩和する(例えば、有機系材料からなる層間絶縁膜を配置する)ことができる電磁波検出素子の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の電磁波検出素子の製造方法の実施形態の一例を図1〜図5を参照して詳細に説明する。
【0017】
本実施形態の電磁波検出素子の製造方法は、TFTアレイが備えられた基板上に層間絶縁膜を形成した後、半導体層としてPIN型のフォトダイオード層を形成する前に予め、層間絶縁膜の表面全体にフォトダイオード層よりドライエッチング速度の遅いIZO膜を導電性層として形成する構成としたものである。
【0018】
図1は、本実施形態に係る放射線画像検出装置100の全体構成を示したものである。但し、図1では、放射線を光に変換するシンチレータは省略してある。本実施形態に係る放射線画像検出装置100は、図1に示すように、複数の電磁波検出素子10を備えている。
【0019】
電磁波検出素子10は、後述するように上部電極と半導体層であるPIN型のフォトダイオード層と下部電極とを備え、上部電極側から照射された放射線をシンチレータで変換した光を受けて電荷を蓄積するセンサ部103と、センサ部103に蓄積された電荷を読み出すためのTFTスイッチ4と、を設けて構成される画素が2次元状に多数設けられている。
【0020】
また、電磁波検出素子10には、TFTスイッチ4をON/OFFするための複数の走査配線101と、センサ部103に蓄積された電荷を読み出すための複数の信号配線3と、が互いに交差して設けられている。
【0021】
各信号配線3には、該信号配線3に接続されたいずれかのTFTスイッチ4がONされることによりセンサ部103に蓄積された電荷量に応じた電気信号が流れる。各信号配線3には、各信号配線3に流れ出した電気信号を検出する信号検出回路105が接続されており、各走査配線101には、各走査配線101にTFTスイッチ4をON/OFFするための制御信号を出力するスキャン信号制御装置104が接続されている。
【0022】
信号検出回路105は、各信号配線3毎に、入力される電気信号を増幅する増幅回路を内蔵している。信号検出回路105では、各信号配線3より入力される電気信号を増幅回路により増幅して検出することにより、画像を構成する各画素の情報として、各センサ部103に蓄積された電荷量を検出する。
【0023】
この信号検出回路105及びスキャン信号制御装置104には、信号検出回路105において検出された電気信号に所定の処理を施すと共に、信号検出回路105に対して信号検出のタイミングを示す制御信号を出力し、スキャン信号制御装置104に対してスキャン信号の出力のタイミングを示す制御信号を出力する信号処理装置106が接続されている。
【0024】
次に、図2及び図3を参照して、本実施形態に係る電磁波検出素子10についてより詳細に説明する。なお、図2は、本実施形態における電磁波検出素子10の1画素単位の構造を示す平面図であり、図3は、図2のA−A線断面図である。
【0025】
図2及び図3に示すように、電磁波検出素子10は、無アルカリガラス等からなる絶縁性の透明基板(以下、単に「基板」ともいう。)1上に、走査配線101及びゲート電極2が形成されており、走査配線101とゲート電極2とは接続されている。走査配線101及びゲート電極2が形成された配線層(以下、この配線層を「ゲート配線層」ともいう。)は、Al若しくはCu、又はAl若しくはCuを主体とした積層膜を用いて形成されているが、これらに限定されるものではない。
【0026】
この走査配線101及びゲート電極2上には、走査配線101及びゲート電極2を覆うように一面に絶縁膜15が形成されており、ゲート電極2上に位置する部位がTFTスイッチ4におけるゲート絶縁膜として作用するようになっている。この絶縁膜15は、例えばSiN等からなるものであり、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法で成膜することにより形成される。
【0027】
ゲート電極2の上方の絶縁膜15上には、半導体活性層8が島状に形成されている。この半導体活性層8は、TFTスイッチ4のチャネル部であり、例えば、アモルファスシリコン膜からなる。
【0028】
これらの層上には、ソース電極9、及びドレイン電極13が形成されている。このソース電極9及びドレイン電極13が形成された配線層には、ソース電極9、ドレイン電極13と共に、信号配線3と並行する共通電極配線25が形成されている。ソース電極9、ドレイン電極13、及び共通電極配線25が形成された配線層(以下、この配線層を「信号配線層」ともいう。)は、Al若しくはCu、又はAl若しくはCuを主体とした積層膜が用いて形成されるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
また、ソース電極9及びドレイン電極13と半導体活性層8との間には、図示しないコンタクト層が形成されており、コンタクト層は、不純物添加アモルファスシリコン等の不純物添加半導体からなる。
【0030】
TFT保護層11は、半導体活性層8、ソース電極9、ドレイン電極13、及び共通電極配線25を覆うように、基板1上の画素が設けられた領域のほぼ全面(ほぼ全領域)に形成されている。このTFT保護層11は、例えばSiN等からなるものであり、例えば、CVD法で成膜することにより形成される。
【0031】
TFT保護層11上には、信号配線3とコンタクトパッド38とが形成されている。信号配線3は、コンタクトホール36を介してソース電極9に接続されており(図2参照)、コンタクトパッド38はコンタクトホール40を介してドレイン電極13に接続されている。
【0032】
この信号配線3及びコンタクトパッド38上には、信号配線3及びコンタクトパッド38を覆うように、基板1上の画素が設けられた領域のほぼ全面に塗布されてなる層間絶縁膜12が形成されている。この層間絶縁膜12には、コンタクトパッド38が設けられた位置に、コンタクトパッド38が露出するようにコンタクトホール16が形成されている。
【0033】
TFT保護層11上に形成された層間絶縁膜12は、低誘電率(ε=2〜4)の感光性の有機材料(例えば、ポジ型感光性アクリル系樹脂:メタクリル酸とグリシジルメタクリレートとの共重合体からなるベースポリマーに、ナフトキノンジアジド系ポジ型感光剤を混合した材料など)により1〜4μmの膜厚で形成されている。本実施形態における電磁波検出素子10では、層間絶縁膜12によって層間絶縁膜12の上層と下層とに配置される金属間の容量を低く抑えている。また、このような材料は一般に、平坦化膜としての機能も有しており、下層の段差が平坦化される効果も有する。これにより、上層に配置される半導体層の形状が平坦化されるため、半導体層の凹凸による吸収効率の低下や、リーク電流の増加を抑制することができる。
【0034】
層間絶縁膜12上には、コンタクトホール16を埋めつつ、画素領域を覆うようにセンサ部103の下部電極14が形成されており、この下部電極14は、コンタクトホール16において、TFTスイッチ4のドレイン電極13と繋がるコンタクトパッド38と接続されている。
この下部電極14は、その上層として形成される半導体層が1μm前後と厚い場合には、導電性があれば材料に制限がほとんどない。このため、ITO、IZO、Al、Cu、Mo、W、又はAl、Cu、Mo及びWのいずれかを主体とする合金、あるいはこれらの積層膜など、導電性の金属を任意に選択して形成することができる。一方、半導体層の膜厚が薄い場合(0.2〜0.5μm前後)には、半導体層での光の吸収が充分でないため、TFTへの光照射によるリーク電流の増加を防ぐため、下部電極14は遮光性金属もしくはその合金又はこれらの積層膜で構成されるのが好ましい。
【0035】
遮光性金属は、膜形成した場合に前記に定義した「遮光性」が得られる金属であり、本発明における下部電極の形成には、例えば、MoW(膜厚100nm〜300nm程度)を好適に用いることができる。
【0036】
下部電極14上には、フォトダイオードとして機能する半導体層6が形成されている。本実施形態では、半導体層6として、PIN構造のフォトダイオードを採用したもの(以下、「PIN型のフォトダイオード層」又は「フォトダイオード層」ともいう。)であり、下部電極14(下層)側からN+層(N型不純物添加アモルファスシリコン層)、I層(アモルファスシリコン層)、P+層(P型不純物添加アモルファスシリコン層)を順に積層して形成されている。なお、本実施形態では、下部電極14aは、半導体層6よりも大サイズ(広面積)になっている。
【0037】
前記半導体層としては、PIN構造のフォトダイオードなど公知のPN型のフォトダイオードを選択することができる。
【0038】
なお、半導体層6の厚みが薄い場合(例えば、0.5μm以下の場合)には、TFTスイッチ4への光入射を防ぐ目的で、遮光性金属を配置してTFTスイッチ4を覆うことが好ましい。好ましくは、デバイス内部の光の乱反射によるTFTスイッチ4への光の進入を抑制するため、TFTチャネル部から遮光性金属からなる下部電極14の端部への間隔を5μm以上確保する。
【0039】
図3に示すように、層間絶縁膜12のフォトダイオード層6が形成されていない領域には、層間絶縁膜12と同じ材料からなる層間絶縁膜17が、フォトダイオード層6上面の一部及び側面を覆うように形成されている。
【0040】
フォトダイオード層6及び層間絶縁膜17の上には、フォトダイオード層6上の少なくとも層間絶縁膜17で覆われずに開口している開口部を覆うようにして、上部電極7が形成されている。上部電極7は、例えば、ITOやIZO(酸化インジウム・酸化亜鉛)などの光透過性の高い材料を用いて形成することができる。上部電極7は、上部電極7にバイアス電圧を供給するための共通電極配線25と接続する導電部材も兼ねている。ここで、上部電極7と共通電極配線25に接続する導電部材とは、別層の金属で形成されてもよい。
【0041】
また、図3に示すように作製された電磁波検出素子10の層間絶縁膜17及び上部電極7の上方には、更に無機材料からなる保護絶縁膜(不図示)を形成することができる。この保護絶縁膜は、例えば、SiN、SiO等の絶縁材料をCVD法もしくはスパッタリング法により堆積することにより形成することができる。
更に、電磁波検出素子10上には、保護絶縁膜を介して、光吸収性の低い接着樹脂等を用いてGOS等からなるシンチレータ(不図示)が貼付されている。
【0042】
次に、本実施形態に係る電磁波検出素子10の製造方法の一例を図4〜図5を参照して説明する。
まず、図4(A)に示すように、基板1上に、ゲート配線層として、ゲート電極2を不図示の走査配線101(図2参照)と共に形成する。このゲート配線層は、Al、Al合金等の低抵抗金属、もしくは高融点金属からなるバリアメタル層との積層膜を、膜厚が100〜300nm前後になるようにスパッタリング法にて基板1上に堆積して金属膜を形成した後、フォトリソグラフィー技術にてパターン状のレジスト膜を積層して該レジスト膜をマスクとしてAl等用のエッチャントによるウェットエッチング法又はドライエッチング法にて金属膜をパターンニングする。その後、レジストを除去することにより、ゲート配線層が完成する。
【0043】
次いで、図4(B)に示すように、ゲート配線層2上に、絶縁膜15、半導体活性層8、不図示のコンタクト層を順次堆積する。絶縁膜15は、膜厚200〜600nmのSiNからなり、半導体活性層8は、膜厚20〜200nm前後のアモルファスシリコンからなり、コンタクト層は、膜厚10〜100nm前後の不純物添加アモルファスシリコンからなり、いずれもP−CVD(Plasma-Chemical Vapor Deposition)法にて堆積した後、ゲート配線層と同様に、フォトリソグラフィー技術により形成されたレジスト膜をマスクとしてパターンニングを行なう。その後、半導体活性層8と不純物添加半導体によるコンタクト層を絶縁膜15に対し、選択的にドライエッチングすることにより半導体活性領域を形成する。
【0044】
その後、図4(C)に示すように、絶縁膜15及び半導体活性層8の上に、信号配線層として、ソース電極9、ドレイン電極13、共通電極配線25を形成する。この信号配線層は、ゲート配線層と同様に、Al、Al合金等の低抵抗金属、もしくは高融点金属からなるバリアメタル層との積層膜、又はMo等の高融点金属膜単層からなり、厚みは100〜300nm前後が好ましい。ゲート配線層と同様に、所望の金属膜をスパッタリング法にて堆積形成した後、フォトリソグラフィー技術にてレジスト膜のパターンニングを行ない、レジスト膜をマスクとしてAl等用のエッチャントによるウェットエッチング法又はドライエッチング法にて金属膜をパターンニングする。その際、信号配線層との間のエッチングレートを選択的に変えることにより、絶縁膜15は除去されない。ドライエッチング法にて、半導体活性層8の一部を除去しチャネル領域を形成する。
【0045】
次に、図4(D)に示すように、半導体活性層8、ソース電極9、ドレイン電極13、及び共通電極配線25を覆うようにほぼ全面にTFT保護層11を形成し、フォトリソグラフィー技術によりTFT保護層11をパターンニングする。このとき、ドレイン電極13の一部が露出するようにTFT保護層11を除去し、コンタクトホール40を形成する。
TFT保護層11は、例えば、SiN等の無機材料を用いて形成されており、例えば、CVD成膜により形成される。
【0046】
続いて、形成されたTFT保護層11上に、図4(E)に示すように、信号配線3を形成すると共に、コンタクトホール40においてドレイン電極13と繋がるようにコンタクトパッド38を形成する。
【0047】
次に、図4(F)のように、信号配線3及びコンタクトパッド38並びにTFT保護層11の全体を覆うようにして、層間絶縁膜12を形成する。本発明においては、層間絶縁膜12は、有機系材料からなる単層もしくは複数層により形成されている。
【0048】
本実施形態では、共通電極配線25と後に形成される下部電極14との間の静電容量を抑制する一方で、TFTスイッチ4の特性を安定させるため、感光性の層間絶縁膜12と無機材料からなるTFT保護層11との積層構造となっており、例えば、CVD成膜によりTFT保護層11を形成し、塗布可能な材料として調製された感光性の塗布液を塗布し、塗布・乾燥後にプリベークした後、露光、現像を行なった後、さらに焼成を行なって層間絶縁膜12を形成する。
【0049】
上記のようにして有機系の層間絶縁膜を積層した後は、図4(G)に示すように、層間絶縁膜12の全面に上層として、スパッタリング法により堆積してIZO膜14を形成する。膜厚は、20〜200nm前後である。IZO膜14の形成は、フォトリソグラフィー技術にてパターンニングを行なった後、IZO膜をメタル用のエッチャント等によるウェットエッチング法か、ドライエッチング法にてパターンニングしてもよい。
【0050】
IZO膜は、後に上層として積層されるPIN型のフォトダイオード層をドライエッチングによりパターニングする際にエッチング除去されないので、下層の層間絶縁膜12を損なうことなく、フォトダイオード層をパターンニングできる。なお、後述するように、IZO膜は、ウェットエッチング等の方法で容易に除去可能であるので、パターン状の下部電極に加工形成することにより、下部電極として利用が可能となる。
【0051】
本発明においては、上記IZO膜に限られるものではなく、上層として積層される半導体層よりエッチング速度が遅い導電性材料を堆積して形成される、半導体層よりエッチング速度が遅い導電性層であればよく、任意に選択することができる。中でも、半導体層のドライエッチング時のプラズマ耐性が高く、エッチングストッパ機能を確保でき、しかもドライエッチング後にウェットエッチング等の方法で容易にパターニング可能である点で、酸化インジウムスズ(ITO)、Al、Cu、Mo、W、又はAl、Cu、Mo及びWのいずれかを主体とする合金、あるいはこれらの積層膜を好適に使用できる。
【0052】
本実施形態では、IZO膜14をパターニングせずに、図5(H)において、IZO膜14の全面にCVD法によりIZO膜14側から順に、N+、I、P+の各層を堆積してPIN型のフォトダイオード層を形成する。形成されたフォトダイオード層上に、更にフォトリソグラフィー技術にて図示しないパターン状のレジスト膜を形成し、このレジスト膜をマスクとしてドライエッチング法により不要なフォトダイオード層をエッチング除去(パターニング)することにより、所望パターンのフォトダイオード層6を形成する。ドライエッチング法によるパターニングは、フォトダイオード層とレジスト層、及びフォトダイオード層とIZO膜14とのエッチングレートの違いを利用し、IZO膜14を検出したところでエッチング処理を終了する。
【0053】
このように、層間絶縁膜12を形成した後、フォトダイオード層6を形成する前に予めIZO膜14を形成し、IZO膜14の上に形成されたフォトダイオード層に対してドライエッチング処理を施す構成にするので、フォトダイオード層6よりエッチング速度の遅いIZO膜がエッチングストッパとして機能し、下層に位置する層間絶縁膜12がフォトダイオード層のドライエッチング時のオーバーエッチングの影響で損なわれることなく、良好にフォトダイオード層6のエッチング加工(パターニング)を行なうことができる。しかも、IZO膜は、ウェットエッチング等の方法により容易に除去が可能であるため、フォトダイオード層の加工終了後には露出状態にあるIZO膜を除去することにより、IZO膜のパターン化が行なえ、これによりIZO膜を下部電極として利用することができる。
【0054】
ここで、フォトダイオード層の厚みは、それぞれの層について、N+層は50〜500nmが好ましく、I層は0.2〜2umが好ましく、P+層は50〜500nmが好ましい。
本実施形態では、N+層、I層,P+層の順で各層を積層したが、P+層、I層、N+層の順で積層し、PINダイオードとしてもよい。
【0055】
ドライエッチング処理は、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)などの希ガス、塩素原子、フッ素原子、臭素原子等のハロゲン原子を含むハロゲン系ガス(例えば、CCl、CClF、AlF、AlCl等)、O、N、CO、及びCOの群から選ばれる1種のガス又は2種以上の混合ガスを用いた、反応性イオンエッチング法、イオンビームエッチング法、プラズマエッチング法などが挙げられる。前記ドライエッチング法は、レジスト膜を塗布形成しパターニング後にこれをマスクとしてエッチングする方法等が挙げられ、具体例として、バレル型プラズマエッチング、平行平板型プラズマエッチング、発生域分離型プラズマエッチング、平行平板型反応性イオンエッチング、バレル型反応性イオンエッチング、ドライオード構造反応性イオンエッチング、マグネトロン応用反応性イオンエッチング、マイクロウエーブ反応性イオンエッチング、磁場励起型反応性イオンエッチング、ECRプラズマエッチング、へリコン波プラズマエッチング、TCP型プラズマエッチング、誘導結合型プラズマエッチング、スパッタエッチング、イオンミリング等、が挙げられる。
フッ素原子を含むフッ素系ガスとしては、公知のガスを使用できるが、下記式(A)で表されるフッ素系化合物のガスは好適である。
…(A)
〔式中、nは1〜6を表し、mは0〜13を表し、lは1〜14を表す。〕
前記式(A)で表されるフッ素系ガスとしては、例えば、CF、C、C、C、C、C、C、及びCHFなどを挙げることができる。フッ素系ガスは、これらから1種のガスを選択して用いることができ、また、2種以上のガスを組合せて用いることができる。
【0056】
このとき、フォトダイオード層(半導体層)とIZO膜(導電性層)とのエッチングレート選択比を10以上とする。エッチングレート選択比とは、〔フォトダイオード層のエッチングレート〕/〔IZO膜のエッチングレート〕を指す。中でも、導電性層の膜減り量を少なく(例えば10nm以下)抑えられる点で、20以上の選択比でエッチングするのが好ましい。
ドライエッチング処理は、予めエッチング処理時間を求めておくことが好ましい。すなわち、(1)フォトダイオード層(半導体層)のエッチングレート[nm/分]を算出し、(2)IZO膜(導電性層)のエッチングレート[nm/分]を算出し、(3)前記エッチングレート選択比、及びエッチング条件(使用ガス、フォトダイオード層の厚みなど)を考慮して、エッチングするのに要する処理時間を算出する。
【0057】
ドライエッチング処理を終了した後、図5(I)に示すように、フォトダイオード層6が除去されて露出したIZO膜14を、フォトリソグラフィー技術を利用し、少なくともフォトダイオード層6上が覆われるようにレジストパターンを形成してこのレジストパターンをマスクとして、IZO用のエッチャント等によるウェットエッチング法などによりパターンニングし、下部電極14aとする。このとき、ウェットエッチング処理は、公知の方法を任意に選択して行なえる。
【0058】
引き続いて、図5(J)に示すように、IZO膜14が除去されて露出した層間絶縁膜12の表面に、フォトダイオード層6の一部を覆うように、CVD法でSiN膜からなる保護絶縁膜17を堆積する。膜厚は100〜300nm前後が好ましい。フォトリソグラフィー技術にてパターン状にレジスト膜を形成し、ドライエッチ法にて保護絶縁膜をパターンニングし、開口部を形成する(図5(J))。ここでは、一例としてCVD法でSiNを形成する場合を説明したが、絶縁材料であれば適用でき、SiNに限定されるものではない。
その後、保護絶縁膜17及びフォトダイオード層6の上部に、ITO透明電極形成用の材料をスパッタリング法により堆積し、透明な導電性層を形成する。そして、フォトリソグラフィー技術にて保護絶縁膜17上の一部にパターン状にレジスト膜を形成し、ITO用のエッチャント等によるウェットエッチング法又はドライエッチング法にて導電性層をパターンニングし、図5(K)に示すように上部電極7を形成する。このとき、上部電極7及び共通電極配線25との接続部位を形成する。
上部電極7の厚みは、20〜200nm前後が好ましい。
【0059】
そして最後に、接着樹脂等を用いてGOSからなるシンチレータを貼り付けることができる。このようにして、図2〜図3に示す構造に構成された電磁波検出素子10が形成される。
【0060】
上記の実施形態では、半導体層としてPIN型のフォトダイオード層を形成し、導電性層としてIZO膜を形成した場合を中心に説明したが、本発明は層間絶縁膜の形成後であって半導体層の形成前に層間絶縁膜上に半導体層よりエッチング速度の遅い導電性層を形成するものであることから、PIN型のフォトダイオード層以外の前記半導体層、IZO膜以外の前記導電性層を積層する場合も上記と同様に行なうことが可能であり、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施形態に係る放射線画像検出装置の全体構成を示す構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る電磁波検出素子の1画素単位の構成を示す平面図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る電磁波検出素子を作製する工程の流れの一部を示す工程図である。
【図5】本発明の実施形態に係る電磁波検出素子を作製する工程の流れの他の一部を示す工程図である。
【図6】従来の間接変換型の放射線画像検出装置に用いられる電磁波検出素子の1画素単位の構造を示す平面図である。
【図7】図6のA−A線断面図である。
【図8】図6の電磁波検出素子を作製する従来の工程の流れを示す工程図である。
【符号の説明】
【0062】
1…絶縁性の透明基板
6…PIN型のフォトダイオード層(半導体層)
10…電磁波検出素子
12…層間絶縁膜
14…IZO膜(半導体層よりエッチング速度が遅い導電性材料を用いた導電性層)
14a…下部電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜トランジスタアレイが形成された絶縁性基板の上に、前記薄膜トランジスタアレイを覆うように層間絶縁膜を形成する工程と、
前記層間絶縁膜の上に、半導体層を形成する工程と、
前記層間絶縁膜の形成後、前記半導体層の形成前に前記層間絶縁膜と前記半導体層との間に配置されるように、前記半導体層よりエッチング速度が遅い導電性材料を堆積して導電性層を形成する工程と、
前記半導体層の一部を、前記導電性層が露出するまでドライエッチング処理により除去し、半導体層のパターニングを行なう工程と、
前記半導体層の除去により露出した前記導電性層をフォトリソグラフィー技術により除去し、下部電極パターンを形成する工程と、
を含む電磁波検出素子の製造方法。
【請求項2】
前記半導体層は、アモルファスシリコンを主体とするフォトダイオード層であることを特徴とする請求項1に記載の電磁波検出素子の製造方法。
【請求項3】
前記導電性材料は、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム・酸化亜鉛(IZO)、Al、Cu、Mo、W、又はAl、Cu、Mo及びWのいずれかを主体とする合金、あるいはこれらの積層膜であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電磁波検出素子の製造方法。
【請求項4】
前記導電性層は、遮光性を有することを特徴とすることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の電磁波検出素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−182134(P2009−182134A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−19403(P2008−19403)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】