説明

III族窒化物半導体を成長する方法

【課題】III族窒化物の表面欠陥の数を低減可能な、III族窒化物半導体を成長する方法を提供する。
【解決手段】成長工程S1では、アンモニアおよびIII族有機金属物質を含むガスG1を気相成長装置11の成長炉15に供給して、GaN等のIII族窒化物半導体を成長する。工程S2では、時刻t1においてIII族有機金属物質を気相成長装置11へ供給することを停止して、III族窒化物半導体の成長を終了する。工程S3では、時刻t2において気相成長装置11の反応炉15の温度が、時刻t1における温度Temp1よりも低い温度Temp2になるように、アンモニアを含むガスを供給しながら時刻t1以降の期間中に気相成長装置11の温度を変更する。III族窒化物半導体の成長期間Taおよび気相成長装置の温度の変更期間Tbの少なくともいずれかの期間中に、アンモニアの供給量が増加される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、III族窒化物半導体を成長する方法、およびIII族窒化物半導体装置を作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、GaNおよびAlGaNのショットキ界面におけるリーク電流について記載されている。この文献によれば、表面欠陥に起因するドナーがバリアを薄くしており、薄いバリアによりトンネリングによる輸送過程が生じている。この結果、GaNおよびAlGaNのショットキ界面におけるリーク電流が多い。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】APPLIEDPHYSICS LETTERS, Vol.84, 14 June 2004, pp.4884-4886
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
n型窒化ガリウムへのショットキ接合を有するGaNショットキーバリアダイオード、AlGaN電子障壁層上に設けられたゲート電極を有する高電子移動度トランジスタでは、発明者らの知見によっても、表面に欠陥性ドナーが存在するとき、ショットキ接合に起因するリーク電流が多い。また、p型コンタクト層へ接合を成すオーミック電極を有する発光ダイオードや半導体レーザなどの窒化物発光デバイスでは、コンタクト抵抗が増大すると考えられる。これ故に、エピ表面の欠陥性ドナーを減らすことが必要である。しかしながら、上記の非特許文献1には、III族窒化物のエピタキシャル層表面の欠陥性ドナーを減らすことについて記載されていない。
【0005】
本発明は、III族窒化物の表面欠陥の数を低減可能な、III族窒化物半導体を成長する方法、およびIII族窒化物半導体装置を作製する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るIII族窒化物半導体を成長する方法であって、当該方法は、(a)アンモニアおよびIII族有機金属物質を含むガスを気相成長装置に供給して、III族窒化物半導体を成長する工程と、(b)前記III族有機金属物質を前記気相成長装置へ供給することを第1の時刻において停止して、前記III族窒化物半導体の成長を終了する工程と、(c)前記第1の時刻後の第2の時刻において前記気相成長装置の温度が前記第1の時刻における前記気相成長装置の温度Temp1よりも低い温度Temp2になるように、前記アンモニアを含むガスを供給しながら前記第1の時刻以降の期間中に前記気相成長装置の温度を変更する工程とを備え、前記III族窒化物半導体の成長期間および前記気相成長装置の温度の変更期間の少なくともいずれかの期間中に、前記アンモニアの供給量が増加される。
【0007】
この方法によれば、III族有機金属物質を気相成長装置へ供給することを停止する前または後の少なくともいずれかにアンモニアの供給量が増加されるので、III族窒化物半導体の成長が完了した後に気相成長装置の温度を温度Temp2に下げる期間中に、III族窒化物半導体に発生する欠陥性ドナー数が低減される。
【0008】
本発明に係るIII族窒化物半導体を成長する方法では、前記アンモニアの供給量の増加は、前記III族窒化物半導体の成長期間中に開始されることができる。この方法によれば、成長期間中に成長当初のアンモニア供給量より多いアンモニアを供給しながら変更期間の工程に進むので、欠陥性ドナーがIII族窒化物半導体に生じることを低減できる。
【0009】
本発明に係るIII族窒化物半導体を成長する方法では、前記アンモニアの供給量の増加は、前記気相成長装置の温度の変更期間中に開始されることができる。この方法によれば、変更期間中に、成長期間の終期のアンモニア供給量より多いアンモニアを供給するので、III族窒化物半導体に発生される欠陥性ドナー数が低減される。
【0010】
本発明に係るIII族窒化物半導体を成長する方法であって、当該方法は、(a)水素、アンモニアおよびIII族有機金属物質を含むガスを気相成長装置に供給して、III族窒化物半導体を成長する工程と、(b)前記III族有機金属物質を前記気相成長装置へ供給することを第1の時刻において停止して、前記III族窒化物半導体の成長を終了する工程と、(c)前記第1の時刻後の第2の時刻において前記気相成長装置の温度が前記第1の時刻における前記気相成長装置の温度Temp1よりも低い温度Temp2になるように、前記アンモニアを含むガスを供給しながら前記第1の時刻以降の期間中に前記気相成長装置の温度を変更する工程とを備え、前記III族窒化物半導体の成長期間および前記気相成長装置の温度の変更期間の少なくともいずれかの期間中に前記水素の供給量が減少される。
【0011】
この方法によれば、III族有機金属物質を気相成長装置へ供給することを停止する前または後の少なくともいずれかに、水素の供給量が減少されるので、III族窒化物半導体の成長が完了した後に気相成長装置の温度を温度Temp2に変更する期間中に、欠陥性ドナーがIII族窒化物半導体に生じることを低減できる。
【0012】
本発明に係る方法では、前記水素の供給量の減少は前記III族窒化物半導体の成長期間中に開始されることができる。この方法によれば、成長期間中に成長当初の水素の供給量より少ない量の水素を供給しながら変更期間の工程に進むので、欠陥性ドナーがIII族窒化物半導体に生じることを低減できる。
【0013】
本発明に係る方法では、前記水素の供給量の減少は前記気相成長装置の温度の変更期間中に開始されることができる。この方法によれば、変更期間中に、成長期間の終期の水素供給量より少ない量の水素を供給するので、欠陥性ドナーがIII族窒化物半導体に生じることを低減できる。
【0014】
本発明に係る方法では、前記減少された水素の供給量は実質的にゼロであることができる。この方法によれば、成長されたIII族窒化物半導体の表面が、多量の水素に曝されることがない。
【0015】
本発明に係る方法では、前記水素の供給量が減少されると共に、窒素が前記気相成長装置へ供給されることが好ましい。この方法によれば、気相成長装置の窒素分圧が大きくできる。また、水素の供給量の減少と共に窒素の供給量の増加により、気相成長装置の圧力の変化が小さくでき、トータル流量の変化に起因するガス流の乱れを小さくできる。
【0016】
本発明に係る方法では、前記水素の供給量が減少されると共に、アンモニアの供給量が増加されることができる。この方法によれば、気相成長装置の窒素分圧が大きくできる。また、水素の供給量の減少と共にアンモニアの供給量の増加により、気相成長装置の圧力の変化が小さくでき、トータル流量の変化に起因するガス流の乱れを小さくできる。
【0017】
本発明に係るIII族窒化物半導体を成長する方法であって、当該方法は、(a)アンモニアおよびIII族有機金属物質を含むガスを気相成長装置に供給して、III族窒化物半導体を成長する工程と、(b)前記III族有機金属物質を前記気相成長装置へ供給することを第1の時刻において停止して、前記III族窒化物半導体の成長を終了する工程と、(c)前記第1の時刻後の第2の時刻において前記気相成長装置の温度が前記第1の時刻における前記気相成長装置の温度Temp1よりも低い温度Temp2になるように、前記アンモニアを含むガスを供給しながら前記第1の時刻以降の期間中に前記気相成長装置の温度を変更する工程とを備え、前記III族窒化物半導体の成長期間および前記気相成長装置の温度の変更期間の少なくともいずれかの期間中に、窒素が第1の供給量から第2の供給量へ増加される。
【0018】
この方法によれば、III族有機金属物質を気相成長装置へ供給することを停止する前または後の少なくともいずれかに、窒素の供給量が増加されるので、III族窒化物半導体の成長が完了した後に気相成長装置の温度を温度Temp2に変更する期間中に、III族窒化物半導体に生じる欠陥性ドナー数を低減できる。
【0019】
本発明に係る方法では、前記窒素の供給量の増加は前記III族窒化物半導体の成長期間中に開始されることができる。この方法によれば、成長期間中に成長当初の窒素の供給量より多い量の窒素を供給しながら変更期間の工程に進むので、III族窒化物半導体に生じる欠陥性ドナーを低減できる。
【0020】
本発明に係る方法では、前記窒素の供給量の増加は前記気相成長装置の温度の変更期間中に開始されることができる。この方法によれば、変更期間中に、成長期間の終期の窒素供給量より多い量の窒素を供給するので、III族窒化物半導体に生じる欠陥性ドナー数を低減できる。
【0021】
本発明に係る方法では、前記窒素の前記第1の供給量は実質的にゼロであることができる。
【0022】
本発明に係るIII族窒化物半導体を成長する方法であって、当該方法は、(a)アンモニアおよびIII族有機金属物質を含むガスを気相成長装置に供給して、III族窒化物半導体を成長する工程と、(b)前記III族有機金属物質を前記気相成長装置へ供給することを第1の時刻において停止して、前記III族窒化物半導体の成長を終了する工程と、(c)前記第1の時刻後の第2の時刻において前記気相成長装置の温度が前記第1の時刻における前記気相成長装置の温度Temp1よりも低い温度Temp2になるように、前記アンモニアを含むガスを供給しながら前記第1の時刻以降の期間中に前記気相成長装置の温度を変更する工程とを備え、前記III族窒化物半導体の成長期間および前記気相成長装置の温度の変更期間の少なくともいずれかの期間中に、前記気相成長装置の圧力は第1の圧力値から第2の圧力値へ増加される。
【0023】
この方法によれば、III族有機金属物質を気相成長装置へ供給することを停止する前または後の少なくともいずれかに、圧力が増加されるので、III族窒化物半導体の成長が完了した後に気相成長装置の温度を温度Temp2に変更する期間中に、III族窒化物半導体に生じる欠陥性ドナー数を低減できる。
【0024】
本発明に係る方法では、前記圧力の増加は前記III族窒化物半導体の成長期間中に開始されることができる。この方法によれば、成長期間中に成長当初の圧力より大きい圧力で変更期間の工程に進むので、III族窒化物半導体に生じる欠陥性ドナー数を低減できる。
【0025】
本発明に係る方法では、前記圧力の増加は前記気相成長装置の温度の変更期間中に開始されることができる。この方法によれば、変更期間中の圧力は、成長期間の終期の圧力より大きいので、III族窒化物半導体に生じる欠陥性ドナー数を低減できる。
【0026】
本発明に係るIII族窒化物半導体を成長する方法であって、当該方法は、(a)アンモニアおよびIII族有機金属物質を含むガスを気相成長装置に供給して、III族窒化物半導体を成長する工程と、(b)前記III族有機金属物質を前記気相成長装置へ供給することを第1の時刻において停止して、前記III族窒化物半導体の成長を終了する工程と、(c)前記第1の時刻後の第2の時刻において前記気相成長装置の温度が前記第1の時刻における前記気相成長装置の温度Temp1よりも低い温度Temp2になるように、アンモニアを含むガスを供給しながら前記第1の時刻以降の期間中に前記気相成長装置の温度を変更する工程とを備え、前記III族窒化物半導体の成長期間では、前記温度Temp1よりも高い温度Temp3から前記温度Temp1へ前記気相成長装置の温度が変更される。
【0027】
この方法によれば、III族有機金属物質を気相成長装置へ供給することを停止する前に温度Temp3から温度Temp1に変更すると共に、III族窒化物半導体の成長が完了した後に気相成長装置の温度を温度Temp1から温度Temp2に変更するので、変更期間中にIII族窒化物半導体に生じる欠陥性ドナー数を低減できる。
【0028】
本発明に係るIII族窒化物半導体を成長する方法であって、当該方法は、(a)アンモニアおよびIII族有機金属物質を含むガスを気相成長装置に供給して、III族窒化物半導体を成長する工程と、(b)前記III族有機金属物質を前記気相成長装置へ供給することを第1の時刻において停止して、前記III族窒化物半導体の成長を終了する工程と、(c)前記第1の時刻後の第2の時刻において前記気相成長装置の温度が前記第1の時刻における前記気相成長装置の温度Temp1よりも低い温度Temp2になるように、前記アンモニアを含むガスを供給しながら前記第1の時刻以降の期間中に前記気相成長装置の温度を変更する工程とを備え、以下(1)〜(5)の少なくともいずれか一つの変更が為される:
(1)前記III族窒化物半導体の成長期間および前記気相成長装置の温度の変更期間の少なくともいずれかの期間中に、前記アンモニアの供給量が増加される、
(2)前記成長期間および前記変更期間の少なくともいずれかの期間中に、前記水素の供給量が減少される、
(3)前記成長期間および前記変更期間の少なくともいずれかの期間中に、窒素が第1の供給量から第2の供給量へ増加される、
(4)前記III族窒化物半導体の成長期間に、前記気相成長装置の温度が前記温度Temp1よりも高い温度Temp3から前記温度Temp1へ変更される、
(5)前記成長期間および前記変更期間の少なくともいずれかの期間中に、前記気相成長装置の圧力は第1の圧力値から第2の圧力値へ増加される。
【0029】
この方法によれば、変更期間中にIII族窒化物半導体に生じる欠陥性ドナーを低減できる。
【0030】
本発明に係る発明は、III族窒化物半導体装置を作製する方法であって、当該方法は、(a)上記いずれかの方法に従ってIII族窒化物半導体層を成長する工程と、(b)前記III族窒化物半導体層上にショットキ電極を形成する工程とを備える。
【0031】
この方法によれば、III族窒化物半導体表面の欠陥性ドナーに起因するショットキ接合のリーク電流を低減できる。また、ショットキ接合のバリアハイトの減少を小さくできる。例えば、ショットキバリアダイオードでは、ショットキ電極のリーク電流が低減される。例えば高電子移動度トランジスタのショットキゲートでは、ゲートリーク電流が低減される。
【0032】
本発明に係る発明は、III族窒化物半導体装置を作製する方法であって、当該方法は、(a)上記いずれかの方法に従ってp型のIII族窒化物半導体層を成長する工程と、(b)前記III族窒化物半導体層上にオーミック電極を形成する工程とを備える。
【0033】
この方法によれば、III族窒化物半導体表面の欠陥性ドナーに起因するオーミック接合の抵抗を低減できる。例えば、pn接合ダイオード、pin接合ダイオード、発光ダイオード、半導体レーザ等のp型III族窒化物半導体にオーミック接合する電極のコンタクト抵抗を低減することができる。
【0034】
本発明に係る上記方法では、前記III族窒化物半導体はAlGaNまたはAlNであることが好ましい。この方法によれば、アルミニウムを含むIII族窒化物半導体の表面に欠陥性ドナーが形成されることを抑制できる。
【0035】
本発明に係る上記方法では、前記III族窒化物半導体はn型GaNであることが好ましい。例えば、n型GaNにショットキ接合を成すショットキ電極を形成すれば、ショットキ電極のリーク電流が低減される。
【0036】
本発明に係る上記方法では、前記III族窒化物半導体はp型GaNであることが好ましい。この方法によれば、例えば、p型GaNにオーミック接合を成す電極を形成すれば、電極のコンタクト抵抗が低減される。
【0037】
本発明に係る上記方法では、前記III族窒化物半導体はi型GaNであることが好ましい。この方法によれば、i型GaNの表面に欠陥性ドナーが形成されることを抑制できる。これにより、欠陥性ドナーに起因する表面リーク電流がi型GaNの表面において低減される。
【0038】
本発明の上記の目的および他の目的、特徴、並びに利点は、添付図面を参照して進められる本発明の好適な実施の形態の以下の詳細な記述から、より容易に明らかになる。
【発明の効果】
【0039】
以上説明したように、本発明によれば、III族窒化物の表面欠陥の数を低減可能な、III族窒化物半導体を成長する方法が提供される。また、III族窒化物半導体装置を作製する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1(A)〜図1(F)は、第1の実施の形態に係るIII族窒化物半導体を成長する方法を示す図面である。
【図2】図2は、本実施の形態に係るIII族窒化物半導体を成長するために使用可能な結晶成長装置を示す。
【図3】図3(A)および図3(B)は、第1の実施の形態に係るIII族窒化物半導体装置を作製する方法を示すフロー図である。
【図4】図4(A)〜図4(F)は、第1の実施の形態の変形例に係るIII族窒化物半導体を成長する方法を示す図面である。
【図5】図5(A)〜図5(F)は、第2の実施の形態に係るIII族窒化物半導体を成長する方法を示す図面である。
【図6】図6(A)〜図6(F)は、第2の実施の形態の変形例に係るIII族窒化物半導体を成長する方法を示す図面である。
【図7】図7(A)〜図7(F)は、実験例のIII族窒化物半導体を成長する方法を示す図面である。
【図8】図8(A)〜図8(F)は、第3の実施の形態に係るIII族窒化物半導体を成長する方法を示す図面である。
【図9】図9(A)〜図9(F)は、第3の実施の形態の変形例に係るIII族窒化物半導体を成長する方法を示す図面である。
【図10】図10(A)〜図10(F)は、第3の実施の形態の変形例に係るIII族窒化物半導体を成長する方法を示す図面である。
【図11】図11(A)〜図11(F)は、第4の実施の形態に係るIII族窒化物半導体を成長する方法を示す図面である。
【図12】図12(A)〜図12(F)は、第5の実施の形態に係るIII族窒化物半導体を成長する方法を示す図面である。
【図13】図13(A)〜図13(F)は、第6の実施の形態に係るIII族窒化物半導体を成長する方法を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明の知見は、例示として示された添付図面を参照して以下の詳細な記述を考慮することによって容易に理解できる。引き続いて、添付図面を参照しながら、本発明のIII族窒化物半導体を成長する方法、およびIII族窒化物半導体装置を作製する方法に係る実施の形態を説明する。可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付する。
【0042】
(第1の実施の形態)
図1(A)〜図1(F)は、本実施の形態に係るIII族窒化物半導体を成長する方法を示す図面である。図2は、本実施の形態に係るIII族窒化物半導体を成長するために使用可能な結晶成長装置を示す。この結晶成長装置11は、有機金属気相成長炉であることができる。結晶成長装置11は、チャンバ13内に設けられた反応管15を含む。反応管15の開口15aには、サセプタ17が位置している。サセプタ17上には、基板Wを配置できる。反応管15の一端15bは、配管19a〜19gに接続されており、配管19a〜19gからの原料ガスを受け入れる。配管19a〜19gの各々にはマスフローコントローラが設けられている。反応管15の他端15cは、ゲートバルブ21を介して排気ポンプ23に接続されている。各マスフローコントローラを用いてガスの流量の制御を行うことができる。また、ゲートバルブ21を調整することにより、反応管15の圧力を制御することができる。各マスフローコントローラおよびゲートバルブ21は、制御装置に接続されているので、これらは個々にまたは連携するように制御されることができる。
【0043】
図1(F)に示されるように、この方法は、III族窒化物半導体を成長する工程S1と、III族有機金属物質物質の供給を停止する工程S2と、アフターフロー工程S3と、パージ工程S4とを含む。成長工程S1では、基板W上にIII族窒化物半導体を成長する。III族窒化物半導体は、例えば窒化ガリウム系物質であり、あるいは窒化アルミニウムである。窒化ガリウム系物質は、例えば、GaN、AlGaN等であり、さらにInGaN、InAlGaNを含むことができる。基板Wは、窒化ガリウム系半導体といったIII族窒化物半導体を下地として含むことができる。この下地は、GaN、AlNといったIII族窒化物支持体上に設けられている。
【0044】
成長工程S1では、アンモニアおよびIII族有機金属物質を含むガスG1を気相成長装置11の成長炉15に供給して、III族窒化物半導体を成長する。III族有機金属物質としては、例えば、トリメチルガリウム(TMG)、トリメチルアルミニウム(TMAl)等を用いることができる。例えば、GaNを成長するときは、窒素化合物源23aからアンモニア源を供給すると共に、ガリウム源23bからTMGを供給する。有機金属原料のためのバブリングガスとして、水素ガス、窒素ガス、不活性ガス等を用いることができる。これらの配管とは別に、水素ガスおよび窒素ガスをそれぞれ反応炉15に供給する配管19d、19eが設けられている。また、例えば、AlGaNを成長するときは、窒素化合物源23aからアンモニア源を供給し、ガリウム源23bからTMGを供給すると共に、アルミニウム源23cからTMAlを供給する。さらに、III族窒化物半導体にn導電性を与えるためにn型ドーパント源23fが配管19fを介して反応炉15に接続されており、またIII族窒化物半導体にp導電性を与えるためにp型ドーパント源23gが配管19gを介して反応炉15に接続されている。
【0045】
窒化ガリウムを成長する工程における成膜条件の一例:
TMG供給量:320μmol/sec
NH流量:9slm
流量:11slm
流量:0slm
反応炉の圧力:26664パスカル(200torr)
反応炉内の温度:摂氏1050度
である。III族窒化物半導体の成長期間Taでは、図1(A)に示されるようにアンモニア流量は一定に保たれ、図1(B)に示されるように水素流量も一定に保たれ、図1(D)に示されるようにTMG供給量も一定に保たれ、図1(E)に示されるように圧力も一定に保たれる。
【0046】
工程S2では、図1(D)に示されるように、時刻t1においてIII族有機金属物質を気相成長装置11へ供給することを停止する。これにより、III族窒化物半導体の成長が終了する。
【0047】
工程S3では、時刻t2において気相成長装置11の反応炉15の温度が時刻t1における温度Temp1よりも低い温度Temp2になるように、アンモニアを含むガスを供給しながら時刻t1以降の期間中に気相成長装置11の温度を変更する。温度変更期間Tb中に、アンモニアの供給量が増加される。
【0048】
気相成長装置11へのIII族有機金属原料の供給が停止されると共に、アンモニアの供給量が増加されるので、III族窒化物半導体の成長が完了した後に気相成長装置11の温度を温度Temp2に変更する期間中に、III族窒化物半導体に発生する欠陥性ドナーの数が低減される。
【0049】
本実施例では、図1(F)に示されるように、反応炉15の温度の変更を時刻t1に開始する。温度変更の例として、成長のための温度摂氏1050度から時刻t2(例えば、時刻t1から480秒経過した時刻)に摂氏450度になるように行われる。また、アンモニアの供給量が時刻t1において増加される。
【0050】
アフターフロー工程における条件の一例:
TMG供給量:0μmol/sec
NH流量:11slm
流量:11slm
流量:0slm
反応炉の圧力:26664パスカル(200torr)
反応炉内の温度:摂氏1050度から摂氏450度へ減少
である。本実施例では、アンモニアの供給量の増加が温度変更期間Tbにおいて行われているけれども、成長期間Taおよび温度変更期間Tbの少なくともいずれかの期間中に、アンモニアの供給量を増加するようにしてもよい。
【0051】
アンモニアの供給量の増加を成長期間Ta中に開始すれば、III族窒化物半導体の成長の終了時におけるアンモニアの供給量はIII族窒化物半導体の成長の開始時におけるアンモニアの供給量よりも大きく、また気相成長装置11の温度を変更する期間中のアンモニアの供給量はIII族窒化物半導体の成長の終了時t1におけるアンモニアの供給量よりも大きいか又は等しい。III族窒化物半導体の成長当初のアンモニア供給量より多いアンモニアを成長期間Ta中に供給しながら変更期間Tbの工程に進むので、欠陥性ドナーがIII族窒化物半導体に生じることを低減できる。
【0052】
アンモニアの供給量の増加を温度変更期間Tb中に開始すれば、気相成長装置11の温度を変更する期間中のアンモニアの供給量は、III族窒化物半導体の成長の終了時におけるアンモニアの供給量以上である。成長期間Taの終期のアンモニア供給量より多いアンモニアを変更期間Tb中に供給するので、III族窒化物半導体に発生する欠陥性ドナーの数が低減される。
【0053】
工程S4では、図1(A)および図1(B)に示されるように、アンモニアおよび水素の供給量を減らす。また、図1(C)に示すように、反応炉15に窒素ガスを供給する。図1(F)に示されるように、反応炉15の温度を更に低くする。これにより、反応炉15の温度は時刻t2で摂氏450度程度にあるが、反応炉15は室温近くの温度まで冷却される。また、反応炉15の圧力も常圧に調整される。この後に、III族窒化物半導体がエピタキシャル成長されたエピタキシャル基板が反応炉15から取り出される。
【0054】
このような成膜方法はIII族窒化物半導体装置を作製するために利用される。図3(A)に示されるように、この作製方法は、III族窒化物ウエハを準備する工程S111と、上記方法に従ってIII族窒化物半導体層を成長する工程S112と、III族窒化物半導体層上にショットキ電極を形成する工程S113とを備える。必要な場合には、III族窒化物半導体層の成長に先立って、一または複数のIII族窒化物半導体層を成長することができる。この方法によれば、III族窒化物半導体表面の欠陥性ドナーに起因するショットキ接合のリーク電流を低減できる。また、ショットキ接合のバリアハイトの減少を小さくできる。ショットキバリアダイオードでは、ショットキ電極のリーク電流が低減される。例えば高電子移動度トランジスタのショットキゲートでは、ゲートリーク電流が低減される。
【0055】
あるいは、図3(B)に示されるように、この作製方法は、III族窒化物ウエハを準備する工程S121と、上記方法に従ってp型のIII族窒化物半導体層を成長する工程S122と、III族窒化物半導体層上にオーミック電極を形成する工程S123とを備える。必要な場合には、p型のIII族窒化物半導体層の成長に先立って、一または複数のIII族窒化物半導体層を成長することができる。この方法によれば、III族窒化物半導体表面の欠陥性ドナーに起因するオーミック接合の抵抗を低減できる。pn接合ダイオード、pin接合ダイオード、発光ダイオード、半導体レーザ等のp型III族窒化物半導体にオーミック接合する電極のコンタクト抵抗を低減することができる。また、p型のIII族窒化物半導体層に替えてn型のIII族窒化物半導体層を成長することもできる。
【0056】
(第2の実施の形態)
図4(A)〜図4(F)は、本実施の形態に係るIII族窒化物半導体を成長する方法を示す図面である。図4(A)〜図4(F)に示された工程フローも、図2に示された結晶成長装置を用いて行われる。図4(F)に示されるように、この方法は、III族窒化物半導体を成長する工程S11と、III族有機金属物質の供給を停止する工程S12と、アフターフロー工程S13と、パージ工程S14とを含む。成長工程S11では、基板W上にIII族窒化物半導体を成長する。
【0057】
成長工程S11では、アンモニアおよびIII族有機金属物質を含むガスG1を気相成長装置11の成長炉15に供給して、III族窒化物半導体を成長する。例えば、GaNを成長するときは、窒素化合物源23aからアンモニア源を供給すると共に、ガリウム源23bからTMGを供給する。
【0058】
窒化ガリウムを成長する工程における成膜条件の一例:
TMG供給量:320μmol/sec
NH流量:9slm
流量:11slm
流量:0slm
反応炉の圧力:26664パスカル(200torr)
反応炉内の温度:摂氏1050度
である。III族窒化物半導体の成長期間Taでは、図4(A)に示されるようにアンモニア流量は一定に保たれ、図4(B)に示されるように水素流量も一定に保たれ、図4(D)に示されるようにTMG供給量も一定に保たれ、図4(E)に示されるように圧力も一定に保たれる。
【0059】
工程S12では、図4(D)に示されるように、時刻t3においてIII族有機金属物質を気相成長装置11へ供給することを停止する。これにより、III族窒化物半導体の成長を終了する。
【0060】
工程S13では、気相成長装置11の反応炉15の温度が時刻t3における温度Temp1よりも低い温度Temp2に時刻t4においてなるように、アンモニアを含むガスを供給しながら時刻t3以降の期間中に気相成長装置11の温度を変更する。
【0061】
この方法によれば、気相成長装置11へのIII族有機金属物質の供給が停止されると共に、水素の供給量が減少されるので、III族窒化物半導体の成長が完了した後に気相成長装置11の温度を温度Temp2に変更する期間中に、欠陥性ドナーがIII族窒化物半導体に生じることを低減できる。
【0062】
本実施例では、図4(F)に示されるように、反応炉15の温度の変更を時刻t3に開始する。一実施例の温度変更は、成長のための温度摂氏1050度から時刻t4(例えば、時刻t3から480秒経過した時刻)に摂氏450度になるように行われる。また、水素の供給量が時刻t3において減少される。
【0063】
アフターフロー工程における条件の一例:
TMG供給量:0μmol/sec
NH流量:11slm
流量:2slm
流量:0slm
反応炉の圧力:26664パスカル(200torr)
反応炉内の温度:摂氏1050度から摂氏450度へ減少である。本実施例では、水素の供給量の減少が温度変更期間Tbにおいて行われているけれども、成長期間Taおよび温度変更期間Tbの少なくともいずれかの期間中に、水素の供給量を減少するようにしてもよい。
【0064】
水素の供給量の減少を成長期間Ta中に開始すれば、III族窒化物半導体の成長の終了時における水素の供給量はIII族窒化物半導体の成長の開始時における水素の供給量よりも少なく、また気相成長装置11の温度を変更する期間中の水素の供給量はIII族窒化物半導体の成長の終了時における水素の供給量にほぼ等しいか又は少ない。成長期間Ta中に成長当初の水素の供給量より少ない量の水素を供給しながら変更期間の工程に進むので、欠陥性ドナーがIII族窒化物半導体に生じることを低減できる。
【0065】
水素の供給量の減少を温度変更期間Tb中に開始すれば、温度変更期間Tb中の水素の供給量は、III族窒化物半導体の成長の終了時t3における水素の供給量に少ない。変更期間Tb中に、成長期間Taの終期の水素供給量より少ない量の水素を供給するので、欠陥性ドナーがIII族窒化物半導体に生じることを低減できる。
【0066】
工程S14では、工程S4と同様に行われる。工程S14の後に、III族窒化物半導体がエピタキシャル成長されたエピタキシャル基板が反応炉15から取り出される。このような成膜方法は、第1の実施の形態に説明されたIII族窒化物半導体装置を作製するために利用される。
【0067】
図5(A)〜図5(F)は、第2の実施の形態の一変形例のIII族窒化物半導体を成長する方法を示す図面である。図5(A)〜図5(F)に示された工程フローも、図2に示された結晶成長装置を用いて行われる。図5(F)に示されるように、この方法は、III族窒化物半導体を成長する工程S21と、III族有機金属物質の供給を停止する工程S22と、アフターフロー工程S23と、パージ工程S24とを含む。成長工程S21では基板W上にIII族窒化物半導体を堆積する。
【0068】
成長工程S21では、アンモニアおよびIII族有機金属物質を含むガスG1を気相成長装置11の成長炉15に供給して、III族窒化物半導体を成長する。
窒化ガリウムを成長する工程における成膜条件の一例:
TMG供給量:320μmol/sec
NH流量:9slm
流量:11slm
流量:0slm
反応炉の圧力:26664パスカル(200torr)
反応炉内の温度:摂氏1050度
である。III族窒化物半導体の成長期間Taでは、図5(A)に示されるようにアンモニア流量は一定に保たれ、図5(B)に示されるように水素流量も一定に保たれ、図5(D)に示されるようにTMG供給量も一定に保たれ、図5(E)に示されるように圧力も一定に保たれる。
【0069】
工程S22では、図4(D)に示されるように、時刻t5においてIII族有機金属物質を気相成長装置11へ供給することを停止する。これにより、III族窒化物半導体の成長を終了する。
【0070】
工程S23では、第2の実施の形態と同様に時刻t5以降の期間中に気相成長装置11の温度を変更する。温度変更期間Tbに、水素の供給量が減少されると共にアンモニアの供給量が増加される。この方法によってもIII族窒化物半導体の成長が完了した後に気相成長装置11の温度を温度Temp2に変更する期間中に、欠陥性ドナーがIII族窒化物半導体に生じることを低減できる。
【0071】
本実施例では、図5(F)に示されるように、反応炉15の温度の変更を時刻t5に開始する。一実施例では、時刻t5において、アンモニア流量が増加されると共に、水素の流量が減少される。
【0072】
アフターフロー工程における成膜条件の一例:
TMG供給量:0μmol/sec
NH流量:16.5slm
流量:3slm
流量:0slm
反応炉の圧力:26664パスカル(200torr)
反応炉内の温度:摂氏1050度から摂氏450度へ減少
である。工程S24は、工程S4と同様に行われる。
【0073】
図6(A)〜図6(F)は第2の実施の形態の別の変形例のIII族窒化物半導体を成長する方法を示す図面である。図6(A)〜図6(F)に示された工程フローも、図2に示された結晶成長装置を用いて行われる。図6(F)に示されるように、この方法は、III族窒化物半導体を成長する工程S31と、III族有機金属物質の供給を停止する工程S32と、アフターフロー工程S33と、パージ工程S34とを含む。
【0074】
成長工程S31では基板W上にIII族窒化物半導体を堆積する。成長工程S31では、アンモニアおよびIII族有機金属物質を含むガスG1を気相成長装置11の成長炉15に供給して、III族窒化物半導体を成長する。成長工程S31中において、アンモニアの流量を増加すると共に水素の流量を減少する。時刻t9に先立つ時刻、例えば時刻t91(成膜完了前210秒)で、アンモニアの流量の増加を開始する。また、時刻t9に先立つ時刻、例えば時刻t91(成膜完了前210秒)で、水素の流量の減少を開始する。時刻t9に先立つ時刻、例えば時刻t92(成膜完了前50秒)で、アンモニアの流量の増加を終了する。また、時刻t9に先立つ時刻、例えば時刻t92(成膜完了前50秒)で、水素の流量の減少を終了する。
【0075】
窒化ガリウムを成長する工程における成膜条件の一例(時刻t91):
TMG供給量:320μmol/sec
NH流量:9slm
流量:11slm
流量:0slm
反応炉の圧力:26664パスカル(200torr)
反応炉内の温度:摂氏1050度
である。
【0076】
窒化ガリウムを成長する工程における成膜条件の一例(時刻t92):
TMG供給量:320μmol/sec
NH流量:16.5slm
流量:3.5slm
流量:0slm
反応炉の圧力:26664パスカル(200torr)
反応炉内の温度:摂氏1050度
である。例えば、III族窒化物半導体の成長期間Taでは、図6(D)に示されるようにTMG供給量も一定に保たれ、図6(E)に示されるように圧力も一定に保たれる。
【0077】
工程S32では、図6(D)に示されるように、時刻t9においてIII族有機金属物質を気相成長装置11へ供給することを停止する。これにより、III族窒化物半導体の成長を終了する。
【0078】
工程S33では、図6(F)に示されるように、反応炉15の温度の変更を時刻t9に開始する。この方法によってもIII族窒化物半導体の成長が完了した後に気相成長装置11の温度を温度Temp2に変更する期間中に、欠陥性ドナーがIII族窒化物半導体に生じることを低減できる。一実施例の温度変更は、例えば第2の実施の形態と同様に行われることができる。
【0079】
アフターフロー工程における条件の一例:
TMG供給量:0μmol/sec
NH流量:16.5slm
流量:3slm
流量:0slm
反応炉の圧力:26664パスカル(200torr)
反応炉内の温度:摂氏1050度から摂氏450度へ減少
である。工程S34では、工程S4と同様に行われる。
【0080】
上記の変形例では、ガス供給量の変更が成長期間Taおよび温度変更期間Tbのいずれかにおいて行われているけれども、成長期間Taおよび温度変更期間Tbの少なくともいずれかの期間中に、供給量の変更を行うようにしてもよい。
【0081】
(実施例1)
自立GaN基板およびサファイアテンプレートを準備する。低転位自立GaN基板の転位密度は、例えば1×10cm−2である。自立GaN基板およびサファイアテンプレートを有機金属気相成長(OMVPE)炉に配置する。基板表面に熱クリーニング(thermal heat cleaning)を行う。この条件は、摂氏990度の温度、16.5slmのNH流量、3.5slmのH流量、200torrの圧力、処理時間600秒間である。窒化ガリウムを成長するとき、成長条件は、摂氏1050度の温度、9slmのNH流量、11slmのH流量、320μmol/secのTMG供給量、10ppmに希釈した5sccmのSiHの流量200torrの圧力である。この成膜により、2μmのnGaN膜が得られる、キャリア濃度は、1×1018cm−3程度である。
【0082】
図7に示される工程に従って、窒化ガリウムを成長する。工程S41における成長条件は、摂氏1050度の温度、9slmのNH流量、11slmのH流量、320μmol/secのTMG、10ppmに希釈した0.2sccmのSiHの流量、200torrの圧力である。工程S42では、時刻t7においてTMGの供給を終了して成膜を完了する。この成膜により、10μmのnGaN膜が得られる、キャリア濃度は、4×1016cm−3程度である。成長終了後、温度の降下を開始する。工程S43では、降下時間480秒間で摂氏1050度から450度まで温度を一定速度で降温する。条件は、9slmのNH、11slmのH流量、および200torrの圧力である。時刻t8(480秒経過すると)では、摂氏450度まで成長炉の温度が低くなる。工程S44では、流量8slmのNに徐々に切り換えると共に、さらに温度を下げて成長フローを終了する。これらの工程を経てGaN基板およびテンプレートを用いて作製された試料は、それぞれ、エピタキシャル基板G、Sとして参照される。
【0083】
図5(A)〜図5(F)に示された製造フローの例示条件に従って製造フローを行う。つまり、成長終了後のアフターフロー工程においてアンモニア流量として16.5slmおよび水素の流量として3.5slmを用いる。これらの工程を適用してGaN基板およびテンプレートを用いて同様に作製された試料は、それぞれ、エピタキシャル基板G、Sして参照される。
【0084】
また、図6(A)〜図6(F)に示された例示条件に従って製造フローを行う。つまり、成長終了に210秒先立ってアンモニアの供給量(9slm)の増加を開始すると共に、成長終了に30秒先立ってアンモニアの供給量(16.5slm)の増加を停止する。その後、アンモニアの供給量を一定(16.5slm)に保つ。また、成長終了に210秒先立って水素アンモニアの供給量(9slm)の減少を開始すると共に、成長終了に30秒先立ってアンモニアの供給量(3.5slm)の減少を停止する。その後、水素の供給量を一定(3.5slm)に保つ。これらの工程を適用してGaN基板およびテンプレートを用いて同様に作製された試料は、それぞれ、エピタキシャル基板G、Sして参照される。
【0085】
これらのエピタキシャル基板G、S、G、S、G、S上にダブルショットキー電極を形成して、ショットキバリアダイオードDG、DS、DG、DS、DG、DSを作製する。ショットキ金属としてAu(金)を使用し、抵抗加熱を用いる真空蒸着により電極を作製した。ダブルショットキ電極を用いてこれらのデバイスを評価した。ショットキバリアダイオードDG、DG、DGおよびショットキバリアダイオードDS、DS、DSの電気特性を示す。
素子名 耐圧(V) 特性オン抵抗
ダイオードDG:181 1.6mΩcm
ダイオードDG:205 1.6mΩcm
ダイオードDG:220 1.6mΩcm
ダイオードDS:112 11mΩcm
ダイオードDS:118 11mΩcm
ダイオードDS:132 11mΩcm
耐圧は、1mA/cmの時の逆方向電圧を示す。特性オン抵抗は、電流密度200mA/cmにおける抵抗を示す。
【0086】
(第3の実施の形態)
図8(A)〜図8(F)は、本実施の形態に係るIII族窒化物半導体を成長する方法を示す図面である。図8(A)〜図8(F)に示された工程フローも、図2に示された結晶成長装置を用いて行われる。図8(F)に示されるように、この方法は、III族窒化物半導体を成長する工程S51と、III族有機金属物質の供給を停止する工程S52と、アフターフロー工程S53と、パージ工程S54とを含む。成長工程S51では、基板W上にIII族窒化物半導体を堆積する。
【0087】
成長工程S51を、例えば工程S31と同じく行うことができる。工程S52では、図8(D)に示されるように、時刻t11においてIII族有機金属物質を気相成長装置11へ供給することを停止する。これにより、III族窒化物半導体の成長を終了する。次いで、アフターフロー工程S53を行う。この実施の形態では、時刻t11以降の時刻において、窒素の供給を増加する。本実施例では、窒素の供給が、0slmから11slmに変更される。
【0088】
この方法によれば、III族有機金属物質を気相成長装置11への供給の停止と同時または停止の後に、窒素の供給量が増加されるので、III族窒化物半導体の成長が完了した後に気相成長装置11の温度を温度Temp2に変更する期間Tb中に、欠陥性ドナーがIII族窒化物半導体に生じることを低減できる。
【0089】
本実施例では、時刻t11以降の時刻において、窒素の供給を増加すると共に水素の供給を減少している。水素の減少により、欠陥性ドナーの発生が低減される。水素の供給量の減少の後に、水素の供給を停止することが好ましい。また、水素供給の減少の開始は、アフタフロー工程S53中の早い時刻に行われることが好ましく、例えばTMGの供給の停止に応答して行われる。特に、水素の供給量の減少は、TMGの供給が停止される時刻t11に行われることが好ましい。
【0090】
窒化ガリウムを成長する工程における成膜条件の一例(時刻t11まで):
TMG供給量:320μmol/sec
NH流量:9slm
流量:11slm
流量:0slm
反応炉の圧力:26664パスカル(200torr)
反応炉内の温度:摂氏1050度
である。
【0091】
アフターフロー工程における条件の一例(時刻t11〜t12):
TMG供給量:0μmol/sec
NH流量:9slm
流量:0slm
流量:11slm
反応炉の圧力:26664パスカル(200torr)
反応炉内の温度:摂氏1050度から摂氏450度へ減少
である。工程S54では、工程S4と同様に行われる。
【0092】
図9(A)〜図9(F)は、第3の実施の形態の一変形例に係るIII族窒化物半導体を成長する方法を示す図面である。図9(A)〜図9(F)に示された工程フローも、図2に示された結晶成長装置を用いて行われる。図9(F)に示されるように、この方法は、III族窒化物半導体を成長する工程S61と、III族有機金属物質の供給を停止する工程S62と、アフターフロー工程S63と、パージ工程S64とを含む。成長工程S61では基板W上にIII族窒化物半導体を成長する。時刻t13において、TMGの供給の供給を停止して成膜を完了する。
【0093】
成長工程S61では、時刻t13に先立つ時刻t131において、窒素の供給量を増加する。本実施例では、窒素の供給が、0slmから11slmに変更される。窒素の供給量の変更の後に、アフターフロー工程S63が開始される。この方法によれば、成長期間Ta中に成長当初の窒素の供給量より多い量の窒素を供給しながら変更期間Tbの工程に進むので、欠陥性ドナーがIII族窒化物半導体に生じることを低減できる。窒素供給の増加は、例えば時刻t13の30秒前に行われる。
【0094】
本実施例では、例えば時刻t13に先だつ時刻t131において、窒素の供給を増加すると共に水素の供給を減少する。水素の減少により、欠陥性ドナーの発生が低減される。水素の供給の減少の後に、水素の供給を停止することが好ましい。また、水素供給の減少の開始は、成長工程S61中の後半に行われることが好ましく、例えば窒素の増加に応答して行われる。
【0095】
窒化ガリウムを成長する工程における成膜条件の一例(時刻t131まで):
TMG供給量:320μmol/sec
NH流量:16.5slm
流量:11slm
流量:0slm
反応炉の圧力:26664パスカル(200torr)
反応炉内の温度:摂氏1050度
である。
【0096】
窒化ガリウムを成長する工程における成膜条件の一例(時刻t131以降):
TMG供給量:320μmol/sec
NH流量:16.5slm
流量:0slm
流量:11slm
反応炉の圧力:26664パスカル(200torr)
反応炉内の温度:摂氏1050度
である。
【0097】
アフターフロー工程における条件の一例(時刻t13〜t14):
TMG供給量:0μmol/sec
NH流量:9slm
流量:0slm
流量:11slm
反応炉の圧力:26664パスカル(200torr)
反応炉内の温度:摂氏1050度から摂氏450度へ減少
である。工程S64は、工程S4と同様に行われる。
【0098】
上記の変形例では、ガス供給量の変更が成長期間Taおよび温度変更期間Tbのいずれかにおいて行われているけれども、成長期間Taおよび温度変更期間Tbの少なくともいずれかの期間中に、供給量の変更を行うようにしてもよい。
【0099】
(実施例2)
窒化ガリウム基板およびサファイアテンプレートを用いて、実施例1と同様にしてエピタキシャル基板G、S、G、Sを作製する。具体的には、図8(A)〜図8(F)および図9(A)〜図9(F)に示された製造フローの例示条件が使用される。
【0100】
これらのエピタキシャル基板G、S、G、S上にダブルショットキー電極を形成して、ショットキバリアダイオードDG、DS、DG、DSを作製する。ダブルショットキ電極を用いてこれらのデバイスを評価した。ショットキバリアダイオーDG、DS、DG、DSの電気特性を示す。
素子名 耐圧(V) 特性オン抵抗
ダイオードDG:181 1.6mΩcm
ダイオードDG:196 1.6mΩcm
ダイオードDG:205 1.6mΩcm
ダイオードDS:112 11mΩcm
ダイオードDS:122 11mΩcm
ダイオードDS:125 11mΩcm
【0101】
(第4の実施の形態)
図10(A)〜図10(F)は、本実施の形態に係るIII族窒化物半導体を成長する方法を示す図面である。図10(A)〜図10(F)に示された工程フローも、図2に示された結晶成長装置を用いて行われる。図10(F)に示されるように、この方法は、III族窒化物半導体を成長する工程S71と、III族有機金属物質の供給を停止する工程S72と、アフターフロー工程S73と、パージ工程S74とを含む。
【0102】
成長工程S71では、基板W上にIII族窒化物半導体を堆積する。成長工程S71は、例えば成長工程S1と同様に行うことができる。工程S72では、図10(D)に示されるように、時刻t15においてIII族有機金属物質を気相成長装置11へ供給することを停止する。これにより、III族窒化物半導体の成長を終了する。次いで、アフターフロー工程S73が開始される。この実施の形態では、時刻t15以降の時刻において、炉内の圧力を増加する。本実施例では、圧力が、200Torrから500Torrに変更される。
【0103】
この方法によれば、変更期間Tb中の圧力は、成長期間Taの終期の圧力より大きいので、欠陥性ドナーがIII族窒化物半導体に生じることを低減できる。
【0104】
窒化ガリウムを成長する工程における成膜条件の一例(時刻t15まで):
TMG供給量:320μmol/sec
NH流量:9slm
流量:11slm
流量:0slm
反応炉の圧力:26664パスカル(200torr)
反応炉内の温度:摂氏1050度
である。
【0105】
アフターフロー工程における条件の一例(時刻t15〜t16):
TMG供給量:0μmol/sec
NH流量:9slm
流量:11slm
流量:0slm
反応炉の圧力:66661パスカル(500torr)
反応炉内の温度:摂氏1050度から摂氏450度へ減少
である。工程S74は、工程S4と同様に行われる。
【0106】
図11(A)〜図11(F)は第4の実施の形態の別の変形例のIII族窒化物半導体を成長する方法を示す図面である。図11(A)〜図11(F)に示された工程フローも、図2に示された結晶成長装置を用いて行われる。図11(F)に示されるように、この方法は、III族窒化物半導体を成長する工程S81と、III族有機金属物質の供給を停止する工程S82と、アフターフロー工程S83と、パージ工程S84とを含む。成長工程S81では基板W上にIII族窒化物半導体を成長する。
【0107】
成長工程S81中において、圧力を増加する。時刻t17に先立つ時刻、例えば時刻t171(成膜完了前210秒)で、圧力の増加を開始する。また、時刻t17に先立つ時刻、例えば時刻t172(成膜完了前50秒)で、圧力の増加を終了する。
【0108】
窒化ガリウムを成長する工程における成膜条件の一例(時刻t171まで):
TMG供給量:320μmol/sec
NH流量:9slm
流量:11slm
流量:0slm
反応炉の圧力:26664パスカル(200torr)
反応炉内の温度:摂氏1050度
である。
【0109】
窒化ガリウムを成長する工程における成膜条件の一例(時刻t172〜t17):
TMG供給量:320μmol/sec
NH流量:9slm
流量:11slm
流量:0slm
反応炉の圧力:66661パスカル(500torr)
反応炉内の温度:摂氏1050度
である。
【0110】
アフターフロー工程における条件の一例(時刻t17〜t18):
TMG供給量:0μmol/sec
NH流量:9slm
流量:11slm
流量:0slm
反応炉の圧力:66661パスカル(500torr)
反応炉内の温度:摂氏1050度から摂氏450度へ減少
である。工程S84は、工程S4と同様に行われる。
【0111】
上記の変形例では、圧力の変更が成長期間Taおよび温度変更期間Tbのいずれかにおいて行われているけれども、成長期間Taおよび温度変更期間Tbの少なくともいずれかの期間中に、圧力の変更を行うようにしてもよい。
【0112】
(実施例3)
窒化ガリウム基板およびサファイアテンプレートを用いて、実施例1と同様にしてエピタキシャル基板G、S、G、Sを作製する。具体的には、図10(A)〜図10(F)および図11(A)〜図11(F)に示された製造フローの例示条件が使用される。
【0113】
これらのエピタキシャル基板G、S、G、S上にダブルショットキー電極を形成して、ショットキバリアダイオードDG、DS、DG、DSを作製する。ダブルショットキ電極を用いてこれらのデバイスを評価した。ショットキバリアダイオーDG、DS、DG、DSの電気特性を示す。
素子名 耐圧(V) 特性オン抵抗
ダイオードDG:181 1.6mΩcm
ダイオードDG:211 1.6mΩcm
ダイオードDG:236 1.6mΩcm
ダイオードDS:112 11mΩcm
ダイオードDS:126 11mΩcm
ダイオードDS:145 11mΩcm
【0114】
(第5の実施の形態)
図12(A)〜図12(F)は、本実施の形態に係るIII族窒化物半導体を成長する方法を示す図面である。図12(A)〜図12(F)に示された工程フローも、図2に示された結晶成長装置を用いて行われる。図12(F)に示されるように、この方法は、III族窒化物半導体を成長する工程S91と、III族有機金属物質の供給を停止する工程S92と、アフターフロー工程S93と、パージ工程S94とを含む。成長工程S91では、基板W上にIII族窒化物半導体を成長する。
【0115】
成長工程S91中において、温度を降下させる。時刻t19に先立つ時刻、例えば時刻t191(成膜完了前210秒)で、温度の減少を開始する。また、時刻t19に先立つ時刻、例えば時刻t192(成膜完了前50秒)で、圧力の減少を終了する。
【0116】
窒化ガリウムを成長する工程における成膜条件の一例(時刻t191まで):
TMG供給量:320μmol/sec
NH流量:9slm
流量:11slm
流量:0slm
反応炉の圧力:26664パスカル(200torr)
反応炉内の温度:摂氏1050度
である。
【0117】
窒化ガリウムを成長する工程における成膜条件の一例(時刻t192):
TMG供給量:320μmol/sec
NH流量:9slm
流量:11slm
流量:0slm
反応炉の圧力:26664パスカル(200torr)
反応炉内の温度:摂氏1000度
である。
【0118】
アフターフロー工程における成膜条件の一例(時刻t19〜t20):
TMG供給量:0μmol/sec
NH流量:9slm
流量:11slm
流量:0slm
反応炉の圧力:26664パスカル(200torr)
反応炉内の温度:摂氏1000度から摂氏450度へ減少
である。工程S94は、工程S4と同様に行われる。
【0119】
(実施例4)
窒化ガリウム基板およびサファイアテンプレートを用いて、実施例1と同様にしてエピタキシャル基板G、Sを作製する。具体的には、図12(A)〜図12(F)に示された製造フローの例示条件が使用される。
【0120】
これらのエピタキシャル基板G、S上にダブルショットキー電極を形成して、ショットキバリアダイオードDG、DSを作製する。ダブルショットキ電極を用いてこれらのデバイスを評価した。ショットキバリアダイオーDG、DSの電気特性を示す。
素子名 耐圧(V) 特性オン抵抗
ダイオードDG:181 1.6mΩcm
ダイオードDG:216 1.6mΩcm
ダイオードDS:112 11mΩcm
ダイオードDS:121 11mΩcm
【0121】
(第6の実施の形態)
図13(A)〜図13(F)は、本実施の形態に係るIII族窒化物半導体を成長する方法を示す図面である。図13(A)〜図13(F)に示された工程フローも、図2に示された結晶成長装置を用いて行われる。図13(F)に示されるように、この方法は、III族窒化物半導体を成長する工程S101と、III族有機金属物質の供給を停止する工程S102と、アフターフロー工程S103と、パージ工程S104とを含む。成長工程S101では、基板W上にIII族窒化物半導体を成長する。
【0122】
成長工程S101中において、圧力を増加する。時刻t21に先立つ時刻、例えば時刻t211(成膜完了前210秒)で、圧力の増加を開始する。時刻t21に先立つ時刻、例えば時刻t212(成膜完了前50秒)で、圧力の増加を終了する。
【0123】
また、成長工程S101中において、アンモニアの供給量を増加する。時刻t21に先立つ時刻、例えば時刻t211(成膜完了前210秒)で、アンモニアの供給量の増加を開始する。時刻t21に先立つ時刻、例えば時刻t212(成膜完了前50秒)で、アンモニアの供給量の増加を終了する。
【0124】
さらに、成長工程S101中において、水素の供給量を減らす。時刻t21に先立つ時刻、例えば時刻t211(成膜完了前210秒)で、水素の供給量の減少を開始する。時刻t21に先立つ時刻、例えば時刻t212(成膜完了前50秒)で、水素の供給量の減少を終了する。
【0125】
この実施の形態では、圧力、アンモニアの供給量および水素の供給量の変化を時刻t211に開始し、また時刻t211に終了しているけれども、必要な場合には、これらの変更開始および変更終了をそれぞれの開始時刻および終了時刻に行うようにしてもよい。
【0126】
窒化ガリウムを成長する工程における成膜条件の一例(時刻t211まで):
TMG供給量:320μmol/sec
NH流量:9slm
流量:11slm
流量:0slm
反応炉の圧力:26664パスカル(200torr)
反応炉内の温度:摂氏1050度
である。
【0127】
窒化ガリウムを成長する工程における成膜条件の一例(時刻t212):
TMG供給量:320μmol/sec
NH流量:16.5slm
流量:3.5slm
流量:0slm
反応炉の圧力:66661パスカル(500torr)
反応炉内の温度:摂氏1050度
である。
【0128】
アフターフロー工程における条件の一例(時刻t21〜t22):
TMG供給量:0μmol/sec
NH流量:16.5slm
流量:3.5slm
流量:0slm
反応炉の圧力:66661パスカル(500torr)
反応炉内の温度:摂氏1050度から摂氏450度へ減少
である。工程S104では、工程S4と同様に行われる。
【0129】
(実施例5)
窒化ガリウム基板およびサファイアテンプレートを用いて、実施例1と同様にしてエピタキシャル基板G、Sを作製する。具体的には、図12(A)〜図12(F)に示された製造フローの例示条件が使用される。
【0130】
これらのエピタキシャル基板G、S上にダブルショットキー電極を形成して、ショットキバリアダイオードDG、DSを作製する。ダブルショットキ電極を用いてこれらのデバイスを評価した。ショットキバリアダイオーDG、DSの電気特性を示す。
素子名 耐圧(V) 特性オン抵抗
ダイオードDG:181 1.6mΩcm
ダイオードDG:243 1.6mΩcm
ダイオードDS:112 11mΩcm
ダイオードDS:151 11mΩcm
【0131】
第1〜第6の実施の形態の説明から理解されるように、以下の変更(1)〜(5)の少なくともいずれか一つの変更が為されることによって、変更期間中に欠陥性ドナーがIII族窒化物半導体に生じることを低減できる。
(1)成長期間Taおよび温度変更期間Tbの少なくともいずれかの期間中に、アンモニアの供給量が増加される。
(2)成長期間Taおよび温度変更期間Tbの少なくともいずれかの期間中に、水素の供給量が減少される。
(3)成長期間Taおよび温度変更期間Tbの少なくともいずれかの期間中に、窒素の供給量が増加される。
(4)成長期間Taに、気相成長装置11の温度を下げる。
(5)成長期間Taおよび温度変更期間Tbの少なくともいずれかの期間中に、気相成長装置の圧力を増加する。例えば、変更(1)〜(5)のいずれか2つの組み合わせ、変更(1)〜(5)のいずれか3つの組み合わせ、変更(1)〜(5)のいずれか4つの組み合わせ、変更(1)〜(5)の組み合わせが可能である。
【0132】
本実施の形態において説明された、III族窒化物半導体を成長する方法およびIII族窒化物半導体装置を作製する方法を説明する。例えば、III族窒化物半導体はAlGaNまたはAlNであることが好ましい。この方法によれば、アルミニウムを含むIII族窒化物半導体の表面に欠陥性ドナーが形成されることを抑制できる。また、例えばIII族窒化物半導体はn型GaNであることが好ましい。例えば、n型GaNにショットキ接合を成すショットキ電極を形成すれば、ショットキ電極のリーク電流が低減される。さらに、例えばIII族窒化物半導体はp型GaNであることが好ましい。この方法によれば、具体的には、p型GaNにオーミック接合を成す電極を形成すれば、電極のコンタクト抵抗が低減される。
【0133】
本発明に係る上記方法では、前記III族窒化物半導体はi型GaNであることが好ましい。この方法によれば、i型GaNの表面に欠陥性ドナーが形成されることを抑制できる。これにより、欠陥性ドナーに起因する表面リーク電流がi型GaNの表面において低減される。
【0134】
好適な実施の形態において本発明の原理を図示し説明してきたが、本発明は、そのような原理から逸脱することなく配置および詳細において変更され得ることは、当業者によって認識される。したがって、特許請求の範囲およびその精神の範囲から来る全ての修正および変更に権利を請求する。
【符号の説明】
【0135】
11…結晶成長装置、13…チャンバ、15…反応管、17…サセプタ、W…基板、19a〜19g…配管、21…ゲートバルブ、G〜G、S〜S…エピタキシャル基板、DG〜DG…ショットキバリアダイオード、DS〜DS…ショットキバリアダイオード、Ta…成長期間、Tb…温度変更期間、S1、S21、S31、S41、S51、S61、S71、S81、S91、S101…III族窒化物半導体を成長する工程、S2、S22、S32、S42、S52、S62、S72、S82、S92、S102…III族有機金属物質の供給を停止する工程、S3、S23、S33、S43、S53、S63、S73、S83、S93、S103…アフターフロー工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
III族窒化物半導体を成長する方法であって、
アンモニアおよびIII族有機金属物質を含むガスを気相成長装置に供給して、III族窒化物半導体を成長する工程と、
前記III族有機金属物質を前記気相成長装置へ供給することを第1の時刻において停止して、前記III族窒化物半導体の成長を終了する工程と、
前記第1の時刻後の第2の時刻において前記気相成長装置の温度が前記第1の時刻における前記気相成長装置の温度Temp1よりも低い温度Temp2になるように、前記アンモニアを含むガスを供給しながら前記第1の時刻以降の期間中に前記気相成長装置の温度を変更する工程と
を備え、
前記III族窒化物半導体の成長期間および前記気相成長装置の温度の変更期間の少なくともいずれかの期間中に、窒素が第1の供給量から第2の供給量へ増加される、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記窒素の供給量の増加は前記III族窒化物半導体の前記成長期間中に開始される、ことを特徴とする請求項1に記載された方法。
【請求項3】
前記窒素の供給量の増加は前記気相成長装置の温度の前記変更期間中に開始される、ことを特徴とする請求項1に記載された方法。
【請求項4】
前記窒素の前記第1の供給量は実質的にゼロである、ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載された方法。
【請求項5】
III族窒化物半導体を成長する方法であって、
水素、アンモニアおよびIII族有機金属物質を含むガスを気相成長装置に供給して、III族窒化物半導体を成長する工程と、
前記III族有機金属物質を前記気相成長装置へ供給することを第1の時刻において停止して、前記III族窒化物半導体の成長を終了する工程と、
前記第1の時刻後の第2の時刻において前記気相成長装置の温度が前記第1の時刻における前記気相成長装置の温度Temp1よりも低い温度Temp2になるように、前記アンモニアを含むガスを供給しながら前記第1の時刻以降の期間中に前記気相成長装置の温度を変更する工程と
を備え、
前記III族窒化物半導体の成長期間および前記気相成長装置の温度の変更期間の少なくともいずれかの期間中に、前記水素の供給量が減少される、ことを特徴とする方法。
【請求項6】
前記水素の供給量の減少は前記III族窒化物半導体の前記成長期間中に開始される、ことを特徴とする請求項5に記載された方法。
【請求項7】
前記水素の供給量の減少は前記気相成長装置の温度の前記変更期間中に開始される、ことを特徴とする請求項5に記載された方法。
【請求項8】
前記減少された水素の供給量は実質的にゼロである、ことを特徴とする請求項5〜請求項7のいずれか一項に記載された方法。
【請求項9】
前記水素の供給量が減少されると共に、前記気相成長装置へ窒素が供給される、ことを特徴とする請求項5〜請求項8のいずれか一項に記載された方法。
【請求項10】
前記水素の供給量が減少されると共に、アンモニアの供給量が増加される、ことを特徴とする請求項5〜請求項8のいずれか一項に記載された方法。
【請求項11】
III族窒化物半導体を成長する方法であって、
アンモニアおよびIII族有機金属物質を含むガスを気相成長装置に供給して、III族窒化物半導体を成長する工程と、
前記III族有機金属物質を前記気相成長装置へ供給することを第1の時刻において停止して、前記III族窒化物半導体の成長を終了する工程と、
前記第1の時刻後の第2の時刻において前記気相成長装置の温度が前記第1の時刻における前記気相成長装置の温度Temp1よりも低い温度Temp2になるように、前記アンモニアを含むガスを供給しながら前記第1の時刻以降の期間中に前記気相成長装置の温度を変更する工程と
を備え、
前記III族窒化物半導体の成長期間および前記気相成長装置の温度の変更期間の少なくともいずれかの期間中に、前記気相成長装置の圧力は第1の圧力値から第2の圧力値へ増加される、ことを特徴とする方法。
【請求項12】
前記圧力の増加は前記III族窒化物半導体の前記成長期間中に開始される、ことを特徴とする請求項10に記載された方法。
【請求項13】
前記圧力の増加は前記気相成長装置の温度の前記変更期間中に開始される、ことを特徴とする請求項10に記載された方法。
【請求項14】
III族窒化物半導体を成長する方法であって、
アンモニアおよびIII族有機金属物質を含むガスを気相成長装置に供給して、III族窒化物半導体を成長する工程と、
前記III族有機金属物質を前記気相成長装置へ供給することを第1の時刻において停止して、前記III族窒化物半導体の成長を終了する工程と、
前記第1の時刻後の第2の時刻において前記気相成長装置の温度が前記第1の時刻における前記気相成長装置の温度Temp1よりも低い温度Temp2になるように、前記アンモニアを含むガスを供給しながら前記第1の時刻以降の期間中に前記気相成長装置の温度を変更する工程と
を備え、
前記III族窒化物半導体の成長期間では、前記温度Temp1よりも高い温度Temp3から前記温度Temp1へ前記気相成長装置の温度が変更される、ことを特徴とする方法。
【請求項15】
III族窒化物半導体を成長する方法であって、
アンモニアおよびIII族有機金属物質を含むガスを気相成長装置に供給して、III族窒化物半導体を成長する工程と、
前記III族有機金属物質を前記気相成長装置へ供給することを第1の時刻において停止して、前記III族窒化物半導体の成長を終了する工程と、
前記第1の時刻後の第2の時刻において前記気相成長装置の温度が前記第1の時刻における前記気相成長装置の温度Temp1よりも低い温度Temp2になるように、前記アンモニアを含むガスを供給しながら前記第1の時刻以降の期間中に前記気相成長装置の温度を変更する工程と
を備え、
以下(1)〜(5)の少なくともいずれか一つの変更が為される:
(1)前記III族窒化物半導体の成長期間および前記気相成長装置の温度の変更期間の少なくともいずれかの期間中に、前記アンモニアの供給量が増加される、
(2)前記成長期間および前記変更期間の少なくともいずれかの期間中に、前記水素の供給量が減少される、
(3)前記成長期間および前記変更期間の少なくともいずれかの期間中に、窒素が第1の供給量から第2の供給量へ増加される、
(4)前記成長期間に、前記気相成長装置の温度が前記温度Temp1よりも高い温度Temp3から前記温度Temp1へ変更される、
(5)前記成長期間および前記変更期間の少なくともいずれかの期間中に、前記気相成長装置の圧力は第1の圧力値から第2の圧力値へ増加される、
ことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−39150(P2012−39150A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243873(P2011−243873)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【分割の表示】特願2006−140788(P2006−140788)の分割
【原出願日】平成18年5月19日(2006.5.19)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】