説明

アンテナ装置、電波受信装置、及び、電波送信装置

本発明の課題は、マイクロストリップ構造、コプレーナ構造を有しており、超伝導材料を用いたアンテナ素子を利用した、アンテナ装置、信号受信装置、信号送信装置であって、指向性利得の向上、小型化、及び、低消費電力化を実現するアンテナ装置、信号受信装置、及び、信号送信装置を提供することにある。そして、上記の課題を解決する手段は、平面型アンテナ素子と、電波を透過させる電波窓を有し、前記平面型アンテナ素子を収容して外部からの熱を遮断する断熱容器と、前記断熱容器内であって、前記電波窓
と前記平面型アンテナ素子のアンテナパターン形成面の間に配設された導波管と、前記平面型アンテナ素子を冷却する冷却手段を備え、前記導波管が前記平面型アンテナ素子の指向性を強める形状及び寸法であり、平面型アンテナ素子のアンテナパターンに超伝導膜を使用したことを特徴とするアンテナ装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、マイクロストリップ構造、コプレーナ構造を有しており、超伝導材料を用いたアンテナ素子を利用した、アンテナ装置、信号受信装置、及び、信号送信装置に係わる。そして、特に指向性利得の向上できるアンテナ装置、信号受信装置、及び、信号送信装置に関する。また、アンテナ装置、信号受信装置、及び、信号送信装置の小型化に関する。さらに、アンテナ装置、信号受信装置、及び、信号送信装置の冷却システムの低消費電力化に関する。
【背景技術】
近年、無線LAN、衛星通信、IMT−2000等の発展より、通信システムの高速化及び小型化の需要が高まっている。従って、一般的に通信システムを構成している、例えば、アンテナ、フィルター、アンプ等の素子性能の向上、及び、上記素子の駆動部分の小型化が求められている。特に、アンテナはシステムの送受信端に設けられ、一般的に、アンテナの電波放射効率及び電波受信感度の向上が、システム全体の通信特性の向上及び小型化につながるところが大きい。
そして、アンテナの電波放射効率及び電波受信感度の向上の為には、まず、全体的な性能の向上のため、アンテナ素子を含む高周波デバイスの導体部における、高周波に対する電力損失を小さくすることが望ましい。また、効率的な性能の向上のため、指向性利得を向上させることが望ましい。
そこで、高周波に対する電力損失を小さくする為、低抵抗な超伝導材料を利用する提案がされている。しかし、超伝導材料をアンテナ等に使用する提案を実現するには、超伝導体のアンテナ素子の冷却状態を安定に保つため、真空容器による断熱及び冷却装置が必須である。
以下、図1を用いて、従来例1に係るアンテナ装置を説明する。図1に示すアンテナ装置の容器は、アンテナ窓5と、容器部6とから構成されている。そして、アンテナ窓5には誘電体からなり、断面がレンズ状である場合を含む、窓材がはめ込まれている。
また、アンテナ装置の容器部6には、RFコネクタ1と、ケーブル2と、マイクロストリップアンテナ3と、コールドステージ4とが備えられ、上記のアンテナ装置の容器部6とともにアンテナ装置を構成している。そして、マイクロストリップアンテナ3は超伝導材料で構成されている。
さらに、上記のアンテナ装置には真空ポンプが付属しており、アンテナ装置の容器部6の中をほぼ真空にして、マイクロストリップアンテナ3と外部との断熱を図るとともに、コールドステージ4にてマイクロアンテナ3の冷却が行われている。
そして、アンテナアンテナ窓5にはめ込まれている窓材の比誘電率、厚さ、及び、窓材のレンズ状の形状より決定される所定の距離に、アンテナ窓からマイクロストリップアンテナ3までの距離が設定されている。(例えば、特許文献1)
次に、図2を用いて、従来例2に係る成層圏−中間圏オゾンモニタリングシステムを説明する。図2には、回転可能なパラボラアンテナ408と、パラボラアンテナ408で受けた電波の一部を、波長の1/4分位相をずらすλ/4プレイト409と、λ/4プレイトを透過した電波を反射する固定ミラー410と、第1のオシレータ427と、断熱用のデュアー429と、導波管415と、前記導波管415に連結されているCGC(cross guide coupler)416と、SIS(superconductor insulator superconductor)ミキサ417と、中間周波数用アンプ418と、冷却ロード419と、放射シールド420と、第2のオシレータ411と、第3のオシレータ412と、中間周波数信号処理装置413と、AOS(Acousto−optical Spectrometer)414と、リファレンスオシレータ424と、パーソナルコンピュータ425とが示されている。そして、上記の第2のオシレータ411、第3のオシレータ412、AOS414、パーソナルコンピュータ425とリファレンスコンピュータ424を除く図2に示す要素は主受信ユニット428を構成する。そして、第1のオシレータは、逓倍器421と、ハーモニックミキサ423と、位相ロックコントローラ426と、ガンオシレータ422とから構成されている。(例えば、非特許文献1)
【特許文献1】特開2003−46325号公報
【非特許文献1】Hideo Suzuki et.al.,IEICE TRANS.ELECTRON.,Vol.E79−C,No.9,Sep.,P1219−1227,1996.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
アンテナ性能の向上の為、アンテナ素子部分の冷却が、特に、超伝導材料を使用したアンテナを利用するには、数十K程度の低温が必要である。その為、そのような低温を得るためには、ヘリウムガス等を冷媒として用いる冷却機、及び、低温動作素子や回路の断熱のための真空容器が重要な技術要素である。
ここで、真空容器には、真空封止に耐えられる強度と、アンテナ素子への受信電波の透過、及び、アンテナ素子からの送信電波の放射を、可能な限り減衰させない透過性が重視された結果、アンテナ素子の指向性利得の向上は重視されないという問題があった。
そこで、従来例1は、真空容器の窓部に誘電体を用い、前記誘電体の比誘電率と真空容器内の比誘電率との比を所定の値とすることにより、又は、前記誘電体の断面形状をレンズ状とすることにより、送受信電波に対し、窓部がレンズ効果を有するものとし、かつ、アンテナ窓とアンテナ素子との距離が、[数1]の関係を満たす場合に、電波送受信時の指向性利得の向上が図れるものであった。
しかし、アンテナ素子の指向性利得の向上は重要な課題であり、別の観点からも、アンテナ素子の指向性利得の向上手段が求められていた。
【数1】


次に、複数のアンテナ素子を連動させ、複数のアンテナ素子全体として指向性が向上するように、個々のアンテナ素子を動作させる、いわゆる複合アンテナ装置において、アンテナ素子間の干渉の防止の為、アンテナ素子間の間隔を確保すると複数のアンテナ素子を納める容器が大きくなる。特に、アンテナ素子のアンテナパターンが超伝導材料で構成されている場合は、低温状態を保持する、断熱用の真空装置及び冷却装置も大きくなり、アンテナ装置全体が大型化する問題があった。
さらに、真空容器及び断熱係る問題点として以下がある。すなわち、真空容器は、熱の流入の内、固体による熱伝導と気体による熱伝導に対しては効果が大きいが、[数2]に示すステファンボルツマンの法則に示すように、外気の絶対温度の4乗と冷却された素子の絶対温度の4乗の差に比例する、真空容器からの熱輻射による熱流入の防止はできない。そこで、真空容器内にさらに、例えば、金属板や金属皮膜を有するポリエステルフィルム等の断熱材をいれると、受信電波の透過や電波の送信に対し障害となる問題があった。
【数2】

加えて、一般的な断熱の問題点として、真空容器を構成する部分に、例えばアンテナ窓のような、大きな透明部分があると、放射熱によりアンテナ素子に熱が伝えられる。その結果、冷却装置の負荷の増大を招き、冷却装置の消費電力が増大する。そして、限られた供給電力及び冷却装置の設置条件では、冷却が困難となる問題があった。すなわち、超伝導材料をアンテナパターンに用いたアンテナ素子を内蔵したアンテナ装置の実用化を考えた場合に、小型化、低消費電力化に対して不利となる問題があった。特に従来例2のように、パラボラアンテナ408からの電波を導く為に、CGC416に導波管415を連結した構成をとると、導波管415が受けた放射熱もCGC416へ導くこととなり、CGC416を冷却する装置の負荷はさらに増大するという問題があった。
また、超伝導材料をアンテナ素子に使用し、臨界温度以下に冷却して超伝導状態にしても、超伝導材料の選択及びアンテナ素子を構成する超伝導薄膜の結晶の状態によっては、充分に低い表面抵抗を得ることができない問題点があった。
そして、電波の送信、受信を実際に行うには、アンテナ装置に付属し、送受信装置を構成する回路、例えば、フィルター回路や増幅器も必要である。しかし、アンテナ素子の安定動作に必要な真空容器の外部に上記の付属回路を設けるのでは、送受信装置の小型化とは反するものとなる問題があった。
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、第一の発明は、
平面型アンテナ素子と、
電波を透過させる電波窓を有し、前記平面型アンテナ素子を収容して外部からの熱を遮断する断熱容器と、
前記断熱容器内であって、前記電波窓と前記平面型アンテナ素子のアンテナパターン形成面の間に配設された導波管と、
前記平面型アンテナ素子を冷却する冷却手段を備え、
前記導波管が前記平面型アンテナ素子の指向性を強める形状及び寸法であることを特徴とするアンテナ装置を提供する。
第一の発明に係るアンテナ装置によれば、
平面型アンテナ素子を冷却するため、平面型アンテナ素子を構成する導体の表面抵抗が低下し、平面型アンテナ素子の全体的な利得が向上する。
また、導波管が、平面型アンテナ素子に指向性をもたせることにより、送信時にあっては、放射する電波の指向性利得が向上し、受信時にあっても、受信電波の指向性利得が向上する。
なお、上記課題を解決するため、第二の発明は、第一の発明に記載したアンテナ装置であるが、前記導波管の開口面と前記平面型アンテナ素子のアンテナパターン形成面の間の実効的な比誘電率をAとすると、導波管が筒状であって、導波管の筒の高さが送受信に係る電波の波長の1/4を√Aで徐したもの以上であり、さらに,前記平面型アンテナ素子側の前記導波管の開口の少なくとも一つの軸方向に係る長さが前記電波の波長の1/2を√Aで除したものより長く、前記電波の波長を√Aで除したもの以下であることを特徴とする。上記のような導波管の形状及び寸法であると、平面型アンテナ素子の垂直方向の指向性利得の向上が容易である。
次に、上記課題を解決するため、第三の発明は、
複数の平面型アンテナ素子と、
前記平面型アンテナ素子が形成されている基板と、
電波を透過させる電波窓を有し、複数の前記平面型アンテナ素子を収容して外部からの熱を遮断する断熱容器と、
前記断熱容器内であって、前記電波窓と前記平面型アンテナ素子のアンテナパターン形成面の間に配設された導波管と、
前記平面型アンテナ素子を冷却する冷却手段を備え、
前記導波管が前記平面型アンテナ素子の指向性を強める形状及び寸法であって、
複数の前記平面型アンテナ素子を連動させることを特徴とするアンテナ装置を提供する。
第三の発明に係るアンテナ装置によれば、
複数の平面型アンテナ素子は冷却されるため、平面型アンテナ素子を構成する導体の表面抵抗が低下し、個々の平面型アンテナ素子の全体的な利得が向上する。
また、導波管が平面型アンテナ素子に指向性をもたせることにより、個々の平面型アンテナ素子に同一の指向性利得の向上がもたらされる。
さらに、複数の平面型アンテナ素子を搭載したアンテナ装置であるため、それらの平面型アンテナ素子を連動して動作させることにより、一つのいわゆる複合アンテナとして動作させることができる。その結果、上記の複合アンテナは平面型アンテナ素子の一つ一つに比較し、より、指向性が向上したものとなる。
次に第四の発明は、
平面型アンテナ素子と、
電波を透過させる電波窓を有し、前記平面型アンテナ素子を収容して外部からの熱を遮断する断熱容器と、
前記断熱容器内であって、前記電波窓と前記平面型アンテナ素子のアンテナパターン形成面の間に配設された第1の導波管と、
前記断熱容器外であって、前記電波窓に一方の開口が接するように配設された第2の導波管と、
前記平面型アンテナ素子を冷却する冷却手段を備え、
前記第1の導波管及び前記第2の導波管が前記平面型アンテナ素子の指向性を強める形状及び寸法であることを特徴とするアンテナ装置を提供する。
第四の発明に係るアンテナ装置によれば、第2の導波管の働きにより、電波が収束し、さらに、送受信にかかる指向性利得の向上をはかることができる。
次に第五の発明は、
平面型アンテナ素子と、
前記平面型アンテナ素子で受けた電波からの受信信号処理回路と、
電波を透過させる電波窓を有し、前記平面型アンテナ素子及び前記受信信号処理回路を収容して外部からの熱を遮断する断熱容器と、
前記断熱容器内であって、前記電波窓と前記平面型アンテナ素子のアンテナパターン形成面の間に配設された導波管と、
前記平面型アンテナ素子及び前記受信信号処理回路を冷却する冷却手段を備え、
前記導波管が前記平面型アンテナ素子の指向性を強める形状及び寸法であることを特徴とする電波受信装置を提供する。
第五の発明に係る電波受信装置によれば、平面型アンテナ素子と受信回路が断熱容器内にあって、いずれも冷却されるため、平面型アンテナ素子及び受信回路の導体の抵抗が低くなり、電波受信装置の動作が、低損失で行われる。また、平面型アンテナ素子と受信回路が断熱容器内にあるため、電波受信装置の小型化が図れる。
次に、第六の発明は、
平面型アンテナ素子と、
前記平面型アンテナ素子を通じて放射される電波にのせる送信信号処理回路と、
電波を透過させる電波窓を有し、前記平面型アンテナ素子及び前記送信信号処理回路を収容して外部からの熱を遮断する断熱容器と、
前記断熱容器内であって、前記電波窓と前記平面型アンテナ素子のアンテナパターン形成面の間に配設された導波管と、
前記平面型アンテナ素子及び前記送信処理回路を冷却する冷却手段を備え、
前記導波管が前記平面型アンテナ素子の指向性を強める形状及び寸法であることを特徴とする電波送信装置を提供する。
第六の発明に係る電波送信装置によれば、平面型アンテナ素子と送信信号処理回路が断熱容器内にあって、いずれも冷却されるため、平面型アンテナ素子及び送信信号処理回路の導体の抵抗が低くなり、電波送信装置の動作が、低損失で行われる。また、平面型アンテナ素子と電波送信処理回路が断熱容器内にあるため、電波送信装置の小型化が図れる。
【発明の効果】
本発明によれば、指向性利得の高いアンテナ装置を得ることができる。また、本発明に係るアンテナ装置、電波受信装置、電波送信装置ともに、低損失で稼働が可能である。さらに、本発明によれば、複数の超伝導材料を使用した平面型アンテナ素子に係る、アンテナ装置、電波受信装置、電波送信装置の小型化が可能である。また、本発明によれば、超伝導材料を平面型アンテナ素子に使用した場合に、アンテナ装置、電波受信装置、電波送信装置の冷却システムの低消費電力化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
発明を実施するための最良の形態であるアンテナ装置は、基板上のアンテナ素子と、基板上のアンテナ素子を電磁気的にシールドするシールドと、導波管と、アンテナ素子の冷却装置と、真空ポンプ(例えば、ロータリーポンプ、ターボ分子ポンプ、又は、それらの組み合わせ等がある)と、アンテナ素子用の容器と、アンテナ素子用の容器とアンテナ素子との間の断熱材とから構成されている。
上記のアンテナ素子の冷却装置は冷媒を利用し、上記アンテナ素子用の容器内のコールドプレート等を冷却する。その結果、アンテナ素子の冷却装置は、アンテナ素子を、コールドプレート等を通じて冷却することができる。
上記の真空ポンプは、アンテナ素子用の容器の内部を、排気口を通じて減圧する為に用いる。その結果、真空ポンプにより、上記アンテナ素子の容器内は、ほぼ真空状態(例えば、ロータリーポンプを使用する場合は、1×10E−2torrとなる。また、ターボ分子ポンプを併用すると、1×10E−5〜1×10E−7torr程度の真空状態が可能となる。)となる。
さらに、アンテナ素子用の容器は、電波窓と、アンテナ素子用の容器の蓋部と、アンテナ素子用の容器の容体部と、上記アンテナ素子用の容器の蓋部と容体部の接触部に配置され、容器内の気密を保つ為のOリングと、アンテナ素子等からの信号を伝えるケーブルと、前記ケーブルを容器外へ接続する、高周波信号用のRFコネクタと、真空ポンプが接続されている排気管と、冷却装置の一部を構成するコールドプレートから構成されている。従って、アンテナ素子用の容器内は、Oリングのシール効果により、気密状態である。また、容器内を真空ポンプにより、真空状態に保つことができる。その結果、減圧状態のアンテナ素子用の容器は、外気からのアンテナ素子への固体間又は気体を媒介とした熱伝導による熱流入を抑止する効果があり、アンテナ素子の冷却は容易となる。
また、アンテナ素子用の容器とアンテナ素子との間には断熱材が配置されているので、アンテナ素子用の容器からの熱輻射による、アンテナ素子への熱流入も抑止する効果がある。
ここで、アンテナ素子は、アンテナパターンが超伝導材料で構成されており、臨界温度以下では、表面抵抗が、金属の銅(Cu)より低い抵抗を示すものをいう。そして、本実施例では、アンテナ素子のアンテナパターンが基板上に形成されており、いわゆる平面型をしている。ただし、平面状態にこだわることはなく、多少の厚みや立体構造があってもよい。また、立体構造とは、基板が複数層にわかれ、アンテナパターンが、それぞれの層に形成されている場合を含む。
また、導波管は、アンテナ素子用の容器内にあり、アンテナ素子とアンテナ素子用の容器の蓋部にある電波窓との間に配設されている。そして、導波管は、アンテナ素子用の容器側に固定されており、アンテナ素子用の容器を通じて、接地電位への接続がある。また、導波管とアンテナ素子とは、固体間又は気体を媒介とした熱接触はない。さらに、導波管の高さは、アンテナ素子からの放射電波に指向性利得を向上させる範囲にあり、アンテナ素子の送信電波の波長から波長の1/4程度であることが望ましい。
本発明を実施するための最良の実施形態であるアンテナ装置には、以下の効果がある。まず、導波管の効果により、アンテナ素子から放射される電波に指向性がつく為、アンテナ素子の指向性利得が向上する。
次に、アンテナ素子用の容器の電波窓を通過した電波を、導波管がアンテナ素子の直近まで漏れなく導く為、アンテナ素子用の容器による電波の損失が防止され、アンテナ素子の電波受信時の指向性利得が向上する。
また、アンテナ素子用の容器内に、断熱材をいれても、導波管とシールドにより、アンテナ素子からの断熱材への送信電波の漏れはなく、指向性をもって電波窓から放射され、また、アンテナ素子への受信電波通過が確保されるため、断熱材による電波の損失が防止される。
さらに、アンテナ素子容器内の断熱材により、アンテナ素子用の容器からの熱複写による、熱流入を抑止される為、アンテナ素子の冷却装置には負荷がかからず、冷却装置を小型化することができる。
【実施例1】
図3、図4及び図5を使用して実施例1に係るアンテナ装置35について説明する。まず、図3は、基板26と、基板26上のアンテナ素子20と、導波管22と、シールド18と、真空バルブ39と、真空ポンプ30と、アンテナ素子用の容器34と、コールドプレート27と、管31と、冷媒32と、圧縮機15とから構成されるアンテナ装置の断面図を示している。
そして、上記の構成要素のうち、コールドプレート27と、管31と、圧縮機15とは、冷媒32の断熱膨張を利用する、いわゆるパルスチューブ式、又は、スターリングサイクルを原理とする冷却装置を構成し、コールドプレート27上の基板26及び基板26上のアンテナ素子20を冷却する。
ここで、冷媒32には、通常、ヘリウムガスが使用される。また、コールドプレート27と基板26の間には、熱伝導をよくする、例えば、銅の金属ブロック等や、密着をよくするインジウム、グリース等の物質が間に配設されていてもよい。
なお、冷却装置の方式として、上記ではパルスチューブ式、又は、スターリングサイクルを原理とする冷却装置を例として挙げたが、それに限ることはなく、例えば、コールドプレート27内に管を設けて、液体ヘリウムや液体窒素を循環させる方式であってもよい。
また、アンテナ素子用の容器34は、電波窓21と、アンテナ素子用の容器の蓋部24と、アンテナ素子用の容器34の容体33と、上記アンテナ素子用の容器34の蓋部24と容体33の接触部に配置され、容器内の気密を保つ為の蓋部Oリング23と、アンテナ素子等と前記アンテナ素子用の容器34外との入出力信号を伝えるケーブル17と、RFコネクタ16と、真空ポンプ30と接続する排気口28と、止めネジ25とから構成されている。
そして、電波窓21は、送受信に関わる電波を、前記アンテナ素子用の容器34内に導き、あるいは、送出する役割を果たす。
RFコネクタ16は、アンテナ素子と外部との入出力信号を伝えるケーブル17と外部のケーブルを接続するものであり、高周波信号を取り扱うことができる。
止めネジ25は、上記アンテナ素子用の容器34とアンテナ素子用の容器34の蓋部24を止めるものである。
アンテナ素子用の容器34内は、蓋部Oリング23のシール効果により、気密状態とすることができる。
さらに、真空ポンプ30は、アンテナ素子用の容器34の内部を、真空ポンプ30と接続する排気口28及び真空バルブ39を通じて減圧する為に用いられる。そして、真空ポンプ30は、上記アンテナ素子の容器34内を、1×10E−2〜1×10E−6torr程度の真空状態(以下「準真空状態」という)とすることができる。なお、排気口28と真空バルブ39はいわゆる金属シールドにより接合されており、高い気密性を保持できる。
なお、蓋部Oリング23等のOリングをメタルシール仕様とすれば、さらに高い気密性が保持できる。従って、下記の手順を踏むことにより、上記の準真空状態は長期間保持することができる為、真空ポンプを取り外すことも可能である。
手順1:真空ポンプ30により、アンテナ素子用の容器内を、一旦、準真空状態する。
手順2:通常は、蓋部24や容体33にアンテナ素子用の容器34内を70〜150℃程度に加熱する手段がとりつけられており(図示はしていない)、上記加熱手段を利用してベーキングをする。
手順3:アンテナ素子の容器全体真空バルブ39を閉じ、アンテナ素子容器内に取り付けられている、通常の真空容器内に設置するゲッタ材(図示はしていない)を機能させる。
図3に示すアンテナ装置35においては、上記の構成をとる結果、減圧状態のアンテナ素子用の容器34は、外気からのアンテナ素子への熱流入を防止することができ、上記の冷却装置によるアンテナ素子の冷却を冷却装置に負荷がかからずに行うことができる。
次に、図4及び図5を用いて、実施例1のアンテナ装置35の詳細を説明する。まず、図4は図3に示すアンテナ素子用の容器34の一部とその内部に係る斜視図であり、8個の四角形のアンテナ素子20と、四角形の電波窓側の開口部と四角形のアンテナ素子側の開口部を有する、四角柱状の8個の導波管22と、シールド18と、コールドプレート27と、アンテナ素子の数に応じた8本のケーブル17(4本分は図示されていない)と8個のRFコネクタ16(4個分は図示されていない)と、蓋部24と、電波窓21と、円柱状のアンテナ素子用の容器34と、止めネジ25と、容体33とを示している。
また、図5は、アンテナ用の容器を上面から見た上面図であって、アンテナ素子用の容器の蓋部24と、四角形の電波窓21と、四角形のアンテナ素子20と、導波管22の四角形の開口部と、止めネジ25との位置関係を示している。
そして、図4に参照するように、アンテナ素子20が配置されている基板26は、コールドプレート27の円盤の上面に、配置されている。さらに、シールド18が基板26の上に、基板26を覆うように配置されている。
ここで、上記の基板26は、材質が誘電体からなる板体である。また、「アンテナ素子20が配置されている」とは、アンテナ素子20のアンテナパターンが基板上に形成され、マイクロストリップライン構造とする場合には、基板26の裏面に接地電位用の金属電極が配設されていることをいう。なお、アンテナパターンは、平面的であっても、厚みをもつものでもよく、基板26が多層基板である場合には、中間層に形成されていてもよい。また、シールド18は、アンテナ素子を電磁気的にシールドするものであるから、材質は銅(Cu)等の金属性のものである。シールド18の接地電位は、アンテナ素子20と共通である。
次に、アンテナ素子20は、ダイポール型、ループ型、線状アンテナ型、パッチアンテナ型等のアンテナパターンを含むマイクロストリップライン構造又はコプレーナ構造を有するものであって、アンテナパターンの集合が四角形の形状を有するものである。また、2行4列状に8個のアンテナ素子が基板上に配置されており、アンテナパターンの材質には、超伝導材料が採用されている。
次に、導波管22は四角柱の形状を有し、アンテナ素子20の形状とほぼ同じ大きさの四角形であるアンテナ素子20側の開口と、アンテナ素子20側の開口と同一の四角形である電波窓21側の開口とを備え、導波管22はアンテナ素子20と電波窓21との間に配置されている。そして、導波管22の一方の開口はアンテナ素子20と向き合っているが、アンテナ素子20及びシールド18とは離間している。また、導波管の他方の開口は電波窓21と向き合っており、電波窓21部で、蓋部24と接続している。すなわち、導波管22は、アンテナ素子用の容器34と固体間の熱接触があり、電気的にも接続され、アンテナ素子用の容器34を通じて接地電位に接続している。しかし、導波管22は、アンテナ素子及びシールド18とは固体間の熱伝導と気体を媒介とした熱伝導はない。
ここで、導波管22は、ステンレス(SUS304、SUS316等)、キュプロニッケル、黄銅等の熱伝導性がよくない金属薄膜を四角柱状に巻いたものであって、四角柱の内側に銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)等をメッキしたもの、或いは、絶縁フィルムを四角柱状に巻き、内側に銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)等の金属薄膜を蒸着したもの、或いは、四角柱状の誘電体の外周に銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)等の金属薄膜を蒸着したもの等である。
そして、導波管22は、下記のようにアンテナ素子20の指向性を強める形状及び寸法をしている。ここで、「アンテナ素子の指向性を強める」とは、アンテナ素子20が本来もっている指向性、すなわち、送信電波に対する放射電波強度の角度依存性や受信電波に対する受信電波感度の角度依存性に対し、所望の方向の放射電波強度を強めること、又は、受信電波感度を強めることをいう。
また、「指向性利得の向上」とは、送信に関して、アンテナ素子の全方位への放射電波の放射電力の総和に対して、特定の方向の放射電波の放射電力の割合を向上させることをいう。また、受信の関しては、全方位からの受信電波の受信電力の総和に対して、特定の方向の受信電波の受信電力の割合を向上させることをいう。そして、「指向性を強める」ことは特定方向の送受信電波の電力を強めることになるため、「指向性利得の向上」につながる。
具体的には、導波管22の高さは、実施例1のアンテナ装置で送受信する電波の波長から波長の1/4程度であることが望ましい。なぜなら、高さが低すぎると、送受信電波の垂直方向の指向性利得の向上はなく、高すぎると、送受信電波が導波管22を伝搬する際の損失が大きくなり、送受信電波に対する指向性利得の向上が抑えられるからである。しかし、導波管22の高さを波長の1/4程度に限定するものではない。
また、導波管22のアンテナ素子20側の四角形開口部が有する長軸の長さが送受信する電波の波長から波長の1/2程度であることが望ましい。波長の1/2程度を下限としたのは、これ以下では、送受信電波の伝搬が遮断されるからである。また、波長程度を上限としたのは、送受信電波の収束が弱くなり、送受信電波の指向性利得の向上が抑えられるからである。
ところで、アンテナ素子のアンテナパターンが形成されている基板26の表面付近では、送受信電波はアンテナ素子用の容器34内の比誘電率と基板26の比誘電率の双方の比誘電率の影響を受ける。また、導波管22を伝搬する際には、導波管22内の比誘電率の影響を受ける。従って、実施例1の説明中の「波長」(特に、再定義がされていない限り、以下同じ)は、それぞれの場所で、送受信電波に係る電磁界が感じる実効的な比誘電率をKeとし、真空中での送受信電波の波長をλとすると、それぞれの場所での送受信電波に係る電磁界の波長である、λ/√Keを意味する。
上記の「実効的な比誘電率」は次のように考えて求める。まず、誘電率は、誘電率を求めたい空間で使用する電磁界モードの電界E(向きと長さをあらわすベクトル量)と電束密度(ベクトル量)の比例係数(一般的には、ベクトル量の各成分に対応したテンソル量)として求められる。
従って、一般的には、誘電率を求めたい空間を含めた当該空間に影響する範囲について、直接的に当該範囲の放射電磁界分布を数値近似した後、コンピュータ上の電磁界シュミレータを利用して求めるものである。すなわち、当該空間に影響を与える複数の誘電体の比誘電率、前記誘電体からの距離、又は、前記誘電体の形状等を総合的に解析して得られるものであり、いわば、送受信電波に係る電磁界が、誘電率を求めたい空間範囲で感じる誘電率であるといえる。
ただし、単純な等方性の誘電体の場合は、近似的に電界(ベクトル量)のエネルギー的な平均(大きさのみをもつスカラー量)を用いることができ、誘電率も、単純な比例定数、ε・ε(ε:当該誘電体の比誘電率、ε:真空の誘電率)として表すことができる。
また、閉じた金属で囲まれた円筒型の導波管を電磁波が伝わるときは、電磁波は、基本電磁界モードの一つであるTE11で伝搬することが知られているので、導波管の開口面における電界は平行成分しかないので、誘電体の誘電率を開口面と平行な成分のみで考えることができる。そして、上記のように求めた誘電率と真空の誘電率との比をとると、比誘電率となる。
具体的な適用の例を示すと、例えば、導波管の寸法等を波長の1/4程度と規定した場合、その導波管を設置する地点において、導波管自身が与える影響も加味して、解析した結果得られた実効的な比誘電率もとに、上記のλ/√Keを用いて波長を計算し、導波管の寸法等を決定する。しかし、簡単に均一な材質で構成され、閉じた金属で囲まれた導波管の大きさのオーダを知りたいときは、λ/√ε(λ:真空中の波長、ε:導波管内の比誘電率)を電磁波の波長として用いることができる。
次に、図3の断面図と図4の斜視図に示すように、電波窓21においては、蓋部24の外部側からは、2行×4列に配置された導波管22の開口部を含む長方形の窓が、蓋部材の半分程度の厚みまで、ほりこまれており、例えば、熱伝導率が低い、石英やポリテトラフルオロエチレン等の材料からなる誘電体の透明な板がはめ込まれ、準真空状態を保てるような接着剤、或いは、シールド材で接着されている。一方、容器内側からは、2行×4列からなる8個の小窓が設けられており、導波管22をはめ込むことができる。
実施例1に示したアンテナ装置35によれば、以下の効果がある。まず、減圧状態のアンテナ素子用の容器34がアンテナ素子を外気から断熱する為、コールドプレート27等を含む冷却装置が、アンテナ素子20を長時間、低温状態にすることができる。従って、臨界温度以下の低温状態において、アンテナ素子20を構成する超伝導材料の表面抵抗は低くなる為、アンテナ素子20の利得が向上する。
次に、アンテナ素子20と電波窓21間の導波管22の効果により、電波放射時において、アンテナ素子20の指向性利得が向上する。
次に、アンテナ素子用の容器34の電波窓21を通過した電波を、導波管22がアンテナ素子20まで漏れなく導く為、アンテナ素子20と電波窓21間のアンテナ素子用の容器34による電波の損失が防止され、電波を受信する時において、アンテナ素子20の指向性利得が向上する。
次に、導波管22は、アンテナ素子20毎に対応して、独立に設けられているため、アンテナ素子用の容器34内において、アンテナ素子20間の干渉を防止することができる。なお、上記導波管22はアンテナ素子用の容器34外において、各アンテナ素子20が放射する電波間の干渉を妨げるものではない。
次に、導波管22とアンテナ素子20との接触がない為、導波管22からの固体間熱伝導による、アンテナ素子への熱流入を防止することができる。その結果、アンテナ素子20を冷却するコールドプレート27等の冷却手段の負荷が減少するので、冷却装置の小型化及びアンテナ装置全体の小型化が可能である。
【実施例2】
(輻射熱遮断フィルムを冷却部に設けた実施例)
図6により、実施例2に係るアンテナ装置40を説明する。ここで、スーパーインシュレーションフィルム14を除いて、アンテナ装置40を構成するものは、実施例1と同様なものである。
そして、スーパーインシュレーションフィルム14は、金属薄膜、或いは、例えばポリエステル等の10μm程度の薄膜絶縁フィルムにアルミ(Al)等の金属を蒸着したものと、例えばナイロン等からなるネットとを交互に複数枚、重ねて構成されている。また、上記のネットは、金属薄膜、又は、フィルム同士を接触させない為に、金属薄膜、又は、フィルム間に配置されている。従って、上記の構成を有するスーパーインシュレーションフィルム14は、アンテナ素子用の容器34からの熱輻射によるアンテナ素子20への熱流入を抑止する効果があり、いわゆる断熱材として作用する。
実施例2のアンテナ装置40によれば、スーパーインシュレーションフィルム14を、アンテナ素子用の容器34内に、アンテナ素子20とアンテナ素子用の容器34の壁の間に配設したことにより、アンテナ素子用の容器34からの輻射熱がアンテナ素子20にあたるのを防止することができる。
さらに、スーパーインシュレーションフィルム14による、輻射熱の遮断により、コールドプレート27等を含む冷却装置の負荷が軽減する為、冷却装置を小型化することができ、アンテナ装置全体を小型化することができる。
次に、導波管22とシールド18により、アンテナ素子20と電波窓21間の距離によらず、また、スーパーインシュレーションフィルム14の存在に関わらず、アンテナ素子20から放射される電波の指向性利得を向上することができる。
次に、アンテナ素子用の容器34の電波窓を通過した電波を、導波管22がアンテナ素子まで漏れなく導く為、アンテナ素子20と電波窓21間の距離によらず、スーパーインシュレーションフィルム14による電波遮断を防止することができる。
【実施例3】
(円形なアンテナパターンを有するアンテナ素子を使用した実施例)
図7及び図8を用いて、実施例3の説明をする。ここで、図7は、実施例3のアンテナ装置の一部を示す斜視図である。また、図8は、実施例3のアンテナ装置の上面図である。但し、実施例3のアンテナ装置の構成要素は、実施例1のアンテナ装置の構成要素と比較して以下の点が異なっている。
すなわち、図7及び図8は、実施例3のアンテナ装置を構成するアンテナ素子48のアンテナパターンが円形である点、電波窓45のアンテナ素子用の容器52内側の小窓が円形の形状をしている点、導波管47が、アンテナ素子48のアンテナパターン形状とほぼ同じ大きさの円形であるアンテナ素子48側の開口と、電波窓45の内側の小窓とほぼ同じ大きさの円形である電波窓45側の開口とを備える円柱状である点が相違点であることを示している。
従って、アンテナ素子48、電波窓45、導波管47は、実施例1のアンテナ装置において対応する構成要素と比較し、以下のような効果を有する。
まず、アンテナ素子48は、マイクロストリップライン構造ではあるが、アンテナ素子48のアンテナパターンが円形である点で相違する。従って、アンテナパターンへの給電点の位置を工夫することにより、四角形なアンテナパターンによっては受信することが困難な、円偏波を有する電波も受信することができる。
次に、電波窓45のアンテナ素子用の容器52内側の小窓が円形の形状をしている点で相違する。従って、小窓の面積を、小窓の形状が正方形であった場合と比較して小さくすることができるため、電波窓45からの熱流入を低下させることができる。
次に、導波管47が、アンテナ素子48のアンテナパターン形状とほぼ同じ大きさの円形であるアンテナ素子48側の開口と、電波窓45の内側の小窓とほぼ同じ大きさの円形である電波窓45側の開口とを備える円柱状である点で相違する。従って、電波窓45の小窓、アンテナ素子48のアンテナパターンと密着した形状を有する導波管47とすることができる。
そして、以下に示すようにアンテナ素子48のアンテナパターン、導波管47、及び、電波窓45の小窓を関連付けた形状とすることが望ましい。
ます、送受信電波の実効的な波長がλである場合には、アンテナパターン内の電流相殺がなくなり、送受信信号が大きくなるので、実施例3に係るアンテナ素子48のアンテナパターンの直径は、λ/2程度であることが望ましい。
ここで、「実効的な波長」とは、実施例1において説明した「実効的な比誘電率」に対応した、送受信電波が有する波長をいう。
具体的には、アンテナ素子48が基板上に形成されていることを考慮した場合には、アンテナ素子用の容器52内の比誘電率と基板の比誘電率とを考慮した実効的な比誘電率をAとし、真空中の送受信電波の波長をλとすると、アンテナパターンの直径は、λ/2/√Aであることが望ましい。ここで、真空中で波長λを有する電波は、比誘電率Eの物質中を進む場合には、実効的な波長はλ/√Eとなることを考慮している。
一方、導波管47の開口部の直径も、実効的な波長をλとすると、λ/2程度であることが望ましい。アンテナ素子20のアンテナパターンの直径がλ/2、すなわち、λ/2/√Aであるので、電波の損失を抑えるためである。
さらに、導波管47の開口部がλ/2/√Aであることを考慮し、電波窓45の内側の小窓もλ/2/√A程度が望ましい。
ここで、実施例3のアンテナ装置を構成する基板の比誘電率がほぼ空気中の比誘電率と同じであるような設計をし、10GHzの受信電波を受けることを想定すると、受信電波の波長は、真空中の光速度を約3×10E8m/secとすると、3cmとなる。
従って、上記を前提に、実施例3のアンテナ装置の構成要素の具体的な大きさを見積もると、例えば、上記の電波窓45部の小窓は、約1.5cm程度である。また、例えば、電波窓45は、その小窓の2行×4列分を含むとすると、小窓間の間隔を見込むと5×9cm程度となる。そうすると、例えば、上記の電波窓45を含むアンテナ素子用の容器52は、直径15cmの円を底面とする高さ10cm程度の円柱である。
また、例えば、アンテナ素子用の容器52の底面からコールドプレート上面までの高さは5cm程度である。さらに、例えば、導波管47はアンテナ素子用の容器52の蓋部44が厚さ1cm程度であることを考慮すると、1〜3cm程度の高さをもち、底面部分は直径1.5cm程度の円形である円柱である。
実施例3のアンテナ装置によれば、実施例1のアンテナ装置がもつ効果に加え、アンテナ素子48のアンテナパターンが円形な為、給電位置の工夫により、四角形のアンテナパターンではとらえることが困難なモード、例えば、円偏波を有する電波をとらえることができる。
【実施例4】
(誘電体から構成された導波管を使用した実施例)
図9、図10及び図11を用いて実施例4のアンテナ装置の説明をする。ここで、図9は、実施例4のアンテナ装置の一部を示す斜視図である。また、図10は、実施例4のアンテナ装置の上面図である。さらに、図11は、実施例4のアンテナ装置を構成する導波管62の斜視図である。
但し、実施例4のアンテナ装置の構成要素は、実施例1のアンテナ装置の構成要素と比較して以下の点が異なる。
すなわち、図9及び図10は、実施例4のアンテナ装置を構成する導波管62が、アンテナ素子63側から電波窓59側に向かって細くなる円柱形状を有している点、電波窓59が円形の小窓である点、マイクロストリップライン構造を有するアンテナ素子63のアンテナパターンが円形である点で実施例1と相違することを示している。
ここで、電波窓59には、比誘電率εをもち、かつ、透明な板状のものがはめ込まれている。
従って、真空中を伝搬する電波の波長をλとすると、電波窓59を電波が通過するとき、電波の波長はλ/√εとなるため、円形な電波窓59の直径はλ/2/√ε程度とすることが望ましい。円形な小窓である電波窓59の直径がλ/2/√ε未満であると、電波の通過が電磁気の法則により遮断されるからである。一方、円形な小窓である電波窓59の直径がλ/2/√εより上回ると、外部から熱放射による、アンテナ素子への熱流入が大きくなるからである。
さらに、図11は、導波管62の斜視図を示したものである。そして、導波管62はアンテナ素子63側から電波窓59側に向かって細くなる円柱の形状を有している。また、アンテナ素子63側の導波管62の第1の開口部62aの直径は、電波窓59側の第2の開口部62bの直径より大きいことが望ましい。
さらに、導波管62は、比誘電体εを持つ一体ものであり、外周には、銀(Ag)、銅(Cu)、金(Au)等の低抵抗な金属が蒸着されているものである。
ここで、導波管62が上記のような形状を有することが望ましい理由を以下に説明する。まず、電波窓59にはめ込まれている板の比誘電率と導波管62の比誘電率とがεであるから、導波管62の電波窓59側の第2の開口部62b付近の実効の比誘電率はほぼεであること、及び、電波窓59を通過した電波の波長はλ/2/√εであることより、円形な小窓である電波窓59の直径と導波管62の第2の開口部62bの直径とは一致させることができる。
一方、導波管62の第1の開口部62a付近では、電波は、準真空状態にあるアンテナ素子用の容器55内の比誘電率と、アンテナ素子63が形成されている基板の比誘電率と、導波管62の比誘電率の影響を受ける為、導波管62の第1の開口部62a付近の実効的な比誘電率をεとすると、導波管62を通過した電波の波長はλ/2/√εであることが想定される。従って、導波管62の第1の開口部62aの直径は、λ/2/√εであることが望ましい。
そこで、アンテナ素子用の容器55内の比誘電率や基板の比誘電率は、導波管62の比誘電率より小さいので、通常は、εのほうが、εより小さいことを考慮すると、図11に示すように、導波管62は、直径λ/2/√εの円形な第1の開口部62aと直径λ/2/√εの円形な第2の開口62を有する円柱であることが望ましい。
さらに、導波管62の高さは、アンテナ素子63から電波を送信する場合に、指向性利得の向上のため、λ/4/√ε〜λ/√εの範囲内であることが望ましい。なぜなら、高さが低すぎては、電波放射時の指向性の利得は向上せず、高さが高すぎては、導波管62を伝わることによる電波の損失が起こるからである。
次にアンテナ素子63のアンテナパターンの形状は、準真空状態にあるアンテナ素子用の容器55内の比誘電率と、アンテナ素子63が形成されている基板の比誘電率とを主に考慮すればよく、実効的な比誘電率をεとすると、直径がλ/2/√εである円形であることが望ましい。アンテナ素子付近の電波の波長の1/2程度のアンテナパターンであると、電波の送受信において、利得が向上するからである。
ここで、アンテナ素子63のアンテナパターン付近では、導波管62の比誘電率の影響を受けてはいるが、よりアンテナ素子用の容器55内の比誘電率の影響を受けるので、アンテナ素子用の容器55内の比誘電率がほぼ真空中の比誘電率であることを考慮すれば、εはεより小さいことが想定される。従って、上記のようにして見積もった、電波窓59の面積とアンテナ素子のアンテナパターンの面積とを比較すると、電波窓59の面積のほうが小さいという結果になる。
実施例4のアンテナ装置は、実施例1のアンテナ装置と同様な効果を有するが、上記の相違点により、電波窓59の面積が、アンテナ素子63の面積より小さいので、電波窓59を通じて、外部からの直接の熱放射がアンテナ素子63にあたるのを、さらに、少なくすることができる。一方、導波管59の形状を工夫したことにより、送受信に係る電波は、アンテナ素子63と電波窓59間で、分散することも抑止できる。
その結果、コールドプレート65を含む冷却装置の負荷を軽減するため、冷却装置を小型化することができ、アンテナ装置全体も小型化することができる。
なお、本実施例4において、導波管62の形状は、電波窓59側の開口部が小さく、アンテナ素子63側の開口部が大きい円形を持つ、円柱とした。
しかし、導波管62の形状が、電波窓59側の開口部と同様な断面を保ったままの円柱、すなわち、アンテナ素子63側の開口部も電波窓59側の開口部と同様な直径をもつ円形であってもよい。
なぜなら、アンテナ素子63を形成した基板の比誘電率を、基盤を構成する材料の選択により調節し、アンテナ素子63のアンテナパターン付近の実効の比誘電率をεとすることができるからである。
そして、上記の場合であっても、円形な小窓である電波窓59の面積を小さくできたことにより、実施例4のアンテナ装置と同様な効果を得ることができる。
【実施例5】
(アンテナ素子用の容器の外部にも導波管を有する実施例)
図12を用いて、実施例5の説明をする。ここで、図12は、実施例5のアンテナ装置の一部を示す斜視図である。そして、実施例5のアンテナ装置は外部導波管68を有する点を除き、実施例4と同様な構成要素を有するアンテナ装置である。
そして、図12に示すように、実施例5のアンテナ装置は、実施例4のアンテナ装置に加えて、アンテナ素子用の容器55の外部に外部導波管68を有する。
ここで、外部導波管68は、アンテナ素子用の容器55の外側であって、すべての電波窓59を外部導波管68の底面が含み、電波窓59に接するように配置された、形状を有する外部導波管68であって、アンテナ素子63の指向性を強める形状及び寸法をしている。
ここで、電波の送受信時にアンテナ素子の指向性利得を向上させるには、外部導波管68は、金属薄膜を円柱状に巻いたもの、又は、ポリエステル等の薄膜な絶縁膜に、銀(Ag)、銅(Cu)、金(Au)等の金属を蒸着したものを巻いて円柱状にしたものが望ましい。また、図12に示すように、外部導波管68の形状は、アンテナ素子用の容器55に接する側の開口部の面積が小さく、他方の開口部の面積が大きいものであることが望ましい。ただし、必ずしも、外部導波管68の形状は、上記のようである必要はなく、開口部が同一な面積及び形状を有する円柱であってもよい。外部導波管68の形状が、そのような円柱であっても、上記の形状は、アンテナ素子63の指向性を強める形状だからである。
さらに、電波の送受信時にアンテナ素子の指向性を強めるには、外部導波管68の高さは、送受信電波の波長から波長の1/4程度であることが望ましい。
実施例5のアンテナ装置によれば、実施例4のアンテナ装置で生じる効果に加えて、アンテナ容器の外部に配置された外部導波管68により、送信時には、アンテナ素子の指向性利得が向上する。また、電波が電波窓59に集められ、よりアンテナ素子63で受ける電波が強まる効果がある。
【実施例6】
(導波管とアンテナ素子の距離が波長の1/4未満である実施例)
図13を用いて、実施例6を説明する。ここで、実施例6のアンテナ装置は、実施例1のアンテナ装置と同様な構成要素を有するが、アンテナ素子72の指向性を強める形状及び寸法を有する導波管74とアンテナ素子72の距離が波長λの1/4未満である点で異なる。そして、図13は、アンテナ素子用の容器の上部の断面図を表したものである。図13によれば、アンテナ素子72と導波管74とは離間しているが、両者の距離は、波長λの1/4未満である点を示している。また、導波管74とシールド71も離間している。
ここで、導波管74の開口部とアンテナ素子72とは離間しているが、その距離は送受信電波の波長λの1/4未満とした理由を説明する。
まず、受信時において、電波窓73から導波管74のアンテナ素子72側の開口部まで、導波管74に受信電波は閉じ込められていたが、導波管74の開口部からでることにより、受信電波は自由な真空中を伝搬することになる為、電波のまわり込みがおこり、導波管74とアンテナ素子72の距離が大きいと、電波が分散してしまうからである。
次に、送信時においても、アンテナ素子72からの送信電波は、分散をはじめるため、導波管74とアンテナ素子72の距離が大きいと、導波管74により伝搬する電波が減少し、指向性利得の向上につながらないからである。
また、導波管74がシールド71とも、アンテナ素子72とも離間しているのは、固体感の熱伝導を通じて、導波管74からの熱流入を抑止するためである。
実施例6のアンテナ装置によれば、導波管74のアンテナ素子側の開口部からアンテナ素子72までの間の距離が、波長λの1/4未満に限定されている為、受信時に、電波窓73を通過した電波は、導波管74をでた後であっても、分散せずアンテナ素子72に伝わる。一方、送信時に、アンテナ素子72から送信された電波は導波管74により伝搬するため、アンテナ素子72の指向性利得が向上する。
また、導波管74のアンテナ素子側の開口部とアンテナ素子72は離間しているため、導波管74からの固体間の熱伝導又は気体を媒介とする熱伝導による、アンテナ素子72への、熱流入は抑止されるため、アンテナ素子72を冷却する冷却装置の負荷は軽減する。その結果、冷却装置の小型化及びアンテナ装置全体の小型化ができるという、実施例1のアンテナ装置の効果をも引き継いでいる。
【実施例7】
(アンテナ装置を用い、かつ、BPF及び低雑音増幅器が容器外にある電波受信装置に係る実施例)
図14を用いて、実施例7の受信装置97について説明をする。ここで、実施例7の受信装置97は、実施例1のアンテナ装置35と同様の、基板と、基板上のアンテナ素子と、導波管と、シールドと、排気部Oリングと、真空バルブと、真空ポンプと、アンテナ素子用の容器と、コールドプレートと、管と、冷媒と、圧縮機とから構成されるアンテナ装置を含む。
また、実施例7の受信装置97に含まれるアンテナ素子用の容器内において、アンテナ素子、導波管、アンテナ素子容器の蓋部にある電波窓の位置関係は実施例1のアンテナ装置と同様であり、導波管がアンテナ素子の指向性を強める形状及び寸法を有する点も実施例1のアンテナ装置と同様である。
そして、図14は、アンテナ装置を含めた受信装置97の一部について示したものである。すなわち、図14には、アンテナ素子用の容器内の複数のアンテナ素子80a〜80hと、アンテナ素子用の容器内のアンテナ素子用の基板81と、個別にアンテナ素子80a〜80hに接続されている、前記アンテナ素子用の容器外にある複数のBPF(band pass filter)83〜90と、前記アンテナ素子用の容器外にある個別にBPF83〜90に接続されている低雑音アンプ91a〜91hと、前記アンテナ素子用の容器外にあるIF(inter face)93と、信号処理回路95とが表されており、図13に示したBPF83〜90と、低雑音増幅器91a〜91hと、実施例1のアンテナ装置35と同様なアンテナ装置は、受信装置97を構成している。
なお、BPF83〜90はアンテナ素子で受けた電波を起因とする信号のなかから、特定の周波数の信号を取り出すフィルターである。そして、BPF83〜90は、アンテナ素子用の容器内にあるアンテナ素子80a〜80hからの信号をケーブル、RFコネクタを通じて受け、特定の周波数の信号を低雑音増幅器91a〜91hへ出力する。
低雑音増幅器91a〜91hは、BPF83〜90からの信号を増幅し、IF93へ出力する。
IF93は受信装置97で受信した信号を信号処理回路95へ正確に伝えるものであり、アンテナ素子80a〜80hまでの各アンテナ素子からの受信信号の位相を揃える役割を有することもある。
「各アンテナ素子80a〜80hからの受信信号を一括して処理し、各受信信号間の位相を揃えたり、特定のアンテナ素子からの信号に加工を加えたりして、アンテナ素子80a〜80hを一体として動作させる」ことを「連動させる」と定義すると、信号処理回路95は、各アンテナ素子80a〜80hを連動させることにより、複数のアンテナ素子からなる複合アンテナとして動作させる機能を有する回路である。
実施例7の受信装置97によれば、実施例1のアンテナ装置35における、複数のアンテナ素子80a〜80hからの受信信号を同時に、信号処理回路95へ取り出すことができる。従って、前記受信信号に適当な処理を加えることにより、複数のアンテナ素子80a〜80hを、それらのアンテナ素子を連動させた複合アンテナ、例えば、いわゆるフェーズド・アレイ・アンテナやアダプティブ・アレイ・アンテナとして扱うことができる。
【実施例8】
(アンテナ装置を用い、かつ、BPF及び低雑音増幅器が容器内に配置した電波受信装置に係る実施例)
図15及び図16を用いて、実施例8の受信装置153の説明をする。
ここで、実施例8の受信装置153に含まれるアンテナ装置は、実施例1のアンテナ装置35と同様の、基板と、基板上のアンテナ素子と、導波管と、シールドと、排気部Oリングと、真空バルブと、真空ポンプと、アンテナ素子用の容器と、コールドプレートと、管と、冷媒と、圧縮機とから構成されるアンテナ装置を含む。
また、実施例8の受信装置153に含まれるアンテナ素子用の容器内において、アンテナ素子、導波管、アンテナ素子容器の蓋部にある電波窓の位置関係は実施例1のアンテナ装置35と同様であり、導波管がアンテナ素子の指向性を強める形状及び寸法を有する点でも実施例1のアンテナ装置と同様である。
そして、図15は、アンテナ装置を含めた実施例8に係る受信装置153の一部について示したものである。すなわち、図15には、複数のアンテナ素子108〜111、113〜116と、個別にアンテナ素子108〜111、113〜116と接続する、受信回路100〜107と、前記アンテナ素子108〜111、113〜116と、前記受信回路100〜107の給電パターン122、117と、前記給電パターン112、117に接続されているバイアスティー用パターン121、120と、上記の回路、パターン、素子が搭載されている基板149と、シールド112を表しており、前記の回路、パターン、素子も含めた基板149及び前記シールド112は、アンテナ素子用の容器内にある。ここで、バイアスティー用パターン121、120とは、給電パターン122、117への電波の影響を相殺するためのパターンである。
また、図16は実施例8に係る受信装置153及びそれに接続される回路を表したものであり、図15に示した基板119上の受信回路100〜107等をブロック図で示したものである。すなわち、図16は、同一基板上に搭載された複数のアンテナ素子108〜111、113〜116と、個別にアンテナ素子に接続する受信回路100〜107を構成するBPF133〜140及びBPFに接続する低雑音増幅器141〜148と、同一基板上にはないIF150と、信号処理回路151とを表わしており、アンテナ素子用の容器152内のアンテナ素子108〜115、含めたアンテナ装置と、受信回路100〜107とは実施例8に係る受信装置153を構成している。
一方、IF150及び信号処理回路151はアンテナ素子用の容器152外に設置され、実施例8の受信装置153に含まれない。そして、アンテナ素子108〜115で受けた受信信号の伝達及び受信信号の処理をする点では実施例7で説明したと同様に機能する。
しかし、実施例7の受信装置とは、アンテナ素子108〜115及び受信回路100〜107はアンテナ素子用の容器内にはいっている為、アンテナ素子108〜115及び受信回路100〜107ともに、冷却される点で異なる。
上記の実施例8によれば、上記の相違点により、受信回路100〜107とアンテナ装置は一体となって受信装置153を構成するため、受信装置153の小型化が実現できる。また、受信回路100〜107も冷却される為、受信回路100〜107に係る素子の性能が向上するので、受信信号の振幅の増大及びフィルター特性が向上する。
【実施例9】
(アンテナ素子のアンテナパターンの形状が円形であるアンテナ装置を用い、かつ、BPF及び低雑音増幅器が容器内に配置した電波受信装置に係る実施例)
図17及び図18を用いて実施例9を説明する。
ここで、実施例9の受信装置220は、実施例1のアンテナ装置35と同様の、基板と、基板上のアンテナ素子と、導波管と、シールドと、排気部Oリングと、真空バルブと、真空ポンプと、アンテナ素子用の容器と、コールドプレートと、管と、冷媒と、圧縮機とから構成されるアンテナ装置を含む。
また、実施例9の受信装置220に含まれるアンテナ素子用の容器内において、アンテナ素子、導波管、アンテナ素子容器の蓋部にある電波窓の位置関係は実施例1のアンテナ装置35と同様であり、導波管がアンテナ素子の指向性を強める形状及び寸法を有する点も実施例1のアンテナ装置35と同様である。
そして、図17は、アンテナ装置を含めた実施例9の受信装置220の一部について示したものである。すなわち、図17は、複数のアンテナ素子163〜170と、給電点175〜182と、個別にアンテナ素子163〜170と接続する受信回路155〜162と、前記受信回路の給電パターン172、174と、前記給電パターン172、174に接続されているバイアスティー用パターン171、173と、前記アンテナ素子163〜170、前記受信回路155〜162等が搭載されている基板175と、シールド176とを表しており、前記のアンテナ素子163〜170、前記受信回路155〜162等と、基板175と、シールド176とは、アンテナ素子用の容器内に配置され、アンテナ素子163〜170、アンテナ素子用の容器等を含むアンテナ装置とともに実施例9の受信装置220を構成する。
ここで、アンテナ素子163〜182は円形のアンテナパターンを有しており、アンテナ素子163〜182向けの給電は基板下から給電点175〜182を通して供給される。また、受信電波の性質による受信信号の大きさ、位相の違いを顕著にする為、上記の給電点175〜182は、円形のアンテナパターンの中心からずれており、かつ、1点である。
例えば、円偏波の偏波面の違いにより、円形アンテナパターン内に発生する振動モードの角度がことなるが、給電点が中心からはずれていると、振動モードの角度によって、給電までに時間差が生じ、振動モードの違いが受信信号の位相の差となる場合を想定している。
また、バイアスティー用パターン171、173は給電パターン172、174への電波の影響を相殺するためのパターンである。
また、図18は、図17に示した基板175と、基板175上の複数の円形のアンテナ素子163〜170と、個別にアンテナ素子210〜217に対応する受信回路155〜162を構成するBPF190〜197及び低雑音増幅器200〜207と、基板175上にないIF190と、信号処理回路219を表している。
そして、アンテナ素子210〜217と受信回路190〜197は、アンテナ素子用の容器218内に設置されており、アンテナ素子用の容器218を含むアンテナ装置とともに受信装置220を構成している。
一方、IF190及び信号処理回路219はアンテナ素子用の容器152外に設置され、実施例9の受信装置を構成せず、アンテナ素子163〜170で受けた受信信号の伝達及び受信信号の処理をする点では実施例8で説明したIF150、信号処理回路151と同様の機能を有する。ただし、扱う電波の種類が円偏波をも想定している点で、受信信号の処理方法が異なる。
そして、実施例8の受信装置153とは、アンテナ素子163〜170のアンテナパターンの形状が円形である点で異なる。
実施例9の受信装置220によれば、実施例1のアンテナ装置を使用したことにより得られた実施例7及び実施例8の受信装置と同様な効果を得られるが、さらに、アンテナ素子のパターンを円形にしたことにより、複数のアンテナ同士を連動させた場合に、アンテナ素子163〜170を構成要素とした複合アンテナとして、円偏波に対応させることができる。
【実施例10】
(アンテナ装置にもちいるアンテナ素子に関する実施例)
図19、図20、図21、図22及び図23を用いて、実施例10に係るアンテナ素子の形状、材質、構造等を説明する。
まず、実施例10に係る超伝導材料を使用したアンテナ素子は、実施例1乃至実施例6に係るアンテナ装置に使用されるアンテナ素子に関するものであって、アンテナパターンが基板上に作成されている、いわゆる平面型アンテナ素子といわれるものである。(以下、実施例10の説明において、平面型アンテナ素子を単に「アンテナ素子」という。)
次に、実施例10に係る超伝導材料を使用したアンテナ素子233のアンテナパターンの大きさは、受信を想定している電波の波長をλとすると、図18に示すように、1/2λ又は1/4λであることが望ましい。なぜなら、上記の大きさが受信電波とアンテナパターンの整合性がよく、受信電波を受けた際に、アンテナ内の電流の打ち消しがないからである。
ここで、図19は、実施例10に係るアンテナ素子233の基板231と、基板上の超伝導材料であるアンテナパターン230と、基板裏面の超伝導材料である接地導体232を示しており、給電234は、アンテナパターン230を構成する2つのL字パターン間で行われている。
そして、アンテナパターン230は、いわゆるダイポールアンテナ型である。また、アンテナパターン230の大きさは、例えば、波長の1/2程度である。なお。上記波長は、実施例1の説明における「波長」に関する記載と同様な定義とする。
ここで、アンテナ素子233は一つのアンテナパターンから構成されていてもよいが、図20に示すようにT型の線状アンテナが複数、組み合わされたアンテナパターン235のようであってもよい。
また、異なるアンテナパターンの例として、図21にパッチアンテナ型のアンテナパターンを複数接続して構成されたアンテナパターン240を示すが、実施例10に係るアンテナ素子は、図21のようなパッチアンテナ型のアンテナパターンを有するものであってもよい。
(図21について、Zhi−Yuan shen,High−Temperature Superconducting Microwave Circuits,Artch House Microwave Library P134−145より引用)
ここで、扱う電波の周波数を10GHzと想定すると、真空中の波長は約3cm程度となる。そして、基板231の比誘電率が低い場合を想定すると、図18に示すアンテナ素子の基板231の大きさは例えば、約2cm×2cm程度となる。また、図20及び図21のアンテナ素子の基板の大きさは、例えば、約12cm×12cm程度である。
次に、実施例10の超伝導材料を使用したアンテナ素子に係る超伝導材料は、REBCO系(Rare Earth元素(稀土類元素)と、バリウム(Ba)と、銅(Cu)と、酸素(O)とから構成されているもの)、BSCCO系(バリウム(Ba)と、ストロンチューム(Sr)と、カルシウム(Ca)と、銅(Cu)と、酸素(O)とから構成されているもの)及びPBSCCO系(鉛(Pb)と、バリウム(Ba)と、ストロンチューム(Sr)と、カルシウム(Ca)と、銅(Cu)と、酸素(O)とから構成されているもの)等であることが望ましい。なぜなら、上記の超伝導材料は、高温の超伝導特性であって大電流を流すことが可能な超伝導材料だからである。また、低温下においては、表面抵抗が低く、ミリ波領域の周波数領域においても、数十mオーム(Ω)の値を示し、銅(Cu)よりも、アンテナ素子の材料として、優位性があるからである。なお、REBCO系といわれる超伝導材料には例えば、Ym1Bam2Cum3Om4(0.5≦m1≦1.2、1.8≦m2≦2.2、2.5≦m3≦3.5、6.6≦m4≦7.0)、Ndp1Bap2Cup3Op4(0.5≦p1≦1.2、1.8≦p2≦2.2、2.5≦p3≦3.5、6.6≦p4≦7.0)、
Ndq1Yq2Baq3Cuq4Oq5(0.0≦q1≦1.2、0.0≦q2≦1.2、0.5≦q1+q2≦1.2、1.8≦q3≦2.2、2.5≦q3≦3.5、6.6≦p4≦7.0)、Smp1Bap2Cup3Op4(0.5≦p1≦1.2、1.8≦p2≦2.2、2.5≦p3≦3.5、6.6≦p4≦7.0)、Hop1Bap2Cup3Op4(0.5≦p1≦1.2、1.8≦p2≦2.2、2.5≦p3≦3.5、6.6≦p4≦7.0)がある。また、超伝導材料として採用可能なRare Earth元素(稀土類元素)として、上記のY、Nd、Sm、Hoの他に、Lu、Yb、Tm、Er、Dy、Gd、Eu、La等がある。(参考文献、長村光造著:「超伝導材料」、P70、米田出版,2000年)
従って、通常の超伝導材料のように、表面抵抗が急激に下がる臨界温度として、液体ヘリウム温度(約4K)程度の低温を必要とせず、液体窒素温度(約50K〜70K)程度で足りるため、超伝導材料を使用したアンテナ素子において、実用的な表面抵抗を得るための冷却が容易にできる。また、銅(Cu)を使用したアンテナ素子よりも、上記のREBCO系等を使用したアンテナ素子は、電波の送受信を、低損失で行うことができる。
次に、実施例10の超伝導材料を使用したアンテナ素子のアンテナパターンの超伝導薄膜の構造は図22に示すように、結晶成長性が優れた結晶粒、及び、粒径の大きな構造を有する結晶粒(以下「グレイン」という)から構成されていることが望ましい。なぜなら、同じ超伝導材料を使用しても、結晶成長性がよく、大きなグレインを有する超伝導薄膜ほど、表面抵抗は低くなるからである。
ここで、図22に示す両対数の図は、銅(Cu)と、一般的な低温超電伝導材料としてNbSn、REBCO系、BSCCO系、及び、PBSCCO系等のペロブスカイト型銅酸化物の高温超伝導材料を代表するものとして、Y(イットリューム)−Ba−Cu−Oから構成される超伝導材料について、表面抵抗の周波数依存性を示すものである。ここで、22図中、X軸は周波数を、Y軸は表面抵抗を表している。また、白抜きの三角印は一般的な低温超伝導材料であるNbSnの表面抵抗を、黒丸印はY−Ba−Cu−Oの一般表記であって、Y、Ba、及びCuの組成比を数字で表したY−123をエピタキシャル成長させたものの表面抵抗を、白丸印はエピタキシャル成長していないポリクリスタルのY−123の表面抵抗を、点線は銅(Cu)の表面抵抗の変化をそれぞれ表している。
(図22について、2M.Hein,High−Temperature−superconductor Thin Film at Microwave Frequencies,Springer,1999,P93より引用)
そして、図22では、エピタキシャル成長させたグレインの大きなY−123のほうが、低温状態では表面抵抗が低いことを示している。
次に、図23に示すように、実施例10のアンテナ素子のアンテナパターンを構成する超伝導薄膜は、a軸及びb軸を含む面内に、偏光顕微鏡で認識できる数μm径程度の大きなグレインを有しており、さらに、超伝導薄膜が形成されている基板面に対し垂直方向にc軸配向していることが望ましく、かつ、各グレインの結晶軸の方向が統一されていることが望ましい。ここで、上記の説明中、a軸、b軸、c軸は、結晶軸の名称であり、結晶格子の短い順からa軸、b軸、c軸という。
なぜなら、まず、超伝導薄膜が基板面に対し垂直方向に、c軸配向しているグレインから構成されていれば、a軸又はb軸面内は基板面に対して水平方向となる。その結果、超電導性が弱いことが知られているc軸方向ではなく、超電導性が比較的強いa軸又はb軸面内を、電流が流れる為、超伝導薄膜の表面抵抗が低くなるからである。
そして、各グレインの結晶軸の方向が統一されており、隣あったグレイン同士の結晶軸の方向が揃うと、グレイン間の超伝導電流の結合が強くなることがしられており、薄膜の表面抵抗は、さらに低くなるからである。
ここで、図23は、図19のアンテナパターンのA−B断面を示したものであり、MgO(100)面を表面にもつ基板252と、超伝導薄膜と、超伝導薄膜のグレイン250と、超伝導薄膜のc軸の向き251と、超伝導材料のa軸又はb軸の向き253とを表している。そして、超伝導薄膜のグレインは、MgO(100)面に対して垂直方向に強くc軸配向しているため、アンテナ素子が電波を送受信する際に、アンテナ素子の給電点からの電流は、a軸及びb軸を含む面内を流れる。
なお、アンテナパターンを構成する薄膜の厚さは、約100nm〜1μm程度であることがパターニングや磁気進入長の関係で望ましい。
そして、アンテナパターン230、235、240を、大きなグレインを有する超伝導薄膜であって、かつ、MgO(100)面に対し垂直方向にc軸配向している薄膜をパターニングして、MgO(100)基板252上に作成する工程は、例えば、以下の通りである。
まず、真空容器内に、例えばMgO(100)面の基板の一方の表面とY−Ba−Cu−O系の超伝導材料からなるターゲットを向かい合わせて置き、パルス状レーザ光線(例えば、波長248nmのKrFレーザ)をターゲットにあて、ターゲットから超伝導材料を、プラズマ状態でたたきだして、基板の表面に被着させる。その際、真空容器内は減圧酸素雰囲気(例えば、約100mTorrの減圧酸素中)とし、上記の基板は約700〜800℃で加熱する。その結果、超伝導薄膜が基板の一方の表面に形成される。
次に、真空容器内に、基板の他方の表面とY−Ba−Cu−O系の超伝導材料からなるターゲットを向かい合わせて置き、パルス状レーザ光線をターゲットにあて、ターゲットから超伝導材料を、プラズマ状態でたたきだして、基板の裏面に被着させる。その際の、真空容器内の雰囲気及び基板の状態は、基板の一方の表面に超伝導材料を被着させる時と同様である。その結果、超伝導薄膜が基板の他方の表面に形成される。
次に基板の一方の表面に形成された超伝導薄膜上に、レジストを塗布し、フォトリソグラフィー技術を利用して、レジストをパターニングする。そして、パターニングされたレジストをマスクに、ウエットエッチング又はArミリング等のドライエッチングを行い、超伝導材料をパターニングする。その後、レジストを剥離する。その結果、基板の一方の表面上にアンテナ素子のアンテナパターン230、235、240が形成される。
次に、アンテナ素子を構成する、基板の一方の表面上のアンテナパターン及び基板の他方の表面上の接地電位として利用される超伝導薄膜に、電極を作製する為に、基板の両面に、EB(electron beam)蒸着により、金(Au)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、チタン(Ti)等の金属膜を成膜する。
次にフォトリソグラフィー技術及びドライエッチング技術等で上記の工程で作成した金属膜をパターニングすることより、アンテナ素子の所定の位置に電極を形成する。
ところで、減圧酸素中で基板を加熱しながら、レーザ光線により超伝導材料を基板に被着させる工程により、超伝導薄膜がc軸配向した大きなグレインを持ち、かつ、上記隣接するc軸配向した大きなグレインのa軸又はb軸の方向も揃うこととなった後、a軸又はb軸の方向にそって、直線的なアンテナパターンを形成することが望ましい。アンテナパターンにそって、グレインの結晶軸が揃うこととなり、さらに、低抵抗が望めるからである。
例えば、図19のL字型のアンテナパターンであれば、縦線の部分はa軸方向、横線の部分をb軸方向とすることが望ましい。また、図21の長方形のループ型のパターンであれば、長辺方向をa軸方向、短辺方向をb軸方向とすることとすれば、上記の状態を実現可能である。
実施例10の超伝導材料を使用したアンテナ素子によれば、表面抵抗が通常の銅(Cu)等の金属より低い上に、高温超伝導材料を通常に基板に堆積させただけのものよりも低い為、実施例1乃至実施例6に示すアンテナ装置に適用した場合に、高周波数を有する電波に対しても良好なアンテナ特性を得ることができる。また、高温超伝導材料を使用しているので、通常の超伝導材料よりも、低温を必要としない為、冷却装置は、アンテナ素子の冷却を容易にすることができる。
【実施例11】
(電波受信装置又は電波送信装置に用いるBPF素子に関する実施例)
図24により、実施例11に係るBPF素子258について説明をする。
ここで、実施例11に係るBPF素子258は、実施例8及び実施例9において、実施例1乃至実施例6のアンテナ装置とともに使用される受信装置の受信回路に適用されるものであり、実施例1乃至実施例6のアンテナ装置のアンテナ素子と同一基板上に搭載されている。
従って、実施例11に係るBPF素子258は、アンテナ素子と同一の基板上にあり、コールドプレートにより冷却される為、実施例10に係るアンテナ素子と同様な高温超伝導材料で構成されていることが望ましい。なぜなら、アンテナ素子と同様な低温状態で、表面抵抗が低い状態となるからである。
ここで、図24は、超伝導材料を使用したBPF素子258のBPFパターン255と、基板256と、接地導体257を表す。そして、BPF素子の基板は数十mm×数十mmの大きさであり、その基板上には、2個の渦巻きを有するパターンが4個作成されている。なお、2個の渦巻きを有するパターンは通常数個から十数個の範囲で搭載され、通過帯域を狭めたい時に、数を多くするのが、通例である。
(図24について、特願2002−999997(平成14年3月5日出願、出願人:富士通、発明者:甲斐 学、山中 一典 等)の明細書中の図4、及び、
2002年電子情報通信学会エレクトロニクスソサイエティ大会講演SC5−3、
甲斐学ほか:「IMT−2000用超伝導フィルタシステムの開発」図2参照)
また、超伝導材料で作成されたBPF素子258と低温での動作が可能なHEMT(High Electron Mobility Transistor)素子とから受信回路が構成されていることが望ましい。なぜなら、HEMT素子は、HEMT素子の構成又は構造を選べば(例えば、PHEMT(Pseudomorphic−HEMT)等)、低温でも動作が可能であり、逆に、数十K程度の低温下では、素子を構成する結晶の格子振動等の影響が小さくなるので、より低雑音動作可能となるからである。また、アンテナ素子、BPF素子258、低雑音増幅器を同一基板上に搭載でき、受信装置は、受信信号の増幅後の信号、すなわち、より大きな信号を伝達できるからである。
実施例11に係るBPF素子258によれば、実施例8及び実施例9の受信装置に適用した場合に、BPF素子258の表面抵抗が低い為、低損失で、アンテナ素子で受信した信号から、所定の周波数を持つ信号を、取り出すことができる。また、実施例8及び実施例9の受信装置はより大きな信号を外部へ伝達できる。
【実施例12】
(アンテナ装置を用い、かつ、BPF及び増幅器は容器外に配置した電波受信装置に係る実施例)
図25を用いて、実施例12の送信装置305について説明をする。
ここで、実施例12の送信装置に含まれるアンテナ装置は、実施例1のアンテナ装置と同様の、基板と、基板上のアンテナ素子と、導波管と、シールドと、排気部Oリングと、真空バルブと、真空ポンプと、アンテナ素子用の容器と、コールドプレートと、管と、圧縮機とから構成されるアンテナ装置を含む。
また、実施例7の受信装置に含まれるアンテナ素子用の容器内において、アンテナ素子、導波管、アンテナ素子容器の蓋部にある電波窓の位置関係は実施例1のアンテナ装置と同様であり、導波管がアンテナ素子の指向性を強める形状及び寸法を有する点も実施例1のアンテナ装置と同様である。
そして、図25は、アンテナ装置を含めた送信装置305の一部について示したものである。すなわち、図25には、アンテナ素子用の容器303内の基板270と、アンテナ素子用の容器303内の複数のアンテナ素子260〜267と、個別にアンテナ素子260〜267に接続されている、アンテナ素子用の容器303外にあるBPF280〜287と、前記BPF280〜287に個別に接続されおり、アンテナ素子の容器303外にある増幅器271〜278と、前記増幅器271〜278に個別に接続さており、アンテナ素子の容器303外にあるミキサ290〜297と、アンテナ素子用の容器303外にあり、ミキサ290〜297と接続する逓倍器301と、アンテナ素子用の容器303外にあり、逓倍器301に接続する発振器301と、アンテナ素子用の容器303外にあり、ミキサ290〜297に接続するIF300を表しており、図25に示した増幅器271〜278と、BPF280〜287は、アンテナ素子用の容器303内のアンテナ素子260〜267を含めたアンテナ装置とともに、送信装置304を構成する。
ここで、IF300は、送信すべき情報を信号化する装置からの信号を変調する回路である。また、発振器302及び逓倍器301は元となる搬送波を発生し、ミキサ290〜297は搬送波と変調信号を合成して、アップコンバート、すなわち高周波信号へ変換する役割をもつ。さらに、BPF280〜287は送信波以外の余分な信号を減衰させ、増幅器271〜278は、アンテナから送信する信号を増幅する役割をする。
なお、実施例12の送信装置にも、実施例10に係るアンテナ素子を適用すれば、上記のアンテナ素子の表面抵抗は低い為、低損失で電波を送信することができる。
実施例12の送信装置によれば、送信用のアンテナ素子260〜267はアンテナ素子用の容器303内にあり、冷却されることにより、表面抵抗がさがる為、低損失で送信することができ、少ない電力でも、信号振幅の大きい信号を送信できる。
【実施例13】
(アンテナ装置を用い、かつ、BPF及び増幅器を容器内に配置した電波受信装置に係る実施例)
図26を用いて、実施例13の送信装置350について説明をする。
ここで、実施例13に含まれるアンテナ装置は、アンテナ素子用の容器と、基板上のアンテナ素子と、導波管と、冷却機と、真空ポンプから構成されている点で、実施例1のアンテナ装置と同様である。
また、アンテナ素子用の容器内において、アンテナ素子、導波管、アンテナ素子容器の蓋部にある電波窓の位置関係は実施例1のアンテナ装置と同様であり、導波管がアンテナ素子の指向性を強める形状及び寸法を有する点も実施例1のアンテナ装置と同様である。
そして、図26は、アンテナ装置を含めた送信装置350の一部について示したものである。すなわち、図26には、アンテナ素子用の容器347内の複数のアンテナ素子307a〜307hと、アンテナ素子用の容器347内のアンテナ素子用の基板346と、個別に基板346上で、アンテナ素子307a〜307hに接続されている、アンテナ素子用の容器347内にあるBPF318〜325と、前記BPF318〜325に個別に基板上で、接続されているアンテナ素子の容器内にある増幅器310〜317と、前記増幅器310〜317に個別に接続されており、アンテナ素子の容器347外にあるミキサ330〜337と、アンテナ素子用の容器347外にあり、ミキサ330〜337に接続するIF345と、逓倍器341と、発振器341を表しており、図26に示した構成要素は、アンテナ素子用の容器347内のアンテナ素子307a〜307hを含めたアンテナ装置とともに、受信装置350を構成している。
ここで、IF345は、送信すべき情報を信号化する装置からの信号を変調する回路である。また、発振器340及び逓倍器341は元となる搬送波を発生し、ミキサ330〜337は搬送波と変調信号を合成して、アップコンバート、すなわち高周波信号へ変換する役割をする。さらに、BPF318〜325は送信波以外の余分な信号を減衰させ、増幅器310〜317は、アンテナから送信する信号を増幅する役割をする。以上の点は、実施例12と同様である。
なお、実施例13の送信装置350にも、実施例10に係るアンテナ素子233又は実施例11に係るBPF素子258の適用は可能である。適用の結果、上記のアンテナ素子233及びBPF素子258の表面抵抗は低い為、低損失で電波を送信することができる。
実施例13の送信装置350によれば、送信用のアンテナ素子307a〜307h及び送信回路はアンテナ素子用の容器347内にあり、冷却されることにより、表面抵抗がさがる為、低損失で送信することができ、少ない電力でも、信号振幅の大きい信号を送信できることは、実施例12の送信装置と同様であるが、送信用のアンテナ素子及び送信回路とともに、性能が向上するので、低損失での送信及び信号振幅の増大効果をさらにあげることができる。
また、送信回路がアンテナ装置と一体となっている為、実施例13の送信装置350は小型化が可能である。
【産業上の利用可能性】
本発明によれば、超伝導材料を使用したアンテナ素子を利用して、指向性利得の高いアンテナ装置を得ることが可能となる。また、アンテナ装置、アンテナ装置を利用した電波受信装置、アンテナ装置を利用した電波送信装置ともに、低損失で稼働が可能である。さらに、本発明によれば、複数の超伝導材料を使用したアンテナ素子に係る、アンテナ装置、電波受信装置、電波送信装置の小型化が可能である。また、本発明によれば、超伝導材料をアンテナ素子に使用した場合に、アンテナ装置、電波受信装置、電波送信装置の冷却システムの低消費電力化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
図1は従来例1に係るアンテナ装置の概略図を示す。
図2は従来例2に係る成層圏−中間圏オゾンモニタリングシステム概略図を示す。
図3は第1の実施例を示す概略図である。
図4は第1の実施例に係るアンテナ素子用の容器の斜視図である。
図5は第1の実施例に係るアンテナ素子用の容器の上面図である。
図6は第2の実施例を示す概略図である。
図7は第3の実施例に係るアンテナ素子用の容器の斜視図である。
図8は第3の実施例に係るアンテナ素子用の容器の上面図である。
図9は第4の実施例に係るアンテナ素子用の容器の斜視図である。
図10は第4の実施例に係るアンテナ素子用の容器の上面図である。
図11は第4の実施例に係る導波管の斜視図である。
図12は第5の実施例に係るアンテナ素子用の容器の斜視図である。
図13は第6の実施例を示す断面図である。
図14は第7の実施例に係る受信装置を示すブロック図である。
図15は第8の実施例に係る基板の概略図である。
図16は第8の実施例に係る受信装置を示すブロック図である。
図17は第9の実施例に係る基板の概略図である。
図18は第9の実施例に係る受信装置を示すブロック図である。
図19は第10の実施例に係る超伝導材料を使用したアンテナ素子の概略図である。
図20は第10の実施例に係る線状アンテナ型アンテナ素子の概略図である。
図21は第10の実施例に係るパッチアンテナ型アンテナ素子の概略図である。
図22は超伝導材料の表面抵抗の周波数依存性を示す図である。
図23は第10の実施例に係るアンテナ素子のA−B断面である。
図24は第11の実施例に係るBPF素子のパターン例を示す図である。
図25は第12の実施例に係る送信装置のブロック図である。
図26は第13の実施例に係る送信装置のブロック図である。
【符号の説明】
1 RFコネクタ
2 ケーブル
3 マイクロストリップアンテナ
4 コールドステージ
5 アンテナ窓
6 ジャケット
14 スーパーインシュレーションフィルム
15 圧縮機
16 RFコネクタ
17 ケーブル
18 シールド
20 アンテナ素子
21 電波窓
22 導波管
23 蓋部Oリング
24 蓋部
25 止めネジ
26 基板
27 コールドプレート
28 排気口
29 排気部Oリング
30 真空ポンプ
31 管
33 容体
34 アンテナ素子用の容器
35 アンテナ装置
39 真空バルブ
40 アンテナ装置
41 容体
42 ケーブル
43 RFコネクタ
44 蓋部
45 電波窓
46 止めネジ
47 導波管
48 アンテナ素子
49 シールド
50 コールドプレート
52 アンテナ素子用の容器
56 容体
57 ケーブル
58 蓋部
59 電波窓
60 RFコネクタ
61 止めネジ
62 導波管
62a 第1の開口部
62b 第2の開口部
63 アンテナ素子
64 シールド
65 コールドプレート
68 外部導波管
70 容体
71 シールド
72 アンテナ素子
73 電波窓
74 導波管
75 蓋部Oリング
76 コールドプレート
77 蓋部
78 基板
79 止めネジ
80a,80b,80c,80d,80e,80f,80g,80h アンテナ素子
83,84,85,86,87,88,89,90 BPF
91a,91b,91c,91d,91e,91f,91g,91h 低雑音増幅器
93 IF
95 信号処理回路
100,101,102,103,104,105,106,107 受信回路
108,109,110,111 アンテナ素子
112 シールド
113,114,115,116 アンテナ素子
117,122 給電パターン
120,121 バイアスティー用パターン
133,134,135,136,137,138,139,140 BPF
141,142,143,144,145,146,147,148 低雑音増幅器
149 基板
150 IF
151 信号処理回路
152 アンテナ素子用の容器
155,156,157,158,159,160,161,162 受信回路
163,164,165,166,167,168,169,170 アンテナ素子
171,173 バイアスティー用パターン
172,174 給電パターン
175 基板
190,191,192,193,194,195,196,197 BPF
198 IF
200,201,202,203,204,205,206,207 低雑音増幅器
219 信号処理回路
230 アンテナパターン
231 基板
232 接地導体
233 アンテナ素子
234 給電
235 アンテナパターン
236 基板
240 アンテナパターン
241 基板
250 グレイン
251 c軸
252 MgO(100)基板
253 a軸又はb軸
255 BPFパターン
256 基板
257 接地導体
258 BPF素子
260,261,262,263,264,265,266,267 アンテナ素子
270 基板
271,272,273,274,275,276,277,278 増幅器
280,281,282,283,284,285,286,287 BPF
290,291,292,293,294,295,296,297 ミキサ
298 アンテナ素子用の容器
300 IF
301 逓倍器
302 発振器
305 送信装置
310,311,312,313,314,315,316,317 増幅器
318,319,320,321,322,323,324,325 BPF
330,331,332,333,334,335,336、337 ミキサ
340 発振器
341 逓倍器
345 IF
346 基板
347 アンテナ素子用の容器
350 送信装置
407 オゾン分子からの110.836GHz信号
408 パラボラアンテナ
409 λ/4プレイト
410 固定ミラー
411 第2のオシレータ
412 第3のオシレータ
413 中間周波数信号処理装置
414 AOS
415 導波管
416 CGC
417 SISミキサ
418 中間周波数用アンプ
419 冷却ロード
420 放射シールド
421 逓倍器
422 ガンオシレータ
423 ハーモニックミキサ
424 リファレンスオシレータ
425 パーソナルコンピュータ
426 位相ロックコントローラ
427 第1のオシレータ
428 主受信ユニット
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】

【図20】

【図21】

【図22】

【図23】

【図24】

【図25】

【図26】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面型アンテナ素子と、
電波を透過させる電波窓を有し、前記平面型アンテナ素子を収容して外部からの熱を遮断する断熱容器と、
前記断熱容器内であって、前記電波窓と前記平面アンテナ素子のアンテナパターン形成面の間に配設された導波管と、
前記平面型アンテナ素子を冷却する冷却手段を備えることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
平面型アンテナ素子と、
前記平面型アンテナ素子が形成されている基板と、
電波を透過させる電波窓を有し、前記平面型アンテナ素子を収容して外部からの熱を遮断する断熱容器と、
前記断熱容器内であって、前記電波窓と前記平面型アンテナ素子のアンテナパターン形成面の間に、開口面が前記平面型アンテナ素子に向き合うように配設された筒状の導波管と、
前記平面型アンテナ素子を冷却する冷却手段を備え、
前記導波管の開口面と前記平面型アンテナ素子の前記アンテナパターン形成面の間の実効的な比誘電率をAとすると、
前記導波管の筒の高さが送受信に係る電波の波長の1/4を√Aで除したもの以上であり、
前記平面型アンテナ素子側の前記導波管の開口の少なくとも一つの軸方向に係る長さが前記電波の波長の1/2を√Aで除したものより長く、前記電波の波長を√Aで除したもの以下であることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載したアンテナ装置であって、
前記導波管の開口面と前記平面型アンテナ素子の前記アンテナパターン形成面とは離間しており、前記導波管の開口面と前記平面型アンテナ素子の前記アンテナパターン形成面との距離が、受信する電波の波長の1/4を前記√Aで除したもの以下とすることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項4】
複数の平面型アンテナ素子と、
電波を透過させる電波窓を有し、複数の前記平面型アンテナ素子を収容して外部からの熱を遮断する断熱容器と、
前記断熱容器内であって、前記電波窓と前記平面型アンテナ素子のアンテナパターン形成面の間に配設された導波管と、
前記平面型アンテナ素子を冷却する冷却手段を備え、
複数の前記平面型アンテナ素子を連動させることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項5】
請求項4に記載したアンテナ装置であって、
前記導波管が前記平面型アンテナ素子の数に応じて独立に設けられていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項6】
請求項5に記載したアンテナ装置であって、
前記平面型アンテナ素子は円形のアンテナパターンを有し、
前記平面型アンテナ素子の給電位置が一つであって、中心点からはずれていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6に記載されたアンテナ装置であって、
前記電波窓の開口面積の合計が、前記平面アンテナ素子の前記アンテナパターンの面積の合計より小さく、
前記電波窓にはめ込まれている板体の比誘電率と前記導波管を構成する物質の比誘電率が一致していることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項8】
請求項7に記載されたアンテナ装置であって、
前記導波管が、前記電波窓の形状と一致する、前記電波窓に接する前記導波管の開口部と、前記平面型アンテナ素子の前記アンテナパターンの形状と一致する、前記平面型アンテナ素子に接する前記導波管の開口部とを有することを特徴とするアンテナ装置。
【請求項9】
平面型アンテナ素子と、
電波を透過させる電波窓を有し、前記平面型アンテナ素子を収容して外部からの熱を遮断する断熱容器と、
前記断熱容器内であって、前記電波窓と前記平面型アンテナ素子のアンテナパターン形成面の間に配設された第1の導波管と、
前記断熱容器外であって、前記電波窓に一方の開口が接するように配設された第2の導波管と、
前記平面型アンテナ素子を冷却する冷却手段を備えることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9に記載したアンテナ装置であって、
前記平面型アンテナ素子の前記アンテナパターンが、REBCO系、BSCCO系、又は、PBSCCO系のうち、少なくとも一種類以上の超伝導材料からなる薄膜であることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項11】
請求項10に記載したアンテナ装置であって、
前記超伝導材料からなる薄膜が、前記超伝導材料からなる薄膜が形成されている基板面に対し垂直方向に、c軸配向しているグレインからなり、
隣接した前記グレインのa軸又はb軸が同方向に配向していることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11に記載したアンテナ装置であって、
さらに、前記断熱容器内に、前記平面型アンテナ素子を内包するように断熱材を備えることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項13】
平面型アンテナ素子と、
前記平面型アンテナ素子で受けた電波からの受信信号処理回路と、
電波を透過させる電波窓を有し、前記平面型アンテナ素子及び前記受信信号処理回路を収容して外部からの熱を遮断する断熱容器と、
前記断熱容器内であって、前記電波窓と前記平面型アンテナ素子のアンテナパターン形成面の間に配設された導波管と、
前記平面型アンテナ素子及び前記受信信号処理回路を冷却する冷却手段を備える電波受信装置。
【請求項14】
請求項13に記載した電波受信装置であって、
前記受信信号処理回路は、少なくとも、フィルター回路と、
増幅回路とを備えることを特徴とする電波受信装置。
【請求項15】
請求項14に記載した電波受信装置であって、
前記平面型アンテナ素子の前記アンテナパターンが、REBCO系、BSCCO系、又は、PBSCCO系のうち、少なくとも一種類以上の超伝導材料からなる薄膜であり、
前記超伝導材料からなる薄膜が、前記超伝導材料からなる薄膜が形成されている基板面に対し垂直方向に、c軸配向しているグレインからなり、
隣接した前記グレインのa軸又はb軸が同方向に配向していることを特徴とする電波受信装置。
【請求項16】
請求項15に記載した電波受信装置であって、
さらに、前記断熱容器内に、前記平面型アンテナ素子及び前記受信回路を内包するように断熱材を備えることを特徴とする電波受信装置。
【請求項17】
平面型アンテナ素子と、
前記平面型アンテナ素子を通じて放射される電波にのせる送信信号処理回路と、
電波を透過させる電波窓を有し、前記平面型アンテナ素子及び前記送信信号処理回路を収容して外部からの熱を遮断する断熱容器と、
前記断熱容器内であって、前記電波窓と前記平面型アンテナ素子のアンテナパターン形成面の間に配設された導波管と、
前記平面型アンテナ素子及び前記送信処理回路を冷却する冷却手段を備えることを特徴とする電波送信装置。
【請求項18】
請求項17に記載した送信装置であって、
前記送信信号処理回路は、少なくとも、
増幅回路及びフィルター回路を備えることを特徴とする電波送信装置。
【請求項19】
請求項18に記載した電波送信装置であって、
前記平面型アンテナ素子の前記アンテナパターンが、REBCO系、BSCCO系、又は、PBSCCO系のうち、少なくとも一種類以上の超伝導材料からなる薄膜であり、
前記超伝導材料からなる薄膜が、前記超伝導材料からなる薄膜が形成されている基板面に対し垂直方向に、c軸配向しているグレインからなり、
隣接した前記グレインのa軸又はb軸が同方向に配向していることを特徴とする電波送信装置。
【請求項20】
請求項19に記載した電波送信装置であって、
さらに、前記断熱容器内に、前記平面型アンテナ素子及び前記送信信号処理回路を内包するように断熱材を備えることを特徴とする電波送信装置。

【国際公開番号】WO2005/062424
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【発行日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−512311(P2005−512311)
【国際出願番号】PCT/JP2003/016235
【国際出願日】平成15年12月18日(2003.12.18)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】