説明

III族窒化物半導体発光素子の製造方法

【課題】pコンタクト層をp型化し、かつ電極とのコンタクト抵抗を低減すること。
【解決手段】pクラッド層14上に、MOCVD法によって、MgがドープされたGaNである第1のpコンタクト層151を形成する(図2(b))。次に、次工程で形成する第2のpコンタクト層152の成長温度である700℃まで降温した後、アンモニアの供給を停止し、キャリアガスを水素から窒素へと切り換えて置換する。これにより、第1のpコンタクト層151のMgは活性化され、第1のpコンタクト層151はp型化する。次に、前工程の温度である700℃を維持し、キャリアガスには窒素を用いてMOCVD法によって、第1のpコンタクト層151上に、MgがドープされたInGaNである第2のpコンタクト層152を形成する(図2(c))。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、III 族窒化物半導体発光素子の製造方法に関し、特にpコンタクト層の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、III 族窒化物半導体発光素子は照明用途として需要が拡大しており、高出力化が進められている。そして、高出力化に伴い、年々駆動電流が高くなっている。そのため、抵抗による消費電力の増大が顕著となっており、発光効率の低下を引き起こしている。これを避けるためには素子の低抵抗化が不可欠となる。
【0003】
現在主に製造されているIII 族窒化物半導体発光素子は、横方向に導通をとるフェイスアップ型やフリップチップ型の素子であり、フェイスアップ型の素子ではpコンタクト層のほぼ全面にITOからなる透明電極が形成されている。また、フリップチップ型ではpコンタクト層のほぼ全面にAgなどの高反射率な金属やその合金からなる反射電極が形成されている。そこで素子の低抵抗化のためにpコンタクト層と電極とのコンタクト抵抗を低減することが考えられる。コンタクト抵抗を低減することで、発光効率の向上および発光分布の均一化が期待できる。
【0004】
pコンタクト層と電極とのコンタクト抵抗を低減する方法の1つとして、pコンタクト層として従来よく知られたp−GaNを用いるのではなく、p−InGaNを用いる方法が知られている。InGaNはGaNよりも仕事関数が小さく、より電極材料に近い仕事関数となるため、コンタクト抵抗を低減することができる。特許文献1には、p型コンタクト層をp電極側からp−InGaNからなるp型第1コンタクト層とp−GaNからなるp型第2コンタクト層によって構成したものが記載されている。pコンタクト層をこのような構成とすることで、pコンタクト層と電極とのコンタクト抵抗をより低減することができると記載されている。なお、MOCVD法によってInGaNを形成する際、キャリアガスとして窒素を用いることでInの蒸発を抑え、InGaNの結晶性を向上させる方法も周知である。
【0005】
また、素子の低抵抗化のためには、MgをドープしたIII 族窒化物半導体のp型活性化を行う必要がある。これは通常水素を含まない雰囲気で熱処理することによって行われる。しかし、この方法は結晶性が低下してしまうおそれがあり、特許文献2のような方法も提案されている。特許文献2には、水素またはアンモニア雰囲気中でp型ドーパントをドープしたIII 族窒化物半導体を1000℃以上の温度で形成し、その後50℃以上降温させて900℃以上の温度とし、さらにその後、水素またはアンモニアの供給を停止して窒素などの不活性ガスに置換することで、結晶性を悪化させることなくIII 族窒化物半導体をp型活性化する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−62254
【特許文献2】特開2005−159341
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、これら特許文献1、2の方法を用いたとしても、InGaNからなるpコンタクト層をp型化するとともに、電極とのコンタクト抵抗を低減することは難しかった。そのため素子の抵抗を十分に低くすることはできず、pコンタクト層のさらなる低抵抗化と、電極とのコンタクト抵抗の低減とを両立させる必要性があった。
【0008】
そこで本発明の目的は、III 族窒化物半導体発光素子のpコンタクト層を低抵抗化するとともに、電極とのコンタクト抵抗の低減を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、pコンタクト層を有するIII 族窒化物半導体発光素子の製造方法において、pコンタクト層を形成する工程は、MgドープGaNからなる第1のpコンタクト層を、窒素源としてアンモニア、キャリアガスとして水素を用いたMOCVD法によって形成する第1工程と、次工程で形成する第2のpコンタクト層の成長温度まで降温し、アンモニアの供給を減少もしくは停止し、キャリアガスを水素から窒素に替える第2工程と、第2工程の温度を維持し、キャリアガスとして窒素を用いたMOCVD法によって、第1のpコンタクト層上にMgドープInGaNからなる第2のpコンタクト層を形成する第3工程と、を有することを特徴とするIII 族窒化物半導体発光素子の製造方法である。
【0010】
第1のpコンタクト層の成長温度は1000℃以上、第2のpコンタクト層の成長温度は700〜900℃とすることが望ましい。成長温度がこの範囲であれば結晶性を良好とすることができるからである。より望ましくは、第1のpコンタクト層の成長温度を1000〜1050℃、第2のpコンタクト層の成長温度を700〜800℃とすることであり、さらに望ましくは、第1のpコンタクト層の成長温度を1000〜1020℃、第2のpコンタクト層の成長温度を700〜750℃とすることである。
【0011】
第1のpコンタクト層のMg濃度は、1×1019〜7×1019/cm3 とすることが望ましく、第2のpコンタクト層のMg濃度は、2×1019〜2×1020/cm3 とすることが望ましい。Mg濃度がこの範囲であれば、結晶性を良好とすることができるとともに、低抵抗なpコンタクト層を形成することができる。なお、第1のpコンタクト層のMg濃度は同じであってもよいし異なっていてもよい。より望ましいMg濃度は、第1のpコンタクト層が4×1019〜7×1019/cm3 、第2のpコンタクト層が5×1019〜1×1020/cm3 /cm3 である。
【0012】
第1のpコンタクト層の厚さは、10〜100nmとすることが望ましく、第2のpコンタクト層の厚さは、1〜10nmとすることが望ましい。厚さがこの範囲であれば、pコンタクト層全体としての抵抗を低減することができる。より望ましい厚さは、第1のpコンタクト層が30〜70nm、第2のpコンタクト層が1〜5nmである。
【0013】
第2のpコンタクト層のIn組成比は、10〜20%とすることが望ましい。この範囲であれば、第2のpコンタクト層上に形成されるITOなどの透明電極や、Agなどの高反射率の金属からなる反射電極などの電極とのコンタクト抵抗を十分に低減することができる。より望ましいIn組成比は15〜20%である。
【0014】
第2の工程における第2のpコンタクト層の成長温度までの降温の際の降温速度は、1〜3℃/秒とすることが望ましい。降温速度をこの範囲とすれば、第1のpコンタクト層を構成するGaN結晶から窒素が離脱してしまうのを抑制することができ、結晶性の悪化を抑制することができる。
【0015】
アンモニアの供給を減少もしくは停止させることは、第2のpコンタクト層の成長温度まで降温した後に行ってもよいが、降温しつつ行ってもよい。同じく、キャリアガスを水素から窒素に替えることも、第2のpコンタクト層の成長温度まで降温した後に行ってもよいし、降温しつつ行ってもよい。ただし、降温しつつキャリアガスを置換する方が、結晶からの窒素の離脱が抑制され、結晶性の悪化が抑制されるため望ましい。
【0016】
第2の工程後、第3の工程を行う前に、温度、雰囲気を1〜10分間維持することが望ましい。第1のpコンタクト層中のMgの活性化をより十分とすることができる。より望ましくは2〜5分間である。
【0017】
第2の発明は、第1の発明において、第1のpコンタクト層の成長温度は、1000℃以上であり、第2のpコンタクト層の成長温度は、700〜900℃であることを特徴とするIII 族窒化物半導体発光素子の製造方法である。
【0018】
第3の発明は、第1の発明または第2の発明において、第2のpコンタクト層のIn組成比は、10〜20%であることを特徴とするIII 族窒化物半導体発光素子の製造方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、pコンタクト層のp型化による低抵抗化と、pコンタクト層と電極とのコンタクト抵抗の低減を両立させることができ、その結果、III 族窒化物半導体発光素子の低抵抗化を図ることができる。また、第2のpコンタクト層を形成するための一連の工程の途中で第1のpコンタクト層をp型活性化することができ、製造工程を簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例1のIII 族窒化物半導体発光素子の構成について示した図。
【図2】実施例1のIII 族窒化物半導体発光素子の製造工程について示した図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の具体的な実施例について図を参照に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0022】
図1は、実施例1のIII 族窒化物半導体発光素子の構成を示した図である。実施例1のIII 族窒化物半導体発光素子は、サファイア基板10上に、図示しないAlNからなるバッファ層を介して、III 族窒化物半導体からなるnコンタクト層11、nクラッド層12、発光層13、pクラッド層14、pコンタクト層15が順に積層された構造を有している。また、p型コンタクト層15表面側からn型コンタクト層11に達する深さの溝が設けられ、その溝の底面に露出したn型コンタクト層11上にはn電極16が設けられている。また、pコンタクト層15上のほぼ全面にわたってITOからなる透明電極17が設けられ、透明電極17上にはp電極18が設けられている。
【0023】
サファイア基板10のnコンタクト層11側表面にドット状、ストライプ状などの凹凸パターンを設け、光取り出し効率の向上を図るようにしてもよい。成長基板としてサファイア基板以外にも、SiC、Si、ZnO、スピネル、GaNなどを用いることができる。
【0024】
nコンタクト層11は、Si濃度が1×1018/cm3 以上のn−GaNである。n電極16とのコンタクト抵抗をより低減するために、nコンタクト層11をSi濃度の異なる複数の層で構成してもよい。
【0025】
nクラッド層12は、厚さ4nmのノンドープのInGaN層、厚さ0.8nmのノンドープのAlGaN層、厚さ1.6nmのSiドープのn−GaN層の3層を順に積層させたものを1単位として、この単位構造を15回繰り返し積層させた超格子構造である。ただし、nクラッド層12は、最初に形成する層、すなわち、nコンタクト層11に接する層をInGaN層とし、最後に形成する層、すなわち、発光層13に接する層をn−GaN層としている。nクラッド層12の全体の厚さは、96nmである。
【0026】
nコンタクト層11とnクラッド層12との間に、素子の静電耐圧性を高めるためのESD層を設けてもよい。ESD層は、たとえば、nコンタクト層11側から順に、第1ESD層、第2ESD層、第3ESD層の3層構造とし、第1ESD層は、発光層13側の表面に1×108 /cm2 以下のピットが形成され、厚さが200〜1000nm、Si濃度が1×1016〜5×1017/cm3 のGaNで構成され、第2ESD層は、発光層13側の表面に2×108 /cm2 以上のピットが形成され、厚さが50〜200nm、キャリア濃度が5×1017/cm3 以下のGaNで構成され、第3ESD層は、Si濃度(/cm3 )と膜厚(nm)の積で定義される特性値が0.9×1020〜3.6×1020(nm/cm3 )のGaNで構成する。このようにESD層を構成すれば、静電耐圧特性を向上させつつ、発光効率や信頼性を向上させることができ、電流のリークを減少させることができる。
【0027】
発光層13は、ノンドープのInGaNからなる井戸層とノンドープのAlGaNからなる障壁層とが交互に繰り返し積層されたMQW構造である。井戸層と障壁層との間に、Al組成比が障壁層のAl組成比以下のAlGaNからなり、井戸層と同じ成長温度で形成するキャップ層を設けてもよい。このようなキャップ層を設けると、障壁層を形成する際の昇温時に井戸層からのInの離脱が防止されるため、発光効率を向上させることができる。発光層13とpクラッド層14との間に、pクラッド層14中のMgが発光層13へ拡散するのを防止するために、ノンドープのGaNとノンドープのAlGaNとからなる層を設けてもよい。
【0028】
pクラッド層14は、厚さ1.7nmのp−InGaN層、厚さ3.0nmのp−AlGaN層を順に積層させたものを1単位として、この単位構造を7回繰り返し積層させた構造である。ただし、最初に形成する層、すなわち、発光層13に接する層をp−InGaN層とし、最後に形成する層、すなわち、pコンタクト層15に接する層をp−AlGaN層としている。pクラッド層14の全体の厚さは32.9nmである。p型不純物にはMgを用いている。
【0029】
pコンタクト層15は、pクラッド層14側から順に第1のpコンタクト層151と第2のpコンタクト層152が積層された構造である。第1のpコンタクト層151はp−GaNであり、第2のpコンタクト層152はp−InGaNである。第1のpコンタクト層151、第2のpコンタクト層152の厚さ、Mg濃度は、次に示す範囲であれば、pコンタクト層15全体としては十分に低抵抗化することができる。第1のpコンタクト層151については、厚さ6〜7nm、Mg濃度は4×1019〜7×1019/cm3 、第2のpコンタクト層152については、厚さ2〜4nm、Mg濃度5×1019〜1×1020/cm3 である。第2のpコンタクト層152のIn組成比は0.1〜0.2である。In組成比がこの範囲であれば、結晶性を劣化させることなく第2のpコンタクト層152を形成することができ、第2のpコンタクト層152上に接して位置するITOからなる透明電極17とのコンタクト抵抗も低減することができる。
【0030】
次に、実施例1のIII 族窒化物半導体発光素子の製造工程について、図2を参照に説明する。
【0031】
まず、サファイア基板10上に、MOCVD法によって、バッファ層(図示しない)、nコンタクト層11、nクラッド層12、発光層13、pクラッド層14、を順に積層する(図2(a))。原料ガスは、Ga源としてTMG(トリメチルガリウム)、In源としてTMI(トリメチルインジウム)、Al源として(トリメチルアルミニウム)、窒素源としてアンモニアを用い、キャリアガスとして水素と窒素を用いる。また、n型ドーパントガスにはシランを用いる。
【0032】
次に、pクラッド層14上に、MOCVD法によって、MgがドープされたGaNである第1のpコンタクト層151を形成する(図2(b))。キャリアガスとして水素を用い、Ga源としてTMG、窒素源としてアンモニアを用いる。また、p型ドーパントガスにはCp2 Mg(ビスシクロペンタジエニルマグネシウム)を用いる。第1のpコンタクト層151の厚さは6〜7nm、Mg濃度は4×1019〜7×1019/cm3 とする。また、成長温度は1000℃以上とする。この成長温度であれば、結晶性よく第1のpコンタクト層151を形成することができる。より望ましい成長温度は1000〜1020℃である。また、圧力は大気圧とする。圧力がこの範囲であれば、結晶性よく第1のpコンタクト層151を形成することができる。
【0033】
次に、次工程で形成する第2のpコンタクト層152の成長温度である700℃まで降温した後、アンモニアの供給を停止し、キャリアガスを水素から窒素へと切り換えて置換する。TMGについては供給を停止しなくともよいし、停止してもかまわない。また、圧力は第1のpコンタクト層151形成時と同様とする。そして、700℃、窒素雰囲気の状態を2〜5分間維持する。この維持時間は必ずしも必要ではないが、十分なMgの活性化には維持時間を設けるのがよい。これにより、第1のpコンタクト層151のMgは活性化され、第1のpコンタクト層151はp型化する。また、第1のpコンタクト層151とともに、pクラッド層14についても同時にp型化される。
【0034】
なお、アンモニアの供給は停止するのではなく、一定量まで供給量を減少させるのでもよい。この場合、アンモニアの供給量は10%以下まで減少させることが望ましい。Mgが十分に活性化されないためである。最も望ましいのはアンモニアの供給を停止させることである。これらのアンモニアの供給停止または供給量減少は、降温後ではなく、降温しつつ行ってもよい。同じく、キャリアガスの置換は降温後ではなく、降温しつつ行ってもよい。ただし、降温しつつキャリアガスを置換する方が、結晶から窒素が離脱してしまうのをより抑制することができ、結晶性の劣化を防止することができるため望ましい。また、700℃まで降温する際の降温速度は、1〜3℃/秒とするのが望ましい。この範囲であれば、第1のpコンタクト層151であるGaN結晶から窒素が蒸発してしまうのを効果的に抑制することができる。
【0035】
次に、前工程の温度である700℃を維持し、キャリアガスには窒素を用いて原料ガスとしてアンモニア、TMG、TMIを供給して、p型ドーパントガスとしてCp2 Mgを供給して、MOCVD法によって、第1のpコンタクト層151上に、MgがドープされたInGaNである第2のpコンタクト層152を形成する(図2(c))。第2のpコンタクト層152の厚さは2〜4nm、Mg濃度は5×1019〜1×1020/cm3 とする。第2のpコンタクト層152のIn組成比は10〜20%とする。また、第2のpコンタクト層152形成時の圧力は大気圧Paとする。圧力がこの範囲であれば、結晶性よく第1のpコンタクト層151を形成することができる。
【0036】
なお、第2のpコンタクト層152の成長温度は700℃としたが、これに限るものではなく、700〜900℃であればよい。この成長温度であれば、結晶性よく第1のpコンタクト層151を形成することができる。
【0037】
その後、所定の領域をドライエッチングしてpコンタクト層15表面からnコンタクト層11に達する深さの溝を形成する。そして、pコンタクト層15上のほぼ全面にITOからなる透明電極17を形成し、透明電極17上にp電極18、溝底面に露出したnコンタクト層11表面にn電極16を形成する。以上によって図1に示した実施例1のIII 族窒化物半導体発光素子が製造される。
【0038】
ここで、透明電極17は、pコンタクト層15の第2のpコンタクト層152に接触する。第2のpコンタクト層152はIn組成比が10〜20%のp−InGaNからなり、第1のpコンタクト層151であるp−GaNよりも仕事関数が小さい。そのため、第2のpコンタクト層152とITOからなる透明電極17との仕事関数の差は、p−GaNの場合よりも小さくなる。その結果、第2のpコンタクト層152と透明電極17とのコンタクト抵抗を低減することができる。
【0039】
なお、第2のpコンタクト層152は熱処理によってMgを活性化させてp型化させる処理を行っていないが、第2のpコンタクト層152の厚さが十分に薄いため、pコンタクト層15全体としては十分に低抵抗化することができる。
【0040】
以上に示したpコンタクト層15の成長方法によれば、第1のpコンタクト層151の低抵抗化を図ることができるとともに、透明電極17と接触する第2のpコンタクト層152がInGaNであるためにコンタクト抵抗を低減することができる。したがって、実施例1のIII 族窒化物半導体発光素子の低抵抗化を図ることができる。
【0041】
また、第1のpコンタクト層151のp型活性化は、一連の第2のpコンタクト層152の形成工程の途中で連続的に行うことができるため、第2のpコンタクト層152形成後のp型活性化を省略することができ、製造工程の簡略化を図ることができる。
【0042】
なお、実施例1のIII 族窒化物半導体発光素子はフェイスアップ型の素子であったが、本発明はこれに限定するものではなく、pコンタクト層上に電極が形成された構造を有するIII 族窒化物半導体発光素子であれば任意の構造であってよい。たとえば、フリップチップ型の素子や、導電性基板を用いたり、レーザーリフトオフなどの技術によって基板を除去するなどして縦方向に導通をとる構造とした素子などにも本発明は適用することができ、実施例1と同様にpコンタクト層の低抵抗化、電極とのコンタクト抵抗の低減を図ることができる。
【0043】
また、通常、pコンタクト層形成後には、ITOからなる透明電極を焼成するための熱処理や、p電極、n電極のオーミックコンタクトを得るためのアロイ処理(熱処理)など複数の熱処理が行われるが、これらは本発明の効果、すなわち、pコンタクト層11のp型化および電極とのコンタクト抵抗の低減に影響を与えるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明によって製造されるIII 族窒化物半導体発光素子は、照明装置などに利用することができる。
【符号の説明】
【0045】
10:サファイア基板
11:nコンタクト層
12:nクラッド層
13:発光層
14:pクラッド層
15:pコンタクト層
16:n電極
17:透明電極
18:p電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
pコンタクト層を有するIII 族窒化物半導体発光素子の製造方法において、
pコンタクト層を形成する工程は、
MgドープGaNからなる第1のpコンタクト層を、窒素源としてアンモニア、キャリアガスとして水素を用いたMOCVD法によって形成する第1工程と、
次工程で形成する第2のpコンタクト層の成長温度まで降温し、アンモニアの供給を減少もしくは停止し、キャリアガスを水素から窒素に替える第2工程と、
前記第2工程の温度を維持し、キャリアガスとして窒素を用いたMOCVD法によって、前記第1のpコンタクト層上に、MgドープInGaNからなる前記第2のpコンタクト層を形成する第3工程と、
を有することを特徴とするIII 族窒化物半導体発光素子の製造方法。
【請求項2】
前記第1のpコンタクト層の成長温度は、1000℃以上であり、前記第2のpコンタクト層の成長温度は、700〜900℃であることを特徴とする請求項1に記載のIII 族窒化物半導体発光素子の製造方法。
【請求項3】
前記第2のpコンタクト層のIn組成比は、10〜20%であることを特徴とするIII 族窒化物半導体発光素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−21173(P2013−21173A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153963(P2011−153963)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】