説明

エンジンの高圧燃料ポンプ制御装置

【課題】消費電流低減・高圧燃料ポンプ耐久性向上を図り、かつ、始動時から燃圧上昇を促進することができるエンジンの高圧燃料ポンプ制御装置を提供する。
【解決手段】燃料蓄圧室内の燃料を燃焼室に直接噴射するための燃料噴射弁と、加圧室、該加圧室内の燃料を加圧するプランジャ、前記加圧室内に設けられた燃料通過弁、及び、該通過弁を操作するアクチュエータを有し、前記燃料蓄圧室に燃料を圧送する高圧燃料ポンプと、を備える。前記高圧燃料ポンプの吐出量を可変とすべく、前記アクチュエータの駆動信号の出力制御を行う制御手段を有し、該制御手段は、始動開始から前記アクチュエータ駆動信号を所定のクランク角位相で出力することが可能となるまでの期間内において、前記アクチュエータ駆動信号の出力を開始するとともに、該アクチュエータ駆動信号の出力を停止するタイミングを、前記蓄圧室内における燃料圧力が単位時間当たり所定値以上昇圧したとき、と設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの高圧燃料ポンプ制御装置に係り、特に、燃料噴射弁に圧送される高圧燃料の吐出量を可変に調節できる高圧燃料ポンプ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の自動車は、環境保全の観点から自動車の排出ガスに含まれる一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)等の特定物質の削減、つまり、排気エミッション特性の向上、及び、燃費の向上が要求されており、これらの要求を満たすため、ダイレクトインジェクションエンジン(筒内噴射エンジン)の開発が行われている。かかる筒内噴射エンジンは、燃料噴射弁による燃料噴射を気筒の燃焼室内に直接行うものであり、燃料噴射弁から噴射される燃料の粒径を小さくすることによって前記噴射燃料の燃焼を促進し、排気エミッション特性及びエンジン出力の向上等を図っている。
【0003】
ここで、燃料噴射弁から噴射される燃料の粒径を小さくするには、燃料の高圧化を図る手段が必要になり、このため、燃料噴射弁に高圧の燃料を圧送する高圧燃料ポンプが使用されている。
【0004】
高圧燃料ポンプの1つの形態として、加圧室と、この加圧室内の燃料を加圧するプランジャと、前記加圧室内に設けられた燃料通過弁(吸入弁)と、この通過弁を操作するアクチュエータとを有し、吐出行程(プランジャ上昇行程)において前記通過弁を閉じることにより、燃料を燃料蓄圧室(コモンレール)に圧送するようにしたものがある。
【0005】
このポンプに対する制御においては、燃料圧力に応じて前記通過弁を閉じるタイミングを設定し、カム角信号とクランク角信号とから生成したREF信号を基準にして、前記設定されたタイミングに角度又は時間制御でアクチュエータ駆動信号であるソレノイド駆動信号(パルス)を出力することにより、前記通過弁を閉じる。
【0006】
しかし、エンジン始動開始(クランキング開始)直後には、カム角及びクランク角の位相が確定しておらず、前記REF信号は生成されない。このため、前記通過弁を閉じるタイミングを設定することは不可能である。そこで、始動開始直後、つまり、始動開始からクランク角とカム角の位相が確定するまでの期間内における高圧燃料ポンプ制御技術が種々提案されている。
【0007】
例えば、下記特許文献1には、クランク角信号を認識してからクランク角とカム角の位相が確定するまでの期間内に、つまり、始動開始から前記アクチュエータ駆動信号を所定のクランク角位相で出力することが可能となるまでの期間内において、前記アクチュエータ駆動信号(パルス)を少なくとも2回以上出力することが提案されている。
【0008】
また、下記特許文献2には、クランク軸に駆動連結された高圧燃料ポンプを有する筒内噴射式エンジンの始動時において、クランク角の位相が確定するタイミングより前は、高圧燃料ポンプのスピル弁に対する通電を、非常に短い時間からなるサイクルでデューティ制御をし、クランク角の位相が確定した後は、かかるデューティー制御による燃圧制御を中止して、所定のタイミング毎にスピル弁の閉弁開始タイミングを設定し、その設定した閉弁開始タイミングでスピル弁を閉弁させることにより、燃料を昇圧する。前者と後者の燃圧制御を切り換えるタイミングを、高圧燃料ポンプの吐出行程開始直後から所定の閉弁開始タイミング算出タイミングまでの期間に設定している。
【0009】
【特許文献1】特開2001−182597号公報(第1〜24頁、図1〜図22)
【特許文献2】特開2003−41982号公報(第1〜13頁、図1〜図9)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記特許文献1に記載の高圧燃料ポンプ制御装置においては、実質的に、始動開始からクランク角とカム角の位相が確定するまでの期間内は、アクチュエータ駆動信号(パルス)を(何回も)出力するので、高圧燃料ポンプのアクチュエータへの通電時間が増し、消費電流が多くなることに加え、アクチュエータを構成するソレノイドに熱的ダメージ等を与えやすくなる可能性があり、その耐久性が低下する虞がある。
【0011】
また、前記特許文献2に記載の技術は、エンジン始動時における高圧燃料ポンプの圧送抜け回避を目的としており、また、切換タイミングの設定にクランク角信号を使用している。高圧燃料ポンプがカム軸に駆動連結されている場合、確実に昇圧するためには、前記のように非常に短い時間からなるサイクルでデューティ制御をクランク軸とポンプ駆動カムとの最大取り付けバラツキを考慮した期間設定にしなければならず、バラツキが少ない場合には余分な信号を出力し、消費電流が多くなることとなる。
【0012】
さらにまた、前記従来の各技術は、クランク角の位相確定前には、設定された閉弁開始タイミングによる制御は不可能であるので、タイミング制御ではない駆動信号設定手段による制御を行う等については記載されているものの、クランク角の位相確定前に前記制御を行うか否かの判定についてはいずれも格別の配慮がなされていない。加えて、前記従来の各技術は、デューティ制御を行うため、ポンプ吐出行程に開弁信号(駆動出力OFF)を出力する期間があるため、ポンプ吸入弁を確実に閉弁できない可能性、すなわち、昇圧しない可能性がある。
【0013】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、燃料噴射弁に供給される燃料の圧力を目標とする燃圧に確実に制御することができて、良好な燃焼を実現するとともに、排気エミッション特性及び燃費の向上を図ることができることに加え、高圧燃料ポンプの耐久性向上・消費電流の低減を可能とするエンジンの高圧燃料ポンプ制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成すべく、本発明に係る高圧燃料ポンプ制御装置は、基本的には、燃料蓄圧室内の燃料を燃焼室に直接噴射するための燃料噴射弁と、加圧室、該加圧室内の燃料を加圧するプランジャ、前記加圧室内に設けられた燃料通過弁、及び、該通過弁を操作するアクチュエータを有し、前記燃料蓄圧室に燃料を圧送する高圧燃料ポンプと、を備えたエンジンに適用されるもので、前記高圧燃料ポンプの吐出量を可変とすべく、前記アクチュエータの駆動信号の出力制御を行う制御手段を有し、該制御手段は、始動開始から前記アクチュエータ駆動信号を所定のクランク角位相で出力することが可能となるまでの期間内において、前記アクチュエータ駆動信号の出力を開始するとともに、該アクチュエータ駆動信号の出力を停止するタイミングを、前記蓄圧室内の燃料圧力に基づいて設定するようにされる。
【0015】
好ましい態様では、前記制御手段は、前記蓄圧室内における燃料圧力が単位時間当たり所定値以上昇圧したとき、又は、始動開始時との圧力差が所定値以上となったとき、前記アクチュエータ駆動信号の出力を停止するようにされる。
【0016】
前記制御手段は、好ましくは、クランク角信号を所定回数以上認識したとき、前記アクチュエータ駆動信号の出力を停止するようにされる。
【0017】
前記制御手段は、好ましくは、前記所定回数をバッテリ電圧に基づいて設定するようにされる。
【0018】
前記制御手段は、好ましくは、前記アクチュエータ駆動信号の出力を開始してから所定期間が経過したとき、その出力を停止するようにされる。
【0019】
前記制御手段は、好ましくは、前記アクチュエータ駆動信号の出力を停止するタイミングを、前記高圧燃料ポンプの吐出範囲を示すクランク角信号又はカム角信号に基づいて設定するようにされる。
【0020】
本発明に係る高圧燃料ポンプ制御装置の他の好ましい態様では、前記制御手段は、始動開始から前記アクチュエータ駆動信号を所定のクランク角位相で出力することが可能となるまでの期間内において、始動開始からのクランク角信号を所定回数以上認識したとき、前記アクチュエータ駆動信号の出力を開始するようにされる。
【0021】
前記制御手段は、好ましくは、前記蓄圧室内の燃料圧力が所定値以下のとき、前記アクチュエータ駆動信号の出力を開始するようにされる。
【0022】
前記制御手段は、好ましくは、エンジン冷却水温度が所定値以下のとき、前記アクチュエータ駆動信号の出力を開始するようにされる。
【0023】
前記制御手段は、好ましくは、前記アクチュエータ駆動信号の前回の出力停止から所定期間が経過したとき、前記アクチュエータ駆動信号の出力を開始するようにされる。
【0024】
前記制御手段は、好ましくは、前記所定期間を、前記アクチュエータ駆動信号の前回の出力時間及び又はクランク角度要求値に基づいて設定するようにされる。
【0025】
前記制御手段は、好ましくは、前記アクチュエータ駆動信号の出力を開始するタイミングを、前記高圧燃料ポンプの吐出範囲を示すクランク角信号又はカム角信号に基づいて設定するようにされる。
【0026】
本発明に係る高圧燃料ポンプ制御装置の他の好ましい態様では、前記制御手段は、始動開始から前記アクチュエータ駆動信号を所定のクランク角位相で出力することが可能となるまでの期間内において、前記アクチュエータ駆動信号を所定期間連続して出力するようにされる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係るエンジンの高圧燃料ポンプ制御装置は、始動開始からソレノイド駆動信号を所定のクランク角位相で出力することが可能となるまでの期間内において、ソレノイド駆動信号の出力を開始するとともに、蓄圧室内における燃料圧力が単位時間当たり所定値以上昇圧したとき、あるいは、始動開始時との圧力差が所定値以上となったとき、前記ソレノイド駆動信号の出力を停止するようにされるので、燃料圧力を所要圧力まで確実に昇圧することができ、良好な燃焼へのロバスト性が向上し、かつ、従来例に比べて、始動時におけるソレノイドのトータル通電時間を短縮することができるので、高圧燃料ポンプの耐久性向上及び消費電流低減化等を図ることができる。
【0028】
また、ソレノイド駆動信号の出力開始タイミングを、始動開始時点より遅くされるので、ソレノイドのトータル通電時間を短縮することができ、より一層、高圧燃料ポンプ60の耐久性向上及び消費電流低減化等を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明のエンジンの高圧燃料ポンプ制御装置の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
【0030】
図1は、本発明の一実施形態を、それが適用された車載用筒内噴射式エンジンの一例と共に示すエンジンの全体構成図である。
【0031】
図示の筒内噴射式エンジン10は、例えば4つの気筒#1,#2,#3,#4を有する直列4気筒エンジンであって、シリンダヘッド11と、シリンダブロック12と、このシリンダブロック12内に摺動自在に嵌挿されたピストン15とを有し、該ピストン15上方には燃焼室17が画成される。燃焼室17には、点火コイル34から高電圧が印加される点火プラグ35及び燃焼室17内に直接燃料を噴射する燃料噴射弁30が臨設されている。なお、図において、点火プラグ35及び燃料噴射弁30は、便宜上、燃焼室17の天井部の左右に並設されているが、それらの配設位置は適宜に設定可能である。
【0032】
燃料の燃焼に供せられる空気は、吸気通路20の始端部に設けられたエアクリーナ21の入口部21aから取り入れられ、エアフローセンサ24を通り、電制スロットル弁25が収容されたスロットルボディ26を通ってコレクタ27に入り、このコレクタ27から前記吸気通路20の下流部分を形成する分岐通路部及びその下流端に配在された、吸気カムシャフト29により開閉駆動される吸気弁28を介して各気筒#1、#2、#3、#4の燃焼室17に吸入される。
【0033】
燃焼室17に吸入された空気と燃料噴射弁30から噴射された燃料との混合気は、点火プラグ35により点火されて爆発燃焼せしめられ、その燃焼廃ガス(排ガス)は、排気カムシャフト49により開閉駆動される排気弁48を介して排気通路40に排出され、排気通路40に配備された触媒コンバータ46で浄化された後、外部に排出される。
【0034】
一方、前記燃料噴射弁30から噴射されるガソリン等の燃料は、燃料タンク50から低圧燃料ポンプ51により一次加圧されて燃料圧力レギュレータ52により一定の圧力(例えば3kg/cm)に調圧されるとともに、排気カムシャフト49に設けられたポンプ駆動カム47により駆動される高圧燃料ポンプ60において、より高い圧力に二次加圧(例えば50kg/cm)されて燃料蓄圧室(コモンレール)53へ圧送され、この蓄圧室53から燃料が気筒#1、#2、#3、#4毎に設けられた燃料噴射弁30に供給される。燃料噴射弁30に供給される燃料の圧力(燃圧)は燃圧センサ56により検出されるようになっている(後で詳述)。
【0035】
そして、本実施形態の高圧燃料ポンプ制御装置1においては、高圧燃料ポンプ60を含むエンジン10の種々の制御を行うため、マイクロコンピュータを内蔵するコントロールユニット100が備えられている。
【0036】
コントロールユニット100は、基本的には、図2に示される如くに、MPU101、EP−ROM102、RAM103、及び、A/D変換器を含むI/OLSI104等で構成され、入力信号として、エアフローセンサ24により検出される吸入空気量に応じた信号、燃圧センサ56により検出される燃料圧力に応じた信号、スロットルセンサ23により検出されるスロットル弁25の開度に応じた信号、カム角センサ36からの排気カムシャフト49の位相(回転位置)検出信号、クランク角センサ37からのクランクシャフト18の回転角度・位相(回転位置)検出信号、排気通路40に配設された空燃比センサ44により検出される排ガス中の例えば酸素濃度に応じた信号、シリンダブロック12に配設された水温センサ19により検出されるエンジン冷却水温度に応じた信号の他、図1には図示されていないイグニッションスイッチからの始動開始(クランキング開始)を示す信号等が供給される。
【0037】
コントロールユニット100は、前記各信号を所定の周期をもって取り込み、所定の演算処理を実行し、この演算結果として算定された制御信号を、各燃料噴射弁30、点火コイル34、高圧燃料ポンプ60、低圧燃料ポンプ51、電制スロットル弁25、等に供給して、燃料噴射(噴射量、噴射時期)制御、点火時期制御、燃料圧力制御、スロットル弁25の開度制御等を実行する。
【0038】
そして、本実施形態の高圧燃料ポンプ制御装置1においては、高圧燃料ポンプ60に備えられているアクチュエータ(ソレノイド90)に対する制御(駆動)信号の出力制御に特徴を有するものであり、これを以下に詳細に説明する。
【0039】
図3は、高圧燃料ポンプ60を備えた燃料供給システムの全体構成を示し、図4は、高圧燃料ポンプ60の拡大縦断面を示している。
【0040】
前記高圧燃料ポンプ60は、燃料タンク50からの燃料を加圧して蓄圧室53に高圧の燃料を圧送するものであり、シリンダ室67と、ポンプ室68と、ソレノイド室69とからなり、前記シリンダ室67は、前記ポンプ室68の下方に配置され、前記ソレノイド室69は、前記ポンプ室68の吸入側に配置されている。
【0041】
前記シリンダ室67には、プランジャ62、リフタ63、プランジャ下降ばね64が配在され、前記プランジャ62は、排気カムシフト49に設けられてそれと一体回転するポンプ駆動カム47に圧接せしめられたリフタ63を介して往復動せしめられ、加圧室72の容積を変化させる。
【0042】
前記ポンプ室68は、低圧燃料の吸入通路71、加圧室72、高圧燃料の吐出通路73から構成され、吸入通路71と加圧室72との間には、燃料通過弁とされる吸入弁65が設けられている。この吸入弁65は、燃料の流通方向を制限する逆止弁であり、閉弁ばね65aにより閉弁方向(ポンプ室68からソレノイド室69に向かう方向)に付勢されている。前記加圧室72と吐出通路73との間には吐出弁66が設けられており、前記吐出弁66もまた、燃料の流通方向を制限する逆止弁であり、閉弁ばね66aにより閉弁方向に付勢されている。なお、閉弁ばね65aは、プランジャ62による加圧室72内の容積変化により、吸入弁65を挟んで、加圧室72側の圧力が吸入通路71側の圧力に対して同等又はそれ以上になった場合には、前記吸入弁65を閉弁させるように付勢するものである。
【0043】
前記ソレノイド室69には、アクチュエータであるソレノイド90、吸入弁操作部材91、及び開弁ばね92が配在されており、前記吸入弁操作部材91は、前記吸入弁65に相対する位置に配在され、その先端(ロッド部)が前記吸入弁65に接離自在に接当せしめられ、ソレノイド90が通電励磁されると、その電磁力によりソレノイド室69側に吸引され、これによって、前記吸入弁65が閉弁方向に移動せしめられる。一方、ソレノイド90が通電励磁されていない状態では、前記吸入弁操作部材91の後端に圧接する開弁ばね92の付勢力により、前記吸入弁65は、前記吸入弁操作部材91を介して開弁方向に移動せしめられ、開弁状態にされる。
【0044】
燃料タンク50から燃料ポンプ51及び燃圧レギュレータ52を介して所定圧力に調圧された燃料は、前記ポンプ室68の吸入通路71に導かれ、その後、前記ポンプ室68内の加圧室72で前記プランジャ62の往復動により加圧され、前記ポンプ室68の吐出通路73から蓄圧室53に圧送される。
【0045】
前記蓄圧室53には、燃圧センサ56が設けられており、コントロールユニット100は、クランク角センサ37、カム角センサ36、及び燃圧センサ56からの各検出信号に基づいて、ソレノイド90に対する制御(駆動)信号を出力して高圧燃料ポンプ60の燃料吐出量の制御を行う。なお、前記蓄圧室53と燃料タンク50との間には、配管系破損の防止を図るべく、リリーフ弁57が配在されており、このリリーフ弁57は、前記蓄圧室53内の圧力が所定値を超えた場合に開弁されるようになっている。
【0046】
図5は、前記高圧燃料ポンプ60の動作タイムチャートを示している。なお、ポンプ駆動カム47で駆動されるプランジャ62の実際のストローク(実位置)は、図6の下段に示される如くの曲線になるが、上死点と下死点の位置を分かり易くするため、図6以外のプランジャ62のストローク示されている図(図5、図9、図10、図17、図18、図18)においては、プランジャ62のストロークは直線的に描かれている。
【0047】
プランジャ62が、前記ポンプ駆動カム47の回転によりプランジャ下降ばね64の付勢力に応じて上死点側から下死点側に移動すると、前記ポンプ室68の吸入行程が行われる。この吸入行程では、前記吸入弁操作部材91が開弁ばね92の付勢力に応じて吸入弁65を開弁方向に移動させる。これにより、加圧室72内の圧力が低下する。
【0048】
次に、プランジャ62が、前記カム47の回転によりプランジャ下降ばね64の付勢力に抗して下死点側から上死点側に移動すると、前記ポンプ室68の圧縮行程が行われる。この圧縮行程では、コントロールユニット100からアクチュエータであるソレノイド90の駆動信号が出力されてソレノイド90が通電励磁状態(ON状態)にされると、前記吸入弁操作部材91が開弁ばね92の付勢力に抗して吸入弁65を閉弁させる方向に移動せしめられ、その先端が前記吸入弁65から離間して、前記吸入弁65が閉弁ばね65aの付勢力に応じて閉弁方向に移動する。これにより、加圧室72内の圧力が上昇する。
【0049】
そして、前記吸入弁操作部材91がソレノイド90側に最も吸引され、プランジャ62の往復動に同期する吸入弁65が閉弁して加圧室72内の圧力が高くなると、加圧室72内の燃料が吐出弁66を押圧し、該吐出弁66は、閉弁ばね66aの付勢力に抗して自動的に開弁し、加圧室72の容積減少分の高圧燃料が蓄圧室53側に吐出される。なお、ソレノイド90の通電(駆動信号の出力)は、前記吸入弁65がソレノイド90側に移動せしめられて閉弁されると停止(OFF)されるが、上記のように、前記加圧室72内の圧力が高いため、吸入弁65は閉弁状態で維持されて蓄圧室53側への燃料の吐出が行われる。
【0050】
また、プランジャ62が、前記カム47の回転によりプランジャ下降ばね64の付勢力に応じて上死点側から下死点側に移動すると、前記ポンプ室68の吸入行程が行われ、前記加圧室72内の圧力低下に伴って、前記吸入弁操作部材91が開弁ばね92の付勢力に応じて吸入弁65を開弁する方向に移動せしめられるともに、吸入弁65がプランジャ62の往復動に同期して自動的に開弁し、前記吸入弁65の開弁状態が保持される。そして、加圧室72内は圧力の低下が生じていることにより吐出弁66の開弁が行われない。以後前記動作を繰り返す。
【0051】
よって、前記プランジャが上死点に達する前の圧縮行程の途中で、ソレノイド90がON状態(通電励磁状態)にされると、蓄圧室53への燃料圧送が行われ、また、燃料圧送が一度始まれば、加圧室72内の圧力は上昇しているので、その後に、ソレノイド90をOFF状態にしても、吸入弁65は閉弁状態を維持する一方で、吸入行程の始まりに同期して自動開弁することができる。そのため、ソレノイド90の駆動信号の出力開始タイミングにより、蓄圧室53側への燃料の吐出量を調節することができる。さらに、圧力センサ56からの信号に基づき、適切な出力開始タイミングを設定して、ソレノイド90をコントロールすることにより、蓄圧室53の圧力を目標値にフィードバック制御することができる。
【0052】
図7は、コントロールユニット100が実行する高圧燃料ポンプ制御の機能ブロック図である。コントロールユニット100は、基本角度算出手段701、目標燃圧算出手段702、燃圧入力処理手段703、ソレノイド制御信号を算定する手段の一態様であるポンプ制御信号算定手段750、及び、前記ソレノイド90を通電励磁するための駆動信号を出力するソレノイド駆動手段707、を備えている。
【0053】
基本角度算出手段701は、運転状態に基づいてソレノイド90を通電励磁状態(ON状態)にするためのソレノイド制御信号の基本角度BASANGを算出する。ここで、図11に、吸入弁65の閉弁タイミングと高圧燃料ポンプ吐出量の関係を示す。基本角度BASANGは、要求燃料噴射量と高圧燃料ポンプ吐出量を釣り合わせるための、前記吸入弁65の閉弁タイミング(クランク角度)の設定に用いられる。目標燃圧算出手段702は、同じく運転状態に基づきその動作点に最適な目標燃圧Ptargetを算出する。燃圧入力処理手段703は、燃圧センサ56の信号をフィルタ処理し、実燃圧である計測燃圧Prealを求める。そして、ポンプ制御信号算定手段750は、前記した基本角度BASANG、目標燃圧Ptarget、及び、計測燃圧Prealに基づいてポンプ制御信号(ソレノイド制御信号)を算定する。ソレノイド駆動手段707は、ポンプ制御信号算定手段750からのソレノイド制御信号に応じた、前記ソレノイド90を通電励磁するためのソレノイド駆動信号を出力する(後で詳述)。
【0054】
図8は、前記ポンプ制御信号算定手段750の、より詳細な構成を示す機能ブロック図である。ポンプ制御信号算定手段750は、基本的には、ソレノイド90の駆動信号(パルス)の出力開始タイミングを演算する基準角度演算手段704と、その駆動信号の幅(パルス幅=通電時間)を算出するポンプ信号通電時間算出手段706とを備え、基準角度演算手段704は、基本角度算出手段701により算出される基本角度BASANG、目標燃圧算出手段702により算出される目標燃圧Ptarget、及び、燃圧入力処理手段703により算出される計測燃圧Prealに基づいて、前記駆動信号の出力開始の基準となる基準角度REFANGを演算する。
【0055】
そして、前記基準角度REFANGに、ソレノイド作動遅れ補正手段705により求められる作動遅れ補正分PUMREを加えて、ソレノイド90の駆動信号の出力開始角度STANGを計算し、それをソレノイド90の駆動信号の出力開始タイミングとしてソレノイド駆動手段707に送る。
【0056】
また、前記ポンプ信号通電時間算出手段706は、運転条件に基づいて高圧燃料ポンプ60のソレノイド90の通電時間TPUMKEを演算し、それをソレノイド駆動手段707に送る。ソレノイド駆動手段707は、前記出力開始角度STANGと前記通電時間TPUMKEとに基づいてソレノイド90に駆動信号を出力してその通電励磁を行う。前記通電時間TPUMKEの値は、バッテリ電圧が低くソレノイド抵抗が大きい、ソレノイド吸引力発生最悪条件においてであっても、加圧室72の圧力で吸入弁65を閉じられるようになるまで吸入弁操作部材91を保持し、確実に吸入弁65を閉弁できる値に設定する。また、ソレノイド作動遅れ補正手段705は、ソレノイド90の電磁力、ひいては作動遅れ時間がバッテリ電圧によって変わることから、バッテリ電圧に基づいてソレノイド作動遅れ補正分PUMREを算出する。
【0057】
図9は、コントロールユニット100による高圧燃料ポンプ制御のタイムチャートを示す。コントロールユニット100は、カム角センサ36からの検出信号(カム角信号=CAM信号)とクランク角センサ37からの検出信号(クランク角信号=CRANK信号)に基づいて、各気筒#1、#2、#3、#4(CYL1、CYL2、CYL3、CYL4)におけるピストン15の圧縮行程上死点位置を検知し、燃料噴射制御及び点火時期制御を行うとともに、前記プランジャ62のストロークを検知して、高圧燃料ポンプ60のアクチュエータであるソレノイド90の駆動信号の出力制御を行う。なお、高圧燃料ポンプ制御に使用されるREF信号は、クランク角信号とカム角信号とに基づいて生成され、1REFおきに存在する高圧燃料ポンプ吸入行程上のREFの立ち上がりを基準点としている。以下、前記基準点とするREFの立ちあがりを「基準REF」と称す。
【0058】
ここで、図9のクランク角信号(CRANK信号)の信号が欠けた部分(破線部分)は、クランク角信号とカム角信号の位相検出の起点となるものであり、気筒#1(CYL1)の上死点、又は気筒#4(CYL4)の上死点から所定の位相分(クランク角度分)ずれた位置にある。そして、コントロールユニット100は、前記クランク角信号の信号が欠けたときに、前記カム角信号がHi(高)又はLo(低)であるかによって、気筒#1(CYL1)側か、気筒#4(CYL4)側かを判別し、その後、初回REF信号を生成する。また、高圧燃料ポンプ60の燃料吐出は、ソレノイド駆動信号の立ち上がりからソレノイド90の作動遅れ分PUMREとされる所定時間経過後に開始される一方で、この燃料吐出は、ソレノイド駆動信号の出力が終了しても加圧室72の圧力によって吸入弁65が押されて(閉弁して)いるので、プランジャ62のストロークが上死点に達するまで続けられる。
【0059】
図10は、上記燃圧制御に使用されるソレノイド駆動信号の出力開始角度STANGや通電時間TPUMKE等のパラメータを示したものである。ソレノイド駆動信号の出力タイミングである出力開始角度STANGは、下記の(式1)のように求めることができる。
STANG=REFANG−PUMRE………(式1)
【0060】
ここで、REFANGは、エンジン10の運転状態に基づいて基準角度算出手段704で算出される。PUMREはポンプ遅れ角度であり、ソレノイド作動遅れ補正手段705で算出され、例えば、バッテリ電圧により変化するアクチュエータ駆動時間、すなわち、ソレノイドに対する通電量に応じた吸入弁操作部材91の作動遅れを表している。また、ソレノイド90の駆動信号の幅(パルス幅)である通電時間TPUMKEは、バッテリ電圧と運転状態(エンジン回転数等)に基づいて算出される。
【0061】
そして、出力開始角度STANGによって、基準REFからどれくらいで吸入弁65を閉じさせるソレノイド駆動信号を出力するか、すなわち、ソレノイド駆動信号の出力開始タイミングが設定され、一方、前記通電時間TPUMKEによって、前記ソレノイド駆動信号をどれくらいの時間出力し続けるか、すなわち、ソレノイド駆動信号のパルス幅、言い換えれば、ソレノイド駆動信号の出力停止タイミングが設定される。以降、出力開始角度STANGによるソレノイド90の制御を「基本制御」と呼ぶ。
【0062】
よって、「基本制御」はREF信号が必要不可欠であるため、始動開始から初回の基準REFが認識されるまでは、「基本制御」とは異なる形態の制御が行なわれる。この制御を「始動制御」と称し、以下、この始動制御の例を説明する。
【0063】
図12は、コントロールユニット100が実行する前記始動制御の一例の機能ブロック図である。コントロールユニット100は、目標燃圧算出手段702、燃圧入力処理手段703、始動時ポンプ制御信号算定手段1201、及び、前記ソレノイド90を通電励磁するための駆動信号を出力するソレノイド駆動手段707を備える。
【0064】
前記始動時ポンプ制御信号算定手段1201は、クランク角センサ37、カム角センサ36、燃圧センサ56、水温センサ19等からの各信号及びバッテリ電圧に基づいてソレノイド制御信号を算定する。
【0065】
図13に、前記始動時ポンプ制御信号算定手段1201及びソレノイド駆動手段707で行われる処理のフローチャートを示す。ステップ1301では割込み処理が始まるが、割込み処理は、例えば10ms毎のように時間周期でも、例えばクランク角度10deg毎のように回転周期でもよい。ステップ1302で基準REF認識前であるか否かを判定する。基準REF認識前である場合はステップ1303へ進む。前述のように、基準REFを認識した後は、「基本制御」に切り換える。ステップ1303では、駆動信号出力開始フラグが「オン」であるか否かを判定する。
【0066】
ここで、図14に、前記ステップ1303で実行する駆動信号出力開始フラグ判定処理のフローチャートを示す。駆動信号出力開始フラグは、初期設定で(エンジン始動開始時に)「オフ」と設定され、ステップ1401で割込み処理が始まる。ステップ1402では、始動開始からのクランク角信号(パルス)を所定回数(A)以上認識したか否かを判定する。これは、コントロールユニット100への電源投入時にクランク角信号入力のノイズを検出し、誤作動をすることを防ぐためである。よって、前記所定回数(A)はノイズの影響を受けない範囲において小さな数字に設定する。
【0067】
ステップ1403では、燃圧センサ56からの検出信号に基づいて燃圧が所定値以下であるか否かを判定する。前記燃圧が目標燃圧以上である場合、駆動信号を出力すると噴射開始時には目標燃圧を上回るため燃焼を悪化させる可能性がある。よって、ステップ1403における所定値は目標燃圧に設定する。燃圧が所定値以下である場合、ステップ1404に進む。ステップ1404では、冷却水温度が所定値以下であるか否かを判定する。冷却水温度が所定値以上である場合、ソレノイド90の温度が高いことを示しており、駆動信号を出力するとソレノイド90の耐久性を低下させる可能性がある。なお、本例ではソレノイド90の温度を推定するのに冷却水温度を用いているが、エンジン油温・燃料温度等を使用しても良い。また、直接、ソレノイド90の温度を検出するようにしても良い。冷却水温度が所定値以下である場合、ステップ1405に進む。ステップ1405では、前回の駆動信号の出力終了時から所定期間が経過したか否かを判定し、前記所定期間が経過している場合、駆動信号出力開始フラグを「オン」とする。
【0068】
ここで、図16に、前記所定期間が経過したか否かの判定に至るまでの処理を機能ブロック図で示す。次回の出力開始までの期間が短い場合、ソレノイド90の温度が上昇したままであり、ソレノイド90の耐久性を低下させる可能性がある。このため、ソレノイド90の冷却時間が必要である。冷却に必要な時間はソレノイド90の温度、すなわち駆動信号出力時間と比例することから、前回の駆動信号出力時間を入力として冷却時間要求値を算出する(ブロック1601)。また、始動から基準REF認識までに吐出行程が2度来る可能性があることから、出力終了から所定クランク角度後、高圧燃料ポンプが全吐出できる位置で再度出力を開始する要求をしなければならない。前記所定クランク角度をクランク角度要求値(図17)とし(ブロック1602)、前記クランク角度要求値は、プランジャ62の1往復分の角度以下に設定される。ブロック1603において、冷却時間要求値とクランク角度要求値との大きい方を前記所定期間とする。
【0069】
前記した図13のステップ1303において、駆動信号出力開始フラグが「オン」であると判定された場合、ステップ1304に進み、駆動信号出力終了フラグが「オフ」であるか否かを判定する。
【0070】
ここで、図15に、前記ステップ1304で実行する駆動信号出力終了フラグ判定処理のフローチャートを示す。駆動信号出力終了フラグは、初期設定で(エンジン始動開始時に)「オフ」と設定し、ステップ1501で割込み処理が始まる。ステップ1502では、燃圧が所定値以上昇圧したか否かを判定する。単位時間前(例えば20[ms]前)の燃圧をRAM103に記憶しておき、現在の燃圧と比較することにより所定値以上昇圧したか否かを判定し、所定値以上昇圧している場合は、高圧燃料ポンプ60が吐出を開始したことを示しているので、駆動信号出力終了フラグを「オン」とする。前記所定値は、駆動信号出力を終了した場合でも吸入弁65の閉弁状態が維持される値を設定する。
【0071】
続くステップ1503では、始動開始からのクランク角信号(パルス)を所定回数(B)以上認識したか否かを判定する。これは、ステップ1502で、高圧燃料ポンプ60が吐出を開始したにもかかわらず、蓄圧室53内に気泡等があり昇圧を認識できなかった場合に、駆動信号の出力を終了するために行う。ステップ1504では、駆動信号出力開始から所定期間が経過したか否かを判定する。これは、基準REF認識前にエンジンが停止し、昇圧もせず、クランク角信号も停止した場合に、駆動信号の出力を終了するために行う。よって、前記出力開始からの前記所定期間は、基準REF認識までに要する最長時間に設定する。
【0072】
図13のステップ1304において、駆動信号出力終了フラグが「オフ」であると判定された場合、ステップ1305に進み、ソレノイド駆動信号を出力する。このとき出力する信号は、連続的な信号(デューティ100%)とする。これは、ソレノイド90に通電を開始したとき、加圧室72内の圧力が高くなる前に通電を停止すると、吸入弁65を確実に閉弁できないおそれがあり、この場合は吸入弁65が開弁状態となり、高圧燃料が蓄圧室53側に吐出されない可能性があることを防止するためである。
【0073】
また、前記したステップ1303で駆動信号出力開始フラグが「オフ」の場合、及び、ステップ1304で駆動信号出力終了フラグが「オン」である場合は、ソレノイド駆動信号の出力を禁止(停止)する。
【0074】
以上述べたように、本実施形態では、図18にタイムチャートで示されているように、始動開始から基準REFが認識されるまでの期間内において、言い換えれば、始動開始からソレノイド駆動信号を所定のクランク角位相で出力することが可能となるまでの期間内において、ソレノイド駆動信号の出力を開始するとともに、蓄圧室53内における燃料圧力が単位時間当たり所定値以上昇圧したとき、前記ソレノイド駆動信号の出力を停止するようにされるので、燃料圧力を所要圧力まで確実に昇圧することができ、良好な燃焼へのロバスト性が向上し、かつ、従来例に比べて、始動開始から基準REFが認識されるまでの期間内におけるソレノイド90のトータル通電時間を短縮することができるので、高圧燃料ポンプ60の耐久性向上及び消費電流低減化等を図ることができる。
【0075】
なお、上記実施形態では、ソレノイド駆動信号の出力を停止するタイミングを、蓄圧室53内における燃料圧力が単位時間当たり所定値以上昇圧したとき、と設定されているが、それに代えて、前記出力停止タイミングを、始動開始時との圧力差が所定値以上となったとき、等に設定してもよい。
【0076】
次に、本発明に係る高圧燃料ポンプ制御装置の他の実施形態による前記始動制御の例を図19を参照しながら説明する。本実施形態では、図1に示される実施形態におけるクランク角センサ37及びカム角センサ36から得られる信号に基づいて、高圧燃料ポンプ吐出制御領域開始角度(タイミング)及び高圧燃料ポンプ吐出制御領域終了角度(タイミング)を設定するためのプランジャ信号が生成される。
【0077】
ここで、前述のように、ソレノイド90の駆動制御は、その作動遅れとそれに伴う吸入弁操作部材91の作動遅れを考慮して行われる。よって、高圧燃料ポンプ吐出制御領域とは、プランジャ62の下死点から吸入弁操作部材91の作動遅れ分前の角度から、プランジャ上死点までと定義される。「始動制御」中において、前記高圧燃料ポンプ吐出制御領域開始角度(タイミング)認識時に、ソレノイド駆動信号の出力を開始し、前記ソレノイド90の通電時間TPUMKE分出力し続けることにより、昇圧を行う。通電時間に関して前記TPUMKEの代わりに、TPUMKE相当のクランク角度を使用しても良い。
【0078】
このようにされることにより、ソレノイド駆動信号の出力開始タイミングが、前記実施形態では始動開始時であったが、本実施形態では、始動開始時点より遅くされるので、ソレノイド90のトータル通電時間を短縮することができ、より一層、高圧燃料ポンプ60の耐久性向上及び消費電流低減化等を図ることができる。
【0079】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱することなく設計において種々の変更ができるものである。
【0080】
例えば、前記実施形態では、高圧燃料ポンプ60が排気カムシャフト49により駆動されるようになっているが、吸気カムシャフト29あるいはクランクシャフト18により駆動するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本実施形態の高圧燃料ポンプ制御装置の一実施形態をそれが適用されたエンジンとともに示す全体構成図。
【図2】図1に示される高圧燃料ポンプ制御装置の主要部を構成するコントロールユニットの説明に供されるブロック図。
【図3】高圧燃料ポンプを備えた燃料供給システムの全体構成を示す図1。
【図4】図1に示される高圧燃料ポンプの拡大縦断面図。
【図5】高圧燃料ポンプの動作説明に供されるタイムチャート。
【図6】図5のタイムチャートの補足説明図。
【図7】コントロールユニットが実行する高圧燃料ポンプ制御の機能ブロック図。
【図8】図7に示されるポンプ制御信号算定手段の、より詳細な構成を示す機能ブロック図。
【図9】コントロールユニットによる高圧燃料ポンプ制御のタイムチャート。
【図10】コントロールユニットによるソレノイド駆動信号の出力制御の説明に供されるタイムチャート。
【図11】高圧燃料ポンプの吐出流量特性を示す図。
【図12】コントロールユニットが実行する始動時高圧燃料ポンプ制御の機能ブロック図。
【図13】コントロールユニットが実行する始動時高圧燃料ポンプ制御の一例のフローチャート。
【図14】図13のステップ1303での駆動信号出力開始フラグ判定処理の詳細を示すフローチャート。
【図15】図13のステップ1304で実行する駆動信号出力終了フラグ判定処理の詳細を示すフローチャート。
【図16】図14のステップ1405での所定期間が経過したか否かの判定に至るまでの処理を示す機能ブロック図。
【図17】図16のクランク角度要求値の説明に供されるタイムチャート。
【図18】本発明に係る高圧燃料ポンプ制御装置の一実施形態の動作・作用効果の説明に供されるタイムチャート。
【図19】本発明に係る高圧燃料ポンプ制御装置の他の実施形態の動作・作用効果の説明に供されるタイムチャート。
【符号の説明】
【0082】
1 高圧燃料ポンプ制御装置
10 エンジン
18 クランクシャフト
29 吸気カムシャフト
30 燃料噴射弁
36 カム角センサ
37 クランク角センサ
47 ポンプ駆動カム
49 排気カムシャフト
56 燃圧センサ
60 高圧燃料ポンプ
65 吸入弁(燃料通過弁)
90 ソレノイド(アクチュエータ)
100 コントロールユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料蓄圧室内の燃料を燃焼室に直接噴射するための燃料噴射弁と、加圧室、該加圧室内の燃料を加圧するプランジャ、前記加圧室内に設けられた燃料通過弁、及び、該通過弁を操作するアクチュエータを有し、前記燃料蓄圧室に燃料を圧送する高圧燃料ポンプと、を備えたエンジンの高圧燃料ポンプ制御装置であって、
前記高圧燃料ポンプの吐出量を可変とすべく、前記アクチュエータの駆動信号の出力制御を行う制御手段を有し、
該制御手段は、始動開始から前記アクチュエータ駆動信号を所定のクランク角位相で出力することが可能となるまでの期間内において、前記アクチュエータ駆動信号の出力を開始するとともに、該アクチュエータ駆動信号の出力を停止するタイミングを、前記蓄圧室内の燃料圧力に基づいて設定することを特徴とする高圧燃料ポンプ制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記蓄圧室内における燃料圧力が単位時間当たり所定値以上昇圧したとき、又は、始動開始時との圧力差が所定値以上となったとき、前記アクチュエータ駆動信号の出力を停止することを特徴とする請求項1に記載の高圧燃料ポンプ制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、クランク角信号を所定回数以上認識したとき、前記アクチュエータ駆動信号の出力を停止することを特徴とする請求項1又は2に記載の高圧燃料ポンプ制御装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記所定回数をバッテリ電圧に基づいて設定することを特徴とする請求項3に記載の高圧燃料ポンプ制御装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記アクチュエータ駆動信号の出力を開始してから所定期間が経過したとき、その出力を停止することを特徴とする請求項1に記載の高圧燃料ポンプ制御装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記アクチュエータ駆動信号の出力を停止するタイミングを、前記高圧燃料ポンプの吐出範囲を示すクランク角信号又はカム角信号に基づいて設定することを特徴とする請求項1に記載の高圧燃料ポンプ制御装置。
【請求項7】
燃料蓄圧室内の燃料を燃焼室に直接噴射するための燃料噴射弁と、加圧室、該加圧室内の燃料を加圧するプランジャ、前記加圧室内に設けられた燃料通過弁、及び、該通過弁を操作するアクチュエータを有し、前記燃料蓄圧室に燃料を圧送する高圧燃料ポンプと、を備えたエンジンの高圧燃料ポンプ制御装置であって、
前記高圧燃料ポンプの吐出量を可変とすべく、前記アクチュエータの駆動信号の出力制御を行う制御手段を有し、
該制御手段は、始動開始から前記アクチュエータ駆動信号を所定のクランク角位相で出力することが可能となるまでの期間内において、始動開始からのクランク角信号を所定回数以上認識したとき、前記アクチュエータ駆動信号の出力を開始することを特徴とする高圧燃料ポンプ制御装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記蓄圧室内の燃料圧力が所定値以下のとき、前記アクチュエータ駆動信号の出力を開始することを特徴とする請求項7に記載の高圧燃料ポンプ制御装置。
【請求項9】
前記制御手段は、エンジン冷却水温度が所定値以下のとき、前記アクチュエータ駆動信号の出力を開始することを特徴とする請求項7又は8に記載の高圧燃料ポンプ制御装置。
【請求項10】
前記制御手段は、前記アクチュエータ駆動信号の前回の出力停止から所定期間が経過したとき、前記アクチュエータ駆動信号の出力を開始することを特徴とする請求項7に記載の高圧燃料ポンプ制御装置。
【請求項11】
前記制御手段は、前記所定期間を、前記アクチュエータ駆動信号の前回の出力時間及び又はクランク角度要求値に基づいて設定することを特徴とする請求項10に記載の高圧燃料ポンプ制御装置。
【請求項12】
前記制御手段は、前記アクチュエータ駆動信号の出力を開始するタイミングを、前記高圧燃料ポンプの吐出範囲を示すクランク角信号又はカム角信号に基づいて設定することを特徴とする請求項7に記載の高圧燃料ポンプ制御装置。
【請求項13】
燃料蓄圧室内の燃料を燃焼室に直接噴射するための燃料噴射弁と、加圧室、該加圧室内の燃料を加圧するプランジャ、前記加圧室内に設けられた燃料通過弁、及び、該通過弁を操作するアクチュエータを有し、前記燃料蓄圧室に燃料を圧送する高圧燃料ポンプと、を備えたエンジンの高圧燃料ポンプ制御装置であって、
前記高圧燃料ポンプの吐出量を可変とすべく、前記アクチュエータの駆動信号の出力制御を行う制御手段を有し、
該制御手段は、始動開始から前記アクチュエータ駆動信号を所定のクランク角位相で出力することが可能となるまでの期間内において、前記アクチュエータ駆動信号を所定期間連続して出力することを特徴とする高圧燃料ポンプ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2008−144767(P2008−144767A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−24174(P2008−24174)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【分割の表示】特願2003−415495(P2003−415495)の分割
【原出願日】平成15年12月12日(2003.12.12)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】