説明

キャリアライフタイムが改善された基板を製造する方法

【課題】得られるコーティングが0.5マイクロ秒〜1000マイクロ秒のキャリアライフタイムを有するように、シリコンカーバイドコーティングを基板上に堆積させる方法を提供する。
【解決手段】a.ジクロロシランガス、メチルハイドロジェンジクロロシランガス、ジメチルジクロロシランガス、及びそれらの混合物から選択されるクロロシランガスと、炭素含有ガスと、水素ガスとを含む混合ガスを、単結晶シリコンカーバイド基板を含有する反応チャンバ内に導入すること、及びb.1200℃より高いが1800℃より低い温度に基板を加熱すること、を含むが、但し、反応チャンバ内の圧力は10torr〜250torrの範囲に維持されるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシリコンカーバイドエピタキシャル層の成長に関する。半導体材料として、シリコンカーバイドは高出力で高周波且つ高温の電子素子に対して特に優れている。シリコンカーバイドは極めて高い熱伝導性を有し、ブレークダウン前の高い電場及び高い電流密度の両方に耐性を有し得る。シリコンカーバイドのワイドバンドギャップは、高温であっても低い漏洩電流をもたらす。これらの理由及び他の理由から、シリコンカーバイドは、出力素子、即ち比較的高い電圧で動作するように設計されるものに至極望ましい半導体材料である。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本願は、米国特許法第119条(e)項に基づき、2006年7月19日付で出願された米国特許仮出願第60/831,839号の利益を主張する。米国特許仮出願第60/831,839号は参照により本明細書に援用される。
【0003】
本発明は、海軍研究事務所によって与えられた契約番号N00014−05−C−0324に基づき、連邦政府による支援によって行われた。連邦政府は本発明の一定の権利を有すると考えられる。
【背景技術】
【0004】
しかしながら、シリコンカーバイドは取扱いの難しい材料である。成長過程は、エピタキシャル成長では少なくとも約1400℃よりも高く、昇華成長ではおよそ2000℃よりも高い比較的高い温度で実行する必要がある。それに加えて、シリコンカーバイドは150を超える多型を形成する可能性があり、それらの多くはわずかな熱力学的相違によって分けられる。結果的に、エピタキシャル層又はバルク結晶のいずれかによるシリコンカーバイドの単結晶成長は困難な過程である。最終的に、シリコンカーバイドの極端な硬度(大抵の場合、研磨材として産業上使用される)は、シリコンカーバイドの取扱い難さ及び適切な半導体素子への形成し難さの一因である。
【0005】
それにもかかわらず、過去10年間で、シリコンカーバイドの成長技法はかなり進歩しており、例えば特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6及び特許文献7に反映されている。
【0006】
1つの特定の成長技法は、「化学蒸着」又は「CVD」と称される。この技法において、(シリコンカーバイド用のシランSiH4及びプロパンC38等の)原料ガスを、原料ガスを反応させてエピタキシャル層を形成させる基板表面も包含する被加熱反応チャンバに導入する。成長反応速度の制御を助けるために、原料ガスをキャリアガスと共に典型的に導入し、キャリアガスは最大容量のガスフローを形成する。
【0007】
シリコンカーバイドの化学蒸着(CVD)成長過程を温度プロファイル、ガス速度、ガス濃度、化学特性及び圧力について改良する。特定のエピ層を作製するのに用いられる条件の選択は多くの場合、望ましい成長速度、反応温度、サイクル時間、ガス容量、設備コスト、ドーピング均質性、及び層厚等の要素間の妥協である。
【0008】
シリコンカーバイドは、高性能のダイオード及びトランジスタを構築する見込みを与える理論特性を有するワイドバンドギャップ半導体材料である。シリコンのような材料と比較すると、これらの半導体素子は高出力且つ高スイッチング速度で動作することができる。
【0009】
パワーエレクトロニクス用途では多くの場合、トランジスタ又はダイオードの設計を有する回路を構築することが好まれ、これらの素子の一型は少数キャリア素子又はバイポーラ素子として知られている。これらの型の素子の動作特性は、電子−正孔対の生成速度(generation rate)及び再結合速度に依存する。この速度の逆数をライフタイムと称する。具体的なバイポーラ素子としては、PiNダイオード、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)、サイリスタ、及びバイポーラ接合トランジスタが挙げられる。
【0010】
半導体出力素子性能の理論レベルにまで最適化しなければならない重要な材料パラメータはキャリア再結合ライフタイムである。シリコンでは、鉄等の夾雑物によってライフタイムが制限される。シリコンカーバイドでは、シリコンよりもあまり知られていないものの、今日までに知られている限り、シリコンカーバイドのライフタイムは結晶格子中の空孔及びアンチサイトの存在によって低下する。空孔はケイ素原子又は炭素原子が存在しない位置である。アンチサイトは誤った原子が配置された位置である。
【0011】
半導体シリコンカーバイドは典型的に、ケイ素、炭素、シリコンカーバイドを含有し得る固体混合物からの物理気相輸送法(昇華としても知られている)によって、又はシラン及び炭化水素の混合ガスからの化学蒸着(CVD)によって成長する。これらの方法によって成長するシリコンカーバイド材料は、シリコンカーバイドダイオード及びトランジスタ内の理論的な素子挙動は小さすぎて認識することができない500ns未満のライフタイムを有する。半導体シリコンカーバイドのエピタキシャル層は多くの場合、シリコンのような材料と比べて短く、またシリコンカーバイドの予想される理論値に比べて短い2マイクロ秒よりもかなり小さいライフタイム値を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第4,912,063号明細書
【特許文献2】米国特許第4,912,064号明細書
【特許文献3】米国再発行特許第34,861号明細書
【特許文献4】米国特許第4,981,551号明細書
【特許文献5】米国特許第5,200,022号明細書
【特許文献6】米国特許第5,459,107号明細書
【特許文献7】米国特許第6,063,186号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の実施の形態において、本発明は、得られるコーティングが0.5マイクロ秒〜1000マイクロ秒のキャリアライフタイムを有するように、シリコンカーバイドコーティングを基板上に堆積させる方法であって、a.クロロシランガスと、炭素含有ガスと、水素ガスとを含む混合ガスを、基板を含有する反応チャンバ内に導入すること、及びb.1000℃より高いが2000℃より低い温度に基板を加熱することを含むが、但し、反応チャンバ内の圧力は0.1torr〜760torrの範囲に維持されるものとする、シリコンカーバイドコーティングを基板上に堆積させる方法に関する。
【0014】
第2の実施の形態において、本発明は、得られるコーティングが0.5マイクロ秒〜1000マイクロ秒のキャリアライフタイムを有するように、シリコンカーバイドコーティングを基板上に堆積させる方法に関し、当該方法は、a.非塩素化ケイ素含有ガスと、塩化水素と、炭素含有ガスと、水素ガスとを含む混合ガスを、基板を含有する反応チャンバ内に導入すること、及びb.1000℃より高いが2000℃より低い温度に基板を加熱することを含むが、但し、反応チャンバ内の圧力は0.1torr〜760torrの範囲に維持されるものとする。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の第1の実施形態において、混合ガスはドーピングガスをさらに含み得る。このドーピングガスは、窒素ガス、リンガス又はトリメチルアルミニウムガスで例示される。クロロシランガスは典型的に式RwxSiyClz(式中、y及びzは0より大きく、w及びxは0以上であり、且つRは炭化水素基を示す)を有する。この炭化水素基は、メチル、エチル又はプロピル等のアルキルラジカル;ビニル又はアリル等のアルケニルラジカル;3−クロロプロピル等のハロ炭化水素ラジカルで例示される、1個〜3個の炭素原子を含有する炭化水素基で例示される。R基は要望に応じて同一であっても異なっていてもよい。Rは、メチル、エチル又はプロピル等の1個〜3個の炭素原子を有する一価炭化水素ラジカルで例示される。wの値は典型的に0〜3であり、xの値は典型的に0〜3であり、且つyの値は典型的に1〜3であり、zの値は典型的に1〜3である。クロロシランガスは、ジクロロシランガス、トリクロロシランガス、トリメチルクロロシランガス、メチルハイドロジェンジクロロシランガス、ジメチルハイドロジェンクロロシランガス、ジメチルジクロロシランガス、メチルトリクロロシランガス、又はそれらの混合物で例示される。
【0016】
本発明の第1の実施形態における炭素含有ガスは典型的に、式HabClc(式中、a及びbは0より大きく、且つcは0以上である)を有する。この炭素含有ガスは、C38ガス、C26ガス、CH3Clガス、又はCH3CH2CH2Clガスで例示される。
【0017】
本発明の第1の実施形態において、基板は典型的に1200℃〜1800℃の温度に加熱される。利用可能な任意の従来の手段によってこの基板を加熱してもよく、又は基板の温度を所望のレベルに上げるのに十分な温度まで、反応チャンバ自体を加熱してもよい。基板は典型的に単結晶シリコンカーバイド基板又は単結晶シリコンウエハを含む。かかる基板は市販されている。
【0018】
第1の実施形態における反応チャンバ内のガスの全圧は、0.1torr〜760torrの広い範囲にわたって変化することができ、包括的に適度な速度のエピタキシャル成長をもたらすレベルに制御される。反応チャンバ内の圧力は典型的に10torr〜250torrであり、代替的に、約80torr〜200torrの範囲の圧力が用いられ得る。
【0019】
本発明の第1の実施形態において反応チャンバ内に導入される化学物質の蒸気の量は、所望のシリコンカーバイドエピタキシャル層の成長速度、成長均質性、及びドーピングガスの取込みを可能にするものとする。全ガス流量は典型的に、反応チャンバのサイズ及び温度プロファイルに応じて1リットル/分〜150リットル/分の範囲である。炭素含有ガスとケイ素含有ガスとの合計流量は典型的に、全流量の0.1%〜30%の範囲である。ドーピングガスの流量は典型的に、全流量の1%よりもはるかに小さい。ケイ素含有ガスの流量に対する炭素含有ガスの流量の比率は典型的に0.3〜3の範囲であり、所望のドーピングガスの取込み効率及び表面モルフォロジーに応じて調節され、またこの比率は反応チャンバの設計(サイズ、温度プロファイル等)に大いに影響を受ける。これらの条件下において、約1マイクロメートル/時〜100マイクロメートル/時の範囲の成長速度が包括的に達成され得る。ガスフロー、圧力及びウエハの温度等の具体的なパラメータを実施形態毎に大きく変えることができ、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく同様又は類似の結果を依然として得ることができることは、当業者によって理解されるものとする。
【0020】
本発明の第1の実施形態は静的条件下で実行することができるが、通常では、基板領域全体にわたって均質な上記の流れを生じさせるように、制御量の混合ガスをチャンバの一部に連続的に導入すると共に、チャンバ内の別の部分から真空引きすることが好ましい。
【0021】
本発明の方法で用いられる反応チャンバは、化学蒸着法による膜の成長を促すいずれのチャンバであってもよい。かかるチャンバの例はNordell et al., Journal Electrochemical Soc., Vol. 143, No. 9, 1996 (page 2910)又はSteckl and Li, IEEE Transactions on Electronic Devices, Vol. 39, No. 1, Jan. 1992によって記載されている。
【0022】
第1の実施形態の結果得られる製品は、結晶質3C、4H又は6Hシリコンカーバイドでコーティングされた基板である。コーティングは、約1nm〜25cm等の多種多様な厚さで成長させることができる。コーティングを基板から分離して、必要であれば新たな基板として使用することができる。
【0023】
本発明の第2の実施形態において、混合ガスはドーピングガスをさらに含み得る。このドーピングガスは、本発明の第1の実施形態について上に記載した通りのものである。本発明の第2の実施形態中の非塩素化ケイ素含有ガスは、式RwxSiy(式中、yは0より大きく、w及びxは0以上であり、且つRは炭化水素基を示す)を有する。この炭化水素基は上に記載した通りのものである。非塩素化ケイ素含有ガスは、トリメチルハイドロジェンシランガス、ジメチルジハイドロジェンシランガス、メチルトリハイドロジェンシランガス、又はそれらの混合物で例示される。第2の実施形態中の炭素含有ガスは、式HabClc(式中、a及びbは0より大きく、且つcは0以上である)を有する。炭素含有ガスは、C38ガス、C26ガス、CH3Clガス又はCH3CH2CH2Clガスで例示される。典型的には、混合ガス中の少なくとも1つのガスが塩素原子を含有する。
【0024】
本発明の第2の実施形態において、基板は典型的に1200℃〜1800℃の温度に加熱される。本発明の第2の実施形態における基板は、第1の実施形態について上に記載した通りのものである。
【0025】
第2の実施形態における反応チャンバ内のガスの全圧は、0.1torr〜760torrの広い範囲にわたって変化することができ、包括的に適度な速度のエピタキシャル成長をもたらすレベルに制御される。反応チャンバ内の圧力は典型的に10torr〜250torrであり、代替的に、約80torr〜200torrの範囲の圧力が用いられ得る。
【0026】
本発明の第2の実施形態において反応チャンバ内に導入される化学物質の蒸気の量は、所望のシリコンカーバイドエピタキシャル層の成長速度、成長均質性、及びドーピングガスの取込みを可能にするものとする。全ガス流量は典型的に、反応チャンバのサイズ及び温度プロファイルに応じて1リットル/分〜150リットル/分の範囲である。炭素含有ガスと非塩素化ケイ素含有ガスとの合計流量は典型的に、全流量の0.1%〜30%の範囲である。ドーピングガスの流量は典型的に、全流量の1%よりもはるかに小さい。非塩素化ケイ素含有ガスの流量に対する炭素含有ガスの流量の比率は典型的に0.3〜3の範囲であり、所望のドーピングガスの取込み効率及び表面モルフォロジーに応じて調節され、またこの比率は反応チャンバの設計(サイズ、温度プロファイル等)に大いに影響を受ける。これらの条件下において、約1マイクロメートル/時〜100マイクロメートル/時の範囲の成長速度が包括的に達成され得る。ガスフロー、圧力及びウエハの温度等の具体的なパラメータを実施形態毎に大きく変えることができ、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく同様又は類似の結果を依然として得ることができることは、当業者によって理解されるものとする。
【0027】
本発明の第2の実施形態は静的条件下で実行することができるが、通常では、基板領域全体にわたって均質な蒸気の流れを生じさせるように、制御量の混合ガスをチャンバの一部に連続的に導入すると共に、チャンバ内の別の部分から真空引きすることが好ましい。
【0028】
本発明の第2の実施形態で用いられる反応チャンバは、第1の実施形態について上に記載した通りのものである。
【0029】
第2の実施形態の結果得られる製品は、結晶質3C、4H又は6Hシリコンカーバイドでコーティングされた基板である。コーティングは、約1nm〜25cm等の多種多様な厚さで成長させることができる。コーティングを基板から分離して、必要であれば新たな基板として使用することができる。
【0030】
本発明の上記の実施形態における方法の製品は半導体素子に有用である。この製品はコーティングを含有する単一基板として機能し、またコーティングを基板から分離して別々の基板にすることができる。この製品を加工してトランジスタ又はダイオード又は集積半導体素子にすることもできる。このため、本発明はまた、(i)少なくとも1つの半導体素子要素と、(ii)0.5マイクロ秒〜1000マイクロ秒のキャリアライフタイムを有するシリコンカーバイド領域を含む基板とを含む半導体素子に関する。半導体素子要素は、トランジスタ、及びPiNダイオード等のダイオード、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)、サイリスタ、並びにバイポーラ接合トランジスタで例示される。基板は本発明の2つの実施形態で上に記載した通りのものである。
【実施例】
【0031】
以下の実施例は本発明の好ましい実施形態を示すように包含される。当業者に理解されるように、以下の実施例に開示する技法は、本発明の実施に際して十分に機能する本発明者が開発した技法を示しており、それゆえ実施の好ましい形態を構成するものであるとみなすことができる。しかしながら、本発明の開示を鑑みて、開示される具体的な実施形態における多くの変更が可能であり、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく同様又は類似の結果を依然として得ることができることは、当業者によって理解されるものとする。
【0032】
マイクロ波光伝導減衰法を用いてキャリアライフタイムの測定を行った。この技法から得たライフタイム値は、表面再結合速度と、バルク再結合速度又はライフタイムとの組合せである。
【0033】
(実施例1)
5つのシリコンカーバイドウエハ(4H n+ SiC、76mm直径、<1120>方向に8度傾斜)を反応チャンバに設け、およそ1570℃〜1600℃に加熱した。反応チャンバ内の圧力を95torrに維持した。水素ガスと、プロパンガスと、ジクロロシランガスと、窒素ガスとを含有する混合ガスを反応チャンバ内に導入すると共に、上記圧力を維持した。得られた製品は5つのシリコンカーバイドウエハであり、ウエハはそれぞれ30μmの4H SiCエピタキシャル層を含有する。窒素流を用いて達成されるn型ドーピングは、約6×1014/cm3の正味キャリア濃度に相当する。マイクロ波光伝導減衰法を用いて再結合ライフタイム測定を行った。5つのウエハについて測定した個々のライフタイム中央値は1.0マイクロ秒〜6.0マイクロ秒の範囲であった。5つのウエハについて測定した個々の平均ライフタイムは1.2マイクロ秒〜12.0マイクロ秒の範囲であった。
【0034】
(実施例2)
実施例1によるシリコンカーバイドウエハ(4H n+ SiC、76mm直径、<1120>方向に8度傾斜)を、時間分解フォトルミネッセンス分光法を用いて別個に試験し、フォトルミネッセンスシグナルの減衰からライフタイムを求めた。x軸直径及びy軸直径の両方に沿って材料を走査することによってライフタイムを評価した。マイクロ波光伝導減衰法によって測定した場合、サンプルは5マイクロ秒〜12マイクロ秒のライフタイム値範囲を有し、時間分解フォトルミネッセンス分光法によって測定した場合、ライフタイム値範囲は2マイクロ秒〜4マイクロ秒であった。
【0035】
(実施例3)
5つのシリコンカーバイドウエハ(4H n+ SiC、76mm直径、<1120>方向に8度傾斜)を反応チャンバに設け、およそ1570℃〜1600℃に加熱した。反応チャンバ内の圧力を95torrに維持した。水素ガスと、プロパンガスと、トリクロロシランガスと、窒素ガスとを含む混合ガスを反応チャンバ内に導入すると共に、上記圧力を維持した。得られた製品は5つのシリコンカーバイドウエハであり、ウエハはそれぞれ30μmの4H SiCエピタキシャル層を含有する。窒素流を用いて達成されるn型ドーピングは、約5×1015/cm3の正味キャリア濃度に相当する。マイクロ波光伝導減衰法を用いて再結合ライフタイム測定を行った。5つのウエハについて測定した個々のライフタイム中央値は0.9マイクロ秒〜1.2マイクロ秒の範囲であった。5つのウエハについて測定した個々の平均ライフタイムは0.9マイクロ秒〜1.6マイクロ秒の範囲であった。
【0036】
したがって、本発明の方法は単結晶シリコンカーバイド材料におけるライフタイムの制限という欠点を最小限に抑える。本発明は、シリコンカーバイドを成長させる当該技術分野において現在知られている他の方法よりも理論シリコンカーバイド値に近い再結合ライフタイム値を有するシリコンカーバイドの成長方法を記載している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
得られるコーティングが0.5マイクロ秒〜1000マイクロ秒のキャリアライフタイムを有するように、シリコンカーバイドコーティングを基板上に堆積させる方法であって、
a.ジクロロシランガス、メチルハイドロジェンジクロロシランガス、ジメチルジクロロシランガス、及びそれらの混合物から選択されるクロロシランガスと、炭素含有ガスと、水素ガスとを含む混合ガスを、単結晶シリコンカーバイド基板を含有する反応チャンバ内に導入すること、及び
b.1200℃より高いが1800℃より低い温度に該基板を加熱すること、
を含むが、但し、該反応チャンバ内の圧力は10torr〜250torrの範囲に維持されるものとする、シリコンカーバイドコーティングを基板上に堆積させる方法。
【請求項2】
前記混合ガスがドーピングガスをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ドーピングガスが、窒素ガスである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記炭素含有ガスが、C38ガス、C26ガス、CH3Clガス又はCH3CH2CH2Clガスである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
全ガス流量が、1リットル/分〜150リットル/分であり、且つ炭素含有ガスとクロロシランガスとの合計流量が、全流量の0.1%〜30%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
制御量の混合ガスが、基板領域全体にわたって均質な上記の流れを生じさせるように、反応チャンバの一部に連続的に導入されると共に、チャンバ内の別の部分から真空引きする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法に従って製造される製品。

【公開番号】特開2013−47181(P2013−47181A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−231897(P2012−231897)
【出願日】平成24年10月19日(2012.10.19)
【分割の表示】特願2009−520806(P2009−520806)の分割
【原出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【出願人】(590001418)ダウ コーニング コーポレーション (166)
【氏名又は名称原語表記】DOW CORNING CORPORATION
【Fターム(参考)】