説明

エピタキシャル成長炉内のガスクリーニング方法

【課題】炉内で析出したシリコンの除去時間の短縮やエッチング頻度の低減が図れ、生産性が高まり、シリコン片による炉内汚れが抑制され、高歩留まりとなるエピタキシャル成長炉内のガスクリーニング方法を提供する。
【解決手段】反応容器11への塩酸ガスの供給を、反応容器11の幅方向の中央部より両側部の方の流量を小さくするか、中央部のみから供給する。よって、サセプタ12で熱せられる中央部の塩酸ガスの流量比が従来より高まり、反応容器11内で塩酸ガスの渦流が発生する。よって、炉内で析出したシリコンのエッチング時間の短縮、エッチング頻度の低下が図れ、生産性が高まり、炉内壁から剥離したシリコン片による炉内汚れが軽減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はエピタキシャル成長炉内のガスクリーニング方法、詳しくはエピタキシャル成長時に反応容器の内壁およびシリコンウェーハの保持部材に析出したシリコンのエッチング効率が高まるエピタキシャル成長炉内のガスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エピタキシャルシリコンウェーハの製造プロセスでは、一般的に反応ガスおよびキャリアガスを、図7に示すエピタキシャル成長炉の反応容器100内で水平回転中のシリコンウェーハに対して、反応容器100の一端部に形成された3つのガス導入口101〜103から、反応容器100の他端部に形成されたガス排気口104に向かって供給し、ウェーハ表面に単結晶シリコンのエピタキシャル膜を成長させている。なお、ガス導入口101〜103は、反応容器100の一端部の幅方向の中央部および両側部の3箇所に配設されている。また、ガス排気口104は、反応容器100の他端部の中央部に1箇所形成されている。
【0003】
ところで、エピタキシャル成長時には、反応容器100の内壁(炉内壁)やサセプタ(ウェーハ保持部材)105にもシリコンが析出する。これが、炉内壁などから剥がれてシリコン片として飛散し、炉内汚れの原因となっている。そこで、炉内壁から不要なシリコンの析出物を除去するため、エピタキシャル成長後、各ガス導入口101〜103から、シリコンウェーハが取り出された反応容器100内へ塩酸ガス(エッチングガス)を供給するガスクリーニングが行われている(例えば、特許文献1)。これにより、炉内壁やサセプタ105に析出したシリコンがエッチングされる。
エピタキシャル成長炉では、ウェーハ面内でのエピタキシャル膜の厚さの均一性を高めるため、3箇所のガス導入口101〜103を介して、反応容器100へ供給される反応ガスやキャリアガスは、図示しないマスフローコントローラ(MFC)により、可能な限り均等な流量のガス流(層流)となるように制御されていた(図7矢印)。従来、炉内のガスクリーニング時にも、マスフローコントローラによる流量制御により、各ガス導入口101〜103を介して、均等な流量で塩酸ガスが反応容器100へ供給されていた。
【0004】
【特許文献1】特許第3274602号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、従来においては、3箇所のガス導入口101〜103を介して、反応容器100へ供給される塩酸ガスの流量が、エピタキシャル成長時と同様に、マスフローコントローラにより、可能な限り均等な流量のガス流となるように制御されていた。
そのため、炉内ガスクリーニング時において、各ガス導入口101〜103から反応容器100内へ供給された塩酸ガスは、気流の乱れがほとんどなく、反応容器100の幅方向へ拡散せず、ガス排気口104へ略直線的に通過していた。そのため、反応容器100の両側部内、特に、反応容器100の一端部側のコーナー部100aに析出したシリコン(析出物)Sを十分にエッチングすることができなかった。
【0006】
そこで、発明者は、鋭意研究の結果、反応容器へ供給される塩酸ガスの流量を、反応容器の幅方向の中央部より、反応容器の幅方向の両側部の方を小さくすれば、高温のサセプタ上を通過して加熱される塩酸ガスの流量が増加し、反応容器内、特に反応容器の両側部内において、塩酸ガスの熱拡散を原因とした塩酸ガスの渦流が発生することを突き止めた。これにより、反応容器の両側部内などで塩酸ガスが滞留し易くなることがわかった。その結果、従来に比べて、反応容器の内壁やウェーハ保持部材に析出したシリコン析出物に対して、塩酸ガスが接触する量および時間が長くなった。これにより、炉内壁やウェーハ保持部材に析出したシリコン析出物のエッチング速度が、従来より高まることを知見し、この発明を完成させた。
【0007】
この発明は、炉内で析出したシリコンのエッチング時間の短縮および単位時間当たりのエッチング回数の低減が図れ、エピタキシャルシリコンウェーハの生産性が高まり、しかも炉内壁などから剥がれたシリコン片による炉内汚れの低減が図れて、歩留まりも高まるエピタキシャル成長炉内のガスクリーニング方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、シリコンウェーハが水平配置される平面視して矩形状の横型の反応容器のうち、該反応容器の長さ方向の一端部に形成されたガス導入口から、前記反応容器の長さ方向の他端部に形成されたガス排気口に向かって塩酸ガスを流すことで、前記シリコンウェーハの表面に対するシリコンのエピタキシャル成長中に、前記反応容器の内壁およびウェーハ保持部材に析出したシリコンをエッチングするエピタキシャル成長炉内のガスクリーニング方法において、前記反応容器へ供給される塩酸ガスの流量を、前記反応容器の幅方向の中央部より、該反応容器の幅方向の両側部の方を小さくするエピタキシャル成長炉内のガスクリーニング方法である。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、反応容器へ供給される塩酸ガスの流量を、反応容器の幅方向の中央部より、反応容器の幅方向の両側部の方を小さくする。これにより、高温のウェーハ保持部材上を通過して加熱される塩酸ガスの流量比(反応容器の両側部に供給される塩酸ガスの流量との比較)が、従来より増加する。そのため、反応容器内、特にその両側部内で、塩酸ガスの熱拡散を原因とした塩酸ガスの渦流(乱流)が発生し、この部分で塩酸ガスが滞留し易くなる。よって、従来に比べて、反応容器の内壁やウェーハ保持部材に析出した単結晶のシリコン(析出物)に対して、塩酸ガスが接触する量および時間が長くなる。これにより、炉内壁やウェーハ保持部材に析出したシリコンのエッチング速度が高まる。
その結果、炉内で析出したシリコンのエッチング時間の短縮および単位時間当たりのエッチング回数の低減が図れて、エピタキシャルシリコンウェーハの生産性を高めることができる。しかも、炉内壁などから剥がれて飛散したシリコン片による炉内汚れが軽減される。
【0010】
エピタキシャル成長炉としては、例えば、シリコンウェーハがそれぞれ水平配置される枚葉式またはバッチ式の気相エピタキシャル成長炉などを採用することができる。
ただし、反応容器の一端部(上流部)の幅方向の中央部および両側部(右側部+左側部)において、塩酸ガスの流量が調整可能な開口形状、ガス導入口の個数配置でなければならない。なお、前記右側部へ供給される塩酸ガスの流量と前記左側部へ供給される塩酸ガスの流量は、通常等しい。
反応容器の幅方向の中央部へ供給される塩酸ガスの流量と、反応容器の幅方向の両側部へ供給される塩酸ガスの流量との比は、100:0〜75:25(3:1以下)である。75:25を超えれば、塩酸ガスの逆流が不十分で、エッチング効率が低下する。前記中央部へ供給される塩酸ガスの流量と、前記両側部へ供給される塩酸ガスの流量との好ましい比は、100:0〜90:10である。この範囲であれば、十分な逆流が発生し、短時間で炉内壁などに析出したシリコンを処理することができ、また、反応容器の中央部に存在するサセプタへのダメージも少ない。
【0011】
ガス排気口の形成数は任意である。例えば、反応容器の他端部の幅方向の中央部のみ、または幅方向の中央部と両側部の3箇所でもよい。
シリコンウェーハとしては、例えば単結晶シリコンウェーハを採用することができる。
ウェーハ保持部材としては、例えばリング形状または平底の皿形状でカーボン製のサセプタを採用することができる。ウェーハ保持部材は、反応容器内で垂直な回転軸を中心にして水平回転するものが好ましい。
【0012】
炉内ガスクリーニングの実施頻度は、厚さが20μm以上の厚膜のエピタキシャル膜を成長する場合には、エピタキシャル成長が1回終了するごと行う方が好ましい。また、20μm未満の薄膜のエピタキシャル膜を成長させる場合には、例えばエピタキシャル成長を2回以上終了したごとに行った方が効率的である。
炉内ガスクリーニング時には、反応容器の内部温度を1100〜1180℃に高める。1100℃未満では、エッチング効率が悪く、炉内にシリコン生成物が残留する。また、1180℃を超えれば、炉体温度が上昇し、シール用のオーリングが焼ける。炉内ガスクリーニング時の好ましい反応容器内の温度は、1130〜1180℃である。この範囲であれば、オーリングの耐用時間も長く、かつエッチングも効率よくできる。
【0013】
炉内ガスクリーニングの時間は、エピ成長厚みに応じて調整する。
塩酸ガスの濃度は、0.2〜75%(容積%)である。その希釈用のガスとしては、水素ガスなどを採用することができる。0.2%未満では、エッチング効率が悪く、炉内にシリコン生成物が残留する。また、75%を超えれば、炉内でガスが十分に撹拌されず、部分的にシリコン生成物が残留する。塩酸ガスの好ましい濃度は、20〜70%である。この範囲であれば、エッチングレートが速く、かつ、炉内の各部分までエッチングガスが撹拌され、シリコン生成物が残留されない。
塩酸ガスの渦流は、反応容器内の両側部、特にガス導入口が形成された一端部のコーナーに発生させる方が好ましい。従来法では、この炉内領域に析出したシリコンを除去することが困難とされたからである。
【0014】
請求項2に記載の発明は、シリコンウェーハが水平配置される平面視して矩形状の横型の反応容器のうち、該反応容器の長さ方向の一端部に形成されたガス導入口から、前記反応容器の長さ方向の他端部に形成されたガス排気口に向かって塩酸ガスを流すことで、前記シリコンウェーハの表面に対するシリコンのエピタキシャル成長中に、前記反応容器の内壁およびウェーハ保持部材に析出したシリコンをエッチングするエピタキシャル成長炉内のガスクリーニング方法において、前記反応容器へ供給される塩酸ガスを、前記反応容器の幅方向の中央部からのみ供給するエピタキシャル成長炉内のガスクリーニング方法である。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、塩酸ガスを、反応容器の幅方向の中央部のみから反応容器へ供給する。これにより、高温のウェーハ保持部材上を通過して加熱される塩酸ガスの流量が従来より増加し、反応容器内、特にその両側部内で、塩酸ガスの熱拡散を原因とした塩酸ガスの渦流が発生する。そのため、炉内壁やウェーハ保持部材に析出したシリコンのエッチング速度が高まる。その結果、炉内で析出したシリコンのエッチング時間の短縮および単位時間当たりのエッチング回数の低減が図れ、エピタキシャルシリコンウェーハの生産性を高めることができる。しかも、炉内壁などから剥がれて飛散したシリコン片による炉内汚れが軽減される。
【0016】
反応容器へ供給される塩酸ガスを、反応容器の幅方向の中央部からのみ供給する方法としては、例えば、反応容器の一端部の幅方向の中央部および両側部の3箇所にガス導入口が配設されている場合において、両側部のガス導入口をマスフローコントローラや仕切り弁などで塞ぎ、中央部のガス導入口からのみ塩酸ガスを供給することなどが考えられる。
【発明の効果】
【0017】
請求項1および請求項2に記載の発明によれば、反応容器へ供給される塩酸ガスの流量を、反応容器の幅方向の中央部より、反応容器の幅方向の両側部の方を小さくする。または、この中央部のみから塩酸ガスを反応容器へ供給する。これにより、高温のサセプタ上を通過して加熱される塩酸ガスの流量比(反応容器の両側部に供給された塩酸ガスの流量との比較)が従来より増加し、反応容器内、特にその両側部内で、塩酸ガスの熱拡散を原因とした渦流が発生する。そのため、炉内壁やウェーハ保持部材に析出したシリコンのエッチング速度が高まる。その結果、炉内で析出したシリコンのエッチング時間の短縮および単位時間当たりのエッチング回数の低減が図れ、エピタキシャルシリコンウェーハの生産性を高めることができる。しかも、炉内壁などから飛散したシリコン片による炉内汚れが軽減される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、この発明の実施例を具体的に説明する。
【実施例1】
【0019】
図1〜図4を参照して、この発明の実施例1に係るエピタキシャル成長炉内のガスクリーニング方法を説明する。
図1および図2に示すエピタキシャル成長炉10は、ウェーハ表面にエピタキシャル膜を成長させる炉で、チャンバ内に水平設置された横長な反応容器11を本体とする。反応容器11の長さ方向の中間部内には、水平な円板形状のサセプタ(ウェーハ保持部材)12が配置されている。
【0020】
サセプタ12は、反応容器11内に下方から挿入された図示しない支持軸により水平回転可能に支持されている。サセプタ12の上面には、サセプタ12の中心軸を中心として複数のザグリ部が等角配置されている。各ザグリ部には、シリコンウェーハ13が水平状態で収納されている。
反応容器11の下方には、サセプタ12に載置された各シリコンウェーハ13を加熱する誘導加熱コイル14が、支持軸を囲むように設けられている。誘導加熱コイル14はサセプタ12を誘導加熱し、サセプタ12上の各シリコンウェーハ13を間接的に加熱する。
【0021】
反応容器11の一端部には、反応容器11の幅方向の中央部と、反応容器11の幅方向の両側部とに、合計3つのガス導入口15,16,17が配設されている。一方、反応容器11の一端部に対向する他端部には、反応容器11の幅方向の中央部に、各ガス導入口15〜17から反応容器11内に供給されたガスを炉外へ排出するガス排気口18が1つだけ形成されている。前記中央部側のガス導入口15には、ガス配管19が連通されている。ガス配管19には、図示していない流量制御機構が設けられている。また、左側のガス導入口20には、途中にガスの流量を制御するマスフローコントローラ22が設けられたガス配管20が連通されている。さらに、右側のガス導入口21には、途中に別のマスフローコントローラ23が設けられたガス配管21が連通されている。
【0022】
エピタキシャル成長時、各ガス導入口15〜17からは、対応するガス配管19〜21を通して、反応ガス(例えばSiClガス、SiHClガス、SiHClガス、SiHガスなど)と、キャリアガス(水素ガスなど)との混合ガスが、略均等な流量で反応容器11に供給される。
【0023】
また、炉内ガスクリーニング時には、対応するガス配管19〜21を通して、各ガス導入口15〜17から反応容器11に、水素ガスにより塩酸濃度が50%(容量%)に希釈された塩酸ガスが、異なる流量で供給される。すなわち、中央部側のガス導入口15から反応容器11の中央部に導入される塩酸ガスは、ガス配管19を素通りして反応容器11に供給される。一方、左側のガス導入口16から反応容器11の左側部に導入される塩酸ガスは、ガス配管20を通過する途中で、マスフローコントローラ22によりその流量が、中央部側のガス導入口15を流れる塩酸ガスの5%に制限され、反応容器11に供給される。また、右側のガス導入口17から反応容器11の右側部に導入される塩酸ガスは、ガス配管21を通過する途中で、マスフローコントローラ23により、前記マスフローコントローラ22の場合と同程度に制限されて反応容器11に供給される。
【0024】
次に、図3のフローシートに基づき、エピタキシャル成長炉10を使用し、この発明の実施例1に係るエピタキシャル成長炉内のガスクリーニング方法を含むシリコンウェーハ13のエピタキシャル成長プロセスを説明する。
まず、ウェーハ搬送装置により、複数枚のシリコンウェーハ13を反応容器11内に挿入し、サセプタ12の各ザグリ部にウェーハ表面を水平にして収納する(ウェーハローディング工程;S301、図1および図2)。その後、サセプタ12を回転させ、誘導加熱コイル14に電圧を印加し、サセプタ12を誘導加熱する。これにより、各シリコンウェーハ13が1100℃に間接加熱される。この状態で、対応するガス配管19〜21を通して、3つのガス導入口15〜17から略均等なガス流量(全体の流量は200リットル/分)で、反応ガスとキャリアガスとを、反応容器11内で渦流が発生しない層流状態で10分間供給する。これにより、ウェーハ表面に厚さ30μmの厚膜のエピタキシャル膜が成長し、エピタキシャルシリコンウェーハが作製される(エピタキシャル成長工程;S302)。反応容器11に供給されたエピタキシャルのプロセスガスは、反応容器11の他端から1つのガス排気口18を通して炉外に排気される。
【0025】
エピタキシャル成長後は、ウェーハ搬送装置により、エピタキシャルシリコンウェーハを炉外へ搬出する(ウェーハアンローディング工程;S303)。
次に、エピタキシャル成長炉10の炉内に析出したシリコンをエッチングガスにより清掃する炉内ガスエッチング工程を行う(チャンバーエッチ工程;S304)。ここでは、炉内温度を1150℃まで上昇させ、反応容器11へ塩酸ガスを5分間供給する。このとき、供給される塩酸ガスの流量を、反応容器11の幅方向の中央部より、反応容器11の幅方向の両側部の方が小さくなるように供給する(図1)。
具体的には、中央側のガス配管19を通った塩酸ガスが、ガス導入口15からキャリアガスと塩酸ガスと合わせて90リットル/分で反応容器11の中央部内へ供給される。また、左側のガス配管20を通過した塩酸ガスは、その途中、マスフローコントローラ22により、ガス流量が5リットル/分以下に制限され、ガス導入口16から反応容器11の左側部内に供給される。また、右側のガス配管21を通過した塩酸ガスは、マスフローコントローラ23により、ガス流量が5リットル/分以下に制限され、ガス導入口17から反応容器11の右側部内に供給される。
【0026】
これにより、エピタキシャル成長時の温度より高温(1150℃)とし、塩酸ガス量を増やし、しかもその塩酸ガスの流量比(反応容器11の両側部に供給された塩酸ガスの流量との対比)が、エピタキシャル成長時より中央部を外周部に比べ倍以上に増加させた条件で施される。その結果、反応容器11内、特に反応容器11の上流側の両コーナー部11aを含む両側部内、さらにそのうちでも、反応容器11の上流側の両コーナー部11a内で、塩酸ガスの熱拡散を原因とした塩酸ガスの渦流(乱流)が発生し、この領域に塩酸ガスが滞留し易くなる。
よって、従来に比べて、反応容器11の内壁やサセプタ12に析出したシリコン(析出物)に対して、塩酸ガスが接触する量および時間が長くなる。これにより、炉内壁やサセプタ12、特に反応容器11の上流側の両コーナー部11a内に析出したシリコンS(図7)のエッチング速度が高まる。
よって、炉内で析出したシリコンのエッチング時間の短縮および単位時間当たりのエッチング回数の低減が図れ、エピタキシャルシリコンウェーハの生産性を高めることができる。しかも、炉内壁などから剥がれて飛散したシリコン片による炉内汚れを軽減することができる。
【0027】
なお、マスフローコントローラ22,23による左右両側のガス配管20,21の管路の開度調整は、前述したようにその開度を絞る(小さくする)のではなく、両管路を完全に閉じ、反応容器11の両側部への塩酸ガスの供給を完全に停止してもよい。
また、炉内ガスエッチング工程後は、上述したウェーハローディング工程(S301)、エピタキシャル成長工程(S302)、ウェーハアンローディング工程(S303)、炉内ガスエッチング工程(S304)が順次繰り返される。
【実施例2】
【0028】
次に、図5および図6を参照して、この発明の実施例2に係るエピタキシャル成長炉内のガスクリーニング方法を説明する。
図5および図6に示すように、この実施例2の特徴は、実施例1のマスフローコントローラ22,23に代えて、一対のバイパス管式の流量制御部30,31を採用した点である。また、炉内ガスエッチングは、3回のエピタキシャル成長後に行われる(図6のフローシート)。
各流量制御部30,31は、左側または右側のガス配管20,21の途中に設けられた仕切り弁32と、両ガス配管20,21の途中において、仕切り弁32を跨ぐように配設されたバイパス管33と、両バイパス管33の途中に下流へ向かって順に配設されたバイパス仕切り弁34と流量制御弁35とを有している。
【0029】
エピタキシャル成長時には、両バイパス仕切り弁34を閉じ、両仕切り弁32を開く。これにより、左右のガス配管20,21を流れる反応ガスとキャリアガスとは、両側のガス導入口16,17から反応容器11の両側部にそれぞれ供給される。
一方、炉内ガスエッチング時には、両バイパス仕切り弁34を開き、両仕切り弁32を閉じる。この状態で左右のガス配管20,21に塩酸ガスを流せば、塩酸ガスは管途中でバイパス管33へ流入し、流量制御弁35によりガス流量が5リットル/分に制限され、両ガス導入口16、17から反応容器11の左側部内および右側部内へ供給される。
【0030】
このように、マスフローコントローラ22,23に代えてバイパス管式の流量制御部30,31を採用したので、タイムラグが無く所定流量のガスを流すことができ、再現性よく反応容器11の内壁などに析出したシリコンをエッチングすることができる。
その他の構成、作用、効果は実施例1から推測可能な範囲であるので、説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】この発明の実施例1に係るエピタキシャル成長炉内のガスクリーニング方法に用いられるエピタキシャル成長炉の使用状態の平面図である。
【図2】発明の実施例1に係るエピタキシャル成長炉内のガスクリーニング方法に用いられるエピタキシャル成長炉の使用状態の側面図である。
【図3】この発明の実施例1に係るエピタキシャル成長炉内のガスクリーニング方法のフローシートである。
【図4】この発明の実施例1に係るエピタキシャル成長炉内のガスクリーニング方法を適用して得られた反応容器内での塩酸ガスの流れを示す平面図である。
【図5】この発明の実施例2に係るエピタキシャル成長炉内のガスクリーニング方法に用いられるエピタキシャル成長炉の使用状態の平面図である。
【図6】この発明の実施例2に係るエピタキシャル成長炉内のガスクリーニング方法のフローシートである。
【図7】従来手段に係るエピタキシャル成長炉内のガスクリーニング方法に用いられるエピタキシャル成長炉の使用状態の平面図である。
【符号の説明】
【0032】
10 エピタキシャル成長炉、
11 反応容器、
12 サセプタ(ウェーハ保持部材)、
15〜17 ガス導入口、
18 ガス排気口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンウェーハが水平配置される平面視して矩形状の横型の反応容器のうち、該反応容器の長さ方向の一端部に形成されたガス導入口から、前記反応容器の長さ方向の他端部に形成されたガス排気口に向かって塩酸ガスを流すことで、前記シリコンウェーハの表面に対するシリコンのエピタキシャル成長中に、前記反応容器の内壁およびウェーハ保持部材に析出したシリコンをエッチングするエピタキシャル成長炉内のガスクリーニング方法において、
前記反応容器へ供給される塩酸ガスの流量を、前記反応容器の幅方向の中央部より、該反応容器の幅方向の両側部の方を小さくするエピタキシャル成長炉内のガスクリーニング方法。
【請求項2】
シリコンウェーハが水平配置される平面視して矩形状の横型の反応容器のうち、該反応容器の長さ方向の一端部に形成されたガス導入口から、前記反応容器の長さ方向の他端部に形成されたガス排気口に向かって塩酸ガスを流すことで、前記シリコンウェーハの表面に対するシリコンのエピタキシャル成長中に、前記反応容器の内壁およびウェーハ保持部材に析出したシリコンをエッチングするエピタキシャル成長炉内のガスクリーニング方法において、
前記反応容器へ供給される塩酸ガスを、前記反応容器の幅方向の中央部からのみ供給するエピタキシャル成長炉内のガスクリーニング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−34424(P2010−34424A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−196967(P2008−196967)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【出願人】(302006854)株式会社SUMCO (1,197)
【Fターム(参考)】