露光光遮蔽膜形成用材料、多層配線及びその製造方法、並びに半導体装置
【課題】多層配線、半導体装置等に好適に用いられ、露光光、例えば紫外線の吸収性が高い露光光遮蔽膜形成用材料等の提供。
【解決手段】露光光遮蔽膜形成用材料は、構造式(1)で表されるシリコン化合物及び構造式(2)で表されるシリコン化合物のいずれかを含んでなり、R1及びR2のいずれかが露光光を吸収可能な置換基で置換されている。
(R1、R2及びR3は水素原子並びにアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基及びアリール基のいずれかを表す。nは2以上の整数を表す。)
【解決手段】露光光遮蔽膜形成用材料は、構造式(1)で表されるシリコン化合物及び構造式(2)で表されるシリコン化合物のいずれかを含んでなり、R1及びR2のいずれかが露光光を吸収可能な置換基で置換されている。
(R1、R2及びR3は水素原子並びにアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基及びアリール基のいずれかを表す。nは2以上の整数を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路における多層配線に好適で、多孔質絶縁膜に対する露光光、例えば紫外線を効果的に遮蔽可能な露光光遮蔽膜、該露光光遮蔽膜の形成に好適に使用可能な露光光遮蔽膜形成用材料、前記露光光遮蔽膜を有する多層配線及びその製造方法、並びに該多層配線を有する半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路の集積度の増加及び素子密度の向上に伴い、特に半導体素子の多層化への要求が高まっている。この半導体集積回路の高集積化に伴い、配線間隔は更に狭くなることから、配線間の容量増大による配線遅延が問題となっている。ここで、前記配線遅延(T)は、次式、T∝CR、で表され、配線抵抗(R)及び配線間の容量(C)に影響を受ける。そして、前記誘電率(ε)と前記配線間の容量(C)との関係は、次式、C=ε0εr・S/d、で表される。なお、該式において、Sは電極面積、ε0は真空の誘電率、εrは絶縁膜の誘電率、dは配線間隔をそれぞれ表す。前記配線間の容量(C)は、配線厚を薄くし電極面積を小さくすることで低減できるものの、配線厚を薄くすると、更に前記配線抵抗(R)の上昇を招くために高速化を達成し得ない。したがって、前記配線遅延(T)を小さくし、高速化を図るためには、絶縁膜の低誘電率化が有効な手段となる。
【0003】
近時、半導体集積回路の集積度の増加及び素子密度の向上に伴い、多層配線構造を有する半導体装置においては、金属配線間隔が狭くなる傾向にあり、静電誘導による金属配線のインピーダンスが増大し、応答速度の遅延や消費電力の増大が懸念されている。このため、半導体基板と金属配線との間、又は金属配線間に設けられる層間絶縁膜の比誘電率をできる限り小さくすることが必要となる。
【0004】
従来の絶縁膜の材料としては、二酸化珪素(SiO2)、窒化珪素(SiN)、燐珪酸ガラス(PSG)等の無機材料、又はポリイミド等の有機系高分子材料が用いられている。しかし、半導体装置で多用されているCVD−SiO2膜の誘電率は4程度と高いものである。また、低誘電率CVD膜として検討されているSiOF膜は、誘電率が約3.3〜3.5であるが、吸湿性が高く、誘電率が経時的に上昇してしまうという問題がある。更に、多孔質化したシリカ系低誘電率膜が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この多孔質化被膜の製造方法は、熱分解性成分を加熱し、蒸発乃至分解させて孔を形成する工程を有するため、一層の低誘電率化が可能となる。しかし、前記多孔質化被膜は、現状では空孔サイズが10nm以上と大きいことから、誘電率を低減するために空隙率を高くすると、吸湿による誘電率上昇や膜強度の低下が生じるという問題がある。
【0005】
そこで、現在では、成膜後に紫外線、プラズマ、電子線等を照射することにより絶縁膜を硬化(キュア)し、高強度化する方法が検討されている。しかし、紫外線及びプラズマに関しては、被照射対象である絶縁膜よりも下層にまで照射光が到達してしまい、キュアの累積により、下層の層間絶縁膜に膜減り等が発生することが懸念され、電子線に関しては、照射エネルギーが特に強く、最下層に位置するトランジスタへの影響が懸念されている。
【0006】
【特許文献1】特開2004−153147号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来における前記問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、露光光、特に紫外線の吸収性が高く、前記露光光の被照射対象よりも下層に位置する多孔質絶縁膜に到達する前記露光光を効果的に遮蔽し、該多孔質絶縁膜の性能を損なうことなく誘電率を低減可能な露光光遮蔽膜、該露光光照射膜の形成に好適な露光光遮蔽膜形成用材料、配線間の寄生容量が低減可能な多層配線及びその効率的かつ量産性の高い製造方法、並びに該多層配線を有する高速で信頼性の高い半導体装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段としては、後述する付記に列挙した通りである。即ち、
本発明の露光光遮蔽膜形成用材料は、下記構造式(1)で表されるシリコン化合物、及び下記構造式(2)で表されるシリコン化合物の少なくともいずれかを含んでなり、
下記構造式(1)及び下記構造式(2)における、R1及びR2の少なくともいずれかが、露光光を吸収可能な置換基で置換されていることを特徴とする。
【化3】
前記構造式(1)中、R1及びR2は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、並びに置換又は非置換の、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、及びアリール基のいずれかを表す。nは2以上の整数を表す。
【化4】
前記構造式(2)中、R1、R2及びR3は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、少なくとも1つが水素原子を表し、それ以外は、それぞれ、置換又は非置換の、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、及びアリール基のいずれかを表す。nは2以上の整数を表す。
該露光光遮蔽膜形成用材料においては、前記構造式(1)で表されるシリコン化合物、及び前記構造式(2)で表されるシリコン化合物の一部の官能基が、露光光、例えば紫外線を吸収可能な置換基で置換されているので、例えば紫外線の吸収性に優れる。このため、本発明の前記露光光遮蔽膜形成用材料を用いて形成した露光光遮蔽膜は露光光遮蔽機能を発現し、多層配線、各種半導体装置などに好適に使用することができ、本発明の多層配線及び本発明の半導体装置に特に好適に使用することができる。
【0009】
本発明の多層配線は、露光光遮蔽膜と多孔質絶縁膜と配線層とを少なくとも有し、前記露光光遮蔽膜が、本発明の前記露光光遮蔽膜形成用材料を用いて形成されているので、前記露光光遮蔽膜は露光光、例えば紫外線の吸収性に優れ、紫外線遮蔽機能を発現する。例えば、多孔質絶縁膜上に露光光遮蔽膜が形成されると、前記多孔質絶縁膜への前記露光光、例えば紫外線の到達が阻止される。このため、前記露光光遮蔽膜よりも上層に塗設した多孔質絶縁膜の成膜後に該多孔質絶縁膜に前記露光光、例えば紫外線を照射して硬化(キュア)する際、被照射対象である多孔質絶縁膜よりも下層に位置する多孔質絶縁膜への紫外線の到達が効果的に阻止され、キュアの累積による下層の多孔質絶縁膜へのダメージの累積が低減され、膜減りなどの発生が抑制される。また、前記露光光が、例えば電子線である場合には、下層に位置するトランジスタ等へのダメージが低減される。また、前記多孔質絶縁膜は誘電率が低いため、寄生容量が低減され、信号伝播速度の高速化が可能であり、応答速度の高速化が要求される、IC、LSI等の高集積度の半導体集積回路等に特に好適である。
従来より、絶縁膜の寄生容量による信号伝播速度の低下が知られていたが、半導体デバイスの配線間隔が1μm以上の世代では配線遅延のデバイス全体への影響は少なかった。近時、半導体集積回路が高集積化され、多層配線構造化されるようになり、配線幅・間隔が狭くなり、特に配線間隔が1μm以下では、配線抵抗の上昇と配線間の寄生容量の増大とが問題となってきている。前記半導体集積回路等のデバイスの性能を支配する大きな要素である、前記配線抵抗と前記配線間の寄生容量とによって、該半導体集積回路の多層配線構造における信号伝播速度が決定されることから、該配線抵抗の上昇と該配線間の寄生容量の増大は前記信号伝播速度の低下を招く原因として、克服しなければならない大きな問題である。該信号伝播速度の向上を図るためには、前記配線抵抗の低下と前記配線間の寄生容量(絶縁膜の誘電率)の低下とが必須である。前記配線間の寄生容量は、配線を薄くして断面積を小さくすると低減できるものの、配線を薄くすると前記配線抵抗が上昇してしまう。つまり、前記配線間の寄生容量の低下と前記配線抵抗の低下とは二律背反の関係にあるため、前記信号伝播速度の向上は容易ではない。現在、低誘電率絶縁膜として、多孔質状の塗布型絶縁膜が提案されているが、多孔質であるという性質上、機械的強度が低く、該機械的強度の向上が求められている。機械的強度の強化方法としては、露光光(例えば、紫外線)を照射して硬化(キュア)する方法が挙げられ、その際、本発明の前記露光光遮蔽膜を使用すると、低誘電率で、応答速度の高速化に寄与し得る多孔質絶縁膜の機械的強度を確保しつつ、前記配線間の寄生容量の低下と前記配線抵抗の低下とを達成することができ、前記信号伝播速度の高速化が可能となる。
【0010】
本発明の多層配線の製造方法は、本発明の前記多層配線を製造する方法であって、露光光遮蔽膜形成工程と、多孔質絶縁膜形成工程と、硬化工程と、配線形成工程とを、少なくとも含むことを特徴とする。該多層配線の製造方法では、前記露光光遮蔽膜形成工程において、本発明の前記露光光遮蔽膜形成材料を用いて前記被加工面上に露光光遮蔽膜が形成される。前記多孔質絶縁膜形成工程において、前記露光光遮蔽膜上に前記多孔質絶縁膜が形成される。前記硬化工程において、前記多孔質絶縁膜に露光光が照射されて硬化(キュア)される。前記配線形成工程において、前記配線が形成される。そして、これらの一連の工程を繰り返し行うことにより、多層配線が効率的に形成される。該多層配線の製造方法は、本発明の前記多層配線の製造に特に好適である。
【0011】
本発明の半導体装置は、本発明の前記多層配線を少なくとも有することを特徴とする。該半導体装置においては、本発明の前記多層配線を有するので、前記配線間の寄生容量の低下と前記配線抵抗の低下とが達成され、高速で信頼性の高いフラッシュメモリ、DRAM、FRAM、MOSトランジスタ、などに特に好適である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、露光光、例えば紫外線の吸収性が高く、被照射対象よりも下層に位置する多孔質絶縁膜に到達する前記露光光、例えば紫外線を効果的に遮蔽し、該多孔質絶縁膜の性能を損なうことなく誘電率を低減可能な露光光遮蔽膜、該露光光遮蔽膜の形成に好適な露光光遮蔽膜形成用材料、配線間の寄生容量が低減可能な多層配線及びその効率的かつ量産性の高い製造方法、並びに該多層配線を有する高速で信頼性の高い半導体装置及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(露光光遮蔽膜形成用材料)
本発明の露光光遮蔽膜形成用材料は、下記構造式(1)で表されるシリコン化合物(以下、「ポリカルボシラン」と称することがある)、及び下記構造式(2)で表されるシリコン化合物(以下、「ポリシラザン」と称することがある)の少なくともいずれかを含んでなり、更に必要に応じて、その他の成分等を含んでなり、前記ポリカルボシラン及び前記ポリシラザンは、その一部の官能基が、露光光を吸収可能な置換基で置換されている。
【0014】
【化5】
前記構造式(1)中、R1及びR2は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、並びに置換又は非置換の、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、及びアリール基のいずれかを表す。
nは2以上の整数を表し、10〜1,000が好ましい。nが10未満であると、前記露光光遮蔽膜形成用材料の塗布性に劣ることがあり、1,000を超えると、形成する露光光遮蔽膜の膜厚にムラが生じることがある。
【0015】
【化6】
前記構造式(2)中、R1、R2及びR3は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、少なくとも1つが水素原子を表し、それ以外は、それぞれ、置換又は非置換の、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、及びアリール基のいずれかを表す。
nは2以上の整数を表し、前記構造式(2)で表されるポリシラザンの数平均分子量が、下記数値範囲を充たすのに必要な繰り返し単位数であるのが好ましい。
前記ポリシラザンの数平均分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100〜50,000が好ましい。
前記数平均分子量が、100未満であると、前記露光光遮蔽膜形成用材料の塗布性に劣ることがあり、50,000を超えると、形成する露光光遮蔽膜の膜厚にムラが生じることがある。
【0016】
前記構造式(1)で表されるポリカルボシラン及び前記構造式(2)で表されるポリシラザンにおいては、前記構造式(1)及び(2)中、R1及びR2の少なくともいずれかが、露光光を吸収可能な置換基で置換されていることが必要である。
前記構造式(1)で表されるポリカルボシラン及び前記構造式(2)で表されるポリシラザンにおけるR1及びR2の少なくともいずれかを、前記露光光を吸収可能な置換基で置換する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記R1及び前記R2の少なくともいずれかをハロゲン化し、目的とする置換基を含むGrignard試薬と反応させることにより置換することができる。
【0017】
前記露光光としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、紫外線、プラズマ、電子線などが挙げられるが、多孔質絶縁膜の硬化(キュア)に好適な点で、紫外線が好ましい。
前記露光光が紫外線である場合、前記ポリカルボシラン及び前記ポリシラザンの一部の官能基を紫外線を吸収可能な置換基で置換することにより、前記露光光遮蔽膜形成用材料に、優れた紫外線吸収性能を付与することができる。
【0018】
前記紫外線を吸収可能な置換基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、二重結合、三重結合、及びヘテロ原子を含んでいてもよいアリール基の少なくともいずれかを有するのが好ましく、具体的には、ビニル基、アクロイル基、ベンジル基、フェニル基、カルボニル基、カルボキシル基、ジアゾ基、アジド基、シンナモイル基、アクリレート基、シンナミリデン基、シアノシンナミリデン基、フリルベンタジエン基、p−フェニレンジアクリレート基などが好適に挙げられる。
【0019】
前記露光光遮蔽膜形成用材料における、前記紫外線を吸収可能な置換基、例えば、二重結合、三重結合、及びヘテロ原子を含んでいてもよいアリール基の存在を確認する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、赤外分光分析(IR)を用いて吸収ピークを測定することにより、これらの構造を分析する方法、X線光電子分光法(XPS)により元素の種類、量及び化学的結合状態を分析する方法などにより、これらの存在を確認することができる。
【0020】
前記構造式(1)で表されるポリカルボシラン及び前記構造式(2)で表されるポリシラザンの前記露光光遮蔽膜形成用材料における含有量としては、1種単独で使用する場合及び2種以上を併用する場合のいずれについても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、その全体量で、30〜90質量%が好ましく、40〜80質量%がより好ましい。
前記含有量が、30質量%未満であると、前記露光光の遮蔽効果が不十分となり、前記露光光が下層にまで到達してしまうことがあり、90質量%を超えると、露光光遮蔽膜の誘電率が著しく上昇してしまうことがある。
【0021】
前記その他の成分としては、本発明の効果を害しない限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、溶剤、公知の各種添加剤などが挙げられる。
前記溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シクロヘキサン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、オクタン、デカン、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが挙げられる。
前記その他の成分の前記露光光遮蔽膜形成用材料における含有量としては、前記構造式(1)及び(2)で表されるシリコン化合物の種類や含有量などに応じて適宜決定することができる。
【0022】
本発明の露光光遮蔽膜形成用材料は、前記構造式(1)で表されるシリコン化合物、及び前記構造式(2)で表されるシリコン化合物の少なくともいずれかを含み、これらの一部の官能基が、前記露光光、例えば紫外線を吸収可能な置換基で置換されているので、前記露光光、例えば紫外線の吸収性に優れる。このため、露光光遮蔽機能を発現する露光光遮蔽膜を形成することができ、以下の本発明の多層配線、本発明の半導体装置などに好適に使用することができる。
【0023】
(露光光遮蔽膜)
本発明の露光光遮蔽膜は、本発明の前記露光光遮蔽膜形成用材料を用いて形成されてなる。このため、前記露光光遮蔽膜は、優れた露光光遮蔽機能を発現する。
前記露光光遮蔽膜は、該露光光遮蔽膜よりも上層に位置する多孔質絶縁膜に露光光、例えば紫外線を照射して硬化(キュア)する際に、被照射対象である多孔質絶縁膜よりも下層(前記露光光遮蔽膜よりも下層)に位置する多孔質絶縁膜への前記露光光、例えば紫外線の到達を効果的に阻止し、キュアの累積による下層の多孔質絶縁膜へのダメージの累積を低減し、膜減りを抑制することができる。
【0024】
(多層配線)
本発明の多層配線は、露光光遮蔽膜と多孔質絶縁膜と配線層とを少なくとも有してなり、更に必要に応じて適宜選択した、その他の部材を有してなる。
【0025】
−露光光遮蔽膜−
前記露光光遮蔽膜は、本発明の前記露光光遮蔽膜形成用材料を用いて形成される。このため、前記露光光遮蔽膜は、優れた露光光遮蔽機能を発現する。
前記露光光遮蔽膜は、該露光光遮蔽膜よりも上層に位置する多孔質絶縁膜に露光光、例えば紫外線を照射して硬化(キュア)する際に、被照射対象である多孔質絶縁膜よりも下層(前記露光光遮蔽膜よりも下層)に位置する多孔質絶縁膜への前記露光光、例えば紫外線の到達を効果的に阻止し、キュアの累積による下層の多孔質絶縁膜へのダメージの累積を低減することができる。
なお、前記露光光遮蔽膜形成用材料の詳細については、本発明の上記露光光遮蔽膜形成用材料の説明において上述した通りである。
【0026】
前記露光光遮蔽膜の配設位置としては、前記露光光を照射する対象(被照射対象)である多孔質絶縁膜よりも下層に設ける限り、目的に応じて適宜選択することができ、前記多孔質絶縁膜と接触配置してもよいし、他の部材を介して配置してもよいが、前記被照射対象以外の部材への前記露光光による悪影響を防止する点で、接触配置するのが好ましい。
【0027】
前記露光光遮蔽膜の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5〜70nmが好ましく、5〜50nmがより好ましい。
前記厚みが、5nm未満であると、露光光遮蔽機能を発揮しないことがあるほか、加工上、下層に位置する多孔質絶縁膜にダメージを与えることがあり、70nmを超えると、最終的な実効誘電率が上昇することがある。
【0028】
−多孔質絶縁膜−
前記多孔質絶縁膜としては、該膜内部に空孔を有する限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スピンコート法により形成された多孔質シリカ膜、Carbon Doped SiO2膜、該Carbon Doped SiO2膜に熱分解性化合物を添加してポアを形成したPorous Carbon Doped SiO2膜、有機多孔質膜などが挙げられる。これらの中でも、ポアの制御や密度の制御が容易な点で、スピンコート法により形成された多孔質シリカ膜が好ましい。
前記スピンコート法の場合、その条件としては例えば、回転数が100〜10,000rpm程度であり、800〜5,000rpmが好ましく、時間が1秒〜10分間程度であり、10〜90秒間が好ましい。
【0029】
前記多孔質絶縁膜の材料、構造、厚み、誘電率などについては、目的に応じて適宜選択することができる。
前記多孔質絶縁膜が前記多孔質シリカ膜である場合、その材料としては、例えば、テトラアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、メチルトリアルコキシシラン、エチルトリアルコキシシラン、プロピルトリアルコキシシラン、フェニルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシラン、アリルトリアルコキシシラン、グリシジルトリアルコキシシラン、ジアルコキシシラン、ジメチルジアルコキシシラン、ジエチルジアルコキシシラン、ジプロピルジアルコキシシラン、ジフェニルジアルコキシシラン、ジビニルジアルコキシシラン、ジアリルジアルコキシシラン、ジグリシジルジアルコキシシラン、フェニルメチルジアルコキシシラン、フェニルエチルジアルコキシシラン、フェニルプロピルトリアルコキシシラン、フェニルビニルジアルコキシシラン、フェニルアリルジアルコキシシラン、フェニルグリシジルジアルコキシシラン、メチルビニルジアルコキシシラン、エチルビニルジアルコキシシラン、プロピルビニルジアルコキシシランなどの加水分解及び縮重合反応により形成したポリマーが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、これらのポリマーに熱分解性化合物などを添加して加熱することにより、細孔が形成された多孔質絶縁膜を得ることができる。
前記熱分解性化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリル樹脂などが挙げられる。
【0030】
前記多孔質絶縁膜が、Carbon Doped SiO2膜である場合、その材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、二酸化炭素、及び例えば、ヘキサメチルジシロキサン等のアルキル基を有するシロキサンモノマーが好適に挙げられる。
前記多孔質絶縁膜が、Porous Carbon Doped SiO2膜である場合、その材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、二酸化炭素、熱分解性の原子団(熱分解性化合物)、及び酸化分解性の原子団(酸化分解性化合物)が挙げられ、具体的には、例えば、ヘキサメチルジシロキサン等のアルキル基を有するシロキサンモノマー、ジフェニルメチルシラン等のフェニル基を有するシラン化合物が好適に挙げられる。
【0031】
前記多孔質絶縁膜が、有機多孔質膜である場合、その材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、熱分解性有機化合物を含むポリマーが挙げられる。
前記熱分解性有機化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、200〜300℃で熱分解するものが好ましく、例えば、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリルオリゴマー、エチレンオリゴマー、プロピレンオリゴマーなどが挙げられる。そして、これらを含むポリアリールエーテルポリマーを溶媒で希釈することにより使用することができる。該溶媒としては、例えば、シクロヘキサノンを用いることができる。
【0032】
また、前記多孔質絶縁膜の材料としては、4級アルキルアミンを触媒として用いて形成したクラスター状の多孔質シリカ前駆体が好適に挙げられる。この場合、サイズが小さく、しかも均一な空孔を有する多孔質絶縁膜を形成することができる。
前記多孔質シリカ前駆体としては、市販品であってもよいし、適宜合成してもよいが、前記市販品としては、例えば、ナノクラスタリングシリカ(NCS)(「セラメートNCS」;触媒化成工業株式会社製)が好適に挙げられる。
【0033】
前記構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
前記厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記多層配線における厚みとしては、その構造上、通常10nm〜1μmであり、10〜500nmが好ましく、10〜300nmがより好ましい。
前記厚みが、10nm未満であると、ピンホール等の構造欠陥が発生することがあり、500nmを超えると、特にドライエッチングで加工する際に、レジストパターンとの選択比が取り難いことがある。
前記誘電率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、低いほど好ましく、具体的には、3.0以下が好ましく、2.8以下がより好ましい。
なお、前記誘電率は、例えば、前記多孔質絶縁膜上に金電極を形成し、誘電率測定器等を用いて測定することができる。
【0034】
−配線層−
前記配線層としては、その材料、形状、構造、厚みなどについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、回路の集積度を向上させる点で、前記構造としては、積層構造(多層構造)であるのが好ましい。
【0035】
−その他の部材−
前記その他の部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記露光光遮蔽膜及び前記多孔質絶縁膜以外の層間絶縁膜であって、露光光、例えば紫外線を透過可能なものが好適に挙げられる。
前記層間絶縁膜としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ストッパ膜などが挙げられ、具体的には、例えば、プラズマCVD法により形成されたCarbon Doped SiO2膜、SiC:H膜、SiC:N膜、SiC:O:H膜、及びSiO2膜や、スピンコート法により形成された有機SOG及び無機SOGなどが挙げられる。これらの中でも、前記多孔質絶縁膜の形成がスピンコート法により行われる場合、有機SOG及び無機SOGが好ましい。この場合、前記多孔質絶縁膜及び前記層間絶縁膜の形成及び紫外線硬化(紫外線キュア)を一括で行うことができ、製造工程の簡略化を図ることができる。
前記層間絶縁膜の材料、形状、構造、厚み、密度などについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記厚みとしては、5〜300nmが好ましく、5〜180nmがより好ましい。
前記厚みが5nm未満であると、前記露光光による前記層間絶縁膜へのダメージの付与が著しくなることがあり、300nmを超えると、膜の上下でキュアの進行度合いに違いが生じることがある。
また、前記密度としては、1〜3g/cm3が好ましく、1〜2.5g/cm3がより好ましい。
前記密度が、1g/cm3未満であると、膜強度が著しく低下することがあり、3g/cm3を超えると、前記層間絶縁膜を低誘電率に維持することが困難となることがある。
【0036】
本発明の前記多層配線は、本発明の前記露光光遮蔽膜形成用材料を用いて形成された前記露光光遮蔽膜を有するので、前記多孔質絶縁膜への前記露光光、例えば紫外線の到達が効果的に阻止され、キュアによるダメージの累積が低減され、膜減りなどの発生が抑制される。また、前記多孔質絶縁膜は誘電率が低いため、寄生容量が低減され、信号伝播速度の高速化が可能であり、応答速度の高速化が要求される、IC、LSI等の高集積度の半導体集積回路等に特に好適である。
【0037】
(多層配線の製造方法)
本発明の多層配線の製造方法は、露光光遮蔽膜形成工程と、多孔質絶縁膜形成工程と、硬化工程と、配線形成工程とを少なくとも含み、好ましくは層間絶縁膜形成工程、熱処理工程などを含み、更に必要に応じて適宜選択した、その他の工程を含む。
【0038】
<露光光遮蔽膜形成工程>
前記露光光遮蔽膜形成工程は、被加工面上に本発明の前記露光光遮蔽膜形成用材料を用いて露光光遮蔽膜を形成する工程である。
なお、露光光遮蔽膜形成用材料の詳細については、本発明の前記露光光遮蔽膜形成用材料の説明において上述した通りである。
【0039】
前記被加工面としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記多層配線が半導体装置に用いられる場合には、該被加工面としては、半導体基板の表面が挙げられ、具体的には、シリコンウェハー等の基板、各種酸化膜、多孔質化絶縁膜等の低誘電率膜、などの表面が好適に挙げられる。
【0040】
前記露光光遮蔽膜の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、塗布が好適に挙げられる。
前記塗布の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スピンコート法、ディップコート法、ニーダーコート法、カーテンコート法、ブレードコート法、などが挙げられる。これらの中でも、塗布効率等の点で、スピンコート法が好ましい。該スピンコート法の場合、その条件としては例えば、回転数が100〜10,000rpm程度であり、800〜5,000rpmが好ましく、時間が1秒〜10分間程度であり、10〜90秒間が好ましい。
以上の工程により、本発明の前記露光光遮蔽膜形成用材料を用いて前記被加工面上に前記露光光遮蔽膜が形成される。
【0041】
<多孔質絶縁膜形成工程>
前記多孔質絶縁膜形成工程は、前記露光光遮蔽膜形成工程により形成された前記露光光遮蔽膜上に多孔質絶縁膜を形成する工程である。
【0042】
前記多孔質絶縁膜の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、形成する多孔質絶縁膜の種類に応じて、例えば、以下に示す方法が好適に挙げられる。
まず、前記多孔質絶縁膜の材料として、上述した多孔質シリカ膜を形成可能なポリマー及び熱分解性化合物が用い、これらの材料を塗布した後、熱処理(ソフトベーク)を行うことにより、前記熱分解性化合物を熱分解し、空孔(細孔)を形成させることにより多孔質絶縁膜を形成する方法が挙げられる。
なお、前記塗布は、前記露光光遮蔽膜形成工程と同様な方法により行うことができる。
【0043】
前記熱処理(ソフトベーク)の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ホットプレートを用いて焼成するのが好ましい。この場合、前記熱分解性化合物が熱分解されて、絶縁膜中に、直径10〜20nm程度の空孔(細孔)が形成される。
前記熱処理は、目的に応じて適宜その温度、雰囲気等の条件を選択することができるが、前記温度としては、200〜350℃が好ましい。
前記温度が、200℃未満であると、前記熱分解性化合物が充分に熱分解されず、前記空孔が充分に形成されないことがあるほか、前記熱分解性化合物が熱分解される速度が極めて遅く、前記空孔を形成するのに長時間を要することがある。一方、前記温度が、350℃を超えると、前記多孔質絶縁膜の材料の硬化が急速に進行し、前記空孔の形成が阻害されることがある。
【0044】
また、気相成長法により前記多孔質絶縁膜としてのCarbon Doped SiO2膜を形成する方法が挙げられる。即ち、
前記気相成長法による方法は、例えば、平行平板型のプラズマCVD装置を用いて行うことができる。まず、前記多孔質絶縁膜を形成する基板温度を、例えば、300〜400℃に設定する。そして、例えば、アルキル基を有するシロキサンモノマーを気化装置により気化し、反応性ガスを生成する。そして、キャリアガスを用いて反応性ガスをチャンバ内に導入する。このとき、平板電極間に高周波電力を印加すると、反応性ガスのプラズマが発生する。ここで、堆積レートを比較的速く設定すると、前記多孔質絶縁膜を形成することができる。具体的には、例えば、以下の成膜条件により前記多孔質絶縁膜を好適に形成することができる。即ち、前記反応性ガスとしては、例えば、ヘキサメチルジシロキサンを用い、該反応性ガスの供給量は、3mg/minとする。また、前記キャリアガスとしては、CO2を用い、該キャリアガスの流量は、6,000sccmとする。前記平板電極間に印加する高周波電力としては、例えば、13.56MHz(500W)及び100kHz(500W)とする。このような条件の下、成膜すると、カーボンを含むシリコン酸化膜からなる多孔質絶縁膜が形成される。
【0045】
また、熱分解性の原子団(熱分解性化合物)又は酸化分解性の原子団(酸化分解性化合物)を含む原料を用いて、該熱分解性又は酸化分解性の原子団をプラズマにより分解させながら気相成長法により、前記多孔質絶縁膜としてのPorous Carbon Doped SiO2膜を形成する方法が挙げられる。即ち、
前記気相成長法による方法は、例えば、平行平板型のプラズマCVD装置を用いて行うことができる。まず、前記多孔質絶縁膜を形成する基板温度を、例えば、250〜350℃に設定する。そして、例えば、アルキル基を有するシロキサンモノマーを気化装置により気化し、第1の反応性ガスを生成する。また、フェニル基を有するシラン化合物を気化装置により気化し、第2の反応性ガスを生成する。ここで、フェニル基は、加熱した状態にて酸化反応を起こさせると分解する原子団(熱分解性及び酸化分解性原子団)である。
次いで、CO2ガスをキャリアガスとして用い、前記第1及び第2の反応性ガスをチャンバ内に導入する。このとき、前記平板電極間に高周波電力を印加すると、CO2ガスがプラズマ(酸素プラズマ)となり、フェニル基が分解される。そして、フェニル基が分解されながら、堆積されることにより、多孔質絶縁膜が形成される。具体的には、例えば、以下の成膜条件により前記多孔質絶縁膜を好適に形成することができる。即ち、前記第1の反応性ガスとしては、例えば、ヘキサメチルジシロキサンを用い、該反応性ガスの供給量は、1mg/minとする。前記第2の反応性ガスとしては、例えば、ジフェニルメチルシランを用い、該反応性ガスの供給量としては、1mg/minとする。また、前記キャリアガスとしては、CO2を用い、該キャリアガスの流量は、3,000sccmとする。前記平板電極間に印加する高周波電力としては、例えば、13.56MHz(300W)及び100kHz(300W)とする。このような条件の下、成膜すると、カーボンを含むシリコン酸化膜からなる多孔質絶縁膜が形成される。
なお、熱を加えながら酸化を行うと分解する、熱分解性及び酸化分解性の原子団を含む材料に代えて、酸化を行うことなく熱分解し得る熱分解性の原子団を含む材料、熱を加えることなく酸化分解し得る酸化分解性の原子団を含む材料を用いることもできる。
【0046】
また、前記熱分解性有機化合物を含むポリマーを溶媒により希釈して前記多孔質絶縁膜としての有機多孔質膜を形成する方法が挙げられる。即ち、
前記熱分解性化合物を含むポリマーを溶媒で希釈した後塗布し、ホットプレートを用いて熱処理を行う。該熱処理の温度としては、100〜400℃程度である。該熱処理を行うと、絶縁膜中の前記溶媒が蒸発し、乾燥する。その後、300〜400℃程度で更に熱処理を行うと、前記熱分解性有機化合物が熱分解し、絶縁膜中に空孔が形成され、有機多孔質膜が形成される。
【0047】
更に、前記多孔質絶縁膜の材料としての前記シリカクラスター前駆体を塗布した後、熱処理を行うことにより多孔質絶縁膜を形成する方法が挙げられる。即ち、
前記シリカクラスター前駆体を、前記スピンコート法により塗布した後、ホットプレートを用いて熱処理(ソフトベーク)を行う。該熱処理における温度としては、例えば、200℃程度、時間としては、150秒間程度とする。すると、絶縁膜中の溶媒が蒸発し、多孔質絶縁膜が形成される。クラスター状のシリカを用いて絶縁膜を形成すると、空孔の分布が非常に均一となり、極めて良質な多孔質の絶縁膜が得られる。
以上の工程により、前記露光光遮蔽膜形成工程により形成された前記露光光遮蔽膜上に多孔質絶縁膜が形成される。
【0048】
<硬化工程>
前記硬化工程は、前記多孔質絶縁膜形成工程により形成された多孔質絶縁膜に露光光を照射して硬化(キュア)する工程である。
【0049】
前記硬化の方法としては、前記多孔質絶縁膜に対して露光光を照射する限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記露光光としては、例えば、紫外線が好適に挙げられる。
前記紫外線の波長としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、230〜380nmが好ましい。
前記波長が、230nm未満であると、照射エネルギーが強すぎるため、前記多孔質絶縁膜におけるメチル基が切断されて誘電率が上昇することがあり、380nmを超えると、照射エネルギーが弱すぎるため、膜の高強度化が進行しないことがある。
前記紫外線の照射は、例えば、紫外線ランプを用いて行うことができ、該紫外線ランプとしては、例えば、高圧水銀ランプが挙げられる。
前記紫外線の照射は、目的に応じて適宜その雰囲気等の条件を選択することができ、例えば、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスなどの存在下で行うのが好ましい。また、真空下であってもよいし、常圧下であってもよいが、オゾンの生成を抑制可能な点で、真空下で行うのが好ましい。
【0050】
前記硬化工程においては、熱処理を行いながら、前記露光光を照射するのが好ましい。この場合、前記多孔質絶縁膜の硬化(キュア)が促進され、膜の機械的強度を向上させることができる点で、有利である。
前記熱処理の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、50〜470℃が好ましく、50〜450℃がより好ましい。
また、前記温度範囲内においては、一の温度(特定の温度)にて前記露光光の照射を行う、又は、温度を適宜変更させながら複数の温度にて前記露光光の照射を行うのが好ましい。この場合、前記多孔質絶縁膜の硬化(キュア)が促進し、膜強度の向上を図ることができ、しかも下地絶縁膜(例えば、前記露光光遮蔽膜)との密着性を強化することができる。
【0051】
また、前記硬化工程においては、後述する層間絶縁膜形成工程により、前記多孔質絶縁膜上に層間絶縁膜を形成した後、該層間絶縁膜を介して前記多孔質絶縁膜に前記露光光を照射して硬化(キュア)するのが好ましい。この場合、後述する層間絶縁膜が前記露光光を透過可能であるため、該層間絶縁膜及び前記多孔質絶縁膜を同時に硬化(キュア)することができ、製造工程の簡略化を図ることができる。
以上の工程により、前記多孔質絶縁膜に前記露光光(例えば、紫外線)が照射されて硬化(キュア)される。
【0052】
ここで、前記露光光として紫外線を用いた、前記硬化工程の一例を、図面を参照しながら説明する。
図1に、多孔質絶縁膜1、3及び5と、露光光遮蔽膜2及び4とが交互に積層され、更に銅配線6が形成された状態を示し、前記硬化工程の一例として、最上層に位置する多孔質絶縁膜5に対して紫外線を照射する態様を説明する。
前記硬化工程においては、紫外線の被照射対象(紫外線が照射される多孔質絶縁膜)5に対して紫外線を照射して、硬化(キュア)を行う。このとき、被照射対象5の下層に位置し、本発明の前記露光光遮蔽膜形成用材料を用いて形成された露光光遮蔽膜4が、紫外線を吸収することにより、被照射対象5よりも下層に位置する多孔質絶縁膜3への紫外線の到達が抑制される。また、露光光遮蔽膜4、及び多孔質絶縁膜3よりも更に下層に位置する、露光光遮蔽膜2により、多孔質絶縁膜3への紫外線の到達が抑制される。このため、被照射対象5に対する硬化(キュア)により生じる、被照射対象5よりも下層に位置する多孔質絶縁膜の膜減りや配線間の寄生容量の上昇を効果的に抑制することができ、高性能で信頼性の高い多層配線が得られる。
【0053】
<配線形成工程>
前記配線形成工程は、配線を形成する工程である。
前記多層配線を形成する場合、前記配線形成工程は、スルービア形成工程、導体メッキ工程などの適宜選択したその他の工程を含むのが好ましい。
【0054】
−スルービア形成工程−
前記スルービア形成工程は、前記被加工面上に形成された前記多孔質絶縁膜の最上層に形成される配線と接続するためにスルービアを形成する工程である。
前記スルービアの形成は、例えば、前記スルービア部分に適当な露光量のレーザー光を照射することにより行う。
前記レーザー光を照射するレーザーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、炭酸ガスレーザー、エキシマレーザー、YAGレーザーなどが挙げられる。
【0055】
−導体メッキ工程−
前記導体メッキ工程は、前記被加工面上に形成された前記多孔質絶縁膜上に、配線前駆体としての導体を全面に被覆し、導体メッキ層を形成する工程である。
前記導体メッキの方法としては、例えば、無電解メッキ、電解メッキなどの常用メッキ法を用いて行うことができる。
【0056】
前記配線の形成は、前記導体メッキ工程により形成された前記導体メッキ層を、所望の配線パターンに従ってエッチングする。
前記エッチングの方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、常用のエッチング法を使用することができる。
【0057】
以上の工程により、前記配線が形成される。
前記露光光遮蔽膜形成工程、前記多孔質絶縁膜形成工程、前記硬化工程及び前記配線形成工程(前記スルービア形成工程、前記導体メッキ工程を含む)の一連の工程は、必要に応じて繰り返し行うことにより、回路の集積度の高い多層配線を製造することができる。
【0058】
<層間絶縁膜形成工程>
前記層間絶縁膜形成工程は、前記多孔質絶縁膜形成工程の後に、前記多孔質絶縁膜上に紫外線を透過可能な層間絶縁膜を形成する工程である。
なお、前記層間絶縁膜の詳細については、本発明の上記多層配線の説明において上述した通りであり、例えば、プラズマCVD法により形成されたCarbon Doped SiO2膜、SiC:H膜、SiC:N膜、SiC:O:H膜、及びSiO2膜や、スピンコート法により形成された有機SOG及び無機SOGなどが挙げられる。
形成する前記層間絶縁膜の材料、形状、構造、厚み、密度などについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記厚みとしては、5〜300nmが好ましく、5〜180nmがより好ましい。
前記厚みが5nm未満であると、前記露光光による前記層間絶縁膜へのダメージの付与が著しくなることがあり、300nmを超えると、膜の上下でキュアの進行度合いに違いが生じることがある。
また、前記密度としては、1〜3g/cm3が好ましく、1〜2.5g/cm3がより好ましい。
前記密度が、1g/cm3未満であると、膜強度が著しく低下することがあり、3g/cm3を超えると、前記層間絶縁膜を低誘電率に維持することが困難となることがある。
【0059】
<熱処理工程>
本発明の前記多層配線の製造方法においては、前記露光光遮蔽膜、前記多孔質絶縁膜、及び前記層間絶縁膜を、この順に積層する際、それぞれの膜を塗布により形成した後、積層する前に熱処理を行うのが好ましい。この場合、これらの膜の強度を向上させることができる。
前記熱処理の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ソフトベークが好ましく、その温度としては、80〜380℃が好ましい。
前記熱処理は、赤外分光法により測定した各膜の架橋率が、10〜90%となるように行うのが好ましい。
前記架橋率が前記数値範囲内であると、各膜の界面における密着性を向上させることができる。一方、前記架橋率が、10%未満であると、塗布溶剤により下層に位置する膜が溶解してしまうことがあり、90%を超えると、前記層間絶縁膜を低誘電率に維持することが困難となることがある。
【0060】
本発明の多層配線の製造方法は、各種分野において好適に用いることができるが、本発明の多層配線の製造に特に好適に用いることができる。
本発明の多層配線は、紫外線吸収性に優れた本発明の前記露光光遮蔽膜形成用材料を用いて形成された露光光遮蔽膜を有するので、硬化(キュア)時に紫外線の被照射対象である多孔質絶縁膜よりも下層に位置する多孔質絶縁膜への紫外線の到達が阻止され、該多孔質絶縁膜の膜減りなどの発生が抑制される。また、多孔質絶縁膜は誘電率が低いため、寄生容量が低減され、信号伝播速度の高速化が可能であり、応答速度の高速化が要求される、半導体集積回路等の半導体装置に好適であり、以下の本発明の半導体装置に特に好適である。
【0061】
(半導体装置)
本発明の半導体装置は、本発明の前記多層配線を少なくとも有してなり、更に必要に応じて適宜選択した、その他の部材を有してなる。
【0062】
前記半導体装置においては、前記露光光遮蔽膜、前記多孔質絶縁膜、及び前記配線層を少なくとも有する前記多層配線を有する限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記その他の部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ゲート電極、ドレイン電極、ソース電極等の各種半導体装置における一般的な構成部材が挙げられる。
本発明の前記半導体装置を製造する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、後述する本発明の半導体装置の製造方法が好適である。
【0063】
本発明の半導体装置は、本発明の前記露光光遮蔽膜形成用材料用いて形成された露光光遮蔽膜を有する本発明の前記多層配線を少なくとも有する。本発明の前記多層配線は、前記露光光遮蔽膜により、該露光光遮蔽膜よりも下層に位置する前記多孔質絶縁膜に到達する露光光、例えば紫外線が効果的に遮蔽され、該多孔質絶縁膜の膜減りなどの発生が抑制される。また、誘電率の低い前記多孔質絶縁膜を有するので、前記配線間の寄生容量の低下と前記配線抵抗の低下とを達成することができ、高速で信頼性の高い半導体装置が得られる。
本発明の半導体装置は、例えば、フラッシュメモリ、DRAM、FRAM、MOSトランジスタ、などに特に好適である。
【0064】
(半導体装置の製造方法)
本発明の半導体装置の製造方法は、多層配線形成工程を少なくとも含み、更に必要に応じて適宜選択した、その他の工程を含む。
前記多層配線形成工程は、被加工面上に、本発明の前記多層配線の製造方法を用いて多層配線を形成する工程である。
前記被加工面及び前記多層配線の製造方法の詳細については、本発明の上記多層配線の製造方法の説明において詳述した通りである。
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ゲート電極、ドレイン電極、ソース電極等の電極形成工程など、一般的な半導体装置の製造方法における各種工程が挙げられる。
【0065】
本発明の半導体装置の製造方法によれば、配線間の寄生容量の低下と前記配線抵抗の低下とを達成することができ、高速で信頼性の高い本発明の前記半導体装置を効率的に製造することができる。
【実施例】
【0066】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
【0067】
(実施例1)
−露光光遮蔽膜形成用材料の合成−
前記構造式(1)で表されるポリカルボシランにおけるR1及びR2の少なくともいずれかをハロゲン化し、前記紫外線を吸収可能な置換基としてのビニル基を含むGrignard試薬と反応させることにより、前記構造式(1)におけるR1及びR2の少なくともいずれかがビニル基で置換されたポリカルボシランを含む露光光遮蔽膜形成用材料を合成した。
【0068】
−多層配線及び半導体装置の製造−
本発明の多層配線及び半導体装置を以下のようにして製造した。まず、図2Aに示すように、半導体基板10に、LOCOS(LOCal Oxidation of Silicon)法により素子分離膜12を形成した。素子分離膜12により、素子領域14が画定された。なお、半導体基板10としては、シリコン基板を用いた。
次いで、素子領域14上に、ゲート絶縁膜16を介してゲート電極18を形成した。次に、ゲート電極18の側面に、サイドウォール絶縁膜20を形成した。更に、サイドフォール絶縁膜20及びゲート電極18をマスクとして、半導体基板10内に、ドーパント不純物を導入することにより、ゲート電極18の両側の半導体基板10内に、ソース/ドレイン拡散層22を形成した。その結果、ゲート電極18とソース/ドレイン拡散層22とを有するトランジスタ24が形成された。
図2Bに示すように、トランジスタ24が形成された半導体基板10の全面に、CVD法により、シリコン酸化膜からなる層間絶縁膜26を形成した。そして、層間絶縁膜26上に、プラズマCVD法により形成したSiN膜からなる膜厚50nmのストッパ膜28を形成した。なお、ストッパ膜28は、後述する工程において、化学的機械研磨法(CMP)によりタングステン膜34等を研磨する際にはストッパとして機能し(図2C参照)、多孔質絶縁膜38等に溝46を形成する際には、エッチングストッパとして機能する(図2F参照)。次いで、フォトグラフィ技術を用いて、ソース/ドレイン拡散層22に達するコンタクトホール30を形成した。
次に、全面にスパッタ法により膜厚50nmのTiN膜からなる密着層32を形成した。なお、密着層32により、後述する導体プラグ34の下地に対する密着性を確保することができる。次いで、密着層32の全面に、CVD法により膜厚1μmのタングステン膜34を形成した後、化学的機械研磨法(CMP)によりストッパ膜28の表面が露出するまで、密着層32及びタングステン膜34を研磨した。その結果、図2Cに示すように、コンタクトホール30内に、タングステンからなる導体プラグ34が埋め込まれた。
【0069】
次いで、図2Dに示すように、全面に、合成した前記露光光遮蔽膜形成用材料を用いて、膜厚30nmの露光光遮蔽膜(第1の層間絶縁膜)36を形成した。また、露光光遮蔽膜36を、赤外分光分析(IR)を用いて吸収ピークを測定したところ、二重結合の存在が確認された。
その後、露光光遮蔽膜36の全面に、多孔質シリカからなる多孔質絶縁膜(第2の層間絶縁膜)38を厚みが160nmとなるように形成した。そして、多孔質絶縁膜38に紫外線を照射し、硬化(キュア)を行った。
次に、図2Eに示すように、多孔質絶縁膜38が形成された半導体基板10上の全面に、合成した前記露光光遮蔽膜形成材料を用いて、膜厚30nmの露光光遮蔽膜40を形成した。
【0070】
次いで、図2Fに示すように、露光光遮蔽膜40の全面に、スピンコート法を用いて、フォトレジスト膜42を形成した。そして、フォトリソグラフィ技術を用い、フォトレジスト膜42に開口部44を形成した。ここで、開口部44は、後述する第1層目の配線(第1金属配線層)50(図2G参照)を形成するためのものであり、配線幅100nm、配線間隔100nmとなるような寸法の開口を有する。
そして、フォトレジスト膜42をマスクとして、露光光遮蔽膜40、多孔質絶縁膜38、及び露光光遮蔽膜36に対してエッチング処理を行った。なお、エッチング処理は、CF4ガス及びCHF3ガスを原料としたフッ素プラズマを用いて行った。このとき、ストッパ膜28が、エッチングストッパとして機能した。このようにして、露光光遮蔽膜40、多孔質絶縁膜38及び露光光遮蔽膜36に、配線を埋め込むための溝(トレンチ)46が形成された。なお、導体プラグ34の上面は、溝46内に露出した状態となった。その後、フォトレジスト膜42を剥離した。
次いで、全面にスパッタ法により膜厚10nmのTaNからなるバリア膜(図示せず)を形成した。なお、バリア膜は、後述する配線中のCuが、多孔質絶縁膜38中に拡散するのを防止する機能を有する。次に、全面にスパッタ法により膜厚10nmのCuからなるシード膜(図示せず)を形成した。なお、シード膜は、電気めっき法によりCuからなる配線を形成する際、電極として機能する。このようにして、図2Gに示すように、バリア膜とシード膜とからなる積層膜48を形成した。
次に、電気めっき法により膜厚600nmのCu膜50を形成した。
更に、化学的機械研磨法(CMP)により露光光遮蔽膜40の表面が露出するまで、Cu膜50及び積層膜48を研磨した。その結果、溝46内に、Cuからなる配線50が埋め込まれた。以上の配線50の製造プロセスは、シングルダマシン法と称される工法である。
続いて、合成した前記露光光遮蔽膜形成用材料を用いて、露光光遮蔽膜36及び40の形成と同様な方法により、膜厚30nmの露光光遮蔽膜52を形成した。
【0071】
次いで、図2Hに示すように、多孔質絶縁膜38の形成と同様な方法により、膜厚180nmの多孔質絶縁膜54を形成した。続いて、多孔質絶縁膜54に紫外線を照射し、キュアを行った。なお、紫外線の照射は、多孔質絶縁膜38に対するキュアと同様な条件で行った。
次に、多孔質絶縁膜54上の全面に、合成した前記露光光遮蔽膜形成用材料を用いて、露光光遮蔽膜36、40及び52の形成と同様な方法により、膜厚30nmの露光光遮蔽膜56を形成した。
次に、図2Iに示すように、多孔質絶縁膜38の形成と同様な方法により、膜厚160nmの多孔質絶縁膜58を形成した。続いて、多孔質絶縁膜58に紫外線を照射し、キュアを行った。なお、紫外線の照射は、多孔質絶縁膜38に対するキュアと同様な条件で行った。続いて、多孔質絶縁膜58上の全面に、合成した前記露光光遮蔽膜形成用材料を用いて、露光光遮蔽膜36、40及び52の形成と同様な方法により、膜厚30nmの露光光遮蔽膜60を形成した。
【0072】
次いで、図2Jに示すように、全面にスピンコート法によりフォトレジスト膜62を形成した。そして、フォトリソグラフィ技術を用いて、フォトレジスト膜62に開口部64を形成した。ここで、開口部64は、第1層目の配線(第1金属配線層)50に達するコンタクトホール66を形成するためのものである。続いて、フォトレジスト膜62をマスクとして、露光光遮蔽膜60、多孔質絶縁膜58、露光光遮蔽膜56、多孔質絶縁膜54、及び露光光遮蔽膜52に対してエッチング処理を行った。なお、エッチング処理は、CF4ガス及びCHF3ガスを原料としたフッ素プラズマを用い、エッチングガスの組成比やエッチングの際の圧力等を適宜変化させることにより行った。このようにして、配線50に達するコンタクトホール66が形成された。その後、フォトレジスト膜62を剥離した。
【0073】
次いで、図2Kに示すように、全面にスピンコート法により、フォトレジスト膜68を形成した。続いて、フォトリソグラフィ技術を用いて、フォトレジスト膜68に開口部70を形成した。ここで、開口部70は、第2層目の配線(第2金属配線層)76a(図2L参照)を形成するためのものである。
次に、フォトレジスト膜68をマスクとして、露光光遮蔽膜60、多孔質絶縁膜58及び露光光遮蔽膜56に対してエッチング処理を行った。なお、エッチング処理には、CF4ガス及びCHF3ガスを原料としたフッ素プラズマを用いた。このようにして、露光光遮蔽膜60、多孔質絶縁膜58及び露光光遮蔽膜56に配線76aを埋め込むための溝72を形成された。溝72は、コンタクトホール66と繋がった状態となった。
次いで、全面に、スパッタ法により膜厚10nmのTaNからなるバリア膜(図示せず)を形成した。なお、バリア膜は、後述する配線76a及び導体プラグ76b中のCuが多孔質絶縁膜54及び58に拡散するのを防止する機能を有する。次に、全面にスパッタ法により膜厚10nmのCuからなるシード膜(図示せず)を形成した。なお、シード膜は、電気めっき法によりCuからなる配線76a及び導体プラグ76bを形成する際、電極として機能する。このようにして、バリア膜とシード膜とからなる積層膜74を形成した。
次に、電気めっき法により膜厚1,400nmのCu膜76を形成した。
更に、化学的機械研磨法(CMP)により露光光遮蔽膜60の表面が露出するまで、Cu膜76及び積層膜74を研磨した。その結果、コンタクトホール66内に、Cuからなる導体プラグ76bが埋め込まれるとともに、溝72内にCuからなる配線76aが埋め込まれた。なお、導体プラグ76bと配線76aとは一体に形成された。以上の導体プラグ76b及び配線76aを一括して形成する製造プロセスは、デュアルダマシン法と称される工法である。
次に、全面に、合成した前記露光光遮蔽膜形成用材料を用いて、露光光遮蔽膜36、40及び52の形成と同様な方法により、膜厚30nmの露光光遮蔽膜78を形成した。
この後、これらの工程を適宜繰り返すことにより、図示しない第3層目の配線(第3金属配線層)を形成し、半導体装置を製造した。
以上のようにして、100万個の導体プラグが電気的に直列に接続されるように配線及び導体プラグを形成し、歩留りを測定したところ、91%であった。また、実効的な比誘電率を層間容量により算出したところ、2.6であった。更に200℃の高温にて3,000時間放置後の配線抵抗を、抵抗測定器(「HP4284A」;アジレント製)を用いて測定したところ、抵抗上昇は観られなかった。
また、露光光遮蔽膜の下層に位置する多孔質絶縁膜の膜減り量を、分光エリプソメータ(「GES500」;SOPRA社製)により測定したところ、膜減り量は0nmであり、膜減りが生じていないことが判った。これらの結果を表1に示す。
【0074】
(実施例2〜12)
実施例1において、前記露光光遮蔽膜形成用材料を、それぞれ下記表1に示す露光光遮蔽膜形成用材料に変えて、第1の層間絶縁膜としての露光光遮蔽膜を形成した以外は、実施例1と同様にして、半導体装置を製造した。また、製造歩留り、実効誘電率、及び露光光遮蔽膜の下層に位置する多孔質絶縁膜の膜減り量を、実施例1と同様にして測定した。結果を表1に併せて示す。
なお、実施例2、4、6、8、10及び12においては、第2の層間絶縁膜としての多孔質絶縁膜上に、第3の層間絶縁膜として、紫外線を透過可能なSiC膜を形成し、該SiC膜を介して紫外線を照射することにより多孔質絶縁膜のキュアを行った。
【0075】
(比較例1〜4)
実施例1において、前記露光光遮蔽膜形成用材料を、それぞれ下記表1に示すように、シリコン化合物の一部の官能基を紫外線を吸収可能な置換基で置換しないで用い、第1の層間絶縁膜としての露光光遮蔽膜を形成した以外は、実施例1と同様にして、半導体装置を製造した。そして、200℃の高温にて3,000時間放置後の配線抵抗を、抵抗測定器(「HP4284A」;アジレント製)を用いて測定したところ、抵抗上昇が観られた。
また、製造歩留り、実効誘電率、及び露光光遮蔽膜の下層に位置する多孔質絶縁膜の膜減り量を、実施例1と同様にして測定した。結果を表1に併せて示す。
なお、比較例2及び4においては、第2の層間絶縁膜としての多孔質絶縁膜上に、第3の層間絶縁膜として、紫外線を透過可能なSiC膜を形成し、該SiC膜を介して多孔質絶縁膜のキュアを行った。
【0076】
【表1】
【0077】
表1より、実施例1〜12では、紫外線を吸収可能な置換基で置換されたシリコン化合物を含む本発明の露光光遮蔽膜形成用材料を用いて露光光遮蔽膜を形成したので、被照射対象(紫外線を照射する多孔質絶縁膜)よりも下層に位置する多孔質絶縁膜への紫外線の到達が阻止され、該下層多孔質絶縁膜の膜減りが全くなく、得られた半導体装置の実効誘電率は全体的に低く、しかも歩留りが高いことが判った。一方、紫外線を吸収可能な置換基で置換しないで単にシリコン化合物を用いて膜形成を行った比較例1〜4では、下層多孔質絶縁膜の膜減りが観られ、得られた半導体装置の実効誘電率は高く、歩留りが低いことが判った。
【0078】
本発明の好ましい態様を付記すると、以下の通りである。
(付記1) 下記構造式(1)で表されるシリコン化合物、及び下記構造式(2)で表されるシリコン化合物の少なくともいずれかを含んでなり、
下記構造式(1)及び下記構造式(2)における、R1及びR2の少なくともいずれかが、露光光を吸収可能な置換基で置換されていることを特徴とする露光光遮蔽膜形成用材料。
【化7】
前記構造式(1)中、R1及びR2は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、並びに置換又は非置換の、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、及びアリール基のいずれかを表す。nは2以上の整数を表す。
【化8】
前記構造式(2)中、R1、R2及びR3は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、少なくとも1つが水素原子を表し、それ以外は、それぞれ、置換又は非置換の、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、及びアリール基のいずれかを表す。nは2以上の整数を表す。
(付記2) 露光光が紫外線である付記1に記載の露光光遮蔽膜形成用材料。
(付記3) 紫外線を吸収可能な置換基が、二重結合、三重結合、及びヘテロ原子を含んでいてもよいアリール基の少なくともいずれかを有する付記2に記載の露光光遮蔽膜形成用材料。
(付記4) 紫外線を吸収可能な置換基が、ビニル基、アクロイル基、ベンジル基、フェニル基、カルボニル基、カルボキシル基、ジアゾ基、アジド基、シンナモイル基、アクリレート基、シンナミリデン基、シアノシンナミリデン基、フリルペンタジエン基、及びp−フェニレンジアクリレート基から選択される少なくとも1種である付記3に記載の露光光遮蔽膜形成用材料。
(付記5) 構造式(1)におけるnが、10〜1,000である付記1から4のいずれかに記載の露光光遮蔽膜形成用材料。
(付記6) 構造式(2)で表されるシリコン化合物の数平均分子量が、100〜50,000である付記1から5のいずれかに記載の露光光遮蔽膜形成用材料。
(付記7) 付記1から6のいずれかに記載の露光光遮蔽膜形成用材料を用いて形成されたことを特徴とする露光光遮蔽膜。
(付記8) 露光光遮蔽膜と多孔質絶縁膜と配線層とを少なくとも有してなり、
前記露光光遮蔽膜が、付記1から6のいずれかに記載の露光光遮蔽膜形成用材料を用いて形成されたことを特徴とする多層配線。
(付記9) 露光光遮蔽膜と多孔質絶縁膜とが接触配置された付記8に記載の多層配線。
(付記10) 露光光遮蔽膜の厚みが5〜70nmである付記8から9のいずれかに記載の多層配線。
(付記11) 付記8から10のいずれかに記載の多層配線を製造する方法であって、被加工面上に付記1から6のいずれかに記載の露光光遮蔽膜形成用材料を用いて露光光遮蔽膜を形成する露光光遮蔽膜形成工程と、該露光光遮蔽膜上に多孔質絶縁膜を形成する多孔質絶縁膜形成工程と、該多孔質絶縁膜に露光光を照射して硬化する硬化工程と、配線を形成する配線形成工程とを少なくとも含むことを特徴とする多層配線の製造方法。
(付記12) 多孔質絶縁膜形成工程の後に、多孔質絶縁膜上に露光光を透過可能な層間絶縁膜を形成する層間絶縁膜形成工程を更に含み、
硬化工程が、前記層間絶縁膜を介して前記多孔質絶縁膜に前記露光光を照射する付記11に記載の多層配線の製造方法。
(付記13) 層間絶縁膜の密度が1〜3g/cm3であり、かつ厚みが5〜300nmである付記12に記載の多層配線の製造方法。
(付記14) 露光光が紫外線である付記11から13のいずれかに記載の多層配線の製造方法。
(付記15) 多孔質絶縁膜が、塗布用のシリカクラスター前駆体を用いて形成される付記11から14のいずれかに記載の多層配線の製造方法。
(付記16) 硬化工程が、50〜470℃の温度範囲内にて、少なくとも一の温度により行われる付記11から15のいずれかに記載の多層配線の製造方法。
(付記17) 露光光遮蔽膜、多孔質絶縁膜、及び層間絶縁膜を、この順に積層する際、それぞれの膜を塗布により形成した後、積層する前に熱処理を行う付記12から16のいずれかに記載の多層配線の製造方法。
(付記18) 熱処理が、赤外分光法により測定した各膜の架橋率が10〜90%となるように行われる付記17に記載の多層配線の製造方法。
(付記19) 付記8から10のいずれかに記載の多層配線を少なくとも有することを特徴とする半導体装置。
(付記20) 付記19に記載の半導体装置を製造する方法であって、被加工面上に、付記12から18のいずれかに記載の多層配線の製造方法を用いて多層配線を形成する多層配線形成工程を少なくとも含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の露光光遮蔽膜形成用材料は、露光光、例えば紫外線の吸収性に優れるので、露光光遮蔽機能を発現する本発明の露光光遮蔽膜の形成に好適に使用することができ、本発明の多層配線及び本発明の半導体装置の製造に好適に使用することができる。
本発明の多層配線の製造方法は、多孔質絶縁膜の性能を損なうことなく誘電率を低減可能で、製造歩留りの向上を図ることができ、本発明の多層配線の製造に好適に用いることができる。
本発明の多層配線は、信号伝播速度の高速化が可能であり、応答速度の高速化が要求される半導体集積回路等に特に好適である。
本発明の半導体装置は、配線間の寄生容量の低下と配線抵抗の低下とが達成され、高速で信頼性が高く、フラッシュメモリ、DRAM、FRAM、MOSトランジスタなどに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】図1は、本発明の露光光遮蔽膜形成用材料を用いて形成された露光光遮蔽膜を有する多層配線の製造方法の一例における、硬化工程を説明するための工程図である。
【図2A】図2Aは、本発明の露光光遮蔽膜形成用材料を用いて形成された露光光遮蔽膜を有する本発明の半導体装置を製造する方法の一例を示す工程図(その1)である。
【図2B】図2Bは、本発明の露光光遮蔽膜形成用材料を用いて形成された露光光遮蔽膜を有する本発明の半導体装置を製造する方法の一例を示す工程図(その2)である。
【図2C】図2Cは、本発明の露光光遮蔽膜形成用材料を用いて形成された露光光遮蔽膜を有する本発明の半導体装置を製造する方法の一例を示す工程図(その3)である。
【図2D】図2Dは、本発明の露光光遮蔽膜形成用材料を用いて形成された露光光遮蔽膜を有する本発明の半導体装置を製造する方法の一例を示す工程図(その4)である。
【図2E】図2Eは、本発明の露光光遮蔽膜形成用材料を用いて形成された露光光遮蔽膜を有する本発明の半導体装置を製造する方法の一例を示す工程図(その5)である。
【図2F】図2Fは、本発明の露光光遮蔽膜形成用材料を用いて形成された露光光遮蔽膜を有する本発明の半導体装置を製造する方法の一例を示す工程図(その6)である。
【図2G】図2Gは、本発明の露光光遮蔽膜形成用材料を用いて形成された露光光遮蔽膜を有する本発明の半導体装置を製造する方法の一例を示す工程図(その7)である。
【図2H】図2Hは、本発明の露光光遮蔽膜形成用材料を用いて形成された露光光遮蔽膜を有する本発明の半導体装置を製造する方法の一例を示す工程図(その8)である。
【図2I】図2Iは、本発明の露光光遮蔽膜形成用材料を用いて形成された露光光遮蔽膜を有する本発明の半導体装置を製造する方法の一例を示す工程図(その9)である。
【図2J】図2Jは、本発明の露光光遮蔽膜形成用材料を用いて形成された露光光遮蔽膜を有する本発明の半導体装置を製造する方法の一例を示す工程図(その10)である。
【図2K】図2Kは、本発明の露光光遮蔽膜形成用材料を用いて形成された露光光遮蔽膜を有する本発明の半導体装置を製造する方法の一例を示す工程図(その11)である。
【図2L】図2Lは、本発明の露光光遮蔽膜形成用材料を用いて形成された露光光遮蔽膜を有する本発明の半導体装置を製造する方法の一例を示す工程図(その12)である。
【符号の説明】
【0081】
1,3,5 多孔質絶縁膜
2,4 露光光遮蔽膜
6 銅配線
10 半導体基板
18 ゲート電極
22 ソース/ドレイン拡散層
24 トランジスタ
26,38 層間絶縁膜
28 ストッパ膜
32 密着層
34 タングステン膜(導体プラグ)
36,40,52,56,60,78 露光光遮蔽膜
38,54,58 多孔質絶縁膜
48 積層膜
50,76a 配線
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路における多層配線に好適で、多孔質絶縁膜に対する露光光、例えば紫外線を効果的に遮蔽可能な露光光遮蔽膜、該露光光遮蔽膜の形成に好適に使用可能な露光光遮蔽膜形成用材料、前記露光光遮蔽膜を有する多層配線及びその製造方法、並びに該多層配線を有する半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路の集積度の増加及び素子密度の向上に伴い、特に半導体素子の多層化への要求が高まっている。この半導体集積回路の高集積化に伴い、配線間隔は更に狭くなることから、配線間の容量増大による配線遅延が問題となっている。ここで、前記配線遅延(T)は、次式、T∝CR、で表され、配線抵抗(R)及び配線間の容量(C)に影響を受ける。そして、前記誘電率(ε)と前記配線間の容量(C)との関係は、次式、C=ε0εr・S/d、で表される。なお、該式において、Sは電極面積、ε0は真空の誘電率、εrは絶縁膜の誘電率、dは配線間隔をそれぞれ表す。前記配線間の容量(C)は、配線厚を薄くし電極面積を小さくすることで低減できるものの、配線厚を薄くすると、更に前記配線抵抗(R)の上昇を招くために高速化を達成し得ない。したがって、前記配線遅延(T)を小さくし、高速化を図るためには、絶縁膜の低誘電率化が有効な手段となる。
【0003】
近時、半導体集積回路の集積度の増加及び素子密度の向上に伴い、多層配線構造を有する半導体装置においては、金属配線間隔が狭くなる傾向にあり、静電誘導による金属配線のインピーダンスが増大し、応答速度の遅延や消費電力の増大が懸念されている。このため、半導体基板と金属配線との間、又は金属配線間に設けられる層間絶縁膜の比誘電率をできる限り小さくすることが必要となる。
【0004】
従来の絶縁膜の材料としては、二酸化珪素(SiO2)、窒化珪素(SiN)、燐珪酸ガラス(PSG)等の無機材料、又はポリイミド等の有機系高分子材料が用いられている。しかし、半導体装置で多用されているCVD−SiO2膜の誘電率は4程度と高いものである。また、低誘電率CVD膜として検討されているSiOF膜は、誘電率が約3.3〜3.5であるが、吸湿性が高く、誘電率が経時的に上昇してしまうという問題がある。更に、多孔質化したシリカ系低誘電率膜が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この多孔質化被膜の製造方法は、熱分解性成分を加熱し、蒸発乃至分解させて孔を形成する工程を有するため、一層の低誘電率化が可能となる。しかし、前記多孔質化被膜は、現状では空孔サイズが10nm以上と大きいことから、誘電率を低減するために空隙率を高くすると、吸湿による誘電率上昇や膜強度の低下が生じるという問題がある。
【0005】
そこで、現在では、成膜後に紫外線、プラズマ、電子線等を照射することにより絶縁膜を硬化(キュア)し、高強度化する方法が検討されている。しかし、紫外線及びプラズマに関しては、被照射対象である絶縁膜よりも下層にまで照射光が到達してしまい、キュアの累積により、下層の層間絶縁膜に膜減り等が発生することが懸念され、電子線に関しては、照射エネルギーが特に強く、最下層に位置するトランジスタへの影響が懸念されている。
【0006】
【特許文献1】特開2004−153147号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来における前記問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、露光光、特に紫外線の吸収性が高く、前記露光光の被照射対象よりも下層に位置する多孔質絶縁膜に到達する前記露光光を効果的に遮蔽し、該多孔質絶縁膜の性能を損なうことなく誘電率を低減可能な露光光遮蔽膜、該露光光照射膜の形成に好適な露光光遮蔽膜形成用材料、配線間の寄生容量が低減可能な多層配線及びその効率的かつ量産性の高い製造方法、並びに該多層配線を有する高速で信頼性の高い半導体装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段としては、後述する付記に列挙した通りである。即ち、
本発明の露光光遮蔽膜形成用材料は、下記構造式(1)で表されるシリコン化合物、及び下記構造式(2)で表されるシリコン化合物の少なくともいずれかを含んでなり、
下記構造式(1)及び下記構造式(2)における、R1及びR2の少なくともいずれかが、露光光を吸収可能な置換基で置換されていることを特徴とする。
【化3】
前記構造式(1)中、R1及びR2は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、並びに置換又は非置換の、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、及びアリール基のいずれかを表す。nは2以上の整数を表す。
【化4】
前記構造式(2)中、R1、R2及びR3は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、少なくとも1つが水素原子を表し、それ以外は、それぞれ、置換又は非置換の、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、及びアリール基のいずれかを表す。nは2以上の整数を表す。
該露光光遮蔽膜形成用材料においては、前記構造式(1)で表されるシリコン化合物、及び前記構造式(2)で表されるシリコン化合物の一部の官能基が、露光光、例えば紫外線を吸収可能な置換基で置換されているので、例えば紫外線の吸収性に優れる。このため、本発明の前記露光光遮蔽膜形成用材料を用いて形成した露光光遮蔽膜は露光光遮蔽機能を発現し、多層配線、各種半導体装置などに好適に使用することができ、本発明の多層配線及び本発明の半導体装置に特に好適に使用することができる。
【0009】
本発明の多層配線は、露光光遮蔽膜と多孔質絶縁膜と配線層とを少なくとも有し、前記露光光遮蔽膜が、本発明の前記露光光遮蔽膜形成用材料を用いて形成されているので、前記露光光遮蔽膜は露光光、例えば紫外線の吸収性に優れ、紫外線遮蔽機能を発現する。例えば、多孔質絶縁膜上に露光光遮蔽膜が形成されると、前記多孔質絶縁膜への前記露光光、例えば紫外線の到達が阻止される。このため、前記露光光遮蔽膜よりも上層に塗設した多孔質絶縁膜の成膜後に該多孔質絶縁膜に前記露光光、例えば紫外線を照射して硬化(キュア)する際、被照射対象である多孔質絶縁膜よりも下層に位置する多孔質絶縁膜への紫外線の到達が効果的に阻止され、キュアの累積による下層の多孔質絶縁膜へのダメージの累積が低減され、膜減りなどの発生が抑制される。また、前記露光光が、例えば電子線である場合には、下層に位置するトランジスタ等へのダメージが低減される。また、前記多孔質絶縁膜は誘電率が低いため、寄生容量が低減され、信号伝播速度の高速化が可能であり、応答速度の高速化が要求される、IC、LSI等の高集積度の半導体集積回路等に特に好適である。
従来より、絶縁膜の寄生容量による信号伝播速度の低下が知られていたが、半導体デバイスの配線間隔が1μm以上の世代では配線遅延のデバイス全体への影響は少なかった。近時、半導体集積回路が高集積化され、多層配線構造化されるようになり、配線幅・間隔が狭くなり、特に配線間隔が1μm以下では、配線抵抗の上昇と配線間の寄生容量の増大とが問題となってきている。前記半導体集積回路等のデバイスの性能を支配する大きな要素である、前記配線抵抗と前記配線間の寄生容量とによって、該半導体集積回路の多層配線構造における信号伝播速度が決定されることから、該配線抵抗の上昇と該配線間の寄生容量の増大は前記信号伝播速度の低下を招く原因として、克服しなければならない大きな問題である。該信号伝播速度の向上を図るためには、前記配線抵抗の低下と前記配線間の寄生容量(絶縁膜の誘電率)の低下とが必須である。前記配線間の寄生容量は、配線を薄くして断面積を小さくすると低減できるものの、配線を薄くすると前記配線抵抗が上昇してしまう。つまり、前記配線間の寄生容量の低下と前記配線抵抗の低下とは二律背反の関係にあるため、前記信号伝播速度の向上は容易ではない。現在、低誘電率絶縁膜として、多孔質状の塗布型絶縁膜が提案されているが、多孔質であるという性質上、機械的強度が低く、該機械的強度の向上が求められている。機械的強度の強化方法としては、露光光(例えば、紫外線)を照射して硬化(キュア)する方法が挙げられ、その際、本発明の前記露光光遮蔽膜を使用すると、低誘電率で、応答速度の高速化に寄与し得る多孔質絶縁膜の機械的強度を確保しつつ、前記配線間の寄生容量の低下と前記配線抵抗の低下とを達成することができ、前記信号伝播速度の高速化が可能となる。
【0010】
本発明の多層配線の製造方法は、本発明の前記多層配線を製造する方法であって、露光光遮蔽膜形成工程と、多孔質絶縁膜形成工程と、硬化工程と、配線形成工程とを、少なくとも含むことを特徴とする。該多層配線の製造方法では、前記露光光遮蔽膜形成工程において、本発明の前記露光光遮蔽膜形成材料を用いて前記被加工面上に露光光遮蔽膜が形成される。前記多孔質絶縁膜形成工程において、前記露光光遮蔽膜上に前記多孔質絶縁膜が形成される。前記硬化工程において、前記多孔質絶縁膜に露光光が照射されて硬化(キュア)される。前記配線形成工程において、前記配線が形成される。そして、これらの一連の工程を繰り返し行うことにより、多層配線が効率的に形成される。該多層配線の製造方法は、本発明の前記多層配線の製造に特に好適である。
【0011】
本発明の半導体装置は、本発明の前記多層配線を少なくとも有することを特徴とする。該半導体装置においては、本発明の前記多層配線を有するので、前記配線間の寄生容量の低下と前記配線抵抗の低下とが達成され、高速で信頼性の高いフラッシュメモリ、DRAM、FRAM、MOSトランジスタ、などに特に好適である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、露光光、例えば紫外線の吸収性が高く、被照射対象よりも下層に位置する多孔質絶縁膜に到達する前記露光光、例えば紫外線を効果的に遮蔽し、該多孔質絶縁膜の性能を損なうことなく誘電率を低減可能な露光光遮蔽膜、該露光光遮蔽膜の形成に好適な露光光遮蔽膜形成用材料、配線間の寄生容量が低減可能な多層配線及びその効率的かつ量産性の高い製造方法、並びに該多層配線を有する高速で信頼性の高い半導体装置及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(露光光遮蔽膜形成用材料)
本発明の露光光遮蔽膜形成用材料は、下記構造式(1)で表されるシリコン化合物(以下、「ポリカルボシラン」と称することがある)、及び下記構造式(2)で表されるシリコン化合物(以下、「ポリシラザン」と称することがある)の少なくともいずれかを含んでなり、更に必要に応じて、その他の成分等を含んでなり、前記ポリカルボシラン及び前記ポリシラザンは、その一部の官能基が、露光光を吸収可能な置換基で置換されている。
【0014】
【化5】
前記構造式(1)中、R1及びR2は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、並びに置換又は非置換の、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、及びアリール基のいずれかを表す。
nは2以上の整数を表し、10〜1,000が好ましい。nが10未満であると、前記露光光遮蔽膜形成用材料の塗布性に劣ることがあり、1,000を超えると、形成する露光光遮蔽膜の膜厚にムラが生じることがある。
【0015】
【化6】
前記構造式(2)中、R1、R2及びR3は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、少なくとも1つが水素原子を表し、それ以外は、それぞれ、置換又は非置換の、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、及びアリール基のいずれかを表す。
nは2以上の整数を表し、前記構造式(2)で表されるポリシラザンの数平均分子量が、下記数値範囲を充たすのに必要な繰り返し単位数であるのが好ましい。
前記ポリシラザンの数平均分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100〜50,000が好ましい。
前記数平均分子量が、100未満であると、前記露光光遮蔽膜形成用材料の塗布性に劣ることがあり、50,000を超えると、形成する露光光遮蔽膜の膜厚にムラが生じることがある。
【0016】
前記構造式(1)で表されるポリカルボシラン及び前記構造式(2)で表されるポリシラザンにおいては、前記構造式(1)及び(2)中、R1及びR2の少なくともいずれかが、露光光を吸収可能な置換基で置換されていることが必要である。
前記構造式(1)で表されるポリカルボシラン及び前記構造式(2)で表されるポリシラザンにおけるR1及びR2の少なくともいずれかを、前記露光光を吸収可能な置換基で置換する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記R1及び前記R2の少なくともいずれかをハロゲン化し、目的とする置換基を含むGrignard試薬と反応させることにより置換することができる。
【0017】
前記露光光としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、紫外線、プラズマ、電子線などが挙げられるが、多孔質絶縁膜の硬化(キュア)に好適な点で、紫外線が好ましい。
前記露光光が紫外線である場合、前記ポリカルボシラン及び前記ポリシラザンの一部の官能基を紫外線を吸収可能な置換基で置換することにより、前記露光光遮蔽膜形成用材料に、優れた紫外線吸収性能を付与することができる。
【0018】
前記紫外線を吸収可能な置換基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、二重結合、三重結合、及びヘテロ原子を含んでいてもよいアリール基の少なくともいずれかを有するのが好ましく、具体的には、ビニル基、アクロイル基、ベンジル基、フェニル基、カルボニル基、カルボキシル基、ジアゾ基、アジド基、シンナモイル基、アクリレート基、シンナミリデン基、シアノシンナミリデン基、フリルベンタジエン基、p−フェニレンジアクリレート基などが好適に挙げられる。
【0019】
前記露光光遮蔽膜形成用材料における、前記紫外線を吸収可能な置換基、例えば、二重結合、三重結合、及びヘテロ原子を含んでいてもよいアリール基の存在を確認する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、赤外分光分析(IR)を用いて吸収ピークを測定することにより、これらの構造を分析する方法、X線光電子分光法(XPS)により元素の種類、量及び化学的結合状態を分析する方法などにより、これらの存在を確認することができる。
【0020】
前記構造式(1)で表されるポリカルボシラン及び前記構造式(2)で表されるポリシラザンの前記露光光遮蔽膜形成用材料における含有量としては、1種単独で使用する場合及び2種以上を併用する場合のいずれについても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、その全体量で、30〜90質量%が好ましく、40〜80質量%がより好ましい。
前記含有量が、30質量%未満であると、前記露光光の遮蔽効果が不十分となり、前記露光光が下層にまで到達してしまうことがあり、90質量%を超えると、露光光遮蔽膜の誘電率が著しく上昇してしまうことがある。
【0021】
前記その他の成分としては、本発明の効果を害しない限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、溶剤、公知の各種添加剤などが挙げられる。
前記溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シクロヘキサン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、オクタン、デカン、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが挙げられる。
前記その他の成分の前記露光光遮蔽膜形成用材料における含有量としては、前記構造式(1)及び(2)で表されるシリコン化合物の種類や含有量などに応じて適宜決定することができる。
【0022】
本発明の露光光遮蔽膜形成用材料は、前記構造式(1)で表されるシリコン化合物、及び前記構造式(2)で表されるシリコン化合物の少なくともいずれかを含み、これらの一部の官能基が、前記露光光、例えば紫外線を吸収可能な置換基で置換されているので、前記露光光、例えば紫外線の吸収性に優れる。このため、露光光遮蔽機能を発現する露光光遮蔽膜を形成することができ、以下の本発明の多層配線、本発明の半導体装置などに好適に使用することができる。
【0023】
(露光光遮蔽膜)
本発明の露光光遮蔽膜は、本発明の前記露光光遮蔽膜形成用材料を用いて形成されてなる。このため、前記露光光遮蔽膜は、優れた露光光遮蔽機能を発現する。
前記露光光遮蔽膜は、該露光光遮蔽膜よりも上層に位置する多孔質絶縁膜に露光光、例えば紫外線を照射して硬化(キュア)する際に、被照射対象である多孔質絶縁膜よりも下層(前記露光光遮蔽膜よりも下層)に位置する多孔質絶縁膜への前記露光光、例えば紫外線の到達を効果的に阻止し、キュアの累積による下層の多孔質絶縁膜へのダメージの累積を低減し、膜減りを抑制することができる。
【0024】
(多層配線)
本発明の多層配線は、露光光遮蔽膜と多孔質絶縁膜と配線層とを少なくとも有してなり、更に必要に応じて適宜選択した、その他の部材を有してなる。
【0025】
−露光光遮蔽膜−
前記露光光遮蔽膜は、本発明の前記露光光遮蔽膜形成用材料を用いて形成される。このため、前記露光光遮蔽膜は、優れた露光光遮蔽機能を発現する。
前記露光光遮蔽膜は、該露光光遮蔽膜よりも上層に位置する多孔質絶縁膜に露光光、例えば紫外線を照射して硬化(キュア)する際に、被照射対象である多孔質絶縁膜よりも下層(前記露光光遮蔽膜よりも下層)に位置する多孔質絶縁膜への前記露光光、例えば紫外線の到達を効果的に阻止し、キュアの累積による下層の多孔質絶縁膜へのダメージの累積を低減することができる。
なお、前記露光光遮蔽膜形成用材料の詳細については、本発明の上記露光光遮蔽膜形成用材料の説明において上述した通りである。
【0026】
前記露光光遮蔽膜の配設位置としては、前記露光光を照射する対象(被照射対象)である多孔質絶縁膜よりも下層に設ける限り、目的に応じて適宜選択することができ、前記多孔質絶縁膜と接触配置してもよいし、他の部材を介して配置してもよいが、前記被照射対象以外の部材への前記露光光による悪影響を防止する点で、接触配置するのが好ましい。
【0027】
前記露光光遮蔽膜の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5〜70nmが好ましく、5〜50nmがより好ましい。
前記厚みが、5nm未満であると、露光光遮蔽機能を発揮しないことがあるほか、加工上、下層に位置する多孔質絶縁膜にダメージを与えることがあり、70nmを超えると、最終的な実効誘電率が上昇することがある。
【0028】
−多孔質絶縁膜−
前記多孔質絶縁膜としては、該膜内部に空孔を有する限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スピンコート法により形成された多孔質シリカ膜、Carbon Doped SiO2膜、該Carbon Doped SiO2膜に熱分解性化合物を添加してポアを形成したPorous Carbon Doped SiO2膜、有機多孔質膜などが挙げられる。これらの中でも、ポアの制御や密度の制御が容易な点で、スピンコート法により形成された多孔質シリカ膜が好ましい。
前記スピンコート法の場合、その条件としては例えば、回転数が100〜10,000rpm程度であり、800〜5,000rpmが好ましく、時間が1秒〜10分間程度であり、10〜90秒間が好ましい。
【0029】
前記多孔質絶縁膜の材料、構造、厚み、誘電率などについては、目的に応じて適宜選択することができる。
前記多孔質絶縁膜が前記多孔質シリカ膜である場合、その材料としては、例えば、テトラアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、メチルトリアルコキシシラン、エチルトリアルコキシシラン、プロピルトリアルコキシシラン、フェニルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシラン、アリルトリアルコキシシラン、グリシジルトリアルコキシシラン、ジアルコキシシラン、ジメチルジアルコキシシラン、ジエチルジアルコキシシラン、ジプロピルジアルコキシシラン、ジフェニルジアルコキシシラン、ジビニルジアルコキシシラン、ジアリルジアルコキシシラン、ジグリシジルジアルコキシシラン、フェニルメチルジアルコキシシラン、フェニルエチルジアルコキシシラン、フェニルプロピルトリアルコキシシラン、フェニルビニルジアルコキシシラン、フェニルアリルジアルコキシシラン、フェニルグリシジルジアルコキシシラン、メチルビニルジアルコキシシラン、エチルビニルジアルコキシシラン、プロピルビニルジアルコキシシランなどの加水分解及び縮重合反応により形成したポリマーが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、これらのポリマーに熱分解性化合物などを添加して加熱することにより、細孔が形成された多孔質絶縁膜を得ることができる。
前記熱分解性化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリル樹脂などが挙げられる。
【0030】
前記多孔質絶縁膜が、Carbon Doped SiO2膜である場合、その材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、二酸化炭素、及び例えば、ヘキサメチルジシロキサン等のアルキル基を有するシロキサンモノマーが好適に挙げられる。
前記多孔質絶縁膜が、Porous Carbon Doped SiO2膜である場合、その材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、二酸化炭素、熱分解性の原子団(熱分解性化合物)、及び酸化分解性の原子団(酸化分解性化合物)が挙げられ、具体的には、例えば、ヘキサメチルジシロキサン等のアルキル基を有するシロキサンモノマー、ジフェニルメチルシラン等のフェニル基を有するシラン化合物が好適に挙げられる。
【0031】
前記多孔質絶縁膜が、有機多孔質膜である場合、その材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、熱分解性有機化合物を含むポリマーが挙げられる。
前記熱分解性有機化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、200〜300℃で熱分解するものが好ましく、例えば、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリルオリゴマー、エチレンオリゴマー、プロピレンオリゴマーなどが挙げられる。そして、これらを含むポリアリールエーテルポリマーを溶媒で希釈することにより使用することができる。該溶媒としては、例えば、シクロヘキサノンを用いることができる。
【0032】
また、前記多孔質絶縁膜の材料としては、4級アルキルアミンを触媒として用いて形成したクラスター状の多孔質シリカ前駆体が好適に挙げられる。この場合、サイズが小さく、しかも均一な空孔を有する多孔質絶縁膜を形成することができる。
前記多孔質シリカ前駆体としては、市販品であってもよいし、適宜合成してもよいが、前記市販品としては、例えば、ナノクラスタリングシリカ(NCS)(「セラメートNCS」;触媒化成工業株式会社製)が好適に挙げられる。
【0033】
前記構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
前記厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記多層配線における厚みとしては、その構造上、通常10nm〜1μmであり、10〜500nmが好ましく、10〜300nmがより好ましい。
前記厚みが、10nm未満であると、ピンホール等の構造欠陥が発生することがあり、500nmを超えると、特にドライエッチングで加工する際に、レジストパターンとの選択比が取り難いことがある。
前記誘電率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、低いほど好ましく、具体的には、3.0以下が好ましく、2.8以下がより好ましい。
なお、前記誘電率は、例えば、前記多孔質絶縁膜上に金電極を形成し、誘電率測定器等を用いて測定することができる。
【0034】
−配線層−
前記配線層としては、その材料、形状、構造、厚みなどについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、回路の集積度を向上させる点で、前記構造としては、積層構造(多層構造)であるのが好ましい。
【0035】
−その他の部材−
前記その他の部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記露光光遮蔽膜及び前記多孔質絶縁膜以外の層間絶縁膜であって、露光光、例えば紫外線を透過可能なものが好適に挙げられる。
前記層間絶縁膜としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ストッパ膜などが挙げられ、具体的には、例えば、プラズマCVD法により形成されたCarbon Doped SiO2膜、SiC:H膜、SiC:N膜、SiC:O:H膜、及びSiO2膜や、スピンコート法により形成された有機SOG及び無機SOGなどが挙げられる。これらの中でも、前記多孔質絶縁膜の形成がスピンコート法により行われる場合、有機SOG及び無機SOGが好ましい。この場合、前記多孔質絶縁膜及び前記層間絶縁膜の形成及び紫外線硬化(紫外線キュア)を一括で行うことができ、製造工程の簡略化を図ることができる。
前記層間絶縁膜の材料、形状、構造、厚み、密度などについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記厚みとしては、5〜300nmが好ましく、5〜180nmがより好ましい。
前記厚みが5nm未満であると、前記露光光による前記層間絶縁膜へのダメージの付与が著しくなることがあり、300nmを超えると、膜の上下でキュアの進行度合いに違いが生じることがある。
また、前記密度としては、1〜3g/cm3が好ましく、1〜2.5g/cm3がより好ましい。
前記密度が、1g/cm3未満であると、膜強度が著しく低下することがあり、3g/cm3を超えると、前記層間絶縁膜を低誘電率に維持することが困難となることがある。
【0036】
本発明の前記多層配線は、本発明の前記露光光遮蔽膜形成用材料を用いて形成された前記露光光遮蔽膜を有するので、前記多孔質絶縁膜への前記露光光、例えば紫外線の到達が効果的に阻止され、キュアによるダメージの累積が低減され、膜減りなどの発生が抑制される。また、前記多孔質絶縁膜は誘電率が低いため、寄生容量が低減され、信号伝播速度の高速化が可能であり、応答速度の高速化が要求される、IC、LSI等の高集積度の半導体集積回路等に特に好適である。
【0037】
(多層配線の製造方法)
本発明の多層配線の製造方法は、露光光遮蔽膜形成工程と、多孔質絶縁膜形成工程と、硬化工程と、配線形成工程とを少なくとも含み、好ましくは層間絶縁膜形成工程、熱処理工程などを含み、更に必要に応じて適宜選択した、その他の工程を含む。
【0038】
<露光光遮蔽膜形成工程>
前記露光光遮蔽膜形成工程は、被加工面上に本発明の前記露光光遮蔽膜形成用材料を用いて露光光遮蔽膜を形成する工程である。
なお、露光光遮蔽膜形成用材料の詳細については、本発明の前記露光光遮蔽膜形成用材料の説明において上述した通りである。
【0039】
前記被加工面としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記多層配線が半導体装置に用いられる場合には、該被加工面としては、半導体基板の表面が挙げられ、具体的には、シリコンウェハー等の基板、各種酸化膜、多孔質化絶縁膜等の低誘電率膜、などの表面が好適に挙げられる。
【0040】
前記露光光遮蔽膜の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、塗布が好適に挙げられる。
前記塗布の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スピンコート法、ディップコート法、ニーダーコート法、カーテンコート法、ブレードコート法、などが挙げられる。これらの中でも、塗布効率等の点で、スピンコート法が好ましい。該スピンコート法の場合、その条件としては例えば、回転数が100〜10,000rpm程度であり、800〜5,000rpmが好ましく、時間が1秒〜10分間程度であり、10〜90秒間が好ましい。
以上の工程により、本発明の前記露光光遮蔽膜形成用材料を用いて前記被加工面上に前記露光光遮蔽膜が形成される。
【0041】
<多孔質絶縁膜形成工程>
前記多孔質絶縁膜形成工程は、前記露光光遮蔽膜形成工程により形成された前記露光光遮蔽膜上に多孔質絶縁膜を形成する工程である。
【0042】
前記多孔質絶縁膜の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、形成する多孔質絶縁膜の種類に応じて、例えば、以下に示す方法が好適に挙げられる。
まず、前記多孔質絶縁膜の材料として、上述した多孔質シリカ膜を形成可能なポリマー及び熱分解性化合物が用い、これらの材料を塗布した後、熱処理(ソフトベーク)を行うことにより、前記熱分解性化合物を熱分解し、空孔(細孔)を形成させることにより多孔質絶縁膜を形成する方法が挙げられる。
なお、前記塗布は、前記露光光遮蔽膜形成工程と同様な方法により行うことができる。
【0043】
前記熱処理(ソフトベーク)の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ホットプレートを用いて焼成するのが好ましい。この場合、前記熱分解性化合物が熱分解されて、絶縁膜中に、直径10〜20nm程度の空孔(細孔)が形成される。
前記熱処理は、目的に応じて適宜その温度、雰囲気等の条件を選択することができるが、前記温度としては、200〜350℃が好ましい。
前記温度が、200℃未満であると、前記熱分解性化合物が充分に熱分解されず、前記空孔が充分に形成されないことがあるほか、前記熱分解性化合物が熱分解される速度が極めて遅く、前記空孔を形成するのに長時間を要することがある。一方、前記温度が、350℃を超えると、前記多孔質絶縁膜の材料の硬化が急速に進行し、前記空孔の形成が阻害されることがある。
【0044】
また、気相成長法により前記多孔質絶縁膜としてのCarbon Doped SiO2膜を形成する方法が挙げられる。即ち、
前記気相成長法による方法は、例えば、平行平板型のプラズマCVD装置を用いて行うことができる。まず、前記多孔質絶縁膜を形成する基板温度を、例えば、300〜400℃に設定する。そして、例えば、アルキル基を有するシロキサンモノマーを気化装置により気化し、反応性ガスを生成する。そして、キャリアガスを用いて反応性ガスをチャンバ内に導入する。このとき、平板電極間に高周波電力を印加すると、反応性ガスのプラズマが発生する。ここで、堆積レートを比較的速く設定すると、前記多孔質絶縁膜を形成することができる。具体的には、例えば、以下の成膜条件により前記多孔質絶縁膜を好適に形成することができる。即ち、前記反応性ガスとしては、例えば、ヘキサメチルジシロキサンを用い、該反応性ガスの供給量は、3mg/minとする。また、前記キャリアガスとしては、CO2を用い、該キャリアガスの流量は、6,000sccmとする。前記平板電極間に印加する高周波電力としては、例えば、13.56MHz(500W)及び100kHz(500W)とする。このような条件の下、成膜すると、カーボンを含むシリコン酸化膜からなる多孔質絶縁膜が形成される。
【0045】
また、熱分解性の原子団(熱分解性化合物)又は酸化分解性の原子団(酸化分解性化合物)を含む原料を用いて、該熱分解性又は酸化分解性の原子団をプラズマにより分解させながら気相成長法により、前記多孔質絶縁膜としてのPorous Carbon Doped SiO2膜を形成する方法が挙げられる。即ち、
前記気相成長法による方法は、例えば、平行平板型のプラズマCVD装置を用いて行うことができる。まず、前記多孔質絶縁膜を形成する基板温度を、例えば、250〜350℃に設定する。そして、例えば、アルキル基を有するシロキサンモノマーを気化装置により気化し、第1の反応性ガスを生成する。また、フェニル基を有するシラン化合物を気化装置により気化し、第2の反応性ガスを生成する。ここで、フェニル基は、加熱した状態にて酸化反応を起こさせると分解する原子団(熱分解性及び酸化分解性原子団)である。
次いで、CO2ガスをキャリアガスとして用い、前記第1及び第2の反応性ガスをチャンバ内に導入する。このとき、前記平板電極間に高周波電力を印加すると、CO2ガスがプラズマ(酸素プラズマ)となり、フェニル基が分解される。そして、フェニル基が分解されながら、堆積されることにより、多孔質絶縁膜が形成される。具体的には、例えば、以下の成膜条件により前記多孔質絶縁膜を好適に形成することができる。即ち、前記第1の反応性ガスとしては、例えば、ヘキサメチルジシロキサンを用い、該反応性ガスの供給量は、1mg/minとする。前記第2の反応性ガスとしては、例えば、ジフェニルメチルシランを用い、該反応性ガスの供給量としては、1mg/minとする。また、前記キャリアガスとしては、CO2を用い、該キャリアガスの流量は、3,000sccmとする。前記平板電極間に印加する高周波電力としては、例えば、13.56MHz(300W)及び100kHz(300W)とする。このような条件の下、成膜すると、カーボンを含むシリコン酸化膜からなる多孔質絶縁膜が形成される。
なお、熱を加えながら酸化を行うと分解する、熱分解性及び酸化分解性の原子団を含む材料に代えて、酸化を行うことなく熱分解し得る熱分解性の原子団を含む材料、熱を加えることなく酸化分解し得る酸化分解性の原子団を含む材料を用いることもできる。
【0046】
また、前記熱分解性有機化合物を含むポリマーを溶媒により希釈して前記多孔質絶縁膜としての有機多孔質膜を形成する方法が挙げられる。即ち、
前記熱分解性化合物を含むポリマーを溶媒で希釈した後塗布し、ホットプレートを用いて熱処理を行う。該熱処理の温度としては、100〜400℃程度である。該熱処理を行うと、絶縁膜中の前記溶媒が蒸発し、乾燥する。その後、300〜400℃程度で更に熱処理を行うと、前記熱分解性有機化合物が熱分解し、絶縁膜中に空孔が形成され、有機多孔質膜が形成される。
【0047】
更に、前記多孔質絶縁膜の材料としての前記シリカクラスター前駆体を塗布した後、熱処理を行うことにより多孔質絶縁膜を形成する方法が挙げられる。即ち、
前記シリカクラスター前駆体を、前記スピンコート法により塗布した後、ホットプレートを用いて熱処理(ソフトベーク)を行う。該熱処理における温度としては、例えば、200℃程度、時間としては、150秒間程度とする。すると、絶縁膜中の溶媒が蒸発し、多孔質絶縁膜が形成される。クラスター状のシリカを用いて絶縁膜を形成すると、空孔の分布が非常に均一となり、極めて良質な多孔質の絶縁膜が得られる。
以上の工程により、前記露光光遮蔽膜形成工程により形成された前記露光光遮蔽膜上に多孔質絶縁膜が形成される。
【0048】
<硬化工程>
前記硬化工程は、前記多孔質絶縁膜形成工程により形成された多孔質絶縁膜に露光光を照射して硬化(キュア)する工程である。
【0049】
前記硬化の方法としては、前記多孔質絶縁膜に対して露光光を照射する限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記露光光としては、例えば、紫外線が好適に挙げられる。
前記紫外線の波長としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、230〜380nmが好ましい。
前記波長が、230nm未満であると、照射エネルギーが強すぎるため、前記多孔質絶縁膜におけるメチル基が切断されて誘電率が上昇することがあり、380nmを超えると、照射エネルギーが弱すぎるため、膜の高強度化が進行しないことがある。
前記紫外線の照射は、例えば、紫外線ランプを用いて行うことができ、該紫外線ランプとしては、例えば、高圧水銀ランプが挙げられる。
前記紫外線の照射は、目的に応じて適宜その雰囲気等の条件を選択することができ、例えば、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスなどの存在下で行うのが好ましい。また、真空下であってもよいし、常圧下であってもよいが、オゾンの生成を抑制可能な点で、真空下で行うのが好ましい。
【0050】
前記硬化工程においては、熱処理を行いながら、前記露光光を照射するのが好ましい。この場合、前記多孔質絶縁膜の硬化(キュア)が促進され、膜の機械的強度を向上させることができる点で、有利である。
前記熱処理の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、50〜470℃が好ましく、50〜450℃がより好ましい。
また、前記温度範囲内においては、一の温度(特定の温度)にて前記露光光の照射を行う、又は、温度を適宜変更させながら複数の温度にて前記露光光の照射を行うのが好ましい。この場合、前記多孔質絶縁膜の硬化(キュア)が促進し、膜強度の向上を図ることができ、しかも下地絶縁膜(例えば、前記露光光遮蔽膜)との密着性を強化することができる。
【0051】
また、前記硬化工程においては、後述する層間絶縁膜形成工程により、前記多孔質絶縁膜上に層間絶縁膜を形成した後、該層間絶縁膜を介して前記多孔質絶縁膜に前記露光光を照射して硬化(キュア)するのが好ましい。この場合、後述する層間絶縁膜が前記露光光を透過可能であるため、該層間絶縁膜及び前記多孔質絶縁膜を同時に硬化(キュア)することができ、製造工程の簡略化を図ることができる。
以上の工程により、前記多孔質絶縁膜に前記露光光(例えば、紫外線)が照射されて硬化(キュア)される。
【0052】
ここで、前記露光光として紫外線を用いた、前記硬化工程の一例を、図面を参照しながら説明する。
図1に、多孔質絶縁膜1、3及び5と、露光光遮蔽膜2及び4とが交互に積層され、更に銅配線6が形成された状態を示し、前記硬化工程の一例として、最上層に位置する多孔質絶縁膜5に対して紫外線を照射する態様を説明する。
前記硬化工程においては、紫外線の被照射対象(紫外線が照射される多孔質絶縁膜)5に対して紫外線を照射して、硬化(キュア)を行う。このとき、被照射対象5の下層に位置し、本発明の前記露光光遮蔽膜形成用材料を用いて形成された露光光遮蔽膜4が、紫外線を吸収することにより、被照射対象5よりも下層に位置する多孔質絶縁膜3への紫外線の到達が抑制される。また、露光光遮蔽膜4、及び多孔質絶縁膜3よりも更に下層に位置する、露光光遮蔽膜2により、多孔質絶縁膜3への紫外線の到達が抑制される。このため、被照射対象5に対する硬化(キュア)により生じる、被照射対象5よりも下層に位置する多孔質絶縁膜の膜減りや配線間の寄生容量の上昇を効果的に抑制することができ、高性能で信頼性の高い多層配線が得られる。
【0053】
<配線形成工程>
前記配線形成工程は、配線を形成する工程である。
前記多層配線を形成する場合、前記配線形成工程は、スルービア形成工程、導体メッキ工程などの適宜選択したその他の工程を含むのが好ましい。
【0054】
−スルービア形成工程−
前記スルービア形成工程は、前記被加工面上に形成された前記多孔質絶縁膜の最上層に形成される配線と接続するためにスルービアを形成する工程である。
前記スルービアの形成は、例えば、前記スルービア部分に適当な露光量のレーザー光を照射することにより行う。
前記レーザー光を照射するレーザーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、炭酸ガスレーザー、エキシマレーザー、YAGレーザーなどが挙げられる。
【0055】
−導体メッキ工程−
前記導体メッキ工程は、前記被加工面上に形成された前記多孔質絶縁膜上に、配線前駆体としての導体を全面に被覆し、導体メッキ層を形成する工程である。
前記導体メッキの方法としては、例えば、無電解メッキ、電解メッキなどの常用メッキ法を用いて行うことができる。
【0056】
前記配線の形成は、前記導体メッキ工程により形成された前記導体メッキ層を、所望の配線パターンに従ってエッチングする。
前記エッチングの方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、常用のエッチング法を使用することができる。
【0057】
以上の工程により、前記配線が形成される。
前記露光光遮蔽膜形成工程、前記多孔質絶縁膜形成工程、前記硬化工程及び前記配線形成工程(前記スルービア形成工程、前記導体メッキ工程を含む)の一連の工程は、必要に応じて繰り返し行うことにより、回路の集積度の高い多層配線を製造することができる。
【0058】
<層間絶縁膜形成工程>
前記層間絶縁膜形成工程は、前記多孔質絶縁膜形成工程の後に、前記多孔質絶縁膜上に紫外線を透過可能な層間絶縁膜を形成する工程である。
なお、前記層間絶縁膜の詳細については、本発明の上記多層配線の説明において上述した通りであり、例えば、プラズマCVD法により形成されたCarbon Doped SiO2膜、SiC:H膜、SiC:N膜、SiC:O:H膜、及びSiO2膜や、スピンコート法により形成された有機SOG及び無機SOGなどが挙げられる。
形成する前記層間絶縁膜の材料、形状、構造、厚み、密度などについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記厚みとしては、5〜300nmが好ましく、5〜180nmがより好ましい。
前記厚みが5nm未満であると、前記露光光による前記層間絶縁膜へのダメージの付与が著しくなることがあり、300nmを超えると、膜の上下でキュアの進行度合いに違いが生じることがある。
また、前記密度としては、1〜3g/cm3が好ましく、1〜2.5g/cm3がより好ましい。
前記密度が、1g/cm3未満であると、膜強度が著しく低下することがあり、3g/cm3を超えると、前記層間絶縁膜を低誘電率に維持することが困難となることがある。
【0059】
<熱処理工程>
本発明の前記多層配線の製造方法においては、前記露光光遮蔽膜、前記多孔質絶縁膜、及び前記層間絶縁膜を、この順に積層する際、それぞれの膜を塗布により形成した後、積層する前に熱処理を行うのが好ましい。この場合、これらの膜の強度を向上させることができる。
前記熱処理の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ソフトベークが好ましく、その温度としては、80〜380℃が好ましい。
前記熱処理は、赤外分光法により測定した各膜の架橋率が、10〜90%となるように行うのが好ましい。
前記架橋率が前記数値範囲内であると、各膜の界面における密着性を向上させることができる。一方、前記架橋率が、10%未満であると、塗布溶剤により下層に位置する膜が溶解してしまうことがあり、90%を超えると、前記層間絶縁膜を低誘電率に維持することが困難となることがある。
【0060】
本発明の多層配線の製造方法は、各種分野において好適に用いることができるが、本発明の多層配線の製造に特に好適に用いることができる。
本発明の多層配線は、紫外線吸収性に優れた本発明の前記露光光遮蔽膜形成用材料を用いて形成された露光光遮蔽膜を有するので、硬化(キュア)時に紫外線の被照射対象である多孔質絶縁膜よりも下層に位置する多孔質絶縁膜への紫外線の到達が阻止され、該多孔質絶縁膜の膜減りなどの発生が抑制される。また、多孔質絶縁膜は誘電率が低いため、寄生容量が低減され、信号伝播速度の高速化が可能であり、応答速度の高速化が要求される、半導体集積回路等の半導体装置に好適であり、以下の本発明の半導体装置に特に好適である。
【0061】
(半導体装置)
本発明の半導体装置は、本発明の前記多層配線を少なくとも有してなり、更に必要に応じて適宜選択した、その他の部材を有してなる。
【0062】
前記半導体装置においては、前記露光光遮蔽膜、前記多孔質絶縁膜、及び前記配線層を少なくとも有する前記多層配線を有する限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記その他の部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ゲート電極、ドレイン電極、ソース電極等の各種半導体装置における一般的な構成部材が挙げられる。
本発明の前記半導体装置を製造する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、後述する本発明の半導体装置の製造方法が好適である。
【0063】
本発明の半導体装置は、本発明の前記露光光遮蔽膜形成用材料用いて形成された露光光遮蔽膜を有する本発明の前記多層配線を少なくとも有する。本発明の前記多層配線は、前記露光光遮蔽膜により、該露光光遮蔽膜よりも下層に位置する前記多孔質絶縁膜に到達する露光光、例えば紫外線が効果的に遮蔽され、該多孔質絶縁膜の膜減りなどの発生が抑制される。また、誘電率の低い前記多孔質絶縁膜を有するので、前記配線間の寄生容量の低下と前記配線抵抗の低下とを達成することができ、高速で信頼性の高い半導体装置が得られる。
本発明の半導体装置は、例えば、フラッシュメモリ、DRAM、FRAM、MOSトランジスタ、などに特に好適である。
【0064】
(半導体装置の製造方法)
本発明の半導体装置の製造方法は、多層配線形成工程を少なくとも含み、更に必要に応じて適宜選択した、その他の工程を含む。
前記多層配線形成工程は、被加工面上に、本発明の前記多層配線の製造方法を用いて多層配線を形成する工程である。
前記被加工面及び前記多層配線の製造方法の詳細については、本発明の上記多層配線の製造方法の説明において詳述した通りである。
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ゲート電極、ドレイン電極、ソース電極等の電極形成工程など、一般的な半導体装置の製造方法における各種工程が挙げられる。
【0065】
本発明の半導体装置の製造方法によれば、配線間の寄生容量の低下と前記配線抵抗の低下とを達成することができ、高速で信頼性の高い本発明の前記半導体装置を効率的に製造することができる。
【実施例】
【0066】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
【0067】
(実施例1)
−露光光遮蔽膜形成用材料の合成−
前記構造式(1)で表されるポリカルボシランにおけるR1及びR2の少なくともいずれかをハロゲン化し、前記紫外線を吸収可能な置換基としてのビニル基を含むGrignard試薬と反応させることにより、前記構造式(1)におけるR1及びR2の少なくともいずれかがビニル基で置換されたポリカルボシランを含む露光光遮蔽膜形成用材料を合成した。
【0068】
−多層配線及び半導体装置の製造−
本発明の多層配線及び半導体装置を以下のようにして製造した。まず、図2Aに示すように、半導体基板10に、LOCOS(LOCal Oxidation of Silicon)法により素子分離膜12を形成した。素子分離膜12により、素子領域14が画定された。なお、半導体基板10としては、シリコン基板を用いた。
次いで、素子領域14上に、ゲート絶縁膜16を介してゲート電極18を形成した。次に、ゲート電極18の側面に、サイドウォール絶縁膜20を形成した。更に、サイドフォール絶縁膜20及びゲート電極18をマスクとして、半導体基板10内に、ドーパント不純物を導入することにより、ゲート電極18の両側の半導体基板10内に、ソース/ドレイン拡散層22を形成した。その結果、ゲート電極18とソース/ドレイン拡散層22とを有するトランジスタ24が形成された。
図2Bに示すように、トランジスタ24が形成された半導体基板10の全面に、CVD法により、シリコン酸化膜からなる層間絶縁膜26を形成した。そして、層間絶縁膜26上に、プラズマCVD法により形成したSiN膜からなる膜厚50nmのストッパ膜28を形成した。なお、ストッパ膜28は、後述する工程において、化学的機械研磨法(CMP)によりタングステン膜34等を研磨する際にはストッパとして機能し(図2C参照)、多孔質絶縁膜38等に溝46を形成する際には、エッチングストッパとして機能する(図2F参照)。次いで、フォトグラフィ技術を用いて、ソース/ドレイン拡散層22に達するコンタクトホール30を形成した。
次に、全面にスパッタ法により膜厚50nmのTiN膜からなる密着層32を形成した。なお、密着層32により、後述する導体プラグ34の下地に対する密着性を確保することができる。次いで、密着層32の全面に、CVD法により膜厚1μmのタングステン膜34を形成した後、化学的機械研磨法(CMP)によりストッパ膜28の表面が露出するまで、密着層32及びタングステン膜34を研磨した。その結果、図2Cに示すように、コンタクトホール30内に、タングステンからなる導体プラグ34が埋め込まれた。
【0069】
次いで、図2Dに示すように、全面に、合成した前記露光光遮蔽膜形成用材料を用いて、膜厚30nmの露光光遮蔽膜(第1の層間絶縁膜)36を形成した。また、露光光遮蔽膜36を、赤外分光分析(IR)を用いて吸収ピークを測定したところ、二重結合の存在が確認された。
その後、露光光遮蔽膜36の全面に、多孔質シリカからなる多孔質絶縁膜(第2の層間絶縁膜)38を厚みが160nmとなるように形成した。そして、多孔質絶縁膜38に紫外線を照射し、硬化(キュア)を行った。
次に、図2Eに示すように、多孔質絶縁膜38が形成された半導体基板10上の全面に、合成した前記露光光遮蔽膜形成材料を用いて、膜厚30nmの露光光遮蔽膜40を形成した。
【0070】
次いで、図2Fに示すように、露光光遮蔽膜40の全面に、スピンコート法を用いて、フォトレジスト膜42を形成した。そして、フォトリソグラフィ技術を用い、フォトレジスト膜42に開口部44を形成した。ここで、開口部44は、後述する第1層目の配線(第1金属配線層)50(図2G参照)を形成するためのものであり、配線幅100nm、配線間隔100nmとなるような寸法の開口を有する。
そして、フォトレジスト膜42をマスクとして、露光光遮蔽膜40、多孔質絶縁膜38、及び露光光遮蔽膜36に対してエッチング処理を行った。なお、エッチング処理は、CF4ガス及びCHF3ガスを原料としたフッ素プラズマを用いて行った。このとき、ストッパ膜28が、エッチングストッパとして機能した。このようにして、露光光遮蔽膜40、多孔質絶縁膜38及び露光光遮蔽膜36に、配線を埋め込むための溝(トレンチ)46が形成された。なお、導体プラグ34の上面は、溝46内に露出した状態となった。その後、フォトレジスト膜42を剥離した。
次いで、全面にスパッタ法により膜厚10nmのTaNからなるバリア膜(図示せず)を形成した。なお、バリア膜は、後述する配線中のCuが、多孔質絶縁膜38中に拡散するのを防止する機能を有する。次に、全面にスパッタ法により膜厚10nmのCuからなるシード膜(図示せず)を形成した。なお、シード膜は、電気めっき法によりCuからなる配線を形成する際、電極として機能する。このようにして、図2Gに示すように、バリア膜とシード膜とからなる積層膜48を形成した。
次に、電気めっき法により膜厚600nmのCu膜50を形成した。
更に、化学的機械研磨法(CMP)により露光光遮蔽膜40の表面が露出するまで、Cu膜50及び積層膜48を研磨した。その結果、溝46内に、Cuからなる配線50が埋め込まれた。以上の配線50の製造プロセスは、シングルダマシン法と称される工法である。
続いて、合成した前記露光光遮蔽膜形成用材料を用いて、露光光遮蔽膜36及び40の形成と同様な方法により、膜厚30nmの露光光遮蔽膜52を形成した。
【0071】
次いで、図2Hに示すように、多孔質絶縁膜38の形成と同様な方法により、膜厚180nmの多孔質絶縁膜54を形成した。続いて、多孔質絶縁膜54に紫外線を照射し、キュアを行った。なお、紫外線の照射は、多孔質絶縁膜38に対するキュアと同様な条件で行った。
次に、多孔質絶縁膜54上の全面に、合成した前記露光光遮蔽膜形成用材料を用いて、露光光遮蔽膜36、40及び52の形成と同様な方法により、膜厚30nmの露光光遮蔽膜56を形成した。
次に、図2Iに示すように、多孔質絶縁膜38の形成と同様な方法により、膜厚160nmの多孔質絶縁膜58を形成した。続いて、多孔質絶縁膜58に紫外線を照射し、キュアを行った。なお、紫外線の照射は、多孔質絶縁膜38に対するキュアと同様な条件で行った。続いて、多孔質絶縁膜58上の全面に、合成した前記露光光遮蔽膜形成用材料を用いて、露光光遮蔽膜36、40及び52の形成と同様な方法により、膜厚30nmの露光光遮蔽膜60を形成した。
【0072】
次いで、図2Jに示すように、全面にスピンコート法によりフォトレジスト膜62を形成した。そして、フォトリソグラフィ技術を用いて、フォトレジスト膜62に開口部64を形成した。ここで、開口部64は、第1層目の配線(第1金属配線層)50に達するコンタクトホール66を形成するためのものである。続いて、フォトレジスト膜62をマスクとして、露光光遮蔽膜60、多孔質絶縁膜58、露光光遮蔽膜56、多孔質絶縁膜54、及び露光光遮蔽膜52に対してエッチング処理を行った。なお、エッチング処理は、CF4ガス及びCHF3ガスを原料としたフッ素プラズマを用い、エッチングガスの組成比やエッチングの際の圧力等を適宜変化させることにより行った。このようにして、配線50に達するコンタクトホール66が形成された。その後、フォトレジスト膜62を剥離した。
【0073】
次いで、図2Kに示すように、全面にスピンコート法により、フォトレジスト膜68を形成した。続いて、フォトリソグラフィ技術を用いて、フォトレジスト膜68に開口部70を形成した。ここで、開口部70は、第2層目の配線(第2金属配線層)76a(図2L参照)を形成するためのものである。
次に、フォトレジスト膜68をマスクとして、露光光遮蔽膜60、多孔質絶縁膜58及び露光光遮蔽膜56に対してエッチング処理を行った。なお、エッチング処理には、CF4ガス及びCHF3ガスを原料としたフッ素プラズマを用いた。このようにして、露光光遮蔽膜60、多孔質絶縁膜58及び露光光遮蔽膜56に配線76aを埋め込むための溝72を形成された。溝72は、コンタクトホール66と繋がった状態となった。
次いで、全面に、スパッタ法により膜厚10nmのTaNからなるバリア膜(図示せず)を形成した。なお、バリア膜は、後述する配線76a及び導体プラグ76b中のCuが多孔質絶縁膜54及び58に拡散するのを防止する機能を有する。次に、全面にスパッタ法により膜厚10nmのCuからなるシード膜(図示せず)を形成した。なお、シード膜は、電気めっき法によりCuからなる配線76a及び導体プラグ76bを形成する際、電極として機能する。このようにして、バリア膜とシード膜とからなる積層膜74を形成した。
次に、電気めっき法により膜厚1,400nmのCu膜76を形成した。
更に、化学的機械研磨法(CMP)により露光光遮蔽膜60の表面が露出するまで、Cu膜76及び積層膜74を研磨した。その結果、コンタクトホール66内に、Cuからなる導体プラグ76bが埋め込まれるとともに、溝72内にCuからなる配線76aが埋め込まれた。なお、導体プラグ76bと配線76aとは一体に形成された。以上の導体プラグ76b及び配線76aを一括して形成する製造プロセスは、デュアルダマシン法と称される工法である。
次に、全面に、合成した前記露光光遮蔽膜形成用材料を用いて、露光光遮蔽膜36、40及び52の形成と同様な方法により、膜厚30nmの露光光遮蔽膜78を形成した。
この後、これらの工程を適宜繰り返すことにより、図示しない第3層目の配線(第3金属配線層)を形成し、半導体装置を製造した。
以上のようにして、100万個の導体プラグが電気的に直列に接続されるように配線及び導体プラグを形成し、歩留りを測定したところ、91%であった。また、実効的な比誘電率を層間容量により算出したところ、2.6であった。更に200℃の高温にて3,000時間放置後の配線抵抗を、抵抗測定器(「HP4284A」;アジレント製)を用いて測定したところ、抵抗上昇は観られなかった。
また、露光光遮蔽膜の下層に位置する多孔質絶縁膜の膜減り量を、分光エリプソメータ(「GES500」;SOPRA社製)により測定したところ、膜減り量は0nmであり、膜減りが生じていないことが判った。これらの結果を表1に示す。
【0074】
(実施例2〜12)
実施例1において、前記露光光遮蔽膜形成用材料を、それぞれ下記表1に示す露光光遮蔽膜形成用材料に変えて、第1の層間絶縁膜としての露光光遮蔽膜を形成した以外は、実施例1と同様にして、半導体装置を製造した。また、製造歩留り、実効誘電率、及び露光光遮蔽膜の下層に位置する多孔質絶縁膜の膜減り量を、実施例1と同様にして測定した。結果を表1に併せて示す。
なお、実施例2、4、6、8、10及び12においては、第2の層間絶縁膜としての多孔質絶縁膜上に、第3の層間絶縁膜として、紫外線を透過可能なSiC膜を形成し、該SiC膜を介して紫外線を照射することにより多孔質絶縁膜のキュアを行った。
【0075】
(比較例1〜4)
実施例1において、前記露光光遮蔽膜形成用材料を、それぞれ下記表1に示すように、シリコン化合物の一部の官能基を紫外線を吸収可能な置換基で置換しないで用い、第1の層間絶縁膜としての露光光遮蔽膜を形成した以外は、実施例1と同様にして、半導体装置を製造した。そして、200℃の高温にて3,000時間放置後の配線抵抗を、抵抗測定器(「HP4284A」;アジレント製)を用いて測定したところ、抵抗上昇が観られた。
また、製造歩留り、実効誘電率、及び露光光遮蔽膜の下層に位置する多孔質絶縁膜の膜減り量を、実施例1と同様にして測定した。結果を表1に併せて示す。
なお、比較例2及び4においては、第2の層間絶縁膜としての多孔質絶縁膜上に、第3の層間絶縁膜として、紫外線を透過可能なSiC膜を形成し、該SiC膜を介して多孔質絶縁膜のキュアを行った。
【0076】
【表1】
【0077】
表1より、実施例1〜12では、紫外線を吸収可能な置換基で置換されたシリコン化合物を含む本発明の露光光遮蔽膜形成用材料を用いて露光光遮蔽膜を形成したので、被照射対象(紫外線を照射する多孔質絶縁膜)よりも下層に位置する多孔質絶縁膜への紫外線の到達が阻止され、該下層多孔質絶縁膜の膜減りが全くなく、得られた半導体装置の実効誘電率は全体的に低く、しかも歩留りが高いことが判った。一方、紫外線を吸収可能な置換基で置換しないで単にシリコン化合物を用いて膜形成を行った比較例1〜4では、下層多孔質絶縁膜の膜減りが観られ、得られた半導体装置の実効誘電率は高く、歩留りが低いことが判った。
【0078】
本発明の好ましい態様を付記すると、以下の通りである。
(付記1) 下記構造式(1)で表されるシリコン化合物、及び下記構造式(2)で表されるシリコン化合物の少なくともいずれかを含んでなり、
下記構造式(1)及び下記構造式(2)における、R1及びR2の少なくともいずれかが、露光光を吸収可能な置換基で置換されていることを特徴とする露光光遮蔽膜形成用材料。
【化7】
前記構造式(1)中、R1及びR2は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、並びに置換又は非置換の、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、及びアリール基のいずれかを表す。nは2以上の整数を表す。
【化8】
前記構造式(2)中、R1、R2及びR3は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、少なくとも1つが水素原子を表し、それ以外は、それぞれ、置換又は非置換の、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、及びアリール基のいずれかを表す。nは2以上の整数を表す。
(付記2) 露光光が紫外線である付記1に記載の露光光遮蔽膜形成用材料。
(付記3) 紫外線を吸収可能な置換基が、二重結合、三重結合、及びヘテロ原子を含んでいてもよいアリール基の少なくともいずれかを有する付記2に記載の露光光遮蔽膜形成用材料。
(付記4) 紫外線を吸収可能な置換基が、ビニル基、アクロイル基、ベンジル基、フェニル基、カルボニル基、カルボキシル基、ジアゾ基、アジド基、シンナモイル基、アクリレート基、シンナミリデン基、シアノシンナミリデン基、フリルペンタジエン基、及びp−フェニレンジアクリレート基から選択される少なくとも1種である付記3に記載の露光光遮蔽膜形成用材料。
(付記5) 構造式(1)におけるnが、10〜1,000である付記1から4のいずれかに記載の露光光遮蔽膜形成用材料。
(付記6) 構造式(2)で表されるシリコン化合物の数平均分子量が、100〜50,000である付記1から5のいずれかに記載の露光光遮蔽膜形成用材料。
(付記7) 付記1から6のいずれかに記載の露光光遮蔽膜形成用材料を用いて形成されたことを特徴とする露光光遮蔽膜。
(付記8) 露光光遮蔽膜と多孔質絶縁膜と配線層とを少なくとも有してなり、
前記露光光遮蔽膜が、付記1から6のいずれかに記載の露光光遮蔽膜形成用材料を用いて形成されたことを特徴とする多層配線。
(付記9) 露光光遮蔽膜と多孔質絶縁膜とが接触配置された付記8に記載の多層配線。
(付記10) 露光光遮蔽膜の厚みが5〜70nmである付記8から9のいずれかに記載の多層配線。
(付記11) 付記8から10のいずれかに記載の多層配線を製造する方法であって、被加工面上に付記1から6のいずれかに記載の露光光遮蔽膜形成用材料を用いて露光光遮蔽膜を形成する露光光遮蔽膜形成工程と、該露光光遮蔽膜上に多孔質絶縁膜を形成する多孔質絶縁膜形成工程と、該多孔質絶縁膜に露光光を照射して硬化する硬化工程と、配線を形成する配線形成工程とを少なくとも含むことを特徴とする多層配線の製造方法。
(付記12) 多孔質絶縁膜形成工程の後に、多孔質絶縁膜上に露光光を透過可能な層間絶縁膜を形成する層間絶縁膜形成工程を更に含み、
硬化工程が、前記層間絶縁膜を介して前記多孔質絶縁膜に前記露光光を照射する付記11に記載の多層配線の製造方法。
(付記13) 層間絶縁膜の密度が1〜3g/cm3であり、かつ厚みが5〜300nmである付記12に記載の多層配線の製造方法。
(付記14) 露光光が紫外線である付記11から13のいずれかに記載の多層配線の製造方法。
(付記15) 多孔質絶縁膜が、塗布用のシリカクラスター前駆体を用いて形成される付記11から14のいずれかに記載の多層配線の製造方法。
(付記16) 硬化工程が、50〜470℃の温度範囲内にて、少なくとも一の温度により行われる付記11から15のいずれかに記載の多層配線の製造方法。
(付記17) 露光光遮蔽膜、多孔質絶縁膜、及び層間絶縁膜を、この順に積層する際、それぞれの膜を塗布により形成した後、積層する前に熱処理を行う付記12から16のいずれかに記載の多層配線の製造方法。
(付記18) 熱処理が、赤外分光法により測定した各膜の架橋率が10〜90%となるように行われる付記17に記載の多層配線の製造方法。
(付記19) 付記8から10のいずれかに記載の多層配線を少なくとも有することを特徴とする半導体装置。
(付記20) 付記19に記載の半導体装置を製造する方法であって、被加工面上に、付記12から18のいずれかに記載の多層配線の製造方法を用いて多層配線を形成する多層配線形成工程を少なくとも含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の露光光遮蔽膜形成用材料は、露光光、例えば紫外線の吸収性に優れるので、露光光遮蔽機能を発現する本発明の露光光遮蔽膜の形成に好適に使用することができ、本発明の多層配線及び本発明の半導体装置の製造に好適に使用することができる。
本発明の多層配線の製造方法は、多孔質絶縁膜の性能を損なうことなく誘電率を低減可能で、製造歩留りの向上を図ることができ、本発明の多層配線の製造に好適に用いることができる。
本発明の多層配線は、信号伝播速度の高速化が可能であり、応答速度の高速化が要求される半導体集積回路等に特に好適である。
本発明の半導体装置は、配線間の寄生容量の低下と配線抵抗の低下とが達成され、高速で信頼性が高く、フラッシュメモリ、DRAM、FRAM、MOSトランジスタなどに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】図1は、本発明の露光光遮蔽膜形成用材料を用いて形成された露光光遮蔽膜を有する多層配線の製造方法の一例における、硬化工程を説明するための工程図である。
【図2A】図2Aは、本発明の露光光遮蔽膜形成用材料を用いて形成された露光光遮蔽膜を有する本発明の半導体装置を製造する方法の一例を示す工程図(その1)である。
【図2B】図2Bは、本発明の露光光遮蔽膜形成用材料を用いて形成された露光光遮蔽膜を有する本発明の半導体装置を製造する方法の一例を示す工程図(その2)である。
【図2C】図2Cは、本発明の露光光遮蔽膜形成用材料を用いて形成された露光光遮蔽膜を有する本発明の半導体装置を製造する方法の一例を示す工程図(その3)である。
【図2D】図2Dは、本発明の露光光遮蔽膜形成用材料を用いて形成された露光光遮蔽膜を有する本発明の半導体装置を製造する方法の一例を示す工程図(その4)である。
【図2E】図2Eは、本発明の露光光遮蔽膜形成用材料を用いて形成された露光光遮蔽膜を有する本発明の半導体装置を製造する方法の一例を示す工程図(その5)である。
【図2F】図2Fは、本発明の露光光遮蔽膜形成用材料を用いて形成された露光光遮蔽膜を有する本発明の半導体装置を製造する方法の一例を示す工程図(その6)である。
【図2G】図2Gは、本発明の露光光遮蔽膜形成用材料を用いて形成された露光光遮蔽膜を有する本発明の半導体装置を製造する方法の一例を示す工程図(その7)である。
【図2H】図2Hは、本発明の露光光遮蔽膜形成用材料を用いて形成された露光光遮蔽膜を有する本発明の半導体装置を製造する方法の一例を示す工程図(その8)である。
【図2I】図2Iは、本発明の露光光遮蔽膜形成用材料を用いて形成された露光光遮蔽膜を有する本発明の半導体装置を製造する方法の一例を示す工程図(その9)である。
【図2J】図2Jは、本発明の露光光遮蔽膜形成用材料を用いて形成された露光光遮蔽膜を有する本発明の半導体装置を製造する方法の一例を示す工程図(その10)である。
【図2K】図2Kは、本発明の露光光遮蔽膜形成用材料を用いて形成された露光光遮蔽膜を有する本発明の半導体装置を製造する方法の一例を示す工程図(その11)である。
【図2L】図2Lは、本発明の露光光遮蔽膜形成用材料を用いて形成された露光光遮蔽膜を有する本発明の半導体装置を製造する方法の一例を示す工程図(その12)である。
【符号の説明】
【0081】
1,3,5 多孔質絶縁膜
2,4 露光光遮蔽膜
6 銅配線
10 半導体基板
18 ゲート電極
22 ソース/ドレイン拡散層
24 トランジスタ
26,38 層間絶縁膜
28 ストッパ膜
32 密着層
34 タングステン膜(導体プラグ)
36,40,52,56,60,78 露光光遮蔽膜
38,54,58 多孔質絶縁膜
48 積層膜
50,76a 配線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造式(1)で表されるシリコン化合物、及び下記構造式(2)で表されるシリコン化合物の少なくともいずれかを含んでなり、
下記構造式(1)及び下記構造式(2)における、R1及びR2の少なくともいずれかが、露光光を吸収可能な置換基で置換されていることを特徴とする露光光遮蔽膜形成用材料。
【化1】
前記構造式(1)中、R1及びR2は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、並びに置換又は非置換の、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、及びアリール基のいずれかを表す。nは2以上の整数を表す。
【化2】
前記構造式(2)中、R1、R2及びR3は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、少なくとも1つが水素原子を表し、それ以外は、それぞれ、置換又は非置換の、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、及びアリール基のいずれかを表す。nは2以上の整数を表す。
【請求項2】
露光光が紫外線である請求項1に記載の露光光遮蔽膜形成用材料。
【請求項3】
紫外線を吸収可能な置換基が、二重結合、三重結合、及びヘテロ原子を含んでいてもよいアリール基の少なくともいずれかを有する請求項2に記載の露光光遮蔽膜形成用材料。
【請求項4】
構造式(1)におけるnが、10〜1,000である請求項1から3のいずれかに記載の露光光遮蔽膜形成用材料。
【請求項5】
構造式(2)で表されるシリコン化合物の数平均分子量が、100〜50,000である請求項1から4のいずれかに記載の露光光遮蔽膜形成用材料。
【請求項6】
露光光遮蔽膜と多孔質絶縁膜と配線層とを少なくとも有してなり、
前記露光光遮蔽膜が、請求項1から5のいずれかに記載の露光光遮蔽膜形成用材料を用いて形成されたことを特徴とする多層配線。
【請求項7】
請求項6に記載の多層配線を製造する方法であって、被加工面上に請求項1から5のいずれかに記載の露光光遮蔽膜形成用材料を用いて露光光遮蔽膜を形成する露光光遮蔽膜形成工程と、該露光光遮蔽膜上に多孔質絶縁膜を形成する多孔質絶縁膜形成工程と、該多孔質絶縁膜に露光光を照射して硬化する硬化工程と、配線を形成する配線形成工程とを少なくとも含むことを特徴とする多層配線の製造方法。
【請求項8】
多孔質絶縁膜形成工程の後に、多孔質絶縁膜上に露光光を透過可能な層間絶縁膜を形成する層間絶縁膜形成工程を更に含み、
硬化工程が、前記層間絶縁膜を介して前記多孔質絶縁膜に露光光を照射する請求項7に記載の多層配線の製造方法。
【請求項9】
露光光遮蔽膜、多孔質絶縁膜、及び層間絶縁膜を、この順に積層する際、それぞれの膜を塗布により形成した後、積層する前に熱処理を行うことを含み、
前記熱処理が、赤外分光法により測定した各膜の架橋率が10〜90%となるように行われる請求項8に記載の多層配線の製造方法。
【請求項10】
請求項6に記載の多層配線を少なくとも有すること特徴とする半導体装置。
【請求項1】
下記構造式(1)で表されるシリコン化合物、及び下記構造式(2)で表されるシリコン化合物の少なくともいずれかを含んでなり、
下記構造式(1)及び下記構造式(2)における、R1及びR2の少なくともいずれかが、露光光を吸収可能な置換基で置換されていることを特徴とする露光光遮蔽膜形成用材料。
【化1】
前記構造式(1)中、R1及びR2は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、並びに置換又は非置換の、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、及びアリール基のいずれかを表す。nは2以上の整数を表す。
【化2】
前記構造式(2)中、R1、R2及びR3は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、少なくとも1つが水素原子を表し、それ以外は、それぞれ、置換又は非置換の、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、及びアリール基のいずれかを表す。nは2以上の整数を表す。
【請求項2】
露光光が紫外線である請求項1に記載の露光光遮蔽膜形成用材料。
【請求項3】
紫外線を吸収可能な置換基が、二重結合、三重結合、及びヘテロ原子を含んでいてもよいアリール基の少なくともいずれかを有する請求項2に記載の露光光遮蔽膜形成用材料。
【請求項4】
構造式(1)におけるnが、10〜1,000である請求項1から3のいずれかに記載の露光光遮蔽膜形成用材料。
【請求項5】
構造式(2)で表されるシリコン化合物の数平均分子量が、100〜50,000である請求項1から4のいずれかに記載の露光光遮蔽膜形成用材料。
【請求項6】
露光光遮蔽膜と多孔質絶縁膜と配線層とを少なくとも有してなり、
前記露光光遮蔽膜が、請求項1から5のいずれかに記載の露光光遮蔽膜形成用材料を用いて形成されたことを特徴とする多層配線。
【請求項7】
請求項6に記載の多層配線を製造する方法であって、被加工面上に請求項1から5のいずれかに記載の露光光遮蔽膜形成用材料を用いて露光光遮蔽膜を形成する露光光遮蔽膜形成工程と、該露光光遮蔽膜上に多孔質絶縁膜を形成する多孔質絶縁膜形成工程と、該多孔質絶縁膜に露光光を照射して硬化する硬化工程と、配線を形成する配線形成工程とを少なくとも含むことを特徴とする多層配線の製造方法。
【請求項8】
多孔質絶縁膜形成工程の後に、多孔質絶縁膜上に露光光を透過可能な層間絶縁膜を形成する層間絶縁膜形成工程を更に含み、
硬化工程が、前記層間絶縁膜を介して前記多孔質絶縁膜に露光光を照射する請求項7に記載の多層配線の製造方法。
【請求項9】
露光光遮蔽膜、多孔質絶縁膜、及び層間絶縁膜を、この順に積層する際、それぞれの膜を塗布により形成した後、積層する前に熱処理を行うことを含み、
前記熱処理が、赤外分光法により測定した各膜の架橋率が10〜90%となるように行われる請求項8に記載の多層配線の製造方法。
【請求項10】
請求項6に記載の多層配線を少なくとも有すること特徴とする半導体装置。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図2G】
【図2H】
【図2I】
【図2J】
【図2K】
【図2L】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図2G】
【図2H】
【図2I】
【図2J】
【図2K】
【図2L】
【公開番号】特開2007−220750(P2007−220750A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−37025(P2006−37025)
【出願日】平成18年2月14日(2006.2.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.FRAM
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月14日(2006.2.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.FRAM
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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